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特許7019581絶縁体内径上にハーメチック燃焼シールを有するコロナ点火器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】絶縁体内径上にハーメチック燃焼シールを有するコロナ点火器
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/34 20060101AFI20220207BHJP
   H01T 13/08 20060101ALI20220207BHJP
   H01T 13/36 20060101ALI20220207BHJP
   H01T 13/50 20060101ALI20220207BHJP
   H01T 21/02 20060101ALI20220207BHJP
   H01T 13/20 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
H01T13/34
H01T13/08
H01T13/36
H01T13/50
H01T21/02
H01T13/20 E
H01T13/20 B
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2018538101
(86)(22)【出願日】2017-01-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-02-07
(86)【国際出願番号】 US2017014207
(87)【国際公開番号】W WO2017127591
(87)【国際公開日】2017-07-27
【審査請求日】2020-01-10
(31)【優先権主張番号】15/409,694
(32)【優先日】2017-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/281,856
(32)【優先日】2016-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518372567
【氏名又は名称】テネコ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TENNECO INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スブラマニアン,バラクリシュナン
【審査官】北岡 信恭
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-502778(JP,A)
【文献】特表2012-501522(JP,A)
【文献】特開2013-051196(JP,A)
【文献】特表2009-545105(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0037738(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/00-13/60
H01T 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロナ点火器であって、
孔を取り囲み、接続上端から絶縁体突出端まで延在する内面を含む絶縁体を備え、
前記絶縁体の前記内面は、前記接続上端と前記絶縁体突出端との間に電極座を含み、
前記絶縁体の前記内面は、内径を提供し、前記内径は、前記絶縁体突出端に向かう方向に前記電極座に沿って小さくなっており、
前記コロナ点火器はさらに、
前記絶縁体の前記孔の中に配置された中心電極を備え、
前記中心電極は、前記絶縁体の前記内面の前記電極座上に配置された頭部を含み、
前記コロナ点火器はさらに、
前記電極座と前記接続上端との間の前記絶縁体の前記内面上に配置された金属製コーティングを備え、
前記金属製コーティングは、前記電極座の下方の前記絶縁体の前記内面上には配置されておらず、
前記コロナ点火器はさらに、
前記絶縁体の前記内面に沿って前記電極座と前記接続上端との間に配置されたろう付け部を備える、コロナ点火器。
【請求項2】
前記ろう付け部は、前記中心電極の前記頭部と前記絶縁体の前記内面との間に位置している、請求項1に記載のコロナ点火器。
【請求項3】
前記中心電極の前記頭部上に銅ベースの粉末が配置され、前記ろう付け部は、前記銅ベースの粉末と前記絶縁体の前記内面との間に位置している、請求項1に記載のコロナ点火器。
【請求項4】
前記金属製コーティングは、モリブデンおよびマンガンの層を含む、請求項1に記載のコロナ点火器。
【請求項5】
前記金属製コーティングは、モリブデンおよびマンガンで構成される、請求項4に記載のコロナ点火器。
【請求項6】
前記金属製コーティングは、前記モリブデンおよびマンガンの層上に配置されたニッケルベースの層を含む、請求項4に記載のコロナ点火器。
【請求項7】
前記金属製コーティングは、ニッケルを含む、請求項1に記載のコロナ点火器。
【請求項8】
前記金属製コーティングは、0.1mm未満の厚みを有する、請求項1に記載のコロナ点火器。
【請求項9】
前記金属製コーティングおよび前記ろう付け部は、前記絶縁体の前記内面に沿って前記電極座と前記接続上端との間にハーメチックシールを提供する、請求項1に記載のコロナ点火器。
【請求項10】
金属からなり、前記絶縁体の周囲を取り囲むシェルをさらに備え、
前記絶縁体は、外面を含み、前記絶縁体の前記外面上に外側金属コーティングが配置され、前記シェルにニッケルベースの層が施され、前記絶縁体外面上の前記外側金属コーティングと前記シェルに施された前記ニッケルベースのコーティングとの間にろう付け部が配置される、請求項1に記載のコロナ点火器。
【請求項11】
前記外側金属コーティングは、モリブデンおよびマンガンの層と、前記モリブデンおよびマンガンの層上に配置されたニッケルベースの層とを含む、請求項10に記載のコロナ点火器。
【請求項12】
前記外側金属コーティングおよび前記ろう付け部は、前記絶縁体の前記外面と前記シェルとの間にハーメチックシールを提供する、請求項10に記載のコロナ点火器。
【請求項13】
前記中心電極は、前記頭部から点火端部まで延在し、前記中心電極は、前記点火端部に点火先端を含み、前記点火先端は、各々が径方向外向きに延在する複数の分岐部を有する、請求項1に記載のコロナ点火器。
【請求項14】
前記中心電極は、導電性材料からなっており、
前記導電性材料は、ニッケルを含み、
前記中心電極は、中心軸に沿って前記頭部から点火端部まで延在する長さを有し、
前記中心電極の前記長さの大半は、前記絶縁体によって取り囲まれ、
前記中心電極の前記頭部は、前記電極座によって軸方向位置に支持および維持され、
前記中心電極は、前記点火端部に点火先端を含み、
前記点火先端は、各々が前記中心軸から径方向外向きに延在する複数の分岐部を有し、
前記中心電極の前記点火先端は、前記絶縁体の前記絶縁体突出端を越えて長手方向に配置され、
前記中心電極の前記頭部上には電気端子が載っており、
前記絶縁体は、前記中心軸に沿って前記接続上端から前記絶縁体突出端まで長手方向に延在し、
前記絶縁体は、絶縁材料からなっており、
前記絶縁材料は、セラミックを含み、
前記絶縁体の前記内面は、前記中心軸に沿って前記接続上端から前記絶縁体突出端まで長手方向に延在し、前記中心電極および前記電気端子を受け、
前記絶縁体の前記内径は、前記中心軸をまたいで前記中心軸に垂直に延在し、前記電極座の最上部から基部へと小さくなっており、
前記絶縁体は、前記中心軸をまたいで前記中心軸に垂直に延在する外径を提供する外面を含み、
前記絶縁体の前記外面は、前記接続上端から前記絶縁体突出端まで長手方向に延在し、
前記絶縁体の前記外径は、前記絶縁体突出端に向かう前記絶縁体の部分に沿って小さくなって、絶縁体突出領域を提供し、
金属からなるシェルが、前記絶縁体の前記外面の一部を取り囲み、
前記シェルは、前記中心軸に沿ってシェル上端からシェル下端まで延在し、
前記シェル上端は、前記絶縁体と係合し、
前記シェル下端は、前記絶縁体突出領域に隣接して配置され、
前記絶縁体突出領域の少なくとも一部は、前記シェル下端の軸方向外向きに延在し、
前記金属製コーティングおよび前記ろう付け部は、前記電極座と前記接続上端との間の前記絶縁体の前記内面に沿ってハーメチックシールを提供し、
前記金属製コーティングは、モリブデンおよびマンガンの層と、前記モリブデンおよびマンガンの層に施されたニッケルベースの層とを含み、
前記金属製コーティングは、前記電極座の前記基部から前記絶縁体突出端までは位置しておらず、
前記金属製コーティングは、0.1mm未満の厚みを有し、
前記ろう付け部は、前記中心電極の前記頭部と前記絶縁体の前記内面上の前記金属製コーティングとの間に位置するか、または前記ろう付け部は、前記中心軸に沿って前記中心電極の前記頭部上に配置された銅ベースの粉末と前記絶縁体の前記内面上の前記金属製コーティングとの間に位置し、
前記ろう付け部は、前記中心電極の前記頭部に沿って位置するか、または前記ろう付け部は、前記銅ベースの粉末に沿って位置し、前記ろう付け部は、前記絶縁体の前記内面の他の部分に沿っては位置しておらず、
前記絶縁体の前記外面上に外側金属コーティングが配置され、前記外側金属コーティングは、前記シェルと接触し、
前記絶縁体の前記外面上の前記外側金属コーティングと前記シェルとの間にろう付け部が配置され、
前記外側金属コーティングは、モリブデンおよびマンガンの層と、前記モリブデンおよびマンガンの層に施されたニッケルベースの層とを含み、
前記外側金属コーティングおよび前記ろう付け部は、前記絶縁体の前記外面と前記シェルとの間にハーメチックシールを提供する、請求項1に記載のコロナ点火器。
【請求項15】
コロナ点火器の製造方法であって、
孔を取り囲み、接続上端から絶縁体突出端まで延在する内面を含む絶縁体を設けるステップを備え、前記絶縁体の前記内面は、前記接続上端と前記絶縁体突出端との間に電極座を含み、前記絶縁体の前記内面は、内径を提供し、前記内径は、前記絶縁体突出端に向かう方向に前記電極座に沿って小さくなっており、前記方法はさらに、
前記電極座と前記接続上端との間であって前記電極座の下方ではない前記絶縁体の前記内面上に金属製コーティングを配置するステップと、
前記絶縁体の前記孔の中に中心電極を配置するステップとを備え、前記中心電極は、頭部を含み、
前記絶縁体の前記孔の中に前記中心電極を配置するステップは、前記絶縁体の前記電極座上に前記中心電極の前記頭部を配置するステップを含み、前記方法はさらに、
前記電極座と前記接続上端との間の前記絶縁体の前記内面上の前記金属製コーティングを前記中心電極の前記頭部にろう付けするステップを備える、方法。
【請求項16】
前記ろう付けするステップは、前記中心電極の前記頭部を前記絶縁体の前記内面上の前記金属製コーティングにろう付けするステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
中心軸に沿って前記中心電極の前記頭部上に銅ベースの粉末を配置するステップを含み、前記ろう付けするステップは、前記銅ベースの粉末を前記絶縁体の前記内面上の前記金属製コーティングにろう付けするステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ろう付けするステップは、前記絶縁体の前記内面に沿って前記電極座と前記接続上端との間にハーメチックシールを提供するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記絶縁体は、外面を含み、前記絶縁体の前記外面上に外側金属コーティングを配置するステップと、前記絶縁体の周囲に金属からなるシェルを配置するステップと、前記外側金属コーティングを前記シェルにろう付けするステップとをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記電極座と前記接続上端との間の前記絶縁体の前記内面上に前記金属製コーティングをろう付けするステップと、前記外側金属コーティングを前記シェルにろう付けするステップとは、同時に行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
コロナ点火器であって、
孔を取り囲み、接続上端から絶縁体突出端まで延在する内面を含む絶縁体と、
前記絶縁体の前記内面上に配置された金属製コーティングと、
前記絶縁体の前記孔の中に配置された中心電極と、
前記中心電極と前記金属製コーティングとの間に配置されたろう付け部とを備え、
前記内面は、前記接続上端から前記絶縁体突出端までまっすぐに延在しており、
前記内面は、前記接続上端から前記絶縁体突出端まで前記孔の直径が一定であるように延在している、コロナ点火器。
【請求項22】
前記絶縁体の前記内面は、接続上端から絶縁体突出端まで延在する長さを有し、前記金属製コーティングは、前記内面の前記長さの少なくとも50%に沿って位置している、請求項21に記載のコロナ点火器。
【請求項23】
前記金属製コーティングは、前記接続上端から前記絶縁体突出端まで連続的に延在する、請求項22に記載のコロナ点火器。
【請求項24】
前記絶縁体の前記内面は、接続上端から絶縁体突出端まで延在する長さを有し、前記ろう付け部は、前記内面の前記長さの50%未満に沿って位置している、請求項21に記載のコロナ点火器。
【請求項25】
前記ろう付け部は、前記絶縁体の前記内面に沿って単一の位置に位置している、請求項24に記載のコロナ点火器。
【請求項26】
コロナ点火器の製造方法であって、
孔を取り囲み、接続上端から絶縁体突出端まで延在する内面を含む絶縁体を設けるステップと、
前記絶縁体の前記内面上に金属製コーティングを配置するステップと、
前記絶縁体の前記孔の中に中心電極を配置するステップと、
前記中心電極を前記金属製コーティングにろう付けするステップとを備え、前記内面は、前記接続上端から前記絶縁体突出端までまっすぐに延在しており、
前記内面は、前記接続上端から前記絶縁体突出端まで前記孔の直径が一定であるように延在している、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この米国実用特許出願は、2016年1月22日に出願された米国仮特許出願第62/281,856号および2017年1月19日に出願された米国実用特許出願第15/409,694号の利益を主張し、これらの内容全体は、引用によって本明細書に援用される。
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、一般に、燃焼シールを有するコロナ点火器、および燃焼シールを有するコロナ点火器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術
中心電極などの導電性部品と点火装置、たとえばコロナ点火器の絶縁体とを接着するためにガラスシールがしばしば用いられる。コロナ点火器のガラスシールは、一般に、絶縁体の孔の中にガラス粉末を配置し、その後絶縁体と中心電極とガラス粉末とを一緒に炉の中で焼成することによって形成される。熱によってガラスシールの特定の成分が膨張して、絶縁体と中心電極との間に接着部が形成される。別の選択肢は、中心電極と絶縁体の内面との間に真鍮シールを用いるというものである。しかし、製造業者は、接着部の品質および信頼性を向上させることにより、生産時間およびコストを最小限に抑えながら絶縁体の内面に沿ったハーメチック燃焼シールを常に実現しようと努力し続けている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一局面は、絶縁体と中心電極とを備えるコロナ点火器を提供する。絶縁体は、孔を取り囲み、接続上端から絶縁体突出端まで延在する内面を含む。絶縁体の内面は、接続上端と絶縁体突出端との間に電極座を含む。絶縁体の内面は、内径も提供し、内径は、絶縁体突出端に向かう方向に電極座に沿って小さくなっている。絶縁体の孔の中に中心電極が配置される。中心電極は、絶縁体の内面の電極座上に配置された頭部を含む。電極座と接続上端との間の絶縁体の内面上に金属製コーティングが配置され、金属製コーティングは、電極座の下方の絶縁体の内面上には配置されていない。絶縁体の内面に沿って電極座と接続上端との間にろう付け部が配置される。
【0005】
本発明の別の実施形態は、孔を取り囲む内面を含む絶縁体を備えるコロナ点火器を提供する。絶縁体の内面上に金属製コーティングが配置され、絶縁体の孔の中に中心電極が配置され、中心電極と金属製コーティングとの間にろう付け部が配置される。
【0006】
本発明の別の局面は、コロナ点火器の製造方法を提供する。当該方法は、孔を取り囲み、接続上端から絶縁体突出端まで延在する内面を含む絶縁体を設けるステップを備え、絶縁体の内面は、接続上端と絶縁体突出端との間に電極座を含み、絶縁体の内面は、内径を提供し、内径は、絶縁体突出端に向かう方向に電極座に沿って小さくなっている。また、当該方法は、電極座と接続上端との間であって電極座の下方ではない絶縁体の内面上に金属製コーティングを配置するステップと、絶縁体の孔の中に中心電極を配置するステップとを含み、中心電極は、頭部を含む。絶縁体の孔の中に中心電極を配置するステップは、絶縁体の電極座上に中心電極の頭部を配置するステップを含む。当該方法はさらに、電極座と接続上端との間の絶縁体の内面上の金属製コーティングをろう付けするステップを含む。
【0007】
本発明の別の実施形態は、コロナ点火器の製造方法を提供し、当該方法は、孔を取り囲む内面を含む絶縁体を設けるステップと、絶縁体の内面上に金属製コーティングを配置するステップと、絶縁体の孔の中に中心電極を配置するステップと、中心電極を金属製コーティングをろう付けするステップとを備える。
【0008】
金属製コーティングとろう付け部との組み合わせは、中心電極と絶縁体の内面との間に経済的で信頼できるハーメチック燃焼シールを提供する。金属製コーティングは、金属コーティングが絶縁体の外面に施されるのと同時に、絶縁体の内面に施され得る。また、ろう付けするステップは、絶縁体の外面上の金属コーティングを金属シェルにろう付けしながら行われ得る。コロナ点火器を製造するために現在用いられているプロセスは、絶縁体の外面に金属コーティングを施すステップおよび絶縁体の外面上の金属コーティングをシェルにろう付けするステップを既に含んでいるので、本発明のステップを実行するためにさらなるプロセス時間が必要とされることは一般にない。また、コロナ点火器は中心電極上にコバールワイヤを必要とせず、それによってコバールを中心電極に溶接するコストが削減される。また、絶縁体の内面上の金属製コーティングは、ガラス材料を不要にし、絶縁体内に電気的連続性を提供する手助けをするため、真鍮粉末が不要になる。
【0009】
本発明の他の利点は、添付の図面と関連付けて検討されたときに以下の詳細な説明を参照することによってよりよく理解されるので、容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】1つの例示的な実施形態に係るコロナ点火器の絶縁体および中心電極の断面図であり、当該コロナ点火器は、中心電極と絶縁体の内面との間にハーメチック燃焼シールを提供する金属製コーティングとろう付け部とを含む。
図2】別の例示的な実施形態のコロナ点火器の絶縁体および中心電極の断面図であり、当該コロナ点火器は、中心電極と絶縁体との間にハーメチック燃焼シールを提供するために、金属製コーティングと、絶縁体の内面にろう付けされた銅ベースの粉末とを含む。
図3】別の例示的な実施形態に係るコロナ点火器の断面図であり、当該コロナ点火器は、中心電極と絶縁体との間にハーメチック燃焼シールを提供する金属製コーティングとろう付け部とを含む。
図4】別の例示的な実施形態のコロナ点火器の絶縁体および中心電極の断面図であり、当該コロナ点火器は、中心電極と金属製コーティングとの間にろう付け部を含む。
図5】別の例示的な実施形態のコロナ点火器の絶縁体および中心電極の断面図であり、当該コロナ点火器は、中心電極と金属製コーティングとの間にろう付け部を含む。
図6】別の例示的な実施形態のコロナ点火器の絶縁体および中心電極の断面図であり、当該コロナ点火器は、中心電極と金属製コーティングとの間にろう付け部を含む。
【発明を実施するための形態】
【0011】
例示的な実施形態の説明
本発明の一局面は、内燃機関のためのコロナ点火器20を含み、当該コロナ点火器20は、中心電極24と絶縁体26との間にハーメチック燃焼シールを提供してエンジンの燃焼室に位置するガスが点火器20に侵入することを防止する金属製コーティング22とろう付け部23とを含む。図1図2および図4図6は、間にハーメチック燃焼シールを有する中心電極24および絶縁体26の例であり、図3は、燃焼シールを含むコロナ点火器20の例である。
【0012】
ハーメチック燃焼シールを含むコロナ点火器20は、図面に示されている設計を含むがそれらに限定されないさまざまな異なる設計を有し得る。図1図3の例示的な実施形態では、中心電極24は、絶縁体26の孔の中に配置され、中心電極24は、中心軸Aに沿って頭部28から点火端部32まで延在している。中心電極24は、ニッケルまたはニッケル合金などの導電性材料からなっている。図1図3の例示的な実施形態では、中心電極24の頭部28は、電極座33と称される絶縁体26の縮径部によって予め定められた軸方向位置に支持および維持されており、中心電極24の頭部28上には電気端子30が載っている。中心電極24の長さの大半は、絶縁体26によって取り囲まれている。また、この例示的な実施形態では、中心電極24は、点火端部32に点火先端34を含む。点火先端34は、複数の分岐部を有し、当該複数の分岐部の各々は、内燃機関でコロナ点火器20を使用する際に電場を放出してコロナ放電を提供するために中心軸Aから径方向外向きに延在している。
【0013】
図3の絶縁体26は、中心軸Aに沿って接続上端38から絶縁体突出端40まで長手方向に延在している。絶縁体26は、絶縁材料、一般にはアルミナなどのセラミックからなっている。絶縁体26は、中心電極24および恐らく他の導電性部品を受けるために接続上端38から絶縁体突出端40まで長手方向に延在する孔を取り囲む内面42も提供する。中心電極24の点火先端34は、一般に、絶縁体突出端40を越えて長手方向に配置される。上記のように、図1図3の実施形態では、絶縁体内面42は、内径Diを提供し、当該内径Diは、絶縁体突出端40に向かう絶縁体26の部分に沿って小さくなって、電極頭部28を支持する電極座33を形成する。内径Diは、中心軸Aをまたいで中心軸Aに垂直に延在している。絶縁体内径Diは、絶縁体突出端40に向かう方向である電極座33の最上部から電極座33の基部へと小さくなっている。
【0014】
例示的な実施形態の絶縁体26は、中心軸Aをまたいで中心軸Aに垂直に延在する絶縁体外径Dを有する絶縁体外面44も提供する。絶縁体外面44は、接続上端38から絶縁体突出端40まで長手方向に延在している。例示的な実施形態では、絶縁体外径Dは、絶縁体突出端40に向かう絶縁体26の部分に沿って小さくなって、絶縁体突出領域46を提供する。絶縁体外径Dは、図に示されるように、長さの他の部分に沿って変化してもよい。
【0015】
コロナ点火器20は、金属からなっており、かつ、絶縁体26の一部を取り囲むシェル52も含む。シェル52は、一般に、絶縁体26を内燃機関のシリンダブロック(図示せず)に結合するために用いられる。シェル52は、中心軸Aに沿ってシェル上端54からシェル下端56まで延在している。シェル上端54は、絶縁体上肩部50と絶縁体上端38との間に配置され、絶縁体26と係合する。シェル下端56は、絶縁体突出領域46の少なくとも一部がシェル下端56の軸方向外向きに延在するように絶縁体突出領域46に隣接して配置されている。
【0016】
上記のように、絶縁体26と中心電極24との間のハーメチック燃焼シールは、絶縁体26の内面42に金属製コーティング22を施し、次いでろう付けすることによって、提供される。図1図3の例示的な実施形態では、金属製コーティング22は、電極座33と接続上端38との間に位置している。金属製コーティング22は、さまざまな異なる組成物からなっていてもよい。一実施形態によれば、金属製コーティング22は、モリブデンおよびマンガンの層を含む。たとえば、金属製コーティング22は、モリブデンおよびマンガンで構成されてもよい。しかし、モリブデンおよびマンガンの層は、微量の他の元素または成分を含む場合がある。モリブデンおよびマンガンの層は、一般に、施されたときには酸化物を含むが、炉内での加熱後は酸化物は存在しない。別の実施形態によれば、金属製コーティング22は、無電解ニッケルめっきなどのニッケルベースの層である。たとえば、金属製コーティング22は、ニッケルで構成されてもよい。しかし、ニッケルベースの層は、微量の他の元素または成分を含む場合がある。ニッケルベースの層は、一般にニッケルオーバーレイと称され、電気めっきプロセス、電解プロセス、無電解プロセスまたは化学反応によって施すことができる。ニッケルベースの層は、一般に、ニッケル酸化物材料として施されるが、炉内での加熱後は酸化物は存在しない。好ましくは、金属製コーティング22は、モリブデンおよびマンガンの層に施されたニッケルベースの層を含む。
【0017】
図1図3の実施形態では、金属製コーティング22は、たとえば、電極座33または電極座33のわずかに上方から接続上端38または接続上端38付近まで延在する領域における絶縁体内面42の部分に沿ってのみ施されている。これらの実施形態では、金属製コーティング22は、電極頭部28を支持する電極座33の下方には位置しておらず、絶縁体26の内面42は、電極座33の基部から絶縁体突出端40まで延在する領域ではコーティングされていない。例示的な実施形態の金属製コーティング22の長さL1が図1および図2に特定されている。金属製コーティング22の厚みは、さまざまであってもよいが、一般には0.1mm未満である。
【0018】
ハーメチック燃焼シールは、絶縁体内面42に沿って中心電極24と絶縁体内面42との間に配置されたろう付け部23をさらに含む。図1図3の実施形態では、ろう付け部は、電極座33と接続上端38との間にある。図1の例では、中心電極24の頭部28は、絶縁体内面42上の金属製コーティング22に直接ろう付けされている。この場合、ろう付け部23は、中心電極24の頭部28に沿って位置しているが、絶縁体内面42の他の部分に沿っては位置していない。図2の例では、1ショットの銅ベースの粉末64が中心軸Aに沿って中心電極の頭部28上に配置され、銅ベースの粉末64は、その後、絶縁体26の内面42上の金属製コーティング22にろう付けされる。銅ベースの粉末64は、銅または銅合金で構成されてもよい。この場合、ろう付け部23は、銅ベースの粉末64に沿って位置しているが、絶縁体内面42の他の部分に沿っては位置していない。金属製コーティング22とろう付け部23との組み合わせにより、コロナ点火器20は中心電極24上にコバールワイヤを必要とせず、それによってコバールを中心電極24に溶接するコストが削減される。信頼できる燃焼シールに加えて、金属製コーティング22およびろう付け部23は、絶縁体26内に電気的連続性を提供する手助けをするため、ガラス材料または真鍮粉末が不要になる。
【0019】
コロナ点火器20の絶縁体26および中心電極24の他の例示的な実施形態が図4図6に示されている。この実施形態によれば、絶縁体26は、孔を取り囲む内面42と、内面42上に配置された金属製コーティング22と、絶縁体26の孔の中に配置された中心電極24と、中心電極24と金属製コーティング22との間に配置されたろう付け部23とを含む。しかし、この場合、中心電極24は、図1図3の実施形態に見られるように頭部28を含んでおらず、絶縁体26の内面42は、図1図3の実施形態に見られるように中心電極24を支持するための電極座33を含んでいない。もっと正確に言えば、図4図6の実施形態では、絶縁体26の内面42は、孔の直径が一定であるように接続上端38から絶縁体突出端40までまっすぐに延在しており、ろう付け部23が中心電極24を内面42上の金属製コーティング22に固定している。
【0020】
図4図6の実施形態では、金属製コーティング22は、上記のように、モリブデンおよびマンガンの層ならびに/またはニッケルベースの層を含み得る。これらの例示的な実施形態によれば、絶縁体26の内面42は、接続上端38から絶縁体突出端40まで延在する長さL2を有し、金属製コーティング22は、内面42の長さの少なくとも50%に沿って位置している。図5の実施形態では、金属製コーティング22は、内面42の長さL2の50%を上回るが100%未満にわたって位置している。図4および図6の実施形態では、金属製コーティング22は、接続上端38から絶縁体突出端40まで連続的に延在している。
【0021】
また、図4図6の実施形態では、ろう付け部23は、図1図3の実施形態に見られるように必ずしも中心電極24の最上部ではなく、中心電極24に沿って1つ以上のさまざまな位置に位置してもよい。一般に、ろう付け部23は、絶縁体26の内面42の上記長さL2の50%未満に沿って位置している。図4図6の実施形態では、ろう付け部23は、中心電極24と金属製コーティング22との間で絶縁体26の内面42に沿って単一の個別の位置に位置している。図4図6は、ろう付け部23が位置し得る場所の例を示しているが、ろう付け部23は、一般に絶縁体26の内面42に沿って一箇所にあるのみである。
【0022】
また、図4図6の実施形態では、中心電極24は、最上端60から点火端部32まで延在する長さL3を提供し、中心電極24の長さL3はさまざまであってもよい。図4および図5に示されるように、中心電極24の長さL3は、絶縁体内面42の長さL2未満である。代替的に、中心電極24の長さL3は、絶縁体内面42の長さL2に等しくてもよい。図6の実施形態では、中心電極24の長さL3は、絶縁体内面42の長さL2よりも長い。また、図4図6の実施形態では、真鍮粉末62が中心電極24の最上部に沿って位置し、絶縁体の孔の一部を充填している。
【0023】
例示的な実施形態によれば、絶縁体26の内面42に金属製コーティング22を施すことに加えて、絶縁体26の外面44に外側金属コーティング58が施される。一般に、外側金属コーティング58は、金属シェル52と接触しているが、金属シェル52と接触しない他の領域に施されてもよい。好ましくは、ニッケルベースの層も金属シェル52の内面42に施される。次いで、外側金属コーティング58は、シェル52の内面42または金属シェル52の内面42上のニッケルベースの層にろう付けされて、絶縁体26とシェル52との間に別のハーメチック燃焼シールを提供し、燃焼室からのガスがコロナ点火器20に侵入することを防止する。外面44に施された外側金属コーティング58および内面42に施された金属製コーティング22は、同一の組成を有していてもよく、または異なる組成を有していてもよい。好ましくは、コーティング22,58は、時間およびコストを削減するために、同一のプロセスステップ中に絶縁体26の内面42および外面44に施される。また、時間およびコストをさらに削減するために、絶縁体26の内面42に電極頭部28をろう付けするステップと、シェル52に絶縁体26の外面44をろう付けするステップとは、同一のプロセスステップ中に行われてもよい。また、点火ステップ数を制限することにより、シールの品質を向上させることが期待される。
【0024】
本発明の別の局面は、ハーメチック燃焼シールを有するコロナ点火器20の製造方法を提供する。図1図3のコロナ点火器20を製造するために、当該方法は、絶縁体26の外面44に外側金属コーティング58を施しながら、電極座33または電極座33付近から接続上端38または接続上端38付近まで延在する領域における絶縁体26の内面42に金属製コーティング22を施すステップを含む。これらの実施形態では、当該方法は、電極頭部28の下方に金属製コーティング22を施すステップを含まない。これらの実施形態の方法は、次いで、中心電極24の頭部28が電極座33上に載るように絶縁体26の孔の中に中心電極24を配置するステップを含む。
【0025】
中心電極24が絶縁体26に配置されると、当該方法は、絶縁体26の内面42に沿ってろう付けするステップをさらに含む。たとえば、当該方法は、絶縁体26の内面42に中心電極24の頭部28および/または1ショットの銅ベースの粉末64をろう付けするステップを含み得る。好ましくは、このステップは、金属シェル52に絶縁体26の外面44上の外側金属コーティング58をろう付けするステップと同時に行われる。このステップ中に、絶縁体26の内面42と中心電極24との間にハーメチック燃焼シールが形成され、絶縁体26の外面44と金属シェル52との間に別のハーメチック燃焼シールが形成されて、燃焼ガスが点火器20に侵入することを防止する。コロナ点火器を製造するために現在用いられているプロセスは、絶縁体26の外面に外側金属コーティング58を施すステップおよびシェル52に絶縁体26の外面44をろう付けするステップを既に含んでいるので、本発明のステップを実行するためにさらなるプロセス時間が必要とされることはない。したがって、プロセス時間またはコストを大幅に増加させることなく、信頼できるハーメチック燃焼シールが得られる。
【0026】
本発明の別の局面は、図4図6の絶縁体26および中心電極24を含むコロナ点火器20の製造方法を提供する。この場合、当該方法は、孔を取り囲む内面42を含む絶縁体26を設けるステップと、絶縁体26の内面42上に金属製コーティング22を配置するステップと、絶縁体26の孔の中に中心電極24を配置するステップと、金属製コーティング22に中心電極24をろう付けするステップとを含む。これらの実施形態によれば、絶縁体26の内面42は、接続上端38から絶縁体突出端40までまっすぐに延在しており、内面42は、電極座33を含まず、中心電極24は、頭部28を含まない。これらの実施形態によれば、ろう付け部23が中心電極24を絶縁体内面42上の金属製コーティング22に固定する。金属製コーティング22に中心電極24をろう付けするステップは、内面42の長さL2に沿って単一の個別の位置にろう付け部23を配置するステップを含み得る。
【0027】
明らかに、上記の教示に鑑みて本発明の多くの変形例および変更例が可能であり、特許請求の範囲の範囲内であれば、具体的に記載されているのとは異なる態様で実施されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6