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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】挿入補助システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/01 20060101AFI20220207BHJP
   A61B 1/005 20060101ALI20220207BHJP
   A61B 1/233 20060101ALI20220207BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
A61B1/01 511
A61B1/005 524
A61B1/233
A61M25/00 530
A61M25/00 540
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019549042
(86)(22)【出願日】2017-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2017037660
(87)【国際公開番号】W WO2019077692
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】古城 洋幸
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-261857(JP,A)
【文献】実開昭52-71290(JP,U)
【文献】特開2002-253484(JP,A)
【文献】特開2002-558(JP,A)
【文献】特開2002-17655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
A61M 25/00 - 25/18
G02B 23/24 - 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入物の先端の角度調整を行う挿入補助システムであって、
前記挿入物の挿入を案内する一方向に湾曲するガイド面を有し、前記挿入物を前記ガイド面に向けて湾曲させたとき前記ガイド面に前記挿入物の外周面の湾曲の外側が接し得るガイド部材と、
前記挿入物の前記先端の向きを変更する変更部材と
を有し、
前記変更部材は、前記ガイド部材に対して進退可能であり、
前記変更部材は、前記挿入物を湾曲させるとき、前記挿入物の前記外周面の前記湾曲の外側が接し得る前記ガイド面の位置よりも基端側の位置で、前記挿入物の中心軸を挟んで前記湾曲の外側の反対側の前記挿入物の前記外周面の湾曲の内側に力点として接触し、
前記変更部材が前記湾曲の内側に接触し前記挿入物を湾曲させるとき、前記ガイド部材の前記ガイド面の先端を支点として前記挿入物の前記先端が前記ガイド面の前記先端から突出する角度を変更させ
前記変更部材の力点は、前記変更部材が前記湾曲の内側に接触し前記挿入物が湾曲した状態で、前記挿入物の前記湾曲の外側を前記ガイド面の湾曲形状に沿うように接触させる位置に設けられる、
挿入補助システム。
【請求項2】
前記変更部材に連結され、前記変更部材を前記ガイド部材に沿って移動可能で、前記挿入物を前記ガイド面に沿わせ、前記挿入物の前記先端の向きを設定する操作部をさらに有する、請求項1に記載の挿入補助システム。
【請求項3】
前記挿入物の前記先端が前記ガイド面の前記先端よりも先端側に突出している状態において、前記変更部材が、前記挿入物の前記外周面の前記湾曲の内側に当接されることで、前記ガイド部材の前記ガイド面の前記先端と前記挿入物が接触する当接箇所を前記支点として、前記挿入物の前記先端が前記ガイド面の前記先端から突出する角度を変更する、請求項1に記載の挿入補助システム。
【請求項4】
前記挿入物を把持する把持部材と、前記把持部材に一体的に設けられたストッパ部とを有し、前記把持部材を移動させる第1の操作部と、
前記変更部材と連結し、前記ストッパ部と当接した後、前記ストッパ部と共に前記変更部材を移動させる係止部材を有し、前記変更部材の先端が前記挿入物に当接する前に、前記挿入物の前記先端を前記ガイド面の前記先端よりも突出させる第2の操作部と、
を備える、請求項1に記載の挿入補助システム。
【請求項5】
前記挿入物は、前記先端に硬質部を有する軟性内視鏡であり、
前記第2の操作部は、前記変更部材が前記軟性内視鏡の前記硬質部に掛かる箇所への押し付けを防止する、請求項4に記載の挿入補助システム。
【請求項6】
前記ガイド部材は、少なくとも前記ガイド面を含む先端側がU形状のハーフパイプであり、
前記変更部材は、前記ガイド部材に対して相対的に移動可能であり、前記ガイド面の湾曲状態に沿った湾曲形状の先端部を有する、請求項1に記載の挿入補助システム。
【請求項7】
前記ストッパ部と前記係止部材とを制動する制動部材を備え、
前記挿入物の抜去移動を行う前記第1の操作部、及び、前記ガイド面に前記変更部材を沿わせる第2の操作部に対して、前記制動部材は、前記第1の操作部を動かす力量よりも前記第2の操作部を動かす力量を大きくする、請求項4に記載の挿入補助システム。
【請求項8】
前記ガイド部材は、
前記変更部材に対して相対的に移動可能で、
前記ガイド面と直線部とを有し、前記ガイド面がU形状の第1の固定ガイドと、
前記第1の固定ガイドの前記ガイド面及び前記変更部材の先端部の進退移動範囲以外の前記U形状の開口部分を塞ぐように設けられ、前記変更部材を摺動可能に収容するホルダ部を有する第2の固定ガイドと、
を有する請求項1に記載の挿入補助システム。
【請求項9】
前記ガイド部材は、
前記変更部材に対して相対的に移動可能で、
前記ガイド面を有する第1の固定ガイドと、
前記第1の固定ガイドの基端に先端部が固定され、直線部で構成され、前記変更部材を進退可能に収容する第2の固定ガイドと、
を有する請求項1に記載の挿入補助システム。
【請求項10】
前記挿入物は、副鼻腔用内視鏡を含む軟性内視鏡、カテーテル及びガイドワイヤを含む、請求項1に記載の挿入補助システム。
【請求項11】
前記変更部材の先端部は、前記ガイド部材に対して相対的に移動可能であり、前記ガイド面の湾曲に沿って前記ガイド面に対して平行になるように、前記ガイド面の前記先端に向かって反り返っている請求項1に記載の挿入補助システム。
【請求項12】
前記ガイド部材は、前記変更部材を進退させる直線部を備え、
前記変更部材の一部は、前記挿入物と直線部との間に設けられる、請求項1に記載の挿入補助システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟性の挿入物の管空内への挿入補助及び管空内における挿入物先端の角度調整を行う挿入補助システムに関する。
【背景技術】
【0002】
軟性の挿入物の1つである軟性内視鏡を用いて、例えば、副鼻腔の上顎洞内を観察する場合、内視鏡先端を鼻腔口から挿入して、鼻腔内の開口部を通過させて、上顎洞に到達している。このような副鼻腔の観察では、挿入進路途中に屈曲する箇所が存在するため、種々のガイド機器や手法が提案されている。例えば、特許文献1には、軟性の挿入物であるカテーテルを処置箇所に到達させるために、ガイド部材となるスリーブ部分を処置者の手によって任意の角度に曲げられた状態で挿入先をガイドする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許US2013/072958A1公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許文献1により提案されているカテーテルの挿入補助機構において、処置者により曲げられたスリーブ部分は、処置箇所に挿入された状態でも、その屈曲状態を維持している。この機構を軟性内視鏡の挿入に利用した場合、スリーブ部分の屈曲状態に軟性内視鏡が従うため、観察方向が限定される。異なる部位を観察するためには、観察方向を変更し、観察視野を変える必要がある。この場合には、一旦、体腔内から抜き出して、スリーブ部分の曲がり具合を感覚的に調整し、再度、挿入する必要がある。
【0005】
さらに、観察対象が副鼻腔である場合に、上顎洞、前頭洞又は、蝶形骨洞のそれぞれの開口部に対して、軟性の挿入物、例えば軟性内視鏡を通過させるための適切なガイド方向は異なっている。1方向に限定されたガイド方向では、例えば、スリーブ部分の曲がり具合を上顎洞の開口部に適合するように調整していた場合、前頭洞の開口部に挿入しようとすると、一旦、外部に抜き出して、スリーブ部分の曲がり具合を再調整する必要がある。即ち、この挿入補助機構は、挿入方向をガイドする補助対象が軟性内視鏡であれば、異なる副鼻腔に挿入する毎に、且つ軟性内視鏡の観察方向を変える毎に挿入・抜去を繰り返し行う必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る挿入物の先端の角度調整を行う挿入補助システムは、ガイド部材と、挿入物の先端の向きを変更する変更部材とを有する。ガイド部材は、挿入物の挿入を案内する一方向に湾曲するガイド面を有する。ガイド部材は、挿入物をガイド面に向けて湾曲させたときガイド面に挿入物の外周面の湾曲の外側が接し得る。前記変更部材は、前記ガイド部材に対して進退可能である。変更部材は、挿入物を湾曲させるとき、挿入物の外周面の湾曲の外側が接し得るガイド面の位置よりも基端側の位置で、挿入物の中心軸を挟んで湾曲の外側の反対側の挿入物の外周面の湾曲の内側に力点として接触する。変更部材が湾曲の内側に接触し挿入物を湾曲させるとき、ガイド部材のガイド面の先端を支点として挿入物の先端がガイド部材の先端から突出する角度を変更させる。前記変更部材の力点は、前記変更部材が前記湾曲の内側に接触し前記挿入物が湾曲した状態で、前記挿入物の前記湾曲の外側を前記ガイド面の湾曲形状に沿うように接触させる位置に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る挿入補助システムを軟性内視鏡に適用した概念的な構成を示す図である。
図2A図2Aは、軟性物の挿入補助システムによる軟性の挿入物の角度調整の一態様を示す図である。
図2B図2Bは、図2AのA-Aにおける挿入補助システムの断面形状を示す断面図である。
図3A図3Aは、挿入補助システムによる軟性の挿入物の角度調整の他の一態様を示す図である。
図3B図3Bは、図3AのB-Bにおける挿入補助システムの断面形状を示す断面図である。
図4A図4Aは、挿入補助システムの操作部の構成を概念的に示す図である。
図4B図4Bは、ガイド操作部内における挿入部と各操作子との連結構成の一例を示す図である。
図5図5は、挿入補助システムの先端部における可動ガイドの後退時の態様を示す図である。
図6図6は、挿入補助システムの先端部における可動ガイドの移動を挿入部と共に移動する態様を示す図である。
図7図7は、挿入補助システムの先端部における可動ガイドのみの移動により挿入部を角度調整部の形状に合わせて異常が生じた態様を示す図である。
図8図8は、挿入補助システムを用いて副鼻腔の上顎洞内に副鼻腔内視鏡を挿入する前の態様を示す図である。
図9図9は、挿入補助システムを用いて副鼻腔の上顎洞内に副鼻腔内視鏡を挿入した態様を示す図である。
図10図10は、挿入補助システムを用いて副鼻腔の上顎洞内に挿入されている副鼻腔内視鏡の角度調整を行った態様を示す図である。
図11A図11Aは、第2の実施形態に係る挿入補助システムの先端部の構成例を示す図である。
図11B図11Bは、第2の実施形態に係る挿入補助システムの先端部の一態様を示す図である。
図11C図11Cは、第2の実施形態に係る挿入補助システムの先端部の断面構成を示す断面図である。
図11D図11Dは、第2の実施形態の変形例係る挿入補助システムの先端部の一態様を示す図である。
図12A図12Aは、第3の実施形態に係る挿入補助システムの先端部の構成例を示す図である。
図12B図12Bは、第3の実施形態に係る挿入補助システムの先端部の一態様を示す図である。
図13A図13Aは、第4の実施形態に係る挿入補助システムの先端部の構成例を示す図である。
図13B図13Bは、第4の実施形態に係る挿入補助システムの先端部の一態様を示す図である。
図14A図14Aは、第5の実施形態に係る挿入補助システムの先端部の構成例を示す図である。
図14B図14Bは、第5の実施形態に係る挿入補助システムの先端部の一態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係る挿入補助システムについて説明する。
この挿入補助システム2による補助対象は、長尺な軟性の挿入物であり、少なくとも体腔内や管腔内に挿入される、軟性内視鏡、カテーテル及びガイドワイヤ等を含んでいる。即ち、挿入補助システム2の補助対象は、挿入側の先端部に能動的に湾曲する湾曲機構を搭載していない機器であることが好ましい。
【0009】
さらに、湾曲させた際に、その湾曲状態からある程度の直線状態に戻ろうとする弾発性(弾性力)又は復元力が作用する機器が好適する。本実施形態における弾発性とは、力を加えたときに適度に変形しやすく、また、その変形からの戻り性がよい性質とする。また、補助対象は、生体物に対する医療機器や観察機器だけではなく、硬質部材からなる配管構造物やエンジン等の機器の内部機構に挿入されて先端に撮像部等や観察窓が設けられた長尺な観察機器及び、ワイヤ等の長尺な部材にも容易に適用できる。
本実施形態の挿入補助システム2で補助する軟性内視鏡1は、前述した弾発性又は復元力を有している。軟性内視鏡1は、後述する副鼻腔を観察する副鼻腔用内視鏡をも含んでいる。
【0010】
図1は、第1の実施形態の挿入補助システム2を公知な軟性内視鏡1に適用した概念的な構成例を示す図である。図2A及び図3Aは、挿入補助システム2による軟性の挿入物に対する角度調整の一態様例を示す図である。図2Bは、図2AのA-Aにおける挿入補助システム2の断面形状を示す断面図、図3Bは、図3AのB-Bにおける挿入補助システム2の断面形状を示す断面図である。
【0011】
図1に示すように、軟性内視鏡1は、公知な構成であり、軟性の挿入部11と、挿入部11と一体的に連結される軟性内視鏡本体12と、画像処理を含む制御を行う制御部13と、撮像した観察画像を含む画像情報を表示する表示部14とで構成される。
【0012】
挿入部11の先端部11aは、少なくとも照明光を照射する照明用窓と、観察像となる光像を光学的に取り込む観察窓等を有する。この先端部11a[硬質部]は、各窓が配置される構造であるため、外装部材として硬質な材料、例えば金属材料で形成される円筒部材が用いられている。挿入部11内には、図示しないが、少なくとも照明光を導光するライトガイド及び撮影光像を透過する光ファイバが貫通するように設けられている。
【0013】
軟性内視鏡本体12内には、CCDやCMOS等の撮像素子を有する撮像部(図示せず)が設けられており、受光用光ファイバからの撮影光像を結像し光電変換により映像信号に変換して制御部13に送出される。制御部13は、映像信号に対して、種々の画像処理を施し、表示部14に表示させる。
【0014】
本実施形態の挿入補助システム2は、軟性挿入物である軟性内視鏡1の挿入部11を挿通させる固定ガイド3[ガイド部材]と、挿入部11に対して任意量(挿入部11の長手方向における任意の距離)の押し込み及び引き抜きが可能な操作部4と、固定ガイド3の先端側で湾曲する角度調整部3aに挿入部11が当接するように長手方向(m又はn)に摺動する可動ガイド7[変更部材]とで構成される。以下の説明においては、固定ガイド3の挿入部11が収容されて方向付けられる一方向に湾曲する溝部分の当接面(U形状の両側面及び底面)をガイド面と称する。
ここで、固定ガイド3において、直線部3bの直線的な長手軸方向に対して、角度調整部3aが設けられた側を先端側又は先端方向と称し、操作部4に連結する側を固定ガイド3の基端側又は基端方向と称している。また、可動ガイド7から見て角度調整部3a又は固定ガイド3に向かう方向を前方(又は、先端側)とする。反対に、可動ガイド7から見て操作部4に向かう方向を後方(又は、基端側)としている。また、角度調整部3aは、湾曲内面をガイド面と称し、その端部を先端3cとする。さらに、後述するガイド面の先端3cから突出する挿入部11は、円筒管の直線的な長手軸方向に対して角度調整部3aの湾曲方向に従った交差する方向に突出している。
後述するように、挿入部11は、可動ガイド7を長手軸方向で角度調整部3aに向かう前方に移動させることで、角度調整部3aに押し込まれて湾曲する。この湾曲に伴い、挿入部11の先端部11aは、固定ガイド3に対して後方斜め上を向く。また、反対に、可動ガイド7を後方に移動させると、挿入部11の弾発性によって、湾曲状態から直線状態に戻り、固定ガイド3に対して前方斜め上を向く。このように、可動ガイド7の位置により、挿入部11の先端部11aの向きを変えることができる。
【0015】
軟性内視鏡1の挿入部11は、固定ガイド3の基端側から先端側に向かって挿入される。このとき、挿入部11の先端部は、固定ガイド3のガイド面に沿って当接しながら基端側から先端側に向かって移動する。挿入部11は、弾発性を有しているため、先端部11aに続く軟性部分は、ガイド面からやや浮き上がった状態で移動する。挿入部11の先端部11aは、固定ガイド3のガイド面の先端3cから突出し得る。本実施形態では、角度調整部3aの基端側に直線部(例えば直管)3bが一体化されている例について説明するが、挿入部11が固定ガイド3の露出する部分で外れ出なければ、多少の曲がりは、許容される。
【0016】
操作部4は、内部を挿通するように軟性内視鏡1を装着し、固定ガイド3内で挿入部11を挿入移動及び抜去移動させるための移動操作部S1[第1の操作部]と、可動ガイド7を摺動するガイド操作部S2[第2の操作部]とを備えている。ここでいう、挿入移動及び抜去移動は、観察対象者に対して、軟性内視鏡を体内に挿入し体外まで抜去することではなく、一旦、体腔内に挿入した軟性内視鏡1で観察する際に、観察対象に対する観察視野方向や観察位置の変更のための最小限の出し入れの移動を行うことを示唆する。
【0017】
固定ガイド3は、金属部材又は硬質樹脂部材等の硬質部材による円筒管等の管形状からなり、操作部4から直線的に延出する。固定ガイド3は、図2Aに示すように、先端側が長手方向に側面の一部が削り取られている。固定ガイド3の削り取られた先端部分は、図2BのA-Aに示すように、固定ガイド3の長手軸方向と直交する断面が略U形状のハーフパイプに形成される。また、この削り取られた先端部分は、可動ガイド7が直線的な長手軸に沿って移動するための直線部3bと、直線部3bの先端から一方向に湾曲するように延びる湾曲形状の角度調整部(湾曲部)3aとの両方で構成される。尚、固定ガイド3の角度調整部3aは、先端(操作部4に対してガイド面に沿って遠位の位置)まで湾曲している形状に限定されるものでは無く、先端に至るまでの近傍部分が直線状に形成されている形状であってもよく、この直線状の部分も角度調整部3aに含まれている。
【0018】
この角度調整部3aの湾曲角度(ガイド方向)は、例えば軟性内視鏡1を被検体内の観察対象箇所又は処置対象箇所に到達するように挿入させる際に、開口部を通過する挿入経路であった場合には、その開口部を通過するのに最適な角度(挿入方向)となるように設定される。また、観察対象箇所における観察方向においても所望する方向に設定する。
図3Aに示すように、固定ガイド3の直線部3bの中心軸と、角度調整部3aの先端3cが向けられた方向K1とにより規定される角度θは、症例により変化し得る。例えば、図3Aに示すように、副鼻腔の上顎洞を処置する場合、110°程度が好ましい。ここでいう、調整角度とは、固定ガイド3のガイド面の先端3cを支点として、挿入部11が揺動して先端部11aの向く方向(図3Aにおいては、方向K1)を角度で示す範囲、即ち、観察方向及び挿入方向における揺動する範囲(以下、湾曲角度と称する)である。勿論、用途に応じた所望の調整角度に基づき、湾曲部の湾曲角度を設定することができる。尚、ガイド面は、全てが一方向に湾曲している形状である必要は無く、先端3c近傍が直線的な形状となっていてもよい。
【0019】
本実施形態において、固定ガイド3の断面は、円筒及びU形状を一例として示しているが、円筒形状は、軟性の挿入物の断面形状に合わせて、楕円形及び矩形等の他の形状であってもよい。また、固定ガイド3のガイド面の断面はU形状である必要は無く、挿入部11(軟性挿入物)が出し入れする開口部分と、挿入部11が収容されて方向付けられる溝部分があれば、例えば、断面がV形状や凹形状であってもよい。断面の溝部分においては、挿入部11が抜け落ちなければ、底面はあっても無くてもよい。
【0020】
可動ガイド7は、図2Bに示すように、固定ガイド3の円筒管内に移動可能に嵌め込まれており、断面が固定ガイド3の内面に沿った円弧形状を成している。尚、可動ガイド7の直線部においては、円弧形状では無く、平坦面であっても利用可能である。この例では、可動ガイド7の両側端が固定ガイド3のU形状の直線部3bの内側に入り込む構成である。
【0021】
また、可動ガイド7のガイド先端部7aは、角度調整部3aの湾曲形状に沿うように反り返っている。つまり、ガイド先端部7aは、角度調整部3aのガイド面の湾曲に沿って平行になるように、角度調整部3aの先端3cに向かい反り返っている。
【0022】
本実施形態では、このガイド先端部7aは、軟性内視鏡1の挿入部11の外周面を角度調整部3aに向かって押圧して、角度調整部3aに軟性内視鏡1の挿入部11の外周面を近づける。このとき、図1に示すように、ガイド先端部7aは、少なくとも挿入部11に損傷や無理な曲げが生じないように、角度調整部3aの湾曲に合わせた高さHを有している。好ましくは、ガイド先端部7aの高さHは、角度調整部3aの湾曲の弧が最も深くなる中央付近Hoに達して、挿入部11の外周面が角度調整部3aのガイド面から浮き上がりが無く当接させることが望まれる。挿入部11は弾発性を有しているため、重力方向にかかわらず、挿入部11の外周面を角度調整部3aの中央付近Hoで当接させることで、挿入部11が角度調整部3aの湾曲形状に沿うように接触し、その接触状態が維持され易い。但し、ガイド先端部7aの高さHは、角度調整部3aの中央付近Hoに達するのが望ましいが、必須ではない。
【0023】
ガイド先端部7aは、可動ガイド7を固定ガイド3の先端側に移動すると、軟性内視鏡1の挿入部11の側面(外周面)に当接した後、挿入部11を押して角度調整部3aのガイド面に近づける。このガイド先端部7aは、角度調整部3aのガイド面に当接させた際に、軟性内視鏡1の挿入部11が角度調整部3aの形状に沿うように接触する。この時、可動ガイド7を最も先端まで移動させても、軟性内視鏡1の挿入部11の側面が角度調整部3aのガイド面に接触するが、挿入部11に過負荷やストレスが掛かる前に停止する。
【0024】
さらに、可動ガイド7は、例えば樹脂材等、弾性変形可能な素材で板状に形成されてもよい。可動ガイド7の移動により挿入部11の角度調整を行うときに、ガイド先端部7aの先端は、挿入部11の外周面に押し付けが過負荷となった場合に、弾性変形して負荷を逃して挿入部11へストレスを与えることを防止できる。また、この弾性変形可能な可動ガイド7は、固定ガイド3の円筒管部分に収容されている際に、可動ガイド7の幅方向は、固定ガイド3の円筒管部分の内周面に沿って、湾曲するように弾性変形することが好ましい。また、ガイド先端部7aの先端は、固定ガイド3の円筒管状部分の内側に入り込まないように硬質に形成されて、円筒管の前で停止する。
【0025】
図2A及び図3Aを参照して、固定ガイド3と可動ガイド7による軟性内視鏡1の挿入部11の観察方向の角度調整及び、観察対象へ至る挿入経路上に存在する体腔内の開口部を通過させるための突出方向の角度調整について説明する。
図2Aに示すように、軟性内視鏡1の挿入部11における、観察方向の角度調整を行う場合及び、体腔内の開口部を通過させる場合には、挿入部11が操作部4及び固定ガイド3を貫通し、挿入部11の先端部11aが角度調整部3aの先端3cから伸び出すように装着されている。尚、実際の体腔内に軟性内視鏡1を装着した挿入補助システムを挿入する時には、U形状の角度調整部3aから軟性内視鏡1が外れ出ないように、角度調整部3aの先端に先端部11aを合わせた位置又は、僅かに後退した位置に挿入部11の先端部11aを配置する。この時、図2Aに示すように、挿入部11の弾発性が直線状に伸びる方向に作用するため、角度調整部3aの先端以外の箇所は、挿入部11が浮き上がっており、方向K2が挿入方向(固定ガイド3の直線部3bの長手方向)に対して90度以下となっている。
【0026】
次に、観察者は、可動ガイド7を固定ガイド3の先端側に向かう方向mに摺動させて、図3Aに示すように、ガイド先端部7aを挿入部11の側面に宛がい、挿入部11を進退移動させずに挿入部11を角度調整部3aの方向に押し込む。この時、挿入部11は湾曲しつつ、接触している角度調整部3aの先端3cを支点として、先端部11aが揺動して固定ガイド3の基端側に向くように振られる。この揺動により、挿入部11の方向K2(観察方向K2)は、最大で、挿入方向(固定ガイド3の直線部3bの長手方向)に対して、前述した110度の方向(観察方向K1)まで振られる。この最大110度は、角度調整部3aの湾曲形状を変えて製作することで変更することが可能である。
【0027】
また反対に、可動ガイド7を固定ガイド3の基端側に向かう方向nに移動させると、ガイド先端部7aが後退すると共に、挿入部11の外周面への押し付けの度合いが減少する。よって、挿入部11の弾発性が直線状に伸びる方向に作用し、図2Aに示すように、角度調整部3aの先端3cを支点として挿入部11の先端部11aが揺動し、先端側の方向K2に移動する。このように、可動ガイド7を固定ガイド3の基端側へ後退するように移動させることにより、挿入部11の湾曲状態を変化させることができる。ここで、可動ガイド7から見て固定ガイド3に向かう方向を前方(又は、先端側)とし、可動ガイド7から見て操作部4に向かう方向を後方(又は、基端側)としている。
本実施形態において、可動ガイド7を長手軸方向に対して前後移動させることで、挿入部11の湾曲状態を変化させる。即ち、可動ガイド7を固定ガイド3の前方に移動させると、挿入部11が角度調整部3aに押し込まれて湾曲する。この湾曲により固定ガイド3から前方の斜め上向きに突出している挿入部11が固定ガイド3の先端3cを支点として後方の斜め上向きに振れる。反対に、可動ガイド7を後方に移動させると、弾発性によって挿入部11の曲がりが直線状に戻る。よって、固定ガイド3から後方の斜め上向きに突出している挿入部11が固定ガイド3の先端3cを支点として前方の斜め上向きに振れる。これらの振れにより、挿入部11の先端部11aに設けられた撮像窓(観察方向)の向きを変えることができる。
【0028】
次に、図4A及び図4Bを参照して、操作部4における可動ガイド7の移動及び挿入部11の挿入及び抜去を行う構成例について説明する。図4Aは、挿入補助システムの操作部の構成を概念的に示す図、図4Bは、ガイド操作部内における挿入部と各操作子との連結構成の一例を示す図である。
【0029】
この例において、操作部4は、円筒形状を成す筐体を備える。操作部4の筐体の先端側には、固定ガイド3が設けられ、後端側には、軟性内視鏡1の挿入部11を内部に引き入れるための導入口4aが設けられている。さらに、操作部4には、固定ガイド側に配置される移動操作部S1と、軟性内視鏡本体12側に配置されるガイド操作部S2と、制動部材24とを備える。
【0030】
これらのうち、移動操作部S1は、摺動用スリット4bに沿って移動させると、挿入部11を挿入移動(角度調整部3aの先端3cから挿入部11の先端部11aを突出させる突出移動)及び抜去移動させる。ガイド操作部S2は、摺動用スリット4cに沿って移動させると、固定ガイド3内で可動ガイド7が移動される。
【0031】
図4A及び図4Bを参照して、移動操作部S1について説明する。
この移動操作部S1は、移動操作子21と、半円筒形状の把持部材22と、把持部材22の後端側に設けられたストッパ部22aと、把持部材22と移動操作子21とを連結する支持部材23と、で構成される。
【0032】
移動操作子21は、支持部材23により摺動用スリット4bを介して、把持部材22と一体的に連結されている。支持部材23は、可動ガイド7が通過できるように2つのアームに分岐して、それぞれのアームの端部が把持部材22に固定する。把持部材22と支持部材23は、樹脂材料により一体成形により作製してもよい。
【0033】
把持部材22は、可動ガイド7が通過できるように外周の一部が欠損した半円筒形状であり、挿入部11に装着して固定されている。把持部材22の後端側(係止部材25側)には、フランジ形状のストッパ部22aが設けられている。ストッパ部22aにおいても、可動ガイド7が通過できるように一部が欠損したC形状となっている。尚、本実施形態において、把持部材22は、挿入部11を握るように固定されている例で説明しているが、把持部材22が開閉可能に構成されて、弾性部材による弾性力で挿入物を握り保持するように構成すれば、異なる径の挿入物に対して把持できるように汎用性を持たせることも可能である。
【0034】
このストッパ部22aの外径は、後述する係止部材25に開口される通過孔25aが通過できない寸法に設定されている。尚、把持部材22とストッパ部22aと支持部材23は、樹脂材料により一体成形により作製してもよい。又は、把持部材22とストッパ部22aと支持部材23をそれぞれ別体に作製して、接着剤により一体的に接着してもよい。
【0035】
ストッパ部22aを含む把持部材22の長手軸方向の長さは、後述するように、挿入部11の硬質な先端部11aが湾曲している角度調整部3aの位置で可動ガイド7に当接されないように、先端側に押し出される距離に相当する長さを有している。つまり、ガイド操作部S2を固定ガイド3の先端側に移動させた際に、ストッパ部22aに当接した後、把持部材22を押して、挿入部11が一体的に先端側に押し出される。即ち、可動ガイド7が挿入部11の先端部11aに近づくと、当接しないように途中から挿入部11と共に先端側に移動し、挿入部11の先端部が固定ガイド3から突出した状態のときに、可動ガイド7が挿入部11に当接するように構成されている。
【0036】
次に、ガイド操作部S2について説明する。
ガイド操作部S2は、ガイド操作子26と、係止部材25とで構成される。係止部材25は、板形状を成し、略中央には挿入物である挿入部11が通過可能な通過孔25aが開口されている。係止部材25は、可動ガイド7の基端7bと接続している。通過孔25aは、挿入部11が通過可能であるが、ストッパ部22aは通過不可となる径を有している。即ち、通過孔25aの径は、挿入部11の外径よりも大きく、ストッパ部22aの外径よりも小さい径である。また、可動ガイド7の基端側が通過孔25aの近傍に固定されている。ガイド操作子26は、摺動用スリット4cを介して、係止部材25と一体的に連結されている。ガイド操作子26を移動させると、可動ガイド7が固定ガイド3内を前後に移動する。
【0037】
以上のように構成された操作部4による操作における作用について説明する。
まず、図5に示すように、体腔内に軟性内視鏡1を装着した挿入補助システム2を挿入する場合、U形状の角度調整部3aから軟性内視鏡1が外れ出ないように、角度調整部3aの先端に掛かった位置に挿入部11の先端部11aを配置している。
【0038】
ここで、本実施形態のように操作部4に前述したストッパ部22aと係止部材25が設けられていない構成について説明する。
体腔内に挿入後に、角度調整部3aの先端3cに挿入部11の先端部11aが掛かったままの状態で、ガイド操作部を移動操作してしまったと仮定する。つまり、図7に示すように、挿入部11上を滑るように可動ガイド7のみが移動し、ガイド先端部7aが挿入部11の外周面を角度調整部3aの湾曲した箇所に押し付ける。角度調整部3aの湾曲部のように凹面に窪んでいる場合には、挿入部11の硬質部材からなる直線形状の先端部11aと後端に続く軟性部材との境目に負荷が掛かる。この負荷の程度は、直線部3bに対する角度調整部3aの湾曲角度に依存しているが、外周面から断面方向に負荷が掛かるのは好ましくはない。
【0039】
これに対して、図4Aに示す本実施形態の操作部4の構成によれば、図5に示すように、角度調整部3aの先端3cに挿入部11の先端部11aが掛かったままの状態で、ガイド操作子26を移動操作する。この時、ガイド操作子26と一体的に設けられた係止部材25が移動するが、通過孔25aを挿入部11が通り抜けるため、挿入部11は移動せず、現状の位置を維持する。この移動により、係止部材25は、ある位置で把持部材22のストッパ部22aに当接する。係止部材25はストッパ部22aに当接した後、そのままストッパ部22aと共に把持部材22を押して、挿入部11が一体的にm方向に先端側へ押し出される。
【0040】
挿入部11の先端部11aは、角度調整部3aの先端3cから押し出されて、図6に示すように突出した状態となる。この先端部11aが突出した状態になると共に、先端部11aに続く軟性の挿入部11に可動ガイド7のガイド先端部7aが当接して、角度調整部3aの弧が最も深い位置Hoまで押して、角度調整部3aの湾曲形状に沿わせる。従って、前述したような挿入部11の先端部11aを角度調整部3aの湾曲した箇所に無理に押し付けることを防止でき、先端部11aの変形や、先端部11aと軟性部材との境目に負荷を掛ける虞を防止できる。
【0041】
また、操作部4の筐体内には、制動部材24を備えている。この制動部材24は、例えば、軟性なゴムやスポンジ等により板状に形成され、ストッパ部22aの底部と係止部材25の底面が接触して、摩擦による抵抗力[力量]を主とする制動力を利用している。この制動力により、移動操作子21とガイド操作子26から指を離した状態であっても、移動操作子21とガイド操作子26の位置が保持される。即ち、可動ガイド7や挿入部11が移動せずに現状の位置を維持することから観察方向や突出方向が維持される。
また、制動部材24に対して、ストッパ部22aの底部が線で接し、係止部材25の底面が面で接しているため、挿入部11に比べて可動ガイド7の方が移動に必要な力量が大きくなり、制動力が高く設定されている。
【0042】
この設定は、挿入部11を挿入移動及び抜去移動させるための移動操作部S1の操作頻度は、可動ガイド7を移動させるガイド操作部S2の操作頻度よりも多いため、ガイド操作部S2の方が移動操作部S1よりも操作力量(ここでは、動き難さ)が重くなるように設定される。よって、移動操作子21で挿入部11を挿入させても可動ガイド7が移動し難いため、移動する挿入部11の角度調整部3aによる湾曲状態が維持され、観察方向や突出方向を変えずに挿入又は抜去することができる。
【0043】
次に、軟性内視鏡1を副鼻腔を観察する副鼻腔内視鏡に 適用した具体例について説明する。図8は、挿入補助システム2を用いて副鼻腔の上顎洞内に副鼻腔内視鏡を挿入する前の態様を示す図、図9は、上顎洞内に副鼻腔内視鏡を挿入した態様を示す図、及び図10は、上顎洞内に挿入されている副鼻腔内視鏡の挿入部に対して角度調整を行った態様を示す図である。
【0044】
本実施形態の挿入補助システム2において、まず、ガイド操作子26を後退させて、可動ガイド7を後端側に後退させた状態で、移動操作子21により、固定ガイド3の角度調整部3aの先端まで副鼻腔内視鏡の挿入部11の先端部11aを押し出て装着する。
【0045】
次に、図8に示すように、鼻腔30から副鼻腔34へ管腔は、途中で側方に屈曲(図8における紙面右側)し、中鼻甲介32、及び鉤状突起33を介して繋がっている。副鼻腔34の上顎洞34a内を観察するためには、固定ガイド3の角度調整部3aを外鼻孔31から鼻腔30に挿入させて、中鼻甲介32を押し退けつつ、上顎洞34aの開口部35まで到達させる。
【0046】
次に、前述したように、ガイド操作子26を操作して可動ガイド7を固定ガイド3の先端側に移動する。この操作により、図9に示したように挿入部11の先端部11aが角度調整部3aの先端3cから開口部35を通過する方向K1に突出する。
【0047】
次に、開口部35を通過した方向K1における観察を行うことができる。方向K1から方向K2に観察対象を移動する場合には、ガイド操作子26を操作部4の後端側に引く。ガイド操作子26を後端側に引くことで、可動ガイド7が基端側に戻り、挿入部11の弾発性により湾曲形状が直線形状に戻るため、図10に示すように、先端部11aが方向K2に向かい揺動する。方向K2における観察した後、移動操作子21を操作部4の後端側に引くことで、挿入部11が上顎洞34aから抜去されて、固定ガイド3内に収容される。観察が終了した場合には、外鼻孔31から固定ガイド3を抜去する。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の挿入補助システム2により補助された軟性の挿入物は、観察対象者の体腔内へ挿入した後に、体腔内で観察対象の前に存在する開口部を通過させるために、可動ガイド7を移動させることにより任意の方向に先端部が向くようにガイド方向を変更することができる。又、軟性内視鏡1による開口部を通過した後の観察時に、同様に可動ガイド7を移動させることより、軟性内視鏡1の先端部が揺動して、所望する観察対象を観察することができる。よって、方向変更のために体腔内から抜去すること無くガイド方向を調整することができ、観察者の手間が軽減され、観察対象者への挿入抜去の負担を強いることが防止できる。
【0049】
また、軟性の挿入物が軟性内視鏡1であった場合には、観察時間以外の観察対象者への挿入抜去に掛かる無駄となる時間が無くなり、観察に要する総時間を短縮することができる。また、固定ガイド材の断面をU形状としたため、挿入移動の際に、嵌入されている軟性の挿入物がガイド部材から外れ出ることが無く、挿入方向以外への位置ずれを防止することができる。
【0050】
[第2の実施形態]
次に、図11A図11B及び図11Cを参照して、第2の実施形態に係る軟性の挿入物に適用する挿入補助システム2について説明する。図11Aは、第2の実施形態に係る挿入補助システム2の先端部の構成を示す図、図11Bは、挿入補助システム2の先端部の一態様を示す図、及び図11Cは、挿入補助システムの先端部のC-C断面の断面構成を示す図である。尚、第2の実施形態の構成部位について、前述した第1の実施形態と同等の構成部位には、同じ参照符号を付して、その説明は省略する。
【0051】
通常、固定ガイド3の湾曲部である角度調整部3aの大きさ、即ち湾曲径の大きさや長さは、観察対象物によって異なっている。挿入部11が湾曲部である角度調整部3aに沿うように湾曲せず、角度調整部3aから浮き上がった箇所が生じていた場合には、角度調整部3a及び可動ガイド7でガイド方向が規制できず、軟性の挿入物42の先端の向きがガイドすべき方向とは異なってしまう事態が想定される。
【0052】
そこで、前述したように可動ガイド7により軟性の挿入物42を固定ガイド3の角度調整部3aのガイド面に当接させた際に、挿入物42が角度調整部3aの形状に合うように接触することが望ましい。即ち、可動ガイド7のガイド先端部7aが、その弧の最も深くまで届く高さH(図1)を有していることが好ましい。しかし、固定ガイド3は、金属部材又は硬質樹脂部材による1本の円筒管からなり、先端側に湾曲した角度調整部3aが設けられた構造である。このため、可動ガイド7を固定ガイド3の基端側(操作部4に連結する側)の管開口から差し入れる場合、容易である反面、ガイド先端部7aの高さが管開口径により制限を受けるため、所望するほど高くはできない場合もある。一方、固定ガイド3の先端側には、湾曲している角度調整部3aが設けられているため、固定ガイド3の先端側から可動ガイド7を差し込むことは、ガイド先端部7aを直線部3bの開口部分から差し入れることは、困難さが伴う。
【0053】
そこで本実施形態においては、図11A乃至図11Cに示すように、固定ガイド[第1の固定ガイド]3は、角度調整部3aに続くU形状の直線部3bと、別体の冠部[第2の固定ガイド]41とで構成する。冠部41は、内部両側面に支持部41aによるホルダ部が設けられる。冠部41のホルダ部内には、可動ガイド7の平坦な直線部が固定ガイド3に対して摺動可能に収容されている。冠部41は、U形状の直線部3bを除く直線部分の開口を塞ぐように固定される。つまり、冠部41は、固定ガイド3の角度調整部(湾曲部)3a及び可動ガイド7のガイド先端部(変更部)7aの進退移動範囲は覆っていない。
【0054】
図11Aにおいて、冠部41に可動ガイド7を差し入れた後、ガイド先端部7aの進退移動範囲を除くU形状の開口部分を塞ぐように冠部41をU形状の直線部3bに上方から被せて嵌め込み固定する。この固定は、冠部41はU形状の直線部3bに対して、例えばスナップフィット等による簡易に固定構造でもよく、冠部41は固定ガイド3に対して、分離可能であってもよい。尚、冠部41は、図11Bに示すように、固定ガイド3の角度調整部(湾曲部)3a及び可動ガイド7のガイド先端部7aの進退移動範囲は覆っていない。図11Bに示すように、可動ガイド7のガイド先端部7aが、軟性の挿入物42を角度調整部3aの弧の最も深くまで押し付ける高さを有している。
【0055】
以上のように、固定ガイド3をU形状の直線部3bと冠部41との2つの構成部材により構成することで、角度調整部3aの湾曲径の大きさや長さに合わせて、可動ガイド7のガイド先端部7aの大きさを選択することができる。この構成により、角度調整部3aのガイド面から軟性の挿入物42の浮き上がりを防止して、角度調整部3aによるガイド方向に軟性の挿入物42を向かせることができる。尚、本実施形態の挿入補助システムに適用される軟性の挿入物42は、例えば、軟性内視鏡、カテーテル及びガイドワイヤ等を含んでいる。
【0056】
図11Dは、第2の実施形態の変形例を示している。前述した第2の実施形態では、可動ガイド7の直線部は平板であった。この変形例では、可動ガイド43の直線部を軟性の挿入物42の形状に合わせて、例えば、円弧形状に形成する。この可動ガイド43を摺動可能に収容する冠部44及びホルダ部も円弧形状に形成する。この変形例によれば、第2実施形態における固定ガイド3の冠部41の直線部3bの断面が円弧形状になるため、断面積をより小さくすることができる。このため、直線部3bの外径が細径化される。本変形例について第2の実施形態と同等の作用効果を奏することができる。
【0057】
[第3の実施形態]
次に、図12A及び図12Bを参照して、第3の実施形態に係る軟性の挿入物に適用する挿入補助システムについて説明する。図12Aは、第3の実施形態に係る挿入補助システムの先端部の構成を示す図、図12Bは、第3の実施形態に係る挿入補助システムの先端部の一態様を示す図である。尚、第3の実施形態の構成部位について、前述した第1の実施形態と同等の構成部位には、同じ参照符号を付して、その説明は省略する。
【0058】
本実施形態は、前述した第2の実施形態と同様に、軟性の挿入物42を固定ガイド3の湾曲部である角度調整部3aの湾曲するガイド面の弧の最も深い位置(例えば、図1に示すHo)に当接させる高さ(図1に示すH)を有するガイド先端部7aを組み付けする構成例である。
【0059】
本実施形態においては、固定ガイド3は、まず、角度調整部45と、U形状の直線部3bを含む円筒管とを別体で構成する。図12Aに示すように、固定ガイド3のU形状の直線部3b側から可動ガイド7の直線部を差し入れる。その後、角度調整部3aと同等な湾曲形状の角度調整部45の基端をU形状の直線部3bの先端部に宛がい、図12Bに示すように重ね合わせて固定する。ここでは、角度調整部45と固定ガイド3とは、分離可能であってもよい。勿論、角度調整部45とU形状の直線部3bの接続面が重ね合わせではなく、同一面となるように端部どうしを突き合わせて、溶接等により溶着固定してもよい。
【0060】
以上のように、本実施形態は、固定ガイド3を角度調整部45と、U形状の直線部3bとを含む円筒管との2つの構成部材により構成することで、角度調整部45の湾曲径の大きさや長さに合わせて、可動ガイド7のガイド先端部7aの大きさを形成し組み付けることができる。この構成により、前述した第2実施形態と同様に、角度調整部45から軟性の挿入物42の浮き上がりを防止して、角度調整部45によるガイド方向に軟性の挿入物42を向かせることができる。尚、本実施形態の挿入補助システムに適用される軟性の挿入物42は、例えば、軟性内視鏡、カテーテル及びガイドワイヤ等を含んでいる。
【0061】
[第4の実施形態]
次に、図13A及び図13Bを参照して、第4の実施形態に係る軟性の挿入物に適用する挿入補助システム2について説明する。図13Aは、第4の実施形態に係る挿入補助システム2の先端部の構成を示す図、図13Bは、第4の実施形態に係る挿入補助システム2の先端部の一態様を示す図である。尚、第4の実施形態の構成部位について、前述した第1の実施形態と同等の構成部位には、同じ参照符号を付して、その説明は省略する。本実施形態は、前述した第2の実施形態における角度調整部3aを別体の摺動可能な可動ガイドとし、ガイド先端部7aを固定ガイド3に固定した構成である。
【0062】
図13Aに示すように、円筒管からなる固定ガイド51の開口先端に、ガイド先端部7aと同じ形状を成し、押し付け部材として機能する固定ガイド先端部51aを設ける。さらに、角度調整部3aが設けられた可動ガイド52の基端側を、固定ガイド51の開口先端から差し入れて、前述した操作部4のガイド操作部S2(図4Aを参照)に接続する。可動ガイド52の断面形状は、例えば、U形状に形成される。または、湾曲部である角度調整部のみをU形状とし、直線部がバー形状であってもよい。この構成において、図13Bに示すように、ガイド操作部S2の操作により、角度調整部3aが前方に送り出されると、軟性の挿入物42は、弾発性により湾曲状態から、ある程度の直線状態に戻ろうとして、軟性の挿入物42の先端が揺動する。このため、挿入物42の向きが変更される。
【0063】
以上のように、本実施形態は、差し込まれる可動ガイド52の先端に角度調整部3aを設け、円筒管の先端に固定ガイド先端部51aを設けた構成であるため、角度調整部3aの湾曲径の大きさや長さに合わせて、固定ガイドである固定ガイド先端部51aを形成することができる。この構成により、前述した第2実施形態と同様に、角度調整部3aから軟性の挿入物42の浮き上がりを防止して、角度調整部3aによるガイド方向に軟性の挿入物42を向かせることができる。本実施形態においても、挿入補助システムに適用される軟性の挿入物42は、例えば軟性内視鏡、カテーテル及びガイドワイヤ等を含んでいる。
【0064】
[第5の実施形態]
次に、図14A及び図14Bを参照して、第5の実施形態に係る軟性の挿入物に適用する挿入補助システム2について説明する。図14Aは、第5の実施形態に係る挿入補助システム2の先端部の構成を示す図、図14Bは、第5の実施形態に係る挿入補助システム2の先端部の一態様を示す図である。尚、第5の実施形態の構成部位について、前述した第1の実施形態と同等の構成部位には、同じ参照符号を付して、その説明は省略する。本実施形態の挿入補助システム2は、共に断面がU形状の角度調整部3a及び直線部3bとで固定ガイド3と、環状リングからなる可動ガイド62が結びつけられたワイヤを含む牽引部61とで構成される。
【0065】
可動ガイド62は、少なくとも軟性の挿入物42が嵌め込み可能であり、軟性の挿入物42を引き寄せた際に、角度調整部3aのU形状の溝内に収容される大きさである。また、可動ガイド62は、断面が円形のリングだけではなく、短い矩形又は楕円、即ち短い筒形状であってもよい。
【0066】
また、牽引部(牽引部材)61は、例えば、ワイヤからなり、一端が可動ガイド62に結び付けられ、他端がガイド操作部S2に結びつけられた構成である。牽引部61は、ワイヤだけではなく、ワイヤ及び樹脂等による剛体シャフトの組み合わせで構成されてもよい。また、牽引部61は、角度調整部3aに開口される孔を通じて裏面側からU形状の溝内に引き込まれて、可動ガイド62に連結されている。
【0067】
この構成によれば、操作部4において、ガイド操作部S2を後端側に向かって摺動させることで、牽引され、軟性の挿入物42が角度調整部3aに湾曲するガイド面に沿うように引き付けられる。また、ガイド操作部S2を先端側に向かって摺動させることで、図14Bに示すように、牽引部61が緩み、軟性の挿入物42が直線状に戻るために作用する弾発性により可動ガイド62が角度調整部3aのガイド面から離間していく。この時、湾曲していた軟性の挿入物42が直線状に戻ろうとするため、軟性の挿入物42の先端部は、後端側から先端側に向くように揺動する。
【0068】
以上のように、本実施形態の挿入補助システム2は、軟性の挿入物42の先端部の方向及び角度を調整する構成が、角度調整部3aを有する固定ガイド3と、環状リングからなる可動ガイド62と、ワイヤの牽引部61とで簡易な構成で実現できる。また、角度調整部3aの湾曲径の大きさや長さに合わせて構成することが容易である。この構成により、前述した第2実施形態と同様に、角度調整部3aから軟性の挿入物42の浮き上がりを防止して、角度調整部3aによるガイド方向に軟性の挿入物42を向かせることができる。本実施形態においても、挿入補助システム2に適用される軟性の挿入物42は、例えば軟性内視鏡、カテーテル及びガイドワイヤ等を含んでいる。
【0069】
以上説明した本発明の各実施形態は、開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(1)
1方向に湾曲したガイド面を有する部材であって、挿入物の挿入方向を案内するガイド部材と、
前記ガイド部材内で進退可能に設けられた変更部材と、
前記変更部材を移動操作し前記挿入物を前記ガイド面に沿わせ、前記挿入物の挿入方向を設定する操作部と、
を有する挿入補助システム。
(2)
前記変更部材は、前記挿入物が前記ガイド部材に配置され、且つ前記挿入物の先端が前記ガイド面の先端よりも先端側に突出している状態において、前記挿入物を前記ガイド面の湾曲形状に沿うように当接させることで、前記ガイド部材の先端と前記挿入物が接触する当接箇所を支点として、前記挿入物の先端側が前記ガイド部材から突出する角度を変更して前記挿入方向を設定する、(1)に記載の挿入補助システム。
(3)
前記操作部は、
前記挿入物を把持する把持部材と、前記把持部材に一体的に設けられたストッパ部と、前記把持部材を移動させる第1の操作部と、
前記変更部材と連結し、前記ストッパ部と当接した後、移動する前記ストッパ部と共に前記変更部材を移動させて、前記変更部材の先端が前記挿入物に当接する前に、前記挿入物の先端を前記ガイド面の先端よりも突出させる係止部材を有する第2の操作部と、
を備える、(1)に記載の挿入補助システム。
(4)
前記挿入物は、先端に硬質部を有する軟性内視鏡であり、
前記第2の操作部は、前記変更部材が前記軟性内視鏡の前記硬質部に掛かる箇所への押し付けを防止する、(3)に記載の挿入補助システム。
(5)
前記ガイド部材は、
少なくとも前記ガイド面を含む先端側がU形状のハーフパイプであり、
前記変更部材は、前記ガイド部材に対して相対的に移動可能であり、
前記ガイド面の湾曲状態に沿った湾曲形状の先端部を有する、(1)に記載の挿入補助システム。
(6)
前記ストッパ部と前記係止部材とを制動する制動部材を備え、
前記挿入物の抜去移動を行う前記第1の操作部及び、前記ガイド面に前記変更部材を沿わせる第2の操作部に対して、
前記制動部材により前記第1の操作部を動かす力量よりも前記第2の操作部を動かす力量の方が大きい、(3)に記載の挿入補助システム。
(7)
前記ガイド部材は、
前記変更部材に対して相対的に移動可能で、
前記湾曲したガイド面と直線部を有し、前記ガイド面がU形状の第1の固定ガイドと、
前記第1の固定ガイドの前記ガイド面及び前記変更部材の先端部の進退移動範囲以外の前記U形状の開口部分を塞ぐように設けられ、前記変更部材を摺動可能に収容するホルダ部を有する第2の固定ガイドと、を有する(1)に記載の挿入補助システム。
(8)
前記ガイド部材は、
前記変更部材に対して相対的に移動可能で、
前記ガイド面を有する第1の固定ガイドと、
前記第1の固定ガイドの基端に先端部が固定され、直線部で構成され、前記変更部材を進退移動可能に収容する第2の固定ガイドと、を有する(1)に記載の挿入補助システム。
(9)
前記挿入物は、副鼻腔用内視鏡を含む軟性内視鏡、カテーテル及びガイドワイヤを含む、(1)に記載の挿入補助システム。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B