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特許7019616関節運動式継手を備えた拡張可能かつ角度調節可能な椎間ケージ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】関節運動式継手を備えた拡張可能かつ角度調節可能な椎間ケージ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/44 20060101AFI20220207BHJP
【FI】
A61F2/44
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018569091
(86)(22)【出願日】2017-06-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-18
(86)【国際出願番号】 IB2017000955
(87)【国際公開番号】W WO2018002720
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-04-09
(31)【優先権主張番号】62/355,619
(32)【優先日】2016-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518462112
【氏名又は名称】イーアイティー・エマージング・インプラント・テクノロジーズ・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】EIT EMERGING IMPLANT TECHNOLOGIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アイゼン・グントマー
(72)【発明者】
【氏名】ガンター・デトレフ
(72)【発明者】
【氏名】エイフ・マルクス
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06685742(US,B1)
【文献】特表2015-525652(JP,A)
【文献】特表2015-500707(JP,A)
【文献】国際公開第2015/013479(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張可能な脊椎移植片であって、
第1の椎体の終板に対して配置されるように構成された上部プレート構成要素、及び隣接する第2の椎体の終板に対して配置されるように構成された下部プレート構成要素を含む調節可能な椎間ケージであって、前記上部及び下部プレート構成要素は、関節運動式継手において連結されている、調節可能な椎間ケージと、
シャフトと拡大ヘッド部分とを備えるブロックピンであって、前記ブロックピンが前記調節可能な椎間ケージ内で初期後方位置から前記調節可能な椎間ケージの前端部に向かって前方に前進されるときに前記拡張可能な脊椎移植片の角度調節を実現するように構成されている、ブロックピンと、を備え
前記拡張可能な脊椎移植片は、前記ブロックピンが前記初期後方位置にある際に、前記上部及び下部プレート構成要素が前記調節可能な椎間ケージの前方部分において互いに向かって角度をなしている、第1の構成を有する、拡張可能な脊椎移植片。
【請求項2】
前記ブロックピンは、前記上部及び下部プレート構成要素の内側に存在するように製造されている、請求項1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【請求項3】
前記上部プレート構成要素は一対の延長された側壁を備え、前記一対の延長された側壁の各々は内部表面上に溝を有し、前記下部プレート構成要素は、前記上部プレート構成要素の前記溝内に受容されるように構成された突出部を外部表面の両側に有するハウジングを備える、請求項1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【請求項4】
前記関節運動式継手は、前記上部及び下部プレート構成要素の互いに対する旋回移動を可能にする、請求項1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【請求項5】
前記上部プレート構成要素又は下部基部構成要素のいずれかが、前記第1の椎体又は前記隣接する第2の椎体のいずれかの前記終板に対して配置するための平坦な表面を含む、請求項1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【請求項6】
前記ブロックピンは、最も前方の位置において前記上部及び下部プレート構成要素を互いにロックする、請求項1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【請求項7】
前記上部及び下部プレート構成要素は、それらの自由端部の一方において先細になっている、請求項1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【請求項8】
前記調節可能な椎間ケージは、PLIFケージである、請求項1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【請求項9】
多孔性の構造を更に含む、請求項1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【請求項10】
前記多孔性の構造は工学的セル構造を含む、請求項に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【請求項11】
前記多孔性の構造はメッシュに似た構造を含む、請求項に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【請求項12】
内部の撮像用マーカーを更に含む、請求項1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【請求項13】
前記上部及び下部プレート構成要素が互いに対して平行である、中間の構成を有する、請求項1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【請求項14】
前記上部及び下部プレート構成要素が互いにロックされかつ前記調節可能な椎間ケージの後方部分において互いに向かって角度をなしている、第2の構成を有する、請求項1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【請求項15】
前記第2の構成において、前記拡張可能な脊椎移植片は、前記第1および第2の椎体間の前弯の角度を調節する、請求項14に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【請求項16】
前記第2の構成において、脊椎の矢状面バランス及びアライメントが回復されている、請求項14に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【請求項17】
バヨネット管継手を備えて構成された、後方端部にある器具インターフェースを更に含む、請求項1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、本明細書において参照により援用されている2016年6月28日出願の米国特許仮出願第62/355,619号の利益を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、整形外科用の埋込み型デバイスに関し、より具体的には、脊椎を安定化させるための埋込み型デバイスに関する。更に具体的に言えば、本開示は、縮小されたサイズを有する第1の挿入構成から、拡張されたサイズを有する第2の埋込み構成への拡張を可能にする関節運動式機構を備える、拡張可能かつ角度調節可能な椎間ケージに関する。椎間ケージは、脊椎の矢状面バランス及びアライメントを復元させながら、前弯角度、特により大きな前弯角度を調節し適合させるように構成されている。
【背景技術】
【0003】
しばしばケージ又はスペーサとも呼ばれる、固定を促進する椎体間植込み型デバイスの使用は、特定の脊椎の障害又は疾患の治療に対する標準治療として周知である。例えば、ある種類の脊椎障害では、急性の傷害又は外傷、椎間板疾患又は単純に自然な老化過程が原因で、椎間板が劣化しているか又は損傷を受けている。健常な椎間板は、脊椎を安定させ、脊椎間に力を分散させると共に、椎体の衝撃を緩和するように働く。弱化した又は損傷を受けた椎間板は、したがって、力の不均衡及び脊椎の不安定性を生じ、結果として不快感及び苦痛をもたらす。典型的な治療は、それぞれ部分椎間板切除術又は全椎間板切除術として知られているプロセスにおいて、疾患のある又は損傷を受けた椎間板の一部分又は全部を外科的に除去することを伴い得る。椎間板切除術では多くの場合、その弱化した又は損傷を受けた脊椎部を安定化させるために、ケージ又はスペーサが後に挿入される。このケージ又はスペーサは、損傷が更に進行するのを回避するため、及び/又は損傷若しくは外傷によって引き起こされる疼痛を低減若しくは緩和するために、治療領域における可動性を低減又は抑制するように働く。更に、これらのタイプのケージ又はスペーサは、健常な椎間板高さを回復又は維持するために、機械的又は構造的スキャフォールドとして働き、また場合によっては、隣接する椎骨の間の骨融合を促進し得る。
【0004】
しかしながら、これらのタイプの手技の現状の問題の1つは、治療される椎骨領域へとケージを操作又は挿入するために外科医に与えられる作業空間が非常に限られていることである。椎間腔へのアクセスは、アクセスのために非常に狭い通路を残しながら、大動脈、大静脈、硬膜、及び神経根など、後退される隣接する血管及び組織の周りでナビゲーションすることを必要とする。椎間板の空間自体への開口もまた、比較的小さいものである。したがって、周囲の組織又は椎体自体を相当に損なうことなく挿入され得るケージの実際のサイズには物理的な限界が存在する。
【0005】
問題を更に複雑にしているのは、椎体は健常な脊椎において互いに対して平行に配置されていないという事実である。椎体の互いに対する角度関係が原因で、脊椎には自然な湾曲が存在する。理想的なケージは、椎体のこの角度関係に適応することができなければならず、さもなければ、ケージは、椎間腔の内側にあるときにも適切に収まらないことになる。不適切に適合されたケージは、定位置から追い出されるか又は移動し、時間を経て有効性を失い、悪くすると、既に弱化している領域に更なる損傷を与えることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、椎間板高さ又は治療される脊椎分節への脊椎骨のアライメントを回復させる機械的強度又は構造的完全性を有するだけでなく、狭いアクセス通路を通じて椎間腔へと容易に進み、次いで、特により大きな前弯角度に対して、この空間の角度の制約にも対処するように構成された、椎間ケージ又はスペーサを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、上述の問題に対処しかつ所望の目的を満たす脊椎植込み型デバイスについて記述するものである。これらの脊椎植込み型デバイス、より具体的に言えば、椎間ケージ又はスペーサは、拡張可能であるだけでなく角度調節可能となるように構成されている。このケージは、関節運動式の拡張又は調節機構によって連結された上部及び下部プレート構成要素を備え得るが、この調節機構は、少ない労力でケージがサイズ及び角度を必要に応じて変更することを可能にするものである。いくつかの実施形態では、ケージは、幅狭のアクセス通路を通じて椎間腔の中に挿入することを容易にするために挿入端部においてサイズが低減されていることを特徴とする、第1の挿入構成を有してもよい。ケージは、第1の縮小サイズで挿入され、次いで、植え込まれた後に第2の拡張サイズに拡張されてもよい。その第2の構成では、ケージは、適切な椎間板高さを維持し、矢状面バランス及びアライメントを回復させることによって脊椎を安定化させることが可能である。いくつかの実施形態では、椎間ケージは、ケージが自在に選択可能な(若しくは無段式の)方式で拡張してその第2の拡張構成に達することが可能となるように設計されてもよい。椎間ケージは、前弯の角度を調節することが可能となるように構成されており、第2の拡張構成において、より大きな前弯角度に適応し得る。更に、これらのケージは、隣接する椎体を不動化することによって脊椎安定性を更に向上させるように、固定を促進し得る。
【0008】
加えて、植込み可能なデバイスは、付加製造法の一形態である選択的レーザー溶融(SLM)を用いて製造されてもよい。これらのデバイスはまた、例えば、3D印刷、電子ビーム溶融(EBM)、層堆積、及びラピッドマニュファクチャリングなどの他の類似の技法によって製造されてもよい。これらの生産技法を用いると、構成要素を一体に保つために外部の固定又は取付け要素を更に必要とすることなく、相互連結されかつ移動可能な部品を有し得る一体型の多要素デバイスを創成することが可能である。したがって、本開示の椎間ケージは、互いに一体に保つために付加的な外部固定要素を必要としない、複数の相互連結された部品から形成される。
【0009】
更に関連することとして、この方式で製造されるデバイスは連結シームを有さないが、従来法で製造されるデバイスは、ある構成要素を別の構成要素に連結するための接合シームを有することになる。これらの連結シームは多くの場合、これらのシームの接合が反復的な使用によって若しくは応力を受けて時間と共に摩耗又は破損するときは特に、植込み型デバイスの弱化されたエリアを表し得る。付加製造法を用いて、開示される植込み型デバイスを製造することにより、利点の1つとして、連結シームは完全に回避され、したがってその問題も回避される。
【0010】
本デバイスの別の利点は、付加製造プロセスを用いてこれらのデバイスを製造することにより、デバイスの構成要素のすべて(すなわち、椎間ケージと拡張及びブロックのためのピンの両方)が、挿入プロセス及び拡張プロセスの間に、完全な構造を維持するということである。すなわち、複数の構成要素が集合的な単一のユニットとして同時に提供され、そのため、この集合的な単一のユニットは、患者の体内に挿入され、拡張が可能となるように作動され、次いで原位置でも依然として集合的な単一のユニットであることが可能になる。拡張のために外部の拡張ねじ又は楔を必要とする他のケージとは対照的に、本実施形態では、拡張及びブロック構成要素は、プロセスのいかなる段階においてもケージに挿入される必要もなく、ケージから取り外される必要もない。これは、これらの構成要素が、ケージの内部に捕捉されるように製造されており、またケージ内で自在に移動可能でありながらも、ケージ内に既に収容されており、そのため、付加的な挿入も取り外しも必要でないからである。
【0011】
いくつかの実施形態では、ケージは、骨接合を促進するために、孔、微細構造、及びナノ構造のネットワークを含む工学的セル構造を伴って作製され得る。例えば、工学的セル構造は、孔と、メッシュに似た外観を備えた他のマイクロ及びナノサイズ構造の相互連結ネットワークを備え得る。これらの工学的セル構造は、デバイスの表面をナノレベルで変化させるようにエッチング又はブラスチングすることによって設けられ得る。ある種類のエッチングプロセスでは、例えば、HF酸処理が利用され得る。加えて、これらのケージはまた内部の撮像用マーカーを含み得るが、そのマーカーは、ユーザーがデバイスを適切に位置合わせすることを可能にし、また一般に、ナビゲーション中に視覚化によって挿入を容易にするものである。撮像用マーカーは、例えば、X線、蛍光透視又はCTスキャンの下で、網目の中の中実体として現れる。
【0012】
本開示の植込み型デバイスによってもたらされる別の利点として、本植込み型デバイスは、患者のニーズに合わせて特別にカスタマイズされ得る。植込み型デバイスのカスタマイズは、植込み型デバイスと、例えば、各々が構造破壊に至る圧縮率の独特の様々なデータを有する皮質骨対海綿質、骨端対中心骨、及び強膜骨対骨減少性骨などの治療される様々な質及び種類の骨との間で弾性率を好ましく適合させることに関連する。同様に、例えば、多孔性対中実性、柱状対非柱状など、様々な移植片設計に関して、類似のデータがまた生成され得る。そのようなデータは、死体から生成されても、コンピュータ有限要素で生成されてもよい。例えば、DEXAデータとの臨床上の相関性はまた、強膜骨、正常骨、又は骨減少性骨に対して使用するために、植込み型デバイスを特別に設計することを可能にする。したがって、本明細書で示されるようなカスタマイズされた植込み型デバイスを提供する能力は、複雑体構造の弾性係数(EMOCS)の整合を可能にするが、このことは、不整合を最小限にし、沈下を緩和し、かつ治癒を最適化するように植込み型デバイスを設計し、それによってより良好な臨床成果をもたらすことを可能にする。
【0013】
例示的な一実施形態では、拡張可能な脊椎移植片が提供される。拡張可能な脊椎移植片は、第1の椎体の終板に対して配置されるように構成された上部プレート構成要素、及び隣接する第2の椎体の終板に対して配置されるように構成された下部プレート構成要素であって、上部及び下部プレート構成要素は、関節運動式継手において連結されている、上部プレート構成要素及び下部プレート構成要素と、シャフトと拡大ヘッド部分とを備えるブロックピンであって、ブロックピンが移植片の前端部に向かって前進されるときに拡張可能な脊椎移植片の角度調節を実現するように構成されている、ブロックピンと、を備え得る。関節運動式継手は、上部及び下部プレート構成要素の互いに対する旋回移動を可能にするように構成されてもよい。
【0014】
ブロックピンを含む脊椎移植片は付加生産技法によって製造され、ブロックピンは、内側に存在するが依然としてケージ内で移動可能となるように、別の構成要素として製造されてもよい。いくつかの実施形態では、拡張可能な脊椎移植片はPLIF(腰部後方椎間固定)ケージであってもよい。拡張可能な脊椎移植片は、プレート構成要素が、前方部分において互いに向かって角度をなし、次いで、中間の構成において互いに対して平行である、第1の構成と、プレート構成要素が互いにロックされかつ後方部分において互いに対して角度をなしている、第2の構成とを有してもよい。第2の構成では、移植片は前弯の角度を調節し、脊椎の矢状面バランス及びアライメントを回復させる。
【0015】
以下の議論は、脊椎移植片に焦点を当てたものであるが、それらの原理の多くは、膝、肩、足首又は指関節などの他の関節を含めて、ヒト又は動物の体内における骨修復又は骨固定を必要とする他の構造的身体部にも等しく適用され得ることが理解されよう。
【0016】
上述の一般的な説明及び以下の詳細な説明はどちらも具体例であって、例示だけを目的としており、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。本開示の更なる特徴は、この後に続く説明において部分的に記載されており、あるいは本開示の実践を通じて習得され得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本明細書に組み込まれ本明細書の一部となる添付の図面は、本開示のいくつかの実施形態を例示するものであり、また、説明と共に、本開示の原理を説明するのに役立つものである。
【0018】
図1】本開示による椎間ケージの例示的な実施形態の斜視図を示す。
図2A図1の椎間ケージの前面図を示す。
図2B図1の椎間ケージの側面図を示す。
図2C図1の椎間ケージの背面図を示す。
図2D図1の椎間ケージの頭尾図を示す。
図2E図1の椎間ケージの等角図を示す。
図3図1の椎間ケージ及びそれに関連するブロックピンの分解図を示す。
図4A】製造位置における図1の椎間ケージ及びそれに関連するブロックピンの側面図を示す。
図4B図4Aの椎間ケージ及びブロックピンの断面図を示す。
図5A図1の椎間ケージの上部プレート構成要素の様々な図を示しており、図5Aは側面図を示す。
図5B図1の椎間ケージの上部プレート構成要素の様々な図を示しており、図5Bは部分破断図を示す。
図5C図1の椎間ケージの上部プレート構成要素の様々な図を示しており、図5Cは斜視図を示す。
図6A図1の椎間ケージの下部プレート構成要素の様々な図を示しており、図6Aは側面図を示す。
図6B図1の椎間ケージの下部プレート構成要素の様々な図を示しており、図6Bは斜視図を示す。
図6C図1の椎間ケージの下部プレート構成要素の様々な図を示しており、図6Cは拡大背面図を示す。
図7A図3のブロックピンの様々な図を示しており、図7Aは上面図を示す。
図7B図3のブロックピンの様々な図を示しており、図7Bは斜視図を示す。
図8A図1の椎間ケージを拡張する方法を示しており、図8Aは、拡張の過程にわたるケージの側面図を示す。
図8B図1の椎間ケージを拡張する方法を示しており、図8Bは、拡張の過程にわたるケージの断面図を示す。
図8C図1の椎間ケージを拡張する方法を示しており、図8Cは、拡張の過程にわたるケージの側面図を示す。
図8D図1の椎間ケージを拡張する方法を示しており、図8Dは、拡張の過程にわたるケージの断面図を示す。
図8E図1の椎間ケージを拡張する方法を示しており、図8Eは、拡張の過程にわたるケージの側面図を示す。
図8F図1の椎間ケージを拡張する方法を示しており、図8Fは、拡張の過程にわたるケージの断面図を示す。
図8G図1の椎間ケージを拡張する方法を示しており、図8Gは、拡張の過程にわたるケージの側面図を示す。
図8H図1の椎間ケージを拡張する方法を示しており、図8Hは、拡張の過程にわたるケージの断面図を示す。
図8I図1の椎間ケージを拡張する方法を示しており、図8Iは、拡張の過程にわたるケージの側面図を示す。
図8J図1の椎間ケージを拡張する方法を示しており、図8Jは、拡張の過程にわたるケージの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示は、隣接する椎骨の間に挿入するための、椎体間固定スペーサ又はケージなどの様々な脊椎植込みデバイスを提供する。本デバイスは、脊椎の頚部又は腰部のいずれかにおいて使用されるように構成され得る。いくつかの実施形態では、これらのデバイスは、PLIFケージ、すなわち腰部後方椎間固定(posterior lumbar interbody fusion)ケージとして構成される。これらのケージは、治療される脊椎分節の椎間高さを回復及び維持し、矢状面バランス及びアライメントを回復させることによって脊椎を安定化させ得る。いくつかの実施形態では、ケージは、拡張及び角度調節を可能にするために関節継手を収容してもよい。この関節継手は、上部プレート構成要素と下部プレート構成要素が互いに対して移動することを可能にする。ケージは、幅狭のアクセス通路を通じて椎間腔の中に挿入することを容易にするために挿入端部の各々においてサイズが低減されていることを特徴とする、第1の挿入構成を有してもよい。ケージは、第1の縮小サイズで挿入され、次いで、植え込まれた後に第2の拡張サイズに拡張されてもよい。その第2の構成では、ケージは、適切な椎間板高さを維持し、矢状面バランス及びアライメントを回復させることによって脊椎を安定化させることが可能である。いくつかの実施形態では、椎間ケージは、ケージが自在に選択可能な(若しくは無段式の)方式で拡張してその第2の拡張構成に達することが可能となるように設計されてもよい。椎間ケージは、前弯の角度を調節することが可能となるように構成されており、第2の拡張構成において、より大きな前弯角度に適応し得る。更に、これらのケージは、隣接する椎体を不動化することによって脊椎安定性を更に向上させるように、固定を促進し得る。
【0020】
加えて、植込み可能なデバイスは、付加製造法の一形態である選択的レーザー溶融(SLM)を用いて製造されてもよい。これらのデバイスはまた、例えば、3D印刷、電子ビーム溶融(EBM)、層堆積、及びラピッドマニュファクチャリングなどの他の類似の技法によって製造されてもよい。これらの生産技法を用いると、構成要素を一体に保つために外部の固定又は取付け要素を更に必要とすることなく、相互連結されかつ移動可能な部品を有し得る一体型の多要素デバイスを創成することが可能である。したがって、本開示の椎間ケージは、互いに一体に保つために付加的な外部固定要素を必要としない、複数の相互連結された部品から形成される。
【0021】
更に関連することとして、この方式で製造されるデバイスは連結シームを有さないが、従来法で製造されるデバイスは、ある構成要素を別の構成要素に連結するための接合シームを有することになる。これらの連結シームは多くの場合、これらのシームの接合が反復的な使用によって若しくは応力を受けて時間と共に摩耗又は破損するときは特に、植込み型デバイスの弱化されたエリアを表し得る。付加製造法を用いて、開示される植込み型デバイスを製造することにより、連結シームは完全に回避され、したがって問題も回避される。
【0022】
いくつかの実施形態では、ケージは、骨接合を促進するために、孔、微細構造、及びナノ構造のネットワークを含む工学的セル構造を伴って作製され得る。例えば、工学的セルは、孔と、メッシュに似た外観を備えた他のマイクロ及びナノサイズ構造の相互連結ネットワークを備え得る。これらの工学的セル構造は、デバイスの表面をナノレベルで変化させるようにエッチング又はブラスチングすることによって設けられ得る。ある種類のエッチングプロセスでは、例えば、HF酸処理が利用され得る。加えて、これらのケージはまた内部の撮像用マーカーを含み得るが、そのマーカーは、ユーザーがケージを適切に位置合わせすることを可能にし、また一般に、ナビゲーション中に視覚化によって挿入を容易にするものである。撮像用マーカーは、例えば、X線、蛍光透視又はCTスキャンの下で、網目の中の中実体として現れる。
【0023】
本開示の植込み型デバイスによってもたらされる別の利点として、本植込み型デバイスは、患者のニーズに合わせて特別にカスタマイズされ得る。植込み型デバイスのカスタマイズは、植込み型デバイスと、例えば、各々が構造破壊に至る圧縮率の独特の様々なデータを有する皮質骨対海綿質、骨端対中心骨、及び強膜骨対骨減少性骨などの治療される様々な質及び種類の骨との間で弾性率を好ましく適合させることに関連する。同様に、例えば、多孔性対中実性、柱状対非柱状など、様々な移植片設計に関して、類似のデータがまた生成され得る。そのようなデータは、死体から生成されても、コンピュータ有限要素で生成されてもよい。例えば、DEXAデータとの臨床上の相関性はまた、強膜骨、正常骨、又は骨減少性骨に対して使用するために、植込み型デバイスを特別に設計することを可能にする。したがって、本明細書で示されるようなカスタマイズされた植込み型デバイスを提供する能力は、複雑体構造の弾性係数(EMOCS)の整合を可能にするが、このことは、不整合を最小限にし、沈下を緩和し、かつ治癒を最適化するように植込み型デバイスを設計し、それによってより良好な臨床成果をもたらすことを可能にする。
【0024】
ここで図面を参照すると、図1は、本開示の拡張可能かつ角度調節可能な椎間ケージ10の例示的な実施形態を示している。ケージ10は、一対の隣接する椎体の終板に対して配置するように構成された一対の関節運動式シェル又はプレート構成要素20、40を備えてもよい。一実施形態では、関節運動式プレート構成要素は、終板に対して配置するための平坦な表面を含んでもよい。
【0025】
図2A~2Eに更に詳細に示すように、図2Aはケージ10の前面図を示し、図2Bはケージ10の側方又は側面図を示し、図2Cはケージ10の背面図を示し、図2Dはケージ10の頭尾図を示し、図2Eはケージ10の等角図を示しており、ケージ10は、関節運動式継手において互いに対して関節運動するように構成された上部プレート構成要素20と下部プレート構成要素40とを備えてもよい。本実施形態では、プレート構成要素20、40の移動は、これらの構成要素20、40の間に存在する関節運動式継手機構によって実現され得るようになっており、構成要素20、40の内部表面は互いに対してスライドすることが可能である。換言すれば、下部プレート構成要素40は基部として働き、上部プレート構成要素20は、基部40に対してシーソーに似た運動で前後に揺動する。
【0026】
図3は、本実施形態の椎間ケージ10とブロックピン60のアセンブリの分解図を示している。基部又は下部プレート構成要素40は、ブロックピン60を受容するためのスロット又はキャビティ48を有する内部ハウジング42を備えてもよい。このスロット又はキャビティ48は、ケージ10の第2の後端部14において、ハウジング42の背部にあるポート又はチャネル44と連通して、ハウジング42内でピン60を受容し移動させ得る。ハウジング42の各側部に突出部又はノブ52がある。図示のように、ノブ52は、基部40に対して上部プレート構成要素20が平滑に関節運動式で移動することを可能にするために、平滑な表面を有してもよい。いくつかの実施形態では、これらのノブ52は丸み付きであり、上部プレート構成要素20の溝28に対して相補的な形状を備えて構成される。上部プレート構成要素20は、ハウジング42に被さって、またそのハウジングの頂部に着座するように構成されてもよい。上部プレート構成要素20及び下部プレート構成要素40は、望まれる場合、ケージ10の第1の前端部12における自由端部において先細であってもよい。
【0027】
更に図示するように、ピン60は、拡大ピンヘッド68を取り付けられた細長シャフト64を備えてもよい。更に図示するように、拡大ヘッド部分68は、ショルダ72又はノッチ付き部分を含んでもよい。使用の際、ピン60は、下部プレート構成要素又は基部40に対して上部プレート構成要素20を傾斜又は旋回させるように働き、また、最終的な構成が達せられると、構成要素20、40の移動を阻止し、そのため、その位置はロックされ得るようになり、更なる移動は生じなくなる。
【0028】
上述のように、本開示の植込み型デバイスは、最終的な組み立てられたデバイスへのすべての構成要素の加工が生成的/付加的生産技法(例えば、選択的レーザー溶融(SLM)又は上述した他の同様の技法)によって一段階で達成されるような方式で製造され得る。図4A及び4Bは、ケージ10及びブロックピン60がそのような技法の下でどのようにして互いに入れ子にして製造され得るかを示す、例示的な製造構成を示している。これらの副構成要素を無傷にかつ互いに相互作用するように維持するためにいかなる付加的な外部固定要素も必要としない対話型構成要素を備えた多要素アセンブリを提供するために、どのようにして生成的/付加的生産技法の利点が利用され得るかに留意されたい。図で分かるように、ケージ10にブロックピン60を加えた全体的なアセンブリは、可動内部部品を有する1つのユニットとして同時に生産されてもよい。
【0029】
先述のように、この方式で製造されるデバイスは連結シームを有さないが、従来法で製造されるデバイスは、ある構成要素を別の構成要素に連結するための接合シームを有することになる。これらの連結シームは多くの場合、これらのシームの接合が反復的な使用によって若しくは応力を受けて時間と共に摩耗又は破損するときは特に、植込み型デバイスの弱化されたエリアを表し得る。付加製造法を用いて、開示される植込み型デバイスを製造することにより、これらのデバイスに伴う利点の1つとして、連結シームは完全に回避され、したがってその問題も回避される。
【0030】
本デバイスの別の利点は、付加製造プロセスを用いてこれらのデバイスを製造することにより、デバイスの構成要素のすべて(すなわち、椎間ケージと拡張及びブロックのためのピンの両方)が、挿入プロセス及び拡張プロセスの間に、完全な構造を維持するということである。すなわち、複数の構成要素が集合的な単一のユニットとして同時に提供され、そのため、この集合的な単一のユニットは、患者の体内に挿入され、拡張が可能となるように作動され、次いで原位置でも依然として集合的な単一のユニットであることが可能になる。拡張のために外部の拡張ねじ又は楔を必要とする他のケージとは対照的に、本実施形態では、拡張及びブロック構成要素は、プロセスのいかなる段階においてもケージに挿入される必要もなく、ケージから取り外される必要もない。これは、これらの構成要素が、ケージの内部に捕捉されるように製造されており、またケージ内で自在に移動可能でありながらも、ケージ内に既に収容されており、そのため、付加的な挿入も取り外しも必要でないからである。
【0031】
図5A~5Cは、本開示の椎間ケージ10の上部プレート構成要素20をより詳細に示している。図示のように、上部プレート構成要素20は、一対の延長アーム又は側壁24を備えてもよく、それらの間に、ピン60を受容すると共に基部40のハウジング42と協働するように構成されたキャビティ又はスロット26がある。延長側壁24の各々は、アンダーカットされた表面又は溝28を含んでもよい。溝28は、基部40のノブ52を受容しかつそのノブと協働するように構成されてもよく、また図示の一実施形態では丸み付きの形状を有してもよい。図示のように、上部プレート構成要素20は、ノブ52が側壁24の溝28の内側に適合するように、延長アーム又は側壁24がハウジング42に被さって適合した状態で、下部プレート構成要素40に被さりかつその上に適合する。内部キャビティ26は、傾斜表面34及びブロック表面36を更に含んでもよく、それらの特徴については、以下で更に詳細に説明することにする。
【0032】
図6A~6Cは、本開示の椎間ケージ10の下部プレート構成要素40又は基部をより詳細に示している。図示のように、また先述のように、下部プレート構成要素40は、ハウジング42と、その中のキャビティ又はスロット48とを備えてもよい。このキャビティ48は、ブロックピン60を受容するように構成されてもよく、また案内表面50を含んでもよい。ハウジング42のいずれかの側部の外部表面上に、ノブ又は突出部52がある。これらの突出部52は、上部プレート構成要素20の溝28を補完するか若しくはそれと整合する平滑な成形表面を有して、これらの構成要素を互いに適合させ、また互いに対して移動させ、それによって、上部プレート構成要素20と下部プレート構成要素40との間に関節運動式継手を形成してもよい。ハウジング42はまた、その側部にストップランプ56を含んでもよい。
【0033】
ケージ10の第2の後端部14の近くの基部40の後方に、ピンシャフト64を受容するためのポート又はチャネル44が存在する。チャネル44を器具インターフェース80が囲繞しており、これは図6Cにおいて拡大詳細図で確認され得る。器具インターフェース80は、例えば送達器具がデバイス10に取り付けられるようにするために、バヨネット型の連結に適合するように構成されてもよい。器具インターフェース80は、外側接触表面82と、バヨネット管継手84と、器具挿入のためのチャネル44を囲繞する凹部86と、ポート又はチャネル44によって設けられた円筒状案内表面88と、を含んでもよい。集合的に、器具インターフェース80は、植込み型デバイス10を挿入するための送達器具及び/又はブロックピン60を回転させるための工具を含めた他の器具への取付けのための必要な構造を設けている。
【0034】
図7A及び7Bは、本開示の椎間ケージ10と共に使用され得るブロックピン60の細部を示している。ブロックピン60は、拡大ピンヘッド68を取り付けられた細長シャフト64を備えてもよい。ピンヘッド68は、案内表面70と、ショルダ部分72とを有してもよい。ショルダ部分72は調節表面として働くものであり、またリッジ74に隣接してもよく、このリッジは、上部プレート構成要素20のストップランプ56に押し付けられると、バンパー又はショルダストップとして働くものである。
【0035】
図8A~8Jは、本開示の椎間ケージ10を拡張及び角度調節するプロセスを示している。初期の挿入段階又は構成では、拡張可能なケージ10は、圧縮され低減されたサイズを有し得るが、それによって、上部プレート構成要素20及び下部プレート構成要素40は、図8A及び8Bに示すように、ケージ10の第1の前端部12において互いに向かって、又は前方に向かって角度をなす。これにより、挿入を容易にするために、先細ノーズ又は先端チップ、及び最も薄い輪郭(すなわち、最小の前方高さ)が形成されるが、このことは、植込み部位への最も狭いアクセス通路を横切るのに特に有利である。いくつかの実施形態では、プレート構成要素20、40の端部はまた、所望により、傾斜又は勾配を含み得る。プレート構成要素20、40はそれぞれ、椎体の終板と接触し、その終板を押圧するための平坦な外部表面を含んでもよい。
【0036】
ブロックピン60は、第1の挿入構成においてケージ10内に存在するように付加製造され得るものであり、プレート構成要素20、40の旋回と干渉することはなく、この時点では非活動状態にあると見なされ得る。図示のように、ブロックピン60は、ハウジング42のキャビティ48内で静止しているが、この構成では、プレート構成要素20、40の傾斜表面34又はショルダ52と当接しない。
【0037】
図8C及び8Dは、中間位置又は構成にあるケージ10を示している。この構成では、上部プレート構成要素20と下部プレート要素40は互いに平行であり、椎間ケージ10の取り得る最小の挿入高さを規定する。ブロックピン60はこの中間構成において、前方に又は第1の前端部12に向かって前進しており、拡大ヘッド68は上部プレート構成要素20を圧迫していることに留意されたい。図8E及び8Fに示すように、ケージ10が狭いアクセス通路を通じて椎間/椎間板の空間の中へと進むと、ブロックピン60は、引き続き前進され得る。ブロックピン60が前方に又は第1の前端部12に向かって前進する結果として、上部プレート構成要素20が下部プレート構成要素40に対して旋回することになる。図示のように、プレート構成要素20、40は角度をなし、あるいは部分的に開放され、前方高さは後方の高さよりも高くなる。
【0038】
図8G及び8Hは、引き続き能動的調節段階にある、ケージ10及びケージ10の後方における荷重伝達を示している。ブロックピン60が前方に前進されるとき、プレート構成要素20、40は後方に向かって引き続き角度をなし、前方に向かってますます開放される。図8I及び8Jに示すように、ケージ10はここで、完全に調節されたときに可能となる最大の前方高さを有しており、このとき、ブロックピン60は、上部及び下部プレート構成要素20、40のハウジング42及びキャビティ26、48内で最も前方の位置にある。この構成では、荷重伝達はケージ10の後方にあり、ケージ10は完全に拡張又は調節されており、ブロック又はロックされた位置にある。拡大ピンヘッド68のショルダ72及びリッジ74は、上部プレート構成要素20の傾斜表面34及びブロック表面36と当接する。
【0039】
この最終的な拡張位置では、ケージ10は、脊椎分節の前弯角度に適応する上で効果的であり、矢状面バランス及び脊椎へのアライメントを回復させ得る。プレート構成要素20、40は、椎体の終板を押圧するように構成されており、ここでこの領域を不動化及び安定化させ得る。上述のように、本開示の椎間ケージは、狭いアクセス通路を通じて挿入されることが可能となるように構成されているが、拡張及び角度調節されることが可能であり、そのため、ケージは、脊椎分節の前弯の角度を調節することが可能となっている。ノブ52が溝28の内側で関節運動する継手において平滑に旋回し得ることにより、上部プレート構成要素20は基部又は下部プレート構成要素40に対して効果的にシーソー運動して、より大きな角度の前弯に対処及び適応するように、挿入のために前方を非常に薄く、また埋込み後に前方をより大きくすることを可能にし得る。
【0040】
上述のように、本開示の椎間ケージは、狭いアクセス通路を通じて挿入されることが可能となるように構成されているが、拡張及び角度調節されることが可能であり、そのため、ケージは、脊椎分節の前弯の角度を調節することが可能となっている。関節運動式継手において平滑に転動し得ることにより、上部プレート構成要素20は基部又は下部プレート構成要素40に対して効果的にシーソー運動して、より大きな角度の前弯に対処及び適応するように、挿入のために前方を非常に薄く、また埋込み後に前方をより大きくすることを可能にし得る。加えて、ケージは、脊椎の矢状面バランス及びアライメントを効果的に回復させることができ、また脊椎分節を不動化及び安定化させるために固定を促進し得る。
【0041】
拡張可能なケージ10が固定を促進する能力に関して言えば、骨の治癒及び固定に関する多数の生体外及び生体内研究が示すこととして、多孔性は血管新生を可能にするために必要であり、また、新たな骨成長を促進するための所望の下部構造は、細胞付着、細胞移動、細胞増殖及び細胞分化に関して最適化された表面特性を備えた、多孔性の連続した孔ネットワークを有するべきである。同時に、新たな細胞活動のために適当な構造的支持又は機械的完全性をもたらす移植片の能力は臨床的成功を達成するための主要因であると考える人が多数いる一方で、重要な特徴としての多孔性の役割を協調する人もいる。他の態様と比較した一態様の相対的な重要性に関わらず、明らかなことは、安定化させるための構造的完全性、及び細胞成長を支援するための多孔性構造の両方が、適切でかつ持続可能な骨の再成長のための重要な要素である。
【0042】
したがって、これらのケージ10は、中実性と多孔性の特徴両方を同時に有し得る一体的な本体を形成することによってデバイスをより良好にカスタマイズすることを可能にする、現在の付加製造技法を利用し得る。いくつかの実施形態では、ケージ10は多孔性の構造を有し、骨接合を促進するために、孔、微細構造、及びナノ構造のネットワークを含む工学的セル構造を伴って作製され得る。例えば、工学的セル構造は、孔と、メッシュに似た外観を備えた他のマイクロ及びナノサイズ構造の相互連結ネットワークを備え得る。これらの工学的セル構造は、デバイスの表面をナノレベルで変化させるようにエッチング又はブラスチングすることによって設けられ得る。ある種類のエッチングプロセスでは、例えば、HF酸処理が利用され得る。これらの同じ製造技法が、これらのケージに内部の撮像用マーカーを設けるために用いられ得る。例えば、これらのケージはまた、内部の撮像用マーカーを含み得るが、そのマーカーは、ユーザーがケージを適切に位置合わせすることを可能にし、また一般に、ナビゲーション中に視覚化によって挿入を容易にするものである。撮像用マーカーは、例えば、X線、蛍光透視又はCTスキャンの下で、網目の中の中実体として現れる。ケージは、単一のマーカーを備えても、複数のマーカーを備えてもよい。ナビゲーション及び植込みの間の視覚化を改善するために1つ又は2つ以上のマーカーを内部に埋め込まれたケージを製造することが可能であるため、これらの内部の撮像用マーカーは、ケージを植え込む容易性及び精度を大いに促進する。
【0043】
本開示の植込み型デバイスによってもたらされる別の利点として、本植込み型デバイスは、患者のニーズに合わせて特別にカスタマイズされ得る。植込み型デバイスのカスタマイズは、植込み型デバイスと、例えば、各々が構造破壊に至る圧縮率の独特の様々なデータを有する皮質骨対海綿質、骨端対中心骨、及び強膜骨対骨減少性骨などの治療される様々な質及び種類の骨との間で弾性率を好ましく適合させることに関連する。同様に、例えば、多孔性対中実性、柱状対非柱状など、様々な移植片設計に関して、類似のデータがまた生成され得る。そのようなデータは、死体から生成されても、コンピュータ有限要素で生成されてもよい。例えば、DEXAデータとの臨床上の相関性はまた、強膜骨、正常骨、又は骨減少性骨に対して使用するために、植込み型デバイスを特別に設計することを可能にする。したがって、本明細書で示されるようなカスタマイズされた植込み型デバイスを提供する能力は、複雑体構造の弾性係数(EMOCS)の整合を可能にするが、このことは、不整合を最小限にし、沈下を緩和し、かつ治癒を最適化するように植込み型デバイスを設計し、それによってより良好な臨床成果をもたらすことを可能にする。
【0044】
脊椎の頚部又は腰部のいずれかにおいて使用するための椎体間固定ケージを含めて、様々な脊椎移植片が本開示によって提供され得る。腰部後方椎間固定(PLIF)デバイスのみが示されているが、頚部椎間固定(CIF)デバイス、経大後頭孔腰部椎間固定(TLIF)デバイス、腰部前方椎間固定(ALIF)ケージ、腰部外側椎間固定(LLIF)ケージ、及び腰部斜方椎間固定(OLIF)ケージにおいても同じ原理が利用され得ると考えられる。
【0045】
本開示の他の実施形態は、本明細書に開示される本開示の仕様又は実施を考慮すれば当業者には自明であろう。仕様及び実施例は例示としてのみ考慮されることが意図されている。
【0046】
〔実施の態様〕
(1) 拡張可能な脊椎移植片であって、
第1の椎体の終板に対して配置されるように構成された上部プレート構成要素、及び隣接する第2の椎体の終板に対して配置されるように構成された下部プレート構成要素であって、前記上部及び下部プレート構成要素は、関節運動式継手において連結されている、上部プレート構成要素及び下部プレート構成要素と、
シャフトと拡大ヘッド部分とを備えるブロックピンであって、前記ブロックピンが前記移植片の前端部に向かって前進されるときに前記拡張可能な脊椎移植片の角度調節を実現するように構成されている、ブロックピンと、を備える、拡張可能な脊椎移植片。
(2) 前記ブロックピンを含む前記脊椎移植片は、付加生産技法によって製造されている、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(3) 前記移植片は、いかなる連結シームも有さない、実施態様2に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(4) 前記ブロックピンは、前記拡張可能な脊椎移植片の前記上部及び下部プレート構成要素の内側に存在するように製造されている、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(5) 前記上部プレート構成要素は一対の延長された側壁を備え、各プレートは内部表面上に溝を有し、前記下部プレート構成要素は、前記上部プレート構成要素の前記溝内に受容されるように構成された突出部を外部表面の両側に有するハウジングを備える、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【0047】
(6) 前記関節運動式継手は、前記上部及び下部プレート構成要素の互いに対する旋回移動を可能にする、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(7) 前記上部プレート構成要素又は下部基部構成要素のいずれかが、前記第1の椎体又は前記隣接する第2の椎体のいずれかの前記終板に対して配置するための平坦な表面を含む、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(8) 前記ブロックピンは、最も前方の位置において前記上部及び下部プレート構成要素を互いにロックする、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(9) 前記上部及び下部プレート構成要素は、それらの自由端部の一方において先細になっている、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(10) PLIFケージとして更に構成されている、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【0048】
(11) 多孔性の構造を更に含む、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(12) 前記多孔性の構造は工学的セル構造を含む、実施態様11に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(13) 前記多孔性の構造はメッシュに似た構造を含む、実施態様11に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(14) 内部の撮像用マーカーを更に含む、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(15) 前記プレート構成要素が前記脊椎移植片の前方部分において互いに向かって角度をなしている、第1の構成を有する、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
【0049】
(16) 前記プレート構成要素が互いに対して平行である、中間の構成を有する、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(17) 前記プレートが互いにロックされかつ前記脊椎移植片の後方部分において互いに向かって角度をなしている、第2の構成を有する、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(18) 前記第2の構成において、前記移植片は、前記椎体間の前弯の角度を調節する、実施態様17に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(19) 前記第2の構成において、前記脊椎の矢状面バランス及びアライメントが回復されている、実施態様17に記載の拡張可能な脊椎移植片。
(20) バヨネット管継手を備えて構成された、後方端部にある器具インターフェースを更に含む、実施態様1に記載の拡張可能な脊椎移植片。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図8I
図8J