(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】抑制性炭酸カルシウムを含有するインプラント
(51)【国際特許分類】
A61L 27/42 20060101AFI20220208BHJP
A61L 27/32 20060101ALI20220208BHJP
A61L 27/02 20060101ALI20220208BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
A61L27/42
A61L27/32
A61L27/02
A61L27/18
(21)【出願番号】P 2019511892
(86)(22)【出願日】2017-08-17
(86)【国際出願番号】 EP2017070868
(87)【国際公開番号】W WO2018046276
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-07-21
(32)【優先日】2016-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512242697
【氏名又は名称】カール ライビンガー メディツィンテクニック ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー
【氏名又は名称原語表記】Karl Leibinger Medizintechnik GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Kolbingerstr. 10 Muhlheim 78570 GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ライナウアー, フランク
(72)【発明者】
【氏名】リューガー, ジークムント
(72)【発明者】
【氏名】ブカーク, マリヤン
【審査官】古閑 一実
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/001601(WO,A1)
【文献】特開平04-227665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00-27/60
A61L 31/00-31/18
A61L 15/00-15/64
C08L 101/00-101/16
C08K 5/00- 5/59
C08K 9/00- 9/12
C08L 67/00-67/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースとは異なる少なくとも1つのポリマーを含有する組成物に対
して添加剤としての抑制性炭酸カルシウム
を使用
してインプラントを形成する方法であって、
セルロースとは異なる少なくとも1つのポリマーを含有する前記組成物が、少なくとも1つの吸収性ポリマーを含み、
前記抑制性炭酸カルシウムが、それぞれその総重量に対して、少なくとも0.1重量%の
ヘキサメタリン酸ナトリウムと、少なくとも0.1重量%の少なくとも1つの弱酸とを含有する組成物で炭酸カルシウム粒子を被覆する
ことによって得られることを特徴とする、
方法。
【請求項2】
前記弱酸がリン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸、クエン酸、ホウ酸、亜硫酸、酢酸及びそれらの混合物からなる群から選択されるこ
とを特徴とする、請求項
1に記載の
方法。
【請求項3】
前記炭酸カルシウム粒子が5未満のアスペクト比を有し、及び/又は前記炭酸カルシウム粒子が球状炭酸カルシウム粒子を含むことを特徴とする、請求項
1又は2に記載の
方法。
【請求項4】
セルロースとは異なる少なくとも1つのポリマーを含有する前記組成物が少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含むことを特徴とする、請求項
1~3のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項5】
前記吸収性ポリマーが、25℃で0.1%ポリマー濃度にてクロロホルム中で測定された、0.3dl/g~8.0dl/gの範囲内のインヘレント粘度を有することを特徴とする、請求項
1~4のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項6】
セルロースとは異なる少なくとも1つのポリマーを含有する前記組成物が、ポリ-D-乳酸、ポリ-L-乳酸及び/又はポリ-D,L-乳酸を含むことを特徴とする、請求項
1~5のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項7】
セルロースとは異なる少なくとも1つのポリマーを含有する前記組成物が、500g/mol~1,000,000g/molの範囲の数平均分子量を有する少なくとも1つの吸収性ポリエステルを含むことを特徴とする、請求項
1~6のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項8】
セルロースとは異なる少なくとも1つのポリマーを含有する前記組成物の総重量に対する前記抑制性炭酸カルシウムの重量パーセントが、少なくとも0.1重量%であることを特徴とする、請求項
1~7のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項9】
前記
インプラントが、前記
インプラントの総重量に対して、40.0重量%~80.0重量%のPLLAと20.0重量%~60.0重量%の抑制性炭酸カルシウムを含むことを特徴とする、請求項
1~8のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項10】
セルロースとは異なる少なくとも1つのポリマーと抑制性炭酸カルシウムとを含有するインプラントであって、
前記ポリマーが、少なくとも1つの吸収性ポリマーを含み、
前記抑制性炭酸カルシウムが、それぞれその総重量に対して、少なくとも0.1重量%のヘキサメタリン酸ナトリウムと、少なくとも0.1重量%の少なくとも1つの弱酸とを含有する組成物で被覆されている炭酸カルシウム粒子であることを特徴とする、インプラント。
【請求項11】
前記弱酸がリン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸、クエン酸、ホウ酸、亜硫酸、酢酸及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載のインプラント。
【請求項12】
前記炭酸カルシウム粒子が5未満のアスペクト比を有し、及び/又は前記炭酸カルシウム粒子が球状炭酸カルシウム粒子を含むことを特徴とする、請求項10又は11に記載のインプラント。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、セルロースとは異なる少なくとも1つのポリマーを含有する組成物に対する添加剤としての抑制性炭酸カルシウムの使用、インプラントにおいて使用される、セルロースとは異なる少なくとも1つのポリマー及び抑制性炭酸カルシウムを含有する組成物、並びに、特に神経、口腔、上顎、顔面、耳、鼻及び喉の外科分野並びに手、足、胸部、肋骨及び肩の外科分野のための前記インプラントに関する。
【0002】
本発明は、インプラントの出発材料の調製に関係しないだけでなく、インプラント、特に神経、口腔、上顎、顔面、耳、鼻、喉の外科分野並びに手、足、胸部、肋骨及び肩の外科分野における使用のために調製されるインプラントの生産以外の目的における使用にも関係しない。
【0003】
炭酸カルシウム、CaCO3は、現在、日常生活の様々な分野において使用されている炭酸のカルシウム塩である。これは特に、紙、ダイス、プラスチック、インク、接着剤及び医薬品の添加剤若しくは変性剤として使用されている。プラスチックにおいて、炭酸カルシウムは、ポリマーに代わる比較的高価な充填剤として優先的に使用されている。
【0004】
また酸安定化炭酸カルシウムも既に公知である。米国特許第5,043,017号は、カルシウム錯化剤及び/又は少なくとも1つの共役塩基、例えばヘキサメタリン酸ナトリウム、続いて弱酸、例えばリン酸を微細化炭酸カルシウム粒子に添加することによって酸安定化した炭酸カルシウム形態が開示されている。中性~酸性の紙で使用される場合、得られた材料によって紙の光学特性の改良がもたらさせることを意図している。しかし、ポリマーはこの文献には記載されていない。
【0005】
さらに、少なくとも1つのポリマーを含有する組成物及び少なくとも1つのポリマーを含む複合材料もまた既に開示されている。複合材料は、その個別の成分以外の材料特性を有する2つ以上の結合材料からなる材料を示す。複合材料の特性に関して、材料特性及び成分の幾何学的形状が重要である。特に、大きさの効果が多くの場合、重要な役割を果たす。結合は、通常、接着若しくは形状閉鎖によって、又は両者の組合せによって行われる。
【0006】
さらに、カルシウム塩、特に炭酸カルシウムを含有する微細構造複合粒子もまた既に公知である。
【0007】
例えば、国際公開第2012/126600号には、大粒子が小粒子に結合される方法によって得ることができる微細構造複合粒子であって、
大粒子が0.1μm~10mmの範囲内の平均粒径を有し、
小粒子の平均粒径が大粒子の平均粒径の1/10以下であり、
大粒子が少なくとも1つのポリマーを含み、
小粒子が炭酸カルシウムを含み、
小粒子が大粒子の表面上に配置され、及び/又は大粒子内に不均一に広がっており、
ここで、小粒子が0.01μm~1.0mmの範囲内の平均粒径を有する沈降炭酸カルシウム粒子を含む、微細構造複合粒子が開示されている。
【0008】
さらに、国際公開第2012/126600号には、大粒子が小粒子に結合される方法によって得ることができる微細構造複合粒子であって、
大粒子が0.1μm~10mmの範囲内の平均粒径を有し、
小粒子の平均粒径が大粒子の平均粒径の1/10以下であり、
大粒子が少なくとも1つのポリマーを含み、
小粒子が少なくとも1つのカルシウム塩を含み、
小粒子が大粒子の表面上に配置され、及び/又は大粒子内に不均一に広がっており、
ここで、大粒子が500g/mol~1,000,000g/molの範囲内の数平均分子量を有する少なくとも1つの吸収性ポリエステルを含む、微細構造複合粒子が開示されている。
【0009】
国際公開第2012/126600号に示されている複合粒子は、主に添加剤として、特にポリマー添加剤として、組成分を製造するための混和剤又は出発材料として、医療工学及び/又はマイクロ工学及び/又は発泡体の製造における使用に適している。
【0010】
しかし、少なくとも1つのポリマーを含有する国際公開第2012/126600号に従って入手することができる組成物の特性は、改良が必要とされている。例えば、少なくとも1つのポリマーを含有する組成物の熱安定性を高めるために、より良好な選択が望まれている。特に、組成物のピーク温度の上昇が望まれている。さらに、組成物の機械的性質、特に弾性係数(E modulus)が改良されることが好ましい。さらには、組成物は適切には生体適合性であること、また耐酸性であることが意図される。とりわけ、インプラント、特に神経、口腔、上顎、顔面、耳、鼻及び喉の外科分野並びに手、足、胸部、肋骨及び肩の外科分野におけるインプラントの改良が望まれている。
【0011】
この背景に対して、本発明の目的は、これまでよりもより良好なインプラントを利用できるようにすることである。その際に、セルロースとは異なる少なくとも1つのポリマーを含有する組成物の熱安定性を高める可能性のある潜在能力が用いられる。特に、組成物のピーク温度の上昇が求められている。さらに、組成物の機械的性質、特に弾性係数が好ましくは改善されることが企図される。さらに組成物は、好適には生体適合性及び耐酸性となることが企図される。
【0012】
この目的及び具体化されていないが前述の文脈から直接導くことができるさらなる目的は、請求項1に記載のインプラントにおける抑制性炭酸カルシウムの使用によって達成される。独立した製造物クレームは、セルロースとは異なる少なくとも1つのポリマーと抑制性炭酸カルシウムとを含む特に好都合な組成物を有するインプラントに関する。独立した製造物クレームに関連するサブクレームは、組成物の特に有用な態様を含むインプラントを記載している。
【0013】
インプラントにおいて使用される組成物に対する添加剤としての抑制性炭酸カルシウムの使用において、前記組成物が、少なくとも1つのセルロースとは異なるポリマーを含有しており、前記抑制性炭酸カルシウムが、それぞれその総重量に対して、少なくとも0.1重量%の少なくとも1つのカルシウム錯化剤及び/又は弱酸のアルカリ金属塩若しくはカルシウム塩である少なくとも1つの共役塩基の混合物を、少なくとも0.1重量%の少なくとも1つの弱酸と共に含有する組成物で炭酸カルシウム粒子が被覆される方法によって得られる、前記使用によって、容易に予測できない方法で、セルロースとは異なる少なくとも1つのポリマーを含有する組成物の熱安定性を高めるための選択肢を示すことができる。この方法において、特に、組成物のピーク温度の上昇が達成される。さらに、組成物の機械的性質(複数可)、特に弾性係数が好ましくは改善される。さらには、組成物の適切な生体適合性及び酸安定性が達成される。
【0014】
この方法で得ることができる組成物は、簡単な方法で処理され、改良された特性プロファイルを有する生成物を形成することができる。特に、改良された表面品質及び表面仕上げ、並びに改良された生成物密度を有する生成物の製造が可能になる。同時に、得られた生成物は、より良好な収縮挙動及び改良された寸法安定性を示す。通常、より良好な熱電動挙動がさらに注目される。
【0015】
さらに、前記手順によって、生成物をより効率的に製造することができる。前記組成物から得ることができる生成物は極めて高品質で優れており、従来の材料を使用して製造される生成物と比較した場合、欠陥が有意に少なく、好ましくは95%超の、特に97%超の高い生成物密度を有すると共に、多孔率は低い。それと同時に、得られた生成物の分解産物の含有量は明らかに少なく、生成物の細胞適合性は非常に高い。
【0016】
この方法で得ることができる生成物の他の特性もまた優れている。生成物は、非常に良好な機械的特性と優れたpH安定性を示す。同時に、生成物の生体適合性も有意に高まる。同等の生成物は、純粋ポリマーを使用する場合には得ることができない。
【0017】
本発明の他の利点は、組成物の特性、特に組成物の熱安定性が、ポリマー及び抑制性炭酸カルシウムの使用量及び特性によって、特に抑制性炭酸カルシウムの特性によって、とりわけ抑制性炭酸カルシウム粒子の粒径によって、並びに抑制性炭酸カルシウム粒子の量によって、特に制御され調節され得ることである。
【0018】
特に、ポリマーとしてのポリラクチドと組み合わせて、以下の利点が本発明によって得られる。
【0019】
抑制性炭酸カルシウムを使用すると、制御可能な吸収キネティックス及び調節可能な機械的特性を有する分解性医療品、すなわちインプラントを生産することができる。前記組成物に好ましくは含有されているポリラクチドは、乳酸ベースの生分解性ポリマーである。生物体において、ポリラクチドは加水分解によって分解される。カルシウム塩、特にリン酸カルシウム及び炭酸カルシウムはカルシウムベースのミネラル材料であり、骨の自然再生プロセスによって身体内で分解される。ポリラクチドが分解される際に、炭酸カルシウムは、骨細胞に有毒であり得る酸性環境を緩衝するという特に有利な特性を有する。リン酸カルシウム(pH4)と比較して、炭酸カルシウム緩衝剤は約7のpH値で、すなわち7.4の生理的値に近い値で事前に緩衝する。完全な分解までの時間は、ポリマーの、特にポリラクチドの分子鎖の長さ及び化学組成によって調整することができる。これはポリマーの機械的特性に関しても同様に可能である。
【0020】
前記組成物を、選択的レーザー溶融法(SLM)の生成生産方式を用いて処理し、インプラント構造を形成することができる。ここで、材料及び生産方法を相互に及び医療上の要求に特定的に適合させることは可能である。この生成生産の使用及びそれに伴う幾何構造の自由度によって、外科医の要求に対応する内部通気孔構造を有するインプラントを提供するための選択肢が提示され、インプラントの連続的供給が保証される。さらに、頭蓋顔面領域の広面積の骨欠損に応じるために要求されるような生成的に個別に適合したインプラントを、迅速かつ経済的に製造することができる。SLM法による処理における前記組成物の利点は特に、比較的低温の、好ましくは300℃未満のレーザー光線照射によってポリマーを溶解することができるという事実、及び抑制性炭酸カルシウム粒子が前記温度で熱的に安定したままであるという事実にある。前記組成物のカスタマイズされた合成によって、抑制性炭酸カルシウム粒子はこうしてレーザー照射による熱的損傷なく、ポリラクチドのマトリックスのインプラントの全体積に均質に埋め込むことができる。インプラントの強度は、一方でポリラクチドマトリックスによって、また一方で炭酸カルシウム粒子の形態によって、並びにまた好ましくは使用される成分の混合比によって決定される。さらにインプラントは、周囲の骨組織の骨形成及び材料選択による骨格構造の置き換え、及び成長刺激タンパク質(rhBMP-2)によるその後の被覆を活発に刺激するので生物活性である。
【0021】
特にSLM法によって一般的に生成される、好ましくは複合粉末形態の前記組成物から製造されるインプラントの本質的な利点は、以下のとおりである:
・ 生物分解性の骨伝導性材料の使用は、骨を活発に刺激しインプラントを介して成長させ、たとえ広面積の欠損に対してであったとしても、完全な分解を達成しながら、骨欠損において新たに骨を完全に形成し修復する。相互に連結する多孔構造により、BMP被覆は、インプラントの全「体積」において有効であり得る。
・ 骨組織の新芽形成:適切な多孔構造の導入は、インプラントへの新しい骨組織の新芽形成を容易にする。生成生産プロセスは、定義した多孔構造を再現可能な方法で成分に導入することを促進する。
・ 提案した解決策は、さらに、長期的なインプラントの医学上の合併症を最善の状態で防止し、永久的な異物感(body sensation)を回避することにより、最善の状態で患者の健康を増進し、-特に子供及び若者に対しては-、「適応型」インプラントを最善の状態で実現するという利点を提供する。
・ 最適緩衝作用:炭酸カルシウムの使用によって、材料ポリラクチドの酸分解は約7のpH値で事前に緩衝され、その結果、インプラントの環境で生ずる酸環境とそれによる炎症作用又は細胞傷害性作用を防止することができる。さらに、ポリマーの、特に乳酸ポリマーの分解プロセスが最善の状態で抑制される。
・ 高強度:SLM法は、完全融着した化合物、したがって高成分密度及び強度を生成し、それによって、広面積欠損でさえも、生分解性材料及び開放孔構造から製造される個々に適合したインプラントにより修復され得る。
【0022】
したがって、本発明の主題は、インプラントの組成物に対する添加剤としての抑制性炭酸カルシウムの使用であって、前記組成物がセルロースとは異なる少なくとも1つのポリマーを含有する、使用である。抑制性炭酸カルシウムは、組成物の熱安定性を高めるために、特に組成物のピーク温度を高めるために使用されるのが好ましく、その温度は好ましくは320℃よりも高く、より好ましくは325℃よりも高く、特に好ましくは330℃よりも高く、よりさらに好ましくは335℃よりも高く、特に340℃よりも高い。さらに、抑制性炭酸カルシウムは、組成物の機械的特性を改良するために使用されるのが好ましい。抑制性炭酸カルシウムの使用により弾性係数が増大されるのが有利であり、組成物の弾性係数は、好ましくは、3500N/mm2よりも大きく、好ましくは3750N/mm2よりも大きく、特に好ましくは4000N/mm2よりも大きく、よりさらに好ましくは4250N/mm2よりも大きく、特に4500N/mm2よりも大きい。さらに、組成物は、適切な三点曲げ強度を示すことが好都合であり、その強度は好ましくは50MPaよりも高く、好ましくは55MPaよりも高く、特に好ましくは60MPaよりも高く、さらにより好ましくは65MPaよりも高く、特に好ましくは70MPAよりも高く、特に75MPaよりも高い。
【0023】
本発明のさらなる主題は、セルロースとは異なる少なくとも1つのポリマーと抑制性炭酸カルシウムとを含有する組成物を含むインプラントである。
【0024】
本発明の範囲内において、組成物は、基本的にいかなるさらなる限定も受けるものではないセルロースとは異なるポリマーを含有する。しかし、ポリマーは熱可塑性ポリマーであるのが好ましく、バイオポリマー、ゴム、特に天然ゴム若しくは合成ゴム、及び/又はポリウレタンであるのが好適である。
【0025】
この文脈における用語「熱可塑性ポリマー」は、ある特定の温度範囲内で、好ましくは25℃~350℃の範囲内で(熱可塑的に)変形可能なプラスチックを意味する。この操作は可逆的であり、すなわち、材料のいわゆる熱分解が過熱によって起こらない限り、冷却し溶融状態への再加熱を行うことによって任意の回数を繰り返すことができる。この特徴によって、熱可塑性ポリマーは、熱硬化性プラスチック及びエラストマーとは異なる。
【0026】
用語「バイオポリマー」とは、生物起源の原材料(再生可能な原材料)からなり、及び/又は生分解性である材料(生物起源のポリマー及び/又は生分解性ポリマー)を意味する。したがって、この用語は、生分解性又は非生分解性のバイオ系バイオポリマー、並びに生分解性の石油系ポリマーを網羅する。したがって、従来の石油系材料、また生分解性ではない各種のプラスチック、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリ塩化ビニル(PVC)に対する区別がなされる。
【0027】
用語「ゴム」とは、室温(25℃)でゴム弾性特性を有する、非架橋高分子ポリマー材料を意味する。ゴムは、より高温度で、又は変形力の影響下で漸増的に粘性流を示すため、適切な条件で再形成することができる。
【0028】
ゴム弾性挙動は、温度依存性がかなり低い比較的小さい剪断弾性率を特徴とする。これはエントロピーの変化によって起こる。伸張によって、ゴム弾性材料はより規則正しい構成をとることになり、その結果、エントロピーが低下する。力を取り除くと、ポリマーは再びそれらの元の位置に戻り、エントロピーは増大する。
【0029】
用語「ポリウレタン」(PU、DIN略語:PUR)とは、ジオール又はポリオールとポリイソシアネートとの重付加反応によって形成される、プラスチック又は合成樹脂を意味する。ウレタン基はポリウレタンの特徴である。
【0030】
本発明の範囲内において、熱可塑性ポリマーを使用することが特に好ましい。特に適したポリマーとしては、以下のポリマーが挙げられる:アクリロニトリル-エチレン-プロピレン-(ジエン)-スチレンコポリマー、アクリロニトリル-メタクリレートコポリマー、アクリロニトリル-メチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリル-塩素化ポリエチレン-スチレンコポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、アクリロニトリル-エチレン-プロピレン-スチレンコポリマー、芳香族ポリエステル、アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステルコポリマー、ブタジエン-スチレンコポリマー、ポリ塩化ビニル、エチレン-アクリル酸コポリマー、エチレン-ブチルアクリレートコポリマー、エチレン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー、エチレン-エチルアクリレートコポリマー、エチレン-メタクリレートコポリマー、エチレン-メタクリル酸コポリマー、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー、エチレン-ビニルアルコールコポリマー、エチレン-ブテンコポリマー、ポリスチレン、ポリフルオロエチレンプロピレン、メチルメタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレンコポリマー、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド6-3-T、ポリアミド6-テレフタル酸コポリマー、ポリアミド66、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6I、ポリアミドMXD 6、ポリアミドPDA-T、ポリアミド、ポリアリールエーテル、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリアリールアミド、ポリアミンビスマレイミド、ポリアリレート、ポリブテン-1、ポリブチルアクリレート、ポリベンズイミダゾール、ポリビスマレイミド、ポリオキサジアゾベンゾイミダゾール、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリエステルカーボネート、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエチレンオキシド、ポリアリールエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリイソブチレン、ポリイソシアヌレート、ポリイミドスルホン、ポリメタクリルイミド、ポリメタクリレート、ポリ-4-メチルペンテン-1、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルホン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、スチレン-ブタジエンコポリマー、スチレン-イソプレンコポリマー、スチレン-無水マレイン酸コポリマー、スチレン-無水マレイン酸-ブタジエンコポリマー、スチレン-メチルメタクリレートコポリマー、スチレンメチルスチレンコポリマー、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、塩化ビニル-エチレンコポリマー、塩化ビニル-メタクリレートコポリマー、塩化ビニル-無水マレイン酸コポリマー、塩化ビニル-マレイミドコポリマー、塩化ビニル-メチルメタクリレートコポリマー、塩化ビニル-オクチルアクリレートコポリマー、塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル-塩化ビニリデンコポリマー、及び塩化ビニル-塩化ビニリデン-アクリロニトリルコポリマー。
【0031】
さらに、以下のゴムの使用も特に有利である:天然ポリイソプレン、特にシス-1,4-ポリイソプレン(天然ゴム;NR)及びトランス-1,4-ポリイソプレン(グッタペルカ)、主として天然ゴム;ニトリルゴム(ブタジエンとアクリロニトリルのコポリマー);ポリ(アクリロニトリル-コ-1,3-ブタジエン;NBR;いわゆるブナN-ゴム);ブタジエンゴム(ポリブタジエン;BR);アクリルゴム(ポリアクリルゴム;ACM、ABR);フッ素ゴム(FPM);スチレン-ブタジエンゴム(スチレンとブタジエンのコポリマー;SBR);スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム(スチレン、イソプレン及びブタジエンのコポリマー;SIBR);ポリブタジエン;合成イソプレンゴム(ポリイソプレン;IR)、エチレン-プロピレンゴム(エチレンとプロピレンのコポリマー;EPM);エチレン-プロピレン-ジエンゴム(エチレン、プロピレン及びジエン成分のターポリマー;EPDM);ブチルゴム(イソブチレンとイソプレンのコポリマー;IIR);エチレン-ビニルアセテートゴム(エチレンとビニルアセテートのコポリマー;EVM);エチレン-メタクリリレートゴム(エチレンとメタクリレートのコポリマー;AEM);エポキシゴム、例えばポリクロロメチルオキシラン(エピクロロヒドリンポリマー;CO)、エチレンオキシド(オキシラン)-クロロメチルオキシラン(エピクロロヒドリンポリマー;ECO)、エピクロロヒドリン-エチレンオキシド-アリルグリシジルエーテルターポリマー(GECO)、エピクロロヒドリン-アリルグリシジルエーテルコポリマー(GCO)及びプロピレンオキシド-アリルグリシジルエーテルコポリマー(GPO);ポリノルボルネンゴム(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン(2-ノルボルネン)のポリマー;PNR);ポリアルケニレン(シクロオレフィンのポリマー);シリコーンゴム(Q)、例えばポリマー鎖にメチル置換基を有するシリコーンゴム(MQ;例えばジメチルポリシロキサン)、ポリマー鎖にメチルビニル置換基及びビニル置換基を有するシリコーンゴム(VMQ)、ポリマー鎖にフェニル置換基及びメチル置換基を有するシリコーンゴム(PMQ)、ポリマー鎖にフルオロ基及びメチル基を有するシリコーンゴム(FMQ)、ポリマー鎖にフルオロ置換基、メチル置換基及びビニル置換基を有するシリコーンゴム(FVMQ);ポリウレタンゴム;ポリスルフィドゴム;ハロゲンブチルゴム、例えば臭素化ブチルゴム(BIIR)及び塩素化ブチルゴム(CIIR);塩素化ポリエチレン(CM);塩素化スルホニルポリエチレン(CSM);水素化ニトリルゴム(HNBR);及びポリホスファゼン。
【0032】
特に好ましいニトリルゴムは、アクリロニトリル、ブタジエン、及びメタクリル酸などのカルボン酸の統計ターポリマーを含む。この文脈において、ニトリルゴムは、好ましくは、ポリマーの総重量に対して:15.0重量%~42.0重量%のアクリロニトリルポリマー;1.0重量%~10.0重量%のカルボン酸の主成分を含み、残りは、大部分がブタジエン(例えば38.0重量%~75.0重量%)である。組成は、20.0重量%~40.0重量%のアクリロニトリルポリマー、3.0重量%~8.0重量%のカルボン酸であり、40.0重量%~65.0重量%又は67.0重量%がブタジエンであるのが典型的である。特に好ましいニトリルゴムとしては、アクリロニトリルの含有量が35.0重量%未満であり、カルボン酸の含有量が10.0重量%未満であり、ブタジエンの含有量が残りに相当する、アクリロニトリル、ブタジエン及びカルボン酸のターポリマーが挙げられる。さらにより好ましいニトリルゴムは、以下の量:20.0重量%~30.0重量%のアクリロニトリルポリマー、4.0重量%~6.0重量%のカルボン酸を含んでいてもよく、残りの大部分がブタジエンである。
【0033】
窒素系ポリマー、特にポリアミドの使用が本発明の範囲内において特に有利であり得る。ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド6-3-T、ポリアミド6-テレフタル酸コポリマー、ポリアミド66、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6I、ポリアミドMXD 6及び/又はポリアミドPDA-T、特にポリアミド12がとりわけ好ましい。
【0034】
さらに、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、特に1000kg/mol超、好ましくは2000kg/mol超、特に好ましくは3000kg/mol超、特に5000kg/mol超の平均モル質量を有するものもまた、本発明の目的において特に有益である。平均分子量は、10000kg/mol以下であるのが有利である。特に適した超高分子量ポリエチレンの密度は、0.94~0.99g/cm3の範囲内にある。特に適した超高分子量ポリエチレンの結晶化度は、50%~90%の範囲内にある。特に適した超高分子量ポリエチレンの抗張力は、30N/mm2~50N/mm2の範囲内にある。特に適した超高分子量ポリエチレンの張力弾性係数は、800N/mm2~2700N/mm2の範囲内にある。特に適した超高分子量ポリエチレンの溶融範囲は、135℃~155℃の範囲内にある。
【0035】
さらに、吸収性ポリマーの使用もまた特に都合がよい。用語「吸収/再吸収」(ラテン語の「再吸収(resorbere)」=「吸うこと」)は、生体系、特に人体への物質の吸収であると理解されたい。現在に興味が持たれているのは、特に吸収性インプラントの生産に使用することができる材料である。
【0036】
本発明による特に好ましい吸収性ポリマーは、乳酸、ヒドロキシ酪酸及び/又はグリコール酸の、好ましくは乳酸及び/又はグリコール酸の、特に乳酸の反復単位を含む。ポリ乳酸が特に好ましい。
【0037】
「ポリ乳酸」(ポリラクチド)ポリマーとは、乳酸単位から構成されるポリマーと理解されたい。前記ポリ乳酸は、通常、乳酸の縮合によって調製されるが、適切な条件下でのラクチドの開環重合中にも得られる。
【0038】
本発明による特に適した吸収性ポリマーとしては、ポリ(グリコリド-コ-L-ラクチド)、ポリ(L-ラクチド)、ポリ(L-ラクチド-コ-ε-カプロラクトン)、ポリ(L-ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(L-ラクチド-コ-D,L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)、並びにポリ(ジオキサノン)が挙げられ、ここで、乳酸ポリマー、特にポリ-D-乳酸、ポリ-L-乳酸又はポリ-D,L-乳酸、とりわけポリ-L-乳酸(PLLA)及びポリ-D,L-乳酸が本発明によれば特に好ましく、ポリ-L-乳酸(PLLA)の使用がとりわけ非常に有利である。
【0039】
本発明によれば、ポリ-L-乳酸(PLLA)は、好ましくは、以下の構造
【化1】
を有し、式中、nは整数であり、好ましくは10より大きい整数である。
【0040】
ポリ-D,L-乳酸は、好ましくは、以下の構造
【化2】
を有し、式中、nは整数であり、好ましくは10より大きい整数である。
【0041】
本発明の目的において適した乳酸ポリマーは、例えば、Evonik Nutrition & Care GmbHにより商品名Resomer(登録商標) GL 903、Resomer(登録商標) L 206 S、Resomer(登録商標) L 207 S、Resomer(登録商標) R 208 G、Resomer(登録商標) L 209 S、Resomer(登録商標) L 210、Resomer(登録商標) L 210 S、Resomer(登録商標) LC 703 S、Resomer(登録商標) LG 824 S、Resomer(登録商標) LG 855 S、Resomer(登録商標) LG 857 S、Resomer(登録商標) LR 704 S、Resomer(登録商標) LR 706 S、Resomer(登録商標) LR 708、Resomer(登録商標) LR 927 S、Resomer(登録商標) RG 509 S及びResomer(登録商標) X 206 Sで市販されている。
【0042】
本発明の目的において特に有益な吸収性ポリマー、好ましくは吸収性ポリエステル、好ましくは乳酸ポリマー、特に好ましくはポリ-D-乳酸、ポリ-L-乳酸又はポリ-D,L-乳酸、特にポリ-L-乳酸は、好ましくは、狭分布のポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィーによって、又は末端基滴定法によって決定される、500g/mol超、好ましくは1,000g/mol超、特に好ましくは5,000g/mol超、適切には10,000g/mol超、特に25,000g/mol超の数平均分子量(Mn)を有する。一方、好ましい吸収性ポリマーの数平均は、1,000,000g/mol未満、適切には500,000g/mol未満、有利には100,000g/mol未満であり、特に50,000g/molを超えない。500g/mol~50,000g/molの範囲内の数平均分子量は、本発明の範囲内であることが特に判明している。
【0043】
好ましくは吸収性ポリエステル、有利には乳酸ポリマー、特に好ましくはポリ-D-乳酸、ポリ-L-乳酸又はポリ-D,L-乳酸、特にポリ-L-乳酸である、好ましい吸収性ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、狭分布ポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィーによって決定されるのが好ましく、好ましいのは750g/mol~5,000,000g/mol、好ましくは750g/mol~1,000,000g/mol、特に好ましくは750g/mol~500,000g/mol、特に750g/mol~250,000g/molの範囲であり、また前記ポリマーの多分散度は1.5~5の範囲であるのが有利である。
【0044】
25℃、0.1%のポリマー濃度でクロロホルム中にて測定される、特に適した吸収性ポリマー、好ましくは乳酸ポリマー、特に好ましくはポリ-D-乳酸、ポリ-L-乳酸又はポリ-D,L-乳酸、特にポリ-L-乳酸のインヘレント粘度は、0.3dl/g~8.0dl/g、好ましくは0.5dl/g~7.0dl/g、特に好ましくは0.8dl/g~2.0dl/g、特に0.8dl/g~1.2dl/gの範囲である。
【0045】
さらに、30℃、0.1%のポリマー濃度でヘキサフルオロ-2-プロパノール中にて測定される、特に適した吸収性ポリマー、好ましくは乳酸ポリマー、特に好ましくはポリ-D-乳酸、ポリ-L-乳酸又はポリ-D,L-乳酸、特にポリ-L-乳酸のインヘレント粘度は、1.0dl/g~2.6dl/g、特に1.3dl/g~2.3dl/gの範囲である。
【0046】
本発明の範囲内において、20℃超、有利には25℃超、好ましくは30℃超、特に好ましくは35℃超、特に40℃超のガラス転移温度を有する、さらなるポリマー、有利には熱可塑性ポリマー、好ましくは乳酸ポリマー、特に好ましくはポリ-D-乳酸、ポリ-L-乳酸又はポリ-D,L-乳酸、特にポリ-L-乳酸は非常に有利である。本発明の非常に好ましい実施形態の範囲内において、ポリマーのガラス転移温度は、35℃~70℃の範囲内であり、有利には55℃~65℃の範囲内、特に60℃~65℃の範囲内である。
【0047】
さらに、50℃超、有利には少なくとも60℃、好ましくは150℃超、特に好ましくは130℃~210℃の範囲内、特に175℃~195℃の範囲内の融解温度を示すポリマー、有利には熱可塑性ポリマー、好ましくは乳酸ポリマー、特に好ましくはポリ-D-乳酸、ポリ-L-乳酸又はポリ-D,L-乳酸、特にポリ-L-乳酸が特に適している。
【0048】
ポリマーのガラス温度及び融解温度は、DSCと省略される示差走査熱量測定によって確定されるのが好ましい。この文脈において、以下の手順は特にそのことを証明している。
【0049】
Mettler-Toledo DSC 30Sによる窒素下でのDSC測定の実施。較正は、インジウムを用いて実施するのが好ましい。測定は、乾燥酸素非含有の窒素下で行うのが好ましい(流量:好ましくは40ml/分)。試料重量は、15m2/g~20m2/gの間にあるように選択するのが好ましい。試料は、最初に、0℃から好ましくは試験するポリマーの融解温度より高い温度に加熱し、次いで0℃まで冷却し、再度10℃/分の加熱速度で0℃から前記温度まで加熱する。
【0050】
ポリアミド、UHMWPE並びに吸収性ポリマー、とりわけ吸収性ポリエステル、例えばポリ酪酸ポリマー、ポリグリコール酸(PGA)ポリマー、乳酸ポリマー(PLA)及び乳酸コポリマーは、熱可塑性ポリマーとして特に好ましく、乳酸ポリマー及び乳酸コポリマー、特にポリ-L-ラクチド、ポリ-D,L-ラクチド、D,L-PLAとPGAのコポリマーは特にそのことが本発明によって証明されている。
【0051】
本発明の目的において、とりわけ以下のポリマーが特に適している:
1)ポリ-L-ラクチド(PLLA)であって、好ましくは0.5dl/g~2.5dl/gの範囲内、有利には0.8dl/g~2.0dl/gの範囲内、特に0.8dl/g~1.2dl/gの範囲内のインヘレント粘度を有し(各回、クロロホルム中0.1%を25℃にて測定)、好ましくは60℃~65℃の範囲のガラス転移温度を有し、さらに好ましくは180℃~185℃の範囲の融解温度を有し、さらに好ましくはエステル末端化されているもの;
2)ポリ(D,L-ラクチド)であって、好ましくは1.0dl/g~3.0dl/gの範囲内、有利には1.5dl/g~2.5dl/gの範囲内、特に1.8~2.2dl/gの範囲内のインヘレント粘度を有し(各回、クロロホルム中0.1%を25℃にて測定)、好ましくは、55℃~60℃の範囲のガラス転移温度を有するもの、
ここで、最良の結果は、好ましくは0.5dl/g~2.5dl/gの範囲内、有利には0.8dl/g~2.0dl/gの範囲内、特に0.8dl/g~1.2dl/gの範囲内のインヘレント粘度(各回、クロロホルム中0.1%を25℃にて測定)を有し、好ましくは60℃~65℃の範囲のガラス転移温度を有し、さらに好ましくは180℃~185℃の範囲の融解温度を有し、さらに、好ましくはエステル末端化されている、ポリ-L-ラクチドを使用して得られる。
【0052】
本発明の範囲内において、組成物は抑制性炭酸カルシウムを含み、抑制性炭酸カルシウムは、それぞれその総重量に対して、少なくとも0.1重量%の少なくとも1つのカルシウム錯化剤及び/又は弱酸のアルカリ金属塩若しくはカルシウム塩である少なくとも1つの共役塩基の混合物を、少なくとも0.1重量%の少なくとも1つの弱酸と共に含む組成物で炭酸カルシウム粒子を被覆する方法によって得られる。
【0053】
この文脈における「抑制性炭酸カルシウム」とは、ポリマーの添加剤として、添加剤を含まない同一ポリマーと比較した場合に、ポリマーの熱分解、特に酸触媒分解を遅くし、その最良の状態では完全に抑制する炭酸カルシウムを意味する。
【0054】
炭酸カルシウム粒子、特に沈降炭酸カルシウム粒子の形態は、いかなるさらなる限定をも受けるものではなく、明確な適用に適合させることができる。しかし、偏三角面体(scalenohedral)、菱面体、針状、板状又はボール状(球状)の粒子が使用されるのが好ましい。
【0055】
本発明の特に非常に好ましい実施形態の範囲内において、球状沈降炭酸カルシウム粒子は、典型的には等方性の特性プロフィールを示すので、インプラントにおいて使用される。したがって、組成物も同様に、好ましくは等方性の特性プロフィールによって優れていることから好都合である。
【0056】
本発明によれば、用語「炭酸カルシウム粒子」は、例えば炭酸カルシウムを粉砕することによって入手することができる粒子の粉砕物も含む。粉砕物、特にボール状粉砕物の割合は、各々好ましくは沈降炭酸カルシウムの総量に対して、好ましくは95%未満、好ましくは75%未満、特に好ましくは50%未満、特に25%未満である。
【0057】
炭酸カルシウム、特に沈降炭酸カルシウム粒子のアスペクト比(サイドレシオ)は、好ましくは5未満、好ましくは4未満、特に好ましくは3未満、有利には2未満、よりさらに好ましくは1.5未満、極めて好ましくは1.0~1.25の範囲内、好ましくは1.1未満、特に1.05未満である。
【0058】
この文脈における炭酸カルシウム、特に沈降炭酸カルシウム粒子のアスペクト比(サイドレシオ)は、最大粒径と最小粒径との商を示す。アスペクト比は、平均値(数平均)として電子顕微鏡画像によって確定されるのが好ましい。この文脈において、球状炭酸カルシウム粒子に関しては、0.1μm~40.0μmの範囲内、特に0.1μm~30.0μmの範囲内の粒径を有する粒子のみを考慮することが好ましい。菱面体炭酸カルシウム粒子に関しては、0.1μm~30.0μmの範囲内、特に0.1μm~20.0μmの範囲内の粒径を有する粒子のみを考慮することが好ましい。他の炭酸カルシウム粒子に関しては、0.1μm~2.0μmの範囲内の粒径を有する粒子のみを考慮することが好ましい。
【0059】
さらに、すべての粒子の少なくとも90%、有利には少なくとも95%が5未満、好ましくは4未満、特に好ましくは3未満、有利には2未満、よりさらに好ましくは1.5未満、非常に特に好ましくは1.0~1.25の範囲、好ましくは1.1未満、特に1.05未満のアスペクト比(サイドレシオ)を有することが好ましい。
【0060】
さらに、球状炭酸カルシウム粒子が特に適切である。
【0061】
本発明によれば、好ましくは球状炭酸カルシウム粒子は、主として単一部分で提供されるのが好都合である。さらに、完全な粒子形状からの、特に完全なボール形状からのごくわずかな誤差は、粒子の特性が基本的に変わらない限り許容される。このような場合、粒子の表面は、偶発的な欠損又は付加的な付着を含んでいることがある。
【0062】
本発明の特に好ましい態様の範囲内において、炭酸カルシウム粒子、特に沈降炭酸カルシウム粒子は、球状で、実質的に非晶質であることが好ましい。この文脈における用語「非晶質」とは、原子が少なくとも部分的に変則パターンではないが不規則構造を形成し、そのため短距離の規則のみを有し長距離の規則は有さない、こうした炭酸カルシウム改変体を意味する。ここから、原子が短距離の規則と長距離の規則の両方を有する炭酸カルシウム結晶改変体、例えばカルサイト、バテライト及びアラゴナイトとは区別される。
【0063】
本発明のこの好ましい態様の範囲内において、結晶部分の存在は、カテゴリー的に除外されるわけではない。しかし、結晶炭酸カルシウムの割合は50重量%未満、特に好ましくは30重量%未満、極めて特に好ましくは15重量%未満、特に10重量%未満であるのが好ましい。本発明の特に好ましい態様の範囲内において、結晶炭酸カルシウムの割合は、各々炭酸カルシウムの総重量に対して、8.0重量%未満、好ましくは6.0重量%未満、適切には4.0重量%未満、特に好ましくは2.0重量%未満、極めて特に好ましくは1.0重量%未満、特に0.5重量%未満である。
【0064】
非晶質及び結晶質の割合の確定に関して、内標準、好ましくは石英を用いるX線回折を、リートベルト(Rietveld)精製と組み合わせることで特にそのことが証明されている。
【0065】
本発明のこの好ましい実施形態の範囲内において、好ましくは非晶質の炭酸カルシウム粒子は、好ましくは球状炭酸カルシウム粒子の表面に好ましくは配置される、少なくとも1つの物質、特に少なくとも1つの界面活性物質によって安定化されるのが有利である。本発明による「界面活性物質」とは、好都合であることには、その溶液から界面(水/炭酸カルシウム粒子)で強く作用することによって、好ましくは25℃で測定される表面張力を低下させる有機化合物を意味する。さらなる詳細については、特にRompp-Lexikon Chemie / publisher Jurgen Falbe; Manfred Regitz. Revised by Eckard Amelingmeier; Stuttgart, New York; Thieme; Volume 2: Cm-G; 10th Edition (1997);キーワード:「界面活性物質(surface-active substances)」を参照されたい。
【0066】
物質、特に界面活性物質は、100g/mol超、好ましくは125g/mol超、特に150g/mol超のモル質量を有し、式R-Xnを満たすことが好ましい。
【0067】
残基Rは、少なくとも1個の、好ましくは少なくとも2個、好ましくは少なくとも4個、特に好ましくは少なくとも6個、特に少なくとも8個の炭素原子を含む残基を意味し、好ましくは、必要に応じてさらなる残基Xを含んでいてもよく、また必要に応じて1個又は複数のエーテル結合を有していてもよい脂肪族基又は脂環式基を意味する。
【0068】
残基Xは、少なくとも1個の酸素原子と、少なくとも1個の炭素原子、硫黄原子、リン原子及び/又は窒素原子、好ましくは少なくとも1個のリン原子及び/又は少なくとも1個の炭素原子を含む基を意味する。特に、以下の基が好ましい:
カルボン酸基-COOH、
カルボキシレート基-COO-、
スルホン酸基-SO3H、
スルホネート基-SO3
-、
硫酸水素基-OSO3H、
スルフェート基-OSO3
-、
ホスホン酸基-PO3H2、
ホスホネート基-PO3H-、-PO32-、
アミノ基-NR1R2、並びに
アンモニウム基-N+R1R2R3、
特にカルボン酸基、カルボキシレート基、ホスホン酸基及びホスホネート基。
【0069】
この文脈における残基R1、R2及びR3は、互いに独立して、水素又は1~5個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。残基R1、R2及びR3のうちの1つは、残基Rであってもよい。
【0070】
前述のアニオンに対する好ましい対イオンは、金属カチオン、特にアルカリ金属カチオン、好ましくはNa+及びK+、並びにアンモニウムイオンである。
【0071】
前述のカチオンに対する好ましい対イオンは、ヒドロキシイオン、炭酸水素イオン、炭酸イオン、硫酸水素イオン、硫酸イオン及びハロゲン化物イオン、特に塩化物イオン及び臭化物イオンである。
【0072】
nは、好ましくは1~20の範囲内、好ましくは1~10の範囲内、特に1~5の範囲内の整数を意味する。
【0073】
本発明の目的に特に適した物質としては、アルキルカルボン酸、アルキルカルボキシレート、アルキルスルホン酸、アルキルスルホネート、アルキルスルフェート、好ましくは1~4個のエチレングリコールエーテル単位を有するアルキルエーテルスルフェート、好ましくは2~20個のエチレングリコールエーテル単位を有する脂肪アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、置換可能なアルキルホスホン酸、置換可能なアルキルホスホネート、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、N-メチルグルカミド、アクリル酸のホモポリマー及びコポリマー、並びにそれらの対応する塩形態及びブロックコポリマーが含まれる。
【0074】
特に有利な物質の第1の群は、置換可能なアルキルホスホン酸、特にアミノ-トリ-(メチレンホスホン酸)、1-ヒドロキシエチレン-(1,1-ジホスホン酸)、エチレンジアミン-テトラ-(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミン-テトラ-(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミン-ペンタ-(メチレンホスホン酸)、並びに置換可能なアルキルホスホネート、特に前述の酸のものである。前記化合物は、金属イオンの多官能封鎖手段及び石化抑制剤として知られている。
【0075】
さらに、アクリル酸のホモポリマー及びコポリマー、好ましくはホモポリマー、並びにそれらの対応する塩形態は、特に1,000g/mol~10,000g/molの範囲内の重量平均分子量を有するものも特にそのことを証明している。
【0076】
さらに、ブロックコポリマー、好ましくは二重親水性ブロックコポリマー、特にポリエチレンオキシド又はポリプロピレンオキシドの使用が特に適切である。
【0077】
好ましくは界面活性物質の割合は、基本的に自由に選択することができ、それぞれの適用に応じて特に調節することができる。しかし割合は、粒子の炭酸カルシウム含有量に対して0.1重量%~5.0重量%の範囲内、特に0.3重量%~1.0重量%の範囲内にあるのが好ましい。
【0078】
好ましくは球状の、好ましくは非晶質の炭酸カルシウム粒子は、それ自体公知の方法で、例えばカルシウムカチオンを含む溶液でのジアルキルカーボネート又はアルキレンカーボネートの加水分解によって調製することができる。
【0079】
非安定化の球状炭酸カルシウム粒子の調製は、例えば国際公開第2008/122358号に詳細に記載されており、特に前記非安定化の球状炭酸カルシウム粒子の調製の特に有利な態様に関するその開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0080】
ジアルキルカーボネート又はアルキレンカーボネートの加水分解は、水酸化物の存在下で有利に実施される。
【0081】
Ca2+イオンを含有する本発明の目的において好ましい物質は、ハロゲン化カルシウム、好ましくはCaCl2及びCaBr2、特にCaCl2、並びに水酸化カルシウムである。本発明の第1の特に好ましい実施形態の範囲内において、CaCl2が使用される。本発明のさらに特に好ましい実施形態において、Ca(OH)2が使用される。
【0082】
本発明の第1の特に好ましい実施形態の範囲内において、ジアルキルカーボネートが使用される。特に適したジアルキルカーボネートは、3~20個、好ましくは3~9個の炭素原子を含み、特にジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、ジ-イソ-プロピルカーボネート、ジ-n-ブチルカーボネート、ジ-sec-ブチルカーボネート及びジ-tert-ブチルカーボネートであり、ジメチルカーボネートがこの文脈において非常に好ましい。
【0083】
本発明の別の特に好ましい実施形態において、アルキレンカーボネートを反応させる。特に好都合なアルキレンカーボネートは、3~20個、好ましくは3~9個、特に好ましくは3~6個の炭素原子を含み、好ましくは2個の酸素原子、さもなければ炭素原子を有する、特に3~8個、好ましくは4~6個、特に5個の原子の環を含有するこれらの化合物が挙げられる。プロピレンカーボネート(4-メチル-1,3-ジオキソラン)が特にこの文脈においてそのことが証明されている。
【0084】
アルカリ金属水酸化物、特にNaOH及び水酸化カルシウムは、特に適した水酸化物であることが判明している。本発明の第1の特に好ましい実施形態の範囲内において、NaOHが使用される。本発明の別の特に好ましい実施形態の範囲内において、Ca(OH)2が使用される。
【0085】
さらに、反応混合物中のCa2+、好ましくは塩化カルシウムとOH-、好ましくはアルカリ金属水酸化物とのモル比は、好ましくは0.5超:1、特に好ましくは>0.5:1~1:1の範囲内、特に0.6:1~0.9:1の範囲内である。
【0086】
反応混合物中のCa2+、好ましくは塩化カルシウムとジアルキルカーボネート及び/又はアルキレンカーボネートとのモル比は、有利には0.9:1.5~1.1:1の範囲内、特に好ましくは0.95:1~1:0.95の範囲内である。本発明の特に有利な態様の範囲内において、ジアルキルカーボネート及び/又はアルキレンカーボネートとCa2+、特に塩化カルシウムは、等モルであるように使用される。
【0087】
本発明の第1の特に好ましい態様の範囲内において、OH-源として使用されるのはCa(OH)2ではない。反応の成分は、有利には以下の濃度で使用される:
a)Ca2+:>10mmol/l~50mmol/l、好ましくは15mmol/l~45mmol/l、特に17mmol/l~35mmol/l;
b)ジアルキルカーボネート及び/又はアルキレンカーボネート:>10mmol/l~50mmol/l、好ましくは15mmol/l~45mmol/l、特に17mmol/l~35mmol/l;
c)OH-:20mmol/l~100mmol/l、好ましくは20mmol/l~50mmol/l、特に好ましくは25mmol/l~45mmol/l、特に28mmol/l~35mmol/l。
【0088】
それぞれ示した濃度は、反応混合物中の所定成分の濃度を意味する。
【0089】
本発明の特に好ましい態様の範囲内において、Ca(OH)2、好ましくは石灰水、特に飽和石灰水がOH-源として使用される。反応の成分は、有利には以下の濃度で使用される:
a)Ca(OH)2:>5mmol/l~25mmol/l、好ましくは7.5mmol/l~22.5mmol/l、特に8.5mmol/l~15.5mmol/l;
b)ジアルキルカーボネート及び/又はアルキレンカーボネート:>5mmol/l~25mmol/l、好ましくは7.5mmol/l~22.5mmol/l、特に8.5mmol/l~15.5mmol/l。
【0090】
それぞれ示した濃度は、反応混合物中の前記成分の濃度を意味する。
【0091】
成分の反応は、好ましくは、15℃~30℃の範囲内の温度で実施される。
【0092】
炭酸カルシウム粒子の具体的な大きさは、それ自体は公知の方法の過飽和によって調節することができる。
【0093】
炭酸カルシウム粒子は、前述の条件下で反応混合物から沈殿する。
【0094】
好ましくは非晶質の炭酸カルシウム粒子は、好ましくは界面活性物質を反応混合物に添加することによって安定化されることが有利である。
【0095】
物質の前記添加は、炭酸カルシウム粒子を形成するための反応の開始前には、すなわち遊離体(educt)の添加前には実施されず、遊離体を混合した後の好ましくは1分未満、好ましくは2分未満、有用には3分未満、特に好ましいは4分未満、特に5分未満に実施される。さらに、添加時点は、好ましくは界面活性物質が沈降の終了直前に添加され、また好ましくは非晶質の炭酸カルシウムから結晶変性への転換開始直前に添加されるように選択すべきであり、このようにすることで、「安定化した球状非晶質炭酸カルシウム粒子」の収率及び純度を最大にすることができる。好ましくは界面活性物質が先に添加される場合、通常、所望の安定化した球状非晶質炭酸カルシウム粒子とは別に、副生成物として超微細非晶質炭酸カルシウム粒子を含むバイモーダル生成物が得られる。好ましくは界面活性物質が後で添加される場合、所望の「安定化した炭酸カルシウム粒子」の結晶変性への転換は既に開始されている。
【0096】
こうした理由で、好ましい界面活性物質は、11.5以下、好ましくは11.3以下、特に11.0以下のpH値で添加されるのが好ましい。反応温度で、好ましくは25℃でそれぞれ測定される、11.5~10.0の範囲、好ましくは11.3~10.5の範囲、特に11.0~10.8の範囲のpH値での添加が特に有利である。
【0097】
得られた安定化した、好ましくは球状の非晶質炭酸カルシウム粒子は、それ自体は公知の方法で、例えば遠心分離によって脱水し乾燥することができる。アセトンを用いる洗浄及び/又は真空乾燥キャビネットでの乾燥は、絶対に必要ということではない。
【0098】
乾燥により、「構造水分含有量の低い炭酸カルシウム粒子」が「安定化した炭酸カルシウム粒子」から得られる。
【0099】
本発明の目的において、得られた炭酸カルシウム粒子は、所望の残留水分含有量を有するように乾燥されるのが好ましい。これに関して、炭酸カルシウム粒子を好ましくはまず150℃以下の温度で予備乾燥し、続いて、炭酸カルシウム粒子を、好ましくは、150℃超~250℃の範囲、好ましくは170℃~230℃の範囲、特に好ましくは180℃~220℃の範囲、特に190℃~210℃の範囲の温度で乾燥させる方法である。乾燥は、循環型空気乾燥キャビネット中で行われるのが好ましい。したがって、炭酸カルシウム粒子は、少なくとも3時間、特に好ましくは少なくとも6時間、特に少なくとも20時間乾燥させることが好都合である。
【0100】
本発明の他の特に好ましい態様の範囲内において、好ましくは沈殿した炭酸カルシウム粒子は、実質的に結晶質、特に実質的にカルサイトである。本発明のこの好ましい態様の範囲内において、他の特に非晶質部分の存在が無制限的に排除されるわけではない。しかし、好ましくは、他の非結晶性炭酸カルシウム形態の割合は50重量%未満、特に好ましくは30重量%未満、特に好ましくは15重量%未満、特に10重量%未満である。しかし、非カルサイト炭酸カルシウム形態の割合は、好ましくは50重量%未満、特に好ましくは30重量%未満、特に好ましくは15重量%未満、特に10重量%未満である。
【0101】
非晶質及び結晶質の割合の確定に関して、内標準、好ましくは酸化アルミニウムを用いるX線回折を、リートベルト精製と組み合わせることで特にそのことが証明されている。
【0102】
炭酸カルシウム粒子の平均粒径は、0.01μm~1.0mmの範囲内、好ましくは0.05μm~50.0μmの範囲内、特に2.5μm~30.0μmの範囲内であるのが好ましい。
【0103】
本発明の特に好ましい実施形態の範囲内において、炭酸カルシウム粒子の平均粒径は3.0μm超、好ましくは4.0μm超、好都合には5.0μm超、好都合には6.0μm超、より好ましくは7.0μm超、特に好ましくは8.0μm超、よりさらに好ましくは9.0μm超、特に好ましくは10.0μm超、よりさらに好ましくは11.0μm超、とりわけ12.0μm超、特に13.0μm超である。
【0104】
偏三角面体炭酸カルシウム粒子については、炭酸カルシウム粒子の平均粒径は、0.05μm~5.0μmの範囲内、好ましくは0.05μm~2.0μmの範囲内、好ましくは1.75μm未満、特に好ましくは1.5μm未満、特に1.2μm未満であるのが有利である。さらに、この場合の平均粒径は、0.1μm超、好ましくは0.2μm超、特に0.3μm超であることが有利である。
【0105】
さらに、有利には1.0μm~5.0μmの範囲内、好ましくは4.5μm未満、特に好ましくは4.0μm未満、特に3.5μm未満である炭酸カルシウム粒子の平均粒径を有する偏三角面体炭酸カルシウム粒子もまた特にそのことが証明されている。さらに、この場合の平均粒径は、1.5μm超、好ましくは2.0μm超、特に3.0μm超であることが有利である。
【0106】
菱面体炭酸カルシウム粒子については、炭酸カルシウム粒子の平均粒径は、0.05μm~30.0μmの範囲内、好ましくは0.05μm~2.0μmの範囲内、好ましくは1.75μm未満、特に好ましくは1.5μm未満、特に1.2μm未満であるのが有利である。さらに、この場合の平均粒径は、0.1μm超、好ましくは0.2μm超、特に0.3μm超であるのが有利である。
【0107】
さらに、有利には1.0~30.0μmの範囲内、好ましくは1.0μm~20.0μmの範囲内、好ましくは18.0μm未満、特に好ましくは16.0μm未満、特に14.0μm未満の平均粒径を有する菱面体炭酸カルシウム粒子もまた特にそのことが証明されている。さらに、この場合、平均粒径は、2.5μm超、好ましくは4.0μm超、特に6.0μm超であることが有利である。
【0108】
針状炭酸カルシウム粒子については、炭酸カルシウム粒子の平均粒径は、0.05μm~2.0μmの範囲内、好ましくは1.5μm未満、特に好ましくは1.0μm未満、特に0.75μm未満であるのが有利である。さらに、この場合の平均粒径は、0.1μm超、好ましくは0.2μm超、特に0.3μm超であることが有利である。
【0109】
針状カルシウム塩粒子、特に針状炭酸カルシウム粒子については、粒子のアスペクト比は、2超、好ましくは5超、特に好ましくは10超、特に20超であることが好ましい。さらに、針の長さは、好ましくは、0.1μm~100.0μmの範囲内、好ましくは0.3μm~85.0μmの範囲内、特に0.5μm~70.0μmの範囲内である。
【0110】
板状炭酸カルシウム粒子については、炭酸カルシウム粒子の平均粒径は、0.05μm~2.0μmの範囲内、好ましくは1.75μm未満、特に好ましくは1.5μm未満、特に1.2μm未満であるのが有利である。さらに、この場合の平均粒径は、0.1μm超、好ましくは0.2μm超、特に0.3μm超であることが有利である。
【0111】
球顆状(球状)炭酸カルシウム粒子については、炭酸カルシウム粒子の平均粒径は、2.5μm超、有利には3.0μm超、好ましくは4.0超、特に好ましくは5.0μm超、特に6.0μm超であることが好都合である。さらに、平均粒径は、30.0μm未満、有利には20.0μm未満、好ましくは18.0μm未満、特に好ましくは16.0μm未満、特に14.0μm未満であることが好都合である。
【0112】
炭酸カルシウム粒子の前述の平均粒径は、本発明の範囲内において、走査電子顕微鏡像(SEM像)の評価によって確定されることが好都合であり、この場合、少なくとも0.01μmの大きさを有する粒子のみを考慮し、好ましくは少なくとも20粒子、特に好ましくは少なくとも40粒子にわたる数平均を出すことが好ましい。さらに、沈降分析法もまた主として針状炭酸カルシウム粒子に対して特にそのことが証明されており、この文脈において、Sedigraph 5100(Micromeritics GmbH)の使用が特に有利である。
【0113】
非球状炭酸カルシウム粒子の場合、ボールに相当する粒径に注目するのが好ましい。
【0114】
炭酸カルシウム粒子の粒度分布は比較的狭く、全炭酸カルシウム粒子の少なくとも90.0重量%が平均粒径-50%から、好ましくは平均粒径-40%から、特に平均粒径-30%から、平均粒径+70%まで、好ましくは平均粒径+60%まで、特に平均粒径+50%までの範囲内の粒径を有するようにするのが好ましい。したがって、粒度分布は、走査型トンネル顕微鏡法によって確定されるのが好ましい。
【0115】
最小粒径と最大粒径の商として現在定義されている炭酸カルシウム粒子の形状係数は、好都合には全粒子の少なくとも90%、有利には少なくとも95%において、有利には0.90超、特に好ましくは0.95超である。この文脈において、球状炭酸カルシウム粒子については、0.1μm~30.0μmの範囲内の粒子大きさを有する粒子のみが考慮されるのが好ましい。菱面体炭酸カルシウム粒子については、0.1μm~20.0μmの範囲内の粒子大きさを有する粒子のみが考慮されるのが好ましい。他の炭酸カルシウム粒子については、0.1μm~2.0μmの範囲内の粒子大きさを有する粒子のみが考慮されるのが好ましい。
【0116】
炭酸カルシウム粒子は、好ましくは比較的低い水分含有量であることによりさらに優れている。炭酸カルシウム粒子は、その総重量に対して、5.0重量%以下、好ましくは2.5重量%以下、好ましくは1.0重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下、よりさらに好ましくは0.4重量%未満、好都合には0.3重量%未満、有利には0.2重量%未満、特に>0.1重量%~<0.2重量%の範囲内の水分含有量(200℃での残留水分)を有するのが好都合である。
【0117】
本発明の範囲内において、カルシウム塩粒子、特に炭酸カルシウム粒子の水分含有量は、熱重量測定又は急速赤外線乾燥機、例えばSartorius製のMA35若しくはMA45、又はMettler製のハロゲン水分計HB43によって測定されるのが好ましく、ここで、この測定は、好ましくは窒素下(窒素流量は好ましくは20ml/分)で、有利には40℃以下~250℃以上の温度範囲にわたって行われるのが好ましい。さらに、この測定は、10℃/分の加熱速度で行われるのが好ましい。
【0118】
炭酸カルシウム粒子の比表面積は、0.1m2/g~100m2/gの範囲内、特に好ましくは0.1m2/g~20.0m2/gの範囲内、特に4.0m2/g~12.0m2/gの範囲内であるのが好ましい。菱面体炭酸カルシウム粒子については、本発明の特に好ましい態様の範囲内の比表面積は1.0m2/g未満、好ましくは0.75m2/g未満、特に0.5m2/g未満であり、ここで、菱面体炭酸カルシウム粒子の平均粒径は、2.5μm超、好ましくは4.0μm超、特に6.0μm超であるのが有利である。
【0119】
球状炭酸カルシウム粒子については、本発明の特に好ましい態様の範囲内の比表面積は3.0m2/g未満、好ましくは2.0m2/g未満、特に1.5m2/g未満である。さらに、この場合の比表面積は、0.25m2/g超、好ましくは0.5m2/g超、特に0.75m2/g超であるのが好ましい。
【0120】
この文脈において特に好ましいのは、その比表面積が乾燥間に比較的一定に保たれ、好ましくはそれぞれ初期値に対して200%以下、好ましくは150%以下、特に100%以下で変化する炭酸カルシウム粒子である。
【0121】
炭酸カルシウム粒子の塩基度は、比較的低い。EN ISO 787-9に従って測定されるそのpH値は、11.5未満、好ましくは11.0未満、特に10.5未満であるのが好ましい。
【0122】
好ましくは球状炭酸カルシウム粒子は、水性水酸化カルシウム(Ca(OH)2)懸濁液を炭酸塩化することによって調製することができる。これについては、CO2又はCO2含有ガス混合物が水酸化カルシウム懸濁液に供給されるのが有利である。
【0123】
a.水酸化カルシウム水性懸濁液が提供され、
b.ステップaの懸濁液に、二酸化炭素又は二酸化炭素含有ガス混合物が導入され、
c.形成炭酸カルシウム粒子が分離される
手順は特にそのことを証明しており、ここで、さらに0.3重量%~0.7重量%、好ましくは0.4重量%~0.6重量%、特に0.45重量%~0.55重量%の少なくとも1つのアミノトリアルキレンホスホン酸が添加される。
【0124】
水酸化カルシウム懸濁液の濃度は、いかなる特定の限定も受けるものではない。しかし、1gCaO/l~100gCaO/lの範囲内、好ましくは10gCaO/l~90gCaO/lの範囲内、特に50gCaO/l~80gCaO/lの範囲内の濃度が特に有利であり得る。
【0125】
アミノトリアルキレンホスホン酸として、好ましくはアミノトリメチレンホスホン酸、アミノトリエチレンホスホン酸、アミノトリプロピレンホスホン酸及び/又はアミノトリブチレンホスホン酸、特にアミノトリメチレンホスホン酸が添加される。
【0126】
反応の変換率は、導入されるCO2の量によって調節することができる。しかし、二酸化炭素又は二酸化炭素含有ガス混合物の導入は、反応混合物が9未満、好ましくは8未満、特に7.5未満のpH値を有するまで行われるのが好ましい。
【0127】
さらに、二酸化炭素又は二酸化炭素含有ガス混合物は、0.02LのCO2/h*g Ca(OH)2)~2.0LのCO2/(h*g Ca(OH))の範囲内、好ましくは0.04LのCO2/(h*g Ca(OH)2)~1.0LのCO2/(h*g Ca(OH)2)の範囲内、特に好ましくは0.08LのCO2/(h*g Ca(OH)2)~0.4LのCO2/(h*g Ca(OH)2)の範囲内、特に0.12LのCO2/(h*g Ca(OH)2)~0.2LのCO2/(h*g Ca(OH)2)の範囲のガス流量で、水酸化カルシウム懸濁液に導入するのが好都合である。
【0128】
なお、水酸化カルシウム懸濁液の二酸化炭素又は二酸化炭素含有ガス混合物による変換は、25℃未満、好ましくは20℃未満、特に15℃未満の温度で行うのが好ましい。一方、反応温度は、好ましくは0℃超、好ましくは5℃超、特に7℃超であるのが好ましい。
【0129】
少なくとも1つのアミノトリアルキレンホスホン酸は、反応の過程で、好ましくは反応混合物の伝導度が急激に低下した後に添加するのが有利である。少なくとも1つのアミノトリアルキレンホスホン酸は、反応混合物の伝導率が0.5mS/cm/分を超えて低下したら直ちに添加するのが好都合である。反応混合物の伝導率の低下は、30秒以内に少なくとも0.25mS/cm、特に60秒以内に少なくとも0.5mS/cmに達するのが好ましい。本発明の特に好ましい実施形態の範囲内において、少なくとも1つのアミノトリアルキレンホスホン酸は、塩基性炭酸カルシウム(BCC;2CaCO3*Ca(OH)2*nH2O)の沈降終了時に添加する。
【0130】
炭酸カルシウム粒子は、前述の条件下で反応混合物から沈降し、それ自体公知の方法で分離し乾燥させることができる。
【0131】
本発明の好ましい実施形態の範囲内において、本発明による組成物は、抑制性炭酸カルシウムと、さらにカルシウム塩、特にリン酸カルシウム、特にCa3(PO4)2、CaHPO4、Ca(H2PO4)2及び/又はCa5(PO4)3(OH)を含む混合物を含有する。炭酸カルシウムとリン酸カルシウムの重量比は、好ましくは99:1~1:99の範囲内、特に50:50~99:1の範囲内であることが好ましい。
【0132】
本発明の範囲内において、抑制性炭酸カルシウム粒子は、それぞれその総重量に対して、少なくとも0.1重量%の少なくとも1つのカルシウム錯化剤及び/又は弱酸のアルカリ金属塩若しくはカルシウム塩である少なくとも1つの共役塩基の混合物を、少なくとも0.1重量%の少なくとも1つの弱酸と共に含む組成物で炭酸カルシウム粒子を被覆する方法によって得ることができる。
【0133】
カルシウム錯化剤のアニオン及び共役塩基のアニオンは同じであってもよいが、これは絶対的要件ではない。
【0134】
リン酸ナトリウム、すなわちリン酸のナトリウム塩、特にオルトリン酸、メタリン酸及びポリリン酸のナトリウム塩は、カルシウム錯化剤として特に有利であることが判明している。好ましいリン酸ナトリウムとしては、オルトリン酸ナトリウム、例えば一級リン酸二水素ナトリウムNaH2PO4、二級リン酸二水素ナトリウムNa2HPO4、及び三級リン酸三ナトリウムNa3PO4;イソポリリン酸ナトリウム、例えば二リン酸四ナトリウム(ピロリン酸ナトリウム)Na4P2O7、三リン酸五ナトリウム(トリポリリン酸ナトリウム)Na5P3O10;並びに、高分子量リン酸ナトリウム、例えばメタリン酸ナトリウム、及びポリリン酸ナトリウム、例えば溶融リン酸又は熱リン酸、グラハム塩(おおよその組成はNa2O*P2O5、場合によりヘキサメタリン酸ナトリウムとも呼ばれる)、Kurrol塩及びMaddrell塩が含まれる。ヘキサメタリン酸ナトリウムが本発明により使用されるのが特に好ましい。前述のリン酸塩の使用は、この場合リン酸塩が骨構造をさらに促進するので、医療工学適用のための組成物において特に有利である。
【0135】
さらに適したカルシウム錯化剤としては、結合多座キレート形成配位子、特にエチレンジアミノ四酢酸(EDTA)、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、o-フェナントロリン、シュウ酸及びそれらの混合物が挙げられる。
【0136】
本発明の目的に特に適した弱酸は、1.0超、好ましくは1.5超、特に2.0超の、25℃で測定されたpKa値を有する。同時に、25℃で測定された好適な弱酸のpKa値は、好ましくは20.0未満、好ましくは10.0未満、特に好ましくは5.0未満、好都合には4.0未満、特に3.0未満である。本発明による非常に適した弱酸としては、リン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸、クエン酸、ホウ酸、亜硫酸、酢酸及びそれらの混合物が挙げられる。リン酸が弱酸として使用されるのが特に好ましい。
【0137】
本発明による好ましい共役塩基としては、特に前述の弱酸のナトリウム塩又はカルシウム塩が挙げられ、ヘキサメタリン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0138】
抑制性炭酸カルシウム粒子は、それ自体公知の方法で、少なくとも1つのカルシウム錯化剤及び/又は弱酸のアルカリ金属塩若しくはカルシウム塩である少なくとも1つの共役塩基を、少なくとも1つの弱酸と共に含む組成物で炭酸カルシウム粒子を被覆することによって調製することができる。
【0139】
その総重量に対して、好ましくは1.0重量%~80.0重量%の範囲内、好ましくは5.0重量%~50.0重量%の範囲内、特に10.0重量%~25.0重量%の範囲内の炭酸カルシウム粒子の含有量を有する、被覆される炭酸カルシウム粒子の水性懸濁液が提供されることが有利である。
【0140】
炭酸カルシウム粒子の被覆は、有利には、前記物質を純粋形態又は水溶液で添加することによって行われ、ここで、前記成分の水溶液は、炭酸カルシウム粒子のできるだけ均質な被覆を得るために本発明により特に有利であることが判明している。
【0141】
さらに、弱酸の前に、カルシウム錯化剤及び/又は弱酸のアルカリ金属塩又はカルシウム塩である共役塩基を添加することが本発明の範囲内において特に有用である。
【0142】
カルシウム錯化剤又は共役塩基は、それぞれ被覆される炭酸カルシウム粒子100重量部に対して0.1重量部~25.0重量部の範囲、好ましくは0.5重量部~10.0重量部の範囲、特に1.0重量部から5.0重量部の範囲の量で使用されるのが好ましい。カルシウム錯化剤又は共役塩基の量は、炭酸カルシウム粒子の表面が共役塩基のカルシウム錯化剤で完全に被覆されるように適切に選択される。
【0143】
弱酸は、それぞれ被覆される炭酸カルシウム粒子100重量部に対して0.1重量部~30.0重量部の範囲、好ましくは0.5重量部~15.0重量部の範囲、特に好ましくは1.0重量部~10.0重量部の範囲、特に4.0重量部~8.0重量部の範囲の量で使用されるのが好ましい。
【0144】
この方法で得ることができる抑制性炭酸カルシウム粒子は、適度な酸性環境において安定であり、この能力は、吸収又は変換されたカルシウム錯化剤又は炭酸カルシウム粒子の表面上の共役塩基及び溶液中の弱酸による緩衝作用によるものであり、また、カルシウム錯化剤及び/又は共役塩基を炭酸カルシウム粒子の表面に適用することで、順次、炭酸カルシウム粒子の表面の溶解性が低下し、それにより炭酸カルシウム粒子が安定化するが、本発明の教示はこの理論に拘束されることを意図するものではない。
【0145】
抑制性炭酸カルシウム粒子、好ましくは抑制性沈降炭酸カルシウム粒子、特に抑制性球状炭酸カルシウム粒子の重量パーセントは、組成物の総重量に対して、好ましくは少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも1.0重量%、特に好ましくは少なくとも5.0重量%に達し、また適切には5.0重量%~80.0重量%の範囲内、特に好ましくは10.0重量%~60.0重量%の範囲内、有利には20.0重量%~50.0重量%の範囲内である。好ましくは球状炭酸カルシウム粒子の総量に対して15.0重量%超の20μm未満の大きさを有する粒子及び/又は250μm超の大きさを有する粒子を含有する、好ましくは球状炭酸カルシウム粒子について、35.0重量%~45.0重量%の範囲内の好ましくは球状炭酸カルシウム粒子の総量が特にそのことを証明している。好ましくは球状炭酸カルシウム粒子の総量に対して15.0重量%以下の20μm未満の大きさを有する粒子及び/又は250μm超の大きさを有する粒子を含有する、好ましくは球状炭酸カルシウム粒子について、20.0重量%~30.0重量%の範囲内の好ましくは球状炭酸カルシウム粒子の総量が特にそのことを証明している。
【0146】
組成物の総重量に対するポリマーの、好ましくは熱可塑性ポリマーの重量パーセントは、好ましくは少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも1.0重量%、特に好ましくは少なくとも5.0重量%に達し、20.0重量%~95重量%、好ましくは40.0重量%~90.0重量%、有利には50.0重量%~80.0重量%の範囲であるのが適切である。
【0147】
好ましくは球状炭酸カルシウム粒子の総量に対して20.0重量%超の20μm未満の大きさを有する粒子及び/又は250μm超の大きさを有する粒子を含有する好ましくは球状炭酸カルシウム粒子を含有する組成物を有するインプラントについては、55.0重量%~65.0重量%の範囲のポリマーの総量が特にそのことを証明している。好ましくは球状炭酸カルシウム粒子の総量に対して20.0重量%以下の20μm未満の大きさを有する粒子及び/又は250μm超の大きさを有する粒子を含有する好ましくは球状炭酸カルシウム粒子を含有する組成物については、70.0重量%~80.0重量%の範囲のポリマーの総量が特にそのことを証明している。
【0148】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、前記組成物を有するインプラントは、抑制性炭酸カルシウムと少なくとも1つのポリマーのみからなり、さらなる成分を含有しない。このような組成物は、通常さらなる添加剤を認めない医療工学製品に対する非常に厳しい要件を満たす。特に好ましい抑制性炭酸カルシウム粒子及び特に好ましいポリマーに関しては、上記の記載が準用される。
【0149】
抑制性炭酸カルシウム粒子、特に沈降炭酸カルシウム粒子は、ポリマーの、特に熱可塑性ポリマーの特性に特に影響を及ぼし、調節するように構成される。このように、抑制性炭酸カルシウム粒子、特に沈降炭酸カルシウム粒子は、ポリマーの、特に熱可塑性ポリマーの優れた緩衝作用及びpH安定化を可能にする。さらに、ポリマーの、特に熱可塑性ポリマーの生体適合性は、炭酸カルシウム粒子によって、特に沈降炭酸カルシウム粒子によって有意に改善される。さらに、ポリマーの、特に熱可塑性ポリマーの熱分解の有意な抑制が観察される。
【0150】
前記組成物は、特に熱可塑性加工手順、例えば押出成形及び射出成形などにおけるその使用を示唆する優れた特性プロフィールにより優れる。その優れた特性により、優れた表面品質及び表面仕上げの製品並びに製造される製品密度の改善が可能になる。同時に、前記組成物は、非常に良好な収縮挙動及び優れた寸法安定性を示す。さらに、より良好な熱伝導性が注目される。
【0151】
さらに、前記組成物は、組成物の極めて均一な融着を可能にする比較的高い等方性を示す。この挙動は、高品質、高製品密度、低多孔度及び欠陥が少ない製品を製造するための熱可塑性加工手順において利用することができる。
【0152】
さらに、組成物中の好ましくは球状炭酸カルシウム粒子の存在は、後の適用において、特に酸基を含有するか又は特定の条件下で酸を放出するように構成されたそれらのポリマーにおいて、優れたpH値安定化(緩衝)を可能にする。これらとしては、例えば、ポリ塩化ビニル及びポリ乳酸が挙げられる。
【0153】
さらに、前記組成物は、最終製品のコスト削減を達成するように、ことによると他のより高価な材料を置き換えることができる。
【0154】
本発明によれば、組成物の特性、特にその流動性はまた、組成物の水分によって制御することもでき、必要に応じて明確に調整することができる。一方、組成物の流動性は、基本的に水分の増加と共に増加し、その結果、組成物の加工性を容易にする。一方、組成物の水分が多い場合にはポリマーの熱分解又は加水分解、並びに特に主として不純物の存在下及び/又は非常に微細な粒子の存在下での組成物の熱処理におけるプロセスの中断を引き起こすことがある。
【0155】
この背景に対して、本発明による組成物の水分は、好ましくは2.5重量%未満、好ましくは1.5重量%未満、特に好ましくは1.0重量%未満、よりさらに好ましくは0.9重量%未満、有利には0.8重量%未満、適切には0.6重量%未満、特に好ましくは0.5重量%未満、特に0.25重量%未満である。一方、本発明による組成物の水分は、好ましくは0.000重量%超、好ましくは0.010重量%超、特に0.025重量%超である。
【0156】
この文脈においてインプラントにおける抑制性炭酸カルシウムの使用は、前記インプラントを形成するための組成物の熱加工性を改良することができる。処理ウィンドウ(温度ウィンドウ)は、従来の炭酸カルシウムを使用するよりも明確に大きく、ポリマーの熱分解又は加水分解は有意に抑制される。
【0157】
組成物の所望の水分は、処理前にそれ自体公知の組成物を予備乾燥することによって達成することができ、乾燥は基本的に製造方法において推奨される。この文脈において安定したプロセス制御において、0.01重量%~0.1重量%の範囲の水分含有量まで乾燥させることが特に好ましいことが判明した。さらに、マイクロ波真空乾燥機の使用は、特にそのことを証明している。
【0158】
前記組成物は、それ自体公知の方法で成分を混合することによって製造することができる。それは、組成物をさらに加工して所望の最終製品を形成する前又は直前に、明確に調製することができる。したがって、成分の混合は、組成物の好ましくは熱可塑性のさらなる処理の前の24時間以内、好ましくは12時間以内、とりわけ好ましくは6時間以内、特に好ましくは3時間以内、適切には1時間以内が有利であり、好ましくは、熱可塑性樹脂のさらなる処理を行うための装置内で、特に押出機又は射出成形装置内で直接、熱可塑性樹脂のさらなる処理の開始時に実施する。この手順は、操作する人により多くの自由度を与え、特に操作する人が成分及び必要な量並びにそれらの変更を特別に選択し、所望の用途のために最終製品の特性をカスタマイズすることができる。さらに、この方法において、材料の調達及び在庫管理のためのコストを最適化することができる。
【0159】
さらなる処理助剤、特に特定の溶媒の添加は、通常、本発明による組成物を処理するために必要ではない。このことは、特に製薬及び食品分野における組成物の適用可能分野を拡大する。
【0160】
次いで、組成物は通常さらに処理され得る、特に造粒、粉砕、押出し、射出成形、発泡することができるか、又は3Dプリント法で使用される。
【0161】
さらに、組成物は、さらなる処理及び/又は直接使用、すなわち追加のポリマーの添加のない使用が行われ得る。
【0162】
前記組成物の利点は、複合粉末を造粒、押出し、射出成形、溶融圧縮、発泡及び/又は3Dプリントする場合、特に確認することができる。
【0163】
さらに、前記組成物は、骨折の場合における金属製の従来のインプラントの代替に適したインプラントの製造に特に適している。インプラントは、骨折が治癒するまで、骨を固定するのに有用である。通常、金属のインプラントは体内に保持されるか、又はさらなる操作によって除去されなければならないが、本発明による複合粉末から得ることができるインプラントは、一時的助剤として作用する。これらは、身体自体が分解することができるポリマーと、骨形成のためのカルシウム及び有用なリン物質を提供する物質を適切に含む。患者が得られる有利性:インプラントを除去するためのさらなる操作がなく、骨の再生を加速するということは明白である。
【0164】
本発明の特に好ましい態様によれば、前記組成物は、選択的レーザー焼結によるインプラントの製造に使用される。適切には、本発明による組成物の粉末床は、レーザースキャナーユニット、直接偏向された電子ビーム、又は幾何学的形状を描くマスクを有する赤外線加熱を用いて、(ポリマーのみを)局所的にわずかに表面溶融又は溶融させる。本発明による組成物のポリマーは、熱伝導による冷却によって固化し、それにより一緒になって固体層を形成する。表面溶融していない粉末顆粒は、成分内に支持材料として残り、好ましくは構築プロセスの終了後に除去される。本発明による組成物を用いて繰り返し被覆することにより、第1の層と同様に、さらなる層が固化され、第1の層に結合され得る。
【0165】
レーザー焼結法に特に適したレーザーのタイプは、前記組成物のポリマーを焼結させ、溶融又は架橋させるすべてのものであり、特にCO2レーザー(10μm)、ND-YAGレーザー(1060nm)、He-Neレーザー(633nm)又は色素レーザー(350~1,000nm)である。CO2レーザーの使用が好ましい。
【0166】
照射中の充填におけるエネルギー密度は、0.1J/mm3~10J/mm3の範囲であるのが好ましい。
【0167】
レーザービームの有効直径は、適用に応じて、好ましくは0.01nm~0.5nm、好ましくは0.1nm~0.5nmの範囲である。
【0168】
パルスレーザーが使用されるのが好ましく、高いパルス周波数、特に1kHz~100kHzの周波数が特に適していることが判明している。
【0169】
好ましいプロセスは以下のように記載することができる:
レーザービームは、使用される前記材料の充填の最上層に入射し、その際、所定の層厚で材料を焼結する。前記層の厚さは、0.01mm~1mm、好ましくは0.05mm~0.5mmであってよい。このようにして、所望の成分の第1の層が調製される。続いて、作業スペースは、焼結層の厚さより少ない量まで下げられる。作業スペースは、追加のポリマー材料を用いて元の高さまで充填される。レーザーで繰り返し照射することにより、成分の第2の層を焼結し、前の層に結合させる。操作を繰り返すことにより、成分が仕上がるまでさらなる層が調製される。
【0170】
レーザー走査中の照射線量率は、1mm/秒~1000mm/秒であるのが好ましい。約100mm/秒の率が典型的には適用される。
【0171】
この場合、ポリマーの表面溶融又は溶融ついて、60℃~250℃の範囲内、好ましくは100℃~230℃の範囲内、特に150℃~200℃の範囲内の温度への加熱が特にそのことを証明している。
【0172】
前記組成物を使用して得ることができる生成物は、適切には以下の特性により優れている:
優れた表面品質、
優れた表面仕上げ、
優れた生成物密度、好ましくは95%超、特に97%超である、
優れた収縮挙動、
優れた寸法安定性、
非常に少ない欠陥、
非常に低い気孔率、
非常に少ない含有量の分解生成物、
優れた三点曲げ強度、好ましくは60mPaよりも強く、特に好ましくは65mPaよりも強く、特に70mPaよりも強い、
優れた弾性率、好ましくは3420N/mm2、特に好ましくは3750N/mm2より高く、好ましくは4000N/mm2より高く、特に4500N/mm2より高い、
優れたpH安定性、
優れた生体適合性、
優れた骨伝導、
優れた吸収能力、
優れた生分解性。
【0173】
紙への前記組成物の適用は本発明の主題ではない。
【0174】
本発明の好ましい態様の範囲内において、前記組成物は、大粒子が小粒子に結合される方法によって得ることができる微細構造粒子(複合粉末)を含む複合粉末である。
【0175】
本発明において、微細構造とは、材料の微視的特性を意味する。それらは、とりわけ、分解可能な微細構造及び構造を含む。液体並びに気体において、後者は提供されない。ここで、個々の原子又は分子は無秩序な状態にある。非晶質固体は、ほとんど、隣接する原子の領域内で構造的短距離秩序を有するが、長距離秩序を有さない。一方、結晶質固体は、短距離領域だけでなく長距離領域においても、規則的な格子構造を有する。
【0176】
本発明のこの好ましい実施形態の範囲内において、大粒子は、基本的にいかなるさらなる限定も受けないセルロースとは異なる少なくとも1つのポリマーを含み、小粒子は抑制性炭酸カルシウム粒子を含む。
【0177】
複合粉末は、大粒子を小粒子に結合させる方法によって得られることが好ましく、この場合、
大粒子は、0.1μm~10mmの範囲、好ましくは5μm~10mmの範囲、特に好ましくは10μm~10mmの範囲、有利には20μm~10mmの範囲、好都合には30μm~2.0mmの範囲、特に60.0μm~500.0μmの範囲の平均粒径を有し、
小粒子の平均粒径は、好ましくは、大粒子の平均粒径の1/5以下であり、好ましくは1/10以下であり、特に好ましくは1/20以下であり、特に1/1000以下である。
【0178】
小粒子は、好ましくは、大粒子の表面に配置されている、及び/又は大粒子内に不均一に分布している。
【0179】
しかし、特に吸収性ポリマー及びUHMWPEについて、小粒子が大粒子の表面上に配置され、好ましくは後者を完全に被覆しない場合、優れた結果が達成される。
【0180】
この場合の大粒子内の小粒子又はその粉砕物の「不均一」分布とは、大粒子内の小粒子又はその粉砕物の不均一(均等)分布を意味する。複合粉末の粒子内において、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つ、特に少なくとも5つの小粒子又はその粉砕物を含む少なくとも第1の領域と、第1の領域と同一体積及び同一形状をとるが、異なる数の小粒子を含む複合粉末の粒子内の少なくとも別の領域とがあるのが好ましい。
【0181】
本発明の好ましい実施形態の範囲内において、粒子内部におけるポリマー、特にポリアミドの炭酸カルシウム、特に沈降炭酸カルシウムに対する重量比は、粒子の外部領域におけるポリマー、特にポリアミドの炭酸カルシウム、特に沈降炭酸カルシウムに対する重量比よりも大きい。粒子内部におけるポリマー、特にポリアミドの炭酸カルシウム、特に沈降炭酸カルシウムに対する重量比は、50:50超、好ましくは60:40超、有利には70:30超、特に好ましくは80:20超、よりさらに好ましくは90:10超、特に好ましくは95:5超、特に99:1超であるのが適切である。さらに、粒子の外部領域、好ましくは粒子の好ましい外部領域における炭酸カルシウム、特に沈降炭酸カルシウムのポリマー、特にポリアミドに対する重量比は、50:50超、好ましくは60:40超、有利には70:30超、特に好ましくは80:20超、よりさらに好ましくは90:10超、特に好ましくは95:5超、特に99:1超である。
【0182】
本発明の別の好ましい実施形態の範囲内において、小粒子は大粒子の表面上に配置され、好ましくは大粒子を完全に被覆しない。適切には、大粒子の表面の少なくとも0.1%、好ましくは少なくとも5.0%、特に50.0%は、好ましくは球状炭酸カルシウム粒子で被覆されていない。この効果は、好ましくは形成され、流動物質、特に大粒子のポリマーの溶融物に好適なマイクロチャネルの形成をもたらす個々の炭酸カルシウム粒子間の間隙によって強化されるのが好ましい。前記構造は、このように、複合粉末に含有されるポリマー、好ましくは熱可塑性ポリマー、特に好ましくは吸収性ポリマー、特に乳酸ポリマーの均一かつ急速な溶融が保証されるので、レーザー焼結法における複合粉末の適用に特に有益である。
【0183】
本発明の特に好ましい実施形態の範囲内において、本発明による複合粉末は、特定の粒径分布を特徴とする。一方、複合粉末の粒子は、10μm~200μm未満、好ましくは20μm~200μm未満、特に好ましくは20μm~150μm未満、有利には20μm~100μm未満、特に35μm~70μm未満の範囲の平均粒径d50を有するのが好ましい。
【0184】
さらに、複合粉末の微細画分は、好ましくは50.0容量%未満、好ましくは45.0容量%未満、特に好ましくは40.0容量%未満、よりさらに好ましくは20.0容量%未満、有利には15.0容量%未満、適切には10.0容量%未満、特に5.0容量%未満である。細粒画分は、本発明によれば、累積分布曲線の総量に対するバイモーダル又はマルチモーダルの粒度分布における最小粒子集団の割合を示す。ユニモーダル(単分散)粒度分布においては、本発明によれば、微細画分は0.0容量%と定義される。この文脈において、非結合出発材料を含む生成物中に存在するすべての粒子、特に本発明による小粒子、並びに本発明による大粒子及び/又は小粒子の粉砕物が考えられる。
【0185】
40μm超~200μm未満の範囲の平均粒径d50を有する複合粉末については、微細画分は、好ましくは、20μm未満の粒径を有する生成物内の粒子の割合が好ましくは50.0容量%未満、好ましくは45.0容量%未満、特に好ましくは40.0容量%未満、より好ましくは20.0容量%未満、有利には15.0容量%未満、適切には10.0容量%未満、特に5.0容量%未満であるようなものであり、ここで、この文脈における「粒子」は、それらが前記粒径を示すならば、特に本発明による複合粉末の粒子、本発明による小粒子並びに本発明による大粒子及び/又は小粒子の粉砕物を含む。
【0186】
10μm~40μmの範囲の平均粒径d50を有する複合粉末については、微細画分は、好ましくは、5μm未満の粒径を有する生成物内の粒子の割合が好ましくは50.0容量%未満、好ましくは45.0容量%未満、特に好ましくは40.0容量%未満、より好ましくは20.0容量%未満、有利には15.0容量%未満、適切には10.0容量%未満、特に5.0容量%未満であるようなものであり、ここで、この文脈における「粒子」は、それらが前記粒径を示すならば、特に本発明による複合粉末の粒子、本発明による小粒子並びに本発明による大粒子及び/又は小粒子の粉砕物を含む。
【0187】
さらに、微細画分の密度は、好ましくは2.6g/cm3未満、好ましくは2.5g/cm3未満、特に好ましくは2.4g/cm3未満、特に1.2g/cm3超~2.4g/cm3未満の範囲であり、前記値は、好ましくは、分離された画分でのスクリーニング及び濃度測定によって微細画分を分離することにより決定される。
【0188】
複合粉末の粒子は、350μm未満、好ましくは300μm未満、好ましくは250μm未満、特に好ましくは200μm未満、特に150μm未満の粒径d90を有するのが好ましい。さらに、粒径d90は、好ましくは50μm超、好ましくは75μm超、特に100μm超である。
【0189】
d20/d50比は、100%未満、好ましくは75%未満、好ましくは65%未満、特に好ましくは60%未満、特に55%未満であるのが適切である。さらに、d20/d50比は、適切には10%超、好ましくは20%超、好ましくは30%超、特に好ましくは40%超、特に50%超である。
【0190】
前述の変数d20、d50及びd90は、本発明の範囲内において以下のように定義される。
【0191】
d20は、20%の粒子が所定値未満の粒径を有し、80%の粒子が所定値以上の粒径を有する粒径分布の粒径を示す。
【0192】
d50は、粒度分布の平均粒径を示す。50%の粒子が所定値未満の粒径を有し、50%の粒子が所定値以上の粒径を有する。
【0193】
d90は、90%の粒子が所定値未満の粒径を有し、10%の粒子が所定値以上の粒径を有する粒径分布の粒径を示す。
【0194】
本発明の前記好ましい実施態様の粒度分布は、それ自体公知の方法で、複合粉末を分粒することによって、すなわち分散固体混合物を画分に分離することによって得ることができる。分粒は、粒度又は粒子密度により実施されるのが好ましい。乾式篩い分け、湿式篩い分け及びエアジェット篩い分け、特にエアジェット篩い分け、並びに特にエア分離によるフローサイジングであるのが特に有利である。
【0195】
本発明の特に好ましい実施形態の範囲内において、複合粉末は、第1のステップで分粒し、好ましくは800μm超、好ましくは500μm超、特に250μm超の粗分画を除去する。この文脈において、好ましくは250μm~800μmの範囲、好ましくは250μm~500μmの範囲、特に250mmの大きさ、すなわち孔の大きさを好ましくは有する粗い篩を介した乾式篩分けが特に試験で有効であった。
【0196】
さらなるステップにおいて、複合粉末は、好ましくは、<20μmの微細画分を好ましくは除去するように分粒される。この文脈において、エアジェット篩い分け及びエア分離が特に適切であることが判明した。
【0197】
複合粉末の粒子、大粒子及び小粒子の平均粒径、粒径d20、d50、d90、並びに前述の長さは、本発明によれば、適切には、必要に応じて電子顕微鏡画像を使用する顕微鏡画像によって確定される。大粒子及び小粒子並びに複合粉末の粒子の平均粒径及び粒径d20、d50、d90を確定するためにはまた、この場合に特に便利であるSedigraph5100(Micromeritics GmbH)を使用する沈降分析が特に有利である。複合粉末の粒子については、レーザー回折による粒度分析もまたそのことが証明されており、この文脈において、Sympatec GmbH製のレーザー回折センサーHELOS/Fの使用が特に有益である。後者は、好ましくはRODOS乾式分散システムを含む。
【0198】
なお、本明細書に記載したこれらの表示及び他のすべての表示は、特に指定のない限り、23℃の温度を意味する。
【0199】
本発明のこの実施形態の複合粉末は、比較的緻密であるのが有利である。好ましくは、0.5g/cm3未満、特に0.25g/cm3未満の密度を有する複合粉末の粒子内部の部分の割合は、それぞれ複合粉末の総体積に対して10.0%未満、好ましくは5.0%未満、特に1.0%未満である。
【0200】
本発明のこの実施形態の複合粉末は、とりわけ、第1の材料の第2の材料への優れた結合により秀でている。第1の材料の第2の材料への強固な結合は、好ましくは、Organikum, 17th Edition, VEB Deutscher Verlag der Wissenschaften, Berlin, 1988, Section 2.5.2.1 ”Ausschutteln von Losungen bzw.Suspensionen (Shaking of solutions and suspensions)”, pp. 56~57に開示されている方法によって、複合粉末を機械的に装填することによって、特に25℃でポリマー及び好ましくは球状炭酸カルシウム粒子に対して非溶媒で振盪することによって確認することができる。振盪時間は、少なくとも1分、好ましくは少なくとも5分、特に10分であるのが好ましく、複合粉末の粒子の形態、大きさ及び/又は組成の実質的な変化を生じないのが好ましい。振盪試験によれば、特に好ましくは少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、特に好ましくは少なくとも90重量%、有利には少なくとも95重量%、特に少なくとも99重量%の複合粉末の粒子は、それらの組成、それらの大きさ及び好ましくはそれらの形態に関して変化が生じない。この文脈において特に適した非溶媒は、特にポリアミドを含有する複合粉末の場合、水である。
【0201】
さらに、本発明のこの実施形態の複合粉末の粒子は、通常、SLM法における複合粉末の用途に特に有益である比較的等方性の粒子形態を示す。複合粉末の粒子の通常のほぼ球状粒子形態は、原則として、悪影響、例えば反り又は収縮などを回避し、又は少なくとも低減する。その結果、通常また、複合粉末の非常に有利な溶融及び固化挙動を観察することができる。
【0202】
これとは対照的に、例えば低温粉砕によって得られる従来の粉末粒子は、鋭い縁及び角のある不規則な(非晶質の)粒子形態を有する。しかし、前記粉末はそれらの不利益な粒状形態のため、またさらには、それらの比較的広範な粒度分布のため、またSLM法において<20μmのそれらの比較的高い微粒子の割合のため、有利ではない。
【0203】
本発明のこの実施形態の複合粉末は、それ自体公知の方法で、例えば、単一ステップにより、特に沈降又は被覆することにより、好ましくは粉砕材料でコーティングすることにより、調製することができる。さらに、ポリマー粒子を、本発明による小粒子を好ましくは懸濁形態でさらに含有するポリマー溶液から沈降させる方法までも特に適している。
【0204】
しかし、ポリマー粒子及び好ましくは球状炭酸カルシウム粒子を互いに接触させ、機械的な力の作用によって互いに結合させる手順で特にそのことが証明されている。これは、適切なミキサー又はミルで、特にインパクトミル、ピンミル又はウルトラローターミルで実施されるのが適切である。ローター速度は、好ましくは、1m/秒よりも速く、好ましくは10m/秒よりも速く、特に好ましくは25m/秒よりも速く、特に50m/秒~100m/秒の範囲内である。
【0205】
複合粉末が調製される温度は、基本的に自由に選択することができる。しかし、-200℃よりも高く、好ましくは-100℃よりも高く、好ましくは-50℃よりも高く、特に好ましくは-20℃よりも高く、特に0℃よりも高い温度であるのが特に有利である。一方、温度は、有利には120℃未満、好ましくは100℃未満、好ましくは70℃未満、特に好ましくは50℃未満、特に40℃未満である。0℃超~50℃未満の範囲の温度、特に5℃超~40℃未満の範囲の温度は特にそのことを証明している。
【0206】
本発明の特に好ましい実施形態の範囲内において、ミキサー又はミル、特にインパクトミル、ピンミル又はウルトラローターミルは、本発明のこの実施形態の複合粉末の調製中に冷却され、放出されたエネルギーを放散させる。好ましくは、冷却は、25℃未満、好ましくは25℃未満~-60℃の範囲内、特に好ましくは20℃未満~-40℃の範囲内、適切には20℃未満~-20℃の範囲内、特に15℃未満~0℃の範囲内の温度を有する冷却剤によって行われる。さらに、冷却は、混合又は粉砕操作の、好ましくは粉砕操作の終了時に、混合チャンバー又は粉砕チャンバー内、特に粉砕チャンバー内の温度が120℃未満、好ましくは100℃未満、好ましくは70℃未満、特に好ましくは50℃未満、特に40℃未満になるように設定するのが好ましい。
【0207】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、この手順は、実際、特にポリアミドの場合、好ましくは球形の炭酸カルシウム粒子がポリマー粒子の内部へと浸透し、好ましくはそれらが外部から見えないようにポリマーにより完全に被覆される。こうした粒子は、好ましくは球状炭酸カルシウム粒子を含まないポリマーとして処理され使用され得るが、それらの粒子は本発明のこの実施形態の複合粉末の特性を改善する。
【0208】
複合粉末は、特開昭62-083029号公報に開示されている方法に従って調製することができる。第1の材料(母粒子と呼ばれる)は、より小さい粒子(子粒子と呼ばれる)からなる第2の材料で表面が被覆される。この目的において、高速ローター、ステーター及び好ましくは内側ナイフを含む球状容器を含む表面改質装置(「ハイブリダイザー」)が使用されるのが好ましい。118mmの外側ローター直径を好ましくは有するNARAハイブリダイゼーションシステム、特に株式会社奈良機械製作所製のNHS-0又はNHS-1と表示されたハイブリダイゼーションシステムの使用は、この文脈において特にこのことを証明している。
【0209】
母粒子及び子粒子を混合し、好ましくは超微粉化し、ハイブリダイザーに導入する。そこで混合物を好ましくはさらに超微粉化し、好ましくは機械的な力、特に衝撃力、圧縮力、摩擦力及び剪断力、並びに子粒子を母粒子へと均一に埋め込むための粒子の相互作用に繰り返し曝露される。
【0210】
好ましいローター速度は、周速度に関して50m/秒~100m/秒の範囲内である。
【0211】
この方法に関するさらなる詳細については、特開昭62-083029号公報を参照されたく、特に適切な方法の態様を含めたその開示は、参照により本出願に明示的に組み込まれる。
【0212】
別の特に好ましい態様の範囲内において、複合粉末は、独国特許出願公開第4244254号公報に記載されている手順に従って調製される。したがって、物質を熱可塑性材料の表面に付着させることによって複合粉末を調製する方法は、熱可塑性材料が100μm~10mmの平均粒径を有し、物質が熱可塑性材料よりも小さな粒径及び良好な耐熱性を有する場合、特に本方法が以下のステップを含む場合、特に好ましい:
最初に、熱可塑性材料よりも粒径が小さく良好な耐熱性を有する物質を、好ましくはスターラー及びヒーターを含む装置で撹拌し、好ましくは熱可塑性材料の軟化点以上の温度に加熱する;
熱可塑性材料を装置に添加する;
より良好な耐熱性を有する物質を熱可塑性材料の表面に付着させる。
【0213】
この方法に関するさらなる詳細については、独国特許出願公開第4244254号公報を参照されたく、特に適切な方法の態様を含めたその開示は、参照により本出願に明示的に組み込まれる。
【0214】
或いは、複合粉末は、欧州特許出願公開第0922488号及び/又は米国特許第6,403,219号に開示されている手順に従って調製される。したがって、衝撃を使用することでコアとして作用する固体粒子の表面に微粒子を付着又は結合させ、次いで1つ又は複数の結晶をコア表面で成長させることによって複合粉末を調製する方法が特に有利である。
【0215】
この方法に関するさらなる詳細については、欧州特許出願公開第0922488号及び/又は米国特許第6,403,219号を参照されたく、特に適切な方法の態様を含めたその開示は、参照により本出願に明示的に組み込まれる。
【0216】
複合粉末は、欧州特許出願公開第0523372号に開示されている手順に従って付着させることができる。この手順は、特開昭62-083029号公報に開示されている方法に従って得られた複合粉末に対して特に有用である。複合粉末の粒子は、熱プラズマ溶射によって付着されるのが好ましく、ここで好ましくは少なくとも30kWの能力を有することが好ましい減圧プラズマ溶射装置が使用され、特に欧州特許出願公開第0523372号に開示されている装置が使用される。
【0217】
この方法に関するさらなる詳細については、欧州特許出願公開第0523372号を参照されたく、特に適切な方法の態様を含めたその開示は、参照により本出願に明示的に組み込まれる。
【0218】
前記複合粉末は、特にレーザー焼結法におけるその使用を示唆する優れた特性プロフィールにより秀でている。その優れた自由流動性及びレーザー焼結中のその優れた流動性は、優れた表面品質及び表面仕上げ、並びに製造される成分密度の改善を可能にする。同時に、前記複合粉末は、非常に良好な収縮挙動及び優れた寸法安定性を示す。さらに、より良好な熱伝導率がレーザー処理領域の外側で確認することができる。
【0219】
前記組成物の特に好ましい適用分野は、インプラントに関するものとして認識されるシーム材料、ネジ、クギ、抗菌性創傷パッドにおける前記組成物の使用が挙げられる。
【0220】
よってポリ乳酸含有組成物から作製されたインプラント、特にシーム材料、クギ、ネジ、プレート及びステントは、医療工学における適用において極めて有利である。
【0221】
さらに、特にマトリックス材料の形態のポリ乳酸含有組成物は、複合材料を製造するために使用されるのが好ましい。したがって、特にポリ乳酸含有組成物を天然繊維に結合させることにより、従来のガラスファイバー強化プラスチック又は充填プラスチックと比べて極めて良好なエコバランス及び優れた特性プロフィールを示す生分解性複合材料が、再生可能な原料から調製され得る。熱可塑性によって、ポリ乳酸含有組成物は、とりわけ射出成形及び押出しの分野における使用に適している。好ましくは高伸縮性の天然ファイバーを添加すると、複合材料の機械的性質を今一度確実に改善するのに役立つ。さらに、右旋性乳酸ポリマーを添加又は使用すると、複合材料の耐熱性をさらに改善するのに役立つ。
【0222】
最後に、ポリ乳酸含有組成物は、特にFDM方法によって、3Dプリントへの適用に特に有利である。
【0223】
以下に、本発明を複数の実施例及び比較例によりさらに説明するが、本発明の概念をこのように限定するものではない。
使用した材料:
造粒物1(ポリ(L-ラクチド);インヘレント粘度:0.8~1.2dl/g(クロロホルム中0.1%、25℃);Tg:60~65℃;Tm:180~185°C)
造粒物2(ポリ(L-ラクチド);インヘレント粘度:1.5~2.0dl/g(クロロホルム中0.1%、25℃));Tg:60~65°C;
造粒物3(ポリ(D,L-ラクチド);インヘレント粘度:1.8~2.2dl/g(クロロホルム中0.1%、25℃));Tg:55~60℃;融点なしの非晶質ポリマー
【0224】
それぞれのポリラクチド造粒1~3の平均粒径は、1~6mmの範囲内であった。
【0225】
本実施例の範囲内において、下記の変更を以下のようにして確定した:
CaCO3含有量:CaCO3含有量は、Perkin Elmer社製のSTA6000による熱重量分析によって、窒素下で40℃~1000℃の範囲内にて20℃/分の加熱速度で測定した。重量損失は、約550℃~1000℃の間で決定し、それからCaCO3含有量は係数2.274(モル質量比CaCO3:CO2)によってパーセントで算出した。
β-リン酸三カルシウム含有量(β-TCP含有量):β-TCP含有量は、Perkin Elmer社製のSTA6000による熱重量分析によって、窒素下で40℃~1000℃の範囲内にて20℃/分の加熱速度で測定した。1000℃で保持された重量パーセントは、β-TCP含有量のパーセントに対応する。
TP:ピーク温度TPは、Perkin Elmer社製のSTA6000による熱重量分析によって、窒素下で40℃~1000℃の範囲内にて20℃/分の加熱速度で測定した。質量損失曲線の一次導関数のピーク温度は、ポリマー分解中の最大質量損失を有する温度に対応する。
d20、d50、d90:炭酸カルシウム含有複合粉末の粒度分布は、レーザー回折によって決定した(Sympatec製のRODOS分散システムを用いた測定範囲R5を測定するHELOS)。粒径分布は、炭酸カルシウム粉末についてMicromeretics社製のMaster Tech 51を備えたSedigraph 5100によって決定した。使用した分散溶液は、0.1%ポリリン酸ナトリウム溶液(NPP)であった。
画分<20μm:d50と同様にして測定。画分<20μmの評価。
水分:炭酸カルシウム含有複合粉末の水分含有量は、Mettler Toledo社製のKarl Fischer Coulometer C30によって150℃で測定した。炭酸カルシウム粉末の水分含有量は、Mettler社製のハロゲン-水分分析器HB43によって130℃で測定した(秤量試料:6.4~8.6gの粉末;測定時間:8分)。
インヘレント粘度:インヘレント粘度(dl/g)は、クロロホルム中、25℃及び0.1%のポリマー濃度で、Ubbelohde Viscosimeter Kapillare 0cにより測定した。
流動性:試料の流動性は、Erichsen社製の電動フィルムアプリケーターによって判断した。この目的において、200μm、それぞれ500μmのドクターブレードを使用した。フォイル式255(Leneta)への適用速度は12.5mm/sであった。以下のように評価する:1=優良、2=良好、3=満足;4=十分;5=不良。
【0226】
射出成形試験片における機械的特性の決定:
三点曲げ強度及び弾性係数は、テクスチャーアナライザーTA.XTplus(Stable Micro Systems, Godalming (UK))によって決定した。使用したロードセルの容量は50kgであった。Exponent 6.1.9.0ソフトウェアを使用した。測定の詳細を以下の表1に示す。
【0227】
【0228】
試験片は、HAAKE MiniLab II押出機及びHAAKE MiniJet IIによる射出成形によってそれぞれ生産した。試験片を生産するためのプロセス条件を以下の表2に挙げる。
【0229】
【0230】
細胞毒性試験
細胞毒性試験(FDA/GelRed)は、以下のように実施した:
使用した参照及びそれぞれの陰性対照は、組織培養ポリスチレン(TCPS)であった。それぞれの試料について4つの複製を使用し、4つのTCP(4×)をチェックとして使用した。
【0231】
試験手順:
1.非滅菌試料を24ウェルマイクロタイタープレートで利用できるようにした。同じく、試料及びTCPSプレートを70%エタノールで滅菌(未変性)し、次いで2×30分間、1×PBS(リン酸緩衝食塩水)ですすぎ、その後、滅菌α培地で平衡化した。次いで、試料に、25,000細胞/cm2(50,000細胞/ml)の接種範囲のMC3T3-E1細胞を接種した。部分培地交換(1:2)を2日目に実施した。
2.細胞培養の1日後及び4日後、細胞毒性を決定した。
3.生体染色は、1日目及び4日目に、FDAとGelRedの組合せ染色による標準的なプロトコルに従って実施した。
4.顕微鏡画像は、Observer Z1m/LSM 700で得た。
レンズ:EC Plan-Neofluar 10×;
画像はカメラAxioCam HRcで撮影:
緑色蛍光の励起:LED Colibri 470;フィルターセットFS10(AF488)
赤色蛍光の励起:LED Colibri 530;フィルターセットFS14(AF546)
画像はレーザースキャンモードでスキャン:
トラック1:レーザー:488nm、DBS 560nm、PMT1:488~560nm、
トラック2:レーザー555nm、DBS 565nm、PMT2:565~800nm
5.評価は、以下の細胞毒性スケールに従って実施した。
合格:材料が細胞毒性ではない(死細胞が最高5%)
わずかに阻害:材料がわずかに毒性である(死細胞が5%~20%)
有意に阻害:材料が適度に毒性である(死細胞が20%~50%)
毒性:材料が非常に細胞毒性である(死細胞が>50%~100%)
6.細胞数は、撮影又はスキャンされた画像の詳細に関連する。
結果を表3に示す。
電子顕微鏡(SEM)
SEM画像は、高圧電子顕微鏡(Zeiss、DSM 962)によって15kVで撮影した。試料に金-パラジウム層をスプレーした。
【0232】
実施例1
20%のCO2と80%のN2とを含有するCO2ガス混合物を、初期温度10℃で、75g/lのCaOの濃度を有する4リットルの水酸化カルシウム懸濁液に導入した。ガス流は、300l/時であった。反応混合物を350rpmで撹拌し、反応熱は反応中に消散させた。コンダクタンスが急に低下した場合(0.5mS/cm/分を超えて低下し、30秒以内に0.25mS/cmを超えてコンダクタンスが低下した場合)、0.7%のアミノトリ(メチレンホスホン酸)が(理論的参照変数としての)CaOに基づいて懸濁液に添加される。球状炭酸カルシウム粒子への反応は、反応混合物が定量的に球状炭酸カルシウム粒子に炭酸塩化された際に完了し、ここで、反応液はその後7~9の間のpH値を示した。今回の場合、反応は約2時間後に完了し、反応混合物は反応終了時にpH7を有していた。
【0233】
得られた球状炭酸カルシウム粒子は、慣用の方法で分離し乾燥させた。これらの粒子は、12μmの平均粒径を示した。典型的なSEM画像を
図1に示す。
【0234】
実施例2
500mlのVE(脱塩)水を1000mlビーカーに入れた。実施例1による125gの球状炭酸カルシウム粒子を撹拌下で添加し、得られた混合物を5分間撹拌した。37.5gの10%メタリン酸ナトリウム(NaPO3)n溶液をゆっくりと添加し、得られた混合物を10分間撹拌した。75.0gの10%リン酸をゆっくりと添加し、得られた混合物を20時間撹拌した。沈殿物を分離し、乾燥キャビネット中で、一晩130℃にて乾燥させる。得られた球状炭酸カルシウム粒子は同様に12μmの平均粒径を有していた。
【0235】
球状炭酸カルシウム粒子のSEM画像を
図2に示す。球状炭酸カルシウム粒子の表面に、薄いリン酸塩の層が見える。
【0236】
実施例3
球状炭酸カルシウム粒子とポリラクチド(PLLA)との複合粉末は、NHS-1装置を使用し、特開昭62-083029号公報に開示されている方法に従って調製した。これを12℃の水で冷却した。ポリラクチド顆粒1を母粒子として使用し、実施例1の球状炭酸カルシウム粒子を子粒子(充填剤)として使用した。
【0237】
39.5gのポリラクチド顆粒を26.3gのCaCO3粉末と混合し、6.400rpmで充填した。ユニットのローター速度は6.400rpm(80m/秒)に設定し、計量した材料を10分間処理した。NHS-1の粉砕チャンバー内で到達する最高温度は35℃であった。合計7回の繰り返しを同じ材料の量と機械設定で実施した。合計449gの複合粉末が得られた。得られた複合粉末を手動で250μm篩を通して篩過し乾燥させた。篩残留物(画分>250μm)は、0.4%であった。
【0238】
【0239】
実施例4~7
さらに複合粉末を実施例3と同様にして調製し、実施例5においては冷却を約20℃で実施した。いずれの場合においても、30gのポリラクチド顆粒を20gのCaCO3粉末と混合した。NHS-1の粉砕チャンバー内で到達する最高温度は、実施例4においては33℃、実施例5においては58℃、実施例6においては35℃、実施例7においては35℃であった。生成物を篩い分けし、可能な限り>250μmの粗画分を除去した(250μm篩を通過させる手動の乾式篩分け)。実施例4、6及び7においては、さらに、画分<20μmを可能な限り(エア分離による)流動によって、又は(エアジェット篩機による)篩分けによって分類した。使用した材料、篩分け/エア分離の有無を伴う調製の実施、並びに得られた複合粉末の特性を以下の表3に挙げる。
【0240】
図3a、
図3b及び
図3cは、実施例3のSEM画像、及び実施例3の複数のドクターブレード適用(12.5mm/秒)の画像を示す(
図3b:200μmドクターブレード;
図3c:500μmドクターブレード)。
【0241】
得られた複合粉末のSEM画像を
図3aに示す。極低温粉砕粉末に典型的な鋭い輪郭の不規則な粒子形態とは対照的に、得られた複合粉末の粒子は円形粒状形態をとり、それぞれ高い球形度はSLM法にとって非常に有利である。PLLA表面は、球状炭酸カルシウム粒子及びその粉砕物で散在的に占められている。試料は、微細画分が増加した明らかに小さい粒度分布を有する。
【0242】
粉末は限られた範囲で流動的である(
図3b及び
図3c)。粉末ヒープは、ドクターブレードの前面に沿って押される。おそらくは、より高い割合の微粒子によって引き起こされる制限された流動挙動は、両ドクターブレードによって形成される非常に薄い層のみを生じる。
【0243】
図4a、
図4b及び
図4cは、実施例4のSEM画像、並びに実施例4の複数のドクターブレード適用(12.5mm/秒)の画像を示す(
図4b:200μmドクターブレード;
図4c:500μmドクターブレード)。
【0244】
得られた複合粉末のSEM画像を
図4aに示す。極低温粉砕粉末に典型的な鋭い輪郭の不規則な粒子形態とは対照的に、得られた複合粉末の粒子は円形粒状形態をとり、それぞれ高い球形度はSLM法にとって非常に有利である。PLLA表面は、球状炭酸カルシウム粒子及びその粉砕物で散在的に占められている。試料は、小さい微細画分を有する明らかに小さい粒度分布を有する。
【0245】
粉末は適切に流動性であり、適用可能である(
図4b及び
図4c)。また薄層(200μm)も適用することができ、ドクターストリーク(トラッキング溝)がほとんどない。500μmで適用された粉末層は均質で、密に充填され、滑らかで、ドクターストリークがない。
【0246】
図5a、
図5b及び
図5cは、実施例5のSEM画像、並びに実施例5のいくつかの適用(12.5mm/秒)の画像を示す(
図5b:200μmドクターブレード;
図5c:500μmドクターブレード)。粉末は限られた範囲で流動的である。粉末ヒープは、ドクターブレードに沿って押される。おそらくは、より高い割合の微粒子によって引き起こされる制限された流動挙動により、非常に薄い層のみが両ドクターブレードによって形成される。
【0247】
図6a、
図6b及び
図6cは、実施例6のSEM画像、並びに実施例6の複数の適用(12.5mm/秒)の画像を示す(
図6b:200μmドクターブレード;
図6c:500μmドクターブレード)。粉末は適切に流動性であり、適用可能である。また薄層(200μm)も適用することができる。おそらくは、非常に粗い粉末粒子によって生じる個々のドクターストリークが見える。500μmで適用された粉末層はそれほど密に充填されていないが、ドクターストリークはない。
【0248】
図7a、
図7b及び
図7cは、実施例7のSEM画像、並びに実施例7の複数の適用(12.5mm/秒)の画像を示す(
図7b:200μmドクターブレード;
図7c:500μmドクターブレード)。粉末は流動性であり、適用可能である。また薄層(200μm)も適用することができる。これらは均質ではなく、次第にドクターストリークが点在するようになる。多少制限された流動挙動は、おそらくは、非常に粗い粉末粒子によって生じる。500μmで適用された粉末層は均質であり、ドクターストリークがない。
【0249】
比較例1
実施例1の球状炭酸カルシウム粒子と非晶質ポリラクチド(PDLLA)との微細構造複合粒子は、NHS-1装置を使用して、特開昭62-083029号公報に開示されている方法に従って調製した。これを12℃の水で冷却した。ポリラクチド顆粒3を母粒子として使用し、実施例1の球状炭酸カルシウム粒子を子粒子として使用した。
【0250】
39.5gのポリラクチド顆粒を10.5gのCaCO3粉末と混合し、8,000rpmで充填した。ユニットのローター速度を8,000rpm(100m/秒)に設定し、計量した材料を1.5分間処理した。NHS-1の粉砕チャンバー内で到達する最高温度は71℃であった。合計49回の繰り返しを、材料の同じ量及び機械設定で実施した。合計2376gの構造複合粒子が得られた。得られた構造複合粒子を、粒度分布の測定のため、800μmの篩を通して手動で乾式篩分けした。篩残留物(画分>800μm)は47%に達した。
【0251】
得られた微細構造複合粒子の特性を以下の表3に挙げる。
【0252】
図8a、
図8b及び
図8cは、比較例1のSEM画像、並びに比較例1の複数の適用(12.5mm/秒)の画像を示す(
図8b:200μmドクターブレード;
図8c:500μmドクターブレード)。粉末は流動性が不良であり、適用して200及びそれぞれ500μmの厚さの層厚を形成することができない。非常に粗く不規則な粒子は、適用の間に詰まる。非常に高頻度で明らかなドクターストリークを有する不均質な層が形成される。
【0253】
SEM分析からは、構造複合粒子の表面が球状炭酸カルシウム粒子及びその粉砕物で散在して占められていることが示唆される。実施例3~7との比較において、粒子は、より不規則な粒子形状を示す。
【0254】
実施例8
β-リン酸三カルシウム粒子とポリラクチド(PDLLA)との複合粉末は、NHS-1装置を使用して、特開昭62-083029号公報に開示されている方法に従って調製した。これを12℃の水で冷却した。ポリラクチド顆粒3を母粒子として使用し、β-リン酸三カルシウム(β-TCP;d
20=30μm;d
50=141μm;d
90=544μm)を子粒子として使用した。使用したβ-TCPのSEM画像を
図9a及び
図9bに示す。
【0255】
30.0gのポリラクチド顆粒を20.0gのβ-TCP粉末と混合し、6,400rpmで充填した。ユニットのローター速度を6,400rpm(80m/秒)に設定し、計量した材料を10分間処理した。合計5回の繰り返しを、材料の同じ量及び機械設定で実施した。合計249gの複合粉末が得られた。可能な限り、生成物を篩分けして>250μmの粗画分を除去した(250μmの篩を通過させる手動の乾式篩分け)。次いで<20μmの微細画分を、エアジェット篩機を用いて20μmの篩を通過させて分離させた。
【0256】
実施例9
菱面体炭酸カルシウム粒子とポリラクチド(PDLLA)との複合粉末は、NHS-1装置を使用して、特開昭62-083029号公報に開示されている方法に従って調製した。これを12℃の水で冷却した。ポリラクチド顆粒3を母粒子として使用し、菱面体炭酸カルシウム粒子(d20=11μm;d50=16μm;d90=32μm)を子粒子として使用した。
【0257】
30.0gのポリラクチド顆粒を20.0gの菱面体炭酸カルシウム粒子と混合し、6,400rpmで充填した。ユニットのローター速度を6,400rpm(80m/秒)に設定し、計量した材料を10分間処理した。合計5回の繰り返しを、材料の同じ量及び機械設定で実施した。合計232gの複合粉末が得られた。可能な限り、生成物を篩分けして>250μmの粗画分を除去した(250μmの篩を通過させる手動の乾式篩分け)。次いで<20μmの微細画分を、エアジェット篩機を用いて20μmの篩を通過させて分離させた。
【0258】
実施例10
粉砕炭酸カルシウム粒子とポリラクチド(PDLLA)との複合粉末は、NHS-1装置を使用して、特開昭62-083029号公報に開示されている方法に従って調製した。これを12℃の水で冷却した。ポリラクチド顆粒3を母粒子として使用し、粉砕炭酸カルシウム(GCC;d20=15μm;d50=46μm;d90=146μm)を子粒子として使用した。
【0259】
30.0gのポリラクチド顆粒を20.0gのGCCと混合し、6,400rpmで充填した。ユニットのローター速度を6,400rpm(80m/秒)に設定し、計量した材料を10分間処理した。合計5回の繰り返しを、材料の同じ量及び機械設定で実施した。合計247gの複合粉末が得られた。可能な限り、生成物を篩分けして>250μmの粗画分を除去した(250μmの篩を通過させる手動の乾式篩分け)。次いで<20μmの微細画分を、エアジェット篩機を用いて20μmの篩を通過させて分離させた。
【0260】
【0261】
【0262】