(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】尿毒症性掻痒症の治療に使用するための製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4172 20060101AFI20220207BHJP
A61K 31/4015 20060101ALI20220207BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20220207BHJP
A61K 38/05 20060101ALI20220207BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20220207BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
A61K31/4172
A61K31/4015
A61P17/04
A61K38/05
A61K31/198
A61P13/12
(21)【出願番号】P 2019518350
(86)(22)【出願日】2017-06-16
(86)【国際出願番号】 DK2017050201
(87)【国際公開番号】W WO2017215723
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-06-09
(32)【優先日】2016-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(32)【優先日】2017-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】518445241
【氏名又は名称】ドラッグ デリバリー ソリューションズ アーペーエス
【氏名又は名称原語表記】DRUG DELIVERY SOLUTIONS APS
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】メンネ、トーキル
(72)【発明者】
【氏名】セルマー、ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ランゲ、イェスパー
(72)【発明者】
【氏名】ジョージウー、ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ウィーラー、デレク
(72)【発明者】
【氏名】エバンス、デイビッド
【審査官】藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0252035(US,A1)
【文献】特開2014-065742(JP,A)
【文献】特表2012-514577(JP,A)
【文献】特表2011-512392(JP,A)
【文献】European Journal of Pharmacology, 2017.7, Vol.810, pp.134-140
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00 - 31/80
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の尿素によって引き起こされるかゆみを伴う乾燥した皮膚の治療または予防に使用するための、求核剤を含む局所製剤
であって、前記求核剤がL-ヒスチジンである、局所製剤。
【請求項2】
尿素によって引き起こされるかゆみを伴う乾燥した皮膚は、尿毒症性掻痒症、ウロストミー性皮膚炎、失禁性皮膚炎およびおむつ性皮膚炎からなる群より選択される、請求項
1に記載の局所製剤。
【請求項3】
前記局所製剤は、皮膚表面cm
2当たり0.001mg~5mgの範囲である求核剤の濃度にて皮膚に適用される、請求項1
または請求項2に記載の局所製剤。
【請求項4】
前記L-ヒスチジンは、前記局所製剤中における唯一の活性成分である、請求項
1~3のいずれか一項に記載の局所製剤。
【請求項5】
前記局所製剤は、ピロリドンカルボン酸のナトリウム塩のようなピロリドンカルボン酸、またはグリシルグリシン、システイン、アルギニンおよびリジンからなる群より選択される1つ以上のアミノ酸、をさらに含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の局所製剤。
【請求項6】
前記局所製剤は、
前記L-ヒスチジンを、皮膚表面cm
2当たり0.5mg~2.5mgの範囲にある濃度にて皮膚に適用される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の局所製剤。
【請求項7】
高齢者の皮膚の老化における掻痒症の治療または予防における使用のための、請求項1~
6のいずれか一項に記載の局所製剤。
【請求項8】
フィラグリン欠損患者におけるかゆみを伴う乾燥した皮膚の治療または予防における使用のための、請求項1~
6のいずれか一項に記載の局所製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象の、尿毒症性掻痒症のような尿素によって引き起こされるかゆみを伴う乾燥した皮膚の治療に使用するための、ヒスチジンまたは他の任意のアミノ酸もしくはポリペプチドおよび/またはそれらの誘導体のような求核化合物を含む局所製剤に関する。本発明はまた、尿毒症性掻痒症の予防に使用するための局所用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
尿毒症性掻痒症は、腎不全の最も苦痛な症状の1つである。透析患者の最大50%が罹患している(1)。尿毒症患者の皮膚は、貧血、乾燥、および引っ掻き傷のために、多くの場合、青白い。この病状には、湿疹、結節性痒疹、貨幣状湿疹および湿気(licinification)などの皮膚症状が含まれる。自覚症状には、激しいかゆみや灼熱感があり、これらは局在化または全身化することがある。病状の病因については多くの仮説があり、それが多くの全身的および局所的治療につながっている。一般に、これらの治療は殆どまたは全く効果がないが、患者のサブグループにおいていくらかには役立つものもある(1)。
【0003】
尿毒症透析患者における代謝および内分泌の変化は、多くかつ複雑である(2)。体内での尿素の蓄積は、慢性腎臓病における中心的な代謝変化の1つである。尿素は腎臓系と汗の両方から排出される(3)。汗の濃度は血清濃度より2~4倍高い。これは、尿毒症患者の皮膚に高濃度の尿素が存在する可能性があることを意味する(4)。時には濃度が非常に高いために尿素が尿素霜として視認できることがある。
【0004】
皮膚の外側部分である角質層は、セラミド、コレステロールおよび遊離脂肪酸からなる脂質細胞間マトリックスに埋め込まれ、天然保湿因子(NMF)と混合された、タンパク質富化角質細胞の形態の角質化上皮層からなる。(5)(6)。NMFの50%は、表皮タンパク質、特にフィラグリンの酵素的分解から生じるアミノ酸(6)、ならびにヒスチジン、トランス-ウロカニン酸およびピロリドンカルボン酸を含むその極めて重要なアミノ酸分解生成物(7)からなる。NMFの残りの部分は、電解質、乳酸、尿素、そしてごく少量のアミノ酸を含む汗の成分から成る。保湿効果(水結合)を有することに加えて、アミノ酸は天然の紫外線防御(トランスウロカニン酸)の一部を示し、そしてpH安定化因子として機能する。
【0005】
フィラグリンをコードする遺伝子に切断型変異を有する個体は、重症型の乾燥肌、尋常性魚鱗癬および/または湿疹に強くかかりやすい。湿疹のすべての重症例のほぼ50%が少なくとも1つの変異型フィラグリン遺伝子を有する可能性があることが示されている。フィラグリンヌルキャリアに見られるバリアの欠陥はまた、喘息の感受性および増悪の増加をもたらすように思われる。
【0006】
尿素は生化学的研究においても工業プロセスにおいてもタンパク質を変性させるその能力のために長い間使用されてきた(8)。球状タンパク質に対する尿素の変性作用は、折り畳まれていない形態のタンパク質分子の安定化によるものである。尿素はまた、室温でアミノ酸に直接濃度依存的な影響を及ぼす(8)。尿素水溶液中に存在するであろう少量のシアネートは、存在する-SH基と同様にタンパク質およびアミノ酸の-NH2基に付加してカルバミル誘導体を生成することができる(9)。シアネートとアミノ酸との反応の速度定数の対数は、アミノ酸またはポリペプチドのアミノ基のPKa値に線形的に関連していることが証明されている(15)。
【0007】
したがって、尿毒症患者の角質層中の高濃度の尿素(汗から生じる尿素)は、表皮および角質層中の酵素による生物学的プロセスに重大な影響を及ぼすと予想される。これらの影響は、尿毒症性掻痒症の病因としては調査されていないか、またはこの病状を治療するための新たな手段として見られていない。尿毒症患者に存在する濃度における尿素の変性効果は、NMFの形成に重大な効果を及ぼすと予想される。タンパク質(特にフィラグリン)の変性は、角質層中のNMFの大部分を構成するフィラグリン由来アミノ酸を減少させると予想されなければならない。さらに、必要な酵素(ヒスチジナーゼ)もまた尿毒症患者の皮膚中の高い尿素濃度によって変性される可能性があるので、利用可能なヒスチジンはトランス-ウロカニン酸に変換されないであろう。ヒスチジン自体は、分子に対する尿素の直接作用によって変化する。NMFの量と質に大きな影響を与えると予想されるこれらの撹乱は、NMFの形成と生物学的影響に関する知識と動態が新しいため、これまで調査されてはいない。
【0008】
先行技術に関し、特許文献1は、腎疾患に伴うかゆみのある皮膚の治療または予防に使用するための局所製剤を開示している。尿素を封鎖するための求核攻撃の開示はなく、製剤中で使用されるアミノ酸は求核剤として作用することは含まれていない。
【0009】
特許文献2は、いくつかの他の皮膚疾患の中でも、尿毒症性掻痒症に関連するかゆみの治療について言及しているが、開示されているTRPV4阻害剤は求核剤として作用することによって尿素を封鎖することはできない。
【0010】
特許文献3は、掻痒症を治療し得るアミノ酸のヒスチジン誘導体およびN-プロパノイル誘導体を開示している。しかしながら、尿素を求核剤で封鎖することによって引き起こされるかゆみのある乾燥した皮膚を治療することについての開示はない。それどころか、特許文献3は、尿素が製剤中に含まれ得ることを述べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許出願公開第2016/0008297号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0252035号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0186853号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、尿毒症性掻痒症の治療に使用するための、求核性化合物、好ましくはアミノ酸もしくはポリペプチドおよび/または低アミノ基PKaを有するその誘導体を含む製剤が提供される。いかなる理論にも縛られることなく、本願の発明者らは、尿毒症性掻痒症の患者の皮膚に蓄積する過剰な尿素の望ましくない効果が、求核性アミノ酸またはポリペプチドなどの求核性化合物および/または誘導体、例えば、ヒスチジン、システイン、アルギニン、リジン、グリシルグリシン、グリシルアラニン、またはトリグリシン若しくはテトラグリシンの存在によって相殺され得ることを見いだした。
【0013】
本願の発明者らによって行われた分析化学によれば、そのような求核剤は尿素由来のシアネートと反応しそしてカルバミル化された最終生成物およびアンモニアを生成すると思われる。残っている未反応の求核性アミノ酸、特にヒスチジンは、そのようなアミノ酸から知られている有益な皮膚効果を発揮し、それにより、尿毒症性掻痒症に罹患する患者の皮膚は、かゆみを生じることなく正常な状態に戻る。ペプチドおよびタンパク質がどのようにカルバミル化されているかについてのさらなる詳細については、G.R.スターク(Stark)によって書かれた論文(15)を参照でき、当該論文は参照により本明細書に組み入れられる。
【0014】
本発明によれば、尿毒症性掻痒症の治療方法であって、求核性アミノ酸、好ましくはヒスチジンおよび/またはその誘導体のような治療上有効量の求核性化合物を前記対象に投与することを含む方法も提供される。
【0015】
別の実施形態において、本発明はさらに、ウロストミー性(urostomi)皮膚炎、失禁性皮膚炎、およびおむつ性皮膚炎を含むがこれらに限定されない、尿素または尿の存在によって引き起こされるさらなる皮膚病状の、求核性求核性アミノ酸またはポリペプチドおよび/またはその誘導体のような求核性化合物の治療上有効量を対象に投与することを含む方法による治療を含む。
【0016】
具体的には、対象の尿毒症性掻痒症の治療または予防に使用するための、ヒスチジンおよび/またはその誘導体を含む局所製剤が提供され、その製剤は、アミノ酸またはポリペプチドfおよび/またはその誘導体であって、皮膚表面cm2当たり0.001mg~5mg、好ましくは皮膚表面cm2当たり0.003mg~1mg、より好ましくは皮膚表面cm2当たり0.005mg~0.5mgの範囲にわたる濃度のアミノ酸またはポリペプチドfおよび/またはその誘導体を備えて皮膚に適用される。
【0017】
好ましくは、誘導体は、低PKaを有するアミノ酸若しくはポリペプチドおよび/またはその誘導体、トランスウロカニン酸(trans urocanic acid)、ヒスチジンのペプチドまたはヒスチジンと1つまたは複数のさらなるアミノ酸のペプチド、およびヒスチジンの薬学的に許容される塩のような1つまたは複数のヒスチジン分解生成物から選択される。ヒスチジンはL-ヒスチジンであることが好ましい。
【0018】
一実施形態において、ヒスチジンおよび/またはその誘導体は、医薬組成物中の唯一の活性成分である。
別の実施形態において、製剤はピロリドンカルボン酸またはその塩、好ましくはナトリウム塩をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】尿毒症性掻痒症に関連する生化学的障害の図を示す。
【
図2】尿素に暴露された再構成ヒト表皮サンプルの組織学的検査を示す。
【
図3】尿素に暴露された再構成ヒト表皮サンプルの組織学的検査を示す。
【
図4】尿素および2%のアミノ酸を含有する局所適用クリームに暴露された再構成ヒト表皮サンプルの組織学的検査を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
述べたように、本発明はまた、尿毒症性掻痒症を治療するための治療方法を提供する。具体的には、本発明は、その第2の態様において、ある濃度のヒスチジンおよび/またはその誘導体、例えばトランスウロカニン酸(UCA)、を含む局所製剤であって、皮膚表面cm2当たり0.001mg~5mg、好ましくは皮膚表面cm2当たり0.003mg~1mg、より好ましくは皮膚表面cm2当たり0.005mg~0.5mgの範囲であるヒスチジンおよび/またはその誘導体を皮膚に適用する、対象の尿毒症性掻痒症の治療方法を提供する。アミノ酸若しくはポリペプチドおよび/またはその誘導体は、医薬組成物中の唯一の活性成分であり得る。あるいは、製剤は、ピロリドンカルボン酸などのさらなる活性物質を含む。
【0021】
尿毒症性掻痒症は、アトピー性皮膚炎などの炎症性皮膚疾患(特に慢性炎症性皮膚疾患)、あらゆる種類の乾癬(プラーク湾曲性、滴状性、膿疱性、爪、光線過敏性、乾癬性紅皮症(erythrodermic psoriasis)および乾癬性関節炎を含む)、ニキビ、魚鱗癬、接触性皮膚炎、湿疹、光線性皮膚炎および乾燥肌疾患とは明らかに区別され得る明確に定義された徴候である。
【0022】
皮膚のバリア機能は、存在するタンパク質およびそれらが存在する環境(例えばpH)を含む多くの要因によって制御されている。本願の発明者らは、必要とされる酵素(ヒスチジナーゼ)は、尿毒症患者の皮膚中の高い尿素濃度によって変性する可能性があるので、ヒスチジンはトランス-ウロカニン酸に変換されないであろうことを認識した。
【0023】
正常な皮膚において、バリア形成に関与する多くのタンパク質はpH依存性であり、UCAによって作られた上部表皮/角質層の酸性環境でのみ活性がある(10)。このホメオスタシスを維持することに加えて、角質層の低いpHは微生物の感染および増殖を直接阻害する(11)。欠陥のあるフィラグリンは、角質層中の減少したレベルのヒスチジンを含む減少したアミノ酸含有量をもたらし、それが今度は減少したレベルのトランス-UCAおよび異常に高いpHをもたらすことが知られている。角質層における最適pHよりも高いpHは、pH依存性脂質処理酵素(例えば、β-グルコセレブロシダーゼ)を減少させ、そしてバリア機能および修復を損なうと考えられている(12)。
【0024】
しかしながら、本研究は、皮膚疾患を患っている欠陥のあるフィラグリニン患者の生理学的原因を解決することには関係していない。代わりに、本願の発明者らは、本発明の使用における活性成分としてのヒスチジン若しくはポリペプチドおよび/またはその誘導体を含むアミノ酸の使用が、尿毒症性掻痒症の患者の皮膚における高濃度の尿素によって引き起こされる欠陥のあるフィラグリンを補うように見えることを発見した。現在、尿毒症性掻痒症を予防および/または治療する手段は存在しない。
【0025】
さらに、ヒスチジンおよびほとんどのポリペプチドおよび/またはその誘導体を含むアミノ酸は、従来の用量で哺乳動物に対する毒性若しくは報告された副作用が低いかまたは全くないことを示している。したがって、有効成分としてのヒスチジンおよびポリペプチドおよび/またはその誘導体を含むアミノ酸の使用は、現在使用されている代替薬と比較して、患者への容易なアクセス、患者のコンプライアンスの向上、結果として、広い患者集団における有効成分の使用の増加およびより長くかつ中断のない治療計画が得られることを含む利点を提供する。さらに、ヒスチジンおよびほとんどのポリペプチドおよび/またはその誘導体を含むアミノ酸は、患者の体表面全体を治療するのに有用でありそして広範囲の皮膚疾患(特に炎症性皮膚疾患)に対して有効であると期待される。好ましくは、そのような皮膚疾患は、尿素または尿の存在によって引き起こされ、そしてこれらに限定されないが、ウロストミー性皮膚炎、失禁性皮膚炎、およびおむつ性皮膚炎、より好ましくは尿毒症性掻痒症を含む。
【0026】
図1に示すように、尿毒症性掻痒症は、汗管(sweat ducts)によって皮膚上部表面に輸送される大過剰の尿素によって引き起こされる。本願の発明者らによってなされた新規な観察は、高い尿素濃度がタンパク質およびアミノ酸の正常な機能を乱しているということである。さらに、pH調整は、高濃度の尿素によって悪影響を受ける。
【0027】
ヒスチジンおよびほとんどのポリペプチドおよび/またはその誘導体を含むアミノ酸は、本明細書に記載の通り、例えば本明細書にて議論されるように、任意の適切な形態で使用することができる。
【0028】
ヒスチジンおよびほとんどのポリペプチドおよび/またはその誘導体を含むアミノ酸は、単独の治療として、または尿毒症性掻痒症の予防および/または治療のための従来の治療と組み合わせて使用することができる。適切な従来の治療法には、ステロイド(例えば局所投与用のステロイド)による治療および/または適切な脂質による治療および/または光線療法による治療が含まれる。
【0029】
本発明はさらに、高齢者の皮膚の老化における掻痒症の治療または予防における使用のための上記の局所製剤を提供する。本発明はまた、フィラグリン欠損患者におけるかゆみを伴う乾燥した皮膚の治療または予防における製剤の使用に関する。
【0030】
本発明に従う局所投与用の医薬組成物は、例えば、溶液、クリーム、軟膏、ゼリー、ゲル、スプレー、フォーム、粉末、リポソーム、または水性もしくは油性の溶液もしくは懸濁液の形態であり得る。水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョンまたはポリアプロン(高内相(high internal)エマルジョン、ゲルエマルジョンなど)も本発明に包含される。適切な賦形剤および担体には、例えば、落花生油、水、エチルココエート、オクチルココエート、ポリオキシエチレン化硬化ヒマシ油、流動パラフィン、イソプロパノール、グリセロール、プロピレングリコール、パラフィン、セルロース、パラベン、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコール、イソプロピルミリステート、およびフェノキシエタノールが含まれる。
【0031】
頭皮への局所適用の場合、医薬組成物はシャンプーまたはコンディショナーとして処方することができる。皮膚への局所適用の場合、医薬組成物は、洗剤および入浴製品(例えば、入浴用またはシャワー用のゲルおよびクリーム)への添加剤として処方することができる。局所投与用のこのような医薬組成物は、化粧品における使用にも適している希釈剤または担体を含み得る。
【0032】
皮膚への適用による局所投与のための医薬組成物は、保湿剤、ならびに日焼け止めローションおよびクリームを含み得る。
局所投与用の医薬組成物は、任意の適切なディスペンサーにて提供することができる。
【0033】
皮膚への適用による局所投与のための医薬組成物の場合、希釈剤または担体は、皮膚バリアを横切る活性成分の輸送を助けるように選択されるべきであり、そして皮膚の角質層を横切ることができるものである必要があり得る。局所適用のための医薬組成物を調製するための多くの方法が知られている。例えば、活性成分は、本明細書で論じられるように既知の担体材料と混合することができる。
【0034】
あるいは、当業者は、局所投与が局所注射、例えば皮内注射によって達成され得ることを認識するであろう。
典型的には、局所投与用組成物(クリームなど)は、活性成分として、ヒスチジンおよびポリペプチドおよび/またはその誘導体を含むアミノ酸の全組成物の約0.05w/w重量%~15w/w重量%、より具体的には約0.1~5w/w重量%、さらにより具体的には約0.2~2w/w重量%を含有する。
【0035】
本発明の医薬組成物は、当技術分野において周知の従来の医薬用の希釈剤または担体を使用する従来の手順によって得ることができる。
【実施例1】
【0036】
局所投与用の典型的なクリームは以下を含み得る。
【0037】
【0038】
クリームは以下のように調製することができる。適切な容器(A)中で、Versagel(登録商標)、イソステアリルイソステアレート、シクロメチコンおよび0.26%ラウレス4を適切に混合しながら混ぜ合わせる。第2の容器(B)中で、ジメチコーンと0.04%ラウレス4を適切に混合しながら混ぜ合わせる。第3の容器(C)中で、ポリソルベート20を7.425%の水と混合する。穏やかに混合しながら、最初に容器Aの内容物、次に容器Bの内容物をゆっくりと容器Cに加える。第4の容器(D)中で、グリセロール、2-ピロリドン-5-カルボン酸(ナトリウム塩)、クエン酸、ヒスチジン、ヒアルロン酸ナトリウム、フェノキシエタノールおよび41.55%の水を混ぜ合わせる。第5の容器(E)中で、カルボマーと13.50%の水とを混ぜ合わせる。十分に分散し水和したら、撹拌しながら容器Eの内容物を容器Cに添加し、次いで容器Dの内容物を添加する。水酸化ナトリウムを使用してpHを調整し(必要な場合)、次に残りの水で量を補う。
【実施例2】
【0039】
ヒスチジンが尿素(これはUPを患っている個人における皮膚の不可避の成分である)の存在下でどのように分解されるかを実証するために、実施例1のクリームを尿素の5w/w%および10w/w%の暴露に供した。分解過程を経時的に追跡し、そして40℃で6週間後に、20%のヒスチジンのみが10w/w%の尿素を有するクリーム中に残った。
【0040】
ヒスチジンは必須アミノ酸であるので、その継続的な供給は皮膚の正常な機能を維持するために必要とされる。さらに、このアミノ酸はUCAの前駆体であり、それは皮膚のpH調節のための重要な緩衝剤であるので、重要である。尿毒症性掻痒症に関して、ヒスチジンの分解速度は、アトピー性皮膚炎などの他の皮膚疾患における場合よりもはるかに大きい。したがって、本願の発明者らは、分解を補償するためにはヒスチジン(ならびにその誘導体)の供給が相応してより多くなければならず、それによって正常なヒスチジンレベルが達成され得ることを認識した。そのことを念頭に置いて、本願の発明者らはそのような高濃度でヒスチジンを配合した(実施例1を参照)。
【0041】
皮膚のバリア機能は、存在するタンパク質およびそれらが存在する環境を含む多くの要因によって制御されている。皮膚バリア機能障害は、フィラグリンの欠陥が原因である可能性がある。さらに、フィラグリンはプロテイナーゼによって分解されて大量の構成ヒスチジン残基を放出する。次いで、ヒスチジン残基はヒスチダーゼによって脱アミノ化されて、とりわけトランス-ウロカニン酸(トランス-UCA)が形成される。
【0042】
本発明は、かゆみを伴う皮膚疾患を患っている患者における欠陥のあるフィラグリンの問題に取り組むものであると考えられる。ヒスチジンおよび/またはその誘導体は欠陥のあるフィラグリンを補う。
【実施例3】
【0043】
UP(尿毒症性掻痒症)におけるヒトの皮膚の可能なカルバミル化をさらに調査するために、本願の発明者らは再構築ヒト表皮(RHE)モデルにおいて一連の研究を行った。4cm2の大きさの皮膚サンプルは、それぞれ1mlの容量を有する6ウェルプレート中にてEpiskin(登録商標)から供給された。実験は18~25日齢の皮膚サンプルで実施した。RHEは、皮膚における代謝反応、毒性反応および炎症反応を調べるために使用される標準化された技術である(13)。皮膚サンプルはヒト表皮幹細胞から発生させた。それらは、基礎となる増殖培地を含むポリカルバメートネット(polycarbamate net)上で発生させた。RHEは、角質層を含む表皮のすべての異なる細胞層を含む。サンプルを5%CO2雰囲気中にて37℃に維持した。それらを無菌条件下で取り扱う。新しい増殖培地を毎日加える。4cm2の大きさの皮膚サンプルは、ヒトの肌の通常のターンオーバーに似た期間である18日間の発達後に使用する準備ができていた。
【0044】
2つの対照を含む12の個々の実験を行った。増殖培地(1ml)を標準的なプロトコルに従って毎日交換した。サンプルのうちの6個を3日目および6日目に採取し、そしてタンパク質分析がなされるまで-80℃で直ちに凍結した。全サンプルの一部を組織学的検査に送った。
【0045】
以下の暴露(個々の実験)(すべては皮膚サンプルの角質層側からのものである)を行った。
1.対照:未処理のまま。
【0046】
2.UPにあるように、同量の水溶液中の尿素(皮膚cm2当たりのmgとして計算した)。この計算された量は、尿毒症患者における尿素の平均血清レベル、汗からの尿素、および表皮における細胞内への尿素の能動輸送からの寄与の合計の計算に基づいて、0.3mg/cm2に対応する。尿素の添加は、皮膚サンプルの表面に200μlの6mg尿素/mlの溶液を添加することによって行われる。
【0047】
3.上記の項目2と同じであるが、2倍量(0.6mg/cm2)である。
4.上記の項目3と同じであるが、1%ヒスチジン溶液の200μlを加えた。
5.意図されたヒトの使用として投薬される5%の市販の尿素クリーム
6.意図されたヒトの使用として投薬される10%の市販の尿素クリーム
3日目に採取した皮膚サンプルを0日目から2~6日目まで、および1日目から2~4日目まで、暴露した。
【0048】
(表1)
皮膚サンプルを6日目に採取し、上記のように暴露し、さらに3日目から2~6日目まで暴露した。表1と一致して、尿素水溶液は皮膚サンプルを通して直ちに吸収された。2つのクリームは皮膚の上に付着物を残し、それ故に2回だけ適用された;0日目と3日目(6日間の実験用)。感染のリスクを最小限に抑えるために、毎日の暴露は控えた。それ故、2つの異なる適用方法は、クリームのデポ効果から連続的な尿素暴露が予想されなければならないので直接比較することはできない。さらに、6日目に採取した実験2、3および4からの尿素濃度は、3日目の補助暴露が1回だけであるために比較的低かったかもしれない。
【0049】
図2および3は、3日目および6日目に採取した実験についての組織学的写真を示す。3日目に、実験2、3、5および6において有意な変化が見られる。重度の浮腫および分裂が角質層に見られ、そして有棘層では早期細胞死が見られる。実験1(対照)および4は、18日齢の未処理RHSサンプルの一般的外観と類似しており同一である。同様の組織学的変化が6日目の実験で見られる。皮膚サンプルが古くなっているのは明らかである。実験2および3では、おそらく限られた尿素暴露を反映して(3日目のみ)、皮膚はある程度回復した。
【0050】
実験は、RHSサンプルに対する可能性のある用量および時間依存性の尿素効果を実証する。角質層の顕著な浮腫は尿素の水結合能を反映する。しかしながら、細胞死はまた、水溶液中の尿素から放出されるシアン化物イオンからの直接的な毒性作用を示している。3日目と6日目の両方で採取された実験4に示されるように、求核剤であるヒスチジンがこの効果を打ち消すことができることは注目に値する。
【0051】
タンパク質分析は、以前に開発された方法に従って行われた(14)。皮膚サンプル由来のカルバモイル化タンパク質をELISAウェルにコーティングし、一次ポリクローナル抗ホモシトルリン抗体および二次標識ポリクローナル検出抗体を用いて定量した。ELISA読み取り値(吸光度単位)を表2に提供する。
【0052】
皮膚サンプル由来のタンパク質をさらにSDS PAGEにかけ、免疫ブロットをポリクローナル抗ホモシトルリン抗体を用いて行った。この実験からの結果は、実験6からのタンパク質が、このサンプル中のカルバモイル化タンパク質の存在を実証する陽性バンドをもたらすことを確認した。これらの実験からの主たる結論は、UP患者における尿素に匹敵する濃度の尿素への暴露後の3日目および6日目に、RHEモデルにおいてタンパク質カルバミル化が実証され得るということである。実験は、時間と濃度の効果を実証する。したがって、本発明によれば、ヒスチジンはこれらの作用を打ち消すことができる。
【0053】
【0054】
【0055】
ELISAの読みは吸光度単位として表される。
UP:尿毒症性掻痒症
【実施例4】
【0056】
実施例3に記載したものと同じ方法を使用した。研究は、Episkin(登録商標)から購入したヒト再構築表皮(RHE)モデルの使用に基づいた。2つの対照を含めて3つの実験を2回行った。標準的なプロトコルに従って、添加物(下記参照)の有りと無しの増殖培地(1ml)を毎日交換した。実施例3とは対照的に、尿素暴露は増殖培地への尿素の添加によって行われた。実験1は2つの対照に対応する。実験2は、4mg/mlの尿素を含む増殖培地を用いた。実験3は、4mg/mlの尿素および0日目および3日目にRHE皮膚表面上に適用された2%アミノ酸を含む5mg(500μl)のクリームを添加した増殖培地を用いた。6日後に6つの皮膚サンプルを採取したとき、それらはすべて肉眼的に健康に見えた。感染や壊死の兆候は認められなかった。タンパク質分析まで、それらを直ちにマイナス80℃で凍結した。全サンプルの一部を組織学的検査に送った。
【0057】
組織学的変化
最も顕著な変化は浮腫、特に尿素と2パーセントのアミノ酸の両方にさらされた皮膚サンプルの浮腫であった。細胞は実験2および3の両方において変化したが、2%アミノ酸で処理された皮膚サンプル中にはより多くの生存細胞があった。
【0058】
表3
Elisaの読みは吸光度の単位として表した。2回の実験の平均
【0059】
【0060】
タンパク質カルバミル化
実験3と同じ方法を用いてカルバミル化タンパク質を調べた。皮膚サンプルからの全タンパク質のカルバミル化についてのデータを表3に示す。最も高いレベルのカルバミル化は、4mg/mlの尿素を補充した増殖培地と共にインキュベートした2つの皮膚サンプルにおいて見出された。最も低いレベルのカルバミル化は、尿素4mg/mlおよび2%アミノ酸クリームの両方を補充した増殖培地とインキュベートした皮膚サンプル中に見いだされたが、これらの皮膚サンプルからのカルバミル化のレベルは、おそらくは対照サンプルにおいてみられるものと統計的に差異はなかった。
【0061】
実施例3および実施例4を組み合わせた結果
実施例3において、RHEサンプルを求核剤の例としてヒスチジンを用いて計算された実生活の条件に曝した。全ての暴露は皮膚サンプルの上で行なった。タンパク質のカルバミル化は、透析患者に存在すると計算された尿素濃度への暴露後6日以内に証明することができた。NMF中に存在する濃度と同様の濃度である0.5%ヒスチジンの添加は、このカルバミル化を防止した。5%および10%の尿素を含有する市販のクリームに暴露されたサンプルは、(予想通り)角質層の水和(
図2および3)および最も高い程度のタンパク質カルバミル化を生じた(表2)。
【0062】
実施例4では、最大許容暴露濃度を試験した、それは、尿毒症性掻痒症ならびにおむつ性皮膚炎およびウロストミア皮膚炎に関連する。試験はRHEシステムで行なった。さらに、2%の総濃度で3つの求核剤(アミノ酸)を含有するクリームを試験した。尿素を平均透析患者よりも8倍高い濃度で添加した。
【0063】
2%アミノ酸クリームの適用は、RHE皮膚サンプルの予想される水和を引き起こした(
図4)。タンパク質分析は、局所的に適用されたクリームが、誇張された尿素濃度暴露中にタンパク質カルバミル化を防ぐことができることを示した(表3)。
【実施例5】
【0064】
以下において、本発明に包含される代表的な製剤(1~VII)の調製について概説する。
I)水中油型エマルジョンクリーム製剤
【0065】
【0066】
相Aを予め混合し70℃に加熱する。
相Bを相Aに加える。
相Cを75℃に加熱する。
【0067】
高剪断混合を用いて相Cを相Aに加える。
混合しながら25℃に冷却する。
II)油中水型エマルジョンクリーム製剤
【0068】
【0069】
方法
油相と水相とを別々に65~70に加熱する。
攪拌しながら水相(B)を油相(A)に加える。
【0070】
撹拌して冷却する。
III)ゲル製剤
【0071】
【0072】
方法
第1の容器(A)にて、50%の水にヒアルロン酸ナトリウムを溶解する。一旦溶解したら、グリセロール、2-ピロリドン-5-カルボン酸(ナトリウム塩)、クエン酸およびヒスチジンを加える。第2の容器(B)にて、カルボマーを30%の水中に適切に攪拌しながら分散させる。第3の容器(C)にて、安息香酸ナトリウムを5%水に溶解する。撹拌しながら容器Aの内容物を容器Bに加え、次いで容器Cの内容物を加える。必要ならば水酸化ナトリウムでpHを調整し、次に適量の水を加える。
【0073】
IV)PEGベースの無水軟膏製剤
【0074】
【0075】
方法
容器A内でオレイン酸とブチル化ヒドロキシアニソール油を、65~70℃、適切に攪拌しながら混ぜ合わせ、加熱する。容器B内で適切に撹拌しながら、PEG4000、ヒスチジンおよびPEG400を混ぜ合わせて、65~70℃に加熱する。5分間高剪断混合しながら容器Aの内容物を容器Bに加える。穏やかに攪拌しながら室温まで冷却する。
【0076】
V)無水軟膏製剤
【0077】
【0078】
方法
容器A中でプロピレングリコールとヒスチジンを、65~70℃、適切に攪拌しながら混ぜ合わせ、加熱する。容器B中で適切に攪拌しながら65~70℃に残りの成分を混ぜ合わせる。5分間高剪断混合しながら容器Aの内容物を容器Bに加える。穏やかに攪拌しながら室温まで冷却する。
【0079】
VI)シャンプー用製剤
【0080】
【0081】
方法
泡立ちを最小限に抑えながら、穏やかに攪拌しながらすべての成分を混ぜ合わせる。
VII)油中水型エマルジョンクリーム製剤
【0082】
【0083】
適切な容器(A)中で、Versagel(登録商標)、イソステアリルイソステアレート、Arlamol(登録商標)HDおよび0.26%のラウレス4を適切に混合しながら混ぜ合わせる。第2の容器(B)中で、ジメチコーンと0.04%ラウレス4を適切に混合しながら混ぜ合わせる。第3の容器(C)において、ポリソルベート20を7.425%の水と混合する。穏やかに混合しながら、最初に容器Aの内容物、次いで容器Bの内容物を容器Cにゆっくり加える。第4の容器(D)において、グリセロール、2-ピロリドン-5-カルボン酸(ナトリウム塩)、クエン酸、L-ヒスチジン、L-アルギニン、L-リシン塩酸塩、ヒアルロン酸ナトリウム、フェノキシエタノールおよび37.85%の水を混ぜ合わせる。第5の容器(E)において、カルボマーと13.50%の水とを混ぜ合わせる。十分に分散し水和したら、撹拌しながら容器Eの内容物を容器Cに加え、次いで容器Dの内容物を加える。水酸化ナトリウムを使用してpHを調整し(必要な場合)、次に残りの水で量を補う。
以下に、上記実施形態から把握できる技術思想を付記として記載する。
[付記1]
対象の尿素によって引き起こされるかゆみを伴う乾燥した皮膚の治療または予防に使用するための、求核剤を含む局所製剤
[付記2]
前記求核剤が、ヒスチジン、ペプチド、およびそれらの誘導体のうちの少なくともいずれかのような求核アミノ酸である、付記1に記載の局所製剤。
[付記3]
尿素によって引き起こされるかゆみを伴う乾燥した皮膚は、尿毒症性掻痒症、ウロストミー性皮膚炎、失禁性皮膚炎およびおむつ性皮膚炎からなる群より選択される、付記1または2に記載の局所製剤。
[付記4]
前記製剤は、皮膚表面cm
2
当たり0.001mg~5mgの範囲である求核剤の濃度にて皮膚に適用される、付記1~3のいずれか一項に記載の局所製剤。
[付記5]
前記誘導体は、ヒスチジン分解生成物、ヒスチジンのペプチド、ヒスチジンおよび1つ以上のさらなるアミノ酸のペプチド、ヒスチジンの薬学的に許容される塩の1つ以上から選択される、付記2~4のいずれか一項に記載の局所製剤。
[付記6]
ヒスチジンはL-ヒスチジンである、付記2~5のいずれか一項に記載の局所製剤。
[付記7]
ヒスチジンおよびその誘導体のいずれか一方は、前記局所製剤中における唯一の活性成分である、付記2~6のいずれか一項に記載の局所製剤。
[付記8]
前記局所製剤は、ピロリドンカルボン酸のナトリウム塩のようなピロリドンカルボン酸、またはグリシルグリシン、システイン、アルギニンおよびリジンからなる群より選択される1つ以上のアミノ酸、をさらに含む、付記1~6のいずれか一項に記載の局所製剤。
[付記9]
前記局所製剤は、ヒスチジンおよびその誘導体の少なくとも一方を、皮膚表面cm
2
当たり0.5mg~2.5mgの範囲にある濃度にて皮膚に適用される、付記1~8のいずれか一項に記載の局所製剤。
[付記10]
前記求核剤はヒスチジンおよびその誘導体の両方またはいずれか一方である、付記1に記載の局所製剤。
[付記11]
前記局所製剤は、ピロリドンカルボン酸をさらに含む、付記10に記載の局所製剤。
[付記12]
高齢者の皮膚の老化における掻痒症の治療または予防における使用のための、付記1~9のいずれか一項に記載の局所製剤。
[付記13]
フィラグリン欠損患者におけるかゆみを伴う乾燥した皮膚の治療または予防における使用のための、付記1~9のいずれか一項に記載の局所製剤。
【0084】
参考文献
1.フィッツパトリックス(Fitzpatricks)、一般医学における皮膚科(Dermatology in general medicine)、編者:フリードベルグ(Freedberg)IM他、第6版、2003年、400頁
2.内科のハリソンの原則(Harrisons principels of internal medicine)、編者:カスパー(Kasper)他、第16版、2005年、慢性腎不全(Chronic renal failure)、1653頁
3.フィッツパトリックス(Fitzpatricks)、一般医学における皮膚科(Dermatology in general medicine)、編者:フリードベルグ(Freedberg)IM他、第6版、2003年、103頁
4.AI-タマー(Tamer)YY,ハディ(Hadi)EA,アルバドラーニ(al Badrani)II.、Ural.Res.、1997年、第25巻、337-40頁
5.フィッツパトリックス(Fitzpatricks)、一般医学における皮膚科(Dermatology in general medicine)、編者:フリードベルグ(Freedberg)IM他、第6版、2003年、109頁
6.ケジック(Kezic)S.、フィラグリンとその代謝物の機能(Functions of filaggrin and its metabolites)、フィラグリンにて(In Flaggrin.)、編者:ティッセン(Thyssen)JPおよびマイバッハ(Maibach)HI、2014年;3-9頁
7.ケジック(Kezic)S.,オリガン(O’Regan)GM,ヤン(Yan)N他、フィラグリン分解産物のレベルは、フィラグリン遺伝子型およびアトピー性皮膚炎の重症度の両方によって影響を受ける(Levels of filaggrin degradation products are influenced by both filaggrin genotype and atopic dermatitis severity.)、Allergy、2011年、第66巻、934-940頁
8.ノザキ(Nozaki)Yおよびタンフォード(Tanford)C.、尿素水溶液中のアミノ酸および関連化合物の溶解度(The solubility of amino acids and related compounds in aqueous urea solutions.)、J.Biol.Chem.、1963年、第238巻、4074-4081頁
9.スターク(Stark)G.Rおよびスミス(Smyth)D.G.、たんぱく質中のNH2末端残基の定量のためのシアネートの使用(The use of cyanate for the determination of NH2-terminal residues in proteins.)、J.Biol.Chem.、1963年、第238巻、214-226頁
10.シュミット-ヴェントナー(Schmid-Wendtner)MHおよびコーティング(Korting)HC、Skin Pharmacol.Physiol.、2006年、第19巻、296-302頁
11.リプケ(Rippke)他、Am.J.Clin.Dermatol.、2004年、第5巻、217-23頁
12.マウロ(Mauro)他、Arch.Dermatol.Res.、1998年、第290巻、215-22頁
13.モス(Moss)E他、再構成ヒト表皮におけるキナミルアルコールのin situ代謝:この芳香剤増感剤の活性化への新たな洞察(In situ metabolism of chinamyl alcohol in reconstructed human epidermis:New insigths into the activation of this fragrance sensitizer.)、Chem.Res.Toxicol.、2016年、第29巻、1172-8頁
14.バンディエール(Bandier)J他、ヒト皮膚における表皮フィラグリンの定量とその皮膚刺激に対する反応(Quantification of epidermal filaggrin in human skin and its response to skin irritation.)、J.Invest Dermatol.、2015年、第136巻、1519-29頁
15.G.R.スターク(Stark)、シアナートと蛋白質の官能基との反応III、アミノ基とカルボキシル基との反応(Reactions of Cyanate with Functional Groups of Proteins.III.Reactions with Amino and Carboxyl Groups.)、Biochemistry、1965年、第4巻、1030-1036頁