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特許7019898神経損傷を防止することのできる低温化装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】神経損傷を防止することのできる低温化装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/02 20060101AFI20220208BHJP
   A61F 7/12 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
A61B18/02
A61F7/12 K
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020533797
(86)(22)【出願日】2018-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 KR2018016236
(87)【国際公開番号】W WO2019124971
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】10-2017-0175006
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515232125
【氏名又は名称】セビカ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Cebika Inc.
【住所又は居所原語表記】D-211/917/918/919/920/921, 40, Imi-ro, Uiwang-si, Gyeonggi-do, Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】チョー, ビョン シック
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-536277(JP,A)
【文献】特開2007-044310(JP,A)
【文献】特許第2795540(JP,B2)
【文献】韓国登録特許第10-1142715(KR,B1)
【文献】特開平06-319816(JP,A)
【文献】特開2013-146505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/02
A61F 7/12
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直腸内に挿入されて配置され、挿入対象個体の前立腺と直腸が接する身体部位に対応するように、膨張すると所定の形状及び大きさになる冷却ポケット100と、
流体が出入りする通路を有し、前記冷却ポケットに挿入されて前記冷却ポケットの内部空間で前記流体を循環させる循環管200とを含み、
前記冷却ポケット(100)は、所定の流体収容量を有し、
前記冷却ポケット(100)の前記所定の形状は、
楕円形状の第1面(101)と、
前記第1面(101)と平行に配置され、前記第1面(101)の面積より広い面積を有する楕円形状の第2面(102)と、
前記第1面(101)と前記第2面(102)を連結する連結面(103)とを含み、
前記冷却ポケット(100)に前記流体収容量の流体が貯蔵されると、前記所定の形状及び大きさになり、
前記流体収容量より多量の流体が前記冷却ポケット(100)に注入されても、前記所定の形状及び大きさが維持される、
低温装置。
【請求項2】
前記連結面103は、前記第1面101から前記第2面102に向かって延びるにつれてその内径が大きくなるように形成される、請求項に記載の低温装置。
【請求項3】
前記第1面101と前記連結面103が接する部分と、前記第2面102と前記連結面103が接する部分は、ラウンド処理されている、請求項に記載の低温装置。
【請求項4】
前記第1面101が前記第2面102より先に前記直腸に挿入され、
前記第1面101が前記第2面102より直腸の内側に配置される、請求項に記載の低温装置。
【請求項5】
前記循環管200は、前記冷却ポケット100に連通する第1循環管201と、前記第1循環管201に連通するように前記第1循環管201に対して所定の角度αで折り曲げられた第2循環管202とを含む、請求項1に記載の低温装置。
【請求項6】
前記循環管200は、
前記冷却ポケット100に注入される流体が流れる通路である流体注入管210と、
前記冷却ポケット100に注入された流体が排出される通路である流体排出管220とを含む、請求項に記載の低温装置。
【請求項7】
前記冷却ポケット100の内部に配置される循環管200には、前記流体注入管210に連通する注入孔210aと、前記流体排出管220に連通する排出孔220aが形成され、
前記注入孔210aから前記冷却ポケット100に流体が注入され、
前記排出孔220aから前記冷却ポケット100の流体が排出される、請求項に記載の低温装置。
【請求項8】
前記循環管200は、
前記冷却ポケット100に収容された流体の温度を検知する温度センサ231が設置される温度測定管230と、
前記冷却ポケット100に収容された流体の圧力を検知する圧力センサ241が設置される圧力測定管240とをさらに含む、請求項に記載の低温装置。
【請求項9】
前記第1循環管201と前記第2循環管202がなす角度αは126度~154度である、請求項に記載の低温装置。
【請求項10】
前記低温装置は、
前記循環管200を介して注入又は排出される流体が冷却される冷却バッグ300をさらに含む、請求項に記載の低温装置。
【請求項11】
前記冷却バッグ300は、複数回折り曲げられた冷却流路310を含み、
前記冷却流路310の一端は、前記流体注入管210に連通し、他端は前記流体排出管220に連通する、請求項10に記載の低温装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、神経損傷を防止することのできる低温装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺疾患を代表するものの一つが前立腺癌である。前立腺癌においては、根治的前立腺摘出術が標準的な手術的治療法であり、一般に前立腺と共に精嚢、精管の一部を切除して摘出する。ここで、高周波電気エネルギーにより生体組織を切開すると同時に凝固させる電気焼灼器を用いて手術するが、その際に前立腺の周辺に熱が伝導して前立腺の周辺にある神経組織に損傷を与える恐れがある。
【0003】
一般に、膀胱、精嚢、前立腺の下側周辺に重要な神経が多く通っており、交感神経である下腹神経と副交感神経である内臓神経が骨盤神経叢をなして下方に延び、膀胱、精嚢、前立腺、骨盤筋肉、陰茎などに分枝する。
【0004】
特に、勃起を調節する陰茎海綿体神経は、前立腺周辺の下方両側に主に連結されている。一般に、40~60度以上の熱が加えられると、神経を損傷する恐れがある。
【0005】
また、女性の場合、子宮筋腫、子宮頸癌などにより子宮摘出術を受けても同様の状況になる。すなわち、女性の場合、膀胱、子宮、膣の下側周辺に重要な神経が多く通っているので、子宮摘出術後の神経損傷による合併症として排尿障害などが発生することがある。
【0006】
前述した神経損傷による合併症を防止するために、特許文献1(2012年5月10日)は直腸内に挿入される冷却バルーンカテーテルを開示しているが、バルーンに注入される流体量の制御に困難が伴い、バルーンの内部に配置される別途の冷媒循環管により熱交換する構造であるので冷却効率が高くないという欠点がある。
【0007】
また、特許文献2(1998年6月26日)は直腸内に挿入されるプローブ装置を開示しているが、これもバルーンに注入される流体量の制御に困難が伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国登録特許第10-1142715号公報
【文献】特許第2795540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本出願は、前記問題を解決するためになされたものである。具体的には、前立腺摘出術などの手術の際に前立腺周辺の神経に加えられる熱を最大効率で吸収することのできる形状を有する冷却ポケットを含み、挿入対象部位を圧迫することなく最大の冷却効率が得られる流体の注入量を比較的容易に制御することのできる低温装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための本出願の一実施形態は、直腸内に挿入されて配置され、膨張すると所定の形状になる冷却ポケット100と、流体が出入りする通路を有し、前記冷却ポケットに挿入されて前記冷却ポケットの内部空間で前記流体を循環させる循環管200とを含む低温装置を提供する。
【0011】
一実施形態において、冷却ポケット100は、挿入対象個体の前立腺と直腸が接する形状に対応する形状を有してもよい。
【0012】
一実施形態において、冷却ポケット100は、膨張時に、楕円形状の第1面101と、第1面101と平行に配置され、第1面101の面積より広い面積を有する楕円形状の第2面102と、第1面101と第2面102を連結する連結面103とを含んでもよい。
【0013】
一実施形態において、連結面103は、第1面101から第2面102に向かって延びるにつれてその内径が大きくなるように形成されてもよい。
【0014】
一実施形態において、第1面101と連結面103が接する部分と、第2面102と連結面103が接する部分は、ラウンド処理されてもよい。
【0015】
一実施形態において、第1面101が第2面102より先に前記直腸に挿入され、第1面101が第2面102より直腸の内側に配置されてもよい。
【0016】
一実施形態において、冷却ポケット100は、所定の流体収容量を有し、冷却ポケット100に前記流体収容量の流体が貯蔵されると、前記所定の形状になるようにしてもよい。
【0017】
一実施形態において、前記流体収容量より多量の流体が冷却ポケット100に注入されても、前記所定の形状が維持されるようにしてもよい。
【0018】
一実施形態において、循環管200は、冷却ポケット100に連通する第1循環管201と、第1循環管201に連通するように第1循環管201に対して所定の角度αで折り曲げられた第2循環管202とを含んでもよい。
【0019】
一実施形態において、循環管200は、冷却ポケット100に注入される流体が流れる通路である流体注入管210と、冷却ポケット100に注入された流体が排出される通路である流体排出管220とを含んでもよい。
【0020】
一実施形態において、冷却ポケット100の内部に配置される循環管200には、流体注入管210に連通する注入孔210aと、流体排出管220に連通する排出孔220aとが形成され、注入孔210aから冷却ポケット100に流体が注入され、排出孔220aから冷却ポケット100の流体が排出されるようにしてもよい。
【0021】
一実施形態において、循環管200は、冷却ポケット100に収容された流体の温度を検知する温度センサ231が設置される温度測定管230と、冷却ポケット100に収容された流体の圧力を検知する圧力センサ241が設置される圧力測定管240とをさらに含んでもよい。
【0022】
一実施形態において、第1循環管201と第2循環管202がなす角度αは126度~154度であってもよい。
【0023】
一実施形態において、前記低温装置は、循環管200を介して注入又は排出される流体が冷却される冷却バッグ300をさらに含んでもよい。
【0024】
一実施形態において、冷却バッグ300は、複数回折り曲げられた冷却流路310を含み、冷却流路310の一端は流体注入管210に連通し、他端は流体排出管220に連通するようにしてもよい。
【0025】
一実施形態において、冷却バッグ300と循環管200間に配置され、冷却バッグ300により冷却された流体を冷却ポケット100に注入したり、冷却ポケット100に収容された流体を排出する動力を供給する連動ポンプ400をさらに含んでもよい。
【0026】
一実施形態において、連動ポンプ400を制御する制御装置500をさらに含んでもよい。
【0027】
一実施形態において、制御装置500は、冷却ポケット100に収容された流体の温度と圧力を表示するディスプレイ510と、連動ポンプ400を制御するコントローラ520とを含んでもよい。
【0028】
また、本出願は、直腸内に挿入されて挿入対象個体の前立腺の背面に対向する位置に配置され、膨張すると所定の形状になる冷却ポケット100と、流体が出入りする通路を有し、前記冷却ポケットに挿入されて前記冷却ポケットの内部空間で前記流体を循環させる循環管200とを含み、冷却ポケット100は、所定の流体収容量を有し、冷却ポケット100に前記所定の流体収容量の流体が貯蔵されると、前記所定の形状になり、前記所定の流体収容量より多量の流体が冷却ポケット100に注入されても、前記所定の形状が維持され、前記所定の形状のうち前記前立腺の背面に対向する面は、前記前立腺と直腸が接する形状に対応する形状を有し、前記所定の形状は、先端に配置される第1面101と、第1面101に対向し、第1面101より広い面積を有する第2面102と、第1面101と第2面102を連結する連結面103とを含み、第1面101と第2面102には、循環管200を挿入するための挿入孔がそれぞれ形成され、循環管200は、第1面101及び第2面102に形成された挿入孔を貫通するように冷却ポケット100に設置され、循環管200は、冷却ポケット100に連通する第1循環管201と、第1循環管201に連通するように第1循環管201に対して所定の角度αで折り曲げられた第2循環管202とを含む低温装置を提供する。
【発明の効果】
【0029】
前述した本出願には、次のような効果がある。
【0030】
第一に、前立腺摘出術などの手術の際に前立腺周辺の神経に加えられる熱を吸収するので、神経損傷が防止される。
【0031】
第二に、低温により手術後に発生する炎症反応が抑制され、手術の副作用が最小限に抑えられる。
【0032】
第三に、冷却ポケットの一面が前立腺と直腸が接する形状に対応する形状で備えられるので、前立腺周辺組織の冷却効率が最大化される。
【0033】
第四に、冷却ポケットが所定の流体収容量を有し、流体収容量以上の流体が注入されないようにする反発力を有する材質で形成されるので、流体が過剰注入されて冷却ポケットが直腸や前立腺を圧迫する現象が発生しない。
【0034】
第五に、第1循環管と第2循環管が折り曲げ形成されるので、冷却ポケットの直腸挿入が容易であり、挿入状態でも周辺の直腸組織を圧迫しない。
【0035】
第六に、冷却ポケットの内部に収容された流体の温度と圧力を測定し、それをディスプレイにより確認することができるので、手術の利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本出願の実施形態による低温装置について説明するための全体的な斜視図である。
図2図1の低温装置の冷却ポケットについて説明するための斜視図である。
図3図2の冷却ポケットを他の方向から見た図面であり、(a)は側面図であり、(b)は正面図である。
図4図1の低温装置の循環管について説明するための斜視図である。
図5図4のA-A’線断面図である。
図6図4のB-B’線断面図である。
図7図1の低温装置の冷却バッグについて説明するための図である。
図8】本出願の実施形態による低温装置の使用状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付図面を参照して本出願について詳細に説明する。
【0038】
本出願は、医療用器具である低温装置に関する。人体を直接の対象とする治療方法ではないことに留意されたい。
【0039】
以下、説明の便宜上、図1における図面の上側を上といい、図面の下側を下という。
【0040】
図1に示すように、本出願の実施形態による低温装置は、冷却ポケット100と、循環管200と、冷却バッグ300と、連動ポンプ400と、制御装置500とを含む。
【0041】
まず、図2及び図3を参照して、冷却ポケット100について詳細に説明する。
【0042】
冷却ポケット100は、直腸内に挿入されて配置され、流体が注入されて排出される循環により、冷却ポケット100付近に位置する神経の損傷を防ぐ部分である(図8参照)。
【0043】
図2及び図3に示すように、冷却ポケット100は、膨張すると所定の形状になる。冷却ポケット100は、所定の流体収容量を有する。前記流体収容量の流体が冷却ポケット100に貯蔵されると、冷却ポケット100は前記所定の形状になる。
【0044】
ここで、重要なポイントは、前記流体収容量より多量の流体が冷却ポケット100に注入されても、前記所定の形状が維持されるということである。従来の低温装置においては、流体注入量に応じてその形状が変化するバルーンを用いる。
【0045】
それに対して、本出願においては、流体注入量が前記流体収容量より少量であると、流体注入量に応じてその形状が変化するが、流体注入量が前記流体収容量に一致すると、前記所定の形状になり、流体収容量より多量の流体を注入しても、前記所定の形状が維持される。すなわち、冷却ポケット100は、流体収容量より多量の流体が注入されることを防止するために、所定の弾性力を有する材質で形成されることが好ましい。
【0046】
図2図5及び図6を参照して、冷却ポケット100の形状について詳細に説明する。図2は冷却ポケット100の斜視図であり、図5図4のA-A’線断面図であり、図6図4のB-B’線断面図である。
【0047】
冷却ポケット100は、膨張時に、楕円形状の第1面101と、第1面101と平行に配置され、第1面101の面積より広い面積を有する楕円形状の第2面102と、第1面101と第2面102を連結する連結面103とを有する。図5及び図6に示すように、第1面101と第2面102の幅は同一であるが、第2面102の高さが第1面101の高さより高くなるように備えられる。
【0048】
また、第1面101と第2面102には、循環管200が挿入される挿入孔がそれぞれ形成される。
【0049】
第2面102の面積が第1面101の面積より大きいので、連結面103は、第1面101から第2面102に向かって延びるにつれてその内径が大きくなるように形成される。また、冷却ポケット100は、直腸に実際に挿入される部分であるので、挿入過程で周辺組織に傷を負わせないように、全体的にラウンド処理されることが好ましい。特に、第1面101と連結面103が接する部分と、第2面102と連結面103が接する部分は、ラウンド処理されることが好ましい。
【0050】
このように、冷却ポケット100の一面(具体的には、冷却ポケットの側面)が挿入対象個体の前立腺と直腸が接する形状に対応した形状を有する(図2、3及び図8参照)。前記形状を有するので、前立腺手術の際に前立腺周辺を通る神経の損傷を効率的に防ぐことができる。
【0051】
図8に示すように、冷却ポケット100は、第1面101が先に直腸に挿入され、第2面102より直腸の内側に配置される。
【0052】
よって、図8に示すように、挿入対象個体の側面から見ると、冷却ポケット100が同じ幅の形状に観察され、正面から見ると、冷却ポケット100が第2面102に向かうほど幅が増加する形状に観察される(図5の形状)。
【0053】
循環管200は、流体が出入りする通路を有し、冷却ポケット100に挿入されて冷却ポケット100の内部空間で流体を循環させる部分であり、冷却ポケット100に形成された挿入孔から冷却ポケット100に挿入される。
【0054】
図4に示すように、循環管200は、冷却ポケット100に連通する第1循環管201と、第1循環管201に連通するように第1循環管201に対して所定の角度αで折り曲げられた第2循環管202とを含む。
【0055】
前記所定の角度αは、126度~154度であることが好ましく、特に140度であることがより好ましい。
【0056】
冷却ポケット100を直腸に挿入する際に、手術者は循環管200を把持する。次に、冷却ポケット100に向かって力を加えて冷却ポケット100を直腸に挿入するが、循環管200が一字状に形成されたものに比べて、より少ない力で冷却ポケット100を挿入できるという利点を有する。
【0057】
また、図8に示すように、直腸は、一字状に形成されているのではなく、直腸の入口部と内側の通路が所定角度をなすように形成されている。冷却ポケット100の冷却効率を最大化するためには、冷却ポケット100が前立腺のすぐ後ろになる位置に配置されることが重要である。
【0058】
本出願においては、第1循環管201と第2循環管202が所定角度αをなすように折り曲げられるので、冷却ポケット100が前記位置に配置されても、循環管200が周辺の直腸組織を圧迫するなどの問題が生じない。すなわち、前記構造は、挿入の容易性を追求しながらも、挿入の副作用を最小限に抑えることのできる構造である。
【0059】
図4に示すように、循環管200の内部には、流体注入管210、流体排出管220、温度測定管230及び圧力測定管240が長手方向に貫通形成されている。
【0060】
流体注入管210を介して冷却ポケット100に流体が注入され、流体排出管220を介して冷却ポケット100に収容された流体が排出される。
【0061】
流体は、挿入対象個体の体温より温度が低いが、時間が経過すると、熱交換により温度が上昇する。よって、冷却効率を維持するために、流体を続けて循環させる作業が必要である。この作業が流体注入管210と流体排出管220により行われる。流体排出管220を介して排出された流体は、後述する冷却バッグ300に注入されて冷却される。
【0062】
冷却ポケット100の内部に配置される循環管200には、流体注入管210に連通する注入孔210aと、流体排出管220に連通する排出孔220aが形成される。冷却バッグ300により冷却された流体は、流体注入管210を介して注入孔210aから冷却ポケット100に注入され、熱損失した流体は、排出孔220aから流体排出管220を介して冷却バッグ300に注入される。
【0063】
温度測定管230には温度センサ231が設置され、冷却ポケット100に収容された流体の温度を測定し、圧力測定管240には圧力センサ241が設置され、冷却ポケット100に収容された流体の圧力を測定する。このようにして測定された温度と圧力は、後述する制御装置500のディスプレイ510に表示され、手術に役立つ情報として手術者に提供される。
【0064】
冷却バッグ300の内部には冷却流路310が形成されている。冷却流路310は、流体注入管210及び流体排出管220に連通しており、所定の面積を有する冷却バッグ300において最大の冷却効率を得るために複数回折り曲げられることが好ましい。折り曲げられる角度は限定されるものではなく、折り曲げられる回数も限定されるものではない。図7は180度の角度で3回折り曲げられた冷却流路310の一実施形態を示す図である。
【0065】
流体を循環させるためには、循環動力を供給する部分が必要である。連動ポンプ400がその役割を果たす部分であって、連動ポンプ400は、循環管200と冷却バッグ300間に配置され、流体注入管210及び流体排出管220が連結される。連動ポンプ400が作動すると、冷却バッグ300、流体注入管210、冷却ポケット100、流体排出管220、冷却バッグ300の順に流体循環が行われる。
【0066】
連動ポンプ400は、制御装置500により制御される。制御装置500は、連動ポンプ400の作動のための電力を供給する部分であって、冷却ポケット100の内部の流体の温度、圧力を表示するディスプレイ510と、連動ポンプ400を制御するコントローラ520とを含む。
【0067】
例えば、コントローラ520は、連動ポンプ400のポンピング速度を調節し、挿入初期には速い速度でポンピングさせて冷却ポケット100を膨張させ、膨張後には初期速度より遅いポンピング速度になるように連動ポンプ400を制御することにより、前立腺周辺組織の熱を奪う流体の流れが一定になるようにすることができる。
【0068】
冷却バッグ300は、制御装置500の内部に収容され、循環する流体を冷却する。温度が上昇した流体は冷却バッグ300により再び冷却され、その冷却された流体は冷却ポケット100に再び注入される。
【0069】
以上、本明細書には本出願を当業者が容易に理解して再現できるように図面に示す実施形態を参照して説明したが、これは例示的なものにすぎず、当業者であれば本出願の実施形態から様々な変形及び均等な他の実施形態が可能であることを理解するであろう。よって、本出願の保護範囲は請求の範囲により定められるべきである。
【符号の説明】
【0070】
100 冷却ポケット
101 第1面
102 第2面
103 連結面
200 循環管
210 流体注入管
220 流体排出管
230 温度測定管
231 温度センサ
240 圧力測定管
241 圧力センサ
300 冷却バッグ
310 冷却流路
400 連動ポンプ
500 制御装置
510 ディスプレイ
520 コントローラ
1000 低温治療装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8