(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】分散型電源の自立運転システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/34 20060101AFI20220207BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20220207BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20220207BHJP
H02J 9/02 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
H02J7/34 G
H02J9/06 150
H02J3/38 110
H02J9/02
(21)【出願番号】P 2018121021
(22)【出願日】2018-06-26
【審査請求日】2021-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】高橋 涼
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-153337(JP,A)
【文献】特開2010-259170(JP,A)
【文献】国際公開第2014/119291(WO,A1)
【文献】特開2014-166000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/34
H02J 9/02,9/06
H02J 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
停電時に、系統連系給電ラインから、分散型電源より非常用コンセント部へ電力を供給する自立給電ラインへ、建物内の給電ラインを切り換え可能な切換手段と、
前記切換手段により前記自立給電ラインへと切り換えるために操作される操作手段と、を備え、
建物内の複数の領域のうち、前記操作手段が設けられている領域から、前記非常用コンセント部が設けられている領域へ居住者を誘導するための案内灯が備えられており、
前記案内灯は、自立給電ラインに接続されることを特徴とする、分散型電源の自立運転システム。
【請求項2】
前記操作手段の付近には、前記操作手段へ誘導するための発光手段が備えられており、
停電時には、前記発光手段を点灯させるか、又は前記発光手段の発光輝度を上げる、請求項1に記載の分散型電源の自立運転システム。
【請求項3】
前記操作手段の付近には、給電関連情報を表示する表示手段が備えられており、
停電時には、前記非常用コンセント部の設置場所を前記表示手段において表示する、請求項1又は2に記載の分散型電源の自立運転システム。
【請求項4】
前記非常用コンセント部、又は前記自立給電ラインのいずれかにおいて、前記非常用コンセント部から機器への給電を検知するための給電検知手段が備えられており、
前記給電検知手段により機器への給電が検知された場合、前記案内灯を消灯する、請求項1~3のいずれか1項に記載の分散型電源の自立運転システム。
【請求項5】
前記非常用コンセント部には、前記自立給電ラインに切り換えられている状態である場合に、前記非常用コンセント部を使用可能であることを報知する通電報知手段が設けられる、請求項1~4のいずれか1項に記載の分散型電源の自立運転システム。
【請求項6】
前記案内灯は、前記操作手段が設けられている領域から前記非常用コンセント部が設けられている領域にかけて、複数設けられている、請求項1~5のいずれか1項に記載の分散型電源の自立運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散型電源の自立運転システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、分散型電源として再生可能エネルギの導入がさかんに行われており、一般家庭においてもその導入が進んでいる。例えば、水素と酸素との化学反応を利用して発電を行う燃料電池システムが知られている。また、屋根に設置した太陽電池パネルにより発電を行う太陽光発電システムも普及している。このような再生可能エネルギを用いたシステムは、通常時は、商用電源と系統連系運転を行っているが、商用電源の停電時には自立運転を行い、発電した電力を機器に供給することができる。
【0003】
すなわち、停電時には、系統連系運転から自立運転に切り換えることで、再生可能エネルギ(例えば、燃料電池又は太陽電池パネルの発電した電力)を直接使うことができる。具体的には、発電した電力がそのまま供給される特別回路を介して供給される非常用コンセントが設置され、当該非常用コンセントに機器のプラグをつなげることで、発電した電力を使うことができる。最近では、系統連系運転から自立運転に切り換えて非常用コンセントに通電された場合、非常用コンセントに設けられたランプを点灯させることにより、通電されていることを報知する技術が報告されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この停電時にも使用できる非常用コンセントは、使用機会が少ないためその設置場所(部屋)を忘れている居住者は比較的多い。また、日常的に使用しないために、非常用コンセントの前方に棚等の置物を置き、非常用コンセントが隠れてしまっている場合もある。このような場合、上記技術のように非常用コンセントに設けられたランプが点灯していたとしても、居住者は、ランプの点灯しているコンセントを見つけるために家中を探し回る必要がある。そして、このような状況では非常用コンセントの設置場所までたどり着けないこともありうる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、分散型電源の自立運転に切り換えられた際、非常用コンセントに容易にたどり着けることができる分散型電源の自立運転システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、第1の発明の分散型電源の自立運転システムは、
停電時に、系統連系給電ラインから、分散型電源より非常用コンセント部へ電力を供給する自立給電ラインへ、建物内の給電ラインを切り換え可能な切換手段と、
前記切換手段により前記自立給電ラインへと切り換えるために操作される操作手段と、を備え、
建物内の複数の領域のうち、前記操作手段が設けられている領域から、前記非常用コンセント部が設けられている領域へ居住者を誘導するための案内灯が備えられており、
前記案内灯は、自立給電ラインに接続されることを特徴とする。
【0008】
第1の発明によれば、停電した場合、操作手段を操作することにより分散型電源の自立運転に切り換えることができる。そうして、自立運転に切り換えた場合、非常用コンセント部と、案内灯とに給電され、案内灯が自動的に点灯する。これにより、案内灯が光を放っているため建物内で見つけやすくなり、よって、案内灯は非常用コンセント部を見つけるための指標となる。非常用コンセント部の設置場所を忘れた居住者であっても、建物内の案内灯を探せばよく、案内灯を頼りに非常用コンセント部を見つけることができる。例えば、非常用コンセント部付近に案内灯を設けた場合、各部屋を入り口から見渡すだけで、その部屋に非常用コンセント部があるかないかをすぐに判断でき、よって、非常用コンセント部に容易にたどり着くことができる。
【0009】
第2の発明の分散型電源の自立運転システムは、第1の発明において、
前記操作手段の付近には、前記操作手段へ誘導するための発光手段が備えられており、
停電時には、前記発光手段を点灯させるか、又は前記発光手段の発光輝度を上げることを特徴とする。
【0010】
第2の発明によれば、停電した場合、操作手段の付近に設けられた発光手段が点灯されて発光するか、又は発光手段の発光輝度が上がり発光手段が強く発光する。これにより、居住者は発光を指標にして操作手段まで容易にたどり着くことができ、自立運転への切り換えを速やかに実施できる。
【0011】
第3の発明の分散型電源の自立運転システムは、第1又は第2の発明において、
前記操作手段の付近には、給電関連情報を表示する表示手段が備えられており、
停電時には、前記非常用コンセント部の設置場所を前記表示手段において表示することを特徴とする。
【0012】
第3の発明によれば、停電した場合、非常用コンセント部の設置場所を表示手段において自動的に表示する。これにより、居住者は、自立運転に切り換えた際に、非常用コンセント部の設置場所を表示手段の表示にて確認し、その設置場所を正確に把握することができる。よって、非常用コンセント部を探すために複数の部屋を見て回る必要がなくなり、非常用コンセント部の設置された部屋に速やかにたどり着ける。すなわち、第3の発明によれば、非常用コンセント部の設置された部屋までの誘導が可能であるため、非常時においてより速やかに非常用コンセント部までたどり着くことができる。
【0013】
第4の発明の分散型電源の自立運転システムは、第1~3の発明のいずれかにおいて、
前記非常用コンセント部、又は前記自立給電ラインのいずれかにおいて、前記非常用コンセント部から機器への給電を検知するための給電検知手段が備えられており、
前記給電検知手段により機器への給電が検知された場合、前記案内灯を消灯することを特徴とする。
【0014】
第4の発明によれば、非常用コンセント部から機器への給電が検知されると、案内灯を消灯する。非常用コンセント部から機器への給電が検知された場合とは、すなわち、非常用コンセント部が使用されている状況である。このような場合、居住者は非常用コンセント部の場所をすでに把握している。よって、案内灯を消灯しても不都合はなく、消灯することにより、自立運転の限られた電力を節約することができる。
【0015】
第5の発明の分散型電源の自立運転システムは、第1~4の発明のいずれかにおいて、
前記非常用コンセント部には、前記自立給電ラインに切り換えられている状態である場合に、前記非常用コンセント部を使用可能であることを報知する通電報知手段が設けられることを特徴とする。
【0016】
第5の発明によれば、居住者が案内灯に誘導されて非常用コンセント部の付近に到着すると、非常用コンセント部に設けられた通電報知手段により非常用コンセント部の存在に容易に気づくことができる。したがって、非常用コンセント部に一層容易にアクセスすることができる。
【0017】
第6の発明の分散型電源の自立運転システムは、第1~5の発明のいずれかにおいて、
前記案内灯は、前記操作手段が設けられている領域から前記非常用コンセント部が設けられている領域にかけて、複数設けられていることを特徴とする。
【0018】
第6の発明によれば、操作手段から非常用コンセント部の設置場所までの経路に複数の案内灯を設置する。例えば、操作手段が設けられた領域から廊下を介して行き来できる領域に非常用コンセント部が設けられている場合、操作手段が設けられた領域において、廊下に近いところに案内灯を設け、廊下のうち非常用コンセント部が設けられた領域に向かう側に案内灯を設け、更に非常用コンセント部が設けられた領域のうち非常用コンセント部に近い位置に案内灯を設ける。これにより、案内灯をたどって進むだけで非常用コンセント部の設置場所まで誘導され、容易に非常用コンセント部までたどり着くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】燃料電池装置による自立運転システムの構成を示す概略図。
【
図3】燃料電池装置による自立運転システムの別例の構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。なお、
図1は、燃料電池装置による自立運転システムの構成を示す概略図である。
【0021】
図1に示すように、建物10には、屋内スペースとして、居室11、居室12等が設けられている。居室11の壁には、非常用コンセント15が設けられている。非常用コンセント15には、電気機器が備えるプラグを差し込む差込口15aと、その非常用コンセント15の通電状況を報知するためのランプ16とが設けられている。ランプ16は、非常用コンセント15が通電されている場合は点灯する。非常用コンセント15の差込口15aには、電力メータ17が差し込まれている。電力メータ17には、電気機器が備えるプラグを差し込むプラグの差込口17aが設けられている(拡大斜視図参照)。
【0022】
非常用コンセント15が設けられた居室11には、案内灯18が設けられている。案内灯18は、居室11の中でも非常用コンセント15が設けられた位置に偏った位置に設けられ、非常用コンセント15より上方に設けられている。例えば、案内灯18は、居室11内で、非常用コンセント15の設けられた壁の上方(より詳しくは、非常用コンセント15の設けられた壁において、非常用コンセント15が設けられた位置に偏った位置の上方)に設けられている(居室11の天井において、非常用コンセント15が設けられた位置に偏った位置に設けられてもよい)。なお、建物10には、居室11、居室12(以下、まとめて各居屋11,12と称する)の他、複数の居室、廊下、トイレ、浴室等が設けられているが図示は省略する。
【0023】
建物10の屋外側には、燃料電池装置20が設置されている。燃料電池装置20は、水の電気分解とは逆の化学反応で、水素と酸素とを反応させて電気を取り出すものである。
【0024】
次に、本システムの電気的構成について、
図1に基づいて説明する。
【0025】
燃料電池装置20は、燃料電池ユニット21と、コントローラ22とを備えている。燃料電池ユニット21には、水素と酸素とを反応させて電気を作る装置と、発電された直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナとが備えられている(図示せず)。コントローラ22は、燃料電池装置20の内部で、所定の電力経路を介して燃料電池ユニット21に接続されている。コントローラ22は、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータを備えて構成されている。
【0026】
コントローラ22は、制御部22aと、記憶部22bと、計時機能、時計機能及びカレンダ機能を有するタイマ22cと、を有している。制御部22aは、燃料電池ユニット21における発電の制御や、系統連系運転と自立運転との切り換えの制御を実行する。記憶部22bは、燃料電池装置20により発電された発電量に関する情報、他の機器からの検出結果等を記憶する。また、記憶部22bには、非常用コンセント15の設置場所(部屋)と、その非常用コンセント15に関連付けられた案内灯18(設置場所等)が記憶されている。
【0027】
燃料電池装置20には、その燃料電池装置20を遠隔制御するリモートコントローラ23(以下、リモコン23)が接続されている。リモコン23は、例えば、居室12の壁に取り付けられている。居室12は、例えばキッチンであり、居住者が日常からリモコン23の存在を理解できる場所に設置されていることが望ましい。リモコン23には、操作部23aと、表示部23bとが備えられている。操作部23aには、系統連系運転と自立運転とを切り換えるためのスイッチ23cが備えられている。操作部23aによる操作及びスイッチ23cによる押下操作に基づき、コントローラ22は燃料電池装置20の運転を制御する。
【0028】
表示部23bは、液晶ディスプレイとなっており、通常時はタイマ22cによる時刻の表示や、記憶部22bに記憶された燃料電池装置20の発電量の表示をする。そして、停電の場合、表示部23bは、系統連系運転と自立運転との切り換えを促すための表示や、記憶部22bに記憶されている非常用コンセント15の位置の表示をする。表示部23bにはバックライト23dが備えられている。バックライト23dの光強度を上げることで、表示部23b(ディスプレイ)の発光輝度が上がり、表示部23bを強く発光させることができる。
【0029】
図1において、建物10には、商用電源31から送電線41を介してAC100V/200Vの商用電力が供給される。送電線41には分電盤32が接続されている。分電盤32は、建物10内に設けられた複数の電力経路に対して選択的に電力を供給する周知の分電機能を有している。分電盤32は、電気配線42を介して各居室11,12に接続されている。これにより、分電盤32から各居室11,12に設けられた複数の電気機器に電力が供給される。
【0030】
ここで、燃料電池装置20には、電気配線51が接続されており、電気配線51は、切換スイッチ26により電気配線52,53に分岐する。電気配線52は分電盤32へと接続され、電気配線53は非常用コンセント15へと接続されている。切換スイッチ26は、通常時はA位置であり、電気配線51と電気配線52とが接続された状態である。この場合、燃料電池装置20から分電盤32への電力の供給が可能となる。この分電盤32への回路を通常時回路と称する。
【0031】
切換スイッチ26をB位置とした場合、電気配線51と電気配線53とが接続され、燃料電池装置20から分電盤32への電力の供給が停止し、燃料電池装置20から非常用コンセント15へと電力が供給される。ここで、電気配線53の途中には、切換スイッチ27が設けられており、切換スイッチ27をC位置とした場合、電気配線53は、電気配線54へと接続され、燃料電池装置20から案内灯18へ電力が供給される。この非常用コンセント15と、案内灯18とに電力を供給する回路を非常時回路1と称する。切換スイッチ27をD位置とした場合、電気配線54(すなわち、案内灯18)への電力供給が停止され、非常用コンセント15のみに電力が供給される。この非常用コンセント15のみに電力を供給する回路を非常時回路2と称する。
【0032】
通常時回路により燃料電池装置20から電力が供給されること、すなわち、分電盤32を介して商用電源31及び燃料電池装置20から電力が供給されることを系統連系運転と称し、非常時回路1及び非常時回路2により燃料電池装置20から電力が供給されることを自立運転と称する。なお、リモコン23には、電池が備えられており(図示せず)、停電した場合は、電池の電力を使用して作動する。電池としては、乾電池であってもよいし、リチウム二次電池等の二次電池であってもよい。二次電池であれば、例えば、通常時は分電盤32からの電力供給(分電盤32から居室12への電気配線を経由)によって作動しつつ、充電もできる。
【0033】
コントローラ22には、分電盤32が接続され、コントローラ22は分電盤32から電力に関する信号を受信する。これにより、例えば、商用電源31から供給される電力が0となった場合、商用電源31が停電状態であると検知できる。
【0034】
コントローラ22には、切換スイッチ26と切換スイッチ27とが接続されている。切換スイッチ26は、電気配線51と電気配線52,53との接続状態(A位置又はB位置)の切り換えをコントローラ22により制御される。切換スイッチ27は、電気配線53と電気配線54との接続状態(C位置又はD位置)の切り換えをコントローラ22により制御される。
【0035】
コントローラ22には、電力メータ17が接続されている。電力メータ17に設けられた差込口17aに電気機器に設けられたプラグが差し込まれ、電気機器が起動されることにより、非常用コンセント15から電力が供給される。すなわち、電力メータ17を介して電力が供給されるため、電力メータ17により電気機器による消費電力が検出される。その検出結果はコントローラ22に入力される。
【0036】
次に、コントローラ22によって実行される自立運転システムの処理について、
図2のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、建物10では、燃料電池装置20による発電が常時行われており、
図2のフローチャートは、その燃料電池装置20による発電が行われていることが前提である。
【0037】
ステップS11では、停電が検知されたか否かを判定する。分電盤32を介して停電が検知された場合、YES判定してステップS12へ進む。停電が検知されていない(すなわち、商用電源31からの電力の供給が停止していない)場合、NO判定して本処理を終了する。
【0038】
ステップS12では、表示部23bにおいて、停電したことを報知する。具体的には、表示部23bにおいて、バックライト23dの光強度を上げて表示部23bを強く発光させる。そして、自立運転への切り換えを促す文章、又は画を表示部23bに表示する。
【0039】
ここで、停電を検知した場合に表示部23bが強く発光することにより、そこに燃料電池システムのリモコン23(換言すれば、燃料電池装置20を自立運転に切り換えるためのスイッチ23c)が配置されていることが識別しやすい。よって、居住者が燃料電池装置20のスイッチ23cの場所を覚えていなくとも、発光を目印にして居室12に設けられたリモコン23(表示部23b)まで容易にたどり着くことができる。そして、居住者は、表示部23bにおいて、自立運転に切り換えるためにスイッチ23cを操作することが表示されているのを見て、表示部23bの付近に配置されたスイッチ23cを操作して、自立運転へと切り換えることができる。すなわち、燃料電池装置20の電力を利用するための操作を詳細に把握していなくとも、表示部23bの発光と表示内容とにより誘導されて、容易に自立運転への切り換えができる。
【0040】
続くステップS13では、自立運転への切り換え操作が行われたか否かを判定する。スイッチ23cの押下操作により自立運転への切り換えが行われた場合は、YES判定してステップS14へ進む。スイッチ23cの押下操作がなされていない場合、すなわち、自立運転への切り換えが行われていない場合、NO判定してステップS25へ進む。
【0041】
自立運転への切り換え操作がされていない場合、ステップS25では、停電が復旧したか否かを判定する。停電の復旧については、商用電源31からの電力供給の再開が分電盤32を介して検知されたか否かにより判断される。停電が復旧していない場合、NO判定してステップS13へ戻り、各処理を繰り返す。停電が復旧した場合、YES判定してステップS26へ進む。
【0042】
ステップS26では、表示部23bにおいて、停電が復旧したことを報知する。例えば、「停電が復旧しました」という分章を表示部23bにて表示する。この際、表示部23bのバックライト23dの光強度は変えず、表示部23bを強く発光させておく。1分間(タイマ22cにて計時)、表示部23bにおける表示にて停電の復旧を報知した後は、ステップS23へ進む。
【0043】
ステップS23では、表示部23bのバックライト23dの光強度を下げて表示部23bの発光輝度を通常状態とし、表示部23bにおける表示を通常表示(例えば、時刻を表示)へと戻した後、本処理を終了する。
【0044】
ここで、ステップS26で停電の復旧を報知する場合、ステップS13のNO判定した結果であるため自立運転への切り換えが行われていない。そのため、停電復旧後はすぐに系統連系運転が再開し、建物10内へは通常通りに電力が供給されている。
【0045】
ステップS13で自立運転への切り換え操作がなされた場合、ステップS14では、自立運転への切換操作が行われたことに基づき、切換スイッチ26をA位置からB位置へと切り換え、切換スイッチ27をC位置へと切り換えて、非常時回路1に通電する。これにより、燃料電池装置20から非常用コンセント15及び案内灯18に通電される(ステップS14)。案内灯18は、通電されると点灯するようになっている。そのため、非常時回路1へと切り換えられることにより案内灯18が自動的に点灯する。なお、非常時回路1に切り換えられると非常用コンセント15に通電されるため、非常用コンセント15に設けられたランプ16も自動的に点灯している。続くステップS15では、表示部23bにおいて非常用コンセント15の設置場所を表示する。ここでは、例えば、「非常用コンセントは居室11にあります」等のように、非常用コンセント15の設置された部屋が表示されればよい。
【0046】
このステップS14,S15により、表示部23bには非常用コンセント15の設置場所(部屋)が表示され、非常用コンセント15の設置された居室11では、非常用コンセント15の付近で案内灯18が点灯している。これにより、居住者は、居室12において自立運転への切換操作を行った後、表示部23bの表示により非常用コンセント15の設置された部屋(居室11)を把握して速やかに居室11へ移動できる。そして、居室11に移動した居住者は、案内灯18の点灯により非常用コンセント15を即座に見つけることができる。
【0047】
続くステップS16では、非常用コンセント15が使用されたか否かを判定する。電力メータ17により消費電力が検出された場合、非常用コンセント15が使用されたとしてYES判定してステップS17へ進む。電力メータ17により消費電力が検出されない場合、非常用コンセント15が使用されていないとしてNO判定してステップS24へ進む。
【0048】
ステップS24では、停電が復旧したか否かを判定する。停電が復旧していない場合、NO判定してステップS16へ戻り、各処理を繰り返す。停電が復旧した場合、YES判定してステップS20へ進む。
【0049】
ステップS16で非常用コンセント15が使用された場合、ステップS17では、切換スイッチ27をC位置からD位置へと切り換えて、電気配線54への通電を遮断する(非常時回路2)。これにより、案内灯18への通電が停止されて、案内灯18は消灯する(ステップS17)。非常用コンセント15の使用が検出された場合、居住者は非常用コンセント15の位置を把握しているため、案内灯18を消灯しても不都合はなく、また消灯することにより、自立運転の限られた電力を節約することができる。そして、続くステップS18で、表示部23bにおけるバックライト23dの光強度を下げて表示部23b(ディスプレイ)を通常時の発光輝度とし、非常用コンセント15の設置場所の表示を非表示とする。これにより、リモコン23に備えられた電池の消耗を節約できる。
【0050】
続くステップS19では、停電が復旧したか否かを判定する。停電が復旧していない場合、NO判定してステップS19へ戻り、停電が復旧するまで処理を繰り返す。停電が復旧した場合、YES判定してステップS20へ進む。
【0051】
ステップS19,S24で停電が復旧した場合、ステップS20では、表示部23bにおいて、停電が復旧したことを報知する。具体的には、表示部23bにおいて、バックライト23dの光強度を上げて表示部23bを強く発光させる。そして、系統連系運転への切り換えを促す文章、又は画を表示部23bに表示する。なお、ステップS24からステップS20へと進んだ場合は、表示部23bは強く発光した状態であるため、バックライト23dは変化させなくてよい。
【0052】
続くステップS21では、系統連系運転への切り換え操作が行われたか否かを判定する。スイッチ23cの押下操作により系統連系運転への切り換えが行われた場合は、YES判定してステップS22へ進む。スイッチ23cの押下操作がなされていない場合、すなわち、系統連系運転への切り換えが行われていない場合、NO判定してステップS21へ戻り、系統連系運転への切り換えが行われるまで処理を繰り返す。
【0053】
系統連系運転への切り換え操作がなされた場合、ステップS22では、系統連系運転への切換操作が行われたことに基づき、切換スイッチ26をB位置からA位置へと切り換えて、通常時回路に通電する。これにより、燃料電池装置20から分電盤32に通電される。ここで、ステップS24からステップS22へと進んだ場合は、非常用コンセント15と案内灯18との通電が遮断され、ステップS17,S18を経由してステップS22へと進んだ場合は非常用コンセント15への通電が遮断されることになる。
【0054】
系統連系運転に切り換えた後はステップS23に進み、表示部23bのバックライト23dの光強度を下げて表示部23bの発光輝度を通常状態とし、表示部23bにおける表示を通常表示(例えば、時刻を表示)へと戻した後、本処理を終了する。
【0055】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0056】
本実施形態によれば、停電した場合、スイッチ23cを操作することにより通常時回路から非常時回路1へと切り換えられ、自立運転に切り換えることができる。そうして、自立運転に切り換えた場合、非常用コンセント15と、案内灯18とに給電され、案内灯18は自動的に非常用コンセント15付近で点灯し、非常用コンセント15の設置場所へ居住者を誘導する。すなわち、案内灯18は非常用コンセント15を見つけるための位置指標となる。例えば、非常用コンセント15の設置場所を忘れた居住者であっても、各居室11,12を入り口から見渡すだけで、その部屋に非常用コンセント15があるかないかをすぐに判断でき、よって、非常用コンセント15に容易にたどり着くことができる。
【0057】
本実施形態によれば、停電した場合、自動的に表示部23bのバックライト23dの光強度が上げられて、表示部23b(ディスプレイ)の発光輝度が上がり、表示部23bが発光する。これにより、居住者は発光を指標にしてスイッチ23cまで速やかにたどり着くことができ、自立運転への切り換えを速やかに実施できる。
【0058】
本実施形態によれば、停電した場合、表示部23bに非常用コンセント15の場所を自動的に表示する。これにより、居住者は、自立運転に切り換えた際に、非常用コンセント15の設置場所を表示部23bの表示にて確認し、その設置場所を正確に把握することができる。よって、非常用コンセント15を探すために複数の部屋を見て回る必要がなくなり、非常用コンセント15の設置された居室11に速やかにたどり着ける。すなわち、非常用コンセント15の設置された部屋までの誘導ができ、非常時においてより速やかに非常用コンセント15までたどり着くことができる。
【0059】
本実施形態によれば、非常用コンセント15から機器への給電が開始されたことが電力メータ17により検知されると、案内灯18を消灯する。非常用コンセント15が使用されている場合、居住者は非常用コンセント15の場所をすでに把握している。よって、案内灯18を消灯しても不都合はなく、消灯することにより、自立運転の限られた電力を節約することができる。
【0060】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0061】
(1)上記実施形態では、分散型電源として燃料電池により非常時の電力が供給されているが、分散型電源としては、自然エネルギを利用して発電可能な発電装置や電力を充放電可能な蓄電装置であってもよく、これらを組み合わせてもよい。例えば、太陽光発電システム、蓄電池システム、蓄電池を備えた燃料電池システム、蓄電池を備えた太陽光発電システム等の給電装置システムなどが分散型電源として利用できる。
【0062】
蓄電池システムの場合、夜間等に商用電源31から電力を蓄電池に供給し、蓄電池はその電力を蓄える(この場合、分電盤32又は商用電源31から蓄電池に電力を供給するための送電線又は電気配線が必要となる)。そして、蓄電された電力を昼間使用したり、自立運転時に使用することができる。この場合、燃料電池装置20が蓄電池装置に置き換わる以外は、上記実施形態の燃料電池装置20と同様の構成で、同様に自立運転が実施できる。
【0063】
太陽光発電システムの場合、燃料電池装置20の代わりに、太陽光パネル(建物10の屋外側(例えば屋根等))と、当該太陽光パネルで発電された直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナとを設ける。パワーコンディショナが電気配線51に接続される。パワーコンディショナは、太陽光発電を制御するコントローラ機能を備えている。太陽光発電が行われている場合、上記構成以外は上記実施形態の燃料電池装置20と同様の構成で、同様に自立運転が実施できる。
【0064】
太陽光発電システムにおいて太陽光発電が行われていない状況で同様に自立運転をするためには蓄電池が必要となる。この場合は、例えば、パワーコンディショナを蓄電池に接続し、当該蓄電池を電気配線51に接続させればよいが、蓄電池とパワーコンディショナとの接続形態、電気配線51との接続形態はこれに制限されない。
【0065】
(2)上記実施形態では、非常用コンセント15の差込口15aに差し込んだ電力メータ17により非常用コンセント15の使用を検知しているが、例えば、非常用コンセント15と燃料電池装置20との間の電気配線(例えば、非常時回路2である電気配線51,53)のいずれかの場所に電力メータを設置してもよい。この場合、配線に接続することにより電力が計測できる電力メータを使用する。例えば、電気配線51に電力メータを配置した場合、電気配線51に通電している際の消費電力が所定値(例えば、案内灯18の消費電力以上)よりも高くなった場合、非常用コンセント15が使用されたと判断してもよい。
【0066】
(3)上記実施形態では、非常用コンセント15は1つだけ設置したが、非常用コンセント15は複数個設置してもよい。その場合、それぞれの非常用コンセント15に案内灯18を設ければよい。それぞれの非常用コンセント15に電力メータ17を設置すれば、それぞれの使用に応じて各案内灯18の点灯又は消灯が制御できる。そして、この場合、表示部23bにおける非常用コンセント15の場所の表示について、各案内灯18の消灯に対応させて表示又は非表示としてもよいし、全ての非常用コンセント15が使用(全ての案内灯18が消灯)された後に一括で非表示としてもよい。
【0067】
(4)上記実施形態では、操作部23aに設けられたスイッチ23cの押下操作により自立運転へと切り換わる構成としたが、例えば、表示部23bをタッチパネル式ディスプレイとして、当該ディスプレイに表示されたコマンドをタッチすることにより自立運転へと切り換わる構成としてもよい。
【0068】
(5)上記実施形態では、非常用コンセント15の使用が確認されてから表示部23bのバックライト23dの光強度を下げているが、例えば、自立運転への切り換えがされたと同時にバックライト23dの光強度を下げてもよい。これにより、停電時における居住者の操作部23aへの誘導という効果を確保しつつ、リモコン23に備えられた電池が節約できる。
【0069】
(6)上記実施形態では、表示部23bのバックライト23dの光強度を調節することにより表示部23bを発光させているが、発光手段としてはこれに制限されない。例えば、発光手段としてはLED等のランプであってもよく、この場合、非常時には赤色のランプを点灯させる構成としてもよい。
【0070】
(7)上記実施形態では、案内灯18は非常用コンセント15付近に一つだけ設けられているが、例えば、リモコン23から非常用コンセント15の設置場所(部屋)までの経路に複数の案内灯18を設置してもよい。例えば、居室11と居室12とが廊下を介して行き来できる設定である場合、居室12のうち廊下に近いところに案内灯18を設け、廊下のうち居室11に向かう側に案内灯18を設け、更に居室11のうち非常用コンセント15に近い位置に案内灯18を設ける。これにより、案内灯18をたどって進むだけで非常用コンセント15の設置場所まで誘導され、容易に非常用コンセント15までたどり着ける。
【0071】
(8)上記実施形態では、案内灯18は通常時に使用される照明とは別に設けられているが、通常時に使用される照明を案内灯18としてもよい。この場合、案内灯18は、電力供給の回路として、非常時回路1だけでなく通常時回路も有する。例えば、
図3に示されるように、案内灯18は、分電盤32から電気配線43を介してスイッチ28へと接続される。スイッチ28は、通常時に照明として使用する際に、居住者が操作するスイッチである。スイッチ28がオンとされると、電気配線43は電気配線44と接続され、電気配線44はスイッチ29へと接続される。
【0072】
スイッチ29は、案内灯18への電力供給先を分電盤32とするか、又は燃料電池装置20からとするかを切り換えるスイッチである。すなわち、スイッチ29をG位置とした場合、電気配線43,44と電気配線54とが接続されて、分電盤32から案内灯18へと電力が供給される。この場合、スイッチ28により案内灯18の点灯をオンオフすることができ、案内灯18は通常時における照明として利用できる。スイッチ29をH位置とした場合、電気配線54と電気配線53とが接続され、燃料電池装置20から案内灯18へと電力が供給される。スイッチ28は、電気配線53,54の経路ではなく、分電盤32とスイッチ29との間に設けられているため、スイッチ28のオンオフは非常時回路1に影響を与えない。これにより、停電時に案内灯18を点灯することができる。
【0073】
通常時に使用される照明を案内灯18とする場合においても、リモコン23から非常用コンセント15の設置場所(部屋)までの経路に存在する複数の通常時使用の照明を案内灯18としてもよい。
【符号の説明】
【0074】
10…建物、15…非常用コンセント部としての非常用コンセント、16…通電報知手段としてのランプ、17…給電検知手段としての電力メータ、18…案内灯、20…分散型電源を構成する燃料電池装置、23c…操作手段としてのスイッチ、23b…表示手段としての表示部、23d…発光手段としてのバックライト、26…切換手段としての切換スイッチ、27…切換スイッチ、31…商用電源、32…分電盤、42,51,52…系統連系運転のための電気配線、51,53,54…自立給電ラインを構成する電気配線。