(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】結晶基板上で半極性窒化層を得る方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/38 20060101AFI20220207BHJP
C30B 19/00 20060101ALI20220207BHJP
H01L 33/32 20100101ALI20220207BHJP
H01L 33/22 20100101ALI20220207BHJP
【FI】
C30B29/38 D
C30B29/38 C
C30B29/38 Z
C30B19/00 Z
H01L33/32
H01L33/22
(21)【出願番号】P 2018546766
(86)(22)【出願日】2016-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2016079345
(87)【国際公開番号】W WO2017093359
(87)【国際公開日】2017-06-08
【審査請求日】2019-10-17
(32)【優先日】2015-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】311015001
【氏名又は名称】コミサリヤ・ア・レネルジ・アトミク・エ・オ・エネルジ・アルテルナテイブ
(73)【特許権者】
【識別番号】311016455
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フイエ,ギー
(72)【発明者】
【氏名】エル・コーリー・マルーン,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ベンヌグ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】スニガ・ペレス,ヘスス
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0119218(US,A1)
【文献】特開2012-186449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00-35/00
H01L 33/32
H01L 33/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素またはゲルマニウムを主体とする単結晶層(410)の上面でガリウム(Ga)、インジウム(In)およびアルミニウム(Al)のうち少なくとも1個から窒化物(N)の少なくとも1個の半極性層(480)が得られるようにする処理であって、前記処理は以下のステップ、すなわち
-前記単結晶層の上面から、主に第1の方向に伸長する複数の平行なグルーブ(460)を、各グルーブ(460)が少なくとも2個の反対向きの傾斜ファセット(330,331)を含み、前記2個の反対向きのファセット330.331)のうち少なくとも1個(330)が{111}結晶方位を有するようにエッチングするステップと、
-{111}結晶方位を有する前記ファセット(330)に反対向きの前記ファセット(331)がマスキングされ、{111}結晶方位を有する前記ファセット(330)がマスキングされないように前記単結晶層(410)の上面の上部にマスク(490)を形成するステップと、
-前記非マスキングファセット(330)から窒化物の前記半極性層(480)をエピタキシャル成長させるステップを含み、
前記エッチングが、前記単結晶層(410)および前記単結晶層(410)を被せられた少なくとも1個の停止層(420)を含む積層上で実行されること、
前記エッチングが前記停止層(420)と接触した時点で停止すべく、前記エッチングが前記単結晶層(410)を前記停止層(420)に関して選択的にエッチングすること、および
前記単結晶層(410)の厚さが900nm(10
-9メートル)以下であることを特徴とする処理。
【請求項2】
前記単結晶層(410)の厚さが、前記エッチングステップにおいて、所与のグルーブ(460)の前記2個の反対向きの傾斜ファセット(330,331)が当接することなく前記停止層(420)に到達する程度である、請求項1に記載の処理。
【請求項3】
前記グルーブ(460)の伸長する前記第1の方向が、前記上面の平面および<111>平面に共通な方向に一致する請求項1~2のいずれか1項に記載の処理。
【請求項4】
前記エピタキシャル成長ステップが、
-{111}結晶方位を有する前記非マスキングファセット(330)からの、窒化アルミニウム(AlN)を主体とする材料の第1のエピタキシャル成長と、
-窒化アルミニウム(AlN)を主体とする前記材料からの、窒化ガリウム(GaN)を主体とする材料(480)の少なくとも1個の第2のエピタキシャル成長とを含んでいる、請求項1~3のいずれか1項に記載の処理。
【請求項5】
前記停止層(420)が、前記停止層(420)からのエピタキシャル成長無しに前記単結晶層(410)からのエピタキシャル成長を可能にすべく構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の処理。
【請求項6】
前記単結晶層(410)が前記停止層(420)に直接接触する、請求項1~5のいずれか1項に記載の処理。
【請求項7】
前記積層が、前記停止層(420)を被せられた担体層(402)を含んでいる、請求項1~6のいずれか1項に記載の処理。
【請求項8】
前記停止層(420)が前記担体層(402)に直接接触する、請求項7に記載の処理。
【請求項9】
前記停止層(420)が、前記担体層(402)の少なくとも一表面を酸化させることにより得られる、請求項7~8のいずれか1項に記載の処理。
【請求項10】
前記停止層(420)が、酸化物の
層およびSiCの
層から選択される層である、請求項1~9のいずれか1項に記載の処理。
【請求項11】
前記単結晶層(410)の厚さが2nm(10
-9メートル)~900nmである、請求項1~10のいずれか1項に記載の処理。
【請求項12】
前記単結晶層(410)の厚さが750nm以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の処理。
【請求項13】
前記単結晶層(410)の厚さが600nm以下である、請求項12に記載の処理。
【請求項14】
前記単結晶層(410)の厚さが50nm~600nmである、請求項1~10のいずれか1項に記載の処理。
【請求項15】
前記単結晶層(410)が、予めドナー基板上で得られ、次いで前記停止層(420)に加えられる層である、請求項1~14のいずれか1項に記載の処理。
【請求項16】
マスク(490)を形成するステップが、マスキング材料の角方向堆積を含み、堆積が、全ての単結晶層(410)が{111}結晶方位を有する前記ファセット(330)を除いて覆われるように実行される、請求項1~
15のいずれか1項に記載の処理。
【請求項17】
前記マスキング材料が、酸化ケイ素(SiO
2)、窒化ケイ素(SiN)、および窒化チタン(TiN)材料のうち少なくとも1個を含んでいる、請求項
16に記載の処理。
【請求項18】
前記窒化物が窒化ガリウム(GaN)である、請求項1~
17のいずれか1項に記載の処理。
【請求項19】
前記複数の平行なグルーブ(460)が50nm~20μmのピッチp1を有している、請求項1~
18のいずれか1項に記載の処理。
【請求項20】
前記複数の平行なグルーブ(460)の前記平行なグルーブ(460)が主として第1の方向に伸長し、
前記処理がまた、前記複数の平行なグルーブ(460)を得るステップの後、且つ前記単結晶層(480)のエピタキシャル成長ステップの前に実行される以下のステップ、すなわち
-前記第1の方向に対して回転した第2の方向に伸長し、且つ各々が{111}単結晶方位を有する個別ファセット(330’)のマトリクス配列(335)を形成すべく連続的なグルーブ(460)に割り込む複数の平行なトレンチをエッチングするステップを含み、前記トレンチおよび前記グルーブは各々底部を有し、前記トレンチの底部が前記グルーブ(460)の底部(421)と同じ深さ、またはより深い位置にあり、
前記エピタキシャル成長ステップを実行する間、前記
単結晶層(480)が{111}結晶方位を有し、且つ前記マトリクス配列(355)を形成する前記個別ファセット(330’)だけから成長する、請求項1~
19のいずれか1項に記載の処理。
【請求項21】
前記第1および第2の方向が、40°よりも大きい角度(470)を画定する請求項
20に記載の処理。
【請求項22】
前記複数の平行なグルーブ(460)がピッチp1を有し、前記複数の平行なトレンチが
【数1】
よりも大きいピッチp2を有している、請求項
20~
21のいずれか1項に記載の処理。
【請求項23】
前記複数の平行なグルーブ(460)がピッチp1を有し、前記複数の平行なトレンチが1.1*p1よりも小さいピッチp2を有している、請求項
20~
22のいずれか1項に記載の処理。
【請求項24】
単結晶層(410)と、前記単結晶
層(410)の上面においてガリウム(Ga)、インジウム(In)およびアルミニウム(Al)のうち少なくとも1個からなる窒化物の少なくとも1個の層である半極性層(480)とを含む超小型電子素子であって、
-前記単結晶層(410)が複数の平行なグルーブ(460)を含み、各グルーブ(460)が、各々が連続帯域を形成する少なくとも2個の反対向きの傾斜ファセット(330,331)を含んでいて、前記2個の反対向きのファセットの少なくとも1個(330)が{111}結晶方位を有し、
-前記
窒化物の少なくとも1個の層が{111}結晶方位を有する前記ファセット(330)に直接接触し、
前記単結晶層(410)が停止層(420)に被せられ、各グルーブ(460)が、前記停止層(420)の上面から伸長して前記単結晶層(410)の中心を貫通すること、および前記単結晶層(410)の厚さが900nm(10
-9メートル)以下であることを特徴とする素子。
【請求項25】
前記グルーブ(460)が、前記停止層(420)の上面により形成される平坦な底部(421)を有している、請求項
24に記載の超小型電子素子。
【請求項26】
請求項
24~
25のいずれか1項に記載の超小型電子素子を含む発光ダイオード(LED)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に発光ダイオード(LED)に関する。本発明はより具体的には、以下の材料、すなわちガリウム(Ga)、インジウム(In)およびアルミニウム(Al)のうち少なくとも1個と共に得られる少なくとも1個の窒化物(N)を含むエピタキシャル層から得られるLEDに関する。
【背景技術】
【0002】
特にガリウム(GaN)を含む1個以上の材料と共に得られ、且つ青色領域で発光可能な窒化化合物から製造される発光ダイオードが既に10年以上にわたり知られている。しかし、典型的には緑色および赤色に対応する可視スペクトル範囲の、より長い波長範囲でも効果的に発光可能な適性は、当該波長範囲で発光すべく設計されたダイオードの光電変換効率を制約する、使用材料の結晶対称性に関する固有の問題点に直面する。具体的には、青色よりも長い波長を発光可能であるためには、高濃度のインジウムを含むガリウムおよびインジウムの窒化合金(GaInN)に活性発光領域を形成し易くする必要がある。ここで生じる問題は、発光領域の構造品質、従って発光能力を低下させることなくGaInN合金に必要とされるインジウムを如何により多く添加するかである。
【0003】
これらの窒化物により生成される青色を含む波長の全範囲で生じる第2の問題は、上述の材料系統の結晶対称性に関する。具体的には、六方対称である当該材料は、「c」方向と呼ばれる主結晶方向にエピタキシャル成長する場合、当該方向に沿って自発的に圧電分極する。活性発光領域において電子と孔を空間的に分離するという否定的効果を有する内部電場が生じ、これは放射効率の損失に直接つながる。分極化がc軸、すなわち結晶の「極」の方位に沿っているため、当該軸に対して傾いたエピタキシャル成長方向、すなわち
図1に示すように分極成分が低い、またはゼロである方向を用いることが有利である。
図1はまた、合金に含まれるインジウム130の割合が当該パラメータに及ぼす影響を示す。これらの方向は一般に「無極性」方向110または「半極性」方向120と呼ばれる。更に、使用する窒化物へのインジウムの添加は、エピタキシャル成長が当該方位のうち特定のものに一致する表面から実行された場合に容易になり得る。従って、現時点では潜在的産業用途を模索するには依然として効率が低すぎる緑色LED、特に黄色から赤色にわたる、より長い波長の範囲で発光するLEDの性能を向上させるために上述のような結晶方位を優先させることが如何に重要であるかが理解されよう。
【0004】
無極性および半極性方向に、上述のような窒化化合物のエピタキシャル成長層を得る公知の方法について以下に簡潔に述べる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
対処すべき問題は、無極性方向110または半極性方向120におけるエピタキシャル成長を可能にするために使用すべき基板を決定することである。エピタキシャル成長層における欠陥濃度の最小化も同時に望まれる場合、最も適切な方法は、エピタキシャル成長させる層と同じ性質の基板(同質基板)を用いることである。上述の窒化物の場合、c方向に引かれたGaNのインゴット塊は典型的には1インチ(2.5cm)未満のように依然としてサイズが小さく、基板のサイズは典型的には数cm2未満であり、従って想定する産業用途に充分なサイズを有し、c軸に対して傾いた基板を切り出すことが不可能であることを意味する。
【0006】
上述の寸法問題の影響を受けない一解決策は、適切な方位の基板、例えばサイズがより大きく、方位が適切なサファイヤ基板上で正しい結晶方向に配置された層を用いるものである。一般にテンプレートと呼ばれるこれらの層は、例えばサファイヤ製の選択された基板上での擬似「ヘテロエピタキシャル」成長を介して所望の方位、すなわち無極性方位110または半極性方位120を得る。しかし、このように得られた層は、表面に対して傾いたc平面に伸長する、従って成長層の表面に現れる極めて多数の積層欠陥および、より少ないものの、ある個数の位置ずれにより損なわれていることが観察される。これらのテンプレートのエピタキシャル成長は、単に欠陥の長さを増大させるだけである。これらの欠陥は、有効領域と交差する際に波長がより短い非放射性再結合または放射性再結合を生じさせる。このことは、そのような層から製造されたLEDの光電変換効率が低下する現象を少なくとも部分的に説明する。
【0007】
上述の問題点を緩和すべく、「エピタキシャル横方向過成長」(ELO)法と呼ばれる方法を利用する必要がある。層の成長のある段階でマスク201を堆積させ、その目的は、一方では当該マスク下での位置ずれを防止し、他方では当該マスク全体にわたり生じる横方向過成長の間、残りの位置ずれに湾曲を生じさせるためである。そのような方法は例えば、Semiconductor Science and Technology Volume27 Number2(2012)に発表されたP.Venneguesおよび共著者による文献「Defect reduction methods for III-nitride heteroepitaxial films grown along nonpolar and semipolar orientations」に記述されている。
図2に示すように、マスク201下の欠陥および位置ずれが実際に効果的にブロックされている様子が見られるが、積層欠陥は位置ずれのように湾曲せず、マスクの開口202を通って伝搬可能な積層欠陥203は表面に到達することができる。
図2の右側の図面は、左側の写真の模式図である。
【0008】
積層欠陥を防止するのではなく、その形成の回避を図る他の解決策も従って開発されている。この種の方法は、前記基板の表面に形成されたファセット上で成長を局所的に開始させる基板の「ファセット化」に基づいており、当該ファセットにより、
図3a~3fからなる
図3に示すように、GaNをcすなわち(0001)方向にエピタキシャル成長することができる。
図3bに示すように、基板はファセット330を越えて誘電マスク320で覆われている。この場合、成長の開始時点で生じ、且つ必然的にc{0001}平面に整列する積層欠陥は、ファセットと層の界面近傍の薄い領域に閉じ込められる。また、ファセット上での晶子の成長は、成長の第1の瞬間での位置ずれの湾曲を伴う。当該方式の独創性は、基板300の方位、従ってファセットの傾きが、各種晶子の合体が最終的には
図3dに示すように、所望の半極性方位を有する平坦且つ連続的なGaN面350を生じるように選択される事実にある。積層欠陥を含む領域はサイズが極めて小さく、典型的には厚さが数ナノメートルである。このような方法は、各種の研究所によりケイ素またはサファイヤ製の基板上で開発されてきた。読者は例えば文献「T.Honda et al.,Journal of Crystal Growth 242(1-2),82(2002)」、「B.Leung et al.,Applied Physics Letters 104(26)(2014)」、および「T.Tanikawa et al.,Physica Status Solidi(C)5(9),2966(2008)」を参照されたい。サファイヤ製の基板およびケイ素製の基板の場合、ファセット330は化学または乾式エッチングにより露出する。
図3a~3dに、例えば7°の方位差を有する{001}ケイ素基板300から始まる、連続層350を得るために必要な一連のステップを示す。ケイ素上での成長には、{111}方位のファセット330は、KOHすなわち水酸化カリウムを用いた化学エッチングにより露出する。出発基板がマスキングされ、化学エッチングがマスクの開口370を介して行われることにより、グルーブ360が形成される。エッチング時間が、エッチングの深さ380、従って露出する{111}ファセット330の高さを設定する。上述のように、またGaN成長がケイ素の{111}ファセット330上で+c方位を有しているため、GaN層350の表面の所望の半極性方位を選択すべくケイ素の初期方位が正確に選択される。これにより、各種のケイ素方位、従って各種のGaN層半極性方位に対して全般的に満足すべき結果が得られる。<110>方向に7°の方位差を有する{001}ケイ素上でのGaN成長の場合における実験例を
図3e、3fに示す。ここで、ケイ素がマイクロエレクトロニクス産業で最も一般的に用いられる材料であり、従って低コストで大型ケイ素基板が利用できる限り、ケイ素基板の使用が常に好適である点に注意されたい。
【0009】
ある程度の改善を示すにもかかわらず、上で簡単に述べた局所的ヘテロエピタキシャル半極性成長方法には依然として多くの制約がある。
【0010】
特に、ケイ素基板上でのGaNの成長は、GaN層等の窒化層の成長ステップにおける「メルトバックエッチング」と呼ばれる効果の出現に関する更なる問題に直面する。この破壊的な効果はケイ素のガリウムとの反応性の結果である。具体的には、晶子の成長フェーズにおいて、ケイ素の温度はガリウムとの化学反応が可能な程度に充分上昇する。この反応は一般に、ケイ素内での空洞の形成につながる。
【0011】
これらの空洞は、基板の品質、従ってLEDの性能を減少させる。更に、空洞はケイ素表面に無秩序に現れるため、所与の積層から得られたLEDの均一性を結果的に低下させる。
【0012】
ガリウムによるケイ素の上述の非適時エッチングを回避すべく、GaN成長の開始前にケイ素上に窒化アルミニウム(AlN)の緩衝層を堆積させることができる。窒化アルミニウム(AlN)の当該緩衝層により「メルトバックエッチング」を抑制できるが、実際にこれを完全に除去できることは稀である。
【0013】
従って、窒化層、例えば半極性方位の窒化ガリウムの層がケイ素層の{111}結晶面を向くファセットから得られるようにし、且つメルトバックエッチング効果の発現を更に減らすことが可能な解決策を提供するニーズがある。
【0014】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の記述および添付の図面を精査することにより明らかになろう。他の利点が得られることも理解されよう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一実施形態によれば、本発明の一主題は、ケイ素またはゲルマニウムを主体とする単結晶層の上面でガリウム(Ga)、インジウム(In)およびアルミニウム(Al)のうち少なくとも1個から窒化物(N)の少なくとも1個の半極性層が得られるようにする処理であって、前記処理は以下のステップ、すなわち
- 当該単結晶層の上面から、主に第1の方向に伸長する複数の平行なグルーブを、各グルーブが少なくとも2個の反対向きの傾斜ファセットを含み、前記2個の反対向きのファセットのうち少なくとも1個が{111}結晶方位を有するようにエッチングするステップと、
- {111}結晶方位を有する前記ファセットに反対向きのファセットがマスキングされ、{111}結晶方位を有する前記ファセットがマスキングされないように当該単結晶層上にマスクを形成するステップと、
- 前記非マスキングファセットから窒化物の前記半極性層をエピタキシャル成長させるステップを含んでいる。
【0016】
有利な特徴として、前記エッチングは、単結晶層および当該単結晶層を被せられた少なくとも1個の停止層を含む積層上で実行される。
【0017】
有利な特徴として、前記エッチングが前記停止層と接触した時点で停止すべく前記エッチングが前記単結晶層を前記停止層に関して選択的にエッチングする。
【0018】
一実施形態によれば、前記エピタキシャル成長ステップは、
- {111}結晶方位を有する前記非マスキングファセットからの、窒化アルミニウム(AlN)を主体とする材料の第1のエピタキシャル成長と、
- 窒化アルミニウム(AlN)を主体とする前記材料からの、窒化ガリウム(GaN)を主体とする材料の少なくとも1個の第2のエピタキシャル成長とを含んでいる。
【0019】
有利な特徴として、単結晶層の厚さは900nm(10-9メートル)以下である。
【0020】
本発明の開発に関して、メルトバックエッチングを抑制するために、ケイ素またはゲルマニウムを主体とする単結晶層のガリウムによるエッチングを防止可能にすべく例えばAlNの緩衝層を充分な密度で連続的に堆積することが実際には負担可能なコストでは不可能であることが分かっている。結果的に窒化層は次第に劣化する。
【0021】
深さが浅く、ケイ素またはゲルマニウムを主体とする単結晶層の下地である停止層で停止するエッチングにより制御されるグルーブにより画定されるファセットからAlNおよびGaNの層を成長させることにより、本発明は、当該メルトバックエッチングの出現のリスクを軽減または回避可能にする。
【0022】
具体的には、ケイ素またはゲルマニウムを主体とする単結晶層の下地である停止層で停止するエッチングによりグルーブを得ることにより、本発明は、グルーブの深さを特に正確に制御することができる。これにより、ファセットのサイズを極めて正確に制御すると共に、それらのサイズを軽減することができる。
【0023】
本発明の開発に関して、メルトバックエッチングの核形成が基板の表面で無秩序に生じることが分かっている。
【0024】
更に、想定外であるが、単結晶層の厚さが900nm以下であるため、当該効果の核形成のリスクが大幅に低下する。対照的に、厚さがより大きい、典型的には1ミクロンまたは数ミクロンよりも大きい場合、メルトバックエッチングは顕著に減少しないことが分かっている。更に、このように厚さが大きい場合、単結晶層の厚さが減少してもメルトバックエッチングのリスクは減少しないか、または殆ど減少しない。
【0025】
本発明は従って、上述の効果を充分に最小化または除去することもできる。
【0026】
本発明による処理には他の利点がある。
【0027】
特に、グルーブからの窒化物成長に基づく公知の解決策において、ケイ素またはゲルマニウムを主体とする基板の化学エッチングの持続期間が、グルーブの深さ331、従って{111}方位のファセット330の高さおよび時として形状を画定する。ケイ素の場合、ファセットのサイズの上限は、KOH化学エッチングにより露出する各種の{111}平面の交差により決定される。下限に関しては、KOHエッチングの初期フェーズのパラメータに大きく依存し、エッチングは多くの場合ウェーハの残りの部分まで広がる前に局所的に開始される。また、エッチング速度は、注目するケイ素のKOH濃度、温度、および方位に密接に依存する。従って本発明の開発に関して、充分な再現性および充分な均一性を保証することは、特に大型の基板の場合、実際には困難であることが分かっている。本発明の開発に関して、直径2インチ(50mm)のケイ素基板のKOHエッチングの場合、エッチングの深さにおける約10~50%の不均一性、従って、基板全体にわたるファセット高での対応するばらつきが測定された。各々のファセット330から生じるGaN晶子340のサイズにファセットのサイズが直接影響するため、高さの均一性の欠如が次いで晶子のサイズの不均一性、従って不規則な合体につながることが分かっている。このことは、求める結晶完全性の観点から極めてハードルが高い量子井戸ヘテロ構造等の複雑な構造を形成可能な平坦層350の取得が阻害される。
【0028】
本発明は、サイズが制御され、且つウェーハ全体にわたり均一であるファセットを製造可能にすることにより、厚さがより均一な平坦層を得ることができる。
【0029】
更に、既に上で見たように、GaN晶子とケイ素ファセットの界面で生じる位置ずれが、当該ケイ素ファセットの底面および上面へ向かって湾曲することにより、位置ずれの密度を急速に低下させることができる。しかし、本発明の開発との関連で、晶子の上面に生じる位置ずれを含んだ領域の幅が、当該位置ずれが生じるケイ素ファセットの初期高に直接依存することが分かっている。従ってファセットの幅を狭めることにより、位置ずれの平均密度および位置ずれが生じる領域の広がりを軽減させることができる。これには、化学エッチングの深さの正確な制御が必要であるが、ファセットの形成に要するエッチング時間が短いため、公知の解決策では実際に行うことが困難である。公知の解決策では、ファセットのサイズが不均一性であるため基板全体にわたり基部が不均一な晶子が得られ、従って位置ずれの密度が前記基板の一端から他端にかけて変動する。例えばLED、レーザー、またはGaN製の高電子移動度トランジスタ(HEMT)の製造等、光学機器または電子機器分野に応用する場合、これはエピタキシャル成長した基板上で占める位置に応じて素子の品質が異なる限り容認できない。
【0030】
本発明は、ウェーハ全体にわたり高さがより均一なファセットを製造可能にすることにより、位置ずれの密度をゼロまで低下させるか、はるかに低くすることができ、いずれの場合も所与の層ではるかに均一にすることができる。従って所与の基板から得られる素子の品質のばらつきが小さくなる。
【0031】
任意選択的に、本発明の処理は更に、以下の任意選択的ステップおよび特徴のうち少なくとも1個を、別々にまたは組み合わせて有していてよい。
【0032】
一実施形態によれば、単結晶層の厚さは、エッチングステップにおいて、所与のグルーブの2個の反対向きの傾斜ファセットが当接することなく停止層に到達する程度である。
【0033】
一実施形態によれば、グルーブが伸長する第1の方向は、上面の平面および<111>平面に共通な方向に一致している。
【0034】
一実施形態によれば、前記エピタキシャル成長ステップは、
- {111}結晶方位を有する前記非マスキングファセットからの窒化アルミニウム(AlN)を主体とする材料の第1のエピタキシャル成長と、
- 窒化アルミニウム(AlN)を主体とする前記材料からの、窒化ガリウム(GaN)を主体とする材料の少なくとも1個の第2のエピタキシャル成長とを含んでいる。
【0035】
一実施形態によれば、第1のエピタキシャル成長は、窒化ガリウム(GaN)を主体とする材料が単結晶層を完全に覆うように実行される。
【0036】
一実施形態によれば、第1のエピタキシャル成長は、窒化アルミニウム(AlN)製の材料と関係している。
【0037】
一実施形態によれば、グルーブは平坦な底部を有し、2個の反対向きの表面はグルーブの底部で接触する。
【0038】
一実施形態によれば、停止層は、停止層からのエピタキシャル成長無しに単結晶層からのエピタキシャル成長を可能にすべく構成されている。
【0039】
一実施形態によれば、停止層は電気絶縁体である。
【0040】
一実施形態によれば、停止層は非晶質である。
【0041】
一実施形態によれば、停止層は前記半極性窒化層とは化学反応しない。
【0042】
一実施形態によれば、単結晶層は停止層に直接接触する。
【0043】
一実施形態によれば、積層は、停止層を被せられた担体層を含む。
【0044】
一実施形態によれば、停止層は担体層に直接接触する。
【0045】
一実施形態によれば、停止層は、担体層の少なくとも一表面を酸化させることにより得られる。
【0046】
一実施形態によれば、停止層は、酸化物の層、SiCの層、およびAl2O3の層から選択された層である。
【0047】
一実施形態によれば、単結晶層は薄層である。
【0048】
一実施形態によれば、単結晶層の厚さは、2nm(10-9メートル)~900nm、好適には5nm~500nm、より好適には10nm~50nmである。
【0049】
一実施形態によれば、単結晶層の厚さは750nm以下である。これらの厚さにより、メルトバックエッチングをかなりの程度最小化することができる。
【0050】
一実施形態によれば、単結晶層の厚さは600nm以下、好適には500nm以下、より好適には300nm以下、更に好適には200nm以下である。これらの厚さにより、メルトバックエッチングによる核形成の効果を更にかなりの程度最小化することができる。
【0051】
一実施形態によれば、単結晶層の厚さは50nm~600nm、好適には50nm~300nmである。このような厚さにより、メルトバックエッチングによる核形成の効果をかなりの程度最小化することができる。
【0052】
一実施形態によれば、単結晶層は、予めドナー基板上で得られ、次いで停止層に加えられる層である。
【0053】
一実施形態によれば、各グルーブは連続的である。
【0054】
一実施形態によれば、窒化物(N)と、ガリウム(Ga)、インジウム(In)およびアルミニウム(Al)のうち少なくとも1個とを含む前記材料のV/IIIモル比は100~2000である。
【0055】
一実施形態によれば、窒化物(N)と、ガリウム(Ga)、インジウム(In)およびアルミニウム(Al)のうち少なくとも1個とを含む前記材料のV/IIIモル比は300~500、好適には380~420である。
【0056】
一実施形態によれば、マスクを形成するステップは、マスキング材料の角方向堆積を含み、堆積は、全ての単結晶層が{111}結晶方位を有する前記ファセットを除いて覆われるように実行される。
【0057】
一実施形態によれば、マスキング材料は、酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(SiN)、および窒化チタン(TiN)材料のうち少なくとも1個を含んでいる。
【0058】
一実施形態によれば、窒化物は窒化ガリウム(GaN)である。
【0059】
一実施形態によれば、窒化物は窒化ガリウム(GaN)を主体とし、窒化ガリウム(GaN)は更にアルミニウム(Al)および/またはインジウム(In)を含んでいる。
【0060】
一実施形態によれば、窒化物は、窒化ガリウム(GaN)、インジウム窒化物(InN)、窒化アルミニウム(AlN)、アルミニウム窒化ガリウム(AlGaN)、インジウム窒化ガリウム(InGaN)、アルミニウムガリウムインジウム窒化物(AlGaInN)、アルミニウムインジウム窒化物(AlInN)、およびアルミニウムインジウム窒化ガリウム(AlInGaN)のうち任意のものでもある。
【0061】
一実施形態によれば、複数の平行なグルーブが50nm~20μmのピッチp1を有している。
【0062】
一実施形態によれば、ピッチp1は75nm~15μmである。
【0063】
一実施形態によれば、複数の平行なグルーブの平行なグルーブは主として第1の方向に伸長しており、本処理はまた、複数の平行なグルーブを得るステップの後、且つ単結晶層のエピタキシャル成長ステップの前に実行される以下のステップ、すなわち
- 前記第1の方向に対して回転した第2の方向に伸長し、且つ各々が{111}単結晶方位を有する個別ファセットのマトリクス配列を形成すべく連続的なグルーブに割り込む複数の平行なトレンチをエッチングするステップを含んでいる。
【0064】
有利な特徴として、前記エピタキシャル成長ステップを実行する間、前記材料は{111}結晶方位を有し、且つ前記マトリクス配列を形成する前記個別ファセットだけから成長する。
【0065】
好適には、トレンチおよびグルーブは各々底部を有し、トレンチの底部はグルーブの底部と同じ深さ、またはより深い位置にある。
【0066】
グルーブに対して傾いたトレンチの形成により、ファセット、すなわち{111}方位を有し、Ga、InおよびAlのうち少なくとも1個を含む窒化物を成長させることが可能なファセットの利用可能領域を減少させることができるため、適切な+c方向での成長を促しながら、フットプリントを減少させ、従ってGaN/AlN/SiまたはAlN/Si界面で生じたエピタキシャル成長の間に拡張する欠陥の個数を減少させることができる。
【0067】
従って本発明および提案する処理により、表面まで伝搬する拡張欠陥の密度が低下させることができ、従って、分極化効果を大幅に減少させる半極性方位に、より高い効率の緑色LEDを得ることが可能である。
【0068】
有利な特徴として、前記エピタキシャル成長ステップを実行する間、前記材料は{111}結晶方位を有し、且つ前記マトリクス配列を形成する前記個別ファセットだけから成長する。
【0069】
一実施形態によれば、前記第1および第2の方向は、40°よりも大きく、好適には50°~90°の角度を画定する。
【0070】
一実施形態によれば、前記角度は60°~90°である。
【0071】
一実施形態によれば、初期グルーブに垂直なトレンチがエッチングされる。
【0072】
一実施形態によれば、トレンチは、グルーブの深さ以上の深さを有している。
【0073】
一実施形態によれば、トレンチは鉛直な側壁を有している。好適には、トレンチおよびグルーブは各々底部を有し、トレンチの底部はグルーブの底部と同じ深さ、またはより深い位置にある。
【0074】
一実施形態によれば、複数の平行なグルーブはピッチp1を有し、複数の平行なトレンチは
【数1】
よりも大きく、好適には
【数2】
よりも大きいピッチp2を有している。
【0075】
一実施形態によれば、複数の平行なグルーブはピッチp1を有し、複数の平行なトレンチは1.1*p1よりも小さく、好適にはp1よりも低いピッチp2を有している。
【0076】
一実施形態によれば、エピタキシャル成長ステップを実行する間、基板の温度が700~1,300℃、好適には900~1,100℃に保たれる。
【0077】
一実施形態によれば、エピタキシャル成長ステップを実行する間、圧力は30mbar~1500mbar、好適には50mbar~700mbarに保たれる。
【0078】
一実施形態によれば、複数の平行なグルーブはピッチp1を有し、複数の平行なトレンチは0.9*p1~1.1*p1であるピッチp2を有しており、前記第1および第2の方向により画定される最小角度は40°よりも大きく、好適には60°よりも大きい。
【0079】
一実施形態によれば、単結晶層はケイ素(Si)またはケイ素を主体とする材料製である。
【0080】
一実施形態によれば、複数の平行なトレンチをエッチングする前記ステップは、{111}結晶方位を有する前記ファセットと反対向きのファセットがマスキングされるように、複数の平行なグルーブを形成するステップの後、且つ単結晶層の上面をマスキングするステップの前に実行される。
【0081】
一実施形態によれば、本発明は、少なくとも緑色波長の範囲で発光すべく構成された少なくとも1個の発光ダイオード(LED)を製造する方法に関し、単結晶基板の上面で、窒化物(N)と、ガリウム(Ga)、インジウム(In)およびアルミニウム(Al)のうち少なくとも1個とを含む少なくとも1個の材料から半極性層を得られるようにする、先行請求項のいずれか1項に記載の処理を含んでいる。
【0082】
別の実施形態によれば、本発明の一主題は、単結晶層と、前記単結晶基板の上面においてガリウム(Ga)、インジウム(In)およびアルミニウム(Al)のうち少なくとも1個からなる窒化物の少なくとも1個の層である半極性層とを含む超小型電子素子であって、
- 当該単結晶層は複数の平行なグルーブを含み、各グルーブは、各々が連続帯域を形成する少なくとも2個の反対向きの傾斜ファセットを含んでいて、前記2個の反対向きのファセットの少なくとも1個が{111}結晶方位を有し、
- 前記窒化層は{111}結晶方位を有するファセットに直接接触する。
【0083】
単結晶層は停止層に被せられる。各グルーブは、停止層の上面から伸長して単結晶層の中心を貫通する。
【0084】
一実施形態によれば、グルーブは停止層の上面により形成される平坦な底部を有している。
【0085】
一実施形態によれば、素子はまた、単結晶層と窒化物の間に配置されたマスキング層を含み、当該マスキング層は、{111}結晶方位を有するファセットを除いて信号結晶層の上面全体を覆っている。
【0086】
一実施形態によれば、本発明は、2個の先行請求項のいずれか1項に記載の超小型電子素子を含む発光ダイオード(LED)に関する。
【0087】
超小型電子素子とは、超小型電子に固有の手段により製造される任意の種類の装置を意味する。これらの素子は特に、純粋に電子目的を意図された素子に加え、微小機械または電気機械素子(MEMS、NEMS等)、および光または光電子素子(MOEMS等)を含んでいる。
【0088】
本発明の狙い、目的、特徴および利点は、本発明の一実施形態の詳細な記述からより明らかになろう。当該実施形態は添付の図面に示している。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【
図1】分極化効果の程度を結晶方位の関数として示すグラフである。
【
図2】エピタキシャル横方向過成長(ELO)により得られた窒化層の成長結果を示す。
【
図3-1】
図3a~3fからなり、GaNの層の局所的ヘテロエピタキシャル半極性成長の処理ステップを示す。
【
図3-2】
図3a~3fからなり、GaNの層の局所的ヘテロエピタキシャル半極性成長の処理ステップを示す。
【
図4-1】
図4a~4iからなり、GaNの層の局所的テロエピタキシャル半極性成長を得るための本発明による一処理例のステップを示す。
【
図4-2】
図4a~4iからなり、GaNの層の局所的テロエピタキシャル半極性成長を得るための本発明による一処理例のステップを示す。
【
図4-3】
図4a~4iからなり、GaNの層の局所的テロエピタキシャル半極性成長を得るための本発明による一処理例のステップを示す。
【
図4-4】
図4a~4iからなり、GaNの層の局所的テロエピタキシャル半極性成長を得るための本発明による一処理例のステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0090】
図面は例示目的で与えられており、本発明を限定するものではない。図面は、本発明の理解を容易にすることを意図された模式的且つ概念的表現であり、従って必ずしも現実の適用例と同縮尺ではない。特に、各種の層および膜の相対的な厚さは現実を表すものではない。
【0091】
本発明の文脈において「上に」、「被さる」、「覆う」「下に」という用語またはこれらの等価物は「~と接触している」を意味していない。従って、例えば、第2層の上への第1層の堆積は必ずしも2個の層が互いに直接接触することを意味する訳ではなく、第1層が第2層を、直接接触した状態で、または少なくとも1個の他の層または少なくとも1個の他の要素により分離された状態で、少なくとも部分的に覆うことを意味する。
【0092】
以下の記述において、厚さまたは高さは、各種の層の主面に垂直な方向に測定されている。各図面において、厚さまたは高さは鉛直線に沿って計測される。
【0093】
同様に、ある要素が別の要素に垂直に置かれていることが示されている場合、これら2個の要素は共に、基板の主平面に垂直な同一線上、すなわち図面で鉛直方向の所与の線上に置かれている。
【0094】
本発明による処理の一般的な原理について以下に記述し、次いで
図4a~4hを参照しながら非限定的な実施形態について詳述する。
【0095】
本処理は、窒化ガリウム(GaN)の、およびインジウム(In)とアルミニウム(Al)を含む窒化物合金の半極性または無極性方位のエピタキシャル層の成長がもたらす問題を解決する方策を提供する。
【0096】
本発明の処理は有利な特徴として、SOI型の処理済みケイ素基板を用いる。SOIは「silicon-on-insulator(ケイ素搭載絶縁体)」の略語である。停止層420の役割を果たす連続的な絶縁層の上に置かれた、好適には単結晶ケイ素であるケイ素の薄い表面層を含むそのような基板を形成する多くの公知の技術がある。停止層420は多くの場合酸化ケイ素(SiO2)である。
【0097】
単結晶層は従ってケイ素を主体としてよい、すなわち、完全にケイ素製であっても、または実際にはケイ素および少なくとも1個の他の元素を含んでいてもよい。別の実施形態によれば、単結晶層はゲルマニウムを主体とする。以下の記述において、ケイ素を主体とする単結晶層に言及しつつ本発明について述べる。後述する実施形態は、ゲルマニウムを主体とする単結晶層に適用できる。
【0098】
一般に、絶縁層は、組み上がった構造に充分な機械的剛性を与えることを意図された、以下で担体層と呼ばれる厚い担体の上に置かれる。ベースまたはバルクウェーハとも呼ばれる厚い、または嵩高い担体も多くの場合ケイ素製である。
【0099】
より一般的には、本発明はSOX型の基板を用いており、当該略語は任意の種類のSOI基板、すなわち絶縁層および厚い担体がケイ素(Si)および酸化ケイ素(SiO2)以外の材料製であってよい基板を示すために用いる。従って、担体層は、アルミナ(Al2O3)または炭化ケイ素(SiC)あるいは超小型電子産業で一般的に用いられる他の任意の材料製であってよい。
【0100】
例えばケイ素製の単結晶表面層は、例えばスマートカット法と呼ばれる公知の方法等の各種の公知の処理を用いて得ることができる。本方法では、表面層はドナー基板と呼ばれるものから得られる。表面層は次いで、追加の前に担体層の表面に形成された一般にSiO2製である絶縁層の分子結合により担体層に追加される。
【0101】
単結晶層の結晶方位は、所望の半極性方位が上述のように後続する(例えばGaNの)窒化層の成長の間に得られるようなものでなければならない。以下の表に、適当と思われるケイ素表面層の各種の結晶方位を要約する。
【0102】
【0103】
ケイ素または上述の他の材料のうちの1個の材料製の担体層またはベースウエーハの結晶方位および性質は、停止層420の役割を果たす絶縁層が担体層と単結晶表面層との界面を形成するため、窒化層のそれらに直接影響を及ぼさない。(例えばGaNの)窒化層の製造に関して、単結晶表面層だけを考慮すればよい。
【0104】
担体層の元となる材料の選択は、熱伝導率、熱膨張率、透明度および本発明の特定の用途に依存し得る他の物理的パラメータ等を考慮して行うことができる。担体層がケイ素製の場合、その結晶方位は一般に{100}または{111}である。
【0105】
酸化物層の厚さ、またはより一般に、単結晶表面層の追加前に形成された絶縁層の厚さもまた本発明による処理の実行結果に直接影響を及ぼす要因でない。当該厚さは、一般に150nm(1ナノメートル=10-9m)~900nm(μm=10-6m)、より一般に2nm(10-9メートル)~900nm、好適には5nm~500nm、より好適には10nm~50nmの値の範囲に含まれている。
【0106】
一実施形態によれば、単結晶層の厚さは750nm以下、好適には600nm以下、より好適には500nm以下、更に好適には300nm以下である。これらの厚さにより、メルトバックエッチングにより核形成の効果をより大幅に最小化することができる。
【0107】
上述の絶縁層は、エッチングを行う間に単結晶表面層でエッチングされるファセットを露出させる停止層420を形成するように選択される。典型的には、エッチングは、停止層420に関して高い選択性を有する単結晶表面層をエッチングする化学エッチングを介して実行される。
【0108】
SOI型構造を形成する公知の処理を用いることが有利であり、これらの処理は従来絶縁層を用いるが、停止層420は必ずしも絶縁性ではない。有利な特徴として、停止層は非晶質である。停止層は前記半極性窒化層層とは化学反応しない。
【0109】
停止層420は有利な特徴として、単結晶表面層により画定された{111}ファセット上での局所的成長を可能にする。より正確には、化学エッチングにより露出された{111}方位のファセット上だけで選択的な成長を得るには、選択された材料上でのGaNの成長が不可能でなければならない。酸化ケイ素(SiO2)は使用が簡単、且つ多くのエッチング化学物質におけるケイ素に関して良好な選択性を有する点で有利である。更に、単結晶表面層を追加する間に実行される分子結合に適している。窒化ケイ素(SiN)もまた停止層420の形成に有利な材料である。好適には、停止層420は、例えば非晶質SiO2またはSiN製の非晶質である。
【0110】
停止層420は、選択された絶縁材料がケイ素表面層でファセットを露出させるために用いる化学エッチング(例えば上述のようにKOHを用いて実行されたエッチング)に関して不活性ならば、SiO2以外の性質を有していてよい。
【0111】
図4は、
図4a~4iからなり、この場合は
図4cに示すようにSOI基板400である積層上での本発明の処理を実行する一例を示す。
【0112】
典型的にケイ素製である基板の単結晶表面層410の方位は、続いて(10-11)方位のGaNのエピタキシャル層を得るべく、[110]に向かう7°の(001)結晶平面の方位差を有している。
【0113】
上述のSOI基板400は、単結晶表面層410を被せられた停止層420を被せられた担体層402を含んでいる。
【0114】
当該SOI基板400は、例えば上で簡単に説明して
図4a、4bに示したように、単結晶表面層410を追加する前に例えば「スマートカット」技術と呼ばれる技術を用いて表面404が酸化された例えばケイ素製の厚い担体層402から出発する、従来方式で得られる。
【0115】
好適には、結合前に、分子結合を促進すべく単結晶表面層410自身が予め酸化される。接触している酸化層は従ってSOI基板の中間停止層420を形成する。
【0116】
図4e~4fに示すように、次いでグルーブ460が単結晶表面層410でエッチングされる。これらのグルーブは凹形パターンであり、従ってトレンチを形成する。
【0117】
これを行うため、マスク440が単結晶表面層410の最上部に形成される。当該マスクは、単結晶表面層410を覆う平行な帯域441を形成して、単結晶表面層410の他の平行な帯域を覆わないままにする。
【0118】
マスク440は、酸化ケイ素(SiO2)または窒化ケイ素(SiN)430の層を堆積または成長させることにより形成される。次に、帯域441は、マスキング層430のリソグラフィ、例えば従来技術によるフォトリソグラフィおよびエッチングにより形成される。
【0119】
平行な帯域441は、単結晶表面層410の所定の結晶方向に向けられている。結晶層410は、停止層420に対向する内面および当該内面の反対側の外面を有し、前記外面はまた上面とも呼ばれる。平行な帯域441の方位の方向は、結晶層410の外面の平面および化学エッチングを介して露出させたい<111>平面に共通な方向に一致していなければならない。当該方向が<110>方向である。従って、帯域441は、単結晶層410の上面の平面と<111>平面との交線と平行である。
図4に示す本発明の実施例において、これは<110>方向の問題である。
【0120】
単結晶表面層410は次いで、既に上で述べたようにKOHを用いて例えば化学的に、またはテトラメチル水酸化アンモニウムすなわちTMAHを用いてエッチングすることができる。
【0121】
このようにエッチングにより形成されたグルーブ460は帯域441と平行である。従って、これらのグルーブ460は、結晶層410の外面の平面と<111>平面に共通な方向に向けられた平行なグルーブを画定する。
【0122】
本発明に関して、有利な特徴として、非限定的な本例ではSiO2製の停止層420に到達したならばエッチングは自動的に停止する。従って、エッチングは、従来技術に関して記述したバルクシリコン基板を用いる従来方式の処理の場合のように{111}方位のファセット330が接触する前に停止する。
【0123】
従って、エッチング時間に応じて{111}方位のファセット330の高さを設定するのではなく、前記高さは、本発明の処理によりSOI基板の単結晶ケイ素表面層410の厚さにより完全に画定される。
【0124】
ファセット330の高さはグルーブ460の深さに依存する。ファセット高330およびグルーブ460の深さは、各種の層402、420、410が主に置かれている平面に垂直に、すなわち
図4a~4iの鉛直線に沿って測定される。
【0125】
グルーブ460は従って好適には平坦な底部421を有している。当該底部は停止層420の上面により形成されている。
【0126】
既に上で述べたように、化学浴が不均一性の原因である。SOI基板、またはより一般的にはSOX基板の使用により、化学エッチングによる不均一性にもかかわらず基板の表面全体で極めて均一な高さおよび制御された厚さを有するファセット330を得ることができる。残りの不均一性は従って、SOIのケイ素層の厚さ411の不均一性であり、この種の基板の様々な供給元が指定するように、わずか数パーセントに過ぎない。これは大直径(典型的には300mm)の基板(一般にウェーハとも呼なれる)、およびケイ素表面層厚が薄い(20nm未満)場合にもあてはまる。
【0127】
一実施形態によれば、グルーブ460が形成されたならば、{111}方位のファセット330を除いて構造の上面全体を覆うべく構成されたマスク419が次いで形成される。当該マスク490を
図4gに示す。当該マスク490は典型的には酸化物、例えばSiO
2から形成されている。
【0128】
従って、単結晶基板の上面をマスキングする本ステップは、{111}結晶方位を有するファセット330の反対側の{111}方位のファセット331をマスキングするように実行される。
【0129】
当該マスク490の形成は典型的には、酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(SiN)、および窒化チタン(TiN)のうち少なくとも1個を含む材料を堆積させるステップを含んでいる。
【0130】
第1の実施形態によれば、当該マスク490の堆積は、{111}結晶方位を有する前記ファセット330を除いて単結晶基板410の上面全体がマスキングされるように実行される角方向堆積である。堆積の傾きの角度とは、ファセット330に対応するトレンチの一部分がアクセス不可能であり、従って堆積された材料を受け取らないことを意味する。本ステップは、堆積の角度は調整可能なイオンビームスパッタラー(IBS)として公知の標準的設備部品を用いて実現される。傾斜した角度を有する堆積はまた、真空下の目標陽極を電子ビームで照射する電子ビーム物理蒸着(EBPVD)技術により得られる。
【0131】
マスク490を形成する材料の傾斜堆積を可能にする上述の技術の代替として、酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(SiN)および窒化チタン(TiN)のうち少なくとも1個を含む材料のマスキング層を堆積させ、次いで、堆積に続いて、{111}方位のファセット330を露出させたまま、エピタキシャル成長させる窒化物と{111}方位のファセット330のケイ素との接触させるようにしてもよい。
【0132】
図4hに示すように、{111}方位のファセット330から成長させた晶子470は、単結晶層410の厚さ411の不確実な変動範囲内で全てほぼ等しいサイズであるため、
図4iに示すように、基板全体にわたる平坦な半極性面480の合体および取得が大幅に容易になる。
【0133】
一実施形態によれば、第1の窒化層がエピタキシャル成長して単結晶層の{111}方位のファセット330に直接接触する。典型的には、窒化物の第1層はAlNである。次に、例えばGaNの第2の窒化物が次いで第1のエピタキシャル成長した窒化層から成長する。第1および第2の窒化物の層の界面は図示しない。当該第1の窒化層は典型的にはAlN製であるかまたはAlNを主体としており、上述のようにメルトバックエッチングが減少させることができる。
【0134】
単結晶表面層410から得られた{111}方位のファセット330の寸法は好適には、20nm~2μmにわたる値の範囲に含み、これは出発表面の結晶方位に応じて約10nm~1μmの表面層の厚さ411の範囲に対応する。マスク440の帯域441の反復周期は、好適には2~10μmにわたる値の範囲に含まれている。
【0135】
大きいサイズの基板上でも本発明の処理により得られるサイズが極めて小さいファセット330を用いることにより、従来技術に関して記述した、GaN層の成長ステップで生じるメルトバックエッチングの問題を大幅に最小化または除去できる点に注意されたい。上で見てきたように、この破壊的効果は、晶子の成長フェーズの間にガリウムと反応できる程度に充分高い温度に上昇するケイ素の反応性に起因する。これは一般に、ガリウムと反応する基板のケイ素の非適時エッチングによる空洞の形成につながる。GaNの成長が開始する前にケイ素の上に堆積されたAlN緩衝層(図示せず)は、成長する間に露出されるケイ素の領域が小さいためはるかに効果的であり、上述の問題を大幅に軽減または完全に除去する。
【0136】
最後に、使用するSOX構造により、ファセット330から成長させた半極性方位の窒化物の層480を容易に剥離できる点に注意されたい。具体的には、単結晶層330と停止層420の界面(例えばSi/SiO2界面)は機械的に壊れやすいため、当該層の厚さが充分であれば、窒化層480を元の基板から破損することなく分離することができ、従ってGaNの均一且つ独立した層が得られる。層の厚さが数百ミクロン(μm)ならば、従来技術に関して述べたように、特に、得られたものと比較した場合、直径が現在公知の方法で得られる最大サイズである1インチすなわち2.5cmを超えないc方位のGaNのインゴットを、ある角度で切断することにより、サイズが極めて大きい半極性擬似基板が得られる。
【0137】
一実施形態(図示せず)によれば、追加的なステップが、複数の平行なグルーブを形成するステップの後、且つ単結晶層のエピタキシャル成長ステップの前に実行される。当該追加的なステップは、平行なグルーブ360が伸長する主方向に対して回転した方向に伸長する複数の平行なトレンチを形成するステップを含んでいる。
【0138】
一実施形態によれば、トレンチは、グルーブ360に対して、40°よりも大きく、好適には50°~90°の角度だけ回転しており、当該角度は担体層402が置かれた主平面と平行な平面内で測定されている。
【0139】
従って、トレンチはこのように、各々が{111}結晶方位を有する個別のファセットのマトリクス配列を形成すべく連続的なグルーブ360に割り込む。従って、エピタキシャル成長ステップを実行する間、材料は、{111}結晶方位を有していて前記マトリクス配列を形成する前記個別ファセットだけから成長する。好適には、トレンチおよびグルーブは各々底部を有し、トレンチの底部はグルーブの底部と同じ深さ、またはより深い位置にある。
【0140】
グルーブに対して傾いているトレンチの形成により、{111}結晶方位を有するファセットの利用可能領域を減少させることができる。この任意選択的であるが有利な実施形態は従って、適切な+c方向での成長を促しながら、エピタキシャル成長に寄与するフットプリントを減少させ、従ってエピタキシャル成長の間にGaN/AlN/SiまたはAlN/Si界面で生じる欠陥の個数を減少させることができる。
【0141】
本発明は上述の実施形態に限定されず、請求項が対象とする全ての実施形態を包含する。