(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】メタン発酵槽
(51)【国際特許分類】
C02F 11/04 20060101AFI20220208BHJP
B01F 27/61 20220101ALI20220208BHJP
B01F 27/71 20220101ALI20220208BHJP
B01F 27/60 20220101ALI20220208BHJP
B01F 35/00 20220101ALI20220208BHJP
【FI】
C02F11/04 A ZAB
B01F7/02 A
B01F7/06
B01F7/02 D
B01F15/00 Z
(21)【出願番号】P 2017194800
(22)【出願日】2017-10-05
【審査請求日】2020-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】390014074
【氏名又は名称】前澤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【氏名又は名称】町田 能章
(74)【代理人】
【識別番号】100139516
【氏名又は名称】藤浪 一郎
(72)【発明者】
【氏名】今田 勝也
(72)【発明者】
【氏名】青木 仁志
(72)【発明者】
【氏名】三宅 英成
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-182002(JP,A)
【文献】特開昭59-183895(JP,A)
【文献】特開平11-226372(JP,A)
【文献】特開昭57-184495(JP,A)
【文献】特開平5-23700(JP,A)
【文献】特開2014-208323(JP,A)
【文献】特開平5-23653(JP,A)
【文献】特開2004-223326(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0093811(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00 - 11/20
3/28 - 3/34
B01F 15/00 - 15/06
7/00 - 7/32
B01B 1/00 - 5/00
B01D 21/00 - 21/34
C12M 1/00 - 3/10
B09B 1/00 - 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状を呈する発酵槽本体と、
発酵槽本体の内部を攪拌する攪拌機と、
前記発酵槽本体の側壁の下部から発酵槽本体の内部に突出
し、所定の間隔をあけて配置された複数のバッフル板と、
前記発酵槽本体の側壁の下部に内外方向に水平状に貫通するとともに、前記バッフル板を挟んで両側に設けられる複数の吸引管と、
を備え
、
前記攪拌機は、前記発酵槽本体の中心Oを通る一の径方向線Dを挟んで一方側において、回転軸の下端を支持する回転軸支持部が、平面視したときに前記中心Oから線分Cだけ偏心して配置され、かつ、当該一の径方向線Dに対して前記回転軸が傾斜するように配置され、
前記バッフル板及び前記吸引管は、前記発酵槽本体の前記一の径方向線Dを挟んで前記攪拌機の反対側に配置され、
前記バッフル板は、上方に向かうにしたがい前記発酵槽本体の前記側壁からの突出量が小さくなるように、側面視して略三角形状を呈し、
前記攪拌機の回転により、前記バッフル板の周囲に砂を堆積させ、前記吸引管により堆積した砂を吸引することを特徴とするメタン発酵槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン発酵槽に関する。
【背景技術】
【0002】
メタン発酵槽に投入される畜産糞には砂が含まれており、長期運転により槽の底部に砂が堆積していくことがある。砂が堆積すると、その分、槽の処理有効容積が減り、さらに消化液の引抜口が砂で埋まるおそれがあるため、砂を定期的に排出する必要がある。従来の砂の排出方法は、定期的に砂の量をチェックし、所定量となったときは、槽内の畜産糞の消化液を空にしたうえで、人が槽内に入ってバキュームホース等を用いて、堆積した砂を外部に排出するというものであった。
【0003】
しかし、この排出方法では、「槽内の消化液の排出→槽内の換気→砂の排出」という一連の工程に日数がかかり、砂の排出が完了した後にも、「槽への消化液の返送→発酵菌のダブリングタイム等を考慮した発酵運転の再設定」の工程にかなりの日数がかかる。
【0004】
この問題に対し、特許文献1には、メタン発酵槽の内部に設置した攪拌機を逆回転させて、堆積物を槽の底部中央に集め、ポンプで堆積物を槽外部に排出する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、メタン発酵槽内の消化液の対流により堆積物を槽の底部中央に集めている。しかし、槽内で消化液の対流を発生させるには、メタン発酵槽の形状や攪拌機のレイアウトに制限を受けるという問題がある。また、消化液の流動性によっては所定の対流効果を得られず、堆積物を槽の底部中央に集めることができない場合もある。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するために創作されたものであり、対流によらず、砂を効率的に集めて排出できるメタン発酵槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、円筒形状を呈する発酵槽本体と、発酵槽本体の内部を攪拌する攪拌機と、前記発酵槽本体の側壁の下部から発酵槽本体の内部に突出し、所定の間隔をあけて配置された複数のバッフル板と、前記発酵槽本体の側壁の下部に内外方向に水平状に貫通するとともに、前記バッフル板を挟んで両側に設けられる複数の吸引管と、を備え、前記攪拌機は、前記発酵槽本体の中心Oを通る一の径方向線Dを挟んで一方側において、回転軸の下端を支持する回転軸支持部が、平面視したときに前記中心Oから線分Cだけ偏心して配置され、かつ、当該一の径方向線Dに対して前記回転軸が傾斜するように配置され、前記バッフル板及び前記吸引管は、前記発酵槽本体の前記一の径方向線Dを挟んで前記攪拌機の反対側に配置され、前記バッフル板は、上方に向かうにしたがい前記発酵槽本体の前記側壁からの突出量が小さくなるように、側面視して略三角形状を呈し、前記攪拌機の回転により、前記バッフル板の周囲に砂を堆積させ、前記吸引管により堆積した砂を吸引することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、バッフル板の周りに緩流部分が発生する。これにより、簡単な構造で砂を効果的に集めて堆積させることができ、排砂効率を向上させることができる。
【0011】
本発明によれば、排砂効率を一層向上させることができる。
【0013】
本発明によれば、砂は攪拌機から離れた他方側に集まりやすいので、バッフル板を他方側に設けることにより、砂を効果的に集めて堆積させることができる。
【0015】
本発明によれば、有機性廃棄物の上層での攪拌作用がバッフル板により損なわれることがない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、メタン発酵槽内の対流によらず、砂を効率的に堆積させて排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、メタン発酵槽1の発酵槽本体2には、原槽21から畜産糞尿等の有機性廃棄物W1が投入される。発酵槽本体2は例えば蓋付きの円筒形状を呈している。発酵槽本体2内で、有機性廃棄物W1は嫌気性のメタン発酵菌によりメタン発酵し、消化ガスはガスエネルギーとしてボイラや発電機等に適宜に利用される。消化液は図示しない引抜口から下流の処理工程に移送される。畜産糞には砂が含まれているため、メタン発酵槽1の底部には砂Sが堆積する。
【0019】
メタン発酵槽1は、前記発酵槽本体2と、発酵槽本体2の内部を攪拌するインペラ式の攪拌機5と、発酵槽本体2の側壁2aの下部から発酵槽本体2の内部に突出するバッフル板6と、バッフル板6の周りに堆積した砂Sを吸引する吸引管3と、を備えている。
【0020】
攪拌機5は、その回転軸5aが傾斜して配置されている。回転軸5aの下端を支持する回転軸支持部5bは、
図2に示すように、発酵槽本体2の中心Oから線分Cだけ偏心して配置されている。ここで、線分Cと直交して中心Oを通る線を径方向線Dとすると、攪拌機5は、径方向線Dを挟んで一方側P1に偏って位置している。
【0021】
バッフル板6は、中心Oを挟んで攪拌機5とは反対側に、つまり、径方向線Dを挟んで他方側P2に配置されている。バッフル板6は、発酵槽本体2の側壁2aの内面からほぼ中心Oに向かって延びる平板状部材から構成されている。
図2では、バッフル板6を発酵槽本体2の円周方向に間隔を空けて2つ設けた場合を示している。各バッフル板6は、
図1に示すように、上方に向かうにしたがい発酵槽本体2の側壁2aからの突出量が小さくなるように、側面視して略三角形状を呈している。バッフル板6の下縁は、発酵槽本体2の底部に接続していてもよいし、若干距離が空いていてもよい。バッフル板6の下縁の長さは、発酵槽本体2の内径寸法の1/3以下にすることが好ましい。
【0022】
吸引管3は、発酵槽本体2の側壁2aに内外方向に貫通するように、水平状に設けられている。吸引管3は、金属管やプラスチック管等からなり、本実施形態では、内側先端の開口部が吸引口3aを構成する。吸引管3の吸引口3aは、バッフル板6の周りに堆積した砂Sを吸引するように、バッフル板6の脇に配置されている。本実施形態では、各バッフル板6の両脇に吸引口3aが位置するように、3本の吸引管3が設けられている。発酵槽本体2の外部において、各吸引管3には開閉バルブ11が取り付けられている。3本の吸引管3は、発酵槽本体2の外部において集合されて吸引ポンプ4に接続されている。なお、開閉バルブ11は、吸引管3の集合部と吸引ポンプ4との間に1つだけ設ける態様としてもよい。
【0023】
吸引ポンプ4は、たとえばジェットポンプから構成される。
図1に示すように、吸引ポンプ4は、駆動水ポンプ7から供給される圧力水により作動して、吸引管3に負圧を発生させる。駆動水ポンプ7で使用する駆動水は、地下水やメタン発酵槽1で得られた消化液を利用することができる。吸引管3で吸引された砂Sは圧力水とともに固液分離機8で砂と水に分離される。図示しない圧力水槽を設けて、固液分離機8で分離した水を貯留し、圧力水として再利用してもよい。この圧力水槽により圧力水を循環利用できる。なお、吸引ポンプ4としては、吸引管3に負圧を生じさせる機能を有していれば、ジェットポンプ以外のものであってもよい。
【0024】
このような一連の排砂運転は、タイマー制御等により定期的に行うことにより、発酵槽本体2内の砂Sの量を抑え、発酵槽本体2の処理有効容積の減少を阻止できる。勿論、有機性廃棄物Wの投入状況に応じて任意の時間に排砂運転を行ってもよい。また、発酵槽本体2の内部に、砂を検知する検知センサ(図示せず)を設け、この検知センサの検知信号に基いて排砂運転を行うようにしてもよい。
【0025】
「作用」
攪拌機5のインペラの回転により、発酵槽本体2内の有機性廃棄物W1には旋回流Gが生じる。旋回流Gによって、砂Gは側壁2aの下部に集まる傾向となり、特に攪拌機5から離れた他方側P2の側壁2aの下部に集まる。しかも、他方側P2には、バッフル板6が配置されているので、旋回流Gがバッフル板6によって遮られて、バッフル板6の脇には緩流部分が発生する。したがって、砂Sは、旋回流Gでさほど乱されることなくバッフル板6の脇に効果的に堆積していき、バッフル板6の脇に配置した吸引口3aによって効率良く砂Sを排出することができる。
【0026】
バッフル板6は、上方に向かうにしたがい側壁2aからの突出量が小さくなるように、側面視略三角形状を呈しているので、有機性廃棄物W1の上層での攪拌作用がバッフル板6によって損なわれることもない。
【0027】
以上のように、発酵槽本体2の側壁2aの下部から発酵槽本体2の内部に突出するバッフル板6を設ければ、バッフル板6の周りに緩流部分が発生する。これにより、簡単な構造で砂Sを効果的に集めて堆積させることができ、排砂効率を向上させることができる。
【0028】
以上、本発明の好適な実施形態を説明した。バッフル板6は、1つだけ設けてもよいし、3つ以上設けても良い。
【符号の説明】
【0029】
1 メタン発酵槽
2 発酵槽本体
3 吸引管
3a 吸引口
4 吸引ポンプ
5 攪拌機
6 バッフル板