(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】ポリイソチアナフテン系導電性重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 61/12 20060101AFI20220207BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20220207BHJP
H01B 1/12 20060101ALI20220207BHJP
H01M 4/60 20060101ALN20220207BHJP
【FI】
C08G61/12
H01B13/00 Z
H01B1/12 Z
H01M4/60
(21)【出願番号】P 2018558822
(86)(22)【出願日】2017-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2017035429
(87)【国際公開番号】W WO2018123177
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-09-23
(31)【優先権主張番号】P 2016254977
(32)【優先日】2016-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100081086
【氏名又は名称】大家 邦久
(74)【代理人】
【識別番号】100121050
【氏名又は名称】林 篤史
(72)【発明者】
【氏名】川本 健
(72)【発明者】
【氏名】新美 結加
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-012394(JP,A)
【文献】特開平06-049183(JP,A)
【文献】特開平10-120769(JP,A)
【文献】特開平10-140141(JP,A)
【文献】特開平08-259673(JP,A)
【文献】特開平02-252727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/00- 61/12
H01M 4/60
H01B 13/00
H01B 1/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、それぞれ独立して、(1)水素原子、(2)炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルキル、炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルコキシ、または炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルキルエステル基(アルキルカルボニルオキシ基またはアルコキシカルボニル基)、(3)SO
2M、(4)ハロゲン原子、(5)カルボキシ基、(6)ホスホニル基、(7)ニトロ基、(8)シアノ基、(9)1級、2級または3級アミノ基、(10)トリハロメチル基、(11)フェニル基、及び(12)アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルエステル基、カルボニル基、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1つで置換されたフェニル基からなる群から選択される1価の置換基を表す。R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6が表す置換基中の炭化水素鎖は互いに任意の位置で結合して、当該置換基が結合している炭素原子と共に、少なくとも1つの3~7員環の飽和、または不飽和炭化水素の環状構造を形成する2価鎖を少なくとも1つ形成してもよい。R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6が表すアルキル基、アルコキシ基、アルキルエステル基、またはそれらによって形成される環状炭化水素鎖には、カルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル及びイミノから選択される少なくとも1つの結合を含んでもよい。Mは、O
-Na
+、O
-Li
+、O
-K
+、O
-NH
4
+、炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルコキシ基、塩素、フッ素、臭素、及びヨウ素からなる群から選択されるいずれか1種を表す。kはヘテロ環と置換基R
1~R
4を有するベンゼン環に囲まれた縮合環の数を表し、0~3の整数である。]
で示される化合物(A1)の少なくとも1種を、スルホ基を有する化合物(B)の存在下、酸化剤を使用せずに重合させるポリイソチアナフテン系導電性重合体の製造方法であって、
前記スルホ基を有する化合物(B)は、アルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、カンファースルホン酸及びそれらの誘導体、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、並びに、ポリイソプレンスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とするポリイソチアナフテン系導電性重合体の製造方法。
【請求項2】
前記化合物(A1)が、式(1)中のkが0である化合物である請求項1に記載のポリイソチアナフテン系導電性重合体の製造方法。
【請求項3】
一般式(1)中のR
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6が、それぞれ独立して、(1)水素原子、(2)炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルキル基、炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルコキシ基、または炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルキルエステル基、及び(3)ハロゲン原子から選択される1価の置換基である請求項1または2に記載のポリイソチアナフテン系導電性重合体の製造方法。
【請求項4】
一般式(2)
【化2】
[式中、R
7はスルホ基である。R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6はそれぞれ独立して、(1)水素原子、(2)炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルキル、炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルコキシ、または炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルキルエステル基(アルキルカルボニルオキシ基またはアルコキシカルボニル基)、(3)SO
2M、(4)ハロゲン原子、(5)カルボキシ基、(6)ホスホニル基、(7)ニトロ基、(8)シアノ基、(9)1級、2級または3級アミノ基、(10)トリハロメチル基、(11)フェニル基、及び(12)アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルエステル基、カルボニル基、スルホ基、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1つで置換されたフェニル基からなる群から選ばれる1価の置換基を表す。R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6が表す置換基中の炭化水素鎖は互いに任意の位置で結合して、当該置換基が結合している炭素原子と共に、少なくとも1つの3~7員環の飽和、または不飽和炭化水素の環状構造を形成する2価鎖を少なくとも1つ形成してもよい。R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6が表すアルキル基、アルコキシ基、アルキルエステル基、またはそれらによって形成される環状炭化水素鎖には、カルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル及びイミノから選択される少なくとも1つの結合を含んでもよい。MはOH、またはO
-Na
+、O
-Li
+及びO
-K
+から選択されるアルカリ金属アルコキシド、O
-NH
4
+で表されるアンモニウムアルコキシド、炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルコキシ基、塩素、フッ素、臭素、及びヨウ素から選択されるハロゲンを表す。kはヘテロ環と置換基R
2~R
4を有するベンゼン環に囲まれた縮合環の数を表し、0~3の整数である。]
で示される化合物(A2)の少なくとも1種を
、酸化剤を使用せずに重合させるポリイソチアナフテン系導電性重合体の製造方法。
【請求項5】
前記化合物(A2)が、一般式(2)中のkが0である化合物である請求項4に記載のポリイソチアナフテン系導電性重合体の製造方法。
【請求項6】
一般式(2)中のR
2、R
3、R
4、R
5及びR
6が、それぞれ独立して、(1)水素原子、(2)炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルキル基、炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルコキシ基、または炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルキルエステル基、及び(3)ハロゲン原子から選択される1価の置換基である請求項4または5に記載のポリイソチアナフテン系導電性重合体の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の一般式(1)で示される化合物(A1)の少なくとも1種と、請求項4に記載の一般式(2)で示される化合物(A2)の少なくとも1種とを
、酸化剤を使用せずに共重合させるポリイソチアナフテン系導電性重合体の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の一般式(1)で示される化合物(A1)と共重合し得る化合物(D)と、前記一般式(1)で示される化合物(A1)の少なくとも1種とをスルホ基を有する化合物(B)の存在下で
、酸化剤を使用せずに共重合させるポリイソチアナフテン系導電性重合体の製造方法であって、
前記スルホ基を有する化合物(B)は、アルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、カンファースルホン酸及びそれらの誘導体、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、並びに、ポリイソプレンスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1種であるポリイソチアナフテン系導電性重合体の製造方法。
【請求項9】
請求項4に記載の一般式(2)で示される化合物(A2)と共重合し得る化合物(D)と、前記一般式(2)で示される化合物(A2)の少なくとも1種とを
、酸化剤を使用せずに共重合させるポリイソチアナフテン系導電性重合体の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の一般式(1)で示される化合物(A1)及び請求項4に記載の一般式(2)で示される化合物(A2)と共重合し得る化合物(D)と、前記一般式(1)で示される化合物(A1)の少なくとも1種と、前記一般式(2)で示される化合物(A2)の少なくとも1種とを
、酸化剤を使用せずに共重合させるポリイソチアナフテン系導電性重合体の製造方法。
【請求項11】
生成する水を除去しながら重合させる請求項1~10のいずれかに記載のポリイソチアナフテン系導電性重合体の製造方法。
【請求項12】
前記重合が溶媒中で行われ、該溶媒の一部または全部が水よりも高沸点の溶媒である請求項1~11のいずれかに記載のポリイソチアナフテン系導電性重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子化合物(導電性重合体)の製造方法に関する。さらに詳しく言えば、重合及び精製工程が簡易なポリイソチアナフテン系導電性重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリ(p-フェニレン-ビニレン)等に代表されるπ共役系高分子に、電子受容性化合物をドーパントとしてドープした導電性高分子材料が開発され、例えば、帯電防止剤、コンデンサの固体電解質、導電性塗料、エレクトロクロミック素子、電極材料、熱電変換材料、透明導電膜、化学センサ、アクチュエータ等への応用が検討されている。前記π共役系高分子の中でも、ポリチオフェンが化学的安定性に優れ、有用である。
【0003】
一般的に導電性高分子は、導電性高分子重合体を得るための単量体と金属触媒等の酸化剤とを混合し、化学酸化重合法により、もしくは電解重合によって製造される(特許文献1~10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2013-539806号公報(WO2012/048823)
【文献】特開2015-117367号公報
【文献】特開2015-21100号公報
【文献】特表2011-510141号公報(US 8,721,928)
【文献】特開2003-261654号公報
【文献】国際公開第2011/004833号パンフレット(US 2012/104308 )
【文献】特開2002-158144号公報(US 6,614,063)
【文献】特開2009-130018号公報(US 8,027,151)
【文献】特開2005-158882号公報
【文献】特開2008-214401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、金属触媒等を用いる手法においては、触媒の洗浄または除去のために処理工程が必要である。ドーパントとなるポリスチレンスルホン酸(PSS)等の水溶性高分子水溶液中で、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)を重合させることで得られるPEDOT:PSS水分散体溶液を製造する際、触媒として使用される物質を除去するためイオン交換樹脂等が用いられ工程を煩雑化しており、粘度や粒径、分散液の安定性等、目的に合わせた液を作製するため、固形分で数%程度の濃度に限られ、また、分散液化するためにPSSをドーパント量以上に添加する必要があり、成膜化した際には導電に寄与しない部分が出てくる(特許文献1~4)。また、結晶性高く、不溶化してしまうPEDOT構造の溶剤親和性を向上させるため、EDOTに置換基を導入したり、ドーパントを設計したりする必要がある(特許文献5、6)。
電解重合法を用いる手法においては、電解装置が必要であること、導電性を有する電極表面上にのみ成形可能であるといった制約がある(特許文献8、9)。
また、水以外の溶剤の分散液を作製する際には一度水溶媒中で重合を行い、溶剤を添加、転層する手法がとられている(特許文献10)。
【0006】
本発明の目的は、
(1)導電性高分子膜を煩雑な重合・精製工程なく単量体液から提供すること、
(2)導電性高分子の溶剤親和性、溶解性等の目的に応じた性能を容易に調節できる導電性高分子前駆体液を提供すること、
(3)導電性高分子を製膜することができる一液型で高濃度の導電性高分子溶液を提供することにある。
また、本発明は、
(4)前記本発明の導電性高分子から非水溶液導電性高分子分散液の容易に製造する方法を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ドーパント能と触媒能を有する置換基としてスルホ基を有する化合物の存在下、イソチアナフテン誘導体であるベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド骨格を有する化合物を単独または共重合させることにより目的とする導電性高分子(導電性重合体)を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明は、下記[1]~[13]の導電性重合体の製造方法、[14]の導電性重合体、及び[15]の導電性重合体の分散液に関する。
[1]一般式(1)
【化1】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、それぞれ独立して、(1)水素原子、(2)炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルキル、炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルコキシ、または炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルキルエステル基(アルキルカルボニルオキシ基またはアルコキシカルボニル基)、(3)SO
2M、(4)ハロゲン原子、(5)カルボキシ基、(6)ホスホニル基、(7)ニトロ基、(8)シアノ基、(9)1級、2級または3級アミノ基、(10)トリハロメチル基、(11)フェニル基、及び(12)アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルエステル基、カルボニル基、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1つで置換されたフェニル基からなる群から選択される1価の置換基を表す。R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6が表す置換基中の炭化水素鎖は互いに任意の位置で結合して、当該置換基が結合している炭素原子と共に、少なくとも1つの3~7員環の飽和、または不飽和炭化水素の環状構造を形成する2価鎖を少なくとも1つ形成してもよい。R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6が表すアルキル基、アルコキシ基、アルキルエステル基、またはそれらによって形成される環状炭化水素鎖には、カルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル及びイミノから選択される少なくとも1つの結合を含んでもよい。MはOH、またはO
-Na
+、O
-Li
+及びO
-K
+から選択されるアルカリ金属アルコキシド、O
-NH
4
+で表されるアンモニウムアルコキシド、炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルコキシ基、塩素、フッ素、臭素、及びヨウ素から選択されるハロゲン原子を表す。kはヘテロ環と置換基R
1~R
4を有するベンゼン環に囲まれた縮合環の数を表し、0~3の整数である。]
で示される化合物(A1)の少なくとも1種を、スルホ基を有する化合物(B)の存在下で重合させることを特徴とするポリイソチアナフテン系導電性重合体の製造方法。
[2]前記化合物(A1)が、式(1)中のkが0である化合物である前項1に記載の導電性重合体の製造方法。
[3]一般式(1)中のR
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6が、それぞれ独立して、(1)水素原子、(2)炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルキル基、炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルコキシ基、または炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルキルエステル基、及び(3)ハロゲン原子から選択される1価の置換基である前項1または2に記載の導電性重合体の製造方法。
[4]一般式(2)
【化2】
[式中、R
7はスルホ基である。R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6はそれぞれ独立して、(1)水素原子、(2)炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルキル、炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルコキシ、または炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルキルエステル基(アルキルカルボニルオキシ基またはアルコキシカルボニル基)、(3)SO
2M、(4)ハロゲン原子、(5)カルボキシ基、(6)ホスホニル基、(7)ニトロ基、(8)シアノ基、(9)1級、2級または3級アミノ基、(10)トリハロメチル基、(11)フェニル基、及び(12)アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルエステル基、カルボニル基、スルホ基、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1つで置換されたフェニル基からなる群から選ばれる1価の置換基を表す。R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6が表す置換基中の炭化水素鎖は互いに任意の位置で結合して、当該置換基が結合している炭素原子と共に、少なくとも1つの3~7員環の飽和、または不飽和炭化水素の環状構造を形成する2価鎖を少なくとも1つ形成してもよい。R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6が表すアルキル基、アルコキシ基、アルキルエステル基、またはそれらによって形成される環状炭化水素鎖には、カルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル及びイミノから選択される少なくとも1つの結合を含んでもよい。MはOH、またはO
-Na
+、O
-Li
+及びO
-K
+から選択されるアルカリ金属アルコキシド、O
-NH
4
+で表されるアンモニウムアルコキシド、炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルコキシ基、塩素、フッ素、臭素、及びヨウ素から選択されるハロゲンを表す。kはヘテロ環と置換基R
2~R
4を有するベンゼン環に囲まれた縮合環の数を表し、0~3の整数である。]
で示される化合物(A2)の少なくとも1種を重合させるポリイソチアナフテン系導電性重合体の製造方法。
[5]前記化合物(A2)が、一般式(2)中のkが0である化合物である前項4に記載の導電性重合体の製造方法。
[6]一般式(2)中のR
2、R
3、R
4、R
5及びR
6が、それぞれ独立して、(1)水素原子、(2)炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルキル基、炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルコキシ基、または炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルキルエステル基、及び(3)ハロゲン原子から選択される1価の置換基である前項4または5に記載の導電性重合体の製造方法。
[7]前項1に記載の一般式(1)で示される化合物(A1)の少なくとも1種と、前項4に記載の一般式(2)で示される化合物(A2)の少なくとも1種の化合物とを共重合させる導電性重合体の製造方法。
[8]前項1に記載の一般式(1)で示される化合物(A1)及び前項4に記載の一般式(2)で示される化合物(A2)と共重合し得る化合物(D)と、前記一般式(1)で示される化合物(A1)の少なくとも1種とをスルホ基を有する化合物(B)の存在下で共重合させるポリイソチアナフテン系導電性重合体の製造方法。
[9]前項1に記載の一般式(1)で示される化合物(A1)及び前項4に記載の一般式(2)で示される化合物(A2)と共重合し得る化合物(D)と、前記一般式(2)で示される化合物(A2)の少なくとも1種を共重合させるポリイソチアナフテン系導電性重合体の製造方法。
[10]前項1に記載の一般式(1)で示される化合物(A1)及び前項4に記載の一般式(2)で示される化合物(A2)と共重合し得る化合物(D)と、前記一般式(1)で示される化合物(A1)の少なくとも1種と、前記一般式(2)で示される化合物(A2)の少なくとも1種とを共重合させるポリイソチアナフテン系導電性重合体の製造方法。
[11]酸化剤を使用せずに重合させる前項1~10のいずれかに記載の導電性重合体の製造方法。
[12]生成する水を除去しながら重合させる前項1~11のいずれかに記載の導電性重合体高分子の製造方法。
[13]水よりも蒸気圧の高い溶媒を含む前項1~12のいずれかに記載の導電性重合体の製造方法。
[14]前項1~13のいずれかに記載の方法で得られるポリイソチアナフテン系導電性重合体。
[15]前項14に記載のポリイソチアナフテン系導電性重合体の分散液。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、
(1)導電性高分子膜を煩雑な重合・精製工程なく単量体液から調製することができる。
(2)導電性高分子の溶剤親和性、溶解性等の目的に応じた性能を容易に調節できる導電性高分子前駆体液を得ることができる。
(3)導電性高分子を製膜することができる一液型で高濃度の導電性高分子溶液を得ることができる。さらに、(4)本発明による導電性高分子から非水溶液導電性高分子分散液を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例4で得られた重合体(ポリイソチアナフテン)のTG-DTA曲線である。
【
図2】比較例4で得られた重合体(ポリイソチアナフテン)のTG-DTA曲線である。
【
図3】実施例8で得られた重合体(ポリイソチアナフテン)のTG-DTA曲線である。
【
図4】比較例6で得られた重合体(ポリイソチアナフテン)のTG-DTA曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の導電性重合体の製造方法は、以下の(i)~(iii)のいずれかの方法である。
方法(i):一般式(1)で示される化合物(A1)の少なくとも1種を、スルホ基を有する化合物(B)存在下で重合させる。
方法(ii):一般式(2)で示される化合物(A2)の少なくとも1種を重合させる。
方法(iii):化合物(A1)の少なくとも1種と化合物(A2)の少なくとも1種とを共重合させる。
【0012】
<方法(i)>
一般式(1)で示される化合物(A1)の少なくとも1種を、スルホ基を有する化合物(B)存在下で重合させることで、導電性高分子を得ることができる。
【0013】
[化合物(A1)]
本発明に用いられる化合物(A1)は、一般式(1)で示される化合物である。
【化3】
【0014】
一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ独立して、(1)水素原子、(2)炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルキル、炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルコキシ、または炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルキルエステル基(アルキルカルボニルオキシ基またはアルコキシカルボニル基)、(3)SO2M、(4)ハロゲン原子、(5)カルボキシ基、(6)ホスホニル基、(7)ニトロ基、(8)シアノ基、(9)1級、2級または3級アミノ基、(10)トリハロメチル基、(11)フェニル基、及び(12)アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルエステル基、カルボニル基、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1つで置換されたフェニル基からなる群から選択される1価の置換基を表し、MはOH、またはO-Na+、O-Li+及びO-K+から選択されるアルカリ金属アルコキシド、O-NH4
+で表されるアンモニウムアルコキシド、炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルコキシ基、塩素、フッ素、臭素、及びヨウ素から選択されるハロゲン原子を表す。
【0015】
置換基R1、R2、R3、R4、R5及びR6として有用な例としては、水素原子、ハロゲン原子、SO2M、アルキル基、アルコキシ基、アルキルエステル基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0016】
これらの置換基をさらに詳しく例示すれば、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、アルキル基またはアルキルエステル基の炭化水素鎖としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、テトラデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、(2-メトキシ)エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、ドデシルオキシ等の基が挙げられる。アルキルエステル基は具体的には、アルキルカルボニルオキシ基及びアルコキシカルボニル基であり、例えばマロン酸エステル基(-OCOCH2CO2H)、フマル酸エステル基(-OCOCH=CHCO2H、二重結合がトランス型)、マレイン酸エステル基(-OCOCH=CHCO2H、二重結合がシス型)等が挙げられる。また、アルキルカルボニルオキシ基及びアルコキシカルボニル基のアルキルがメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、テトラデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル等であるものも挙げられる。
さらに、前記以外の置換基の例として、メチルアミノ、エチルアミノ、ジフェニルアミノ、アニリノ等のアミノ基、トリフルオロメチル、クロロフェニル、アセトアミド等の基が挙げられる。
R5及びR6は水素原子であることがより好ましい。R1、R2、R3、R4は4つのうち少なくとも2つは水素原子であることがより好ましく、少なくとも3つが水素原子であることがさらに好ましく、全て水素原子であることが特に好ましい。
【0017】
R1、R2、R3、R4、R5及びR6が表す置換基中の炭化水素鎖は互いに任意の位置で結合して、当該置換基が結合している炭素原子と共に、少なくとも1つの3~7員環の飽和、または不飽和炭化水素の環状構造を形成する2価鎖を少なくとも1つ形成してもよい。
R1、R2、R3、R4、R5及びR6が表すアルキル基、アルコキシ基、アルキルエステル基、またはそれらによって形成される環状炭化水素鎖には、カルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル及びイミノから選択される少なくとも1つの結合を含んでもよい。
【0018】
前記一般式(1)中の置換基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5またはR
6の炭化水素鎖が互いに任意の位置で結合して3~7員環の飽和または不飽和炭化水素の環状構造を形成する例としては、下記式(3)~(5)に示す構造等が挙げられる。
【化4】
【0019】
kは1,3-ジヒドロチオフェン-S-オキシド環と置換基R1~R4を有するベンゼン環(一般式(1))に囲まれた縮合環の数を表し、0~3の整数を表す。溶剤への溶解性の観点から、kは好ましくは0である。
【0020】
一般式(1)で示される化合物の置換基R1~R6を除いた基本骨格部分の具体例としては、例えば1,3-ジヒドロイソチアナフテン-S-オキシド(kが0である化合物)が挙げられる。
【0021】
一般式(1)で示される化合物としては、置換基を有してもよいベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド、ナフト[2,3-c]チオフェン-1,3―ジヒドロ-2-オキシドから選ばれる少なくとも1つが好ましく用いられる。
【0022】
具体例としては、ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド、ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-5-メチル-2-オキシド、ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-5,6-ジメチル-2-オキシド、ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-5-メタノール-2-オキシド、ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-5-ヒドロキシ-2-オキシド、ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-5-フルオロ-2-オキシド、ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-5-クロロ-2-オキシド、ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-5-ブロモ-2-オキシド、ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-5-オール-2-オキシド、ナフト[2,3-c]チオフェン-1,3―ジヒドロ-2-オキシド、ナフト[2,3-c]チオフェン-1,3―ジヒドロ-4-フェニル-2-オキシドが挙げられるが、これに限定されるものではない。
化合物(A1)は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
化合物(A1)の代わりに、一般式(1-2)で示される化合物の少なくとも1種を使用することも可能である。
【化5】
【0024】
上記一般式(1-2)中、R1A、R2A、R3A、R4A、R5A、R6A及びkは、それぞれ前記一般式(1)中のR1、R2、R3、R4、R5、R6及びkと同じ意味を表す。
R5A及びR6Aは水素原子であることがより好ましい。R1A、R2A、R3A、R4Aは4つのうち少なくとも2つは水素原子であることがより好ましく、少なくとも3つが水素原子であることがさらに好ましく、全て水素原子であることが特に好ましい。
【0025】
[スルホ基を有する化合物(B)]
スルホ基を有する化合物(B)は、化合物(A1)と共存させることで、ドーパント能や触媒能を持つと考えられる。スルホ基を有する化合物(B)としては、分子内に1つ以上のスルホ基を有する化合物であれば特に限定されない。例えば、低分子スルホン酸、分子内に一つ以上のスルホ基を有するスルホン酸ポリマーが挙げられる。スルホン酸塩の化合物は、イオン交換して用いることができる。
【0026】
低分子スルホン酸としては、硫酸、アルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、カンファースルホン酸及びそれらの誘導体等が挙げられる。これらの低分子スルホン酸は、モノスルホン酸でもジスルホン酸でもトリスルホン酸でもよい。アルキルスルホン酸の誘導体としては、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。ベンゼンスルホン酸の誘導体としては、フェノールスルホン酸、スチレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。ナフタレンスルホン酸の誘導体としては、1-ナフタレンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、1,3-ナフタレンジスルホン酸、1,3,6-ナフタレントリスルホン酸、6-エチル-1-ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。アントラキノンスルホン酸の誘導体としては、アントラキノン-1-スルホン酸、アントラキノン-2-スルホン酸、アントラキノン-2,6-ジスルホン酸、2-メチルアントラキノン-6-スルホン酸等が挙げられる。これらの中でも、1-ナフタレンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、1,3,6-ナフタレントリスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、アントラキノンジスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸が好ましい。
【0027】
分子内に1つ以上のスルホ基を有するポリマーとしては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸等が挙げられる。これらは単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。これらのうち、導電性付与の点から、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。
スルホ基を有するポリマーの分子量に特に制限はないが、重量平均分子量が1,000,000以下のものが好ましく、より好ましくは500,000であり、さらに好ましくは300,000である。重量平均分子量が1,000,000以下であれば、系への溶解性が良好であるため取扱いが容易である。
【0028】
スルホ基を有するポリマーは、共役系導電性重合体の熱分解を緩和することができ、共役系導電性重合体を得るための単量体の分散媒中での分散性を向上させ、さらに共役系導電性重合体のドーパントとして機能することが可能である。
これらのスルホ基を有する化合物(B)は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記方法(i)においては、前記化合物(A1)の少なくとも1種を、スルホ基を有する化合物(B)存在下で重合させることで、導電性高分子を得ることができる。スルホ基を有する化合物(B)の量は、スルホ基換算で前記化合物(A1)100モルに対して好ましくは1~400モル、より好ましくは5~300モル、さらに好ましくは10~250モルである。化合物(B)の量が、スルホ基換算で前記化合物(A1)100モルに対して1~400モルであれば、反応率、反応速度の面から好ましい。
【0030】
<方法(ii)>
一般式(2)で示される化合物(A2)の少なくとも1種を重合させることで、導電性高分子が得られる。化合物(A2)はスルホ基を有する化合物(B)が存在しなくとも重合が可能である。化合物(A2)は導電性高分子の構成単位である他、それ自体がスルホ基を有し、ドーパント能や触媒能も併せ持つためであると推測される。なお、方法(ii)においても、前記化合物(A2)の他に前記スルホ基を有する化合物(B)を含んでいてもよい。
【0031】
[化合物(A2)]
化合物(A2)は、一般式(2)で示される化合物である。
【化6】
式中、R
7はスルホ基である。R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6はそれぞれ独立して、(1)水素原子、(2)炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルキル、炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルコキシ、または炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルキルエステル基(アルキルカルボニルオキシ基またはアルコキシカルボニル基)、(3)SO
2M、(4)ハロゲン原子、(5)カルボキシ基、(6)ホスホニル基、(7)ニトロ基、(8)シアノ基、(9)1級、2級または3級アミノ基、(10)トリハロメチル基、(11)フェニル基、及び(12)アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルエステル基、カルボニル基、スルホ基、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1つで置換されたフェニル基からなる群から選ばれる1価の置換基、(13)スルホ基を表す。MはOH、またはO
-Na
+、O
-Li
+及びO
-K
+から選択されるアルカリ金属アルコキシド、O
-NH
4
+で表されるアンモニウムアルコキシド、炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルコキシ基、塩素、フッ素、臭素、及びヨウ素から選択されるハロゲンを表す。
置換基R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6として有用な例としては、水素原子、ハロゲン原子、SO
2M、アルキル基、アルコキシ基、アルキルエステル基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0032】
これらの置換基をさらに詳しく例示すれば、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、アルキル基またはアルキルエステル基の炭化水素鎖としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、テトラデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、(2-メトキシ)エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、ドデシルオキシ等の基が挙げられる。アルキルエステル基は具体的には、アルキルカルボニルオキシ基及びアルコキシカルボニル基であり、例えばマロン酸エステル基(-OCOCH2CO2H)、フマル酸エステル基(-OCOCH=CHCO2H、二重結合がトランス型)、マレイン酸エステル基(-OCOCH=CHCO2H、二重結合がシス型)等が挙げられる。また、アルキルカルボニルオキシ基及びアルコキシカルボニル基のアルキルがメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、テトラデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル等であるものも挙げられる。
さらに、前記以外の置換基の例として、メチルアミノ、エチルアミノ、ジフェニルアミノ、アニリノ等のアミノ基、トリフルオロメチル、クロロフェニル、アセトアミド等の基が挙げられる。
R2、R3、R4、R5及びR6が表す置換基中の炭化水素鎖は互いに任意の位置で結合して、当該置換基が結合している炭素原子と共に、少なくとも1つの3~7員環の飽和、または不飽和炭化水素の環状構造を形成する2価鎖を少なくとも1つ形成してもよい。R2、R3、R4、R5及びR6が表すアルキル基、アルコキシ基、アルキルエステル基、またはそれらによって形成される環状炭化水素鎖には、カルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル及びイミノから選択される少なくとも1つの結合を含んでもよい。
【0033】
前記一般式(2)中の置換基R
2、R
3、R
4、R
5またはR
6の炭化水素鎖が互いに任意の位置で結合して3~7員環の飽和または不飽和炭化水素の環状構造を形成する例としては、式(6)~(8)に示す構造等が挙げられる。
【化7】
化合物(A2)以外に、一般式(2-2)で示される化合物群から選ばれる少なくとも1種の化合物を使用することも可能である。
【化8】
【0034】
上記一般式(2-2)中、R7Aはスルホ基である。R2A、R3A、R4A、R5A、R6A及びkは、それぞれ前記一般式(2)中のR2、R3、R4、R5、R6及びkと同じ意味を表す。
R5A及びR6Aは水素原子であることがより好ましい。R2A、R3A、R4Aは3つのうち少なくとも2つは水素原子であることがより好ましく、全て水素原子であることが特に好ましい。
【0035】
kはヘテロ環と置換基R2~R4を有するベンゼン環に囲まれた縮合環の数を表し、0~3の整数である。溶剤への溶解性の観点から、kは好ましくは0である。
【0036】
一般式(2)で示される化合物の置換基R2~R7を除いた基本骨格部分の具体例としては、例えば1,3-ジヒドロイソチアナフテン-S-オキシド(kが0である化合物)挙げられる。
一般式(2)で示される化合物としては、例えば、ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-4-スルホン酸、ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5-スルホン酸、ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5,6-ジスルホン酸、ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-4,5-ジスルホン酸、ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-4,6-ジスルホン酸、ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-4,7-ジスルホン酸等が挙げられる。
【0037】
R5及びR6は水素原子であることがより好ましい。R2、R3、R4は3つのうち少なくとも1つは水素原子であることがより好ましく、少なくとも2つが水素原子であることがさらに好ましく、全て水素原子であることが特に好ましい。
具体的には、例えば、ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5-スルホン酸、ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5,6-ジスルホン酸が挙げられる。
化合物(A2)は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
<方法(iii)>
前記化合物(A1)の少なくとも1種及び前記化合物(A2)の少なくとも1種を共重合させることで、導電性高分子が得られる。なお、方法(iii)においても、前記スルホ基を有する化合物(B)を含んでいてもよい。また、方法(iii)においても、化合物(A1)の代わりに、一般式(1-2)で示される化合物の少なくとも1種を使用することも可能である。同様に、化合物(A2)の代わりに、一般式(2-2)で示される化合物の少なくとも1種を使用することも可能である。
化合物(A2)の量は、スルホ基換算で前記化合物(A1)100質量部に対して好ましくは1~400モル、より好ましくは5~300モル、さらに好ましくは10~250モルである。化合物(B)の量が、スルホ基換算で前記化合物(A1)100モルに対して1~400モルであれば、反応率、反応速度の面から好ましい。
【0039】
化合物(A1)及び化合物(A2)を任意の比率で共重合させることで、導電性高分子の溶剤親和性、溶解性等、目的に応じた性能が容易に調節可能となる。
例えば、化合物(A1)としてベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシドと、化合物(A2)としてベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5-スルホン酸との共重合を行うと、これら2つは水溶性の程度が異なるため、ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシドの割合が高くなるにつれ、生成する導電性高分子の水溶性が低下し、不溶化する。
また、ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシドの割合が高くなるにつれ、ポリイソチアナフテン骨格中の結晶化領域が大きくなり、電導度が向上する傾向がある。
【0040】
以下は方法(i)~(iii)に共通の内容である。
[溶媒(C)]
本発明による重合において、物質拡散の観点では溶媒を使用することが好ましい。使用される溶媒は用いるモノマーが溶解する溶媒であればよく、特に限定されない。例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、トルエン、ブタノール、酢酸、無水酢酸、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、スルホラン、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホラン、ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール(グリセリン)、ジグリセロール(ジグリセリン)、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
工業的な取扱いの容易さの観点では、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルホルムアミド、エチレングリコール、ジメチルスルホキシドが好ましく、さらに水、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシドがより好ましい。
【0041】
後述のように水を揮発させながら反応させる場合、水よりも高沸点の溶媒を、溶媒の一部または全部に使用することが好ましい。
水よりも高沸点の溶媒としては、沸点が105℃以上のものが好ましい。具体的には、例えば、トルエン(沸点:111℃)、ブタノール(沸点:118℃)、酢酸(沸点:118℃)、無水酢酸(沸点:140℃)、ジメチルホルムアミド(沸点:153℃)、ジメチルスルホキシド(沸点:189℃)、γ-ブチロラクトン(沸点:203℃)、プロピレンカーボネート(沸点:240℃)、スルホラン(沸点:285℃)、N-メチルピロリドン(沸点:202℃)、ジメチルスルホラン(沸点:233℃)、ブタンジオール(沸点:230℃)、エチレングリコール(沸点:198℃)、ジエチレングリコール(沸点:244℃)、グリセロール(グリセリン、沸点:290℃)、ジグリセロール(ジグリセリン、沸点:265℃(15mmHg))、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。なお、ポリエチレングリコールは、ポリエチレグリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール1500(ポリエチレングリコールの後の数字は分子量を表す。)などのように常圧下では沸点が存在しないものもあるが、減圧下で揮発するものも含めるものとする。また、沸点を示す際に、圧力を括弧書きで付記していないものは常圧下での沸点である。これらの水よりも高沸点の溶媒のうち、取扱いや乾燥の容易さ、耐酸性という観点から、水と混和し、共沸しないエチレングリコールまたはジメチルスルホキシドが好ましい。
より高沸点の溶媒を溶媒の一部または全部に使用することにより、重合反応で発生する水が揮発する際も物質の拡散が妨げられることなく、反応率が改善すると推測される。
【0042】
反応系における溶媒(C)の割合は0.1~99.5質量%が好ましく、より好ましくは5~99質量%であり、さらに好ましくは30~95質量%である。反応系における溶媒(C)の割合が0.1~99.5質量%であれば、反応率や反応速度が良好である。
【0043】
溶液の濃度は組成によっても異なるが、固形分で0.01~60質量%が好ましく、より好ましくは0.1~50質量%であり、さらに好ましくは1~30質量%である。溶液の濃度をこの範囲にすると、適切な反応速度で重合を行うことができ、導電性重合体の製造を安定的にかつ経済的な時間で行うことができ、溶液の保存安定性が向上する。
また、後述のようにモノマー溶液とドーパント、触媒溶液を分け、重合時に混合して使用する場合の各溶液の濃度上限値はこの限りではなく、いずれの溶液も0.01~100質量%の間で使用することができる。
また、水よりも高沸点の溶媒は、溶媒(C)全量に対して0.1~99.5質量%が好ましく、より好ましくは1~80質量%であり、さらに好ましくは5~70質量%である。反応系における溶媒(C)の割合が0.1~99.5質量%であれば、生産性良く反応が可能である。
【0044】
重合時に添加する電導度向上剤は水と混合した際、水と共沸するがディーン・シュターク装置などを用いて脱水可能なもの等を用いるとよい。
これらの溶媒は1種単独でまたは2種以上を組み合わせてもよい。
【0045】
[化合物(A1)及び(A2)と共重合し得る化合物(D)]
本発明においては、化合物(A1)及び(A2)と共重合し得る化合物(D)を共重合させることができる。方法(i)においてはスルホ基を有する化合物(B)存在下で化合物(A1)と化合物(D)を共重合できる。方法(ii)においては化合物(A2)と化合物(D)を共重合できる。方法(iii)においては化合物(A1)と(A2)と化合物(D)を共重合できる。
【0046】
化合物(D)としてはイソチアナフテン、イソベンゾフラン、イソベンゾインドリン、イソベンゾセレナフェン、イソベンゾテレナフェン、チオフェン、ピロール、フラン、セレノフェン、テルロフェン、アニリン、ベンゼン、ナフト[2,3-c]チオフェン、アントラ[2,3-c]チオフェン、ナフタセノ[2,3-c]チオフェン、ペンタセノ[2,3-c]チオフェン、ペリロ[2,3-c]チオフェン、アセナフト[2,3-c]チオフェン等の芳香族化合物、1,3-ジヒドロイソチアナフテン、1,3-ジヒドロナフト[2,3-c]チオフェン、1,3-ジヒドロアントラ[2,3-c]チオフェン、1,3-ジヒドロナフタセノ[2,3-c]チオフェン、1,3-ジヒドロペンタセノ[2,3-c]チオフェン、1,3-ジヒドロペリロ[2,3-c]チオフェン、1,3-ジヒドロアセナフト[2,3-c]チオフェン等の共重合時にπ共役系を形成し得る化合物、チエノ[c]ピリジン、チエノ[c]ピラジン、チエノ[c]ピリダジン、チエノ[c]キノキサリン、1,3-ジヒドロチエノ[c]ピリジン、1,3-ジヒドロチエノ[c]ピラジン、1,3-ジヒドロチエノ[c]ピリダジン、1,3-ジヒドロチエノ[c]キノキサリン等縮合環に窒素を含んだ化合物、及びそれらの各種置換基、例えば(2)炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルキル、炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルコキシ、または炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルキルエステル基、(3)SO2M、(4)ハロゲン原子、(5)カルボキシ基、(6)ホスホニル基、(7)ニトロ基、(8)シアノ基、(9)1級、2級または3級アミノ基、(10)トリハロメチル基、(11)フェニル基、及び(12)アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルエステル基、カルボニル基、スルホ基、ハロゲンから選択される少なくとも1つで置換されたフェニル基からなる群から選ばれる1価の置換基を有する誘導体が挙げられる。ここで好ましい置換基としては、前記置換基R2、R3、R4、R5及びR6において示したものと同じものが挙げられる。
【0047】
例えば、1,3-ジヒドロイソチアナフテン、4-メチル-1,3-ジヒドロイソチアナフテン、5-メチル-1,3-ジヒドロイソチアナフテン、4,5-ジメチル-1,3-ジヒドロイソチアナフテン、5,6-ジメチル-1,3-ジヒドロイソチアナフテン、4,7-ジメチル-1,3-ジヒドロイソチアナフテン、5-フルオロ-1,3-ジヒドロイソチアナフテン、5-クロロ-1,3-ジヒドロイソチアナフテン、5-ブロモ-1,3-ジヒドロイソチアナフテン、5-ヒドロキシ-1,3-ジヒドロイソチアナフテン、5-カルボキシ-1,3-ジヒドロイソチアナフテン、ピロール、3-メチルピロール、3,4-ジメチルピロール、3-フルオロピロール、3-クロロピロール、3-ブロモピロール、N-メチルピロール、3-ヒドロキシピロール、3-カルボキシピロール、イソインドール、4-メチルイソインドール、5-メチルイソインドール、4,5-ジメチルイソインドール、5,6-ジメチルイソインドール、4,7-ジメチルイソインドール、5-フルオロイソインドール、5-クロロイソインドール、5-ブロモイソインドール、5-ヒドロキシイソインドール、5-カルボキシイソインドール2,3-ジヒドロイソインドール、4-メチル-2,3-ジヒドロイソインドール、5-メチル-2,3-ジヒドロイソインドール、4,5-ジメチル-2,3-ジヒドロイソインドール、5,6-ジメチル-2,3-ジヒドロイソインドール、4,7-ジメチル-2,3-ジヒドロイソインドール、5-フルオロ-2,3-ジヒドロイソインドール、5-クロロ-2,3-ジヒドロイソインドール、5-ブロモ-2,3-ジヒドロイソインドール、5-ヒドロキシ-2,3-ジヒドロイソインドール、5-カルボキシ-2,3-ジヒドロイソインドールフラン、3-メチルフラン、3,4-ジメチルフラン、3-フルオロフラン、3-クロロフラン、3-ブロモフラン、イソベンゾフラン、4-メチルイソベンゾフラン、5-メチルイソベンゾフラン、4,5-ジメチルイソベンゾフラン、5,6-ジメチルイソベンゾフラン、4,7-ジメチルイソベンゾフラン、5-フルオロイソベンゾフラン、5-ヒドロキシイソベンゾフラン、5-カルボキシイソベンゾフラン1,3-ジヒドロベンゾ[c]セレノフェン、4-メチル-1,3-ジヒドロベンゾ[c]セレノフェン、5-メチル-1,3-ジヒドロベンゾ[c]セレノフェン、4,5-ジメチル-1,3-ジヒドロベンゾ[c]セレノフェン、5,6-ジメチル-1,3-ジヒドロベンゾ[c]セレノフェン、4,7-ジメチル-1,3-ジヒドロベンゾ[c]セレノフェン、5-フルオロ-1,3-ジヒドロベンゾ[c]セレノフェン、5-クロロ-1,3-ジヒドロベンゾ[c]セレノフェン、5-ブロモ-1,3-ジヒドロベンゾ[c]セレノフェン、5-ヒドロキシ-1,3-ジヒドロベンゾ[c]セレノフェン、5-カルボキシ-1,3-ジヒドロベンゾ[c]セレノフェン1,3-ジヒドロベンゾ[c]セレノフェン-2-オキシド、4-メチル-1,3-ジヒドロベンゾ[c]セレノフェン-2-オキシド、5-メチル-1,3-ジヒドロベンゾ[c]セレノフェン-2-オキシド、4,5-ジメチル-1,3-ジヒドロベンゾ[c]セレノフェン-2-オキシド、5,6-ジメチル-1,3-ジヒドロベンゾ[c]セレノフェン-2-オキシド、4,7-ジメチル-1,3-ジヒドロベンゾ[c]セレノフェン-2-オキシド、5-フルオロ-1,3-ジヒドロベンゾ[c]セレノフェン-2-オキシド、5-クロロ-1,3-ジヒドロベンゾ[c]セレノフェン-2-オキシド、5-ブロモ-1,3-ジヒドロベンゾ[c]セレノフェン-2-オキシド、5-ヒドロキシ-1,3-ジヒドロベンゾ[c]セレノフェン-2-オキシド、5-カルボキシ-1,3-ジヒドロベンゾ[c]セレノフェン-2-オキシド、ベンゾ[c]セレノフェン、4-メチル-ベンゾ[c]セレノフェン、5-メチル-ベンゾ[c]セレノフェン、4,5-ジメチル-ベンゾ[c]セレノフェン、5,6-ジメチル-ベンゾ[c]セレノフェン、4,7-ジメチル-ベンゾ[c]セレノフェン、5-フルオロ-ベンゾ[c]セレノフェン、5-クロロ-ベンゾ[c]セレノフェン、5-ブロモ-ベンゾ[c]セレノフェン、5-ヒドロキシ-ベンゾ[c]セレノフェン、5-カルボキシ-ベンゾ[c]セレノフェン等が挙げられる。
【0048】
化合物(A1)及び(A2)と共重合し得る化合物(D)は、化合物(A1)及び化合物(A2)のモル数の合計に対して、200モル%以下を用いることが好ましく、100モル%以下であることがより好ましく、50モル%以下であることがさらに好ましい。200モル%以下であれば、反応率、及び反応速度が適切である。
【0049】
[添加剤]
本発明による効果を阻害しない範囲内で、反応時にその他の機能を有する添加剤を混合してもよい。例えば、導電性高分子に塗工性や含浸性、浸透性等の機能性を付与するため、界面活性剤、増粘剤、チクソ剤、レオロジーコントロール剤等を添加してもよい。製膜時の結着性や耐熱性を向上させるため、結着剤等を添加してもよい。製膜した際の応力を緩和する性能を有する成分を使用してもよい。
これら添加剤は置換基を有していてもよい。例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリビニルアルコール、ポリ(N-ビニルアセトアミド)、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸などが挙げられる。添加剤は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
[酸化剤]
導電性高分子の重合反応を起こさせるために、通常、触媒として酸化剤が用いられる。酸化剤としては、例えば、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、エチレンジアミン四酢酸鉄、塩化第二銅、塩化第一銅、エチレンジアミン四酢酸銅、塩化アルミニウム、ヨウ素、臭素、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン、テトラクロロ-1,2-ベンゾキノン、テトラクロロ-1,4-ベンゾキノン、テトラシアノ-1,4-ベンゾキノン、硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、クロロ硫酸、フルオロ硫酸、アミド硫酸、過硫酸、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、及びこれら複数の酸化剤の組み合わせが挙げられる。
本発明では、これら酸化剤触媒を用いずに重合を行うことができる。すなわち、本発明では触媒能を有するスルホ基を有する化合物(B)の存在下で重合を行うか、あるいは触媒能を有する置換基(スルホ基)を有する化合物を重合させるので、酸化剤を用いた場合に必要な反応後の精製工程を省略することができる。
【0051】
[製造方法]
本発明の導電性高分子の製造方法は、前記方法(i)~(iii)の少なくともいずれかの方法である。また、これら方法の条件を適宜組み合わせて重合を行うことも可能である。
方法に応じて前記化合物(A1)、前記化合物(A2)、前記スルホ基を有する化合物(B)から選択された化合物、並びに任意成分である溶媒(C)、化合物(A1)及び(A2)と共重合し得る化合物(D)、及び添加剤の、反応系への添加の順序及び態様に特に制限はない。例えば、反応容器に各化合物を添加して混合する方法の他、基材に各化合物を順番に浸漬または塗布することによっても重合は可能である。
【0052】
上記における重合時の温度は特に限定はないが、10~300℃が好ましく、より好ましくは20~180℃であり、さらに好ましくは60~180℃である。重合時の温度が10~300℃であれば、反応速度、反応率、及び粘度が適切であり、副反応を抑制することができ、導電性高分子の製造を安定的かつ工業的に適した時間で行うことができ、さらに得られる導電性重合体の導電率も高くなる傾向がある。重合時の温度は、公知のヒータやクーラを用いることにより管理することができる。必要に応じ、上記範囲内で温度を変化させながら重合を行ってもよい。また、溶媒を揮発させる場合は重合温度以下でもよく、減圧下や乾燥気流中で溶剤を揮発させ、その後重合温度に上げてもよい。
【0053】
上記重合における雰囲気は特に限定はなく、大気下でもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気でもよい。また、反応圧力に特に限定はないが、常圧が好ましい。
反応時間に特に制限はなく、化合物の化学構造や反応温度、反応圧力などによって異なるため一概には規定できないが、0.01~240時間が好ましく、より好ましくは0.1~72時間であり、さらに好ましくは0.1~24時間である。
反応時のpHは1~7が好ましく、より好ましくは1~5であり、さらに好ましくは1~3である。pHが1以上であれば基材等への負荷が少なく、pHが7以下であれば反応率及び反応速度が適切である。
【0054】
本発明の導電性高分子の製造方法では、反応系内から副生成物を除去しながら反応させることが好ましい。副生成物の除去は、揮発(留去)法、吸着法、その他の分離法により行うことができる。例えば、一般式(1)または(2)中のX1及びX2がS=OまたはSe=Oの化合物の場合、副生成物として水が発生するので、この水を留去しながら反応を行うと、重合速度が上がり、反応率も高くなる。また、反応系を均一に保持できる観点から、水よりも沸点の高い溶媒を使用しても良い。
【0055】
導電性高分子生成後、溶媒(C)を含む場合は溶液が、溶媒(C)を含まない場合は固形物が、それぞれ得られる。精製を行う場合は任意の溶媒に溶解させて洗浄を行ってもよいが、精製工程を行わなくとも高い導電性が得られる。溶液のまま回収する場合、任意の溶剤で希釈してもよいし、残存モノマーを除去するために限外ろ過等を実施しても良いし、粒径や凝集構造を制御するために超音波処理をしてもよい。また、固体で得られた場合、得られた基材をそのまま使用してもよいし、加工してもよいし、固体を溶剤に添加後、分散処理を実施して分散液として使用してもよい。
また、溶媒(C)を含む場合、溶媒(C)の水との混和の程度により、水を揮発させた後の導電性高分子の性状は変化する。水と混和する溶媒であれば反応時に均一に反応し、溶媒を全て揮発させた際に均一な膜が生成する。一方、水と非混和となる溶媒を用いた際には水を揮発させた時点で導電性高分子が粒子状に生成する。
【0056】
生成物はUVスペクトルを用いて容易に確認が可能である。重合が進行することにより、300~800nm程度の波長領域において長波長側に吸収極大がシフトしていく。また、スルホン酸によりドープすると1000nm程度から長波長側の波長の吸収が増大する。
【0057】
[重合前の溶液の保管方法]
上記重合前の溶液の保管温度は特に限定はしないが、通常、-30~50℃であり、好ましくは-20~40℃であり、より好ましくは-10~30℃である。溶液の保管温度をこの範囲にすると、保管中に強酸の効果によって重合が進行する速度を和らげることができる。保管時の雰囲気は特に限定はなく、大気下でもよく、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気でも良い。これらの中で、窒素、アルゴンが好ましい。
また、モノマー溶液とドーパント、触媒溶液を分け、重合時に混合して使用する場合の温度範囲はこの限りではなく、より広い温度範囲で安定的な保管が可能である。
【0058】
[本発明の方法で得られる導電性重合体]
本発明の製造方法で得られる導電性重合体は、一般式(1)で示されるドーパント能と触媒能を有する置換基(スルホ基)を有する単独重合体あるいは共重合体であり、得られる重合体の構造は複雑になりすぎて一般式(構造)で示すことができないのが現状であり、したがって構造が特定されなければ、構造出決まる物質の特性も容易にはわからないこと、また異なる複数のモノマーを反応させる場合はそれらの配合比、反応条件により得られる重合組成物の特性が大きく変化することから特性で重合体を特定することもできない。そこで本発明(請求項)導電性重合体を製造方法にて規定した。
【実施例】
【0059】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0060】
【0061】
実施例1:溶解性試験
溶媒10gにベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシドを少しずつ溶解させ、目視で溶解量を調べた。5質量%以上を「可溶」、0.5~5質量%を「微溶」、0.5質量%以下を「不溶」とし、結果を表2に示す。
【0062】
比較例1:溶解性試験
溶媒10gに1,3-ジヒドロイソチアナフテンを少しずつ溶解させた。実施例1と同様に評価し、結果を表2に示す。
【0063】
【0064】
実施例2:溶解後の安定性試験
ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド1.0g及びp-トルエンスルホン酸一水和物0.25g(pTSA、mol比5/1)を各溶媒11.0g(固形分10質量%)に表3に示される組成で大気下でそれぞれ溶解させ、直後(初期)、24時間後、1週間後に目視で観察を行った。結果を表3に示す。
【0065】
【0066】
比較例2:溶解後の安定性試験
1,3-ジヒドロイソチアナフテン1.0g、及びp-トルエンスルホン酸一水和物0.28g(pTSA、mol比5/1)を各溶媒11.3g(固形分10質量%)に表4に示される組成で大気下でそれぞれ溶解させ、直後(初期)、24時間後、1週間後に目視で観察を行った。結果を表4に示す。
【0067】
【0068】
<方法(i)の重合>
実施例3:p-トルエンスルホン酸存在下でのベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシドの重合
ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド1.64mmol(250mg)をイオン交換水9.44gに溶解させ、p-トルエンスルホン酸一水和物1.64mmol(312mg)を加え、水溶液を調整した。その後、調整した水溶液の一部をガラスプレート上に滴下し、150℃において1時間加熱・乾燥を実施した。生成した固体は黒色であった。生成物を水に添加し、室温の条件でUVスペクトルを測定したところ、700nm付近から1300nmの長波長側に吸収が見られたことからポリイソチアナフテンの生成を確認した。
【0069】
比較例3:p-トルエンスルホン酸ナトリウム存在下でのベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシドの重合
ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド1.64mmol(250mg)をイオン交換水9.44gに溶解させ、p-トルエンスルホン酸ナトリウム1.64mmol(315mg)を加え、水溶液を調整した。その後、調整した水溶液の一部をガラスプレート上に滴下し、150℃において1時間加熱・乾燥を実施した。生成した固体は白色であり、重合の進行が確認されなかった。
【0070】
実施例4:
p-トルエンスルホン酸存在下でのベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシ
ドの重合(エタノール中)
エタノール11.0gにベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド6.57mmol(1.0g)、p-トルエンスルホン酸一水和物1.31mmol(0.25g)を溶解させ、固形分10質量%の溶液とした。
調製した溶液は比較的安定であり、一週間、室温大気下に放置しても無色透明のままであった。
得られた溶液の一部をガラスプレート上に滴下し、120℃において1時間加熱・乾燥を実施した。生成した固体は黒色であり、生成物を水に添加して測定したUVスペクトルからポリイソチアナフテンの生成を確認した。
また、溶液をTG-DTA(Thermo Plus TG-8120、株式会社リガク製)で乾燥空気中、昇温速度5℃/min.において40℃まで加熱後、エタノールが十分揮発するよう、2時間一定温度を保ち、再度、昇温速度5℃/min.にて250℃まで昇温した際に反応の挙動を確認した。
得られたTG-DTA曲線を
図1に示す。
【0071】
比較例4:
p-トルエンスルホン酸存在下での1,3-ジヒドロイソチアナフテ
ンの重合(実施例4との比較)
エタノール11.3gに1,3-ジヒドロイソチアナフテン7.34mmol(1.0g)、p-トルエンスルホン酸一水和物1.47mmol(0.28g)を溶解させ、固形分10質量%の溶液とした。
調製した溶液は調整後直ちに黄色に着色し、数時間後には黒色の沈殿が生成した。得られた溶液の一部をガラスプレート上に滴下し、120℃において1時間加熱・乾燥を実施した。生成した固体は黒色であり、生成物を水に添加して測定したUVスペクトルからポリイソチアナフテンの生成を確認した。
実施例4と同様の測定条件でTG-DTA測定を実施した。得られたTG-DTA曲線を
図2に示す。
【0072】
実施例5:β-ナフタレンスルホン酸存在下でのベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシドの重合
β-ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩3.30mmol(755mg)を18.75gの水に溶解させ、陽イオン交換樹脂した。得られたβ-ナフタレンスルホン酸水溶液9.75g(水溶液中β-ナフタレンスルホン酸として1.64mmol)にベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド1.64mmol(250mg)を加え、水溶液を調整した。その後、ホットプレートで110℃、1時間乾燥した。生成した膜は青色であり、生成物を水に添加して測定したUVスペクトルからポリイソチアナフテンの生成を確認した。
【0073】
実施例6:ポリスチレンスルホン酸存在下でのベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシドの重合
ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド3.29mmol(500mg)をイオン交換水14.8gに溶解させ、イオン交換によりナトリウム塩から調整した21質量%ポリスチレンスルホン酸水溶液を5.95g(スルホ基として6.82mmol)添加し、水溶液を調整した。その後、調整した水溶液の一部をガラスプレート上に滴下し、120℃において1時間加熱・乾燥を実施した。生成した固体は黒色であり、生成物を水に添加して測定したUVスペクトルからポリイソチアナフテンの生成を確認した。
【0074】
実施例7:ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシドとポリスチレンスルホン酸複合体のエチレングリコール分散液の製造
ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド0.736mmol(112mg)をイオン交換水3.31gに溶解させ、イオン交換によりナトリウム塩から調整した21質量%ポリスチレンスルホン酸水溶液を1.33g(スルホ基として1.52mmol)、エチレングリコール12.6gを添加した。調製した液を105℃、4時間加熱することにより、濃青色の液が得られた。得られた液を水に添加して測定したUVスペクトルからポリイソチアナフテンの生成を確認した。
【0075】
<方法(ii)の重合>
実施例8:ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5-スルホン酸の単独重合
ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5-スルホン酸ナトリウム塩94.4mmol(24.0g)をイオン交換水459.6gに添加、溶解後、陽イオン交換樹脂を詰めたカラムに通し、ナトリウムを除去した。得られた水溶液の一部をガラスプレート上に滴下し、120℃において1時間加熱・乾燥を実施した。生成した固体は黒色であり、生成物を水に添加して測定したUVスペクトルからポリイソチアナフテンの生成を確認した。生成物は水溶性であり、10mLに1g以上溶解する。
また、実施例4と同様の条件で測定したTG-DTA曲線を
図3に示す。120~130℃の間に明確な反応ピークが観測された。
生成した膜の電導度を測定したところ0.014S/cmであった。
【0076】
比較例5:ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5-スルホン酸ナトリウムの重合
ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5-スルホン酸ナトリウム塩94.4mmol(24.0g)をイオン交換水459.6gに添加、溶解した。得られた溶液を120℃で1時間乾燥後、白色の固体が得られた。
【0077】
比較例6:1,3-ジヒドロイソチアナフテン-5-スルホン酸の重合
1,3-ジヒドロイソチアナフテン-5-スルホン酸ナトリウム塩41.9mmol(10.0g)をイオン交換水80.0gに添加、溶解後、陽イオン交換樹脂を詰めたカラムに通し、ナトリウムを除去した。得られた水溶液の一部をガラスプレート上に滴下し、120℃において1時間加熱・乾燥を実施した。生成した固体は黒色であり、生成物を水に添加して測定したUVスペクトルからポリイソチアナフテンの生成を確認した。
また、実施例4と同様の条件で測定したTG-DTA曲線を
図4に示す。
【0078】
実施例9:ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5-スルホン酸の単独重合(高濃度)
ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5-スルホン酸ナトリウム塩94.4mmol(24.0g)をイオン交換水78.3gに添加、溶解後、陽イオン交換樹脂を詰めたカラムに通し、ナトリウムを除去した。得られた水溶液の一部をガラスプレート上に滴下し、120℃において1時間加熱・乾燥を実施した。生成した固体は黒色であり、生成物を水に添加して測定したUVスペクトルからポリイソチアナフテンの生成を確認した。生成物は水溶性であり、10mLに1g以上溶解した。
【0079】
<方法(iii)の重合>
実施例10:ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5-スルホン酸とベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシドの共重合(モル比7:3)
ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド38.1mmol(5.8g)をイオン交換水94gに溶解させ、ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド水溶液を調整した。ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド水溶液10g(水溶液中ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド3.82mmol)と上記実施例8で作製したベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5-スルホン酸の水溶液45.5g(ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5-スルホン酸8.91mmol)と混合し、溶液を準備した。作製した水溶液のモル比は重水中(D2O)で測定したNMRで確認した。得られた水溶液の一部をガラスプレート上に滴下し、120℃において1時間加熱・乾燥を実施した。生成した固体は黒色であり、生成物を水に添加して測定したUVスペクトルからポリイソチアナフテンの生成を確認した。生成物は非水溶性であった。
生成した膜の電導度を株式会社三菱アナリテック製電導度計でPSPプローブを用いて25℃の条件で測定したところ0.97S/cmであった。
【0080】
実施例11:ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5-スルホン酸とベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシドの共重合(モル比5:5)
上記実施例10で作製したベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド水溶液10g(水溶液中ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド3.82mmol)と上記実施例8で作製したベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5-スルホン酸の水溶液19.5g(ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5-スルホン酸3.82mmol)と混合し、溶液を準備した。作製した水溶液のモル比は重水中(D2O)で測定したNMRで確認した。得られた水溶液の一部をガラスプレート上に滴下し、120℃において1時間加熱・乾燥を実施した。生成した固体は黒色であり、生成物を水に添加して測定したUVスペクトルからポリイソチアナフテンの生成を確認した。生成物は非水溶性であった。
生成した膜の電導度を実施例10と同様の方法で測定したところ0.98S/cmであった。
【0081】
実施例12:ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5-スルホン酸とベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシドの共重合(モル比3:7)
上記実施例10で作製したベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド水溶液10g(水溶液中ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド3.82mmol)と上記実施例8で作製したベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5-スルホン酸の水溶液8.37g(ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5-スルホン酸1.64mmol)と混合し、溶液を準備した。作製した水溶液のモル比は重水中(D2O)で測定したNMRで確認した。得られた水溶液の一部をガラスプレート上に滴下し、120℃において1時間加熱・乾燥を実施した。生成した固体は黒色であり、生成物を水に添加して測定したUVスペクトルからポリイソチアナフテンの生成を確認した。生成物は非水溶性であった。
生成した膜の電導度を実施例10と同様の方法で測定したところ0.13S/cmであった。
【0082】
実施例13:ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5-スルホン酸の単独重合(エチレングリコールの添加)
上記実施例8で調製した溶液に10質量部エチレングリコールを添加し、溶液を調整した(実施例8の溶液10gにエチレングリコール1.0g添加)。得られた溶液の一部をガラスプレート上に滴下し、120℃において1時間加熱・乾燥を実施した。生成した固体は黒色であり、生成物を水に添加して測定したUVスペクトルからポリイソチアナフテンの生成を確認した。生成物は水溶性であり、製膜後、水で洗い流すこと、水溶液を調整することが可能である。
生成した膜の電導度を実施例10と同様の方法で測定したところ0.35S/cmであった。
【0083】
実施例14:ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5-スルホン酸とベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシドの共重合(モル比7:3、エチレングリコールの添加)
上記実施例10で調製した2つの化合物の混合液に10質量部エチレングリコールを添加し、溶液を調整した(実施例10の混合液10gにエチレングリコール1.0g添加)。得られた溶液の一部をガラスプレート上に滴下し、120℃において1時間加熱・乾燥を実施した。生成した固体は黒色であり、生成物を水に添加して測定したUVスペクトルからポリイソチアナフテンの生成を確認した。生成物は非水溶性であった。
生成した膜の電導度を実施例10と同様の方法で測定したところ0.43S/cmであった。
【0084】
実施例15:ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5-スルホン酸とベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシドの共重合(モル比5:5、エチレングリコールの添加)
上記実施例11で調製した2つの化合物の混合液に10質量部エチレングリコールを添加し、溶液を調整した(実施例11の混合液10gにエチレングリコール1.0g添加)。得られた溶液の一部をガラスプレート上に滴下し、120℃において1時間加熱・乾燥を実施した。生成した固体は黒色であり、生成物を水に添加して測定したUVスペクトルからポリイソチアナフテンの生成を確認した。生成物は非水溶性であった。
生成した膜の電導度を実施例10と同様の方法で測定したところ2.4S/cmであった。
【0085】
実施例16:ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5-スルホン酸とベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシドの共重合(モル比3:7、エチレングリコールの添加)
上記実施例12で調製した2つの化合物の混合液に10質量部エチレングリコールを添加し、溶液を調整した(実施例12の混合液10gにエチレングリコール1.0g添加)。得られた溶液の一部をガラスプレート上に滴下し、120℃において1時間加熱・乾燥を実施した。生成した固体は黒色であり、生成物を水に添加して測定したUVスペクトルからポリイソチアナフテンの生成を確認した。生成物は非水溶性であった。
生成した膜の電導度を実施例10と同様の方法で測定したところ9.4S/cmであった。
【0086】
実施例17:ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5-スルホン酸とベンゾ[c]チオフェン-2-オキシド共重合体のエチレングリコール分散液の製造
上記実施例11にて調整した2つの化合物の混合溶液4.1g(ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5-スルホン酸とベンゾ[c]チオフェン-2-オキシドのモル比は5/5)をエチレングリコール6.7gに添加、混合した。調製した液を105℃、4時間加熱することにより、濃青色の液が得られた。得られた液を水に添加して測定したUVスペクトルからポリイソチアナフテンの生成を確認した。
生成した分散液の一部をガラスプレート上に滴下し、120℃において1時間加熱・乾燥を実施した。製膜後、電導度を測定したところ3.0S/cmであった。
【0087】
実施例18:ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5-スルホン酸とベンゾ[c]チオフェン-2-オキシド共重合体のジメチルスルホキシド分散液の製造
上記実施例11にて調整した2つの化合物の混合溶液5.1g(ベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシド-5-スルホン酸とベンゾ[c]チオフェン-2-オキシドのモル比は5/5)をジメチルスルホキシド8.1gに添加、混合した。調製した液を120℃、6時間加熱することにより、濃青色の液が得られた。得られた液を水に添加して測定したUVスペクトルからポリイソチアナフテンの生成を確認した。
【0088】
実施例1、2及び比較例1、2より、化合物(A1)であるベンゾ[c]チオフェン-1,3-ジヒドロ-2-オキシドは、1,3-ジヒドロイソチアナフテンと比較して広範囲の極性の溶媒に溶解し、溶解後も液は安定であることが示された。また、
図1及び
図3は、
図2及び
図4と比較して、反応熱が明らかに確認でき、実施例の反応性が良好であることが示された。
また、実施例3~18により、方法(i)~(iii)において各種導電性高分子を製造することが可能であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は導電性高分子の製造工程を容易にする方法を提供するものであり、帯電防止剤、コンデンサの固体電解質、導電性塗料、導電繊維、エレクトロクロミック素子、電極材料、熱電変換材料、透明導電膜、化学センサ、アクチュエータ等への応用が考えられる。