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特許7019857情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4069 20060101AFI20220207BHJP
【FI】
G05B19/4069
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021120008
(22)【出願日】2021-07-20
【審査請求日】2021-07-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓士
(72)【発明者】
【氏名】入野 成弘
(72)【発明者】
【氏名】今別府 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】樋口 洋介
(72)【発明者】
【氏名】榛葉 祐太
(72)【発明者】
【氏名】河合 謙吾
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-275588(JP,A)
【文献】特開2021-047556(JP,A)
【文献】特開2017-033587(JP,A)
【文献】特開2019-171561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/4069
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械に含まれる複数の要素の中で、ボルト結合、移動または回転を伴う転がり結合、送りを伴う結合、及び移動を伴う滑り結合の少なくとも1つの結合が介在している2要素を特定する特定部と、
前記特定部で特定した2要素を変数に含むモデルの立式をフーリエ級数を用いて行
い、立式したモデルを用いて時間領域の力の変化を算出するシミュレーション部と、
を備えた情報処理装置。
【請求項2】
前記2要素は、特定の周波数において異なる加振力を与えた場合に、応答特性の差が所定値以上ある2要素である請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記2要素は、特定の周波数において異なる加振力を与えた場合に、前記加振力の振幅の変化に対して、剛性または減衰が変化する2要素である請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
特定部が、工作機械に含まれる複数の要素の中で、ボルト結合、移動または回転を伴う転がり結合、送りを伴う結合、及び移動を伴う滑り結合の少なくとも1つの結合が介在している2要素を特定する特定ステップと、
シミュレーション部が、前記特定ステップで特定した2要素を変数に含むモデルの立式をフーリエ級数を用いて行い、立式したモデルを用いて時間領域の力の変化を算出するシミュレーションステップと、
を含む情報処理方法。
【請求項5】
工作機械に含まれる複数の要素の中で、ボルト結合、移動または回転を伴う転がり結合、送りを伴う結合、及び移動を伴う滑り結合の少なくとも1つの結合が介在している2要素を特定する特定ステップと、
前記特定ステップで特定した2要素を変数に含むモデルの立式をフーリエ級数を用いて行い、立式したモデルを用いて時間領域の力の変化を算出するシミュレーションステップと、
をコンピュータに実行させる情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、線形関係式およびテーブルを用いて入力データから変位を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-47556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献に記載の技術では、非線形領域において、数式を用いずに、ステージの変位と転がり摩擦とを対応付けたテーブルを用いて、非線形特性を表現していた。
本発明の目的は、上述の課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明にかかる情報処理装置は、
工作機械に含まれる複数の要素の中で、ボルト結合、移動または回転を伴う転がり結合、送りを伴う結合、及び移動を伴う滑り結合の少なくとも1つの結合が介在している2要素を特定する特定部と、
前記特定部で特定した2要素を変数に含むモデルの立式をフーリエ級数を用いて行い、立式したモデルを用いて時間領域の力の変化を算出するシミュレーション部と、
を備えた。
上記目的を達成するため、本発明にかかる情報処理方法は、
特定部が、工作機械に含まれる複数の要素の中で、ボルト結合、移動または回転を伴う転がり結合、送りを伴う結合、及び移動を伴う滑り結合の少なくとも1つの結合が介在している2要素を特定する特定ステップと、
シミュレーション部が、前記特定ステップで特定した2要素を変数に含むモデルの立式をフーリエ級数を用いて行い、立式したモデルを用いて時間領域の力の変化を算出するシミュレーションステップと、
を含む情報処理方法。
上記目的を達成するため、本発明にかかる情報処理プログラムは、
工作機械に含まれる複数の要素の中で、ボルト結合、移動または回転を伴う転がり結合、送りを伴う結合、及び移動を伴う滑り結合の少なくとも1つの結合が介在している2要素を特定する特定ステップと、
前記特定ステップで特定した2要素を変数に含むモデルの立式をフーリエ級数を用いて行い、立式したモデルを用いて時間領域の力の変化を算出するシミュレーションステップと、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、工作機械内の2要素間で、入出力関係が非線形と判断できる場合でも、正確なシミュレーションを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図2】第2実施形態に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図3】第2実施形態に係る情報処理装置による測定結果を示す図である。
図4】第2実施形態に係る情報処理装置によってモデル化される工作機械の一例を示す図である。
図5】第2実施形態に係る情報処理装置によって測定される剛性Kおよび減衰Cの振幅に対する変化を示す図である。
図6】実験と分析での、周波数応答特性の類似度を示す図である。
図7】主軸軸受部の非線形特性を測定した5軸マシニングセンタの構成を示す図である。
図8図7で示された5軸マシニングセンタの主軸軸受部の剛性Kと減衰Cの測定値である。
図9図7で示された5軸マシニングセンタの主軸軸受部における、測定した周波数応答特性と、非線形モデルで同定した周波数応答特性をそれぞれ示す図である。
図10】非線形モデルで同定した周波数応答特性のヒステリシス的な非線形性を示す図である。
図11】実際の切削工程での切削力の測定結果とシミュレーションの結果を比較した図である。
図12】第2実施形態に係る情報処理装置の処理の流れを説明するフローチャートである。
図13】切削力と工具の変位との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0009】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としての情報処理装置100について、図1を用いて説明する。図1に示すように、情報処理装置100は、要素特定部101とシミュレーション部102とを含む。
【0010】
要素特定部101は、工作機械150に含まれる複数の要素の中で、加振力に対する応答特性が非線形となる2要素を特定する。また、シミュレーション部102は、要素特定部101で特定した2要素間での入力と変位の間の非線形な関係をモデル化し、加工シミュレーションを行う。
【0011】
以上の構成によれば、非線形関係にある2要素間の入出力を正確にシミュレーションできる。
【0012】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態に係る情報処理装置200について、図2を用いて説明する。図2は、情報処理装置200の構成を示すブロック図である。情報処理装置200は、周波数応答測定部201と、非線形判定部202と、要素特定部203と、定義部204と、算出部205と、シミュレーション部206とを備える。
【0013】
周波数応答測定部201は、工作機械250中の一つの要素に加振装置(SHAKER)によって加えられた力に対する、他の要素における応答特性(剛性の逆数complience)の動的成分(周波数ごとの違い)を測定する。加振装置(SHAKER)は、対象に対して連続的に振動を加えるが、時間軸に沿って振動の周波数を変えることができる。応答特性は、入力振幅に応じて変化する。
【0014】
非線形判定部202は、抽出した2要素の加振力に対する応答特性が非線形となるか否かを判定する。例えば入力振幅が0から1まで変化するときに、周波数応答特性が変わる場合、非線形性と判定できる。そして、要素特定部203は、非線形となる2要素をマーキングする。
【0015】
上記2要素は、加振力に対する依存性が所定値以上異なる2要素であって、例えば、ボルト結合、移動または回転を伴う転がり結合、送りを伴う結合、移動を伴う滑り結合が介在している2要素である。上記2要素は、特定の周波数において異なる加振力を与えた場合に、異なる力を与えた場合の周波数応答特性の差が所定値以上となる2要素である。上記2要素間では、加振力の振幅の変化に対して、剛性または減衰が大きく変化する。ボールねじなど複数部材の接触が介在する場合、その2要素は非線形と推定できる。定義部204は、上記のように特定された2要素間で非線形に変化する剛性Kと減衰Cとを、測定値に基づいてそれぞれ定義する。
【0016】
算出部205は、定義した剛性Kと減衰Cを変数に持つ運動方程式をフーリエ級数を用いて立式し、一方の要素に加えられた変位に対する要素の力に対する他方の要素の変位の関係を関数で表す。
【0017】
シミュレーション部206は、上記の2要素間での入出力関係をモデル化する。この際、測定上の値と、シミュレーションの値が合うように、モデルの剛性K、減衰Cを決定する。決定された剛性K、減衰Cを含むモデルを用いて、加工シミュレーション(時間領域の力の変化算出)を行う。具体的には、シミュレーション部206は、算出部205が導き出した多価関数に基づいて、上記の2要素の挙動を、時間軸でシミュレートする。ここで、関数fは、一方の要素に加えられる力の振幅ξと位相φに対して、以下の式で表され、剛性Kと減衰Cが以下の式で定義される。
【数1】



非線形関係にある2要素と、線形関係にある2要素で異なるタイプのモデルを用いてシミュレーションを行う。
【0018】
変位計または加速度計を用いて、工作機械内部の様々な2要素の加速度を測定し、周波数領域で2階積分を行って変位の差分を算出することで、相対的な周波数応答特性を得る。図3は、テーブル周りの各要素のZ軸方向の相対的な周波数応答特性を示したものである。
【0019】
図3は、2要素間の加振力に対する変形しやすさ(compliance)を表したグラフである。それぞれ(a)サポートベアリング、(b)ボールねじ2箇所、(c)ボールねじとナット、(d)LM(Linear Motion)ガイドとキャリッジ(ガイドブロック)、(e)テーブル上面と下面、(f)テーパコーンの2箇所で、力の大きさによって周波数応答振幅がどう違うかを示している。
【0020】
次に、加振力に対する周波数応答特性が、他の2点と異なり、非線形な2要素を特定する。図3(c)(d)を見ればわかるように、リニアガイドのボールねじとナット、および、ガイドブロックとリニアガイドのレールとの間では、加振力によって発生する周波数応答特性が他の2要素間とは異なることがわかった。具体的には、異なる加振力(ここでは50Nと150N)に対して、変形しやすさに所定値以上の差が生じた2要素を特定する。
【0021】
このような工作機械の振動解析では、ボールねじとリニアガイドとの間、力に依存した周波数応答特性が非線形であることが分かった。そこで、図4に示すように、テーブルz軸をボールねじ-ナット部とリニアガイドブロック-レール部に分割し、線形モデルとみなせる要素間については有限要素法などを適用する。リニアガイドレールとボールねじという接触する2要素の剛性と減衰は非線形モデルとしてモデル化される。それらの非線形入出力関係を考慮してモデル化すると、運動方程式は以下の式(1)式(2)で表される。
【数2】



ここで、ここでfはモーダル加振力ベクトル、uはモーダル変位ベクトル、Cはモーダル減衰行列、そしてKはモーダル剛性行列である。ベッド側の要素に関するパラメータは下付きAが付されている、テーブルは下付きBで表されている。
【0022】
物理座標系での力とモーダル加振力Fとの関係は、質量を正規化したモーダル行列φを用いて、式(3)および式(4)で表される。
【数3】





ここで、ftblは機械のテーブル側にかかる力を表しておりfstrはベッド側の構造体にかかる力である。内力fGID、fBSは、それぞれリニアガイドとボールねじに存在する。ベッドとリニアガイドの接触部での変位については次の関係式(5)および式(6)が成り立つ。
【数4】



ここで、utbiとustrは、テーブルとベッドの変位をそれぞれ表している。同様に、ublkとurailはガイドブロックとレールの変位を表しており、unutとuscwはボールねじのナットとスクリューの変位を表している。それぞれ接触要素による非線形特性を有する。ベッドとリニアガイドの接触部の特性は、非線形特性である剛性KNLGと減衰CNLGを用いて以下の式(7)で表される。ここで相対変位uGIDは、ガイドブロックとガイドレールの接触部に荷重がかかったときに発生する。剛性KNLGと減衰CNLGは、変位の振幅に依存する。
【数5】




同様にベッドとボールねじの接触部での変位については、次の式(9)(10)が成り立つ。
【数6】



これらの式では、剛性KNLと減衰CNLは、変位振幅の関数であり、運動方程式は非線形であり、非線形方程式を反復法で解くことで、周波数応答振幅と非線形剛性・減衰項の変位振幅との誤差を低減し、加振力依存の周波数応答を得ることができる。また、各加振力に応じて求めた共振周波数と振幅が実験値に近くなるように解析を行った。図5(a)は、ボールスクリューおよびリニアガイドの剛性の振幅に対する変化を示し、図5(b)は、ボールスクリューおよびリニアガイドの減衰の振幅に対する変化を示している。つまり、それぞれ式(7)と式(9)の非線形複素剛性の実数部分および虚数部分を示していることになる。また、図6(a)は、横型マシニングセンターテーブルの加振力依存性による非線形周波数応答に関する実験値、(b)は非線形解析結果を表している。図6(b)に示すように、この解析で得られた周波数応答特性の共振ピークは、実測値よりもやや低いが、加振力の増加に伴う周波数応答のピーク振幅は60Hz付近と130Hz付近であり、実測結果とよく一致していることがわかる。
【0023】
同様に,図7に示す5軸マシニングセンタの主軸軸受部の非線形特性を、電磁加振器を用いて確認した(図8)。加振点701は、工具ホルダ上とした。測定した周波数応答特性と、非線形モデルを用いて同定した周波数応答特性をそれぞれ図9(a)(b)に示す。この結果は,良好な一貫性を示している。加振力の増加に伴い共振のピーク振幅は増加したが、共振の周波数応答は測定・解析ともに減少した。
【0024】
次に、非線形特性を持つ機械構造の周波数応答解析を拡張するために,切削加工の時間領域シミュレーションを適用した。このシミュレーションでは、周波数領域で振幅の関数として得られた非線形複素剛性特性を、時間領域では変位と復元力特性の関係として表す。
【0025】
非線形の復元力特性は、フーリエ変換により式(11)のように表すことができる。前章で得られた周波数応答特性をハーモニックバランス法による応答振幅とすると、非線形複素剛性は、変位振幅の大きさに対するフーリエ係数として、式(12)の関係で表すことができる。この関係を利用して、時間領域での復元力を表すことができる。ここでξは変位の振幅であり、φ=ωt + ρである。
【0026】
【数7】



図3に示した測定結果に合うように、図8(式12)のようにKとCを定義した。これにより、式11を時間の関数にすることが可能となった。
【0027】
F(x)という関数に、x=ξcosφという入力があった場合、出力は、波形のひずみを持つ(遅れが生じ、位相のずれになる)。
【0028】
フーリエ級数の式(11)の係数A、Bは、振幅ξによって変化する。このようにK、Cを振幅ξの関数に落とし込むことにより、復元力を図10のように表すことができる。
【0029】
復元力は、図10に示すようにヒステリシス的な非線形性を示す。図10に示す楕円の面積は、振幅に応じて変化する減衰を示し、運動の中でエネルギーが失われていることを表している。図10のように得られた非線形の復元力特性に、工作機械の構造システムの運動方程式を適用することにより、時間領域で解析する。
切削シミュレーションは、軸受部の機械構造モデルに線形剛性と非線形特性のそれぞれを適用して行う。例えばシミュレーションは、以下の条件で行うことができる:工具径φ20,フルートの数:4、ねじれ角:45°、ワークの材質:S45C、回転速度:1850min-1、送り速度fz:500mm/min、切り込み深さae:0.1、0.2、0.3、切り込み深さap:10mm。シミュレーションにおける切削力は、非特許文献1に開示された技術によってモデル化される。そして、非特許文献2に開示された多重再生効果を導入し,チャタリングによる振動振幅の増加によって工具がワークから離れることを考慮して、振動による切削厚さの変位Δh(t)は、下記の式(13)のように計算される。
【数8】



ここでuT(t)とuW(t)は,それぞれ工具とワークの変位である。φはそれぞれの刃先角度である。fzは送り速度、nは、通り過ぎた歯の数である。この計算には数値積分を用いる。復元力は式(11)を用いて計算し、位相シフト項Bは、求めた共振周波数を用いて粘性減衰として計算した。
【0030】
図11は、実際の切削工程での切削力の測定結果とシミュレーションの結果を比較したものである。図11(a)は、実際の切削加工における切削力の測定結果である。非線形特性に基づくシミュレーションの結果を図11(b)に示す。
【0031】
ここで、切削力Fは、図13に示すように、切削抵抗Kbと切削深さの積で表される。
F=Kb(h+Δh)
ここで、Kbは計算で出せる。h(設定された切削深さ)はあらかじめ分かっている。すなわち振動による切削変位Δhが分かれば切削力を導き出すことができる。
【0032】
そこで、切削変位Δhに上記の式(13)を代入し、さらにuT(t)とuW(t)として、それぞれ工具とワークの測定変位を用いてF(t)を導くと、図11(a)に示す形状となる。一方、uT(t)とuW(t)に、工具とワークの非線形推定モデルを用いた推定変位を代入すると、図11(b)に示す形状となる。
【0033】
一方、図8(a)(b)にそれぞれ示した剛性KNLと減衰CNLの最大値および最小値を用いて、複素剛性値を線形複素剛性としてuT(t)とuW(t)を計算した結果を図11(c)と(d)に示す。つまり、図11(c)および(d)は、従来の線形システムに基づくシミュレーションの結果である。
【0034】
図11(b)は、切り込み幅を変化させた場合の図11(a)の実際の切削加工と最もよく一致した。つまり、本実施形態の方法は,線形特性に基づく従来の方法と比較して、より正確に切削力、ひいては加工プロセスを推定することができることが分かった。
【0035】
図12は、情報処理装置200の処理の流れを説明するためのフローチャートである。まず、ステップS1201において、加振装置を用いることにより、工作機械内部の様々な2要素間で、加振力に対する周波数応答特性を測定する。次に、ステップS1202において、加振力に対する周波数応答特性が非線形な2要素を特定する。さらにステップS1203において、測定した周波数応答特性に合うように、剛性K、減衰Cを定義する。最後にステップS1204においては、定義された剛性K、減衰Cを用いて、2要素間の入出力関係をモデル化し、工作機械内部の動作をシミュレーションする。
【0036】
以上の構成によれば、工作機械構造の周波数応答特性から推定される適切な非線形特性に基づいて、力に依存した周波数応答特性を解析することで、実機に即した切削加工をより正確にシミュレーションすることができる。
【0037】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の技術的範囲で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0038】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に供給され、内蔵されたプロセッサによって実行される場合にも適用可能である。本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるサーバも、プログラムを実行するプロセッサも本発明の技術的範囲に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の技術的範囲に含まれる。
【要約】
【課題】工作機械内の入出力関係が非線形と判断できる2要素間で、正確な加工シミュレーションを行うこと。
【解決手段】工作機械内の入出力関係が非線形と判断できる2要素間で、正確な加工シミュレーションを行うため、工作機械に含まれる複数の要素の中で、加振力に対する応答特性が非線形となる2要素を特定する特定部と、特定部で特定した2要素間での入力と変位との間の非線形な関係をモデル化し、加工シミュレーションを行うシミュレーション部と、を備えたことを特徴とする情報処理装置を提供する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13