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特許7019745トランケーション部分の予測画像を取得する方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】トランケーション部分の予測画像を取得する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20220207BHJP
【FI】
A61B6/03 350F
A61B6/03 350Z
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020078001
(22)【出願日】2020-04-27
(65)【公開番号】P2020201941
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2020-10-02
(31)【優先権主張番号】201910380182.2
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】319011672
【氏名又は名称】ジーイー・プレシジョン・ヘルスケア・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】シュエリ・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ・ビンジエ
(72)【発明者】
【氏名】シユー・リー
(72)【発明者】
【氏名】ダン・リウ
【審査官】佐田 宏史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0126784(US,A1)
【文献】特開2007-296352(JP,A)
【文献】Eric Fournie et al.,"CT Field of View Extension Using Combined Channels Extension and Deep Learning Methods",OpenReview,米国,2019年04月18日,pp.1-4,https://openreview.net/forum?id=SygfANaVcN
【文献】工藤 博幸,“インテリアCTの提案”,映像情報メディカル,日本,産業開発機構株式会社,2008年12月01日,Vol.40, No.13,p.1188-1193
【文献】Xiang Hong et al.,"Enhancing the Image Quality via Transferred Deep Residual Learning of Coarse PET Sinograms",IEEE Transactions on Medical Imaging ,米国,IEEE,2018年04月26日,Vol.37, No.10,pp.2322-2332
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/03
G06T 1/00,7/00-7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを含むイメージングシステムを用いてトランケーション部分の予測画像(262)を取得する方法(110)であって、
前記プロセッサによって、投影データ(210)を前処理し、再構成してトランケーション部分の初期画像を得ること、及び
前記プロセッサによって、訓練済みの学習ネットワークに基づいて、前記初期画像を校正して、トランケーション部分の予測画像(262)を取得すること
を含み、
前記初期画像を校正して、トランケーション部分の予測画像(262)を取得することが、
前記トランケーション部分の初期画像の画素を極座標から直交座標に変換して、前記初期画像の画素行列を得ること、
訓練済みの学習ネットワークに基づいて、前記画素行列を校正すること、及び
前記校正後の画素行列を直交座標から極座標に変換して、前記トランケーション部分の予測画像(262)を得ることを含む、トランケーション部分の予測画像(262)を取得する方法(110)。
【請求項2】
前記投影データ(210)を前処理することが、投影データ(210)のトランケーション部分に対してパディングを実行することを含む、請求項1に記載の方法(110)。
【請求項3】
投影データ(210)のトランケーション部分に対してパディングを実行することが、トランケーションしていない部分の境界の投影データ(210)情報をトランケーション部分にパディングすることを含む、請求項2に記載の方法(110)。
【請求項4】
トランケーションしていない部分の境界(234)の投影データ(210)情報をトランケーション部分にパディングすることが、各チャンネルのトランケーションしていない部分の境界(234)の投影データ(210)情報を、対応するチャンネルのトランケーション部分にパディングすることを含む、請求項3に記載の方法(110)。
【請求項5】
前記訓練済みの学習ネットワークが、仮想歪み画像及び比較画像に基づいて訓練して得られたものである、請求項1に記載の方法(110)。
【請求項6】
前記訓練済みの学習ネットワークが、前記仮想歪み画像を座標変換して得られた画素行列、及び前記比較画像を座標変換して得られた画素行列に基づいて訓練して得られたものである、請求項に記載の方法(110)。
【請求項7】
前記仮想歪み画像及び比較画像の取得方法が、
データのトランケーションのない原画像を取得すること、
前記原画像のうちの対象物に対応する部分を仮想オフセットして走査領域から部分的に移動させることで、比較画像を得ること、
前記比較画像を仮想走査して仮想データを収集し、仮想のトランケーション投影データを生成すること、及び
前記仮想のトランケーション投影データに対して画像再構成を実行して、仮想歪み画像を得ることを含む、請求項に記載の方法(110)。
【請求項8】
前記仮想歪み画像及び比較画像の取得方法が、
データのトランケーションのない原画像を取得して、前記原画像を比較画像とすること、
前記原画像に対応する投影データ(210)を取得すること、
前記投影データ(210)の両側のチャンネルをパディングして、仮想のトランケーション投影データを生成すること、及び
前記仮想のトランケーション投影データに対して画像再構成を実行して、仮想歪み画像を得ることを含む、請求項に記載の方法(110)。
【請求項9】
プロセッサを含むイメージングシステムを用いたイメージング方法であって、
前記プロセッサによって、請求項1乃至のうちのいずれか一項に記載のトランケーション部分の予測画像(262)を取得する方法(110)、及び
前記プロセッサによって、前記トランケーション部分の予測画像(262)と、原投影データの再構成に基づいて得られたトランケーションしていない部分の画像(231)とをつなぎ合わせて医学画像を得ることを含む、イメージング方法(100)。
【請求項10】
投影データ(210)を前処理して、再構成してトランケーション部分の初期画像を得るための前処理装置(510)、及び
訓練済みの学習ネットワークに基づいて、前記初期画像を校正して、トランケーション部分の予測画像(262)を取得するための制御装置(520)であって、前記トランケーション部分の初期画像の画素を極座標から直交座標に変換して、前記初期画像の画素行列を得るための変換モジュール(521)、
訓練済みの学習ネットワークに基づいて、前記画素行列を校正するための校正モジュール(522)、及び
前記校正後の画素行列を直交座標から極座標に変換して、前記トランケーション部分の予測画像(262)を得るための逆変換モジュール(523)を含む、制御装置(520)を含む、トランケーション部分の予測画像を取得する装置(501)。
【請求項11】
前記前処理装置(510)が、投影データ(210)のトランケーション部分に対してパディングを実行するためのパディングモジュールを含む、請求項10に記載の装置(501)。
【請求項12】
前記パディングモジュールが、更に、トランケーションしていない部分の境界(234)の投影データ(210)情報をトランケーション部分にパディングする、請求項11に記載の装置(501)。
【請求項13】
請求項10乃至12のうちのいずれか一項に記載のトランケーション部分の予測画像を取得する装置(501)、及び
前記トランケーション部分の予測画像(262)と、投影データ(210)の再構成に基づいて得られたトランケーションしていない部分の画像(231)とをつなぎ合わせて医学画像を得る、つなぎ合わせ装置(502)を含む、イメージングシステム(500)。
【請求項14】
コンピュータによって実行されると、コンピュータに、請求項1乃至のうちのいずれか一項に記載のトランケーション部分の予測画像を取得する方法を実行させるコンピュータプログラムを記憶するための非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理に関し、特に、トランケーション部分の予測画像を取得するための、方法及び装置、イメージング方法及びシステム、並びに非一時的コンピュータ可読記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ断層撮影(Computed Tomography、CT)のプロセスでは、検出器によって、検出対象を透過したX線のデータを収集し、その後収集されたこれらのX線のデータを処理して投影データを得る。これらの投影データを利用してCT画像を再構成することができる。完全な投影データによって、診断に用いられる正確なCT画像を再構成することができる。
【0003】
しかしながら、検出対象の体型が大きいか或いは特別な姿勢をとっている場合、検出対象の一部は走査領域を超えてしまい、検出器も完全な投影データを収集できない。これをデータのトランケーションと称する。通常、例えば水モデル等のような数学的モデルによって、トランケーション部分の投影データ又は画像を予測することはできるが、これらの従来の方法によって予測して得られたトランケーション部分の画質は様々な実際の状況によって変動し、性能も理想的なものではない。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、トランケーション部分の予測画像を取得するための、方法及び装置、イメージング方法及びイメージングシステム、並びに非一時的コンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【0005】
本発明の例示的な実施形態は、トランケーション部分の予測画像を取得する方法を提供する。前記方法は、投影データを前処理し、再構成してトランケーション部分の初期画像を得ること、及び訓練済みの学習ネットワークに基づいて、前記初期画像を校正して、トランケーション部分の予測画像を取得することを含む。
【0006】
任意選択として、前記投影データを前処理することが、投影データのトランケーション部分に対してパディングを実行することを含む。更に、投影データのトランケーション部分に対してパディングを実行することが、トランケーションしていない部分の境界の投影データ情報をトランケーション部分にパディングすることを含む。また更に、トランケーションしていない部分の境界の投影データ情報をトランケーション部分にパディングすることが、各チャンネルのトランケーションしていない部分の境界の投影データ情報を、対応するチャンネルのトランケーション部分にパディングすることを含む。
【0007】
任意選択として、練済みの学習ネットワークに基づいて、前記初期画像を校正して、トランケーション部分の予測画像を取得することが、前記トランケーション部分の初期画像の画素を極座標から直交座標に変換して、前記初期画像の画素行列を得ること、訓練済みの学習ネットワークに基づいて、前記画素行列を校正すること、及び前記校正後の画素行列を直交座標から極座標に変換し、前記トランケーション部分の予測画像を得ることを含む。
【0008】
任意選択として、前記訓練済みの学習ネットワークは、仮想歪み画像及び比較画像に基づいて訓練して得られたものである。更に、前記訓練済みの学習ネットワークが、前記仮想歪み画像を座標変換して得られた画素行列、及び前記比較画像を座標変換して得られた画素行列に基づいて訓練して得られたものである。更に、前記仮想歪み画像及び比較画像の取得方法が、データのトランケーションのない原画像を受け取ること、前記原画像のうちの対象物に対応する部分を仮想オフセットして走査領域から部分的に移動させることで、比較画像を得ること、前記比較画像を仮想走査して仮想データを収集し、仮想のトランケーション投影データを生成すること、及び前記仮想のトランケーション投影データに対して画像再構成を実行して、仮想歪み画像を得ることを含む。任意選択として、前記仮想歪み画像及び比較画像の取得方法が、データのトランケーションのない原画像を受け取り、前記原画像を比較画像とすること、前記原画像を走査領域内に保持させ、且つ該原画像を順投影して該原画像の投影を得ること、前記投影の両側のチャンネルをパディングして、仮想のトランケーション投影データを生成すること、及び前記仮想のトランケーション投影データに対して画像再構成を実行して、仮想歪み画像を得ることを含む。
【0009】
本発明の例示的な実施形態はイメージング方法を提供する。前記イメージング方法は、
トランケーション部分の予測画像を取得すること、及び前記トランケーション部分の予測画像と原投影データの再構成に基づいて得られたトランケーションしていない部分の画像とをつなぎ合わせて医学画像を得ることを含む。ここで、トランケーション部分の予測画像を取得することが、投影データを前処理し、再構成してトランケーション部分の初期画像を得ること、及び訓練済みの学習ネットワークに基づいて、前記初期画像を校正して、トランケーション部分の予測画像を取得することを含む。
【0010】
本発明の例示的な実施形態は非一時的コンピュータ可読記憶媒体を更に提供する。非一時的コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータプログラムを記憶するために用いられる。前記コンピュータプログラムは、コンピュータによって実行されると、コンピュータに、上記のトランケーション部分の画像を取得する方法についての命令を実行させる。
【0011】
本発明の例示的な実施形態は、トランケーション部分の予測画像を取得する装置を更に提供する。前記装置は前処理装置及び制御装置を含む。前記前処理装置は、投影データを前処理し、再構成してトランケーション部分の初期画像を得るために用いられる。前記制御装置は、訓練済みの学習ネットワークに基づいて、前記初期画像を校正して、トランケーション部分の予測画像を取得するために用いられる。
【0012】
任意選択として、前記前処理装置が、投影データのトランケーション部分に対してパディングを実行するためのパディングモジュールを含む。更に、前記パディングモジュールが、トランケーションしていない部分の境界の投影データ情報をトランケーション部分にパディングするように更に構成される。
【0013】
任意選択として、前記制御装置は、変換モジュール、校正モジュール、及び逆変換モジュールを含む。前記変換モジュールが、前記トランケーション部分の初期画像の画素を極座標から直交座標に変換して、前記初期画像の画素行列を得るために用いられる。前記校正モジュールが、訓練済みの学習ネットワークに基づいて、前記画素行列を校正するために用いられる。前記逆変換モジュールが、前記校正後の画素行列を直交座標から極座標に変換して、前記トランケーション部分の予測画像を得るために用いられる。
【0014】
本発明の例示的な実施形態はイメージングシステムを提供する。前記イメージングシステムは、トランケーション部分の予測画像を取得する装置、及びつなぎ合わせ装置を含む。前記トランケーション部分の予測画像を取得する装置は、前処理装置及び制御装置を含む。前記前処理装置が、投影データを前処理し、再構成してトランケーション部分の初期画像を得るように構成されている。前記制御装置が、訓練済みの学習ネットワークに基づいて、前記初期画像を校正して、トランケーション部分の予測画像を取得するように構成されている。前記つなぎ合わせ装置が、前記トランケーション部分の予測画像と、投影データの再構成に基づいて得られたトランケーションしていない部分の画像とをつなぎ合わせて医学画像を得るために用いられる。
【0015】
以下の詳細な説明、図面及び特許請求の範囲によって、他の特徴及び内容が明らかになる。
【0016】
図面と合わせて本発明の例示的な実施形態を説明することにより、本発明が更に好適に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のいくつかの実施形態におけるイメージング方法のフローチャートを示す図である。
図2図1に示す方法において、訓練済みの学習ネットワークに基づいて、初期画像を校正して、トランケーション部分の予測画像を取得するステップのフローチャートを示す図である。
図3図1に示す方法において、投影データを前処理したときの一部の中間画像を示す図である。画像(1)は、データのトランケーションが生じた投影を示し、画像(2)は、画像(1)における投影のトランケーション部分をパディングして得られたシミュレーション投影を示し、画像(3)は、画像(2)におけるシミュレーション投影を画像再構成して得られたCT画像を示す。
図4図2に示すステップにおける一部の中間画像を示す図である。画像(1)はトランケーション部分に対応する直交座標の画素行列を示し、画像(2)は画像(1)の直交座標の変換画像に対して学習ネットワークを用いて得られた、予測された画素行列を示し、画像(3)は、画像(2)の予測された画素行列を逆座標変換して得られた予測画像を示す。
図5】本発明のいくつかの実施形態における、学習ネットワークのトレーニングデータ準備方法のフローチャートを示す図である。
図6】本発明の他の実施形態における、学習ネットワークのトレーニングデータ準備方法のフローチャートを示す図である。
図7】本発明のいくつかの実施形態におけるCTシステムの図である。
図8】本発明のいくつかの実施形態における、トランケーション部分の予測画像を取得する装置を含むイメージングシステムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的な実施形態について説明するが、これらの実施形態を具体的に説明する過程において、簡潔で要点を押さえた説明をするために、本明細書で実際の実施形態の全ての特徴を詳細に説明することはできないことに留意すべきである。任意の実施形態の実際の実施過程において、任意のエンジニアリングプロジェクトまたは設計プロジェクトの過程のように、開発者の具体的な目標を実現するために、且つシステムに関連する制限又は商業に関連する制限を満たすために、常に様々な具体的な決定が行われており、様々な実施形態の間で変更が発生し得るということは理解されるべきである。この他に、このような開発過程での努力は複雑であり且つ長時間に渡って行われる可能性があるが、本発明に開示された内容に関連する本分野の普通の当業者について言えば、本公開で明らかになった技術内容を基礎にして行われた一部の設計、製造又は生産等の変更は通常の技術的手段に過ぎず、本公開の内容が不十分であるものとして解釈してはならないことも理解することができる。
【0019】
別に定義する場合を除き、特許請求の範囲及び明細書で使用されている技術用語又は科学用語は、本発明の属する技術分野において一般的な技能を有する者によって理解される通常の意味を有するものである。本発明の特許出願の明細書及び特許請求の範囲で使用される「第1」、「第2」及び類似の語句は、如何なる順序、数量又は重要性を表すものではなく、異なる構成部分を区別するために使用されるだけである。「1つ」又は「1」など類似の語句は、数量を限定することを示すものではなく、少なくとも1つあることを示すものである。「含む」又は「備える」など類似する語句は、「含む」又は「備える」の前にある要素又は物品が、「含む」又は「備える」の後に列挙される要素又は物品及びそれと同等のものを含み、更に他の要素又は物品を除外しないことを意味する。「接続する」又は「繋がる」など類似する語句は、物理的または機械的に接続することに限定されず、直接的または間接的に接続することに限定されるものでもない。
【0020】
本発明で使用されている用語「検出対象」は、任意の画像化される物体を含み得るものである。用語「投影データ」と「投影画像」は、同じ意味を表している。
【0021】
いくつかの実施形態では、CT走査中において、検出対象の体形が比較的大きい又は検出対象が特別な姿勢で寝ている場合、CTの走査領域(SFOV)を部分的にはみ出してしまい、収集された投影データにトランケーションが現れ、再構成により得られた画像も歪む。本発明のいくつかの実施形態によるトランケーション部分の予測画像を取得する方法及びシステムは、人工知能に基づいてトランケーション部分の画像を、より正確に予測することができ、医師による診断及び/又は治療に更に好ましい根拠を提供することができる。当該分野又は関連する分野の普通の当業者の観点から見ると、このような説明は、本発明をCTシステムのみに限定するものとして理解されるべきではなく、実際には、本明細書に記載のトランケーション部分の予測画像を取得する方法及びシステムは、例えば、X線システム、PETシステム、SPECTシステム、MRシステム、またはそれらの任意の組み合わせなど、医療分野及び非医療分野における他のイメージング分野に合理的に応用できることに留意すべきである。
【0022】
本明細書で説明するように、人工知能(深層機械学習、階層型学習、又は深層構造学習とも呼ばれる深層学習技術を含む)は、学習に人工ニューラルネットワークを採用する。深層学習方法の特徴は、1つ以上のネットワークアーキテクチャを使用して、関心のあるデータを抽出またはシミュレーションすることである。深層学習方法は、1つ以上の処理層(たとえば、畳込み層、入力層、出力層、正規化層などであり、異なる深層学習ネットワークモデルに対して異なる機能層を有することができる)を使用して実現することができ、処理層の配置と数により、深層学習ネットワーク処理で複雑な情報抽出とモデリングタスクを実行することが可能となる。通常は、いわゆる学習ステップ(あるいはトレーニングステップ)によって、ネットワークの特定のパラメータ(「重み」及び「バイアス」とも呼ばれる)が推定されるが、いくつかの実施形態では、学習ステップ自体をネットワークアーキテクチャの学習要素に拡張することもできる。学習済み又は訓練済みのパラメータによって、通常、異なるレベルの層に対応するネットワークを生じる(または出力する)ため、初期データの異なるアスペクトまたは前の層の出力を抽出またはシミュレーションすることにより、層の階層構造または層の連結を表すことができる。これは、画像処理または再構成のステップにおいて、データにおける異なる特徴レベルまたは解像度に対して異なる層として表すことができる。したがって、処理は層毎に実行することができる。つまり、先行する層又は上位の層は、入力データから「単純な」特徴を抽出する層に対応することができ、これらの単純な特徴を組み合わせて、より複雑な特徴を示す層を表現する。実際、各層(または、より具体的には、各層における各「ニューロン」)は、1つ以上の線形及び/または非線形変換(いわゆる活性化関数)を使用して、入力データを処理し出力データとして表すことができる。複数の「ニューロン」の数は、複数の層間で一定の数にしてもよいし、層ごとに変えてもよい。
【0023】
本明細書で説明されるように、特定の問題を解決する深層学習プロセスの初期トレーニングの一部として、既知の入力値(たとえば、入力画像、または座標変換される画像の画素行列)と既知の値または期待値とを備えたトレーニングデータセットを使用して、深層学習プロセスの最終出力(たとえば、目標画像、または座標変換される画像の画素行列)または深層学習プロセスの各層(多層ネットワークアーキテクチャを想定した場合)を得ることができる。この方式を用いて、深層学習アルゴリズムは、初期データと期待出力との間の数学的関係を特定するまで、及び/または各レイヤーの入力と出力との間の数学的関係を特定して提示するまで、(教師あり法若しくはガイドあり法、又は教師なし法若しくはガイドなし法によって)既知のデータセット又はトレーニングデータセットを処理することができる。学習プロセスでは、通常、(一部の)入力データを使用し、その入力データに対するネットワーク出力を得る。その後、得られた出力と該データセットの期待(目標)出力とが比較され、期待された出力との間で生成された差を使用してネットワークのパラメータ(重み及びバイアス)を繰り返し更新する。このような更新/学習メカニズムは確率的勾配降下(SGD)法を使用してネットワークのパラメータを更新するが、当業者は、当然に、当技術分野で知られている他の方法を使用できることも理解するはずである。同様に、入力値と期待目標値とが既知であるが、初期値のみを訓練済みの深層学習アルゴリズムに提供し、その後、出力を深層学習アルゴリズムの出力と比較して、以前の学習を検証したり、過剰学習を防止する、個別の検証データセットを使用することができる。
【0024】
図1には、本発明のいくつかの実施形態のイメージング方法100によるフローチャートが示されている。図2には、図1に示す方法100において、訓練済みの学習ネットワークに基づいて、初期画像を校正し、トランケーション部分の予測画像を取得するステップ112のフローチャートが示されている。図3には、図1に示す方法において、投影データを前処理したときの一部の中間画像が示されており、ここで、画像(1)は、データトランケーションが生じた投影を示し、画像(2)は、画像(1)における投影のトランケーション部分をパディングして得られたシミュレーション投影を示し、画像(3)は、画像(2)におけるシミュレーション投影を画像再構成して得られたCT画像を示す。図4には、図2に示す方法による一部の中間画像が示されており、ここで、画像(1)はトランケーション部分に対応する直交座標の画素行列を示し、画像(2)は画像(1)の直交座標の画素行列に対して学習ネットワークを用いて得られた、予測された画素行列を示し、画像(3)は、画像(2)の予測された画素行列を逆座標変換して得られた予測画像を示す。
【0025】
図1~4に示すように、本発明のいくつかの実施形態におけるイメージング方法は、トランケーション部分の予測画像を取得する方法110を含み、トランケーション部分の予測画像を取得する方法110はステップ111及びステップ112を含む。
【0026】
ステップ111において、投影データを前処理し、再構成してトランケーション部分の初期画像を得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、投影データを前処理することは、投影データのトランケーション部分をパディング(padding)することを含む。検出対象を透過したX線のデータを収集することで、図3の画像(1)に示す投影データ(即ちプロジェクション)210を得ることができる。検出対象の一部がCTシステムの走査領域からはみ出ているので、得られた投影データ210にデータのトランケーションが生じるが、投影データを前処理することで、投影データのトランケーション部分をシミュレーションすることができる。好ましくは、投影データのトランケーション部分に対してパディングをすることは、トランケーションしていない部分の境界(最も外側のチャンネル)の投影データ情報をトランケーション部分にパディングすること、更に、各チャンネルのトランケーションしていない部分の境界(最も外側のチャンネル)の投影データ情報を、対応するチャンネルのトランケーション部分にパディングすることを含み、図3の画像(2)に示すように、パディングすることでシミュレーションの投影データ220が得られる。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態において、パディングする方法を採用してトランケーション部分をシミュレーションするが、当業者は、他の方式、例えば、数学モデルに従い、トランケーションしていない部分の投影データ情報に基づいてトランケーション部分の投影データ情報を計算するなどの方式を用いて、トランケーション部分をシミュレーションできることを理解するだろう。更に、本発明のいくつかの実施形態では、トランケーションしていない部分の境界の投影データ情報でトランケーション部分をパディングするが、当業者は、本発明の実施形態がそのようなパディング方法に限定されず、他の方法でトランケーション部分をパディングできることを理解するはずである。たとえば、トランケーション部分の全体または一部のパディングを、特定の組織のCT値または事前に設定されたCT値(たとえば、0)若しくは投影データ情報などで行うことができ、更に、取得した投影データに欠損データなどがある場合、同じパディング方法を使用してデータをパディングすることもできる。更に、本発明のいくつかの実施形態の前処理はトランケーション部分をパディングすることを含むが、当業者は、前処理が、このステップだけでなく、画像再構成前に実行される任意のデータ前処理操作を含むことができることを理解するであろう。
【0029】
いくつかの実施形態において、投影データを前処理した後、パディング後の投影データを画像再構成し、CT画像を得る。図3における画像(3)に示すように、CT画像230は、図3における画像(2)220(トランケーションしていない部分及びシミュレーションされたトランケーション部分を含む)の投影データを画像再構成して得られたものであり、CT画像230は、トランケーションしていない部分の画像231及びトランケーション部分の画像232を含み、即ち、走査領域80の内側の部分はトランケーションしていない部分の画像231であり、走査領域80の外側の部分はトランケーション部分の画像232であり、走査領域80の境界はトランケーションしていない部分の画像231とトランケーション部分の画像232との境界234である。この画像再構成アルゴリズムは、たとえば、フィルタ補正逆投影(FBP)再構成法、適応統計的反復再構成(ASIR)法、共役勾配(CG)法、最尤推定期待値最大化法(MLEM)法、モデルベースの反復再構成(MBIR)法などを含むことができる。
【0030】
いくつかの実施形態において、ステップ111は、画像再構成して得られたCT画像に対して抽出処理を行い、図3における画像(3)に示す部分232のように、トランケーション部分の初期画像を得ることを更に含む。いくつかの実施形態では、本発明のトランケーション部分の初期画像は走査領域の外側の部分画像を表すが、当業者は、画像抽出が走査領域及びその外側の部分の画像を抽出することだけに限定されず、トランケーションしていない部分の少なくとも一部の画像を含んでいてもよく、実際の操作中に、必要に応じて調整できることを理解するはずである。
【0031】
続いて図1を参照すると、図1に示すように、本発明のいくつかの実施形態においてトランケーション部分の予測画像を取得する方法110はステップ112を更に含む。
【0032】
ステップ112において、訓練済みの学習ネットワークに基づいて、トランケーション部分の初期画像を校正し、トランケーション部分の予測画像を取得する。
【0033】
一定のデータ量のトランケーション部分の仮想歪み画像(既知の入力値)及び比較画像(期待出力値)、またはトランケーション部分の仮想歪み画像に対応する画素行列(既知の入力値)及び比較画像に対応する画素行列(期待出力値)を入力して、深層学習方法に基づいて学習ネットワークを構築又はトレーニングし、既知の入力値と期待出力値との間の数学的関係を取得し、これに基づいて、実際の操作中に、トランケーション部分の既知の画像(例えば、前述したトランケーション部分の初期画像232)を入力すると、学習ネットワークに基づいて、トランケーション部分の期待画像(つまり、期待出力値-比較画像)を取得することができる。学習ネットワークのトレーニング、構築、及びデータの準備については、図5及び6を参照して更に説明する。いくつかの実施形態では、本発明における学習ネットワークのトレーニングは、当技術分野で知られているいくつかのネットワークモデル(例えばUnetなど)に基づいている。
【0034】
図2を参照すると、いくつかの実施形態では、訓練済みの学習ネットワークに基づいて、トランケーション部分の初期画像を校正し、トランケーション部分の予測画像を取得すること(ステップ112)は、ステップ121、ステップ122、及びステップ123を含んでいる。
【0035】
ステップ121において、トランケーション部分の初期画像の画素を極座標から直交座標に変換し、初期画像の画素行列を取得する。例えば、トランケーション部分の初期画像(図3の画像(3)の部分232など)に対して極座標から直交座標への座標変換を実行することにより、図4の画像(1)に示すような直交座標の画素行列242を得ることができる。
【0036】
ステップ122において、訓練済みの学習ネットワークに基づいて、上記の画素行列を校正する。例えば、図4の画像(1)の画素行列242を学習ネットワークに入力することにより、図4の画像(2)に示す校正後の比較画素行列252を得ることができる。
【0037】
ステップ123において、校正後の画素行列を直交座標から極座標に変換して、前記トランケーション部分の予測画像を取得する。たとえば、校正後の画素行列(図4の画像(2)の252に示す)を直交座標から極座標に変換して、トランケーション部分の予測画像262(図4の画像(3)に示す)を得ることができる。
【0038】
続いて図1を参照すると、図1に示すように、本発明のいくつかの実施形態のイメージング方法はステップ120を更に含む。
【0039】
ステップ120において、前記トランケーション部分の予測画像と、原投影データの再構成に基づいて得られたトランケーションしていない部分の画像とをつなぎ合わせて医学画像を得る。例えば、トランケーション部分の予測画像と、CT画像230におけるトランケーションしていない部分の画像231とをつなぎ合わせる或いは合成することで、完全なCT画像260を得ることができる。ここで、トランケーションしていない部分の画像231は、初期投影データの再構成に基づいて得られたものである。
【0040】
図5には、本発明のいくつかの実施形態における、学習ネットワークのトレーニングデータ準備方法300のフローチャートが示されている。図5に示すように、学習ネットワークのトレーニングデータ準備方法300は、ステップ310、ステップ320、ステップ330、及びステップ340を含む。
【0041】
ステップ310において、データのトランケーションのない原画像を取得する。いくつかの実施形態において、前記初期画像は、投影データの再構成に基づいて得られたものであり、検出対象の全ての部分が走査領域の中にある場合、得られた投影データにはデータのトランケーションがない。
【0042】
ステップ320において、原画像のうちの対象物に対応する部分を仮想オフセット(offset)して走査領域から部分的に移動させることで、比較画像を得る。いくつかの実施形態において、前記比較画像は、トランケーションのない完全なCT画像を表す。
【0043】
ステップ330において、前記比較画像を仮想的に走査して仮想データの収集を行い、仮想のトランケーション投影データを生成する。いくつかの実施形態では、仮想サンプリングシステムに基づいて、比較画像に対して仮想走査を実行する。対象物の一部は走査領域からはみ出ているので、この部分の画像を走査することができず、これは仮想トランケーションが発生したことに相当する。
【0044】
ステップ340において、前記仮想のトランケーション投影データに対して画像再構成を実行し、仮想歪み画像を取得する。いくつかの実施形態では、前記仮想歪み画像は、データのトランケーションを有する歪み画像を表す。
【0045】
任意選択で、データ準備方法はステップ350を更に含む。ステップ350において、仮想歪み画像及び比較画像に対して座標変換を実行し(例えば、極座標から直交座標に変換する)、仮想歪み画素行列及び仮想比較画素行列を得る。これらの画素行列をそれぞれ学習ネットワークの既知の入力値及び期待出力値として、前記学習ネットワークを構築またはトレーニングし、より好適なトランケーション部分の予測画像を取得する。
【0046】
図6は、本発明の他の実施形態における、学習ネットワークのトレーニングデータ準備方法のフローチャートを示す。図6に示すように、学習ネットワークのトレーニングデータ準備方法400は、ステップ410、ステップ420、ステップ430、及びステップ440を含む。
【0047】
ステップ410において、データのトランケーションのない原画像を取得する。前記原画像は比較画像として使用されるものである。
【0048】
ステップ420において、前記原画像に対応する投影データを取得する。いくつかの実施形態では、前記原画像(すなわち、比較画像)を走査領域内に保持し、当該原画像を順投影して、当該原画像の投影(すなわち、投影データ)を得ることができる。他の実施形態では、初期走査により得られた原投影データを、直接に、前記の投影(すなわち、投影データ)と見なすことができる。
【0049】
ステップ430において、前記投影データの両側のチャンネルをパディングして、仮想のトランケーション投影データを生成する。前記両側のチャンネルは、上下のチャンネルを含んでおり、左右両側のチャンネルを含んでいてもよく、これは、投影画像の方向によって決まるものである。いくつかの実施形態では、ステップ430のパディングは、初期画像を前処理するためのパディング方法(上記のステップ110)と同じであり、同様に、パディングとは別の方法を使用して初期画像を前処理する場合、ステップ430では、同じ方法を採用して処理を実行する。
【0050】
ステップ440において、前記仮想のトランケーション投影データに対して画像再構成を実行し、仮想歪み画像を取得する。
【0051】
任意選択で、データ準備方法はステップ450を更に含む。ステップ450において、仮想歪み画像及び比較画像に対して座標変換を実行して(例えば、極座標から直交座標に変換する)、仮想歪み画素行列及び仮想比較画素行列を得る。これらの画素行列をそれぞれ学習ネットワークの既知の入力値及び期待出力値として、前記学習ネットワークを構築またはトレーニングし、より好適なトランケーション部分の予測画像を取得する。
【0052】
上記では、学習ネットワークのトレーニングデータを準備する2つの実施形態を説明したが、これは、本発明がこれら2つの方式でしかデータのトランケーションをシミュレーションすることができないことを説明しているのではなく、他の方式を使用してデータのトランケーションをシミュレーションして、AIネットワーク学習に必要な仮想歪み画像(既知の入力値)と比較画像(期待出力値)を同時に得ることもできる。
【0053】
本発明が示す、人工知能に基づいてトランケーション部分の予測画像を取得する方法は、走査領域からはみ出た部分(即ちトランケーション部分)の投影データ及び/又は画像を更に正確に予測し、検出対象の体の線及び境界を更に正確に復元することによって、患者の体に照射すべき放射線量を正確に判断して、放射線治療に有益となるものを提供することができる。トランケーション部分をパディングして、トランケーション部分の初期画像を得る(前処理ステップ110)、またはトランケーション部分の仮想のトランケーション投影データ(データ準備におけるステップ430)を得ることにより、学習ネットワークを、更に好適且つ更に正確に構築し、トランケーション部分の予測の確実性を高めることができる。更に、トランケーション部分の初期画像を座標変換することにより、初期の環状画像を直交座標における行列画像に変換し、学習ネットワーク予測の正確性を高めて予測画像を更に正確なものにすることもできる。
【0054】
図7には、本発明のいくつかの実施形態におけるCTシステム10の図が示されている。図7に示すように、システム10はガントリ12を含む。ガントリ12にはX線源14及び検出器アレイ18が対向して設けられ、検出器アレイ18は、複数の検出器20及びデータ収集システム(DAS)26により構成され、DAS26は、複数の検出器20が受信したアナログ減衰データに対してサンプリングを行い、サンプリングされたアナログデータをデジタル信号に変換して後続の処理で使用されるようにする。いくつかの実施形態では、システム10は、異なる角度で検出対象の投影データを収集するために使用される。このため、ガントリ12に設けられた部品は、回転中心24の周りを回転して投影データを収集するために使用される。回転中、X線放射源14は、検出器アレイ18に向けて、検出対象を透過するX線16を投射するために使用される。減衰したX線ビームデータは、前処理した後で、対象の標的体積の投射データとなる。該投影データに基づいて、検出対象の画像を再構成することができ、再構築された画像は、検出対象の内部特性を表すことができる。この特性は、例えば、体組織構造の病変、サイズ、形状などを含む。ガントリの回転中心24は走査領域80の中心も規定する。
【0055】
システム10は、画像再構成モジュール50を更に含み、上記のように、DAS26は複数の検出器20が収集した投影データをサンプリングし且つデジタル化する。次に、画像再構成モジュール50は、上記のサンプリングし且つデジタル化された投影データに基づいて高速に画像再構成を実行する。いくつかの実施形態において、画像再構成モジュール50は、再構成された画像を記憶装置又は大容量記憶メモリ46内に記憶する。あるいは、画像再構成モジュール50は、再構成画像をコンピュータ40に送信して、診断及び評価に用いられる患者情報を生成する。
【0056】
図7において、画像再構成モジュール50を単独の実体と図示したが、いくつかの実施形態において、画像再構成モジュール50は、コンピュータ40の一部を形成するものであってもよい。或いは、画像再構成モジュール50はシステム10に存在していなくてもよく、或いは、コンピュータ40が画像再構成モジュール50の1つ以上の機能を実行してもよい。この他に、画像再構成モジュール50は、ローカル又はリモートの場所に設けてもよく、有線又は無線ネットワークによってシステム10に接続されてもよい。いくつかの実施形態において、クラウドネットワークに集中しているコンピューティングリソースを画像再構成モジュール50に用いることができる。
【0057】
いくつかの実施形態において、システム10は制御部30を含む。制御部30は、X線放射源14にパワー及びタイミング信号を供給するためのX線コントローラ34を含むことができる。制御部30は、イメージングの要求に基づいてガントリ12の回転速度及び/又は位置を制御するために用いられるガントリコントローラ32を含むことができる。制御部30は、検出対象の標的体積の投影データを収集するために、載置ベッド28を駆動して適切な位置に移動させて検出対象をガントリ12に位置決めする載置ベッドコントローラ36を含むことができる。更に、載置ベッド28は駆動装置を含み、載置ベッドコントローラ36は駆動装置を制御することで載置ベッド28を制御することができる。
【0058】
いくつかの実施形態において、システム10はコンピュータ40を更に含み、DAS26でサンプリングしてデジタル化したデータ及び/又は画像再構成モジュール50によって再構成して得られた画像を、コンピュータに伝送する、或いはコンピュータ40が処理する。いくつかの実施形態において、コンピュータ40はデータ及び/又は画像を、例えば大容量記憶メモリ46の記憶装置に記憶する。該大容量記憶メモリ46は、ハードディスクドライブ、フロッピーディスクドライブ、光ディスクリード/ライト(CD-R/W)ドライブ、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)ドライブ、フラッシュドライブ及び/又はソリッドステート記憶装置等を含むことができる。いくつかの実施形態において、コンピュータ40は、再構成された画像及び/又は他の情報を表示装置42に伝送する。表示装置42はコンピュータ40及び/又は画像再構成モジュール50と通信するように接続される。いくつかの実施形態において、コンピュータ40は、ローカル又はリモートの表示装置、プリンタ、ワークステーション及び/又は類似の装置に接続可能であり、例えば、医療機関又は病院におけるこのような装置に接続したり、配置された1本以上の電線又は例えばインターネット及び/若しくは仮想専用ネットワーク等のような無線ネットワークによってリモート設備に接続することができる。
【0059】
この他に、コンピュータ40は、ユーザからの提供及び/又はシステムによる定義に基づいて、DAS26及び制御部30(ガントリコントローラ32、X線コントローラ34及び載置ベッドコントローラ36を含む)等にコマンド及びパラメータを提供し、例えばデータの収集及び/又は処理などのシステムの操作を制御することができる。いくつかの実施形態において、コンピュータ40は、ユーザの入力に基づいてシステム操作を制御する。例えば、コンピュータ40は、それに接続されたオペレータコンソール48によって、コマンド、走査プロトコル、及び/又は走査パラメータを含むユーザの入力を受け取ることができる。オペレータコンソール48は、ユーザが、コマンド、走査プロトコル及び/又は走査パラメータを入力及び/又は選択することができるようにキーボード(図示せず)及び/又はタッチスクリーンを含むことができる。図7には1つのオペレータコンソール48が例示的に示されているだけであるが、コンピュータ40は、例えばシステムパラメータを入力又は出力し、医学検査を申請し、及び/又は画像を点検するために用いられる更に多くの操作コンソールに接続することができる。
【0060】
いくつかの実施形態において、システム10は、画像保存通信システム(PACS)(図示せず)を含む又はPACSに接続することができる。いくつかの実施形態において、別の場所にいる操作者が、コマンド及びパラメータを提供し、並びに/又は画像データにアクセスすることができるように、PACSは、例えば放射線科情報システム、病院情報システム及び/又は内部又は外部のネットワーク(図示せず)等のリモートシステムに更に接続される。
【0061】
以下に更に説明する方法又はプロセスを、実行可能な命令として、システム10のコンピュータ装置における不揮発性メモリに記憶することができる。例えば、コンピュータ40が、不揮発性メモリの実行可能な命令を含むことができ、更に、本明細書に記載の方法を応用して、走査フローの一部又は全部(例えば、適切なプロトコルを選択すること、適切なパラメータを確定すること等)を自動で実行することができる。また、例えば、画像再構成モジュール50が、不揮発性メモリの実行可能な命令を含むことができ、更に、本明細書に記載の方法を応用して画像再構成のタスクを実行することができる。
【0062】
コンピュータ40は、異なる方式で使用されるように構成する及び/又は配置することができる。例えば、一部の実現例では、単一のコンピュータ40を使用することができる。他の実現例では、複数のコンピュータ40が一体で動作するように構成される(例えば、分散処理に基づいた構成)又は別々に動作するように構成され、各コンピュータ40は、特定の態様及び/若しくは機能の処理を行い、並びに/又は特定の医用イメージングシステム10のみに用いられるモデルを生成するためのデータを処理するように構成される。一部の実現例では、コンピュータ40はローカル(例えば、1つ以上の医用イメージングシステム10と同じ場所、例えば同一の施設内及び/又は同一のローカルネットワーク内に存在する)であってもよい。他の実現例では、コンピュータ40はリモートであってもよく、したがって、リモート接続(例えばインターネット又は他の利用可能なリモートアクセス技術を介して)のみによってアクセスすることができる。特定の実現例では、コンピュータ40はクラウドに類似する方式で構成することができ、更に、クラウドベースの他のシステムにアクセスし且つ当該他のシステムを使用する方式と基本的に類似する方式で、コンピュータ40にアクセスし及び/又はコンピュータ40を使用することができる。
【0063】
一旦データ(例えば訓練済みの学習ネットワーク)が生成され、及び/又は構成されれば、データを医用イメージングシステム10に複製及び/又はロードすることができ、これは様々な方式で実現することができる。例えば、医用イメージングシステム10とコンピュータ40との間の指向接続又はリンクによってモデルをロードすることができる。この点に関して、利用可能な有線接続及び/若しくは無線接続を使用して、並びに/又は任意の適切な通信(及び/若しくはネットワーク)標準又はプロトコルを用いて異なる部品の間の通信を実現することができる。あるいは又は更に、データは医用イメージングシステム10に間接的にロードすることができる。例えば、データは、適切な機械可読媒体(例えばフラッシュカード等)に記憶し、その後、該媒体を用いてデータを(サイトで、例えばシステムのユーザ又は権限のある人が)医用イメージングシステム10にロードするか、或いはデータはローカル通信可能な電子装置(例えばノートパソコン等)にダウンロードし、その後、サイトで(例えばシステムのユーザ又は権限のある人が)該装置を用いて該データを直接接続(例えばUSBコネクタ等)によって医用イメージングシステム10にアップロードすることができる。
【0064】
図8には、本発明のいくつかの実施形態における、トランケーション部分の予測画像を取得する装置を含むイメージングシステム500が示されている。図8に示すように、イメージングシステム500は、トランケーション部分の予測画像を取得する装置501を含む。
【0065】
トランケーション部分の予測画像を取得する装置501は、前処理装置510及び制御装置520を含む。前処理装置510は、投影データを前処理し、再構成してトランケーション部分の初期画像を得るために用いられ、制御装置520は、訓練済みの学習ネットワークに基づいて、前記初期画像を校正し、トランケーション部分の予測画像を取得するために用いられる。
【0066】
いくつかの実施形態において、前処理装置510は、パディングモジュール(図示せず)を含む。パディングモジュールは、投影データのトランケーション部分をパディングするために用いられる。更に、パディングモジュールは、トランケーションしていない部分の境界(最も外側のチャンネル)の投影データ情報をトランケーション部分にパディングし、好ましくは、各チャンネルのトランケーションしていない部分の境界(最も外側のチャンネル)の投影データ情報を対応するチャンネルのトランケーション部分にパディングするために更に使用される。
【0067】
いくつかの実施形態において、前処理装置510は画像再構成モジュール(図示せず)を更に含む。画像再構成モジュールは、前処理(例えばパディング)後の投影データを画像再構成するために用いられる。いくつかの実施形態において、画像再構成モジュールは、図7に示すCTシステム10における画像再構成モジュール50である。他のいくつかの実施形態において、前処理装置510とCTシステムの画像再構成モジュール50は有線又は無線で接続(直接的接続、又はコンピュータ等による間接的接続を含む)され、パディングモジュールが投影データのトランケーション部分をパディングした後に、パディングモジュール(又は前処理装置510又はトランケーション部分の予測画像を取得する装置501)はパディング後の投影データを画像再構成モジュール50に送信し、画像再構成モジュール50が再構成を完了した後、再構成後のCT画像を画像抽出モジュール(又は前処理装置510若しくはトランケーション部分の予測画像を取得する装置501)に送信することができる。
【0068】
任意選択で、前処理装置510は、画像抽出モジュール(図示せず)を更に含む。画像抽出モジュールは、再構成されたCT画像を抽出し、トランケーション部分の初期画像を得るために用いられる。
【0069】
いくつかの実施形態において、制御装置520は、変換モジュール521、校正モジュール522及び逆変換モジュール523を含む。
【0070】
変換モジュール521は、前記トランケーション部分の初期画像の画素を極座標から直交座標に変換し、前記初期画像の画素行列を得るために用いられる。
【0071】
校正モジュール522は、訓練済みの学習ネットワークに基づいて、上記画素行列を校正するために用いられる。いくつかの実施形態において、校正モジュール522と訓練モジュール540は、有線又は無線によって接続され(直接的接続、又はコンピュータ等による間接的接続を含む)、前記訓練モジュール540は、図5及び図6に示す方法に基づいて学習ネットワークにおける仮想歪み画像及び比較画像を準備するために用いられ、且つ既存の深層学習ネットワークモデル(例えばUnet)に基づいて学習又は訓練し、学習ネットワークを構築するように構成される。いくつかの実施形態において、図8における訓練モジュール540は個別のモジュールであるが、本分野の当業者は、訓練モジュール540は制御装置に組み込んでもよいし、或いは他のモジュール又は装置に組み込んでもよいことを理解することができる。
【0072】
逆変換モジュール523は、前記校正後の画素行列を直交座標から極座標に転換し、前記トランケーション部分の予測画像を得るために用いられる。
【0073】
本発明は非一時的コンピュータ可読記憶媒体を更に提供する。この記憶媒体は、命令セット及び/又はコンピュータプログラムを記憶する。該命令セット及び/又はコンピュータプログラムは、コンピュータによって実行されると、コンピュータに上記のトランケーション部分の予測画像を取得する方法を実行させる。該命令セット及び/又はコンピュータプログラムを実行するコンピュータは、CTシステムのコンピュータとすることができ、CTシステムの他の装置及び/又はモジュールとすることもできる。一実施形態では、該命令セット及び/又はコンピュータプログラムをコンピュータのプロセッサ及び/又はコントローラにプログラミングすることができる。
【0074】
具体的に、該命令セット及び/又はコンピュータプログラムは、コンピュータによって実行されると、コンピュータに、
投影データを前処理し、再構成してトランケーション部分の初期画像を得ること、及び
訓練済みの学習ネットワークに基づいて、前記初期画像を校正して、トランケーション部分の予測画像を取得すること、を実行させる。
【0075】
上記の命令を1つの命令に併合して実行してもよく、いずれか1つの命令を複数の命令に分割して実行してもよく、この他に、上記の命令実行手順にも限定されない。
【0076】
いくつかの実施形態において、訓練済みの学習ネットワークに基づいて、前記初期画像を校正して、トランケーション部分の予測画像を取得することが、
前記トランケーション部分の初期画像の画素を極座標から直交座標に変換して、前記初期画像の画素行列を得ること、
訓練済みの学習ネットワークに基づいて、前記画素行列を校正すること、及び
前記校正後の画素行列を直交座標から極座標に変換して、前記トランケーション部分の予測画像を得ること、を含むことができる。
【0077】
いくつかの実施形態において、該命令セット及び/又はコンピュータプログラムが更にコンピュータに学習ネットワークの訓練を実行させることが、更に、以下の命令:
データのトランケーションのない原画像を取得すること、
前記原画像のうちの対象物に対応する部分を仮想オフセットして走査領域から部分的に移動させることで、比較画像を得ること、
前記比較画像を仮想走査して仮想データを収集し、仮想のトランケーション投影データを生成すること、及び
前記仮想のトランケーション投影データに対して画像再構成を実行して、仮想歪み画像を得ること、を含む。
【0078】
任意選択として、更に、仮想歪み画像及び比較画像を座標変換して、仮想歪み画素行列及び仮想比較画素行列を得ることを含む。
【0079】
他のいくつかの実施形態において、コンピュータに学習ネットワークの訓練を実行させることが、更に、以下の命令:
データのトランケーションのない原画像を取得して、前記原画像を比較画像とすること、
前記原画像に対応する投影データを取得すること、
前記投影データの両側のチャンネルをパディングして、仮想のトランケーション投影データを生成すること、及び
前記仮想のトランケーション投影データに対して画像再構成を実行して、仮想歪み画像を得ること、を含む。
【0080】
任意選択として、更に、仮想歪み画像及び比較画像を座標変換して、仮想歪み画素行列
及び仮想比較画素行列を得ることを含む。
【0081】
本明細書で使用されているように、用語「コンピュータ」は、プロセッサ又はマイクロプロセッサによる任意のシステムを含んでもよく、このシステムは、マイクロコントローラ、縮小命令セットコンピュータ(RISC)、専用集積回路(ASIC)、論理回路、及び本明細書で説明した機能を実行可能な任意の他の回路又はプロセッサを使用するシステムを含む。上述の例は例示的なものに過ぎないため、如何なる方式によっても用語「コンピュータ」の定義及び/又は意味を制限することを意図するものではない。
【0082】
命令セットは、処理装置としてのコンピュータ又はプロセッサが特定の操作(例えば各種の実施形態の方法及び工程)を実行するように指示する各種のコマンドを含むことができる。命令セットはソフトウェアプログラムの形式を採用することができ、該ソフトウェアプログラムは1つ以上の有形の非一時的なコンピュータ可読媒体の一部を形成することができる。該ソフトウェアは、例えばシステムソフトウェア又はアプリケーションソフトウェアの各種形式を採用することができる。この他に、該ソフトウェアは、独立したプログラム又はモジュールの集合の形式、更に大きいプログラム内のプログラムモジュール又はプログラムモジュールの一部の形式を採用することができる。該ソフトウェアは、オブジェクト指向プログラミング形式を採用するモジュラープログラミングを更に含むことができる。入力データは、処理装置の処理により、操作者コマンドに応答する、以前の処理結果に応答する、又は他の処理装置が作成した要求に応答することができる。
【0083】
以上、いくつかの例示的な実施形態を説明したが、様々な修正が可能であることは理解されるべきである。例えば、説明した技術が異なる順序で実行される場合、並びに/又は説明したシステム、アーキテクチャ、装置若しくは回路の部品が、異なる方式で組み合わされる、及び/又は他の部品若しくは他の同等部品に置き換えられる若しくは他の部品若しくは他の同等部品が補充される場合であっても、適切な結果を実現することができる。それに対応して、他の実施形態も特許請求の範囲内に属する。
【符号の説明】
【0084】
10 CTシステム
12 ガントリ
14 X線放射源
16 X線
18 検出器アレイ
20 検出器
24 回転中心
26 データ収集システム(DAS)
28 載置ベッド
30 制御部
32 ガントリコントローラ
34 X線コントローラ
36 載置ベッドコントローラ
40 コンピュータ
42 表示装置
46 大容量記憶メモリ
48 オペレータコンソール
50 画像再構成モジュール
80 走査領域
100 イメージング方法
210 投影データ
230 CT画像
234 境界
252 比較画素行列
260 CT画像
300 トレーニングデータ準備方法
400 トレーニングデータ準備方法
500 イメージングシステム
510 前処理装置
520 制御装置
521 変換モジュール
522 校正モジュール
523 逆変換モジュール
540 訓練モジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8