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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】画像表示装置およびその作動方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/12 20060101AFI20220207BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20220207BHJP
   A61B 1/045 20060101ALI20220207BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20220207BHJP
   A61B 1/313 20060101ALI20220207BHJP
   A61B 8/12 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
A61B6/12
A61B6/00 370
A61B6/00 331E
A61B6/00 350P
A61B1/045 622
A61B1/00 530
A61B1/00 526
A61B1/313 510
A61B8/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020120887
(22)【出願日】2020-07-14
(62)【分割の表示】P 2016012769の分割
【原出願日】2016-01-26
(65)【公開番号】P2020171771
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2020-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】古市 淳也
(72)【発明者】
【氏名】森 功
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/004979(WO,A1)
【文献】特表2010-526556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14,1/00-1/32,8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造影剤を投与した血管内においてプローブをカテーテルの軸方向へ移動しながら該プローブを介して計測光を出射してその反射光を入射して取得した複数の断層像と、前記プローブの前記移動の間に撮影された複数のX線画像とを表示する画像表示装置であって、
前記プローブの移動を開始する前の、X線撮影の開始から血管内に造影剤を投与するフラッシュの開始までの間の、少なくとも心臓の一拍分の期間を含むように設定された所定期間に撮影されたX線画像から、前記プローブに沿った線を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された線を用いて、前記フラッシュ中に設けられるプルバック期間に前記プローブを移動させながら撮影された前記複数のX線画像の各々において前記プローブに設けられたX線不透過マーカの位置を検出する検出手段と、
前記複数のX線画像と前記複数の断層像とを同期表示し、該同期表示におけるX線画像の表示において前記検出手段により検出された前記X線不透過マーカの位置を明示する表示制御手段と、を備え
前記検出手段は、
前記移動中に撮影されたX線画像における前記X線不透過マーカの位置を前記抽出手段により抽出された線に基づいて推定する推定手段と、
前記移動中に撮影された前記X線画像において、前記推定手段により推定された位置の近傍で前記X線不透過マーカの画像を探索する探索手段と、を備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記抽出手段により前記所定期間に撮影された複数のX線画像から抽出された複数の線のうち、前記移動中に撮影された前記X線画像における血管像と最も一致する線を選択する選択手段をさらに備え、
前記推定手段は、前記選択手段により選択された線に基づいて前記X線不透過マーカの位置を推定することを特徴とする請求項に記載の画像表示装置。
【請求項3】
ユーザ操作に応じて前記選択手段による線の選択結果を変更する変更手段をさらに備えることを特徴とする請求項に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記抽出手段は、前記プローブの、前記X線不透過マーカの位置からガイディングカテーテルの端部までの間の部分に対応する線を抽出することを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記プローブの前記移動の間に撮影されたX線画像における前記ガイディングカテーテルの端部の位置と、前記線の前記ガイディングカテーテルの端部に対応する位置とが一致するように、前記線を平行移動する移動手段をさらに備え、
前記推定手段は、前記移動手段により移動された線を用いることを特徴とする請求項に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記所定期間は、X線撮影開始のユーザ指示を検出したタイミングを基準として特定することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記複数の断層像の取得を開始する前から前記複数の断層像の取得後までのX線画像を収集する収集手段と、
前記収集手段により収集されたX線画像に基づいてX線撮影開始のタイミングを判定し、判定したタイミングから前記所定期間のX線画像を取得する取得手段と、をさらに備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項8】
ユーザ操作に応じて、前記検出手段により検出された前記X線不透過マーカの位置を修正する修正手段をさらに備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記X線不透過マーカの位置を明示する処理を実行するか否か設定する設定手段をさらに備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記プローブを介して計測光を出射してその反射光を入射して断層像を得る断層像取得手段と、
X線撮影装置が撮影したX線画像を取得するX線画像取得手段と、
請求項1からのいずれか1項に記載の画像表示装置と、を備えることを特徴とする光干渉診断装置。
【請求項11】
造影剤を投与した血管内においてプローブをカテーテルの軸方向へ移動しながら該プローブを介して測定光を出射してその反射光を入射して取得した複数の断層像と、前記プローブの前記移動の間に撮影された複数のX線画像とを表示する画像表示装置の作動方法であって、
前記プローブの移動を開始する前の、X線撮影の開始から血管内に造影剤を投与するフラッシュの開始までの間の、少なくとも心臓の一拍分の期間を含むように設定された所定期間に撮影されたX線画像から、前記プローブに沿った線を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程で抽出された線を用いて、前記フラッシュ中に設けられるプルバック期間に前記プローブを移動させながら撮影された前記複数のX線画像の各々において前記プローブに設けられたX線不透過マーカの位置を検出する検出工程と、
前記複数のX線画像と前記複数の断層像とを同期表示し、該同期表示におけるX線画像の表示において前記検出工程で検出された前記X線不透過マーカの位置を明示する表示制御工程と、を有し、
前記検出工程は、
前記移動中に撮影されたX線画像における前記X線不透過マーカの位置を前記抽出工程で抽出された線に基づいて推定する推定工程と、
前記移動中に撮影された前記X線画像において、前記推定工程により推定された位置の近傍で前記X線不透過マーカの画像を探索する探索工程と、を含むことを特徴とする画像表示装置の作動方法。
【請求項12】
請求項11に記載の画像表示装置の作動方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織の断層像を生成するためのカテーテルの位置の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
バルーンカテーテル、ステント等の高機能カテーテルによる血管内治療が行われている。この手術前の診断、或いは、手術後の経過確認のために、超音波断層像診断装置(IVUS:Intravascular ultrasound)が用いられる。また、IVUSの代わりとして光干渉断層診断装置(OCT:Optical Coherence Tomography)や、OCTの改良型として、波長掃引を利用した光干渉断層診断装置(SS-OCT:Swept-source Optical coherence Tomography)が用いられている。IVUSやOCTなどの断層像を取得可能な血管内診断装置は、X線装置で確認した病変部位のより詳細な情報、例えば血管内の狭窄率や分枝におけるプラークの存在、石灰化の分布などを得るために使用される。
【0003】
医師は、治療が必要であると判断した場合、上述の血管内診断装置により得られた血管断層像を観察することで、例えばステントエッジ位置をどこにするか等の治療の詳細を決定する。決定した治療部位を治療する場合、医師はX線装置で得られるX線画像(アンジオグラフィー)を見ながら、バルーンやステントの設置等の治療を実施する。そのため、血管断層像を確認して決定したバルーンやステントの設置位置等が、X線画像上のどの位置に相当するかを理解することは治療において非常に重要な要素となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第7930014号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した通り、血管内治療等においては、得られた血管断層像とX線画像上の位置関係を把握する事が重要となる。しかしながら、血管内診断装置とX線装置はそれぞれ別のモダリティとして構成されているため、医師は例えば分枝位置などのランドマークを頼りに、確認した血管断層像に対応するX線画像上の位置を推測して治療を行う必要がある。
【0006】
上述したような血管断層像に対応するX線画像上の位置の推測精度を向上させるために、血管断層像取得時のX線画像を取り込み、血管断層像と同期してX線画像を表示する血管断層像装置が存在する。一般に、血管断層像装置に繋がるカテーテルには、そのセンサ部近傍にX線不透過マーカが設置されており、血管断層像とX線画像を同期して表示することにより、上記の推定精度を向上させている。この機能を用いることで、血管断層像とX線画像上のX線不透過マーカ位置とを一対一に対応付けて視覚化する事が可能である。
【0007】
さらに、近年では、X線画像上から自動的にX線不透過マーカを検出し、強調表示することでさらなる視認性の向上を行う技術が開発されている(特許文献1)。しかしながら、X線画像上表示される血管は拍動や呼吸の影響により時間経過と共に位置が変動する事、さらに、人の血管の分枝の数や分枝の構成は個人差が大きい事、目的の血管周辺に分枝が多数存在することも少なくない事、などの理由のため、X線画像におけるX線不透過マーカの自動検出率は満足のいくものではない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、断層像取得中に取得されたX線画像においてX線不透過マーカの検出率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成する本発明の一態様によるX線マーカ検出装置は以下の構成を備える。すなわち、
プローブをカテーテルの軸方向へ移動しながら取得した複数の断層像と、前記プローブの前記移動の間に撮影された複数のX線画像とを表示する画像表示装置であって、
前記プローブの移動を開始する前の所定期間に撮影されたX線画像から、前記プローブに沿った線を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された線を用いて、前記プローブの移動中に撮影された前記複数のX線画像の各において前記プローブに設けられたX線不透過マーカの位置を検出する検出手段と、
前記複数のX線画像と前記複数の断層像とを同期表示し、該同期表示におけるX線画像の表示において前記検出手段により検出された前記X線不透過マーカの位置を明示する表示制御手段と、を備える。
【0010】
また、本発明の他の態様によるX線不透過マーカ検出方法は、
断層像を取得するためのプローブのカテーテルの軸方向への移動中に撮影された複数のX線画像において、前記プローブに設けられたX線不透過マーカを検出するX線不透過マーカ検出方法であって、
前記プローブの移動を開始する前の所定期間に撮影されたX線画像から、前記プローブに沿った線を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程で抽出された線を用いて、前記プローブの移動中に撮影された前記複数のX線画像の各々において前記プローブに設けられたX線不透過マーカの位置を検出する検出工程と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、断層像取得前のX線画像を用いることで、断層像取得中に取得されたX線画像に存在するX線不透過マーカの検出率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態による表示システムの構成を説明する図である。
図2】血管断層像を取得するためのカテーテルシステムを説明する図である。
図3】実施形態の表示システムによる同期表示処理を示すフローチャートである。
図4】血管断層像とX線画像の収集タイミングを説明する図である。
図5】血管モデル生成処理を説明するフローチャートである。
図6】実施形態による血管モデル生成処理を説明する図である。
図7】マーカ検出処理を説明するフローチャートである。
図8】実施形態によるマーカ検出における血管モデルの選択を説明する図である。
図9】実施形態による同期表示の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して本発明の好適な実施形態の一例を説明する。
【0014】
図1は、本実施形態による、血管断層像とX線画像(アンジオ画像)の同期表示を実現する表示システムの構成例を示す図である。図1において、断層像取得部としての血管内診断装置100は、血管内超音波法(IVUS)や光干渉断層法(OCT)などにより血管内の断層像を取得する。カテーテルシステム111は、たとえば、患者10の心臓の周囲の血管内の断層像を撮影するために、足の付け根等から動脈を通して心臓の近くまで挿入される。光干渉診断装置の場合、血管内診断装置100は、カテーテルシステム111のプローブを介して計測光の出射とその反射光の入射を行って断層像を得るとともに、X線画像取得部としてのX線撮影装置200が撮影したX線画像(アンジオ画像)を、ケーブル103を介して取得する。他方、超音波断層像撮影装置の場合、血管内診断装置100は、カテーテルシステム111のプローブを介して超音波信号の出力とその反射信号の入力を行なって断層像を得るとともに、X線撮影装置200が撮影したX線画像を、ケーブル103を介して取得する。
【0015】
図2は、カテーテルシステム111について説明する図である。図2に示されるように、カテーテルシステム111は、ガイディングカテーテル112、断層像撮影のためのプローブ115を内包したカテーテル113、ガイドワイヤ114を含む。ガイディングカテーテル112はガイドワイヤ114およびカテーテル113を挿通するための中空を有する。例えば、冠動脈の断層像を撮影する場合、医師は、ガイディングカテーテル112を冠動脈の付近まで挿入した後、ガイドワイヤ114をガイディングカテーテル112内に通して冠動脈の撮影領域まで送り込む。そして、医師は、ガイドワイヤ114に沿ってカテーテル113を送り込むことにより、カテーテル113のイメージングコア117を冠動脈の撮影領域まで送り込む。カテーテル113には、ガイドワイヤルーメン119が設けられており、これにガイドワイヤ114を通すことで、カテーテル113はガイドワイヤに沿って進むことができる。
【0016】
断層像撮影のためのプローブ115は、金属シャフト116、イメージングコア117、X線不透過マーカ118を含む。OCTによる断層撮影の場合、金属シャフト116内を通る光ファイバの先端にイメージングコア117が接続される。イメージングコア117は、光ファイバ先端部から測定光を送受信する光学部品を含む。他方、IVUSによる断層撮影の場合には、金属シャフト116内を通る信号線と、超音波信号を送受信する超音波トランスジューサを含むイメージングコア117とが接続される。金属シャフト116は回転駆動(矢印120の方向への回転)しながら、カテーテルの軸方向へ移動(矢印121の方向への移動)する(以下、プルバックという)。金属シャフト116とともにイメージングコア117も回転しながらカテーテルの軸方向へ移動する。イメージングコアの1回転により断層像が得られるので、回転するイメージングコア117の移動中に取得される断層像は、血管路に沿った複数の血管断層像となる。イメージングコア117と金属シャフト116の間には、X線画像上でイメージングコア117の位置を認識するためのX線不透過マーカ118が設けられている。なお、X線不透過マーカ118は、イメージングコア117の先端側に設けられてもよい。
【0017】
図1に戻り、IVUSまたはOCTにより得られた断層像(本実施形態では血管断層像)は、血管断層像格納部101に格納される。なお、血管内診断装置100による断層像のフレームレートは、160~180Hz程度である。血管内診断装置100とX線撮影装置200とはケーブル103により接続されており、X線撮影装置200により取得されたX線画像が血管内診断装置100へ送信される。なお、本実施形態では血管内診断装置100とX線撮影装置との間の通信がケーブルを介して行われるが、これに限られるものではなく、無線通信等が用いられてもよい。
【0018】
X線撮影装置200はX線源211を駆動してX線を患者10に照射し、X線センサ212で透過X線を検出することでX線画像(たとえば、アンジオ画像)を得る。得られたX線画像は、ケーブル103を介して血管内診断装置100へ送信され、X線画像格納部102に格納される。X線撮影装置200におけるX線画像のフレームレートは、たとえば、7~30Hz程度である。なお、血管内診断装置100は、X線画像格納部102に、上述したプルバックの開始(血管断層像の撮影開始)の前に撮影されたプレプルバックX線画像と、プルバック中(血管断層像の撮影中)に撮影されたプルバック中X線画像を区別して保存する。
【0019】
画像表示装置300は、X線画像と血管断層像を同期表示するとともに、X線不透過マーカ118の位置をX線画像上において強調表示する。画像表示装置300において、血管モデル生成部301は、プレプルバックX線画像読込部302によりX線画像格納部102から読み出された複数のプレプルバックX線画像に基づいて、複数の血管モデルを生成する。生成された血管モデル群は血管モデル格納部303に記憶される。血管モデルの生成についての詳細は後述する。
【0020】
マーカ検出部304は、プルバック中X線画像読込部305がX線画像格納部102から読み出したプルバック中X線画像からX線不透過マーカ118の位置を検出する。本実施形態のマーカ検出部304は、プルバック中X線画像に血管モデル生成部301で生成された血管モデルを当てはめることによりX線不透過マーカ118の画像上の位置を推定し、X線不透過マーカ118の探索範囲を推定された位置の近傍に設定することで、X線不透過マーカ118の検出精度を向上する。
【0021】
血管断層像読込部306は、血管断層像格納部101に格納されている血管断層像を読み込み、同期表示部307に提供する。同期表示部307は、プルバック中X線画像読込部305により読み込まれたプルバック中X線画像と、血管断層像読込部306により読み込まれた血管断層像とをディスプレイ308に同期表示するよう表示制御する。同期表示では、互いに撮影タイミングが対応しているプルバック中X線画像と血管断層像を表示する。また、同期表示部307は、この同期表示において、マーカ検出部304により検出された、プルバック中X線画像上におけるX線不透過マーカ118の位置を強調した表示を行う。
【0022】
以上のような構成を備えた本実施形態の画像表示装置300の動作について説明する。図3は、本実施形態による血管断層像とX線画像(アンジオ画像)との同期表示を行うための処理を示すフローチャートである。
【0023】
まず、ステップS301において、血管内診断装置100は、血管断層像とX線画像の収集を行う。ステップS301における画像の収集について図4を参照して説明する。
【0024】
図4は、本実施形態によるX線画像および血管断層像の収集のタイミングを説明する図である。血管内診断装置100の不図示の操作パネルにおいて、ユーザがスキャン開始を指示すると、血管内診断装置100はカテーテル113内の金属シャフト116(およびイメージングコア117)の低速回転を開始する。その後、血管内診断装置100の操作パネルにおいてユーザがプルバックレディ開始を指示すると、血管内診断装置100は金属シャフト116(およびイメージングコア117)の高速回転を開始する。イメージングコア117を高速回転させると、プルバックをしながらの断層像の撮影が開始できる状態となる。
【0025】
プルバックレディ開始の後、ユーザはX線撮影装置200の不図示の操作パネルからX線撮影開始を指示する。X線撮影開始が指示されると、X線撮影装置200はX線源211からX線を照射させてX線センサ212によりX線画像を撮影する。得られたX線画像は、血管内診断装置100にケーブル103を介して送信される。血管内診断装置100は、プルバック開始が指示されるまでに受信したX線画像を、プレプルバックX線画像としてX線画像格納部102に格納する。こうして、プレプルバックX線画像群401がX線画像格納部102に格納される。なお、X線撮影開始から1心拍分のみを保存するようにしてもよい。
【0026】
ユーザは、X線撮影開始を指示した後、フラッシュを開始する。フラッシュでは、血管内に造影剤が投入される。したがって、X線撮影開始からフラッシュが開始されるまでの期間421の間にX線撮影装置200により撮影されたX線画像群には、造影剤が入っていない状態で、プルバックを実施する直前のカテーテル全体が写っている。本実施形態では、プレプルバックX線画像群401のうちの期間421の間に撮影された画像群を用いて後述する血管モデルが作成される。
【0027】
ユーザによりプルバック開始が指示されると、血管内診断装置100はイメージングコア117のプルバックを開始するとともに、血管断層像の生成を開始する。プルバック動作中の血管断層像群411は血管断層像格納部101に格納される。また、このプルバック動作中にX線撮影装置200により取得されたX線画像群は、プルバック中X線画像群402としてX線画像格納部102に格納される。プルバック中X線画像では、プルバックを行っている血管の注目領域が造影剤のある状態で映っており、イメージングコア117のプルバックとともに移動するX線不透過マーカ118が映っている。
【0028】
以上のようにして血管断層像(血管断層像群411)とX線画像(プレプルバックX線画像群401とプルバック中X線画像群402)の収集を終えると、処理はステップS302へ進む。ステップS302~S303では、本実施形態の画像表示装置300によるX線不透過マーカ検出処理が実行される。まず、ステップS302において、画像表示装置300の血管モデル生成部301は、X線画像格納部102に格納されているプレプルバックX線画像群401の画像を用いて血管モデルを生成する。以下、血管モデル生成部301による血管モデルの生成処理について図5のフローチャートを参照してより詳細に説明する。
【0029】
まず、ステップS501において、プレプルバックX線画像読込部302は、X線画像格納部102に格納されているプレプルバックX線画像群401のうち、期間421内の所定期間に対応したプレプルバックX線画像を読み込む。本実施形態では、少なくとも一心拍分の血管モデルをそろえておくために、上記の所定期間を、X線撮影の開始からフラッシュの開始までの期間421のうちの、少なくとも心臓の一拍分の期間を含むように設定された期間(たとえば1秒間)とする。
【0030】
所定期間は、カテーテルが留置された状態で、且つ、プルバックおよびフラッシュの開始前の期間であればよく、所定期間の設定はたとえば以下のようになされる。
・X線撮影開始のユーザ指示を検出したタイミングを基準として所定期間を特定する。たとえば、X線撮影開始の指示を検出してから1秒後までの1秒間、あるいは、X線撮影開始の指示を検出後の1秒後から2秒後までの1秒間を所定期間とする。
・フラッシュの開始が検出されたタイミングを基準として、それより前の期間(たとえば、フラッシュ開始の検出タイミングより3秒前から2秒前)を所定期間として用いる。なお、フラッシュ開始は、X線画像の変化を検出する(たとえば、暗部の領域の増加を検出する)ことにより検出できる。
【0031】
なお、上記の例では、X線撮影開始のユーザ指示に応じてX線画像の保存を開始し、血管モデルを生成するために期間421に対応するプレプルバックX線画像を読み出したが、これに限られるものではない。たとえば、断層像の取得(プルバック動作)を開始する前から複数の断層像の取得後(プルバック動作完了後)までのX線画像を収集しておき、収集されたX線画像に基づいてX線撮影開始のタイミングを判定し、判定したタイミングから所定期間のX線画像を取得するようにしてもよい。X線画像に基づくX線撮影開始のタイミングの自動判定は、X線画像に含まれる「撮影中」といった特定の注釈の有無、撮影開始時におけるX線画像の暗転の検出等により行える。
【0032】
次に、ステップS502において、血管モデル生成部301は、読み込んだプレプルバックX線画像よりカテーテル113(プローブ115)に沿った線(血管内に配置されたカテーテルの形状であり、X線不透過マーカ118が移動することになる軌跡に対応する)を検出する。血管内診断装置100に使用されるカテーテル113内のプローブ115は、イメージングコア117を回転させるために金属シャフト116を有している。金属シャフト116は、他の生体組織に比較してX線の透過率が低く、X線画像上では図6(a)に示されるように黒い線状の物体601として表現される。また、図2により上述したように、カテーテル113のプローブ115の先端には、その位置がX線画像上で分かりやすいようにX線不透過マーカ118が配置されている。このX線不透過マーカ118は、X線画面上において黒い点602として表現される。
【0033】
カテーテル先端(黒い点602)は、上記のような特徴を踏まえて、例えばパターンマッチング手法やグレーサーチのような一般的な画像処理技術を用いて自動的に認識可能である。また、カテーテル113全体は、上記カテーテル先端からの黒い線で表現されるため、適応型の二値化フィルタ等を適応したのち、一般的な経路探索手法を用いることで、自動的に認識することができる。期間421内の所定期間に対応したプレプルバックX線画像では造影剤が投入されていないために、黒い線状の物体601や黒い点602は比較的鮮明であり、それらを正確に抽出することができる。
【0034】
次に、ステップS503において、血管モデル生成部301は、プレプルバックX線画像においてガイディングカテーテル112の先端部(以下、GC入口と称する)を検出する。上述のように、カテーテルを用いた手技では、血管内に必要なデバイスを挿入するために、中空のチューブであるガイディングカテーテル112が挿入されており、血管内診断装置100による観察対象部位(プルバックによる血管断層像の取得範囲)は、ステップS502で検出されたプローブ先端からGC入口までである。よって、観察対象部位を決定するために、プレプルバックX線画像におけるGC入口の位置を求める。造影剤が入っていない状況では、GC入口部位の形状はどの種類のガイディングカテーテルを用いても円筒形状を有している。よって、GC入口も一般的なパターンマッチング手法などで自動的に、精度良く検出することが可能である。
【0035】
なお、ユーザがプレプルバックX線画像上で直接GC入口部位を指示することでGC入口部を特定するようにしても良い。または、特定のプレプルバックX線画像においてユーザに指示されたGC入口部位周辺の情報を用いて、他の1心拍分のX線画像群に対して自動的にGC入口部を検出しても良い。
【0036】
なお、X線撮影装置200による撮影のフレームレートが7~30Hz程度のため、1秒分のX線画像は7~30枚程度であるので、ユーザがカテーテル先端と全体を指示することでカテーテルを検出しても良い。また、ユーザが単一フレームでのカテーテル先端を指示し、指示された周辺の画像の特徴量を用いて、1心拍分のX線画像群におけるカテーテル先端位置を自動的に検出してもよい。
【0037】
ステップS504において、血管モデル生成部301は、ステップS502およびS503で検出されたカテーテル113の先端からGC入口までの軌跡の座標を血管モデルとして定義する。たとえば、血管モデル生成部301は、図6(a)に示されるGC入口603の位置から黒い点602の位置までの黒い線状の物体601を、血管断層像の取得範囲におけるカテーテル113に沿った線として抽出する。そして、血管モデル生成部301は、図6(b)に示されるように、カテーテル113の先端からGC入口までの軌跡(抽出された線)をp-1個に等分し、先端の座標を(x1,j,y1,j)、GC入口の座標を(xp,j,yp,j)として各位置のx、y座標を求め、血管モデルとする。以上のようにして生成された血管モデルは血管モデル格納部303に格納される。なお、jは血管モデルの番号であり、所定期間から取得されたプレプルバックX線画像の枚数がJ枚であれば、jは1~Jの値をとる。
【0038】
ステップS505では、上述した所定期間内のプレプルバックX線画像のうちの最終のX線画像(J枚目のX線画像、以下、最終フレームという)が処理されたか否かが判定される。最終フレームが処理されていなければ処理はステップS501に戻り、所定期間における次のプレプルバックX線画像について、上述した処理を実行する。
【0039】
以上のようにして、所定期間内のプレプルバックX線画像の全てから血管モデルが生成されると、処理はステップS505からステップS506へ進む。ステップS506において、血管モデル生成部301は、ステップS501~S505により生成された血管モデル群(本実施形態ではJ個の血管モデル)を血管モデル格納部303に格納する。以上のようにして1心拍分の血管モデルを含む血管モデル群が生成され、保持される。血管モデル群は、拍動に応じたカテーテル113の位置(血管の位置)を表している。なお、上記ステップS504では、血管モデルとして座標を保持したがこれに限られるものではない。たとえば、検出されたカテーテル先端からGC入口までのカテーテル113の軌跡が
白(または黒)で、その他が黒(または白)のような画像データ(たとえば図6(b)の
ような画像)を血管モデル群として保持するようにしても良い。
【0040】
以上のようにして血管モデル生成部301により血管モデルが生成されると、処理は図3のステップS303に進む。ステップS303おいて、マーカ検出部304は、ステップS302で生成された血管モデル群を用いてプルバック中X線画像群402の各X線画像についてX線不透過マーカ118の位置を検出する。以下、マーカ検出部304によるマーカ検出処理について図7のフローチャートを参照して説明する。
【0041】
ステップS701において、プルバック中X線画像読込部305は、X線画像格納部102からプルバック中X線画像を読み込む。次に、ステップS702において、マーカ検出部304は、ステップS701で読み込まれたX線画像における被検者の呼吸状態と各血管モデルの取得時の呼吸状態とのずれ、すなわち呼吸の影響を補正する(以下、呼吸補正という)。
【0042】
呼吸は横隔膜の動きに連動する振動運動である。カテーテルによる手技中は自然呼吸で管理されているため、一般的には0.3回/フレーム程度の振動運動が発生する。心臓の拍動による変化は血管の平行移動、回転、変形をもたらすが、呼吸による変化は主として血管の平行移動をもたらす。そこで、呼吸補正では、X線画像上の血管全体の上下左右方向への移動(平行移動)を補正する。本実施形態の呼吸補正では、たとえばプルバック中X線画像におけるGC入口部分の位置をパターンマッチング手法により検出し、検出されたGC入口部分の位置に血管モデルのGC入口部位が一致するように血管モデルを平行移動する。なお、X線画像全体からGC入口を検出するのは困難な場合もあるので、たとえば、最初のフレームのみユーザがGC入口を指定し、以降のフレームについては前フレームのGC入口位置を追跡するようにしてもよい。
【0043】
別の方法としては、X線画像に存在する横隔膜の動きを検出して、呼吸による移動量を求めることが挙げられる。横隔膜はX線画像において通常低輝度均一な画像として確認される。X線画像全体の輝度は、(1)最も低輝度な領域である造影剤が注入されている血管像、(2)次に低輝度な領域(輝度値が中間の領域)である横隔膜領域、(3)上記の(1)、(2)以外の領域という3つの領域に分類できる。よって、例えばクラスタリング手法を用いて3つに分類した際の、上記(2)に分類される輝度の画像中心をトレースすることで、呼吸による上下左右への移動量を検出することが可能である。先頭フレームについてGC入口の位置をユーザが指定すると、以降のフレームのGC入口の位置は、上述した横隔膜の変位に基づいて得られた移動量により決定され得る。
【0044】
さらに別の方法として、上述したGC入口の動きの検出の代わりに、カテーテル113の先端側に設けられた不図示のX線不透過マーカ(以下、先端マーカ)の動きを検出するようにしてもよい。一般に先端マーカはイメージングコア117の近傍に配置されたX線不透過マーカ118と比較して大きいサイズを有しており、より鮮明な黒点として検出することが可能である。
【0045】
なお、呼吸による変位は上下方向が主となるので、上下方向についてのみ補正を行うようにしてもよい。
【0046】
血管モデルの呼吸補正についてさらに具体的に説明する。血管モデルのj番目のフレームの座標群を(Xj、Yj)とした場合、以下の[数1]ように表される。
【0047】
【数1】
【0048】
ここで、血管モデルの座標はp個存在し、Distal側(X線不透過マーカ側)からProximal側(GC入口側)にインデックスは増加するように格納されている。また、xはX線画像の左右方向の座標であり、yはX線画像上の上下方向の座標である。
【0049】
処理対象のプルバック中X線画像におけるGC入口部の座標を(xGC、yGC)、血管モデルのGC入口部の座標を(xp,j,yp,j)とすると、呼吸補正後の血管モデルの座標群(X'j、Y'j)は下記の[数2]のようになる。
【0050】
【数2】
【0051】
ステップS702では以上のような呼吸補正を血管モデル格納部303に格納された全ての血管モデルに対して実施され、呼吸補正された血管モデル群が生成される。
【0052】
次に、ステップS703において、マーカ検出部304は、呼吸補正後の血管モデルを用いて検査対象の血管に対応する血管モデルを選択する。血管モデル生成部301が生成した血管モデルは、各心拍におけるGC入口部からカテーテル先端部までの軌跡情報である。マーカ検出部304は、処理中のプルバック中X線画像に適応する、呼吸補正後の血管モデル(すなわち心拍動周期が処理対象のプルバック中X線画像に対応している血管モデル)を検出する。以下、その処理について説明する。
【0053】
まず、プルバック中X線画像に対して適応型の二値化フィルタを用いて二値化する。得られた二値化画像に対して呼吸補正後の血管モデルの座標に対応する輝度値を用いて、たとえば以下の[数3]によりj番目の血管モデルに対する相関値Rを計算する。
【0054】
【数3】
【0055】
ここでI(x'i,j,y'i,j)は、二値化後のプルバック中X線画像の座標(x'i,j,y'i,j)における画素値である。本実施形態では、血管に造影剤が投入されており、上述の二値化により、造影剤が存在する血管の血管像は黒に、その他の領域は白となる。よって、座標(x'i,j,y'i,j)が造影剤の存在する血管像上にあればI(x'i,j,y'i,j)の値は1に、それ以外の領域にあればI(x'i,j,y'i,j)の値は0になる。また、kは血管の連続性を考慮するための重みであり、血管モデルの位置(座標(x'i,j,y'i,j))が連続して血管像上に存在する場合に重み値が増加するようにしている。なお、重み付けを用いなくてもよいことは言うまでもない。重み付けを用いない場合、常にki=1である。
【0056】
以上のような演算によれば、たとえば図8(a)に示されるように血管像811と重なる部分の多い血管モデル801では算出される相関値Rは大きくなり、図8(b)に示されるように血管像811からずれる血管モデル802では算出される相関値Rは小さくなる。本実施形態では、J個の血管モデルが生成されているので、j=1~Jの各血管モデルについて相関値を算出し、最も大きな相関を示す(Rが最大となる)血管モデルが、処理対象のプルバック中X線画像に対する血管モデルとして採用される。
【0057】
次にステップS704において、マーカ検出部304は、ステップS703で選択した血管モデルを用いて、X線不透過マーカ118のプルバック中X線画像における位置を推定する。血管内診断装置100のカテーテル113は、上記処理にて選択した血管モデル(カテーテルの軌跡)上に存在するはずである。さらに、そのプローブ(イメージングコア117およびX線不透過マーカ118)はその血管モデル上を、カテーテルの先端位置らGC入口へ向かって等速で移動しているものと仮定できる。
【0058】
ステップS703で選択された血管モデルはプルバック前のプローブ先端からGC入口までの軌跡であり、プルバック中X線画像が血管内診断装置100によるプルバック動作に同期して収集されることを考慮すると、選択された血管モデルをプルバック開始から血管断層像上でGCが検出されるまでのフレームの数(血管断層像群411の枚数)で等分割した距離が、X線不透過マーカがX線画像上で移動する単位距離Δlとなる。血管断層像上でGCは全周性の強輝度な略円形として描出され、通常の血管画像に対して非常に特徴的である。したがって、GCは血管断層像から容易に検出することができる。プルバック開始からGCが表示されるまでの血管断層像群411の枚数をNとし、選択された血管モデルの全長をLとすると、単位距離Δlは、
【数4】
のように表される。
【0059】
ただし、通常X線画像は、7、15、30Hzのサンプリングレートで収集されるのに対して、血管断層像は30Hz以上(例えば160、180Hz)で収集される。よって、実際に取得できるX線画像上でのX線不透過マーカの単移動距離は、当該フレームレートの差を考慮する必要がある。したがって、m番目のプルバック中X線画像におけるX線不透過マーカ118の予測位置は、選択された血管モデル上の先端部(プルバック開始位置)から以下の[数5]で示される距離Lだけ離れた位置に存在する。
【数5】
【0060】
ここで、fは血管断層像のサンプリングレート(Hz)であり、fはX線画像のサンプリングレート(Hz)である。
【0061】
選択された血管モデルのiインデックス目の座標に対応する先端部(x1,j,y1,j)からの長さlは、以下の[数6]のように表される。
【数6】
【0062】
したがって、
【数7】
となる血管モデルのiインデックス目(または、i+1インデックス目)に該当する座標位置を、X線不透過マーカ118の予測位置とする。または、iインデックス目に該当する座標位置とi+1インデックス目に該当する座標位置を用いて直線補間を行った結果を予測位置としてもよい。この場合、iインデックス目に該当する座標を(Xi,Yi+1)、i+1インデックス目に該当する座標を(Xi+1,Yi+1)とすると、
予測位置=(k*Xi+(1-k)*Xi+1,k*Yi+(1-k)*Yi
k=(li+1-L)/(li+1-li
となる。なお、当該予測位置に前フレームでのX線不透過マーカ118の位置をフィードバックして予測位置を求めることで予測位置の精度を高めても良い。
【0063】
以上のようにして、血管モデルに基づいてX線不透過マーカ118のプルバック中X線画像における位置が推定されると処理はステップS705へ進む。ステップS705において、マーカ検出部304は、ステップS704で推定された位置の近傍でX線不透過マーカ118を探索し、X線不透過マーカの位置を決定する。
【0064】
前述した通り、X線不透過マーカ118は、X線画像上で黒色の点のように表示される。よって、マーカ検出部304は、ステップS704で推定されたX線不透過マーカ118の予測位置に基づく特定の範囲(たとえば、予測位置の近傍)に対して黒点を強調する処理を行う。このような処理としては、黒点を強調するようなフィルタ(たとえば、たたみこみフィルタ、周波数解析(Wavelet、FFT))を用いることが挙げられる。
【0065】
フィルタ処理の結果、一般には複数の候補点が見つかるため、マーカ検出部304は、X線不透過マーカ118との相関を求めて、相関の高い候補点をX線不透過マーカ118として選択する。たとえば、以下のような相関値を用いることができる。
<距離相関値>
推定位置と検出位置との距離の二乗値
または、血管モデルと検出位置の距離の二乗値
<形状相関値>
前述の通り、X線不透過マーカの後ろ側にはX線不透過の金属シャフト116が存在している。また、カテーテル113の構造上、X線不透過マーカ118よりも先端側のカテーテル113内部は空気もしくは生食等のX線透過成分で満たされている。よって、形状的には、検出されたX線不透過マーカ118の位置から血管モデルの基部方向の輝度値が低く、端部方向の輝度値が高くなる。このような形状を摸擬した1次元フィルタを黒点の検出位置から血管モデル方向へ適応して相関を判定する。
【0066】
次にステップS706において、マーカ検出部304は全てのプルバック中X線画像について上述の処理を終えたか否かを判定する。未処理のプルバック中X線画像があれば、処理はステップS701に戻り、次のプルバック中X線画像についてステップS701~S705の処理を行う。こうして、全てのプルバック中X線画像についてマーカが検出されると、マーカ検出処理が終了する。
【0067】
図3に戻り、ステップS304において、同期表示部307はディスプレイ308に血管断層像とプルバック中X線画像を同期表示する。プルバック動作の間に、N枚の血管断層像とM枚のプルバック中X線画像が得られるとすると、同期表示部307は、n番目の血管断層像とm=f/f*n番目のプルバック中X線画像とが同時に表示されるように制御する。なお、fは血管断層像のサンプリングレート(Hz)であり、fはX線画像のサンプリングレート(Hz)でる。マーカ検出処理によりM枚のプルバック中X線画像のそれぞれについてX線不透過マーカ118の位置が検出されているので、同期表示部307は、表示中のプルバック中X線画像にX線不透過マーカ118の位置を強調する強調表示を施す。X線不透過マーカ118の位置を強調する方法としては、たとえば、マーカ検出部304により検出された位置に所定の輝度(または色)の図形を表示する、その図形を点滅表示する、検出された位置を示す矢印図形を表示すること等が挙げられる。
【0068】
図9は実施形態による同期表示の例を示す図である。同期表示部307はディスプレイ308の表示制御を行い、図9に示すようにX線画像901(アンジオ画像)と血管断層像902を同期表示する。同期表示では、表示されている血管断層像902の取得タイミングと同じタイミングで撮影されたX線画像901が表示される。また、図9では、X線不透過マーカ位置を明示する表示例として、X線不透過マーカ位置に強調マーク911を重畳した状態、矢印図形912によりX線不透過マーカ位置を示した状態が示されている。強調マーク911や矢印図形912の形状や色などは図示のものに限られるものではなく、また、点滅表示を行うようにしてもよい。また、ユーザ操作により、強調マーク911や矢印図形912の表示のオンオフを切り替えられるようにしてもよい。
【0069】
以上のように、上記実施形態の画像表示装置300によれば、高い信頼性でX線画像(アンジオ画像)上のX線不透過マーカ118の位置を検出することができる。また、ディスプレイ308には、血管断層像とX線画像(プルバック中X線画像)が同期表示され、X線画像上ではX線不透過マーカ118の位置が明示される。このため、ユーザは、表示中の血管断層像を撮影している時点におけるX線不透過マーカ118の位置をX線画像(アンジオ画像)において容易に、且つ、直ちに把握することができる。
【0070】
なお、上記実施形態では、画像表示装置を、血管内診断装置100やX線撮影装置200から独立した情報処理装置(たとえば、汎用PC)により実現する例を示したが、これに限られるものではない。たとえば、血管内診断装置100やX線撮影装置200に画像表示装置300の機能を組み込んでもよい。また、上記実施形態では血管内診断装置100がX線画像格納部102にX線撮影装置200からのX線画像を格納したが、X線撮影装置200がX線画像を格納するようにしてもよい。この場合、X線撮影装置200や、プルバック開始操作やプルバック終了を示す信号を血管内診断装置100からケーブル103を介して受信することで、プレプルバックX線画像群401やプルバック中X線画像群402を区別して格納することができる。
【0071】
なお、画像表示装置300において、ステップS703における血管モデルの選択結果をユーザ操作に応じて変更できるようにしてもよい。たとえば、J枚の呼吸補正後の血管モデルの画像をディスプレイ308に提示、ユーザが所望の血管モデルを選択できるようにする。画像表示装置300は、ユーザ選択された血管モデルをプルバック中X線画像に重畳して表示させ、ユーザはこの重畳表示を見て血管モデルの適否を判断する。そして、ユーザからの所定の決定操作に応じて、現在ユーザ選択されている血管モデルが当該プルバック中X線画像に対応する血管モデルとして決定される。
【0072】
また、ステップS705で検出されたX線不透過マーカの位置を、ユーザ操作に応じて修正できるようにしてもよい。たとえば、同期表示中に表示されているプルバック中X線画像上の強調表示をマウス操作などのユーザ操作に応じて移動可能とし、強調表示を移動するユーザ操作があった場合には、強調表示の移動後の位置へX線不透過マーカの位置を修正する。
【0073】
なお、同期表示において、X線不透過マーカの位置を明示する処理を実行するか否かをユーザが設定可能としてもよい。また、画像表示装置300について示した各機能部は、コンピュータが所定のプログラムを実行することにより実現されてもよいし、それらの一部もしくは全てがハードウエアにより実現されてもよい。
【符号の説明】
【0074】
100:血管内診断装置、101:血管断層像格納部、102:X線画像格納部、103:ケーブル、200:X線撮影装置、211:X線源、212:X線センサ、300:画像表示装置、301:血管モデル生成部、302:プルバックX線画像読込部、303:血管モデル格納部、304:マーカ検出部、305:プルバック中X線画像読込部、306:血管断層像読込部、307:同期表示部、308:ディスプレイ


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9