(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】気象レーダ装置、気象観測方法、および、気象観測プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/95 20060101AFI20220207BHJP
G01S 7/292 20060101ALI20220207BHJP
G01W 1/00 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
G01S13/95
G01S7/292
G01W1/00 C
(21)【出願番号】P 2020518200
(86)(22)【出願日】2019-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2019015376
(87)【国際公開番号】W WO2019216086
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】P 2018090550
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼島 祐弥
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-538245(JP,A)
【文献】特開2000-230976(JP,A)
【文献】特開2007-322331(JP,A)
【文献】特開2014-081331(JP,A)
【文献】特開2005-249662(JP,A)
【文献】特開昭55-116284(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1853122(KR,B1)
【文献】足立栄男 佐藤祐子,ドップラー気象レーダ,東芝レビュー,日本,株式会社東芝,2000年05月01日,第55巻 第5号,Pages 27-30,ISSN 0372-0462
【文献】足立アホロ 山内洋 佐藤英一,偏波レーダーおよび高速スキャンレーダーを用いた竜巻の観測,電子情報通信学会2014年総合大会講演論文集 通信1,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2014年03月04日,Pages SS-80~SS-81,ISSN 1349-1369
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/51
13/00 - 13/95
17/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ位置を中心とする距離方向および方位方向の二次元座標で表される位置毎に得られた気象観測用の観測対象のドップラ速度データを算出するドップラ速度データ算出部と、
前記観測対象のドップラ速度データにおける前記方位方向に並ぶ複数のドップラ速度データを用いて、近似関数を算出する近似関数算出部と、
前記方位方向に並ぶ複数のドップラ速度データと前記近似関数の値とを用いて除外値を検出する除外値検出部と、
を備える気象レーダ装置において、
前記距離方向に並ぶ複数のドップラ速度データの折り返しを検出する折り返し検出部と、
折り返されたドップラ速度データを補正する折り返し補正部と、
をさらに備え、
前記近似関数算出部は、前記折り返し補正部において補正されたドップラ速度データを
用い、
前記近似関数は、方位方向の一周を1周期とする周期関数で
あり、
前記距離方向の所定位置で前記方位方向の全周に亘るドップラ速度データの近似関数を用いて、前記中心に最も近い位置の全方位方向のドップラ速度データのダミーデータを生成するダミーデータ生成部と、
前記ダミーデータを、前記折り返しの検出前の複数のドップラ速度データに追加するダミーデータ追加部と、
をさらに備え、
前記折り返し検出部は、前記ダミーデータの追加後の複数のドップラ速度データを用いて、折り返しの検出を再度実行し、
前記折り返し補正部は、再度実行された折り返しの検出の結果を用いて、折り返しの補正を再度行う、
前記近似関数算出部は、再度実行された折り返し補正の結果を用いて、前記近似関数を再度算出し、
前記除外値検出部は、再度算出された近似関数を用いて、除外値を検出する、
気象レーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の気象レーダ装置であって、
前記除外値を、前記近似関数による近似値に置き換える、データ置換部を、
さらに備える、気象レーダ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の気象レーダ装置であって、
前記除外値を用いて異常気象を検出する異常気象検出部を、
さらに備える、気象レーダ装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の気象レーダ装置であって、
前記除外値検出部は、前記ドップラ速度データと前記近似関数の値との差分値が除外検出用の閾値を超えるときに、前記差分値の元となる前記ドップラ速度データを前記除外値として検出する、
気象レーダ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の気象レーダ装置であって、
前記折り返し補正部は、
前記距離方向における注目位置のドップラ速度データと、前記注目位置よりも前記中心側にある複数の位置のドップラ速度データを用いた統計的な基準値とを比較して、前記折り返しを検出する、
気象レーダ装置。
【請求項6】
請求項5に記載の気象レーダ装置であって、
前記統計的な基準値は、移動中央値である、
気象レーダ装置。
【請求項7】
アンテナ位置を中心とする距離方向および方位方向の二次元座標で表される位置毎に得られた気象観測用の観測対象のドップラ速度データにおける前記方位方向に並ぶ複数のドップラ速度データを用いて、近似関数を算出し、
前記方位方向に並ぶ複数のドップラ速度データと前記近似関数の値とを用いて除外値を検出する、
気象観測方法において、
前記距離方向に並ぶ複数のドップラ速度データの折り返しを検出し、
折り返されたドップラ速度データを補正し、
前記折り返しが補正されたドップラ速度データを用いて、前記近似関数を算出
し、
前記距離方向に並ぶ複数のドップラ速度データの折り返しを検出し、
折り返されたドップラ速度データを補正し、
前記折り返しが補正されたドップラ速度データを用いて、前記近似関数を算出
し、
前記方位方向の全周に亘るドップラ速度データを用いて、ダミーデータを生成し、
前記除外値の置換を行った後のドップラ速度データに対して、距離方向における中心に最も近い位置に前記ダミーデータを追加し、
前記ダミーデータが追加された前記ドップラ速度データを用いて、二回目の前記折り返しの補正を行い、
前記二回目の折り返しの補正の後に、二回目の前記除外値の検出を行う、
気象観測方法。
【請求項8】
アンテナ位置を中心とする距離方向および方位方向の二次元座標で表される位置毎に得られた気象観測用の観測対象のドップラ速度データにおける前記方位方向に並ぶ複数のドップラ速度データを用いて、近似関数を算出し、
前記方位方向に並ぶ複数のドップラ速度データと前記近似関数の値とを用いて除外値を検出する、
処理を演算処理装置に実行させる気象観測プログラムにおいて、
前記距離方向に並ぶ複数のドップラ速度データの折り返しを検出し、
折り返されたドップラ速度データを補正し、
前記折り返しが補正されたドップラ速度データを用いて、前記近似関数を算出
し、
前記除外値を、前記近似関数による近似値に置き換
え、
前記方位方向の全周に亘るドップラ速度データを用いて、ダミーデータを生成し、
前記除外値の置換を行った後のドップラ速度データに対して、距離方向における中心に最も近い位置に前記ダミーデータを追加し、
前記ダミーデータが追加された前記ドップラ速度データを用いて、二回目の前記折り返しの補正を行い、
前記二回目の折り返しの補正の後に、二回目の前記除外値の検出を行う処理を演算処理装置に実行させる、
気象観測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雲や雨等の気象に関連する観測対象の状態を、ドップラ速度データを用いて観測する気象レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、各種の気象レーダ装置が実用化されている。例えば、特許文献1、特許文献2には、ドップラ速度データを用いた気象レーダ装置が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の気象レーダは、観測対象の雲や雨にパルス信号を送信して、その反射信号を受信することで、その位相変化量を検出する。特許文献1に記載の気象レーダは、この位相変化量から、観測対象(雲や雨)のドップラ速度データを算出する。そして、特許文献1に記載の気象レーダは、このドップラ速度データから、観測対象(雲や雨)の状態を観測している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-173865号公報
【文献】特開2013-205151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、観測されるパルス信号の位相変化量は、パルス信号の1波長を超えるときに不連続になる。また、観測されるパルス信号の位相変化量は、ノイズ等の影響によって、不連続になることがある。
【0006】
そして、このような位相変化量の不連続な変化によって、ドップラ速度データが誤った値になってしまう。
【0007】
したがって、本発明の目的は、位相変化量の不連続な変化によってドップラ速度データが誤った値になっても、この誤った値を検出できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の気象レーダは、近似関数算出部、除外値検出部、および、データ置換部を備える。近似関数算出部は、アンテナ位置を中心とする距離方向および方位方向の二次元座標で表される位置毎に得られた気象観測用の観測対象のドップラ速度データにおける方位方向に並ぶ複数のドップラ速度データを用いて、近似関数を算出する。除外値検出部は、方位方向に並ぶ複数のドップラ速度データと近似関数の値とを用いて除外値を検出する。
【0009】
この構成では、気象観測用の観測対象(例えば、雲や雨)のドップラ速度データが連続的変化することを利用し、気象レーダは、近似関数を用いることによって、不連続な箇所を検出する。そして、このような不連続な箇所を検出できることによって、例えば、気象レーダ装置は、この不連続な箇所のドップラ速度データを、近似関数による近似値に置き換える。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、位相変化量の不連続な変化によってドップラ速度データが誤った値になっても、この誤ったドップラ速度データを正確に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る気象レーダ装置における気象観測データ生成部の機能ブロック図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る気象レーダ装置の機能ブロック図である。
【
図3】距離方向の折り返し補正の概念を示す図である。
【
図4】一般的な一様な風の分布の一例を示す図である。
【
図5】方位方向の除外値の置換の概念を示す図である。
【
図6】
図6(A)、
図6(B)、
図6(C)は、本実施形態の気象観測データ生成部の構成および処理を用いた場合での、ドップラ速度データの補正、置換の遷移を示す図である。
【
図7】気象観測データ生成部を実現する演算処理装置で行う基本的な処理を示すフローチャートである。
【
図8】距離方向の折り返しの補正の処理を示すフローチャートである。
【
図9】方位方向の除外値の置換の処理を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る気象レーダ装置の気象観測データ生成部の機能ブロック図である。
【
図11】
図11(A)、
図11(B)、
図11(C)は、気象観測データ生成部が行う一回目の補正、置換の処理時のドップラ速度データを示す図である。
【
図13】
図13(A)は、一回目の補正および置換が終了し、ダミーデータを追加したドップラ速度データを示す図であり、
図13(B)、
図13(C)は、気象観測データ生成部が行う二回目の補正、置換の処理時のドップラ速度データを示す図である。
【
図14】気象観測データ生成部を実現する演算処理装置で行う基本的な処理を示すフローチャートである。
【
図15】本発明の第3の実施形態に係る気象レーダ装置の気象観測データ生成部の機能ブロック図である。
【
図16】
図16(A)、
図16(B)、
図16(C)は、第1の実施形態に係る気象観測データ生成部を用いた場合の気象観測データを示す図である。
【
図17】
図17(A)、
図17(B)、
図17(C)は、第2の実施形態に係る気象観測データ生成部を用いた場合の気象観測データを示す図である。
【
図18】
図18(A)、
図18(B)は、第2の実施形態に係る気象観測データ生成部を用いた場合の気象観測データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の実施形態に係る気象レーダ装置について、図を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る気象レーダ装置における気象観測データ生成部の機能ブロック図である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る気象レーダ装置の機能ブロック図である。
【0013】
まず、
図2を用いて、気象観測データ生成部10を含む気象レーダ装置20の構成について説明する。なお、気象レーダ装置20における気象観測データ生成部10以外の機能部の構成および処理は、出願人が出願済みおよび公開済みの既知のパルスドップラレーダと同じであり、詳細な説明は省略する。
【0014】
図2に示すように、気象レーダ装置20は、送信部21、送受切替器22、受信部23、ドップラ速度データ算出部24、および、気象観測データ生成部10を備える。
【0015】
送信部21は、所定の繰り返し周期を有するパルス信号を生成する。パルス信号の元となる搬送波信号の周波数は、観測対象の種類に応じて設定されている。本実施形態の気象レーダ20では、観測対象は、気象観測用の対象物であり、雨および雲である。したがって、雨および雲に反射する周波数に設定されている。
【0016】
送信部21は、パルス信号を送受切替器22に出力するとともに、その一部を受信部23に出力する。
【0017】
送受切替器22は、送信期間と受信期間とを切り替え、この動作を繰り返す。具体的には、送受切替器22は、送信期間に、送信部21とアンテナ200とを接続することで、パルス信号をアンテナ200に出力する。一方、送受切替器22は、受信期間、パルス信号の反射信号をアンテナ200から受信部23に出力する。
【0018】
アンテナ200は、回転軸を中心として水平面上を回転しながら、所定の仰角をもって、パルス信号を送信し、その反射信号を受信する。
【0019】
受信部23は、反射信号に対して所定の増幅処理等を行う。受信部23は、パルス信号と、該パルス信号に対する反射信号の位相変化量(パルス信号と反射信号の位相差)を算出する。受信部23は、位相変化量をドップラ速度データ算出部24に出力する。
【0020】
ドップラ速度データ算出部24は、例えば、二重PRF法等を用いて、位相変化量に基づいてドップラ速度データを算出する。
【0021】
ドップラ速度データは、アンテナ200の位置を中心位置(基準点)として、距離方向と方位方向との二次元で表される各位置に対して算出されるドップラ速度で表される。距離方向とは、中心位置から放射状に離間していく方向である。方位方向とは、アンテナ200の回転方向に平行な方向である。
【0022】
ドップラ速度データ算出部24は、アンテナ200の1周分(1スキャン分)のドップラ速度データを組として、気象観測データ生成部10に出力する。
【0023】
図1に示すように、気象観測データ生成部10は、データ処理部11、および、データ処理部12を備える。データ処理部11、および、データ処理部12は、それぞれに後述の処理を行う演算処理素子等のハードウェアと、後述の処理を実現するプログラムとによって構成されている。
【0024】
概略的には、データ処理部11は、ドップラ速度データの距離方向の折り返しに対する補正を行う。データ処理部12は、ドップラ速度データに対する方位方向の除外値の置換を行う。
【0025】
気象観測データ生成部10は、データ処理部11およびデータ処理部12を備えることによって、位相変化量に起因する距離方向および方位方向のドップラ速度データの誤った値を検出できる。そして、気象観測データ生成部10は、ドップラ速度データにおける誤った値を、観測対象に応じた、より正確な値に置換できる。
【0026】
なお、データ処理部11は、必須の構成ではなく、距離方向の折り返しが生じないような環境および設定であれば、省略することも可能である。
【0027】
(データ処理部11の構成および距離方向の折り返しの補正)
図1に示すように、データ処理部11は、中央値算出部111、差分値算出部112、折り返し検出部113、および、補正部114を備える。
【0028】
中央値算出部111は、注目の一方位にて距離方向に並ぶ複数のドップラ速度データを取得する。中央値算出部111は、当該方位における距離方向の注目位置(例えば、
図3のDm)を設定する。
【0029】
中央値算出部111は、注目位置を遠端として中心側の所定距離の範囲(例えば、
図3のRGm)内のドップラ速度データを取得する。中央値算出部111は、この範囲内のドップラ速度データの中央値を算出する。この範囲内に複数のドップラ速度データがあれば、中央値算出部111は、これら複数のドップラ速度データから中央値を算出する。この範囲内に1個のドップラ速度データがあれば、中央値算出部111は、このドップラ速度データを中央値とする。中央値算出部111は、中央値を差分値算出部112に出力する。この際、中央値算出部111は、注目位置のドップラ速度データと中央値とを関連づけして、差分値算出部112に出力する。
【0030】
中央値算出部111は、中心に近い位置から順に距離方向に沿って注目位置をシフトさせながら、各注目位置に対して中央値を算出する。この際、中央値算出部111は、折り返し検出部113によって折り返しが検出されると、注目位置のシフトおよび中央値の算出を停止する。
【0031】
差分値算出部112は、注目位置のドップラ速度データ(例えば、
図3のV(Dm))と中央値との差分値を算出する。差分値算出部112は、差分値を折り返し検出部113に出力する。
【0032】
折り返し検出部113は、差分値を用いて、距離方向の折り返しの発生を判定する。より具体的には、折り返し検出部113は、差分値が折り返し判定用の閾値以上であると、その時点の注目位置から距離方向の折り返しが発生したと、判定する。一方、折り返し検出部113は、差分値が折り返し判定用の閾値未満であると、その時点の注目位置では距離方向の折り返しが発生していないと、判定する。なお、折り返し検出部113は、ドップラ速度データの符号の反転方向も検出する。
【0033】
折り返し検出部113は、折り返しの発生の判定結果および符号の反転方向を、補正部114に出力する。また、折り返し検出部113は、折り返しの発生の判定結果を、中央値算出部111に出力する。
【0034】
補正部114は、折り返しの発生の判定結果が得られると、この注目位置を含む距離方向に並ぶドップラ速度データに対する補正を行う。より具体的には、補正部114は、距離方向に並ぶドップラ速度データにおける注目位置以遠のドップラ速度データに対して補正を行う。補正値は、送信部21および受信部23の仕様に応じて決定される実測可能なドップラ速度データの上限値(例えば、
図3のVm)の2倍値(例えば、
図3の2Vm)を、補正対象の位置のドップラ速度データに加算または減算する。補正部114は、ドップラ速度データが負値から正値に反転した場合、ドップラ速度データ(実測データ)に対して、2Vmを減算する。一方、補正部114は、ドップラ速度データが正値から負値に反転して場合、ドップラ速度データ(実測データ)に対して、2Vmを加算する。
【0035】
このような構成および処理によって、距離方向の折り返しに起因して、ドップラ速度データが誤った値になっても、この誤った値を、実際の気象状態および観測対象に応じた正確な値に補正できる。
【0036】
図3は、距離方向の折り返し補正の概念を示す図である。
図3において、横軸は、距離であり、縦軸は、ドップラ速度データである。
【0037】
図3に示す場合では、注目位置Dmのみにおいて、ドップラ速度データ(実測データ)は不連続である。また、注目位置Dmよりも中心側の所定範囲の複数位置でのドップラ速度データ(実測データ)と、注目位置Dmのドップラ速度データ(実測データ)とは、値が大きく異なっている。例えば、
図3に示す場合、注目位置Dmよりも中心側の所定範囲の複数位置でのドップラ速度データ(実測データ)は、負値であり、ドップラ速度データの下限値-Vmに略等しい。一方、注目位置Dmのドップラ速度データ(実測データ)は、正値であり、ドップラ速度データの上限値+Vmに略等しい。
【0038】
ここで、
図4は、一般的な一様な風の分布の一例を示す図である。局所的な乱気流等が生じていなければ、
図4に示すように、距離方向に並ぶ各位置では、風の向きは略同じであり、風速は一定または連続的に変化する。したがって、上述のように、距離方向に並ぶ複数の位置における注目位置Dmのみでドップラ速度データの値が不連続になり、値が大きく変化することは、通常考えられない。このため、注目位置Dmにおいて、ドップラ速度データの算出処理の限界に起因して、折り返しが発生と判断できる。
【0039】
この原理を利用し、データ処理部11は、上述の構成および処理を実現することによって、注目位置Dmでの折り返しを検出する。この際、上述のように、データ処理部11は、注目位置Dmを、中心に近い位置から順に遠方にシフトさせながら、折り返しを検出する。これにより、データ処理部11は、折り返しの発生、および、折り返しの発生する位置を確実に且つ正確に検出できる。
【0040】
そして、データ処理部11は、注目位置Dm以遠の各位置のドップラ速度データを補正する。この際、補正値は、上述のように、上限値Vmの2倍である。
【0041】
図3に示す場合では、注目位置Dmにおいて、ドップラ速度データは、負値から正値に反転しているので、データ処理部11は、注目位置Dmにおけるドップラ速度データ(実測データ)V(Dm)に対して、2Vmを減算することで、補正データを算出する。そして、データ処理部11は、注目位置Dmよりも遠方の各位置のドップラ速度データ(実測データ)に対しても、同様に、2Vmを減算することで、補正データを算出する。
【0042】
これにより、距離方向に対して、
図3に示すように、実際の雨、雲等の観測対象の状態に応じた、連続的で正確なドップラ速度データを得られる。
【0043】
(データ処理部12の構成および方位方向の除外値の補正)
図1に示すように、データ処理部12は、近似関数算出部121、除外値検出部122、および、データ置換部123を備える。
【0044】
近似関数算出部121には、データ処理部11から出力された1スキャン分のドップラ速度データが入力される。近似関数算出部121は、注目距離にて方位方向に並ぶドップラ速度データを取得する。注目距離は、例えば、方位方向に並ぶドップラ速度データの個数が多い位置によって設定されている。または、注目距離は、中心からの距離が短い位置によって設定されている。
【0045】
近似関数算出部121は、方位方向に並ぶドップラ速度データに対して、近似関数を算出する。近似関数は、COS関数、SIN関数等の周期関数であることが好ましく、三角波を表す関数等を用いることも可能である。なお、矩形波、ノコギリ波等の値の不連続点が生じる関数(ある1点で値が大きく変化する関数)は、近似関数に適用されない。
【0046】
近似関数算出部121は、方位方向の各位置における近似関数によるドップラ速度データの近似値と実測のドップラ速度データとを、除外値検出部122に出力する。
【0047】
除外値検出部122は、近似関数によるドップラ速度データの近似値と実測のドップラ速度データとを、位置毎に比較し、比較結果に基づいて、除外値を検出する。具体的には、除外値検出部122は、近似関数によるドップラ速度データの近似値と実測のドップラ速度データとの差が、除外値検出用の閾値以上であれば、この位置での実測のドップラ速度データを除外値として検出する。一方、除外値検出部122は、近似関数によるドップラ速度データの近似値と実測のドップラ速度データとの差が、除外値検出用の閾値未満であれば、この位置での実測のドップラ速度データを除外値として検出しない。
【0048】
除外値検出部122は、近似関数によるドップラ速度データの近似値と、実測のドップラ速度データと、除外値の検出結果とを、データ置換部123に出力する。
【0049】
データ置換部123は、除外値の検出結果に基づいて、除外値と検出された位置における実測のドップラ速度データを、近似関数による近似値に置き換える。
【0050】
このような構成および処理によって、ノイズ等に起因して、方位方向において局所的に位相変化量が大幅に変化して、ドップラ速度データが誤った値になっても、この誤った値を、実際の気象状態および観測対象に応じた正確な値に置換できる。
【0051】
図5は、方位方向の除外値の置換の概念を示す図である。
図5において、横軸は、方位(方位角)であり、縦軸は、ドップラ速度データである。
【0052】
図5に示す場合では、方位方向の複数位置(方位角)において、ドップラ速度データ(実測データ)は、周期関数(ここでは、COS関数)からなる近似関数に対して、大きく離間している。
【0053】
ここで、局所的な乱気流等が生じていなければ、上述の
図4に示すように、方位方向に並ぶ各位置での風の大きさは、方位方向の1周分を1周期として、連続的に増加、減少を繰り返す。すなわち、風の大きさの変化は、方位方向の1周分を1周期とする周期関数で表すことが可能である。
【0054】
したがって、上述のように、方位方向に並ぶ複数の位置において局所的にドップラ速度データの値が大きく変化することは、通常考えられない。このため、ドップラ速度データの値が大きく変化する位置では、ノイズ等に起因して、誤った位相変化量が検出され、誤ったドップラ速度データが算出されたと判断できる。
【0055】
この原理を利用し、データ処理部12は、上述の構成および処理を実現することによって、方位方向における除外値(
図5に示す黒丸印の実測データ)を検出する。そして、
図5に示すように、データ処理部12は、除外値を、近似関数(
図5に示す実線)に基づく近似値(
図5に示す三角印の置換データ)に置き換える。これにより、方位方向に対して、実際の雨、雲等の観測対象の状態に応じた、連続的で正確なドップラ速度データを得られる。
【0056】
以上のような構成および処理を用いることによって、気象観測データ生成部10は、実際の雨、雲等の観測対象の状態に応じたドップラ速度データを出力できる。
【0057】
図6(A)、
図6(B)、および、
図6(C)は、本実施形態の気象観測データ生成部の構成および処理を用いた場合での、ドップラ速度データの補正、置換の遷移を示す図である。
図6(A)は、実測のドップラ速度データの分布であり、
図6(B)は、距離方向の折り返しの補正を行った後のドップラ速度データの分布であり、
図6(C)は、方位方向の除外値の置換を行った後のドップラ速度データの分布である。
図6(A)、
図6(B)、
図6(C)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7は、距離方向の各位置であり、R1が最も中心に近く、R7が最も中心から遠い。
図6(A)、
図6(B)、
図6(C)において、θ1、θ2、θ3、θ4、θ5、θ6、θ7は、方位方向の各位置(方位角)である。また、各位置におけるハッチングは、ドップラ速度データの値の正負、大きさを示している。また、V(3+)、V(2+)、V(1+)は、正値であり、V(3+)>V(2+)>V(1+)の関係にある。V(3-)、V(2-)、V(1-)は、負値であり、V(3-)<V(2-)<V(1-)の関係にある。V(0)は、略0である。
【0058】
図6(A)に示すように、方位θ7における距離R4以遠において、領域Ac11の範囲で、距離方向の折り返しが発生している。また、方位θ8における距離R3以遠において、領域Ac12の範囲で、距離方向の折り返しが発生している。
【0059】
上述のデータ処理部11を用いることによって、この距離方向の折り返しは検出され、
図6(B)に示すように、補正される。これにより、方位θ7および方位θ8では、実際の気象状態および観測対象の状態に応じた距離方向に連続するドップラ速度データが得られる。
【0060】
また、
図6(A)および
図6(B)に示すように、距離R5における方位θ2において、除外値が発生している。また、距離R4における方位θ4において、除外値が発生している。
【0061】
上述のデータ処理部12を用いることによって、この方位方向の除外値は検出され、
図6(C)に示すように、補正される。これにより、距離R5および距離R4では、実際の気象状態および観測対象の状態に応じた方位方向に連続するドップラ速度データが得られる。
【0062】
なお、上述の説明では、気象観測データ生成部10の各処理を、それぞれに個別の機能部によって実現する態様を示した。しかしながら、後述の処理を行うプログラムを記憶しておき、演算処理装置で行うようにしてもよい。
図7は、気象観測データ生成部を実現する演算処理装置で行う基本的な処理を示すフローチャートである。すなわち、
図7は、気象観測データ生成方法を示すフローチャートである。なお、具体的な処理内容は上述しており、詳細な説明は省略する。
【0063】
図7に示すように、演算処理装置は、距離方向に並ぶドップラ速度データを用いて、距離方向の折り返しを補正する(S101)。次に、演算処理装置は、方位方向に並ぶドップラ速度データを用いて、方位方向の除外値を置換する(S102)。
【0064】
(距離方向の折り返しの補正の具体的な一例)
図8は、距離方向の折り返しの補正の処理を示すフローチャートである。
【0065】
演算処理装置は、注目方位にて距離方向に並ぶドップラ速度データを取得する(S201)。演算処理装置は、注目位置(
図3のDmに対応)を設定する(S202)。
【0066】
演算処理装置は、注目位置の中心側の所定範囲(
図3のRGmに対応)のドップラ速度データの中央値を算出する(S203)。演算処理装置は、注目位置のドップラ速度データの値と中央値との差分値を算出する(S204)。
【0067】
演算処理装置は、差分値が閾値以上であれば(S205:YES)、注目位置以遠の各位置のドップラ速度データを、ドップラ速度データの実測値の上限値に基づく補正値を用いて補正する(S206)。
【0068】
なお、演算処理装置は、差分値が閾値未満であれば(S205:NO)、注目位置を遠方にシフトし(S207)、ステップS203以降の処理を繰り返す。
【0069】
(方位方向の除外値の置換の具体的な一例)
図9は、方位方向の除外値の置換の処理を示すフローチャートである。
【0070】
演算処理装置は、注目距離にて方位方向に並ぶドップラ速度データを取得する(S301)。演算処理装置は、これらのドップラ速度データを用いて、近似関数を算出する(S302)。この際、近似関数は、周期関数である。
【0071】
演算処理装置は、実測のドップラ速度データと、近似関数に基づく近似値との差分値を算出する(S303)。演算処理装置は、差分値が除外値の検出用閾値以上であれば(S304:YES)、当該実測のドップラ速度データを除外値として検出する(S305)。演算処理装置は、除外値を、近似関数による当該位置に対する近似値に置き換える(S306)。
【0072】
なお、演算処理装置は、実測のドップラ速度データが除外値でなければ(S304:NO)、置き換えを行わず、実測のドップラ速度データをそのまま用いる。
【0073】
次に、本発明の第2の実施形態に係る気象レーダについて、図を参照して説明する。
図10は、本発明の第2の実施形態に係る気象レーダの気象観測データ生成部の機能ブロック図である。第2の実施形態に係る気象レーダは、
図10に示す気象観測データ生成部10Aの構成において、第1の実施形態に係る気象レーダ20とは異なり、他の構成は、第1の実施形態に係る気象レーダ20と同様である。したがって、同様の箇所の説明は、省略する。
【0074】
図10に示すように、第2の実施形態に係る気象観測データ生成部10Aは、機能ブロックの構成としては、第1の実施形態に係る気象観測データ生成部10に対して、ダミーデータ生成部13、および、ダミーデータ追加部14を追加した点で異なる。また、気象観測データ生成部10Aは、データ処理部11による距離方向の折り返しの補正と、データ処理部12による方位方向の除外値の置換とを、ダミーデータ生成部13、ダミーデータ追加部14の処理を間に挟んで、繰り返し行う。
【0075】
ダミーデータ生成部13は、距離方向の所定位置で、方位方向の全周分(1スキャン分)のドップラ速度データを取得する。この際、ダミーデータ生成部13は、距離方向の各位置において、方位方向に並ぶドップラ速度データの個数を比較し、方位方向に並ぶドップラ速度データの欠損が少ない距離を選択することが好ましい。
【0076】
ダミーデータ生成部13は、これらの方位方向に並ぶ複数のドップラ速度データから、周期関数である近似関数を算出する。これにより、ダミーデータ生成部13は、方位方向毎の風の状態を、実測のドップラ速度データから近似的に再現できる。
【0077】
ダミーデータ生成部13は、近似関数に基づいて、全周に亘って、方位方向に対する近似値を算出する。ダミーデータ生成部13は、生成した全周に亘る近似値をダミーデータとして、ダミーデータ追加部14に出力する。
【0078】
ダミーデータ追加部14は、ダミーデータ(全周に亘る各方位の近似値)を、距離方向において中心に最も近い位置のドップラ速度データとして追加する。ダミーデータ追加部14は、このダミーデータが追加された1スキャン分のドップラ速度データを、データ処理部11に出力する。
【0079】
このような構成では、気象観測データ生成部10Aは、次のように各処理を行う。
【0080】
(一回目の折り返し補正および除外値の置換)
図11(A)、
図11(B)、
図11(C)は、気象観測データ生成部が行う一回目の補正、置換の処理時のドップラ速度データを示す図である。
図11(A)は、最初のドップラ速度データである。
図11(B)は、一回目の距離方向の折り返し補正後のドップラ速度データである。
図11(C)は、一回目の方位方向の除外値の置換後のドップラ速度データである。
図11(A)、
図11(B)、
図11(C)において、ドップラ速度データは、正値、略0、負値の別にハッチングして示している。また、
図11(A)、
図11(B)、
図11(C)は、距離方向の一部である距離R1から距離R7、方位方向の一部である方位θ1から方位θ8の領域を注目領域として示している。
【0081】
まず、データ処理部11は、ダミーデータが追加されていない実測のドップラ速度データを用いて、上述のように、距離方向の折り返し補正を行う。例えば、
図11(A)に示すような実測のドップラ速度データを取得すると、データ処理部11は、方位θ4の距離R4の位置、方位θ5の距離R7の位置、および、方位θ6の距離R7の位置において、距離方向の折り返しを検出し、補正を行う。これにより、
図11(B)に示すように、方位θ4の距離R4の位置、方位θ5の距離R7の位置、および、方位θ6の距離R7の位置のドップラ速度データが補正される。
【0082】
次に、データ処理部12は、折り返し補正後のドップラ速度データを用いて、上述のように、方位方向の除外値の置換を行う。例えば、
図11(B)に示すようなドップラ速度データであると、データ処理部12は、距離R5の方位θ5、方位θ6の位置、距離R6の方位θ5から方位θ8の位置、距離R7の方位θ5、方位θ6の位置のドップラ速度データを除外値として検出する。一回目の場合、データ処理部12は、除外値と検出したドップラ速度データが方位方向に所定数以上連続していれば、これらのドップラ速度データを削除することによって、置換処理を代用する。この処理によって、所定の面積において間違っていると推定されるドップラ速度データは削除される。これにより、
図11(C)に示すように、距離R5の方位θ5、方位θ6の位置、距離R6の方位θ5~方位θ8の位置、距離R7の方位θ5、方位θ6の位置のドップラ速度データは、削除される。
【0083】
(ダミーデータの生成)
図12(A)、
図12(B)、
図12(C)は、ダミーデータの生成の概念を説明するための図である。
図12(A)は、ダミーデータの生成用の近似を行う対象となるドップラ速度データを示す図である。
図12(B)は、近似関数の一例を示す図である。
図12(C)は、ダミーデータの一例を示す図である。
図12(A)、
図12(B)、
図12(C)において、ドップラ速度データは、正値、略0、負値の別にハッチングして示している。また、
図12(A)、
図12(B)、
図12(C)は、距離方向の一部である距離R1から距離R7、方位方向の全周に亘る方位θA1から方位θA16の領域を注目領域として示している。なお、
図11(A)、
図11(B)、
図11(C)に示す方位θ1から方位θ8は、
図12(A)、
図12(C)に示す方位θA3から方位θA4に対応する。
【0084】
次に、ダミーデータ生成部13は、距離方向の所定位置で方位方向に並ぶドップラ速度データを用いて、近似関数を算出する。この際、ダミーデータ生成部13は、距離方向に1つの位置に限らず、互いに隣接する複数の位置を対象としてもよい。この場合、各方位に対する近似関数の算出用のドップラ速度データは、例えば、距離方向の複数の位置のドップラ速度データの平均値を用いればよい。
【0085】
例えば、
図12(A)に示すようなドップラ速度データが得られると、ダミーデータ生成部13は、距離R4、距離R5、距離R6等の方位方向に並ぶドップラ速度データを用いて、
図12(B)に示すような周期関数からなる近似関数を算出する。
図12(B)に示す例では、近似関数は、COS関数またはSIN関数である。なお、この場合の近似関数も、値が急激に変化しない周期関数であればよい。
【0086】
ダミーデータ生成部13は、算出した近似関数を用いて、
図12(C)に示すような方位方向の各位置のドップラ速度データの近似値を算出する。そして、ダミーデータ生成部13は、この近似値をダミーデータに設定する。
【0087】
(ダミーデータの追加)
図13(A)は、一回目の補正および置換が終了し、ダミーデータを追加したドップラ速度データを示す図である。
図13(A)において、ドップラ速度データは、正値、略0、負値の別にハッチングして示している。また、
図13(A)は、距離方向の一部である距離R1から距離R7、方位方向の一部である方位θ1から方位θ8の領域を注目領域として示している。
【0088】
ダミーデータ追加部14は、ダミーデータ生成部13で生成された全方位に亘るダミーデータの内、注目領域に対応するダミーデータを、距離方向の最も中心に近い位置のドップラ速度データとして追加する。例えば、
図12(C)に示すダミーデータを得られた場合、ダミーデータ追加部14は、
図13(A)に示すように、距離R0(<R1)で方位θ1から方位θ8のダミーデータをドップラ速度データとして追加する。また、ダミーデータ追加部14は、
図13(A)に示すように、上述のデータ処理部12で行われた一回目の除外値の置換で削除されたドップラ速度データを、二回目の折り返し補正用のダミーデータとして追加する。
【0089】
(二回目の折り返し補正および除外値の置換)
図13(B)、
図13(C)は、気象観測データ生成部が行う二回目の補正、置換の処理時のドップラ速度データを示す図である。
図13(B)は、二回目の距離方向の折り返し補正後のドップラ速度データである。
図13(C)は、二回目の方位方向の除外値の置換後のドップラ速度データである。
図13(B)、
図13(C)において、ドップラ速度データは、正値、略0、負値の別にハッチングして示している。また、
図13(B)、
図13(C)は、距離方向の一部である距離R1から距離R7、方位方向の一部である方位θ1から方位θ8の領域を注目領域として示している。
【0090】
データ処理部11は、一回目の補正および置換が行われ、ダミーデータが追加されたドップラ速度データを用いて、上述のように、距離方向の折り返し補正を行う。例えば、
図13(A)に示すような、一回目の補正、置換、およびダミーデータの追加が行われたドップラ速度データを取得すると、データ処理部11は、方位θ5の距離R5の位置、方位θ6の距離R5の位置、方位θ7の距離R6の位置、および、方位θ8の距離R6の位置において、距離方向の折り返しを検出し、補正を行う。
【0091】
これは、上述のダミーデータの追加によって実現が可能になる。すなわち、実測のドップラ速度データでは、方位θ5の距離R5の位置、方位θ6の距離R5の位置、方位θ7の距離R6の位置、および、方位θ8の距離R6の位置では、距離方向の中心側にドップラ速度データが存在しないため、折り返しが検出できない。しかしながら、上述のように、中心に最も近い位置にダミーデータを追加することによって、折り返しを検出できる。さらに、ダミーデータは、実測のドップラ速度データを用いるので、方位毎の風の状態を正確に表すものとなる。したがって、風の状態に応じた正確に折り返しを検出できる。
【0092】
これにより、
図13(B)に示すように、方位θ5の距離R5の位置、方位θ6の距離R5の位置、方位θ7の距離R6の位置、および、方位θ8の距離R6の位置を起点として距離方向の遠方に対して、ドップラ速度データが折り返し補正される。
【0093】
次に、データ処理部12は、二回目の折り返し補正後のドップラ速度データを用いて、上述のように、方位方向の除外値の置換を行う。例えば、
図13(B)に示すようなドップラ速度データであると、データ処理部12は、ドップラ速度データを除外値として検出する。なお、
図13(B)では、除外値の検出がないため、置換は行われていない。したがって、この場合では、
図13(C)に示すように、除外値の置換後のドップラ速度データは、除外値の置換前のドップラ速度データと同じになる。
【0094】
このような構成および処理を用いることによって、ドップラ速度データの欠損等によって、実測のドップラ速度データでは、折り返しの検出ができない場合であっても、気象観測データ生成部10Aは、配置位置の風の状況に応じて、正確に折り返しを検出でき、補正できる。
【0095】
なお、上述の説明では、気象観測データ生成部10Aの各処理を、それぞれに個別の機能部によって実現する態様を示した。しかしながら、後述の処理を行うプログラムを記憶しておき、演算処理装置で行うようにしてもよい。
図14は、気象観測データ生成部を実現する演算処理装置で行う基本的な処理を示すフローチャートである。なお、具体的な処理内容は上述しており、詳細な説明は省略する。
【0096】
図14に示すように、演算処理装置は、距離方向に並ぶドップラ速度データを用いて、一回目の距離方向の折り返しの補正を行う(S101)。次に、演算処理装置は、方位方向に並ぶドップラ速度データを用いて、一回目の方位方向の除外値の置換を行う(S102)。
【0097】
演算処理装置は、二回目の補正および置換でなければ(S103:NO)、ダミーデータの作成用の近似関数を算出する(S104)。演算処理装置は、近似関数を用いた近似値からダミーデータを生成する(S105)。演算処理装置は、一回目の補正および置換後のドップラ速度データにおける中心に最も近い位置にダミーデータを追加する(S106)。
【0098】
演算処理装置は、一回目の補正、置換、およびダミーデータの追加後のドップラ速度データを用いて、二回目の距離方向の折り返しの補正を行う(S101)。次に、演算処理装置は、二回目の方位方向の除外値の置換を行う(S102)。
【0099】
演算処理装置は、二回目の補正および置換であるので(S103:YES)、ダミーデータを消去する(S110)。
【0100】
次に、本発明の第3の実施形態に係る気象レーダについて、図を参照して説明する。
図15は、本発明の第3の実施形態に係る気象レーダの気象観測データ生成部の機能ブロック図である。第3の実施形態に係る気象レーダは、
図15に示す気象観測データ生成部10Bの構成において、第1の実施形態に係る気象レーダ20とは異なり、他の構成は、第1の実施形態に係る気象レーダ20と同様である。したがって、同様の箇所の説明は、省略する。
【0101】
図15に示すように、第3の実施形態に係る気象観測データ生成部10Bは、第1の実施形態に係る気象観測データ生成部10に対して、異常気象検出部15を追加した点において異なる。気象観測データ生成部10Bの他の構成は、気象観測データ生成部10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0102】
除外値検出部122は、除外値を検出すると、異常気象検出部15に出力する。この際、除外値検出部122は、除外値が検出された距離方向および方位も、異常気象検出部15に出力することが好ましい。
【0103】
異常気象検出部15は、除外値の検出が入力されると、異常気象の発生を示す通知を行う。なお、通知は、表示、音声、ブザー音等、オペレータに認知可能なものであればよい。
【0104】
上述のように、除外値の検出は、風が一様であることを前提としている。したがって、除外値が検出された位置では、ノイズではなく、局所的な異常気象によって、除外値が発生した可能性もある。このため、除外値の検出を、異常気象の検出に兼用することによって、定常的な気象観測を行いながら、異常気象を検出することができる。
【0105】
この際、除外値が検出された距離方向および方位が入力されていれば、異常気象検出部15は、除外値が検出された位置も通知する。これにより、異常気象の発生位置を、オペレータに通知できる。
【0106】
なお、異常気象検出部15は、例えば、除外値の検出された位置が複数であり、これら複数の位置が隣接または近接しており、位置数が所定数を超えた場合に、異常気象として検出してもよい。これにより、ノイズによる除外値と異常気象による除外値とは、識別可能になる。したがって、異常気象検出部15は、異常気象を、より正確に検出して、通知できる。
【0107】
なお、第3の実施形態に係る異常気象検出部15の構成は、第1の実施形態にも示したように、データ処理部11を備えず、データ処理部12のみを備える気象観測データ生成部に対しても適用可能である。
【0108】
上述のように処理されたドップラ速度データを用いることで、気象レーダは、気象観測用の画像を得ることができる。この場合、気象レーダは、気象観測データ生成部の後段に、表示画像生成部を備える。表示画像生成部は、ドップラ速度データの値に応じた色または輝度等を用いて、気象レーダを中心とする気象観測データの表示画像を生成する。この表示画像は、例えば、例えば、表示装置に表示される。これにより、オペレータは、気象観測データを容易に視認でき、気象レーダの周囲の気象状態を、容易に観測できる。
【0109】
(第1の実施形態に係る気象観測データ生成部10を用いた場合)
図16(A)、
図16(B)、
図16(C)は、第1の実施形態に係る気象観測データ生成部を用いた場合の気象観測データを示す図である。なお、
図16(A)、
図16(B)、
図16(C)は、ドップラ速度データ(ドップラ速度データ)の値を用いてグレースケールで気象観測データを生成している。
図16(A)は、実測のドップラ速度データによる気象観測データである。
図16(B)は、距離方向の折り返し補正後のドップラ速度データによる気象観測データである。
図16(C)は、方位方向の除外値の置換後のドップラ速度データによる気象観測データである。
【0110】
図16(A)、
図16(B)に示すように、気象観測データ生成部10のデータ処理部11による距離方向の折り返しの補正を行うことによって、領域R(Ac1)における距離方向の折り返しは、補正される。そして、
図16(B)、
図16(C)に示すように、気象観測データ生成部10のデータ処理部12による方位方向の除外値の置換を行うことによって、局所的な位置P(Ac2)における方位方向の除外値は、置き換えられる。
【0111】
このように、気象観測データ生成部10を用いることによって、実際の気象状態に応じた、正確で且つ視認し易い気象観測データを得られる。
【0112】
(第2の実施形態に係る気象観測データ生成部10Aを用いた場合)
図17(A)、
図17(B)、
図17(C)、
図18(A)、
図18(B)は、第2の実施形態に係る気象観測データ生成部を用いた場合の気象観測データを示す図である。なお、
図17(A)、
図17(B)、
図17(C)、
図18(A)、
図18(B)は、ドップラ速度データの値を用いてグレースケールで気象観測データを生成している。
図17(A)は、実測のドップラ速度データによる気象観測データである。
図17(B)は、一回目の距離方向の折り返し補正後のドップラ速度データによる気象観測データである。
図17(C)は、一回目の方位方向の除外値の置換後のドップラ速度データによる気象観測データである。
図18(A)は、二回目の距離方向の折り返し補正後のドップラ速度データによる気象観測データである。
図18(B)は、二回目の方位方向の除外値の置換後のドップラ速度データによる気象観測データである。
【0113】
図17(A)、
図17(B)に示すように、気象観測データ生成部10Aのデータ処理部11による一回目の距離方向の折り返しの補正を行うことによって、領域R(Ac1)における距離方向の折り返しは、補正される。
【0114】
次に、
図17(B)、
図17(C)に示すように、気象観測データ生成部10Aのデータ処理部12による一回目の方位方向の除外値の置換を行うことによって、局所的な位置P(Ac2)における方位方向の除外値は、置き換えられる。この際、方位方向において連続的に生じている除外値は、削除される。
【0115】
次に、気象観測データ生成部10Aのダミーデータ生成部13の処理を行うことによって、方位方向に並ぶドップラ速度データから算出した近似関数に基づいてダミーデータが生成される。そして、ダミーデータ追加部14の処理を行うことによって、中心DDに最も近い位置にダミーデータが追加される。
【0116】
次に、
図17(C)、
図18(A)に示すように、データ処理部11による二回目の距離方向の折り返しの補正を行うことによって、領域R(Ac1)における距離方向の折り返しは、再度補正される。この際、追加されたダミーデータは、領域R(Ac1)を含み実測のドップラ速度データが欠損していた方位方向によって規定される領域Rgに対して、距離方向の折り返しの基準となる。このため、領域R(Ac1)における距離方向の折り返しは、実際の気象状態に応じて正確に行われる。
【0117】
次に、
図18(A)、
図18(B)に示すように、気象観測データ生成部10Aのデータ処理部12による二回目の方位方向の除外値の置換を行うことによって、局所的な位置P(Ac2)における方位方向の除外値は、再度置き換えられる。
【0118】
このように、気象観測データ生成部10Aを用いることによって、実際の気象状態に応じた、正確で且つ視認し易い気象観測データを得られる。さらに、気象観測データ生成部10Aを用いることによって、ドップラ速度データの欠損があっても、実際の気象状態に応じた、正確で且つ視認し易い気象観測データを、より確実に得られる。
【0119】
なお、上述の説明において、距離方向の折り返しの検出に、中央値を用いる態様を示した。しかしながら、折り返しの検出に対して、統計的な基準値(統計的な尤もらしい代表値)となるものであればよく、例えば、平均値や最頻値等であってもよい。ただし、中央値を用いることによって、注目位置の中心側の所定範囲に、局所的に値の異なるドップラ速度データが存在していても、折り返しの検出の基準となる値は、大きく変化しない。これにより、折り返しの検出は、より正確且つ精度良く行われる。
【0120】
また、上述の説明では、距離方向の折り返しの検出に、差分値を用いる態様を示したが、注目位置のドップラ速度データの値と中央値等の統計的な基準値とが比較できる値(例えば、比等)を用いてもよい。
【0121】
また、上述の説明では、除外値の検出に、差分値を用いる態様を示したが、ドップラ速度データの値と近似値とが比較できる値(例えば、比等)を用いてもよい。
【0122】
また、上述の近似用の周期関数は、方位方向の一周を1周期とする関数であるが、気象レーダが配置される位置において、季節等による風の傾向が分かる場合には、この風の傾向に応じた近似関数を、適宜用いればよい。例えば、定常的に、気象レーダの右側と左側とで風の傾向が異なる箇所では、方位方向の半周を1周期とする関数を2つ用いて、近似関数として利用すればよい。
【0123】
また、上述の説明では、方位方向の除外値のデータの置換と、異常検出とを並列に行う態様を示した。しかしながら、異常検出のみを行う態様では、除外値のデータ置換部123を備えなくてもよい。また、除外値のデータ置換部123は、除外値のデータ置換に換えて、除外値を削除する処理を行ってもよい。
【符号の説明】
【0124】
10、10A、10B:気象観測データ生成部
11、12:データ処理部
13:ダミーデータ生成部
14:ダミーデータ追加部
15:異常気象検出部
20:気象レーダ装置
21:送信部
22:送受切替器
23:受信部
24:ドップラ速度データ算出部
111:中央値算出部
112:差分値算出部
113:折り返し検出部
114:補正部
121:近似関数算出部
122:除外値検出部
123:データ置換部
200:アンテナ
【用語】
【0125】
必ずしも全ての目的または効果・利点が、本明細書中に記載される任意の特定の実施形態に則って達成され得るわけではない。従って、例えば当業者であれば、特定の実施形態は、本明細書中で教示または示唆されるような他の目的または効果・利点を必ずしも達成することなく、本明細書中で教示されるような1つまたは複数の効果・利点を達成または最適化するように動作するように構成され得ることを想到するであろう。
【0126】
本明細書中に記載される全ての処理は、1つまたは複数のコンピュータまたはプロセッサを含むコンピューティングシステムによって実行されるソフトウェアコードモジュールにより具現化され、完全に自動化され得る。コードモジュールは、任意のタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体または他のコンピュータ記憶装置に記憶することができる。一部または全ての方法は、専用のコンピュータハードウェアで具現化され得る。
【0127】
本明細書中に記載されるもの以外でも、多くの他の変形例があることは、本開示から明らかである。例えば、実施形態に応じて、本明細書中に記載されるアルゴリズムのいずれかの特定の動作、イベント、または機能は、異なるシーケンスで実行することができ、追加、併合、または完全に除外することができる (例えば、記述された全ての行為または事象がアルゴリズムの実行に必要というわけではない)。さらに、特定の実施形態では、動作またはイベントは、例えば、マルチスレッド処理、割り込み処理、または複数のプロセッサまたはプロセッサコアを介して、または他の並列アーキテクチャ上で、逐次ではなく、並列に実行することができる。さらに、異なるタスクまたはプロセスは、一緒に機能し得る異なるマシンおよび/またはコンピューティングシステムによっても実行され得る。
【0128】
本明細書中に開示された実施形態に関連して説明された様々な例示的論理ブロックおよびモジュールは、プロセッサなどのマシンによって実施または実行することができる。プロセッサは、マイクロプロセッサであってもよいが、代替的に、プロセッサは、コントローラ、マイクロコントローラ、またはステートマシン、またはそれらの組み合わせなどであってもよい。プロセッサは、コンピュータ実行可能命令を処理するように構成された電気回路を含むことができる。別の実施形態では、プロセッサは、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、またはコンピュータ実行可能命令を処理することなく論理演算を実行する他のプログラマブルデバイスを含む。プロセッサはまた、コンピューティングデバイスの組み合わせ、例えば、デジタル信号プロセッサ(デジタル信号処理装置)とマイクロプロセッサの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと組み合わせた1つ以上のマイクロプロセッサ、または任意の他のそのような構成として実装することができる。本明細書中では、主にデジタル技術に関して説明するが、プロセッサは、主にアナログ素子を含むこともできる。例えば、本明細書中に記載される信号処理アルゴリズムの一部または全部は、アナログ回路またはアナログとデジタルの混合回路により実装することができる。コンピューティング環境は、マイクロプロセッサ、メインフレームコンピュータ、デジタル信号プロセッサ、ポータブルコンピューティングデバイス、デバイスコントローラ、または装置内の計算エンジンに基づくコンピュータシステムを含むが、これらに限定されない任意のタイプのコンピュータシステムを含むことができる。
【0129】
特に明記しない限り、「できる」「できた」「だろう」または「可能性がある」などの条件付き言語は、特定の実施形態が特定の特徴、要素および/またはステップを含むが、他の実施形態は含まないことを伝達するために一般に使用される文脈内での意味で理解される。従って、このような条件付き言語は、一般に、特徴、要素および/またはステップが1つ以上の実施形態に必要とされる任意の方法であること、または1つ以上の実施形態が、これらの特徴、要素および/またはステップが任意の特定の実施形態に含まれるか、または実行されるかどうかを決定するための論理を必然的に含むことを意味するという訳ではない。
【0130】
語句「X、Y、Zの少なくとも1つ」のような選言的言語は、特に別段の記載がない限り、項目、用語等が X, Y, Z、のいずれか、又はそれらの任意の組み合わせであり得ることを示すために一般的に使用されている文脈で理解される(例: X、Y、Z)。従って、このような選言的言語は、一般的には、特定の実施形態がそれぞれ存在するXの少なくとも1つ、Yの少なくとも1つ、またはZの少なくとも1つ、の各々を必要とすることを意味するものではない。
【0131】
本明細書中に記載されかつ/または添付の図面に示されたフロー図における任意のプロセス記述、要素またはブロックは、プロセスにおける特定の論理機能または要素を実装するための1つ以上の実行可能命令を含む、潜在的にモジュール、セグメント、またはコードの一部を表すものとして理解されるべきである。代替の実施形態は、本明細書中に記載された実施形態の範囲内に含まれ、ここでは、要素または機能は、当業者に理解されるように、関連する機能性に応じて、実質的に同時にまたは逆の順序で、図示または説明されたものから削除、順不同で実行され得る。
【0132】
特に明示されていない限り、「一つ」のような数詞は、一般的に、1つ以上の記述された項目を含むと解釈されるべきである。従って、「~するように設定された一つのデバイス」などの語句は、1つ以上の列挙されたデバイスを含むことを意図している。このような1つまたは複数の列挙されたデバイスは、記載された引用を実行するように集合的に構成することもできる。例えば、「以下のA、BおよびCを実行するように構成されたプロセッサ」は、Aを実行するように構成された第1のプロセッサと、BおよびCを実行するように構成された第2のプロセッサとを含むことができる。加えて、導入された実施例の具体的な数の列挙が明示的に列挙されたとしても、当業者は、このような列挙が典型的には少なくとも列挙された数(例えば、他の修飾語を用いない「2つの列挙と」の単なる列挙は、通常、少なくとも2つの列挙、または2つ以上の列挙を意味する)を意味すると解釈されるべきである。
【0133】
一般に、本明細書中で使用される用語は、一般に、「非限定」用語(例えば、「~を含む」という用語は「それだけでなく、少なくとも~を含む」と解釈すべきであり、「~を持つ」という用語は「少なくとも~を持っている」と解釈すべきであり、「含む」という用語は「以下を含むが、これらに限定されない。」などと解釈すべきである。) を意図していると、当業者には判断される。
【0134】
説明の目的のために、本明細書中で使用される「水平」という用語は、その方向に関係なく、説明されるシステムが使用される領域の床の平面または表面に平行な平面、または説明される方法が実施される平面として定義される。「床」という用語は、「地面」または「水面」という用語と置き換えることができる。「垂直/鉛直」という用語は、定義された水平線に垂直/鉛直な方向を指します。「上側」「下側」「下」「上」「側面」「より高く」「より低く」「上の方に」「~を越えて」「下の」などの用語は水平面に対して定義されている。
【0135】
本明細書中で使用される用語の「付着する」、「接続する」、「対になる」及び他の関連用語は、別段の注記がない限り、取り外し可能、移動可能、固定、調節可能、及び/または、取り外し可能な接続または連結を含むと解釈されるべきである。接続/連結は、直接接続及び/または説明した2つの構成要素間の中間構造を有する接続を含む。
【0136】
特に明示されていない限り、本明細書中で使用される、「およそ」、「約」、および「実質的に」のような用語が先行する数は、列挙された数を含み、また、さらに所望の機能を実行するか、または所望の結果を達成する、記載された量に近い量を表す。例えば、「およそ」、「約」及び「実質的に」とは、特に明示されていない限り、記載された数値の10%未満の値をいう。本明細書中で使用されているように、「およそ」、「約」、および「実質的に」などの用語が先行して開示されている実施形態の特徴は、さらに所望の機能を実行するか、またはその特徴について所望の結果を達成するいくつかの可変性を有する特徴を表す。
【0137】
上述した実施形態には、多くの変形例および修正例を加えることができ、それらの要素は、他の許容可能な例の中にあるものとして理解されるべきである。そのような全ての修正および変形は、本開示の範囲内に含まれることを意図し、以下の特許請求の範囲によって保護される。