(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】外科用接着剤
(51)【国際特許分類】
A61L 24/06 20060101AFI20220208BHJP
A61L 24/00 20060101ALI20220208BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20220208BHJP
A61L 27/50 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
A61L24/06
A61L24/00 200
A61L27/16
A61L27/50
(21)【出願番号】P 2017560619
(86)(22)【出願日】2016-05-20
(86)【国際出願番号】 FR2016051211
(87)【国際公開番号】W WO2016185153
(87)【国際公開日】2016-11-24
【審査請求日】2019-05-10
(32)【優先日】2015-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517400867
【氏名又は名称】ポー エ デ ペイ ド ラドゥール大学
(73)【特許権者】
【識別番号】517400878
【氏名又は名称】ボルドー大学
(73)【特許権者】
【識別番号】517400889
【氏名又は名称】インスティテュート ポリテクニーク デュ ボルドー
(73)【特許権者】
【識別番号】517399767
【氏名又は名称】セントレ ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ サイエンティフィーク
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(73)【特許権者】
【識別番号】521358899
【氏名又は名称】コヒーシブズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ペラン,ベルトラン
(72)【発明者】
【氏名】ディレイル,クリストフィ
(72)【発明者】
【氏名】バディ,ラエティティア
(72)【発明者】
【氏名】パポン,エリック
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-247437(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0194887(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01994886(EP,A1)
【文献】Journal of Applied Polymer Science,2013年,Vol.127,No.6,p.5051-5058
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00-33/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、生物組織を互いに接着させるための、物質を生物組織に接着させるための、接着剤または材料を生物組織の表面に接着させるための、生物組織内でオリフィスをブロックするための、生物組織を補強するための、および/または、生物組織を固定し安定させるための、方法に用いる
ための組成物であって、
紫外線(UV)照射の効果の下での重合性モノマーを備えることと、その粘度が20°Cで10mPa・sより小さ
く、
前記重合性モノマーが、アクリル酸モノマー、またはメタクリル酸モノマー、またはアクリル酸オリゴマー、またはメタクリル酸オリゴマーであり、
前記重合性モノマーが、組成物の全質量に関し、質量で90~100%の濃度を有していることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記紫外線が、150nm~280nmの波長を、有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
重合性モノマーが、紫外線による照射によってのみ重合可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
水分子の接触により重合を丁度開始することが可能な重合性モノマーを備えないことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
シアノアクリル酸ファミリーの重合性モノマーを備えないことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
粘度が、20°Cで6mPa・s未満であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
粘度が、20°Cで2mPa・s未満であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記重合性モノマーが、極性官能基を備えることを特徴とする、請求項1~
7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記極性官能基が、ヒドロキシル、アミド、カルボキシル、アミノ、炭酸塩、カルバミン酸エステル、スルホンアミド、スルホン、ホスホン酸、メトキシエチル、メトキシエトキシエチル、ヒドロキシエチルおよびヒドロキシエトキシエチルの作用を備える群より選択されることを特徴とする、請求項
8に記載の組成物。
【請求項10】
前記重合性モノマーが、モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-、およびペンタ-アクリル酸またはメタクリル酸、およびこれらの混合物を備える群より選択されることを特徴とする、請求項
8に記載の組成物。
【請求項11】
前記アクリル酸モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸メチル;メタクリル酸ジメチルアミノエチル;アクリル酸エチル;メタクリル酸シクロヘキシル;メタクリル酸‐2‐ヒドロキシエチル;アクリル酸3-ヒドロキシプロピル;アクリル酸アルファ-ブロモエチル;アクリル酸アルファ-クロロエチル;メタクリル酸クロロメチル;メタクリル酸2-ブロモエチル;メタクリル酸2-ナフチル;アクリル酸パラトリル;メタクリル酸パラクロロフェニル;アクリル酸メタブロモフェニル;アクリル酸2,4,6ートリブロモフェニル;メタクリル酸パラクロロベンジル;メタクリル酸メタメトキシベンジル;パラエチルベンジルアクリル酸;1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート;ネオペンチルグリコールジアクリレート;チオジエチレングリコールジメタクリレート;ビスフェノールAエトキシルジアクリレート;ビスフェノールAエトキシルジメタクリレート;ペンタエリスリトールトリアクリレート;グリセリルトリアクリレート;ジペンタエリトリトールペンタアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート;トリスイソシアヌレートトリメタクリレート(2-ヒドロキシエチル);トリメチロールプロパンポリオキシエチレントリアクリレート;アクリル酸ウレタン;メタクリル酸ウレタン;ビス硫黄(4-メタクリロイルチオフェニル);第三級ブチルアクリル酸;アクリル酸、メタクリル酸;ジアクリレート、ジメタクリレートおよびこれらの混合物から成る群より選択されるエチレングリコールまたはポリエチレングリコールを備える群より選択されることを特徴とする、請求項
1または
10に記載の組成物。
【請求項12】
前記アクリル酸モノマーが、メタクリル酸ヒドロキシ(エチル)、アクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシ(プロピル)、アクリル酸第三級ブチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルおよびこれらの混合物を備える群より選択されることを特徴とする、請求項
1または
10に記載の組成物。
【請求項13】
前記重合性モノマーが、50~300g・mol-1のモル質量を有していることを特徴とする、請求項1~
12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
溶媒を有しないことを特徴とする、請求項1~
13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
架橋剤をさらに備えていることを特徴とする、請求項1~
14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記架橋剤が、アクリル酸
官能基を備えていることを特徴とする、請求項1~
15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記架橋剤が、
1,6-ヘキサンジオールジメチルアクリレート(HDDMA)、エチレングリコールジメチルアクリレート(EGDMA)、ブタンジオールジアクリレート(BDDA)、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2ーエチレングリコールジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、およびこれらの混合物を備える
多官能基性アクリル酸を備える群により選択されることを特徴とする、請求項1~
16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記架橋剤が、組成物の全質量に関し、質量で1%~5%の濃度で存在することを特徴とする、請求項
15~
17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
光重合開始剤をさらに備えることを特徴とする、請求項1~
18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記光重合開始剤が、2,2-ジメトキシフェニル-2-アセトフェノン(DMPA)、カンファキノン、および4.4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンを備える群により選択されることを特徴とする、請求項
19に記載の組成物。
【請求項21】
前記光重合開始剤が、質量で、0.2%~1%の濃度であることを特徴とする、請求項
19または
20に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科用接着剤の分野に関し、更に具体的には、本発明は、生物組織を互いに接着させるための、物質を生物組織に接着させるための、接着剤のまたは材料を生物組織の表面に接着させるための、生物組織内でオリフィスをブロックする(止血、空気漏出停止)ための、生物組織を補強するための、および/または、生物組織を固定し安定させるための、方法に用いることを意図する、組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一定数の外科技術では、外科用接着剤を実行する。後者は主に、外科的止血を得ることを援助するために用いられる。しかしながら、この仕様の外科用接着剤の効果は、空気漏出停止が良い結果を示さないことと同様に、異論があり、別の用途である。
【0003】
更に、外科用接着剤が有する接着性は、非常に弱く、したがって、接着剤としても、また、縫合糸としても、用いることができない。外科用接着剤は、大抵の場合、接着剤表面を調製することなく、組織上に直接塗布される。組織内への浸透は弱く、または浸透自体存在せず、それは接着剤の低品質に至ってしまう。出願人は、現在の接着剤が組織を接着させず組織に浸透しないことを、観察した。従って、彼らは、組織中への接着剤の融合を実現するため、生物組織の表面に深く入りこむことが可能な接着剤を開発した。
【0004】
例えば、シアノアクリル酸ファミリーの重合性単量体を備える外科用接着剤が、文特許文献1により知られている。後者の重合は、外科用接着剤と生物組織との間で接触が行われるとすぐに、生物組織の湿気により始動する。従って、この外科用接着剤の粘度が低いにもかかわらず、シアノアクリレートモノマーの重合は、生物組織の表面上に生じる。従って、シアノアクリレートモノマーは、生物組織に浸透することができない。シアノアクリレートモノマーは、シアノアクリル酸に基づいた外科用接着剤の機械的抵抗が低く臨床効果が低いことが明らかな組織に組み込まれることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、新しい種類の外科用接着剤を供給することを提案する。本発明による組成物および方法は、効果的および耐性的接着を得ることを可能にする。接着剤/組織の界面中ではなく、接着組織中の、または接着シール中の、破壊の伝搬により、接着の断裂がなされる。接着は、各種の生物組織(軟組織、骨組織)に適用できる。
このような接着では、効果的な止血または効果的な空気漏出停止を得ることが更に可能になる。また、外科縫合を接着に置き換えることが可能になる。
【0007】
本発明の原理は、組織の表面の接着性を補強する重合性単量体を、生物組織に浸透させることから成る。従って、本発明は、生物組織を互いに接着させるための、物質を生物組織に接着させるための、接着剤または材料を生物組織の表面に接着させるための、生物組織内でオリフィスをブロックする(止血、空気漏出停止)ための、生物組織を補強するための、および/または、生物組織を固定し安定させるための、方法に用いることを意図する、組成物に関し、紫外線(UV)照射の効果の下での重合性単量体を備えることと、その粘度が20°Cで10mPa・sより小さいこととが、注目に値する。
【0008】
また、本発明は、生物組織を互いに接着させるための、物質を生物組織に接着させるための、接着剤または材料を生物組織の表面に接着させるための、生物組織内でオリフィスをブロックする(止血、空気漏出停止)ための、生物組織を補強するための、および/または、生物組織を固定し安定させるための、方法に使用する組成物に関し、紫外線(UV)照射の効果の下での重合性単量体を備えることと、その粘度が20°Cで10mPa・sより小さいこととが、注目に値する。
【0009】
組成物の粘度は、特に、規格DIN53015に従って、落球粘度計で計測することが可能である。
【0010】
実際、前記組成物の粘度により、生物組織への顕著な浸透および最適接着が得られる点を、出願人が強調することが可能であった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の構成において、「重合性単量体」という語は、紫外線(UV)照射の効果で重合を開始することが可能なモノマーを意味する。この重合開始方法は、重合を開始する前に、モノマーの組成物を組織に浸透させたことを予期することを可能にしている。好ましくは、本発明による成物の重合は、紫外線によってのみ開始することが可能であり、その他の開始方法を除くものである。特に、重合性単量体の重合の開始は、紫外線による照射から成る。好ましくは、前記紫外線は、150nm~280nmの波長、より好ましくは170nm~260nmの波長、絶対的に好ましくは190nm~240nmの波長を、有している。
【0012】
他の好ましい実施形態によれば、前記紫外線は、200nm~400nmの波長、より好ましくは300nm~400nmの波長、絶対的に好ましくは350nm~400nmの波長を、有している。
【0013】
モノマーの重合後に得られるポリマーは、生体適合性のポリマーであることが好ましい。
【0014】
これらの理由から、本発明による組成物は、水分子の接触により重合を丁度開始することが可能な重合性単量体を、備えない。従って、組織接触に関する本発明による組成物の即時重合が、回避される。
【0015】
これら同じ理由から、本発明による組成物は、水および/または周囲湿気に接触して迅速重合することが知られるシアノアクリル酸ファミリーの重合性単量体を備えていない。
【0016】
好ましくは、重合性単量体は、紫外線による照射によってのみ重合可能である。
【0017】
好ましい実施形態によれば、前記粘度は、20°Cで6mPa・s未満である。
【0018】
さらに好ましい実施形態によれば、前記粘度は、20°Cで4mPa・s未満である。
【0019】
絶対的に好ましい実施形態によれば、前記粘度は、20°Cで2mPa・s未満であり、具体的には20°Cで1~2mPa・sである。
【0020】
好ましい実施形態によれば、本発明による組成物は、ハイドロゲルではない。
【0021】
好ましい実施形態によれば、前記モノマーは、メタクリル酸アクリレートモノマー、またはエステルオリゴマー、またはメタクリル酸オリゴマーである。
【0022】
好ましい実施形態によれば、前記モノマーは、極性官能基を備えている。
【0023】
本発明の構成において、語「極性官能基」は、電子を非対称に分配する一群の原子群を照会するものであり、これにより、この極性官能基が静電的相互作用に関与することができるようになる。前記極性官能基は、特に、ヒドロキシル、アミド、カルボキシル、アミノ、炭酸塩、カルバミン酸エステル、スルホンアミド、スルホン、ホスホン酸、メトキシエチル、メトキシエトキシエチル、ヒドロキシエチルおよびヒドロキシエトキシエチル官能基を備えたグループから選択されることが可能である。
【0024】
好ましい実施形態によれば、前記アクリレートモノマーは、モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-およびペンタ-アクリル酸またはメタクリル酸、ならびにこれらの混合物を備える群より選択される。
【0025】
好ましい実施形態によれば、前記アクリレートモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸メチル;メタクリル酸ジメチルアミノエチル;アクリル酸エチル;メタクリル酸シクロヘキシル;メタクリル酸‐2‐ヒドロキシエチル;メタクリル酸-3-ヒドロキシプロピル;アクリル酸-アルファ-ブロモエチル;アクリル酸-アルファ-クロロエチル;メタクリル酸クロロメチル;メタクリル酸-2-ブロモエチル;メタクリル酸2-ナフチル;アクリル酸パラトリル;メタクリル酸パラクロロフェニル;アクリル酸メタブロモフェニル;アクリル酸2,4,6-トリブロモフェニル;メタクリル酸パラクロロベンジル;メタクリル酸メタメトキシベンジル;アクリル酸パラエチルベンジル;1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート;ネオペンチルグリコールジアクリレート;チオジエチレングリコールジメタクリレート;ビスフェノールAエトキシルジアクリレート;ビスフェノールAエトキシルジメタクリレート;ペンタエリスリトールトリアクリレート;グリセリルトリアクリレート;ジペンタエリトリトールペンタアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート;トリスイソシアヌレートトリメタクリレート(2-ヒドロキシエチル);トリメチロールプロパンポリオキシエチレントリアクリレート;アクリル酸ウレタン;メタクリル酸ウレタン;ビス硫黄(4-メタクリロイルチオフェニル);アクリル酸第三級ブチル;アクリル酸、メタクリル酸;ジアクリレート、ジメタクリレートおよびこれらの混合物から成る群より選択される、エチレングリコールまたはポリエチレングリコールを備える群より選択される。
【0026】
絶対的に好ましい実施形態によれば、前記アクリレートモノマーは、メタクリル酸ヒドロキシ(エチル)、アクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシ(プロピル)、アクリル酸第三級ブチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルおよびこれらの混合物による群より選択される。
【0027】
絶対的に好ましい実施形態によれば、前記アクリレートモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸(ヒドロキシエチル)、メタクリル酸(ヒドロキシプロピル)、およびこれらの混合物を備える群より選択される。
【0028】
他の絶対的に好ましい実施形態によれば、前記アクリレートモノマーは、アクリル酸、第三級ブチルアクリル酸、およびこれらの混合物を備える群より選択される。
【0029】
他の絶対的に好ましい実施形態によれば、前記アクリレートモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、およびこれらの混合物を備える群より選択される。
【0030】
好ましい実施形態によれば、前記モノマーは、50~300g・mol-1のモル質量を有している。
【0031】
好ましい実施形態によれば、前記モノマーは、組成物の全質量に関し、質量で90%~100%の濃度を有している。
【0032】
好ましい実施形態によれば、前記組成物は、架橋剤をさらに備えている。
【0033】
好ましい実施形態によれば、前記組成物は、前記モノマーまたは前記モノマー、および架橋剤を備えているのみである。
【0034】
当業者は、用いられるモノマーによれば、最も適した架橋剤を選択することが可能である。
【0035】
好ましい実施形態によれば、前記架橋剤は、アクリル酸作用を備えている。
【0036】
好ましい実施形態によれば、前記架橋剤は、多官能基性アクリル酸を備える群、特に1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2-エチレングリコールジアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレートおよびこれらの混合物を備える群より選択される。
【0037】
他の好ましい実施形態によれば、前記架橋剤は、多官能基性アクリル酸を備える群、特にヘキサンジオールジメチルアクリレート(HDDMA)、エチレングリコールジメチルアクリレート(EGDMA)、ブタンジオールジアクリレート(BDDA)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)およびこれらの混合物を備える群より選択される。
【0038】
好ましい実施形態によれば、前記架橋剤は、組成物の全質量に関して、質量で1%~5%、さらに好ましくは質量で1%~3%、さらに好ましくは質量で1%~2%の、濃度で存在する。
【0039】
好ましい実施形態によれば、前記架橋剤は、組成物の全質量に関して、質量で0.1%~3%、さらに好ましくは質量で0.1%~0.5%、さらに好ましくは質量で0.1%~0.3%、絶対的に好ましくは質量で0.2%の、濃度で存在する。
【0040】
好ましい実施形態によれば、本発明による組成物は、光重合開始剤を備えている。当業者は、用いられるランプの発光スペクトルに従い、最も適した光重合開始剤を選択する。
【0041】
光重合開始剤は:2,2-ジメトキシフェニル-2-アセトフェノン(DMPA)、カンファキノン、または、4、4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、から選択されることが可能であり、このリストは、非包括的である。
【0042】
有利なことに、光重合開始剤は、質量で、0.2%~1%、好ましくは0.2%~0.3%の、濃度で用いられる。
【0043】
好ましい実施形態によれば、前記光重合開始剤は、DMPAである。
【0044】
本発明の実施形態によれば、前記組成物は溶媒を備えており、さらに好ましくは、前記溶媒は水である。他の好ましい実施形態によれば、前記溶媒はアルコールであり、絶対的に好ましくは、エチルアルコールである。
【0045】
他の好ましい実施形態によれば、前記組成物は溶媒を有しない。
【0046】
本発明の構成において、語「備える」とは、本発明による組成物が引用された成分を含んでいることを意味している。好ましくは、本発明は、引用される成分を、他を除外して備える組成物のみに関している。
【0047】
また、本発明は、生物組織を互いに接着させるための、物質を生物組織に接着させるための、接着剤または材料を生物組織の表面に接着させるための、生物組織内でオリフィスをブロックする(止血、空気漏出停止)ための、生物組織を補強するための、および/または、生物組織を固定し安定させるための、方法に関し、以下のステップ:
-(i)本発明による組成物に処理する組織を被覆すること、
-(ii)組成物を前記組織に浸透させること、
-(iii)紫外線照射により、前記組成物の重合を誘導すること、
を備えるという点で、注目に値する。
【0048】
本発明による方法は、非侵襲性であることが有利である。語「非侵襲性」は、本発明による方法が、処理しようとする組織にアクセスすることから成る外科的ステップを備えないことを意味する。従って、本発明による方法は、直接アクセス可能な(例えば皮膚)、または前もって利用可能にされた、生物組織で、実施される。
【0049】
特にその電力およびその波長で実施される紫外線の特徴は、組成物の成分、特に重合性単量体の型に、および、組成物中のその濃度に、適応される。
【0050】
好ましい実施形態によれば、前記方法は、ステップ(iii)の後、合成組織を組織表面と並置することから成るステップ(iv)をさらに備えている。
【0051】
好ましい実施形態によれば、前記紫外線は、150nm~280nmの波長を有している。
【0052】
好ましい実施形態によれば、前記紫外線は、100W~200Wの電力を有している。
【0053】
また、本発明は、本発明に従った組成物および紫外線照射線源を備えたパーツのキットに関連する。好ましくは、パーツのキットの紫外線照射線源は、組成物の重合性単量体の、重合を行うため、および/または、その重合を支援するため、および/または、その重合を促進するために、適応される紫外線を発光することが可能である。
【0054】
本発明の構成において、語「紫外線照射線源」とは、紫外線を生産することが可能な人工手段を照会し、更に具体的には、150nm~280nm、さらに好ましくは170nm~260nm、絶対的に好ましくは190nm~240nmの波長による光線を照会する。好ましくは、前記紫外線は、0.5W~200W、絶対的に好ましくは100W~200Wの電力を有している。
【0055】
他の好ましい実施形態によれば、語「紫外線照射線源」は、200nmと400nm、より好ましくは300nm~400nm、絶対的に好ましくは350nm~400nmの波長で、紫外線を生産することが可能な人工手段を照会する。
【0056】
好ましくは、前記紫外線は、150nm~280nmの間の波長、および100W~200Wの電力有している。
【発明を実施するための形態】
【0057】
機器および方法
被膜試験
粘度および濃度が可変のアクリル酸、メタクリル酸(ヒドロキシエチル)/アクリル酸、メタクリル酸(ヒドロキシプロピル)/アクリル酸、アクリル酸/アクリル酸第三級ブチル/架橋剤、メタクリル酸/アクリル酸/メタクリル酸(ヒドロキシエチル)/架橋剤溶液、または、アクリル酸/メタクリル酸ジメチルアミノエチル/架橋剤溶液を、ウシ心膜のサンプルに堆積させた。このステップを、20°Cで実施する。前記心膜サンプルに対して、モノマーの重合を始動させるため、150Wの紫外線照射を5分の持続時間で行った。照射線源を、心膜から10cm離して置いた。
【0058】
前記心膜サンプルをその後、ガラス繊維片上に被覆し、続いて後者は、前のステップに用いられたと同一のモノマー溶液を受け取った。
【0059】
心膜サンプルに対して、紫外線照射を、前ステップのそれらと同一の条件下で行った。
【0060】
その後、37°Cに管理される炉内で、被膜試験を、180°Cでの牽引によりガラス繊維片上に行った。巻上機のあごとあごの間に設置される繊維片の静止時間は、1分であり、サンプル中の温度は、試験開始時点で、30°C、プラスまたはマイナス4°Cである。
【0061】
環境走査電子顕微鏡の観察
アクリル酸性溶液を、心膜サンプル上に堆積した。前記心膜サンプルに対して、モノマーの重合を始動させるために、150Wの紫外線照射を5分間行った。照射線源を、心膜から10cm離して配置した。
【0062】
心膜サンプルを、その後横方向に切断し、走査型電子顕微鏡で観察した。
【0063】
結果
被膜試験
取得した結果を、下記表に示した。
【0064】
実施される全ての試験中、接着剤を使用した場合はどのような場合であっても、断裂率が組織またはガラス繊維片中におよそ70%、接着剤中に30%であることが観察された。接着剤中に断裂が生じた場合、集合を破壊するために必要な力は、ガラス繊維中の断裂に対して取得される力に等しい。
【0065】
使用した本発明による組成物の粘度を、断裂への耐性(すなわち接着への耐性)が逆に増加させることが、観察された。
【0066】
【0067】
走査電子顕微鏡の観察
生成したポリマーの存在が観察され、深さ50μm以上で、組織の表面に浸透した。更に、生成したポリマーが、組織のコラーゲン線維の間の隙間に浸透したことが、観察された。
【0068】
本発明による組成物の容量が組織内に浸透することを、この観察が示しており、これは完全な接着を取得したことを説明する。