(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】単為結実植物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20220207BHJP
A01H 1/02 20060101ALI20220207BHJP
A01H 1/06 20060101ALI20220207BHJP
A01H 5/00 20180101ALI20220207BHJP
A01H 5/08 20180101ALI20220207BHJP
A01H 5/10 20180101ALI20220207BHJP
A01H 6/82 20180101ALI20220207BHJP
A23L 2/02 20060101ALI20220207BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20220207BHJP
A23L 23/00 20160101ALI20220207BHJP
A23L 27/12 20160101ALI20220207BHJP
A23L 27/60 20160101ALI20220207BHJP
C12N 15/29 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
C12N15/09 110
A01H1/02 Z
A01H1/06
A01H5/00 A
A01H5/08
A01H5/10
A01H6/82 ZNA
A23L2/02 F
A23L19/00 Z
A23L23/00
A23L27/12
A23L27/60 B
C12N15/29
(21)【出願番号】P 2018537811
(86)(22)【出願日】2017-01-19
(86)【国際出願番号】 IL2017050078
(87)【国際公開番号】W WO2017125931
(87)【国際公開日】2017-07-27
【審査請求日】2020-01-16
(32)【優先日】2016-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509219903
【氏名又は名称】ザ ステイト オブ イスラエル ミニストリー オブ アグリカルチャー アンド ルーラル ディベロップメント アグリカルチュラル リサーチ オーガニゼイション (エー.アール.オー.) (ボルカニ センター)
【氏名又は名称原語表記】THE STATE OF ISRAEL, MINISTRY OF AGRICULTURE & RURAL DEVELOPMENT, AGRICULTURAL RESEARCH ORGANIZATION (ARO)(VOLCANI CENTER)
【住所又は居所原語表記】Volcani Center, P.O. Box 15159, Rishon-LeZion, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バーグ リヴカ
(72)【発明者】
【氏名】ソルツ イェヒアム
(72)【発明者】
【氏名】クラップ チェン
(72)【発明者】
【氏名】アラジ イツァーク
(72)【発明者】
【氏名】イェシャヤフ エスター
(72)【発明者】
【氏名】ボルガー アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】シャブタイ サラ
【審査官】中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】農業生産技術管理学会誌, 2011, vol.18, no.2, p.67-73
【文献】Takisawa et al., BMC Plant Biology, 2018, 18:72
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
A01H1/00-17/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
条件的単為結実を示し、果実収量の少なくとも80%にホメオティック遺伝子異常がなく、且つAGL6遺伝子のコード配列中に機能喪失変異を含む、トマト植物。
【請求項2】
下記特性の少なくとも1種をさらに示す、請求項1に記載のトマト植物。
(i)非単為結実トマトの受精可能条件下において、植物当たりの果実収量が、同じ遺伝的バックグラウンドの非単為結実トマトの植物当たりの果実収量と同一またはそれ以上である、
(ii)非単為結実トマトの受精可能条件下において、植物当たりの平均果実重量が、同じ遺伝的バックグラウンドの非単為結実トマトの植物当たりの平均果実重量と同一またはそれ以上である、
(iii)ゼリー部を含む、
(iv)種なし果実内の肥大した胚珠が非受精子房から発生したものである。
【請求項3】
前記果実収量が、成熟果実収量である、請求項1または2に記載のトマト植物。
【請求項4】
加工用のトマトである、請求項1または2に記載のトマト植物。
【請求項5】
有限成長型のトマトである、請求項1または2に記載のトマト植物。
【請求項6】
無限成長型のトマトである、請求項1または2に記載のトマト植物。
【請求項7】
半有限成長型のトマトである、請求項1または2に記載のトマト植物。
【請求項8】
選良品種である、請求項1~7のいずれか一項に記載のトマト植物。
【請求項9】
トランスジェニックである、請求項1~8のいずれか一項に記載のトマト植物。
【請求項10】
前記トマト植物が、リコペルシコン・エスカレンタム、リコペルシコン・セラシフォルメ、リコペルシコン・ピムピネリフォリウム、リコペルシコン・チーズマニイ、リコペルシコン・パルビフロルム、リコペルシコン・クミエレウスキィ、リコペルシコン・ヒルストゥム、リコペルシコン・ペネリィ、リコペルシコン・ペルビアヌム、リコペルシコン・チレンセおよびソラヌム・リコペルシコイデスからなる群から選択される種である、請求項4~8のいずれか一項に記載のトマト植物。
【請求項11】
前記トマト植物が、1果房1果のトマト、分枝状のトマトおよびチェリートマトからなる群から選択される、
請求項4~8および10のいずれか一項に記載のトマト植物。
【請求項12】
前記条件的単為結実が、熱ストレス下または冷ストレス下で生じる、請求項1~11のいずれか一項に記載のトマト植物。
【請求項13】
自殖系統である、請求項1~12のいずれか一項に記載のトマト植物。
【請求項14】
前記機能喪失変異が、ホモ接合型である、請求項1~13のいずれか一項に記載のトマト植物。
【請求項15】
AGL6遺伝子の発現を抑制するためのサイレンシング作用因子を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のトマト植物。
【請求項16】
メガヌクレアーゼ、RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼおよびTALENからなる群から選択されるヌクレアーゼを外因的に発現する、請求項14に記載のトマト植物。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のトマト植物の果実。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか一項に記載のトマト植物の種子。
【請求項19】
請求項1に記載のトマト植物の交雑種子。
【請求項20】
請求項1~16のいずれか一項に記載のトマト植物またはその果実の、食用加工品。
【請求項21】
トマトペースト、ケチャップ、トマトソース、トマトスープ、トマトジュース、トマトパウダー、ダイストマト、クラッシュトマト、チョップドトマトおよびトマト濃縮物からなる群から選択される、請求項20に記載の加工品。
【請求項22】
請求項1~16のいずれか一項に記載のトマト植物の製造方法であって、前記トマト植物のAGL6遺伝子の発現または活性を下方制御し、前記トマト植物のAGL6遺伝子内の変異を検出することを含む、方法。
【請求項23】
前記下方制御を、前記トマト植物のRNAサイレンシング作用因子を用いた処理によって実施する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記下方制御を、前記トマト植物のDNA編集因子を用いた処理によって実施する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
請求項1~16のいずれか一項に記載のトマト植物を自家受粉または交雑させることを含む、育種方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、単為結実植物およびそれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
受精後の果実形成は、植物の生活環を完了させるために必須である。トマトにおいて、子房は、花器官の残部と連携して発生し(Gillaspy et al. 1993による、成長期I)、開花期の直前(1~2日前)に細胞分裂を停止し、「子房停止」状態に入る。受精が成功裏に完了した場合にのみ、若い胚によって製造されると考えられるシグナルが、子房が成長を再開することを促す。この成長は、最初に、7~10日間の急速な細胞分裂および増殖期(第II期と呼ばれる)を含み(Varga and Bruinsma 1986、Bohner and Bangerth 1988)、その後(第III期において)、成長は、核倍数体化と同時の細胞拡大によって主に駆動される(Joubes and Chevalier 2000およびその参考文献)。十分な大きさに到達すると、熟化プロセスが開始する。
【0003】
受精依存性果実形成のデフォルトプログラムは、無益な器官発生の持続によって資源を消耗しないことで、植物の適応度を保護する。あるいは、単為結実、すなわち、受精非依存性の種なし果実の形成は、栄養繁殖ができないすべての野生種において、非生産的形質である。しかし、種子の発生なしに果実形成を可能にする変異は、いくつかの理由から、トマトを含む多数の作物の現代の育種ではかなり重要である。
【0004】
第1に、小胞子形成プロセスおよび成熟した雄性生殖体は、中程度に高いまたは低い温度や、極端な湿度または光強度に対して、極めて感受性が高い(El Ahmadi and Stevens 1979、Picken 1984、Sato et al 2006)。これは、トマト、トウガラシ(カプシカム・アナム)、ナス(茄子(aubergine))(ソラヌム・メロンゲナ)およびメロンを含む多数の重要な野菜作物の圃場条件下での年間を通した受精依存性果実収穫の主要な障害である。結果として、受粉非依存性果実収穫のための育種が、特に、多様な環境条件下での持続的農業の維持において、有用な目標と考えられている(Gorguet et al. 2005、Ruan et al 2012、Ariizumi et al 2013、Shinozaki and Ezura 2016)。
【0005】
第2に、スイカ、ブドウ、柑橘類、リンゴ、ナシ、イチジク、ナス、キュウリ、カボチャ、トマト(特に、チェリートマト)、バナナおよび種々のサボテンの実を含む多様な果実について、種子によって品質が損なわれると考える気難しい消費者を対象とした選良栽培品種において、種なしは望ましい形質である。
【0006】
第3に、特定のケースにおいて、果実品質を改善することがわかった。例えば、トマトでは、種なしは、総可溶性固形物含量の増加と関連することが報告されており(Falavigna et al. 1978、Casas Diaz et al. 1987、Ficcadenti et al. 1999、Carmi et al 2003)、これは明らかに、果実の果肉から種子に再配置される同化産物が少なくなるためである。種なしは、種子が老化関連ホルモンの供給源であると推定されるため、種なしであることは、スイカ果実の老化および劣化を遅延すると報告された(Adelberg et al 1997)。
【0007】
第4に、種なしは、加工品から種子を取り分けるために投資されるエネルギーを節約することができるので、トマトペースト、スパイスとしてのパプリカ、およびメロンの缶詰などの加工品用に栽培された作物にとって有利な性質となり得る。
【0008】
最後に、単為結実は、品種の保護において役立つので、種子会社にとって有益であり得る。
【0009】
単為結実の恩恵を受けることのできるトマトおよびその他の野菜は、一般に種子から繁殖される。これは、受精の成功後に種あり果実が発生できる場合、条件的単為結実の唯一の遺伝資源(Varoquaux et al 2000)には実用的な価値があるためである。トマトにおける条件的単為結実について、現在最も広範に特徴付けられている非トランスジェニックな遺伝資源は以下の通りである。3種の一遺伝子性の遺伝資源であるpat(Beraldi et al., 2004、おそらくは変異したSolyc03g120910、Selleri 2011)、procera(変異したSlDELLA、Bassel et al., 2008)およびentire(変異したSlAUX/IAA9、Mazzucato et al., 2015、Saito et al., 2011)は、いずれも望ましくない多面的な効果を示す。3種の二遺伝子性の遺伝資源である、pat-2(Hazra and Dutta, 2010、Vardy et al., 1989b)、IL5-1およびIVT-line1(Gorguet et al., 2008)は、いずれも、許容可能な単為結実表現型を示す。pat-2は、有限成長的な習性との関連が報告されており(Lin et al 1984)、果実の大きさは、通常、反復親のものよりも幾分小さい(Vardy et al 1989b)。さらにpat-3/pat-4は劣性主働遺伝子の遺伝資源である(Nuez et al., 1986、Philouze and Maisonneuve, 1978、Vardy et al 1989b)。この形質の重要性にも関わらず、育種プログラムにおけるこれら変異体の利用は依然としてかなり限定されている。それらのうちのいくつかは、軽度にまたは重度に望ましくない多面的な効果と関連している(例えば、Ariizumi et al., 2013、Carrera et al., 2012、Lin et al., 1984、Mazzucato et al., 1998、Philouze 1989、Shinozaki and Ezura 2016)。二遺伝子性の遺伝資源の浸透性交雑はより骨の折れるものであり、それは特にこれら3種の二遺伝子性の遺伝資源の根底をなす遺伝子が、これまでのところ同定されていないためである(Shinozaki and Ezura 2016)。
【0010】
MADSボックス遺伝子は、花および果実の発生を調節するとこれまでに報告されている(Yao 2001, Proc. Natl. Acad. Sci. 98(3):1306-1311、Rijpkema et al. Plant J. 60(1):1-9、Wang et al. 2009 Plant Cell. 21:1428-1452)。しかし、MADSボックス遺伝子を遺伝子修飾したトマトにおいて、真の単為結実が観察されたことはない(例えば、Pnueli et al 1994 Plant Cell 6(2):163-173、Amporah-Dwamena et al., Plant Physiol. 2002 130(2):605-17、Pan et al 2010, J. Exp. Bot. 61:1795-1806)。これは、たとえ単為結実が観察されたとしても、受精の不在下で種子のない正常な果実の発生をもたらすのではなく、常に重度のホメオティック遺伝子の異常が現れたためである。
【0011】
その他の種では、SlAGL6と相同の遺伝子のサイレンシングまたは変異は、単為結実を引き起こさなかった。例えば、単為結実が報告されていないペチュニア(Rijpkema et al. Plant J. 60(1):1-9)や、開花および分枝までの時間に影響を及ぼしたが単為結実を引き起こさなかったシロイヌナズナ(Koo et al 2010)である。そのクロタネソウ(Nigella damascene)相同体のノックダウンは、A機能を表す萼片および花弁構造に影響を及ぼしたものの、単為結実は報告されなかった(Wang et al., 2015)。イネでは、花の形態に重度の変更を引き起こし(Zhang et al 2010、Duan et al 2012)、本発明者らがトマトにおいて観察した表現型とは極めて異なっている(種子が産物であるイネでは、単為結実についていずれにせよ真剣に話すことができない)。
【0012】
さらなる関連背景技術:
米国特許出願第20100146656号明細書
米国特許出願第20090089902号明細書
米国特許出願第20030217391号明細書
米国特許出願第20070250945号明細書
米国特許第6,268,552号明細書。
【発明の概要】
【0013】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、条件的単為結実を示し、且つAGL6遺伝子に機能喪失変異を含む、トマト、トウガラシおよびナスからなる群から選択されるナス科植物が提供される。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、トマト、トウガラシおよびナスからなる群から選択されるナス科植物であって、条件的単為結実を示し、且つ植物当たりの平均果実重量が、同じ遺伝的バックグラウンドの非単為結実トマトの植物当たりの平均果実重量とほぼ同一またはそれ以上である、ナス科植物が提供される。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によれば、下記特性の少なくとも1種をさらに示す、ナス科植物が提供される。
(i)非単為結実トマトの受精可能条件下において、植物当たりの果実収量が、同じ遺伝的バックグラウンドの非単為結実トマトの植物当たりの果実収量とほぼ同一またはそれ以上である、
(ii)非単為結実トマトの受精可能条件下において、植物当たりの平均果実重量が、同じ遺伝的バックグラウンドの非単為結実トマトの植物当たりの平均果実重量とほぼ同一またはそれ以上である、
(iii)前記ナス科植物がトマトであるとき、ゼリー部を含む、
(iv)前記果実収量の少なくとも80%にホメオティック遺伝子異常がない、
(v)種なし果実内の肥大した胚珠が非受精子房から発生したものである。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によれば、果実収量は、赤色果実収量である。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態によれば、植物は、トマトである。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によれば、植物は、加工用のトマトである。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、植物は、有限成長型のトマトである。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によれば、植物は、無限成長型のトマトである。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によれば、植物は、半有限成長型のトマトである。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によれば、植物は、選良品種である。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によれば、植物は、トランスジェニックである。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によれば、トマトは、リコペルシコン・エスカレンタム、リコペルシコン・セラシフォルメ、リコペルシコン・ピムピネリフォリウム、リコペルシコン・チーズマニイ、リコペルシコン・パルビフロルム、リコペルシコン・クミエレウスキィ、リコペルシコン・ヒルストゥム、リコペルシコン・ペネリィ、リコペルシコン・ペルビアヌム、リコペルシコン・チレンセおよびソラヌム・リコペルシコイデスからなる群から選択される種である。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によれば、トマトは、1果房1果のトマト、分枝状のトマトおよびチェリートマトからなる群から選択される。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、条件的単為結実は、熱ストレス下または冷ストレス下で生じる。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によれば、植物は、自殖系統である。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によれば、植物は、AGL6遺伝子に機能喪失変異を含む。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によれば、機能喪失変異は、ホモ接合型である。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によれば、植物は、AGL6遺伝子の発現を抑制するためのサイレンシング作用因子を含む。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によれば、植物は、メガヌクレアーゼ、RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼおよびTALENからなる群から選択されるヌクレアーゼを外因的に発現する。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、植物の果実が提供される。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、植物の種子が提供される。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、種子は、交雑種子である。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、植物またはその果実の食用加工品が提供される。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、加工品は、トマトペースト、ケチャップ、トマトソース、トマトスープ、トマトジュース、トマトパウダー、ダイストマト、クラッシュトマト、チョップドトマトおよびトマト濃縮物からなる群から選択される。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、植物を製造する方法であって、植物のAGL6遺伝子の発現または活性を下方制御することを含む方法が提供される。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によれば、下方制御は、植物またはその再生可能部位の、変異誘発物質を用いた処理によって実施する。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態によれば、下方制御は、植物の、RNAサイレンシング作用因子を用いた処理によって実施する。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によれば、下方制御は、植物の、DNA編集因子を用いた処理によって実施する。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、方法は、植物の自家受粉または交雑を含む。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、植物を自家受粉または交雑させることを含む育種の方法が提供される。
【0043】
別段定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および/または科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において記載されるものと同様または同等の方法および材料を、本発明の実施形態の実施または試験において使用できるが、例示的方法および/または材料を以下に記載する。矛盾する場合には、定義を含む本特許明細書が優先される。さらに、材料、方法および実施例は、単に例示的なものであって、必ずしも制限を意図するものではない。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態を、添付の図面を参照して、単に例として本明細書において記載する。以下、図面の詳細に具体的に参照するが、ここに示す特徴は例示であり、本発明の実施形態の例示的考察を目的とするものであることを強調する。これに関して、図面を伴う説明は、本発明の実施形態をいかに実施し得るかを当業者に明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】
図1A~
図1Iは、変異体2012が、極端な熱ストレス下で、単為結実性の果実結実を可能にすることを示す図である。単為結実BC
1F
2後代は、2010年の極めて暑い夏(7月~8月)の間に発生した花から高品質な果実を結実し、それを2010年9月20日に収穫した。
図1A~C)M82系統植物は、正常な果実を全く付けることなく、非常に小さい、中に隙間のある「堅果状(nuts)」の小果実のみを付けた。それに比べて
図1D~F)では、BC
1F
2集団の単為結実同胞が、同一条件下で多数の赤い高品質果実を結実した。翌夏には形質の安定性が確認された。BC
1F
2後代を、2011年の晩夏に栽培した。
図1G)単為結実同胞は、高品質な赤く熟した果実を結実したが、
図1H)非単為結実同胞は、非常に小さい「堅果状」の果実、または数個の種子を有する数個の小さい空洞果しか結実しなかった。果実は2011年9月27日に収穫した。
図1I):2011年9月27日に収穫した単為結実赤色果実の重量は、非単為結実同胞から収穫した、大部分が緑色の果実よりも有意に高かった(t検定、p<0.001)。
【
図2】
図2A~
図2Bは、SLAGL6を説明する図である。(
図2A)MADSボックスタンパク質SlAGL6のタンパク質配列。MADSボックスは、濃い灰色で強調されており、Kボックスは、明るい灰色で強調されている。(
図2B)SlAGL6のORF;代替エキソンには、実線および破線によって下線が引かれている。変異体2012の根底にあるC268/t変異には印がつけられている。CRISPR/cas9修飾のために選択した標的ガイド配列は、配列の上の濃い黒色線によって示されており、隣接するPAM(その逆相補体)は、破線によって表されており、矢頭は、Cas9切断標的部位を記し、Cas9誘発変異によって破壊されると予測されるAclI制限部位(AACGTT)は、灰色で強調した。
【
図3】
図3A~
図3Fは、CRISPR/cas9によって誘導されたSlAGL6の変異対立遺伝子の植物ホモ接合体における単為結実を示す図である。
図3A):親の野生(WT)系統MP-1の種あり果実。
図3B)両アレルの変異を保持するR
0植物sg4のsg4-2 R
1後代の種なし果実。
図3C)R
0植物sg1に見られる変異型のホモ接合性後代であるsg1-21の種なし果実、対、
図3D)種あり果実のみを付けるヘテロ接合性同胞後代であるsg1-20の果実。
図3E)R
0植物sg5に見られる変異型のホモ接合性後代であるsg5-101の種なし果実、対、
図3F)種あり果実のみを付けるヘテロ接合性同胞後代であるsg5-39の果実。遺伝子型の説明では、(+)は野生型対立遺伝子を表し、(m)は、誘導されたSLAGL6のすべての異なるその変異型を表す。
【
図4】
図4A~
図4Cは、雄蕊除去した、および雄蕊除去していない単為結実性果実の胎座で発生した、同様に肥大した胚珠を示す図である。
図4A)単為結実CRISPR誘導植物sg5-79(m/m)の花を、開花期前に雄蕊除去し、色付きタグによって印をつけた(上部パネルの右側にある果実)。同じ植物で発生した雄蕊除去した果実と雄蕊除去していない果実とから採取した肥大した胚珠については、大きさおよび外観に違いはなかった(中央パネル)。
図4B)比較のために、ヘテロ接合性同胞であるsg5-52から採取した種子を示す。この果実は、極めて少数の種子しか有さないため非常に小さく、さらにその種子は、高温ではなく周囲温度下で発生させた果実中で発生したものよりも小さい(データは示さず)。
図4C)中央列パネルに示したよりも高倍率で示した胚珠。ここに示した果実はすべて同日、即ち、2015年9月30日に採取したものである。
【
図5】
図5A~
図5Cは、SNP3番(SlAGL6)の種々の遺伝子型を有する2012BC
2F
2植物、および親系統M82の収量解析を示す図である。(
図5A)単為結実植物は、より集中した果実発生および熟化を明確に示したことから(
図6A~Fを参照のこと)、変異した遺伝子型の生産能力に対する効果を評価するために、少なくともほぼ緑熟期に達したすべての果実の収量をここに示す解析に含めた。その結果、2012の種々の遺伝子型は、総生産力においては、M82と変わらなかった。(
図5B)単為結実植物(m/m)の市場性のある赤色果実の収量は、系統M82や、SNP3番についてホモ接合性ではない同胞の収量よりも有意に(p<0.001)高かった。(
図5C)単為結実植物(m/m)由来の赤色果実の平均重量は、親系統M82よりも有意に高い、唯一の特性であった。各パネルにおいて、異なる小文字のアルファベットを付した棒同士は有意に異なるものである。
【
図6】
図6A~
図6Fは、2012BC
2F
2集団の代表的な単一植物から収穫した果実を示す図である。変異したSNP3番(agl6)のホモ接合体は、果実の急速且つ均一な熟化によって特徴付けられる。上部の4つのパネルに、特定した遺伝子型の単一植物から収穫した果実の総収量(非常に小さい「堅果」を除く)を示した。明確に示されるように、M82(
図6A)、野生型対立遺伝子(+/+)についてホモ接合性(
図6B)またはSNP3番についてヘテロ接合性(
図6C)のいずれかであるBC
2F
2植物とは異なり、(m/m)植物(
図6D)の果実の大部分が赤く熟している。すべての植物を同日(2014年6月10日)に収穫した。その収穫の前に植物を調べたところ、(m/m)植物の収穫期が集中的である(
図6F)のに対して、(+/m)植物においては果実発生が集中的ではない(
図6E)ことが明確に可視化された。
【
図7】
図7A~
図7Nは、親系統MP-1およびSlAGL6変異系統sg1-8の(R
2での)外観の比較を示す図である。
図7A)植物は、成長習性において違いはない。
図7B)葉の形状は類似している、スケール=8cm。
図7C)第1花序は、同様の数の本葉後に現れた(マン・ホイットニー順位和検定、P=0.371)。
図7D)花は、sg1-8の花弁が、MP-1のものよりも淡く、幾分か狭く長い点を除いて同様である。花粉稔性は、MP-1(
図7E)およびsg1-8(
図7F)において同様である。同様に伸長した花粉管を有する、in vitroで発芽した花粉粒を18時間のインキュベーション後に撮影したもの、スケール=100μm。
図7G~N)系統sg1-8(
図7G~J)の単為結実果実の果皮は、同様の重量および大きさのMP-1(
図7K~N)の種あり果実のものと同様である(
図7Gと
図7K、スケール=2cm)。
図7H、L)果皮は、類似した幅および形状である、スケール=1000μm。維管束周縁部と外皮(外果皮)との間の層中の細胞(
図7I、
図7M)と、維管束周縁部と内皮(内果皮)との間の細胞(
図7J、N)とは、外観が類似しており、
図7I、7J、7M、7Nのスケール=500μm。写真(
図7H~JおよびL~N)は、
図7Gおよび
図7K中に示されるほぼ成熟した緑色果実の中央(赤道)から取った薄いフリーハンドの横断面の、倒立光学顕微鏡下で撮影された写真である。系統sg1-8は、SlAGL6に変異を有し、Cas9カセットを欠き、表4Aに示した変異sg1を保持する。
【
図8】
図8A~
図8Dは、2012 BC
2F
2(m/m)単為結実果実の代表的な形状を示す図である。(
図8A)「ガンバ(Gamba)様」の大きな果実。(
図8B)楕円形の果実であり、上のパネル-長軸方向側面図、下のパネル-横方向の切断面であり、最大の果実は種なしであり、より小さいものは数個の種子を有し、そのうちのいくつかに矢印を付した。(
図8C)同様の大きさの多数の楕円果実が1つの房に発生し、12個のうち9個が赤熟期であり(左側のパネル)、同じ植物の果実の横断面である(右側パネル)。(
図8D)M82種あり果実との比較。すべてのパネルにおいて、スケール=10cm。
【
図9】
図9A~
図9Bは、より大きな果実をもたらすバックグラウンドにおける、2012変異の顕現化を示す図である。(
図9A)マルマンデ(Marmande)と、変異したSNP3番(Slagl6)についてホモ接合性の単為結実2012植物との間の交雑で得られたF
2後代における、平均果実重量(g)および種なしの分布。変異したSNP3番についてホモ接合性の後代のみを、親系統の単一植物の平均果実重量と比較して提示した。灰色の棒にによって表されるF
2植物は、種なし果実を付けた。アスタリスク(
*)を含む棒は、(
図9B)に果実を示したものである。植物521番の単為結実果実の一部は、マルマンデ果実と大きさおよび形状が類似している点に留意されたい。スケール=10cm。
【
図10】
図10は、親系統MP-1と比較した、CRISPR/Cas9 SlAGL6変異系統sg1のR
1後代の、種あり果実、種子が不十分な果実および種なし果実の平均重量を示す図である。「1-H all」(すべてのヘテロ接合性sg1後代の種あり果実の平均重量)と同様の小文字のアルファベットが付記された中白の棒(単為結実果実)には、有意差はない(t検定、p<0.05)。「MP-1-all」の棒(MP-1植物の種あり果実の平均重量)とは異なる数字が棒の内側に付記された中白の棒(単為結実果実)には、有意差が見られた(t検定またはマン・ホイットニー検定によるp<0.05)。同じAの文字が内側に付記された棒の間に有意差はない(分散分析、多重範囲検定)。
【
図11】
図11は、SlAGL6の2012変異対立遺伝子がホモ接合性の植物と、sg1変異対立遺伝子がホモ接合性の植物との間の交雑種が、種なし果実を産生したのに対して、同じ2012植物と、MP-1(野生型)との間の交雑種は、種あり果実のみを産生することを示す図であり、2012と、SlAGL6のsg1変異型の対立性を証明する。
【
図12】
図12は、花の雄蕊除去または震盪なしのときの、SlAGL6の3種の異なるCRISPR誘発変異体sg1、sg4およびsg5によって示された単為結実の条件的性質を示す図である。
【
図13】
図13A~
図13Hは、Slagl6単為結実が、熱ストレス下での収量を改善することを示す図である。系統MP-1と比べて、系統sg1は、下記について有意である。
図13A)赤色果実の収量、
図13B)赤色果実の数、
図13C)赤色果実の重量および
図13D)Brix。一方、
図13E)果実のpHは変わらなかった。
図13A~Eに示されたデータは、材料および方法において詳述されるように、4回の反復実験から得られたものである。
図13Fと
図13G)収穫前に部分的に葉を取り除き、撮影した、MP-1植物(
図13F)とsg1植物(
図13G)との間の、実付きの違い。
図13H)MP-1およびSlagl6系統sg1の収量を比較した際の、2016年夏の間の主要な熱ストレス条件。2016年4月20日にネットハウス内に実生を植え付け、2016年6月26日に最初の収穫を行った(
図13A~
図13E中のデータは、この収穫から得た)。2016年5月14日~16日の間の例外的に高い日中および夜間の温度に留意されたい(
図13H)。系統sg1は、(R
2では)sg1変異についてホモ接合性であり、Cas9カセットを欠く。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、単為結実植物およびその製造方法に関する。
【0047】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明または実施例によって例示される詳細によって、その用途が必ずしも制限されるものではないことを理解されたい。本発明は、その他の実施形態、または種々の方法による実行または実施が可能である。また、本明細書で使用する表現および用語は、説明を目的とするものであり、限定とみなすべきではないことも理解されたい。
【0048】
本発明を実施化するに当たり、本発明者らは、MADSボックス遺伝子であるAgamous様6(SlAGL6)の(種々の)変異対立遺伝子が、トマトに条件的であるが強力な単為結実を付与し、且つ目に見える多面的な効果を全く伴わないことから、トマトにおける単為結実のための新規な有用な遺伝資源となることを明らかにした。
【0049】
具体的には、本発明者らは、有限成長型処理栽培品種M82をバックグラウンドとして作製された、EMS変異誘発トマト集団から見出された単為結実2012変異体は、初めの89aaの後に未成熟な停止コドンを有する変異SlAGL6遺伝子によって引き起こされることを確立した。その同定は、NGSデータの生物情報科学解析と、それに続く、SNPの分子マーカー補助マッピングに基づくものである(表1、2、3;
図1A~
図1I、
図5A~
図5C、
図6A~
図6F、
図8A~
図8D)。この知見は、SlAGL6を選択的に変異させるためにCRISPR/cas9技術を利用して、de novoで同じ単為結実表現型を作製すること(
図2A~
図2B)、および無限成長系統MP-1のバックグラウンドにおいて同様に作製すること(表4のB、表5、表6、
図3A~
図3F)によって実証された。ホモ接合性2012とホモ接合性CRISPR変異体sg1との間のF
1交雑種が、種なしの後代を生成したことによって、ホモ接合性2012が変異SlAGL6であることのさらなる証拠が提供された。
【0050】
ホモ接合状態における当該変異は、ホモ接合性状態において変異を保持しない植物の収量を著しく妨害する慢性熱ストレス下(
図13A~C)、ならびにホモ接合性状態において変異を保持しない植物からの収穫を実質的に妨げる極端な熱および冷条件下(
図1)の両方において、果実形成を可能にする(
図13H)。
【0051】
当該変異は植物の生産能力(
図5A~C)または植物の栄養発生に悪影響を及ぼさない。有限成長をバックグラウンドとした場合、収穫期の集中性を向上させる(
図5A~
図5C、
図6A~
図6F)。これは、圃場で栽培した後、1回の機械的収穫によって回収することのできる、集中した作物の収穫をもたらすと期待される、有限成長加工用トマト栽培品種にとって最も重要な性質である。露地栽培には、花粉の発生に損傷を与え、したがって、市場性のある収量を大いに低減させる、短期間に大きく変動する温度への暴露といったリスクがある。これは、次に、継続的な開花の段階での産出を消滅させ、不均一な熟化および重度の収量損失をもたらす。このリスクは、Slagl6単為結実変異体では最小化される。当該変異は、極めて高いまたは低い温度下での無限成長系統MP-1における果実の結実および発生を可能にするため、商業的な半有限成長または無限成長の生鮮市場栽培品種へのその導入は、受粉制限環境条件下での開花による房から収量を失うことなく、数ヶ月にわたる、継続的な収穫を確実にする。
【0052】
重要なことに、本発明の実施形態をさらに考える中で、本発明者らは、新鮮果実を有するその他のナス科植物、すなわち、トウガラシおよびナスに対して、同様の教示を適用可能であることを認識した。したがって、本発明の実施形態によれば、各植物種は、独立した実施形態と考えられるが、本開示は、ナス科植物のこのサブクラスを対象とする。
【0053】
したがって、一態様によれば、条件的単為結実を示し、AGL6遺伝子に機能喪失変異を含む、トマト、トウガラシおよびナスからなる群から選択されるナス科植物が提供される。
【0054】
上記に代わり、または上記に加えて、トマト、トウガラシおよびナスからなる群から選択されるナス科植物であって、条件的単為結実を示し、且つ植物当たりの平均果実重量が、同じ遺伝的バックグラウンドの非単為結実トマトの植物当たりの平均果実重量とほぼ同一またはそれ以上である、ナス科植物が提供される。
【0055】
本明細書において使用される用語「植物」は、植物全体、接木された植物、植物の祖先および子孫植物とその部位(種子、シュート、茎、根、台木、若枝、ならびに植物の細胞、組織および器官)を包含する。植物はいかなる形態であってもよく、懸濁培養、胚、成長点領域、カルス組織、葉、配偶体、胞子体、花粉および小胞子が含まれる。
【0056】
トマト植物は、栽培された遺伝的バックグラウンドを有するものでも、野生型トマトの遺伝的バックグラウンドを有するものでもよい。
【0057】
本明細書において、用語「トマト」とは、ソラヌム・リコペリシクム種(同義語として、リコペリシコン・リコペリシクムまたはリコペリシコン・エスカレンタムが挙げられる)、またはリコペルシコン属の属名の下で以前は知られていた植物、系統または集団を指す。リコペルシコン属としては、L.セラシフォルム、L.チーズマニー、L.チレンセ、L.ケミエレウスキー、L.エスカレンタム(今では、S.ペンネリー)、L.ヒルスツム、L.パルビボルム、L.ペンネリー、L.ペルビアナム、L.ピンピネリフォリウムまたはS.リコペルシコイデスが含まれるが、これらに限定されるものではない。L.エスカレンタムの新規に提案された学名は、S.ペンネリーである。同様に、野生種の名称は変更されている場合がある。L.ペンネリーは、S.ペンネリーとなり、L.ヒルスツムは、S.ハブロカイテスとなり得、L.ペルビアナムは、S.「N ペルビアナム」とS.「カレジョンドヒューイレス」、またはS.ペルビアナムとS.コルネリオムエレリとに分けられ、L.パルビフロラムはS.ネオリッキーになり得、L.ケミエレウスキーはS.ケミレウスキーになり得、L.チレンスはS.チレンスになり得、L.チーズマニエはS.チーズマニエまたはS.ガラパゲンスになり得、L.ピンピネリフォリウムはS.ピンピネリフォリウムになり得る。
【0058】
一般に、栽培トマトとは、食用に適しており、商業的栽培の必要条件を満たす、例えば、通常、ソラヌム・リコペリシクムとして分類されるトマトを指す。トマト植物全体および果実などの食用に適した部分に加え、本発明は、繁殖に適した植物の部分または派生物を含む。繁殖に適した部分の例として、葉、茎、根、シュートなどといった器官組織、プロトプラスト、体細胞胚、葯、葉柄、培養細胞などが挙げられる。繁殖に適した派生物としては、例えば、種子が挙げられる。本発明における植物は、従来の様式で、また組織培養技術によって、植物の一部から栽培され、繁殖され得る。
【0059】
本発明は、家庭用のもの、生鮮市場トマトおよび加工用のトマトなどの任意のトマト栽培品種を使用することを目的とする。
【0060】
品種の選択は、市場の需要、地域的適応性、病害抵抗性および産物の最終用途に応じて変化する。生鮮市場トマトの例示的区分としては、これらに限定されるものではないが、ビーフ(Beef)(果実重量が約220~400g)、スタンダード(Standard)(果実重量が約160~220g)およびクラスター(Cluster)(均一な果実重量が約120~180g)が挙げられる。このような品種は、主要な種子企業、例えば、Grodena社、Macarena社、Estatio社、Zouk社、Climbo社およびClimstar社から入手可能であり、これらすべてがSyngenta社から入手可能である。他の品種は専売であるか、またはその他のベンダーから入手可能であり、このような品種としては、チェリーマイクロ(Cherry-micro)(最大5g)、ラウンドチェリー(round cherry)、ミニラウンドチェリー(mini round cherry)(7.5~15g)、ミニプラム縦長チェリー(mini plum elongated cherry)(10~25g)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような品種の例としては、クリエイティボ(Creativo)(Clause社)、バティコ(Batico)(Nirit seeds社)、シレン(Shiren)(Hazera Genetics社)が挙げられる。丸形および縦長のカクテル(Cocktail round and elongated)(25~40g):赤、黄色、オレンジ、ピンク、ゼブラ、チョコレートをバックグラウンドとする、ロマニタ(Romanita)、チェリー(Cherry)およびカクテル(Cocktail)が挙げられる。例としては、サマーサン(Summer sun)(Hazera Genetics社)、ブラックパール(Black pearl)(Burpee社)、ティティ(Tyty)(Tomodori社)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。有限成長および無限成長のローマ(Roma)である、120~200gのものの中間マーカーの例としては、ランセロット(lancelot)(Vilomorin社)およびパルシファル(Parsifal)(Vilomorin社)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ビーフ(220~400)、スタンダード(160~220)およびクラスター(120~180)に分けられたピンクトマトの例としては、モモタロウ(Momotaro)型、コル・ジ・ブエ(Cor di bue)トマト(150~350g)、ピントン(Pinton)(250~300g)、露地トマト-有限成長または半有限成長(180-400g)が挙げられる。
【0061】
加工用のトマトの例示的な栽培品種としては、ローマ、SUN6366、AB2、ハインツ(Heinz)9780、ハインツ9557、ハレー(Halley)3155およびハイペール(Hypeel)303が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
トマトの成長には2つの主要な様式である、有限成長および無限成長である。有限成長は、「ブッシュ」トマトを生成し、これは、コンパクトさを求めて品種改良されている。末端果実が成熟すると植物全体の成長を停止し、残りの果実のすべてほぼ同時に成熟し、次いで植物が枯死する。無限成長は、10フィートの高さに成長し得るトマト(いわゆる「バイニング(vining)」トマト)を生成し、(例えば、霜によって)死滅するまで成長する。その果実は、逐次成熟する。典型的な植物では、すべての成長は、モジール式仮軸単位の反復から生じ、当該単位は、3枚の葉と複数の花をつけた花序を産出する。M82を含む、トマトの大部分の圃場栽培品種は、有限成長型であり、そのシュートが平均6つの仮軸単位を産生し、当該単位の各々が単一花序を有し、そこでは成長の早期終結の前に、葉の数は徐々に減少する。一般に、有限成長型のトマトは、露地生産に適している。半有限成長型および無限成長型の「栽培」品種は、露地または保護ネット内での支柱栽培、および温室栽培に適している。
【0063】
本発明の一実施形態によれば、トマト植物は、有限成長型のトマトである。
【0064】
本発明の一実施形態によれば、トマト植物は、無限成長型のトマトである。
【0065】
本発明の一実施形態によれば、トマト植物は、半有限成長型のトマトである。
【0066】
一実施形態によれば、トマトは、1果房1果トマト、分枝状のトマトおよびチェリートマトからなる群から選択される。
【0067】
本明細書で使用される場合、「トウガラシ」とは、栽培種「カプシカム(本明細書において以下、「C」とする)・アナム」または野生種「C.プベスケンス」、「C.バッカツム」、「C.シネンセ」および「C.フルテセンス」を指す。さらに、「トウガラシ」は、「トウガラシ」以外の名称によって呼ばれる植物、例えば、「ピメント」、「パプリカ」および「アマトウガラシ」と呼ばれる園芸作物を包含する概念である。
【0068】
本明細書で使用される場合、「ナス」とは、栽培種「ソラヌム(本明細書において以下、「S」とする)・メロンゲナ」または野生種「S.インカナム」、「S.トルブム」、「S.ニグルム」、「S.エチオピカム」、「S.マクロカルポン」および「S.キトエンセ」を指す。
【0069】
用語「単為結実」、「単為結実果実形成」、「種なし」および「受精独立性果実形成」は、本明細書において同義的に使用されることを理解されたい。
【0070】
本明細書で使用される場合、「単為結実」とは、受精の不在下での果実生産を指す。したがって、いくつかの実施形態による単為結実果実は、種子がないまたは果実あたり5個未満の種子によって特徴付けられる。
【0071】
有性生殖能の維持は、種子を有する果実の生産から明らかとなる。
【0072】
例えば、トマトでは、種子を有する果実とは、果実あたりの種子数が少なくとも10個である、またはSlAGL6の野生型対立遺伝子を保持する同一栽培品種において産生される種子数の少なくとも15%と考えられる。
【0073】
条件的単為結実とは、非生物的ストレス条件等の受精制限条件下での種なし果実形成を指し、当該非生物的ストレス条件とは、例えば、温度ストレス(すなわち、熱または冷ストレス)、湿度、光強度などであり、急性および慢性のいずれもあり得る。
【0074】
一般に、最適温度からの5~15℃の逸脱は、受精依存性果実結実を妨害する。
【0075】
いくつかの例示的実施形態によれば、安定な果実結実のための一つの平均温度範囲は、以下の通りである:トマトは13~25℃、ナスは16~25℃、およびアマトウガラシは18~25℃である(Karapanos et al 2008、Kawasaki 2015に総説あり)。よって、冷ストレスとは、生育可能な花粉の産生を妨げるような低温である。大部分のトマト栽培品種にとって冷ストレスとは、夜間に3~4時間継続する10℃未満の温度を意味するが、特に、花粉発生の減数分裂期後、すなわち、開花日から-5~+2日の間では、12℃未満で既に生育力の低下が見られる。10℃未満の温度はまた、花粉の柱頭への粘着およびその発芽率や、花粉管伸長に損傷を与える(Picken 1984)。通常、熱ストレスは、温度が、植物の成長および発生にとって最適な温度を5~15℃上回って上昇するときに起こる(Sato et al 2006、Mesihovic et al 2016およびその中の参考文献)。トマトでは、品種によるが、36℃~38℃を超えた温度が2~4時間継続する日中温度および18~20℃以上の夜間温度が、小胞子形成のプロセスに損傷を与える。開花日から-9~-5日間は、2~4時間の35℃以上の熱ストレスに対して特に感受性が高く、果実結実の重度の低減につながる(例えば、
図13AにおけるMP-1系統を参照)。
【0076】
トウガラシでは、花粉産生のプロセスは、熱ストレスに対して感受性が高い。特に、小胞子母細胞減数分裂に相当する初期花発生の間(開花日前の14~17日)および小胞子成熟期、開花期および受粉期に相当する後期花発生の間(開花日から-2~0日)は、33℃の温度に対する曝露が、果実結実に対する最も重度の有害作用をもたらす(Erickson and Markhart 2002)。トウガラシ雄性稔性は、花芽が10℃以下に曝露された場合に重度の損傷を受ける。しかし、果実結実は、夜間温度が15.5℃未満または24℃を超える場合に、すでに損傷を受けている。ナスでは、作物は低温感受性が高く、果実結実は、10℃以下の夜間温度で損傷を受ける。花粉産生および受精はまた、小胞子形成の間の35℃を上回る温度で損傷を受ける(Karapanos et al 2008、Kawasaki 2015)。
【0077】
したがって、本発明のいくつかの実施形態によれば、受精依存性果実結実を妨害する、熱ストレスおよび冷ストレス条件のみならず、高湿度(≧90%)または低光強度下でも果実は産生される。
【0078】
ナス、トマトおよびトウガラシは、種子から繁殖させるので、条件的単為結実は、この場合には、高い商業的価値を有している。これに代わり、またはこれに加えて、花粉産生および/または受精を選択的に妨害する非生物的ストレス(例えば、中程度に極端な温度、極端に高いまたは低い湿度)または受精の妨害(例えば、遺伝的雄性不稔性)をもたらす任意のその他の条件下でさえ、果実の生成が可能となる。
【0079】
観察された表現型が見られることは、実施例の項で示すように、種々の遺伝的バックグラウンドを通じて明らかであり、果実重量の維持が、下記の単為結実果実において観察された:(i)有限成長栽培品種M82をバックグラウンドとする、2012 BC2F2分離集団、(ii)大果実の半有限成長栽培品種マルマンデと、単為結実2012植物との交雑によって誘導された分離F2集団、および(iii)無限成長MP-1系統をバックグラウンドとするCRISPR/Cas9誘導sg1系統のR1後代。
【0080】
本明細書で使用される場合、「AGL6」とは、開花期に向けて強いられる「子房停止」の状態と、受精によって引き起こされる果実結実との間の移行の鍵となる調節遺伝子である転写因子を指す。
【0081】
ナス科植物がトマトである場合、AGL6遺伝子は、SlAG6遺伝子、すなわち、Solyc01g093960コード配列、配列番号1、2、3である。
【0082】
ナス科植物がナスである場合、AGL6遺伝子は、Sme2.5_06058.1、配列番号7、8、9である。
【0083】
ナス科植物がトウガラシである場合、AGL6遺伝子は、Capana01g001334(Chr01-44476983-44483323)、配列番号4、5、6である。
【0084】
当業者ならば、栽培品種内の種々の栽培品種の配列情報を明らかにする方法を承知しているであろう。
【0085】
本明細書で使用される場合、語句「機能喪失変更」とは、遺伝子(この場合には、AGL6)のDNA配列における任意の変異であって、発現産物、すなわち、mRNA転写産物および/または翻訳されたタンパク質の発現レベルおよび/または活性の下方制御をもたらすものである。このような機能喪失変更の例としては、ミスセンス変異、すなわち、タンパク質中のアミノ酸残基を別のアミノ酸残基に変更し、それによって、タンパク質の調節活性を無効にする変異;ナンセンス変異、すなわち、タンパク質中に停止コドン(例えば、調節活性を欠くより短いタンパク質をもたらす早期停止コドン)を導入する変異;フレームシフト変異、すなわち、変異、通常はタンパク質のリーディングフレームを変更する1以上の核酸の欠失または挿入であって、リーディングフレーム中に停止コドンを導入することによる早期終結(例えば、調節活性を欠く、トランケートされたタンパク質)、またはより長いアミノ酸配列(例えば、リードスルータンパク質)では、タンパク質の二次または三次構造に影響を及ぼし、非変異ポリペプチドの調節活性を欠く非機能的タンパク質をもたらす変異;フレームシフト変異または修飾停止コドン変異(すなわち、停止コドンがアミノ酸コドンに変異したもの)によるリードスルー変異であって、調節活性が無効にされた変異;プロモーター変異、すなわち、通常、遺伝子の転写開始部位の5’に位置するプロモーター配列中の変異であって、特定の遺伝子産物の下方制御をもたらす変異;調節変異、すなわち、遺伝子の上流または下流または遺伝子内の領域における変異であって、遺伝子産物の発現に影響を及ぼす変異;欠失変異、すなわち、遺伝子配列中のコード核酸を欠失し、フレームシフト変異または(コード配列内の、1つまたは複数のアミノ酸コドンの欠失を生じる)インフレーム変異をもたらし得る変異;挿入変異、すなわち、コード核酸または非コード核酸を遺伝子配列中に挿入し、フレームシフト変異または1つもしくは複数のアミノ酸コドンのインフレーム挿入をもたらし得る変異;逆位、すなわち、逆向きのコード配列または非コード配列をもたらし得る変異;スプライス変異、すなわち、異常なスプライシングまたは不十分なスプライシングをもたらす変異;ならびに重複変異、すなわち、インフレームであり得る、またはフレームシフトを引き起こし得る、重複したコード配列または非コード配列をもたらす変異が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
特定の実施形態によれば、遺伝子の機能喪失変更は、遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子を含み得る。
【0087】
用語「対立遺伝子」とは、本明細書で使用される場合、遺伝子座の1つまたは複数の代替型のいずれかを指し、それら対立遺伝子のすべてが、形質または特徴と関連する。2倍体の細胞または生物では、所与の遺伝子の2種の対立遺伝子が、相同染色体の対上の対応する遺伝子座を占める。
【0088】
その他の特定の実施形態によれば、遺伝子の機能喪失変更は、遺伝子の両対立遺伝子を含む。このような場合には、例えば、AGL6は、ホモ接合型またはヘテロ接合型であり得る。この実施形態によれば、ホモ接合性は、例えば、AGL6遺伝子座で両対立遺伝子が、同一ヌクレオチド配列によって特徴付けられる状態である。ヘテロ接合性とは、例えば、AGL6遺伝子座において、遺伝子が異なる状態を指す。
【0089】
特定の実施形態によれば、機能喪失変異は、ホモ接合型またはヘテロ接合型であるが、両方とも機能不全産物をコードする。
【0090】
特定の実施形態によれば、機能喪失変異は、例えば、SlAGl6の、例えば、エキソン2の欠失である。
【0091】
特定の実施形態によれば、機能喪失変異は、未成熟停止コドンを生じる。
【0092】
いくつかの実施形態によれば、本発明の条件的単為結実植物(本明細書における「植物」)は、下記特性の少なくとも1種を示す。
(i)非単為結実トマトの受精可能条件下において、植物当たりの果実収量(fruit yield/plant)が、同じ遺伝的バックグラウンドの非単為結実トマトの植物当たりの果実収量とほぼ同一(例えば、80%、90%、100%、110%)またはそれ以上である、
(ii)非単為結実トマトの受精可能条件下において、植物当たりの平均果実重量(fruit weight/plant)が、同じ遺伝的バックグラウンドの非単為結実トマトの植物当たりの平均果実重量とほぼ同一またはそれ以上である、
(iii)植物がトマトであるとき、ゼリー部を含む、
(iv)果実収量の少なくとも80%にホメオティック遺伝子異常がない、
(v)種なし果実内の肥大した胚珠が非受精子房から発生したものである。
【0093】
本明細書で使用される場合、「ほぼ同一」とは、同じ発生期、同じ条件下で、±10%または20%を指す。
【0094】
本明細書で使用される場合、「果実収量」とは、市場性のある収穫された果実の総重量を指し、収穫された果実の平均重量と、植物あたりの果実の数との積である。
【0095】
「同一の遺伝的バックグラウンド」とは、ゲノムの少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または99.9%が、植物と非単為結実植物との間で共有されていることを指す。
【0096】
本明細書で使用される場合、「ゼリー部」とは、果実の小室のある空洞を埋める液状~半液状のものを指す。
【0097】
本明細書で使用される場合、「ホメオティック異常」とは、植物の解剖学的構造における発生異常を指し、たとえば、野生型(WT)の花を含む器官の輪生や、その数もしくは形状とは異なる、正常な花の形状から逸脱する花または果実の構造、または単為結実に固有である正常な種子がないことに加えて、種あり果実のものとは明らかに異なる果実の形状、大きさおよび内部構造である。
【0098】
本明細書で使用される場合、「肥大した胚珠」とは、成熟した種なし果実において観察される(例えば、
図4Cに見られるような)小さい偽種子を指す。
【0099】
しかし、ナスに関しては、注目すべきは、果実が異なる大きさで収穫可能であるということである。
【0100】
特定の実施形態によれば、植物が、有限成長型のトマト植物である場合には、果実収量は、4~6期の果実がほとんど同時に成熟する収量集中である。
【0101】
特定の実施形態によれば、植物は、選良品種である。トマトの選良品種の例は、当技術分野で公知であり、その一部は、本明細書において列挙されている。
【0102】
選良トウガラシ栽培品種の例として、これらに限定されないが、バスティール(Bastille)、ランパート(Rampart)、ベイオネット(Bayonet)、カットラス(Cutlass)、ラファイエット(Lafayette)、クラサデール(Crusader)、ページェント(Pageant)、ライジングサン(Rising Sun)、トリフェクタ(Trifecta)(シンゲンタ(Syngenta))、エイティル(Atir)、ジラド(Gilad)、セレナダ(Serenada)、ビルモリン(Vilmorin):E5661 F1、リフレッシ(RIFLESSI)、ルサック(Lussac)、ビバルディ(Vivaldi)、タイソン(Tyson)(Hazera Genetics)、ラゼル(Razer)、E20B10015(Enza Zaden)、アルマパプリカペッペ(Alma Paprika Peppe)などが挙げられる。
【0103】
ナス選良栽培品種の例として、これらに限定されないが、交雑種栽培品種であるクラシック(Classic)、ダンサー(Dancer)、ダスキー(Dusky)、フェアリーテール(Fairy Tale)、ゴーストバスター(Ghostbuster)、ナディア(Nadia)、パープルレイン(Purple Rain)が挙げられる。
【0104】
特定の実施形態によれば、植物は、(例えば、本明細書において以下に記載されるような、ゲノム編集因子についてまたはRNAサイレンシング作用因子について)トランスジェニックな植物である。
【0105】
特定の実施形態によれば、植物は、本明細書において記載されるように、トランスジェニック植物であり得るが、導入遺伝子は、条件的単為結実と関連していない(すなわち、その原因ではない)場合がある。例えば、導入遺伝子は、生物的ストレス抵抗性、殺虫剤抵抗性または非生物的ストレス抵抗性を改善するように機能し得る。
【0106】
特定の実施形態によれば、植物は2倍体ゲノムを含む。
【0107】
特定の実施形態によれば、植物は自殖系統である。
【0108】
特定の実施形態によれば、植物は交雑植物であるか、または種子が交雑種子であり、ここで、例えば、各親系統は、本明細書において記載されるように、AGL6の機能喪失変異についてホモ接合性である。
【0109】
本明細書において記載されるような植物を製造する方法は、変異誘発物質(例えば、EMS)の使用、または遺伝子工学の使用に頼るものであり得、当然ながら、遺伝子工学はより方向性の高い方法であり、したがって、育種工程がより少ない。
【0110】
したがって、本発明の一態様によれば、本明細書において記載されるような植物を製造する方法が提供され、当該方法は、植物においてAGL6遺伝子の発現または活性を下方制御することを含む。
【0111】
以下は、植物を製造するために使用され得る、AGL6遺伝子中に1以上の機能喪失変異を導入する方法の、非限定的な説明である。
【0112】
したがって、本発明のいくつかの実施形態によれば、AGL6の下方制御は、植物またはその再生可能部位の、変異誘発物質を用いた処理によって行われる。このような場合には、植物は、AGL6の下方制御を誘導するための作用因子を用いて非遺伝子的に修飾される。
【0113】
上記に代えて、または上記に加えて、条件的単為結実形質に関与する遺伝的事象の発生は、植物(すなわち、トマト、トウガラシ、ナス)またはその一部を、(実施例の項に記載するような)化学的または物理的な変異誘発剤に曝露することによって達成され得る。化学的変異誘発剤の例として、これらに限定されないが、亜硝酸、エチルメタンスルホネート(EMS)、メチルメタンスルホネート(MMS)、ジエチルスルフェート(DES)などのアルキル化剤および5-ブロモ-デオキシウリジン(5BU)などの塩基類似体が挙げられる。物理的変異誘発剤としては、放射線(例えば、高速中性子、ガンマ線の照射)が挙げられる。
【0114】
最初の曝露に続き、通常、自家受粉、選択、交雑および自家受粉またはそれらの組合せのさらなるステップが続き、AGL6遺伝子における機能喪失がホモ接合型である限り、任意のステップを2回以上反復してもよい。本明細書において以下にさらに記載するように、選択は表現型に基づくもの、またはマーカー補助育種を使用するものであり得る。
【0115】
別の特定の実施形態によれば、本発明の非遺伝的に修飾された植物は、多系交雑/自家受粉によって受けた自然発生的遺伝的事象の結果である。
【0116】
以下は、植物においてノックアウト(「ゲノム編集」とも呼ばれる)および転写サイレンシングを行うためのプラットフォーム技術の説明である。
【0117】
対象の遺伝子(この場合にはAGL6)に核酸変更を導入する方法は、当技術分野で周知であり[例えば、参照によりその開示内容の全文が本明細書に組み込まれる、Menke D. Genesis (2013) 51: - 618、Capecchi, Science (1989) 244:1288-1292、Santiago et al. Proc Natl Acad Sci USA (2008) 105:5809-5814、国際公開公報第WO2014085593号、第WO2009071334号および第WO2011146121号、米国特許第8771945号明細書、同第8586526号明細書、同第6774279号明細書および米国特許出願公開第20030232410号明細書、同第20050026157号明細書、同第20060014264号明細書を参照]、標的相同組換え、部位特異的リコンビナーゼ、PBトランスポサーゼおよび遺伝子操作されたヌクレアーゼによるゲノム編集を含む。対象の遺伝子に核酸変更を導入するための作用因子は、公的に入手可能な遺伝資源から設計することができる、またはTransposagen社、Addgene社およびSangamo Biosciences社から商業的に入手することができる。
【0118】
以下は、対象の遺伝子に核酸変更を導入するために使用される種々の例示的方法、および本発明の特定の実施形態に従って使用され得る、それを実行するための作用因子の説明である。
【0119】
以下の方法は、機能喪失が達成される限り、いずれもAGL6遺伝子の任意の部分を対象とし得る。特定の実施形態では、作用因子は、SlAGL6アミノ酸座標aa172~252に対応する遺伝子のc末端部分をコードする核酸部分を対象とし、それらは、トマト、ナスおよびトウガラシに特有である。上記に代えて、または上記に加えて、作用因子は、遺伝子のその他の部分、例えば、実施例の項に記載されるようなAA71~80をコードする位置を対象とする。その他の例は、以下の実施例の項において提供される。
【0120】
必要に応じて、ホモ接合型の変異を達成するために自家受粉のさらなるステップが行われる。
【0121】
本明細書で使用される場合、「標的配列」とは、AGL6 DNAコード産物またはRNA転写産物を指す。AGL6はまた、AGL6抗体または化学的阻害剤を使用してタンパク質レベルで下方制御され得ることが認められよう。この選択肢は、本明細書において詳細に論じられないが、依然として、植物を製造するための一実施形態と考えられる。
【0122】
遺伝子操作されたエンドヌクレアーゼを使用するゲノム編集。このアプローチは、人工的に遺伝子操作されたヌクレアーゼを使用してゲノムをその中の所望の1以上の位置で切断して、特定の二本鎖を作製し、次いで、相同性組換え修復(homology directed repair)(HDR)や、非相同末端結合(non-homologous end-joining)(NHEJ)などの細胞性内因性プロセスによって修復する逆遺伝学法を指す。NHEJは、二本鎖切断後のDNA末端を直接的に結合し、一方、HDRは、切断点で失われたDNA配列を再生するために相同配列を鋳型として利用する。ゲノムDNAに特定のヌクレオチド修飾を導入するために、HDRの際に、所望の配列を含有するDNA修復鋳型が存在しなければならない。ゲノム編集は、伝統的な制限エンドヌクレアーゼを使用して実施することができない。これは、大部分の制限酵素は、DNAの数個の塩基対をその標的として認識し、よって認識される塩基対の組合せがゲノム中の多数の位置で見い出される確率が極めて高いため、所望の位置に限定されない複数の切断が生じるためである。この課題を克服し、部位特異的一本鎖または二本鎖の切断部位を作製するために、今日までに、いくつかの別個のクラスのヌクレアーゼが発見され、バイオエンジニアリングにより改変されてきた。具体例としては、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)およびCRISPR/Casシステムが挙げられる。
【0123】
メガヌクレアーゼ-メガヌクレアーゼは、一般に4つのファミリー:LAGLIDADGファミリー、GIY-YIGファミリー、His-CysボックスファミリーおよびHNHファミリーにグループ分けされる。これらのファミリーは、触媒活性および認識配列に影響を及ぼす構造的モチーフによって特徴付けられる。例えば、LAGLIDADGファミリーのメンバーは、1コピーまたは2コピーの保存されたLAGLIDADGモチーフを有することによって特徴付けられる。メガヌクレアーゼの4つのファミリーは、保存された構造要素によって、結果として、DNA認識配列特異性および触媒活性に関して、互いに広く分離されている。メガヌクレアーゼは、微生物種において一般に見られ、極めて長い認識配列(14bp超)を有するという独特の特性を持つ。この特性故に、所望の位置での切断について天然で極めて高い特異性を有する。これは、ゲノム編集において部位特異的二本鎖切断部位を作製するために利用され得る。当業者ならば、これらの天然に存在するメガヌクレアーゼを使用することができるが、このような天然に存在するメガヌクレアーゼの数は限定されている。この課題を克服するために、固有の配列を認識するメガヌクレアーゼ変異体を作製するために、変異誘発およびハイスループットスクリーニング法が使用されてきた。例えば、新規配列を認識するハイブリッド酵素を作製するために、種々のメガヌクレアーゼが融合されてきた。あるいは、配列特異的メガヌクレアーゼを設計するために、メガヌクレアーゼにおいてDNAと相互作用するアミノ酸を変更してもよい(例えば、米国特許第8,021,867号明細書を参照)。メガヌクレアーゼは、例えば、Certo, MT et al. Nature Methods (2012) 9:073-975、米国特許第8,304,222号明細書、同第8,021,867号明細書、同第8,119,381号明細書、同第8,124,369号明細書、同第8,129,134号明細書、同第8,133,697号明細書、同第8,143,015号明細書、同第8,143,016号明細書、同第8,148,098号明細書または同第8,163,514号明細書に記載される方法を使用して設計することができ、各々の内容は、その全文が参照によって本明細書に組み込まれる。あるいは、部位特異的切断特性を有するメガヌクレアーゼは、市販の技術、例えばPrecision Biosciences社のDirected Nuclease Editor(商標)ゲノム編集技術を使用して得ることができる。
【0124】
ZFNおよびTALEN-2つの別個のクラスの遺伝子操作されたヌクレアーゼである、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)および転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)は、両方とも、標的化二本鎖切断の製造において有効であると証明されている(Christian et al., 2010、Kim et al., 1996、Li et al., 2011、Mahfouz et al., 2011、Miller et al., 2010)。
【0125】
基本的に、ZFNおよびTALENの制限エンドヌクレアーゼ技術は、特異的DNA結合ドメイン(それぞれ、一連のジンクフィンガードメインまたはTALE反復配列)に連結された非特異的DNA切断酵素を利用する。通常、そのDNA認識部位と切断部位とが互いに分離した制限酵素が選択される。切断部分を分離し、次いで、DNA結合ドメインに連結することによって、所望の配列に対して極めて高い特異性を有するエンドヌクレアーゼが得られる。このような特性を有する例示的な制限酵素として、Foklが挙げられる。さらに、Foklは、ヌクレアーゼ活性を有するために二量体化を必要とするという利点を有し、これは、各ヌクレアーゼパートナーが独特のDNA配列を認識するので、特異性が著しく増大することを意味する。この効果を増強するために、Foklヌクレアーゼは、ヘテロ二量体としてのみ機能し、触媒活性を増大するように遺伝子操作されている。ヘテロ二量体機能性ヌクレアーゼは、不要のホモ二量体活性の可能性を避けることで、二本鎖切断部位の特異性を増大させる。
【0126】
したがって、例えば、特定の部位を標的とするために、ZFNおよびTALENは、ヌクレアーゼ対として構築され、対の各メンバーは、標的部位に隣接配列と結合するように設計される。細胞内における一時的な発現の際にヌクレアーゼはその標的部位と結合し、FokIドメインがヘテロ二量体して、二本鎖切断部位を作製する。非相同末端結合(NHEJ)経路によるこれら二本鎖切断部位の修復は、小さな欠失または小さない配列挿入をもたらすことが最も多い。NHEJによって行われる各修復は独特であるため、単一ヌクレアーゼ対の使用によって、標的部位で様々な異なる欠失を有する対立遺伝子系列を製造することができる。欠失は、通常、数塩基対~数百塩基対の範囲内であるが、2組のヌクレアーゼ対を同時に使用することによって、培養細胞においてより大きな欠失を作製することにも成功している(Carlson et al., 2012、Lee et al., 2010)。さらに、ヌクレアーゼ対とともに、標的領域に対して相同性を有するDNA断片を導入した場合には、二本鎖切断部位は、相同性組換え修復によって修復されて、特異的修飾を生じ得る(Li et al., 2011、Miller et al., 2010、Urnov et al., 2005)。
【0127】
ZFNおよびTALENの両方のヌクレアーゼ部分が類似した特性を有するものの、これら遺伝子操作されたヌクレアーゼ間の違いは、それらのDNA認識ペプチドである。ZFNは、Cys2-His2ジンクフィンガーに依拠するものであり、TALENは、TALEに依拠する。これらのDNA認識ペプチドドメインは両方とも、そのタンパク質の組合せが、天然に見られる特徴を有する。Cys2-His2ジンクフィンガーは、通常は3bp離れて反復した形の、多種多様な組み合わせで、核酸相互作用タンパク質に見い出される。一方、TALEは、アミノ酸と認識されるヌクレオチド対との間の1対1認識比を有する反復に見い出される。ジンクフィンガーおよびTALEは両方とも反復パターンに見出されることから、様々な配列特異性を作り出すために、種々の組合せを試みることができる。部位特異的ジンクフィンガーエンドヌクレアーゼを作製するためのアプローチとして、例えば、モジュラーアセンブリー(トリプレット配列と関連付けられたジンクフィンガーを、必要な配列を覆うように連続して結合する)、OPEN(ペプチドドメイン対トリプレットヌクレオチドの低ストリンジェンシー選択と、それに続く、細菌系におけるペプチド組合せ対最終標的の高ストリンジェンシー選択)、およびジンクフィンガーライブラリーの細菌ワンハイブリッドスクリーニング等が挙げられる。ZFNを設計することも可能であり、例えば、Sangamo Biosciences(商標)社(カリフォルニア州、リッチモンド)から商業的に入手することもできる。
【0128】
TALENを設計し、入手するための方法は、例えば、Reyon et al. Nature Biotechnology 2012 May;30(5):460-5、Miller et al. Nat Biotechnol. (2011) 29:143-148、Cermak et al. Nucleic Acids Research (2011) 39 (12): e82およびZhang et al. Nature Biotechnology (2011) 29 (2):149-53に記載されている。Mojo Handと名付けられた、最近開発されたウェブベースのプログラムは、ゲノム編集適用のTALおよびTALEN構築物を設計するためにMayo Clinic社によって導入されたものである(www.talendesign.orgからアクセス可能)。TALENはまた、設計したものを、Sangamo Biosciences(商標)社(カリフォルニア州、リッチモンド)から商業的に入手することができる。
【0129】
AGL6を下方制御可能な別の作用因子として、RNAガイドエンドヌクレアーゼ技術、例えば、CRISPRシステム(以下の実施例の項において非常に詳細に例示される)が挙げられる。
【0130】
本明細書で使用される場合、用語「CRISPRシステム」はまた、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeatsとしても知られ、CRISPR関連遺伝子の発現に関与するか、またはそれらの活性を方向付ける、転写産物やその他の要素の総称である。CRISPR関連遺伝子には、Cas9遺伝子(例えば、CRISPR関連エンドヌクレアーゼ9)をコードする配列、tracr(トランス活性化CRISPR)配列(例えば、tracrRNAまたはtracrRNAの活性部分)、tracr-mate配列(「直接反復」およびtracrRNAプロセシング部分直接配列を含む)、またはガイド配列(「スペーサー」とも呼ばれる)を含み、当該ガイド配列は、crRNA配列(すなわち、標的特異性を付与するが、Casと結合するのにtracrRNAを必要とする内因性細菌RNA)またはsgRNA配列(すなわち単一ガイドRNA)を含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、CRISPRシステムの1種または複数種の要素は、I型、II型またはIII型のCRISPRシステムから誘導される。いくつかの実施形態では、CRISPRシステムの1種または複数種の要素(例えば、Cas)は、ストレプトコッカス・パイオゲネス、ナイセリア・メニンギティディス、ストレプトコッカス・サーモフィルスまたはトレポネーマ・デンティコラなどの内因性CRISPRシステムを含む特定の生物に由来する。
【0132】
一般に、CRISPRシステムは、標的配列部位(内因性CRISPRシステムとの関連でプロトスペーサーとも呼ばれる)において、CRISPR複合体の形成を促進する要素によって特徴付けられる。
【0133】
CRISPR複合体の形成において、「標的配列」、本発明においてはAGL6は、ガイド配列(すなわち、ガイドRNA、例えば、sgRNAまたはcrRNA)が相補性を有するように設計される配列を指し、標的配列とガイド配列とのハイブリダイゼーションが、CRISPR複合体の形成を促進する。完全な相補性が必ずしも必要ではないが、ただし、ハイブリダイゼーションを引き起こし、CRISPR複合体の形成を促進するのに十分な相補性は必要である。したがって、いくつかの実施形態によれば、標的配列に対する全体的な相同性は、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%のものであり得る。標的配列は、DNAまたはRNAポリヌクレオチドなどの任意のポリヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態において、標的配列は、細胞の核または細胞質中に位置する。
【0134】
したがって、CRISPRシステムは、2種の別個の成分、標的配列にハイブリダイズするガイドRNA(gRNA)と、ヌクレアーゼ(例えば、II型Cas9タンパク質)とを含み、gRNAは標的配列を標的とし、ヌクレアーゼ(例えば、Cas9タンパク質)は、標的配列を切断する。ガイドRNAは、内因性細菌crRNAおよびtracrRNAの組合せを含み得る、すなわち、gRNAは、crRNAの標的特異性を、tracrRNA(Cas9結合にとって必要とされる)の足場特性と組み合わせる。あるいは、ガイドRNAは、Casと直接結合可能な単一ガイドRNAであり得る。
【0135】
通常、内因性CRISPRシステムとの関連において、CRISPR複合体(標的配列とハイブリダイズし、且つ1つまたは複数のCasタンパク質と複合体を形成しているガイド配列を含む)の形成は、標的配列内またはその近傍(例えば、標的配列から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50またはそれ以上の塩基対以内の位置)の一方または両の鎖の切断をもたらす。論理による制限は望まないが、野生型tracr配列のすべてもしくは一部(例えば、野生型tracr配列の約20、26、32、45、48、54、63、67、85もしくはそれ以上のヌクレオチド)を含むか、またはそれからなるtracr配列はまた、CRISPR複合体の一部を形成し得る。当該複合体の形成は、例えば、tracr配列の少なくとも部分に沿った、ガイド配列と発現可能に連結されているtracr mate配列のすべてまたは一部とのハイブリダイゼーションによるものである。
【0136】
いくつかの実施形態では、tracr配列は、tracr mate配列とハイブリダイズし、CRISPR複合体の形成に参加するのに十分な相補性を有する。標的配列と同様に、完全な相補性は必要ではないが、機能的であるのに十分は相同性は必要である。いくつかの実施形態において、tracr配列は、tracr mate配列の鎖長に沿って最適にアラインされた場合に、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%の配列相補性を有する。
【0137】
CRISPR/Casの細胞への導入は、1つまたは複数の標的部位において、CRISPR複合体の形成をもたらす、CRISPRシステムの1つまたは複数の要素の発現を駆動する、1つまたは複数のベクターを使用して行うことができる。例えば、Cas酵素、tracr-mate配列に連結されたガイド配列およびtracr配列を、各々別個のベクター上で、別個の調節エレメントに発現可能に連結することができる。あるいは、同一または異なる調節エレメントから発現される2つ以上の要素を第1のベクター内で組み合わせ、第1のベクターに含まれないCRISPRシステムの任意の成分を1以上の他のベクターによって提供する。単一ベクター内で組み合わされるCRISPRシステムの複数の要素は、任意の適切な配向で配置することができる。例えば、第2の要素に対して5’側(その「上流」)または第2の要素に対して3’側(その「下流」)に位置する1つの要素を配置する。第1の要素のコード配列は、第2の要素のコード配列と同一鎖上に位置してもよいし、逆鎖上に位置してもよく、同一方向または反対方向に配置されてもよい。単一プロモーターによって、CRISPR酵素をコードする転写産物と、1つまたは複数のイントロン配列内に埋め込まれている(例えば、異なるイントロン内に各々が含まれる、少なくとも1つのイントロン内に2つ以上が含まれる、または単一イントロン内にすべてが含まれる)ガイド配列、(任意選択で、ガイド配列に発現可能に連結されている)tracr mate配列およびtracr配列から選ばれる1つまたは複数の配列との発現を駆動してもよい。
【0138】
「ヒット・エンド・ラン(Hit and run)」または「イン-アウト(in-out)」は、2種の工程を含む組換え手順である。第1の工程では、所望の配列変更を導入するために、二重陽性/陰性選択マーカーカセットを含む挿入型ベクターを使用する。挿入ベクターは、標的とする遺伝子座に対して相同性を有する単一の連続領域を含有し、対象の変異を保持するように修飾される。この標的化構築物を、相同性領域内の1部位に対して制限酵素を用いて線形化しされ、細胞に形質転換して、相同組換え体を単離するための陽性選択を実施する。これらの相同組換え体は、選択カセットを含む介在ベクター配列によって分離された局所重複を含有する。第2の工程では、重複配列間の染色体内組換えによって選択カセットを失った細胞を同定するために、標的クローンを陰性選択に付す。局所組換え事象が重複を除去し、組換えの部位に応じて、対立遺伝子は導入された変異を保持するか、または野生型に戻るかのいずれかとなる。最終結果は、任意の外因性配列を保持しない、所望の修飾の導入である。
【0139】
「二重置換」または「タグおよび交換」戦略は、ヒット・エンド・ランアプローチと同様の2工程の選択手順を含むが、2種の異なる標的化構築物の使用を必要とする。第1の工程では、変異が導入されるべき位置の近傍に、二重陽性/陰性選択可能カセットを挿入するために、3’および5’相同性アームを有する標準的な標的化ベクターを使用する。形質転換および陽性選択後、相同性をもって標的としたクローンが同定される。次いで、所望の変異を有する相同性領域を含有する第2の標的化ベクターを、標的とするクローンに形質転換し、選択カセットを除去し、変異を導入するために陰性選択が適用する。最終対立遺伝子は、不要の外因性配列を排除しながら、所望の変異を含有する。
【0140】
部位特異的リコンビナーゼ-P1バクテリオファージ由来のCreリコンビナーゼおよび酵母サッカロミセス・セレビシエ由来のFlpリコンビナーゼは、それぞれに固有の34塩基対のDNA配列(それぞれ、「Lox」および「FRT」と呼ばれる)を認識する部位特異的DNAリコンビナーゼであり、Lox部位またはFRT部位のいずれかと隣接している配列は、それぞれ、CreリコンビナーゼまたはFlpリコンビナーゼの発現の際の部位特異的組換えによって容易に除去できる。例えば、Lox配列は、13塩基対の逆方向反復が両端に隣接した非対称の8塩基対スペーサー領域から構成される。Creは、13塩基対の逆方向反復と結合し、鎖切断を触媒し、スペーサー領域内で再ライゲーションを行うことによって、34塩基対のlox DNA配列の組み換えるを実施する。スペーサー領域内でCreによって行われたねじれ型のDNA切断部位は、相同性センサーとして作用する重複領域をもたらすように6塩基対によって分離され、同一重複領域を有する組換え部位のみが組み換わることを確実にする。
【0141】
基本的に、部位特異的リコンビナーゼシステムは、相同組換え後の選択カセットの除去のための手段を提供する。このシステムはまた、一時的なまたは組織特異的な様式で不活性化または活性化することのできる、条件付変更対立遺伝子の作製も可能にする。注目すべきは、CreリコンビナーゼおよびFlpリコンビナーゼが、34塩基対のLox「瘢痕」またはFRT「瘢痕」を残すことである。残存するLox部位またはFRT部位は、通常、修飾された遺伝子座のイントロンまたは3’UTR内に残るが、最新の証拠は、これらの部位は、通常、遺伝子機能を大幅に干渉しないことを示唆する。
【0142】
したがって、Cre/Lox組換えおよびFlp/FRT組換えは、対象の変異、2つのLox配列またはFRT配列および通常、2つのLox配列またはFRT配列の間に配置される選択可能カセットを含有する3’および5’相同性アームを有する標的化ベクターの導入を含む。陽性選択を適用し、標的変異を含む相同組換え体を同定する。陰性選択と併せたCreまたはFlpの一過性の発現は、選択カセットの切り出しを生じ、カセットが失われた細胞をもたらす。最終的な標的とされる対立遺伝子は、外因性配列のLox瘢痕またはFRT瘢痕を含む。
【0143】
AGL6転写産物(RNA)レベルでのサイレンシングは、以下の例示的プラットフォームを使用して行うことができる。
【0144】
本明細書で使用される場合、語句「RNAサイレンシング」とは、RNA分子によって仲介される一群の調節機序[例えば、RNA干渉(RNAi)、転写遺伝子サイレンシング(TGS)、転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)、クエリング(quelling)、共抑制および翻訳抑制]であって、対応するタンパク質コード遺伝子の発現の阻害または「サイレンシング」をもたらすものを指す。RNAサイレンシングは、植物、動物および真菌を含む多種の生物において観察されている。
【0145】
本明細書で使用される場合、用語「RNAサイレンシング作用因子」とは、標的遺伝子(AGL6)の発現を特異的に阻害または「サイレンシング」可能なRNAを指す。特定の実施形態では、RNAサイレンシング作用因子は、転写後サイレンシング機序によってmRNA分子の完全なプロセシング(例えば、完全な翻訳および/または発現)を妨げることが可能である。RNAサイレンシング作用因子としては、非コードRNA分子が挙げられる。当該非コードRNA分子は、例えば、対形成鎖や、このような小さい非コードRNAが生じ得る前駆体RNAである。例示的RNAサイレンシング作用因子として、siRNA、miRNAおよびshRNAなどのdsRNAが挙げられる。
【0146】
一実施形態では、RNAサイレンシング作用因子は、RNA干渉を誘導可能である。
【0147】
別の実施形態では、RNAサイレンシング作用因子は、翻訳抑制を仲介可能である。
【0148】
本発明の実施形態によれば、RNAサイレンシング作用因子は、標的RNAに対して特異的であり、その他の標的または標的遺伝子に対して99%以下の全体的相同性を有するのスプライスバリアントを交差阻害またはサイレンシングしない。当該スプライスバリアントの相同性、例えば、標的遺伝子に対して98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%未満であり、これは、PCR、ウエスタンブロット、免疫組織化学および/またはフローサイトメトリーによって決定され得るものである。
【0149】
RNA干渉とは、短い干渉RNA(siRNA)によって仲介される、動物における配列特異的転写後遺伝子サイレンシングのプロセスを指す。
【0150】
以下は、本発明の特定の実施形態に従って使用され得るRNAサイレンシング作用因子に関する詳細な説明である。
【0151】
DsRNA、siRNAおよびshRNA-細胞内の長いdsRNAの存在は、ダイサーと呼ばれるリボヌクレアーゼIII酵素の活性を刺激する。ダイサーは、短い干渉RNA(siRNA)として知られるdsRNAの短い小片へのdsRNAのプロセシングに関与する。ダイサー活性に由来する短い干渉RNAは、通常、約21~約23ヌクレオチド長であり、約19塩基対二本鎖を含む。RNAi応答は、一般に、RNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)と呼ばれるエンドヌクレアーゼ複合体も使用し、これは、siRNA二本鎖のアンチセンス鎖に対して配列相補性を有する一本鎖RNAの切断を仲介する。標的RNAの切断は、siRNA二本鎖のアンチセンス鎖と相補的である領域の中央で起こる。
【0152】
したがって、本発明のいくつかの実施形態は、mRNAからのタンパク質発現を下方制御するdsRNAの使用を意図する。
【0153】
1つの実施形態によれば、30bpより長いdsRNAを使用する。種々の研究が、長いdsRNAを使用して、ストレス応答を誘導せずに、または大幅なオフターゲット効果を引き起こさずに、遺伝子発現をサイレンシングできるということを示している。例えば、[Strat et al., Nucleic Acids Research, 2006, Vol. 34, No. 13 3803-3810、Bhargava A et al. Brain Res. Protoc. 2004;13:115-125、Diallo M., et al., Oligonucleotides. 2003;13:381-392、Paddison P.J., et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA. 2002;99:1443-1448、Tran N., et al., FEBS Lett. 2004;573:127-134]を参照。
【0154】
本発明のいくつかの実施形態によれば、dsRNAは、インターフェロン経路が活性化されない細胞内で提供される。例えば、Billy et al., PNAS 2001, Vol 98, pages 14428-14433およびDiallo et al, Oligonucleotides, October 1, 2003, 13(5): 381-392. doi:10.1089/154545703322617069を参照。
【0155】
本発明の一実施形態によれば、長いdsRNAは、遺伝子発現を下方制御するためにインターフェロンおよびPKR経路を誘導しないことを目的に設計される。例えば、ShinagwaおよびIshii[Genes & Dev. 17 (11): 1340-1345、2003]は、RNAポリメラーゼII(PolII)プロモーターから長い二本鎖RNAを発現するために、pDECAPと名付けられたベクターを開発した。pDECAPからの転写産物は、5’-キャップ構造と、細胞質へのds-RNA排出を促進する3’-ポリ(A)テールとの両方を欠くため、pDECAPからの長いds-RNAは、インターフェロン応答を誘導しない。
【0156】
哺乳類系においてインターフェロンおよびPKR経路を逃れる別の方法は、トランスフェクションまたは内因性発現のいずれかによる小さな阻害性RNA(small inhibitory RNA、siRNA)の導入である。
【0157】
用語「siRNA」とは、RNA干渉(RNAi)経路を誘導する小さな阻害性RNA二本鎖(一般に、18~30塩基対)を指す。通常、siRNAは、中央の19bpの二本鎖領域および両端それぞれに対称性の2塩基の3’オーバーハングを有する、化学的に合成された21量体である。しかし、化学合成された25~30塩基長のRNA二本鎖は、同一位置の21量体と比較して、効力の100倍程度の増大を有し得ることが最近報告された。RNAiの誘発における、より長いRNAの使用によって観察された効力の増大は、ダイサーに対して産物(21量体)の代わりに基質(27量体)を提供することに起因し、これによってRISCへのsiRNA二本鎖の進入の割合または効率が改善されると示唆されている。
【0158】
3’オーバーハングの位置がsiRNAの効力に影響を及ぼし、アンチセンス鎖上に3’オーバーハングを有する非対称の二本鎖は、一般に、センス鎖上に3’オーバーハングを有するものよりも強力であるということがわかっている(Rose et al., 2005)。アンチセンス転写産物を標的とする場合にはこれとは反対の有効性パターンが観察されることから、これは、RISC内に入れ込んだ非対称鎖に起因すると考えられる。
【0159】
二本鎖干渉RNA(例えば、siRNA)の鎖は、ヘアピンまたはステム-ループ構造(例えば、shRNA)を形成するように連結され得る。したがって、記載されるように、本発明のいくつかの実施形態のRNAサイレンシング作用因子はまた、短いヘアピンRNA(shRNA)でもよい。
【0160】
用語「shRNA」とは、本明細書で使用される場合、ステム-ループ構造を有し、相補性配列からなる第1および第2の領域を含み、当該領域の相補性の程度および領域の配向は、領域間で塩基対形成が生じるのに十分な程度であり、第1および第2の領域はループ領域によって接続され、当該ループは、ループ領域内のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)間の塩基対形成の欠損によって生じるものである、RNA作用因子を指す。ループ内のヌクレオチド数は、3~23、または5~15、または7~13、または4~9、または9~11の間の数および上記範囲に含まれる数である。ループ内のヌクレオチドのいくつかは、ループ内のその他のヌクレオチドとの塩基対相互作用に関与し得る。ループ形成に使用され得るオリゴヌクレオチド配列の例として、5’-CAAGAGA-3’および5’-UUACAA-3’が挙げられる(国際特許公報第WO2013126963号および第WO2014107763号)。得られた一本鎖オリゴヌクレオチドは、RNAi機構と相互作用可能な二本鎖領域を含むステム-ループまたはヘアピン構造を形成するということは、当業者によって認識されよう。
【0161】
本発明のいくつかの実施形態とともに使用するのに適したRNAサイレンシング作用因子の合成は、以下のように行うことができる。第1に、AAジヌクレオチド配列のAUG開始コドンの下流から、AGL6 mRNA配列をスキャンする。各AAの出現および3’に隣接する19ヌクレオチドを、潜在的なsiRNA標的部位として記録する。非翻訳領域(UTR)は、調節タンパク質結合部位に富むので、siRNA標的部位はオープンリーディングフレームから選択することが好ましい。UTR結合タンパク質および/または翻訳開始複合体は、siRNAエンドヌクレアーゼ複合体の結合を干渉し得る[Tuschl ChemBiochem. 2:239-245]。しかし、5’UTRに対するsiRNAが、細胞性GAPDH mRNAの約90%の低減を仲介し、タンパク質レベルを完全に消失させたことがGAPDHについて示されているように(www.ambion.com/techlib/tn/91/912.html)、非翻訳領域に対するsiRNAもまた有効であり得ることを理解されたい。
【0162】
第2に、潜在的標的部位を、任意の配列アラインメントソフトウェアを使用して、適当なゲノムデータベース(例えば、ヒト、マウス、ラットなど)と比較する。当該ソフトウェアは、例えば、NCBIサーバー(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)から入手可能なBLASTソフトウェアなどである。他のコード配列に対して有意な相同性を示す推定標的部位を除去する。
【0163】
条件を満たす標的配列を、siRNA合成の鋳型として選択する。好ましい配列は、G/C含量が低いものであり、これは、G/C含量が55%を超えて高いものよりも遺伝子サイレンシングの仲介においてより有効であると証明されているからである。評価のために、標的遺伝子の長さに沿って複数の標的部位を選択することが好ましい。選択されたsiRNAのより良好な評価のために、陰性対照をともに使用することが好ましい。陰性対照siRNAは、siRNAと同じヌクレオチド組成物を含むが、ゲノムに対して有意な相同性を欠くことが好ましい。したがって、siRNAのヌクレオチド配列をスクランブルしたものを好ましく使用することができるが、ただし、任意のその他の遺伝子に対して有意な相同性を全く示さないものでなければならない。
【0164】
本発明に係る方法において有用な構築物は、当業者に周知の組換えDNA技術を使用して構築することができる。コード配列構築物は、商業的に入手することが可能であり、植物への形質転換に適しており、形質転換された細胞における対象の遺伝子の発現に適したベクター中に挿入することができる。遺伝子構築物は、核酸配列が、1つまたは複数の調節配列に発現可能に連結され、植物細胞における発現を可能にする発現ベクターでもよい。
【0165】
植物細胞を、本発明の核酸構築物を用いて安定にまたは一過性に形質転換することができる。安定な形質転換では、本発明の核酸分子は、植物ゲノム中に組み込まれることから、安定な遺伝される形質を表す。一過性の形質転換では、核酸分子は、形質転換された細胞によって発現されるが、ゲノム中には組み込まれないことから、一過性の形質を表す。
【0166】
外来遺伝子を単子葉および双子葉植物の両方に導入する種々の方法が挙げられる(Potrykus, I., Annu. Rev. Plant. Physiol., Plant. Mol. Biol. (1991) 42:205-225、Shimamoto et al., Nature (1989) 338:274-276)。
【0167】
外因性DNAの植物ゲノムDNAへの安定な組込みを引き起こす基本的な方法には、以下の2つの主なアプローチが含まれる:
(i)アグロバクテリウム仲介性遺伝子導入:Klee et al. (1987) Annu. Rev. Plant Physiol. 38:467-486、Klee and Rogers in Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants, Vol. 6, Molecular Biology of Plant Nuclear Genes, eds. Schell, J., and Vasil, L. K., Academic Publishers, San Diego, Calif. (1989) p. 2-25、Gatenby, in Plant Biotechnology, eds. Kung, S. and Arntzen, C. J., Butterworth Publishers, Boston, Mass. (1989) p. 93-112。
(ii)直接DNA取り込み:Paszkowski et al., in Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants, Vol. 6, Molecular Biology of Plant Nuclear Genes eds. Schell, J., and Vasil, L. K., Academic Publishers, San Diego, Calif. (1989) p. 52-68。この方法には、プロトプラストに直接DNAを取り込ませる方法も含まれる、Toriyama, K. et al. (1988) Bio/Technology 6:1072-1074。植物細胞の短時間の電気ショックによって誘導されるDNA取り込み:Zhang et al. Plant Cell Rep. (1988) 7:379-384.Fromm et al. Nature (1986) 319:791-793。微粒子銃による植物の細胞または組織へのDNA注入、Klein et al. Bio/Technology (1988) 6:559-563、McCabe et al. Bio/Technology (1988) 6:923-926、Sanford, Physiol. Plant. (1990) 79:206-209。マイクロピペットシステムの使用による方法:Neuhaus et al., Theor. Appl. Genet. (1987) 75:30-36、Neuhaus and Spangenberg, Physiol. Plant. (1990) 79:213-217。
【0168】
細胞培養物、胚またはカルス組織のガラスファイバーまたはシリコンカーバイドウィスカー形質転換:米国特許第5,464,765号明細書、または出芽花粉とDNAとの直接インキュベーション、DeWet et al. in Experimental Manipulation of Ovule Tissue, eds. Chapman, G. P. and Mantell, S. H. and Daniels, W. Longman, London, (1985) p. 197-209およびOhta, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1986) 83:715-719。
【0169】
アグロバクテリウムシステムは、植物ゲノムDNAに組み込まれる、定義されたDNAセグメントを含有するプラスミドベクターの使用を含む。植物組織の播種の方法は、植物種およびアグロバクテリウム送達システムに応じて変化する。広く使用されるアプローチはリーフディスク手順であり、全植物分化の開始のための良好な遺伝資源を提供する任意の組織外植片を用いて実施することができる。Horsch et al. in Plant Molecular Biology Manual A5, Kluwer Academic Publishers, Dordrecht (1988) p. 1-9。補足アプローチは、アグロバクテリウム送達システムを真空浸潤と組み合わせて利用する。アグロバクテリウムシステムは、トランスジェニック双子葉植物の作製に特に適している。
【0170】
植物細胞への直接DNA導入の種々の方法が挙げられる。エレクトロポレーションでは、プロトプラストを、強力な電場に対して短時間曝露する。マイクロインジェクションでは、DNAを、極めて小さいマイクロピペットを使用して細胞中に機械的に注入する。微粒子銃では、DNAを、硫酸マグネシウム結晶またはタングステン粒子などのミクロ射出物上に吸着させ、細胞または植物組織に向かって、ミクロ射出物を物理的に加速させる。
【0171】
安定な形質転換に続き、植物の繁殖を行う。植物繁殖の最も一般的な方法は、種子による方法である。しかし、種子繁殖による再生には、ヘテロ接合性故に、作物が均一性を欠くという欠点がある。これは、メンデルの法則に支配された遺伝的分散に基づいて、植物が種子を産生するためである。基本的に種子は、それぞれが遺伝的に異なっており、それぞれに固有の性質と共に成長する。したがって、形質転換された植物は、再生された植物が親のトランスジェニック植物と同一の性質および特徴を有するように産生されることが好ましい。したがって、形質転換された植物は、形質転換された植物の迅速且つ一貫した繁殖を提供する微細繁殖によって再生されることが好ましい。
【0172】
しかし、有性生殖(および形態学的または本明細書において記載されるような分子マーカーを使用した、表現型の選択)、組織培養等のその他の製造方法も考えられる。
【0173】
微細繁殖は、選択した親植物または栽培品種から切り出した一片の組織から新世代植物を成長させるプロセスである。このプロセスは、融合タンパク質を発現する好ましい組織を有する植物の大量繁殖を可能にする。製造された新規産生植物は、元の植物と遺伝的に同一であり、元の植物の特徴のすべてを有する。微細繁殖は、短期間での高品質の植物材料の大量製造を可能にし、元のトランスジェニック植物または形質転換植物の特徴の保存において、選択した栽培品種の迅速な増殖を提供する。クローニング植物の利点は、植物増殖の速度ならびに製造される植物の品質および均一性である。
【0174】
微細繁殖は、段階間での培養培地または栽培条件の変更を必要とする多段階手順である。したがって、微細繁殖プロセスは、4つの基本的な段階を含む。段階1:初期組織培養;段階2:培養組織の増殖;段階3:分化および植物形成;および段階4:温室栽培および環境馴化。段階1である初期組織培養において、培養組織を確立し、混入物がないことを保証する。段階2においては、自然環境での栽培における段階的な増殖に十分な数の組織サンプルが製造されるまで、初期の培養組織を倍増させる。
【0175】
植物宿主の形質転換に有用であると示されているウイルスとして、CaMV、TMV、TRVおよびBVが挙げられる。植物ウイルスを用いた植物の形質転換は、米国特許第4,855,237号明細書(BGV)、欧州特許出願公開第67,553号明細書(TMV)、特開昭63-14693号広報(TMV)、欧州特許出願公開第194,809号明細書(BV)、欧州特許出願公開第278,667号明細書(BV)およびGluzman, Y. et al., Communications in Molecular Biology: Viral Vectors, Cold Spring Harbor Laboratory, New York, pp. 172-189 (1988)に記載されている。植物を含む多種の宿主における外来DNAの発現に使用するための偽ウイルス粒子は、国際公開公報第WO87/06261号に記載されている。
【0176】
本発明のいくつかの実施形態のナス科植物(すなわち、ナス、トマトおよびトウガラシ、例えば、トマト)を製造するために使用する方法に関わらず、ひとたび、植物または任意の繁殖材料が入手できたら、その条件的単為結実形質について選択する。
【0177】
したがって、本発明の一態様によれば、条件的単為結実であるナス科植物(すなわち、ナス、トマトおよびトウガラシ、例えば、トマト)の植物体を選択する方法であって、AGL6遺伝子の機能喪失変異をナス科植物(すなわち、ナス、トマトおよびトウガラシ、例えば、トマト)のゲノムから検出することを含み、変異の存在が、ナス科植物(すなわち、ナス、トマトおよびトウガラシ、例えば、トマト)が条件的単為結実であることを示す方法を提供する。
【0178】
変異について解析するための多数の方法が当技術分野で公知であり、例えば、単一塩基伸長(SBE)、対立遺伝子特異的プライマー伸長シーケンシング(ASPE)、DNAシーケンシング、RNAシーケンシング、マイクロアレイベースの解析、ユニバーサルPCR、融解曲線SNP法、対立遺伝子特異的伸長、ハイブリダイゼーション、質量分析、連結、伸長-連結、Flapエンドヌクレアーゼ仲介性アッセイ、制限断片長多形(RFLP)、電気泳動、配列アラインメント、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション(ASO)およびランダム増幅多形DNA(RAPD)が挙げられる。
【0179】
したがって、本発明は、AGL6の変異型と非変異型を区別するために使用され得るオリゴヌクレオチド(例えば、プライマー)を意図するものである。
【0180】
したがって、ひとたび、機能喪失遺伝子変更を保持する植物が同定されると、それは、条件的単為結実と考えられる。この植物材料は、農業的に望まれる形質を有するナス科植物(すなわち、ナス、トマトおよびトウガラシ、例えば、トマト)の品種開発において育種材料として使用することができる。
【0181】
1つの実施形態によれば、本発明の植物は、ハイブリッド品種、すなわち、共にAGL6遺伝子の機能喪失変異についてホモ接合性である2種の非同質遺伝子植物の交雑(すなわち、交配)後に生じる品種である。交雑種は、F1交雑種でもよい。
【0182】
「F1交雑種」とは、本明細書で使用される場合、2種の非同質遺伝子植物の交雑の第1世代後代を指す。
【0183】
本発明のナス科植物(すなわち、ナス、トマトおよびトウガラシ、例えば、トマト)の交雑種の開発は、安定な親系統の開発を必要とする。育種プログラムでは、優れた育種品種を開発するために、2つ以上の生殖質資源または遺伝子プールに由来する望ましい形質を組み合わせる。望ましい自殖または親系統の開発は、連続する自家受粉および/または戻し交雑と、最良の育種系統の選択とによって行われ、ときには選択プロセスを迅速化するために分子マーカーを利用する。
【0184】
ひとたび、最良の交雑種性能をもたらす複数の親系統、例えば、どちらもがAGL6遺伝子に上記のような機能喪失変異を保持するもの、が同定されると、親のホモ接合性が維持される限り、交雑種子を無限に産生することが可能となる。1つの実施形態によれば、本発明のナス科植物(すなわち、ナス、トマトおよびトウガラシ、例えば、トマト)は、(ヘテロ接合型またはホモ接合型の、例えば、AGL6遺伝子に、機能喪失変異を保持する)安定な親植物系統である。
【0185】
本明細書において定義されるように、語句「安定な親系統」とは、自家受粉および植え付けのサイクルにわたって安定な、所望の植物の放任受粉する、自殖系統を指す。特定の実施形態によれば、ゲノムの95%は、本発明の親系統においてホモ接合型にある。
【0186】
植物育種における一般的な手順は、戻し交雑の方法を使用して、単一形質変換によって新規品種を開発することである。
【0187】
語句「単一形態変換(single trait conversion)」とは、本明細書で使用される場合、親系統への新しい単一遺伝子の組込みを指し、ここでは、移入させた単一遺伝子に加えて、親系統の所望の形態学的および生理学的特徴が実質的にすべて回復されている。
【0188】
本明細書において、用語「戻し交雑」とは、交雑種後代と、親のナス科植物(すなわち、ナス、トマトおよびトウガラシ、例えば、トマト)の一方との反復交雑を指す。所望の特徴の遺伝子に寄与する親のナス科植物(すなわち、ナス、トマトおよびトウガラシ、例えば、トマト)の植物体は、非反復親またはドナー親と呼ばれる。この技術用語は、非反復親は、戻し交雑プロトコールにおいて1回使用され、したがって、繰り返されないという事実を指す。非反復親由来の遺伝子が移入される親のナス科植物(すなわち、ナス、トマトおよびトウガラシ、例えば、トマト)の植物体は、戻し交雑プロトコールの数ラウンドにおいて使用されるため、反復親として知られる。
【0189】
通常の戻し交雑プロトコールでは、目的の元の品種(反復親)に由来する植物を、移入されるべき目的の単一遺伝子を保持する第2品種(非反復親)から選択された植物と交雑させる。この交雑から得られた後代を、次いで、反復親と再度交雑させる。このプロセスは、非反復親由来の移入された単一遺伝子に加えて、反復親系統の所望の形態学的および生理学的特徴が実質的にすべて回復されているナス科植物(すなわち、ナス、トマトおよびトウガラシ、例えば、トマト)の植物体が得られるまで繰り返される。
【0190】
したがって、準同質遺伝子系統(NIL)を、照合中の形質またはゲノム領域(この場合には、例えば、AGL6遺伝子の、機能喪失遺伝子変更)を除き、遺伝子組成においてほぼ同一である固体からなるアレイを製造するための多数の戻し交雑によって作製することができる。
【0191】
本発明とともに戻し交雑法を使用して、親系統の特徴を改善または導入することができる。この方法において、上記のようなマーカー補助育種(選択)を使用できる。
【0192】
特定の実施形態によれば、植物または植物種子は、自殖系統である。
【0193】
特定の実施形態によれば、植物は、交雑植物であるか、種子は、交雑種子である。
【0194】
本発明はまた、本発明のトマト、ナス、トウガラシ植物の後代植物に関する。このような後代植物は、本発明の植物またはその後代植物の有性生殖または栄養生殖によって産生することができる。再生された後代植物は、条件的単為結実親と同一または同様の方法で、受精とは独立に果実を成長させる。これに加えて、後代植物は、1つまたは複数のその他の特徴において修飾されてもよい。このようなさらなる修飾は、例えば、変異誘発や、導入遺伝子を用いる形質転換によって行われる。
【0195】
本明細書で使用される場合、単語「後代」は、受精独立性果実形成を示す、本発明の植物との交雑から得られる子(offspring)または初代およびその後すべての子孫(descendant)を意味するものとする。本発明の後代は、受精独立性果実形成につながる変異形質を(ホモ接合型で)保持する本発明の植物との任意の交雑で生じる、子孫である。
【0196】
「後代」はまた、栄養繁殖または増殖によって本発明のその他の植物から得られる、本発明の形質を保持する植物を包含する。
【0197】
本明細書に記載されるように、本発明の実施形態は、さらに、交雑種子ならびに交雑種子を製造する方法に関する。当該製造法は、第1親植物を、第2親植物と交雑させて、得られた交雑種子を収穫することを含む。この場合、形質は劣性であるため、交雑種子のすべてが本発明の形質を保持するためには、両方の親植物が、受精独立性果実形成の形質についてホモ接合性である必要がある。それらは必ずしも他の形質について均一である必要はない。
【0198】
本明細書において記載される実施形態はまた、植物の生殖質に関する。生殖質は、生物のすべての遺伝される特徴によって構成され、本発明においては、少なくとも本発明の条件的受精独立性果実形成を包含する。
【0199】
本明細書において記載される実施形態はまた、条件的受精独立性果実形成形質を示す植物の細胞に関する。このような植物の各細胞は、条件的単為結実につながる遺伝情報(すなわち、AGL6の機能喪失変異)を保持する。細胞は、個々の細胞であってもよいが、植物の一部もしくは果実などの植物部分でもよい。
【0200】
本技術は、条件的単為結実につながるゲノム(DNA)情報(すなわち、AGL6の機能喪失変異)を含む、消費される産物にさらに関する。
【0201】
本明細書において記載される植物のいずれかの果実は、熟化時または収穫後に、果実色、Brix、pH、糖、有機酸および欠陥レベル(昆虫による損傷、カビなど)について、選択または認定され得る。例えば、トマトは、通常、大型処理施設に輸送され、そこで集められて、次に通常は、塩素処理水を使用して洗浄され、水道水を使用してすすがれ、欠陥(例えば、不適切な熟化、疾患による損傷、カビなど)を呈するものを除去するためにさらに選択され得る。トマトは、(特に、上述したように保存可能期間が改善されたものは)保存されるかまたは消費者に直ちに送られ得る(生鮮市場トマト)。加工用のトマトは、様々な製品に加工され得る。
【0202】
ジュースまたは果肉製造のために、トマトをオーブンで脱水し、細かく砕き、液体で柔らかくし(分解し、破壊され)て、ポンプで吸い上げることが可能な塊を得ることができる。当業者には明白であろうが、これらの操作はそれ自体公知であり、トマト加工の分野では一般的であり、範囲から逸脱することなくこれに関して方法への任意の調整を行うことができる。
【0203】
トマトの加工および/またはトマトベースの組成物を製造する方法は、当技術分野では周知であり、一般的な記載は米国特許第6,924,420号明細書を参照のこと。また、例えば、ペースト(米国特許第7,074,451号明細書)、滅菌ペースト(米国特許第4,206,239号明細書)、ピューレ(米国特許第4,556,576号明細書)、ソース(米国特許第7,122,217号明細書)、固化ソース(米国特許第4,038,424号明細書)、バーベキューソース(米国特許第6,869,634号明細書)、サルサ(米国特許第5,914,146号明細書)、ケチャップ(米国特許第6,689,279号明細書)、トマトファイバー組成物(米国特許第7,166,315号明細書)および脱水トマト製品(米国特許第5,035,909号明細書)を調製するための具体的な方法も報告されている。トマトペースト、果肉およびピューレの食感および稠度を改変する方法も報告されている、例えば、米国特許第6,720,019号明細書を参照のこと。
【0204】
トマトまたはその食用部分(例えば、果実またはその食用部分)を含む食用加工用のトマト製品も提供される。
【0205】
本技術に従って作製されたトマトペーストも提供される。
【0206】
このような食用製品の例として、これらに限定されないが、缶詰トマト(ホール)、トマトペースト、ケチャップ、トマトソース、トマトスープ、脱水トマト、トマトジュース、トマトパウダー、ダイストマト、クラッシュトマト、チョップドトマトおよびトマト濃縮物が挙げられる。
【0207】
種がないことの恩恵を受けることができるトウガラシ製品としては、生鮮消費用の、ならびに加工および保存用のトウガラシ品種が挙げられる。スパイス(パプリカ)製造のために栽培される栽培品種は、カプシカム・アナムL.、スイートレッドトウガラシであり、スパイスはその乾燥されて粉に引かれたものからなる。スイートパプリカスパイスの加工は、果皮を粉にする前の種の除去を含み、そうでなければ、品質が低下する。その他の製品は、パプリカオレオレシン、即ち、カプシカム・アナムの果実由来の油溶性抽出物であって、主として食品用の着色料および/または香味料として使用されるものから製造される。浴用製品や美容製品、保湿リップスティックをを含む化粧品の着色にも使用される。
【0208】
ナスの種子は苦味を加え、果肉の褐色化と関連するため、消費者による種なしナスに対する大きな需要がある。ナスは、通常、調理後、焼いた後、揚げた後または炒めた後に消費される。また、ピクルスにして、または乾燥したものとしても消費され、乾燥ベビーナスの皮は、ものを詰めるのに役立つ。また、冷凍主菜および特別なディップのような加工品としても消費される。
【0209】
いくつかの実施形態によれば、製品(例えば、ペースト、乾燥果実、ジュースなど)は、(条件的単為結実表現型を引き起こすAGL6遺伝子の機能喪失変異を保持する)トマト、トウガラシまたはナスのDNAを含む。
【0210】
用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」およびその同根語は、「限定されるものではないが、含む(including but not limited to)」を意味する。
【0211】
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、限定される(including and limited to)」を意味する。
【0212】
用語「実質的になる(consisting essentially of)」は、組成物、方法または構造が、追加の成分、ステップ、および/または部分を含んでいてもよいが、当該追加の成分、ステップ、および/または部分が、特許請求の範囲に記載された組成物、方法、または構造の基本的および新規な特徴を物質的に変化させない場合に限られることを意味する。
【0213】
本明細書で用いられる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が別途明確に記述しない限り、複数の参照を含む。例えば、用語「化合物(a compound)」または「少なくとも1つの化合物」は、複数の化合物、例えばそれらの混合物などを包含してもよい。本出願にわたり、本発明の様々な実施形態が、範囲の様式で示される場合がある。範囲の様式での記載は、単に便宜上および簡潔さのためであり、本発明の範囲に対する不変の限定として解釈されるべきではないことが理解されるものとする。したがって、範囲の記載は、具体的に開示された全ての可能性がある部分範囲に加えてその範囲内の個々の数値を含むとみなされるものとする。例えば1から6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲、例えば1から3、1から4、1から5、2から4、2から6、3から6など、加えてその範囲内の個々の数値、例えば1、2、3、4、5、および6を含むとみなされるものとする。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0214】
数値範囲は、本明細書に示される場合はいつでも、示された範囲内の引用された全ての数字(分数または整数)を包含することを意味する。第1の指定された数値と第2の指定された数値との間の「範囲である/範囲」および第1の指定された数値「から」第2の指定された数値の「範囲である/範囲」という成句は、本明細書において同義的に使用され、第1および第2の指定された数値と、それらの間の全ての分数のおよび整数の数値とを包含することを意味する。
【0215】
用語「方法」は、本明細書で使用する場合、所与のタスクを達成するための方式、手段、技術および手順であり、例えば、これらに限定されないが、公知であるか、または化学、薬理学、生物学、生化学および医療分野の技術者に公知の方式、手段、技術および手順から容易に開発されるかのいずれかの方式、手段、技術および手順などを指す。
【0216】
特定の配列表に参照する場合、そのような参考は、微少な配列の変異を含む、相補鎖に実質的に対応する配列をも包含するものと理解されたい。配列の変異は、例えばシーケンシングエラー、クローニングエラー、または塩基置換、塩基欠失もしくは塩基付加を生じる他の変化の結果であるが、但し、このような変異の頻度は50ヌクレオチド中に1未満、または100ヌクレオチド中に1未満、または200ヌクレオチド中に1未満、または500ヌクレオチド中に1未満、または1000ヌクレオチド中に1未満、または5,000ヌクレオチド中に1未満、または10,000ヌクレオチド中に1未満である。
【0217】
本発明のある特性が、明瞭さのために、別々の実施形態に関連して記載されている場合でも、これら特性は組み合わされて1つのの実施形態として提供可能であることを理解されたい。反対に、簡潔さのために、1つの実施形態に関連して記載されている本発明の種々の特性は、個別に、または好適な部分的組み合わせ、または好適であると考えられる、ここに記載した本発明の他の実施形態として提供してもよい。種々の実施形態に関連して記載された特定の特性は、これらの要素無しでは実施形態が実施不可能である場合を除いて、これらの実施形態の必須要件と見なすものではない。
【0218】
上記のように説明し、後述する特許請求の範囲で請求する本発明の種々の実施形態および態様についての実験的なサポートが、次の実施例によって提供される。
【実施例】
【0219】
一般的に、本明細書で使用される命名法、および本発明に用いる実験手順は、分子技術、生化学的技術、微生物学的技術および組換えDNA技術を含む。そのような技術は、文献において完全に説明されている。例えば下記を参照されたい。"Molecular Cloning: A laboratory Manual" Sambrook et al., (1989)、"Current Protocols in Molecular Biology" Volumes I-III Ausubel, R. M., ed. (1994)、Ausubel et al., "Current Protocols in Molecular Biology", John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1989)、Perbal, "A Practical Guide to Molecular Cloning", John Wiley & Sons, New York (1988)、Watson et al., "Recombinant DNA", Scientific American Books, New York; Birren et al. (eds) "Genome Analysis: A Laboratory Manual Series", Vols. 1-4, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1998)、米国特許第4,666,828号明細書、同第4,683,202号明細書、同第4,801,531号明細書、同第5,192,659号明細書および同第5,272,057号明細書に示されるような方法論、"Cell Biology: A Laboratory Handbook", Volumes I-III Cellis, J. E., ed. (1994)、"Current Protocols in Immunology" Volumes I-III Coligan J. E., ed. (1994)、Stites et al. (eds), "Basic and Clinical Immunology" (8th Edition), Appleton & Lange, Norwalk, CT (1994)、Mishell and Shiigi (eds), "Selected Methods in Cellular Immunology", W. H. Freeman and Co., New York (1980)を参照のこと、入手可能なイムノアッセイは、特許および科学文献に広範に記載されている、例えば、米国特許第3,791,932号明細書、同第3,839,153号明細書、同第3,850,752号明細書、同第3,850,578号明細書、同第3,853,987号明細書、同第3,867,517号明細書、同第3,879,262号明細書、同第3,901,654号明細書、同第3,935,074号明細書、同第3,984,533号明細書、同第3,996,345号明細書、同第4,034,074号明細書、同第4,098,876号明細書、同第4,879,219号明細書、同第5,011,771号明細書および同第5,281,521号明細書、"Oligonucleotide Synthesis" Gait, M. J., ed. (1984)、"Nucleic Acid Hybridization" Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1985)、"Transcription and Translation" Hames, B. D., and Higgins S. J., Eds. (1984)、"Animal Cell Culture" Freshney, R. I., ed. (1986); "Immobilized Cells and Enzymes" IRL Press, (1986)、"A Practical Guide to Molecular Cloning" Perbal, B., (1984)および"Methods in Enzymology" Vol. 1-317, Academic Press、"PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications", Academic Press, San Diego, CA (1990)、Marshak et al., "Strategies for Protein Purification and Characterization - A Laboratory Course Manual" CSHL Press (1996)。これらすべては、本明細書に完全に記載されたのと同様に、参照により本発明に組み込まれる。他の一般的な参考文献を、本明細書を通じて提供する。それらに記載された手順は、当技術分野において十分周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。それらに含まれるすべての情報は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0220】
材料および方法
EMS誘導M2集団の、極端な温度下での収量についてのスクリーニング: 約1000M2 EMSで変異誘発されたファミリーについて、1ファミリー12株の植物を圃場に植え付けた。当該12株は、2つの複製となる群に分けられた、即ち、各々6株ずつを別個のブロックに植えた。対照となる親系統M82を同様に、1群6株が複製となるように圃場に植えた。このとき、22組の2重列の各組に対して、対照が少なくとも1群となるようにしたに。実生を晩夏(2009年7月7日)に圃場に植え、8月~9月の極めて暑い月の果実結実および発生について、8月12日を開始日とし、スクリーニングを繰り返した。選択した変異2012と、大きな単為結実果実であるが、その遠位(花柱)末端が幾分かゆがんだ形状である別の1種とを除いては、いくつかのファミリーから1株のみが単為結実果実を結実することがわかった。その他のすべてが比較的小さい(35g未満)種なし果実を結実し、これらでは、果実形成能を最大限に引き出すという種子の貢献が部分的にしか補償されていないと考えられる。
【0221】
2012変異体のマッピングおよび解析のための集団の作製:2012 BC1F2集団: M82雄蕊除去した花に2012植物から集めた花粉を用いて授粉することによってBC1を作製し、これらを栽培し、自家受粉させて、BC1F2を作製した。
【0222】
試験交雑種(TC)集団: 野生型(WT)表現型、すなわち、単為結実ではない、を示す複数の2012 BC1F2植物を、雄蕊除去に付し、単為結実同胞から集めた花粉を用いて授粉した。これらの交雑種のうちの3種の各々から得た約100後代を、2013年の夏(2013年6月17日)に植えた。F1集団のうちの1つは、晩夏の間の支配的な高温下のネットハウス内で、単為結実表現型について明確な1:1分離を明示したことから、TC集団と同定した。この集団は、表2に要約した解析に役立った。
【0223】
2012 BC2F2集団: 明確な単為結実表現型を示すBC1F2集団に由来する植物の1つを使用して、親系統M82を授粉し、F1植物を栽培し、自家受粉させて、BC2F2を作製した。
【0224】
2012×マルマンデ交雑種由来のF2集団: 単為結実2012 BC1F2植物の花粉は、中~大の多室果実、オープン品種マルマンデ(www.rareseeds.com/marmande-tomato/)の雄蕊除去した花に授粉するのに役立った。F2種子を、自家受粉したF1植物から集めた。
【0225】
ほぼ周囲条件下で栽培した2012 BC2F2植物の成長および表現型決定: 冬の終わりに向けて(2014年2月26日)、498株のBC2F2植物を、親系統M82由来の植物と一緒に非加熱のネットハウス内に植えた。2014年5月の初めに、BC2F2植物の一部は、既に赤い果実や、赤く熟した果実までもを有していた。したがって、表現型決定の第1ラウンドを、2014年5月13~15日に実施した。この時点で、カテゴリーに基づく表現型決定できなかったすべての植物について、後にで数回の再サンプリングを行い、それらが単為結実であるか否かを確立した。2012変異は、強力であるが条件的な単為結実を引き起こすとわかり、特に、それらはほぼ周囲条件下で栽培し、果実を結実したので、後代の表現型決定にはストリンジェントなプロトコールを設定した。各植物から、6~8個の最も熟した果実を選び取った。対照およびBC2F2植物の大部分のように、熟した果実がない場合には、最も大きな緑色の果実6個を選び取った。これらの写真を撮り、横方向に切断し、種子の有無を記録した。大きな、通常赤色の、種なし果実を有する植物を単為結実と定義した。これは、その他の選び取られた果実のいくつかが数個の種子を有していた場合もである。植物は、種子を有することおよび果実の大きさに基づき、非単為結実と定義した。
【0226】
第1のスクリーニングの際にカテゴリー的に表現型決定できなかったすべての植物を、後日、少なくとも2回再評価した。明確に単為結実果実を有していた植物は、たとえそれらが良質な種あり果実も結実した場合であっても、単為結実として定義し、果実発生が遅延し、最も重要なことに、種あり果実のみを結実した場合には、その果実のうちいくつかの種子数が少ない場合であっても、植物を非単為結実として定義した。
【0227】
生産能力を含む収量パラメータ(
図5A~
図5Cにおいて示される)の解析のために、植物をさらに1ヶ月栽培した。2014年6月10~11日に、SlAGL6(SNP3番)遺伝子型あたり10~13株の植物の各々から、成熟した緑熟期、催色期および赤熟期の果実を収穫した。各株について、収穫した果実の総数および総重量ならびに赤熟期の果実の総数および総重量を決定した。収穫量に対する環境効果を低減するために、列の端に位置する植物からは果実を集めなかった。
【0228】
2012 BC2F3ファミリーの栽培および表現型決定: 変異SlAGL6について2012 BC2F2ホモ接合性の株の各々から、産生される場合には種子を採取した。単為結実表現型を明示しなかった3株のこのような植物の後代(表3を参照のこと)は、非加熱ネットハウス内に、2014年10月22日に、明確な単為結実と定義された4個体の植物の後代と隣り合わせに植えた。これらの植物は、2015年の極めて厳しい冬の間に成長した。2015年3月26日に果実を採取し、種子の有無について評価した。
【0229】
2012由来後代のSNP遺伝子型解析: 遺伝子型解析は、融解曲線SNP(McSNP)法(Ye et al., 2002)に従って、イスラエル国、ミグダル-ハエメク、サギ(Sagi)工業団地のDYN R&D Ltdに委託して実施した。DYN R&Dの解析の信頼性を確認するために、6種のSNP(表1、カラム2)の各々の両端に隣接する配列のPCR増幅のために、9株のTC植物および親系統M82に由来するDNAを鋳型とした。試験したすべてのDNAサンプルの6種のSNPすべてについて、DYN R&DによるPCR産物の伝統的なシーケンシングおよびパラレル遺伝子型解析と同じ結果が得られた。ネットハウス内で確立され、番号付けされた若い植物から、ルーチンとして4つの葉片をサンプリングした。各植物の遺伝子型解析を2回、すなわち、4つのサンプリングした葉のうちの2つで行い、解析は「二重盲検」として実施した。2回の遺伝子解析の結果が不一致である稀なケースについては、残り2つの他の重複サンプル、および必要に応じて、疑わしい植物から得た新規サンプルについて遺伝子型解析を行い、解析された植物の各々においてSNP遺伝子型を確実に確立した。
【0230】
ゲノムDNAライブラリーの作製およびシーケンシング: 「強力な単為結実」として定義された、2012 BC1F2集団に由来する20株の植物の各々から、1つの若い葉(約150mg FW)を採取し、20枚の葉のプールから、DNAを抽出した。同様に、23株の「非単為結実」植物から同一日時にサンプリングした23枚の葉のプールからDNAを抽出した。DNAサンプルをイスラエル国、ハイファのTechnion(The Life Sciences and Engineering Infrastructure Center)に送り、2つのシーケンシングライブラリーを調製した。一方を「2012ライブラリー」と名付け、もう一方を「NP(非単為結実)ライブラリー」と名付けた。ライブラリーを、Illumina HiSeq 2000プラットフォームに対して、100bpの対形成末端リードを使用してシーケンシングした。それぞれ、15.4Gbpおよび15.9GBpを含む生配列データを、Trimmomaticを使用してフィルタリングして、アダプターおよび低品質配列(Q10未満)を除去した(Bolger et al 2014)。得られたデータセットを、M82配列(Bolger et al 2014)に対してBWAを使用してアラインした(Li and Durbin 2009)。アラインメントをフィルタリングして、不明瞭な、二次的または対不調和アラインメントを除去した。残った高品質アラインメントをSAMtools(Li et al 2009)とともに使用して、単為結実プールおよび非単為結実プールの「リードパイルアップ(read pileup)」を作製した。カスタムスクリプトを使用して、パイルアップを解釈し、プールが実質的に異なるゲノム位置を同定する。次いで、これらの領域をプロットし、原因となる変異を含有していた可能性が最も高い、1番染色体上の75.8Mbp~86.2Mbpにわたる10.4Mbpの領域を、プロットを利用して同定した。表現型プールに固有の、このウィンドウ内の19の高信頼変異を同定することができた。各変異の周囲の配列を抽出し、BLASTを使用してHeinzゲノムにマッピングした。変異の大多数は、遺伝子間であるか、またはイントロン内であった。エキソンにヒットする合計4つのうち、2つは同義変化であり、2つはわずかな効果を有する非同義変化(バリンからイソロイシン)であった。さらに、機能的アノテーションについては、影響を受けた遺伝子が、観察された表現型との明らかなつながりを示唆しなかった。
【0231】
解析を改善するために、2つのライブラリーの各々から別のレーンをシーケンシングした。さらに、公開されたM82系統とローカルなM82系統との間のバックグラウンドの相違が結果に影響を及ぼさなかったことを確実にするために、親M82系統もシーケンシングした。これらのデータベースは、2012 ライブラリー、NPライブラリーおよび親M82系統それぞれの、39.6Gbp、38.1Gpおよび31.5Gbpのデータを含んでいた。すべてのデータベースを、従来通り、Trimmomaticを使用してトリミングし、2012プールおよびNPプールを、これまでにシーケンシングしたデータと組み合わせた。親系統に由来するリードを、BWAを使用してアラインし、SAMtoolsを使用したところ、ほぼ30Kの高信頼変異体がコールされた。これらの変異体を公知のM82配列に適用して、親M82ゲノム配列を作製した。
【0232】
次いで、新規および既存の単為結実および非単為結実のデータセットと、新たに決定された親M82ゲノムとのアラインメントをBWAを使用して実施し、従来通り処理して、プールが実質的に異なるゲノム位置を決定した。より大きなデータセットは、原因となるウィンドウを1番染色体上の76.67Mbpから80.73Mpに広がる領域に狭められることを可能にした。当該領域は、Heinzゲノム上の84.9Mbpから89.0Mbpに広がる領域に対応する。当該ウィンドウ内から、単為結実プールに特有の9つの信頼性の高い変異を同定した。これらを、Heinzゲノムに従来通りマッピングして、表1に示した対応する位置を決定した。驚くべきことに、Solyc01g093960において早期停止コドンを引き起こした、この解析で得られた最も強い候補変異は、非表現型プールに57%(14リードのうち8リード)も存在し、予測値である33%をはるかに上回ったため、元のデータセットでは明確に検出可能ではなかった。
【0233】
CRISPR/Cas9ノックアウトプラスミドの構築およびトマトの形質転換: Solyc01g093960コード配列の212bp後(予測されるエキソン2、70aa後、
図2Bを参照)に欠失を作製するようにCRISPR/Cas9構築物を設計した。Cas9に必要な結合部位であるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)であるTGGを繋げる20bpの標的配列を選択した(
図2Bに示す)。選択したsgRNAを以下のプライマーを使用して増幅させた: SalI-gRNA-F: AGAgtcgacATAGCGATT
GAGGATTAAGGCAACAACGTGTTTTAGAGCTAGAAATAGCAAG(配列番号10)、およびHindIII-gRNA-R: TAAGCTaagcttCGATCTAAAAAAAGCACCGACT(配列番号11)(付加された制限部位を小文字で示し、SalI-gRNA-Fプライマー配列中の特異的標的配列(cRNA)に下線を付した)。PCR産物を制限処理し、pRCSバイナリーベクターの、合成Arabidopsis U6プロモーターの制御下にある、SalI-HindIII部位にクローニングし(Waibel and Filipowicz, 1990)、その近傍には植物コドン用に最適化したCas9(Li et al., 2013)があった。Cas9タンパク質を、そのN末端にFLAGタグを有する、タンパク質の両末端に位置する核局在性シグナル(NLS)との融合物として構成的35Sプロモーター下で発現させた。バイナリーベクターで、アグロバクテリウム・ツメファシエンスEHA105株の形質転換を行い、無限成長型のトマト系統MP-1の形質転換に使用した。形質転換は、従来法により、10日齢の滅菌実生から切り出した子葉との同時培養によって行い、形質転換された子葉あたり1以下の再生シュートを選択した(Barg et al 1997)。
【0234】
CRISPR/Cas9誘発変異の検出
Solyc01g093960 gRNA標的部位を、PAM上流の3bpと重複する、Cas9ヌクレアーゼの予測される切断部位であるAclI制限酵素部位(AACGTT、配列番号12)を含むように設計することで(
図2Bを参照)、DNA二本鎖切断(DSB)修復が、制限部位を破壊し得るようにした。R
0植物を、変異標的部位を保持するキメラセクションの存在についてスクリーニングした。再生R
0植物の後期発生期で生じる、Cas9によって作製された変異が検出される可能性を高めるために、主茎上の10~12番目の葉よりも若い葉からゲノムDNAを抽出した。以下の特異的プライマー:2012-F: 5’-GCCTTGAAATCAGTAAGAGTATTGG-3’(配列番号13)、および2012-R: 5’-GTTCGTTGAAGTGCTTCAAACTTGG-3’(配列番号14)を使用してDNAを増幅し、sgRNA標的配列に隣接する354bpの断片を得た。変異されていない限り、そのAclI消化産物は、類似した大きさの2本のバンド(170bp/184bp、
図2Bを参照)をもたらす。消化しれたアンプリコンをゲル電気泳動に供した。UV光下で明瞭なバンドが可視化されない場合であっても、切断されていないバンドの位置のゲルからDNAを抽出した。抽出されたDNAを、-20℃で一晩沈殿させ(0.3M酢酸Na、pH=5.2、2.2容量エタノールおよび1μgグリコーゲン)、10μLの水に再懸濁し、それから1μLを、同じプライマーを使用する増幅のための鋳型として用いた。制限部位の喪失および作製された変異の性質を試験するために、増幅されたバンドの両方をAclIを用いて制限処理し、フォワードおよびリバースプライマーの両方を使用してシーケンシングした。変異型を含有するとわかったR
0植物のほとんどにおいて、AclI耐性PCRバンドは、制限処理された二本鎖よりもかなり少量であり、変異型が、R
0植物の再生初期ではなく後期に作製されたことを強力に示唆した。同一手順をR
1後代の遺伝子型解析に適用した。
【0235】
後代におけるcas9/sgRNAカセットの喪失または維持を、以下のプライマー対を使用したPCRで試験した: cas-F: CGACAATCTGATCCAAGCTCA(配列番号15)およびpRCS_val_rev: CGACAATCTGATCCAAGCTCA(配列番号16)。
【0236】
熱ストレス下でのsg1およびMP-1の収穫量の解析
実験を4回の反復で実施し、各々は、遺伝子型あたり17~27植物体からなる。植物を2016年4月20日にネットハウス内に植え付け、2016年6月26日に最初の収穫を実施した(
図13を参照のこと)。各反復実験について、すべての赤色果実を収穫し、秤量した。各反復実験について、30個の果実を6~8バッチ秤量した結果から、植物あたりの果実重量および果実数を算出した。
図13に示されるデータは、植物の数が反復間で変動したため、植物あたりで算出した。Brixは、各反復実験について、それぞれが3個の赤く熟した果実からなる2つのプールから絞られたジュースで測定した(Carmi et al.,2003に従って)。pHは、各反復実験について、それぞれが6~8個の赤く熟した果実からなる2つのプールで測定した。
【0237】
実施例1
EMS変異誘発されたM82集団由来の、単為結実について新規な一遺伝子性劣性変異体としての系統2012の同定
【0238】
EMS溶液に種子を浸すことによって、M82栽培品種から作製した、化学的に変異誘発されたM2集団(J Hirschenhoren and Y. Kapulnik、The Volcani Center、AROによって作製された集団)について、材料および方法に記載した極めて高い温度下で、変異体の収量についてスクリーニングした。ファミリー番号2012は2つの植物体を含んでおり、それぞれが異なる反復実験に由来し(材料および方法を参照)、上記条件下で良好なゼリー部を有する質の高い単為結実果実を結実したのに対し、親系統植物は、せいぜい、いくつかの非常に小さい、中に隙間のある「堅果状」の果実しか結実しなかった。
【0239】
これらの2つの植物体の一方の花粉を、種あり果実を結実するM82植物の雄蕊除去した花の授粉に用いた。これらのBC
1植物は、単為結実ではなかった。しかし、親系統M82が非常に小さい「堅果状」小果実のみをかろうじて結実するような、2010年の晩夏を支配した極めて暑い条件下でも、40株のBC
1F
2後代のうちの7株は、種なし果実を結実した(
図1A~C対1D~F)。したがって、形質が遺伝性であり、単一劣性変異として挙動することを示す。さらに、同じBC
1F
2集団由来の植物を、非加熱の温室に内で、常にガラス窓を開放した状態で冬にも栽培した。これらの冷条件下において、試験した30個体のBC
1F
2後代のうち9株が、種なし果実を結実したが、同胞の残りは、正常果実を結実しなかった。これは、変異が、受精依存性果実結実を可能にするには低すぎる温度下でも、単為結実果実形成を可能にすることを示す。
【0240】
実施例2
2012変異のNGS補助マッピング
変異をマッピングするために、バルク分離アプローチ(Michelmore et al 1991)を選択した。ディープシーケンシングを2つのゲノムライブラリーで実施した。当該ライブラリーは、一方は2012 BC1F2単為結実同胞のバルクに由来し、もう一方は、その非単為結実同胞に由来する。
【0241】
2012単為結実の条件的性質は、形質の明示に影響を及ぼすその他のEMS誘発変異との妥当な相互作用と共に、誤って表現型決定された非単為結実同胞由来のDNAの単為結実ライブラリーへの混入をもたらし得る。したがって、このリスクを無効にする試みとしていくつかの措置がとられた: 第1に、2012 BC
1F
2集団由来の105株の植物体を、ネットハウス内で2011年の晩夏に栽培した。これは、7月中旬から8月下旬の気温は、小胞子形成に重大に損傷を与えるのに十分に高く、受精依存性果実発生を防ぐためである。2011年9月27日に果実を収穫し、検査し、各植物を表現型を決定した。単為結実表現型は、良好なゼリー部を有する質の高い単為結実果実の産生に基づいて決定した(例えば、
図1G)。種なし果実(植物のうちのいくつかにおいては、数個の種あり果実も含む)であることに加えて、「強力な単為結実」と決定された植物表現型には、発生している果実の周囲の花弁の維持、開花後の果実形成が早いこと、植物あたりの果実の数、房あたりの果実の数ならびに果実の大きさおよび形状を含む、成長季節に沿って記録されるさらなる視覚的パラメータに基づくものが含まれていた。同胞植物は、種なしの正常な大きさの果実が発生しなかった(「堅果状」、すなわち、小さい変形した種なしの、中に隙間のある「空洞」果のみ、
図1H)場合に、非単為結実(NP)として特徴付けられた。これらの条件下で、BC
1F
2のこれら2つの部分集団間の果実重量および熟化の段階の相違は、極めて大きかった(
図1I)。
【0242】
(材料および方法に記載されるように)「強力な単為結実」として特徴付けられた20株のBC1F2植物のプールに由来するゲノムライブラリーを「2012ライブラリー」と呼び、「強力な非単為結実」として特徴付けられたその同胞のうちの23株のプールに由来するもう一方を「NP(非単為結実)ライブラリー」と呼んだ。2つのシーケンシングされたライブラリーの各々に由来するフィルタリングされたリードを、M82ゲノム配列に対してアラインし、2012ライブラリーにおいてホモ接合性変異ヌクレオチドが豊富な領域について解析した。NPライブラリー中のリードは約33%しか含まないため、対応する野生型ヌクレオチドを残りの約66%のリードとして含有しなくてはならない。生物情報科学解析を、材料および方法に記載されるように実施した。この解析の結果は、SL2.5ch01:85115654-88965277間に広がる1番染色体中の385万ヌクレオチドのセグメントを、変異の可能性が高い位置として示した(表1)。解析は、「NPライブラリー」ではヘテロ接合性であるが、「2012ライブラリー」中のこの領域内に9つのホモ接合性変異SNPを示した、すなわち、このライブラリー中のリードの42~24%のみが、変異対立遺伝子を示し、一方で、残りは期待された野生型対立遺伝子を含んでいた。興味深いことに、この領域において見られた変異SNPのうち2つは、通常のEMS誘導性移行型の点変異ではなく、トランスバージョンに起因すると思われる(Anderson 1995. Methods Cell Biol.;48:31-58)。植物におけるEMS誘導性トランスバージョンは、既に報告されている(例えば、Galpaz et al 2013、Ghio et al 2013)。
【0243】
実施例3
2012変異のマーカー補助微細マッピング
2012変異体の根底にある変異の位置を限定する試みとして、変異位置として示唆される染色体区間に沿って分散された6個のSNP(表1、第2列)と、単為結実表現型との共分離を、(材料および方法に記載のように作製された)試験交雑種(TC)集団において調べた。この集団を、2013年の夏の終わりに熱ストレス下で果実結実させた。表1、第2列に特定した6つの候補SNPの各々について、TC集団の遺伝子型解析を、イスラエル国のDYN R&D社に委託して実施した(材料および方法を参照のこと)。
【0244】
表2に、6つの点変異についてのこのTC集団の表現型決定および遺伝子型解析結果をまとめた。この解析は、SNP1番、5番および6番は、変異と連結していないことを示した。他方、SNP2番、3番および4番については、変異と表現型の間に強いが、絶対的ではない関連が見られた(表2)。この解析は、2012変異に関与する遺伝子中には当該SNPはいずれも存在しない、またはある種の植物の表現型決定には問題があり、これは、おそらくは単為結実表現型を不明瞭にし得るその他の変異を引きずるためであることを示した。いずれにせよ、この解析結果は、変異が存在する領域を、SNP2番から4番にわたる、700,000ヌクレオチド未満に狭めることができた(以下の表1、2参照)。
【0245】
変異の位置をさらに絞り込むために、材料および方法に記載したように作製した2012 BC2F2集団を対象に、単為結実表現型と、SNP2番および3番の変異型との共分離について、同様に解析した。これらのSNPを選択した理由は、解析したTC集団において、それらの形質との関連性は、SNP4番よりも幾分か緊密であったためである(以下の表2)。BC2F2集団は、上記の試験交雑種集団よりも、持ち越している非関連EMS誘発変異が少なく、特に、ホモ接合性変異SNPが少なく、2012変異の周囲のSNPの間でより多くの組換え体を含むはずである。極めて高い温度下で表現型決定が行われたBC1F2およびTC集団とは異なり、解析を促進するために、BC2F2集団は、材料および方法に詳述したように、2014年の春にほぼ周囲条件下で試験した。この解析の結果を表3にまとめた。6個体の非単為結実植物がSNP2番の変異型についてホモ接合性であったことから、この解析によって、SNP2番は候補から排除された。
【0246】
単為結実表現型と変異SNP3番との間に完全な関連がないという事実は、SNP3番および4番の間に変異がある可能性を示唆した。したがって、変異SNP3番についてホモ接合性の植物について、SNP4番の遺伝子型解析も行った。しかし、非単為結実であると表現型が決定された3株の植物が、変異SNP4番についてもホモ接合性であるという知見(以下の表3)は、この考えを支持しなかった。このような「違い」の遺伝性を、その後代、すなわち、BC2F3集団において試験した。単為結実ではない、SNP3番についてホモ接合性の3株の植物の後代を、明確な単為結実を示した4株のBC2F2植物の後代と隣り合わせで秋に植え、材料および方法に記載した最適以下の温度で果実を結実させた。7つのBC2F3ファミリーのすべてにおいて、すべての植物が、明確な単為結実果実を結実しなかった。
【0247】
総合すると、これらの解析は、単為結実変異2012の根底にある遺伝子が、変異AGL6であることを強力に示唆した。SlAGL6は、MADSボックスタンパク質のMEF2(筋細胞エンハンサー因子2)様/II型サブファミリーに属するMADSボックスタンパク質をコードする(
図2A)(Smaczniak et al 2012)。
【0248】
実施例4
2012単為結実の遺伝子としての、変異SlAGL6のCRISPRに基づく検証
変異AGL6が、2012単為結実の根底にある遺伝子であることを確認するために、CRISPR技術を利用して、SlAGL6遺伝子Solyc01g093960をノックアウトした。
【0249】
Solyc01g093960の第2のエキソンを標的とするように、合成gRNAを設計した(
図2B)。材料および方法において詳述したように、CRISPR/Cas9ノックアウトバイナリーベクターへ組込み、トマト系統MP-1に形質転換した。R
0植物を、材料および方法に記載したようなSlAGL6の変異型の存在について試験した。解析した18株のR
0トランスジェニック植物のうち、11株(61%)が、試験した増幅DNAサンプル中の予測された部位に変異型を保持していた(Lieber 2010)。CAS9消化部位での非相同末端結合によるDNA修復から予測されるように、11株の植物のすべてから果実を採取し、それらのうち3株は、種なし果実しか有さなかったが、その他のものは、種ありおよび種なし果実の両方を有していた。SlAGL6における、2012変異およびCRISPR誘発変異の対立性の最終的な証拠が提供され(
図11)、当該証拠は、SlAGL6の2012変異対立遺伝子についてホモ接合性の植物と、sg1変異対立遺伝子についてホモ接合性の植物との間のF
1交雑種は、種なし果実を産生したが、同じ2012植物とMP-1(SlAGL6の野生型対立遺伝子についてホモ接合性)と間の交雑種は、種あり果実のみを産生することを示した。
【0250】
実施例5
CRISPR誘導性AGL6変異R1後代は、単為結実である
性質は異なっているが、すべて未成熟停止コドンにつながる変異を有する、sg1、sg4およびsg5と呼ばれる3株のR0植物の後代(表4)を、単為結実果実を結実するその能力の解析のために選択した。これらの変異は、未成熟停止コドンをもたらすので、これらの変異遺伝子から転写された異常なmRNAは、ナンセンス変異依存性分解機構(Nonsense-Mediated Decay)(NMD)RNAサーベイランス機構を介して破壊されると予測される(例えば、Chang et al. 2007、Drechsel et al. 2013、Degtiar et al 2015)。
【0251】
この破壊が完全ではない場合には、変異mRNAは、下記の表4Bに示した末端切断型AGL6タンパク質に翻訳される。変異sg1については、翻訳された場合には、2種の異なる産物が予測され、イントロン1の3’末端およびイントロン2の第1ヌクレオチドが欠失した場合、エキソン2のすべてがスプライシングによって除去されるか、あるいは短いイントロン1がスプライシングされない。次にR
1実生の遺伝子型解析を実施した。当該解析は、実生が変異対立遺伝子についてホモ接合型(m/m)であるか、ヘテロ接合型であるか、またはAGL6対立遺伝子の野生型(+/+)についてホモ接合型であるかを決定するためにのものであり、これらは、標的部位の両端に位置するPCR産物のAclI消化抵抗性およびCas9の予測される標的に隣接するPCR産物のシーケンシングに基づく(材料および方法を参照のこと)。R
1植物の各々における導入遺伝子Cas9の存在は、PCRによって決定した(プライマーの詳細は材料および方法の記載および配列番号19~20)。植物sg4およびsg5のいくつかのR
1後代は、表4Bに示したものとは異なる新規の変異対立遺伝子を保持するか、またはAGL6の2重アレル変異となるように変異されていることがわかった。これらのすべてがCRISPR/Cas9カセットを依然として含有することから、上記知見は驚くべきことではない。変異AGL6について、ヘテロまたはホモ接合性であると遺伝子型解析で特定された植物を、親系統MP-1と隣り合わせて、温室内で栽培した。赤色果実を収穫し、秤量し、それらをその赤道で横方向に切断する前後に写真を撮り、種子の有無を記録した。表5にまとめられているように、ヘテロ接合性の後代は、種あり果実のみを有していたが、変異型SlAGL6についてホモ接合性または両アレルである後代は、単為結実果実を結実し、多くの場合、種子の数が10以下の不十分な種あり果実、および10個超の種子を含有する種あり果実も結実した。したがって、3種のCRISPR誘導変異系統の各々について
図12に示したように、単為結実植物が、種あり果実および不十分な種あり果実も産生する能力によって、変異の条件的性質は明示される。したがって、2012変異体と同様に、これらも、条件的単為結実表現型を明示している。Cas9誘導変異についてホモ接合性またはヘテロ接合性の植物で発生した代表的な単為結実および種あり果実は、
図3A~Fに示されている。
【0252】
赤色単為結実果実の胎座で見られる非常に小さい種子様構造が、早期中断胚ではなく実際に肥大した胚珠であるか否かを調べるために、花を開花期の前に雄蕊除去し、それらから発生した果実を熟した時点で解析した。表6に示したように、R
1ヘテロ接合性(+/m)後代またはMP-1(+/+)植物の雄蕊除去した花は、果実を結実しなかったのに対し、雄蕊除去したホモ接合性(m/m)の花の約50%は、果実を結実した。
図4A、
図4Bに示されるように、雄蕊除去した花から発生した果実から集められた中断胚珠は、大きさおよび外観において、同日に同じ植物から選び取られた雄蕊除去していない単為結実果実から集められたものと同様である。この観察結果は、変異SlAGL6は、真の「栄養単為結実」にもたらし、「刺激性の」単為結実ではないことを示す(Varoquaux et al 2000)。R
1単為結実植物は、2015年の夏の間、40日間支配的であった非常に極端な熱ストレス下で果実を結実し続けたが、隣り合わせで栽培した無限成長MP-1植物は、これらの条件下で果実の産生を停止した(データは示さず)。この事実は、変異AGL6によって誘導される単為結実の栄養性と適合する。
【0253】
最も重要なことに、親系統MP-1との比較において単為結実であることに加えて、Cas9カセットを欠くsg1後代は、その成長習性、葉形状、第1花序までの葉数または花粉生存力において、検出可能な表現型の変化を明示しない(
図7A~
図7Cおよび
図7E~
図7F)。ならびに果皮の外観およびその細胞形状にも、同様の大きさおよび重量の種あり野生型果実との、注目すべき違いはない(
図7G~
図7J対
図7K~
図7N)。花について認められた唯一のわずかな相違は、花弁が、野生型よりも淡く、幾分か狭くそして長いということである(
図7D)。花弁の色およびその欠刻に対するわずかな効果は、Phagl6変異を有するペチュニアにおいて実際に認められるものである(Rijpkema et al 2009)。
【0254】
実施例6
収量パラメータに対する変異SlAGL6の影響の推定は、副作用を示唆しない
AGL6変異が収穫パラメータに与え得るペナルティーを評価するための第1のステップとして、以下の3つの異なる集団における果実重量に対するその効果を調べた: 系統M82をバックグラウンドとする、分離有限成長2012 BC2F2集団、大果実、半有限成長栽培品種マルマンデと単為結実2012との間の分離F2集団、および無限成長MP-1系統をバックグラウンドとする、CRISPR/Cas9系統sg1のR1後代。2012 BC2F2集団では、総収量に対する効果も推定した。
【0255】
2012変異は、2012BC
2F
2集団の生産能力を低減することなく、収穫期を集中させ、果実重量を増加させる: 果実重量および生産能力に対する変異の効果を、変異のマッピングに使用したのと同じ2012BC
2F
2集団で評価した(以下の表3)。この集団は、受精依存性果実結実にほぼ最適な温度下で栽培した。2014年6月の初旬、具体的には、ネットハウス内の植え付けから3ヶ月半後に、材料および方法の項に記載したように、成熟した緑熟期、催色期および赤熟期の全ての果実を、SlAGL6の以下の3種の代替遺伝子型を有する10~13株の植物体から収穫した: ホモ接合性WT(+/+)対立遺伝子、ヘテロ接合性(+/m)またはホモ接合性の変異(m/m)対立遺伝子。さらに8株のM82植物からも収穫した。
図5Aに示したように、緑熟期、催色期および赤熟期の全ての果実を含む収量で表される生産能力は、変異対立遺伝子についてホモ接合性の植物から収穫した場合と、系統M82またはSlAGL6対立遺伝子について野生型ホモ接合性(+/+)もしくはヘテロ接合性(+/m)の同胞とに違いはない。さらに、変異対立遺伝子についてホモ接合性の植物は、収穫日時に赤色果実の収量が有意に高くなる、顕著に早く、より集中した収穫期によって特徴付けられた(
図5B)。収穫期の集中における相違は、
図6A~
図6Fにおいて明確に可視化されている。収穫期の集中する植物について予測されるように、収穫日時に多数の赤色果実を有する植物の樹冠(canopy)は、より少ない赤色果実を有するM82または非単為結実同胞のものよりも非常に小さい。すなわち、より多くの植物の資源が、栄養発生に投資されるよりも、市場性のある作物の生殖性発生に投資される。(m/m)植物で発生した赤色果実の平均重量は、親系統M82またはその(+/+)および(+/m)同胞から収穫された種あり赤色果実のものよりも有意に高い(
図5C)。
図8A~
図8Dに示されるように、種々の単為結実BC
2F
2植物で発生した種なし果実は、通常、完全またはほぼ完全なゼリー部を有しており、その多くにおいて、同一房で、同様の大きさの多数の果実が同期的に赤熟期に達した(
図8C)。
【0256】
大きな果実の栽培品種との交雑に由来するF
2集団における2012変異の発現は、平均果実重量を低減しない: 多くの場合において、単為結実は、種あり果実と比較して果実の大きさが低減すると主張されてきた。2012変異が大きな果実のバックグラウンドに導入された場合に、単為結実果実の発生を支持する能力の推定を開始するために、材料および方法に記載したように、2012植物を、中~大の多室果実、半有限成長オープン品種マルマンデ(www.rareseeds.com/marmande-tomato/)と交雑した。この交雑種のF
2後代の小集団を、ネットハウス内、上記BC
2F
2集団の隣で栽培した。植物をSNP3番について遺伝子型解析した。SNP3番の変異対立遺伝子が遺伝子型解析によってホモ接合性とされた植物のみから果実を集め、秤量し、種子の有無について調べた。F
2であっても、平均果実重量は、常に小さい果実の親(Perry 1915;Lippman and Tanksley 2001)のものと同様である。解析した26株の植物のうち、最大平均果実重量を有する5株の植物の中では、2株は、それらの果実のすべてではないにしてもほとんどが種なしであり(
図9A~
図9B)、別の株(525番、
図9A)は、種ありおよび種なし果実の両方を有していたので、極めて強力な単為結実表現型を示した。この予備的評価は、変異が、果実の平均重量を低減しないこと、むしろ、重量の増大につながり得ることを示す。
【0257】
sg1後代の種なし果実の重量は、親系統MP-1のものと変わらない: 驚くべきことに、植物sg1の試験した13株のR
1後代のうちの12株は、トランスジェニックカセットを欠き、一方、植物sg5の試験した後代のすべておよびsg5そのものは、それを含有していた。これは、sg1後代において、果実重量に対するAGL6変異それ自体の効果を評価することを可能にした。
図10に示したように、変異AGL6についてホモ接合性の8株の後代のうちの6株において、種なし果実の重量は、種ありヘテロ接合性同胞と、そしてより重要なことに、親系統MP-1の種あり果実と、有意な違いは見られなかった。2株におけるより低い平均重量は、房あたりの果実数が親系統よりも多いことが頻繁に発生し、このとき、通常は房上の第1果実よりも他は小さいという事実を反映している可能性が最も高い。
【0258】
AGL6誘導単為結実の条件的性質の明示
一般に、2012 BC
2F
2集団のホモ接合性変異(m/m)植物で発生した果実のほとんどが、周囲条件下で発生させた場合であっても、種なしであった。しかし、変異は、種子から繁殖されるトマトのような作物にとって重篤な弱点となる、不可避な単為結実のためのものではない。受精可能条件下での変異植物による種子結実に好都合な正確な条件は、解明されるべきもののままである。活発な花序震盪は、それなしでは主に種なしのものを結実する(データは示さず)植物から多数の種あり果実をもたらした。意図的な花序震盪の不在下では、増強された傾向を2つのパラメータと明確に関連させることができた。第1に、周囲条件下で古い植物で発生した小さい果実は、頻繁に種子を有していた。種あり果実が、同一植物で発生した種子が不十分なものまたは単為結実のものよりも大きいということは、広く受け入れられているので、これは例外的な現象である(例えば、Imanshi and Hiura 1975、Varga and Bruinsma. 1976、Carmi et al 2003)。第2に、最適温度よりも少し低い温度で結実した果実は、種子を含有することが多かった。どちらの場合も、種子の産生は、おそらくは、果実への子房拡大の速度を減速させる条件を反映し、したがって、そうでなければ急速に拡大する胚珠/果実から花柱が脱離する前の、花粉粒の完全な発芽、伸長および胚珠の受精を可能にする。多数の種あり果実も、2012×マルマンデ交雑種の(m/m)F
2後代でも発生した(
図9A~B)。同様に、周囲条件下で、MP-1をバックグラウンドとするde novo変異AGL6も、種なし果実および種あり果実の両方の形成を可能にした(表5、
図12)。
【0259】
実施例7
Slagl6は、熱ストレス下での収量を改善する
MP-1と、Slagl6についてホモ接合性であり、(R
2が)Cas9カセットを欠くsg1系統とを比較することによって、天然の熱ストレス条件下での収量を調べた。2016年4月20日にネットハウス中に植物を植え、67日後に最初の収穫を実施した。5月および6月の間の日中温度は非常に高く、(2016年5月14日から16日の)3日連続した極めて高い温度(最大日中温度38℃以上、
図13H)も含まれる。これらの天然に存在する熱ストレス条件は、小胞子形成、したがって、受精依存性果実結実を妨害すると知られている「慢性の軽度熱ストレス」の定義に当てはまる(Mesihovic et al., 2016およびその中の参考文献を参照)。
図13Aによって示されるように、これらの気候条件下で、親系統MP-1の赤色果実収量は、系統sg1のものよりも有意に低かった(約85%低い)。この違いは、系統MP-1において83%低かった、産生果実数における著しい相違(
図13B、F、G)と、また13%だけではあるが、後者において有意に低い果実重量(
図13C)を主に反映している。その他の単為結実変異体(例えば、Carmi et al., 2003、Casas Diaz et al., 1987)と同様に、赤く熟した種なし果実のBrixとして表される総可溶性固形物(TSS)含量が、MP-1の種あり果実のものよりも有意に高かったが(
図13D)、果実の酸度(pH)は、同様のままであった(
図13E)。
【0260】
表1: 85115654番ヌクレオチドと88965277番ヌクレオチド(SL2.50バージョン)との間にある、1番染色体中のSNPの説明、および2012変異の予測される位置。2つのシーケンシングされたライブラリーの各々における、野生型ヌクレオチドのリード数およびこの領域内の9つのSNPの各々における変異ヌクレオチド数が示されている。ここに示した情報は、ライブラリーあたり2レーンに由来するリードの生物情報科学解析に基づく。SNP IIおよびSNP VIIは、正準EMS誘導性移行変異ではなく、トランスバージョンを表す。
【0261】
【0262】
表2: 単為結実表現型と、表1(第2列)に特定した6つのSNPの各々との共分離についての、2012変異試験交雑集団の解析。2013年の晩夏に集団を栽培し、特徴付けた(詳細については、結果の項を参照)。m/mは変異SNPがホモ接合体、+/+は野生型SNPがホモ接合体、+/mはSNPがヘテロ接合体。96株の植物を表現型決定し、6つのSNPすべてについて試験したが、数例においては、遺伝子型解析によって最終的な結果は得られなかった。そのため、SNPの一部については、96未満の結果が示されている。
【0263】
【0264】
表3: 2012変異の分離BC2F2集団における、単為結実表現型と、SNP2番および3番の3種の異なる遺伝子型との共分離の解析。試験した498株の植物のうち、SNP3番の変異型についてホモ接合性の126株の植物は、SNP4番の遺伝子型についても解析した。注目すべきは、変異SNP3番についてホモ接合性の3株の非単為結実植物はまた、変異SNP4番についてもホモ接合性であった。集団を、2014年の晩春に栽培し、特徴付けた(詳細については、表1および結果の項を参照)。m/mは変異SNPがホモ接合体、+/+は野生型SNPがホモ接合体、+/mはSNPがヘテロ接合体。
【0265】
【0266】
表4: 研究した4種のAGL6変異の説明: EMS誘導性2012変異、およびさらに研究した3種のR0 CRISPR誘発変異であるsg1、sg4、およびsg5。Bにおいては、網掛けをしたAAは野生型AGL6タンパク質ものと異なっている。
【0267】
【0268】
表5: トマト系統MP-1のバックグラウンドにおける、3種の異なるR0 CRISPR/cas9誘導性変異AGL6植物由来のR1後代における、単為結実果実の結実に関する解析。試験したすべてのsg4の後代は、両アレル変異体またはAGL6の変異型についてホモ接合性のいずれかであることが判明した点に留意されたい。本解析には、8gを超える重量の果実のみを含めた。(+)は野生型対立遺伝子、(m)はCRISPR/cas9変異AGL6対立遺伝子の全型。果実を、以下の3つのカテゴリーに分類した:種子を全く有さない場合には単為結実(P)、数個の種子のみ(≦10個の種子)を有する場合は(F)、10個超の種子を有する場合は種あり(S)。
【0269】
【0270】
【0271】
表6: CRISPR/cas9変異植物の雄蕊除去した花からの果実結実。2015年8月31日~2015年9月8日の間に、開花期の前に花を雄蕊除去し、タグを付けた。中断花のタグを集め、記録した。2015年9月24日および30日に、雄蕊除去した花から発生した赤色の熟した果実を選び取り、解析した。
【0272】
【0273】
実施例8
条件的単為結実ナスおよびトウガラシの作製
CaAGL6(トウガラシ)またはSmAGL6(ナス)を、トマトについて記載したように(本明細書の実施例1)、種子の化学的変異誘発によって変異させる。変異誘発処理した種子から栽培し、自家受粉された植物から生じたM1変異誘発ファミリーを、例えば、TILLING技術(Till et al 2003)に従って、標的遺伝子中の変異についてスクリーニングする。標的遺伝子中に変異を保持すると同定されたファミリーを、熱ストレスまたは花の雄蕊除去のいずれかである受精制限条件下で繁殖させ、単為結実果実結実について試験する。上記の代わりに、安定な形質転換を介する、トマトについて行ったような、例えば、CRISPR/Cas9技術を利用する遺伝子編集によって、標的遺伝子中に欠失を作製する。
【0274】
以下は、CRISPRベースの遺伝子編集の標的として使用され得る例示的配列である。
【0275】
トウガラシ
>Chr01-44480416番ヌクレオチド~44480435番ヌクレオチドの間のCapana01g00134遺伝子標的
GTATCACCAAAACCCTTGAG(配列番号17)。
182番~201番ヌクレオチドの間のCapana01g00134 cDNAを標的と、切断は、198番~199番ヌクレオチドの間で起こると予測される。
【0276】
ナス
>29543番~29562番ヌクレオチド(マイナス鎖)の間のSme2.5_06058.1標的
GAGGATTAAGGCAACAACGT(配列番号18)。
204番~229番ヌクレオチドの間のSME2.5 06058.1 cDNAを標的とし、切断は、212番~213番ヌクレオチドの間で起こると予測される。
【0277】
再生された植物を、トマトおよびその後代について行ったように、標的部位中に欠失を保持するキメラ部分について解析し、変異を保持について同様にスクリーニングする。変異AGL6対立遺伝子についてホモ接合性の後代を、単為結実の表現型に解析する。
【0278】
本発明を、その特定の実施形態とともに説明してきたが、多数の代替物、改変および変法は当業者には明らかであるということは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲内に入るすべてのこのような代替物、改変および変法を包含することが意図される。
【0279】
本明細書において言及されたすべての刊行物、特許および特許出願はここで、個々の刊行物、特許または特許出願が各々、参照により本明細書に組み込まれると具体的に、個別に示された場合と同程度に、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
【0280】
さらに、本出願における任意の参考文献の引例または同定は、このような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であるという承認と考えられてはならない。節の見出しが使用される限りでは、それらは必ずしも制限と考えられてはならない。
【0281】
参考文献
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【配列表フリーテキスト】
【0282】
配列番号1: SlAG6遺伝子配列
配列番号2: SlAG6 mRNA配列
配列番号3: SlAG6アミノ酸配列
配列番号5: AGL6コード配列
配列番号6: AGL6タンパク質のアミノ酸配列
配列番号7: AGL6遺伝子配列
配列番号8: AGL6コード配列
配列番号9: AGL6タンパク質のアミノ酸配列
配列番号10: 1本鎖DNAオリゴヌクレオチド
配列番号11: 1本鎖DNAオリゴヌクレオチド
配列番号12: AclI制限酵素部位
配列番号13: 1本鎖DNAオリゴヌクレオチド
配列番号14: 1本鎖DNAオリゴヌクレオチド
配列番号15: 1本鎖DNAオリゴヌクレオチド
配列番号16: 1本鎖DNAオリゴヌクレオチド
配列番号17: Capana01g00134遺伝子のCRISPRに基づく遺伝子編集の標的として使用可能な例示的な配列
配列番号18: Sme2.5_06058.1遺伝子のCRISPRに基づく遺伝子編集の標的として使用可能な例示的な配列
配列番号19: 1本鎖DNAオリゴヌクレオチド
配列番号20: 1本鎖DNAオリゴヌクレオチド
【配列表】