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特許7019824入射する太陽光線を遮光する遮光絞りを備えた自動車両投光装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】入射する太陽光線を遮光する遮光絞りを備えた自動車両投光装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/40 20180101AFI20220207BHJP
   F21S 45/70 20180101ALI20220207BHJP
   F21S 45/10 20180101ALI20220207BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20220207BHJP
   F21S 41/32 20180101ALI20220207BHJP
   F21V 11/08 20060101ALI20220207BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20220207BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20220207BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20220207BHJP
   F21Y 101/00 20160101ALN20220207BHJP
【FI】
F21S41/40
F21S45/70
F21S45/10
F21S41/143
F21S41/32
F21V11/08
F21V7/00 320
F21Y115:10
F21Y115:30
F21Y101:00 300
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020541891
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 EP2019051435
(87)【国際公開番号】W WO2019158319
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-07-31
(31)【優先権主張番号】18156939.3
(32)【優先日】2018-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593045569
【氏名又は名称】ツェットカーヴェー グループ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】タウト、ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】ブラウナー、ニーナ
(72)【発明者】
【氏名】シュラーグル、マティアス
(72)【発明者】
【氏名】レンガウアー、クリストフ
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-076364(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102009010558(DE,A1)
【文献】特開2017-045616(JP,A)
【文献】特開2012-043797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/40
F21S 45/70
F21S 45/10
F21S 41/143
F21S 41/32
F21V 11/08
F21V 7/00
F21Y 115/10
F21Y 115/30
F21Y 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射する太陽光線を遮光するための遮光絞りを備えた自動車両投光装置であって、
遮光絞り(9)は、少なくとも1つの光源(3)を有する照明ユニット(2)と投射光学系(8)との間に配置されており、遮光絞り(9)は、照明ユニット(2)から前方へ放射される光のための光出射開口部(10)を有し、
照明ユニット(2)から出射する光は投射光学系(8)によって光像として交通空間へ投射され、遮光絞り(9)は投射光学系()の焦点面の外部に配置されており、
遮光絞り(9)の光出射開口部(10)の周縁部(13)には、少なくとも部分的に、照明ユニット(2)から来る、光像中に不所望の迷光の偏向を引き起こす偏向構造体(14、15、16、17、18、19)が形成されていること
を特徴とする、自動車両投光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車両投光装置において、
遮光絞り(9)の光出射開口部(10)の周縁部(13)は、偏向構造体として、少なくとも部分的に、面取りされたエッジ(17)を有し、
遮光絞り(9)の厚みにわたって延伸する面取部は、光軸及び照明ユニット(2)の方向へ予め設定された角度で傾けられていること
を特徴とする自動車両投光装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動車両投光装置において、
遮光絞り(9)の光出射開口部(10)の周縁部(13)は、少なくとも部分的に、光軸(a)の反対方向へ予め設定された角度で傾けられて屈曲されたアングル状屈曲部(18)を有すること
を特徴とする自動車両投光装置。
【請求項4】
請求項1に記載の自動車両投光装置において、
偏向構造体は、照明ユニット(2)から到来する擾乱的な辺縁光線(L)を偏向するための複数の山部(15)の形で構成されていること
を特徴とする自動車両投光装置。
【請求項5】
請求項4に記載の自動車両投光装置において、
光出射開口部(10)の長手延伸方向において、周縁部(13)の1つの辺部に20~400個の又は50~200個の山部(15)が形成されていること
を特徴とする自動車両投光装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れかに記載の自動車両投光装置において、
光源(3)と遮光絞り(9)との間には、前置光学系()が光路に配置されていること
を特徴とする自動車両投光装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載の自動車両投光装置において、
遮光絞り(9)は投射光学系(8)の焦点面の前方に配置されていること
を特徴とする自動車両投光装置。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載の自動車両投光装置において、
光源(3)はマトリックス状に配置された複数のLED(5)を含むこと
を特徴とする自動車両投光装置。
【請求項9】
請求項1~8の何れかに記載の自動車両投光装置において、
遮光絞り(9)は金属で構成されていること
を特徴とする自動車両投光装置。
【請求項10】
請求項1~8の何れかに記載の自動車両投光装置において、
遮光絞り(9)はプラスチックで構成されていること
を特徴とする自動車両投光装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の自動車両投光装置において、
遮光絞り(9)は光線吸収コーティングを有すること
を特徴とする自動車両投光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射する太陽光線を遮光するための遮光絞りを備えた自動車両投光装置であって、遮光絞りは、少なくとも1つの光源を有する照明ユニットと投射光学系との間に配置されており、遮光絞りは、照明ユニットから前方へ放射される光のための光出射開口部を有し、照明ユニットから出射する光は投射光学系によって光像として交通空間へ投射され、遮光絞りは投射光学系の焦点面の外部に配置されている、自動車両投光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車両(自動車等)の投光装置(前照灯等)が太陽に対向している場合、太陽光線は自動車両の光学素子(例えばレンズ等)と結びついて、いわゆる集光レンズ効果(Brennglaseffekt)によって、不可逆的な損傷を引き起こすほど強く投光装置の内部の部材を加熱し得る。例えば、プラスチック部材は焼焦げたり溶けたりし得るし、電子部品は機能障害を起こし得る。従って、有害な集光レンズ効果に対抗することを意図する種々の措置が考え出された。とりわけ、特別に形状形成された絞りによって、比較的高い位置にある太陽の光線を無害にすることが試みられており、このタイプの絞りは例えばDE 10 2005 021 704 A1に図示されかつ説明されている。
【0003】
文献DE 10 2013 214 990 A1は、円錐筒の形のレンズホルダであって、入射太陽光線によるこのレンズホルダの損傷を阻止するために、その内部に金属コーティングが施されたレンズホルダを記載している。レンズホルダの加熱を更に低減するために、レンズホルダは金属コーティングの領域に付加的に複数の細溝も有することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】DE 10 2005 021 704 A1
【文献】DE 10 2013 214 990 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(本発明の)対象となるタイプの遮光絞りが照明ユニット例えばLED光源モジュールの前方に配置されると(但し該遮光絞りは照明ユニットから前方に放射される光のための光出射開口部を有する)、擾乱的な副次的効果として、大抵は金属薄板の打ち抜きにより形成される光出射開口部の縁部(複数)において、走行路に投影される光像に不所望の影響を及ぼす迷光が生じる。なお、この明細書における遮光絞りという概念は、太陽の集光レンズ効果の回避のために使用されるカバー部材のために使用されるものであるが、このカバー部材は必ずしも金属薄板で製造される必要はないことに注意すべきである。カバー部材は、寧ろ、プラスチック製であることもあり、遮光絞りは、金属製であれプラスチック製であれ、光線ないし熱放射線が遮光絞りにおいて吸収されるよう、光線吸収性コーティングを有することができる。
【0006】
本発明の課題は、この効果を回避すること及びそれによって光像の質を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、冒頭に記載したタイプの自動車両投光装置によって解決される。即ち、本発明の一視点により、入射する太陽光線を遮光するための遮光絞りを備えた自動車両投光装置が提供される。該自動車両投光装置において、遮光絞りは、少なくとも1つの光源を有する照明ユニットと投射光学系との間に配置されており、遮光絞りは、照明ユニットから前方へ放射される光のための光出射開口部を有し、照明ユニットから出射する光は投射光学系によって光像として交通空間へ投射され、遮光絞りは投射光学系の焦点面の外部に配置されており、遮光絞りの光出射開口部の周縁部には、少なくとも部分的に(少なくとも一部の領域に:bereichsweise)、照明ユニットから来る、光像中に不所望の迷光(擾乱光)の偏向を引き起こす偏向構造体が形成されていることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明によって、投光装置の照明ユニットないし光源から出射する光は、遮光絞りの光出射開口部の周縁部において投射光学系の方向へは最早反射されず、かくして、走行路に投射される光像中における不所望の迷光は明白に低減されることができる。
【0009】
製造技術的に簡単な一形態では、遮光絞りの光出射開口部の周縁部は、偏向構造体として、少なくとも部分的に(少なくとも一部の領域に:bereichsweise)、面取りされたエッジを有し、遮光絞りの厚みにわたって延伸する面取部は、光軸及び照明ユニットの方向へ予め設定された角度で傾けられるよう、構成可能である。
【0010】
遮光絞りの光出射開口部の周縁部が少なくとも部分的に(少なくとも一部の領域に)照明ユニットの方向及び光軸の反対方向へ予め設定された角度で傾けられて屈曲されたアングル状屈曲部を有する一形態は、格別に価格的に好都合にかつ容易に製造可能である。
【0011】
本発明の他の有効な一形態では、偏向構造体は、照明ユニットから到来する擾乱的な辺縁光線を偏向するための複数の山部(凸部)の形で構成されている。この場合、光出射開口部の長手延伸方向において、周縁部の1つの辺部に20~400個の、とりわけ50~200個の山部が形成されていると目的に適することが判明した。
【0012】
本発明は、光源と遮光絞りとの間において前置光学系が光路に配置されている投光装置において格別に適する。
【0013】
光学的観点及び結像技術的利点の観点から、遮光絞りは投射レンズの焦点面の前方に配置されていると好都合である。
【0014】
本発明は、光源がマトリックス状に配置された複数のLEDを含む場合、格別な利点も提供する。
【0015】
実用上信頼性のある一形態では、遮光絞りは金属で構成されている。一方、他の場合では、遮光絞りがプラスチックで構成されていると有利であり得る。
【0016】
両者の場合(遮光絞りが金属性である場合及びプラスチック製である場合)、遮光絞りは、光線ないし熱放射線を吸収するために及びこれらを反射しないために、光線吸収コーティングを有することはしばしば望ましい。
【0017】
ここに、本発明の好ましい形態を示す。
(形態1)上記本発明の一視点参照。
(形態2)形態1の自動車両投光装置において、遮光絞りの光出射開口部の周縁部は、偏向構造体として、少なくとも部分的に、面取りされたエッジを有し、
遮光絞りの厚みにわたって延伸する面取部は、光軸及び照明ユニットの方向へ予め設定された角度で傾けられていることが好ましい。
(形態3)形態1の自動車両投光装置において、遮光絞りの光出射開口部の周縁部は、少なくとも部分的に、光軸の反対方向へ予め設定された角度で傾けられて屈曲されたアングル状屈曲部を有することが好ましい。
(形態4)形態1の自動車両投光装置において、偏向構造体は、照明ユニットから到来する擾乱的な辺縁光線を偏向するための複数の山部の形で構成されていることが好ましい。
(形態5)形態4の自動車両投光装置において、光出射開口部の長手延伸方向において、周縁部の1つの辺部に20~400個の又は50~200個の山部が形成されていることが好ましい。
(形態6)形態1~5の何れかの自動車両投光装置において、光源と遮光絞りとの間には、前置光学系が光路に配置されていることが好ましい。
(形態7)形態1~6の何れかの自動車両投光装置において、遮光絞りは投射レンズの焦点面の前方に配置されていることが好ましい。
(形態8)形態1~7の何れかの自動車両投光装置において、光源はマトリックス状に配置された複数のLEDを含むことが好ましい。
(形態9)形態1~8の何れかの自動車両投光装置において、遮光絞りは金属で構成されていることが好ましい。
(形態10)形態1~8の何れかの自動車両投光装置において、遮光絞りはプラスチックで構成されていることが好ましい。
(形態11)形態9又は10の自動車両投光装置において、遮光絞りは光線吸収コーティングを有することが好ましい。
本発明は、更なる利点及び従来技術との相違と共に、以下に、実施例も用いてより詳細に説明されかつ図示される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】投光装置の一例の構成要素の、具体的には、入射する太陽光線の遮光のための遮光絞りと投射レンズとを備えた照明ユニットの模式図。
図2図1に示した構成要素を備えた本発明の対象となるタイプの投光装置の模式的断面図。なお、幾つかの重要な光路も記載されている。
図3】本発明の第1実施形態の遮光絞りの正面図。
図4】第1実施形態の偏向構造体を示す図3の矢視IV-IV断面図。
図5】本発明の第2実施形態の遮光絞りの正面図。
図6】第2実施形態の偏向構造体を示す図4の矢視VI-VI断面図。
図7図6の偏向構造体の拡大詳細図。
図8図5図7に示した本発明の第2実施形態による遮光絞りを備えた投光装置の一例の例示的光分布。
図9】従来技術の遮光絞りを備えた投光装置の一例の例示的光分布。
図10】互いに異なって構成された遮光絞りの図4に類似する断面図。aは従来技術。b~fは本発明による種々の実施形態である。
【実施例
【0019】
図1及び図2には、本発明の説明のために重要な構成要素を備えた本発明の投光装置(前照灯等)1の一例が模式図で示されている。投光装置は、調節ないし調整装置、給電装置等のような複数の更なる不図示の構成要素を有することは当業者には明らかである。本発明との関連において、「投光装置(Scheinwerfer)」という概念が使用される場合、この概念は、上位の投光装置にコンビネーションで含まれることも可能な個別投射モジュールも含むものとする。
【0020】
図1及び図2以降において、同じ又は比肩可能な(同等の)要素に対しては、説明及び図示の容易化のために、同じ図面参照符号が使用される。
【0021】
(特許)請求の範囲において使用される図面参照符号は、専ら(特許)請求の範囲の可読性及び本発明の理解の容易化のためのものであり、如何なる意味においても本発明の保護範囲に影響を与える(限定する)性質は有しない。
【0022】
例えば「上方」、「下方」、「前方」、「下」、「上」等のような位置又は方向(配向)に関する概念は、本書においては専ら単純化のために選択されており、場合によっては図面の記載に関するものであるが、必ずしも使用状態ないし組立状態に関するものではない。
【0023】
投光装置1は、光源3として回路基板4上に複数のLED5がマトリックス状に配置されている照明ユニット2を有する。LED5には、支持部材7によってこの場合回路基板4に支持されている前置光学系6が前方に(光の放射方向で見て下流側に)配置されている。LED5は、その光を導光性の前置光学系6内に入射し、前置光学系6は前方に所望の光パターンを放出する。この光パターンは、この例では一部材からなる投射光学系8によって交通空間へ投射される。投射光学系8と照明ユニット2との間には、入射する太陽光線を遮光するための遮光絞り9が配置されている。遮光絞り9には、光出射開口部10が形成されている。図2から分かるように、個々の部材はここでは極めて概略的にのみ記載されているハウジング11に収容ないし支持されている。
【0024】
図1及び図2に記載されている投光装置1は、その遮光絞り9の具備に関しては従来技術に相応する。以下に、原理的な光路を用いて、ここで生じる不所望の迷光の問題を説明する。
【0025】
照明ユニット2から放出される光の光路を図2に記号Lで表す。この光ないし光路Lは前置光学系6の前側から遮光絞り9の光出射開口部10を通り抜け、更に投射光学系8を通って自動車両の前方の交通空間へと進行(延伸)する。太陽光ないし太陽光線は、この例では凡そ45°の角度で入射するが、図2では記号Lで表されている。入射する太陽光線は投射光学系8によって集束(集光)されるが、遮光絞り9が無ければ、焦点ないし集光スポットに集中されて前置光学系の前側に当射し、そこで、具体的にはしばしば感熱性プラスチックから形成される例えば支持部材7のような構成要素の過熱によって、損傷を引き起こし得るであろう。そのような過熱は、例えば調節された構成要素の歪みのような損傷を引き起こし得るだけではなく、そのうえ、局所的燃焼から車両燃焼に至るまでの燃焼を引き起こし得る。これは、投光装置光学系の集光レンズ効果と呼ばれている。
【0026】
尤も、太陽が過度に低い位置にない場合、太陽光線Lは遮光絞りに当射する。遮光絞りはその目的に応じて耐熱性並びに吸収(吸光)性及び/又は反射性に構成されることができる。図2には、遮光絞り9が無ければ照明ユニット2にまで到達すると想定される光線は記号L’で表されている。
【0027】
遮光絞り9は、光像を走行路に生成することが意図される光線Lには影響を及ぼさないが、実用上、決して完璧(理想的)ではない前置光学系6からは、それ自体不所望な辺縁光線Lも出射し、辺縁光線Lは、光出射開口部10の周縁部13の実質的に水平に延伸する内側境界面12において、投射光学系8の方向へ迷光LRSとして偏向され、光像の領域(複数)に到達し、そこで、不所望のアーチファクトを生成する。
【0028】
この問題に対処するために、本発明は、今や、遮光絞りの光出射開口部の周縁部に、少なくとも部分的に(少なくとも一部の領域に:bereichsweise)、該周縁部において生成する迷光を減少する偏向構造体を形成するよう構成されている。
【0029】
これについて、偏向構造体の本発明の第1実施形態を示す図3及び図4を参照する。図3によれば、遮光絞り9において、光出射開口部10ないしその周縁部13は、所望の光像を生成する光路がカット(遮断)されないよう、構成されている。図4の断面図から分かるように、周縁部13は、光軸a(の延伸方向)とは反対方向に予め設定された角度で傾けられてアングル状に屈曲されており、その結果、アングル状に屈曲されたエッジ領域14が形成されている。周縁部13のこのアングル状屈曲は必ずしも周縁部の全体にわたって行われる必要はなく、大抵は、部分的な(一部の領域における)、好ましくは周縁部の下側部分領域における、アングル状屈曲で充分である。アングル状屈曲が照明ユニット2の方向に向かって延在しているか又は投射光学系8の方向に向かって延在しているかについては、本質的に重要ではない。これについては、更に以下においてより詳細に説明する。図4の断面図から分かるように、本発明の基礎をなす原理は、照明ユニット2ないしその前置光学系6から入射する辺縁光線Lは、光出射開口部10の周縁部13の最早水平には延伸しない内側境界面12において投射光学系の方向へは最早反射されず、この例では、後方の照明ユニットの方向(Lで示す)へ反射される点にある。かくして、辺縁光線Lに基づく光像中の不所望の光アーチファクトは回避される。
【0030】
アングル状屈曲の程度に関し、その角度は、投射する辺縁光線Lが投射光学系8に向かって前方に偏向されないよう、十分に大きくなければならない。必要な最小角度は、装置の夫々の幾何学的構造に依存し、とりわけ遮光絞りの光出射開口部の寸法に、その厚みに及び前置光学系の出射面に対する遮光絞り9の位置に依存する。
【0031】
遮光絞り9は、光像の周縁(外周)を決定(画成)し、それ故シャープに結像されるべき絞りとは異なり、投射光学系8の焦点面には配置されず、該焦点面の外部に、有利にはその前方に配置されることに注意すべきである。光像の境界は、照明ユニット2ないし前置光学系6によって規定(決定)され、遮光絞り9の光出射開口部によっては規定されない。投射光学系の焦点面における絞りの一例は本出願人のEP 2 742 282 B1に見出される。
【0032】
本発明の枠内にある偏向構造体の他の一形態を図5図6及び図7を用いて説明する。この場合も、遮光絞り9には、周縁部13を有する光出射開口部10が形成されているが、この周縁部はその上側領域及び下側領域に、照明ユニット2から到来する擾乱的な辺縁光線Lを偏向する複数の山部(凸部)15を有する。図7に示す拡大図を考慮すれば、交互に現れる山部15と谷部(凹部)16を有する波状縁部と称することもできる。図5図7には、照明ユニット2から到来する夫々2つの不所望の辺縁光線Lと、山部15において偏向ないし散乱された2つの光線Lが記載されている。この偏向された光線
の殆どは投射光学系8に到達せず、そのため、これらの偏向光線は光像中に擾乱(ノイズ)を生成することもない。図7から理解できるように、「山部(Zacken)」という概念は必ずしも「頂部が尖った」隆起部を意味せず、至極一般的に隆起部を含むものであり、典型的には、光出射開口部の1つの長辺に20~400個の、大抵は50~200個のそのような隆起部が形成されている。
【0033】
本発明の枠内で具現化された一実用例を示すために、遮光絞り9のほぼ矩形状の光出射開口部10が幅80mm及び高さ18mmを有し、かつ、山部15が0.5mm~2mmの高さ及び幅を有する一例を挙げる。図8及び図9から、即ち、本発明の例示的実施形態による投光装置について測定された光分布を示す図8及び光出射開口部10の周縁部に山部15を有しないことを除いて同じ投光装置について測定された光分布を示す図9から、所望の光像の上側及び下側に迷光領域があり、そのうち上側迷光領域が格別に強く形成されていることが分かる。周縁部に山部を有する本発明の既述の構造を使用する場合、即ち図8の場合、不所望の迷光の最大光強度は162cd(カンデラ)に達するが、山部を備えない構造の場合は、323cdにまで達する。
【0034】
図10のa~fを用いて、本発明の部分的にまだ説明されていない変形形態の種々の構造を説明する。
【0035】
図10aは、再び図2の細部において、辺縁光線Lの不所望の反射を、前方の投射光学系の方向への偏向光線Lとして示す。図10bは、遮光絞り9の周縁部が偏向構造体として少なくとも部分的に(少なくとも一部の領域に)面取りされたエッジ部17を有し、遮光絞り9の厚みにわたって延在する面取り部が光軸a及び照明ユニットの方向へ予め設定された角度をなして傾けられている一構造を示す。ここで、次の図10cの場合、この角度の傾きは、図10bの場合の傾きとは逆向き(逆方向)であるが、何れの場合も、到来する辺縁光線Lは偏向光線Lとして投射光学系から遠ざけられる(投射光学系に入射されない)。
【0036】
図10dと図10eは、図4に類似してアングル状に屈曲されたエッジ領域を示す。ここで、アングル状屈曲部18は、図10dの場合、後方の照明ユニットの方向に延在している(屈曲されている)のに対し、図10eの場合は、前方の投射光学系(の方向)に向かって延在している(屈曲されている)。到来する辺縁光線L及び偏向光線Lの光線推移から分かるように、偏向構造体の作用は、図10b及び図10cの面取部の場合のように、何れの場合も、比肩可能(同等)でありかつ類似している。
【0037】
最後に、図10fは、周縁部が少なくとも部分的に(少なくとも一部の領域に)刃先19の形態で先細テーパー化されている一構造を示す。この場合も、迷光の低減の効果は明白である。なぜなら、辺縁光線Lを偏向光線Lとして投射光学系の方向へ導き得るようなフラットな領域は存在せず、寧ろ、図10cによる構造の場合のような面取りエッジ[19]が有効に作用するからである。
【0038】
本発明についての本書の説明の枠内において特別な照明ユニット2の一例、即ち、比較的多数のLEDと複数の光ガイドを備えた前置光学系とを有するいわゆる「マトリックス型投光装置(前照灯)」のための照明ユニットが図示されかつ説明されてはいるが、本発明は如何なる意味においても特定の照明ユニットに限定されないことは明らかである。前置光学系もLEDのマトリックス状配置も本発明の具現化のために不可欠というわけではなく、例えば、LEDの代わりに、光コンバータを備えたレーザダイオード、レーザビームによる走査も伴うレーザダイオード、ガス放電ランプ等のような他のタイプの照明手段を使用することができる。
【0039】
ここに、本発明の可能な態様を付記する。
[付記1]入射する太陽光線を遮光するための遮光絞りを備えた自動車両投光装置。
遮光絞りは、少なくとも1つの光源を有する照明ユニットと投射光学系との間に配置されている。
遮光絞りは、照明ユニットから前方へ放射される光のための光出射開口部を有する。
照明ユニットから出射する光は投射光学系によって光像として交通空間へ投射される。
遮光絞りは投射光学系の焦点面の外部に配置されている。
遮光絞りの光出射開口部の周縁部には、少なくとも部分的に、照明ユニットから来る、光像中に不所望の迷光の偏向を引き起こす偏向構造体が形成されている。
[付記2]上記の自動車両投光装置において、
遮光絞りの光出射開口部の周縁部は、偏向構造体として、少なくとも部分的に、面取りされたエッジを有する。
遮光絞りの厚みにわたって延伸する面取部は、光軸及び照明ユニットの方向へ予め設定された角度で傾けられている。
[付記3]上記の自動車両投光装置において、遮光絞りの光出射開口部の周縁部は、少なくとも部分的に、光軸の反対方向へ予め設定された角度で傾けられて屈曲されたアングル状屈曲部を有する。
[付記4]上記の自動車両投光装置において、偏向構造体は、照明ユニットから到来する擾乱的な辺縁光線を偏向するための複数の山部の形で構成されている。
[付記5]上記の自動車両投光装置において、光出射開口部の長手延伸方向において、周縁部の1つの辺部に20~400個の、とりわけ50~200個の山部が形成されている。
[付記6]上記の自動車両投光装置において、光源と遮光絞りとの間には、前置光学系が光路に配置されている。
[付記7]上記の自動車両投光装置において、遮光絞りは投射レンズの焦点面の前方に配置されている。
[付記8]上記の自動車両投光装置において、光源はマトリックス状に配置された複数のLEDを含む。
[付記9]上記の自動車両投光装置において、遮光絞りは金属で構成されている。
[付記10]上記の自動車両投光装置において、遮光絞りはプラスチックで構成されている。
[付記11]上記の自動車両投光装置において、遮光絞りは光線吸収コーティングを有する。

【符号の説明】
【0040】
1 投光装置
2 照明ユニット
3 光源
4 回路基板
5 LED
6 前置光学系
7 支持部材
8 投射光学系
9 遮光絞り
10 光出射開口部
11 ハウジング
12 境界面
13 周縁部
14 アングル状屈曲エッジ領域
15 山部
16 谷部
17 面取エッジ部
18 アングル状屈曲部
19 刃先

偏向光線
光路
辺縁光線
RS 迷光
太陽光線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10