(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】プロピレンとプロパンとの分離のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
C07C 7/04 20060101AFI20220207BHJP
C07C 11/06 20060101ALI20220207BHJP
C07C 9/08 20060101ALI20220207BHJP
B01D 3/14 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
C07C7/04
C07C11/06
C07C9/08
B01D3/14 A
(21)【出願番号】P 2019513048
(86)(22)【出願日】2017-08-21
(86)【国際出願番号】 IB2017055047
(87)【国際公開番号】W WO2018047030
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-08-19
(32)【優先日】2016-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ヴィリゲンブルク,ヨリス
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02769309(US,A)
【文献】国際公開第2016/006604(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0041549(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離システムを使用してプロピレンとプロパンとを含む供給ストリームを分離する
方法であって、
前記分離システムは、
i)ブロピレンを含む軽質ストリーム(304)とプロパンを含む重質ストリーム(302、312)とを生成する蒸留塔(C-301)、
ii)第一重質ストリームの一部(302)を再沸騰させて沸騰重質ストリーム(303)を生成するためのリボイラ(H-301)、
iii)前記軽質ストリーム(304)を冷却して凝縮軽質ストリーム(305)を生成するための凝縮器(H-302)、および、
iv)
前記凝縮器(H-302)から水(332)を受け取り、循環冷媒の気化によって冷水(331)を供給するための吸収式冷凍機(Y-301)であって、前記冷媒の循環のための熱を提供するべく廃熱源から熱水(321)を受けとり、冷却熱水(322)を提供するように構成され、前記凝縮器(H-302)は、前記軽質ストリーム(304)の前記冷却が前記吸収式冷凍機(Y-301)からの前記冷水(331)によって行われるように構成されている吸収式冷凍機(Y-301)、を備
え、
a)前記供給ストリームを前記蒸留塔(C-301)に供給し、第一重質ストリームの一部(312)を前記分離システムから回収する工程と、
b)前記重質ストリームの一部(302)を前記リボイラ(H-301)に供給するとともに、沸騰した重質ストリーム(303)を前記蒸留塔(C-301)に返送する工程と、
c)凝縮された軽質ストリームの一部(308)を還流として前記蒸留塔(C-301)に返送して、前記凝縮軽質ストリームの一部(310)を前記分離システムから回収する工程と、を備え、
かつ、前記熱水(321)は急冷水である方法。
【請求項2】
前記供給ストリームは、当該供給ストリームの全部に対して、2~98重量%のプロピレンおよび98~2重量%のプロパンを含む請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記供給ストリームは、当該供給ストリームの全部に対して、40~70重量%のプロピレンおよび60~40重量%のプロパンを含む請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記供給ストリームは、当該供給ストリームの全部に対して、80~98重量%のプロピレンおよび20~2重量%のプロパンを含む請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記供給ストリームはプロパン脱水素化プロセスの生成物である請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記吸収式冷凍機(Y-301)からの前記冷水(343)は、最高で10
℃の温度を有する請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記吸収式冷凍機(Y-301)からの前記冷水(343)は、最高で15
℃の温度を有する請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記熱水(321)は、70~95℃の温度を有する請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
前記
急冷水は、熱回収によって加熱された
ものである請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
前記
急冷水は、スチームクラッキングプロセスにおいて使用される
もので
ある請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
前記分離システムから収集された前記第一重質ストリームの前記一部(312)は、少なくとも80重量%のプロパン
を含む請求項
1に記載の方法。
【請求項12】
前記熱水は、スチームクラッキングプロセスにおいて使用される急冷水であり、75~85℃の温度を有する請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
前記供給ストリームはプロパン脱水素化プロセスの生成物である請求項
2に記載の方法。
【請求項14】
前記吸収式冷凍機(Y-301)からの前記冷水(343)は、最高で10
℃の温度を有する請求項
2に記載の方法。
【請求項15】
前記吸収式冷凍機(Y-301)からの前記冷水(343)は、最高で15
℃の温度を有する請求項
2に記載の方法。
【請求項16】
前記熱水(321)は、70~95℃の温度を有する請求項
2に記載の方法。
【請求項17】
前記
急冷水は、熱回収によって加熱された
ものである請求項
2に記載の方法。
【請求項18】
前記分離システムから回収された前記凝縮軽質ストリームの前記一部(310)は、少なくとも98重量%のプロピレンを含む請求項
2に記載の方法。
【請求項19】
分離システムを使用してプロピレンとプロパンとを含む供給ストリームを分離する方法であって、
前記分離システムは、
i)ブロピレンを含む軽質ストリーム(304)とプロパンを含む重質ストリーム(302、312)とを生成する蒸留塔(C-301)、
ii)第一重質ストリームの一部(302)を再沸騰させて沸騰重質ストリーム(303)を生成するためのリボイラ(H-301)、
iii)前記軽質ストリーム(304)を冷却して凝縮軽質ストリーム(305)を生成するための凝縮器(H-302)、および、
iv)前記凝縮器(H-302)から水(332)を受け取り、循環冷媒の気化によって冷水(331)を供給するための吸収式冷凍機(Y-301)であって、前記冷媒の循環のための熱を提供するべく廃熱源から熱水(321)を受けとり、冷却熱水(322)を提供するように構成され、前記凝縮器(H-302)は、前記軽質ストリーム(304)の前記冷却が前記吸収式冷凍機(Y-301)からの前記冷水(331)によって行われるように構成されている吸収式冷凍機(Y-301)、を備え、
a)前記供給ストリームを前記蒸留塔(C-301)に供給し、第一重質ストリームの一部(312)を前記分離システムから回収する工程と、
b)前記重質ストリームの一部(302)を前記リボイラ(H-301)に供給するとともに、沸騰した重質ストリーム(303)を前記蒸留塔(C-301)に返送する工程と、
c)凝縮された軽質ストリームの一部(308)を還流として前記蒸留塔(C-301)に返送して、前記凝縮軽質ストリームの一部(310)を前記分離システムから回収する工程と、を備え、かつ、前記吸収式冷凍機(Y-301)からの前記冷却熱水(322)は、前記沸騰重質ストリーム(303)を生成するための熱を提供するために前記リボイラ(H-301)に供給される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、2016年9月7日出願のヨーロッパ特許出願第16187525.7号の権利を主張するものである。この出願の開示内容のその全体をここに参考文献として合体させる。
【0002】
〔発明の分野〕
本発明は、プロピレンとプロパンとを含む供給ストリームを分離するための分離システムに関する。本発明はさらに、そのような供給ストリームを分離する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
プロピレン(プロペン)のプロパンからの分離は、Zimmermann, H, Walzl, R, 2009, Ethylene. Ullman’s Encyclopedia of Industrial Chemistry(非特許文献1)に記載されているように、周知である。プロピレン精留によってプロピレンを、プロパンから、化学グレードのオーバーヘッド生成物(典型的には93~95重量%)、または、より多くのケースではポリマーグレードのプロピレン(>98重量%)として、分離する。ポリマーグレードのプロピレンへの分離は、プロピレンとプロパンとの沸点が近いために、典型的には150~230段と還流比20とを必要とする。この困難な分離作業に適用される基本的プロセスの1つは、オーバーヘッド凝縮器内の冷却水およびリボイラ内のホットクエンチ(急冷)水を用いて、約1800kPaでポリマーグレード精留塔を操作することである。ナフサ分解の場合であって、十分な廃熱がホットクエンチ水サイクルから利用可能である場合には、これは最も経済的な方法である。
【0004】
凝縮器は、圧力の低下によってコスト低下がもたらされるので、冷却水によって達成されうる最も低い圧力で作動するべきである。冷却水は典型的には20~30℃の温度を有する。プロピレンとプロパンとを含む供給ストリームを分離するための公知の分離システムの一例が
図1に示されている。
【0005】
図1の例では、5重量%のプロパンと95重量%のプロピレンとを含有する20t/hの液体C3生成物101を、160の段と4メートルの直径とを有する蒸留塔C-101の段78に供給する。塔C-101での圧力降下は1.3barである。リボイラH-101は18.8MW
thのデューティを有し、235t/hの蒸気103を生成する。蒸留塔C-101は頂部で215t/hの蒸気104を生成し、これは凝縮器H-102内で冷却水に対して凝縮され、これが容器V-101に送られる。容器V-101内において、196t/hの凝縮蒸気が還流109としてポンプで戻され、19t/hの99%純度プロピレンが生成物ストリーム111として生成される。凝縮器H-102からの熱は20~30℃の温度を有する冷却水へと排除される。この場合、凝縮器H-102は16bar
aの圧力で作動する。塔は、フラッディング速度の79%の蒸気速度で操作される。凝縮器H-102の高圧によって蒸留はより困難となり、大量の還流を必要とする。大量の還流の結果、塔内の高速の蒸気および液体ストリームに適応するためには、塔のフラッディングを回避するために塔の直径を大きくする必要がある。
【0006】
したがって、この例のように20~30℃の冷却水を使用してフラッディング速度の79%の蒸気速度で運転するためには、凝縮器圧力は16baraになり、これによって蒸留塔C-101の段78に供給される液体C3生成物101の量が20t/hに制限される。
【0007】
凝縮器の圧力を低下させるための1つの公知の方法は、蒸留塔からの蒸気用に圧縮機を使用することである。
図2は、プロピレンとプロパンとを含む供給ストリームを分離するための分離システムを示しており、ここでは圧縮機が使用されている。
図2の例において、蒸気204は9bar
aで蒸留塔C-201から出て、K-201によって圧縮されて14bar
aの圧縮蒸気205を得る。この圧縮蒸気205は熱交換器H-201に供給される。当該熱交換器H-201において、圧縮蒸気205は蒸留塔C-201からの液体202を再沸騰させるために熱を与えて203を得る。圧縮蒸気205は凝縮されてストリーム206を得る。次に、ストリーム206は容器V-201に送られ、ここで、ストリーム206の一部208が還流としてポンプで戻され、ストリーム206の一部210はプロピレン生成物ストリームとしてシステムから取り出される。このシステムの不利な点は、それが作動するために圧縮機を必要とすることである。圧縮機が機能するには、電気(モーター駆動)や高圧蒸気(蒸気タービン駆動)などの高価値のエネルギーが必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Zimmermann, H, Walzl, R, 2009, Ethylene. Ullman’s Encyclopedia of Industrial Chemistry
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、上記のおよび/またはその他の問題が解決される、プロピレンおよびプロパンを含む供給ストリームを分離するためのシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、プロピレンとプロパンとを含む供給ストリームを分離するための分離システムを提供し、当該システムは、
i)ブロピレンを含む軽質ストリームとプロパンを含む重質ストリームとを生成する蒸留塔、
ii)第一重質ストリームの一部を再沸騰させて沸騰重質ストリームを生成するためのリボイラ、
iii)軽質ストリームを冷却して凝縮軽質ストリームを生成するための凝縮器、および、
iv)水を受け取り、循環冷媒の気化によって冷水を供給するための吸収式冷凍機であって、当該吸収式冷凍機は、冷媒の循環のための熱を提供するべく廃熱源から熱水を受けとり、冷却済み熱水を提供するように構成されている吸収式冷凍機、を備え、
ここで、凝縮器は、軽質ストリームの冷却が、吸収式冷凍機からの冷水によって行われるように構成されている。
【0011】
用語「約」または「およそ」は、当業者によって理解されるものに近いと定義される。非限定的な一実施形態では、この用語は10%以内、好ましくは5%以内、より好ましくは1%以内、最も好ましくは0.5%以内であると定義される。
【0012】
用語「重量%」、「容積%」または「モル%」は、それぞれ、総重量、総容積、または総モル数に基づいて、成分の重量百分率、容積百分率、またはモル百分率を指す。非限定的な具体例では、これらの用語は、100モルの材料中の10モルの成分が、10モル%の成分である。
【0013】
用語「実質的に」およびその変形は、10%以内、5%以内、1%以内、または0.5%以内の範囲を含むと定義される。
【0014】
請求項および/または明細書で使用されるときの用語「阻害する」、「低減する」、「防止する」、「回避する」、またはこれらの用語の任意の変形は、所望の結果を達成するための任意の測定可能な減少または完全な阻害を含む。
【0015】
「有効」という用語は、その用語が明細書および/または請求項において使用されている場合、所望の、予想される、または意図された結果を達成するために適切であることを意味する。
【0016】
請求項または明細書において用語「comprising」、「including」、「containing」、または「having」とともに使用される場合の「1つの(“a” or “an”)」という用語の使用は、「1つ」を意味するかもしれない。しかしそれはまた、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、および「1つ以上」の意味とも矛盾しない。
【0017】
「comprising」(および「comprise」や「comprises」などの任意の語形)、「having」(および「have」や「has」などのhavingの任意の語形)、「including」(および「includes」や「include」などのincludingの任意の語形)、または「containing」(および「contains」や「contain」などのcontainingの任意の語形)は、オープンエンドであって、追加の記載されていない要素または方法工程を除外するものではない。
【0018】
本発明の方法は、本明細書を通じて開示されている特定の成分、成分、組成物などを「含む」、「から本質的になる」、または「からなる」ものとすることができる。
【0019】
本発明の文脈において、13の態様が記載される。態様1は、プロピレンとプロパンとを含む供給ストリームを分離するための分離システムである。このシステムは、ブロピレンを含む軽質ストリームとプロパンを含む重質ストリームとを生成する蒸留塔、ii)第一重質ストリームの一部を再沸騰させて沸騰重質ストリームを生成するためのリボイラ、iii)軽質ストリームを冷却して凝縮軽質ストリームを生成するための凝縮器、および、iv)水を受け取り、循環冷媒の気化によって冷水を供給するための吸収式冷凍機、を含み、ここで、吸収式冷凍機は、冷媒の循環のための熱を提供するべく廃熱源から熱水を受けとって冷却熱水を提供するように構成され、凝縮器は、吸収式冷凍機からの冷水によって軽質ストリームを冷却するように構成されている。態様2は、態様1の分離システムを使用してプロピレンとプロパンとを含む供給ストリームを分離する方法であって、ここで、当該方法は、a)供給ストリームを蒸留塔に供給し、第一重質ストリームの一部を分離システムから回収する工程と、b)重質ストリームの一部をリボイラに供給するとともに、沸騰した重質ストリームを蒸留塔に返送する工程と、c)凝縮された軽質ストリームの一部を還流として蒸留塔に返送して、凝縮軽質ストリームの一部を分離システムから回収する工程と、を有する。態様3は、態様2の方法であって、ここで、吸収式冷凍機からの冷却熱水は、沸騰重質ストリームを生成するための熱を提供するためにリボイラに供給される。態様4は、態様2または3のいずれかの方法であって、ここで、供給ストリームは、当該供給ストリームの全部に対して、2~98重量%のプロピレンおよび98~2重量%のプロパンを含む。態様5は、態様2または3のいずれかの方法であって、ここで、供給ストリームは、当該供給ストリームの全部に対して、40~70重量%のプロピレンおよび60~40重量%のプロパンを含む。態様6は、態様2または3のいずれかの方法であって、ここで、供給ストリームは、当該供給ストリームの全部に対して、80~98重量%のプロピレンおよび20~2重量%のプロパンを含む。態様7は、態様2~6のいずれかの方法であって、ここで、供給ストリームはプロパン脱水素化プロセスの生成物である。態様8は、態様2または3のいずれかの方法であって、ここで、吸収式冷凍機からの冷水は、最高で10℃、たとえば8~10℃の温度を有する。態様9は、態様2または7のいずれかの方法であって、ここで、吸収式冷凍機からの冷水は、最高で15℃、たとえば13~15℃の温度を有する。態様10は、態様2または9のいずれかの方法であって、ここで、熱水は、70~95℃の温度を有する。態様11は、態様2または10のいずれかの方法であって、ここで、熱水は、熱回収によって加熱された急冷水である。態様12は、態様2または11のいずれかの方法であって、ここで、熱水は、スチームクラッキングプロセスにおいて使用される急冷水であり、75~85℃の温度を有する。態様13は、態様2または12のいずれかの方法であって、ここで、分離システムから収集された第一重質ストリームの一部は、少なくとも80重量%のプロパンを含む、および/または、分離システムから回収された凝縮軽質ストリームの一部は、少なくとも98重量%のプロピレンを含む。
【0020】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の図面、詳細な説明、および実施例から明らかになろう。ただし、以下の図面、詳細な説明、および実施例は、本発明の特定の実施形態を示しているが、例示としてのみ提供されるのであって、限定的なものではないことが理解される。さらに、本発明の要旨および範囲内の変更および修正がこの詳細な説明から当業者には明らかになるであろうと考えられる。さらなる実施形態では、特定の実施例からの特徴を他の実施例からの特徴と組み合わせることができる。たとえば、一つの実施例からの特徴を他の実施例のいずれかからの特徴と組み合わせることができる。さらなる実施例では、本明細書に記載の特定の実施例に追加の特徴を追加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】プロピレンとプロパンとを含む供給ストリームを分離するための従来技術の分離システムである。
【
図2】プロピレンとプロパンとを含む供給ストリームを分離するための公知の分離システムを示しており、ここでは圧縮機が使用されている。
【
図3】本発明による分離システムの一実施例を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明によれば、凝縮器は、典型的に20~30℃の温度を有する冷却水のかわりに、吸収式冷凍機によって供給される冷却水によって冷却される。吸収式冷凍機は、当該吸収式冷凍機の運転に必要な冷媒を循環させるための熱を供給するために廃熱源からの熱水を使用する。したがって、廃熱源からの熱は、低温の、たとえば最高で15℃の冷水を供給するために効率的に利用される。そのような低温の冷水を製造するための他の手段と比較して、本発明による方法は、廃熱源からの熱を利用することが可能であるのでエネルギー効率的である。そのような低温の冷水を製造するための他の手段は機械的蒸気圧縮サイクルである。これは、電気モータ駆動式圧縮機用の電力や、蒸気タービン駆動式圧縮機のための高圧蒸気のような、駆動するために高品質のエネルギーを必要とする。これに対して、本発明による方法は、低品位廃熱によって運転される吸収式冷凍機を有利に使用する。
【0023】
本発明は、さらに、本発明による分離システムを使用してプロピレンとプロパンとを含む供給ストリームを分離する方法を提供し、当該方法は、
a)供給ストリームを蒸留塔に供給し、分離システムから第一重質ストリームの一部を回収する工程、
b)重質ストリームの一部をリボイラに供給するとともに、沸騰した重質ストリームを蒸留塔に返送する工程、および、
c)凝縮された軽質ストリームの一部を還流として蒸留塔に返送して、凝縮軽質ストリームの一部を分離システムから回収する工程、を有する。
【0024】
好ましくは、冷却熱水は、沸騰重質ストリームを生成するための熱を提供するためにリボイラに戻される。これによって、システムのエネルギー効率がさらに改善される。冷却熱水は、リボイラに熱を供給するための唯一の供給源とすることができる。あるいは、冷却熱水からの熱が温度または量に関して不十分である場合、追加の熱を提供するために追加の(低圧)蒸気をリボイラに添加することができる。
【0025】
〔供給ストリーム〕
好ましくは、供給ストリームは、2~98重量%のプロピレンと98~2重量%のプロパンとを含む。好ましくは、プロピレンとプロパンとの総量は、供給ストリームの総量の、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、または100重量%である。
【0026】
いくつかの実施例において、供給ストリームは、85~98重量%のプロピレンと15~2重量%のプロパンとを含む。そのような供給ストリームは、ナフサ分解からのC3留分またはプロパン分解の生成物でありうる。
【0027】
いくつかの実施例において、供給ストリームは、40~70重量%のプロピレンと60~40重量%のプロパンとを含む。そのような供給ストリームはプロパン脱水素化プロセスの生成物でありうる。
【0028】
〔吸収式冷凍機〕
吸収式冷凍機は、それ自体は周知である。機械式蒸気圧縮冷凍サイクルと同様に、吸収冷却サイクルは、冷媒の蒸発潜熱を利用して入ってくる冷水から熱を除去する。蒸気圧縮冷凍システムは、冷媒と圧縮機とを使用して圧縮機内で凝縮させる冷媒蒸気を輸送する。ただし、吸収サイクルは、冷媒として水を使用し、蒸発した冷媒を吸収するために吸収性臭化リチウム溶液を使用する。次いで、熱を溶液に加えて、吸収剤から冷媒蒸気を放出させる。その後、冷媒蒸気は凝縮器内で凝縮される。
【0029】
基本的な単効用吸収サイクルは、発生器と、凝縮器と、蒸発器と、作動溶液として冷媒(液体)および臭化リチウムを有する吸収器と、を含む。発生器は、希釈臭化リチウム溶液を気化させるために熱源(バーナー、スチーム、または熱水)を利用する。放出された水蒸気は凝縮器に移動し、そこで凝縮されて液体に戻り、冷却塔の水に熱を伝える。凝縮されると、液体冷媒は蒸発器管に分配され、冷水から熱を除去し、液体冷媒を蒸発させる。発生器からの濃縮臭化リチウム溶液は吸収器に入り、蒸発器からの冷媒蒸気溶液を吸収し、そしてそれ自身を希釈する。その後、希釈された臭化リチウム溶液は発生器にポンプで戻され、そこでサイクルが再び開始される。
【0030】
本発明によれば、吸収剤から冷媒蒸気を放出するための熱は、廃熱源からの熱水によって提供される。たとえば、反応器内のストリームの凝縮から放出される熱など、様々な廃熱源を使用することができる。廃熱原は、スチームクラッカ流出物の急冷塔における希釈蒸気と熱分解ガソリンとの凝縮から放出される熱、あるいは、プロパン脱水素化反応器流出物の場合には希釈蒸気の凝縮から放出される熱、とすることができる。他の適切な廃熱源は、炉の煙道ガスを凝縮させて80~90℃程度の低温にし、また、煙道ガス中の水の凝縮からエネルギーをとらえることで放出される熱である。炉の煙道ガスは、スチームクラッキング炉またはプロパン脱水素反応器に熱を供給する炉のものとすることができる。その他の適切な廃熱源は、熱分解ガソリン精留塔の塔頂凝縮器、特に脱ヘキサン塔の塔頂凝縮器である。炭化水素ストリームを精留するためのシステムでは、連続蒸留が一般的に使用される。パイガス(pygas)の水素添加ガスストリームは、脱ブタン塔、デペンタン塔、脱ヘキサン塔などを連続的に使用することによって精留される。脱ヘキサン塔は、熱回収のための特に大きな熱源を提供する。
【0031】
好ましくは、吸収式冷凍機からの冷水は、最高で15℃、たとえば13~15℃の温度を有する。より好ましくは、吸収式冷凍機からの冷水は、最高で10℃、たとえば8~10℃の温度を有する。8~10℃の冷水は、軽質ストリームを冷却し、たとえば10~12℃の温度で吸収式冷凍機に戻る。
【0032】
好ましくは、廃熱源からの熱水は、70~95℃、たとえば75~85℃の温度を有する。好ましくは、熱水は、スチームクラッカの急冷塔における希釈スチームと熱分解ガソリンの凝縮からの熱回収によって加熱された急冷水である。
【0033】
好ましくは、分離システムから収集された第一重質ストリームの一部は、少なくとも80重量%のプロパン、より好ましくは少なくとも90重量%のプロパンを含む。好ましくは、分離システムから収集される凝縮軽質ストリームの一部は、少なくとも98重量%のプロピレン、より好ましくは少なくとも99重量%のプロピレンを含む。
【0034】
なお、本発明は、本明細書に記載の特徴の全ての可能な組み合わせに関するものであり、特に請求項に存在する特徴の組み合わせが好ましいことが銘記される。したがって、本発明による組成物に関する特徴のすべての組み合わせ、本発明による方法に関する特徴のすべての組み合わせ、ならびに本発明による組成物に関する特徴のすべての組み合わせ、および本発明による方法に関する特徴のすべての組み合わせがここに記載される。
【0035】
さらに、「comprising」という用語は他の要素の存在を排除するものではないことが銘記される。しかしながら、特定の成分を含む製品/組成物に関する説明もこれらの成分からなる製品/組成物を開示していることも理解されるべきである。これらの成分からなる製品/組成物は、それが製品/組成物の調製のためのより単純でより経済的な方法を提供するという点で有利でありうる。同様に、特定の工程を含む方法に関する記載もこれらの工程からなる方法を開示することも理解されるべきである。これらの工程からなる方法は、より単純でより経済的な方法を提供するという点で有利でありうる。
【0036】
パラメータの下限および上限について値が記載されている場合、下限の値および上限の値の組み合わせによって作られる範囲も開示されるものと理解される。
【0037】
以下では、図面を参照して本発明をさらに説明する。ここで、
図3は、本発明による分離システムの一実施例を概略的に示している。
【0038】
図3の例では、5重量%のプロパンと95重量%のプロピレンとを含む液体C3生成物301、25.3t/hを、160の段と4メートルの直径とを有する蒸留塔C-301の段78に供給する。この塔を介する圧力低下は1.3barである。リボイラH-301は21MW
thのデューティを有し、226t/hの蒸気303を生成する。蒸留塔C-301は頂部で214t/hの蒸気304を生成し、これは凝縮器H-302において冷却水に対して凝縮され、これが容器V-301に送られる。当該容器V-301から、190t/hの凝縮蒸気を還流309としてポンプで戻し、24t/hの99%純度プロピレンをストリーム311として生成する。凝縮器H-302は9bar
aの圧力で作動する。塔はフラッディング速度の79%の蒸気速度で操作される。
【0039】
吸収式冷凍機Y-301は、約8~10℃の温度の冷水331を製造し、これをH-302に供給し、H-302はそれを10~12℃で戻す。H-302のデューティは21MWthである。21MWthのデューティに対して、Y-301は、ストリーム321によって80℃で供給され、ストリーム322によって73℃で戻される急冷水から30MWthの熱を必要とする。使用済み急冷水は、急冷水の温度をさらに5℃下げるリボイラH-301に熱を供給するためにさらに利用される。このように急冷水をカスケードすることにより、それをより効率的に利用することが可能である。吸収式冷凍機の運転に必要な冷却水は343として示され、これは342として出てくる。
【0040】
したがって、この例のように8~10℃の冷却水を用いてフラッディング速度の79%の蒸気速度で運転するためには、凝縮器圧力は9baraとなり、これによって、蒸留塔C-101の段78に供給される液体C3生成物101の量が25.3t/hとなることが可能となる。
【0041】
したがって、
図3に示すシステムは、
図1に図示のシステムよりも大きなキャパシティを有する。
図1に図示のシステムと比較して、キャパシティは、(25.3-20)/20×100%=27%増加している。
図2に図示のシステムとの比較では、圧縮機K-201のエネルギー消費および設置コストが回避される。