(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】核酸プロドラッグ
(51)【国際特許分類】
C07H 19/207 20060101AFI20220207BHJP
C07H 19/10 20060101ALI20220207BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20220207BHJP
A61K 31/7072 20060101ALI20220207BHJP
A61K 31/7076 20060101ALI20220207BHJP
A61K 31/708 20060101ALI20220207BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220207BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220207BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20220207BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220207BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
C07H19/207 CSP
C07H19/10
A61K31/7068
A61K31/7072
A61K31/7076
A61K31/708
A61P43/00 111
A61P43/00 123
A61P1/16
A61P1/00
A61P25/00
A61P21/00
(21)【出願番号】P 2018545120
(86)(22)【出願日】2016-11-16
(86)【国際出願番号】 US2016062271
(87)【国際公開番号】W WO2017087517
(87)【国際公開日】2017-05-26
【審査請求日】2019-08-20
(32)【優先日】2015-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520051964
【氏名又は名称】アヴァロ セラピューティクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】クラッチャー,パトリック
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-506913(JP,A)
【文献】国際公開第2007/056596(WO,A1)
【文献】特表2003-505466(JP,A)
【文献】特表2008-533191(JP,A)
【文献】国際公開第2017/079195(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 19/207
C07H 19/10
A61K 31/7068
A61K 31/7072
A61K 31/7076
A61K 31/708
A61P 43/00
A61P 1/16
A61P 1/00
A61P 25/00
A61P 21/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の構造を有する化合物または製薬上許容されるその塩:
【化1】
(I)
[式中、
R
1は、アリールまたはヘテロアリールであり;
R
2およびR
2'は、それぞれ独立に、水素、アルキル
またはアラルキ
ルであり;
R
3は、アルキルまたはアラルキルであり;
R
4は、水素もしくはアルキルであるか;または
R
2およびR
4が、それらを分離している-C-N-部分と一緒になって複素環を形成し;かつ
NTは、
アデニン、グアニン、シトシンまたはチミンである]
であって、R
3がメチルであり、R
1がフェニル、フルオロフェニルまたはナフチルであり、R
4がHであり、R
2およびR
2'の一方のみがメチルである場合、NTは
【化2】
ではなく、R
3がメチル
、イソプロピルまたはベンジルであり、R
1がフェニル、フルオロフェニルまたはナフチルであり、R
4がHであり、R
2およびR
2'の一方または双方がアルキル基である場合、NTは
【化3】
ではなく、R
3がメチルであり、R
1がフェニルまたはナフチルであり、R
4がHであり、かつR
2およびR
2'の一方がメチルである場合、NTは
【化4】
ではない、上記化合物または製薬上許容されるその塩。
【請求項2】
NTがアデニン、グアニン、
およびチミンから選択され
る、請求項
1に記載の化合物。
【請求項3】
NTが
グアニンおよびチミンから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
NTが、以
下:
【化5】
から選択され、さらに、R
5がアルキルまたはアラルキルである、請求項
3に記載の化合物。
【請求項5】
R
5がメチル、エチル、イソプロピル、またはベンジルである、請求項
4に記載の化合物。
【請求項6】
R
5がメチルである、請求項
5に記載の化合物。
【請求項7】
R
1がフェニル、ナフチル、または4-フルオロフェニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
R
1がナフチルまたはフェニルである、請求項
7に記載の化合物。
【請求項9】
R
1がナフチルである、請求項
8に記載の化合物。
【請求項10】
R
2がアルキルまたはアラルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
R
2がメチル、イソプロピル、またはベンジルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
R
2がメチルである、請求項
11に記載の化合物。
【請求項13】
R
2が結合している炭素がL立体配置で配置される、請求項
1に記載の化合物。
【請求項14】
R
2'がH、アルキルまたはアラルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
R
2'がHである、請求項
14に記載の化合物。
【請求項16】
R
2'がメチルである、請求項
14に記載の化合物。
【請求項17】
R
3がメチル、ベンジル、ネオペンチルまたはイソプロピルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
R
3がイソプロピルである、請求項
17に記載の化合物。
【請求項19】
R
4が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
R
4がメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項21】
R
2およびR
4が、それらを分離している-C-N-部分と一緒になって、5~10原子複素環を形成している、請求項1に記載の化合物。
【請求項22】
R
2およびR
4が、それらを分離している-C-N-部分と一緒になって、ピロリジン環を形成している、請求項
21に記載の化合物。
【請求項23】
前記化合物が、以下の化合物:
【化6】
または製薬上許容されるその塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項24】
式(I)の構造を有する請求項1に記載の化合物または製薬上許容されるその塩:
【化7】
(I)
[式中、
R
1は、アリールまたはヘテロアリールであり;
R
2は、水素、アルキルまたはアラルキルであり;
R
2'は、水素であり;
R
3は、アルキルまたはアラルキルであり;
R
4は、水素またはアルキルであり;かつ
NTは、アデニン、グアニン、シトシン、またはチミンである]
であって、R
3がメチルであり、R
1がフェニル、フルオロフェニルまたはナフチルであり、R
4がHであり、R
2およびR
2'の一方のみがメチルである場合、NTは
【化8】
ではなく、そしてR
3がメチル
、イソプロピルまたはベンジルであり、R
1がフェニル、フルオロフェニルまたはナフチルであり、R
4がHであり、R
2およびR
2'の一方または双方がアルキル基である場合、NTは
【化9】
ではない、上記化合物または製薬上許容されるその塩。
【請求項25】
R
1がフェニル、ナフチル、または4-フルオロフェニルである、請求項
24に記載の化合物。
【請求項26】
R
1がナフチルである、請求項
25に記載の化合物。
【請求項27】
R
2がメチルである、請求項
24~26のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項28】
R
3がメチル、ベンジル、ネオペンチルまたはイソプロピルである、請求項
24~27のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項29】
R
4が水素である、請求項
24~28のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項30】
以下に示される化合物
【化10】
のうちの1種である、請求項
24に記載の化合物。
【請求項31】
請求項1~
30のいずれか1項に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項32】
請求項1~
30のいずれか1項に記載の化合物または請求項
31に記載の組成物を含有する、ミトコンドリアDNA枯渇症候群を治療するための治療剤。
【請求項33】
前記ミトコンドリアDNA枯渇症候群が、DGUOK欠損症、TK2欠損症、MNGIE、POLG欠損症、アルパーズ症候群(Alpers-Huttenlocher syndrome)、SANDO症候群、MIRAS、MPV17関連肝脳ミオパチー、もしくはRRM2B関連ミオパチーであるか、または、該ミトコンドリアDNA枯渇症候群が、TK2、DGUOK、POLG、MPV17、RRM2B、SUCLA2、SUCLG1、TYMP、C10orf2、またはSAMHD1中の突然変異に連鎖する、請求項
32に記載の治療剤。
【請求項34】
前記ミトコンドリアDNA枯渇症候群がDGUOK欠損症であり、かつNTがアデニンまたはグアニンである、請求項
33に記載の治療剤。
【請求項35】
前記ミトコンドリアDNA枯渇症候群がTK2欠損症であり、かつNTがシトシンまたはチミンである、請求項
33に記載の治療剤。
【請求項36】
前記ミトコンドリアDNA枯渇症候群がMNGIEであり、かつNTがシトシンである、請求項
33に記載の治療剤。
【請求項37】
前記ミトコンドリアDNA枯渇症候群がPOLG欠損症である、請求項
33に記載の治療剤。
【請求項38】
NTがアデニン
またはグアニ
ンである、請求項
37に記載の治療剤。
【請求項39】
前記ミトコンドリアDNA枯渇症候群がDGUOK欠損症であり、かつNTがアデニン
またはグアニ
ンである、請求項
33に記載の治療剤。
【請求項40】
前記ミトコンドリアDNA枯渇症候群がTK2欠損症であり、かつNTがシトシン
またはチミ
ンである、請求項
33に記載の治療剤。
【請求項41】
前記ミトコンドリアDNA枯渇症候群がMNGIEであり、かつNTがシトシ
ンである、請求項
33に記載の治療剤。
【請求項42】
前記ミトコンドリアDNA枯渇症候群がMPV17関連肝脳ミオパチーであるかまたはMPV17中の突然変異に連鎖するものであり、かつNTがアデニン
またはグアニ
ンである、請求項
33に記載の治療剤。
【請求項43】
前記ミトコンドリアDNA枯渇症候群がSAMDH1中の突然変異に連鎖し、かつNTがアデニン、グアニン、チミン
またはシトシ
ンである、請求項
33に記載の治療剤。
【請求項44】
前記ミトコンドリアDNA枯渇症候群がRR2MB中の突然変異に連鎖し、かつNTがアデニン、グアニン、チミン
またはシトシ
ンである、請求項
33に記載の治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、その内容が参照により本明細書に完全に組み入れられる2015年11月16日出願の米国特許仮出願第62/255,829号に基づく優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、ヌクレオチドプロドラッグおよびその医薬調製物に関する。本発明はさらに、本発明の新規プロドラッグを用いる治療方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ミトコンドリアDNA(mtDNA)枯渇症候群(MDS)とは、罹患組織および器官中での呼吸鎖欠乏を引き起こすmtDNA含有量の重大な減少を特徴とする遺伝的障害の群を包含する。MDSは、ミトコンドリアヌクレオチド合成、デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)代謝またはmtDNA複製のいずれかで機能する核遺伝子中の突然変異により引き起こされる、mtDNA維持での欠陥に起因して生じる。未知の病態生理を有する数種のMDSも存在する。
【0004】
一部の例示的MDSは、デオキシグアノシンキナーゼ(DGUOK)欠損症、チミジンキナーゼ2(TK2)欠損症、ミトコンドリア神経胃腸管脳筋症(mitochondrial neurogastrointestinal encephalomyopathy(MNGIE))、ミトコンドリアDNAポリメラーゼ(POLG)欠損症(アルパーズ症候群(Alpers-Huttenlocher syndrome)、SANDO症候群、MIRAS等を含む)、MPV17関連肝脳ミオパチーおよびRRM2B関連ミオパチーである。既知の突然変異の中には、MDSに連鎖するとされている10種類を超える遺伝子がある(TK2、DGUOK、POLG、MPV17、RRM2B、SUCLA2、SUCLG1、TYMP、C10orf2、およびSAMHD1)。
【0005】
ヌクレオシド、デオキシリボヌクレオシド一リン酸(dNMP)、デオキシリボヌクレオシド二リン酸(dNDP)またはdNTPを用いる直接的な補充は、MDSのin vitroモデルでのmtDNA枯渇をレスキューし、かつin vivoでのMDSの動物モデルでの全体的な生存率を向上させる能力を有することが示されている。しかしながら、ヒトでのMDSに対する実用的な治療としての、ヌクレオシド、dNMP、dNDPおよびdNTPに関する薬理学的有望性は低い。dNMP、dNDPおよびdNTPの負に荷電したリン酸が、細胞膜を通した拡散を妨げる。さらに、細胞内および細胞外のホスファターゼが、所望の作用部位に到達する前に、dNMP、dNDPおよびdNTPをヌクレオシド塩基へと効率的に脱リン酸化する。ヌクレオシド塩基は、受動的および能動的輸送メカニズムを介して細胞に侵入することができるが、ヌクレオシドからdNMPへのリン酸化がヌクレオチド合成の律速段階であり、多くの場合には、MDS患者はこの変換を担う酵素を欠損していることを考慮すれば、MDSの欠陥をヌクレオシド塩基自体が解決することはできない。そのような考察により、治療的有用性を達成する可能性のためには、高用量のヌクレオシド、dNMP、dNDPまたはdNTPが必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
つまり、MDSに対する新規療法、特に、ミトコンドリアに対してdNMP、dNDPまたはdNTPを効率的に提供することができる療法に関する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
特定の実施形態では、本発明は、式(I):
【0008】
【0009】
の構造を有する化合物または製薬上許容されるその塩および/もしくはプロドラッグを提供する。式(I)の構造中:
R1は、アリールまたはヘテロアリールであり;
R2およびR2'は、それぞれ独立に、水素、アルキルまたはアラルキルであり;
R3は、アルキルまたはアラルキルであり;
R4は、水素もしくはアルキルであるか;または
R2およびR4が、それらを分離している-C-N-部分と一緒になって複素環を形成することができ;かつ
NTは、アデニン、グアニン、シトシン、もしくはチミン、またはアデニン、グアニン、シトシン、もしくはチミンプロドラッグ部分などの核酸塩基プロドラッグ部分である。
【0010】
式(I)の例示的化合物としては、表1に示される化合物が挙げられる。
【0011】
本発明はさらに、対象化合物の医薬組成物、ならびにMDS(デオキシグアノシンキナーゼ(DGUOK)欠損症、チミジンキナーゼ2(TK2)欠損症、ミトコンドリア神経胃腸管脳筋症(MNGIE)、ミトコンドリアDNAポリメラーゼ(POLG)欠損症(アルパーズ症候群(Alpers-Huttenlocher syndrome)、SANDO症候群、MIRAS等を含む)、MPV17関連肝脳ミオパチー、またはRRM2B関連ミオパチーなど)の治療での;またはTK2、DGUOK、POLG、MPV17、RRM2B、SUCLA2、SUCLG1、TYMP、C10orf2、もしくはSAMHD1中の突然変異に連鎖するミトコンドリアDNA枯渇症候群の治療での、これらの化合物または組成物の使用方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】患者由来線維芽細胞でのmtDNA枯渇をレスキューする本発明の特定の化合物の能力に関する研究結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
特定の実施形態では、本発明は、式(I):
【0014】
【0015】
の構造を有する化合物および製薬上許容されるその塩および/もしくはプロドラッグを提供し、式中:R1は、アリールまたはヘテロアリールであり;R2およびR2'は、それぞれ独立に、水素、アルキルまたはアラルキルであり;R3は、アルキルまたはアラルキルであり;R4は、水素もしくはアルキルであるか;または、R2およびR4が、それらを分離している-C-N-部分と一緒になって複素環を形成することができ;かつNTは、アデニン、グアニン、シトシン、もしくはチミンなどの核酸塩基、またはアデニン、グアニン、シトシン、もしくはチミンプロドラッグ部分などの核酸塩基プロドラッグ部分である。
【0016】
式(I)の一部の実施形態では、NTは、以下の構造を有するグアニンプロドラッグ部分である:
【0017】
【0018】
[式中、R5は、アルキルもしくはアラルキルである]。一部の実施形態では、NTは、以下の構造を有するチミンプロドラッグ部分である:
【0019】
【0020】
[式中、R5は、アルキルもしくはアラルキルである]。一部の好ましい実施形態では、NTは、以下の構造を有する部分である:
【0021】
【0022】
式(I)の一部の実施形態では、NTは、天然の核酸塩基などの核酸塩基である。一部のそのような実施形態では、NTはアデニンである。他のそのような実施形態では、NTはグアニンである。また他のそのような実施形態では、NTはシトシンである。さらに他のそのような実施形態では、NTはチミンである。
【0023】
式(I)の一部の実施形態では、R1は、フェニル、ナフチル、または4-フルオロフェニルなどのC6-C20アリールまたは5~20原子のヘテロアリールである。一部の好ましい実施形態では、R1はナフチルである。他の好ましい実施形態では、R1はフェニルである。
【0024】
式(I)の一部の実施形態では、R2およびR2'は、それぞれ独立に、水素、C1-C6アルキル、もしくはC7-C16アラルキル、または天然アミノ酸側鎖から選択される。一部の実施形態では、R2は、水素またはC1-C6アルキルから選択される。一部の好ましい実施形態では、R2は、水素、メチル、イソプロピル、またはベンジルであり、最も好ましくはメチルである。他の好ましい実施形態では、R2は天然アミノ酸側鎖である。一部の好ましい実施形態では、R2'はメチルである。他の好ましい実施形態では、R2'はHである。
【0025】
式(I)の一部の実施形態では、R2が結合している炭素は、S立体配置にある。他の実施形態では、R2が結合している炭素は、R立体配置にある。一部の実施形態では、R2が結合している炭素は、D立体配置にある。特定の好ましい実施形態では、R2が結合している炭素は、L立体配置にある(すなわち、R2がL立体配置で配置される)。これらの実施形態に従えば、式(I)の変数のうちの残りは、上記または下記に説明される通りに選択されることができる。
【0026】
式(I)の一部の実施形態では、R3は、C1-C6アルキルまたはC7-C11アラルキルなどのC1-C6アルキルまたはC7-C16アラルキルから選択される。一部の好ましい実施形態では、R3は、水素、メチル、イソプロピル、ネオペンチル、またはベンジルである。
【0027】
式(I)の一部の実施形態では、R4は、水素またはC1-C3アルキルなどの水素またはC1-C6アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、またはイソプロピル)から選択される。一部の好ましい実施形態では、R4はメチルである。他の好ましい実施形態では、R4は水素である。
【0028】
一部の実施形態では、R2およびR4が、それらを分離している-C-N-部分と一緒になって、5原子複素環などの5~10原子複素環を形成する。一部の好ましい実施形態では、R2およびR4が、それらを分離している-C-N-部分と一緒になって、例えば、プロリン中のように、ピロリジン環を形成する。
【0029】
式(I)の一部の実施形態では、R5は、C1-C6アルキルまたはC7-C11アラルキルなどのC1-C6アルキルまたはC7-C16アラルキル(例えば、メチル、エチル、イソプロピル、またはベンジル)から選択される。一部の好ましい実施形態では、R5はエチルである。一部の好ましい実施形態では、R5はメチルである。
【0030】
特定の実施形態では、本発明は、式(Ia):
【0031】
【0032】
の構造を有する化合物および製薬上許容されるその塩および/もしくはプロドラッグを提供し、式中:R1は、アリールまたはヘテロアリールであり;R2は、水素、アルキルまたはアラルキルであり;R3は、アルキルまたはアラルキルであり;R4は、水素またはアルキルであり;かつNTは、アデニン、グアニン、シトシン、またはチミンである。
【0033】
式(Ia)のさらなる実施形態では、R1は、フェニル、ナフチル、もしくは4-フルオロフェニルであり;R2はメチルであり、かつR2が結合している炭素がL立体配置にあり;R3は、メチル、ベンジル、もしくはイソプロピルであり;またはR4は水素である。さらなる実施形態では、R1は、フェニル、ナフチル、もしくは4-フルオロフェニルであり;R2はメチルであり、かつR2が結合している炭素がL立体配置にあり;R3は、メチル、ベンジル、もしくはイソプロピルであり;かつR4は水素である。一部の好ましい実施形態では、R1はナフチルである。一部の好ましい実施形態では、R1はフェニルである。
【0034】
特定の実施形態では、本発明は、表1に示される構造の化合物、ならびに製薬上許容されるその塩およびプロドラッグに関する。
【0035】
【0036】
式(I)の一部の好ましい実施形態では、化合物は、化合物1017または製薬上許容されるその塩である:
【0037】
【0038】
式(I)または式(Ia)の一部の好ましい実施形態では、化合物は、化合物15である:
【0039】
【0040】
これらの化合物はdNMPのプロドラッグであり、かつMDSを治療するために、またはdNMPプロドラッグ、もしくはdNMPそれ自体が疾患の治療に有用であるいずれかの他の目的のために、用いることができる。
【0041】
これらの化合物は、それらの計算上のlog P値(オクタノール/水分配)、log S値(水への溶解度)、およびTPSA値(合計極性表面積)がすべて、それらが効率的に細胞膜を通過し、かつ生物学的流体中で容易に溶媒和されるであろうことを示すことを考慮すれば、望ましい物理化学的特性を有することが予測される。それらの計算値を、表2に示す。
【0042】
【0043】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、例えば、親化合物中のヒドロキシルがエステルもしくはカーボネートとして提示されるか、または親化合物中に存在するカルボン酸がエステルとして提示される、表1の化合物のプロドラッグであり得る。特定のそのような実施形態では、プロドラッグは、in vivoで、活性な親化合物へと代謝される(例えば、エステルが、対応するヒドロキシルまたはカルボン酸へと加水分解される)。
【0044】
特定の実施形態では、本発明の化合物はラセミ化合物であり得る。特定の実施形態では、本発明の化合物は、1種類のエナンチオマーについて富化されていてもよい。例えば、本発明の化合物は、30%ee超、40%ee超、50%ee超、60%ee超、70%ee超、80%ee超、90%ee超、または95%ee超もしくはそれ以上を有し得る。特定の実施形態では、本発明の化合物は、2種類以上の立体中心を有することができる。特定のそのような実施形態では、本発明の化合物は、1種以上のジアステレオマーについて富化されていることができる。例えば、本発明の化合物は、30%de超、40%de超、50%de超、60%de超、70%de超、80%de超、90%de超、または95%de超もしくはそれ以上を有し得る。
【0045】
特定の実施形態では、本発明は、式(I)もしくは(Ia)の化合物、または表1から選択される化合物、または製薬上許容されるその塩を用いる治療方法に関する。特定の実施形態では、方法は、それを必要とする患者に該化合物を投与するステップを含む。特定の実施形態では、治療用調製物は、化合物の(例えば、表1から選択される化合物の)1種類のエナンチオマーを優勢に提供するために、富化されていてもよい。エナンチオマー的に富化された混合物は、例えば、少なくとも60molパーセントの1種類のエナンチオマー、またはより好ましくは少なくとも75、90、95、もしくは99molパーセントでさえある1種類のエナンチオマーを含むことができる。特定の実施形態では、1種類のエナンチオマーについて富化された化合物は、他のエナンチオマーを実質的に含まず、このとき、実質的に含まないとは、対象となる物質が、例えば、組成物または化合物混合物中で、他のエナンチオマーの量と比較した場合に、10%未満、または5%未満、または4%未満、または3%未満、または2%未満、または1%未満を構成することを意味する。例えば、組成物または化合物混合物が98グラムの第1のエナンチオマーおよび2グラムの第2のエナンチオマーを含有する場合に、98molパーセントの第1のエナンチオマーおよびわずか2%の第2のエナンチオマーを含有すると述べられるであろう。
【0046】
特定の実施形態では、治療用調製物は、化合物の(例えば、表1から選択される化合物の)1種類のジアステレオマーを優勢に提供するために、富化されていてもよい。ジアステレオマー的に富化された混合物は、例えば、少なくとも60molパーセントの1種類のジアステレオマー、またはより好ましくは少なくとも75、90、95、もしくは99molパーセントでさえある1種類のジアステレオマーを含むことができる。
【0047】
特定の実施形態では、本発明は、表1から選択される化合物、または製薬上許容されるその塩を用いる治療方法に関する。特定の実施形態では、治療用調製物は、化合物の(例えば、表1から選択される化合物の)1種類のエナンチオマーを優勢に提供するために、富化されていてもよい。エナンチオマー的に富化された混合物は、例えば、少なくとも60molパーセントの1種類のエナンチオマー、またはより好ましくは少なくとも75、90、95、もしくは99molパーセントでさえある1種類のエナンチオマーを含むことができる。特定の実施形態では、1種類のエナンチオマーについて富化された化合物は、他のエナンチオマーを実質的に含まず、このとき、実質的に含まないとは、対象となる物質が、例えば、組成物または化合物混合物中で、他のエナンチオマーの量と比較した場合に、10%未満、または5%未満、または4%未満、または3%未満、または2%未満、または1%未満を構成することを意味する。例えば、組成物または化合物混合物が98グラムの第1のエナンチオマーおよび2グラムの第2のエナンチオマーを含有する場合に、98molパーセントの第1のエナンチオマーおよびわずか2%の第2のエナンチオマーを含有すると述べられるであろう。
【0048】
特定の実施形態では、治療用調製物は、化合物の(例えば、表1から選択される化合物の)1種類のジアステレオマーを優勢に提供するために、富化されていてもよい。ジアステレオマー的に富化された混合物は、例えば、少なくとも60molパーセントの1種類のジアステレオマー、またはより好ましくは少なくとも75、90、95、もしくは99molパーセントでさえある1種類のジアステレオマーを含むことができる。
【0049】
特定の実施形態では、本発明は、上記に示される化合物のうちのいずれか(例えば、式(I)もしくは(Ia)の化合物、または表1から選択される化合物などの本発明の化合物)、および1種以上の製薬上許容される賦形剤を含む、ヒト患者での使用に好適な医薬調製物を提供する。特定の実施形態では、医薬調製物は、本明細書中に記載される状態もしくは疾患の治療または予防での使用のためのものであり得る。特定の実施形態では、医薬調製物は、ヒト患者での使用に好適であるために十分に低いパイロジェン活性を有する。
【0050】
上記の構造のいずれかの化合物は、本明細書中に開示されるいずれかの疾患または状態の治療のための医薬の製造で用いることができる。
定義
用語「アシル」は、当技術分野で認識され、一般式:ヒドロカルビルC(O)-、好ましくはアルキルC(O)-により表わされる基を意味する。
【0051】
用語「アシルアミノ」は、当技術分野で認識され、アシル基で置換されたアミノ基を意味し、例えば、式:ヒドロカルビルC(O)NH-により表わすことができる。
【0052】
用語「アシルオキシ」は、当技術分野で認識され、一般式:ヒドロカルビルC(O)O-、好ましくはアルキルC(O)O-により表わされる基を意味する。
【0053】
用語「アルコキシ」とは、それに結合した酸素を有するアルキル基、好ましくは低級アルキル基を意味する。代表的なアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert-ブトキシなどが挙げられる。
【0054】
用語「アルコキシアルキル」とは、アルコキシ基で置換されたアルキル基を意味し、一般式:アルキル-O-アルキルにより表わすことができる。
【0055】
用語「アルケニル」とは、本明細書中で用いる場合、少なくとも1個の二重結合を含む脂肪族基を意味し、「非置換アルケニル」および「置換アルケニル」の両方を含むことが意図され、そのうちの後者は、アルケニル基の1個以上の炭素上の水素を置き換える置換基を有するアルケニル部分を意味する。そのような置換基は、1個以上の二重結合中に含まれるかまたは含まれない1個以上の炭素上に存在することができる。さらに、そのような置換基としては、安定性が妨害的(prohibitive)である場合を除いて、下記で議論される通りの、アルキル基に対して考慮されるものすべてが挙げられる。例えば、1個以上のアルキル基、カルボシクリル基、アリール基、ヘテロシクリル基、またはヘテロアリール基によるアルケニル基の置換が考慮される。
【0056】
「アルキル」基または「アルカン」は、完全に飽和している、直鎖または分岐鎖非芳香族炭化水素である。典型的には、直鎖または分岐鎖アルキル基は、別途規定されない限り、1~約20個の炭素原子、好ましくは1~約10個の炭素原子を有する。直鎖および分岐鎖アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ペンチルおよびオクチルが挙げられる。C1-C6直鎖または分岐鎖アルキル基はまた、「低級アルキル」基とも称される。
【0057】
さらに、用語「アルキル」(または「低級アルキル」)は、本明細書、実施例および特許請求の範囲の全体にわたって用いられる場合、「非置換アルキル」および「置換アルキル」の両方を含むことが意図され、そのうちの後者は、炭化水素骨格の1個以上の炭素上の水素を置き換える置換基を有するアルキル部分を意味する。そのような置換基とは、別途指定されない場合には、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、またはアシルなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテート、またはチオホルメートなど)、アルコキシ、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分が挙げられる。適切な場合、炭化水素鎖上で置換された部分はそれ自体が置換され得ることは、当業者には理解されるであろう。例えば、置換アルキルの置換基としては、置換型および非置換型の、アミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスホネートおよびホスフィネートを含む)、スルホニル(スルフェート、スルホンアミド、スルファモイルおよびスルホネートを含む)、およびシリル基、ならびにエーテル、アルキルチオ、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレート、およびエステルを含む)、-CF3、-CNなどが挙げられる。例示的な置換アルキルは、下記に記載される。シクロアルキルは、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノアルキル、カルボニル置換アルキル、-CF3、-CNなどでさらに置換され得る。
【0058】
アシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアルコキシなどの化学的部分との関連で用いられる場合、用語「Cx-y」は、鎖中にx~y個の炭素を含む基を含むことを意味する。例えば、用語「Cx-yアルキル」とは、鎖中にx~y個の炭素を含む直鎖アルキル基および分岐鎖アルキル基を含む、置換または非置換飽和炭化水素基を意味し、トリフルオロメチルおよび2,2,2-トリフルオロエチル等のハロアルキル基が含まれる。C0アルキルとは、基が末端位置にある場合には水素を示し、内部にある場合には結合を示す。用語「C2-yアルケニル」および「C2-yアルキニル」とは、上記のアルキルと長さおよび可能な置換では類似するが、それぞれ少なくとも1個の二重結合または三重結合を含む、置換または非置換不飽和脂肪族基を意味する。
【0059】
用語「アルキルアミノ」とは、本明細書中で用いる場合、少なくとも1個のアルキル基で置換されたアミノ基を意味する。
【0060】
用語「アルキルチオ」とは、本明細書中で用いる場合、アルキル基で置換されたチオール基を意味し、一般式:アルキルS-により表わすことができる。
【0061】
用語「アルキニル」とは、本明細書中で用いる場合、少なくとも1個の三重結合を含む脂肪族基を意味し、「非置換アルキニル」および「置換アルキニル」の両方を含むことが意図され、そのうちの後者は、アルキニル基の1個以上の炭素上の水素を置き換える置換基を有するアルキニル部分を意味する。そのような置換基は、1個以上の三重結合中に含まれるかまたは含まれない1個以上の炭素上に存在することができる。さらに、そのような置換基としては、安定性が妨害的である場合を除いて、上記で議論される通りの、アルキル基に対して考慮されるものすべてが挙げられる。例えば、1個以上のアルキル基、カルボシクリル基、アリール基、ヘテロシクリル基、またはヘテロアリール基によるアルキニル基の置換が考慮される。
【0062】
用語「アミド」とは、本明細書中で用いる場合、基:
【0063】
【0064】
[式中、各R10は独立に、水素もしくはヒドロカルビル基を表わすか、または2個のR10が、それらが結合しているN原子と一緒になって、環構造中に4~8個の原子を有する複素環を完成させる]
を意味する。
【0065】
用語「アミン」および「アミノ」は、当技術分野で認識され、非置換および置換アミンの両方ならびにその塩、例えば:
【0066】
【0067】
[式中、各R10は独立に、水素もしくはヒドロカルビル基を表わすか、または2個のR10が、それらが結合しているN原子と一緒になって、環構造中に4~8個の原子を有する複素環を完成させる]
により表わすことができる部分を意味する。
【0068】
用語「アミノアルキル」とは、本明細書中で用いる場合、アミノ基で置換されたアルキル基を意味する。
【0069】
用語「アラルキル」とは、本明細書中で用いる場合、アリール基で置換されたアルキル基を意味する。
【0070】
用語「アリール」には、本明細書中で用いる場合、環の各原子が炭素である、置換または非置換単環芳香族基が含まれる。好ましくは、環は、5~7員環、より好ましくは6員環である。用語「アリール」にはまた、2個以上の炭素が2個の連結された環に共通である、2個以上の環式環を有する多環式環系も含まれ、このとき、環のうちの少なくとも一方が芳香族であり、例えば、他方の環式環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、および/またはヘテロシクリルであり得る。アリール基としては、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、フェノール、アニリンなどが挙げられる。
【0071】
用語「カルバメート」は、当技術分野で認識され、基:
【0072】
【0073】
[式中、R9およびR10が独立に、水素もしくはアルキル基などのヒドロカルビル基を表わすか、またはR9およびR10が、介在する原子と一緒になって、環構造中に4~8個の原子を有する複素環を完成させる]
を意味する。
【0074】
用語「炭素環」(carbocycle)、および「炭素環式」(carbocyclic)とは、本明細書中で用いる場合、環の各原子が炭素である、飽和または不飽和環を意味する。炭素環との用語には、芳香族炭素環および非芳香族炭素環の両方が含まれる。非芳香族炭素環としては、すべての炭素原子が飽和しているシクロアルカン環、および少なくとも1個の二重結合を含むシクロアルケン環の両方が挙げられる。「炭素環」としては、5~7員単環式環および8~12員二環式環が挙げられる。二環式炭素環の各環は、飽和環、不飽和環および芳香族環から選択することができる。炭素環には、1個、2個もしくは3個またはそれ以上の原子が2個の環の間で共有されている、二環式分子が含まれる。用語「縮合炭素環」とは、環のうちのそれぞれが、2個の隣接原子を他方の環と共有する、二環式炭素環を意味する。縮合炭素環の各環は、飽和環、不飽和環および芳香族環から選択することができる。例示的な実施形態では、芳香族環(例えば、フェニル)が、飽和または不飽和環(例えば、シクロヘキサン、シクロペンタン、またはシクロヘキセン)に縮合していることができる。価数が許容する場合には、飽和環、不飽和環および芳香族二環式環のいずれの組み合わせでも、炭素環の定義に含められる。例示的「炭素環」としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,5-シクロオクタジエン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、ビシクロ[4.2.0]オクタ-3-エン、ナフタレンおよびアダマンタンが挙げられる。例示的な縮合炭素環としては、デカリン、ナフタレン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、ビシクロ[4.2.0]オクタン、4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-インデンおよびビシクロ[4.1.0]ヘプタ-3-エンが挙げられる。「炭素環」は、水素原子を担持することが可能であるいずれか1個以上の位置で置換されていてもよい。
【0075】
「シクロアルキル」基は、完全に飽和している環状炭化水素である。「シクロアルキル」には、単環式環および二環式環が含まれる。典型的には、単環式シクロアルキル基は、別途規定されない限り、3~約10個の炭素原子、より典型的には3~8個の炭素原子を有する。二環式シクロアルキルの第2の環は、飽和環、不飽和環および芳香族環から選択することができる。シクロアルキルとしては、1個、2個もしくは3個またはそれ以上の原子が2個の環の間で共有されている、二環式分子が挙げられる。用語「縮合シクロアルキル」とは、環のうちのそれぞれが、2個の隣接原子を他方の環と共有する、二環式シクロアルキルを意味する。縮合二環式シクロアルキルの第2の環は、飽和環、不飽和環および芳香族環から選択することができる。「シクロアルケニル」基は、1個以上の二重結合を含む環状炭化水素である。
【0076】
用語「カルボシクリルアルキル」とは、本明細書中で用いる場合、炭素環基で置換されたアルキル基を意味する。
【0077】
用語「カーボネート」とは、当技術分野で認識され、基-OCO2-R10(式中、R10はヒドロカルビル基を表わす)を意味する。
【0078】
用語「カルボキシ」とは、本明細書中で用いる場合、式-CO2Hにより表わされる基を意味する。
【0079】
用語「エステル」とは、本明細書中で用いる場合、基-C(O)OR10(式中、R10はヒドロカルビル基を表わす)を意味する。
【0080】
用語「エーテル」とは、本明細書中で用いる場合、酸素を介して別のヒドロカルビル基に連結されたヒドロカルビル基を意味する。したがって、ヒドロカルビル基のエーテル置換基は、ヒドロカルビル-O-であり得る。エーテルは、対称性または非対称性のいずれかであり得る。エーテルの例としては、限定するものではないが、複素環-O-複素環およびアリール-O-複素環が挙げられる。エーテルは、一般式:アルキル-O-アルキルにより表わすことができる「アルコキシアルキル」基を含む。
【0081】
用語「ハロ」および「ハロゲン」とは、本明細書中で用いる場合、ハロゲンを意味し、クロロ、フルオロ、ブロモ、およびヨードが挙げられる。
【0082】
用語「ヘタラルキル」(hetaralkyl)および「ヘテロアラルキル」とは、本明細書中で用いる場合、ヘタリール基で置換されたアルキル基を意味する。
【0083】
用語「ヘテロアルキル」とは、本明細書中で用いる場合、炭素原子および少なくとも1個のヘテロ原子の飽和または不飽和鎖を意味し、このとき、2個のヘテロ原子は隣接していない。
【0084】
用語「ヘテロアリール」および「ヘタリール」には、その環構造が少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは1~4個のヘテロ原子、より好ましくは1個または2個のヘテロ原子を含む、置換または非置換芳香族単環構造、好ましくは5~7員環、より好ましくは5~6員環が含まれる。用語「ヘテロアリール」および「ヘタリール」にはまた、2個以上の炭素が2個の連結された環に共通である、2個以上の環式環を有する多環式環系も含まれ、このとき、環のうちの少なくとも一方がヘテロ芳香族であり、例えば、他方の環式環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、および/またはヘテロシクリルであり得る。ヘテロアリール基としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジンなどが挙げられる。
【0085】
用語「ヘテロ原子」とは、本明細書中で用いる場合、炭素または水素以外のいずれかの元素の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素、および硫黄である。
【0086】
用語「ヘテロシクリル」、「複素環」、および「複素環式」とは、その環構造が少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは1~4個のヘテロ原子、より好ましくは1個または2個のヘテロ原子を含む、置換または非置換非芳香族環構造、好ましくは3~10員環、より好ましくは3~7員環を意味する。用語「ヘテロシクリル」および「複素環式」にはまた、2個以上の炭素が2個の連結された環に共通である、2個以上の環式環を有する多環式環系も含まれ、このとき、環のうちの少なくとも一方が複素環式であり、例えば、他方の環式環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、および/またはヘテロシクリルであり得る。ヘテロシクリル基としては、例えば、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、ラクトン、ラクタムなどが挙げられる。
【0087】
用語「ヘテロシクリルアルキル」とは、本明細書中で用いる場合、複素環基で置換されたアルキル基を意味する。
【0088】
用語「ヒドロカルビル」とは、本明細書中で用いる場合、=Oまたは=S置換基を有さず、かつ典型的には少なくとも1個の炭素-水素結合および主に炭素の骨格を有するが、任意によりヘテロ原子を含むことができる、炭素原子を介して結合している基を意味する。つまり、メチル、エトキシエチル、2-ピリジル、およびトリフルオロメチルのような基が、本出願の目的のためにヒドロカルビルであると見なされるが、アセチル(結合性炭素上に=O置換基を有する)およびエトキシ(炭素ではなく酸素を介して連結される)などの置換基はヒドロカルビルとは見なされない。ヒドロカルビル基としては、限定するものではないが、アリール、ヘテロアリール、炭素環、ヘテロシクリル、アルキル、アルケニル、アルキニル、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0089】
用語「ヒドロキシアルキル」とは、本明細書中で用いる場合、ヒドロキシ基で置換されたアルキル基を意味する。
【0090】
アシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアルコキシなどの化学的部分との関連で用いられる場合、用語「低級」とは、置換基中に10個以下の非水素原子、好ましくは6個以下の非水素原子がある基を含むことを意味する。「低級アルキル」とは、例えば、10個以下の炭素原子、好ましくは6個以下の炭素原子を含むアルキル基を意味する。特定の実施形態では、本明細書中で定義されるアシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアルコキシ置換基は、それらが単独で存在するかまたは他の置換基との組み合わせで存在する(ヒドロキシアルキルおよびアラルキルの記述中など(この場合、例えば、アルキル置換基中の炭素原子をカウントする際にアリール基内の原子はカウントされない))かにかかわらず、それぞれ、低級アシル、低級アシルオキシ、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、または低級アルコキシである。
【0091】
用語「天然アミノ酸」とは、20種類の天然アミノ酸のうちの1つを意味する:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アルパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、またはバリン。本明細書中で用いる場合、用語「天然アミノ酸」は、DおよびL立体異性体などのすべての立体異性体を包含する。用語「天然アミノ酸側鎖」とは、20種類の天然アミノ酸上の側鎖のうちの1つ、つまり、α-炭素上の置換基、または、プロリンの場合には、α-炭素をアミノ基に連結するプロピレン部分を意味する。
【0092】
用語「ポリシクリル」、「多環」(polycycle)、および「多環式」(polycyclic)とは、2個以上の原子が2個の連結された環に共通である(例えば、環同士が「縮合環」である)、2個以上の環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、および/またはヘテロシクリル)を意味する。多環の環のそれぞれが、置換されているかまたは非置換であり得る。特定の実施形態では、多環の各環は、環中に3~10個の原子、好ましくは5~7個の原子を含む。
【0093】
用語「シリル」とは、3個のヒドロカルビル部分が結合したケイ素部分を意味する。
【0094】
用語「置換された」とは、骨格の1個以上の炭素上の水素を置き換える置換基を有する部分を意味する。「置換」または「~で置換された」とは、そのような置換が、置換される原子および置換基の許容される価数に従うこと、ならびに置換が、安定な化合物(例えば、転位、環化、脱離等によるものなどの変換を自然発生的に受けないもの)を生じることという黙示的な条件を含むことが理解されるであろう。本明細書中で用いる場合、用語「置換された」とは、有機化合物のすべての許容可能な置換基を含むことが考慮される。広範な態様では、許容可能な置換基には、有機化合物の、非環式および環式、分岐および非分岐、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族置換基が含まれる。許容可能な置換基は、適切な有機化合物に対して、1個以上かつ同じかまたは異なることができる。本発明の目的のために、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基および/またはヘテロ原子の価数を満たす本明細書中に記載される有機化合物のいずれかの許容可能な置換基を有することができる。置換基としては、本明細書中に記載されるいずれかの置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、またはアシルなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテート、またはチオホルメートなど)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分が挙げられる。適切であれば、置換基はそれ自体が置換され得ることは、当業者には理解されるであろう。「非置換」として特に記載されない限り、本明細書中の化学的部分に対する言及は、置換された変化形を含むことが理解される。例えば、「アリール」基または部分に対する言及は、黙示的に、置換変化形および非置換変化形の両方を含む。
【0095】
用語「スルフェート」は当技術分野で認識され、基-OSO3H、または製薬上許容されるその塩を意味する。
【0096】
用語「スルホンアミド」は当技術分野で認識され、一般式:
【0097】
【0098】
[式中、R9およびR10は独立に、水素もしくはアルキルなどのヒドロカルビルを表わすか、またはR9およびR10が、介在する原子と一緒になって、環構造中に4~8個の原子を有する複素環を完成させる]
により表わされる基を意味する。
【0099】
用語「スルホキシド」は、当技術分野で認識され、基-S(O)-R10(式中、R10はヒドロカルビルを表わす)を意味する。
【0100】
用語「スルホネート」は当技術分野で認識され、基SO3H、または製薬上許容されるその塩を意味する。
【0101】
用語「スルホン」は、当技術分野で認識され、基-S(O)2-R10(式中、R10はヒドロカルビルを表わす)を意味する。
【0102】
用語「チオアルキル」とは、本明細書中で用いる場合、チオール基で置換されたアルキル基を意味する。
【0103】
用語「チオエステル」とは、本明細書中で用いる場合、基-C(O)SR10または-SC(O)R10(式中、R10はヒドロカルビルを表わす)を意味する。
【0104】
用語「チオエーテル」とは、本明細書中で用いる場合、酸素が硫黄と置き換えられているエーテルに等しい。
【0105】
用語「尿素」は、当技術分野で認識され、一般式:
【0106】
【0107】
[式中、R9およびR10は独立に、水素もしくはアルキルなどのヒドロカルビルを表わすか、またはR9のいずれかの出現箇所がR10および介在原子と一緒になって、環構造中に4~8個の原子を有する複素環を完成させる]
により表わすことができる。
【0108】
「保護基」とは、分子中の反応性官能基に結合する場合に、該官能基の反応性をマスクするか、低減させるかまたは妨げる、原子の群を意味する。典型的には、保護基は、合成過程の途中で、所望であれば、選択的に除去することができる。保護基の例は、Greene and Wuts, Protective Groups in Organic Chemistry, 3rd Ed., 1999, John Wiley & Sons, NYおよびHarrison et al., Compendium of Synthetic Organic Methods, Vols. 1-8, 1971-1996, John Wiley & Sons, NYに見出すことができる。代表的な窒素保護基としては、限定するものではないが、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(「CBZ」)、tert-ブトキシカルボニル(「Boc」)、トリメチルシリル(「TMS」)、2-トリメチルシリル-エタンスルホニル(「TES」)、トリチルおよび置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(「FMOC」)、ニトロベラトリルオキシカルボニル(「NVOC」)などが挙げられる。代表的なヒドロキシル保護基としては、限定するものではないが、ヒドロキシル基がアシル化(エステル化)もしくはアルキル化されているもの(ベンジルおよびトリチルエーテルなど)、ならびにアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル(例えば、TMS基またはTIPS基)、グリコールエーテル(エチレングリコールおよびプロピレングリコール誘導体など)およびアリルエーテルが挙げられる。
【0109】
本明細書中で用いる場合、障害または状態を「予防する」治療薬とは、統計学的サンプル中で、未処置対照サンプルと比較して、処置サンプルでの障害もしくは状態の発生率を低下させるか、または未処置対照サンプルと比較して、発症を遅らせるかまたは障害もしくは状態の1種以上の症状の重症度を低下させる化合物を意味する。例えば、てんかんを予防する化合物は、発作の頻度を低減させ、かつ/または発作の重症度を低下させることができる。
【0110】
用語「治療(処置)すること」とは、予防的および/または治療的処置を含む。用語「予防的または治療的」処置は当技術分野で認識され、1種以上の対象組成物の、宿主への投与を含む。望ましくない状態(例えば、疾患または宿主動物の他の望ましくない状態)の臨床的発現に先立って投与される場合には、処置は予防的であり(すなわち、望ましくない状態を発症することから宿主を保護する)、一方で、望ましくない状態の発現後に投与される場合には、処置は治療的である(すなわち、存在する望ましくない状態またはその副作用をなくすか、改善するか、または安定化することが意図される)。
【0111】
「合同(conjoint)投与」および「合同に投与される」との語句は、以前に投与された治療化合物が身体内でまだ有効である間に第2の化合物が投与されることになる、2種類以上の異なる治療化合物の投与のいずれかの形態を意味する(例えば、2種類の化合物が患者体内で同時に有効であり、これは、2種類の化合物の相乗効果を含み得る)。例えば、異なる治療化合物を、同じ製剤中で、または分離した製剤中で同時もしくは連続的に、投与することができる。特定の実施形態では、異なる治療化合物は、互いに、1時間、12時間、24時間、36時間、48時間、72時間、または1週間以内に投与することができる。つまり、そのような治療を受ける個体は、異なる治療化合物の組み合わせ効果から利益を得ることができる。
【0112】
用語「プロドラッグ」は、生理的条件下で、本発明の治療的に有効な薬剤(例えば、表1から選択される化合物)へと変換される化合物を包含することが意図される。プロドラッグを作製するための一般的な方法は、生理的条件下で加水分解されることにより所望の分子が現われる、1種以上の選択された部分を含めることである。他の実施形態では、プロドラッグは、宿主動物の酵素活性により変換される。例えば、エステルまたはカーボネート(例えば、アルコールもしくはカルボン酸のエステルまたはカーボネート)は、本発明の好ましいプロドラッグである。特定の実施形態では、上記で提示された製剤中の表1から選択される化合物のうちの一部またはすべてが、対応する好適なプロドラッグと置き換えられることが可能であり、例えば、親化合物中のヒドロキシルがエステルもしくはカーボネートとして提示されるか、または親化合物中に存在するカルボン酸がエステルとして提示される。
【0113】
デオキシヌクレオチドプロドラッグの使用
一部の実施形態では、本発明は、治療上有効量の式(I)または(Ia)の化合物を患者に投与するステップを含む、MDSに罹患している患者を治療する方法を提供する。一部の実施形態では、MDSは、DGUOK欠損症、TK2欠損症、MNGIE、POLG欠損症、アルパーズ症候群(Alpers-Huttenlocher syndrome)、SANDO症候群、MIRAS、MPV17関連肝脳ミオパチー、またはRRM2B関連ミオパチーから選択される。一部の実施形態では、MDSは、RRM2B関連ミオパチーである。一部の実施形態では、MDSは、TK2、DGUOK、POLG、MPV17、RRM2B、SUCLA2、SUCLG1、TYMP、C10orf2、またはSAMHD1中の突然変異に連鎖(linked)する。一部の実施形態では、MDSは、未知の病態生理を有する。
【0114】
一部の実施形態では、本発明のdAMPおよびdGMPプロドラッグ、すなわち、式(I)または(Ia)の化合物(式中、NTはアデニンまたはグアニンである)を、DGUOK欠損症を治療するために用いることができる。
【0115】
一部の実施形態では、本発明のdAMPおよびdGMPプロドラッグ、すなわち、式(I)または(Ia)の化合物(式中、NTはアデニンもしくはグアニンまたはアデニンもしくはグアニンプロドラッグ部分である)を、DGUOK欠損症を治療するために用いることができる。
【0116】
他の実施形態では、本発明のdCTPおよびdTTPプロドラッグ、すなわち、式(I)または(Ia)の化合物(式中、NTはシトシンまたはチミンである)を、TK2欠損症を治療するために用いることができる。
【0117】
他の実施形態では、本発明のdCTPおよびdTTPプロドラッグ、すなわち、式(I)または(Ia)の化合物(式中、NTはシトシンもしくはチミンまたはシトシンもしくはチミンプロドラッグ部分である)を、TK2欠損症を治療するために用いることができる。
【0118】
特定の実施形態では、本発明のdCTPプロドラッグ、すなわち、式(I)または(Ia)の化合物(式中、NTはシトシンである)を、MNGIEを治療するために用いることができる。
【0119】
特定の実施形態では、本発明のdCTPプロドラッグ、すなわち、式(I)または(Ia)の化合物(式中、NTはシトシンまたはシトシンプロドラッグ部分である)を、MNGIEを治療するために用いることができる。
【0120】
一部の実施形態では、本発明のdAMP、dGMP、dCTP、およびdTTPプロドラッグ、すなわち、式(I)または(Ia)の化合物(式中、NTは、アデニン、グアニン、シトシン、またはチミンである)を、POLG欠損症を治療するために用いることができる。特定のそのような実施形態では、NTはアデニンまたはグアニンである。
【0121】
一部の実施形態では、本発明のdAMP、dGMP、dCTP、およびdTTPプロドラッグ、すなわち、式(I)または(Ia)の化合物(式中、NTは、アデニン、グアニン、シトシンもしくはチミン、またはアデニン、グアニン、シトシンもしくはチミンプロドラッグ部分である)を、POLG欠損症を治療するために用いることができる。特定のそのような実施形態では、NTはアデニンもしくはグアニンまたはアデニンもしくはグアニンプロドラッグ部分である。
【0122】
一部の実施形態では、本発明のdAMPおよびdGMPプロドラッグ、すなわち、式(I)または(Ia)の化合物(式中、NTはアデニンもしくはグアニンまたはアデニンもしくはグアニンプロドラッグ部分である)を、MPV17を治療するために用いることができる。特定のそのような実施形態では、NTはアデニンまたはグアニンである。
【0123】
一部の実施形態では、本発明のdAMP、dGMP、dCTP、およびdTTPプロドラッグ、すなわち、式(I)または(Ia)の化合物(式中、NTは、アデニン、グアニン、シトシンもしくはチミン、またはアデニン、グアニン、シトシンもしくはチミンプロドラッグ部分である)を、SAMDH1中の突然変異と連鎖するミトコンドリアDNA枯渇症候群を治療するために用いることができる。特定のそのような実施形態では、NTは、アデニン、グアニン、チミンまたはシトシンである。
【0124】
一部の実施形態では、本発明のdAMP、dGMP、dCTP、およびdTTPプロドラッグ、すなわち、式(I)または(Ia)の化合物(式中、NTは、アデニン、グアニン、シトシンもしくはチミン、またはアデニン、グアニン、シトシンもしくはチミンプロドラッグ部分である)を、RR2MB中の突然変異と連鎖するミトコンドリアDNA枯渇症候群を治療するために用いることができる。特定のそのような実施形態では、NTは、アデニン、グアニン、チミンまたはシトシンである。
【0125】
医薬組成物
本発明の組成物および方法は、それを必要とする個体を処置するために用いられ得る。特定の実施形態では、該個体は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物などの哺乳動物である。ヒトなどの動物に投与される場合、該組成物または該化合物は、好ましくは、例えば本発明の化合物および製薬上許容される担体を含む、医薬組成物として投与される。製薬上許容される担体、例えば水もしくは生理学的に緩衝された生理食塩水などの水溶液、またはグリコール、グリセロールなどの他の溶媒もしくはビヒクル、オリーブ油もしくは注射可能な有機エステルなどの油は、当該技術分野で周知である。好ましい実施形態では、そのような医薬組成物がヒトへの投与用のもの、特に侵襲性投与経路(即ち、上皮バリアを通した輸送または拡散を回避した、注射または埋込みなどの経路)用のものであれば、該水溶液は、パイロジェンフリーまたは実質的にパイロジェンフリーである。例えば薬剤の遅延放出を実行するため、または1種もしくは複数の細胞、組織もしくは臓器を選択的に標的にするように、賦形剤を選択することができる。該医薬組成物は、錠剤、カプセル(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルなど)、顆粒、再構成される凍結乾燥物、粉末、溶液、シロップ、坐剤、注射などの単位投与剤型であり得る。該組成物はまた、経皮送達システム、例えば皮膚パッチ中に存在し得る。該組成物はまた、点眼薬などの外用投与に適した溶液中に存在し得る。
【0126】
製薬上許容される担体は、例えば安定化させるように、溶解度を上昇させるように、または本発明の化合物などの化合物の吸収を増加させるように働く生理学的に許容される薬剤を含有し得る。そのような生理学的に許容される薬剤としては、例えばグルコース、スクロースもしくはデキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸もしくはグルタチオンなどの抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質、または他の安定化剤もしくは賦形剤が挙げられる。生理学的に許容される薬剤をはじめとする製薬上許容される担体の選択は、例えば該組成物の投与経路に依存する。医薬組成物の調製物は、自己乳化薬物送達システムまたは自己微小乳化薬物送達システムであり得る。該医薬組成物(調製物)はまた、例えば本発明の化合物を内部に取り込み得るリポソームまたは他のポリマーマトリックスであり得る。例えばリン脂質または他の脂質を含む、リポソームは、作製および投与することが比較的簡単である、非毒性で生理学的に許容し得て代謝可能な担体である。
【0127】
語句「製薬上許容される」は、サウンドメディカルジャッジメントの範囲内で、人類および動物の組織と接触する使用に適し、過剰な毒性、過敏症、アレルギー反応または他の問題もしくは合併症を生じず、合理的な利益/リスク比にふさわしい、それらの化合物、材料、組成物および/または投与剤型を指すために本明細書で用いられる。
【0128】
本明細書で用いられる語句「製薬上許容される担体」は、液体または固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル封入材料などの製薬上許容される材料、組成物またはビヒクルを意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性であり、患者に有害でないという意味で「許容され」なければならない。製薬上許容される担体として働き得る材料の幾つかの例としては、(1)ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖;(2)コーンスターチおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースおよびセルロース誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)ココアバターおよび坐剤ワックスなどの賦形剤;(9)ピーナッツオイル、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油などの油;(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張性生理食塩水;(18)リンガー液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝溶液;ならびに(21)医薬製剤中で用いられる他の非毒性の適合性物質が挙げられる。
【0129】
医薬組成物(調製物)は、例えば経口(例えば、水性または非水性溶液または懸濁液、錠剤、カプセル(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルなど)、ボーラス、粉末、顆粒、舌へ塗布されるペーストなどの飲薬);口腔粘膜を通した吸収(例えば、舌下);経肛門、経直腸または経腟(例えば、ペッサリー、クリームまたはフォームとして);非経口(筋肉内、静脈内、皮下または髄腔内など、例えば滅菌溶液または懸濁液として);鼻内;腹腔内;皮下;経皮(例えば、皮膚へ塗布されるパッチとして);および外用(例えば、皮膚へ塗布されるクリーム、軟膏もしくはスプレーとして、または点眼薬として)などの複数の投与経路のいずれかによって対象に投与され得る。該化合物はまた、吸入用に配合され得る。特定の実施形態では、化合物は、単に滅菌水中に溶解または懸濁され得る。適切な投与経路およびそれに適した組成物の詳細は、例えば米国特許第6,110,973号、同第5,763,493号、同第5,731,000号、同第5,541,231号、同第5,427,798号、同第5,358,970号および同第4,172,896号、ならびに本明細書に引用された特許に見出され得る。
【0130】
該製剤は、簡便には単位投与剤型中に存在し得、薬剤の技術分野で周知の任意方法によって調製され得る。単一投与剤型を製造するために担体材料と混和され得る有効成分の量は、処置される宿主、個々の投与様式に応じて変動するであろう。単一投与剤型を製造するために担体材料と混和され得る有効成分の量は、一般には治療効果を生じる化合物の量であろう。一般に、100%のうち、この量は、有効成分約1%~約99%、好ましくは約5%~約70%、最も好ましくは約10%~約30%の範囲内であろう。
【0131】
これらの製剤または組成物を調製する方法は、本発明の化合物などの活性化合物を担体、および場合により1種または複数の補助成分と会合させるステップを含む。一般に該製剤は、本発明の化合物を液状担体もしくは微細固体担体またはそれらの両方と均一かつ密接に会合させ、その後、必要に応じて生成物を成形すること、によって調製される。
【0132】
経口投与に適した本発明の製剤は、それぞれが本発明の化合物の所定量を有効成分として含有する、カプセル(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルなど)、カシェ、丸薬、錠剤、トローチ錠(香味ベース、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカントを用いる)、凍結乾燥物、粉末、顆粒の形態、あるいは水性もしくは非水性液中の溶液もしくは懸濁液として、または水中油もしくは油中水液体エマルジョンとして、またはエリキシルもしくはシロップとして、またはパステル剤(ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアなどの不活性ベースを用いる)および/もしくは洗口液としてなどであり得る。組成物または化合物はまた、ボーラス、舐剤またはペーストとして投与され得る。
【0133】
経口投与のための固体投与剤型(カプセル(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルなど)、錠剤、丸薬、糖剤、粉末、顆粒など)を調製するために、有効成分が、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムおよび/または以下のもののいずれかなどの1種または複数の製薬上許容される担体と混和される:(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸などの充填剤または増量剤;(2)例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および/またはアカシアなどの結合剤;(3)グリセロールなどの保湿剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(5)パラフィンなどの溶解遅延剤;(6)第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;(7)例えばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤;(8)カオリンおよびベントナイトクレイなどの吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびそれらの混合物などの滑沢剤;(10)修飾および非修飾シクロデキストリンなどの錯化剤;ならびに(11)着色剤。カプセル(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルなど)、錠剤および丸薬の場合、該医薬組成物はまた、緩衝剤を含み得る。類似のタイプの固体組成物はまた、ラクトースまたは乳糖のような賦形剤および高分子量ポリエチレングリコールなどを用いた軟および硬充填ゼラチンカプセルへの充填剤として用いられ得る。
【0134】
錠剤は、場合により1種または複数の補助成分と共に、圧縮または成形することによって作製され得る。圧縮錠は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、または架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤または分散剤を用いて調製され得る。成形錠は、不活性液体希釈剤で加湿された該粉末化合物の混合物を適切な機械で成形することによって作製され得る。
【0135】
医薬組成物の錠剤および他の固体投与剤型、例えば糖剤、カプセル(スプリンクルカプセルおよびゼラチンカプセルなど)、丸薬および顆粒は、場合により刻み目が付けられているか、またはコーティングおよびシェル、例えば腸溶性コーティングおよび医薬配合の技術分野で周知の他のコーティングと共に調製され得る。それらはまた、所望の放出プロファイル、他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフェアを提供するために、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースを様々な割合で用いて、有効成分の徐放または制御放出を提供するように配合され得る。それらは、例えば細菌保持フィルターを通すろ過により、または使用直前に滅菌水もしくは一部の他の滅菌注射可能媒体に溶解され得る滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことにより、滅菌され得る。これらの組成物はまた、場合により乳白剤を含有することができ、そして場合により遅延される手法で、胃腸管の特定部位のみで、またはそこに優先的に、有効成分(複数可)を放出する組成物であり得る。用いられ得る埋入組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。有効成分はまた、適宜、上記賦形剤の1種または複数との、マイクロカプセル化形態であり得る。
【0136】
経口投与に有用な液体投与剤型としては、製薬上許容されるエマルジョン、再構成される凍結乾燥物、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルが挙げられる。液体投与剤型は、有効成分に加えて当該技術分野で一般に用いられる不活性希釈剤、例えば水または他の溶媒、シクロデキストリンおよびそれらの誘導体、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ピーナッツ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含有し得る。
【0137】
該経口組成物はまた、不活性希釈剤の他に、湿潤剤、乳化および懸濁剤、甘味剤、香味剤、着色剤、芳香剤および防腐剤などのアジュバントを含み得る。
【0138】
懸濁物は、活性化合物に加えて、懸濁剤、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、トラガカント、ならびにそれらの混合物を含有し得る。
【0139】
経直腸、経腟または尿道投与のための医薬組成物の製剤は、坐剤として存在することができ、該坐剤は、1種または複数の活性化合物を、例えばココアバター、ポリエチレングリコール、坐剤ワックスまたはサリチル酸塩を含む1種または複数の適切な非刺激性賦形剤または担体と混合することにより調製され得、室温では固体であるが体温では液体となり、それにより直腸または腟腔で融解して活性化合物を放出する。
【0140】
口への投与のための医薬組成物の製剤は、洗口液または経口スプレーまたは経口軟膏として存在し得る。
【0141】
代わりまたは追加として、組成物は、カテーテル、ステント、ワイヤーまたは他の腔内デバイスを介した送達のために配合され得る。そのようなデバイスを介した送達は、膀胱、尿道、尿管、直腸または腸への送達に特に有用であり得る。
【0142】
経腟投与に適した製剤としては、当該技術分野において適切であることが知られた担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたはスプレー製剤も挙げられる。
【0143】
外用または経皮投与用の投与剤型としては、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチおよび吸入剤が挙げられる。活性化合物は、滅菌条件下で製薬上許容される担体および必要とされ得る任意の防腐剤、緩衝剤または噴射剤と混合され得る。
【0144】
軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、活性化合物に加えて、動物性および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、サリチル酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはそれらの混合物などの賦形剤を含有し得る。
【0145】
粉末およびスプレーは、活性化合物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含有し得る。加えてスプレーは、慣用される噴射剤、例えばクロロフルオロヒドロカーボンおよび揮発性非置換炭化水素、例えばブタンおよびプロパンを含有し得る。
【0146】
経皮パッチは、身体への本発明の化合物の制御送達を提供するという追加の利点を有する。そのような投与剤型は、活性化合物を適当な媒体に溶解または分散させることにより作製され得る。吸収促進剤を用いて、皮膚を通した該化合物の透過を増加させることもできる。そのような透過の速度は、速度制御膜を提供すること、または該化合物をポリマーマトリックスまたはゲルに分散させること、のいずれかによって制御され得る。
【0147】
眼科製剤、眼軟膏、粉末、溶液などもまた、本発明の範囲内として企図される。模範的眼科製剤は、内容が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2005/0080056号、同第2005/0059744号、同第2005/0031697号、および同第2005/004074号、ならびに米国特許第6,583,124号に記載される。所望なら、液体眼科製剤が、涙液、眼房水、もしくは硝子体液と類似の特性を有するか、またはそのような流体と適合性がある。好ましい投与経路は、局所投与である(例えば、点眼薬などの外用投与またはインプラントを介した投与)。
【0148】
本明細書で用いられる語句「非経口投与」および「非経口的に投与される」は、通常は注射による、腸内および外用投与以外の投与様式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、クモ膜下、脊髄内および胸骨内の注射および輸液を包含するが、これらに限定されない。非経口投与に適した医薬組成物は、1種または複数の活性化合物を、1種または複数の製薬上許容される滅菌等張水性もしくは非水性溶液、分散液、懸濁液もしくはエマルジョン、または滅菌粉末と併せて含み、該滅菌粉末は、使用直前に滅菌注射可能溶液もしくは分散液に再構成され得、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、該製剤を予定のレシピエントの血液と等張性にする溶質、または懸濁もしくは増粘剤を含有し得る。
【0149】
本発明の医薬組成物中で用いられ得る適切な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。適度な流動性が、例えばレシチンなどのコーティング材料の使用により、分散物の場合には必要となる粒子サイズの維持により、そして界面活性剤の使用により、維持され得る。
【0150】
これらの組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含有し得る。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの含有によって確実になり得る。糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物中に含ませることが望ましい場合もある。加えて、注射可能な医薬形態の長期吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤の含有によってもたらされ得る。
【0151】
幾つかの例において、薬物の効果を延長するためには、皮下または筋肉注射からの薬物の吸収を緩徐にすることが望ましい。これは、難水溶性を有する結晶または非晶質材料の液体懸濁物の使用によって完遂され得る。その場合、薬物の吸収速度は、溶解速度に依存し、そして溶解速度もまた、結晶サイズおよび結晶形態に依存し得る。あるいは非経口投与された薬物形態の吸収遅延が、油性ビヒクルに薬物を溶解または懸濁させることによって完遂される。
【0152】
注射可能なデポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生体分解性ポリマー中で対象の化合物のマイクロカプセル化マトリックスを形成させることによって作製される。ポリマーに対する薬物の比率、および用いられる個々のポリマーの性質に応じて、薬物放出の速度が制御され得る。他の生体分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(酸無水物)が挙げられる。デポー注射可能製剤は、身体組織と適合性があるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に薬物を封入することによっても調製される。
【0153】
本発明の方法で使用される場合、活性化合物は、そのままで、または例えば0.1~99.5%(より好ましくは0.5~90%)の有効成分を製薬上許容される担体と併せて含有する医薬組成物として、与えられ得る。
【0154】
導入方法は、再充填性または生体分解性デバイスによっても提供され得る。タンパク質性生物製剤をはじめとする様々な遅延放出性ポリマーデバイスが、近年になり薬物の制御送達用に開発され、インビボでテストされた。生分解性および非分解性ポリマーの両方を含む様々な生体適合性ポリマー(ヒドロゲルなど)を用いて、個々の標的部位での化合物の持続放出のためのインプラントを形成させることができる。
【0155】
医薬組成物中の有効成分の実際の投与レベルは、患者への毒性を生じずに、個々の患者、投与組成および様式に関する所望の治療応答を実現するのに効果的な有効成分量を得るように変動され得る。
【0156】
選択される投与レベルは、個々の化合物の活性、用いられる化合物またはそのエステル、塩もしくはアミドの組み合わせ、投与経路、投与時間、用いられる個々の化合物(複数可)の排泄速度、処置期間、用いられる個々の化合物(複数可)と併用される他の薬物、化合物および/または材料、処置される患者の年齢、性別、体重、病気、一般的健康状態、過去の医療歴、ならびに医療の技術分野で周知の類似因子など種々の因子に依存するであろう。
【0157】
医師または獣医の当業者は、必要となる医薬組成物の治療有効量を即座に決定および処方することができる。例えば医師または獣医は、該医薬組成物または化合物の用量を所望の治療効果を実現するのに必要となるレベルよりも低レベルで開始し、所望の効果が実現されるまで投薬量を徐々に増加させることができる。「治療有効量」は、所望の治療効果を誘発するのに十分な化合物濃度を意味する。化合物の有効量が対象の体重、性別、年齢、および医療歴に応じて変動することは、概ね理解されよう。有効量に影響を及ぼす他の因子としては、患者の病気の重症度、処置される障害、化合物の安定性、そして所望なら本発明の化合物と共に投与される別のタイプの治療剤を挙げることができるが、これらに限定されない。より大きな総用量であれば、該薬剤の反復投与によって送達され得る。有効性および投薬量を決定する方法は、当業者に知られている(参照により本明細書に組み入れられるIsselbacher et al. (1996) Harrison's Principles of Internal Medicine 13 ed., 1814-1882)。
【0158】
一般に、本発明の組成物および方法で用いられる活性化合物の適切な日用量は、治療効果を生じるのに効果的な最小用量であるその化合物量であろう。そのような有効用量は、先に記載された因子に概ね依存する。
【0159】
所望なら、活性化合物の有効日用量が、場合により単位投与剤型で、1個、2個、3個、4個、5個、6個、またはそれよりも多くの分割用量として、1日のうちに適度な間隔をおいて別々に投与され得る。本発明の特定の実施形態では、活性化合物は、1日に2または3回投与され得る。好ましい実施形態では、活性化合物は、1日1回投与される。
【0160】
この処置を受ける患者は、霊長類、特にヒトおよび他の哺乳動物、例えばウマ、ウシ、ブタおよびヒツジなど、そして一般には家禽およびペットなどの任意の必要とする動物である。
【0161】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、単独で使用してもよく、又は別のタイプの治療剤と合わせて投与されても良い。
【0162】
本発明は、本発明の組成物および方法における本発明の化合物の製薬上許容される塩の使用を含む。特定の実施形態では、本発明の想定される塩としては、限定するものではないが、アルキル、ジアルキル、トリアルキルまたはテトラアルキルアンモニウム塩が挙げられる。特定の実施形態では、本発明の想定される塩としては、限定するものではないが、L-アルギニン、ベネンタミン(benenthamine)、ベンザチン、ベタイン、水酸化カルシウム、コリン、デアノール(deanol)、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2-(ジエチルアミノ)エタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、ヒドラバミン、1H-イミダゾール、リチウム、L-リシン、マグネシウム、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、ピペラジン、カリウム、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン、ナトリウム、トリエタノールアミン、トロメタミン、および亜鉛塩が挙げられる。特定の実施形態では、本発明の想定される塩としては、限定するものではないが、Na、Ca、K、Mg、Znまたは他の金属塩が挙げられる。
【0163】
製薬上許容される酸付加塩はまた、水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド等との種々の溶媒和物として存在することができる。そのような溶媒和物の混合物もまた調製することができる。このような溶媒和物の供給源は、調製または結晶化の溶媒中に内在するか、またはそのような溶媒に付随的な、結晶化の溶媒からのものであり得る。
【0164】
湿潤剤、乳化剤および滑沢剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および芳香剤、防腐剤および抗酸化剤もまた、該組成物中に存在し得る。
【0165】
製薬上許容される抗酸化剤の例としては、(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤;(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなどの脂溶性抗酸化剤;および(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤が挙げられる。
【0166】
特定の実施形態では、本発明は、本発明の化合物の製剤または本明細書に記載されたようなキットを製造し、本明細書に記載されたようないずれかの疾患もしくは状態を治療または予防するための製剤またはキットを使用する利益をヘルスケアプロバイダーに販売することによって医薬事業を行うための方法に関する。
【0167】
例示
本明細書中で一般的に説明されている本発明は、以下の実施例を参照することによりさらに容易に理解されるであろう。実施例は、本発明の特定の態様および実施形態の説明の目的のためだけに含められ、本発明を限定することを意図しない。
【実施例】
【0168】
実施例1:合成プロトコール(方法A)
【0169】
【0170】
化合物12の調製のための一般的手順
イソプロピル((((2R,3S,5R)-5-(2-アミノ-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-9H-プリン-9-イル)-3-ヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(フェノキシ)ホスホリル)-L-アラニネート
-78℃のジクロロメタン(250mL)中の化合物1001(25.0g、118.5mmol、1.0当量)の溶液に、ジクロロメタン(250mL)中の4-ニトロフェノール(16.5g、118.5mmol、1.0当量)の溶液およびTEA(18mL、130.3mmol、1.1当量)を添加した。反応混合物を室温まで加温し、1時間撹拌し、0℃まで冷却した。ジクロロメタン(250mL)中の化合物1003(19.9g、118.5mmol、1.0当量)およびトリエチルアミン(34.5mL、248.9mmol、2.1当量)の溶液を添加した。混合物を室温まで加温し、2時間撹拌し、水(500mL)を用いてクエンチした。有機層を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。粗生成物を、シリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(Et2O/EtOAc=2/1)により精製して、化合物1004(25.0g、52%)を無色油として得た。LC-MS: 409.2 [M+H]+, 予測値409.11, 1H NMR (400 MHz, CDCl3) (δ, ppm) 8.18 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.34 (ddd, J = 15.9, 12.9, 5.1 Hz, 4H), 7.27-7.08 (m, 3H), 4.98 (m, 1H), 4.36-4.16 (m, 1H), 1.35 (d, J = 7.0 Hz, 3H), 1.24-1.15 (m, 6H)。
【0171】
0℃のTHF(7.5mL)およびNMP(30mL)中の化合物1005(2.6g、9.8mmol、1.0当量)の溶液に、1.0M t-BuMgCl(14.8mL、14.7mmol、1.5当量)を添加した。混合物を0℃で0.5時間撹拌し、THF(10mL)中の化合物1004(3.0g、7.35mmol、0.75当量)の溶液を添加した。混合物を、室温まで加温し、一晩撹拌した。NH
4Clの飽和水溶液(30mL)を添加し、有機相を、酢酸エチルを用いて抽出した(2×50mL)。合わせた有機層を、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ、ろ過し、濃縮した。粗生成物を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより2回精製し(DCM:DCM/MeOH=15/1)、化合物12(600mg、17%、>95%純度)を白色固体として得た。
【0172】
実施例1:合成プロトコール(方法B)
【0173】
【0174】
化合物1017の調製のための一般的手順
イソプロピル((((2R,3S,5R)-5-(2-アミノ-6-メトキシ-9H-プリン-9-イル)-3-ヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(ナフタレン-1-イルオキシ)ホスホリル)-L-アラニネート
-20℃のMeOH(200mL)中の化合物1005(3.0g、11.2mmol、1.0当量)の溶液に、過剰量のCH2N2エーテル(CH2N2 etherate)を添加し、4時間撹拌した。反応を、LCMSによりモニタリングした。得られた混合物を、濃縮し、MeOHを用いて粉砕し、ろ過した。ろ液を濃縮して、粗精製の化合物1015(2.5g、79%)を白色粉末として得、これを、さらなる精製をせずに次のステップに用いた。0℃のTHF(6mL)およびNMP(25mL)中の化合物1016(2.0g、4.37mmol、1.0当量)の溶液に、1.0M t-BuMgCl(6.55mL、6.55mmol、1.5当量)を添加した。混合物を、0℃で0.5時間撹拌し、THF(8mL)中の化合物1015(2.5g、8.9mmol、2.04当量)の溶液を添加した。混合物を、室温まで加温し、16時間撹拌した。NH4Clの飽和水溶液(25mL)を添加し、有機相を、酢酸エチルを用いて抽出した(2×40mL)。合わせた有機層を、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、濃縮した。粗生成物をMeOH中に溶解させ、調製HPLCにより精製して、化合物1017(158mg、6%、>95%純度)を白色固体として得た。LCMS: m/z (ESI+) 601.3 [M+1]+, 予測値601.2, 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.09 (t, J = 6.4 Hz, 1H), 7.95-7.87 (m, 2H), 7.71 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 7.56-7.43 (m, 2H), 7.40-7.35 (m, 2H), 6.44 (d, J = 2.4 Hz, 2H), 6.23-6.13 (m, 2H), 5.46 (t, J = 4.8 Hz, 1H), 4.84-4.73 (m, 1H), 4.42-4.39 (m, 1H), 4.34-4.28 (m, 1H), 4.24-4.18 (m, 1H), 4.12-4.04 (m, 1H), 3.98 (s, 3H), 3.93-3.76 (m, 1H), 2.61-2.47 (m, 1H), 2.25-2.13 (m, 1H), 1.19 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.09-1.03 (m, 6H)。
【0175】
実施例1:合成プロトコール(方法C)
【0176】
【0177】
化合物1023の調製のための一般的手順
ネオペンチル((((2R,3S,5R)-5-(2-アミノ-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-9H-プリン-9-イル)-3-ヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(ナフタレン-1-イルオキシ)ホスホリル)-L-アラニネート
0℃のDCM(100mL)中の化合物1018(10g、52.8mmol、1.0当量)およびネオペンチルアルコール(5.58g、63.4mmol、1.2当量)の混合物に、窒素雰囲気下で、DMAP(0.64g、5.28mmol、0.1当量)およびEDCl.HCl(15.2g、79.3mmol、1.5当量)を添加した。反応混合物を室温まで加温し、16時間撹拌した。反応を、TLCによりモニタリングした。混合物を、酢酸エチルを用いて抽出した(3×100mL)。有機相を、ブラインを用いて洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をシリカ上のフラッシュクロマトグラフィー(Et2O/EtOAc=30:1)により精製し、化合物1019(12.5g、91%)を無色油として得た。
【0178】
HCl/EtOAc溶液(2M、50mL、100mmol)中の化合物1019(6.16g、23.8mmol、1.0当量)の溶液を、室温で1時間撹拌した、反応を、1H NMRによりモニタリングした。混合物を減圧下で濃縮し、化合物1020(4.42g、95%)を白色粉末として得た。
【0179】
0℃のDCM(10mL)中の化合物1020(1.0g、5.1mmol、1.0当量)、化合物1021(3.7g、10.2mmol、2.0当量)の混合物に、トリエチルアミン(2.23mL、16.1mmol、3.15当量)を添加した。反応混合物を、室温まで加温し、2時間撹拌した。反応を、TLCによりモニタリングした。続いて、混合物を、EtOAc(3×20mL)を用いて抽出した。有機相を、ブラインを用いて洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をシリカ上のフラッシュクロマトグラフィー(Et2O/EtOAc=50:1~30:1~1:1)により精製して、化合物1022(650mg、26%)を白色固体として得た。
【0180】
0℃のTHF(2.77mL)およびNMP(8.32mL)中の化合物1022(660mg、1.36mmol、1.0当量)の溶液に、1.0M t-BuMgCl(4.09mL、4.08mmol、3.0当量)を添加した。混合物を、0℃で0.5時間撹拌し、THF(2.77mL)中の化合物1005(726mg、2.72mmol、2.0当量)の溶液を添加した。混合物を、室温まで加温し、16時間撹拌した。反応を、LCMSによりモニタリングした。NH4Clの飽和水溶液(5mL)を添加し、有機相を、EtOAcを用いて抽出した(2×10mL)。合わせた有機層を、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、濃縮した。粗生成物を調製HPLCにより精製して、1023(100mg、12%、>95%純度)を白色粉末として得た。LCMS: m/z (ESI+) 615.4 [M+H]+, 予測値615.2, 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.59 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 8.10 (t, J = 9.6 Hz, 1H), 7.94-7.89 (m, 1H), 7.78-7.56 (m, 2H), 7.54-7.49 (m, 2H), 7.46-7.37 (m, 2H), 6.43 (d, J = 4.0 Hz, 2H), 6.23-6.16 (m, 1H), 6.13-6.09 (m, 1H), 5.40 (t, J = 4.4 Hz, 1H), 4.38-4.22 (m, 1H), 4.14-4.02 (m, 2H), 3.98-3.87 (m, 2H), 3.74-3.71 (m, 1H), 3.70-3.59 (m, 1H), 2.48-2.33 (m, 1H), 2.21-2.11 (m, 1H), 1.25-1.22 (m, 3H), 0.82 (s, 9H)。
【0181】
実施例1:合成プロトコール(方法D)
【0182】
【0183】
化合物14の調製のための一般的手順
ベンジル((((2R,3S,5R)-5-(2-アミノ-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-9H-プリン-9-イル)-3-ヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(ナフタレン-1-イルオキシ)ホスホリル)-L-アラニネート
DCM(120mL)中の化合物1024(10.0g、46.5mmol、1.0当量)、化合物1021(33.8g、93mmol、2.0当量)およびTEA(13.5mL、97.7mmol、2.1当量)の溶液を、0℃で撹拌した。混合物を、室温まで加温し、2時間撹拌した。反応を、LCMSによりモニタリングした。得られた混合物を、水(250mL)を用いてクエンチした。有機層を分離し、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。粗生成物を、シリカ上のフラッシュクロマトグラフィー(Et2O/EtOAc=2/1)により精製して、化合物1025(14g、59%)を無色油として得た。
【0184】
0℃のTHF(15mL)およびNMP(60mL)中の化合物1025(5.0g、9.88mmol、1.0当量)の溶液に、1.0M t-BuMgCl(14.8mL、14.8mmol、1.5当量)を添加した。混合物を、0℃で0.5時間撹拌し、THF(8mL)中の化合物7a(1.98g、7.41mmol、0.75当量)の溶液を添加した。混合物を、室温まで加温し、16時間撹拌した。NH4Clの飽和水溶液(60mL)を添加し、有機相を、酢酸エチルを用いて抽出した(2×100mL)。合わせた有機層を、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、濃縮した。粗生成物を調製HPLCにより精製して、化合物14(180mg、3%、>95%純度)を白色固体として得た。LCMS: m/z (ESI+) 635.3 [M+H]+, 予測値635.2, 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.57 (s, 1H), 8.09 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.92 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.77 (s, 1H), 7.71 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.56-7.48 (m, 2H), 7.45-7.36 (m, 2H), 7.28 (s, 5H), 6.43 (s, 2H), 6.29-6.22 (m, 1H), 6.12 (t, J = 6.0 Hz, 1H), 5.40 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 5.02 (dd, J = 12.4, 12.4 Hz, 2H), 4.38-4.32 (m, 1H), 4.26-4.20 (m, 1H), 4.12-4.05 (m, 1H), 4.01-3.93 (m, 2H), 2.48-2.39 (m, 1H), 2.21-2.14 (m, 1H), 1.24-1.20 (m, 6H)。
【0185】
実施例2:Log P(pH11.0)アッセイおよびCaco-2透過性アッセイ
Log Pアッセイを、小型化1-オクタノール/バッファー振盪フラスコ法に従って行ない、続いてLC/MS/MS分析を行なった。試験化合物を、100%DMSO中に溶解された10mM溶液として調製した。試験化合物(10mM、DMSO中;2μL/ウェル)およびQCサンプル(10mM、DMSO中;2μL/ウェル)を、二重反復で、保存用チューブから、96ウェルポリプロピレンクラスターチューブへと移した。バッファーは、80mMリン酸塩、80mMホウ酸塩、および80mM酢酸塩溶液(pH11.0、1%DMSO含有)として調製した。バッファー飽和1-オクタノール(149μL/ウェル)および1-オクタノール飽和バッファー(149μL/ウェル)を、各ウェルに加えた。それぞれのチューブを横にして3分間しっかりと混合し、続いて、室温にて880rpmの速度で1時間、直立させて振盪した。チューブを2500rpmで2分間遠心分離した。内部標準溶液を用いて、バッファー層サンプルを20倍に希釈し、1-オクタノール層を200倍に希釈した。サンプル分析は、三連四重極質量分析計を用いて行なった。ピーク面積を、希釈係数および内部標準を参照することにより補正し、補正されたピーク面積の比率を用いて、結果(Log P値)を算出した。データ分析:各化合物に対するLog P値は、以下の式を用いて算出した:
【0186】
【0187】
結果を表3に示す。
【0188】
Caco-2透過性アッセイは、以下の通りに行なった:
ATCCから購入したCaco-2細胞を、1×105細胞/cm2で96ウェルBDインサートプレート中のポリエチレンメンブレン(PET)上に播種し、コンフルエントな細胞単層形成のために、21~28日目まで、4~5日間毎に培地を交換した。
【0189】
本試験での輸送バッファーは、10mM HEPESを含むHBSS(pH7.40±0.05)であった。試験化合物は、2μMで、30μMノボビオシン(BCRP阻害剤)、ベラパミル(Pgp阻害剤)、もしくはGF120918(BCRP/Pgp阻害剤)の存在下または非存在下(二重反復で双方向)で試験した。E3S対照は、5μMで、排出阻害剤の存在下または非存在下(二重反復で双方向)で試験し、フェノテロールおよびプロプラノロール対照は、2μMで、排出阻害の非存在下(二重反復でA-B方向)で試験した。最終的なDMSO濃度は、1%未満に調整した。プレートを、37±1℃、5%CO2、飽和湿度にて、振盪せずに、CO2インキュベーター中で120分間インキュベートした。すべてのサンプルを、内部標準を含有するアセトニトリルと混合し、4000rpmで20分間遠心分離した。続いて、100μLの上清溶液を、LC/MS/MS分析用に100μL蒸留水を用いて希釈した。開始溶液、ドナー溶液、およびレシーバ溶液中の試験化合物および対照化合物の濃度を、アナライト/内部標準のピーク面積比を用いてLC/MS/MSにより定量し、かつ単層を通したルシファーイエローの透過を、細胞の完全性を評価するために測定した。
【0190】
見かけの透過性係数であるPapp(cm/s)を、以下の式を用いて算出した:
Papp=(dCr/dt)×Vr/(A×C0)
[式中、dCr/dtは、時間の関数としての、レシーバチャンバー中の化合物の累積濃度の勾配(μM/s)であり;Vrは、レシーバチャンバー中の溶液容積(頂部側で0.075mL、側底部側で0.25mL)であり;Aは、輸送に関する表面積(すなわち、単層の面積に関して0.0804cm2)であり;C0は、ドナーチャンバー中の初期濃度(μM)である]。
【0191】
回収率(%)は、以下の式を用いて算出した:
回収率(%)=100×[(Vr×Cr)+(Vd×Cd)]/(Vd×C0)
[式中、Vdは、ドナーチャンバー中の容積(頂部側で0.075mL、側底部側で0.25mL)であり;CdおよびCrは、それぞれドナーチャンバーおよびレシーバチャンバー中の輸送化合物の最終濃度である]。結果を表3に示す。
【0192】
【0193】
実施例3:dNMPプロドラッグは、DGUOK欠損症を有する患者由来線維芽細胞でのmtDNA枯渇をレスキューする
重度の新生児期発症肝脳病変およびmtDNA枯渇を生じさせるDGUOKスプライシング変異体c.592-4_c.592-3delTTおよびc.677A>G(p.H226R)を含む患者由来線維芽細胞株10028を、Buchaklian et. al., Molecular Genetics and Metabolism, 2012, 107, 92-94に記載されている通りに用いた。細胞を、αMEM(10%FBS+20mM L-グルタミン含有)が入った直径3.5cmのプレート中で培養した。コンフルエントになったら、細胞に、血清欠乏αMEM(+20mM L-グルタミン)を添加した。化合物をDMSOビヒクル中に溶解させ、細胞を含有する培地に添加して、1~100μMの最終濃度とした。対照細胞には、ビヒクルのみを添加した。細胞を、血清欠乏培地中で10日間連続して化合物またはビヒクルと共にインキュベートし、培地は、新しく調製した化合物またはビヒクルを含有する同一の培地を用いて、毎日交換した。mtDNAコピー数は、qPCRを介して、Venegas et. al., Current Protocols in Human Genetics, 2011, Chapter 19, Unit 19.7に記載された通りに評価した。結果を
図1に示す。試験したdNMPプロドラッグである化合物15および1017の両方が、用量依存的な様式で、対照と比較してmtDNAコピー数を増加させることが見出された。
【0194】
援用
本明細書中で言及されるすべての刊行物および特許は、それぞれの個別の刊行物または特許が参照により組み入れられることが具体的かつ個別に示されているかの如く、その全体で参照により本明細書中に組み入れられる。矛盾が生じる場合は、本明細書中のいずれかの定義を含む本出願が支配するであろう。
【0195】
均等物
本発明の具体的実施形態を議論してきたが、上記の明細書は例示的であり、制限的ではない。本発明の多数の改変が、本明細書および以下の特許請求の範囲を検討すれば当業者には明らかになるであろう。本発明の全範囲は、そのような改変と共に、それらの均等物の全範囲と併せて特許請求の範囲および本明細書を参照することにより、決定されるべきである。
本発明は、以下を提供する。
1. 式(I)の構造を有する化合物または製薬上許容されるその塩もしくはプロドラッグ:
【化18】
[式中、
R
1は、アリールまたはヘテロアリールであり;
R
2およびR
2'は、それぞれ独立に、水素、アルキルもしくはアラルキル、または天然アミノ酸側鎖であり;
R
3は、アルキルまたはアラルキルであり;
R
4は、水素もしくはアルキルであるか;または
R
2およびR
4が、それらを分離している-C-N-部分と一緒になって複素環を形成し;かつ
NTは、核酸塩基または核酸塩基プロドラッグ部分である]。
2. NTが核酸塩基である、上記1に記載の化合物。
3. NTがアデニン、グアニン、シトシン、またはチミンである、上記2に記載の化合物。
4. NTが核酸塩基プロドラッグ部分である、上記1に記載の化合物。
5. 前記核酸塩基プロドラッグ部分が、以下の部分:
【化19】
から選択され、さらに、R
5がアルキルまたはアラルキルである、上記4に記載の化合物。
6. R
5がメチル、エチル、イソプロピル、またはベンジルである、上記5に記載の化合物。
7. R
5がメチルである、上記6に記載の化合物。
8. R
1がフェニル、ナフチル、または4-フルオロフェニルである、上記1~7のいずれかに記載の化合物。
9. R
1がナフチルまたはフェニルである、上記1~8のいずれかに記載の化合物。
10. R
1がナフチルである、上記1~9のいずれかに記載の化合物。
11. R
2がアルキルまたはアラルキルである、上記1~10のいずれかに記載の化合物。
12. R
2が天然アミノ酸側鎖である、上記1~11のいずれかに記載の化合物。
13. R
2がメチル、イソプロピル、またはベンジルである、上記1~12のいずれかに記載の化合物。
14. R
2がメチルである、上記1~13のいずれかに記載の化合物。
15. R
2がL立体配置で配置される、上記1~14のいずれかに記載の化合物。
16. R
2'がH、アルキルまたはアラルキルである、上記1~15のいずれかに記載の化合物。
17. R
2'が天然アミノ酸側鎖である、上記1~16のいずれかに記載の化合物。
18. R
2'がHである、上記1~17のいずれかに記載の化合物。
19. R
2'がメチルである、上記1~17のいずれかに記載の化合物。
20. R
3がメチル、ベンジル、ネオペンチルまたはイソプロピルである、上記1~19のいずれかに記載の化合物。
21. R
3がイソプロピルである、上記1~20のいずれかに記載の化合物。
22. R
4が水素である、上記1~21のいずれかに記載の化合物。
23. R
4がメチルである、上記1~21のいずれかに記載の化合物。
24. R
2およびR
4が、それらを分離している-C-N-部分と一緒になって、5~10原子複素環を形成している、上記1~12または15~21のいずれかに記載の化合物。
25. R
2およびR
4が、それらを分離している-C-N-部分と一緒になって、ピロリジン環を形成している、上記24に記載の化合物。
26. 前記化合物が、以下の化合物:
【化20】
または製薬上許容されるその塩である、上記1~18または20~22のいずれかに記載の化合物。
27. 式(Ia)の構造を有する上記1に記載の化合物または製薬上許容されるその塩もしくはプロドラッグ:
【化21】
[式中、
R
1は、アリールまたはヘテロアリールであり;
R
2は、水素、アルキルまたはアラルキルであり;
R
3は、アルキルまたはアラルキルであり;
R
4は、水素またはアルキルであり;かつ
NTは、アデニン、グアニン、シトシン、またはチミンである]。
28. R
1がフェニル、ナフチル、または4-フルオロフェニルである、上記27に記載の化合物。
29. R
1がナフチルである、上記28に記載の化合物。
30. R
2がメチルであり、かつR
2が結合している炭素がL立体配置にある、上記27~29のいずれかに記載の化合物。
31. R
3がメチル、ベンジル、ネオペンチルまたはイソプロピルである、上記27~30のいずれかに記載の化合物。
32. R
4が水素である、上記27~31のいずれかに記載の化合物。
33. 表1に示される化合物のうちの1種である、上記27~32のいずれかに記載の化合物。
34. 上記1~33のいずれかに記載の化合物を含む医薬組成物。
35. 上記1~33のいずれかに記載の化合物または上記34に記載の組成物を患者に投与するステップを含む、ミトコンドリアDNA枯渇症候群を治療する方法。
36. 前記ミトコンドリアDNA枯渇症候群が、DGUOK欠損症、TK2欠損症、MNGIE、POLG欠損症、アルパーズ症候群(Alpers-Huttenlocher syndrome)、SANDO症候群、MIRAS、MPV17関連肝脳ミオパチー、もしくはRRM2B関連ミオパチーであるか、または、該ミトコンドリアDNA枯渇症候群が、TK2、DGUOK、POLG、MPV17、RRM2B、SUCLA2、SUCLG1、TYMP、C10orf2、またはSAMHD1中の突然変異に連鎖する、上記35に記載の方法。
37. 前記ミトコンドリアDNA枯渇症候群がDGUOK欠損症であり、かつNTがアデニンまたはグアニンである、上記36に記載の方法。
38. 前記ミトコンドリアDNA枯渇症候群がTK2欠損症であり、かつNTがシトシンまたはチミンである、上記36に記載の方法。
39. 前記ミトコンドリアDNA枯渇症候群がMNGIEであり、かつNTがシトシンである、上記36に記載の方法。
40. 前記ミトコンドリアDNA枯渇症候群がPOLG欠損症である、上記36に記載の方法。
41. NTがアデニンもしくはグアニンまたはアデニンもしくはグアニンプロドラッグ部分である、上記40に記載の方法。
42. NTがアデニンまたはグアニンである、上記41に記載の方法。
43. 前記ミトコンドリアDNA枯渇症候群がDGUOK欠損症であり、かつNTがアデニンもしくはグアニンまたはアデニンもしくはグアニンプロドラッグ部分である、上記36に記載の方法。
44. 前記ミトコンドリアDNA枯渇症候群がTK2欠損症であり、かつNTがシトシンもしくはチミンまたはシトシンもしくはチミンプロドラッグ部分である、上記36に記載の方法。
45. 前記ミトコンドリアDNA枯渇症候群がMNGIEであり、かつNTがシトシンまたはシトシンプロドラッグ部分である、上記36に記載の方法。
46. 前記ミトコンドリアDNA枯渇症候群がMPV17欠損症であり、かつNTがアデニンもしくはグアニンまたはアデニンもしくはグアニンプロドラッグ部分である、上記36に記載の方法。
47. NTがアデニンまたはグアニンである、上記46に記載の方法。
48. 前記ミトコンドリアDNA枯渇症候群がSAMDH1中の突然変異に連鎖し、かつNTがアデニン、グアニン、チミンもしくはシトシン、またはアデニン、グアニン、チミンもしくはシトシンプロドラッグ部分である、上記36に記載の方法。
49. NTがアデニン、グアニン、チミンまたはシトシンである、上記48に記載の方法。
50. 前記ミトコンドリアDNA枯渇症候群がRR2MB中の突然変異に連鎖し、かつNTがアデニン、グアニン、チミンもしくはシトシン、またはアデニン、グアニン、チミンもしくはシトシンプロドラッグ部分である、上記36に記載の方法。
51. NTが、アデニン、グアニン、チミンまたはシトシンである、上記50に記載の方法。