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特許7019907改善された粒度のエンコーダなしモータと使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】改善された粒度のエンコーダなしモータと使用方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 29/08 20060101AFI20220208BHJP
   H02P 6/16 20160101ALI20220208BHJP
【FI】
H02K29/08
H02P6/16
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2018503176
(86)(22)【出願日】2016-07-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-08-16
(86)【国際出願番号】 US2016043757
(87)【国際公開番号】W WO2017015638
(87)【国際公開日】2017-01-26
【審査請求日】2019-07-17
(31)【優先権主張番号】62/195,449
(32)【優先日】2015-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514273055
【氏名又は名称】セフェィド
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ファン、 ティエン
(72)【発明者】
【氏名】ドリティ、 ダグ
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-014192(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0176568(US,A1)
【文献】特開平09-056191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 29/06-29/08
H02K 11/215
H02P 6/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DC電気モータであって、
基板に取り付けられたステータであって、前記ステータは磁性材料のコアと電気巻線を有するコイルアセンブリを備え、前記コイルアセンブリは外径と基端と遠位端とを有する、ステータと、
前記ステータに取付けられたロータであって、前記ロータは円筒形スカートに取付けられた複数の永久磁石であってそれぞれ前記永久磁石の遠位端に向かって延びる永久磁石を備え、前記ロータは外径、及び内径を有し、前記ロータの回転を駆動する前記永久磁石の遠位端は、前記ロータが水平面に沿って延びかつ回転するように前記ロータが平らに向けられたとき、縦方向において前記コイルアセンブリを越えて延在する、ロータと、
前記永久磁石に隣接する基板の表面であって前記永久磁石に面する表面上に取り付けられた複数のセンサであって、モータの動作時に、前記永久磁石が前記複数のセンサ上を通過することで、複数の電圧変化の正弦波信号をノイズ及び飽和なしで生成するように、前記永久磁石のそれぞれ延在された前記遠位端と前記複数のセンサとの間に間隔が定義される前記センサと、
前記複数のセンサに通信可能に結合され、前記ロータの回転時に前記複数のセンサから、直線部を有する正弦波信号である、前記複数の電圧信号を受信し、かつ、ハードウェアのエンコーダ又は位置センサの使用を必要とせず、及び、前記電圧信号のいかなるノイズ除去又はフィルタリングもなしで、前記正弦波信号の直線部を含む、前記複数のセンサからの前記複数の電圧信号で前記モータの変位を決定するように構成された、処理モジュールと、
を備える、DC電気モータ。
【請求項2】
前記基板に取り付けられた前記複数のセンサは、前記永久磁石の延在された前記遠位端に対して配置され、前記永久磁石の延在された前記遠位端から前記複数のセンサまでの隙間は、2~5ボルトの直流電圧をノイズ及び飽和なしで与えるのに十分である、請求項1に記載のDC電気モータ。
【請求項3】
前記永久磁石の延在された前記遠位端は、前記コイルアセンブリの前記遠位端を1mm以上超えて延在する、請求項2に記載のDC電気モータ。
【請求項4】
前記複数のセンサは、前記ロータの弧状経路に沿って共通の弧長だけ離間した、線形ホール効果センサである、請求項1に記載のDC電気モータ。
【請求項5】
隣接する磁石が円筒形スカートの遠位端部において反対極性を示す、円筒形スカートの周りに等間隔で配置された偶数個の永久磁石と、3つのホール効果センサとを備え、前記モータの動作時に、各ホール効果センサが正弦波形で変化する電圧を生成し、その3つの波形が120度だけ位相シフトしている、請求項4に記載のDC電気モータ。
【請求項6】
12個の磁石と、40度の機械回転間隔で配置された3つの線形ホール効果センサとを備える、請求項5に記載のDC電気モータ。
【請求項7】
隣接する正弦波形の交叉部が前記波形の直線部を画定する、請求項5に記載のDC電気モータ。
【請求項8】
前記基板は、前記波形の画定された直線部における電圧値のアナログ-デジタル変換(ADC)及びアナログ電圧波形のゼロクロス検出を可能とする電気回路を備えるプリント回路基板(PCB)である、請求項6に記載のDC電気モータ。
【請求項9】
前記電気回路は、前記波形の各直線部に2048個の等間隔のデジタル値を生成する、11ビットのアナログ-デジタル変換器(ADC)を使用する、請求項8に記載のDC電気モータ。
【請求項10】
前記電気回路はプログラマブルシステムオンチップ(PSOC)に実装されている、請求項8に記載のDC電気モータ。
【請求項11】
DC電気モータを符号化する方法であって、
ステータを基板に取り付けるステップであって、前記ステータは磁性材料のコアと電気巻線を有するコイルアセンブリを備え、前記コイルアセンブリは外径と基端と遠位端とを有している、前記ステータを取り付けるステップと、
ロータを前記ステータに取り付けるステップであって、前記ロータは円筒形スカートに取付けられた複数の永久磁石であってそれぞれ前記永久磁石の遠位端に向かって延びる永久磁石を備え、前記ロータは外径、及び内径を有し、前記ロータの回転を駆動する前記永久磁石の遠位端は、前記ロータが水平面に沿って延びかつ回転するように前記ロータが平らに向けられたとき、縦方向において前記コイルアセンブリを越えて延在している、前記ロータを取付けるステップと、
複数のセンサを前記永久磁石に隣接する基板の表面であって前記永久磁石に面する表面上に配置するステップであって、モータの動作時に、前記永久磁石が前記複数のセンサ上を通過することで、複数の電圧変化の正弦波信号をノイズ及び飽和なしで生成するように、前記永久磁石のそれぞれ延在された前記遠位端と前記複数のセンサとの間に間隔が定義されるステップと、
転流によって前記DC電気モータを動作させ、前記永久磁石に前記複数のセンサ上を通過させて、ノイズ及び飽和なしに複数の変化する電圧の正弦波形を生成するステップと、
ハードウェアのエンコーダ又は位置センサの使用を必要とせず、及び、電圧信号のいかなるノイズ除去又はフィルタリングもなしで、前記正弦波形の直線部を含む、前記複数のセンサからの前記複数の電圧信号から前記ロータの位置を決定するステップと、
を含む方法。
【請求項12】
前記基板に取り付けられた前記複数のセンサは、前記ロータの前記永久磁石の延在された前記遠位端に対して配置され、延在された前記遠位端から前記複数のセンサまでの隙間は、2~5ボルトの直流電圧をノイズ及び飽和なしで与えるのに十分である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記永久磁石の延在された前記遠位端は、前記コイルアセンブリの前記遠位端を1mm以上超えて延在する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記複数のセンサは、前記ロータの弧状経路に沿って共通の弧長だけ離間した、線形ホール効果センサである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記円筒形スカートの周りに等間隔で配置され、前記円筒形スカートの遠位端部において隣接する磁石が反対極性を示す偶数個の永久磁石と、各ホール効果センサが正弦波形で変化する電圧を生成する3つのホール効果センサとを備え、前記3つの波形は120度だけ位相シフトしている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
12個の磁石と、40度の機械回転間隔で配置された3つの線形ホール効果センサとを備える、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
隣接する正弦波形の交叉部が前記波形の直線部を画定する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記基板は、前記波形の画定された直線部における電圧値のアナログ-デジタル変換(ADC)及びアナログ電圧波形のゼロクロス検出を可能とする電気回路を備えるプリント回路基板(PCB)である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記電気回路は、前記波形の各直線部に2048個の等間隔のデジタル値を生成する、11ビットのアナログ-デジタル変換器(ADC)を使用する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記電気回路はプログラマブルシステムオンチップ(PSOC)に実装されている、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
磁気コアを備えるステータであって、磁性材料のコアと電気巻線を有するコイルアセンブリを備え、前記コイルアセンブリは外径と基端と遠位端とを有する、ステータと、
前記ステータに対して回転可能に取り付けられたロータであって、前記ロータの周りに放射状に分布する複数の永久磁石であってそれぞれ前記永久磁石の遠位端に向かって延びる永久磁石を備え、前記ロータは外径、及び内径を有し、前記永久磁石の遠位端は、前記ロータが水平面に沿って延びかつ回転するように前記ロータが平らに向けられたとき、縦方向において前記コイルアセンブリを越えて延在するロータと、
前記ステータに対して固定位置にあって、前記ロータの回転時に前記複数の磁石の経路に隣接する基板の表面であって前記永久磁石に面する表面上に配置された複数のセンサであって、モータの動作時に、前記永久磁石が前記複数のセンサ上を通過することで、複数の電圧変化の正弦波信号をノイズ及び飽和なしで生成するように、前記ロータの回転を駆動する前記永久磁石のそれぞれ延在された前記遠位端と前記複数のセンサとの間に間隔が定義される前記センサと、
前記複数のセンサに通信可能に結合され、前記ロータの回転時に前記複数のセンサから、前記複数の電圧信号を受信し、かつ、ハードウェアのエンコーダ又は位置ベースのセンサの使用を必要とせず、及び、前記電圧信号のいかなるノイズ除去又はフィルタリングもなしで、前記複数のセンサからの前記複数の電圧信号で前記モータの変位を決定するように構成された、処理モジュールと、
を備えるモータシステム。
【請求項22】
前記処理モジュールは、前記ロータの回転時に前記複数のセンサのそれぞれから、前記ロータの回転時の電圧変化の正弦波信号であってそれぞれ直線部を有する正弦波信号である、測定された電圧信号を受信し、かつ、複数の前記正弦波信号の直線部を有する前記複数の電圧信号から前記モータの変位を決定するようにさらに構成された、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記複数の永久磁石は、前記複数のセンサからの前記複数の電圧信号がノイズなしとなるように、前記ロータの前記磁性材料のコアを1mm以上越えてある距離だけ延在する、請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
前記複数のセンサは、前記複数の磁石の経路に沿って分布する少なくとも2つのセンサを含み、前記少なくとも2つのセンサの隣接するセンサからの正弦波信号の直線部が交叉して、モータの変位の決定のために、前記結合した直線部の増加した分解能及び粒度を与えるようになっている、請求項21に記載のシステム。
【請求項25】
小寸法の機械機構をさらに備え、
前記モータは、前記小寸法の機械機構の微調移動のために構成され、
前記モータは、約0.1度以下の機械回転分解能を有する、請求項21に記載のシステム。
【請求項26】
シリンジ駆動器又はバルブアセンブリを有する診断アッセイシステムをさらに備え、
前記モータシステムは、精度の高い流体計量を行なうシリンジ駆動器の操作のために構成されている、又は、バルブアセンブリの微調移動での複合サンプルの処理を容易にするバルブアセンブリの操作のために構成されている、請求項21に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年7月22日出願の「DCモータの転流と符号化の単純な重心実装(Simple Centroid Implementation of Commutation and Encoding for DC Motor)」と題する米国特許仮出願第62/195,449号の優先権の利益を主張し、参照によりその内容全体を本明細書に援用する。
【0002】
本出願は一般に、本出願と同時出願の「分子診断アッセイシステム(Molecular Diagnostic Assay System)」と題する米国特許出願第-号[代理人整理番号85430-1017042-011610US]、2013年3月15日出願の「ハニカムチューブ(Honeycomb tube)」と題する米国特許出願第13/843,739号、2002年2月25日出願の「流体の処理及び制御(Fluid Processing and Control)」と題する米国特許第8,048,386号、2000年8月25日出願の「流体制御処理システム(Fluid Control and Processing System)」と題する米国特許第6,374,684号に関連し、参照によりその各々の全体をすべての目的のために本明細書に援用する。
【0003】
本発明は電気モータ、特にブラシレスDC電気モータの分野に関し、そのようなモータの転流及び符号化に関する。
【背景技術】
【0004】
ブラシレスDC(BLDC)電気モータの転流は、モータの動作中の永久磁石の運動の検知にホール効果センサを使用することができる。しかしながらホール効果センサは、位置センサ及び/又ハードウェアのエンコーダの追加使用なしでは高精度かつ細かい粒度でのDCモータの符号化を行うことはできなかった。したがってこの点における有効性は限定的であった。多くの場合において、モータ駆動される要素の動作及び適用を成功させるためには、モータ駆動される要素の位置(及び位置変化)を高精度かつ高分解能で決定することが要求される。これは小寸法のデバイスにとっては特に重要であり得る。そのような用途の1つが、解析プロセス、例えば診断手順、における流体サンプル操作のためのポンプ及びシリンジの駆動にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、モータの変位、例えばBLDCモータの符号化を非常に高度の分解能及び位置精度で可能とするシステム及び方法に対する必要性がある。そして更にはそれを比較的簡単なハードウェア及びソフトウェアで行うことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本発明は、本明細書で教示されるように追加的なエンコーダのハードウェアの使用を必要としないで、極めて高い分解能と位置精度を生成するようにブラシレスDC電気モータを符号化するシステムと方法を提供する。同じシステムと方法は、モータの転流もまた提供可能である。いくつかの実施形態において本システムは、ハードウェアのエンコーダや位置センサを使用せずに、また測定された電圧信号のノイズフィルタリングを必要としないで、ブラシレスDCモータの符号化を可能とする。
【0007】
いくつかの実施形態において本発明は、磁気コアを備えるステータと、ステータに対して回転可能に取付けられ、その周りに複数の永久磁石を分布させたロータと、ステータに対して固定位置にあって、ロータの回転時には複数の磁石の経路に隣接して配置された1つ以上の電圧センサと、を含むモータシステムを提供する。このシステムはさらに、1つ以上のセンサに通信可能に結合され、ハードウェアのエンコーダや位置ベースのセンサの使用を必要とせず、及び/又は信号のノイズ除去又はフィルタリングなしで、1つ以上のセンサからの電圧信号でモータの変位を決定するように構成されたプロセッサモジュールを含む。いくつかの実施形態において、複数の磁石はステータの磁気コアを越えてある距離(例えば約1mm以上)まで延在し、センサからの信号を実質的にノイズ無しとする。
【0008】
いくつかの実施形態において、システムは、ロータの回転時に1つ以上のセンサのそれぞれから、実質的に前記ロータの回転時の電圧変化の正弦波信号である測定された電圧信号を受信し、その正弦波信号の直線部からモータ変位を決定するように構成されている処理モジュールを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のセンサは、複数の磁石の経路に沿って分布された少なくとも2つのセンサを含み、その少なくとも2つのセンサの隣接するセンサからの正弦波信号の直線部分同士が交叉して、モータ変位決定のための結合した直線部の分解能及び粒度を向上させるようになっている。
【0009】
いくつかの実施形態においてシステムは、基板に取り付けられたステータとステータに取り付けられたロータとを有するDC電気モータを含んでいる。ステータはコアと電気巻線を有するコイルアセンブリを含み、コイルアセンブリは外径、基端、及び遠位端を有する。ロータは外端に沿って配置された(例えば円筒形スカートに取付けられた)永久磁石を含み、ロータは外径と内径と遠位端部を有する。いくつかの実施形態では、永久磁石はステータの磁気コア(すなわちコイルアセンブリ)の遠位端を越えて延在する。システムはさらに、永久磁石に隣接する基板に取り付けられた1つ以上のセンサを含む。いくつかの実施形態においてロータは、一連の個別の永久磁石を、スカートの遠位端部において隣接する磁石が交互に逆の極性を有する形に配置して作製される。いくつかの実施形態においては、短冊、リング、又は円盤の形態をした磁性材料(例えば強磁性材料またはフェリ磁性材料)の単一片でロータを画定し、次にこれを磁化してスカートの遠位端部に、逆の磁極を交互に有するパターンを形成する。いずれの作製方法でも本発明の用途には適している。いくつかの実施形態においてコアは、これは磁性材料のコアであるが、典型的には金属又は他の常磁性材料である。本発明のコアへの使用に適した非限定的な材料の例としては、鉄、特に軟鉄、コバルト、ニッケル、ケイ素、積層ケイ素鋼、ケイ素合金、特殊合金(例えば、ミューメタル、パーマロイ、ス―パーマロイ、センダスト)、アモルファス金属(例えばメットグラス(Metglas))がある。コアには空気が含まれてもよく、いくつかの実施形態ではコアは空芯である。モータの動作時に、永久磁石が1つ以上のセンサ上を通過することで、実質的にノイズ及び/又は飽和なしの電圧変化の正弦波信号を生成し、それによってハードウェアのエンコーダや位置センサの使用を必要とせずに、ロータの基板に対する角度位置を正弦波信号の直線部から決定可能とする。こうしてモータの変位を、高度の精度と分解能で決定して制御することが可能である。例えば、本明細書に記載の、12個の永久磁石と9個の磁極を有し、3個のホールセンサと11ビットのアナログ-デジタル変換器を処理モジュールとして使用するモータは、いかなるハードウェアのエンコーダや位置センサ、ノイズフィルタリングもなしで、約0.01度の機械回転分解能を出すことができる。本システムの分解能と精度は、磁極の数や永久磁石の数の変更、又はADCの高位ビット又は低位ビットの使用によって、増減が可能である。
【0010】
いくつかの実施形態では、基板に取り付けられた1つ以上のセンサが永久磁石の延長端に対して配置される。永久磁石の延長端から1つ以上のセンサまでの隙間は、実質的にノイズ及び/又は飽和なしでDC電圧信号を与えるのに十分なように、位置が画定される。いくつかの実施形態では、永久磁石の端部はコイルアセンブリの遠位端を約100ミクロンだけ超えて延在する。いくつかの実施形態で永久磁石は、モータの特定の実施形態に依存して、コアアセンブリの遠位端を100ミクロン未満、例えば90、80、70、60、50、40、30、20、10ミクロン又はそれ未満だけ、越えて延在する。いくつかの実施形態で永久磁石は、モータの特定の実施形態に依存して、コアアセンブリの遠位端を、約100ミクロンと1000ミクロン又はそれ以上の間のすべての値を含んで100ミクロン超だけ、例えば、200、300、400、500、600、700、800、900、1000ミクロンだけ越えて延在する。いくつかの実施形態では、永久磁石はコイルアセンブリの遠位端を、これに限定するものではないが約1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、又はそれ以上を含んで、約1mm以上だけ超えて延在する。永久磁石がコイルアセンブリの遠位端を越えて延在する正確な距離はモータの特定の特性および実施形態に依存し、本明細書で提供する指針に基づいて通常の技術者の技術の範囲内で決定すればよい。いくつかの実施形態では、1つ以上のセンサは、ロータの弧状経路に沿って共通の弧長だけ離間した、線形ホール効果センサである。
【0011】
いくつかの実施形態においてモータは、円筒形スカートの周りに等間隔で配置され、スカートの遠位端部において隣接する磁石が反対極性を示す偶数個の永久磁石と、それぞれが実質的に正弦波形で変化する電圧を生成する少なくとも2つのアナログ電圧センサ(典型的にはホール効果センサ)とを含む。いくつかの実施形態においてモータは、2つ以上のアナログセンサを含み、又いくつかの実施形態では、アナログセンサの数はモータの位相数に等しい。例えば3相モータは、本明細書に記載するように3つのアナログセンサの使用によって制御可能である。いくつかの実施形態においてモータは、モータの位相に拘わらず1つだけのアナログセンサを含む。3相モータを備えるいくつかの実施形態においては3つのホール効果センサが使用されて、モータの動作時にそれぞれが実質的に正弦波形で変化する電圧を生成し、その3つの波形は120度だけ位相シフトしている。いくつかの実施形態においては、センサの最小数がモータの位相に等しい限りは、追加的なセンサを使用可能である。磁石の正確な数は、磁石が偶数である限りは可変である。例えばいくつかの実施形態においては、12個の磁石と、40度の機械回転間隔で配置された3つの線形ホール効果センサがある。いくつかの実施形態においては、隣接する正弦波形の交叉部が波形の直線部を画定する。
【0012】
いくつかの実施形態においてデバイスは、波形の画定された直線部における電圧値のアナログ-デジタル変換(ADC)及びアナログ電圧波形のゼロクロス検出を可能とする電気回路を含むPCBで構成される。いくつかの実施形態において電気回路は11ビットのアナログ-デジタル変換器(ADC)を使用し、波形の各直線部に2048個の等間隔のデジタル値を生成する。これらの波形の直線部に対する等間隔のデジタル値は、システムの分解能を表す。特定のモータに対する所望の機能に依存して、ビット数のより大きいかより小さいADCを使用することにより、より高いかより低い分解能を実現可能であることは理解されるであろう。いくつかの実施形態において電気回路は、プログラマブルシステムオンチップ(PSOC)に実装される。さらに、非PSOCチップ、例えばフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)及びそれに類似のものを電気回路の実装に使用可能であることも理解されるであろう。
【0013】
いくつかの実施形態において、追加的なハードウェアのエンコーダ又は位置ベースセンサ、及び/又はモータの変位制御に使用するアナログ信号のノイズフィルタリングの使用を必要とせずに、高度の粒度でDC電気モータを符号化するための方法が提供される。この方法には、コアと電気巻線を有するコイルアセンブリを備えるステータであって、コイルアセンブリには外径と基端と遠位端とがあるステータを基板に取り付けることと、外周に永久磁石が取り付けられたロータであって、その磁石がコアの遠位端を越えて特定の方向(例えば典型的にはロータの回転面を横切る方向)に延在するロータをステータに取り付けることと、が含まれる。この方法はさらに、DC電気モータを転流によって動作させて、永久磁石に隣接する基板にある1つ以上のセンサ上を永久磁石が通過するようにさせることを含む。この動作により、変化する電圧の1つ以上の正弦波形が生成され、それはアナログ信号のノイズフィルタリングを必要としない程に実質的にノイズや飽和がない。この方法はさらに、正弦波形の直線部に基づいてロータ位置を決定することを必然的に伴う。
【0014】
いくつかの実施形態において基板に取り付けられた1つ以上のセンサは、ロータの永久磁石の延長端に対して配置され、その延長端から1つ以上のセンサまでの隙間はノイズ及び/又は飽和なしで電圧を与えられるほどの大きさである。いくつかの実施形態において電圧は、直流の約2~5ボルトである。いくつかの実施形態では、永久磁石の延長端はコイルアセンブリの遠位端を約1mm以上超えて延在する。いくつかの実施形態では、1つ以上のセンサは線形ホール効果センサである。いくつかの実施形態では、センサはロータの弧状経路に沿って共通の弧長だけ離間している。いくつかの実施形態では、円筒形スカートの周りに等間隔で配置され、かつスカートの遠位端部において隣接する磁石が反対極性を示す偶数個の永久磁石と、3つのホール効果センサとがあり、各ホール効果センサは実質的に正弦波形で変化する電圧を生成し、かつこの3つの波形が約120度だけ位相シフトしている。
【0015】
いくつかの実施形態では12個の磁石と、20度の機械回転間隔で配置された3つの線形ホール効果センサがある。いくつかの実施形態では、センサ同士は互いに一定の半径方向距離だけ離間している。それは例えば0度と90度の間の任意の半径方向距離(例えば機械回転の約20度、約40度、約60度)である。いくつかの実施形態においては、隣接する正弦波形同士の交叉部が波形の直線部を画定し、この直線部は実質的にノイズがない。いくつかの実施形態において基板は、画定された波形の直線部における電圧値のアナログ-デジタル変換(ADC)及びアナログ電圧波形のゼロクロス検出を可能とする電気回路を含むプリント回路基板(PCB)である。いくつかの実施形態において電気回路は、波形の各直線部に2048個の等間隔のデジタル値を生成する、11ビットのアナログ-デジタル変換器(ADC)を使用する。いくつかの実施形態において電気回路は、プログラマブルシステムオンチップ(PSOC)に実装される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の例示的実施形態におけるブラシレスDC電気モータの構成要素を示す平面図である。
図2A】基板に取付けられた図1のモータの、部分的に断面を示す立面図である。
図2B】本発明の例示的実施形態における磁石とセンサの間の間隔を示す、図2Aの領域2bの拡大立面図である。
図3A】本発明の例示的実施形態におけるセンサ配置を示す、モータを取り払った図2Bの基板(201)の平面図である。
図3B】本発明の例示的実施形態による、遠位端部で極性が交互に変わる形をした、ロータ内の永久磁石配置を示す図であり、隣接する永久磁石の漏洩磁界を示す。
図4】本発明の例示的実施形態において、モータのロータの永久磁石が第1のホール効果センサ上を通過することにより生成される、本質的に正弦波の可変電圧波形を示す。
図5】本発明の例示的実施形態において、モータのロータの永久磁石が第2のホール効果センサ上を通過することにより生成される正弦可変電圧波形を、図4の波形に重ねて示した図である。
図6】ロータの永久磁石が第3のホール効果センサ上を通過することにより生成される正弦可変電圧波形を、図5の波形に重ねて示した図である。
図7図6の電圧波形のコピーに、DCモータを非常に正確かつ細かく符号化するための波形利用プロセスを示す記号を追加した図である。
図8】本発明の例示的実施形態において、変位決定に使用する図7の交点間の直線部分を示す図である。
図9】ホール効果センサの出力を利用してDCモータを制御するための、本発明の例示的実施形態における電気回路を示す図である。
図10】モータ機構のPWMと駆動方向を制御するためのPIDを利用した制御方式図である。
図11】本発明のいくつかの実施形態による、動作時のモータ変位の決定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は非限定の例示的プロトタイプにおけるブラシレスDC(BLDC)電気モータ100の構成要素を示す平面図である。そのようなモータは非常に広範囲の用途に使用され、特に高水準の精度と粒度を必要とする小寸法の機械機構の動作に使用されることが理解される。いくつかの実施形態としては、ハードウェアのエンコーダ及び/又はノイズフィルタリングなしで、例えば約0.1度の機械回転分解能、好ましくは約0.01度の機械回転分解能、さらには約0.001度又はそれ未満の機械回転分解能の、改善されたモータ変位決定の分解能を有するモータシステムがある。そのような用途の1つとして、非常に精度の高い流体計量を行なうシリンジ駆動器の操作、又はバルブアセンブリの微調移動での複合サンプルの処理及び/又は分析手順を容易にするためのサンプルカートリッジに繋がる、診断アッセイシステムのバルブアセンブリの操作がある。そのような用途の例は、本願と同時出願された「分子診断アッセイシステム(Molecular Diagnostic assay System)」と題する米国特許出願第-号[代理人整理番号85430-1017042-011610US]、及び2002年2月25日出願の「流体の処理および制御(Fluid Processing and Control)」と題する米国特許第8,048,386号、2000年8月25日出願の「流体の制御処理システム(Fluid Control and Processing System)」と題する米国特許第6,374,684号に見ることができる。これらの全内容を参照により本明細書に援用する。
【0018】
一態様においてBLDCは、ロータと、ステータと、複数のアナログ電圧センサとを含み、その電圧センサはフィルタリングやノイズ除去を必要とせずに平滑に変化するホール効果電圧を生成するように構成されている。いくつかの実施形態において、この機能は、ステータの磁気コアを越えてある距離だけ延在する、ロータ内の永久磁石を使用することによって提供される。いくつかの実施形態において、BLDCはモータの位相と同数のアナログ電圧センサを含み、それらは、センサから受信する測定電圧波形の実質的に直線部のみに基づいてモータが制御可能であるように配置される。いくつかの実施形態において、このことは測定電圧波形の直線部が交叉するようにして、ステータの周りにセンサを放射状に間隔をあけて配置することを含む。例えば、3相BLDCは、相互に放射状に40度間隔をあけた3つのホール効果センサを含むことができ、これによりシステムはセンサ位置を40度の増分内に制御可能となる。
【0019】
上記の明細書では本発明をその特定の実施形態を参照して説明したが、当業者であれば本発明はそれに限定されるわけではないことを認識するであろう。全体を通じて使用されるように、「約」という用語は述べた値の±10%を指すことができる。上記の本発明の様々な特徴及び態様は、個別または共同して使用可能である。本明細書に記載の実施形態のいかなる態様または特徴も、本明細書に記載の任意の実施形態、並びに様々な他の種類及び構成に変更、組合せ、及び組込みが可能であることは理解されよう。さらに、本発明は、本明細書のより広範な精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されたものを超える任意の数の環境及び用途に利用することができる。したがって、明細書及び図面は限定的であるよりもむしろ例示的であるとみなされるべきである。
【0020】
図1に示すようないくつかの実施形態において、モータは中心から放射状に延在する9個の極歯を有する内部ステータアセンブリ101を含み、各極歯は極片103で終端し、かつ各極歯は電磁コイル102である巻き線を有する。モータはさらに、外部円筒形スカート105と、そのスカート105の内周の周りに極性が交互に替わるように配置された12の永久磁石106とを有する外部ロータ104を含んでいる。永久磁石は、極片の外側曲面に近接した、円筒形内側面をロータに付与するような形状となっている。本実施例におけるBLDCモータは、3相、12極のモータである。図1には示されていないが、具備された制御回路がコイル102内の電流を切り替えて、永久磁石106との電磁相互作用を与え、当業者が承知のようにロータを駆動する。ここでは内部ステータと外部ロータについて説明したが、この手法は内部ロータと外部ステータを有するモータについても使用可能であることが理解される。
【0021】
極歯と極の数、それにまた内部ステータと外部ロータの開示は例示であって、種々の異なる設計のモータで動作可能な本発明を限定するものではないことに注意されたい。
【0022】
図2Aは、図1のモータの、部分的に断面となった側立面図である。9つある極歯とコイルの内の1つが切り出されて示されており、これは外部ロータ104の円筒形スカート105の内周の周りに配置された12個の永久磁石106の1つに近接する極片103を末端としている。ステータアセンブリ101の極歯及び極片はコアの一部であり、線204の高さにおいてコアの遠位端を画定する。ステータアセンブリ101は本実装においては基板201上に支持されている。これはいくつかの実施形態においてはプリント回路基板であり、永久磁石106の磁場と相互作用する電磁場を付与してロータを駆動するためにコイル102への電流の切り替え操作をするように構成された、制御ユニットとトレースを含むことができる。PCB基板は符号化と転流のための電気回路もまたは含むことができる。ロータ104は駆動シャフト107によってステータ101に物理的に係合する。駆動シャフトはステータのベアリングアセンブリに係合してロータを正確に回転させる。ベアリングの詳細は図2Aには示されていない。ただし、そのようなベアリングを実装可能な多くの従来法があることは理解される。本実装における駆動シャフト107は意図的にPCB107の開口を貫通して、駆動用機械装置に係合可能である。
【0023】
3つの線形ホール効果センサ202a、202b、202cが図2Aに示されており、これらはPCB201によって支持されて、いくつかの実施形態によればモータ100に対する符号化及び転流を行うためのプロセスに使用可能な可変電圧信号を生成するように戦略的に配置されている。図2Aでは、ロータ104のスカート105の全体高さが寸法Dで表されている。寸法d1は、線204にある磁気コアの遠位端から下へのロータ磁石の遠位端の延長を表す。いくつかの実施形態にでは、この延長の方向はロータの回転面に対して横断方向、典型的には垂直である。
【0024】
図2B図2Aの領域2bの拡大立面図であって、ロータ104の永久磁石の遠位端部と、PCB201上のホール効果センサ202a、202b、202cの構造体との間の隙間d2を表している。
【0025】
図3Aは、図2Aの矢印3の方向から見たPCB201の平面図である。これは、図2でコアの遠位端部の下に寸法dだけ延在していることがわかるロータ104の遠位端部に対する、ホール効果センサ202a、202b、202cの配置を示す。図3では、12個の永久磁石106を含むロータ104の回転軌道が点線の輪郭302で示されている。ロータは転流の詳細に依存していずれの方向303にも回転する。本明細書に記載の手法は、ロータの回転方向に拘わらず使用可能であることが理解される。
【0026】
この非限定の例示的プロトタイプに示すように、各ホール効果センサ202a、202b、202cはロータ磁石の遠位端部の直下で、回転磁石の中心軌道の放射方向に僅かに内側に向かって配置される。ホール効果センサ202bは、ロータ磁石の回転軌道に沿ってホール効果センサ202aから40度の円弧となる位置にある。同様に、ホール効果センサ202cは、ホール効果センサ202bからロータ軌道の周りにさらに40度の位置にある。
【0027】
図3Bは、この非限定の例示的プロトタイプにおいて、3つの永久磁石106を2つのホール効果センサ202a、202bとの関係で示す斜視図である。ロータの永久磁石は、図3Bに示すように極性が交互に変わるように配置されている。また、ロータの遠位端部には、隣接する永久磁石間の漏洩磁界304が示されている。アナログセンサ(例えばホール効果センサ)が配置されて漏洩磁界を検知するために間隔を置いて配置されるのは、この隣接する永久磁石の間の漏洩磁界に対してであり、永久磁石の内面が曲線形状になっているために、磁石の回転の中央軌道から放射方向の少し内側へ、ホール効果センサを配置することが要求される。ホール効果センサは、装置の全体の大きさ及び要求される磁場の強度に依存して、1mm又はそれ以上(例えば2、3、4mm)ほどの小さな距離だけ内側に配置してよい。検出信号内のノイズを実質的に除去するために、センサと永久磁石間の間隔(すなわちd2)は最小化することが有利である。
【0028】
図2Aに戻ると、寸法d1が、線204にあるコアの遠位端の下へのロータ磁石の遠位端の延長距離を示している。従来のモータでは、この端部をコア端部より下へ延長する理由も動機もない。それは特にこのためにモータの高さが増し、ロータと基板の間に大きな隙間を必要とするからである。実際に、付加された寸法は従来モータに不要なコストと容積を追加するので、熟練技術者であれば寸法Dを制限してそのような延長部がないようにするであろう。さらに、通常のモータのロータの遠位端においては、コアの高さ又はそれより上においてコイル102の電流切替えによって大きな磁場の効果が生成され、その位置で永久磁石を検知するように配置されたホール効果センサからの信号では、滑らかに変化するホール効果電圧は生成されない。従来モータでの効果はむしろ実質的にノイズで劣化する。このジレンマに対する従来の解決法はノイズフィルタリングの導入であり、より一般的にはエンコーダを利用することである。
【0029】
有利なことに、ロータ磁石を鉄芯の遠位端より下に延長することで、ステータコイルからのスイッチング磁界がホール効果センサの信号に及ぼす劣化効果を回避できる。具体的な延長d1は特定のモータ構成に特有のいくつかの因子に依存し、いくつかの実施形態では、1mm以上(例えば、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、又はそれ以上)であり、また別の実施形態では延長は1mm未満である。いくつかの実施形態では、この距離は永久磁石の大きさ及び/又は磁界強度の関数である。本明細書で詳細を述べたいくつかの実施形態の例示的プロトタイプでは、ノイズや飽和のない電圧変化の正弦波信号を生成するには1mmの延長で十分である。ホール効果電圧を生成するためにホール効果センサを距離d2に配置することで、ノイズなしの滑らかな可変電圧が生成される。いくつかの実施形態では、ホール効果センサは、約2ボルトから約5ボルトの範囲の滑らかな可変DC電圧を、ノイズや飽和なしで生成する。寸法d2は、センサの選択、ロータの設計、ロータ内の永久磁石の強度、及びその他の当業者に周知の因子によって変化し得る。センサの飽和を回避して、実質的にノイズなしの滑らかに変化するDC電圧を生成するための、実行可能な距離は任意の特定の状況に対して容易に見いだされる。
【0030】
図4は、3相BLDCモータにおいてロータ104の永久磁石106がホール効果センサ202a上を通過することで生成される、正弦可変電圧波形401を示す。0度の始点は、最大電圧点に任意に設定される。ロータの360度の完全な1回転で3つの完全な正弦波形が生成される。
【0031】
図5は、モータのロータ104の永久磁石106がホール効果センサ202b上を通過することにより生成される実質的にノイズのない正弦可変電圧波形501を、図4の波形401に重ねて示す。ホール効果センサ202bはホール効果センサ202aの位置から弧長で40度の位置にあり、正弦波形501は正弦波形401の位相から120度だけ位相シフトしている。
【0032】
図6は、ロータ104の永久磁石106がホール効果センサ202c上を通過することにより生成される実質的にノイズのない正弦可変電圧波形601を、図5の波形401、501に重ねて示す。ホール効果センサ202cはホール効果センサ202bの位置から弧長で40度の位置にあり、正弦波形501の位相は正弦波形501から120度だけ位相シフトしている。波形はロータが360度回転するごとに反復される。
【0033】
図7は、図6の電圧波形のコピーに、この波形を利用してモータ100の符号化を非常に正確かつ細かく行うための波形利用プロセスを示す記号を追加した図である。3つの電圧波形401、501、601は、ホール効果センサが同一であり、かつ同一距離において同一の漏洩磁界を検知するために、実質的に同一の最大と最小のピークをそれぞれ有する。さらに、波形401、501、601は複数の点で交叉し、点701、702、703、704がその例である。特に、交点間の波形部分は実質的に直線であり、これらの直線部分は図7で強調されている。そして、接続された直線部分の無限の連続するシーケンスが与えられることがわかる。さらに、各直線部分のゼロクロス点、及び各波形の最大と最小のピークが検出されて記録されてもよい。
【0034】
図8図7の交点701、702、703の間の2つの直線部分を示す。非限定的な例として、交点701と702の間の部分が等しい長さの20の部分に分割されて示されている。これは交点701と702における電圧を検出し、それを単純に分割することで便宜的に行うことができる。波形の1つの交点から次の交点までのロータの物理的な回転は、20度のモータ回転であるので、計算による各電圧変化は20/20、すなわち1.00度のロータ回転となる。これは本方法を説明する一例に過ぎない。本発明のいくつかの実施形態では、PCB201上の電気回路が交点を検出し、交点の間を11ビットのアナログ-デジタル変換器(ADC)によって分割し、これで2048カウントが与えられる。この実装では各カウントに対するロータ205の機械回転変位は約0.0098度である。ビット分解能の高い(又は低い)ADCを使用することで、本システムの分解能を高くする(又は低くする)ことができる。たとえば、8ビットのADCを使用すれば、1カウントを約0.078度に分解し、16ビットのADCでは1カウントを0.00031度に分解し、20ビットのADCでは1カウントを約0.00002度に分解する。代替的には極の数を増減することにより、システムの分解能が対応して増減する。
【0035】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の手法によってモータ100で駆動される機構に高度の正確度と精度が与えられる。11ビットADCを用いた上記の非限定的な例では、モータ位置は機械的に0.0005度まで制御可能である。ギヤ減速と結び付ければ、機構の並進及び回転を極めて微細に制御可能となる。いくつかの実施形態では、モータ100は、分析化学プロセスで流体を吸引及び吐出するシリンジのポンプユニットの並進駆動器に連結される。
【0036】
図9は、本発明の一実施形態におけるモータ100制御のための電気回路を示す図である。これは、ホール効果センサの出力と、そのセンサで生成された位相分離曲線の直線部のみを解析する独特の方法とを利用するもので、直線部は上記のように等分のセグメントに分割される。ホール効果センサ202a、202bの出力が、転流のための比例積分偏差(PID)運動制御回路に提供され、ロータ磁石とホール効果センサの相互作用により生成された波形が、図9に示すように多重化回路に提供される。いくつかの実施形態では、モータ変位は、モータの2つ以上のセンサにより測定された電圧の2つ以上の正弦曲線から得られる直線部(例えばジグザグ部)に基づいて制御可能である。
【0037】
図10は、PIDコントローラの使用による、パルス幅変調(PWM)とモータの駆動方向の調節の制御を示す制御方式である。PIDコントローラには、モータ変位の所望位置並びに測定位置の入力が含まれる。従来装置では測定されたエンコーダ位置は、ハードウェアのエンコーダ又は位置ベースセンサにより与えられるが、いくつかの実施形態ではこの入力は、いかなるハードウェアセンサ又は位置ベースセンサも必要とせずに、アナログセンサからの測定電圧の直線部によって与えることができる。こうして、本明細書に記載の手法によって、従来はハードウェアエンコーダで与えられた入力を、その他の制御方式の変更なしで決定可能となる。ただし、エンコーダ位置入力を決定するように処理ユニットが適合されることは理解されよう。
【0038】
図11はいくつかの実施形態による方法を示す。この方法は、外周の周りに永久磁石を分布させたロータと、磁気コアを持つステータとを有するDCモータの動作を含む。モータの動作時に、システムはステータに対して固定された位置にある少なくとも2つのアナログセンサからのアナログ正弦波信号を受信する。正弦波信号が互いにオフセットされるようにセンサは相互に離間されている。システムはモータの回転経路の少なくとも一部に沿って均一に分布された、ホール効果センサなどの複数のアナログセンサを含むことができる。いくつかの実施形態では、そのような構成には、図3Aに示すような相互に約40度離間した、少なくとも3つのそのようなセンサが含まれる。そうしてシステムはオフセットされた正弦波信号の直線部に基づいてモータ変位を決定する。モータ変位は、システムの様々な他のプロセス又は機能の情報を与えるためにシステムが使用することができ、又は、モータ変位をPIDコントローラなどのコントローラへの入力として含む制御ループを利用してモータ制御に使うことができる。いくつかの態様ではこのアプローチは、診断アッセイシステム又は他のそのような流体処理システムの小寸法バルブ機構又はシリンジ駆動機構の操作を容易とし、あるいは微調整するために使用可能である。
【0039】
非限定の例示的実施形態で述べたように、ADCは位相分離波形の直線部分の生成に使用され、モータ100は、例えばテキサス・インスツルメンツ社のモータ駆動回路のDRV8313によって駆動可能である。この手法の範囲内で他の使用可能な回路構成があることは理解される。いくつかの実施形態では、ホール効果センサを検知し、モータの符号化を与える回路及びコード化命令は、PCB上のプログラマブルシステムオンチップ(PSOC)に実装され得る。
【0040】
本発明の範囲を逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態に様々な変更をなしうることが理解される。例えば本発明の代替実施形態においては、設計の異なる電気モータを導入してセンサを配置し、結果的に得られる交差曲線の実質的な直線部分のみを回路が考慮に入れるようにして実質的に正弦波の位相分離波形を生成させ、その直線部分を長さの等しいセグメントに分割して、モータの機械設計に依存するロータ又はステータの回転の分数に関連する既知の等しいセグメントに電圧増分を実効的に分割することで、さらに分解能をあげて制御することも可能である。
【0041】
本発明によるDC電気モータのいくつかの非限定的な使用例及び用途としては以下のものが含まれる。
【0042】
診断応用:流体サンプルの高スループット処理及び診断アッセイ遂行のためのロボット工学の使用の増加に伴い、機械機構の高分解能制御が極めて有用になってきている。特に、診断デバイスが、より効率的でより小さいサンプルサイズを必要とする、小寸法及びマイクロデバイスの方向へ向かう傾向があるので、小寸法の運動を制御することは特に関心が高い。
【0043】
医療応用:遠隔手術技法のためのロボット工学の利用の増大とともに、遠隔制御された器具を極めて高精度に制御して動かすことが必要不可欠となってきている。例えば、眼科学又は神経学における手術では、網膜細胞又は神経末端の操作に顕微鏡レベルの分解能での動きを必要とする。これらの、目と連携してヒトの手で行ない得るものより遥かに微細な動きを行うために、好適なセンサからのフィードバックに連携させたアクチュエータの動作にコンピュータが使用される。本明細書で開示した高分解能の位置符号化機能を有するモータはコンピュータを支援し、したがって外科医のこれらの繊細な手術の遂行を支援する。
【0044】
半導体製造:半導体デバイスの製造システムは、シリコンウェーハと操作アームの微細な動きに依存する。これらの動きは位置に関するフィードバック手段により制御される。本明細書で開示した高分解能位置符号化機能を有するモータはこれらの用途に好適である。
【0045】
航空宇宙及び衛星遠隔測定:高分解能角度位置フィードバックは、正確な目標設定及びアンテナ位置決めのために使用可能である。特に人工衛星の通信用ディッシュアンテナは、軌道周回する衛星を正確に追跡することが必要とされる。アンテナに搭載された本明細書に記載のモータからの正確な角度フィードバックとアンテナからの電力スペクトルを組合せた衛星軌道は、正確な追跡を支援可能とする。さらには、本明細書に記載のモータは小さくて安価でかつ堅牢であるために、衛星や、当業者に周知の地球圏外アプリケーションへの使用には理想的な選択である。
【0046】
遠隔制御車両:本明細書に開示のモータは小寸法かつ低コストであるので、ドローンを含む遠隔制御車両用途への使用が望ましい。特に、本モータの高分解能位置符号化機能は、遠隔制御車両の商用及び娯楽利用の双方において、運転(方向制御)と加速(パワー制御)に対して理想的である。更なる利用法は当業者には明らかであろう。
【0047】
上記の他に、このように装備されて検知されるモータに対する微細制御を提供するために、電気回路は様々な方法で構成し得ることを当業者は気付くであろう。本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11