(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】ストラドルドビークル
(51)【国際特許分類】
B60K 6/40 20071001AFI20220207BHJP
B60K 6/485 20071001ALI20220207BHJP
B60K 6/543 20071001ALI20220207BHJP
B62J 99/00 20200101ALI20220207BHJP
B62M 25/08 20060101ALI20220207BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20220207BHJP
F16H 9/12 20060101ALI20220207BHJP
F16H 61/00 20060101ALI20220207BHJP
F16H 61/662 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
B60K6/40 ZHV
B60K6/485
B60K6/543
B62J99/00
B62M25/08
F02D45/00
F16H9/12
F16H61/00
F16H61/662
(21)【出願番号】P 2021530004
(86)(22)【出願日】2020-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2020025441
(87)【国際公開番号】W WO2021002308
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2019123360
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関口 直樹
(72)【発明者】
【氏名】村山 拓仁
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 博人
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-76550(JP,A)
【文献】特開昭58-20578(JP,A)
【文献】特開2010-83310(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169522(WO,A1)
【文献】特開昭61-66436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20- 6/547
B62J 99/00
B62M 25/08
F02D 45/00
F16H 9/12
F16H 61/00
F16H 61/662
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの前輪を含む前輪部と、
前記前輪部より車両前後方向の後方向に配置された少なくとも1つの後輪を含む後輪部と、
車体フレームと、
クランク軸を有するエンジンを含み、前記車体フレームに支持されるエンジンユニットと、
前記車体フレームに支持されるバッテリ装置と、
多重化されたデータ通信を行う多重通信線に接続されて、多重化されたデータ通信可能に構成される第1通信装置、および、第1駆動回路を含む少なくとも1つの第1コントローラと、
前記多重通信線に接続されて、多重化されたデータ通信可能に構成され、少なくとも前記少なくとも1つの第1コントローラの前記第1通信装置と多重化されたデータ通信が可能な第2通信装置、および、第2駆動回路を含む少なくとも1つの第2コントローラと、を有するストラドルドビークルであって、
前記第1駆動回路は、前記バッテリ装置に
第1電力線で接続されて、前記バッテリ装置から電力が供給され、
前記第2駆動回路は、前記バッテリ装置に
第2電力線で接続されて、前記バッテリ装置から電力が供給され、
前記エンジンユニットは、
前記クランク軸から前記前輪部または前記後輪部の少なくとも一方の駆動輪まで動力が伝達される動力伝達経路に配置される対象軸にトルクを付与する少なくとも1つのエンジン用モータ、または、前記動力伝達経路の少なくとも一部に配置される変速装置および前記変速装置の変速比を変更させる変速制御用モータ、の少なくともいずれかを含み、
前記少なくとも1つの第2コントローラは、
前記第2駆動回路が、前記変速制御用モータまたは前記少なくとも1つのエンジン用モータの少なくともいずれかに
第3電力線で接続されて、前記変速制御用モータまたは前記少なくとも1つのエンジン用モータの少なくともいずれかを駆動させる駆動信号を生成し、
前記第2駆動回路と前記第2駆動回路に接続される前記変速制御用モータとの間の
前記第3電力線の長さ(Lm)または前記第2駆動回路と前記第2駆動回路に接続される前記少なくとも1つのエンジン用モータとの間の
前記第3電力線の長さ(Lg)が、前記第2駆動回路と前記バッテリ装置との間の
前記第2電力線の長さ(Lb)よりも短く、且つ、
前記第1通信装置と前記第2通信装置との間の前記多重通信線の長さ(Lc)が、前記第2駆動回路と前記第2駆動回路に接続される前記変速制御用モータとの間の
前記第3電力線の長さ(Lm)または前記第2駆動回路と前記第2駆動回路に接続される前記少なくとも1つのエンジン用モータとの間の
前記第3電力線の長さ(Lg)より長くなる位置に配置されることを特徴とするストラドルドビークル。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第2コントローラは、
前記第1通信装置と前記第2通信装置との間の前記多重通信線の長さが、前記第2駆動回路と前記バッテリ装置との間の
前記第2電力線の長さより長くなる位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載のストラドルドビークル。
【請求項3】
前記エンジンユニットは、前記変速装置を含み、
前記変速装置は、
前記クランク軸の動力が伝達されるプライマリ軸部に設けられたプライマリシーブ、前記プライマリ軸部の回転軸線方向とその回転軸線方向が平行になるように配置されたセカンダリ軸部に設けられたセカンダリシーブ、および、前記プライマリシーブおよび前記セカンダリシーブに巻回されて前記クランク軸から前記プライマリシーブに伝達された動力を前記セカンダリシーブに伝達するベルトを有し、
前記少なくとも1つの第2コントローラは、それぞれの少なくとも一部が、
前記プライマリ軸部の回転軸線方向に見て、前記プライマリ軸部および前記セカンダリ軸部に重ならない位置に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載のストラドルドビークル。
【請求項4】
前記エンジンまたは前記変速装置の少なくともいずれかの少なくとも一部を収容するエンジンユニットケースを更に有し、
前記少なくとも1つの第2コントローラは、前記エンジンユニットケースに支持されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のストラドルドビークル。
【請求項5】
前記第1駆動回路は、前記ストラドルドビークルの走行状態を表示する表示装置、前記エンジンに燃料を噴射して供給する燃料噴射装置、または、前記エンジンに供給された前記燃料に点火する点火装置の少なくともいずれかに通信線で接続され、
前記表示装置、前記燃料噴射装置、または、前記点火装置の少なくともいずれかを駆動させる駆動信号を生成し、
前記バッテリ装置は、前記第1駆動回路に接続される前記表示装置、前記燃料噴射装置、または、前記点火装置の少なくともいずれかに
第4電力線で接続されて電力を供給することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のストラドルドビークル。
【請求項6】
前記第2駆動回路に接続される前記少なくとも1つのエンジン用モータは、前記対象軸に前記クランク軸の回転方向と正方向および逆方向のトルクを付与する回転電機、前記対象軸に前記クランク軸の回転方向と正方向のトルクを付与する電動モータ、または、前記対象軸に前記クランク軸の回転方向と逆方向のトルクを付与する発電機の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のストラドルドビークル。
【請求項7】
前記エンジンユニットは、前記変速装置および前記変速制御用モータを含み、
前記変速制御用モータは、前記第2駆動回路に
前記第3電力線で接続されることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のストラドルドビークル。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1コントローラは、複数の前記第1コントローラを含み、
前記少なくとも1つの第2コントローラは、複数の前記第2コントローラを含み、または、
前記少なくとも1つの第1コントローラは、複数の前記第1コントローラを含むと共に、前記少なくとも1つの第2コントローラは、複数の前記第2コントローラを含むことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のストラドルドビークル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重化されたデータ通信を行う多重通信線で接続された複数のコントローラおよびエンジンユニットが搭載されたストラドルドビークル(鞍乗型車両)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多重化されたデータ通信を行う多重通信線で接続された複数のコントローラが搭載されたストラドルドビークルがある。特許文献1には、複数のコントローラの間で多重化されたデータ通信を行う多重通信線を有するストラドルドビークルが開示されている。
特許文献1では、多重通信線をノイズ源となるバッテリ装置、レギュレータなどの装置から離れた位置に配置することにより、多重通信線に対するノイズの影響を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、多重通信線をノイズ源となるバッテリ装置、レギュレータなどの装置から離れた位置に配置することにより、多重通信線に対するノイズの影響を抑制できるものの、ストラドルドビークルは車幅が狭いため、車両が大型化してしまう。
また、このようなストラドルドビークルは、エンジンユニットを有する。つまり、このようなストラドルドビークルには、エンジンに駆動力を付与するエンジン用モータ、または、無段変速装置や有段変速装置などの変速装置の変速比を変更させる変速制御用モータを搭載することが求められている。
そして、このようなストラドルドビークルには、多重通信線で接続された、変速制御用モータを制御するコントローラ、または、エンジン用モータを制御するコントローラ等の複数のコントローラを搭載することが求められている。
そのため、従来のストラドルドビークルに、多重化されたデータ通信を行う多重通信線で接続された複数のコントローラおよびエンジンユニットが搭載された場合に、多重通信線に対するノイズの影響を抑制しつつ、ストラドルドビークルの大型化を抑制することが困難であることが分かった。
【0005】
本発明は、多重化されたデータ通信を行う多重通信線で接続された複数のコントローラおよびエンジンユニットが搭載されたストラドルドビークルにおいて、多重通信線に対するノイズの影響を抑制しつつ、ストラドルドビークルの大型化を抑制できるストラドルドビークルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは、多重通信線で接続された複数のコントローラが搭載されたストラドルドビークルにおいて、多重通信線に対するノイズの影響について調べた。そして、本願発明者らは、多重通信線で接続された複数のコントローラとして、変速制御用モータおよびエンジン用モータ以外の装置に接続される第1コントローラと、変速制御用モータまたはエンジン用モータの少なくともいずれかに接続される第2コントローラについて検討した。第2コントローラに含まれる駆動回路と変速制御用モータまたはエンジン用モータの少なくともいずれかと、を接続する電力線には、第1コントローラに含まれる駆動回路と変速制御用モータまたはエンジン用モータ以外の装置とを接続する電力線に比べて大きな電流が流れていることがわかった。そして、本願発明者らは、この第2コントローラに含まれる駆動回路と変速制御用モータまたはエンジン用モータの少なくともいずれかと、を接続する電力線が長くなればなるほど、多重通信線でノイズが発生しやすくなることがわかった。
【0007】
そこで、本願発明者らは、多重通信線に対するノイズの影響を抑制するために、特許文献1のように、多重通信線をノイズ源から離す技術思想とは異なる技術思想を考えた。本願発明者らの技術思想とは、多重通信線に対するノイズの影響を抑制するために、ノイズそのものの発生を抑制するという技術思想である。本願発明者らは、ノイズの発生を抑制するためには、第2コントローラに含まれる第2駆動回路と変速制御用モータまたはエンジン用モータの少なくともいずれかと、を接続する電力線の長さを、短くすればよいことに気付いた。
本願発明者らは、第2コントローラの第2駆動回路と変速制御用モータまたはエンジン用モータの少なくともいずれかとを接続する電力線の長さを、複数のコントローラが含む多重化されたデータ通信可能に構成される複数の通信装置間の多重通信線の長さより短くすればよいことに気付いた。
また、変速制御用モータまたはエンジン用モータの少なくともいずれかに接続される第2コントローラに含まれる駆動回路には、バッテリ装置が接続される。バッテリ装置は大きさが比較的大きいため、バッテリ装置の設置の自由度は低い。つまり、バッテリ装置の設置位置の制約によって、バッテリ装置と駆動回路とを接続する電力線の長さは変えられない場合がある。本願発明者らは、第2コントローラに含まれる第2駆動回路と変速制御用モータまたはエンジン用モータの少なくともいずれかとを接続する電力線の長さを、第2コントローラに含まれる第2駆動回路とバッテリ装置とを接続する電力線の長さより短くすればよいことに気付いた。
【0008】
一方、多重通信線で接続された複数のコントローラおよびエンジンユニットが搭載されたストラドルドビークルにおいて、多重通信線に対するノイズの影響を抑制しつつ、ストラドルドビークルの大型化を抑制することが求められる。本願発明者らは、第1コントローラに含まれる多重化されたデータ通信可能に構成される第1通信装置と第2コントローラに含まれる多重化されたデータ通信可能に構成される第2通信装置とを接続する多重通信線の長さを長くして、第1コントローラの設置位置を制約しないようにすることで、この要求に対応できることに気付いた。つまり、第2コントローラの第2駆動回路と変速制御用モータまたはエンジン用モータの少なくともいずれかと、を接続する電力線の長さを、複数のコントローラが含む多重化されたデータ通信可能に構成される複数の通信装置間の多重通信線の長さより短くし、かつ、第2コントローラに含まれる第2駆動回路と変速制御用モータまたはエンジン用モータの少なくともいずれかと、を接続する電力線の長さを、第2コントローラに含まれる第2駆動回路とバッテリ装置と、を接続する電力線の長さより短くすればよいことに気付いた。
本願発明者らは、このように本発明を構成することにより、ノイズの発生そのものを抑えて、多重通信線に対するノイズの影響を抑制しつつ、第1コントローラの設置位置の自由度を向上させてストラドルドビークルの大型化の抑制できることに気付いた。
【0009】
(1)本発明のストラドルドビークルは、少なくとも1つの前輪を含む前輪部と、前記前輪部より車両前後方向の後方向に配置された少なくとも1つの後輪を含む後輪部と、車体フレームと、クランク軸を有するエンジンを含み、前記車体フレームに支持されるエンジンユニットと、前記車体フレームに支持されるバッテリ装置と、多重化されたデータ通信を行う多重通信線に接続されて、多重化されたデータ通信可能に構成される第1通信装置、および、第1駆動回路を含む少なくとも1つの第1コントローラと、前記多重通信線に接続されて、多重化されたデータ通信可能に構成され、少なくとも前記少なくとも1つの第1コントローラの前記第1通信装置と多重化されたデータ通信が可能な第2通信装置、および、第2駆動回路を含む少なくとも1つの第2コントローラと、を有するストラドルドビークルであって、前記第1駆動回路は、前記バッテリ装置に第1電力線で接続されて、前記バッテリ装置から電力が供給され、前記第2駆動回路は、前記バッテリ装置に第2電力線で接続されて、前記バッテリ装置から電力が供給され、前記エンジンユニットは、前記クランク軸から前記前輪部または前記後輪部の少なくとも一方の駆動輪まで動力が伝達される動力伝達経路に配置される対象軸にトルクを付与する少なくとも1つのエンジン用モータ、または、前記動力伝達経路の少なくとも一部に配置される変速装置および前記変速装置の変速比を変更させる変速制御用モータ、の少なくともいずれかを含み、前記少なくとも1つの第2コントローラは、前記第2駆動回路が、前記変速制御用モータまたは前記少なくとも1つのエンジン用モータの少なくともいずれかに第3電力線で接続されて、前記変速制御用モータまたは前記少なくとも1つのエンジン用モータの少なくともいずれかを駆動させる駆動信号を生成し、前記第2駆動回路と前記第2駆動回路に接続される前記変速制御用モータとの間の前記第3電力線の長さ(Lm)または前記第2駆動回路と前記第2駆動回路に接続される前記少なくとも1つのエンジン用モータとの間の前記第3電力線の長さ(Lg)が、前記第2駆動回路と前記バッテリ装置との間の前記第2電力線の長さ(Lb)よりも短く、且つ、前記第1通信装置と前記第2通信装置との間の前記多重通信線の長さ(Lc)が、前記第2駆動回路と前記第2駆動回路に接続される前記変速制御用モータとの間の前記第3電力線の長さ(Lm)または前記第2駆動回路と前記第2駆動回路に接続される前記少なくとも1つのエンジン用モータとの間の前記第3電力線の長さ(Lg)より長くなる位置に配置されることを特徴とする。
【0010】
この構成によると、バッテリ装置は、第2駆動回路を介して、第2駆動回路に接続された変速制御用モータまたは少なくとも1つのエンジン用モータの少なくともいずれかに電力を供給する。ここで、第2駆動回路と第2駆動回路に接続された変速制御用モータまたは少なくとも1つのエンジン用モータの少なくともいずれかとの間の電力線(第3電力線)には比較的大きな電流が流れる。そして、第2駆動回路と第2駆動回路に接続された変速制御用モータまたは少なくとも1つのエンジン用モータの少なくともいずれかとの間の電力線が長くなればなるほど、多重通信線でノイズが発生しやすい。つまり、第2駆動回路と第2駆動回路に接続された変速制御用モータまたは少なくとも1つのエンジン用モータの少なくともいずれかとの間の電力線の長さが、第1通信装置と第2通信装置との間の多重通信線の長さより長いと、第1通信装置と第2通信装置が接続される多重通信線でノイズが発生しやすい。また、バッテリ装置は大きさが比較的大きいため、バッテリ装置の設置の自由度は低い。つまり、バッテリ装置の設置位置の制約によって、バッテリ装置と第2駆動回路とを接続する電力線(第2電力線)の長さが変えられない場合がある。そのため、第2駆動回路と第2駆動回路に接続された変速制御用モータまたは少なくとも1つのエンジン用モータの少なくともいずれかとの間の電力線が、第2駆動回路とバッテリ装置との間の電力線の長さよりも長いと、多重通信線でノイズが発生しやすい。
【0011】
少なくとも1つの第2コントローラは、第2駆動回路と第2駆動回路に接続された変速制御用モータまたは少なくとも1つのエンジン用モータの少なくともいずれかとの間の電力線の長さが、第2駆動回路とバッテリ装置との間の電力線の長さよりも短くなるように、配置される。これにより、第2駆動回路と第2駆動回路に接続された変速制御用モータまたは少なくとも1つのエンジン用モータの少なくともいずれかとの間の電力線の長さが、第2駆動回路とバッテリ装置との間の電力線の長さよりも長い場合と比較して、ノイズの発生そのものを抑えることができる。そして、第1通信装置と第2通信装置が接続される多重通信線を、第2駆動回路に接続された変速制御用モータまたは少なくとも1つのエンジン用モータの少なくともいずれかおよびバッテリ装置から離れた位置に配置しなくても、多重通信線に対するノイズの影響を抑制することができる。
【0012】
また、少なくとも1つの第2コントローラは、第2駆動回路と第2駆動回路に接続された変速制御用モータまたは少なくとも1つのエンジン用モータの少なくともいずれかとの間の電力線の長さが第1通信装置と第2通信装置との間の多重通信線の長さより短くなるように、配置される。そして、少なくとも1つの第1コントローラは、第1通信装置と第2通信装置との間の多重通信線の長さが第2駆動回路と第2駆動回路に接続された変速制御用モータまたは少なくとも1つのエンジン用モータの少なくともいずれかとの間の電力線の長さより長くなるように、配置できる。そのため、第1通信装置と第2通信装置との間の多重通信線の長さを長くすることができ、第1通信装置を含む少なくとも1つの第1コントローラを、少なくとも1つの第2コントローラから離れた位置に配置することができる。そのため、第1通信装置と第2通信装置との間の多重通信線の長さを長くすることができる。これにより、第1通信装置を含む少なくとも1つの第1コントローラの設置位置の自由度を向上させることができる。そして、ストラドルドビークルの大型化を抑制することができる。
【0013】
以上から、多重化されたデータ通信を行う多重通信線で接続された複数のコントローラが搭載されたストラドルドビークルにおいて、多重通信線に対するノイズの影響を抑制しつつ、ストラドルドビークルの大型化を抑制できる。
【0014】
(2)本発明の他の観点によれば、本発明のストラドルドビークルは、上記(1)の構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。
前記少なくとも1つの第2コントローラは、前記第1通信装置と前記第2通信装置との間の前記多重通信線の長さが、前記第2駆動回路と前記バッテリ装置との間の前記第2電力線の長さより長くなる位置に配置される。
【0015】
この構成によると、第1通信装置と第2通信装置との間の多重通信線の長さが、第2駆動回路とバッテリ装置との間の電力線の長さより長い。そのため、第2駆動回路とバッテリ装置との間の電力線の長さが、第1通信装置と第2通信装置との間の多重通信線の長さより長い場合と比較して、ノイズの発生そのものを抑えることができる。このため、第1通信装置と第2通信装置が接続される多重通信線を変速制御用モータまたは少なくとも1つのエンジン用モータの少なくともいずれかおよびバッテリ装置から離れた位置に配置しなくても、多重通信線に対するノイズの影響を抑制することができる。
【0016】
(3)本発明の他の観点によれば、本発明のストラドルドビークルは、上記(1)または(2)の構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。
前記エンジンユニットは、前記変速装置を含み、前記変速装置は、前記クランク軸の動力が伝達されるプライマリ軸部に設けられたプライマリシーブ、前記プライマリ軸部の回転軸線方向とその回転軸線方向が平行になるように配置されたセカンダリ軸部に設けられたセカンダリシーブ、および、前記プライマリシーブおよび前記セカンダリシーブに巻回されて前記クランク軸から前記プライマリシーブに伝達された動力を前記セカンダリシーブに伝達するベルトを有し、前記少なくとも1つの第2コントローラは、それぞれの少なくとも一部が、前記プライマリ軸部の回転軸線方向に見て、前記プライマリ軸部および前記セカンダリ軸部に重ならない位置に配置される。
【0017】
この構成によると、少なくとも1つの第2コントローラは、それぞれの少なくとも一部が、プライマリ軸部の回転軸線方向に見て、プライマリ軸部およびセカンダリ軸部に重ならない位置に配置される。プライマリ軸部の回転軸線方向に見て、プライマリ軸部およびセカンダリ軸部に重ならない位置は、比較的広いスペースを有する。そのため、少なくとも1つの第2コントローラを設置するためのスペースを確保しやすい。このように、少なくとも1つの第2コントローラの設置の自由度が高いため、ストラドルドビークルの大型化を抑制しつつ、少なくとも1つの第2コントローラを設置することができる。
【0018】
(4)本発明の他の観点によれば、本発明のストラドルドビークルは、上記(1)~(3)のいずれかの構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。
前記エンジンまたは前記変速装置の少なくともいずれかの少なくとも一部を収容するエンジンユニットケースを更に有し、前記少なくとも1つの第2コントローラは、前記エンジンユニットケースに支持される。
【0019】
この構成によると、バッテリ装置および変速制御用モータまたは少なくとも1つのエンジン用モータの少なくともいずれかに接続される第2駆動回路を含む少なくとも1つの第2コントローラを、エンジンまたは変速装置の少なくともいずれかの少なくとも一部を収容するエンジンユニットケースに支持されるように配置している。なお、少なくとも1つの第2コントローラは、エンジンユニットケースに直接支持されてもよいし、他の部材を介して間接的にエンジンユニットケースに支持されてもよい。つまり、少なくとも1つの第2コントローラは、バッテリ装置および変速制御用モータまたは少なくとも1つのエンジン用モータの少なくともいずれかの比較的近くに配置される。これにより、少なくとも1つの第2コントローラは、バッテリ装置および変速制御用モータまたは少なくとも1つのエンジン用モータの少なくともいずれかから比較的遠くに配置される場合と比較して、ノイズの発生そのものを抑えることができる。
【0020】
また、少なくとも1つの第2コントローラは、エンジンユニットケースに配置される。エンジンユニットケースは、エンジンまたは変速装置の少なくともいずれかの少なくとも一部を収容するため、比較的広い面を有する。そのため、エンジンユニットケースは、少なくとも1つの第2コントローラを設置するためのスペースを確保しやすい。例えば、少なくとも1つの第2コントローラは、エンジンユニットケースの内部の壁面に支持されて配置されてよい。また、例えば、少なくとも1つの第2コントローラは、エンジンユニットケースの内部に設けられた隔離室内に配置されることで、エンジンユニットケースに支持されてもよい。また、例えば、少なくとも1つの第2コントローラは、エンジンユニットケースの外部の壁面に支持されて配置されてもよい。例えば、少なくとも1つの第2コントローラは、エンジンユニットケースの外壁面に設けられた凹み部に配置されることで、エンジンユニットケースに支持されてもよい。この場合、エンジンユニットケースは、エンジンユニットケースの凹み部内に配置される少なくとも1つの第2コントローラを覆うためのカバーを有してもよい。このように、エンジンユニットケースにおける少なくとも1つの第2コントローラの設置の自由度が高いため、ストラドルドビークルの大型化を抑制しつつ、少なくとも1つの第2コントローラを設置することができる。
【0021】
(5)本発明の他の観点によれば、本発明のストラドルドビークルは、上記(1)~(4)のいずれかの構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。
前記第1駆動回路は、前記ストラドルドビークルの走行状態を表示する表示装置、前記エンジンに燃料を噴射して供給する燃料噴射装置、または、前記エンジンに供給された前記燃料に点火する点火装置の少なくともいずれかに通信線で接続され、前記表示装置、前記燃料噴射装置、または、前記点火装置の少なくともいずれかを駆動させる駆動信号を生成し、前記バッテリ装置は、前記第1駆動回路に接続される前記表示装置、前記燃料噴射装置、または、前記点火装置の少なくともいずれかに第4電力線で接続されて電力を供給する。
【0022】
この構成によると、少なくとも1つの第1コントローラは、表示装置、燃料噴射装置、または、点火装置照明装置の少なくともいずれかに通信線で接続される第1駆動回路を含む。また、バッテリ装置は、第1駆動回路に接続される表示装置、燃料噴射装置、または、点火装置の少なくともいずれかに電力線(第4電力線)で接続されて電力を供給する。ここで、バッテリ装置と第1駆動回路に接続される表示装置、燃料噴射装置、または、点火装置の少なくともいずれかとの間の電力線には、第2駆動回路と第2駆動回路に接続された変速制御用モータまたは少なくとも1つのエンジン用モータの少なくともいずれかとの間の電力線に比べて小さい電流が流れる。そのため、バッテリ装置と第1駆動回路に接続される表示装置、燃料噴射装置、または、点火装置の少なくともいずれかとの間の電力線が長くなったとしても、上述の通り第2駆動回路と第2駆動回路に接続された変速制御用モータまたはエンジン用モータの少なくともいずれかとの間の電力線が短ければ、第1通信装置と第2通信装置が接続される多重通信線に対するノイズの影響を抑制することができる。つまり、バッテリ装置と第1駆動回路に接続される表示装置、燃料噴射装置、または、点火装置の少なくともいずれかとの間の電力線の長さが長くなったとしても、上述の通り第2駆動回路と第2駆動回路に接続された変速制御用モータまたは少なくとも1つのエンジン用モータの少なくともいずれかとの間の電力線が短ければ、ノイズの発生そのものを抑えて、第1通信装置と第2通信装置が接続される多重通信線に対するノイズの影響を抑制することができる。また、バッテリ装置と第1駆動回路に接続される表示装置、燃料噴射装置、または、点火装置の少なくともいずれかとの間の電力線の長さを長くすることができる。これにより、少なくとも1つの第1コントローラの設置の自由度が高くなる。そして、ストラドルドビークルの大型化を抑制することができる。
【0023】
(6)本発明の他の観点によれば、本発明のストラドルドビークルは、上記(1)~(5)のいずれかの構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。
前記第2駆動回路に接続される前記少なくとも1つのエンジン用モータは、前記対象軸に前記クランク軸の回転方向と正方向および逆方向のトルクを付与する回転電機、前記対象軸に前記クランク軸の回転方向と正方向のトルクを付与する電動モータ、または、前記対象軸に前記クランク軸の回転方向と逆方向のトルクを付与する発電機の少なくともいずれかである。
【0024】
この構成によると、少なくとも1つのエンジン用モータは、回転電機、電動モータ、または、発電機の少なくともいずれかである。回転電機は、対象軸にクランク軸の回転方向と正方向のトルクおよび逆方向のトルクを付与する。なお、対象軸にクランク軸の回転方向と逆方向のトルクを付与するとは、対象軸から回転方向と正方向のトルクを吸収することを意味している。ここで、回転電機と第2駆動回路との間の電力線には、比較的大きな電流が流れる。ここで、少なくとも1つの第2コントローラは、第2駆動回路と回転電機との間の電力線の長さが、第1通信装置と第2通信装置との間の多重通信線の長さよりも短くなるように配置される。また、少なくとも1つの第2コントローラは、第2駆動回路と回転電機との間の電力線の長さが、第2駆動回路とバッテリ装置との間の電力線の長さよりも短くなるように、配置される。また、電動モータは、対象軸にクランク軸の回転方向と正方向のトルクを付与する。電動モータと第2駆動回路との間の電力線には、比較的大きな電流が流れる。ここで、少なくとも1つの第2コントローラは、第2駆動回路と電動モータとの間の電力線の長さが、第1通信装置と第2通信装置との間の多重通信線の長さよりも短くなるように配置される。また、少なくとも1つの第2コントローラは、第2駆動回路と電動モータとの間の電力線の長さが、第2駆動回路とバッテリ装置との間の電力線の長さよりも短くなるように、配置される。また、発電機は、対象軸にクランク軸の回転方向と逆方向のトルクを付与する。発電機と第2駆動回路との間の電力線には、比較的大きな電流が流れる。ここで、少なくとも1つの第2コントローラは、第2駆動回路と発電機との間の電力線の長さが、第1通信装置と第2通信装置との間の多重通信線の長さよりも短くなるように配置される。また、少なくとも1つの第2コントローラは、第2駆動回路と発電機との間の電力線の長さが、第2駆動回路とバッテリ装置との間の電力線の長さよりも短くなるように、配置される。これにより、多重通信線を、回転電機、電動モータ、または発電機の少なくともいずれか、および、バッテリ装置から離れた位置に配置しなくても、ノイズの発生そのものを抑えて、多重通信線に対するノイズの影響を抑制できる。
【0025】
(7)本発明の他の観点によれば、本発明のストラドルドビークルは、上記(1)~(6)のいずれかの構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。
前記エンジンユニットは、前記変速装置および前記変速制御用モータを含み、前記変速制御用モータは、前記第2駆動回路に前記第3電力線で接続される。
【0026】
この構成によると、第2駆動回路と第2駆動回路に接続された変速制御用モータとの間の電力線には比較的大きな電流が流れる。そして、第2駆動回路と第2駆動回路に接続された変速制御用モータとの間の電力線が長くなればなるほど、多重通信線でノイズが発生しやすい。つまり、第2駆動回路と第2駆動回路に接続された変速制御用モータとの間の電力線の長さが、第1通信装置と第2通信装置との間の多重通信線の長さより長いと、第1通信装置と第2通信装置が接続される多重通信線でノイズが発生しやすい。また、第2駆動回路と第2駆動回路に接続された変速制御用モータとの間の電力線の長さが、第2駆動回路とバッテリ装置との間の電力線の長さよりも長いと、第1通信装置と第2通信装置が接続される多重通信線でノイズが発生しやすい。ここで、少なくとも1つの第2コントローラは、第2駆動回路と第2駆動回路に接続された変速制御用モータとの間の電力線の長さが第1通信装置と第2通信装置との間の多重通信線の長さより短くなるように、配置される。そして、少なくとも1つの第2コントローラは、第2駆動回路と第2駆動回路に接続された変速制御用モータとの間の電力線の長さが、第2駆動回路とバッテリ装置との間の電力線の長さよりも短くなるように、配置される。このため、ノイズの発生そのものを抑えて、第1通信装置と第2通信装置が接続される多重通信線に対するノイズの影響を抑制できる。
【0027】
(8)本発明の他の観点によれば、本発明のストラドルドビークルは、上記(1)~(7)のいずれかの構成に加えて、以下の構成を有することが好ましい。
前記少なくとも1つの第1コントローラは、複数の前記第1コントローラを含み、前記少なくとも1つの第2コントローラは、複数の前記第2コントローラを含み、または、前記少なくとも1つの第1コントローラは、複数の前記第1コントローラを含むと共に、前記少なくとも1つの第2コントローラは、複数の前記第2コントローラを含む。
【0028】
この構成によると、変速制御用モータまたは少なくとも1つのエンジン用モータの少なくともいずれかは、少なくとも1つの第2コントローラの第2駆動回路に接続される。第2駆動回路と第2駆動回路に接続された変速制御用モータまたは少なくとも1つのエンジン用モータの少なくともいずれかとの間の電力線には比較的大きな電流が流れており、この電力線が長くなればなるほど、多重通信線でのノイズが発生しやすい。上記の通り、少なくとも1つの第2コントローラは、第2駆動回路と第2駆動回路に接続された変速制御用モータまたは少なくとも1つのエンジン用モータの少なくともいずれかとの間の電力線の長さが第1通信装置と第2通信装置との間の多重通信線の長さより短くなる位置に、配置される。また、少なくとも1つの第2コントローラは、第2駆動回路と第2駆動回路に接続された変速制御用モータまたは少なくとも1つのエンジン用モータの少なくともいずれかとの間の電力線の長さが、第2駆動回路とバッテリ装置との間の電力線の長さよりも短くなる位置に、配置される。そのため、第2コントローラが複数であったとしても、ノイズの発生そのものを抑えて、第1通信装置と第2通信装置が接続される多重通信線に対するノイズの影響を抑制することができる。そして、少なくとも1つの第1コントローラと少なくとも1つの第2コントローラの間の多重通信線の長さは自由に設定することができる。そのため、第1コントローラが複数であったとしても、第1コントローラの設置の自由度が高くなる。これにより、多重通信線で接続された複数のコントローラをストラドルドビークルに搭載しても、ストラドルドビークルの大型化を抑制することができる。
【0029】
<ストラドルドビークルの定義>
本発明および実施形態における「ストラドルドビークル」は、ライダーが鞍にまたがるような状態で乗車する車両全般を指す。「ストラドルドビークル」には、自動二輪車、自動三輪車、四輪バギー(ATV:All Terrain Vehicle(全地形型車両))等が含まれる。
【0030】
<エンジンの定義>
本発明および実施形態における「エンジン」は、ストラドルドビークルの駆動輪を駆動するための動力源である。「エンジン」は、例えば、クランク軸を含むエンジンであって、クランク軸を回転させることにより駆動輪を駆動してストラドルドビークルを走行させるエンジン車タイプのエンジンである。この場合、「エンジン」は、1つの気筒を有する単気筒エンジンまたは複数の気筒を有する多気筒エンジンであってもよい。「エンジン」は、4ストロークエンジンであっても、2ストロークエンジンであってもよい。「エンジン」は、水冷式のエンジンであっても、水以外の冷却液を用いる液冷式のエンジンで用いる冷却液のエンジンであっても、通常のエンジンよりも多量の潤滑油を冷却に利用する油冷式のエンジンであってもよい。また、「エンジン」は、強制空冷式のエンジンであっても、自然空冷式のエンジンであってもよい。「エンジン」は、ガソリンエンジンでもよいし、ディーゼルエンジンでもよいし、水素ロータリーエンジンでもよい。ディーゼルエンジンは、燃料噴射量だけで出力を制御するエンジンである。また、「エンジン」は、例えば、エンジンで発電機を駆動して発電させ、発電した電力で電動モータが車輪を駆動して走行する電動車タイプのエンジンである。また、「エンジン」は、例えば、エンジンでクランク軸を回転させることにより駆動輪を駆動する状態と、電動モータで駆動輪を駆動する状態とを切り替えることができるハイブリッド車タイプのエンジンである。
【0031】
<エンジンユニットの定義>
本発明および実施形態における「エンジンユニット」は、変速装置を備えてもよい。また、「エンジンユニット」は、過給機を備えていてもよい。過給機は、エンジンの燃焼室に供給される空気を圧縮する装置である。過給機は、機械式過給機であってもよく、排気タービン式過給機(いわゆるターボチャージャ)であってもよい。
【0032】
<多重通信線の定義の定義>
本発明および実施形態における「多重通信線」は、多重化されたデータ通信を行う通信線である。「多重化されたデータ通信」とは、一つの共有された伝送路で複数のデータ通信を同時に行うものである。「多重化されたデータ通信」とは、例えば、ビークルバス規格であるCAN(Controller Area Network)を用いた通信である。CAN通信は、ホストコンピュータなしでマイクロコントローラやデバイスが相互に通信できるように設計された通信を意味する。
【0033】
<コントローラの定義>
本発明および実施の形態における「コントローラ」とは、通信装置と駆動回路とを含む装置である。「通信装置」は、多重通信線に接続可能に構成されて、コントローラを多重化されたデータ通信可能に構成する。「駆動回路」は、各種装置に接続されて、各種装置の駆動を制御するための回路であり、各種装置を駆動させる駆動信号を生成して出力する。「駆動回路」は、例えば、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)である。
【0034】
<第1コントローラの定義>
本発明および実施の形態における「第1コントローラ」は、少なくとも1つのエンジン用モータおよび変速制御用モータとは異なる装置に接続されるコントローラである。第1コントローラは、例えば、表示装置、燃料噴射装置、または、点火装置の少なくとも1つに接続される。第1コントローラは、例えば、表示装置、燃料噴射装置、および、点火装置以外の電子機器に接続されてもよい。第1コントローラは、例えば、表示装置、燃料噴射装置、または、点火装置の少なくとも1つに加えて、表示装置、燃料噴射装置、および、点火装置以外の電子機器に接続されてもよい。第1コントローラは、例えば、表示装置、燃料噴射装置、および、点火装置のいずれにも接続されずに、表示装置、燃料噴射装置、および、点火装置以外の電子機器に接続されてもよい。また、例えば、本発明のストラドルドビークルがスマートキーを所持しているライダーが車両に近づいたこと等によりエンジン始動を可能にするスマートキー装置を有している場合、第1コントローラは、スマートキー装置に接続されてもよい。また、例えば、本発明のストラドルドビークルが電子スロットルを有している場合、第1コントローラは、電子スロットルに接続されてもよい。また、例えば、第1コントローラは、前輪部または後輪部にブレーキを作動させるブレーキ作動装置に接続されるAEB(Autonomous Emergency Braking)やEBA(Emergency Brake Assist)等のブレーキ制御コントローラであってもよい。AEBは、警告やブレーキ補助等を行うための装置である。EBAは、警告やブレーキ操作の支援を行うための装置である。また、例えば、第1コントローラは、各種センサに接続されるACC(Adaptive Cruise Control/アダプティブ・クルーズ・コントロール)であってもよい。ACCは、車間距離を一定に保ちながら走行するための装置である。なお、本発明において、ストラドルドビークルは、1つの第1コントローラを有してもよいし、複数の第1コントローラを有してもよい。ストラドルドビークルが複数の第1コントローラを有する場合、各第1コントローラが第1通信装置と第1駆動回路を有する。少なくとも1つの第1コントローラは、本発明の要件を満たす位置であれば、ストラドルドビークルのどの位置に配置されていてもよい。
【0035】
<第2コントローラの定義>
本発明および実施の形態における「第2コントローラ」は、少なくとも1つのエンジン用モータまたは変速制御用モータの少なくともいずれかに接続されるコントローラである。なお、第2コントローラは、少なくとも1つのエンジン用モータまたは変速制御用モータの少なくともいずれか以外の電子機器に接続されていてもよい。なお、本発明において、ストラドルドビークルは、1つの第2コントローラを有してもよいし、複数の第2コントローラを有してもよい。ストラドルドビークルが複数の第2コントローラを有する場合、各第2コントローラが第2通信装置と第2駆動回路を有する。
【0036】
<変速装置の定義>
本発明および実施の形態における「変速装置」は、動力伝達経路の少なくとも一部に配置される。「動力伝達経路」は、クランク軸から前輪部または後輪部の少なくとも一方まで動力が伝達される経路である。変速装置は、変速比を変更する。「変速比」は、変速装置の出力軸の回転速度に対する変速装置の入力軸の回転速度の比である。「変速装置」は、変速比を変更してクランク軸の動力を伝達する変速機と、変速機から出力された動力の回転速度をギアなどで減速する減速機を含んでよい。変速機は、変速制御用モータを用いて変速比が変更される電子制御式無段変速機であってもよい。また、変速機は、変速制御用モータを用いることなく自動的に変速比が変更されるウェイト式無段変速機であってもよい。また、無段変速機は、ベルト式無段変速機であってもよいし、チェーン式無段変速機であってもよい。また、変速機は、変速制御用モータを用いることなくライダーの操作でシフトドラムを回転させることにより変速比が変更される有段変速機であってもよいし、変速機のギア段を変更する変速制御用モータを用いて変速比が変更される電子制御式有段変速機であってもよい。なお、本発明のストラドルドビークルは、変速装置を有さなくてよい。
【0037】
<変速制御用モータの定義>
本発明および実施の形態における「変速制御用モータ」は、変速装置の変速比を変更させるモータである。「変速制御用モータ」は、バッテリ装置から供給される電力により駆動される。なお、本発明のストラドルドビークルは、変速装置を有さない場合、変速制御用モータを有さない。また、本発明のストラドルドビークルは、変速装置を有する場合、上記の変速装置の定義の通り、変速制御用モータを有しても有さなくてもよい。
【0038】
<少なくとも1つのエンジン用モータの定義>
本発明および実施の形態における「少なくとも1つのエンジン用モータ」は、クランク軸にトルクを付与する少なくとも1つのモータである。「少なくとも1つのエンジン用モータ」は、回転電機、電動モータ、または、発電機の少なくともいずれかである。回転電機は、クランク軸にクランク軸の回転方向と正方向および逆方向のトルクを付与するモータである。回転電機は、例えば、三相発電機であり、永久磁石式発電機である。電動モータは、クランク軸にクランク軸の回転方向と正方向のトルクを付与するモータである。電動モータは、エンジンの始動時のみ駆動されるスターターモータでもよい。電動モータは、少なくともエンジンの始動時以外に駆動されてもよい。発電機は、クランク軸にクランク軸の回転方向と逆方向のトルクを付与するモータである。「少なくとも1つのエンジン用モータ」は、バッテリ装置から供給される電力により駆動される。なお、本発明のストラドルドビークルは、少なくとも1つのエンジン用モータを有する場合、ストラドルドビークルの駆動源は、エンジンであってもよいし、エンジンで発電されるエンジン用モータであってもよい。本発明のストラドルドビークルは、少なくとも1つのエンジン用モータを有さなくてよい。
【0039】
<対象軸の定義>
本発明および実施の形態における「対象軸」とは、少なくとも1つのエンジン用モータがトルクを付与する対象の回転軸である。対象軸は、クランク軸から前輪部または後輪部の少なくとも一方の駆動輪まで動力が伝達される動力伝達経路に配置される軸である。駆動輪は、動力が伝達される前輪部または後輪部の少なくとも一方の車輪である。対象軸は、例えば、クランク軸、後輪部が含む少なくとも1つの駆動輪(後輪)の回転軸、前輪部が含む少なくとも1つの駆動輪(前輪)の回転軸、変速装置が有するプライマリ軸、セカンダリ軸または減速機の回転軸を含む。
【0040】
<第2駆動回路と第2駆動回路に接続される変速制御用モータとの間の電力線の長さ(Lm)、第2駆動回路と少なくとも1つのエンジン用モータとの間の電力線の長さ(Lg)、第2駆動回路とバッテリ装置との間の電力線の長さ(Lb)、第1通信装置と第2通信装置との間の多重通信線の長さ(Lc)の定義>
本発明および実施の形態における「第2駆動回路と第2駆動回路に接続される変速制御用モータとの間の電力線の長さ(Lm)」は、第2コントローラが1つの場合は、その第2コントローラの第2駆動回路と第2駆動回路に接続される変速制御用モータとの間の電力線の長さ(Lm)である。また、第2コントローラが複数の場合は、第2コントローラそれぞれの第2駆動回路と第2駆動回路に接続される変速制御用モータとの間の電力線の長さ(Lm)である。本発明および実施の形態における「第2駆動回路と少なくとも1つのエンジン用モータとの間の電力線の長さ(Lg)」は、第2コントローラが1つの場合は、その第2コントローラの第2駆動回路と少なくとも1つのエンジン用モータとの間の電力線の長さ(Lg)である。また、第2コントローラが複数の場合は、第2コントローラそれぞれの第2駆動回路と少なくとも1つのエンジン用モータとの間の電力線の長さ(Lg)である。さらに、エンジン用モータが1つの場合は、第2駆動回路とそのエンジン用モータとの間の電力線の長さ(Lg)である。また、エンジン用モータが複数ある場合は、第2駆動回路と複数のエンジン用モータそれぞれとの間の電力線の長さを当該長さ(Lg)である。本発明および実施の形態における「第2駆動回路とバッテリ装置との間の電力線の長さ(Lb)」は、第2コントローラが1つの場合は、その第2コントローラの第2駆動回路とバッテリ装置との間の電力線の長さ(Lb)である。また、第2コントローラが複数の場合は、第2コントローラそれぞれの第2駆動回路とバッテリ装置との間の電力線の長さ(Lb)である。本発明および実施の形態における「第1通信装置と第2通信装置との間の多重通信線の長さ(Lc)」は、第1コントローラおよび第2コントローラが1つの場合は、その第1コントローラの第1通信装置とその第2コントローラの第2通信装置との間の多重通信線の長さ(Lc)である。第1コントローラが1つで、第2コントローラが複数の場合は、その第1コントローラの第1通信装置と第2コントローラそれぞれの第2通信装置との間の多重通信線の長さ(Lc)である。第1コントローラが複数で、第2コントローラが1つの場合は、第1コントローラそれぞれの第1通信装置とその第2コントローラの第2通信装置との間の多重通信線の長さ(Lc)である。第1コントローラが複数で、第2コントローラが複数の場合は、第1コントローラそれぞれの第1通信装置と第2コントローラそれぞれの第2通信装置との間の多重通信線の長さ(Lc)である。
【0041】
<エンジンユニットケースの定義>
本発明および実施の形態における「エンジンユニットケース」は、エンジンまたは変速装置の少なくともいずれかの少なくとも一部を収容するケースである。「エンジンユニットケース」は、例えば、エンジンの少なくとも一部を収容するケースでもよい。「エンジンユニットケース」は、例えば、変速装置の少なくとも一部を収容するケースでもよい。「エンジンユニットケース」は、例えば、別々に成形されたエンジンの少なくとも一部を収容するケースおよび変速装置の少なくとも一部を収容するケースが合体されて形成されたケースでもよい。「エンジンユニットケース」は、例えば、エンジンの少なくとも一部を収容するケースとおよび変速装置の少なくとも一部を収容するケースが一体で成形されたケースでもよい。
【0042】
<電力線および通信線の定義>
本発明および実施の形態における「電力線」は、バッテリ装置に接続されて、バッテリ装置の電力が伝送される線である。本発明および実施の形態における「通信線」は、通信装置または駆動回路に接続されて、駆動信号などのデータが伝送される線である。なお、通信線が電力線を兼ねて構成されていてもよいし、電力線が通信線を兼ねて構成されていてもよい。
【0043】
<多重通信線に対するノイズの定義>
本実施形態における「多重通信線に対するノイズ」とは、多重通信線で行われる多重化されたデータ通信に混入するノイズである。また、「多重通信線に対するノイズの影響」とは、多重通信線で行われる多重化されたデータ通信が受けるノイズの影響である。
【0044】
<その他の定義>
本明細書において、ある部品の端部とは、部品の端とその近傍部とを合わせた部分を意味する。
【0045】
本明細書において、A方向に沿った方向とは、A方向と平行な方向に限らない。A方向に沿った方向とは、A方向に対して±45°の範囲で傾斜している方向を含む。ある直線がA方向に沿うという場合にも、この定義は適用される。なお、A方向は、特定の方向を指すものではない。A方向を、鉛直方向、上下方向、前後方向または左右方向に置き換えることができる。
【0046】
本発明において、含む(including)、有する(comprising)、備える(having)およびこれらの派生語は、列挙されたアイテムおよびその等価物に加えて追加的アイテムをも包含することが意図されて用いられている。取り付けられた(mounted)、接続された(connected)および結合された(coupled)という用語は、広義に用いられている。具体的には、直接的な取付、接続および結合だけでなく、間接的な取付、接続および結合も含む。さらに、接続された(connected)および結合された(coupled)は、物理的または機械的な接続/結合に限られない。それらは、直接的なまたは間接的な電気的接続/結合も含む。
【0047】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術および本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、理想化されたまたは過度に形式的な意味で解釈されることはない。
【0048】
本明細書において、「好ましい」という用語は非排他的なものである。「好ましい」は、「好ましいがこれに限定されるものではない」ということを意味する。本明細書において、「好ましい」と記載された構成は、少なくとも、上記(1)の構成により得られる上記効果を奏する。また、本明細書において、「してもよい」という用語は非排他的なものである。「してもよい」は、「してもよいがこれに限定されるものではない」という意味である。本明細書において、「してもよい」と記載された構成は、少なくとも、上記(1)の構成により得られる上記効果を奏する。
【0049】
特許請求の範囲において、ある構成要素の数を明確に特定しておらず、英語に翻訳された場合に単数で表示される場合、本発明は、この構成要素を、複数有していてもよい。また本発明は、この構成要素を1つだけ有していてもよい。
【0050】
本発明では、上述した他の観点による構成を互いに組み合わせることを制限しない。
本発明の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明に記載されたまたは図面に図示された構成要素の構成および配置の詳細に制限されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態でも可能であり、様々な変更を加えた実施形態でも可能である。また、本発明は、後述する変形例を適宜組み合わせて実施することができる。
【発明の効果】
【0051】
本発明のストラドルドビークルは、多重化されたデータ通信を行う多重通信線で接続された複数のコントローラおよびエンジンユニットが搭載されたストラドルドビークルにおいて、多重通信線に対するノイズの影響を抑制しつつ、ストラドルドビークルの大型化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】第1、2、6、7実施形態のストラドルドビークルの概略構成を示す模式図である。
【
図2】第3実施形態のストラドルドビークルをプライマリ軸部の回転軸線方向に見たエンジンユニットおよび第2コントローラの配置を示す模式図である。
【
図3】第4実施形態のストラドルドビークルの概略構成を示す模式図である。
【
図4】第4実施形態のストラドルドビークルを示す左側面図である。
【
図5】第5実施形態のストラドルドビークルに搭載される複数のコントローラを示すブロック図である。
【
図6】第8実施形態のストラドルドビークルに搭載される複数のコントローラを示すブロック図である。
【
図7】第8実施形態のストラドルドビークルに搭載される複数のコントローラを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
(方向の定義)
図の中において、矢印F、B、L、R、U、Dは、それぞれ前方向、後方向、左方向、右方向、上方向、下方向を表す。本明細書において、前後方向、左右方向、上下方向とは、それぞれストラドルドビークルに乗車するライダーから見た前後方向、左右方向、上下方向を意味するものとする。但し、ストラドルドビークルは、水平な地面に配置されたものとする。
【0054】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係るストラドルドビークル1について、
図1を参照しつつ説明する。
図1に示すように、ストラドルドビークル1は、前輪部2と、後輪部3と、車体フレーム7と、エンジンユニット40と、少なくとも1つの第1コントローラ50と、少なくとも1つの第2コントローラ60と、バッテリ装置72とを有する。
【0055】
前輪部2は、少なくとも1つの前輪を含む。後輪部3は、少なくとも1つの後輪を含む。後輪部3は、前輪部2より車両前後方向の後方向に配置される。
【0056】
エンジンユニット40は、エンジン20を含む。エンジン20は、クランク軸21を有する。エンジンユニット40は、車体フレーム7に支持される。バッテリ装置72は、車体フレーム7に支持される。
【0057】
ストラドルドビークル1は、少なくとも1つの第1コントローラ50および少なくとも1つの第2コントローラ60を有する。少なくとも1つの第1コントローラ50は、第1通信装置51および第1駆動回路52を含む。第1通信装置51は、多重化されたデータ通信を行う多重通信線55に接続されて、多重化されたデータ通信可能に構成される。第1駆動回路52は、バッテリ装置72に電力線(第1電力線)52aで接続されて、バッテリ装置72から電力が供給される。
【0058】
少なくとも1つの第2コントローラ60は、第2通信装置61および第2駆動回路62を含む。第2通信装置61は、多重化されたデータ通信を行う多重通信線55に接続されて、多重化されたデータ通信可能に構成される。第2駆動回路62は、バッテリ装置72に電力線72aで接続されて、バッテリ装置72から電力が供給される。少なくとも1つの第2コントローラ60の第2通信装置61は、少なくとも、少なくとも1つの第1コントローラ50の第1通信装置51と多重化されたデータ通信が可能である。
【0059】
多重通信線55は、第1通信装置51および第2通信装置61を接続する。つまり、第1通信装置51を含む少なくとも1つの第1コントローラ50および第2通信装置61を含む少なくとも1つの第2コントローラ60は、多重化されたデータ通信を行う。
【0060】
エンジンユニット40は、エンジン用モータ80、または、変速制御用モータ71の少なくともいずれかを含む。エンジンユニット40が変速制御用モータ71を含む場合、エンジンユニット40は変速装置30を含む。変速装置30は、前輪部2または後輪部3の少なくとも一方に動力を伝達する。なお、
図1では、後輪部3が有する駆動輪である少なくとも1つの後輪3aに動力が伝達されている。変速制御用モータ71は、変速装置30の変速比を変更するモータである。エンジン用モータ80は、対象軸82にトルクを付与するモータである。少なくとも1つのエンジン用モータがトルクを付与する対象軸は、クランク軸21を含む。例えば、
図1中の(a)に示すように、エンジンユニット40は、変速装置30および変速制御用モータ71を有してもよい。また、例えば、
図1中の(b)に示すように、エンジンユニット40は、変速装置30およびエンジン用モータ80を有してもよい。また、例えば、
図1中の(c)に示すように、エンジンユニット40は、変速装置30、変速制御用モータ71およびエンジン用モータ80を有してもよい。また、例えば、
図1中の(d)に示すように、エンジンユニット40は、対象軸82であるクランク軸21にトルクを付与するモータおよび後輪3aの回転軸3bにトルクを付与するモータを含む複数のエンジン用モータ80を有してもよい。
【0061】
ここで、エンジンユニット40の動力伝達経路について説明する。動力伝達経路は、クランク軸21から後輪部3に至るまで、エンジン20で発生した動力が伝達される経路である。クランク軸21が、動力伝達経路における上流端である。後輪部3が、動力伝達経路における下流端である。変速装置30は、クランク軸21の動力を後輪部3に動力伝達可能に構成される。変速装置30は、クランク軸21から後輪部3に至るまでのエンジンユニット40の動力伝達経路の少なくとも一部に配置される。
【0062】
第2コントローラ60は、第2通信装置61と、第2駆動回路62とを含む。第2駆動回路62は、バッテリ装置72に電力線(第2電力線)72aで接続されて、バッテリ装置72から電力が供給される。第2駆動回路62は、変速制御用モータ71に電力線(第3電力線)71aで接続される。第2駆動回路62は、少なくとも1つのエンジン用モータ80に電力線(第3電力線)80aで接続される。第2駆動回路62は、バッテリ装置72、変速制御用モータ71およびエンジン用モータ80を駆動させる駆動信号を生成する。変速制御用モータ71およびエンジン用モータ80は、少なくとも1つの第2コントローラ60で制御される。また、バッテリ装置72は、第2駆動回路62を介して、少なくとも、変速制御用モータ71および少なくとも1つのエンジン用モータ80に電力を供給する。なお、バッテリ装置72は、第2駆動回路62に接続された変速制御用モータ71および少なくとも1つのエンジン用モータ80に直接接続されて電力を供給してもよい。
【0063】
少なくとも1つの第2コントローラ60に含まれる第2駆動回路62は、バッテリ装置72と、変速制御用モータ71および少なくとも1つのエンジン用モータ80の少なくもいずれかと、に接続される。少なくとも1つの第2コントローラ60は、第2駆動回路62と変速制御用モータ71との間の電力線71aの長さLmおよび第2駆動回路62と少なくとも1つのエンジン用モータ80との間の電力線80aの長さLgが、第2駆動回路62とバッテリ装置72との間の電力線72aの長さLbよりも短くなるように配置される。なお、第2駆動回路62に接続される少なくとも1つのエンジン用モータ80が複数ある場合は、少なくとも1つのエンジン用モータ80の中で最も長い第2駆動回路62とエンジン用モータ80との間の電力線80aの長さを当該長さLgとする。少なくとも1つの第2コントローラ60は、第1通信装置51と第2通信装置61との間の多重通信線55の長さLcが、第2駆動回路62と変速制御用モータ71との間の電力線71aの長さLmおよび第2駆動回路62とエンジン用モータ80との間の電力線80aの長さLgより長くなるように配置される。
【0064】
本発明の第1実施形態の構成によると、バッテリ装置72は、第2駆動回路62に接続された変速制御用モータ71および少なくとも1つのエンジン用モータ80に電力を供給する。バッテリ装置72は、第2駆動回路62を介して、第2駆動回路62に接続された変速制御用モータ71および少なくとも1つのエンジン用モータ80に電力を供給する。なお、バッテリ装置72は、第2駆動回路62に接続された変速制御用モータ71および少なくとも1つのエンジン用モータ80に直接接続されて電力を供給してもよい。そのため、第2駆動回路62と変速制御用モータ71とを接続する電力線71aおよび第2駆動回路62と少なくとも1つのエンジン用モータ80とを接続する電力線80aには比較的大きな電流が流れる。そして、この電力線71aおよび電力線80aが長くなればなるほど、多重通信線55でのノイズが発生しやすい。つまり、第2駆動回路62と第2駆動回路62に接続された変速制御用モータ71との間の電力線71aの長さおよび第2駆動回路62と第2駆動回路62に接続されたエンジン用モータ80との間の電力線80aの長さが、第1通信装置51と第2通信装置61との間の多重通信線55の長さより長いと、多重通信線55でのノイズが発生しやすい。また、バッテリ装置72は大きさが比較的大きいため、バッテリ装置72の設置の自由度は低い。つまり、バッテリ装置72の設置位置の制約によって、バッテリ装置72と第2駆動回路62とを接続する電力線72aの長さが変えられない場合がある。そのため、第2駆動回路62と第2駆動回路62に接続された変速制御用モータ71との間の電力線71aおよび第2駆動回路62と第2駆動回路62に接続された少なくとも1つのエンジン用モータ80との間の電力線80aが、第2駆動回路62とバッテリ装置72との間の電力線72aの長さよりも長いと、多重通信線55でのノイズが発生しやすい。そこで、少なくとも1つの第2コントローラ60は、第2駆動回路62と第2駆動回路62に接続された変速制御用モータ71とを接続する電力線71aおよび第2駆動回路62と第2駆動回路62に接続された少なくとも1つのエンジン用モータ80とを接続する電力線80aの長さが、第2駆動回路62とバッテリ装置72との間の電力線72aの長さよりも短くなるように、配置される。これにより、第2駆動回路62と第2駆動回路62に接続された変速制御用モータ71とを接続する電力線71aおよび第2駆動回路62と第2駆動回路62に接続された少なくとも1つのエンジン用モータ80とを接続する電力線80aの長さが、第2駆動回路62とバッテリ装置72との間の電力線72aの長さよりも長い場合と比較して、ノイズの発生そのものを抑えることができる。そして、多重通信線55をバッテリ装置72、変速制御用モータ71および少なくとも1つのエンジン用モータ80から離れた位置に配置しなくても、多重通信線55に対するノイズの影響を抑制することができる。
【0065】
また、少なくとも1つの第2コントローラ60は、第2駆動回路62と第2駆動回路62に接続された変速制御用モータ71との間の電力線71aおよび第2駆動回路62と第2駆動回路62に接続された少なくとも1つのエンジン用モータ80との間の電力線80aの長さが、第1通信装置51と第2通信装置61との間の多重通信線55の長さより長くなるように、配置される。つまり、少なくとも1つの第1コントローラ50は、第1通信装置51と第2通信装置61との間の多重通信線55の長さが第2駆動回路62と変速制御用モータ71との間の電力線71aの長さおよび第2駆動回路62と少なくとも1つのエンジン用モータ80との間の電力線80aの長さより長くなるように、配置できる。そのため、第1通信装置51と第2通信装置61との間の多重通信線55の長さを長くすることができ、第1通信装置51を含む少なくとも1つの第1コントローラ50を、少なくとも1つの第2コントローラ60から離れた位置に配置することができる。これにより、第1通信装置51と第2通信装置61との間の多重通信線55の長さを長くすることができる。これにより、第1通信装置51を含む少なくとも1つの第1コントローラ50の設置位置の自由度を向上させることができる。そして、車両の大型化を抑制することができる。
【0066】
以上から、多重化されたデータ通信を行う多重通信線55で接続された複数のコントローラ50、60が搭載されたストラドルドビークル1において、多重通信線55に対するノイズの影響を抑制しつつ、ストラドルドビークル1の大型化を抑制できる。
【0067】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態に係るストラドルドビークル1について、
図1を参照しつつ説明する。第2実施形態のストラドルドビークル1は、第1実施形態の構成に加えて、以下の構成を備える。
【0068】
図1に示すように、ストラドルドビークル1が有する少なくとも1つの第2コントローラ60は、第1通信装置51と第2通信装置61との間の多重通信線55の長さLcが、第2駆動回路62とバッテリ装置72との間の電力線72aの長さLbより長くなる位置に配置される。
【0069】
本発明の第2実施形態の構成によると、第1通信装置51と第2通信装置61との間の多重通信線55の長さLcが、第2駆動回路62とバッテリ装置72との間の電力線Lbの長さより長い。そのため、多重通信線55でのノイズが発生しにくい。このため、第1通信装置51と第2通信装置61が接続される多重通信線55を回転電機80およびバッテリ装置72から離れた位置に配置しなくても、多重通信線55に対するノイズの影響を抑制することができる。
【0070】
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態に係るストラドルドビークル1について、
図2を参照しつつ説明する。第3実施形態のストラドルドビークル1は、第1実施形態または第2実施形態の構成に加えて、以下の構成を備える。
【0071】
図2に示すように、エンジンユニット40は、変速装置30を含む。変速装置30は、エンジン20の動力を伝達可能に構成される。変速装置30は、プライマリシーブ31とセカンダリシーブ32と、ベルト33とを有する。プライマリシーブ31は、セカンダリシーブ32より前に配置される。
【0072】
変速装置30は、変速比を変更してクランク軸21の動力を伝達する。変速装置30は、ギアを有さない無段変速機である。なお、変速装置30は、無段変速機および無段変速機から出力された動力の回転速度をギアなどで減速する減速機を含んでよい。無段変速機は、変速制御用モータ71によって後述するプライマリシーブ31の可動シーブが移動される電子制御式無段変速機であってもよいし、ウェイトに作用する遠心力によって後述するプライマリシーブ31の可動シーブが移動されウェイト式無段変速機であってもよい。
【0073】
プライマリシーブ31は、クランク軸21の動力が伝達されるプライマリ軸部21cに設けられる。プライマリシーブ31は、プライマリ軸部21cと一体的に回転可能に構成される。プライマリ軸部21cは、クランク軸21と同軸になるように一体に形成されてもよい。また、プライマリ軸部21cは、クランク軸21の回転軸線方向とその回転軸線方向が平行になるように配置されて、動力伝達部材(図示せず)によりクランク軸21の動力が伝達されるように構成されてもよい。プライマリシーブ31は、クランク軸21と一体的に回転可能となっている。プライマリシーブ31は、プライマリ軸部21cの軸線方向に移動可能な可動シーブおよびプライマリ軸部21cの軸線方向に移動不能な固定シーブを備え、可動シーブおよび固定シーブの間に形成される溝の幅が変化する。プライマリシーブ31の可動シーブは、例えば、変速制御用モータ71によって移動されたり、ウェイトに作用する遠心力によって移動されたりする。これにより、プライマリシーブ31は、ベルト33の巻き掛け径が変化する。
【0074】
セカンダリシーブ32は、プライマリ軸部21cの回転軸線方向とその回転軸線方向が平行になるように配置されたセカンダリ軸部34に設けられる。セカンダリシーブ32は、セカンダリ軸部34と一体的に回転可能に構成される。セカンダリシーブ32は、セカンダリ軸部34の軸線方向に移動可能な可動シーブおよびセカンダリ軸部34の軸線方向に移動不能な固定シーブを備え、可動シーブおよび固定シーブの間に形成される溝の幅が変化する。セカンダリシーブ32の可動シーブは、例えば、固定シーブに近づくようにばねによって付勢される。これにより、セカンダリシーブ32は、ベルト33の巻き掛け径が変化する。なお、セカンダリ軸部34には、クラッチが配置されて良い。クラッチは、セカンダリシーブ32からセカンダリ軸部34への動力の伝達を接続/切断することができる。
【0075】
ベルト33は、環状に形成されている。ベルト33は、例えばゴム製または樹脂製の伝動ベルトである。ベルト33は、例えばV字状の断面を有するVベルトである。ベルト33は、プライマリシーブ31およびセカンダリシーブ32に巻回される。ベルト33は、プライマリシーブ31の可動シーブおよび固定シーブの間に巻回される。ベルト33は、セカンダリシーブ32の可動シーブおよび固定シーブの間に巻回される。ベルト33は、クランク軸21の回転に伴いプライマリシーブ31が回転することにより、回転する。セカンダリシーブ32は、プライマリシーブ31の回転に伴いベルト33が回転することにより、回転する。セカンダリシーブ32は、ベルト33が回転することにより、プライマリシーブ31と共に回転する。ベルト33は、クランク軸21からプライマリシーブ31に伝達された動力をセカンダリシーブ32に伝達する。プライマリシーブ31およびセカンダリシーブ32に巻回されるベルト33の巻き掛け径が変化することにより、変速比が変化する。
【0076】
変速装置30は、クランク軸21から後輪部3に至るまでのエンジンユニット40の動力伝達経路の少なくとも一部に配置される。変速装置30は、クランク軸21に設けられたプライマリシーブ31により、動力伝達可能に構成される。そして、クランク軸21の動力は、プライマリシーブ31と共にベルト33が巻き掛けられたセカンダリシーブ32が設けられたセカンダリ軸部34に伝達される。セカンダリ軸部34の動力は、後輪部3の少なくとも1つの後輪に伝達される。
【0077】
少なくとも1つの第2コントローラ60は、それぞれの少なくとも一部が、プライマリ軸部21cの回転軸線方向に見て、プライマリ軸部21cおよびセカンダリ軸部34に重ならない位置に配置される。少なくとも1つの第2コントローラ60は、それぞれの全てがプライマリ軸部21cおよびセカンダリ軸部34に重ならない位置に配置されてよい。また、少なくとも1つの第2コントローラ60は、それぞれの全てがプライマリシーブ31およびセカンダリシーブ32に重ならない位置に配置されてよい。例えば、エンジンユニットをプライマリ軸部21cの回転軸線方向に見た
図2中の(a)~(c)に示すように、第2コントローラ60は、前後方向において、プライマリシーブ31およびセカンダリシーブ32の間に配置されて良い。つまり、プライマリシーブ31、第2コントローラ60、および、セカンダリシーブ32は、この順に、車両前後方向に沿って配置される。また、
図2中の(a)に示すように、第2コントローラ60は、上下方向において、その少なくとも一部が、プライマリシーブ31およびセカンダリシーブ32に重なる位置に配置されて良い。また、
図2中の(b)および(c)に示すように、第2コントローラ60は、上下方向において、プライマリシーブ31およびセカンダリシーブ32に重ならない位置に配置されて良い。例えば、
図2中の(b)に示すように、第2コントローラ60は、上下方向において、プライマリシーブ31およびセカンダリシーブ32より下の位置に配置されて良い。また、例えば、
図2中の(c)に示すように、第2コントローラ60は、上下方向において、プライマリシーブ31およびセカンダリシーブ32より上の位置に配置されて良い。また、
図2中の(d)に示すように、第2コントローラ60は、前後方向において、プライマリシーブ31およびセカンダリシーブ32より後に配置されて良い。また、例えば、
図2中の(e)に示すように、第2コントローラ60は、前後方向において、プライマリシーブ31およびセカンダリシーブ32より前に配置されて良い。
図2中の(f)に示すように、少なくとも1つの第2コントローラ60は、その少なくとも一部が、プライマリシーブ31およびセカンダリシーブ32に重なる位置に配置されてよい。また、
図2中の(f)に示すように、少なくとも1つの第2コントローラ60は、その一部が、プライマリ軸部21cおよびセカンダリ軸部34に重なる位置に配置されてよい。なお、少なくとも1つの第2コントローラ60は、その全てが、プライマリシーブ31およびセカンダリシーブ32に重なる位置に配置されてよい。
【0078】
本発明の第3実施形態の構成によると、少なくとも一部が、少なくとも1つの第2コントローラ60は、プライマリ軸部21cの回転軸線方向に見て、プライマリ軸部21cおよびセカンダリ軸部34に重ならない位置に配置される。プライマリ軸部21cの回転軸線方向に見て、プライマリ軸部21cおよびセカンダリ軸部34に重ならない位置は、比較的広いスペースを有する。そのため、少なくとも1つの第2コントローラ60を設置するためのスペースを確保しやすい。このように、少なくとも1つの第2コントローラ60の設置の自由度が高いため、ストラドルドビークル1の大型化を抑制しつつ、少なくとも1つの第2コントローラ60を設置することができる。
【0079】
(第4実施形態)
以下、本発明の第4実施形態に係るストラドルドビークル1について、
図3を参照しつつ説明する。第4実施形態のストラドルドビークル1は、第1実施形態~第3実施形態のいずれかの構成に加えて、以下の構成を備える。
【0080】
図3に示すように、ストラドルドビークル1は、エンジンユニットケース41を有する。エンジンユニットケース41は、エンジン20または変速装置30の少なくともいずれかの少なくとも一部を収容する。
【0081】
少なくとも1つの第2コントローラ60は、エンジンユニットケース41に支持される。少なくとも1つの第2コントローラ60は、エンジンユニットケース41に直接支持されてもよいし、他の部材を介して間接的にエンジンユニットケース41に支持されてもよい。例えば、少なくとも1つの第2コントローラ60は、エンジンユニットケース41の内部の壁面に支持されて配置されてよい。また、例えば、少なくとも1つの第2コントローラ60は、エンジンユニットケース41の内部に設けられた隔離室内に配置されることで、エンジンユニットケース41に支持されてもよい。また、例えば、少なくとも1つの第2コントローラ60は、エンジンユニットケース41の外部の壁面に支持されて配置されてもよい。例えば、少なくとも1つの第2コントローラ60は、エンジンユニットケース41の外壁面に設けられた凹み部に配置されることで、エンジンユニットケース41に支持されてもよい。この場合、エンジンユニットケース41は、エンジンユニットケース41の凹み部内に配置される少なくとも1つの第2コントローラ60を覆うためのカバーを有してもよい。
【0082】
少なくとも1つの第1コントローラ50は、エンジンユニットケース41に支持されてもよいし、支持されなくてもよい。
【0083】
この構成によると、バッテリ装置72および変速制御用モータ71または少なくとも1つのエンジン用モータ80の少なくともいずれかに接続される第2駆動回路62を含む少なくとも1つの第2コントローラ60を、エンジン20または変速装置30の少なくともいずれかの少なくとも一部を収容するエンジンユニットケース41に配置している。つまり、少なくとも1つの第2コントローラ60は、バッテリ装置72および変速制御用モータ71または少なくとも1つのエンジン用モータ80の少なくともいずれかの比較的近くに配置される。これにより、少なくとも1つの第2コントローラ60は、バッテリ装置72および変速制御用モータ71または少なくとも1つのエンジン用モータ80の少なくともいずれかから比較的遠くに配置される場合と比較して、ノイズの発生そのものを抑えることができる。そして、多重通信線55に対するノイズの影響を抑制することができる。
【0084】
また、少なくとも1つの第2コントローラ60は、エンジンユニットケース41に配置される。エンジンユニットケース41は、エンジン20または変速装置30の少なくともいずれかの少なくとも一部を収容するため、比較的広い面を有する。そのため、エンジンユニットケース41は、少なくとも1つの第2コントローラ60を設置するためのスペースを確保しやすい。このように、エンジンユニットケース41における少なくとも1つの第2コントローラ60の設置の自由度が高いため、ストラドルドビークル1の大型化を抑制しつつ、少なくとも1つの第2コントローラ60を設置することができる。
【0085】
(第5実施形態)
以下、本発明の第5実施形態に係るストラドルドビークル1について、
図4および
図5を参照しつつ説明する。第4実施形態のストラドルドビークル1は、第1実施形態~第4実施形態のいずれかの構成に加えて、以下の構成を備える。なお、本発明の第4実施形態では、ストラドルドビークルの一例として、自動二輪車を示す。
図4は、水平な路面に直立した状態で配置されたストラドルドビークル1を示している。
【0086】
図4に示すように、ストラドルドビークル1は、前輪部2と、後輪部3と、車体フレーム7と、エンジンユニット40と、少なくとも1つの第1コントローラ50と、少なくとも1つの第2コントローラ60とを有する。
図4では、車体フレーム7の一部を破線で表示している。
【0087】
前輪部2は、1つの前輪を有する。後輪部3は、1つの後輪を有する。後輪部3は、前輪部2より車両後方向に配置される。前輪部2には、前ブレーキ装置45が設けられる。後輪部3には、後ブレーキ装置47が設けられる。前ブレーキ装置45は、前輪部2に前輪制動力を付与可能に構成される。後ブレーキ装置47は、後輪部3に後輪制動力を付与可能に構成される。前ブレーキ操作子46は、前輪制動力を前輪部2に付与するためにライダーによって操作される。前ブレーキ操作子46は、例えば後述するステアリングホイールユニット4に配置される右ブレーキレバーである。後ブレーキ操作子48は、後輪制動力を後輪部3に付与するためにライダーによって操作される。後ブレーキ操作子48は、例えば後述するステアリングホイールユニット4に配置される左ブレーキレバーである。前ブレーキ操作子46が操作された場合、前ブレーキ装置45が作動して前輪制動力が発生する。後ブレーキ操作子48が操作された場合、後ブレーキ装置47が作動して後輪制動力が発生する。
【0088】
車体フレーム7は、アンダーボーン型の車体フレームである。車体フレーム7は、パイプ状に形成され、その前部にヘッドパイプ7aを有する。ヘッドパイプ7aには、ステアリングシャフト(図示せず)が回転可能に挿入されている。ステアリングシャフトの上端部は、ステアリングホイールユニット4に連結されている。ステアリングホイールユニット4には、一対のフロントフォーク5の上端部が固定されている。フロントフォーク5の下端部は、前輪部2を支持している。前輪部2は、ステアリングホイールユニット4の操作によって操舵される。ステアリングホイールユニット4が左右方向に回されると、前輪部2の幅方向中央を通る平面は、前後方向(FB方向)に対して傾斜する。
【0089】
車体フレーム7には、エンジンユニット40が揺動可能に支持されている。エンジンユニット40の後端部は、後輪部3を支持している。エンジンユニットケース41は、エンジンユニット40に含まれる。エンジンユニット40は、ボス部6aにおいて、リヤサスペンション7bの一端部と連結されている。リヤサスペンション7bの他端部は、車体フレーム7に連結されている。リヤサスペンション7bは、上下方向に伸縮する。
【0090】
車体フレーム7の上部には、シート8が支持されている。フロントフォーク5の上部はフロントカバー9で覆われている。シート8の下方向にはサイドカバー10が配置されている。フロントカバー9とサイドカバー10との間には、ステップボード11が配置されている。ステップボード11は、ストラドルドビークル1の下部の左部および右部に配置されている。
【0091】
ストラドルドビークル1は、車両前方向に光を照射するヘッドライトユニット(照明装置)13を有する。ヘッドライトユニット13は、支持部材(図示せず)を介して車体フレーム7に支持される。ヘッドライトユニット13は、後述するバッテリ装置72に接続される。ヘッドライトユニット13は、例えばステアリングホイールユニット4に配置されるスイッチにより、バッテリ装置72との接続状態および切断状態が切り換えられる。ヘッドライトユニット13は、バッテリ装置72と接続状態において、車両前方向に光を照射する。ヘッドライトユニット13は、バッテリ装置72と切断状態において、車両前方向に光を照射しない。なお、ヘッドライトユニット13は、第1駆動回路52に接続されて、少なくとも1つの第1コントローラ50により制御されるように構成されてもよい。
【0092】
燃料タンク(図示せず)は、シート8の下方向のサイドカバー10の内部に配置されている。燃料タンクは、車体フレーム7に支持されている。燃料タンクは、燃料を収容する。燃料タンクに収容された燃料は、後述する燃料噴射装置19により、エンジン20の燃焼室に供給される。
【0093】
バッテリ装置72は、シート8の下方向のサイドカバー10の内部に配置されている。バッテリ装置72は、車体フレーム7に支持されている。バッテリ装置72は、少なくとも1つの第1コントローラ50の第1駆動回路52に電力線52aにより接続されている。また、バッテリ装置72は、少なくとも1つの第2コントローラ60の第2駆動回路62に電力線72aにより接続されている。バッテリ装置72は、通信線12a、通信線19a、および、通信線29aにより接続された表示装置12、燃料噴射装置19、および、点火装置29に電力を供給する。また、バッテリ装置72は、少なくとも1つの第2コントローラ60を介して、第2駆動回路62に電力線80aにより接続された回転電機80に電力を供給する。また、少なくとも1つの第1コントローラ50には、図示しない各種センサが電力線により接続されていてもよい。この場合、バッテリ装置72は、少なくとも1つの第1コントローラ50に電力線により接続された図示しない各種センサなどの電子機器に電力を供給する。また、少なくとも1つの第2コントローラ60には、図示しない各種センサが電力線により接続されていてもよい。この場合、バッテリ装置72は、少なくとも1つの第2コントローラ60に電力線により接続された図示しない各種センサなどの電子機器に電力を供給する。 バッテリ装置72は、バッテリ本体の充電と放電を監視および管理するバッテリ管理装置(図示せず)を含む。
【0094】
ステアリングホイールユニット4には、アクセルグリップ(図示せず)およびブレーキレバー(図示せず)が設けられている。ステアリングホイールユニット4の右グリップは、アクセルグリップを構成する。アクセルグリップは、ライダーによって操作されて前後方向に回転する。アクセルグリップは、エンジンの出力を調整するために操作される。ステアリングホイールユニット4の右グリップには、ブレーキレバーが設けられる。ブレーキレバーは、ライダーによって操作される。ブレーキレバーは、前輪部2の回転を抑制するために操作される。また、ステアリングホイールユニット4には、メインスイッチ等の各種スイッチ(図示せず)が設けられている。この各種スイッチは、少なくとも1つの第1コントローラ50に接続される。また、ステアリングホイールユニット4には、表示装置12が設けられている。表示装置12には、車速や、エンジン回転速度等が表示される。また、表示装置12には、インジケータ(表示灯)が設けられている。
【0095】
図5に示すように、ストラドルドビークル1は、少なくとも1つの第1コントローラ50および少なくとも1つの第2コントローラ60を有する。
【0096】
少なくとも1つの第2コントローラ60は、第2通信装置61および第2駆動回路62を有する。第2通信装置61は、多重通信線55に接続されて、少なくとも1つの第2コントローラ60が多重化されたデータ通信可能に構成される。第2駆動回路62は、電力線62aでバッテリ装置72に接続されて、バッテリ装置72から電力が供給される。
【0097】
少なくとも1つの第1コントローラ50は、第1通信装置51および第1駆動回路52を有する。第1通信装置51は、多重通信線55に接続されて、多重化されたデータ通信可能に構成される。第1駆動回路52は、電力線52aでバッテリ装置72に接続されて、バッテリ装置72から電力が供給される。
【0098】
第1駆動回路52は、表示装置12に通信線12aにより接続される。バッテリ装置72は、表示装置12に電力線(第4電力線)12bにより接続されて、表示装置12に電力を供給する。第1駆動回路52は、表示装置12を駆動させる駆動信号を生成する。つまり、第1駆動回路52は、車速やエンジン回転速度等の情報を表示装置12に表示させるための駆動信号を生成し、通信線12aを用いて表示装置12に対して送信する。また、第1駆動回路52は、表示装置12に設けられるインジケータを点灯させたり消灯させたりするための駆動信号を生成して、表示装置12に対して送信する。表示装置12は、例えばステアリングホイールユニット4に配置されるスイッチにより、バッテリ装置72との接続状態および切断状態が切り換えられる。表示装置12は、バッテリ装置72と接続状態において、第1駆動回路52から送信された駆動信号に基づいて、情報を表示装置12に表示する。表示装置12は、バッテリ装置72と切断状態において、情報を表示装置12に表示しない。
【0099】
第1駆動回路52は、燃料噴射装置19に通信線19aにより接続される。第1駆動回路52は、点火装置29に通信線29aにより接続される。バッテリ装置72は、燃料噴射装置19に電力線(第4電力線)19bにより接続されて、燃料噴射装置19に電力を供給する。バッテリ装置72は、点火装置29に電力線(第4電力線)29bにより接続されて、点火装置29に電力を供給する。また、第1駆動回路52は、燃料噴射装置19によりエンジン20に燃料を噴射して供給するための駆動信号を生成して、燃料噴射装置19に対して送信する。さらに、第1駆動回路52は、点火装置29によりエンジン20に供給された燃料を点火させるための駆動信号を生成して、点火装置29の点火コイルに対して送信する。以上のように、少なくとも1つの第1コントローラ50は、表示装置12、燃料噴射装置19、および、点火装置29を制御する。
【0100】
多重通信線55は、第1通信装置51および第2通信装置61を接続する。つまり、第1通信装置51を含む少なくとも1つの第1コントローラ50および第2通信装置61を含む少なくとも1つの第2コントローラ60は、多重化されたデータ通信が行われる。例えば、少なくとも1つの第2コントローラ60は、少なくとも1つの第1コントローラ50に対して、多重通信線55を用いた多重化されたデータ通信によって、第2駆動回路62で生成した回転電機80に関連する駆動信号を送信して、表示装置12に表示させる。
【0101】
第1通信装置51と第2通信装置61との間の多重通信線55の長さを、Lcとする。第2駆動回路62と第2駆動回路62に接続される回転電機80との間の電力線80aの長さを、Lgとする。第2駆動回路62とバッテリ装置72との間の電力線72aの長さを、Lbとする。長さLcは、長さLgより長い。長さLgは、長さLbより短い。長さLcは、長さLbより長い。
【0102】
本発明の第5実施形態の構成によると、少なくとも1つの第1コントローラ50は、表示装置12、燃料噴射装置19、点火装置29に、通信線12a、19a、29aで接続される第1駆動回路52を含む。また、バッテリ装置72は、第1駆動回路52に接続される表示装置12、燃料噴射装置19、点火装置29に電力線12b、19b、29bで接続されて電力を供給する。ここで、バッテリ装置72と第1駆動回路52に接続される表示装置12、燃料噴射装置19、点火装置29の電力線12b、19b、29bには、回転電機80と第2駆動回路62との間の電力線80aに比べて比較的小さい電流が流れる。そのため、バッテリ装置72と第1駆動回路52に接続される表示装置12、燃料噴射装置19、点火装置29に電力線12b、19b、29bが長くなったとしても、第2駆動回路62と第2駆動回路62に接続された回転電機80との間の電力線80aが短ければ、第1通信装置51と第2通信装置61が接続される多重通信線55に対するノイズの影響を抑制することができる。つまり、バッテリ装置72と第1駆動回路52に接続される表示装置12、燃料噴射装置19、点火装置29に電力線12b、19b、29bの長さが長くなったとしても、第2駆動回路62と第2駆動回路62に接続された変速制御用モータ71との間の電力線71aまたは第2駆動回路62と第2駆動回路62に接続された少なくとも1つのエンジン用モータ80の少なくともいずれかとの間の電力線80aが短ければ、ノイズの発生そのものを抑えて、第1通信装置51と第2通信装置61が接続される多重通信線55に対するノイズの影響を抑制することができる。また、バッテリ装置72と第1駆動回路52に接続される表示装置12、燃料噴射装置19、または、点火装置29の少なくともいずれかとの間の電力線12b、19b、29bの長さを長くすることができる。これにより、少なくとも1つの第1コントローラ50の設置の自由度が高くなる。そして、ストラドルドビークル1の大型化を抑制することができる。
【0103】
(第6実施形態)
以下、本発明の第6実施形態に係るストラドルドビークル1について、
図1中の(b)(c)(d)を参照しつつ説明する。第6実施形態のストラドルドビークル1は、第1実施形態~第5実施形態のいずれかの構成に加えて、以下の構成を備える。
【0104】
第2駆動回路62に接続される少なくとも1つのエンジン用モータ80は、回転電機、電動モータ、または、発電機の少なくともいずれかである。回転電機は、対象軸82にクランク軸21の回転方向と正方向および逆方向のトルクを付与する。電動モータは、対象軸82にクランク軸21の回転方向と正方向のトルクを付与する。発電機は、対象軸82にクランク軸21の回転方向と逆方向のトルクを付与する。
【0105】
第2駆動回路62に接続される少なくとも1つのエンジン用モータ80が、回転電機である場合について以下に説明する。
図1中の(b)(c)に示すように、回転電機80は、クランク軸21に連結される。対象軸82は、クランク軸21である。回転電機80は、クランク軸21にクランク軸21の回転方向と正方向および逆方向のトルクを付与するモータである。クランク軸21と回転電機80は、例えば同軸となるように配置されている。回転電機80は、例えば三相発電機であり、永久磁石式発電機である。回転電機80は、バッテリ装置72に接続される。回転電機80の駆動状態は、発電状態と力行状態がある。発電状態は、回転電機80が、クランク軸21にクランク軸21の逆回転方向のトルクを付与して発電する駆動状態である。クランク軸21の逆回転方向は、クランク軸21の回転方向の逆方向である。つまり、発電状態では、回転電機80が、クランク軸21からトルクを吸収する。回転電機80で発電された電力は、第2コントローラ60を通ってバッテリ装置72に蓄えられる。また、力行状態は、回転電機80が、クランク軸21にクランク軸21の正回転方向のトルクを付与して、クランク軸21を正回転させる駆動状態である。クランク軸21の正回転方向は、クランク軸21の回転方向である。つまり、力行状態では、バッテリ装置72の電力が、第2コントローラ60を通って回転電機80に供給されて、クランク軸21を正回転させる。回転電機80は、例えば、エンジン始動時には、力行状態で駆動されて、電動モータとして機能する。また、例えば、エンジン始動後の通常運転時は、回転電機80は、力行状態または発電状態で駆動される。回転電機80は、電動モータと発電機を兼ねた装置として構成されてもよいし、電動モータと発電機とが別々の装置として構成されていてもよい。
【0106】
第2駆動回路62は、電力線72aによりバッテリ装置72に接続される。第2駆動回路62は、電力線80aにより回転電機80に接続される。第2駆動回路62は、回転電機80を駆動させる駆動信号を生成する。つまり、第2駆動回路62は、回転電機80がクランク軸21にクランク軸21の回転方向と正方向のトルクを付与するのに必要な駆動信号を生成して、回転電機80に対して送信する。回転電機80はこの駆動信号を受信すると、バッテリ装置72に蓄えられた電力を、電力線72aを用いて第2駆動回路62に送る。第2駆動回路62は、バッテリ装置72から送られた電力を、電力線80aを用いて回転電機80に対して供給する。また、第2駆動回路62は、回転電機80がクランク軸21にクランク軸21の回転方向と逆方向のトルクを付与するための駆動信号を生成して、回転電機80に対して送信する。回転電機80はこの駆動信号を受信すると、回転電機80をクランク軸21の回転方向と逆方向に回転させると共に、回転電機80で発電された電力を、電力線80aを用いて第2駆動回路62に送る。第2駆動回路62は、回転電機80で発電された電力を、電力線72aを用いてバッテリ装置72に対して供給する。以上のように、第2駆動回路62は、回転電機80を制御する。なお、回転電機80は、第2駆動回路62の駆動信号に基づいて、レギュレータを介してバッテリ装置72から電力が供給されてもよいし、レギュレータを介してバッテリ装置72に電力を供給してもよい。
【0107】
第2駆動回路62に接続される少なくとも1つのエンジン用モータ80が、スターターモータである場合について以下に説明する。
図1中の(b)(c)に示すように、スターターモータ80は、クランク軸21に連結される。対象軸82は、クランク軸21である。スターターモータ80は、エンジン始動時に、クランク軸21にクランク軸21の回転方向と正方向のトルクを付与するモータである。クランク軸21とスターターモータ80は、例えば同軸となるように配置されている。スターターモータ80は、バッテリ装置72に接続される。スターターモータ80は、クランク軸21にクランク軸21の正回転方向のトルクを付与して、クランク軸21を正回転させる。スターターモータ80は、第2コントローラ60を通ってバッテリ装置72の電力が供給されて、クランク軸21を正回転させる。
【0108】
第2駆動回路62は、電力線72aによりバッテリ装置72に接続される。第2駆動回路62は、電力線80aによりスターターモータ80に接続される。第2駆動回路62は、スターターモータ80を駆動させる駆動信号を生成する。つまり、第2駆動回路62は、スターターモータ80がクランク軸21にクランク軸21の回転方向と正方向のトルクを付与するのに必要な駆動信号を生成して、スターターモータ0に対して送信する。スターターモータ80はこの駆動信号を受信すると、バッテリ装置72に蓄えられた電力を、電力線72aを用いて第2駆動回路62に送る。第2駆動回路62は、バッテリ装置72から送られた電力を、電力線80aを用いてスターターモータ80に対して供給する。以上のように、第2駆動回路62は、スターターモータ80を制御する。なお、スターターモータ80は、第2駆動回路62の駆動信号に基づいて、レギュレータを介してバッテリ装置72から電力が供給されてもよい。
【0109】
第2駆動回路62に接続される少なくとも1つのエンジン用モータ80が、発電機である場合について以下に説明する。発電機80は、クランク軸21に連結される。対象軸82は、クランク軸21である。発電機80は、エンジン20の通常運転時に、クランク軸21にクランク軸21の回転方向と逆方向のトルクを付与するモータである。クランク軸21と発電機80は、例えば同軸となるように配置されている。発電機80は、バッテリ装置72に接続される。発電機80は、クランク軸21にクランク軸21の逆回転方向のトルクを付与して発電する。発電機80で発電された電力は、第2コントローラ60を通ってバッテリ装置72に蓄えられる。
【0110】
第2駆動回路62は、電力線72aによりバッテリ装置72に接続される。第2駆動回路62は、電力線80aにより発電機80に接続される。第2駆動回路62は、発電機80がクランク軸21にクランク軸21の回転方向と逆方向のトルクを付与するための駆動信号を生成して、発電機80に対して送信する。発電機80はこの駆動信号を受信すると、発電機80をクランク軸21の回転方向と逆方向に回転させると共に、発電機80で発電された電力を、電力線80aを用いて第2駆動回路62に送る。第2駆動回路62は、発電機80で発電された電力を、電力線72aを用いてバッテリ装置72に対して供給する。以上のように、第2駆動回路62は、発電機80を制御する。なお、発電機80は、第2駆動回路62の駆動信号に基づいて、レギュレータを介してバッテリ装置72に電力を供給してもよい。
【0111】
第2駆動回路62に接続される少なくとも1つのエンジン用モータ80が、電動モータおよび発電機である場合について以下に説明する。
図1中の(d)に示すように、発電機80は、クランク軸21に連結される。対象軸82は、クランク軸21である。発電機80は、クランク軸21にクランク軸21の回転方向と逆方向のトルクを付与するモータである。クランク軸21と発電機80は、例えば同軸となるように配置されている。発電機80は、例えば三相発電機であり、永久磁石式発電機である。発電機80は、バッテリ装置72に接続される。発電機80が、クランク軸21にクランク軸21の逆回転方向のトルクを付与して発電する。発電機80は、クランク軸21からトルクを吸収する。発電機80で発電された電力は、第2コントローラ60を通ってバッテリ装置72に蓄えられる。また、電動モータ80は、後輪部3の少なくとも1つの後輪3aの回転軸3bに連結される。対象軸82は、後輪部3の少なくとも1つの後輪3aの回転軸3bである。電動モータ80は、回転軸3bにクランク軸21の正回転方向のトルクを付与する。クランク軸21の正回転方向は、後輪部3の少なくとも回転軸3bを正回転である。つまり、電動モータ80は、後輪部3の少なくとも回転軸3bを正回転させる。電動モータ80は、第2コントローラ60を通ってバッテリ装置72の電力が供給されて、回転軸3bを正回転させる。
【0112】
第2駆動回路62は、電力線72aによりバッテリ装置72に接続される。第2駆動回路62は、電力線80aにより電動モータ80および発電機80に接続される。第2駆動回路62は、回転電機80を駆動させる駆動信号を生成する。つまり、第2駆動回路62は、電動モータ80が回転軸3bにクランク軸21の回転方向と正方向のトルクを付与するのに必要な駆動信号を生成して、電動モータ80に対して送信する。電動モータ80はこの駆動信号を受信すると、バッテリ装置72に蓄えられた電力を、電力線72aを用いて第2駆動回路62に送る。第2駆動回路62は、バッテリ装置72から送られた電力を、電力線80aを用いて電動モータ80に対して供給する。また、第2駆動回路62は、発電機80がクランク軸21にクランク軸21の回転方向と逆方向のトルクを付与するための駆動信号を生成して、発電機80に対して送信する。発電機80はこの駆動信号を受信すると、発電機80をクランク軸21の回転方向と逆方向に回転させると共に、発電機80で発電された電力を、電力線80aを用いて第2駆動回路62に送る。第2駆動回路62は、発電機80で発電された電力を、電力線72aを用いてバッテリ装置72に対して供給する。以上のように、第2駆動回路62は、電動モータ80および発電機80を制御する。なお、発電機80は、第2駆動回路62の駆動信号に基づいて、レギュレータを介してバッテリ装置72から電力が供給されてもよい。電動モータ80は、第2駆動回路62の駆動信号に基づいて、レギュレータを介してバッテリ装置72に電力を供給してもよい。
【0113】
本発明の第6実施形態の構成によると、少なくとも1つのエンジン用モータ80は、回転電機、電動モータ、または、発電機の少なくともいずれかである。例えば、第2駆動回路62に接続される少なくとも1つのエンジン用モータ80は回転電機である。回転電機80は、クランク軸21にクランク軸21の回転方向と正方向のトルクおよび逆方向のトルクを付与する。回転電機80と第2駆動回路62との間の電力線80aには、比較的大きな電流が流れる。ここで、少なくとも1つの第2コントローラ60は、第2駆動回路62と回転電機80との間の電力線80aの長さが、第1通信装置51と第2通信装置61との間の多重通信線55の長さよりも短くなるように配置される。また、少なくとも1つの第2コントローラ60は、第2駆動回路62と回転電機80との間の電力線80aの長さが、第2駆動回路62とバッテリ装置72との間の電力線72aの長さよりも短くなるように、配置される。また、例えば、第2駆動回路62に接続される少なくとも1つのエンジン用モータ80はスターターモータである。電動モータ80と第2駆動回路62との間の電力線80aには、比較的大きな電流が流れる。ここで、少なくとも1つの第2コントローラ60は、第2駆動回路62と電動モータ80との間の電力線80aの長さが、第1通信装置51と第2通信装置61との間の多重通信線55の長さよりも短くなるように配置される。また、少なくとも1つの第2コントローラ60は、第2駆動回路62と電動モータ80との間の電力線80aの長さが、第2駆動回路62とバッテリ装置72との間の電力線72aの長さよりも短くなるように、配置される。また、例えば、第2駆動回路62に接続される少なくとも1つのエンジン用モータ80は発電機である。発電機80と第2駆動回路62との間の電力線80aには、比較的大きな電流が流れる。ここで、少なくとも1つの第2コントローラ60は、第2駆動回路62と発電機80との間の電力線80aの長さが、第1通信装置51と第2通信装置61との間の多重通信線55の長さよりも短くなるように配置される。また、少なくとも1つの第2コントローラ60は、第2駆動回路62と発電機80との間の電力線80aの長さが、第2駆動回路62とバッテリ装置72との間の電力線72aの長さよりも短くなるように、配置される。これにより、多重通信線55を、回転電機80、および、バッテリ装置72から離れた位置に配置しなくても、ノイズの発生そのものを抑えて、多重通信線55に対するノイズの影響を抑制できる。
【0114】
(第7実施形態)
以下、本発明の第7実施形態のストラドルドビークル1について、
図1中の(a)および(c)を参照しつつ説明する。第7実施形態のストラドルドビークル1は、第1実施形態~第6実施形態のいずれかの構成に加えて、以下の構成を備える。
【0115】
図1中の(a)および(c)に示すように、エンジンユニット40は、変速装置30および変速制御用モータ71を含む。つまり、変速装置30は、変速制御用モータ71で制御される電子制御式無段変速装置(Electronically-controlled Continuously Variable Transmission:ECVT)、または、変速制御用モータ71で制御される電子制御式有段変速装置である。変速制御用モータ71は、第2駆動回路62に電力線71aで接続される。
【0116】
エンジンユニット40は、
図1中の(a)に示すように、少なくとも1つのエンジン用モータ80を有さなくてもよいし、(c)に示すように、少なくとも1つのエンジン用モータ80を有してもよい。
【0117】
本発明の第7実施形態の構成によると、第2駆動回路62と第2駆動回路62に接続された変速制御用モータ71との間の電力線71aには比較的大きな電流が流れる。そして、第2駆動回路62と第2駆動回路62に接続された変速制御用モータ71との間の電力線71aが長くなればなるほど、多重通信線でのノイズが発生しやすい。つまり、第2駆動回路62と第2駆動回路62に接続された変速制御用モータ71との間の電力線71aの長さLmが、第1通信装置51と第2通信装置61との間の多重通信線55の長さLcより長いと、第1通信装置51と第2通信装置61が接続される多重通信線55でのノイズが発生しやすい。また、第2駆動回路62と第2駆動回路62に接続された変速制御用モータ71との間の電力線71aの長さLmが、第2駆動回路62とバッテリ装置72との間の電力線72aの長さLbよりも長いと、第1通信装置51と第2通信装置61が接続される多重通信線55でのノイズが発生しやすい。ここで、少なくとも1つの第2コントローラ60は、第2駆動回路62と第2駆動回路62に接続された変速制御用モータ71との間の電力線71aの長さLmが第1通信装置51と第2通信装置61が接続される多重通信線55の長さLcより短くなるように、配置される。そして、少なくとも1つの第2コントローラは、第2駆動回路62と第2駆動回路62に接続された変速制御用モータ71との間の電力線71aの長さLmが、第2駆動回路62とバッテリ装置72との間の電力線72aの長さLbよりも短くなるように、配置される。このため、ノイズの発生そのものを抑えて、第1通信装置51と第2通信装置61が接続される多重通信線55に対するノイズの影響を抑制できる。
【0118】
(第8実施形態)
以下、第8実施形態のストラドルドビークル1について、
図6、7を参照しつつ説明する。第8実施形態のストラドルドビークル1は、第1実施形態~第7実施形態のいずれかの構成に加えて、以下の構成を備える。
【0119】
図6に示すように、第8実施形態のストラドルドビークル1は、1つの第1コントローラ50、2つの第2コントローラ60を有する。
【0120】
1つの第1コントローラ50の1つの第1通信装置51および2つの第2コントローラ60の2つの第2通信装置61は、互いに多重通信線55で接続される。1つの第1コントローラ50および2つの第2コントローラ60は多重化されたデータ通信可能に構成される。
【0121】
2つの第2コントローラ60のうちの一方の第2コントローラ60の第2駆動回路62は、変速制御用モータ71に接続される。2つの第2コントローラ60のうちの他方の第2コントローラ60は、少なくとも1つのエンジン用モータ80に接続される。
【0122】
1つの第1コントローラ50の第1通信装置51と2つの第2コントローラ60のいずれかの第2通信装置61との間の多重通信線55の長さを、Lcとする。第2駆動回路62と第2駆動回路62に接続される少なくとも1つのエンジン用モータ80との間の電力線80aの長さを、Lgとする。第2駆動回路62と第2駆動回路62に接続される変速制御用モータ71との間の電力線71aの長さを、Lmとする。2つの第2コントローラ60のいずれかの第2駆動回路62とバッテリ装置72との間の電力線72aの長さを、Lbとする。長さLcは、長さLgおよび長さLmより長い。長さLgおよび長さLmは、長さLbより短い。長さLcは、長さLbより長い。
【0123】
図7に示すように、第8実施形態のストラドルドビークル1は、2つの第1コントローラ50、1つの第2コントローラ60を有する。
【0124】
2つの第1コントローラ50の2つの第1通信装置51および1つの第2コントローラ60の1つの第2通信装置61は、互いに多重通信線55で接続される。2つの第1コントローラ50および1つの第2コントローラ60は多重化されたデータ通信可能に構成される。2つの第1コントローラ50のうちの一方の第1コントローラ50の第1駆動回路52は、表示装置12、燃料噴射装置19、点火装置29に、通信線12a、19a、29aで接続される。バッテリ装置72は、2つの第1コントローラ50のうちの一方の第1コントローラ50の第1駆動回路52に接続される表示装置12、燃料噴射装置19、点火装置29に電力線12b、19b、29bで接続されて電力を供給する。2つの第1コントローラ50のうちの他方の第1コントローラ50の第1駆動回路52は、例えばブレーキ作動制御装置93に通信線93aで接続される。バッテリ装置72は、2つの第1コントローラ50のうちの他方の第1コントローラ50の第1駆動回路52に接続されるブレーキ作動制御装置93に電力線93bにより接続されて、ブレーキ作動制御装置93に電力を供給する。
【0125】
ブレーキ作動制御装置93は、前ブレーキ装置45および後ブレーキ装置47(
図4参照)を制御する。ブレーキ作動制御装置93は、前ブレーキ装置45によって前輪部2に付与される前輪制動力および後ブレーキ装置47によって後輪部3に付与される後輪制動力の少なくとも一方を制御可能である。ブレーキ作動制御装置93は、ライダーによる前ブレーキ操作子46および後ブレーキ操作子48(
図4参照)の操作に基づいて、前ブレーキ装置45および後ブレーキ装置47を作動させる。また、ブレーキ作動制御装置93は、前ブレーキ操作子46および後ブレーキ操作子48が操作されていなくても、第1コントローラ50の第1駆動回路52で生成された駆動信号に基づいて、前ブレーキ装置45および後ブレーキ装置47を作動可能である。
【0126】
2つの第1コントローラ50のいずれかの第1通信装置51と1つの第2コントローラ60の第2通信装置61との間の多重通信線55の長さを、Lcとする。1つの第2コントローラ60の第2駆動回路62と第2駆動回路62に接続される少なくとも1つのエンジン用モータ80との間の電力線80aの長さを、Lgとする。1つの第2コントローラ60の第2駆動回路62と第2駆動回路62に接続される変速制御用モータ71との間の電力線71aの長さを、Lmとする。1つの第2コントローラ60の第2駆動回路62とバッテリ装置72との間の電力線72aの長さを、Lbとする。長さLcは、長さLgおよび長さLmより長い。長さLgおよび長さLmは、長さLbより短い。長さLcは、長さLbより長い。
【0127】
本発明の第8実施形態の構成によると、変速制御用モータ71または少なくとも1つのエンジン用モータ80の少なくともいずれかは、第2コントローラ60の第2駆動回路62に接続される。第2駆動回路62と変速制御用モータ71との間の電力線71aまたは第2駆動回路62と少なくとも1つのエンジン用モータ80との間の電力線80aには比較的大きな電流が流れており、この電力線71a、80aが長くなればなるほど、多重通信線55でのノイズが発生しやすい。上記の通り、少なくとも1つの第2コントローラ60は、第2駆動回路62と変速制御用モータ71との間の電力線71aの長さLmおよび第2駆動回路62と少なくとも1つのエンジン用モータ80との間の電力線80aの長さLgが第1通信装置51と第2通信装置61との間の多重通信線55の長さLcより短くなる位置に、配置される。また、少なくとも1つの第2コントローラ60は、第2駆動回路62と第2駆動回路62に接続された回転電機80との間の電力線80aの長さLgが、第2駆動回路62とバッテリ装置72との間の電力線72aの長さLbよりも短くなる位置に、配置される。そのため、第2コントローラが複数であったとしても、ノイズの発生そのものを抑えて、第1通信装置51と第2通信装置61が接続される多重通信線55に対するノイズの影響を抑制することができる。そして、少なくとも1つの第1コントローラ50と少なくとも1つの第2コントローラ60の間の多重通信線55の長さは自由に設定することができる。そのため、第1コントローラ50が複数であったとしても、第1コントローラ50の設置の自由度が高くなる。これにより、多重通信線55で接続された複数のコントローラをストラドルドビークル1に搭載しても、ストラドルドビークル1の大型化を抑制することができる。
【0128】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。また、後述する変更例は適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0129】
1:ストラドルドビークル、2:前輪部、3:後輪部、7:車体フレーム、12:表示装置、12b、19b、29b:第4電力線、19:燃料噴射装置、20:エンジン、21:クランク軸、29:点火装置、30:変速装置、31:プライマリシーブ、32:セカンダリシーブ、33:ベルト、40:エンジンユニット、41:エンジンユニットケース、50:第1コントローラ、51:第1通信装置、52a:第1電力線、55:多重通信線、60:第2コントローラ、61:第2通信装置、62:第2駆動回路、71:変速制御用モータ、71a、80a:第3電力線、72a:第2電力線、72:バッテリ、80:エンジン用モータ、82:対象軸