(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】精製水供給システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20060101AFI20220207BHJP
C02F 1/42 20060101ALI20220207BHJP
C02F 9/02 20060101ALI20220207BHJP
C02F 9/04 20060101ALI20220207BHJP
C02F 9/06 20060101ALI20220207BHJP
B01D 61/44 20060101ALI20220207BHJP
B01D 61/46 20060101ALI20220207BHJP
B01D 61/54 20060101ALI20220207BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20220207BHJP
C02F 1/469 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
C02F1/44 H
C02F1/42 A
C02F9/02
C02F9/04
C02F9/06
B01D61/44 520
B01D61/46
B01D61/54
B01D61/58
C02F1/44 A
C02F1/469
(21)【出願番号】P 2021139241
(22)【出願日】2021-08-27
【審査請求日】2021-08-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315001682
【氏名又は名称】岩井ファルマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】金城 潤
(72)【発明者】
【氏名】赤松 浩
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-069429(JP,A)
【文献】特開2017-198364(JP,A)
【文献】特開2009-220062(JP,A)
【文献】特開2011-147880(JP,A)
【文献】特開2015-147172(JP,A)
【文献】特開2013-725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/42-1/48
C02F 9/00-9/14
B01D 61/00-71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水が貯留される原水タンクと、
前記原水タンクの下流側に配置される逆浸透膜装置と、
前記逆浸透膜装置の下流側に配置される
電気式脱イオン装置と、
前記電気式脱イオン装置の下流側に配置される限外ろ過装置と、
前記限外ろ過装置を通過した精製水が貯留される精製水タンクと、を備え、
前記精製水タンクからユースポイントに精製水を供給する精製水供給システムであって、
前記原水タンクと、前記逆浸透膜装置と、前記
電気式脱イオン装置と、前記限外ろ過装置と、前記精製水タンクとが、送水ラインによって直列に接続されており、
前記限外ろ過装置よりも下流側の前記送水ラインから分岐して設けられ、前記限外ろ過装置を通過した精製水を前記限外ろ過装置よりも上流側に戻す返送ラインを有
すると共に、
前記ユースポイントにおける精製水の使用量の変化に応じて、前記精製水タンクへの精製水の供給量を調整する供給量調整手段と、
前記電気式脱イオン装置の印加電圧を制御する電圧制御手段と、を備え、
前記電圧制御手段は、前記電気式脱イオン装置の通水量に応じて前記印加電圧を変更する
ことを特徴とする精製水供給システム。
【請求項2】
請求項1に記載の精製水供給システムであって、
前記返送ラインが、前記原水タンクに接続されている
ことを特徴とする精製水供給システム。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載の精製水供給システムであって、
前記電圧制御手段は、前記電気式脱イオン装置の通水量が少ないほど前記印加電圧を低くする
ことを特徴とする精製水供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原水から不純物を取り除いた精製水を製造してユースポイントに供給する精製水供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原水から純水等の精製水を製造し、その精製水をユースポイントに供給する精製水供給システムが知られている。精製水供給システムとしては、様々な構成のものがあるが、逆浸透膜を有する逆浸透膜装置と、イオン交換樹脂を有するイオン交換装置と、限外ろ過膜を有する限外ろ過装置と、を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、原水タンクと、逆浸透膜装置であるRO装置と、いわゆるイオン交換樹脂塔であるイオン交換装置と、限外ろ過装置と、貯留タンクと、を備え、これらを含む各種機器が配管によって直列に接続された構成が開示されている。
【0004】
このような各種機器が配管によって直列に接続された構成とすることで、精製水供給システムの省スペース化を図ることができ、また設置コスト等の低減を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような構成では、例えば、ユースポイントの故障やメンテナンスなどにより、ユースポイントにおける精製水の使用量が減少又はゼロになった際に、上記貯留タンク(精製水タンク)よりも上流の配管(送水ライン)内の被処理水(透過水、精製水含む)を良好な状態に維持することができない虞がある。
【0007】
より詳しくは、ユースポイントの故障等によりユースポイントにおける精製水の使用量が減少又はゼロになると、それに伴い、限外ろ過装置を通過した精製水の精製水タンクへの供給を一時的に停止させることがある。その際、精製水タンクの上流側では送水ライン内に被処理水が滞留することになる。
【0008】
送水ライン内に被処理水が滞留する間、被処理水には一般細菌が繁殖或いは増殖してしまい、被処理水を適切な状態に維持することができない虞がある。このため、精製水の精製水タンクへの供給を比較的長期間停止させる場合には、精製水の供給を再開する際に送水ライン内の被処理水を全て排出する必要があり、さらには送水ラインの洗浄を行うことが必要な場合もある。
【0009】
このため、精製水の供給再開に時間を要するといった問題や、被処理水の排出や送水ラインの洗浄に伴うコストの増加を招くといった問題が生じてしまう。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、省スペース化及びコストの低減を図ることができ、且つ精製水タンクへの精製水の供給を停止した場合でも送水ライン内の被処理水を適切な状態に維持することができる精製水供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、原水が貯留される原水タンクと、前記原水タンクの下流側に配置される逆浸透膜装置と、前記逆浸透膜装置の下流側に配置される電気式脱イオン装置と、前記電気式脱イオン装置の下流側に配置される限外ろ過装置と、前記限外ろ過装置を通過した精製水が貯留される精製水タンクと、を備え、前記精製水タンクからユースポイントに精製水を供給する精製水供給システムであって、前記原水タンクと、前記逆浸透膜装置と、前記電気式脱イオン装置と、前記限外ろ過装置と、前記精製水タンクとが、送水ラインによって直列に接続されており、前記限外ろ過装置よりも下流側の前記送水ラインから分岐して設けられ、前記限外ろ過装置を通過した精製水を前記限外ろ過装置よりも上流側に戻す返送ラインを有すると共に、前記ユースポイントにおける精製水の使用量の変化に応じて、前記精製水タンクへの精製水の供給量を調整する供給量調整手段と、前記電気式脱イオン装置の印加電圧を制御する電圧制御手段と、を備え、前記電圧制御手段は、前記電気式脱イオン装置の通水量に応じて前記印加電圧を変更することを特徴とする精製水供給システムにある。
【発明の効果】
【0012】
かかる本発明によれば、省スペース化及びコストの低減を図ることができ、且つ精製水タンクへの精製水の供給を停止した場合でも送水ライン内の精製水を含む被処理水を適切な状態に維持することができる精製水供給システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る精製水供給システムの概略構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る精製水供給システムの変形例を示す概略構成図である。
【
図3】電気式脱イオン装置の印加電圧と脱イオン水の純度との関係を示すグラフである。
【
図4】電気式脱イオン装置の印加電圧と脱イオン水の純度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態の一実施形態に係る精製水供給システムの概略構成図である。
本実施形態の精製水供給システム1は、原水タンク10と、逆浸透膜装置(RO装置)20と、イオン交換装置としての電気式脱イオン装置(EDI装置)30と、限外ろ過装置40と、精製水タンク50と、を含んで構成されている。これら原水タンク10、逆浸透膜装置20、電気式脱イオン装置30、限外ろ過装置40及び精製水タンク50の各構成自体は、公知のものであるため簡単に説明する。
【0015】
原水タンク10は、精製水の原料となる原水が一時的に貯留されるタンクである。原水としては、例えば、水道水等の常水が用いられる。原水タンク10の容量は、特に限定されないが、本実施形態では、500L程度の容量のものを使用している。
【0016】
逆浸透膜装置20は、原水タンク10の下流側に配置される。逆浸透膜装置20は、逆透過膜(RO膜)を備え、原水タンク10から送水される原水(被処理水)をこの逆浸透膜によって不純物を含む濃縮水と、不純物が除去された透過水とに分離する。逆浸透膜装置20で分離された透過水は、下流側の電気式脱イオン装置30に通水され、濃縮水は電気式脱イオン装置30に通水されずに逆浸透膜装置20の外部に排出される。
【0017】
電気式脱イオン装置30は、イオン交換装置の一例であり、逆浸透膜装置20の下流側に配置される。電気式脱イオン装置(EDI装置)30は、逆浸透膜装置20を通過した透過水(被処理水)の脱イオン化(脱塩)処理を行うと共に、イオン交換樹脂の再生処理とを同時に行う。電気式脱イオン装置30では、透過水からイオン(陽イオン及び陰イオン)を除去した脱イオン水(被処理水)を得る。この脱イオン水(被処理水)は、下流側の限外ろ過装置40に通水される。また電気式脱イオン装置30で除去された陽イオンおよび陰イオンは、濃縮水として電気式脱イオン装置30の外部に排出される。
【0018】
この電気式脱イオン装置30におけるイオン(陽イオン及び陰イオン)の除去量は、詳しくは後述するが、印加する電圧(印加電圧)によって変動するが、透過水の流量(通水量)によっても変動する。このため、本実施形態では電気式脱イオン装置30の印加電圧を透過水の通水量に応じて適宜変化させている。これにより、透過水に含まれるイオンを電気式脱イオン装置30によって適切に除去することができる。
【0019】
限外ろ過装置40は、電気式脱イオン装置30の下流側に配置される。限外ろ過装置40は、限外ろ過膜を有し、この限外ろ過膜に電気式脱イオン装置30で処理された脱イオン水(被処理水)を通水させて、脱イオン水に含まれる微粒子などを除去する。このように限外ろ過装置40にて脱イオン水がろ過されることで、例えば、製薬溶液に要求される水準の所望純度の精製水(純水)が精製される。
【0020】
精製水タンク50は、限外ろ過装置40の下流側に配置され、限外ろ過装置40を通過して精製された精製水が一時的に貯留される。精製水タンク50の容量は、特に限定されないが、本実施形態では、100L程度の容量のものを使用している。
【0021】
そして、これら原水タンク10、逆浸透膜装置20、電気式脱イオン装置30、限外ろ過装置40及び精製水タンク50は、送水ラインである送水配管60(60a,60b,60c,60d,60e)によって、直列に接続されている。
【0022】
すなわち、原水タンク10と、逆浸透膜装置20と、電気式脱イオン装置30と、限外ろ過装置40と、精製水タンク50とは、途中に貯留タンクを介することなく、この順序で送水配管60によって連続的に接続されている。なお、ここでいう貯留タンクとは、逆浸透膜装置20にて処理された透過水(被処理水)又は電気式脱イオン装置30で処理された脱イオン水(被処理水)を一時的に貯留するためのタンクである。
【0023】
このように精製水供給システム1を構成する各構成が、送水配管60によって直列に接続されていることで、省スペース化を図ることができ、また設置コスト等の低減を図ることができる。
【0024】
原水タンク10と逆浸透膜装置20との間には、送水ポンプ70が設けられている。原水タンク10内の原水(被処理水)は、この送水ポンプ70によって所定の水圧で送水配管60を介して逆浸透膜装置20に通水される。さらに、逆浸透膜を透過した透過水が電気式脱イオン装置30及び限外ろ過装置40を通過して精製された精製水が精製水タンク50に供給される。
【0025】
また精製水タンク50は、供給ライン(供給配管)80によってユースポイントUPに接続されている。すなわち精製水タンク50に貯留されている精製水は、供給配管80を介してユースポイントUPに供給されるようになっている。ユースポイントUPとは、精製水が用いられる施設、装置、場所などである。
【0026】
供給配管80の構成は、特に限定されないが、本実施形態では、第1循環配管81と、第2循環配管82とを含んだ構成となっている。第1循環配管81は、精製水タンク50に貯留された精製水をユースポイントUPに供給するための配管である。一方、第2循環配管82は、ユースポイントUPで使用されなかった精製水を精製水タンク50に戻すための配管である。
【0027】
第1循環配管81には供給ポンプ83が設けられている。この供給ポンプ83により、精製水タンク50内の精製水が、第1循環配管81を介してユースポイントUPに供給されると共に、ユースポイントUPで使用されなかった精製水が、第2循環配管82を介して精製水タンク50に戻るようになっている。
【0028】
なお第1循環配管81には第1排出配管84が接続され、第2循環配管82には第2排出配管85が接続されている。これら第1排出配管84及び第2排出配管85は、例えば、供給配管80内の洗浄に用いられる洗浄用液体や、滅菌に用いられる蒸気等を外部に排出させるための配管である。
【0029】
また図示は省略するが、供給配管80と、第1排出配管84及び第2排出配管85とには、精製水等の流通を制御するための複数のバルブが設けられている。そして、これら複数のバルブの開閉状態を制御することで、供給配管80からユースポイントUPへの精製水の供給や、第1排出配管84及び第2排出配管85からの洗浄溶液等の排出を適宜実行する。
【0030】
さらに、このような構成の本発明に係る精製水供給システム1は、返送ラインである返送配管90を有している。
【0031】
返送配管90は、限外ろ過装置40よりも下流側の送水配管60eから分岐して設けられ、限外ろ過装置40を通過した精製水を、限外ろ過装置40よりも上流側に戻すための配管である。
【0032】
本実施形態では、返送配管90は、送水配管60eから分岐して原水タンク10に接続されている。つまり返送配管90は、その一端側が送水配管60eに接続され、他端側が原水タンク10に接続されている。この返送配管90には、送水配管60eとの接続部付近に第1のバルブ61が設けられている。また送水配管60eの返送配管90との接続部よりも下流側には第2のバルブ62が設けられている。これら第1のバルブ61及び第2のバルブ62は、全開または全閉の何れかの状態に切替えることができる電磁弁、または開度を調節できる調節弁などで構成される。
【0033】
本発明に係る精製水供給システム1は、このような返送配管90を備えていることで、送水配管60内の精製水及び被処理水を、適切な状態に維持することができる。例えば、ユースポイントUPの故障やメンテナンス等により精製水の使用量が減少又はゼロとなり精製水タンク50への精製水の供給を停止した場合でも、送水配管60e内の精製水を返送配管90を介して原水タンク10に戻すことができる。これにより、精製水及び被処理水が送水配管60内に滞留することを抑制でき、送水配管60内の精製水及び被処理水における一般細菌の繁殖又は増殖が抑えられる。したがって、精製水タンク50への精製水の供給を停止している間であっても、送水配管60内の精製水及び被処理水を適切な状態に維持することができる。
【0034】
なお返送配管90は、精製水を限外ろ過装置40よりも上流側に戻すように設けられていればよく、例えば、
図2に示すように、逆浸透膜装置20の上流側の送水配管60bに接続されていてもよい。
【0035】
ただし、返送配管90は、本実施形態のように原水タンク10に接続されていることが好ましい。すなわち、精製水タンク50への精製水の供給を停止している場合、送水配管60e内の精製水を返送配管90を介して比較的大容量の原水タンク10に戻すようにすることが好ましい。これにより、例えば、送水配管60e内の精製水の温度が比較的高い温度まで上昇している場合でも、それによる悪影響を抑制することができる。さらに、送水配管60e内の精製水に気泡が混入している場合でも、原水タンク10に戻すことでその気泡を除去することができるという効果もある。
【0036】
以下、本実施形態に係る精製水供給システム1で実行される精製水供給プロセス、特に、精製水タンク50への精製水の供給プロセスについて説明する。
【0037】
図1に示すように、本実施形態に係る精製水供給システム1は、各種機器類を包括的に制御する制御装置100を備えている。そして、この制御装置100は、供給量調整手段101と、電圧制御手段102と、を少なくとも備えている。
【0038】
供給量調整手段101は、ユースポイントUPにおける精製水の使用量に応じて、精製水タンク50への精製水の供給量を調整する。上述のように精製水タンク50とユースポイントUPとは、第1循環配管81及び第2循環配管82を含む供給配管80によって接続されている。このため、ユースポイントUPにおける精製水の使用量の変動に伴って、精製水タンク50内の精製水の量も変動する。
【0039】
精製水タンク50には、内部に貯留されている精製水の量を検出するための各種センサーが設けられている。例えば、精製水タンク50に貯留されている精製水の液面を検出する液面センサー110が設けられている。
【0040】
そして供給量調整手段101は、この液面センサー110の検出結果に基づいて送水ポンプ70の出力及び第2のバルブ62の開閉状態を適宜変更することで、精製水タンク50への精製水の供給量を調整する。供給量調整手段101は、例えば、精製水タンク50内の精製水の量が予め設定された閾値A1に達すると、送水ポンプ70の出力を徐々に低下させる。つまり精製水タンク50への精製水の供給量を徐々に減少させる。ただし送水ポンプ70を停止させることはなく、予め設定された最低出力に達するとその出力を維持させる。
【0041】
ここで、精製水タンク50に精製水が供給されている場合、第1のバルブ61は閉じられた状態(閉状態)であり、第2のバルブ62は開かれた状態(開状態)である。
【0042】
供給量調整手段101は、精製水タンク50内の精製水の量が閾値A1よりも大きい閾値A2に達すると、第1のバルブ61を開状態とすると共に、第2のバルブ62を閉状態とする。これにより、精製水タンク50への精製水の供給量はゼロとなる。
【0043】
ただし、精製水の製造自体は停止されることはなく、限外ろ過装置40を通過した精製水は、返送配管90を介して原水タンク10に戻される。すなわち送水配管60内の精製水及び被処理水は、送水配管60内で停滞することなく返送配管90を介して循環することになる。
【0044】
その後、精製水タンク50の精製水の量が、閾値A1よりも小さい閾値A3まで低下すると、供給量調整手段101は、第1のバルブ61を閉状態とすると共に第2のバルブ62を開状態とし、また送水ポンプ70の出力を適宜調整して、精製水タンク50への精製水の供給を再開する。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る精製水供給システム1は、精製水タンク50への精製水の供給を停止した場合でも、精製水の製造を継続して限外ろ過装置40を通過した精製水を返送配管90を介して原水タンク10に戻すようにしている。このため、送水配管60内の精製水及び被処理水を適切な状態に維持することができる。
【0046】
したがって、精製水タンク50への精製水の供給再開は、第1のバルブ61及び第2のバルブ62の開閉状態を制御し、また必要に応じて送水ポンプ70の出力を調整することで、比較的短時間で行うことができる。
【0047】
返送配管が設けられていない従来の精製水供給システムでは、精製水タンクへの精製水の供給を再開する際、送水配管内の精製水や被処理水の排出(廃棄)、送水配管内の洗浄や滅菌といった処理が必要な場合がある。しかしながら、本発明の精製水供給システム1であれば、このような処理を行わなくてもよくなるため、供給再開に必要な時間が短縮され、またそれに伴いランニングコストの低減を図ることもできる。
【0048】
また、制御装置100が備える電圧制御手段102は、電気式脱イオン装置30に印加する電圧(印加電圧)を制御する。
【0049】
上述のように、本実施形態では供給量調整手段101が送水ポンプ70の出力を変更することで、精製水タンク50への精製水の供給量を調整している。その際、送水ポンプ70の出力に応じて電気式脱イオン装置30への透過水の通水量も変動することになる。
【0050】
電圧制御手段102は、このような電気式脱イオン装置30への透過水の通水量の変動に応じて電気式脱イオン装置30の印加電圧を変更する。より詳細には、電圧制御手段102は、電気式脱イオン装置30への透過水の通水量が少ないほど印加電圧が低くなるように制御している。
【0051】
なお電気式脱イオン装置30への透過水の通水量を検出する方法は特に限定されず、例えば、流量センサー等の流量検出手段によって直接検出してもよいが、本実施形態では、送水ポンプ70の出力から推定している。すなわち電圧制御手段102は、供給量調整手段101によって変更された送水ポンプ70の出力に応じて、電気式脱イオン装置30の印加電圧を適宜制御している。
【0052】
このように電気式脱イオン装置30への透過水の通水量に応じて電気式脱イオン装置30の印加電圧を変更することで、以下に説明するように、電気式脱イオン装置30を通過した脱イオン水(被処理水)の純度を適切に高めることができる。
【0053】
図3は、水温11℃程度である脱イオン水の純度と電気式脱イオン装置の印加電圧との関係を示す図であり、
図4は、水温25℃程度である脱イオン水の純度と電気式脱イオン装置の印加電圧との関係を示す図である。
【0054】
図3及び
図4に示すように、透過水の温度や通水量によって変動の仕方は異なるものの、電気式脱イオン装置30を通過した脱イオン水の純度は、電気式脱イオン装置30の印加電圧によって変動する。このため、電気式脱イオン装置30の印加電圧は、電気式脱イオン装置30に通水される透過水の温度や通水量に応じて適宜設定されることが好ましい。
【0055】
例えば、電気式脱イオン装置30に通水される透過水の温度が11℃程度であり、通水量が第1通水量L1である場合、
図3中に実線で示すように、脱イオン水の純度は、印加電圧が第1電圧V1であるときに最も高い値P1となる。したがって、この場合には、印加電圧は第1電圧V1程度に設定されていることが好ましい。これにより、電気式脱イオン装置30を通過した脱イオン水の純度を高め易くなる。
【0056】
また、例えば、電気式脱イオン装置30に通水される透過水の温度が25℃程度であり、通水量が第1通水量L1である場合、
図4中に実線で示すように、脱イオン水の純度は、第2電圧V2以上において最も高い値P2となる。したがって、この場合、印加電圧は第2電圧V2以上に設定されていることが好ましい。これにより、電気式脱イオン装置30を通過した脱イオン水の純度をより高め易くなる。特に、印加電圧は第2電圧V2程度に設定されていることが好ましい。これにより、電気式脱イオン装置30を通過した脱イオン水の純度をより高め易くなり、且つ消費電力を抑えることができる。
【0057】
さらに、
図3中に点線で示すように、電気式脱イオン装置30に通水される透過水の温度が11℃程度であり、通水量が第1通水量L1よりも少ない第2通水量L2である場合、脱イオン水の純度は、印加電圧が第3電圧V3であるときに最も高い値P1となる。すなわち、この場合、印加電圧の増加に伴う脱イオン水の純度の変動の仕方は、
図3中に実線で示す通水量が第1通水量L1である場合と同様であるが、第1通水量L1である場合よりも低電圧側にシフトする。したがって、この場合、印加電圧は第1電圧V1よりも低い第3電圧V3程度に設定されていることが好ましい。これにより、電気式脱イオン装置30を通過した脱イオン水の純度をより高め易くなる。
【0058】
また
図4中に点線で示すように、電気式脱イオン装置30に通水される透過水の温度が25℃程度であり、通水量が第1通水量L1よりも少ない第2通水量L2である場合、脱イオン水の純度は、印加電圧が第4電圧V4であるときに最も高い値P2となる。すなわち、この場合、印加電圧の増加に伴う脱イオン水の純度の変動の仕方は、
図4中に実線で示す通水量が第1通水量L1である場合と同様であるが、第1通水量L1である場合よりも低電圧側にシフトする。したがって、この場合、印加電圧は第2電圧V2よりも低い第4電圧V4程度に設定されていることが好ましい。これにより、電気式脱イオン装置30を通過した脱イオン水の純度をより高め易くなる。
【0059】
このように電気式脱イオン装置30におけるイオンの除去量は、印加電圧によって変動し、また透過水の通水量によっても変動する。つまり電気式脱イオン装置30を通過した脱イオン水の純度は、印加電圧によって変動し、また透過水の通水量によっても変動する。
【0060】
したがって、上述のように電気式脱イオン装置30への透過水の通水量に応じて、電気式脱イオン装置30の印加電圧を適宜変更することで、より詳しくは、電気式脱イオン装置30への透過水の通水量が少ないほど印加電圧が低くなるようにすることで、脱イオン水の純度を高め易くなる。
【0061】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、勿論、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【0062】
例えば、上述の実施形態では、送水ポンプ70の出力を制御することで、精製水タンク50への精製水の供給量を調整するようにしたが、供給量の調整方法はこれに限定されない。例えば、送水ポンプ70の出力を一定とし、第1のバルブ61の開度を制御して、返送配管90から原水タンク10へ戻す精製水の流量を変更するようにしてもよい。この方法であっても、精製水タンク50への精製水の供給量を調整することができる。
【0063】
また上述の実施形態では、限外ろ過装置40よりも下流側の送水配管60eから分岐して原水タンク10に接続される返送配管90を備える構成を例示したが、この返送配管90に加えて、例えば、送水配管60d,60cから分岐して原水タンク10に接続される返送配管を設けるようにしてもよい。これにより、送水配管60内の精製水及び被処理水を必要に応じてより効率的に循環させることができる。
【0064】
また上述の実施形態では、精製水供給システム1が、原水タンク10と、逆浸透膜装置20と、電気式脱イオン装置(EDI装置)30と、限外ろ過装置40と、精製水タンク50と、を備える構成を例示したが、この構成に限定されるものではなく、例えば、熱交換器、紫外線装置等の他の装置を含んで構成されていてもよい。
【0065】
また上述の実施形態では、イオン交換装置の一例として電気式脱イオン装置30を説明したが、イオン交換装置は、いわゆるイオン交換樹脂塔であってもよい。
【0066】
また、本発明は、例えば、注射用水などの製薬溶液に用いる精製水を製造・供給する場合に好適であるが、勿論、それ以外の用途の精製水を製造・供給する場合にも適用することができるものである。
【符号の説明】
【0067】
1…精製水供給システム、 10…原水タンク、 20…逆浸透膜装置、 30…電気式脱イオン装置、 40…限外ろ過装置、 50…精製水タンク、 60…送水配管、 61…第1のバルブ、 62…第2のバルブ、 70…送水ポンプ、 80…供給配管、 81第1循環配管、 82…第2循環配管、 83…供給ポンプ、 84…第1排出配管、 85…第2排出配管、 90…返送配管、 100…制御装置、 101…供給量調整手段、 102…電圧制御手段、 110…液面センサー、 UP…ユースポイント
【要約】
【課題】省スペース化及びコストの低減を図ることができ、且つ精製水タンクへの精製水の供給を停止した場合でも送水ライン内の被処理水を適切な状態に維持することができる精製水供給システムを提供する。
【解決手段】原水タンク10と、逆浸透膜装置20と、イオン交換装置30と、限外ろ過装置40と、精製水タンク50とが、送水ライン60によって直列に接続されており、限外ろ過装置40よりも下流側の送水ライン60eから分岐して設けられ、限外ろ過装置40を通過した精製水を限外ろ過装置40よりも上流側に戻す返送ライン90を有する構成とする。
【選択図】
図1