(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】プラズマ堆積方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/50 20060101AFI20220207BHJP
C23C 14/22 20060101ALI20220207BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
C23C16/50
C23C14/22 Z
H01L21/31 C
(21)【出願番号】P 2018547422
(86)(22)【出願日】2017-03-06
(86)【国際出願番号】 GB2017050590
(87)【国際公開番号】W WO2017153725
(87)【国際公開日】2017-09-14
【審査請求日】2020-02-21
(32)【優先日】2016-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】509232898
【氏名又は名称】センブラント リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シング,シャイレンドラ ヴィクラム
(72)【発明者】
【氏名】ライオン,リチャード アンソニー
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-052398(JP,A)
【文献】特開2002-334866(JP,A)
【文献】特表2009-517852(JP,A)
【文献】特表2015-521338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/50
C23C 14/22
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)1種以上の式(A)の炭化水素化合物、又は(ii)1種以上のC
1~C
3アルカン、C
2~C
3アルケン若しくはC
2~C
3アルキン化合物を含む前駆体混合物のプラズマ堆積により、空のプラズマチャンバの内壁上に被覆層を堆積させるプラズマ堆積方法であって、
【化1】
式中、
Z
1は、C
1~C
3アルキル又はC
2~C
3アルケニルを表し、
Z
2は、水素、C
1~C
3アルキル又はC
2~C
3アルケニルを表し、
Z
3は、水素、C
1~C
3アルキル又はC
2~C
3アルケニルを表し、
Z
4は、水素、C
1~C
3アルキル又はC
2~C
3アルケニルを表し、
Z
5は、水素、C
1~C
3アルキル又はC
2~C
3アルケニルを表し、
Z
6は、水素、C
1~C
3アルキル又はC
2~C
3アルケニルを表
し、
被覆層の堆積の後に、
(a)空のプラズマチャンバ内に電気アセンブリを導入し、
(b)プラズマ堆積により電気アセンブリ上にコンフォーマルコーティングを堆積させて、コンフォーマルコーティングを有する電気アセンブリをもたらし、
(c)コンフォーマルコーティングを有する電気アセンブリをプラズマチャンバから取り出し、
電気アセンブリが、プリント回路基板であり、ステップ(a)から(c)を、2回以上反復し、
電気アセンブリを取り出した後、被覆層、及びコンフォーマルコーティングの堆積中に被覆層上に堆積された任意の材料を、プラズマチャンバの内壁から除去する、プラズマ堆積方法。
【請求項2】
プラズマ堆積が、プラズマ化学気相堆積(PECVD)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プラズマ堆積が、0.001から10mbarの圧力で生じる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
1つ又はそれぞれの式(A)の炭化水素化合物が、1,4-ジメチルベンゼン、1,3-ジメチルベンゼン、1,2-ジメチルベンゼン、トルエン、4-メチルスチレン、3-メチルスチレン、2-メチルスチレン、1,4-ジビニルベンゼン、1,3-ジビニルベンゼン、1,2-ジビニルベンゼン、1,4-エチルビニルベンゼン、1,3-エチルビニルベンゼン及び1,2-エチルビニルベンゼンから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
式(A)の炭化水素化合物が、1,4-ジメチルベンゼンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
1種以上の式(A)の炭化水素化合物が、1,4-ジビニルベンゼン、1,3-ジビニルベンゼン及び1,2-ジビニルベンゼンの混合物である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前駆体混合物が、N
2O、NO
2、NH
3、N
2、CH
4、C
2H
2、C
2H
6、C
3H
6及びC
3H
8から選択される1種以上の反応性ガスをさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前駆体混合物が、He、Ar及びKrから選択される1種以上の非反応性ガスをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
被覆層の厚さが、5nmから1000nmである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
被覆層、及びコンフォーマルコーティングの堆積中に被覆層上に堆積された任意の材料を、物理的洗浄技術により除去する、請求項
9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマチャンバの内壁の被覆層を作製するための方法、この被覆層を有するプラズマチャンバを使用した、電気アセンブリ上へのその後のコンフォーマルコーティングの堆積、並びに被覆層及びコンフォーマルコーティングの形成中に被覆層上に堆積された材料のその後の除去に関する。
【背景技術】
【0002】
コンフォーマルコーティングは、エレクトロニクス産業において、作動中に電気アセンブリを環境曝露から保護するために長年使用されている。コンフォーマルコーティングは、プリント回路基板等の電気アセンブリ、及びその部品の輪郭に沿う保護ラッカーの薄く柔軟な層である。従来のコンフォーマルコーティングの有望な代替物として、プラズマ堆積コーティングが現れ、例えば、WO2013/132250において説明されている。
【0003】
プラズマ堆積プロセスは、コンフォーマルコーティングが堆積される電気アセンブリをプラズマチャンバ内に設置することを含み、続いて、コンフォーマルコーティングが電気アセンブリ上に堆積されるように、プラズマ堆積プロセスが実行される。しかしながら、プラズマ堆積プロセスは、一般に、電気アセンブリ上のみにコーティングを堆積させるわけではない。通常、コーティングの少なくとも一部は、プラズマチャンバの内壁上、及びそのプロセスに曝露される任意の他の表面上にも堆積される。
【0004】
その結果、複数の電気アセンブリに対して堆積の反復サイクルが行われる場合、プラズマチャンバの内壁上に望ましくない材料の蓄積が生じ、これは定期的に除去する必要がある。内壁上に堆積された材料は、除去しないと、プラズマ堆積プロセスに電気的、物理的及び/又は化学的に干渉し得る。内壁上に堆積された材料の一部はまた、コーティングされている電気アセンブリ上に剥がれ落ち始める場合がある。したがって、プラズマチャンバの内壁上に堆積された材料は、電気アセンブリ上に堆積されたコンフォーマルコーティングの品質を低下させる。また、プラズマ堆積プロセスの全体的効率も悪影響を受ける可能性がある。
【0005】
プラズマチャンバの内壁上に堆積された材料の除去は困難となり得る。WO2013/132250に記載のもの等、プラズマ堆積プロセス中に堆積された材料の多くは、プラズマチャンバの内壁、特にそれらの壁の金属部分への接着レベルが極めて高い。
【0006】
その結果、プラズマチャンバの内壁上に堆積された材料を完全に除去することはしばしば困難であり、又はいくつかの場合においては不可能である。例えば、チャンバを洗浄するためにプラズマ洗浄又はエッチングが使用され得るが、これは、内壁上に堆積された材料を除去するのに、そもそも材料を堆積させるために必要な時間とほぼ同じ、又は時としてそれより長い時間を必要とする。これは、プロセス全体のスループット及び電力消費に悪影響を及ぼす。
【0007】
プラズマチャンバの内壁を物理的に被覆するために、金属、又はポリエステル等のポリマーのシートが使用されている。しかしながら、これらのシートは、各プラズマチャンバ用に特別に製造する必要があり、またそれらをプラズマチャンバに導入する、及びプラズマチャンバから除去するのは時間を要する。さらに、プラズマチャンバ内のシートの存在は、プラズマ堆積プロセス中の排気時間がより長くなり、ひいてはプロセスの効率が低減されることを意味する。
【0008】
したがって、堆積プロセス中にプラズマチャンバの内壁上に堆積された材料を除去するための、改善されたより効率的な方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、驚くべきことに、最初にプラズマチャンバの内壁上に被覆層を堆積させることにより、堆積プロセス中にプラズマチャンバの内壁上に堆積された材料を容易に除去することが可能であることを見出した。被覆層は、コーティングが堆積される電気アセンブリをプラズマチャンバ内に導入する前に堆積される。その後プラズマチャンバ内に導入された電気アセンブリ上にコンフォーマルコーティングが堆積される際、材料はまた被覆層の直接上にも堆積される。その後、被覆層を、その上に堆積された任意の材料と共に好都合に除去することができ、清浄なプラズマチャンバが残される。被覆層の存在は、プラズマ堆積プロセスにおける排気時間を増加させず、したがってプロセスの効率は被覆層の存在により低減されない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、(i)1種以上の式(A)の炭化水素化合物、又は(ii)1種以上のC1~C3アルカン、C2~C3アルケン若しくはC2~C3アルキン化合物を含む前駆体混合物のプラズマ堆積により、空のプラズマチャンバの内壁上に被覆層を堆積させるプラズマ堆積方法であって、
【0011】
【化1】
式中、
Z
1は、C
1~C
3アルキル又はC
2~C
3アルケニルを表し、
Z
2は、水素、C
1~C
3アルキル又はC
2~C
3アルケニルを表し、
Z
3は、水素、C
1~C
3アルキル又はC
2~C
3アルケニルを表し、
Z
4は、水素、C
1~C
3アルキル又はC
2~C
3アルケニルを表し、
Z
5は、水素、C
1~C
3アルキル又はC
2~C
3アルケニルを表し、
Z
6は、水素、C
1~C
3アルキル又はC
2~C
3アルケニルを表す、プラズマ堆積方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の被覆層を追加する前の空のプラズマチャンバを示す図である。
【
図2】本発明の被覆層がプラズマ堆積により追加された空のプラズマチャンバの図である。
【
図3】コンフォーマルコーティングが適用され、被覆層上に材料が堆積された電気アセンブリを含有するプラズマチャンバを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
プラズマ堆積方法
本発明は、プラズマ堆積方法に関連し、これは典型的にはプラズマ化学気相堆積(PECVD)又はプラズマ物理気相堆積(PEPVD)、好ましくはPECVDである。プラズマ堆積プロセスは、典型的には、減圧下で、典型的には0.001から10mbar、好ましくは0.01から1mbar、例えば約0.7mbarで行われる。堆積反応は、プラズマチャンバの内壁及び/若しくは電気アセンブリ、並びに/又はプラズマチャンバの内壁及び/若しくは電気アセンブリ上に既に堆積された層の表面上でin situで生じる。
【0014】
プラズマ堆積は、典型的には、イオン化された及び中性の供給ガス/前駆体、イオン、電子、原子、ラジカル並びに/又はプラズマで生成される他の中性種を含むプラズマを生成する反応器内で行われる。反応器は、典型的には、プラズマチャンバ、真空システム、及び1つ以上のエネルギー源を備えるが、プラズマを生成するように構成された任意の好適な種類の反応器が使用され得る。エネルギー源は、1種以上のガスをプラズマに変換するように構成された任意の好適なデバイスを含み得る。好ましくは、エネルギー源は、加熱器、高周波(RF)発生器、及び/又はマイクロ波発生器を含む。
【0015】
プラズマ堆積は、他の技術を使用して調製することができない独特な材料クラスをもたらす。プラズマ堆積材料は、極めて不規則な構造を有し、一般に高度に架橋しており、ランダムな分岐を含有し、いくつかの反応性部位を保持する。これらの化学的及び物理的な特質は周知であり、例えば、Plasma Polymer Films、Hynek Biederman、Imperial College Press 2004及びPrinciples of Plasma Discharges and Materials Processing、第2版、Michael A. Lieberman、Alan J. Lichtenberg、Wiley 2005において説明されている。
【0016】
典型的には、プラズマ堆積プロセスにおいて、真空システムを使用してプラズマチャンバが10-3から10mbarの範囲内の圧力まで排気される。次いで、典型的には1種以上のガスが(制御された流量で)チャンバ内に注入され、エネルギー源が安定なガスプラズマを生成する。次いで、典型的には1種以上の前駆体化合物が、ガス及び/又は蒸気としてチャンバ内のプラズマ相内に導入される。代替として、前駆体化合物が最初に導入され、次に安定なガスプラズマが生成されてもよい。プラズマ相内に導入されると、前駆体化合物は、典型的にはプラズマ内で分解(及び/又はイオン化)して一連の活性種(すなわちラジカル)を生成し、これがプラズマチャンバ内の露出表面上に堆積し、層を形成する。
【0017】
堆積した材料の厳密な性質及び組成は、典型的には、以下の条件の1つ以上に依存する:(i)選択されたプラズマガス、(ii)使用された特定の前駆体化合物、(iii)前駆体化合物の量(前駆体化合物の圧力、流量及びガス注入の方式の組合せにより決定され得る)、(iv)前駆体化合物の比、(v)前駆体化合物の順序、(vi)プラズマ圧力、(vii)プラズマ駆動周波数、(viii)出力パルス及びパルス幅のタイミング、(ix)コーティング時間、(x)プラズマ出力(ピーク及び/若しくは平均プラズマ出力を含む)、(xi)チャンバ電極配置、並びに/又は(xii)導入されるアセンブリの作製。
【0018】
典型的には、プラズマ駆動周波数は、1kHzから4GHzである。典型的には、プラズマ出力密度は、0.001から50W/cm2、好ましくは0.01W/cm2から0.02W/cm2、例えば約0.0175W/cm2である。典型的には、質量流量は、5から1000sccm、好ましくは5から20sccm、例えば約10sccmである。典型的には、作動圧力は、0.001から10mbar、好ましくは0.01から1mbar、例えば約0.7mbarである。典型的には、コーティング時間は、10秒から60分超、例えば10秒から60分である。
【0019】
プラズマ処理は、より大型のプラズマチャンバを使用することにより、容易に拡張することができる。しかしながら、当業者には理解されるように、好ましい条件は、プラズマチャンバのサイズ及び構成に依存する。したがって、使用されている特定のプラズマチャンバに応じて、当業者が作動条件を変更することが有益となり得る。
【0020】
被覆層の説明
本発明は、プラズマ堆積による空のプラズマチャンバの内壁への被覆層の堆積を含む。空のプラズマチャンバは、いかなる別個の、又は孤立した物体(例えば電気アセンブリ)も含有しない。したがって、コーティングされる物体がプラズマチャンバ内に存在する場合にのみプラズマ堆積が行われる通常のプラズマ堆積方法とは対照的に、本発明の方法はまず、そのような物体がプラズマチャンバ内に存在しない状態でのプラズマ堆積を含む。
【0021】
プラズマチャンバの内壁は、典型的には、金属及び非金属部分を備える。プラズマチャンバの内壁は、プラズマ堆積プロセス中にプラズマと接触し、したがってプラズマ堆積中にその上に材料が堆積する、プラズマチャンバ内の全ての表面である。したがって、プラズマチャンバの内壁は、プラズマチャンバ内の永久的要素、例えばガス送達システム又は電極の露出部分を含む。
【0022】
プラズマ堆積により堆積されたコンフォーマルコーティング、特にWO2013/132250に記載のようなヘキサフルオロプロピレン(HFP)等のフッ素含有前駆体のプラズマ堆積により形成されたものは、金属表面に対する良好な接着性を有する傾向があり、したがってそのようは表面から除去することが困難となり得る。したがって、本発明の被覆層は、典型的には、プラズマチャンバの内壁の金属部分の少なくとも一部、好ましくは金属部分の実質的に全てを被覆する(例えば、金属部分の面積の95%超が被覆層により被覆されることが特に好ましい)。プラズマチャンバの内壁の全ての金属部分が被覆層により被覆されることが最も好ましい。
【0023】
一般に、被覆層を有するプラズマチャンバの内壁のいかなる非金属部分も被覆することは比較的重要ではないが、これは、上述のコンフォーマルコーティングが、一般にそのような表面にはより接着しにくいためである。それにもかかわらず、プラズマチャンバの内壁の非金属部分の少なくとも一部、より好ましくは実質的に全てが被覆層により被覆されることが好ましい。例えば、プラズマチャンバの内壁の非金属部分の面積の95%超が被覆層により被覆されることが特に好ましい。プラズマチャンバの内壁の全ての非金属部分が被覆層により被覆されることが最も好ましい。
【0024】
本発明の被覆層を作製するために使用されるプラズマ堆積技術は、一般に、金属又は非金属を問わず、プラズマチャンバの内壁の全ての表面上に被覆層を堆積する。したがって、プラズマチャンバの内壁の面積の実質的に全て、例えば95%超が被覆層により被覆されることが特に好ましい。プラズマチャンバの内壁の全てが被覆層により被覆されることが最も好ましい。
【0025】
本発明の被覆層は、(i)1種以上の式(A)の炭化水素化合物、又は(ii)1種以上のC1~C3アルカン、C2~C3アルケン若しくはC2~C3アルキン化合物を含む前駆体混合物から形成される、式CmHnの炭化水素ポリマーである。前駆体混合物は、任意選択で、反応性ガス(例えばNH3)及び/又は非反応性ガス(例えばAr)をさらに含む。典型的には、前駆体混合物は、
- (i)1種以上の式(A)の炭化水素化合物、又は(ii)1種以上のC1~C3アルカン、C2~C3アルケン若しくはC2~C3アルキン化合物、並びに
- 任意選択の反応性ガス及び任意選択の非反応性ガス
からなる、又は本質的にそれらからなる。
【0026】
式CmHnの炭化水素層は、典型的には、直鎖、分岐状及び/又はネットワーク鎖構造を有する非晶質ポリマー性炭化水素である。特定の前駆体及び共前駆体(すなわち、反応性ガス及び/又は非反応性ガス)に応じて、CmHn層は、構造内に芳香環を含有し得る。m及びnの値、ポリマーの密度並びに/又は芳香環の存在は、プラズマを生成するための印加出力を変化させることにより、並びに前駆体及び/若しくは共前駆体の流れを変化させることにより調整され得る。例えば、出力を増加させることにより、芳香環の濃度が低減され得、ポリマーの密度が増加し得る。共前駆体(すなわち、反応性ガス及び/又は非反応性ガス)に対する前駆体の流量の比を増加させることにより、芳香環の密度が増加し得る。
【0027】
本発明の発見は、本発明の被覆層を形成するために使用される式CmHnの炭化水素ポリマーが、プラズマチャンバの内壁に対する望ましい接着レベルを達成することである。特に、被覆層は、電気アセンブリのコンフォーマルコーティング中にプラズマチャンバの内壁に付着した状態を維持するのに十分な接着性を有するが、その後の洗浄ステップ中に容易に除去され得ないほどの高い接着レベルを有さない。被覆層は、コンフォーマルコーティングの形成中に1000nmから150μmの厚さで堆積された材料を剥離することなく保持することを可能にする、プラズマチャンバの内壁に対する接着レベルを有することが、特に好ましい。
【0028】
被覆層を作製するために使用される前駆体混合物は、以下の構造:
【0029】
【化2】
(式中、Z
1は、C
1~C
3アルキル又はC
2~C
3アルケニルを表し、Z
2は、水素、C
1~C
3アルキル又はC
2~C
3アルケニルを表し、Z
3は、水素、C
1~C
3アルキル又はC
2~C
3アルケニルを表し、Z
4は、水素、C
1~C
3アルキル又はC
2~C
3アルケニルを表し、Z
5は、水素、C
1~C
3アルキル又はC
2~C
3アルケニルを表し、Z
6は、水素、C
1~C
3アルキル又はC
2~C
3アルケニルを表す)を有する式(A)の炭化水素化合物を含有することが好ましい。
【0030】
典型的には、Z1は、メチル、エチル、又はビニルを表す。典型的には、Z2は、水素、メチル、エチル、又はビニルを表す。典型的には、Z3は、水素、メチル、エチル、又はビニルを表す。典型的には、Z4は、水素、メチル、エチル、又はビニルを表す。典型的には、Z5は、水素、メチル、エチル、又はビニル、好ましくは水素を表す。典型的には、Z6は、水素、メチル、エチル、又はビニル、好ましくは水素を表す。
【0031】
好ましくは、Z5及びZ6は、水素を表す。
【0032】
より好ましくは、Z1は、メチル、エチル又はビニルを表し、Z2は、水素、メチル、エチル又はビニルを表し、Z3は、水素、メチル、エチル又はビニルを表し、Z4は、水素、メチル、エチル又はビニルを表し、Z5は、水素を表し、Z6は、水素を表す。
【0033】
一般に、Z2からZ4の2つが水素を表すことが好ましい。
【0034】
式(A)の好ましい炭化水素化合物は、1,4-ジメチルベンゼン、1,3-ジメチルベンゼン、1,2-ジメチルベンゼン、トルエン、4-メチルスチレン、3-メチルスチレン、2-メチルスチレン、1,4-ジビニルベンゼン、1,3-ジビニルベンゼン、1,2-ジビニルベンゼン、1,4-エチルビニルベンゼン、1,3-エチルビニルベンゼン及び1,2-エチルビニルベンゼンである。1,4-ジメチルベンゼンが特に好ましい。ジビニルベンゼンもまた特に好ましく、典型的には、1,4-ジビニルベンゼン、1,3-ジビニルベンゼン及び1,2-ジビニルベンゼンの混合物の形態で使用される。
【0035】
被覆層を作製するために使用される前駆体混合物は、代替として、1種以上のC1~C3アルカン、C2~C3アルケン又はC2~C3アルキン化合物を含有してもよい。C1~C3アルカン化合物は、メタン(CH4)、エタン(C2H6)及びプロパン(C3H8)である。C2~C3アルケン化合物は、エテン(C2H4)及びプロペン(C3H6)である。C2~C3アルキン化合物は、エチン(C2H2)及びプロピン(C3H4)である。したがって、前駆体混合物は、メタン(CH4)、エタン(C2H6)、プロパン(C3H8)、エテン(C2H4)、プロペン(C3H6)、エチン(C2H2)及びプロピン(C3H4)から選択される1種以上の化合物を含有してもよい。メタン(CH4)、エタン(C2H6)、プロパン(C3H8)、プロペン(C3H6)及びエチン(C2H2)が好ましい。
【0036】
前駆体混合物は、任意選択で1種以上の反応性ガスをさらに含む。1つ又はそれぞれの反応性ガスは、N2O、NO2、NH3、N2、CH4、C2H2、C2H6、C3H6及びC3H8から選択される。前駆体混合物が主要な前駆体(ii)として既にCH4、C2H2、C2H6、C3H6及び/又はC3H8を含有する場合、これらの化合物は「反応性ガス」として再び添加されないことを理解されたい。これらの反応性ガスは、一般に、プラズマ堆積機構に化学的に関与し、したがって共前駆体とみなすことができる。当業者は、得られる堆積した層の所望の改質を達成するために、任意の適用された出力密度における他の前駆体化合物に対する反応性ガスの比を容易に調節することができる。
【0037】
前駆体混合物はまた、任意選択で1種以上の非反応性ガスをさらに含む。非反応性ガスは、He、Ar又はKrであり、He及びArが好ましい。非反応性ガスは、プラズマ堆積機構に化学的に関与しないが、一般に、得られる材料の物理的特性に影響する。例えば、He、Ar又はKrの添加は、一般に、得られる層の密度を、ひいては硬度を増加させる。He、Ar又はKrの添加はまた、得られる堆積材料の架橋を増加させる。
【0038】
本発明の被覆層の厚さは、典型的には5nmから1000nm、好ましくは50から500nm、より好ましくは100から300nm、例えば約200nmである。
【0039】
被覆層の厚さは、当業者によって容易に制御され得る。プラズマプロセスは、所与の条件セットにおいて均一速度で材料を堆積し、したがって、層の厚さは、堆積時間に比例する。したがって、堆積の速度が決定されたら、堆積期間を制御することにより、特定の厚さを有する層が堆積され得る。
【0040】
被覆層の厚さは、実質的に均一であってもよく、又は地点によって変動してもよいが、好ましくは実質的に均一である。
【0041】
厚さは、当業者に公知の技術、例えばプロフィロメトリー、反射率測定又は分光偏光解析法を使用して測定され得る。
【0042】
被覆層の堆積の前に、空のプラズマチャンバの内壁の接着特性を改質する前処理ステップを行って、内壁と被覆層との間の接着性を最適化してもよい。同様に、被覆層の堆積の後に、被覆層の表面処理を行ってその接着特性を改質し、被覆層と、その後のコンフォーマルコーティングの形成中に被覆層上に堆積される材料との間の接着性を最適化してもよい。
【0043】
その後のコンフォーマルコーティングの堆積
プラズマチャンバの内壁上に被覆層が堆積されたら、コンフォーマルコーティングが堆積される電気アセンブリ等の物体を、プラズマチャンバ内に導入することができる。物体は、典型的には電気アセンブリであるが、プラズマ堆積によりコーティングすることが望ましい任意の他の物体、例えば医療デバイス又は衣料品であってもよい。電気アセンブリは、好ましくはプリント回路基板である。
【0044】
電気アセンブリ等の物体がプラズマチャンバの内側にあるときに、プラズマ堆積を使用して所望のコンフォーマルコーティングが物体上に堆積される。望ましいコンフォーマルコーティングは物体ごとに異なり、適切なコンフォーマルコーティングは、当業者により選択され得る。特に有利に使用され得るコンフォーマルコーティングのクラスは、WO2013/132250、WO2014/155099及びWO2016/198870に記載の多層コーティングであり、それらの内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
物体上のコンフォーマルコーティングの形成中、プラズマ堆積プロセスにより生成された材料はまた、被覆層上にも堆積される。プラズマ堆積プロセスにより生成された材料はまた、被覆層により被覆されていないプラズマチャンバの内壁の任意の領域上にも堆積され、したがって、上述のように、プラズマチャンバの内壁が被覆層により完全に被覆されることが一般に好ましい。
【0046】
前駆体としてフッ化炭化水素、例えば、CF4、C2F4、C2F6、C3F6、C3F8又はC4F8を最初にプラズマ堆積することにより作製されるコンフォーマルコーティングは、本発明の被覆層との使用に特に好適である。これは、得られるフッ素含有コーティングが、金属表面に非常に良好に接着するためである。この特性は、電気アセンブリ等の金属領域を有する物体に対するコンフォーマルコーティングにおいて極めて望ましいが、プラズマチャンバの内壁の金属部分には望ましくない(洗浄が非常に困難となるため)。本発明の被覆層は、フッ素含有コーティングがプラズマチャンバの内壁上に直接堆積されるのを防止し、したがって、金属表面からのそのようなフッ素含有コーティングの洗浄の問題を克服する。
【0047】
したがって、本発明によれば、最初にCF4、C2F4、C2F6、C3F6、C3F8又はC4F8等のフッ化炭化水素を含む前駆体混合物をプラズマ堆積により堆積させることによってコンフォーマルコーティングが作製されることが好ましい。
【0048】
物体上にコンフォーマルコーティングが堆積されたら、コンフォーマルコーティングを有する物体はプラズマチャンバから取り出される。
【0049】
したがって、全体的なコンフォーマルコーティングプロセスは以下の通りである。
(a)空のプラズマチャンバ内に、物体、典型的には電気アセンブリを導入し、
(b)プラズマ堆積により、物体、典型的には電気アセンブリ上にコンフォーマルコーティングを堆積させて、コンフォーマルコーティングを有する物体、典型的には電気アセンブリをもたらし、
(c)コンフォーマルコーティングを有する物体、典型的には電気アセンブリをプラズマチャンバから取り出す。
【0050】
次いで、コーティング手順[すなわち、ステップ(a)から(c)]を、さらなる物体に対して所望の回数反復し得る。コーティング手順を反復する度に、被覆層上に堆積される材料の量は増加する。
【0051】
プラズマチャンバの内壁の洗浄
複数の物体に対してコンフォーマルコーティング堆積の反復サイクルが行われる場合、被覆層上に材料の蓄積が生じる。被覆層上に堆積された材料は、大量に存在する場合、プラズマ堆積プロセスに物理的及び/又は化学的に干渉し始める可能性がある。また、コンフォーマルコーティングプロセスの効率も悪影響を受ける可能性がある。したがって、被覆層及びその上に堆積された材料を定期的に除去し、それにより清浄なプラズマチャンバをもたらすことが必要である。当業者は、慣例的な検査及び分析技術を使用して、洗浄ステップを実行することが必要な時期を評価することができる。
【0052】
洗浄ステップは、任意の好適な技術を使用して、プラズマチャンバの内壁から被覆層を剥がし、それによりプラズマチャンバから被覆層及びその上に堆積された材料を除去する。機械的衝撃、引っかき、摩擦又は吸引等の物理的洗浄技術が好ましい。これは、これらの技術が、被覆層の特性に起因して、被覆層及びその上に堆積された材料を効率的に除去することができるためである。吸引が特に好ましい。代替として、慣例的なプラズマ洗浄又はエッチングを使用して、プラズマチャンバから被覆層及びその上に堆積された材料を除去することができる。
【0053】
被覆層及びその上に堆積された材料が除去され、プラズマチャンバの壁が清浄となったら、一般に新たな被覆層を追加することが望ましい。すると、プラズマチャンバは、電気アセンブリのさらなるコンフォーマルコーティングの準備が整う。
【0054】
電気アセンブリ
本発明において使用される電気アセンブリは、典型的には、絶縁材料を含む基材、基材の少なくとも1つの表面上に存在する複数の導電性トラック、及び少なくとも1つの導電性トラックに接続された少なくとも1つの電気部品を備える。コンフォーマルコーティングは、好ましくは、複数の導電性トラック、少なくとも1つの電気部品、並びに複数の導電性トラック及び少なくとも1つの電気部品が位置する基材の表面を被覆する。代替として、コーティングは、1つ以上の電気部品、典型的にはPCBにおける高価な電気部品を被覆してもよく、一方、電気アセンブリの他の部分は被覆されていない。
【0055】
導電性トラックは、典型的には、任意の好適な電気伝導性材料を含む。好ましくは、導電性トラックは、金、タングステン、銅、銀、アルミニウム、半導体基材のドープ領域、導電性ポリマー及び/又は導電性インクを含む。より好ましくは、導電性トラックは、金、タングステン、銅、銀又はアルミニウムを含む。
【0056】
導電性トラックに好適な形状及び構成は、特定の当該アセンブリに対して、当業者により選択され得る。典型的には、導電性トラックは、基材の表面にその全長に沿って取り付けられる。代替として、導電性トラックは、基材に2つ以上の点で取り付けられてもよい。例えば、導電性トラックは、基材にその全長に沿ってではなく2つ以上の点で取り付けられたワイヤであってもよい。
【0057】
導電性トラックは、典型的には、当業者に公知の任意の好適な方法を使用して基材上に形成される。好ましい方法において、導電性トラックは、「サブトラクティブ」技術を使用して基材上に形成される。この方法において、典型的には、金属(例えば、銅箔、アルミニウム箔等)の層が基材の表面に接合され、次いで金属層の不要な部分が除去され、所望の導電性トラックが残される。金属層の不要な部分は、典型的には、化学エッチング又はフォトエッチング又はミリングにより基材から除去される。代替の好ましい方法において、導電性トラックは、例えば電気めっき、反転マスクを使用した堆積、及び/又は任意の幾何学的に制御された堆積プロセス等の「アディティブ」技術を使用して、基材上に形成される。代替として、基材は、典型的には導電性トラックとしてドープ領域を有するシリコンダイ又はウエハであってもよい。
【0058】
基材は、典型的には、基材が電気アセンブリの回路を短絡させることを防止する、任意の好適な絶縁材料を含む。基材は、好ましくは、エポキシラミネート材料、合成樹脂接着紙、エポキシ樹脂接着ガラス布(ERBGH)、複合エポキシ材料(CEM)、PTFE(Teflon)、又は他のポリマー材料、フェノールコットン紙、シリコン、ガラス、セラミック、紙、ダンボール、天然及び/若しくは合成木質材料、並びに/又は他の好適な布地を含む。基材は、任意選択で、難燃性材料、典型的にはFlame Retardant 2(FR-2)及び/又はFlame Retardant 4(FR-4)をさらに含む。基材は、単一層の絶縁材料、又は複数層の同じ若しくは異なる絶縁材料を含んでもよい。基材は、上で列挙された材料のいずれか1つで作製された印刷回路基板(PCB)の基板であってもよい。
【0059】
電気部品は、電気アセンブリの任意の好適な回路素子であってもよい。好ましくは、電気部品は、抵抗器、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、増幅器、リレー、変圧器、バッテリー、ヒューズ、集積回路、スイッチ、LED、LEDディスプレイ、圧電素子、光電子部品、アンテナ又は発振器である。任意の好適な数及び/又は組合せの電気部品が、電気アセンブリに接続され得る。
【0060】
電気部品は、好ましくは、接合により電気伝導性トラックに接続される。接合は、好ましくは、はんだ継手、溶接継手、ワイヤボンド継手、導電接着継手、圧着接続、又は圧力嵌め継手である。接合を形成するために好適なはんだ付け、溶接、ワイヤボンディング、導電接着及び圧力嵌め技術は、当業者に公知である。より好ましくは、接合は、はんだ継手、溶接継手又はワイヤボンド継手であり、はんだ継手が最も好ましい。
【0061】
定義
本明細書において使用される場合、C1~C6アルキルという用語は、1個から6個、好ましくは1個から3個の炭素原子を有する直鎖又は分岐状炭化水素基を包含する。その例としては、メチル、エチル、n-プロピル及びi-プロピル、ブチル、ペンチル並びにヘキシルが挙げられる。本明細書において使用される場合、C1~C3アルキルという用語は、1個から3個、好ましくは1個から2個の炭素原子を有する直鎖又は分岐状炭化水素基を包含する。その例としては、メチル、エチル、n-プロピル及びi-プロピルが挙げられる。
【0062】
本明細書において使用される場合、C2~C6アルケニルという用語は、2個から6個の炭素原子、好ましくは2個から4個の炭素原子、及び炭素-炭素二重結合を有する直鎖又は分岐状炭化水素基を包含する。好ましい例としては、ビニル及びアリルが挙げられる。本明細書において使用される場合、C2~C3アルケニルという用語は、2個又は3個の炭素原子及び炭素-炭素二重結合を有する直鎖又は分岐状炭化水素基を包含する。好ましい例としては、ビニルが挙げられる。
【0063】
本明細書において使用される場合、C1~C6アルコキシ基という用語は、酸素原子に結合した前記アルキル基である。好ましい例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ及びヘキソキシが挙げられる。
【0064】
図面の詳細な説明
ここで、本発明の態様を、
図1から3に示される実施形態を参照して説明するが、図中、同様の参照番号は、同じ又は同様の構成要素を指す。
【0065】
図1は、空のプラズマチャンバ1を示す。空のプラズマチャンバ1の内壁2及び3は、清浄であり、コーティングされていない。プラズマチャンバの内壁は、金属部分2及び非金属部分3を有する。
図1は、(a)
図2に示されるような被覆層を追加する前の空のプラズマチャンバ、並びに(b)
図3に示される層6及び7の洗浄及び除去後に準備された空のプラズマチャンバの両方を示している。
【0066】
図2は、空のプラズマチャンバ1を示す。空のプラズマチャンバ1の内壁2及び3は、被覆層4でコーティングされている。被覆層4は、空のプラズマチャンバ1の内壁の金属部分2及び非金属部分3の両方を被覆している。空のプラズマチャンバ1の被覆層4は、(i)1種以上の式(A)の炭化水素化合物、又は(ii)1種以上のC
1~C
3アルカン、C
2~C
3アルケン若しくはC
2~C
3アルキン化合物を含む前駆体混合物のプラズマ堆積により作製される。
【0067】
図3は、空ではなく電気アセンブリ5を含有するプラズマチャンバを示す。電気アセンブリ5は、プラズマ堆積により堆積されたコンフォーマルコーティング6を有する。コンフォーマルコーティング6の形成はまた、被覆層4上の材料7の堆積をもたらした。
【0068】
[実施例]
ここで、本発明の態様を、以下の実施例を参照しながら説明する。
【0069】
[実施例1]
被覆層を、まず空のプラズマチャンバ(すなわち、電気アセンブリを含有しないプラズマチャンバ)の内部表面上に、1,4-ジメチルベンゼンのプラズマ堆積により堆積させる。式CmHnの得られる被覆層は、200nmの厚さである。次いで、蓋をしたプラズマチャンバを使用して、WO2013/132250に記載の技術を用い、電気アセンブリ上にコンフォーマルコーティングを堆積させる。
【0070】
電気アセンブリへのコンフォーマルコーティングの堆積中、被覆層上にもまた材料が堆積される。コンフォーマルコーティングを有する電気アセンブリの作製が完了したら、真空吸引を使用してプラズマチャンバの内部表面を洗浄する。真空吸引によって、被覆層、及びコンフォーマルコーティングの堆積中に被覆層上に堆積された材料の両方が除去され、コーティングされていない内部表面を有する清浄なプラズマチャンバが残される。
(付記)
(付記1)
(i)1種以上の式(A)の炭化水素化合物、又は(ii)1種以上のC
1
~C
3
アルカン、C
2
~C
3
アルケン若しくはC
2
~C
3
アルキン化合物を含む前駆体混合物のプラズマ堆積により、空のプラズマチャンバの内壁上に被覆層を堆積させるプラズマ堆積方法であって、
【化3】
式中、
Z
1
は、C
1
~C
3
アルキル又はC
2
~C
3
アルケニルを表し、
Z
2
は、水素、C
1
~C
3
アルキル又はC
2
~C
3
アルケニルを表し、
Z
3
は、水素、C
1
~C
3
アルキル又はC
2
~C
3
アルケニルを表し、
Z
4
は、水素、C
1
~C
3
アルキル又はC
2
~C
3
アルケニルを表し、
Z
5
は、水素、C
1
~C
3
アルキル又はC
2
~C
3
アルケニルを表し、
Z
6
は、水素、C
1
~C
3
アルキル又はC
2
~C
3
アルケニルを表す、プラズマ堆積方法。
(付記2)
プラズマ堆積が、プラズマ化学気相堆積(PECVD)である、付記1に記載の方法。
(付記3)
プラズマ堆積が、0.001から10mbarの圧力で生じる、付記1又は2に記載の方法。
(付記4)
1つ又はそれぞれの式(A)の炭化水素化合物が、1,4-ジメチルベンゼン、1,3-ジメチルベンゼン、1,2-ジメチルベンゼン、トルエン、4-メチルスチレン、3-メチルスチレン、2-メチルスチレン、1,4-ジビニルベンゼン、1,3-ジビニルベンゼン、1,2-ジビニルベンゼン、1,4-エチルビニルベンゼン、1,3-エチルビニルベンゼン及び1,2-エチルビニルベンゼンから選択される、付記1から3のいずれか一項に記載の方法。
(付記5)
式(A)の炭化水素化合物が、1,4-ジメチルベンゼンである、付記4に記載の方法。
(付記6)
1種以上の式(A)の炭化水素化合物が、1,4-ジビニルベンゼン、1,3-ジビニルベンゼン及び1,2-ジビニルベンゼンの混合物である、付記4に記載の方法。
(付記7)
前駆体混合物が、N
2
O、NO
2
、NH
3
、N
2
、CH
4
、C
2
H
2
、C
2
H
6、
C
3
H
6
及びC
3
H
8
から選択される1種以上の反応性ガスをさらに含む、付記1から6のいずれか一項に記載の方法。
(付記8)
前駆体混合物が、He、Ar及びKrから選択される1種以上の非反応性ガスをさらに含む、付記1から7のいずれか一項に記載の方法。
(付記9)
被覆層の厚さが、5nmから1000nmである、付記1から8のいずれか一項に記載の方法。
(付記10)
被覆層の堆積の前に、空のプラズマチャンバの内壁の接着特性を改質する前処理ステップを行う、付記1から9のいずれか一項に記載の方法。
(付記11)
被覆層の堆積の後に、被覆層の表面処理を行って被覆層の接着特性を改質する、付記1から10のいずれか一項に記載の方法。
(付記12)
被覆層の堆積の後に、
(a)空のプラズマチャンバ内に物体を導入し、
(b)プラズマ堆積により物体上にコンフォーマルコーティングを堆積させて、コンフォーマルコーティングを有する物体をもたらし、
(c)コンフォーマルコーティングを有する物体をプラズマチャンバから取り出す、付記1から11のいずれか一項に記載の方法。
(付記13)
ステップ(a)から(c)を、1回以上反復する、付記12に記載の方法。
(付記14)
物体が、電気アセンブリである、付記12又は13に記載の方法。
(付記15)
電気アセンブリが、プリント回路基板である、付記14に記載の方法。
(付記16)
コンフォーマルコーティングを有する物体をプラズマチャンバから取り出した後、被覆層、及びコンフォーマルコーティングの堆積中に被覆層上に堆積された任意の材料を、プラズマチャンバの内壁から除去する、付記12から15のいずれか一項に記載の方法。
(付記17)
被覆層、及びコンフォーマルコーティングの堆積中に被覆層上に堆積された任意の材料を、物理的洗浄技術により除去する、付記17に記載の方法。