(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】粒状コラーゲン材料の製造方法及び製造されたコラーゲン材料
(51)【国際特許分類】
C07K 14/78 20060101AFI20220207BHJP
C07K 1/14 20060101ALI20220207BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20220207BHJP
A23L 13/40 20160101ALI20220207BHJP
A23L 13/60 20160101ALI20220207BHJP
A23K 10/26 20160101ALI20220207BHJP
【FI】
C07K14/78
C07K1/14
A23L13/00 A
A23L13/40
A23L13/60 B
A23K10/26
(21)【出願番号】P 2018560535
(86)(22)【出願日】2017-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2017053214
(87)【国際公開番号】W WO2017198351
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2020-01-21
(31)【優先権主張番号】102016109094.8
(32)【優先日】2016-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502084056
【氏名又は名称】ゲリタ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】トーマス マイスナー
(72)【発明者】
【氏名】アーレント ビレム スロート
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0010122(US,A1)
【文献】特開平05-093000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/78
C07K 1/00 - 1/36
C12P 21/00 - 21/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状コラーゲン材料を製造する方法であって、以下の工程:
-
pHが3.5~5.5の酸性の水性の抽出溶液を用いてコラーゲン及び脂肪を含有する動物性原材料を抽出する工程;
-抽出残留物から水相の少なくとも一部分を任意で分離する工程;
-当該抽出残留物を、コラーゲン固相、水相及び脂肪相に分離する工程;
-
コラーゲン固相の少なくとも一部分と少なくとも一部分の水相と
を重量比1:99~1:1で混合する工程;
-当該混合された相を少なくとも部分的に乾燥させる工程;及び
-乾燥した相を粉砕して、
平均粒径20~250μmの粒状のコラーゲン材料を取得する工程;
を含
み、前記抽出残留物が、前記水相の分離後に水性抽出溶液を用いて
2~8回抽出され、最後の抽出残留物のコラーゲン固相が、最後の抽出工程の水相と混合される、方法。
【請求項2】
前記水性抽出溶液が
硫酸又は塩酸を含有する、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記水性抽出溶液のpHが
4~5である、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記抽出の時間が、30時間以下、好ましくは25時間以下、より好ましくは15~25時間である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記コラーゲン及び脂肪を含有する動物性原材料が、哺乳類、鳥類及び魚類の皮膚及び皮下組織から、より具体的には、ポークラインズ(pork rinds)又はキャトルスプリット(cattle split)から選択される、請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記コラーゲン固相及び水相が
、1:9~1:2の重量比で互いに混合される、請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記混合された相の乾燥が、残留水分量が2~20重量%、好ましくは5~15%になるまで行われる、請求項1~
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記乾燥が50~150℃の温度で行われる、請求項1~
7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記乾燥した相の粉砕が、グラインド、好ましくは平均粒径
50~150μmとなるまでのグラインドを含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
平均粒径が20~250μmであり、請求項1~
9のいずれか1項に記載の方法によって製造され
、水分吸収容量が、そのネット重量に基づき1:1~50:1であり、及び/又は脂肪及び水における乳化容量が、そのネット重量に基づきそれぞれ1:1~20:1である、粒状コラーゲン材料。
【請求項11】
平均粒径が
50~150μmである、請求項
10に記載のコラーゲン材料。
【請求項12】
食料品、より具体的には肉及びソーセージ製品、又は家畜及びペット用の飼料製品の製造における、請求項
10又は11のいずれかに記載の粒状コラーゲン材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状コラーゲン材料の製造方法に関する。
【0002】
更に、本発明は、当該方法により製造された粒状コラーゲン材料に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な食品、特に産業的食品の製造において、その一貫性及びテクスチャー等の食品の特性は、所定のタンパク質ベースの添加物によって選択的に改善され得ることが長く知られていた。この利用の一例は、水を結合し、乳化剤の機能を担うことが出来る、コラーゲンベースの材料である。これらの添加物は、それらが食品技術的特性のために食品に使用されるため(そしてそれらの栄養的価値のためではない)、機能的タンパク質と称される。
【0004】
そうした機能的タンパク質として食品に用いられる粒状コラーゲン材料は、現在、適切なプロセス(湿式又は乾式粉砕)によって所望の粒径になるまで材料を微小化することにより、コラーゲンを含有する動物性原材料から直接製造されている。ここで主に使用される原材料は、動物の皮膚及び骨である。例えばUnexamined Patent Application DE 102008036576 A1において、固体コラーゲン材料、特に骨質から、コラーゲン粒子を製造する方法が記載されている。そのようなコラーゲン粒子は、より具体的には、脂肪を減少させた肉やソーセージ製品において、脂肪を含有する食品の典型的なテクスチャーに向けて脂肪の代替として貢献するために使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一つの目的は、粒状コラーゲン材料の効果的な製造方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、以下の工程:
-水性の抽出溶液を用いてコラーゲン及び脂肪を含有する動物性原材料を抽出する工程;
-抽出残留物から水相の少なくとも一部分を任意で分離する工程;
-当該抽出残留物を、コラーゲン固相、水相及び脂肪相に分離する工程;
-少なくとも一部分の水相とコラーゲン固相の少なくとも一部分とを混合する工程;
-当該混合された相を少なくとも部分的に乾燥させる工程;及び
-乾燥した相を粉砕して、粒状のコラーゲン材料を取得する工程;
を含む本発明の方法によって達成される。
【0007】
本発明の方法の第一の工程は、ゼラチンの公知の生産における基本的な工程からなる。この工程において、コラーゲンの可溶性部分又は抽出条件下で可溶性形態に変換され得る部分が、原材料から分離され、そして抽出溶液は、濃縮及び乾燥される。言い換えると、本発明の目的は、粒状コラーゲン材料の製造のためにゼラチン製造(完全に又は部分的に)における抽出残留物を使用することでもある。
【0008】
このアプローチにより、本発明は、食品の分野で使用され得る高品質の製品(ゼラチン及びコラーゲン粒子)にほぼ完全に加工される使用される動物性原材料から得られるべき顕著に高い付加価値を可能とする。対照的に、従来技術のゼラチンの製造において、抽出残留物は、肥料又は動物飼料(家畜及びペット)としてのみ使用される。
【0009】
一方、組成が異なるにも拘らず、本発明によって製造されたコラーゲン材料は、無抽出原材料の粉砕により製造された従来技術のコラーゲン材料と機能的タンパク質として実質的に同じ有利な特性を有することが見出された。
【0010】
本発明の好ましい態様において、抽出残留物は、水相の分離後に水性抽出溶液を用いて繰り返し抽出され、最後の抽出残留物のコラーゲン固相が、最後の抽出工程の水相と混合される。そして、前述の抽出工程の水相は、通常のゼラチン生産に供され得る。複数回の抽出はゼラチン生産における通常のプロセスで、個別の抽出工程において、異なる品質(より具体的には異なるゲル強度)のゼラチンが得られることもある。
【0011】
本発明において、好ましくは抽出が、合計で2~8回行われる。複数回の抽出工程によって、生産されるコラーゲン材料の特性は実質的に影響され得る。これは、最終産物中の可溶性又は抽出可能なコラーゲンの含量が抽出の回数の増大につれて減少するからである。
【0012】
水性抽出溶液は、より具体的には硫酸又は塩酸を含む酸性溶液、又はより具体的には水酸化カルシウムを含むアルカリ性溶液、のいずれかである。酸性及びアルカリ性抽出のいずれも、A型のゼラチン及びB型の第二のゼラチンを製造する第一のプロセスと共に、ゼラチンの製造において長く知られている。より具体的には、2つの方法のいずれを用いるかの決定は、使用される原材料の種類にも依存する。
【0013】
生産されるコラーゲン材料の特性は、より具体的には、特定の抽出条件、即ちとりわけ温度、pH及び抽出時間により本発明の骨格内で影響され得る。これらのパラメーターの可能な個別の効果は、例示的態様によって下記に提示される。
【0014】
コラーゲン及び脂肪を含有する動物性原材料は、好ましくは、哺乳類、鳥類及び魚類の皮膚及び皮下組織から選択される。特に好ましくは、ゼラチン製造において大スケールで用いられる、ポークラインズ(pork rinds)又はキャトルスプリット(cattle split)が用いられる。これらの材料の場合において、酸性抽出が典型的に実施され、ここで、水性抽出溶液のpHは、好ましくは3.5~5.5、より好ましくは4~5である。
【0015】
抽出時間は、好ましくは30時間以下、より好ましくは25時間以下、特に15~25時間である
【0016】
好ましくは、原材料は、抽出前に、通常の方法で、例えば約5×5cmの範囲内のサイズに破砕される。
【0017】
(最後の)抽出残留物を、脂肪相、コラーゲン固相、及び液相に分離した後、後ろの2つの相を、本発明の方法に従い互いに混合し、任意で、得られた相の一部のみが使用され、即ち混合比は選択的に設定される。ここで、コラーゲン固相及び水相の重量比は、好ましくは、重量比1:99~1:1、より好ましくは1:9~1:2の重量比である。製造されるコラーゲン材料の特性は、この混合比の選択によっても影響され得、より具体的には、産物の粘性は、水相の含量をより高くすることによって低下させ得る(下記例示的態様参照)。
【0018】
混合された相の乾燥は、好ましくは、残留水分量が2~20重量%、より好ましくは5~15%になるまで行われる。含水量が低いと、材料の保存安定性が増大し、その機能性、より具体的にはその水分吸収能力に影響する。
【0019】
乾燥は、好ましくは50~150℃の温度で行われる。通常の方法が使用され得る。より具体的には、適切な乾燥方法は、ローラー乾燥、噴霧乾燥及び円盤乾燥である。
【0020】
好ましくは乾燥した相の粉砕はグラインドにより行われる。コラーゲン材料は、好ましくは、平均粒径20~1000μm、より好ましくは50~500μmとなるまでグラインドされる。このサイズ範囲は、好ましくは、それらのテクスチャーに好ましい影響をもたらすため、食品における使用に特に適している。
【0021】
本発明は、更に、上記方法で製造された粒状コラーゲン材料に関する。このコラーゲン材料の特に有利な点は、その製造方法に関連して上記に示した。
【0022】
本発明のコラーゲン材料の平均粒径は、好ましくは20~250μm、より好ましくは50~150μmである。
【0023】
本発明のコラーゲン材料は、好ましくは、水分吸収容量が、そのネット重量に基づき1:1~50:1である。
【0024】
更に、前記材料の脂肪及び水における乳化容量は、好ましくはそのネット重量に基づきそれぞれ1:1~20:1である。
【0025】
最後に、本発明は、食料品、より具体的には肉及びソーセージ製品の製造における、本発明の粒状コラーゲン材料の使用にも関する。加えて、前記コラーゲン材料は、家畜及びペット用の飼料製品の製造においても使用される。
【0026】
これらの及び他の本発明の長所は、下記実施例によって説明され得る。
【実施例】
【0027】
コラーゲン材料の製造
下記の本発明の粒状コラーゲン材料を製造するため、ポークラインズを、各条件下、硫酸抽出溶液を用いて6回抽出した。最後の抽出残留物を、コラーゲン固相、水相、及び脂肪相に分離し、固相を各比率で水相と混合した。ローラー乾燥後、材料を平均粒径150μmとなるまで粉砕した。
【0028】
抽出中のpHの効果
表1の例において、各抽出は、65℃18時間で異なるpH値で実施された。固相及び水相は、3:7の比率で混合された。
【0029】
その結果は、pHが、コラーゲン材料の水結合容量及び乳化容量に対し明確な効果を有することを示す:
【表1】
【0030】
コラーゲン材料の20重量%懸濁物のゲル強度が、水結合容量の尺度とされた。懸濁物を60℃に加熱し、10℃に冷却した後のゲル強度を、20時間後に測定した。
【0031】
比率1:6:6(コラーゲン材料:脂肪:水)の乳濁物のゲル強度を、乳化容量を決定する尺度とした。乳濁物は20℃で調製され、10℃に冷却した後のゲル強度が、20時間後に測定された。
【0032】
ゲル強度の測定は各ケースにおいて、穿孔深度1cmで、TA.XTplusテクスチャーアナライザー、Ball SMS P/0.75を使用して実施された。
【0033】
抽出時間の効果
表2の例において、抽出は、65℃及びpH4.8で異なる抽出時間で実施された。固相及び水相は、3:7の比率で混合された。
【0034】
その結果は、抽出時間も、コラーゲン材料の水結合容量及び乳化容量に対し一定の効果を有することを示す:
【表2】
【0035】
水結合容量及び乳化容量の決定は、上記のように実施された。
【0036】
混合比の効果
表3の例において、抽出は、65℃及びpH4.8、抽出時間18時間で実施された。固相及び水相は、異なる比率で混合された。
【0037】
その結果は、この方式において、前記材料の乳濁物の粘性が設定され得ることを示す:
【表3】
【0038】
粘性の決定は、30重量%のコラーゲン材料懸濁物において60℃で実施され、Anton Paar MCR 102レオメーターを用いて測定された。