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特許7019609卵巣がんおよび膵臓がんのためのバイオマーカーとしてムチン様タンパク質(MLP)を検出するためのモノクローナル抗体、組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】卵巣がんおよび膵臓がんのためのバイオマーカーとしてムチン様タンパク質(MLP)を検出するためのモノクローナル抗体、組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220207BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20220207BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220207BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220207BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220207BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220207BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220207BHJP
   C12N 15/06 20060101ALI20220207BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20220207BHJP
   C12N 5/18 20060101ALI20220207BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220207BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20220207BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220207BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220207BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20220207BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20220207BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20220207BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20220207BHJP
   G01N 33/577 20060101ALI20220207BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/18
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/06 100
C07K14/705
C12N5/18
A61K39/395 L
A61K51/10 200
A61K47/68
A61P35/00
A61P15/00
A61P1/18
G01N33/543 545A
G01N33/574 A
G01N33/577 B
C12P21/08
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018564260
(86)(22)【出願日】2017-06-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 US2017036204
(87)【国際公開番号】W WO2017214186
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2020-05-26
(31)【優先権主張番号】62/347,824
(32)【優先日】2016-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【微生物の受託番号】ATCC  PTA-121699
【微生物の受託番号】ATCC  PTA-121700
【微生物の受託番号】ATCC  PTA-121701
(73)【特許権者】
【識別番号】513252367
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ レスター
(73)【特許権者】
【識別番号】501472607
【氏名又は名称】オメロス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】シュヴェーブル, ハンス-ヴィルヘルム
(72)【発明者】
【氏名】デモプロス, グレゴリー エー.
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/087768(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2014/0364341(US,A1)
【文献】国際公開第98/048014(WO,A1)
【文献】UniProtKB-Q9Y3S4,1999年11月01日,http://www.uniprot.org/uniprot/Q9Y3S4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/
G01N33/
C07K 1/ -19/
C12P 1/ -41/
C12N 1/ - 7/
A61K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトムチン様タンパク質の配列番号4に記載するC末端領域中のエピトープに特異的に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片であって、
(i)配列番号13に記載のCDR-H1、配列番号14に記載のCDR-H2、配列番号15に記載のCDR-H3、および配列番号21に記載のCDR-L1、配列番号22に記載のCDR-L2、配列番号23に記載のCDR-L3、
(ii)配列番号13に記載のCDR-H1、配列番号16に記載のCDR-H2、配列番号35に記載のCDR-H3、および配列番号24に記載のCDR-L1、配列番号22に記載のCDR-L2、配列番号23に記載のCDR-L3、または
(iii)配列番号17に記載のCDR-H1、配列番号18に記載のCDR-H2、配列番号19に記載のCDR-H3、および配列番号25に記載のCDR-L1、配列番号26に記載のCDR-L2、配列番号27に記載のCDR-L3
を含む、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項2】
請求項1に記載のヒトムチン様タンパク質(MLP)のC末端領域中のエピトープに結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片であって、
(i)前記抗体が、組換え、ヒト化、またはキメラ抗体であること、
(ii)前記抗体が、完全ヒト抗体であること、
(iii)前記抗体またはその抗原結合性断片が、ELISAアッセイフォーマットにおけるように、上皮性がん細胞系から分泌されるグリコシル化ヒトMLPに結合することが可能であること、
(iv)前記抗体またはその抗原結合性断片が、10nM未満のKDでヒトMLPに結合すること、
(v)前記抗体が検出可能な部分で標識されており、かつ/または治療剤にカップリングされていること、
(vi)前記抗体が、基材上に固定化されていること、または
(vii)前記抗体またはその抗原結合性断片が、Fab、Fab’断片、F(ab’)2断片、全抗体、単鎖抗体、ScFv、およびヒンジ領域を欠く一価の抗体からなる群から選択されること
のうち、少なくとも1つが適用される、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項3】
請求項1または2に記載の抗MLP抗体またはその断片のアミノ酸配列をコードする核酸分子。
【請求項4】
請求項3に記載の本発明の抗MLP抗体をコードする核酸分子を含む発現カセット。
【請求項5】
請求項3に記載の本発明の抗MLP抗体をコードする核酸分子または請求項4に記載の発現カセットのうちの少なくとも1つを含む細胞。
【請求項6】
(i)2014年10月30日にATCCに寄託された、ATCC指定番号PTA-121699を有するハイブリドーマ細胞系により産生される、クローン11として指定される抗MLPモノクローナル抗体、
(ii)2014年10月30日にATCCに寄託された、ATCC指定番号PTA-121700を有するハイブリドーマ細胞系により産生される、クローンBとして指定される抗MLPモノクローナル抗体、および
(iii)2014年10月30日にATCCに寄託された、ATCC指定番号PTA-121701を有するハイブリドーマ細胞系により産生される、クローンCとして指定される抗MLPモノクローナル抗体
からなる群から選択される抗MLPモノクローナル抗体。
【請求項7】
抗MLP抗体を産生するハイブリドーマ細胞系であって、
(i)ATCC指定番号PTA-121699を有する、抗MLPモノクローナル抗体クローン11を分泌するハイブリドーマ細胞系、
(ii)ATCC指定番号PTA-121700を有する、抗MLPモノクローナル抗体クローンBを分泌するハイブリドーマ細胞系、および
(iii)ATCC指定番号PTA-121701を有する、抗MLPモノクローナル抗体クローンCを分泌するハイブリドーマ細胞系
からなる群から選択される細胞系。
【請求項8】
単離抗MLP抗体を生成する方法であって、請求項5または7に記載の細胞を、前記抗MLP抗体をコードする核酸分子の発現を可能にする条件下で培養するステップと、前記抗MLP抗体を単離するステップとを含む方法。
【請求項9】
被検対象に由来する生物学的試料中のMLPの存在または量を上皮性がんの指標とする方法であって、
(a)in vitroでのイムノアッセイにおいて、前記被検対象に由来する前記生物学的試料を、請求項1または2に記載の抗MLP抗体またはその抗原結合性断片と接触させるステップと、
(b)前記抗体の結合の存在または非存在を検出するステップであって、結合の存在が、前記試料中のMLPの存在または量を示す、ステップと
を含み、
前記抗体またはその断片が、MLPの配列番号4に記載するC末端領域中のエピトープに結合る、方法。
【請求項10】
被検対象中のムチンを分泌するがんの存在を検出または診断する方法において使用するための、MLPの配列番号4に記載するC末端領域中のエピトープに結合する、請求項1または2に記載のヒト化もしくは完全ヒト抗MLP抗体またはその抗原結合性断片を含む組成物であって、前記方法は(a)前記組成物を生存被検対象に投与するステップと、(b)MLPに結合している前記抗体またはその抗原結合性断片の存在もしくは非存在または量を検出するステップとを含み、前記対象中のMLPの前記存在または量の検出が、卵巣がん、膵臓がん、結腸直腸がん、乳がん、虫垂がん、肺がん、腎臓がん、子宮頚がん、胆道がん、食道がん、および上皮性皮膚がんからなる群から選択される、ムチンを分泌するがんの存在を示、組成物。
【請求項11】
卵巣がんまたは膵臓がんに罹患している対象を治療するための組成物であって、MLPの配列番号4に記載するC末端領域中のエピトープに結合する、請求項1または2に記載のヒト化もしくは完全ヒト抗MLP抗体またはその抗原結合性断片を含み、前記抗体またはその断片が、上皮性がんの治療剤にカップリングされてる、組成物。
【請求項12】
前記治療剤が、化学療法剤である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1、2および6のいずれかに記載の抗MLP抗体を含む組成物。
【請求項14】
請求項1、2および6のいずれかに記載の抗MLP抗体を少なくとも1つ含む、イムノアッセイにおける使用のための基材。
【請求項15】
(a)少なくとも1つの容器、および(b)請求項1、2および6のいずれかに記載の抗MLP抗体を少なくとも1つ含む、生物学的試料中のMLPの存在を検出するためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、卵巣がんおよび膵臓がんを検出する際に使用するためのモノクローナル抗体およびそのような抗体を含む組成物に関する。
【0002】
配列表に関する陳述
本出願に添付された配列表は、複写用紙の代わりにテキストフォーマットで提供され、本明細書によってこの配列表は、参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含有するテキストファイルの名前は、AB.1.0208.PCT.Sequence Listing.20170525_ST25である。テキストファイルは、25KBであり、2017年5月25日に作成され、EFS-Webを介して本明細書の提出と共に提出されたものである。
【背景技術】
【0003】
背景
女性がん患者の間では、卵巣がんの発生率が高く、これには、高い死亡率が伴う(Modugnoら、Am J of Obstetrics and Gynecology、191巻:733~740頁、2004年)。卵巣がんは、乳房、腸、肺および子宮のがんに続く、女性における5番目に最も一般的ながんである。卵巣がんは、後期に達するまで無症状であることからサイレントキラーと呼ばれている(Chauhanら、J of Ovarian Research、2巻:2215頁、2009年)。最初の症状は非局所性の軽度の疼痛であることから、卵巣がんの早期診断は困難であるが、卵巣の悪性腫瘍の症状が、後期にはより明らかになり、そうした症状には、食欲喪失および体重減少、閉経後の膣出血を伴う背部および骨盤における強度の疼痛、頻尿、便秘または下痢および腹部膨満が含まれる(American Cancer Society、2013年)。
これまでのところ、卵巣の悪性腫瘍の早期検出は、これまでまだ解決されていない要求である。現在使用されている腫瘍関連のバイオマーカーには、例えば、比較的非特異的な腫瘍マーカーであるCA-125があるが、これらはいずれも、卵巣の悪性腫瘍を早期に検出することができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Modugnoら、Am J of Obstetrics and Gynecology、191巻:733~740頁、2004年
【文献】Chauhanら、J of Ovarian Research、2巻:2215頁、2009年
【文献】American Cancer Society、2013年
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
したがって、卵巣の悪性腫瘍を早期に発見するためには、早期診断のための非侵襲性の臨床検査を開発する差し迫った必要性があり、早期には、治療が有効であり、治療すれば、予後は、より後期の卵巣がんよりもさらに良好である。
【0006】
要旨
この要旨は、下記の詳細な説明でさらに記載する概念選択を簡潔な形で提供する。この要旨は、特許請求される主題の主要な特色を特定する意図もないし、また特許請求される主題の範囲の決定の支援として使用する意図もない。
【0007】
一態様では、本発明は、ヒトムチン様タンパク質の配列番号4に記載するC末端領域中のエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合性断片を提供する。一実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。一実施形態では、前記抗体は、ヒト化、キメラまたは完全ヒト抗体である。一実施形態では、前記抗体またはその抗原結合性断片は、上皮性がん細胞系から分泌されるグリコシル化ヒトMLPに結合することが可能である。一実施形態では、前記抗体またはその抗原結合性断片は、ELISAアッセイフォーマットにおいて、グリコシル化ヒトMLPに結合することが可能である。一実施形態では、前記抗体またはその抗原結合性断片は、10nM未満、例として、1nM未満のKでヒトMLPに結合する。一実施形態では、前記抗体またはその抗原結合性断片は、
(i)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121699でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗体MLPクローン11、(ii)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121700でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗体MLPクローンB、および(iii)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121701でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗体MLPクローンCからなる群から選択される1つまたは複数の参照抗体により認識されるエピトープの少なくとも一部を認識する。
【0008】
一実施形態では、前記抗体は、配列番号7、配列番号8および配列番号9からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一である配列を含むかまたはそうした配列からなる、重鎖の可変領域を含む。一実施形態では、前記抗体は、配列番号10、配列番号11および配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一である配列を含むかまたはそうした配列からなる、軽鎖の可変領域を含む。一実施形態では、前記抗体は、検出可能な部分で標識されている。一実施形態では、前記抗体は、治療剤にカップリングされている。一実施形態では、前記抗体は、基材上に固定化されている。
【0009】
別の態様では、本発明は、ムチン様タンパク質(MLP)のC末端領域に結合する抗体またはその抗原結合性断片であって、(i)CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3配列を含む重鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域CDR-H3配列が、配列番号15、配列番号35、配列番号36または配列番号19に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含み、軽鎖可変領域CDR-L3配列が、配列番号23または配列番号27に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含む、抗体またはその抗原結合性断片を提供する。一実施形態では、前記抗体またはその抗原結合性断片は、(i)CDR-H1(配列番号13)、CDR-H2(配列番号14)およびCDR-H3(配列番号15または配列番号35または配列番号36)を含む重鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-L1(配列番号21)、CDR-L2(配列番号22)およびCDR-L3(配列番号23)を含む軽鎖可変領域、ならびにそれらの保存的改変を含む。一実施形態では、前記抗体またはその抗原結合性断片は、(i)CDR-H1(配列番号13)、CDR-H2(配列番号16)およびCDR-H3(配列番号15、配列番号35または配列番号36)を含む重鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-L1(配列番号24)、CDR-L2(配列番号22)およびCDR-L3(配列番号23)を含む軽鎖可変領域、ならびにそれらの保存的改変を含む。一実施形態では、前記抗体またはその抗原結合性断片は、(i)CDR-H1(配列番号17)、CDR-H2(配列番号18)およびCDR-H3(配列番号19)を含む重鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-L1(配列番号25)、CDR-L2(配列番号26)およびCDR-L3(配列番号27)を含む軽鎖可変領域、ならびにそれらの保存的改変を含む。
【0010】
別の態様では、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列または配列番号1に対して少なくとも95%の同一性を有するそのバリアントを含む単離ポリペプチドを提供する。
【0011】
別の態様では、本発明は、配列番号4のアミノ酸配列または配列番号4に対して少なくとも95%の同一性を有するそのバリアントを含む単離ポリペプチドを提供する。
【0012】
別の態様では、本発明は、配列番号5のアミノ酸配列または配列番号5に対して少なくとも95%の同一性を有するそのバリアントを含む単離ポリペプチドを提供する。
【0013】
別の態様では、本発明は、配列番号6のアミノ酸配列または配列番号6に対して少なくとも95%の同一性を有するそのバリアントを含む単離ポリペプチドを提供する。
【0014】
別の態様では、本発明は、被検対象に由来する生物学的試料中のMLPの存在または量を決定することによって、上皮性がんを検出または診断する方法を提供する。方法は、(a)in vitroでのイムノアッセイにおいて、被検対象に由来する生物学的試料を抗MLP抗体またはその抗原結合性断片と接触させるステップと、(b)前記抗体の結合の存在または非存在を検出するステップとを含み、結合の検出は、試料中のMLPの存在または量を示し、抗体またはその断片は、MLPの配列番号4に記載するC末端領域中のエピトープ、例として、配列番号5または配列番号6中のエピトープに結合する。一部の実施形態では、前記抗MLP抗体は、検出可能な部分で標識されており、ステップ(b)は、前記検出可能な部分の存在または量を検出することを含む。一部の実施形態では、方法は、ステップ(b)に従って検出したMLPの量を、参照標準または健常対象に由来する対照試料と比較するステップをさらに含み、対照試料または参照標準と比較する場合の、被検試料中のMLPのレベルの少なくとも2倍またはそれより大きな増加は、被検対象における、卵巣がんまたは膵臓がん等の上皮性がんの存在またはそれらを発症するリスクの増加を示す。一部の実施形態では、生物学的試料は、血液、血清、血漿および組織からなる群から選択される。
【0015】
別の態様では、本発明は、被検対象中のムチン分泌型のがん、例として、卵巣がん、膵臓がん、結腸直腸がん、乳がん、虫垂がん、肺がん、腎臓がん、子宮頚がん、胆道がん、食道がん、上皮性皮膚がんおよび/またはその他のムチン分泌型のがんからなる群から選択される、ムチンを分泌するがんを、MLPの存在または量を決定することによって検出または診断する方法であって、(a)MLPの配列番号4に記載するC末端領域中のエピトープ、例として、配列番号5または配列番号6中のエピトープに結合するヒト化もしくは完全ヒト抗MLP抗体またはその抗原結合性断片を生存被検対象に投与するステップと、(b)MLPに結合している抗体またはその断片の存在もしくは非存在または量を検出するステップとを含み、対象中のMLPの存在または量の検出が、被検対象中の、卵巣がん、膵臓がん、結腸直腸がん、乳がん、虫垂がん、肺がん、腎臓がん、子宮頚がん、胆道がん、食道がん、上皮性皮膚がんおよび/またはその他のムチン分泌型のがんの存在を示す、方法を提供する。一実施形態では、抗MLP抗体は、in vivoでの使用に適切な、検出可能な部分で標識されており、ステップ(b)は、検出可能な部分の存在または量を検出することを含む。一実施形態では、方法は、画像化手順、手術中の手順、内視鏡的手順または血管内の手順において使用される。
【0016】
別の態様では、本発明は、ムチン分泌型のがん、例として、卵巣がん、膵臓がん、結腸直腸がん、乳がん、虫垂がん、肺がん、腎臓がん、子宮頚がん、胆道がん、食道がん、上皮性皮膚がんおよび/またはその他のムチン分泌型のがんからなる群から選択される、ムチンを分泌するがんに罹患している対象を治療する方法であって、MLPの配列番号4に記載するC末端領域中のエピトープ、例として、配列番号5または配列番号6中のエピトープに結合するヒト化もしくは完全ヒト抗MLP抗体またはその抗原結合性断片をムチン分泌型のがんに罹患している個体に投与するステップを含み、抗体またはその断片が、治療剤にカップリングされている、方法を提供する。
【0017】
別の態様では、本発明は、(a)少なくとも1つの容器、および(b)MLPの配列番号4に記載するC末端領域中のエピトープ、例として、配列番号5または配列番号6中のエピトープに結合する抗MLP抗体を少なくとも1つ含む、生物学的試料中のMLPの存在または量を検出するキットを提供する。
【0018】
本発明の抗MLP抗体、組成物およびキットを使用して、本発明の方法を実行することができる。
【0019】
本発明の前述の態様および多数の付随する有利点は、次の詳細な記載を参照し、添付の図と合わせて解釈することによってよりよく理解され、さらに容易に認識される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、全長ヒトムチン様タンパク質(MLP)(配列番号1)のアミノ酸配列をC末端領域(アミノ酸279~431)(配列番号4)に下線を付けて示す。
【0021】
図2図2は、ヒトMLPのC末端領域の残基279~431に融合されたN末端ヒスチジンタグを含む組換え融合タンパク質(配列番号3)のアミノ酸配列を、N末端ベクター由来配列に下線を付けて示す。
【0022】
図3A図3Aは、実施例1に記載のとおり、種々の濃度の組換えMLP(rMLP)C末端タンパク質に対して検査した、抗MLPモノクローナル抗体クローンBを用いて実行されたELISAアッセイの結果をグラフで例示する。
【0023】
図3B図3Bは、実施例1に記載のとおり、種々の濃度の組換えMLP(rMLP)C末端タンパク質に対して検査した、抗MLPモノクローナル抗体クローン11を用いて実行されたELISAアッセイの結果をグラフで例示する。
【0024】
図4図4は、実施例1に記載のとおり、組換えMLP(rMLP)C末端タンパク質に対して検査した、抗MLPモノクローナル抗体クローン11を用いて実行されたELISAアッセイの結果をグラフで例示する。
【0025】
図5図5は、実施例2に記載のとおり、Panc1細胞系上清(列A)、rMASP-3ポリペプチド(列B)およびmMLP C末端タンパク質(列C)に対して抗MLPモノクローナル抗体クローンC、クローンBおよびクローン11を用いて実行されたドットブロットアッセイの結果を示す。
【0026】
図6図6は、実施例2に記載のとおり、グリコシル化全長MLP(gMLP)を含有する卵巣がん細胞系A2780に由来する濃縮上清に対して抗MLPモノクローナル抗体クローンC、11およびBを用いて実行されたELISAアッセイの結果をグラフで例示する。
【0027】
図7図7は、実施例2に記載のとおり、卵巣がん細胞系A2780上清(列A)、rMASP-3タンパク質(列B)およびrMLP C末端タンパク質(列C)に対して抗MLP抗体クローンC、クローンBおよびクローン11を用いて実行されたドットブロットアッセイの結果を示す。
【0028】
図8図8は、実施例2に記載のとおり、上パネルが、抗MLPクローンCがA2780中のgMLP(列1)およびrMLP C末端タンパク質(列3)を特異的に認識するが、rMASP-3タンパク質(列2)をしないことを実証しているウエスタンブロットの結果を示し、中パネルが、抗MLPクローンBがA2780中のgMLP(列1)およびrMLP C末端タンパク質(列3)を特異的に認識するが、rMASP-3タンパク質(列2)をしないことを実証しているウエスタンブロットの結果を示し、下パネルが、抗MLPクローン11がA2780中のgMLP(列1)およびrMLP C末端タンパク質(列3)を特異的に認識するが、rMASP-3タンパク質(列2)をしないことを実証するウエスタンブロットの結果を示す。
【0029】
図9図9は、実施例2に記載のとおり、グリコシル化全長MLP(gMLP)を含有する卵巣がん細胞系A2780に由来する濃縮上清に対して抗MLPモノクローナル抗体クローンC、5、11およびBを用いて実行されたELISAアッセイの結果をグラフで例示する。
【0030】
図10A図10Aは、実施例3に記載のとおり、抗MLPモノクローナル抗体クローン11(配列番号7)、B(配列番号8)および2(C)(配列番号9)の重鎖可変領域間のアミノ酸配列の配列比較を示す。
【0031】
図10B図10Bは、実施例3に記載のとおり、抗MLPモノクローナル抗体クローン11(配列番号10)、B(配列番号11)および2(C)(配列番号12)の軽鎖可変領域間のアミノ酸配列の配列比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
配列表の説明
抗原
配列番号1:全長ヒトムチン様タンパク質(MLP)、431アミノ酸長のアミノ酸配列
配列番号2:N末端ヒスチジンタグおよびヒトMLPのC末端領域の残基279~431に対応するポリペプチド領域を含む融合タンパク質をコードするDNA
配列番号3:ヒトMLPのC末端領域の残基279~431に融合されたN末端ヒスチジン検出タグを含む融合タンパク質(配列番号2によってコードされる)のアミノ酸配列
配列番号4:ヒトMLPのC末端領域(アミノ酸279~431)のアミノ酸配列
配列番号5:SSGHRTEKRKRQQPQRRPAAGTGQRRGSEEMEEEG(ヒトMLPのアミノ酸残基397~431)
配列番号6:EKRKRQQPQRRPAAGTGQRRGSEEMEEEG(ヒトMLPのアミノ酸残基403~431)
【0033】
モノクローナル抗体VH鎖
配列番号7:mAbクローン11:VHアミノ酸配列
配列番号8:mAbクローンB:VHアミノ酸配列
配列番号9:mAbクローンC:VHアミノ酸配列
【0034】
モノクローナル抗体VL鎖
配列番号10:mAbクローン11:VLアミノ酸配列
配列番号11:mAbクローンB:VLアミノ酸配列
配列番号12:mAbクローンC:VLアミノ酸配列
【0035】
モノクローナル抗体重鎖CDR
配列番号13:クローン11およびクローンBに由来するCDR-H1
配列番号14:クローン11に由来するCDR-H2
配列番号15:クローン11に由来するCDR-H3
配列番号35:クローンBに由来するCDR-H3
配列番号16:クローンBに由来するCDR-H2
配列番号17:クローンCに由来するCDR-H1
配列番号18:クローンCに由来するCDR-H2
配列番号19:クローンCに由来するCDR-H3
配列番号20:クローン11およびクローンBに由来するCDR-H2コンセンサス
配列番号36:クローン11およびクローンBに由来するCDR-H3コンセンサス
【0036】
モノクローナル抗体軽鎖CDR
配列番号21:クローン11に由来するCDR-L1
配列番号22:クローン11およびクローンBに由来するCDR-L2
配列番号23:クローン11およびクローンBに由来するCDR-L3
配列番号24:クローンBに由来するCDR-L1
配列番号25:クローンCに由来するCDR-L1
配列番号26:クローンCに由来するCDR-L2
配列番号27:クローンCに由来するCDR-L3
配列番号28:クローン11およびクローンBに由来するCDR-L1コンセンサス
【0037】
VHをコードするDNA
配列番号29:クローン11に由来するVHをコードするDNA
配列番号30:クローンBに由来するVHをコードするDNA
配列番号31:クローンCに由来するVHをコードするDNA
【0038】
VLをコードするDNA
配列番号32:クローン11に由来するVLをコードするDNA
配列番号33:クローンBに由来するVLをコードするDNA
配列番号34:クローンCに由来するVLをコードするDNA
【0039】
実施例1~3に記載するように、ムチン様タンパク質(MLP)の配列番号4に記載するC末端領域に特異的に結合し、患者の血清試料中の卵巣がん、膵臓がんおよびその他のムチンを分泌する悪性新生物の早期検出に有用である高親和性モノクローナル抗体を同定するに至った。したがって、本発明は、ムチン様タンパク質(MLP)のC末端領域に特異的に結合するモノクローナル抗体、ならびにムチン分泌型のがん、例として、卵巣がん、膵臓がん、結腸直腸がん、乳がん、虫垂がん、肺がん、腎臓がん、子宮頚がん、胆道がん、食道がん、上皮性皮膚がんおよび/またはその他のムチン分泌型のがんからなる群から選択される、ムチンを分泌するがんを検出する方法における、これらの抗体の使用を対象にする。
【0040】
I.定義
本明細書においては、特段に定義しない限り、本明細書で使用するすべての用語は、本発明の当業者が理解すると予想される意味と同じ意味を有する。本発明を記載するために本明細書および特許請求の範囲で使用する用語を明確にするために、以下の定義を提供する。
【0041】
用語「抗体」および「免疫グロブリン」は、本明細書では交換可能に使用される。これらの用語は、当業者により十分に理解されており、1つまたは複数のポリペプチドからなる、抗原に特異的に結合するタンパク質を指す。抗体の1つの形態は、抗体の基本的な構造単位を構成する。この形態は、四量体であり、抗体鎖の同一の対2つからなり、各対が、1つの軽鎖および1つの重鎖を有する。各対において、軽鎖可変領域と重鎖可変領域とが一緒になって、抗原への結合に関与し、定常領域は、抗体のエフェクター機能に関与する。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、配列番号1に記載するヒトムチン様タンパク質(MLP)、あるいはその部分、例として、MLPのC末端領域(例えば、アミノ酸残基279~431を含むかまたはアミノ酸残基279~431からなる、MLPの配列番号4に記載するC末端領域、またはアミノ酸残基397~431を含むかまたはアミノ酸残基397~431からなる、MLPの配列番号5に記載するC末端領域、またはアミノ酸残基403~431を含むかまたはアミノ酸残基403~431からなる、MLPの配列番号6に記載するC末端領域)に特異的に結合する抗体およびそれらの抗体断片を包含し、抗体およびそれらの抗体断片は、抗体を産生する任意の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、およびヒトを含めた、霊長類)から誘導されるか、あるいはハイブリドーマ、ファージ選択、組換え発現またはトランスジェニック動物(または抗体もしくは抗体断片を産生するその他の方法)から得られる。抗体の供給源または抗体が作製される様式(例えば、ハイブリドーマ、ファージ選択、組換え発現、トランスジェニック動物、ペプチド合成等による様式)の点から、用語「抗体」を限定する意図はない。例示的な抗体として、ポリクローナル、モノクローナルおよび組換え抗体;多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体);ヒト化抗体;完全ヒト抗体、マウス抗体;キメラ、マウス-ヒト、マウス-霊長類、霊長類-ヒトのモノクローナル抗体;ならびに抗イディオタイプ抗体が挙げられ、それらの抗体は、それらの任意のインタクトな分子または断片であってもよい。本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、インタクトなポリクローナルまたはモノクローナル抗体のみならず、また、それらの断片(例として、dAb、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv)、単鎖(ScFv)、それらの合成バリアント、天然に存在するバリアント、融合タンパク質であって、必要な特異性を示す抗原結合性断片を有する、抗体の部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、および必要な特異性を示す抗原結合性部位または断片(エピトープ認識部位)を含む、免疫グロブリン分子の任意のその他の改変された配置も包含する。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「抗原結合性断片」は、免疫グロブリンの重鎖および/または軽鎖の少なくとも1つのCDRを含有するポリペプチド断片を指し、CDRは、ヒトMLP(配列番号1)、あるいはその部分、例として、MLPのC末端領域(例えば、アミノ酸残基279~431のアミノ酸を含むかまたはアミノ酸残基279~431のアミノ酸からなる、配列番号4に記載する領域、またはアミノ酸残基397~431を含むかまたはアミノ酸残基397~431からなる、MLPの配列番号5に記載するC末端領域、またはアミノ酸残基403~431を含むかまたはアミノ酸残基403~431からなる、MLPの配列番号6に記載するC末端領域)に特異的に結合する。この点に関して、本明細書に記載する抗体の抗原結合性断片は、MLPに結合する抗体に由来する本明細書に記載するVHおよびVL配列のCDRのうち、1、2、3、4、5、または6つすべてを含むことができる。
【0044】
本明細書で使用する場合、用語「抗MLPモノクローナル抗体」は、均質な抗体集団を指し、ここで、モノクローナル抗体は、MLP上のエピトープ、例として、MLPのC末端領域中のエピトープ(例えば、アミノ酸残基279~431のアミノ酸を含むかまたはアミノ酸残基279~431のアミノ酸からなる、配列番号4に記載する領域、またはアミノ酸残基397~431を含むかまたはアミノ酸残基397~431からなる、MLPの配列番号5に記載するC末端領域、またはアミノ酸残基403~431を含むかまたはアミノ酸残基403~431からなる、MLPの配列番号6に記載するC末端領域)の選択的結合に関与するアミノ酸から構成されている。抗MLPモノクローナル抗体は、MLP標的抗原に極めて特異的である。用語「モノクローナル抗体」は、インタクトなモノクローナル抗体および完全長モノクローナル抗体のみならず、また、それらの断片(例として、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv)、単鎖(ScFv)、それらのバリアント、抗原結合性部分を含む融合タンパク質、ヒト化モノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、ならびに必要な特異性を示す抗原結合性断片(エピトープ認識部位)およびエピトープに結合する能力を含む、免疫グロブリン分子の任意のその他の改変された配置も包含する。
【0045】
本明細書で使用する場合、修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均質な集団から得られているという、抗体の性質を示し、この用語には、抗体の供給源または抗体が作製される様式(例えば、ハイブリドーマ、ファージ選択、組換え発現、トランスジェニック動物等による様式)の点から、抗体を限定する意図はない。この用語は、免疫グロブリン全体、および「抗体」の定義において上記で記載した断片等を含む。モノクローナル抗体は、細胞系を連続的に培養することによって、抗体分子を産生する任意の技法、例として、Kohler,G.ら、Nature、256巻:495頁、1975年が記載しているハイブリドーマ法を使用して得ることができ、または組換えDNA法により作製することができる(例えば、Cabillyに対する米国特許第4,816,567号を参照されたい)。また、モノクローナル抗体は、Clackson,T.ら、Nature、352巻:624~628頁、1991年、およびMarks,J.D.ら、J.Mol.Biol.、222巻:581~597頁、1991年に記載されている技法を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。そのような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDを含めた、免疫グロブリンの任意のクラス、およびそれらの任意のサブクラスの抗体であり得る。
【0046】
認識されている免疫グロブリンポリペプチドは、カッパおよびラムダ軽鎖、ならびにアルファ、ガンマ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、デルタ、イプシロンおよびミュー重鎖、またはその他の種における同等物を含む。(約25kDaまたは約214個のアミノ酸の)完全長免疫グロブリン「軽鎖」は、NH末端において約110個のアミノ酸の可変領域を、COOH末端においてカッパまたはラムダ定常領域を含む。同様に、(約50kDaまたは約446個のアミノ酸の)完全長免疫グロブリン「重鎖」も、(約116個のアミノ酸の)可変領域、および上記の重鎖定常領域のうちの1つ、例えば、(約330個のアミノ酸の)ガンマを含む。
【0047】
基本的な4鎖抗体単位は、同一の軽(L)鎖2つおよび同一の重(H)鎖2つから構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である。IgM抗体は、J鎖と呼ばれる追加のポリペプチドを併せもつ、5つの基本的なヘテロ四量体単位からなり、したがって、10個の抗原結合性部位を含有する。分泌型IgA抗体は重合して、J鎖を併せもつ、2~5つの基本的な4鎖単位を含む多価の集合体を形成することができる。各L鎖は、1つの共有結合性ジスルフィド結合によりH鎖に連結し、一方、2つのH鎖は、H鎖のアイソタイプに依存して1つまたは複数のジスルフィド結合により相互に連結する。また、それぞれのH鎖およびL鎖が、規則的に間隔を置く鎖内ジスルフィド架橋も有する。VHとVLとが一緒になって対形を成して、単一の抗原結合性部位を形成する。
【0048】
各H鎖が、N末端において、可変ドメイン(VH)を有し、続いて、α鎖およびγ鎖それぞれの場合には、3つの定常ドメイン(CH)を有し、μアイソタイプおよびεアイソタイプの場合には、4つのCHドメイン(CH)を有する。
【0049】
各L鎖が、N末端において、可変ドメイン(VL)を有し、続いて、その他方の末端において、定常ドメイン(CL)を有する。VLは、VHと整列し、CLは、重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と整列する。任意の脊椎動物種に由来するL鎖を、それらの定常ドメイン(CL)のアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に異なる型のうちの1つに帰属させることができる。
【0050】
免疫グロブリンは、それらの重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列に依存して、異なるクラスまたはアイソタイプに帰属させることができる。5つのクラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、それぞれ、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)およびミュー(μ)と称される重鎖を有する。γクラスおよびαクラスは、CH配列および機能の軽微な差に基づいて、サブクラスにさらに分けられ、例えば、ヒトは、以下のサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2を発現する。
【0051】
異なるクラスの抗体の構造および特性については、例えば、Basic and Clinical Immunology、第8版、Daniel P.Stites、Abba I.TerrおよびTristram G.Parslow(編);AppletonおよびLange、Norwalk、Conn.、1994年、71頁および6章を参照されたい。
【0052】
用語「可変」は、抗体の間で、Vドメインの特定のセグメントが、配列の点で広範に異なるという事実を指す。Vドメインは、抗原結合を媒介し、特定の抗体の、その特定の抗原についての特異性を定義する。しかし、可変性は、可変ドメインの110個のアミノ酸の範囲にわたって均一には分布しない。むしろ、V領域は、それぞれ9~12アミノ酸長である、「超可変領域」と呼ばれる極度に可変性のより短い領域により分離される、15~30個のアミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変のストレッチからなる。ネイティブの重鎖および軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、3つの超可変領域により接続される、大部分がベータシートの配置をとる4つのFRを含み、超可変領域は、ループを形成して、n-シート構造に接続し、場合によっては、n-シート構造の一部を形成する。各鎖中の超可変領域は一緒になって密接に近接して、FRにより保持され、他方の鎖からの超可変領域と共に、抗体の抗原結合性部位の形成に寄与する(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md(1991年)を参照されたい)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接には関与しないが、多様なエフェクター機能を示し、例として、抗体依存性細胞傷害(ADCC)に加わる。
【0053】
本明細書で使用する場合、用語「超可変領域」は、抗原結合に関与する、抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は一般に、「相補性決定領域」または「CDR」(すなわち、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md(1991年)の記載に従うKabatの番号付けシステムに従って番号付けを行う場合の軽鎖可変ドメイン中の約24~34(L1)、50~56(L2)および89~97(L3)の残基付近ならびに重鎖可変ドメイン中の約31~35(H1)、50~66(H2)および95~102(H3)の残基付近)からのアミノ酸残基を含み;かつ/または「超可変ループ」(すなわち、ChothiaおよびLesk、J.Mol.Biol.、196巻:901~917頁(1987年)の記載に従うChothiaの番号付けシステムに従って番号付けを行う場合の軽鎖可変ドメイン中の24~34(L1)、50~56(L2)および89~97(L3)の残基ならびに重鎖可変ドメイン中の26~32(H1)、52~56(H2)および95~101(H3)の残基)からのアミノ酸残基を含み;かつ/または「超可変ループ」/CDR(例えば、Lefranc,J.P.ら、Nucleic Acids Res、27巻:209~212頁;Ruiz,M.ら、Nucleic Acids Res、28巻:219~221頁(2000年)の記載に従うIMGTの番号付けシステムに従って番号付けを行う場合のVL中の27~38(L1)、56~65(L2)および105~120(L3)の残基ならびにVH中の27~38(H1)、56~65(H2)および105~120(H3)の残基)からのアミノ酸残基を含む。
【0054】
本明細書で使用する場合、用語「抗体断片」は、完全長抗MLP抗体から誘導されるかまたは完全長抗MLP抗体に関連する部分を指し、一般に、その抗原結合性領域または可変領域を含む。抗体断片の例示的な例として、Fab、Fab’、F(ab)、F(ab’)およびFv断片、scFv断片、ダイアボディ、直鎖状抗体、単鎖抗体分子、抗体断片から形成される二特異性および多重特異性抗体が挙げられる。
【0055】
二重特異性抗体を使用しようとする場合、これらは、従来の二重特異性抗体であってもよく、従来の二重特異性抗体は、多様な方法で製造すること(Holliger,P.およびWinter G.、Current Opinion Biotechnol.、4巻、446~449頁(1993年))、例えば、化学的にまたはハイブリッドのハイブリドーマから調製することができ、または二重特異性抗体は、上記で言及した二重特異性抗体の断片のうちのいずれかであってもよい。
【0056】
本明細書で使用する場合、「単鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVおよびVドメインを含み、ここで、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖として存在する。一般に、Fvポリペプチドは、VドメインとVドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、リンカーにより、scFvが抗原結合に所望される構造を形成することが可能になる。Pluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、113巻、RosenburgおよびMoore編、Springer-Verlag、New York、269~315頁(1994年)を参照されたい。「Fv」は、抗原を認識し、抗原に結合する完全な部位を含有する最小の抗体断片である。この断片は、1つの重鎖可変領域ドメインおよび1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体からなり、これらのドメインは、強固に非共有結合性につながっている。これら2つのドメインのフォールディングから、6つの超可変ループ(H鎖およびL鎖からそれぞれ、3つのループ)が発し、これらのループは、抗原結合のためのアミノ酸残基を提供し、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのCDRのみを含む半分のFv)であっても、抗原を認識し、抗原に結合する能力を有するが、親和性は、結合部位全体よりも低い。
【0057】
本明細書で使用する場合、用語「特異的結合性」は、種々の分析対象の均質な混合物中に存在する特定の分析対象に優先的に結合する抗体の能力を指す。ある特定の実施形態では、特異的結合性の相互作用は、試料中の望ましい分析対象と望ましくない分析対象とを区別し、一部の実施形態では、約10~100倍またはそれを超える倍数を上回る(例えば、約1000または10,000倍を上回る)。ある特定の実施形態では、捕捉剤と分析対象との間の親和性は、それらが捕捉剤/分析対象の複合体中で特異的に結合する場合、約100nM未満、または約50nM未満、または約25nM未満、または約10nM未満、または約5nM未満、または約1nM未満のK(解離定数)を特徴とする。
【0058】
本明細書で使用する場合、用語「バリアント」の抗MLP抗体は、アミノ酸配列が、「親」抗体または参照抗体のアミノ酸配列とは、親抗体の配列中の1つまたは複数のアミノ酸残基の付加、欠失および/または置換によって異なる分子を指す。一実施形態では、バリアントの抗MLP抗体は、重鎖可変領域のCDR領域内における組合せの合計が1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換および/または軽鎖可変領域の前記CDR領域内における組合せの合計が最大1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換を除いて、親の可変ドメインと同一である可変領域を含有する分子を指す。一部の実施形態では、アミノ酸置換は、保存的改変配列である。
【0059】
本明細書で使用する場合、用語「親抗体」は、バリアントの調製のために使用されるアミノ酸配列によってコードされる抗体を指す。好ましくは、親抗体は、ヒトフレームワーク領域を有し、存在する場合には、ヒト抗体定常領域を有する。例えば、親抗体は、ヒト化または完全ヒト抗体であり得る。
【0060】
本明細書で使用する場合、用語「単離抗体」は、同定され、その天然の環境の構成要素から分離および/または回収されている抗体を指す。その天然の環境の汚染成分は、抗体の診断または治療への使用を妨げると予想される物質であり、酵素、ホルモン、およびその他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質を含むことができる。好ましい実施形態では、抗体を、(1)ローリー法により決定する場合、抗体の95重量%超まで、最も好ましくは、99重量%超まで、(2)スピニングカップシークエネーターの使用により、N末端または内部のアミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度まで、または(3)クーマシーブルー、または好ましくは、銀染色を使用する、還元性または非還元性条件下のSDS-PAGEにより均質になるまで精製する。単離抗体は、組換え細胞内部のin situでの抗体を含み、その理由は、抗体の天然の環境の少なくとも1つの構成要素が存在しないからである。しかし通常は、単離抗体は、少なくとも1つの精製ステップにより調製する。
【0061】
本明細書で使用する場合、用語「エピトープ」は、モノクローナル抗体が特異的に結合する、抗原の部分を指す。エピトープ決定因子は、通常、化学的に活性な一連の表面分子、例として、アミノ酸または糖側鎖からなり、通常、特異的な三次元構造の特徴および特異的な電荷の特徴を示す。より具体的には、用語「MLPエピトープ」および「C末端MLPエピトープ」は、本明細書で使用する場合、当技術分野で周知の任意の方法、例えば、イムノアッセイにより決定する場合に、抗体が免疫特異的に結合する、対応するポリペプチドの部分(配列番号1および/または配列番号4および/または配列番号5および/または配列番号6)を指す。抗原性エピトープは、必ずしも免疫原性である必要はない。そのようなエピトープは、本来直鎖状であってもよく、または不連続エピトープであってもよい。したがって、本明細書で使用する場合、用語「立体構造エピトープ」は、切れ目のない一連のアミノ酸以外の、抗原のアミノ酸間の空間関係により形成される不連続エピトープを指す。
【0062】
本明細書で使用する場合、「哺乳動物対象」として、非限定的に、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウサギ、ブタ、およびげっ歯類が挙げられる。
【0063】
本明細書で使用する場合、「治療剤」は、抗悪性腫瘍剤、抗炎症剤、サイトカイン、抗感染剤、酵素の活性化剤もしくは阻害剤、アロステリック改変剤、抗生物質、または患者において、投与されて、所望の治療効果を誘発するその他の薬剤として作用する現時点で公知であるかもしくは後に開発される化合物、分子または原子を指し、こうした治療剤は、抗体部分、すなわち、抗体または抗体の断片もしくは部分断片と、別途、同時または順次に投与されるか、あるいは抗体部分にコンジュゲートされて投与され、病態に陥っている対象の治療に有用である。治療剤はまた、毒素、化学療法剤または放射性同位体である場合もあり、ここで、治療剤部分は、がん細胞を死滅させるための部分であることを意図する。
【0064】
本明細書で使用する場合、「検出可能な標識」は、イムノコンジュゲートの文脈では、その存在を検出可能にする特性を示す部分、例えば、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的および/またはその他の物理的手段により検出可能な部分である、イムノコンジュゲートの部分を指す。検出可能な部分は、本発明の抗MLP抗体およびそれらの抗原結合性断片に直接的および/または間接的にカップリングさせることができる。例えば、イムノコンジュゲートは、放射性同位元素を用いてかまたはイムノアッセイにおける検出を可能にする酵素活性で標識された抗MLP抗体を含むことができる。
【0065】
本明細書で使用する場合、アミノ酸残基を、以下に従って略す:アラニン(Ala;A)、アスパラギン(Asn;N)、アスパラギン酸(Asp;D)、アルギニン(Arg;R)、システイン(Cys;C)、グルタミン酸(Glu;E)、グルタミン(Gln;Q)、グリシン(Gly;G)、ヒスチジン(His;H)、イソロイシン(Ile;I)、ロイシン(Leu;L)、リシン(Lys;K)、メチオニン(Met;M)、フェニルアラニン(Phe;F)、プロリン(Pro;P)、セリン(Ser;S)、スレオニン(Thr;T)、トリプトファン(Trp;W)、チロシン(Tyr;Y)、およびバリン(Val;V)。
【0066】
最も広い意味において、天然に存在するアミノ酸を、それぞれのアミノ酸の側鎖の化学的特徴に基づいて、群に分けることができる。「疎水性」アミノ酸により、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、Tyr、Val、Ala、CysまたはProのいずれかを意味する。「親水性」アミノ酸により、Gly、Asn、Gln、Ser、Thr、Asp、Glu、Lys、ArgまたはHisのいずれかを意味する。この一連のアミノ酸を、以下に従ってさらにサブクラスに分けることもできる。「無電荷親水性」アミノ酸により、Ser、Thr、AsnまたはGlnのいずれかを意味する。「酸性」アミノ酸により、GluまたはAspのいずれかを意味する。「塩基性」アミノ酸により、Lys、ArgまたはHisのいずれかを意味する。
【0067】
本明細書で使用する場合、用語「保存的アミノ酸置換」は、以下の群のそれぞれに属するアミノ酸の間での置換により説明される:(1)グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン、(2)フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン、(3)セリンおよびスレオニン、(4)アスパラギン酸およびグルタミン酸、(5)グルタミンおよびアスパラギン、ならびに(6)リシン、アルギニンおよびヒスチジン。
【0068】
本明細書で使用する場合、「単離核酸分子」は、生物のゲノムDNA中に組み入れられていない核酸分子(例えば、ポリヌクレオチド)である。例えば、細胞のゲノムDNAから分離されている、増殖因子をコードするDNA分子は、単離DNA分子である。単離核酸分子の別の例が、化学的に合成された核酸分子であり、これは、生物のゲノム中に組み入れられていない。特定の種から単離されている核酸分子は、当該の種に由来する染色体の完全なDNA分子よりも小さい。
【0069】
本明細書で使用する場合、「核酸分子構築物」は、ヒトの介入により、自然界においては存在しない取合せで、組み合わせ、並置された、核酸のセグメントを含有するように改変されている、一本鎖または二本鎖のいずれかの核酸分子である。
【0070】
本明細書で使用する場合、「発現ベクター」は、宿主細胞中で発現させる遺伝子をコードする核酸分子である。典型的には、発現ベクターは、転写プロモーター、遺伝子、および転写ターミネーターを含む。遺伝子の発現は、通常、プロモーターの制御下に置かれ、そのような遺伝子は、プロモーター「に作動可能に連結されている」といわれる。調節エレメントが、コアプロモーターの活性を調整する場合には、同様に、調節エレメントおよびコアプロモーターも作動可能に連結されている。
【0071】
本明細書で使用する場合、用語「およそ」または「約」は一般に、数に言及する場合、その数のいずれかの方向(それよりも大きいまたはそれよりも小さい)の5%の範囲に収まる数を含むと、別段の記載がないかまたはそうでないことが文脈から明らかでない限り(ただし、そのような数が可能な値の100%を超える場合を除く)理解される。範囲を記述する場合、終点は、範囲内に、別段の記載がない限りまたはそうでないことが文脈から明らかでない限り含まれる。
【0072】
本明細書で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、複数形の態様を、そうでないことが文脈から明らかに指示されない限り含む。したがって、例えば、「細胞(a cell)」という場合、単一の細胞、および2つまたはそれよりも多い細胞を含み、「薬剤(an agent)」という場合、1つの薬剤、および2つまたはそれよりも多い薬剤を含み、「抗体(an antibody)」という場合、複数のそのような抗体を含み、「あるフレームワーク領域」という場合、1つまたは複数のフレームワーク領域および当業者に公知のそれらの同等物への言及を含むこと等となる。
【0073】
別段の明確な記載がない限り、本明細書中の各実施形態は、あらゆる他の実施形態に準用される。
【0074】
標準的な技法を使用して、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養および形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)を行うことができる。酵素反応および精製技法は、製造元の規格に従って、または当技術分野で一般に行われるように、または本明細書の記載に従って行うことができる。これらおよび関連の技法および手順は一般に、当技術分野で周知の従来法に従ったり、本明細書全体を通して引用し、論じる多様な一般的な参考文献およびより詳細な参考文献の記載に従ったりして実施することができる。例えば、Sambrookら、2001年、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.;Current Protocols in Molecular Biology(Greene Publ.Assoc.Inc.、およびJohn Wiley & Sons,Inc.、NY、NY);Current Protocols in Immunology(John E.Coligan、Ada M.Kruisbeek、David H.Margulies、Ethan M.Shevach、Warren Strober編、2001年、John Wiley & Sons、NY、NY);またはその他の適切な現在のプロトコールについての刊行物、およびその他の同類の参考文献を参照されたい。特段の定義の提供がない限り、本明細書に記載する分子生物学、分析化学、合成有機化学ならびに医薬および薬学における化学に関連して利用する命名法や、それらの実験室の手順および技法は、当技術分野において周知であり、一般に使用されるものである。標準的な技法を使用して、組換え技術、分子生物学的、微生物学的、化学的合成、化学的分析、医薬の調製、製剤化および送達、ならびに患者の治療を行うことができる。
【0075】
本明細書で論じる任意の実施形態を、本発明の任意の方法、キット、試薬または組成物に関して実行することができ、逆もまた同様であることが企図される。さらに、本発明の組成物を使用して、本発明の方法を行うこともできる。
【0076】
II.概説
本明細書の実施例1~3に記載するように、本発明は、モノクローナル抗MLP抗体を提供し、これらの抗体は、(配列番号1に記載する)ヒト完全長ムチン様タンパク質「MLP」に高い親和性で結合し、ヒト対象に由来する血清試料中の卵巣がん、膵臓がん、結腸直腸がん、乳がん、虫垂がん、肺がん、腎臓がん、子宮頚がん、胆道がん、食道がん、上皮性皮膚がんおよび/またはその他のムチン分泌型のがんの存在を検出するためのバイオマーカーとして使用することが可能である。特定の実施形態では、本発明は、ヒトMLPの(配列番号4に記載する)C末端領域中のエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体を提供する。一部の実施形態では、本発明は、MLPのC末端領域であって、配列番号1のアミノ酸残基397~431を含むかまたはアミノ酸残基397~431からなる(配列番号5に記載する)C末端領域中のエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体を提供する。一部の実施形態では、本発明は、MLPのC末端領域であって、配列番号1のアミノ酸残基403~431を含むかまたはアミノ酸残基403~431からなる(配列番号6に記載する)C末端領域中のエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体を提供する。
【0077】
本明細書の記載によれば、主題の抗体は、組換えMLPに結合し、また、「gMLP」と呼ぶ、天然に存在するグリコシル化形態のMLPにも結合し、gMLPは、卵巣がん細胞、膵臓がん細胞等の上皮性がん細胞、および例えば、その他の腺癌細胞により分泌される。したがって、主題の抗体は、対象から得られた生物学的試料中のMLPの存在を検出するための診断方法、またはin vivoで対象においてMLPの存在を検出するための診断方法(例えば、画像診断)において、対象中の上皮性がん細胞(例えば、卵巣がん細胞または膵臓がん細胞)の存在または非存在についてのバイオマーカーとして使用することができる。
III.MLP抗原
【0078】
本明細書の実施例1に記載するように、本発明者らは、図1に示す、配列番号1に記載するMLPの完全長配列(またMUC-Bとも呼ぶ)をコードする、第7染色体上の単一のエクソン遺伝子を同定するに至り、この完全長配列は、431個のアミノ酸残基の長さを有し、(配列番号4に記載する)新規のC末端領域を含有する。本明細書の実施例1~3にさらに記載するように、発明者らは、MLPのC末端領域を抗原として使用して、本明細書に記載する診断および療法における方法において使用するのに適切な抗MLP抗体も生成するに至った。
【0079】
したがって、一態様では、本発明は、配列番号1に記載するアミノ酸配列または配列番号1に対して少なくとも90%、例として、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するそのバリアントを含むか、あるいは配列番号1に記載するアミノ酸配列または配列番号1に対して少なくとも90%、例として、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するそのバリアントからなる単離ポリペプチドを提供する。
【0080】
一実施形態では、本発明は、配列番号4に記載するアミノ酸配列または配列番号4に対して少なくとも90%、例として、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するそのバリアントを含むか、あるいは配列番号4に記載するアミノ酸配列または配列番号4に対して少なくとも90%、例として、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するそのバリアントからなる単離ポリペプチドを提供する。
【0081】
一実施形態では、本発明は、配列番号3に記載するアミノ酸配列または配列番号3に対して少なくとも90%、例として、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するそのバリアントを含むか、あるいは配列番号3に記載するアミノ酸配列または配列番号3に対して少なくとも90%、例として、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するそのバリアントからなる単離ポリペプチドを提供する。
【0082】
一実施形態では、本発明は、配列番号5に記載するアミノ酸配列または配列番号5に対して少なくとも90%、例として、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するそのバリアントを含むか、あるいは配列番号5に記載するアミノ酸配列または配列番号5に対して少なくとも90%、例として、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するそのバリアントからなる単離ポリペプチドを提供する。
【0083】
一実施形態では、本発明は、配列番号6に記載するアミノ酸配列または配列番号6に対して少なくとも90%、例として、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するそのバリアントを含むか、あるいは配列番号6に記載するアミノ酸配列または配列番号6に対して少なくとも90%、例として、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するそのバリアントからなる単離ポリペプチドを提供する。
【0084】
一実施形態では、本発明は、配列番号1に記載するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする、または配列番号1に対して少なくとも90%、例として、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するそのバリアントをコードする単離核酸分子を提供する。一実施形態では、本発明は、配列番号4に記載するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする、または配列番号4に対して少なくとも90%、例として、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するそのバリアントをコードする単離核酸分子を提供する。一実施形態では、単離核酸配列は、配列番号2を含むかまたは配列番号2からなる。一実施形態では、本発明は、配列番号5に記載するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする、または配列番号5に対して少なくとも90%、例として、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するそのバリアントをコードする単離核酸分子を提供する。一実施形態では、本発明は、配列番号6に記載するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする、または配列番号6に対して少なくとも90%、例として、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するそのバリアントをコードする単離核酸分子を提供する。
【0085】
一実施形態では、本発明は、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5または配列番号6のうちの少なくとも1つをコードする発現ベクターを提供する。一実施形態では、本発明は、配列番号2を含む発現ベクターを提供する。
一実施形態では、本発明は、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5または配列番号6のうちの少なくとも1つをコードする核酸を含む細胞を提供する。
IV.抗MLPモノクローナル抗体
【0086】
本明細書の実施例1および2に記載するように、発明者らは、MLPのC末端領域(配列番号4)を抗原として使用して、本明細書に記載する診断および療法における方法において使用するのに適切な抗MLP抗体を生成するに至った。実施例3に記載するように、いくつかの代表的な抗MLPモノクローナル抗体の可変軽鎖断片および可変重鎖断片を、クローニングし、配列決定するに至った。図10Aは、MLPのC末端領域に対して高い結合親和性を示すことが同定された3つの抗MLPクローンの可変重鎖領域のアミノ酸配列のアラインメントを示す図である。図10Bは、MLPのC末端領域に対して高い結合親和性を示すことが同定された3つの抗MLPクローンの可変軽鎖領域のアミノ酸配列のアラインメントを示す図である。
【0087】
上記で論じたMLP特異的モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列を整列させ、それらの抗体のどの位置においてどのアミノ酸が存在するかを決定することによって、MLP特異的抗体の置換可能な位置、およびそれらの位置へ置換することができるアミノ酸の選択が明らかになる。例示的な一実施形態では、重鎖および軽鎖のアミノ酸配列を整列させ、例示的な抗体の各位置におけるアミノ酸の同一性を決定する。(MLP特異的モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖の各位置において存在するアミノ酸を示す)表2および3ならびに図10Aおよび10Bに示すように、いくつかの置換可能な位置、およびそれらの位置へ置換することができるアミノ酸残基は、容易に同定される。
【表1】
【0088】
ある特定の実施形態では、主題のMLP特異的モノクローナル抗体は、表1に記載する重鎖可変ドメイン配列のうちのいずれかのドメインと実質的に同一(例えば、少なくとも約70%、少なくとも75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%もしくは少なくとも約96%同一、または少なくとも約97%同一、または少なくとも約98%同一、または少なくとも99%同一)である重鎖可変ドメインを有する。
【0089】
一部の実施形態では、主題のMLP特異的モノクローナル抗体は、配列番号7に記載するクローン11(VH)と実質的に同一(例えば、少なくとも約70%、少なくとも75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%もしくは少なくとも約96%同一、または少なくとも約97%同一、または少なくとも約98%同一、または少なくとも99%同一)である重鎖可変ドメインを有する。一部の実施形態では、主題のMLP特異的モノクローナル抗体は、配列番号7を含むかまたは配列番号7からなる重鎖可変ドメインを有する。
【0090】
一部の実施形態では、主題のMLP特異的モノクローナル抗体は、配列番号8に記載するクローンB(VH)と実質的に同一(例えば、少なくとも約70%、少なくとも75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%同一、少なくとも約97%同一、少なくとも約98%同一、または少なくとも99%同一)である重鎖可変ドメインを有する。一部の実施形態では、主題のMLP特異的モノクローナル抗体は、配列番号8を含むかまたは配列番号8からなる重鎖可変ドメインを有する。
【0091】
一部の実施形態では、主題のMLP特異的モノクローナル抗体は、配列番号9に記載するクローンC(VH)と実質的に同一(例えば、少なくとも約70%、少なくとも75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%もしくは少なくとも約96%同一、または少なくとも約97%同一、または少なくとも約98%同一、または少なくとも99%同一)である重鎖可変ドメインを有する。一部の実施形態では、主題のMLP特異的モノクローナル抗体は、配列番号9を含むかまたは配列番号9からなる重鎖可変ドメインを有する。
【0092】
一部の実施形態では、主題のMLP特異的モノクローナル抗体は、表1に記載する軽鎖可変ドメイン配列のうちのいずれかのドメインと実質的に同一(例えば、少なくとも約70%、少なくとも75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%もしくは少なくとも約96%同一、または少なくとも約97%同一、または少なくとも約98%同一、または少なくとも99%同一)である軽鎖可変ドメインを有する。
【0093】
一部の実施形態では、主題のMLP特異的モノクローナル抗体は、配列番号10に記載するクローン11(VL)と実質的に同一(例えば、少なくとも約70%、少なくとも75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%もしくは少なくとも約96%同一、または少なくとも約97%同一、または少なくとも約98%同一、または少なくとも99%同一)である軽鎖可変ドメインを有する。一部の実施形態では、主題のMLP特異的モノクローナル抗体は、配列番号10を含むかまたは配列番号10からなる軽鎖を有する。
【0094】
一部の実施形態では、主題のMLP特異的モノクローナル抗体は、配列番号11に記載するクローンB(VL)と実質的に同一(例えば、少なくとも約70%、少なくとも75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%もしくは少なくとも約96%同一、または少なくとも約97%同一、または少なくとも約98%同一、または少なくとも99%同一)である軽鎖可変ドメインを有する。一部の実施形態では、主題のMLP特異的モノクローナル阻害抗体は、配列番号11を含むかまたは配列番号11からなる軽鎖を有する。
【0095】
一部の実施形態では、主題のMLP特異的モノクローナル抗体は、配列番号12に記載するクローンC(VL)と実質的に同一(例えば、少なくとも約70%、少なくとも75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%もしくは少なくとも約96%同一、または少なくとも約97%同一、または少なくとも約98%同一、または少なくとも99%同一)である軽鎖可変ドメインを有する。一部の実施形態では、主題のMLP特異的モノクローナル抗体は、配列番号12を含むかまたは配列番号12からなる軽鎖を有する。
【0096】
一部の実施形態では、本発明のMLP特異的モノクローナル抗体は、表1に記載するような、重鎖または軽鎖をコードするヌクレオチド配列に高い厳密度の条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列(例えば、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33または配列番号34)がコードする重鎖または軽鎖を含有する。高い厳密度の条件は、0.1×SSC(15mMの生理食塩水/0.15mMのクエン酸ナトリウム)中での50℃またはそれより高い温度におけるインキュベーションを含む。
【0097】
一部の実施形態では、本発明のMLP特異的モノクローナル抗体は、1つまたは複数のCDR(CDR1、CDR2および/またはCDR3)を含む重鎖可変領域を有し、CDRは、下記の表2A~Gおよび表3に記載する重鎖可変配列のうちのいずれかのCDRのアミノ酸配列と実質的に同一(例えば、少なくとも約70%、少なくとも75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%もしくは少なくとも約96%同一、または少なくとも約97%同一、または少なくとも約98%同一、または少なくとも99%同一)であるか、あるいは下記の表2A~Gおよび表3に記載する重鎖可変配列のうちのいずれかのCDRのアミノ酸配列と比較する場合、同一の配列を含むかまたは同一の配列からなる。
【0098】
一部の実施形態では、本発明のMLP特異的モノクローナル抗体は、1つまたは複数のCDR(CDR1、CDR2および/またはCDR3)を含む軽鎖可変領域を有し、CDRは、下記の表4A~Fおよび表5に記載する軽鎖可変配列のうちのいずれかのCDRのアミノ酸配列と実質的に同一(例えば、少なくとも約70%、少なくとも75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%もしくは少なくとも約96%同一、または少なくとも約97%同一、または少なくとも約98%同一、または少なくとも99%同一)であるか、あるいは下記の表4A~Fおよび表5に記載する軽鎖可変配列のうちのいずれかのCDRのアミノ酸配列と比較する場合、同一の配列を含むかまたは同一の配列からなる。
【0099】
MLP特異的モノクローナル抗体の重鎖可変領域
【表2A】
【表2B】
【表2C】
【表2D】
【表2E】
【表2F】
【表2G】
【0100】
上記の表1および表2A~Gに列挙したモノクローナル抗体の重鎖可変領域(VH)配列を、下記に示す。
【0101】
KabatのCDR(31~35(H1)、50~66(H2)および95~102(H3))は、太字で示され、ChothiaのCDR(26~32(H1)、52~56(H2)および95~102(H3))は、下線で示される。
【化1】
【化2】
【表3】
【0102】
MLP特異的モノクローナル抗体の軽鎖可変領域
【表4A】
【表4B】
【表4C】
【表4D】
【表4E】
【表4F】
【0103】
上記の表1および表4A~Fに列挙したMLP特異的モノクローナル抗体の軽鎖可変領域(VL)配列を、下記に示す。
【0104】
KabatのCDR(24~34(L1)、50~56(L2)および89~97(L3))は、太字で示され、ChothiaのCDR(24~34(L1)、50~56(L2)および89~97(L3))は、下線で示される。これらの領域は、Kabatのシステムにより番号付けを行っても、Chothiaのシステムにより番号付けを行っても同じである。
【化3】
【表5】
【0105】
上記によれば、一態様では、本発明は、配列番号5または配列番号6中のエピトープなどのヒトムチン様タンパク質の配列番号4に記載するC末端領域中のエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合性断片を提供する。一実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。一実施形態では、前記抗体またはその抗原結合性断片は、上皮性がん細胞系から分泌されるグリコシル化ヒトMLPに結合することが可能である。一実施形態では、前記抗体またはその抗原結合性断片は、ELISAアッセイフォーマットにおいて、グリコシル化ヒトMLPに結合することが可能である。一実施形態では、前記抗体またはその抗原結合性断片は、10nM未満、例として、1nM未満のKでヒトMLPに結合する。一実施形態では、前記抗体またはその抗原結合性断片は、
(i)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121699を有するATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗体MLPクローン11、(ii)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121700を有するATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗体MLPクローンB、および(iii)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121701を有するATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗体MLPクローンCからなる群から選択される1つまたは複数の参照抗体により認識されるエピトープの少なくとも一部を認識する。
【0106】
一実施形態では、前記抗体は、配列番号7、配列番号8および配列番号9からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一)である配列を含むかまたはそうした配列からなる、重鎖の可変領域を含む。一実施形態では、前記抗体は、配列番号10、配列番号11および配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一)である配列を含むかまたはそうした配列からなる、軽鎖の可変領域を含む。
【0107】
別の態様では、本発明は、ヒトMLP(配列番号1または配列番号4)に結合する、単離されたMLP特異的モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片であって、(i)CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3配列を含む重鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域CDR-H3配列が、配列番号15、配列番号35、配列番号36または配列番号19に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含み、軽鎖可変領域CDR-L3配列が、配列番号23または配列番号27に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含み、単離された抗体はヒトMLP(配列番号1または配列番号4)に結合する、抗体またはその抗原結合性断片を提供する。一実施形態では、MLP特異的モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトMLPの配列番号4に記載するC末端領域(すなわち、配列番号1のアミノ酸279~431)中のエピトープ、例として、ヒトMLPの配列番号5に記載するC末端領域(すなわち、配列番号1のアミノ酸397~431)中のエピトープ、または例として、ヒトMLPの配列番号6に記載するC末端領域(すなわち、配列番号1のアミノ酸403~431)中のエピトープに特異的に結合する。
【0108】
一実施形態では、重鎖可変領域CDR-H2配列は、配列番号14、16または18に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含む。一実施形態では、重鎖可変領域CDR-H1配列は、配列番号13または17に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変を含む。一実施形態では、軽鎖可変領域CDR-L2配列は、配列番号22または配列番号26に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変を含む。一実施形態では、軽鎖可変領域CDR-L1配列は、配列番号21、24、25または28に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変を含む。
【0109】
一実施形態では、重鎖可変領域のCDR-H2は、配列番号20を含む。一実施形態では、配列番号20に記載するアミノ酸配列は、9位においてT(Thr)またはP(Pro)を含有する。一実施形態では、配列番号20に記載するアミノ酸配列は、10位においてS(Ser)またはT(Thr)を含有する。一実施形態では、重鎖可変領域のCDR-H3は、(表3に示すように)配列番号15を含む。一実施形態では、重鎖可変領域のCDR-H3は、(表3に示すように)配列番号35を含む。一実施形態では、重鎖可変領域のCDR-H3は、(表3に示すように)配列番号36を含む。
【0110】
一実施形態では、軽鎖可変領域のCDR-L1は、(表5に示すように)配列番号28を含む。一実施形態では、配列番号28に記載するアミノ酸は、9位においてT(Thr)を含有する。一実施形態では、配列番号28に記載するアミノ酸配列は、9位においてS(Ser)を含有する。
【0111】
一実施形態では、軽鎖可変領域のCDR-L2は、(表5に示すように)配列番号22を含む。
【0112】
一実施形態では、軽鎖可変領域のCDR-L3は、(表5に示すように)配列番号23を含む。
【0113】
一実施形態では、前記抗体またはその抗原結合性断片は、10nMまたはより低いKでMLP(配列番号1または配列番号4)に結合する。一実施形態では、それらの保存的改変配列は、重鎖可変領域のCDR領域内における組合せの合計が1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換および/または軽鎖可変領域の前記CDR領域内における組合せの合計が最大1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換を除いて、列挙した可変ドメインと同一である可変領域を含有する分子を含むかまたはそうした分子からなる。
【0114】
別の態様では、本発明は、ヒトMLP(配列番号1または配列番号4)に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片を提供し、ここで、抗体は、I)a)Kabatに従って番号付けを行うと、i)配列番号7、配列番号8または配列番号9の31~35からのアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H1、およびii)配列番号7、配列番号8または配列番号9の50~66からのアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H2、およびiii)配列番号7、配列番号8または配列番号9の95~102からのアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H3を含む重鎖可変領域、ならびにb)Kabatに従って番号付けを行うと、i)配列番号10、配列番号11または配列番号12の24~34からのアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L1、およびii)配列番号10、配列番号11または配列番号12の50~56からのアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L2、およびiii)配列番号10、配列番号11または配列番号12の89~97からのアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L3を含む軽鎖可変領域を含むか、またはII)それらのバリアントであって、前記重鎖可変領域の前記CDR領域内における組合せの合計が最大1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換および前記軽鎖可変領域の前記CDR領域内における組合せの合計が最大1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換を除いて、このこと以外は、前記可変ドメインと同一であるバリアントを含み、ここで、抗体またはそのバリアントは、ヒトMLP(配列番号1または配列番号4)に結合する。一実施形態では、前記バリアントは、Kabatに従って番号付けを行うと、前記重鎖可変領域の28、37、57、58、68、72、82Aまたは102位からなる群から選択される1つまたは複数の位置において、アミノ酸置換を含む。一実施形態では、前記バリアントは、Kabatに従って番号付けを行うと、前記軽鎖可変領域の27E、80または100位からなる群から選択される1つまたは複数の位置において、アミノ酸置換を含む。一実施形態では、前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号7を含む。一実施形態では、前記抗体の重鎖可変領域は、配列番号8を含むか、または配列番号8からなる。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号9を含むか、または配列番号9からなる。一実施形態では、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号10を含むか、または配列番号10からなる。一実施形態では、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号11を含むか、または配列番号11からなる。一実施形態では、前記抗体の軽鎖可変領域は、配列番号12を含むか、または配列番号12からなる。
【0115】
別の態様では、本発明は、ヒトMLP(配列番号1または配列番号4)に結合する単離モノクローナル抗体を提供し、ここで、抗体は、I)a)Kabatに従って番号付けを行うと、i)配列番号の31~35からのアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H1、およびii)配列番号7の50~66からのアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H2、およびiii)配列番号7の95~102からのアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H3を含む重鎖可変領域、ならびにb)i)配列番号10の24~34からのアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L1、およびii)配列番号10の50~56からのアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L2、およびiii)配列番号10の89~97からのアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L3を含む軽鎖可変領域を含むか、またはII)それらのバリアントであって、前記重鎖可変領域の前記CDR領域内における組合せの合計が最大1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換および前記軽鎖可変領域の前記CDR領域内における組合せの合計が最大1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換を除いて、このこと以外は、前記可変ドメインと同一であるバリアントを含み、ここで、抗体またはそのバリアントは、ヒトMLP(配列番号1または配列番号4)に結合する。一実施形態では、前記バリアントは、Kabatに従って番号付けを行うと、前記重鎖可変領域の28、37、57、58、68、72、82Aまたは102位からなる群から選択される1つまたは複数の位置において、アミノ酸置換を含む。一実施形態では、前記バリアントは、Kabatに従って番号付けを行うと、前記軽鎖可変領域の27E、80または100位からなる群から選択される1つまたは複数の位置において、アミノ酸置換を含む。一実施形態では、前記抗体の重鎖は、配列番号7、または配列番号7に対する少なくとも80%の同一性(例えば、配列番号7に対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の同一性)を含むそのバリアントを含む。一実施形態では、前記抗体の重鎖は、配列番号10、または配列番号10に対する少なくとも80%の同一性(例えば、配列番号10に対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の同一性)を含むそのバリアントを含む。一実施形態では、前記抗体は、10nMまたはより低いKDでMLP(配列番号1または配列番号4)に結合する。
【0116】
別の態様では、本発明は、ヒトMLP(配列番号1または配列番号4)に結合する単離モノクローナル抗体を提供し、ここで、抗体は、Kabatに従って番号付けを行うと、I)a)i)配列番号8の31~35からのアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H1、およびii)配列番号8の50~66からのアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H2、およびiii)配列番号8の95~102からのアミノ酸配列を含む重鎖CDR-H3を含む重鎖可変領域、ならびにb)i)配列番号11の24~34からのアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L1、およびii)配列番号11の50~56からのアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L2、およびiii)配列番号11の89~97からのアミノ酸配列を含む軽鎖CDR-L3を含む軽鎖可変領域を含むか、またはII)それらのバリアントであって、前記重鎖可変領域の前記CDR領域内における組合せの合計が最大1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換および前記軽鎖可変領域の前記CDR領域内における組合せの合計が最大1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換を除いて、このこと以外は、前記可変ドメインと同一であるバリアントを含み、ここで、抗体またはそのバリアントは、ヒトMLP(配列番号1または配列番号4)に結合する。一実施形態では、前記バリアントは、Kabatに従って番号付けを行うと、前記重鎖可変領域の28、37、57、58、68、72、82Aまたは102位からなる群から選択される1つまたは複数の位置において、アミノ酸置換を含む。一実施形態では、前記バリアントは、Kabatに従って番号付けを行うと、前記軽鎖可変領域の27E、80または100位からなる群から選択される1つまたは複数の位置において、アミノ酸置換を含む。
【0117】
一実施形態では、前記抗体の重鎖は、配列番号8、または配列番号8に対する少なくとも80%の同一性(例えば、配列番号8に対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の同一性)を含むそのバリアントを含む。一実施形態では、前記抗体の重鎖は、配列番号11、または配列番号11に対する少なくとも80%の同一性(例えば、配列番号11に対する少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の同一性)を含むそのバリアントを含む。一実施形態では、前記抗体は、10nMまたはより低いKDでMLP(配列番号1または配列番号4)に結合する。
【0118】
一実施形態では、前記抗MLP抗体またはその抗原結合性断片は、(i)CDR-H1(配列番号13)、CDR-H2(配列番号14)およびCDR-H3(配列番号15または配列番号35または配列番号36)を含む重鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-L1(配列番号21)、CDR-L2(配列番号22)およびCDR-L3(配列番号23)を含む軽鎖可変領域、ならびにそれらの保存的改変を含む。
【0119】
一実施形態では、前記抗MLP抗体またはその抗原結合性断片は、(i)CDR-H1(配列番号13)、CDR-H2(配列番号16)およびCDR-H3(配列番号15または配列番号35または配列番号36)を含む重鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-L1(配列番号24)、CDR-L2(配列番号22)およびCDR-L3(配列番号23)を含む軽鎖可変領域、ならびにそれらの保存的改変を含む。
【0120】
一実施形態では、前記抗MLP抗体またはその抗原結合性断片は、(i)CDR-H1(配列番号17)、CDR-H2(配列番号18)およびCDR-H3(配列番号19)を含む重鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-L1(配列番号25)、CDR-L2(配列番号26)およびCDR-L3(配列番号27)を含む軽鎖可変領域、ならびにそれらの保存的改変を含む。
【0121】
本明細書に開示する本発明の任意の態様の一実施形態では、前記抗体は、Fv、Fab、Fab’、F(ab)およびF(ab’)からなる群から選択される抗体断片である。一実施形態では、前記抗体は、単鎖分子である。一実施形態では、前記抗体は、IgG2分子である。一実施形態では、前記抗体は、IgG1分子である。一実施形態では、前記抗体は、IgG4分子である。一実施形態では、前記抗体は、ヒト化、キメラまたは完全ヒト抗体である。
【0122】
一部の実施形態では、前記抗体またはその抗原結合性断片は、(i)配列番号7に記載する重鎖可変領域および配列番号10に記載する軽鎖可変領域を含む参照抗体、例として、参照抗体クローン11、または(ii)配列番号8に記載する重鎖可変領域および配列番号11に記載する軽鎖可変領域を含む参照抗体、例として、参照抗体クローンB、または(iii)配列番号9に記載する重鎖可変領域および配列番号12に記載する軽鎖可変領域を含む参照抗体、例として、参照抗体クローンCのうちの少なくとも1つにより認識されるエピトープの少なくとも一部を特異的に認識する(表1を参照されたい)。
【0123】
上記によれば、本出願のある特定の好ましい実施形態に従う抗体またはその抗原結合性断片は、本明細書に記載する任意の抗体と、ヒトMLP(配列番号1または配列番号4)への結合について競合する抗体またはその抗原結合性断片であり得る。一部の実施形態では、主題の抗体は、(i)抗原に特異的に結合し、(ii)本明細書に開示するVHおよび/またはVLドメインを含むか、または本明細書に開示するCDR-H3またはこれらのうちのいずれかのバリアントを含む。結合メンバー間の競合は、例えば、ELISAを使用して、かつ/または特定のレポーター分子を1つの結合メンバーにタグ付けすることによって、in vitroで容易にアッセイすることができ、レポーター分子は、タグが付いてないその他の結合メンバーの存在下で検出することができ、同じエピトープまたはオーバーラップするエピトープに結合する、特異的に結合しているメンバーの同定が可能になる。したがって、ここで、特異的抗体またはその抗原結合性断片を提供し、こうした特異的抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトMLP(配列番号1または配列番号4)に結合する本明細書に記載する抗体、例として、表1に記載するクローン11、クローンBまたはクローンCのうちのいずれか1つと、ヒトMLP(配列番号1または配列番号4)への結合について競合する、抗体の抗原結合性部位を含む。
抗MLP抗体の結合親和性
【0124】
本発明の抗MLP抗体は、ヒトMLP(配列番号1または配列番号4)に、約100nM未満、または約50nM未満、または約25nM未満、または約10nM未満、または約5nM未満、または約1nM未満もしくはそれと等しい、または0.1nM未満もしくはそれと等しいK(解離定数)で結合する。抗MLP抗体の結合親和性は、本明細書の実施例1~3に記載するように、当技術分野で公知の適切な結合アッセイ、例として、ELISAアッセイを使用して決定することができる。
バリアントの抗MLP抗体
【0125】
上記に記載したモノクローナル抗体を改変して、ヒトMLPに特異的に結合するバリアントの抗体を提供することができる。バリアントの抗体は、上記に記載したモノクローナル抗体の少なくとも1つのアミノ酸に関する置換、付加または欠失により作製することができる。一般に、これらのバリアントの抗体は、上記に記載した抗体の一般的な特徴を有し、少なくとも、上記に記載した抗体のCDRを、またはある特定の実施形態では、上記に記載した抗体のCDRに非常に類似するCDRを含有する。
【0126】
好ましい実施形態では、バリアントは、親抗体の1つまたは複数の超可変領域中の1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。例えば、バリアントは、親抗体の1つまたは複数のCDR領域中に、少なくとも1つ、例えば、約1つ~約10個、例として、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、または少なくとも10個の置換、好ましくは、約2つ~約6つの置換を含むことができる。一実施形態では、前記バリアントは、Kabatに従って番号付けを行うと、前記重鎖可変領域の28、37、57、58、68、72、82Aまたは102位からなる群から選択される1つまたは複数の位置において、アミノ酸置換を含む。一実施形態では、前記バリアントは、Kabatに従って番号付けを行うと、前記軽鎖可変領域の27E、80または100位からなる群から選択される1つまたは複数の位置において、アミノ酸置換を含む。
【0127】
一部の実施形態では、バリアントの抗体は、前記重鎖可変領域の前記CDR領域内における組合せの合計が最大1、2、3、4、5または6つのアミノ酸置換および/または前記軽鎖可変領域の前記CDR領域内における組合せの合計が最大1、2、3、4、5または6つのアミノ酸置換を除いて、このこと以外は、表1に記載する主題の抗体の可変ドメインと同一であるアミノ酸配列を有し、ここで、抗体またはそのバリアントは、ヒトMLP(配列番号1または配列番号4)に特異的に結合する。
【0128】
通常、バリアントは、親抗体の重鎖または軽鎖の可変ドメイン配列に関して、少なくとも75%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも85%、より好ましくは、少なくとも90%、最も好ましくは、少なくとも95%、または少なくとも96%、または少なくとも97%、または少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。この配列に比した同一性または相同性は、本明細書では、配列を整列させ、必要であれば、最大のパーセント配列同一性を得るために、ギャップを導入した後に、親抗体の残基と同一である、候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージと定義する。(例えば、シグナルペプチド配列、リンカー配列、またはタグ、例として、HISタグ、等の)抗体配列のN末端、C末端または内部における伸長、欠失または挿入はいずれも、配列の同一性または相同性に影響を及ぼすと解釈してはならない。バリアントは、ヒトMLP(配列番号1、または配列番号4もしくは配列番号5もしくは配列番号6)に結合する能力を保持し、好ましくは、親抗体の特性よりも優れている特性を有する。例えば、バリアントは、MLP(配列番号1、または配列番号4もしくは配列番号5もしくは配列番号6)への結合について、より強力な結合親和性を有し得る。
【0129】
そのような特性を分析するためには、バリアントのFab形態を親抗体のFab形態と、またはバリアントの完全長形態を親抗体の完全長形態と比較することができる。本明細書において特に興味深いバリアントの抗体は、親抗体と比較する場合に、結合親和性の少なくとも約10倍、好ましくは、少なくとも約20倍、最も好ましくは、少なくとも約50倍の増強を示す抗体である。
【0130】
本発明の抗体を、望ましい特性を増強するように改変することができ、例として、抗体の血清半減期を制御することが望ましい場合がある。一般に、完全な抗体分子は、非常に長い血清残留性を有し、一方、(<60~80kDaの)断片は、腎臓を介して非常に迅速に濾過される。したがって、抗体の長期の作用が望ましい場合には、抗体は、好ましくは、完全な完全長IgG抗体(例として、IgG2またはIgG4)であり、一方、抗体のより短い作用が望ましい場合には、抗体断片が好ましい場合がある。
抗MLPモノクローナル抗体(クローン11、BおよびC)を産生するハイブリドーマ
【0131】
Budapest Treatyの条項に従って、2014年10月30日に、「ハイブリドーマMLPクローン11」と称されるハイブリドーマ細胞系を、American Type Culture Collection(「ATCC」、Manassas、VA、USA)に寄託した。ATCCにより、ハイブリドーマMLPクローン11に、ATCC指定番号PTA-121699が与えられた。この細胞系は、マウス脾臓細胞から誘導したマウスハイブリドーマ細胞系であり、「αMLPクローン11」と本明細書では呼ぶモノクローナル抗体を分泌する。
【0132】
Budapest Treatyの条項に従って、2014年10月30日に、「ハイブリドーマMLPクローンB」と称されるハイブリドーマ細胞系を、American Type Culture Collection(「ATCC」、Manassas、VA、USA)に寄託した。ATCCにより、ハイブリドーマMLPクローンBに、ATCC指定番号PTA-121700が与えられた。この細胞系は、マウス脾臓細胞から誘導したマウスハイブリドーマ細胞系であり、「αMLPクローンB」と本明細書では呼ぶモノクローナル抗体を分泌する。
【0133】
Budapest Treatyの条項に従って、2014年10月30日に、「ハイブリドーマMLPクローンC」と称されるハイブリドーマ細胞系を、American Type Culture Collection(「ATCC」、Manassas、VA、USA)に寄託した。ATCCにより、ハイブリドーマMLPクローンCに、ATCC指定番号PTA-121701が与えられた。この細胞系は、マウス脾臓細胞から誘導したマウスハイブリドーマ細胞系であり、「αMLPクローンC」と本明細書では呼ぶモノクローナル抗体を分泌する。
【0134】
したがって、一実施形態では、本発明は、ATCC指定番号PTA-121699、PTA-121700およびPTA-121701で寄託したハイブリドーマ細胞系の群から選択されるハイブリドーマ細胞系により産生される単離抗MLPモノクローナル抗体を提供する。
【0135】
別の実施形態では、本発明は、αMLPクローン11を分泌するハイブリドーマ細胞系、αMLPクローンBを分泌するハイブリドーマ細胞系、およびαMLPクローンCを分泌するハイブリドーマ細胞系からなる群から選択されるハイブリドーマ細胞系を提供する。
単鎖抗MLP抗体
【0136】
本発明の一実施形態では、抗MLP抗体は、単鎖抗体であり、適切なポリペプチドリンカーにより連結されている軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有する、遺伝学的に融合させた単鎖分子として遺伝子工学的に作製された分子と定義される。そのような単鎖抗体はまた、「単鎖Fv」または「scFv」抗体断片とも呼ぶ。一般に、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、リンカーにより、scFvが抗原結合に所望される構造を形成することが可能になる。MLPに結合するscFv抗体は、可変軽鎖領域を、可変重鎖領域のアミノ末端側または可変重鎖領域のカルボキシル末端側のいずれかに方向付けることができる。
ヒト化抗MLP抗体
【0137】
抗MLP抗体を、それらの能力を変化させることなく改変して、本明細書に記載する目的で使用することができる。最初の事項として、本明細書に記載する抗体は、組換えC末端MLP(配列番号4)を用いて免疫化したマウスを起源とすることに注目されたい。したがって、抗体は、マウス抗体中でフレームワーク領域中に通常見出されるアミノ酸残基を含有する、フレームワーク領域(相補性決定領域または「CDR」以外の領域)を有し、ヒト患者に投与する場合には、免疫原性を示す恐れがある。ヒトにおいて使用する場合に、マウス抗体の免疫原性を低下させるためには、マウスの抗体中の特定の位置において見出される残基を、ヒト抗体中の同じ位置においてより典型的に見出される残基で置き換えることによって、フレームワーク領域を遺伝子工学的に作製することが、当技術分野では一般的である。これらの形で遺伝子工学的に作製された抗体を、「ヒト化抗体」と呼び、これらの抗体は典型的には、in vivoでの使用に好ましく、その理由は、ヒト化抗体は、副作用を誘発するリスクがより低く、典型的には、血行中により長く留まることができるからである。抗体をヒト化する方法は、当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第6,180,377号、第6,407,213号、第5,693,762号、第5,585,089号および第5,530,101号に詳細に記載されている。
【0138】
さらに、可変領域のCDRが、抗体の特異性を決定するので、表2A~G、表3、表4A~Fおよび表5に記載するCDRをグラフトするかまたは遺伝子工学的に作製し、最適な抗体を得て、MLPへの結合についての特異性を当該の抗体に付与することができる。例えば、クローン11、BおよびCに由来するCDRを、ヒト抗体の公知の三次元構造のフレームワーク上にグラフトして(例えば、WO98/45322;Jonesら、Nature、321巻:522頁(1986年);Verhoeyenら、Science、239巻:1534頁(1988年);Riechmannら、Nature、332巻:323頁(1988年)、ならびにWinterおよびMilstein、Nature、349巻:293頁(1991年)を参照されたい)、ヒトに投与する場合、免疫原性応答が低下しているかまたは免疫原性応答を示さない抗MLP抗体を生成することができる。
抗MLP抗体を産生するための方法
【0139】
別の態様では、本発明は、特異的に、完全長ヒトMLPポリペプチド(配列番号1)内、例として、ヒトMLPのC末端部分(配列番号4)内のエピトープ、例として、ヒトMLPの配列番号5に記載するC末端領域(すなわち、配列番号1のアミノ酸397~431)中のエピトープ、または例として、ヒトMLPの配列番号6に記載するC末端領域(すなわち、配列番号1のアミノ酸403~431)中のエピトープを認識し、それに結合する抗体を産生する方法を提供し、前記方法は、配列番号1またはその部分を含むかまたは配列番号1またはその部分からなるポリペプチド、例として、配列番号4を含むかまたは配列番号4からなるポリペプチド、または例として、配列番号5を含むかまたは配列番号5からなるポリペプチド、または例として、配列番号6を含むかまたは配列番号6からなるポリペプチドを哺乳動物に投与するステップと、ヒトMLPを認識する抗体を選択するステップとを含む。
【0140】
多くの実施形態では、主題のモノクローナル抗体をコードする核酸を、宿主細胞内に直接導入し、細胞を、コードされる抗体の発現を誘発するのに十分な条件下でインキュベートする。
【0141】
一部の実施形態では、本発明は、本発明の抗MLP抗体またはその断片、例として、表1に記載する抗体またはその断片をコードする核酸分子を提供する。一部の実施形態では、本発明は、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33および配列番号34からなる群から選択される核酸配列を含む核酸分子を提供する。
【0142】
一部の実施形態では、本発明は、本発明のMLP特異的モノクローナル抗体をコードする核酸分子を含む細胞を提供する。
【0143】
一部の実施形態では、本発明は、本発明のMLP特異的モノクローナル抗体をコードする核酸分子を含む発現カセットを提供する。
【0144】
一部の実施形態では、本発明は、MLP特異的モノクローナル抗体を産生する方法であって、本発明のMLP特異的抗体をコードする核酸分子を含む細胞を培養するステップを含む方法を提供する。
【0145】
一実施形態では、ヒトMLPのC末端部分内のエピトープを特異的に認識する抗体を産生する方法は、αMLPクローン11を分泌するハイブリドーマ細胞系、αMLPクローンBを分泌するハイブリドーマ細胞系、およびαMLPクローンCを分泌するハイブリドーマ細胞系からなる群から選択されるハイブリドーマ細胞系を培養するステップを含む。
【0146】
ある特定の関連の実施形態によれば、本明細書の記載に従って1つまたは複数の構築物を含む組換え宿主細胞;任意の抗MLP抗体、そのCDR、VHまたはVLドメインまたは抗原結合性断片をコードする核酸;およびコードされる産物を産生する方法であって、産物を、それをコードする核酸から発現させるステップを含む方法を提供する。好都合には、発現は、核酸を含有する組換え宿主細胞を適切な条件下で培養することによって行うことができる。抗体またはその抗原結合性断片は、発現による産生に続いて、任意の適切な技法を使用して単離および/または精製し、次いで、所望するように使用することができる。
【0147】
例えば、発現カセットの発現に適切な任意の細胞、例えば、酵母、昆虫、植物等の細胞を、宿主細胞として使用することができる。多くの実施形態では、抗体を通常産生しない哺乳動物宿主細胞系を使用し、それらの例を、以下に示す:サル腎臓細胞(COS細胞)、SV40により形質転換されているサル腎臓CVI細胞(COS-7、ATCC:CRL 165 1);ヒト胚性腎臓細胞(HEK-293、Grahamら、J.Gen Virol.、36巻:59頁(1977年));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC:CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO、UrlaubおよびChasin、Proc. Natl. Acad. Sci.(USA)、77巻:4216頁(1980年));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather、Biol. Reprod.、23巻:243~251頁(1980年);サル腎臓細胞(CVI、ATCC:CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC:CRL-1587);ヒト子宮頚部癌細胞(HELA、ATCC:CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC:CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC:CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC:CCL 75);ヒト肝臓細胞(hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC:CCL 51);TRI細胞(Matherら、Annals N.Y. Acad. Sci、383巻:44~68頁(1982年));NIH/3T3細胞(ATCC:CRL-1658);およびマウスL細胞(ATCC:CCL-1)。当業者には、追加の細胞系も明らかになるであろう。多種多様な細胞系が、American Type Culture Collection、10801 University Boulevard、Manassas、Va.、20110-2209から入手可能である。
【0148】
核酸を細胞内に導入する方法は、当技術分野で周知である。適切な方法として、エレクトロポレーション、粒子銃技術、リン酸カルシウム沈殿、直接的なマイクロインジェクション等が挙げられる。方法の選択は一般に、形質転換される細胞の型、および形質転換が行われる状況(すなわち、in vitro、ex vivoまたはin vivo)に依存する。これらの方法についての一般的な考察を、Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology、第3版、Wiley & Sons、1995年に見出すことができる。一部の実施形態では、lipofectamine媒介遺伝子移入およびカルシウム媒介遺伝子移入の技術を使用する。
【0149】
主題の核酸を細胞内に導入したら、典型的には、細胞を、通例37℃で、時には選択下で、抗体の発現を可能にするのに適切な時間にわたってインキュベートする。大部分の実施形態では、抗体は典型的には、細胞が成長しつつある培地の上清内に分泌させる。
【0150】
哺乳動物宿主細胞においては、ウイルスに基づくいくつかの発現システムを利用して、主題の抗体を発現させることができる。アデノウイルスを発現ベクターとして使用する場合には、目的の抗体コード配列を、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモーターおよびトリパータイトリーダー配列にライゲーションすることができる。次いで、このキメラ遺伝子を、アデノウイルスゲノム中に、in vitroまたはin vivoでの組換えにより挿入することができる。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、領域E1またはE3)中への挿入により、感染宿主中で生存可能であり、抗体分子を発現させることが可能である組換えウイルスが得られるであろう。(例えば、LoganおよびShenk、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、81巻:355~359頁(1984年)を参照されたい)。適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーター等を含めることによって、発現の効率を増強することができる(Bittnerら、Methods in Enzymol.、153巻:51~544頁(1987年)を参照されたい)。
【0151】
組換え抗体を長期に高収率で産生するために、安定な発現を使用することができる。例えば、抗体分子を安定に発現する細胞系を、遺伝子工学的に作製することができる。ウイルスの複製開始点を含有する発現ベクターを使用するのではなく、宿主細胞を、免疫グロブリン発現カセットおよび選択マーカーを用いて形質転換することができる。外来DNAの導入に続いて、遺伝子工学的に作製した細胞は、強化した培地中で1~2日間成長させることができ、次いで、選択培地に切り換える。組換えプラスミド中の選択マーカーにより、選択に対する抵抗性が付与され、細胞が、プラスミドを染色体内に安定に組み入れ、成長して、増殖巣を形成することが可能になり、続いて、増殖巣のクローニングおよび拡大増殖を行って、細胞系を得ることができる。そのような遺伝子工学的に作製された細胞系は、抗体分子と直接的または間接的に相互作用する化合物のスクリーニングおよび評価において特に有用である場合がある。
【0152】
本発明の抗体分子が産生されたら、抗体分子は、免疫グロブリン分子の精製のための、当技術分野で公知の任意の方法、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換カラムクロマトグラフィー、親和性カラムクロマトグラフィー、特に、プロテインAに対する特異的抗原の親和性によるもの、およびサイズ排除カラムクロマトグラフィー(sizing column chromatography))、遠心分離、溶解性の差、またはタンパク質を精製するための任意のその他の標準的な技法により精製することができる。多くの実施形態では、抗体を、細胞から培養培地内に分泌させ、培養培地から収集する。例えば、シグナルペプチドをコードする核酸配列を、抗体または断片のコード領域に隣接させて含めることができる。そのようなシグナルペプチドは、主題の抗体の産生を促進するために、主題の抗体について本明細書に記載するアミノ酸配列の5’末端に隣接させて組み込むことができる。
【0153】
検出可能な部分で標識された抗MLP抗体
別の態様では、本発明は、検出可能な部分(すなわち、検出および/または定量化を可能にする部分)で標識された抗MLP抗体を提供し、これらの抗体を使用して、診断に適用することができる。本明細書で使用する場合、「検出可能な部分」は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的および/またはその他の物理的手段により検出可能な部分である。検出可能な部分は、当技術分野で周知の方法を使用して、本発明の抗体およびそれらの抗原結合性断片に、直接的に、かつ/または(例えば、化学的なまたは組換えの手段による共有結合性の連結を介して)間接的にカップリングさせることができる。これらの標識された抗MLP抗体は、例えば、in-vitroでのアッセイにおいて、生物学的試料中のMLPの存在を検出するため、またはin vivoでのアッセイ(例えば、画像診断)において、生存体内のMLPを発現している細胞の存在を検出するために使用することができる。
【0154】
多数の標識が利用可能であり、これらは一般に、以下のカテゴリーにグループ分けすることができる:
(a)放射性同位体、例として、35S、14C、125I、Hおよび131I。抗MLP抗体は、例えば、Current Protocols in Immunology、1巻および2巻、Gutigenら編、Wiley-Interscience、New York、N.Y.、Pubs.(1991年)に記載されている技法を使用して、放射性同位体で標識することができ、放射活性は、シンチレーションを計数することを使用して測定することができる。放射性同位体は、抗体に、直接的に、または中間の官能基を使用することによって間接的に結合させることができる。有用な中間の官能基には、キレート化剤、例として、エチレンジアミン四酢酸およびジエチレントリアミン五酢酸が含まれる。例えば、Shihら、Int J Cancer、46巻:1101頁(1990年)、および米国特許第5,057,313号を参照されたい。主題の抗MLP抗体および抗体断片はまた、in vivoでの診断の目的で、常磁性イオンおよび多様な放射線学的造影剤で標識することもできる。磁気共鳴画像法に特に有用である造影剤は、ガドリニウム、マンガン、ジスプロシウム、ランタンまたは鉄イオンを含む。追加の薬剤は、クロム、銅、コバルト、ニッケル、レニウム、ユーロピウム、テルビウム、ホルミウムまたはネオジムを含む。主題の抗MLP抗体およびそれらの断片はまた、超音波造影剤/増強剤にもコンジュゲートさせることができる。例えば、1つの超音波造影剤は、リポソームである。
【0155】
(b)蛍光標識、例として、希土類キレート(ユーロピウムキレート)、またはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、リサミン、フィコエリトリンおよびTexas Redが利用可能である。蛍光標識は、例えば、上記のCurrent Protocols in Immunologyに開示されている技法を使用して、抗体にコンジュゲートさせることができる。蛍光は、蛍光光度計を使用して定量化することができる。
【0156】
(c)多様な酵素-基質標識が利用可能である。酵素は一般に、発色基質の化学変化を触媒し、この変化を、多様な技法を使用して測定することができる。例えば、酵素は、基質における色の変化を触媒することができ、これを、分光光学的に測定することができる。代わって、酵素は、基質の蛍光または化学発光を変える場合もある。蛍光の変化を定量化するための技法については、上記に記載した。化学発光基質は、化学反応により電子的に励起され、次いで、光を放射することができ、この光を(例えば、化学発光計を使用して)測定することができ、またはこの光から、エネルギーを蛍光アクセプターに供与させることができる。酵素標識の例として、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタルアジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ、例として、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)、アルカリホスファターゼ、O-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖類オキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環オキシダーゼ(例として、ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼ等が挙げられる。酵素を抗体にコンジュゲートするための技法は、O’Sullivanら、Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay、Methods in Enzyme(LangoneおよびH.Van Vunakis編)、Academic Press、New York、73巻:147~166頁(1981年)に記載されている。
【0157】
酵素-基質の組合せの例として、例えば、
(i)西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)と、基質としての過酸化水素(この場合、過酸化水素は、色素前駆体(例えば、オルトフェニレンジアミン(OPD)または3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する)、
(ii)アルカリホスファターゼ(AP)と、発色基質としてのpara-ニトロフェニルリン酸、および
(iii)β-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)と、発色基質(例えば、p-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)または蛍光発光基質の4-メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトシダーゼ
が挙げられる。
【0158】
多数のその他の酵素-基質の組合せが、当業者に利用可能である。
【0159】
一部の実施形態では、標識を、抗MLP抗体と間接的にコンジュゲートさせる。当業者であれば、これを行うための多様な技法を理解するであろう。例えば、抗MLP抗体を、ビオチンとコンジュゲートさせることができ、上記で言及した3つの広範なカテゴリーの標識のうちのいずれかを、アビジンとコンジュゲートさせることができ、また、逆もまた同様である。ビオチンは、アビジンに選択的に結合し、したがって、この間接的な様式で、標識を、抗体とコンジュゲートさせることができる。代わって、標識と抗体との間接的なコンジュゲーションを行うために、抗MLP抗体を、小型のハプテン(例えば、ジゴキシン)とコンジュゲートさせ、上記で言及した種々の型の標識のうちの1つを、抗ハプテン抗体(例えば、抗ジゴキシン抗体)とコンジュゲートさせる。こうして、標識と抗体との間接的なコンジュゲーションを行うことができる。
【0160】
別の実施形態では、抗MLP抗体は、標識されておらず(すなわち、裸である)、その存在を、抗MLP抗体に結合する、標識された抗体を使用して検出することができる。
治療剤にカップリングされている抗MLP抗体
【0161】
別の態様では、本発明は、治療剤にカップリングされている抗MLP抗体を提供し、これらの抗体をin vivoで使用して、MLPを発現している細胞に、治療剤分子を標的化することができる。例えば、抗MLP抗体および治療剤部分を含むイムノコンジュゲートを使用して、MLP抗原を担持するがん細胞の成長および増殖を阻害することができる。本明細書で使用する場合、用語「治療剤」は、抗体部分、すなわち、抗体または抗体の断片または部分断片と、別途、同時または順次に投与されるか、あるいは抗体部分にコンジュゲートされて投与され、例えば、上皮性がん等の病態に陥っている対象の治療に有用である化合物、分子または原子である。治療剤の例として、抗体、抗体断片、細胞傷害剤、薬物、毒素、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫調節剤、抗血管新生剤、ホウ素化合物、光活性剤または光活性色素、放射性同位体;ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、ゲムシタビン、エピポドフィロトキシン、タキサン等の化学療法薬;抗代謝剤、アルキル化剤、抗生物質、SN-38、COX-2阻害剤、抗有糸分裂剤;抗血管新生性およびアポトーシス性の薬剤、特に、ドキソルビシン、メトトレキセート、タキソール、CPT-11、カンプトテシン(camptothecan);プロテアソーム(proteosome)阻害剤、mTOR阻害剤、HDAC阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、ならびに抗がん剤のこれらおよびその他のクラスに属するその他の治療剤が挙げられる。その他の有用ながん化学療法薬には、ナイトロジェンマスタード、アルキルスルホネート、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、COX-2阻害剤、抗代謝剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、白金配位錯体、mTOR阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、HDAC阻害剤、カンプトテシンおよびホルモンが含まれる。適切な化学療法剤が、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、第19版(Mack Publishing Co.、1995年)、およびGOODMAN AND GILMAN’S THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS、第7版(MacMillan Publishing Co.、1985年)、ならびにこれらの刊行物の改訂版に記載されている。実験薬等のその他の適切な化学療法剤は、当業者に公知である。
【0162】
本明細書に開示する抗MLP抗体、抗体断片および融合タンパク質はいずれも、1つまたは複数の治療剤と、当技術分野で公知の多様な技法を使用してコンジュゲートさせることができる。1つまたは複数の治療剤または診断剤(例えば、検出可能な部分)を、例えば、抗体のFc領域中の炭水化物部分に薬剤をコンジュゲートさせることによって、抗体、抗体断片または融合タンパク質それぞれにつなぐことができる。Fc領域が存在しない(例えば、特定の抗体断片を用いる)場合には、炭水化物部分を、抗体または抗体断片のいずれかの、軽鎖可変領域内に導入することが可能であり、これに、治療剤または診断剤をつなぐことができる。例えば、Leungら、J Immunol.、154巻:5919頁(1995年);Hansenら、米国特許第5,443,953号(1995年)、Leungら、米国特許第6,254,868号を参照されたい;それぞれの特許の実施例のセクションが、参照により本明細書に組み込まれる。
【0163】
ペプチドを、抗体の炭水化物部分を介して、抗体の構成要素にコンジュゲートするための方法は、当業者に周知である。例えば、Shihら、Int J Cancer、41巻:832頁(1988年);Shihら、Int J Cancer、46巻:1101頁(1990年);および実施例のセクションが参照により本明細書に組み込まれる、Shihら、米国特許第5,057,313号を参照されたい。一般的な方法は、酸化されている炭水化物部分を有する、抗体の構成要素を、少なくとも1つの遊離アミン官能基を有し、複数の治療剤、例として、ペプチドまたは薬物が充填されている担体ポリマーと反応させるステップを含む。この反応により、最初のシッフ塩基(イミン)連結が得られ、これを、二級アミンへの還元により安定化させて、最終的なコンジュゲートを形成することができる。
【0164】
別の例として、治療剤または診断剤を、ジスルフィド結合の形成を介して、還元されている、抗体の構成要素のヒンジ領域につなぐことができる。代替の例として、ヘテロ二官能性クロスリンカー、例として、N-サクシニル3-(2-ピリジルジチオ)プロプリオネート(SPDP)を使用しても、そのような薬剤を抗体の構成要素につなぐことができる。Yuら、Int.J.Cancer、56巻:244頁(1994年)。そのようなコンジュゲーションのための一般的な技法は、当技術分野で周知である。例えば、Wong、Chemistry of Protein Conjugation and Cross-linking(CRC Press、1991年);Upeslacisら、「Modification of Antibodies by Chemical Methods」、Monoclonal Antibodies:Principles and Applications、Birchら(編)、187~230頁(Wiley-Liss,Inc.、1995年);Price、「Production and Characterization of Synthetic Peptide-Derived Antibodies」、Monoclonal Antibodies:Production,Engineering and Clinical Application、Ritterら(編)、60~84頁(Cambridge University Press、1995年)を参照されたい。
【0165】
V.抗MLP抗体を使用して上皮がん(例えば、卵巣がんおよび/または膵臓がん)を検出する方法
本明細書に記載のとおり本発明者らは、初期上皮がん(例えば、卵巣がんおよび/または膵臓がん)を検出するための診断アッセイにおける使用のために好適である抗MLP抗体を生成した。卵巣がん腫瘍型、リスク因子、診断および分類の簡潔な概要を下に示す。
【0166】
1.卵巣がん腫瘍型、リスク因子、診断および分類の概要
卵巣腫瘍型
卵巣腫瘍は、良性腫瘍と悪性腫瘍とに分けられる。良性腫瘍は、異常な細胞増殖であり、局所に留まり、身体の他の器官に伝播しない。通常症状は無い。しかし第2の種類の腫瘍はがん性(悪性)であり、身体の他の部分に転移できる。卵巣腫瘍は、それらの細胞の由来によって、下の表6に示すとおり上皮腫瘍、間質腫瘍および生殖細胞腫瘍に組織病理学的に分類される。
【表6】
【0167】
表6.さまざまな型の卵巣腫瘍の発生率および発症年齢群。胃、結腸および乳房等の身体の他所への二次転移による転移性腫瘍1%(卵巣に腫瘍を有する)(Chauhanら、Jour Ovarian Res 2巻:212~215頁、2009年)。
【0168】
上皮腫瘍は、すべての卵巣腫瘍の90%を占める(Chauhanら、Jour Ovarian Res 2巻:212~215頁、2009年;Nguyenら、Women’s Health、9巻:171~187頁、2013年)。大部分の上皮腫瘍は良性腫瘍、例えば漿液性腺腫およびブレンナー腫瘍である。悪性上皮腫瘍は、それらが後期に診断されることから、症例のおよそ90%の患者への現実の脅威である。これらの腫瘍の発生率は閉経後に高い(Chauhanら、Jour Ovarian Res 2巻:212~215頁、2009年;Nguyenら、Women’s Health、9巻:171~187頁、2013年。一部の上皮卵巣腫瘍は、遅い増殖および低い伝播率を有する腫瘍であり、低悪性度(LMP腫瘍)と考えられる。これらのLMP腫瘍は、この型の腫瘍が顕微鏡下で明確には見られないことから境界型上皮卵巣がんとしても公知である(Altchekら、 Diagnosis and Management of Ovarian Disorders、第2版、San Diego CA、Academic Press、2003年)。
【0169】
生殖細胞は、卵子の産生に関与する卵巣に位置付けられている。生殖細胞腫瘍は、胚細胞から生じ、すべての卵巣腫瘍の約3%を占める(Chauhanら、Jour Ovarian Res 2巻:212~215頁、2009年)。それらは大部分が悪性ではなく良性である。これらの腫瘍の発生率は、若年の女性においてより高い。例として成熟奇形腫および内胚葉洞腫瘍が挙げられる(Altchekら、Diagnosis and Management of Ovarian Disorders、第2版、San Diego CA、Academic Press、2003年)。
【0170】
間質細胞腫瘍は、卵巣を合わせて保持している結合組織に由来し、これらの細胞もプロゲステロンおよびエストロゲン等のホルモンを産生する機能を有する(Altchekら、Diagnosis and Management of Ovarian Disorders、第2版、San Diego CA、Academic Press、2003年)。これらの腫瘍はすべての卵巣腫瘍の6%を占める(Chauhanら、Jour Ovarian Res 2巻:212~215頁、2009年)。これらは、若年および閉経後の両方の年齢群を冒し、顆粒膜卵胞膜腫瘍(granulose theca tumor)および顆粒膜細胞腫瘍(granulose cell tumors)を含む(Altechekら、2003年)。
卵巣がんについてのリスク因子
【0171】
卵巣がんについてのリスク因子として、子宮内膜症(Modugnoら、American J of Obstetrics and Gynecology 191巻:733~740頁、2004年)、卵巣嚢胞(Alteckら、2003年)、年齢(閉経後、65歳またはそれを超える年齢の女性についてリスクの増加を伴う(Yancikら、Cancer 71巻:517~523頁、1993年;Guppyら、2005年)、喫煙(Jordanら、Gynecologic Oncology 103巻:1122~1129頁、2006年)および肥満(McLemoreら、Cancer Nursing 32巻:281頁、2009年)が挙げられる。同様に、乳がん1型(BRCA1)での染色体17qに位置する変異および/または乳がん2型(BRCA2)での染色体13qに位置する変異は、乳がんおよび卵巣がんについての高リスク因子と考えられる(Nguyenら、Women’s Health、9巻:171~187頁、2013年)。
卵巣がんの診断および分類
【0172】
卵巣がんの早期診断は、卵巣がんの最初の症状が非局在性の軽度の痛みであることから困難である。卵巣悪性腫瘍の症状は、後期で明確になり、食欲不振および体重減少、背中および骨盤の痛み、閉経後の膣出血、頻尿、便秘または下痢ならびに腹部の膨満が挙げられる(American Cancer Society、How is Ovarian Cancer Diagnosed、http:cancer.org/cancer/ovariancancer/detailedguide/ovarian-cancer-diagnosis、2013年4月22日にアクセス)。
【0173】
卵巣がんは、骨盤の身体診察、医用画像(すなわち、超音波、コンピューター断層撮影(CTスキャン)、磁気共鳴画像法(MRI)ならびに後期卵巣がんと関連がある種々のバイオマーカー(すなわち、CA-125、IL-6、IL-8、血清アミロイドA(SAA)およびC反応性タンパク質(CRP)を測定するための血液検査によって決定される腫瘍の存在に基づいて診断される。例えばOvPlex(商標)は、原発卵巣腫瘍を除去するための手術を既に受けた症候性の女性において卵巣がんの検出のための上に列挙したマーカーの組合せを使用する商業的に入手できるELISAキットである。OvPlex(商標)は、炎症マーカーIL-6、IL-8および肝臓急性期マーカーSAAおよびCRPが検出可能レベルに上昇するために強い刺激を必要とすることから、卵巣がんのための早期検出キットではない(2013年4月22日にアクセスされた、Healthlinx, O.、What is the OvPlexTM Diagnostic、http:healthlinx.com.au/ovplex-tmを参照されたい)。
卵巣がんの早期検出のために研究されたMLP以外のバイオマーカー
【0174】
多数の研究が、卵巣悪性腫瘍の早期検出のためのバイオマーカーを同定するために実行されている(Costaら、Clinics 64巻:641~644頁、2009年)。表7は、卵巣がんの早期検出のために研究された数個のバイオマーカーの状況を要約している。ムチンバイオマーカーCA-125とは対照的に、MLP発現は、正常組織および良性腫瘍では非存在である。
【表7】
分類
【0175】
卵巣がんには4つのステージがある。ステージIは卵巣内に限定されているがんを含む。一方または両方の卵巣に生じる場合がある。卵巣がんは、がんが骨盤への進展または転移を伴う一方または両方の卵巣を巻き込んで増殖している場合にステージIIを与えられる。第3および第4ステージでは骨盤を超える疾患の進展があり、ステージIIIの場合は腹腔内からリンパ節、またはステージIVの場合では腹腔を超える遠隔転移を含む(Chauhanら、Jour Ovarian Res 2巻:212~215頁、2009年;Guppyら、Clinial Oncology 17巻:339~411頁、2005年)。
【0176】
卵巣がんが早期(ステージI)で診断されると、5年生存率は60%から90%の範囲であり、一方ステージIIで診断されると5年生存率は37%から66%の範囲に減少する。ステージIIIで診断された卵巣がん患者は、5%から50%の範囲の5年生存率を有し、ステージIVで診断された者は0%~17%の間の5年生存率を有する(Stimpflら、Cancer Letters 145巻:133~141頁、1999年)。
治療
【0177】
卵巣がんの標準治療は、卵巣の外科的除去に続く、典型的にはプラチナベース薬物およびパクリタキセルの併用である化学療法である(Cohenら、Jour of Molecular Medicine、91巻(3号):357~368頁、2013年を参照されたい)。放射線療法は、がん細胞および転移が外科的除去の際に見逃された症例において使用される(Sornsukolratら、Chotmaihet Thangphaet 95巻:1141~1148頁、2012年)。診断時の腫瘍容積も、無進行期間および生存期間の延長に関して原発腫瘍および二次腫瘍の両方に対する手術の有効性を判定することにおける重要な予後因子である(Weidnerら、Modern Surgical Pathology 2、Saunders/Elsevier、2009年)。
【0178】
2.上皮がん(例えば、卵巣がんまたは膵臓がん)の存在に対するバイオマーカーとしてのMLP抗原の存在のin vitroアッセイ
一態様では本発明の抗MLP抗体は、MLP抗原の存在について被検対象から得られた生物学的試料をスクリーニングするためのin vitroイムノアッセイにおいて使用され、MLPの存在または健常対象由来の対照または参照標準と比較したMLPの量の増加は、対象が上皮がん(例えば、卵巣がんまたは膵臓がん)を有するまたは上皮がん(例えば、卵巣がんまたは膵臓がん)を発症するリスクが増加していることを示す。被検対象は、明らかに健常な対象、または上皮がんを発症するリスクがある対象または、早期の上皮がんを有すると疑われる対象、または卵巣がん、膵臓がん、結腸直腸がん、乳がん、虫垂がん、肺がん、腎臓がん、子宮頸がん、胆管がん、食道がん、上皮皮膚がん等の上皮がんおよび/または他のムチン分泌型のがんを罹患している対象であってよい。そのようなin vitroイムノアッセイでは、抗MLP抗体またはその抗原結合性断片は、ネイキッドであってよく、または本明細書に記載される検出可能な部分で標識されていてよく、液相中でまたは下に記載される基材に結合されて利用されてよい。宿主免疫応答を考慮しないことから、in vitroアッセイの目的のためにマウス、キメラ、ヒト化またはヒト等の任意の種類の抗体は利用されてよい。
【0179】
本開示の抗体は、競合的結合アッセイ、直接または間接サンドイッチアッセイおよび免疫沈降アッセイ等の任意の公知の診断用イムノアッセイ法において使用することができる(例えば、Zola、Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques、147~158頁(CRC Press. Inc.、1987年)を参照されたい。
【0180】
競合的結合アッセイは、限られた量の抗体との結合について被検試料分析物と競合する標識標準物の能力に依存する。被検試料中のMLPの量は、抗体に結合する標準物の量と反比例する。結合する標準物の量の決定を促進するために、一般に抗体は競合前または後は不溶性であり、そのため抗体に結合している標準物および分析物は、未結合のままである標準物および分析物から好都合に分離され得る。
【0181】
サンドイッチアッセイは、2つの抗体の使用を含み、検出されるタンパク質(例えば、MLP)の異なる免疫原性部分またはエピトープにそれぞれ結合できる。サンドイッチアッセイでは、被検試料分析物は、固体支持体に固定化された第1の抗体(例えば抗MLP抗体)によって結合され、その後二次抗体が分析物に結合し、それにより不溶性の三部の複合体を形成する。二次抗体は、それ自体が検出可能な部分(直接サンドイッチアッセイ)で標識されてよく、または検出可能な部分で標識された抗免疫グロブリン抗体を使用して測定されてよい(間接サンドイッチアッセイ)。例えばサンドイッチアッセイの1つの好ましい種類は、検出可能な部分が酵素であるELISAアッセイである。
【0182】
免疫組織化学のために組織試料は、新鮮もしくは冷凍であってよく、またはパラフィンに包埋され、例えばホルマリン等の保存剤を用いて固定されてよい。
【0183】
一実施形態では本発明の抗MLP抗体は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して生物学的試料中のMLP抗原の存在を検出するために使用される(例えば、Goldら、J Clin Oncol. 24巻:252~58頁、2006年を参照されたい)。
【0184】
直接競合的ELISAでは、純粋なまたは半純粋な抗原調製物は、検査される体液または細胞抽出物において不溶性である基材に結合され、多量の検出可能に標識された可溶性抗体が基材結合抗原と標識抗体との間に形成されたバイナリー複合体の検出および/または定量を可能にするように加えられる。
【0185】
対照的に「2部位ELISA」または「サンドイッチアッセイ」としても公知である「二重決定因子(double-determinant)」ELISAは、少量の抗原を必要とし、アッセイは抗原の大規模な精製を必要としない。したがって二重決定因子ELISAは、臨床試料中の抗原の検出のための直接競合的ELISAに好ましい。例えば、生検検体中のc-mycオンコプロテインの定量のための二重決定因子ELISAの使用を参照されたい。Fieldら、Oncogene 4巻:1463頁(1989年);Spandidosら、AntiCancer Res. 9巻:821頁(1989年)。二重決定因子ELISAでは、多量の未標識モノクローナル抗体または抗体断片(「捕捉抗体」)が基材(例えば固体支持体)に結合され、被検試料は捕捉抗体と接触するようにされ、多量の検出可能に標識された可溶性抗体(または抗体断片)が捕捉抗体、抗原と標識抗体との間で形成された三元複合体の検出および/または定量を可能にするように加えられる。一実施形態では基材(例えば、固体支持体)に結合された捕捉抗体は、MLPのC末端部分のエピトープに結合する本明細書に開示の抗MLP抗体またはその抗原結合性断片である。二重決定因子ELISAを実施するための方法は、当業者により周知である。例えば、Fieldら、Oncogene 4巻:1463頁(1989年);Spandidosら、AntiCancer Res. 9巻:821頁(1989年)およびMooreら、Methods in Molecular Biology 10巻:273~281頁(The Humana Press, Inc. 1992年)を参照されたい。
【0186】
二重決定因子ELISAでは、可溶性抗体または抗体断片は、捕捉抗体によって認識されるエピトープとは異なるMLPエピトープに結合しなければならない。二重決定因子ELISAは、MLP抗原が体液(例えば血液、血漿または血清)または生検試料等の被検生物学的試料中に存在するかどうかを確認するために実施されてよい。代替的にアッセイは、体液の臨床試料中に存在するMLP抗原の量を定量するために実施されてよい。定量的アッセイは、精製されたMLP抗原の希釈物を含むことによって実施することができる。
【0187】
別の実施形態では本発明の抗MLP抗体は、放射免疫アッセイ(RIA)を使用して被検物質(例えば対象から得られた生物学的試料)中のMLP抗原の存在を検出するために使用される。例えばRIAの一形態では、被検生物学的試料は放射標識MLP抗原の存在下で抗MLP抗体と混合される。本方法では被検物質の濃度は、抗MLP抗体に結合した標識MLP抗原の量と反比例し、遊離、標識MLP抗原の量と直接関連する。他の好適なスクリーニング方法は当業者に容易に明らかになる。
【0188】
in vitroイムノアッセイは、少なくとも1つの抗MLP抗体またはその抗原結合性断片が基材(例えば、固相担体)に結合して実施されてよい。例えば、抗MLPモノクローナル抗体またはその断片は、モノクローナル抗体をポリマーコートビーズ、プレート、チューブまたはセラミックもしくは金属チップ等の不溶性基材に連結するためにアミノデキストラン等のポリマーに結合されてよい。一実施形態では基材は、ELISA方法(例えばマルチウェルマイクロタイタープレート)における使用のために好適である。したがって試料中のMLPのレベルの決定は、ELISAベースアッセイ、化学的または酵素的タンパク質決定法等の商業的に入手できる方法によって決定できる。
【0189】
一実施形態では本開示の方法は、患者から単離された試料中のMLPのレベルを決定するために固体デバイスを使用する。固体デバイスは、少なくとも1つの抗MLP抗体が活性化表面の別個の領域に固定化された活性化表面を有する基材を含む。好ましくは、固体デバイスは、患者から単離された試料中の目的のバイオマーカーのレベルが、試料中の目的のさらなるバイオマーカーのレベルと同時に決定され得る多分析物アッセイを実施できる。本実施形態では固体デバイスは、基材に共有結合された望ましい抗体をそれぞれ保持している多様な別個の反応部位を有し、反応部位間の基材の表面は標的バイオマーカーに関して不活性である。したがって固体の多分析物デバイスは、非特異的結合をほとんどまたは全く示さない場合がある。例えば本開示の方法における使用のために好適な固体デバイスは、Biochip Array Technology system(BAT)(Randox Laboratories Limitedから入手可能)である。
【0190】
他の好適なin vitroアッセイは、当業者に容易に明らかになる。検出可能に標識された抗MLP抗体およびMLP抗原の具体的な濃度、インキュベーションの温度および時間、ならびに他のアッセイ条件は、試料中のMLP抗原の濃度、試料の性質等を含む種々の因子に応じて変更されてよい。抗MLP抗体の試料の結合活性は、周知の方法により決定されてよい。当業者は、日常的な実験を使用することによってそれぞれの決定のための有効かつ最適なアッセイ条件を決定できる。
【0191】
別の実施形態では主題の抗体およびその抗原結合性断片は、組織学的検体(例えば生検試料)から調製された組織セクション中のMLP抗原の存在を検出するために使用されてよい。そのようなin situ検出は、MLP抗原の存在を判定するため、および検討する組織中のMLP抗原の分布を判定するために使用されてよい。in situ検出は、検出可能に標識された抗MLP抗体を組織セクションに適用することによって達成され得る。in situ検出の一般的技術は、当業者に周知である。例えば、Ponder、「Cell Marking Techniques and Their Application」、Mammalian Development: A Practical Approach 113~38頁 Monk (編) (IRL Press 1987年)を参照されたい。
【0192】
主題の抗MLP抗体およびその抗原結合性断片は、本明細書に記載される任意の適切な検出可能な部分で標識されてよい。好適な検出可能な部分の例として、放射性同位元素、酵素、蛍光標識、色素、色素原、化学発光標識、生物発光標識および常磁性標識が挙げられる。上に記載されるin vitroおよびin situ検出方法は、生物学的試料(例えば血清試料)中のMLP抗原の検出、または卵巣がん、膵臓がん、結腸直腸がん、乳がん、虫垂がん、肺がん、腎臓がん、子宮頸がん、胆管がん、食道がん、上皮皮膚がん等の上皮がんおよび/または他のムチン分泌型のがんの存在等の病理学的状態の診断またはステージ分類を補助するために使用されてよい。例えばそのような方法は、卵巣がん、膵臓がん、結腸直腸がん、乳がん、虫垂がん、肺がん、腎臓がん、子宮頸がん、胆管がん、食道がん、上皮皮膚がんおよび/または他のムチン分泌型のがん等のMLP抗原を発現する腫瘍を検出するために使用されてよい。
【0193】
前述により一態様では本発明は、被検対象に由来する生物学的試料中のMLPの存在または量を検出する方法であって、(a)in vitroでのイムノアッセイにおいて、被検対象に由来する生物学的試料を抗MLP抗体またはその抗原結合性断片と接触させるステップと、(b)前記抗体の結合の存在または非存在を検出するステップであって、前記結合の存在が、前記試料中のMLPの前記存在を示す、ステップとを含み、前記抗体またはその断片が、MLPの配列番号4に記載するC末端領域中のエピトープに結合する、方法を提供する。一実施形態では前記抗MLP抗体は、検出可能な部分で標識されており、ステップ(b)は、前記検出可能な部分の前記存在を検出することを含む。
【0194】
一実施形態では方法は、ステップ(b)に従って検出したMLPの前記量を、参照標準または健常対象に由来する対照試料と比較するステップをさらに含み、前記対照試料(または参照標準)と比較する場合の、前記被検試料中のMLPのレベルの少なくとも2倍またはそれより大きな(例えば、少なくとも5倍、または少なくとも10倍、または少なくとも20倍、または少なくとも50倍、または少なくとも100倍、またはそれより大きな)増加が、前記被検対象における、卵巣がんまたは膵臓がん等の上皮がんの存在またはそれらを発症するリスクの増加を示す。
【0195】
イムノアッセイの詳細は、使用される具体的な形式で変更されるが、生物学的試料中のMLPを検出する方法は、生物学的試料をMLPに特異的に結合する抗体に接触させることを含む。抗体は、免疫学的に反応性の条件下で生物学的試料中のMLPに結合でき、結合抗体の存在は直接的または間接的に検出される。MLP特異的抗体も、例えばELISAの捕捉抗体として、または捕捉抗体によって捕捉されたMLPに結合する二次抗体として使用されてよい。当技術分野において公知であるとおり、典型的には次に二次抗体の存在が検出される。
【0196】
生物学的試料は、哺乳動物対象から得られた生物学的組織または体液の任意の試料であってよい。生物学的試料の例として、これだけに限らないが、生検に由来する組織、痰、羊水、腹水、血液または血清が挙げられる。一実施形態では生物学的試料は、血液、血清、血漿および組織からなる群から選択される。
【0197】
方法の一実施形態では抗MLP抗体またはその断片は:(i)ATCC指定番号PTA-121699で2014年10月30日にATCCに寄託した細胞系により産生される、抗MLPモノクローナル抗体クローン11;(ii)ATCC指定番号PTA-121700で2014年10月30日にATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生される、抗MLPモノクローナル抗体クローンB;および(iii)ATCC指定番号PTA-121701で2014年10月30日にATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生される、抗MLPモノクローナル抗体クローンC、からなる群から選択される参照抗体と同じエピトープに結合するまたはMLPへの結合について競合するモノクローナル抗体である。
【0198】
方法の一実施形態では抗MLP抗体またはその断片は、配列番号15、配列番号35、配列番号36または配列番号19に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含む重鎖可変領域CDR-H3配列を有し、配列番号23または配列番号27に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含む軽鎖可変領域CDR-L3配列を有するモノクローナル抗体である。
【0199】
一実施形態では、前記抗体またはその抗原結合性断片は、(i)CDR-H1(配列番号13)、CDR-H2(配列番号14)およびCDR-H3(配列番号15、配列番号35または配列番号36)を含む重鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-L1(配列番号21)、CDR-L2(配列番号22)およびCDR-L3(配列番号23)を含む軽鎖可変領域、ならびにそれらの保存的改変を含む。一実施形態では、前記抗体またはその抗原結合性断片は、(i)CDR-H1(配列番号13)、CDR-H2(配列番号16)およびCDR-H3(配列番号15、配列番号35または配列番号36)を含む重鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-L1(配列番号24)、CDR-L2(配列番号22)およびCDR-L3(配列番号23)を含む軽鎖可変領域、ならびにそれらの保存的改変を含む。
一実施形態では、前記抗体またはその抗原結合性断片は、(i)CDR-H1(配列番号17)、CDR-H2(配列番号18)およびCDR-H3(配列番号19)を含む重鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-L1(配列番号25)、CDR-L2(配列番号26)およびCDR-L3(配列番号27)を含む軽鎖可変領域、ならびにそれらの保存的改変を含む。
【0200】
一実施形態では抗MLP抗体またはその断片は、表1に記載される重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域、さらにそれらの保存的改変配列を含むモノクローナル抗体である。
【0201】
一実施形態では抗MLP抗体またはその断片は、ATCC指定番号PTA-121699で2014年10月30日にATCCに寄託したαMLPクローン11分泌ハイブリドーマ細胞系により産生される、抗MLPモノクローナル抗体である。一実施形態では抗MLP抗体またはその断片は、ATCC指定番号PTA-121700で2014年10月30日にATCCに寄託したαMLPクローンB分泌ハイブリドーマ細胞系により産生される、モノクローナル抗体である。一実施形態では抗MLP抗体またはその断片は、ATCC指定番号PTA-121701で2014年10月30日にATCCに寄託したαMLPクローンC分泌ハイブリドーマ細胞系により産生される、モノクローナル抗体である。
【0202】
一実施形態では方法は、表7に示すバイオマーカー(例えば、CA-125、HE4、メソテリン、カリクレイン、オステオポンチンおよびB7-H4)等の卵巣がんおよび/または膵臓がんバイオマーカーに結合する1つまたは複数の追加的抗体を用いるイムノアッセイを実施することをさらに含む。すべてのステージの卵巣がんに対する追加的バイオマーカーとして:CRP、EGF-R、CA-19-9、Apo-A1、Apo-CIII、IL-6、IL-18、MIP-1a、テネイシンC、ミオグロビン、vWF、ハプトグロビン、IL-10、IGF-I、IGF-II、プロラクチン、ACE、ASP、レジスチンおよび癌胎児性抗原(CEA)が挙げられる。
【0203】
一実施形態では被検対象は、明らかに健常である。
【0204】
一実施形態では被検対象は、卵巣がんまたは膵臓がんの家族歴を有する。
【0205】
一実施形態では被検対象は、卵巣がんと関連がある1つまたは複数の症状を経験している。例えば、ヒト女性対象における卵巣がんと関連がある症状として次の1つまたは複数が挙げられる:骨盤腔内腫瘍、腹水、腹部膨満、腹圧、腫脹または腹部膨満感、骨盤痛または不快感、悪心、便秘、ガス、消化障害、下痢、頻尿または急な排尿の必要性を伴う排尿の問題、食欲不振または早い満腹感;腹囲の増加または衣類の窮屈さ、エネルギーの持続的な欠如、理由不明の体重増加または減少、膣からの異常出血および腰痛。
【0206】
一実施形態では被検対象は、卵巣がん、膵臓がん、結腸直腸がん、乳がん、虫垂がん、肺がん、腎臓がん、子宮頸がん、胆管がん、食道がん、上皮皮膚がんおよび/または他のムチン分泌型のがんを罹患していることが分かっており、卵巣がん、膵臓がん、結腸直腸がん、乳がん、虫垂がん、肺がん、腎臓がん、子宮頸がん、胆管がん、食道がん、上皮皮膚がんおよび/または他のムチン分泌型のがんのための治療を受けたことがあるかまたは現時点で受けている。一実施形態では1つより多い試料が、具体的な被検対象から1時点より多い時期に得られている。一実施形態では方法は、治療レジメンの有効性を評価するために1つまたは複数の時点でのアッセイの結果を比較することをさらに含む。当業者によって理解されるとおり、治療に先行しておよびその後再度、または任意選択で治療の際の進行ステージで、対象から採取された検体のMLPの相対的発現レベルは、治療の有効性を評価するために決定されてよく、経時的なMLPのレベルの低下は治療有効性を示す。
【0207】
3.生存対象におけるMLP抗原の存在を決定するためのin vivoアッセイ
別の態様では本発明の抗MLP抗体は、明らかに健常な対象、または上皮がんを発症するリスクがある対象、または早期上皮がんを有することが疑われる対象、または卵巣がん、膵臓がん、結腸直腸がん、乳がん、虫垂がん、肺がん、腎臓がん、子宮頸がん、胆管がん、食道がん、上皮皮膚がん等の上皮がんおよび/または他のムチン分泌型のがんを罹患している対象等の生存対象におけるMLP発現細胞の存在を検出するために使用される。放射標識されたモノクローナル抗体を用いるin vivo診断用画像化の種々の方法は、当技術分野において周知である。診断用画像化のために、主題の抗MLP抗体またはその抗原結合性断片は、本明細書に記載されるin vivoでの使用のために好適な検出可能な部分で標識され(例えば、ガンマ発光放射性同位元素)患者に導入される。例えば免疫シンチグラフィーの技術では、抗MLP抗体はガンマ発光放射性同位元素で標識され、患者に導入され、ガンマカメラがガンマ発光放射性同位元素の位置および分布を検出するために使用される。例えば、Srivastava (編)、Radiolabeled Monoclonal Antibodies for Imaging and Therapy (Plenum Press 1988年);Chase、「Medical Applications of Radioisotopes」 Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Gennaroら (編)、624~652頁(Mack Publishing Co.、1990年);およびBrown、「Clinical Use of Monoclonal Antibodies」 Biotechnology and Pharmacy、Pezzutoら (編) (Chapman & Hall 1993年)を参照されたい。患者に送達される放射線用量は、最短半減期、身体での最少貯留ならびに検出および正確な測定を可能にする同位体の最少量の最良の組合せのための同位体の選択を通じて可能な限り低いレベルに維持される。
【0208】
好ましい実施形態では、ヒト対象におけるin vivoでの使用のための抗MLP抗体は、ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答を低減するためにヒト化またはヒト抗体である。ヒト化またはヒト抗MLPモノクローナル抗体は、本明細書に記載されるin vitroおよびin vivo診断および治療方法における使用のために好適である。
【0209】
前述のとおり、一態様では本発明は、(a)MLPの配列番号4に記載するC末端領域中のエピトープに結合するヒト化もしくは完全ヒト抗MLP抗体またはその抗原結合性断片を生存対象に投与するステップと、(b)MLPに結合している前記抗体またはその断片の存在もしくは非存在または量を検出するステップとを含み、前記対象中のMLPの前記存在の検出が、卵巣がん、膵臓がん、結腸直腸がん、乳がん、虫垂がん、肺がん、腎臓がん、子宮頸がん、胆管がん、食道がん、上皮皮膚がんおよび/または他のムチン分泌型のがんの存在を示す、卵巣がん、膵臓がん、結腸直腸がん、乳がん、虫垂がん、肺がん、腎臓がん、子宮頸がん、胆管がん、食道がん、上皮皮膚がんおよび/または他のムチン分泌型のがんを検出するまたは診断する方法を提供する。一実施形態では抗MLP抗体は、in vivoでの使用のために好適な検出可能な部分で標識される。一実施形態では方法は、画像化手順、手術中の手順、内視鏡的手順または血管内の手順において使用される。
【0210】
一実施形態では抗MLP抗体またはその断片は:(i)ATCC指定番号PTA-121699で2014年10月30日にATCCに寄託した細胞系により産生される、抗MLPモノクローナル抗体クローン11;(ii)ATCC指定番号PTA-121700で2014年10月30日にATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生される、抗MLPモノクローナル抗体クローンB;および(iii)ATCC指定番号PTA-121701で2014年10月30日にATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生される、抗MLPモノクローナル抗体クローンC、からなる群から選択される参照抗体と同じエピトープに結合するまたはMLPへの結合について競合するモノクローナル抗体である。
【0211】
一実施形態では、抗MLP抗体またはその断片は、配列番号15または配列番号35または配列番号36または配列番号19に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含むCDR-H3配列を含む重鎖可変領域、および配列番号23または配列番号27に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域を有するものクローナル抗体である。一実施形態では、前記抗体またはその抗原結合性断片は、(i)CDR-H1(配列番号13)、CDR-H2(配列番号16)およびCDR-H3(配列番号15または配列番号35または配列番号36)を含む重鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-L1(配列番号24)、CDR-L2(配列番号22)およびCDR-L3(配列番号23)を含む軽鎖可変領域、ならびにそれらの保存的改変を含む。一実施形態では、前記抗体またはその抗原結合性断片は、(i)CDR-H1(配列番号17)、CDR-H2(配列番号18)およびCDR-H3(配列番号19)を含む重鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-L1(配列番号25)、CDR-L2(配列番号26)およびCDR-L3(配列番号27)を含む軽鎖可変領域、ならびにそれらの保存的改変を含む。
【0212】
一実施形態では被検対象は、明らかに健常である。
【0213】
一実施形態では被検対象は、卵巣がんもしくは膵臓がんまたは他のムチン分泌悪性新生物の家族歴を有する。
【0214】
一実施形態では被検対象は、卵巣がんと関連がある1つまたは複数の症状を経験している。例えばヒト女性対象における卵巣がんと関連がある症状として次の1つまたは複数が挙げられる:骨盤腔内腫瘍、腹水、腹部膨満、腹圧、腫脹また腹部膨満感、骨盤痛または不快感、悪心、便秘、ガス、消化障害、下痢、頻尿または急な排尿の必要性を伴う排尿の問題、食欲不振または早い満腹感;腹囲の増加または衣類の窮屈さ、エネルギーの持続的な欠如、理由不明の体重増加または減少、膣からの異常出血および腰痛。
【0215】
一実施形態では被検対象は、卵巣がん、膵臓がん、結腸直腸がん、乳がん、虫垂がん、肺がん、腎臓がん、子宮頸がん、胆管がん、食道がん、上皮皮膚がんおよび/または他のムチン分泌型のがんからなる群から選択されるムチンを分泌するがん型を罹患していることが分かっており、卵巣がん、膵臓がん、結腸直腸がん、乳がん、虫垂がん、肺がん、腎臓がん、子宮頸がん、胆管がん、食道がん、上皮皮膚がんおよび/または他のムチン分泌型のがんに対する治療を受けたことがあるかまたは現時点で受けている。一実施形態では、1つより多い試料が、具体的な被検対象から1時点より多い時期に得られる。一実施形態では方法は、治療レジメンの有効性を評価するために1つまたは複数の時点でのアッセイの結果を比較することをさらに含む。当業者によって理解されるとおり、治療に先行しておよびその後再度、または任意選択で治療の際の進行ステージで、対象から採取された検体のMLPの相対的発現レベルは、治療の有効性を評価するために決定されてよく、経時的なMLPのレベルの低下は治療有効性を示す。
【0216】
VI.治療剤にカップリングしておよび/または治療剤と併用して抗MLP抗体を使用する治療方法
別の態様では治療方法は、本明細書に開示される主題の抗MLP抗体等の抗MLP抗体またはその抗原結合性断片を卵巣がんもしくは膵臓がん等の上皮がんまたは他のムチン分泌悪性新生物を罹患している対象に投与することを含んで、悪性腫瘍を治療するために提供される。
【0217】
一実施形態では抗MLP抗体またはその抗原結合性断片は、1つまたは複数の他の治療剤と共に対象に投与される。一実施形態では抗MLP抗体またはその抗原結合性断片は、本明細書に記載される治療剤にカップリングされている。好ましい実施形態では抗MLP抗体およびその断片はヒト化または完全にヒトである。
【0218】
1つより多い治療剤が使用される実施形態では、治療剤は同じ治療剤の複数の複製物または他に異なる治療剤の組合せを含んでよい。
【0219】
一実施形態では抗MLP抗体またはその断片は、上皮がん細胞標的治療剤を生成するように治療剤にカップリングされている。多種多様な治療用試薬、例えば薬物、毒素、オリゴヌクレオチド(例えばsiRNA)、免疫調節薬、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、酵素、酵素阻害剤、放射性核種、血管新生阻害剤、アポトーシス促進剤等が、同時にまたは連続的に投与されてもよいし、または本発明の抗体に有利にコンジュゲートされていてもよい。本明細書に列挙される治療剤は、抗体、断片または融合タンパク質にコンジュゲートされるまたは、上に記載されるネイキッド抗体との個別投与のために有用である薬剤である。
【0220】
前述により一態様では本発明は、卵巣がん、膵臓がん、結腸直腸がん、乳がん、虫垂がん、肺がん、腎臓がん、子宮頸がん、胆管がん、食道がん、上皮皮膚がんおよび/または他のムチン分泌型のがんを罹患している個体に、配列番号4として記載されるMLPのC末端領域中のエピトープに結合するヒト化もしくは完全ヒト抗MLP抗体またはその抗原結合性断片を投与することを含む卵巣がん、膵臓がん、結腸直腸がん、乳がん、虫垂がん、肺がん、腎臓がん、子宮頸がん、胆管がん、食道がん、上皮皮膚がんおよび/または他のムチン分泌型のがんからなる群から選択されるムチン分泌がんを罹患している対象を治療する方法であって、抗体またはその断片が治療剤にカップリングされている、方法を提供する。一実施形態では治療剤は化学治療剤である。一実施形態では抗MLP抗体またはその断片は:(i)ATCC指定番号PTA-121699で2014年10月30日にATCCに寄託した細胞系により産生される、抗MLPモノクローナル抗体クローン11;(ii)ATCC指定番号PTA-121700で2014年10月30日にATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生される、抗MLPモノクローナル抗体クローンB;および(iii)ATCC指定番号PTA-121701で2014年10月30日にATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生される、抗MLPモノクローナル抗体クローンC、からなる群から選択される参照抗体と同じエピトープに結合するまたはMLPへの結合について競合するモノクローナル抗体である。
【0221】
一実施形態では抗MLP抗体またはその断片は、配列番号15または配列番号35または配列番号36または配列番号19に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含む重鎖可変領域CDR-H3配列を有し、配列番号24または配列番号27に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含む軽鎖可変領域CDR-L3配列を有するモノクローナル抗体である。
【0222】
一実施形態では、前記抗体またはその抗原結合性断片は、(i)CDR-H1(配列番号13)、CDR-H2(配列番号14)およびCDR-H3(配列番号15または配列番号35または配列番号36)を含む重鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-L1(配列番号21)、CDR-L2(配列番号22)およびCDR-L3(配列番号23)を含む軽鎖可変領域、ならびにそれらの保存的改変を含む。一実施形態では、前記抗体またはその抗原結合性断片は、(i)CDR-H1(配列番号13)、CDR-H2(配列番号16)およびCDR-H3(配列番号15または配列番号35または配列番号36)を含む重鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-L1(配列番号24)、CDR-L2(配列番号22)およびCDR-L3(配列番号23)を含む軽鎖可変領域、ならびにそれらの保存的改変を含む。一実施形態では、前記抗体またはその抗原結合性断片は、(i)CDR-H1(配列番号17)、CDR-H2(配列番号18)およびCDR-H3(配列番号19)を含む重鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-L1(配列番号25)、CDR-L2(配列番号26)およびCDR-L3(配列番号27)を含む軽鎖可変領域、ならびにそれらの保存的改変を含む。
【0223】
薬学的に好適な賦形剤
追加的な薬学的方法は、治療適用における抗MLP抗体の作用の持続期間を調節するために使用されてよい。放出制御(Control release)調製物は、抗体、抗体断片または融合タンパク質と複合体化するまたはそれらを吸着するポリマーの使用を通じて調製することができる。例えば生体適合性ポリマーは、ポリ(エチレン-co-ビニルアセテート)のマトリクスおよびステアリン酸二量体およびセバシン酸のポリ酸無水物共重合体のマトリクスを含む。Sherwoodら、Bio/Technology 10巻:1446頁(1992年)。そのようなマトリクスからの抗体、抗体断片または融合タンパク質の放出速度は、抗体、抗体断片または融合タンパク質の分子量、マトリクス内の抗体の量および分散した粒子のサイズに依存する。Saltzmanら、Biophys. J. 55巻:163頁(1989年);Sherwoodら、上記。他の固体投与形態はAnselら、PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS、第5版(Lea & Febiger 1990年)およびGennaro (編)、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、第18版(Mack Publishing Company 1990年)ならびにこれらの改訂版に記載されている。
【0224】
主題の抗MLP抗体またはその断片を含む組成物は、1つまたは複数の薬学的に好適な賦形剤、1つまたは複数の追加的成分またはこれらのいくつかの組合せを含んでよい。抗体は、薬学的に有用な組成物を調製するための公知の方法により製剤化されてよく、それによりイムノコンジュゲートまたはネイキッド抗体は薬学的に好適な賦形剤との混合物に組み合わされる。滅菌リン酸緩衝生理食塩水は、薬学的に好適な賦形剤の一例である。他の好適な賦形剤は、当業者周知である。例えばAnselら、PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS、第5版(Lea & Febiger 1990年)およびGennaro (編)、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、第18版(Mack Publishing Company 1990年)ならびにこれらの改訂版を参照されたい。
【0225】
イムノコンジュゲートまたはネイキッド抗体は、例えばボーラス注射または持続点滴を介する静脈内投与のために製剤化されてよい。注射用製剤は、保存剤を添加されて単位投与形態で、例えばアンプルでまたは複数用量容器中にあってよい。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁剤、溶液または乳剤等の形態であってよく、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤等の製剤化剤を含有してよい。代替的に活性成分は、使用前の好適なビヒクル、例えば滅菌発熱物質不含有水を用いる構成のための粉剤形態であってよい。
【0226】
イムノコンジュゲート、ネイキッド抗体またはその断片は、哺乳動物皮下に、または他の非経口経路によって投与されてもよい。好ましい実施形態では抗体またはその断片は、1用量あたりタンパク質20から2000ミリグラムの投薬量で投与される。さらに投与は、持続点滴によって、または単回または複数回のボーラスによってでよい。一般に、ヒトに投与されるイムノコンジュゲートまたはネイキッド抗体の投薬量は、患者の年齢、体重、身長、性別、全身の医学的状態および既往歴などの要因に応じて変更される。典型的には、単回静脈内または点滴として約1mg/kgから20mg/kgの範囲でイムノコンジュゲートまたはネイキッド抗体の投薬量をレシピエントに提供することは望ましいが、さらに低いまたは高い投薬量も状況に応じて投与されてよい。本投薬は、必要に応じて繰り返されてよい、例えば4から10週間について1週間に1回、好ましくは8週間について1週間に1回、より好ましくは4週間について1週間に1回。それは、数ヵ月間にわたり隔週等の低頻度であってよく、または1週間に2回もしくは3回等、さらに高頻度であってもよい。投薬は、用量およびスケジュールの適切な調整を伴って種々の非経口経路を通じて与えられてよい。
【0227】
VII.抗MLP抗体を含む組成物およびキット
組成物
別の態様では本発明は、治療剤および薬学的に許容される担体にカップリングされたMLP特異的モノクローナル抗体またはその断片の治療有効量を含む、卵巣がんまたは膵臓がんを治療するための組成物を提供する。一般に、任意の他の選択された治療剤にカップリングされたおよび/またはそれと組み合わされた本発明のMLP特異的抗体組成物は、薬学的に許容される担体に好適に含有される。担体は、無毒性、生体適合性であり、MLP特異的抗体(およびそれと組み合わされる任意の他の治療剤)の生物学的活性に有害に影響しないように選択される。ポリペプチドに関する例示的な薬学的に許容される担体は、Yamadaへの米国特許第5,211,657号に記載されている。MLP特異的抗体は、経口、非経口または外科的投与を可能にする、錠剤、カプセル、粉剤、顆粒剤、軟膏、溶液、デポジトリー(depositories)、吸入剤および注射剤等の固体、半固体、ゲル、液体またはガス状形態中の調製物に製剤化されてよい。本発明は、医用デバイス等をコーティングすることによる組成物の局所投与も検討する。
【0228】
別の態様では本発明は、固定化された(または他に沈着された)抗MLPモノクローナル抗体を含む固体支持体(例えば、ガラス、プラスチックもしくは金属製のプレートもしくはスライド、ポリマーコートビーズ、チューブまたはセラミックもしくは金属チップ等の不溶性基材)等の基材を提供する。一部の実施形態では抗体は、別個の位置(例えば、マルチウェルプレートのウェル中、またはバイオチップ上のアレイに沈着される)に固定化(または沈着)される。一部の実施形態では抗MLP抗体を含む基材は、哺乳動物対象から得られた生物学的試料中のMLPを検出するためのキットの一部であってよい。
キット
【0229】
別の態様では本発明は、キット(すなわち、所定の量でパッケージ化された試薬の組合せ)を生物学的試料中のMLPの存在を検出するための説明書と共に提供する。例示的なキットは、本明細書に記載される少なくとも1つもしくは複数の抗MLPモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片を含有してよい。抗MLP抗体が酵素等の検出可能な部分で標識される場合、キットは酵素によって必要とされる基質および補助因子(例えば、検出可能なクロモフォアまたはフルオロフォアを提供する基質前駆体)を含む。付加的に、他の添加剤、例えば安定化剤、緩衝液(例えば、ブロッキング緩衝液または溶解緩衝液)が含まれていてもよい。種々の試薬の相対的な量は、アッセイの感度を実質的に最適化する試薬の溶液中濃度を与えるように幅広く変化する場合がある。具体的には試薬は、溶解により適切な濃度の試薬溶液をもたらす賦形剤を含んで、乾燥粉剤として、通常凍結乾燥されて提供されてよい。
【0230】
付加的にキットは、本発明の抗体の使用の手段を開示する指導用資料も含んでよい(例えば、卵巣がんまたは膵臓がんに対するバイオマーカーとしてのMLPの検出のため)。キットは、キットが設計された具体的な適用を促進するための追加的構成成分も含んでよい。例えばキットは、標識を検出するための手段(例えば、酵素標識のための酵素基質、蛍光標識を検出するフィルターセット、ヒツジ抗マウスHRP等の適切な二次標識等)を追加的に含有してよい。キットは、当技術分野において周知のとおり、具体的なイムノアッセイの実施のために日常的に使用されている緩衝液および他の試薬を追加的に含んでよい。
【0231】
次の実施例は、本発明を実行するために検討された最良の様式を単に例示し、本発明を限定すると解釈されるべきでない。
【実施例
【0232】
(実施例1)
本実施例は、グリコシル化ムチン様タンパク質(gMLP)が卵巣がんのバイオマーカーであることを実証し、ヒトMLPタンパク質の新規C末端領域を含む組換え融合タンパク質の組換え発現およびタンパク質産生ならびにヒトMLPのC末端領域に特異的に結合するモノクローナル抗体の生成を記載している。
背景/原理:
【0233】
高分子量糖タンパク質であるムチンは、粘液、上皮細胞表面を覆うゲル状の主な構造構成要素である。ムチンファミリーは、多数のO結合型オリゴ糖鎖および少数のNグリカン鎖とコンジュゲートしたタンパク質骨格を含有する糖タンパク質からなる(Andrianifahananaら、Biochimica Et Biophysica Acta Reviews on Cancer、1765巻:189~222頁、2006年)。ムチンファミリーは、高度にグリコシル化されており、これらの糖タンパク質の分子量は、典型的にはおよそ200kDaから>1000kDaである。糖タンパク質は、3個のドメイン:N末端ドメイン、C末端ドメインおよびタンデムリピートを有する中央部を含有する。O-グリコシド結合N末端は反復性タンデムリピート構造のヒドロキシル側鎖に結合する。そのようなタンデムリピートは、高頻度で豊富な量のセリン(Ser)、プロリン(Pro)およびスレオニン(Thr)アミノ酸残基を含有する(Kimら、Glycoconjugate Journal 13巻:693~707頁、1996年)。
【0234】
全部で20個のファミリーメンバーを含むムチンファミリーは、2つのクラス、すなわち(i)分泌ムチン(ゲル形成およびゲル非形成)ならびに(ii)膜結合ムチンに分類される。
【0235】
分泌ムチンゲル形成タンパク質は、杯細胞(表面上皮)および粘膜細胞(粘膜下腺)によって発現され、MUC2、MUC5AC、MUC5B、MUC6およびMUC19が挙げられる(Chauhanら、Journal of Ovarian Research 2巻:212~215頁、2009年;Chenら、American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology 30巻:155~165頁、2004年)。分泌ムチンゲル非形成タンパク質としてMUC7、MUC8およびMUC9が挙げられ、MUC8およびMUC9の両方はMUC7より高度なタンデムリピートである。MUC7は唾液分泌物中に見出された(Andrianifahananaら、2006年、上記)。
【0236】
膜結合ムチンとして、MUC1、MUC3A、MUC3B、MUC4、MUC12、MUCI13、MUC15、MUC16、MUCI17およびMUCI20が挙げられる(Andrianifahananaら、2006年、上記)。膜結合ムチンは、正常細胞において発現されるが、がん状態、嚢胞性線維症および喘息で過発現される(Bafnaら、Oncogene 29巻:2893~2904頁、2010年)。正常(非がん性細胞)でのムチンの機能として、細胞保護(生物学的薬剤に対する細胞の保護)、上皮管腔表面の潤滑、細胞接着および各細胞間の相互作用(Brockhausenら、EMBO Reports 7巻:599~604頁、2006年)が挙げられる。しかし、がん細胞中のムチンはレベルが増大しグリコシル化が変化していることが示されている。がん細胞は、ムチンを細胞表面に過発現し、細胞接着および転移に影響を与える場合がある(Richardsら、Cancer Immunology, Immunotherapy 46巻:245~252頁、1998年)。がん細胞中のムチンが、例えばシアリル-Tn抗原切断オリゴ糖側鎖およびTn抗原の合成から生じるグリコシル化の変化を有し、コアオリゴ糖の蓄積を生じることも決定されている(Yamashitaら、Journal of the National Cancer Institute 87巻:441~446頁、1995年を参照されたい)。ムチン抗原の多数の変化が新生物の上皮組織中ならびに、例えば、膵臓がん、乳がん、卵巣がんおよび結腸がんを有する患者の血清中で記載されており、これらの抗原(例えば、DF3、CA19-9、CA125、SPan-1およびDuPan2)は、診断用マーカーとして使用されている(Ho. S.B.ら、Cancer Res 53巻:641~651頁、1993年)。卵巣では上皮悪性腫瘍は、卵巣がんの早期検出のための腫瘍マーカーとして使用できるオリゴ糖の過剰発現を生じる(Giuntoliら、Cancer Research 58巻:5546~5550頁、1998年)。
【0237】
WO98/48014に記載されるとおり、「MUC-B1」とも称される新規ムチン様タンパク質(MLP)をヒトムチンファミリーの以前は認識されなかったメンバーとして同定した。MLPが、O結合型オリゴ糖を用いて高度にグリコシル化されたタンパク質骨格からなる糖タンパク質であることを決定した。高度のグリコシル化は、天然糖タンパク質の分子量の大部分を占めている。MLP特異的DNAプローブを使用するin situハイブリダイゼーションは、MLP遺伝子が染色体7に位置していることを示した。WO98/48014にさらに記載されているとおり、MLPをコードする2つの異なる部分的cDNA転写物を単離し、クローニング時に両方のクローンが2つの可能なORFを5末端(ORF1およびORF2)に含有し、非常に類似しているペプチドを複数のタンデムリピートモチーフを含んでコードしていることを決定した。両方の推定ペプチドをE.coliにおいて発現させ、抗体を生成するための抗原として使用した。ORF1およびORF2によってコードされるペプチドに対して産生された抗体を使用する免疫組織学的分析によって、グリコシル化MLP(gMLP)は、卵巣腫瘍および膵臓腫瘍細胞等の上皮がんのかなりの割合によって排他的に発現かつ放出され、悪性腫瘍の徴候を有さない正常卵巣組織または卵巣嚢胞には存在しないことを判定した。MLPが腎臓によって特異的に濾過されず、それにより腫瘍が、血液中のMLPについて検査することによって容易に検出され得ることも判定した。
【0238】
本発明者らは、WO98/48014において公開された予測タンパク質の配列が、恐らく高度に反復した配列の中央セクションのためにゲノム配列決定の際のコンティグ構築に伴う困難のために不正確であることを判定した。本発明者らは、ゲノム由来配列決定を実施し、配列番号1として記載されている、ムチン様タンパク質(MLP)(MUC-Bとも称される)の正確な全長配列をコードする染色体7に単一のエクソン遺伝子を同定し、それは長さ431残基を有し、WO98/48014に以前は記載されなかった新規C末端領域(配列番号5および配列番号6を含んで配列番号4と記載されている)を含有している。MLPをコードするcDNA配列の正確で完全な知識は、本明細書に記載されるMLP特異的モノクローナル抗体を生成するための抗原としての使用のためのタンパク質(例えば、配列番号4、配列番号5または配列番号6を含むまたはそれからなるポリペプチド)のC末端領域に対応する組換えポリペプチドの発現を可能にする。MLPの新規C末端領域を、この配列の高度の免疫原性、MLPに対する非常に高度の特異性(本明細書に記載のとおり)およびこの領域とデータベース中の任意の他のペプチド配列との間の低い類似性から抗MLPモノクローナル抗体を生成するための抗原としての使用のために選択した。MLPタンパク質は、重度にグリコシル化されているが、MLPの最C末端29アミノ酸領域(配列番号6として記載)は、2つの予測グリコシル化部位(NetOGlyc予測プログラムによって決定されたとおり)だけを含有していることをさらに記載する。したがって、このC末端領域に対して産生された抗MLP抗体は、これらのC末端MLP特定抗原部位のペプチドエピトープがグリコシル化によって不明瞭にならないことから、MLP陽性真核細胞から分泌される高度にグリコシル化されたMLP糖タンパク質のタンパク質骨格に結合できる。
【0239】
本実施例に記載のとおり、C末端領域(配列番号4、全長MLPのアミノ酸279~431に対応する、図1において下線付き領域として示されている)をMLP C末端特異的モノクローナル抗体を生成するための抗原としての使用のためにN末端ヒスチジンタグを含む融合タンパク質として発現させた。
【0240】
方法
1.rMLP C末端ポリペプチド抗原の発現
図2に示す、HISタグに融合されたC末端領域(ヒトMLPのアミノ酸279~431、配列番号1として記載)を含む融合タンパク質をコードする核酸配列(配列番号2)をE.coliでの組換え(rMLP)C末端融合タンパク質の発現のためにpRSETB発現ベクター(Invitrogen)にクローニングした。
【0241】
rMLP C末端タンパク質の精製をHIS GraviTrapニッケルカラムを使用して実行した。結合した組換えrMLP C末端タンパク質をPBS緩衝液20mlを用いて洗浄し、次に200mMイミダゾールを用いて溶出する前に10mMイミダゾールを用いて再度洗浄した。画分をカラムから回収し、12%SDS-PAGEによって分析した。精製rMLP C末端タンパク質を含有する画分をプールし、精製rMLPタンパク質(0.53mg/ml)を得るように濃縮した。ポリヒスチジンタグ特異的抗体を使用するウエスタンブロット分析は、精製rMLP C末端タンパク質が予測分子量28kDaに移動したことを示した(データは示されていない)。
【0242】
2.ヒトMLPのC末端領域に特異的に結合するモノクローナル抗体の生成
マウスを精製rMLP C末端タンパク質を用いて免疫化し、次に同じタンパク質を用いて追加免疫した。高力価の抗体を有するマウスを屠殺し、各マウスからの脾臓細胞を標準的手順に従って骨髄腫細胞に融合し、ハイブリドーマ細胞のクローン由来の上清を酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用してスクリーニングした。8個の候補マウスハイブリドーマを分析のために選択した(クローン1、4、5、6、7、11、クローンBおよびクローンCと名付けた)。
【0243】
ハイブリドーマを10%ウシ胎児血清(FBS、Gibco)、200mM L-グルタミン(Sigma-Aldrich)5mLおよび100U/mLペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma-Aldrich)5mLを補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Sigma-Aldrich)で増殖させた。ハイブリドーマを培養し、マウスIgG抗体を上清から、IgG免疫グロブリンのFc領域に結合する能力を有するプロテインGセファロースカラムクロマトグラフィー(GE Healthcare)を介して精製した。次に精製モノクローナル抗体を12%SDS PAGEによって還元条件下で分析し、クーマシーブルーを用いて染色し、25kDaおよび50kDaに予測された軽鎖および重鎖Igバンドを示した(データは示されていない)。
【0244】
3.rMLP C末端タンパク質に対する候補抗MLPモノクローナル抗体のELISAアッセイにおける検査
マイクロタイターELISAプレート(Maxisorb、Nunc)を、コーティング緩衝液(15mM炭酸ナトリウム無水NaCOおよび炭酸水素ナトリウムNaHCO、pH9.6)を使用して10.0μg/mlの組換えMLP C末端タンパク質を用いてコーティングした。プレートを一晩、4℃でインキュベートした。翌日、残存タンパク質結合部位をTBS緩衝液(10mM Tris-HCL、140mM NaClおよび10mM CaCl、pH7.4)中の1%ウシ血清アルブミン(albumen)(BSA)250μLをプレートの各ウェルに加えることによってブロックし、室温で、2時間インキュベートした。次にプレートを0.05%Tween20を含むTBS緩衝液を用いて3回洗浄した。TBS緩衝液中のモノクローナル抗体の系列希釈物(クローン1、4、5、6、7、C、11およびB)を1:100希釈から開始する2連でプレートに加え、2時間、室温でインキュベートした。次にウェルを3回洗浄した。アルカリホスファターゼにコンジュゲートしたヤギ抗マウス抗体(1:5000希釈)100μLを次に各ウェルに加え、2時間、室温でインキュベートした。プレートを3回洗浄し;次に基質溶液(fast p-Nitrophenyl phosphate tablet sets、Sigma)を加え、20から30分間、室温でインキュベートした。吸光度をBiorad ELISAマイクロタイタープレートリーダーモデル608を使用して405nmで測定した。
【0245】
結果:
検査したmAbクローン8個の内3個(クローン11、BおよびC)は、組換えMLP-C末端タンパク質に対するELISAアッセイにおいて陽性であり、クローンCを用いたシグナルは、クローン11およびBを用いて見られたシグナルより非常に弱かったが、5個のmAbクローンはELISAアッセイにおいて陰性であった(データは示されていない)。mAbクローンBおよび11は、およそ1μg/mlの力価でMLPに対して良好な結合を示した。
【0246】
MLP C末端タンパク質に対するクローン11およびBの特異性を確認するために、それらを無関係な対照タンパク質に対するELISAアッセイにおいても検査し(プレートを10.0μg/mlの組換えMASP-3を用いてコーティングした)、すべて陰性であることが見出された(データは示されていない)。
【0247】
4.ELISAアッセイによる、抗MLPクローン11およびBによるrMLPの検出
マイクロタイターELISAプレート(Maxisorb、Nunc)を、抗MLPモノクローナル抗体クローン11およびクローンBを用いて、コーティング緩衝液(15mM炭酸ナトリウム無水NaCOおよび炭酸水素ナトリウムNaHCO、pH9.6)を使用する、1μg/mLから開始した0.05μg/mLまでの濃度の系列希釈でコーティングした。プレートを一晩、4℃でインキュベートした。翌日、残存タンパク質結合部位をTBS緩衝液(10mM Tris-HCL、140mM NaClおよび10mM CaCl、pH7.4)中の1%ウシ血清アルブミン(BSA)250μLをプレートの各ウェルに加ることによってブロックし、室温で、2時間インキュベートした。次にプレートを0.05%Tween20を含むTBS緩衝液を用いて3回洗浄した。濃度範囲0.01μg/mLから5μg/mLの組換えMLP C末端タンパク質の系列希釈物を2連でプレートに加え、2時間、室温でインキュベートした。次にウェルを3回洗浄した。アルカリホスファターゼにコンジュゲートしたポリクローナルヤギ抗MLP抗体(1:5000希釈)100μLを次に各ウェルに加え、2時間、室温でインキュベートした。プレートを3回洗浄し;次に基質溶液(fast p-Nitrophenyl phosphate tablet sets、Sigma)を加え、20から30分間、室温でインキュベートした。吸光度をBiorad ELISAマイクロタイタープレートリーダーモデル608を使用して405nmで測定した。陰性対照としてプレートを、抗MLPモノクローナル抗体クローンBまたはクローン11を用いてコーティングし、MLP抗原の代わりにTBS緩衝液だけをmAbコートプレートに加えてポリクローナルヤギ抗MLP抗体を用いて発色させた。
【0248】
結果:
図3Aは、ELISAアッセイによる抗MLP mAbクローンBによるrMLPの検出をグラフで例示する。図3Aに示すとおり、このアッセイの感度は非常に高く、0.01μg/mLの濃度に至るrMLP抗原の検出を示している。図3Aにさらに示すとおり、一次抗体mAbクローンBの0.01625μg/mLに至る希釈は、最大に近いシグナルを生じるように見える。
【0249】
図3Bは、ELISAアッセイによる、抗MLP mAbクローン11によるrMLPの検出をグラフで例示する。図3Bに示すとおり、このアッセイの感度は非常に高く、0.01μg/mLの濃度に至るrMLP抗原の検出を示している。図3Bにさらに示すとおり、一次抗体mAbクローン11の0.01625μg/mLに至る希釈は、最大に近いシグナルを生じるように見える。
【0250】
5.MLPを検出するためのサンドイッチELISAアッセイの開発
マイクロタイターELISAプレート(Maxisorb、Nunc)を、抗MLPモノクローナル抗体クローン11を1ウェルあたり0.1μgで用いてコーティング緩衝液(15mM炭酸ナトリウム無水NaCOおよび炭酸水素ナトリウムNaHCO、pH9.6)を使用してコーティングした。プレートを一晩、4℃でインキュベートした。翌日、残存タンパク質結合部位をTBS緩衝液(10mM Tris-HCL、140mM NaClおよび10mM CaCl、pH7.4)中の1%ウシ血清アルブミン(BSA)250μLをプレートの各ウェルに加えることによってブロックし、室温で、2時間インキュベートした。次にプレートを0.05%Tween20を含むTBS緩衝液を用いて3回洗浄した。濃度範囲0.0001μg/mLから1μg/mLの組換えMLP C末端タンパク質の系列希釈物を2連でプレートに加え、2時間、室温でインキュベートした。次にウェルを3回洗浄した。アルカリホスファターゼにコンジュゲートしたポリクローナルヤギ抗MLP抗体(0.5μg/mL)を次に各ウェルに加え、2時間、室温でインキュベートした。プレートを3回洗浄し;次に基質溶液(fast p-Nitrophenyl phosphate tablet sets、Sigma)を加え、20から30分間、室温でインキュベートした。吸光度をBiorad ELISAマイクロタイタープレートリーダーモデル608を使用して405nmで測定した。陰性対照として、コーティング抗体mAbクローン11を省き、ウェルをrMLPおよびポリクローナルMLP検出抗体の添加に先行してコーティング緩衝液を用いてインキュベートした。
【0251】
結果:
図4は、ELISAアッセイによる抗MLP mAbクローン11を用いたrMLPの検出をグラフで例示する。図4に示すとおり、このサンドイッチELISAアッセイの感度は非常に高く、10ng/mL rMLP未満の濃度に至る直線性を示している。
【0252】
(実施例2)
本実施例は、上皮がん細胞バイオマーカーとしての使用のための抗MLPモノクローナル抗体クローンC、11およびBの分析を記載する。
【0253】
バックグラウンド/原理:
Panc-1は、ヒト膵臓癌、上皮様細胞系であり、腫瘍原性研究のための非内分泌性膵臓がんのin vitroモデルとして使用される(ATCC CRL-1469)。細胞系A2780は、ヒト卵巣癌がん細胞系である(Louie K.G.ら、Cancer Res 45巻(5号):2110~5頁、1985年;Hamilton T.C.ら、Seminars in Oncology 11巻(3号):285~298頁、1984年)。
【0254】
次の実験を、抗MLPモノクローナル抗体クローンC、11およびBが、Panc-1およびA2780細胞系から分泌されるグリコシル化MLP(gMLP)を検出できるかどうかを判定するために実行した。
【0255】
方法:
1.Panc-1(ヒト膵臓がん細胞系)から分泌されるgMLPへの結合に関する抗MLP mAbクローンC、11およびBの分析:
3種の抗MLP mAb(クローンC、11およびB)を、ATCCから得たヒト膵臓細胞系(Panc1)から得られた上清中に存在するgMLPへの結合について次のとおりドットブロットおよびELISAアッセイフォーマットにおいて検査した。
【0256】
A.ドットブロット分析
実施例1に記載のとおり生成した3種の抗MLP mAb(クローンC、11およびB)を、ATCCから得たヒト膵臓がん細胞系(Panc-1)に対して検査した。精製抗MLP特異的mAb(クローンC、11およびB)のドットブロット分析を、rMLP C末端タンパク質および、膵臓がん細胞系Panc-1の上清中に存在するグリコシル化全長MLP(gMLP)を用いて実行した。
【0257】
4μlのタンパク質(rMLP、Panc1上清由来のgMLPまたはrMASP-3)をニトロセルロース膜に滴下し、室温で乾燥させた。次にニトロセルロース膜をPBS中の5%スキムミルクを用いて45から60分間、室温で穏やかに振とうしながらブロックした。次に抗MLP mAbクローンC、11およびB(PBS中5%スキムミルク、容積10mLの1mg/mlプロテインGセファロース濃縮抗体保存液の最終濃度mAb 1:1000希釈)をニトロセルロース膜に加え、室温で、1時間、穏やかに振とうしながらインキュベートした。次に膜をPBSおよび0.05%Tween20を用いて3回洗浄した。1:6000に希釈した、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートした抗マウス抗体を加え、室温で、1時間、穏やかに振とうしながらインキュベートした。次に膜を3回洗浄し、抗体結合をECLキットによって検出した。
【0258】
ドットブロット分析の結果:
図5は、Panc1細胞系上清(列A)、rMASP-3ポリペプチド(列B)およびmMLP C末端タンパク質(列C)に対して抗MLPモノクローナル抗体クローンC、クローンBおよびクローン11を用いて実行したドットブロットアッセイの結果を示している。図5に示すとおり、3種すべてのmAb(クローンC、クローンBおよびクローン11)は、Panc-1細胞系の上清に存在するMLP(gMLP)の天然産生グリコシル化形態(列A)、およびrMLP C末端タンパク質対照(列C)に結合することが見出されたが、陰性対照rMASP-3ポリペプチド(列B)には結合しなかった。
【0259】
B.卵巣がん細胞系A2789に由来するgMLPを用いてコーティングしたプレートを使用するELISAアッセイ
3種の抗MLP mAb(クローン11、BおよびC)を卵巣がん細胞系A2789から得られた濃縮上清由来の1.0μg/mlのグリコシル化MLPを用いてコーティングしたELISAプレートを用いて次のとおり検査した。
【0260】
マイクロタイターELISAプレート(Maxisorb、Nunc)を、卵巣がん細胞系A2789から得た濃縮上清由来の1.0μg/mlのグリコシル化MLP(gMLP)を用いてコーティング緩衝液(15mM炭酸ナトリウム無水NaCOおよび炭酸水素ナトリウムNaHCO、pH9.6)を使用してコーティングした。プレートを一晩、4℃でインキュベートした。翌日、残存タンパク質結合部位をTBS緩衝液(10mM Tris-HCL、140mM NaClおよび10mM CaCl、pH7.4)中の1%ウシ血清アルブミン(BSA)250μLをプレートの各ウェルに加えることによってブロックし、室温で、2時間インキュベートした。次にプレートを0.05%Tween20を含むTBS緩衝液を用いて3回洗浄した。TBS緩衝液中で1:100希釈から開始するmAb(クローン11、BおよびC)の系列希釈物を2連でプレートに加え、2時間、室温でインキュベートした。次にウェルを3回洗浄した。アルカリホスファターゼにコンジュゲートしたヤギ抗マウス抗体(1:5000希釈)100μLを次に各ウェルに加え、2時間、室温でインキュベートした。プレートを3回洗浄し;次に基質溶液(fast p-Nitrophenyl phosphate tablet sets、Sigma)を加え、20から30分間、室温でインキュベートした。吸光度をBiorad ELISAマイクロタイタープレートリーダーモデル608を使用して405nmで測定した。
卵巣がん細胞系A2789由来のgMLPを用いてコーティングしたプレートを用いたELISAアッセイの結果
【0261】
図6に示すとおり、クローン11およびBは、gMLPへの顕著な結合を示したが、このアッセイ形式ではクローンCは、陰性対照rMASP-3タンパク質への結合よりgMLPへの結合がわずかに高いだけであった。
【0262】
2.ヒト卵巣がん細胞系A2780から分泌されるgMLPへの結合に関する抗MLP mAbクローンC、11およびBの分析
【0263】
3種の抗MLP mAb(クローンC、5、11およびB)をATCCから得たヒト卵巣がん細胞系(A2780)から得た上清中に存在するgMLPへの結合について次のとおりドットプロット、ウエスタンブロットおよびELISAアッセイフォーマットにおいて検査した。
【0264】
A.ドットブロット分析
ドットブロットアッセイを卵巣がん細胞系A2780の上清を使用して上に記載のとおり実行した。4μlのタンパク質(rMLP、A2780上清由来のgMLPまたはrMASP-3)をニトロセルロース膜に滴下し、室温で乾燥させた。次にニトロセルロース膜をPBS中の5%スキムミルクを用いて45から60分間、室温で穏やかに振とうしながらブロックした。次に抗MLP mAbクローンC、11およびB(PBS中5%スキムミルク、容積10mLの1mg/mlプロテインGセファロース濃縮抗体保存液の最終濃度mAb 1:1000希釈)をニトロセルロース膜に加え、室温で、1時間、穏やかに振とうしながらインキュベートした。次に膜をPBSおよび0.05%Tween20を用いて3回洗浄した。1:6000に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートした抗マウス抗体を加え、室温で、1時間、穏やかに振とうしながらインキュベートした。次に膜を3回洗浄し、抗体結合をECLキットによって検出した。
【0265】
ドットブロット分析の結果:
図7は、卵巣がん細胞系A2780上清(列A)、rMASP-3タンパク質(列B)およびrMLP C末端タンパク質(列C)に対して抗MLP抗体クローンC、クローンBおよびクローン11を用いて実行したドットブロットアッセイの結果を示している。
【0266】
図7に示されるとおり、クローンC、クローンBおよびクローン11は、それぞれA2780細胞系の上清中に存在するMLP(gMLP)の天然産生グリコシル化形態(列A)、およびrMLP C末端タンパク質対照(列C)に結合することが見出されたが、陰性対照組換えMASP-3ポリペプチド(列B)には結合しなかった。
【0267】
B.ウエスタンブロット分析
図8に示されるとおり、ドットブロット結果をA2780細胞系に由来する濃縮上清を使用するウエスタンブロットによって確認し、特徴的な180kDa gMLPバンド(列1)および28kDa rMLP C末端タンパク質(列3)がクローンC(上パネル)、クローンB(中パネル)およびクローン11(下パネル)を用いて検出され、陰性対照タンパク質rMASP-3(列2)は3種のMLP特異的mAbによって検出されなかった。
【0268】
C.A2780細胞に由来するgMLPを用いてコーティングされたプレートを使用するELISAアッセイ
3種の抗MLP mAb(クローンC、5、11およびB)を、上に記載される方法を使用して、痕跡量のグリコシル化天然MLPを含有するA2780細胞から得た1μg/mlの濃縮上清を用いてコーティングしたELISAプレートを用いて検査した。
A2780細胞由来のgMLPを用いてコーティングしたプレートを用いたELISAアッセイの結果
【0269】
図9に示すとおり、クローン11およびBは、A2780細胞に由来するgMLPに顕著な結合を示したが、本アッセイフォーマットではクローンCは、陰性対照rMASP-3タンパク質への結合よりもgMLPへの結合がわずかに高いだけあった。図9における陰性対照は、rMASP-3タンパク質に対するクローン11である。
【表9】
【0270】
概要:
これらの結果は、ウエスタンブロットおよびドットブロットによって決定されるとおり、MLP特異的モノクローナル抗体クローン11、BおよびCが、rMLP C末端タンパク質に特異的に結合し、膵臓がん細胞系および卵巣がん細胞系から分泌されるgMLPを検出することができることを実証している。さらに本実施例は、MLP特異的モノクローナル抗体クローン11およびBが、rMLP C末端タンパク質および卵巣がん細胞系から分泌されるgMLPの両方をELISAアッセイフォーマットにおいて検出できることを実証している。
【0271】
これらのMLP特異的mAbは、治療が有効であり、予後が後期の卵巣がんよりもはるかに優れている早期で卵巣悪性腫瘍を発見するための緊急に必要とされている非侵襲性早期診断法である、高感度検出ELISAにおいて、例えば初期卵巣がんのバイオマーカーとして卵巣がん患者の血清中のMLPレベルを測定するためのキットの形式において使用することができる。
【0272】
(実施例3)
本実施例は、ハイブリドーマクローン11、BおよびCによって産生される抗MLPモノクローナル抗体のVHおよびVL領域をコードするDNAのクローニングおよび配列決定を記載する。
【0273】
方法:ATCC指定番号PTA-121699、PTA-121700およびPTA-121701で2014年10月30日にATCCに寄託したαMLPクローン11、αMLPクローンBおよびαMLPクローンCとして指定される抗MLPモノクローナル抗体を分泌する細胞系のハイブリドーマ細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS、Gibco)、200mM L-グルタミン(Sigma-Aldrich)5mLおよび100U/mLペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma-Aldrich)5mLを補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Sigma-Aldrich)でそれぞれ培養した。DNAをハイブリドーマ細胞系から精製し、可変領域をPCR増幅し、クローン#C、11およびBの配列分析を標準的方法を使用して実行した。
【0274】
結果:
重鎖可変領域(VH)配列
ATCC指定番号PTA-121699として2014年10月30日にATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系によって産生される抗MLPモノクローナル抗体αMLPクローン11のVH領域のアミノ酸配列を、配列番号7として記載する。
【0275】
ATCC指定番号PTA-121700として2014年10月30日にATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系によって産生される抗MLPモノクローナル抗体αMLPクローンBのVH領域のアミノ酸配列を、配列番号8として記載する。
【0276】
ATCC指定番号PTA-121701として2014年10月30日にATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系によって産生される抗MLPモノクローナル抗体αMLPクローンCのVH領域のアミノ酸配列を、配列番号9として記載する。
【0277】
図10Aは、抗MLPモノクローナル抗体クローン11(配列番号7)、B(配列番号8)およびC(配列番号9)の重鎖可変領域の間のアミノ酸配列の配列比較を示す。
【0278】
軽鎖可変領域(VL)配列
ATCC指定番号PTA-121699として2014年10月30日にATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系によって産生される抗MLPモノクローナル抗体αMLPクローン11のVL領域のアミノ酸配列を、配列番号10として記載する。
【0279】
ATCC指定番号PTA-121700として2014年10月30日にATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系によって産生される抗MLPモノクローナル抗体αMLPクローンBのVL領域のアミノ酸配列を、配列番号11として記載する。
【0280】
ATCC指定番号PTA-121701として2014年10月30日にATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系によって産生される抗MLPモノクローナル抗体αMLPクローンCのVL領域のアミノ酸配列を、配列番号12として記載する。
【0281】
図10Bは、抗MLPモノクローナル抗体クローン11(配列番号10)、B(配列番号11)および2(C)(配列番号12)の軽鎖可変領域の間のアミノ酸配列の配列比較を示す。
【0282】
クローン11とクローンBとの間の高度な配列同一性は、両方のクローンが同じ親ハイブリドーマ細胞に由来し、同一のMLPエピトープに結合することを示唆している。
【0283】
多様な実施形態によれば、本開示は、以下を提供する:
1.ヒトムチン様タンパク質の配列番号4に記載するC末端領域中のエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合性断片。
【0284】
2.モノクローナル抗体である、第1項に記載の抗体。
【0285】
3.組換え、ヒト化またはキメラ抗体である、第2項に記載の抗体。
【0286】
4.完全ヒト抗体である、第2項に記載の抗体。
【0287】
5.前記抗体またはその抗原結合性断片が、上皮性がん細胞系から分泌されるグリコシル化ヒトMLPに結合することが可能である、第1項に記載の抗体。
【0288】
6.前記抗体またはその抗原結合性断片が、ELISAアッセイフォーマットにおいて、グリコシル化ヒトMLPに結合することが可能である、第5項に記載の抗体。
【0289】
7.前記抗体またはその抗原結合性断片が、10nM未満のKDでヒトMLPに結合する、第1項に記載の抗体。
【0290】
8.前記抗体またはその抗原結合性断片が、
(i)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121699でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローン11、
(ii)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121700でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローンB、および
(iii)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121701でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローンC
からなる群から選択される1つまたは複数の参照抗体により認識されるエピトープの少なくとも一部を認識する、第1項に記載の抗体。
【0291】
9.配列番号7、配列番号8および配列番号9からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一である配列を含むかまたはそうした配列からなる、重鎖の可変領域を含む、第1項に記載の抗体。
【0292】
10.配列番号10、配列番号11および配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一である配列を含むかまたはそうした配列からなる、軽鎖の可変領域を含む、第1項に記載の抗体。
【0293】
11.検出可能な部分で標識されている、第1項から第8項のいずれかに記載の抗体。
【0294】
12.治療剤にカップリングされている、第1項に記載の抗体。
【0295】
13.基材上に固定化されている、第1項に記載の抗体。
【0296】
14.ヒトムチン様タンパク質(MLP)に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片であって、
(i)CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3配列を含む重鎖可変領域、ならびに
(ii)CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域CDR-H3配列が、配列番号15、配列番号35、配列番号36または配列番号19に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含み、軽鎖可変領域CDR-L3配列が、配列番号23または配列番号27に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含み、単離抗体が、ヒトムチン様タンパク質(MLP)に結合する、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
【0297】
15.重鎖可変領域CDR-H2配列が、配列番号20、14、16または18に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含む、第14項に記載の単離抗体または抗原結合性断片。
【0298】
16.重鎖可変領域CDR-H1配列が、配列番号13または配列番号17に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変を含む、第15項に記載の単離抗体または抗原結合性断片。
【0299】
17.軽鎖可変領域CDR-L2配列が、配列番号22または配列番号26に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変を含む、第16項に記載の単離抗体または抗原結合性断片。
【0300】
18.軽鎖可変領域CDR-L1配列が、配列番号28、配列番号21、配列番号24または配列番号25に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変を含む、第17項に記載の単離抗体または抗原結合性断片。
【0301】
19.重鎖可変領域のCDR-H1が、配列番号13を含む、第16項に記載の単離抗体または抗原結合性断片。
【0302】
20.重鎖可変領域のCDR-H2が、配列番号20を含む、第15項に記載の単離抗体または抗原結合性断片。
【0303】
21.重鎖可変領域のCDR-H3が、配列番号15を含む、第14項に記載の単離抗体または抗原結合性断片。
【0304】
22.配列番号20に記載するアミノ酸配列が、9位においてTを含有する、第20項に記載の単離抗体。
【0305】
23.軽鎖可変領域のCDR-L1が、配列番号28を含む、第18項に記載の単離抗体。
【0306】
24.配列番号28に記載するアミノ酸配列が、9位においてTを含有する、第23項に記載の単離抗体。
【0307】
25.配列番号28に記載するアミノ酸配列が、9位においてSを含有する、第23項に記載の単離抗体。
【0308】
26.軽鎖可変領域のCDR-L2が、配列番号22を含む、第18項に記載の単離抗体。
【0309】
27.軽鎖可変領域のCDR-L2が、配列番号26を含む、第18項に記載の単離抗体。
【0310】
28.軽鎖可変領域のCDR-L3が、配列番号23を含む、第14項に記載の単離抗体。
【0311】
29.抗体またはその抗原結合性断片が、Fab、Fab’断片、F(ab’)2断片および全抗体からなる群から選択される、第14項に記載の単離抗体。
【0312】
30.抗体またはその抗原結合性断片が、単鎖抗体、ScFv、およびヒンジ領域を欠く一価の抗体からなる群から選択される、第14項に記載の単離抗体。
【0313】
31.10nMまたはより低いKでヒトMLPに結合する、第14項に記載の単離抗体。
【0314】
32.上皮性がん細胞系から分泌されるグリコシル化MLPに結合する、第14項に記載の単離抗体。
【0315】
33.ELISAアッセイフォーマットにおいて、ヒトMLPに結合する、第14項に記載の単離抗体。
【0316】
34.検出可能な部分で標識されている、第14項に記載の単離抗体。
【0317】
35.治療剤にカップリングされている、第14項に記載の単離抗体。
【0318】
36.基材上に固定化されている、第14項に記載の単離抗体。
【0319】
37.ヒト化または完全ヒトである、第14項に記載の単離抗体。
【0320】
38.前記抗体が、(i)CDR-H1(配列番号13)、CDR-H2(配列番号14)およびCDR-H3(配列番号15、配列番号35または配列番号36)を含む重鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-L1(配列番号21)、CDR-L2(配列番号22)およびCDR-L3(配列番号23)を含む軽鎖可変領域、ならびにそれらの保存的改変を含む、第14項に記載の単離抗体またはその抗原結合性断片。
【0321】
39.前記抗体が、CDR-H1(配列番号13)、CDR-H2(配列番号16)およびCDR-H3(配列番号15)を含む重鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-L1(配列番号24)、CDR-L2(配列番号22)およびCDR-L3(配列番号23)を含む軽鎖可変領域、ならびにそれらの保存的改変を含む、第14項に記載の単離抗体またはその抗原結合性断片。
【0322】
40.前記抗体が、(i)CDR-H1(配列番号17)、CDR-H2(配列番号18)およびCDR-H3(配列番号19)を含む重鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-L1(配列番号25)、CDR-L2(配列番号26)およびCDR-L3(配列番号27)を含む軽鎖可変領域、ならびにそれらの保存的改変を含む、第14項に記載の単離抗体またはその抗原結合性断片。
【0323】
41.配列番号7を含む重鎖可変ドメインまたは配列番号7と少なくとも90%同一である配列を有するそのバリアントを含む、第14項に記載の単離抗体。
【0324】
42.配列番号8を含む重鎖可変ドメインまたは配列番号8と少なくとも90%同一である配列を有するそのバリアントを含む、第14項に記載の単離抗体。
【0325】
43.配列番号9を含む重鎖可変ドメインまたは配列番号9と少なくとも90%同一である配列を有するそのバリアントを含む、第14項に記載の単離抗体。
【0326】
44.第14項から第43項のいずれかに記載の抗MLP抗体またはその断片のアミノ酸配列をコードする核酸分子。
【0327】
45.抗MLP抗体をコードする第44項に記載の本発明の核酸分子を含む発現カセット。
【0328】
46.抗MLP抗体をコードする第44項または第45項に記載の本発明の核酸分子のうちの少なくとも1つを含む細胞。
【0329】
47.2014年10月30日にATCCに寄託された、ATCC指定番号PTA-121699を有するハイブリドーマ細胞系により産生される、クローン11として指定される抗MLPモノクローナル抗体。
【0330】
48.2014年10月30日にATCCに寄託された、ATCC指定番号PTA-121700を有するハイブリドーマ細胞系により産生される、クローンBとして指定される抗MLPモノクローナル抗体。
【0331】
49.2014年10月30日にATCCに寄託された、ATCC指定番号PTA-121701を有するハイブリドーマ細胞系により産生される、クローンCとして指定される抗MLPモノクローナル抗体。
【0332】
50.抗MLP抗体を産生するハイブリドーマ細胞系であって、
(i)ATCC指定番号PTA-121699を有する、抗MLPモノクローナル抗体クローン11を分泌するハイブリドーマ細胞系、
(ii)ATCC指定番号PTA-121700を有する、抗MLPモノクローナル抗体クローンBを分泌するハイブリドーマ細胞系、および
(iii)ATCC指定番号PTA-121701を有する、抗MLPモノクローナル抗体クローンCを分泌するハイブリドーマ細胞系
からなる群から選択される細胞系。
【0333】
51.配列番号1のアミノ酸配列または配列番号1に対して少なくとも95%の同一性を有するそのバリアントを含む単離ポリペプチド。
【0334】
52.配列番号4のアミノ酸配列または配列番号4に対して少なくとも95%の同一性を有するそのバリアントを含む単離ポリペプチド。
【0335】
53.配列番号5のアミノ酸配列または配列番号5に対して少なくとも95%の同一性を有するそのバリアントを含む単離ポリペプチド。
【0336】
54.配列番号6のアミノ酸配列または配列番号6に対して少なくとも95%の同一性を有するそのバリアントを含む単離ポリペプチド。
【0337】
55.単離抗MLP抗体を生成する方法であって、第46項または第50抗に記載の細胞を、前記抗MLP抗体をコードする核酸分子の発現を可能にする条件下で培養するステップと、前記抗MLP抗体を単離するステップとを含む方法。
【0338】
56.被検対象に由来する生物学的試料中のMLPの存在または量を決定することによって、上皮性がんを検出または診断する方法であって、
(a)in vitroでのイムノアッセイにおいて、被検対象に由来する生物学的試料を抗MLP抗体またはその抗原結合性断片と接触させるステップと、
(b)前記抗体の結合の存在または非存在を検出するステップであって、前記結合の存在が、前記試料中のMLPの前記存在または量を示す、ステップと
を含み、
前記抗体またはその断片が、MLPの配列番号4に記載するC末端領域中のエピトープに結合する、方法。
【0339】
57.前記抗MLP抗体が、検出可能な部分で標識されており、ステップ(b)が、前記検出可能な部分の前記存在または量を検出することを含む、第56項に記載の方法。
【0340】
58.ステップ(b)に従って検出したMLPの前記量を、参照標準または健常対象に由来する対照試料と比較するステップをさらに含み、前記対照試料(または参照標準)と比較する場合の、被検試料中のMLPのレベルの少なくとも2倍またはそれより大きな(例えば、少なくとも5倍または少なくとも10倍の)増加が、前記被検対象における、卵巣がんまたは膵臓がん等の上皮性がんの存在またはそれらを発症するリスクの増加を示す、第56項または第57項に記載の方法。
【0341】
59.前記生物学的試料が、血液、血清、血漿および組織からなる群から選択される、第56項に記載の方法。
【0342】
60.前記抗MLP抗体またはその断片が、
(i)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121699でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローン11、
(ii)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121700でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローンB、および
(iii)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121701でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローンC
からなる群から選択される参照抗体と同じエピトープに結合するかまたは前記参照抗体とMLPへの結合について競合するモノクローナル抗体である、第56項に記載の方法。
【0343】
61.前記抗MLP抗体またはその断片が、配列番号15、配列番号35、配列番号36または配列番号19に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含む重鎖可変領域CDR-H3配列を有し、配列番号23または配列番号27に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含む軽鎖可変領域CDR-L3配列を有するモノクローナル抗体である、第56項に記載の方法。
【0344】
62.前記抗MLP抗体またはその断片が、表1に記載する重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域ならびにそれらの保存的改変配列を含むモノクローナル抗体である、第56項に記載の方法。
【0345】
63.卵巣がんおよび/または膵臓がんのバイオマーカーに結合する1つまたは複数の追加の抗体を用いるイムノアッセイを実施するステップをさらに含む、第56項に記載の方法。
【0346】
64.前記被検対象が、(i)明らかに健常である、(ii)卵巣がんまたは膵臓がんの家族歴を有する、(iii)卵巣がんと関連がある1つまたは複数の症状を経験している、または(iv)卵巣がんまたは膵臓がんに罹患していることが分かっており、卵巣がんまたは膵臓がんのための治療を受けたことがあるかまたは現時点で受けている、第56項に記載の方法。
【0347】
65.前記被検対象から得られた生物学的試料からの前記アッセイの結果を、1つまたは複数の時点で比較して、治療レジメンの効能を評価するステップをさらに含む、第56項に記載の方法。
【0348】
66.前記抗MLP抗体が、基材上に固定化されている、第56項に記載の方法。
【0349】
67.前記イムノアッセイが、ELISAアッセイである、第56項に記載の方法。
【0350】
68.被検対象中の卵巣がんまたは膵臓がんを検出または診断する方法であって、(a)MLPの配列番号4に記載するC末端領域中のエピトープに結合するヒト化もしくは完全ヒト抗MLP抗体またはその抗原結合性断片を生存被検対象に投与するステップと、(b)MLPに結合している抗体またはその断片の存在もしくは非存在または量を検出するステップとを含み、対象中のMLPの存在または量の検出が、卵巣がんまたは膵臓がんの存在を示す、方法。
【0351】
69.前記抗MLP抗体が、in vivoでの使用に適切な、検出可能な部分で標識されており、ステップ(b)が、前記検出可能な部分の存在または量を検出することを含む、第68項に記載の方法。
【0352】
70.画像化手順、手術中の手順、内視鏡的手順または血管内の手順において使用される、第68項または第69項に記載の方法。
【0353】
71.前記抗MLP抗体またはその断片が、
(i)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121699でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローン11、
(ii)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121700でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローンB、および
(iii)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121701でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローンC
からなる群から選択される参照抗体と同じエピトープに結合するかまたは前記参照抗体とMLPへの結合について競合するモノクローナル抗体である、第68項に記載の方法。
【0354】
72.前記抗MLP抗体またはその断片が、配列番号15、配列番号35、配列番号36または配列番号19に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含む重鎖可変領域CDR-H3配列を有し、配列番号23または配列番号27に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含む軽鎖可変領域CDR-L3配列を有するモノクローナル抗体である、第68項に記載の方法。
【0355】
73.前記被検対象が、(i)明らかに健常である、(ii)卵巣がんまたは膵臓がんの家族歴を有する、(iii)卵巣がんと関連がある1つまたは複数の症状を経験している、または(iv)卵巣がんまたは膵臓がんに罹患していることが分かっており、卵巣がんまたは膵臓がんのための治療を受けたことがあるかまたは現時点で受けている、第68項に記載の方法。
【0356】
74.卵巣がんまたは膵臓がんに罹患している対象を治療する方法であって、MLPの配列番号4に記載するC末端領域中のエピトープに結合するヒト化もしくは完全ヒト抗MLP抗体またはその抗原結合性断片を卵巣がんまたは膵臓がんに罹患している個体に投与するステップを含み、前記抗体またはその断片が、治療剤にカップリングされている、方法。
【0357】
75.前記治療剤が、化学療法剤である、第74項に記載の方法。
【0358】
76.前記抗MLP抗体またはその断片が、
(i)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121699でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローン11、
(ii)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121700でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローンB、および
(iii)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121701でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローンC
からなる群から選択される参照抗体と同じエピトープに結合するかまたは前記参照抗体とMLPへの結合について競合するモノクローナル抗体である、第74項に記載の方法。
【0359】
77.抗MLP抗体またはその断片が、配列番号15、配列番号35、配列番号36または配列番号19に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含む重鎖可変領域CDR-H3配列を有し、配列番号23または配列番号27に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含む軽鎖可変領域CDR-L3配列を有するモノクローナル抗体である、第74項に記載の方法。
【0360】
78.被検対象に由来する生物学的試料中のMLPの存在または量を決定することによって、ムチン分泌型のがんを検出または診断する方法であって、
(a)in vitroでのイムノアッセイにおいて、被検対象に由来する生物学的試料を抗MLP抗体またはその抗原結合性断片と接触させるステップと、
(b)前記抗体の結合の存在または非存在を検出するステップであって、前記結合の存在が、試料中のMLPの存在または量を示す、ステップと
を含み、
抗体またはその断片が、MLPの配列番号4に記載するC末端領域中のエピトープに結合する、方法。
【0361】
79.前記抗MLP抗体が、検出可能な部分で標識されており、ステップ(b)が、前記検出可能な部分の存在または量を検出することを含む、第78項に記載の方法。
【0362】
80.ステップ(b)に従って検出したMLPの量を、参照標準または健常対象に由来する対照試料と比較するステップをさらに含み、対照試料(または参照標準)と比較する場合の、被検試料中のMLPのレベルの少なくとも2倍またはそれより大きな(例えば、少なくとも5倍または少なくとも10倍の)増加が、被検対象における、ムチン分泌型のがんの存在を、またはムチン分泌型のがんを発症するリスクの増加を示す、第78項または第79項に記載の方法。
【0363】
81.生物学的試料が、血液、血清、血漿および組織からなる群から選択される、第78項に記載の方法。
【0364】
82.抗MLP抗体またはその断片が、
(i)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121699でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローン11、
(ii)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121700でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローンB、および
(iii)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121701でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローンC
からなる群から選択される参照抗体と同じエピトープに結合するかまたは前記参照抗体とMLPへの結合について競合するモノクローナル抗体である、第78項に記載の方法。
【0365】
83.抗MLP抗体またはその断片が、配列番号15、配列番号35、配列番号36または配列番号19に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含む重鎖可変領域CDR-H3配列を有し、配列番号23または配列番号27に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含む軽鎖可変領域CDR-L3配列を有するモノクローナル抗体である、第78項に記載の方法。
【0366】
84.抗MLP抗体またはその断片が、表1に記載する重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域ならびにそれらの保存的改変配列を含むモノクローナル抗体である、第78項に記載の方法。
【0367】
85.ムチンを分泌するがんの型が、卵巣がん、膵臓がん、結腸直腸がん、乳がん、虫垂がん、肺がん、腎臓がん、子宮頚がん、胆道がん、食道がん、および上皮性皮膚がんからなる群から選択される、第78項に記載の方法。
【0368】
86.ムチンを分泌するがんの型が、卵巣がんまたは膵臓がんである、第78項に記載の方法。
【0369】
87.卵巣がんおよび/または膵臓がんのバイオマーカーに結合する1つまたは複数の追加の抗体を用いるイムノアッセイを実施するステップをさらに含む、第86項に記載の方法。
【0370】
88.被検対象が、(i)明らかに健常である、(ii)がんの家族歴を有する、(iii)がんと関連がある1つまたは複数の症状を経験している、または(iv)がんに罹患していることが分かっており、がんのための治療を受けたことがあるかまたは現時点で受けている、第78項に記載の方法。
【0371】
89.被検対象から得られた生物学的試料からのアッセイの結果を、1つまたは複数の時点で比較して、治療レジメンの効能を評価するステップをさらに含む、第78項に記載の方法。
【0372】
90.抗MLP抗体が、基材上に固定化されている、第78項に記載の方法。
【0373】
91.イムノアッセイが、ELISAアッセイである、第78項に記載の方法。
【0374】
92.被検対象中のムチンを分泌するがんの存在を検出または診断する方法であって、(a)MLPの配列番号4に記載するC末端領域中のエピトープに結合するヒト化もしくは完全ヒト抗MLP抗体またはその抗原結合性断片を生存被検対象に投与するステップと、(b)MLPに結合している抗体またはその断片の存在もしくは非存在または量を検出するステップとを含み、対象中のMLPの存在または量の検出が、ムチンを分泌するがんの存在を示す、方法。
【0375】
93.抗MLP抗体が、in vivoでの使用に適切な、検出可能な部分で標識されており、ステップ(b)が、検出可能な部分の存在または量を検出することを含む、第92項に記載の方法。
【0376】
94.画像化手順、手術中の手順、内視鏡的手順または血管内の手順において使用される、第92項または第93項に記載の方法。
【0377】
95.抗MLP抗体またはその断片が、
(i)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121699でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローン11、
(ii)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121700でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローンB、および
(iii)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121701でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローンC
からなる群から選択される参照抗体と同じエピトープに結合するかまたは前記参照抗体とMLPへの結合について競合するモノクローナル抗体である、第92項に記載の方法。
【0378】
96.前記抗MLP抗体またはその断片が、配列番号15、配列番号35、配列番号36または配列番号19に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含む重鎖可変領域CDR-H3配列を有し、配列番号23または配列番号27に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含む軽鎖可変領域CDR-L3配列を有するモノクローナル抗体である、第92項に記載の方法。
【0379】
97.被検対象が、(i)明らかに健常である、(ii)がんの家族歴を有する、(iii)がんと関連がある1つまたは複数の症状を経験している、または(iv)がんに罹患していることが分かっており、がんのための治療を受けたことがあるかまたは現時点で受けている、第92項に記載の方法。
【0380】
98.ムチン分泌型のがんに罹患している対象を治療する方法であって、MLPの配列番号4に記載するC末端領域中のエピトープに結合するヒト化もしくは完全ヒト抗MLP抗体またはその抗原結合性断片をムチン分泌型のがんに罹患している個体に投与するステップを含み、抗体またはその断片が、治療剤にカップリングされている、方法
を提供する。
【0381】
99.治療剤が、化学療法剤である、第98項に記載の方法。
【0382】
100.抗MLP抗体またはその断片が、
(i)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121699でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローン11、
(ii)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121700でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローンB、および
(iii)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121701でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローンC
からなる群から選択される参照抗体と同じエピトープに結合するかまたは前記参照抗体とMLPへの結合について競合するモノクローナル抗体である、第98項に記載の方法。
【0383】
101.抗MLP抗体またはその断片が、配列番号15、配列番号35、配列番号36または配列番号19に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含む重鎖可変領域CDR-H3配列を有し、配列番号23または配列番号27に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含む軽鎖可変領域CDR-L3配列を有するモノクローナル抗体である、第98項に記載の方法。
【0384】
102.ムチンを分泌するがんの型が、卵巣がん、膵臓がん、結腸直腸がん、乳がん、虫垂がん、肺がん、腎臓がん、子宮頚がん、胆道がん、食道がん、および上皮性皮膚がんからなる群から選択される、第98項に記載の方法。
【0385】
103.第1項から第43項のいずれかに記載の抗MLP抗体を含む組成物。
【0386】
104.第1項から第43項のいずれかに記載の抗MLP抗体を少なくとも1つ含む、イムノアッセイにおける使用のための基材。
【0387】
105.(a)少なくとも1つの容器、および(b)第1項から第43項のいずれかに記載の抗MLP抗体を少なくとも1つ含む、生物学的試料中のMLPの存在を検出するためのキット。
【0388】
本発明の好ましい実施形態を示し、説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、それらの実施形態において、多様な変化形態を作製することができることが理解されるであろう。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
ヒトムチン様タンパク質の配列番号4に記載するC末端領域中のエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合性断片。
(項目2)
以下:
(i)前記抗体が、モノクローナル抗体であること、
(ii)前記抗体が、組換え、ヒト化またはキメラ抗体であること、
(iii)前記抗体が、完全ヒト抗体であること、
(iv)前記抗体またはその抗原結合性断片が、ELISAアッセイフォーマットにおけるように、上皮性がん細胞系から分泌されるグリコシル化ヒトMLPに結合することが可能であること、または
(v)前記抗体またはその抗原結合性断片が、10nM未満のKDでヒトMLPに結合すること
のうち、少なくとも1つが適用される、項目1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
(項目3)
前記抗体またはその抗原結合性断片が、
(i)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121699でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローン11、
(ii)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121700でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローンB、および
(iii)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121701でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローンC
からなる群から選択される1つまたは複数の参照抗体により認識されるエピトープの少なくとも一部を認識する、項目1または2に記載の抗体。
(項目4)
以下:
(i)配列番号7、配列番号8および配列番号9からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一である配列を含むかまたはそうした配列からなる、重鎖の可変領域を含むこと、および/または
(ii)配列番号10、配列番号11および配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一である配列を含むかまたはそうした配列からなる、軽鎖の可変領域を含むこと
のうち、少なくとも1つが適用される、項目1から3のいずれかに記載の抗体。
(項目5)
検出可能な部分で標識されており、かつ/または治療剤にカップリングされている、項目1から4のいずれかに記載の抗体。
(項目6)
基材上に固定化されている、項目1から5のいずれかに記載の抗体。
(項目7)
前記抗体またはその抗原結合性断片が、
(i)CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3配列を含む重鎖可変領域、ならびに
(ii)CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む軽鎖可変領域を含み、
前記重鎖可変領域CDR-H3配列が、配列番号15、配列番号35、配列番号36または配列番号19に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含み、前記軽鎖可変領域CDR-L3配列が、配列番号23または配列番号27に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含み、前記単離抗体が、ヒトムチン様タンパク質(MLP)に結合する、項目1に記載のヒトムチン様タンパク質(MLP)に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
(項目8)
以下:
(i)重鎖可変領域CDR-H2配列が、配列番号20、14、16または18に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含むこと、
(ii)重鎖可変領域CDR-H1配列が、配列番号13または配列番号17に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変を含むこと、
(iii)軽鎖可変領域CDR-L2配列が、配列番号22または配列番号26に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変を含むこと、
(iv)軽鎖可変領域CDR-L1配列が、配列番号28、配列番号21、配列番号24または配列番号25に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変を含むこと、
(v)重鎖可変領域のCDR-H1が、配列番号13を含むこと、
(vi)重鎖可変領域のCDR-H2が、配列番号20を含み、任意選択で、配列番号20に記載する前記アミノ酸配列が、9位においてTを含有すること、
(vii)重鎖可変領域のCDR-H3が、配列番号15を含むこと、
(viii)軽鎖可変領域のCDR-L1が、配列番号28を含み、任意選択で、配列番号28に記載する前記アミノ酸配列が、9位においてTを含有し、任意選択で、配列番号28に記載する前記アミノ酸配列が、9位においてSを含有すること、
(vix)軽鎖可変領域のCDR-L2が、配列番号22を含むこと、
(x)軽鎖可変領域のCDR-L2が、配列番号26を含むこと、
(xi)軽鎖可変領域のCDR-L3が、配列番号23を含むこと、
(xii)前記抗体が、(i)CDR-H1(配列番号13)、CDR-H2(配列番号14)およびCDR-H3(配列番号15、配列番号35または配列番号36)を含む重鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-L1(配列番号21)、CDR-L2(配列番号22)およびCDR-L3(配列番号23)を含む軽鎖可変領域、ならびにそれらの保存的改変を含むこと、
(xiii)前記抗体が、CDR-H1(配列番号13)、CDR-H2(配列番号16)およびCDR-H3(配列番号15)を含む重鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-L1(配列番号24)、CDR-L2(配列番号22)およびCDR-L3(配列番号23)を含む軽鎖可変領域、ならびにそれらの保存的改変を含むこと、
(xiv)前記抗体が、(i)CDR-H1(配列番号17)、CDR-H2(配列番号18)およびCDR-H3(配列番号19)を含む重鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-L1(配列番号25)、CDR-L2(配列番号26)およびCDR-L3(配列番号27)を含む軽鎖可変領域、ならびにそれらの保存的改変を含むこと、
(xv)前記抗体が、配列番号7を含む重鎖可変ドメインまたは配列番号7と少なくとも90%同一の配列を有するそのバリアントを含むこと、
(xvi)前記抗体が、配列番号8を含む重鎖可変ドメインまたは配列番号8と少なくとも90%同一である配列を有するそのバリアントを含むこと、または
(xvii)前記抗体が、配列番号9を含む重鎖可変ドメインまたは配列番号9と少なくとも90%同一である配列を有するそのバリアントを含むこと
のうち、少なくとも1つが適用される、項目1に記載の単離抗体または抗原結合性断片。
(項目9)
前記抗体またはその抗原結合性断片が、Fab、Fab’断片、F(ab’)2断片、全抗体、単鎖抗体、ScFv、およびヒンジ領域を欠く一価の抗体からなる群から選択される、項目1から8のいずれかに記載の単離抗体。
(項目10)
項目7から9のいずれかに記載の抗MLP抗体またはその断片のアミノ酸配列をコードする核酸分子。
(項目11)
項目10に記載の本発明の抗MLP抗体をコードする核酸分子を含む発現カセット。
(項目12)
項目10または項目11に記載の本発明の抗MLP抗体をコードする核酸分子のうちの少なくとも1つを含む細胞。
(項目13)
(i)2014年10月30日にATCCに寄託された、ATCC指定番号PTA-121699を有するハイブリドーマ細胞系により産生される、クローン11として指定される抗MLPモノクローナル抗体、
(ii)2014年10月30日にATCCに寄託された、ATCC指定番号PTA-121700を有するハイブリドーマ細胞系により産生される、クローンBとして指定される抗MLPモノクローナル抗体、および
(iii)2014年10月30日にATCCに寄託された、ATCC指定番号PTA-121701を有するハイブリドーマ細胞系により産生される、クローンCとして指定される抗MLPモノクローナル抗体
からなる群から選択される抗MLPモノクローナル抗体。
(項目14)
抗MLP抗体を産生するハイブリドーマ細胞系であって、
(i)ATCC指定番号PTA-121699を有する、抗MLPモノクローナル抗体クローン11を分泌するハイブリドーマ細胞系、
(ii)ATCC指定番号PTA-121700を有する、抗MLPモノクローナル抗体クローンBを分泌するハイブリドーマ細胞系、および
(iii)ATCC指定番号PTA-121701を有する、抗MLPモノクローナル抗体クローンCを分泌するハイブリドーマ細胞系
からなる群から選択される細胞系。
(項目15)
(i)配列番号1または配列番号1に対して少なくとも95%の同一性を有するそのバリアントを含むポリペプチド、
(ii)配列番号4のアミノ酸配列または配列番号4に対して少なくとも95%の同一性を有するそのバリアントを含むポリペプチド、
(iii)配列番号5のアミノ酸配列または配列番号5に対して少なくとも95%の同一性を有するそのバリアントを含むポリペプチド、および
(iv)配列番号6のアミノ酸配列または配列番号6に対して少なくとも95%の同一性を有するそのバリアントを含むポリペプチド
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む単離MLPポリペプチド。
(項目16)
単離抗MLP抗体を生成する方法であって、項目12または14に記載の細胞を、前記抗MLP抗体をコードする核酸分子の発現を可能にする条件下で培養するステップと、前記抗MLP抗体を単離するステップとを含む方法。
(項目17)
被検対象に由来する生物学的試料中のMLPの存在または量を決定することによって、上皮性がんを検出または診断する方法であって、
(a)in vitroでのイムノアッセイにおいて、被検対象に由来する生物学的試料を抗MLP抗体またはその抗原結合性断片と接触させるステップと、
(b)前記抗体の結合の存在または非存在を検出するステップであって、前記結合の存在が、前記試料中のMLPの前記存在または量を示す、ステップと
を含み、
前記抗体またはその断片が、MLPの配列番号4に記載するC末端領域中のエピトープに結合する、方法。
(項目18)
前記抗MLP抗体が、検出可能な部分で標識されており、ステップ(b)が、前記検出可能な部分の前記存在または量を検出することを含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
ステップ(b)に従って検出したMLPの前記量を、参照標準または健常対象に由来する対照試料と比較するステップをさらに含み、前記対照試料(または参照標準)と比較する場合の、被検試料中のMLPのレベルの少なくとも2倍またはそれより大きな(例えば、少なくとも5倍または少なくとも10倍の)増加が、前記被検対象における、卵巣がんまたは膵臓がん等の上皮性がんの存在またはそれらを発症するリスクの増加を示す、項目17または18に記載の方法。
(項目20)
前記生物学的試料が、血液、血清、血漿および組織からなる群から選択される、項目17に記載の方法。
(項目21)
前記抗MLP抗体またはその断片が、
(i)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121699でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローン11、
(ii)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121700でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローンB、および
(iii)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121701でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローンC
からなる群から選択される参照抗体と同じエピトープに結合するかまたは前記参照抗体とMLPへの結合について競合するモノクローナル抗体である、項目17に記載の方法。
(項目22)
前記抗MLP抗体またはその断片が、配列番号15、配列番号35、配列番号36または配列番号19に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含む重鎖可変領域CDR-H3配列を有し、配列番号23または配列番号27に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含む軽鎖可変領域CDR-L3配列を有するモノクローナル抗体である、項目17に記載の方法。
(項目23)
前記抗MLP抗体またはその断片が、表1に記載する重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域ならびにそれらの保存的改変配列を含むモノクローナル抗体である、項目17に記載の方法。
(項目24)
卵巣がんおよび/または膵臓がんのバイオマーカーに結合する1つまたは複数の追加の抗体を用いるイムノアッセイを実施するステップをさらに含む、項目17に記載の方法。
(項目25)
前記被検対象が、(i)明らかに健常である、(ii)卵巣がんまたは膵臓がんの家族歴を有する、(iii)卵巣がんと関連がある1つまたは複数の症状を経験している、または(iv)卵巣がんまたは膵臓がんに罹患していることが分かっており、卵巣がんまたは膵臓がんのための治療を受けたことがあるかまたは現時点で受けている、項目17に記載の方法。
(項目26)
前記被検対象から得られた生物学的試料からの前記アッセイの結果を、1つまたは複数の時点で比較して、治療レジメンの効能を評価するステップをさらに含む、項目17に記載の方法。
(項目27)
前記抗MLP抗体が、基材上に固定化されている、項目17に記載の方法。
(項目28)
前記イムノアッセイが、ELISAアッセイである、項目17に記載の方法。
(項目29)
被検対象中のムチンを分泌するがんの存在を検出または診断する方法であって、(a)MLPの配列番号4に記載するC末端領域中のエピトープに結合するヒト化もしくは完全ヒト抗MLP抗体またはその抗原結合性断片を生存被検対象に投与するステップと、(b)MLPに結合している前記抗体またはその断片の存在もしくは非存在または量を検出するステップとを含み、前記対象中のMLPの前記存在または量の検出が、ムチンを分泌するがんの存在を示す、方法。
(項目30)
前記ムチンを分泌するがんが、卵巣がん、膵臓がん、結腸直腸がん、乳がん、虫垂がん、肺がん、腎臓がん、子宮頚がん、胆道がん、食道がん、および上皮性皮膚がんからなる群から選択される、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記抗MLP抗体が、in vivoでの使用に適切な、検出可能な部分で標識されており、ステップ(b)が、前記検出可能な部分の存在または量を検出することを含む、項目29または30に記載の方法。
(項目32)
画像化手順、手術中の手順、内視鏡的手順または血管内の手順において使用される、項目29から31のいずれかに記載の方法。
(項目33)
前記抗MLP抗体またはその断片が、
(i)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121699でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローン11、
(ii)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121700でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローンB、および
(iii)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121701でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローンC
からなる群から選択される参照抗体と同じエピトープに結合するかまたは前記参照抗体とMLPへの結合について競合するモノクローナル抗体である、項目29に記載の方法。
(項目34)
前記抗MLP抗体またはその断片が、配列番号15、配列番号35、配列番号36または配列番号19に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含む重鎖可変領域CDR-H3配列を有し、配列番号23または配列番号27に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含む軽鎖可変領域CDR-L3配列を有するモノクローナル抗体である、項目29に記載の方法。
(項目35)
前記被検対象が、(i)明らかに健常である、(ii)卵巣がんまたは膵臓がんの家族歴を有する、(iii)卵巣がんと関連がある1つまたは複数の症状を経験している、または(iv)卵巣がんまたは膵臓がんに罹患していることが分かっており、卵巣がんまたは膵臓がんのための治療を受けたことがあるかまたは現時点で受けている、項目30に記載の方法。
(項目36)
卵巣がんまたは膵臓がんに罹患している対象を治療する方法であって、MLPの配列番号4に記載するC末端領域中のエピトープに結合するヒト化もしくは完全ヒト抗MLP抗体またはその抗原結合性断片を卵巣がんまたは膵臓がんに罹患している個体に投与するステップを含み、前記抗体またはその断片が、治療剤にカップリングされている、方法。
(項目37)
前記治療剤が、化学療法剤である、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記抗MLP抗体またはその断片が、
(i)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121699でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローン11、
(ii)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121700でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローンB、および
(iii)2014年10月30日にATCC指定番号PTA-121701でATCCに寄託したハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗MLP抗体クローンC
からなる群から選択される参照抗体と同じエピトープに結合するかまたは前記参照抗体とMLPへの結合について競合するモノクローナル抗体である、項目36に記載の方法。
(項目39)
前記抗MLP抗体またはその断片が、配列番号15、配列番号35、配列番号36または配列番号19に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含む重鎖可変領域CDR-H3配列を有し、配列番号23または配列番号27に記載するアミノ酸配列およびそれらの保存的改変配列を含む軽鎖可変領域CDR-L3配列を有するモノクローナル抗体である、項目36に記載の方法。
(項目40)
項目1から13のいずれかに記載の抗MLP抗体を含む組成物。
(項目41)
項目1から13のいずれかに記載の抗MLP抗体を少なくとも1つ含む、イムノアッセイにおける使用のための基材。
(項目42)
(a)少なくとも1つの容器、および(b)項目1から13のいずれかに記載の抗MLP抗体を少なくとも1つ含む、生物学的試料中のMLPの存在を検出するためのキット。

図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
【配列表】
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