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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】三尖弁逆流症手術用器具
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20220208BHJP
   A61B 17/12 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
A61F2/24
A61B17/12
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020504682
(86)(22)【出願日】2018-07-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 KR2018008409
(87)【国際公開番号】W WO2019027175
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-03-05
(31)【優先権主張番号】10-2017-0096829
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516235978
【氏名又は名称】タウ ピーエヌユー メディカル カンパニー, リミテッド
【住所又は居所原語表記】#6109,Engineering Bldg.#6,2,Busandaehak-ro 63beon-gil Geumjeong-gu Busan 46241 Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジュン‐ホン
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1730387(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0044065(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0325110(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0119489(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0051936(KR,A)
【文献】特開平2-180245(JP,A)
【文献】特開昭62-11466(JP,A)
【文献】特表2015-503954(JP,A)
【文献】国際公開第2015/114471(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
A61B 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三尖弁逆流症手術用器具であって、
肺動脈に固定される肺動脈固定部材、
下大静脈に固定される下大静脈固定部材、
前記肺動脈固定部材と前記下大静脈固定部材とを連結する連結チューブ、及び
三尖弁を斜めに貫通する遮断部を含む、三尖弁逆流症手術用器具。
【請求項2】
前記連結チューブは、ガイドワイヤーに沿って移動できるように内部にガイドワイヤー案内用ルーメンが形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の三尖弁逆流症手術用器具。
【請求項3】
前記肺動脈固定部材又は前記下大静脈固定部材は、
下部に肺動脈固定部材胴体又は下大静脈固定部材胴体と、
前記肺動脈固定部材胴体又は下大静脈固定部材胴体に放射状に結合される多数の肺動脈固定体又は下大静脈固定体を含む、請求項1に記載の三尖弁逆流症手術用器具。
【請求項4】
前記肺動脈固定部材胴体又は下大静脈固定部材胴体は、中心軸上にホールを有する円筒状に形成され、前記連結チューブと結合されることを特徴とする、請求項3に記載の三尖弁逆流症手術用器具。
【請求項5】
前記下大静脈固定部材胴体は、下面に結合され、外部から挿入されるフックを用いて掛けることができる下大静脈突出フックを含む、請求項4に記載の三尖弁逆流症手術用器具。
【請求項6】
前記肺動脈固定部材胴体又は下大静脈固定部材胴体は、リング状に形成され、
前記肺動脈固定部材又は前記下大静脈固定部材は、一端が前記肺動脈固定部材胴体と結合されて前記連結チューブに挿入され、他端が下大静脈固定部材胴体と結合される固定部材連結ワイヤーを含む、請求項3に記載の三尖弁逆流症手術用器具。
【請求項7】
前記肺動脈固定部材又は前記下大静脈固定部材は、
リボン形状を有するワイヤーで形成された肺動脈固定体又は下大静脈固定体と、
前記肺動脈固定体又は下大静脈固定体の一端に結合されている肺動脈固定部材胴体又は下大静脈固定部材胴体を含む、請求項1に記載の三尖弁逆流症手術用器具。
【請求項8】
前記肺動脈固定部材胴体又は下大静脈固定部材胴体は、
中心軸上にホールを有する円筒状に形成され、前記連結チューブと結合されることを特徴とする、請求項7に記載の三尖弁逆流症手術用器具。
【請求項9】
前記肺動脈固定部材胴体又は下大静脈固定部材胴体は、リング状に形成され、
前記肺動脈固定部材又は前記下大静脈固定部材は、一端が前記肺動脈固定部材と結合されて前記連結チューブに挿入され、他端が下大静脈固定部材と結合される固定部材連結ワイヤーを含む、請求項7に記載の三尖弁逆流症手術用器具。
【請求項10】
前記遮断部は、
両端が前記連結チューブに結合される支持ワイヤーと、
一側が前記連結チューブに固定され、前記支持ワイヤーによって支持される遮断膜と、を含む、請求項1に記載の三尖弁逆流症手術用器具。
【請求項11】
前記遮断部は、
膨張又は収縮することができるバルーン状の遮断バルーンであり、
一端が前記遮断バルーンに連結されて連通するバルーンチューブと、
前記バルーンチューブの他端に連結されて患者の体外に設置され、前記遮断バルーンを膨張又は収縮させるバルーン調節ハブと、をさらに含む、請求項1に記載の三尖弁逆流症手術用器具。
【請求項12】
前記遮断部は、
前記連結チューブが貫通するように設置され、中心軸が前記連結チューブに斜めに形成されたリング状ワイヤーと、
前記連結チューブと前記リング状ワイヤーとを連結する遮断膜とを含む、請求項1に記載の三尖弁逆流症手術用器具。
【請求項13】
三尖弁逆流症手術用器具は、
体内へ移動するために、前記三尖弁逆流症手術用器具を挿入することができるルーメンが形成されたシースチューブをさらに含む、請求項1に記載の三尖弁逆流症手術用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三尖弁逆流症手術用器具に係り、より詳細には、心臓の右心房と右心室との間に位置する三尖弁(Tricuspid Valve、TV)が正しく閉められないため生じるオリフィス(orifice)を介して右心室の血液が右心房に逆流する疾患である三尖弁逆流症(Tricuspid Regurgitation、TR)を治療するために下大静脈-三尖弁-肺動脈を介して簡単に挿入される三尖弁逆流症手術用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓は、左心房、左心室、右心房、右心室の4つの空間からなり、大動脈、大静脈、肺動脈及び肺静脈に繋がっている。心室と心房の間には弁が存在し、左心房と左心室との間の弁は僧帽弁とし、右心房と右心室との間の弁は三尖弁とする。
【0003】
心臓は、収縮作用と弛緩作用を繰り返して血液が流れるようにし、心臓の収縮期には心臓内の血液が血管へ移動するが、右心室からは肺動脈へ、左心室からは大動脈へと血液が移動する。
【0004】
ところが、弁が正常に作動しなければ、心臓の収縮時に血管に流れるべき血液が再び心房へ移動する血液の逆流が発生する。
【0005】
三尖弁逆流症は、右心房と右心室との間の三尖弁が伸びたり、三尖弁が破れたり、弁を固定する腱索が切れたりして、三尖弁が閉となるべきときに完全に閉められないためオリフィスが発生し、前記オリフィスを介して心臓の収縮時に右心室の血液が右心房へ逆流する症状をいう。これを三尖弁閉鎖不全症とも呼ぶ。
【0006】
米国登録特許第8486136号、米国登録特許第7854762号及び米国登録特許第9474605号は、三尖弁逆流症を手術するための器具であって、前記三尖弁逆流症手術器具は、上大静脈-三尖弁-右心室へと挿入されて遮断部が三尖弁のオリフィスを塞いで三尖弁逆流症を治療する。従来の前記三尖弁逆流症手術器具は、一端に設置されたアンカーが心室に固定され、他端が上大静脈を通過して心臓の外部に固定される。よって、これらの従来特許の前記遮断部は、三尖弁オリフィス(orifice)の中心に垂直(longitudinal orientation)に貫通して心臓内に浮かんでいる不安定な状態で位置する。
【0007】
従来の三尖弁逆流症手術用器具の固定装置は、心室及び心臓の外部に固定される。心臓は、横隔膜の上に位置して呼吸の際に横隔膜の上下動に応じて心臓も上下に動くので、従来の三尖弁逆流症手術用器具は、呼吸の際に横隔膜の動きに応じて上下に動く。このような動きが繰り返されると、遮断部が三尖弁オリフィスの中心から外れるという問題点がある。遮断部が三尖弁オリフィスの中心から外れると、むしろ弁機能に逆効果をもたらす。
【0008】
また、本発明者によって発明された韓国公開特許第10-2017-0044065号では、冠状静脈洞と心室中隔とを連結して三尖弁を斜めに貫通する(oblique orientation)遮断部を有する三尖弁逆流症手術用器具を開示している。前記遮断部は心臓の内部に安定的に位置するが、心室中隔を貫通する相対的に難しい手術が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる問題点を解決するためのもので、その目的は、下大静脈-三尖弁-肺動脈を介して移動して比較的簡単に三尖弁逆流症を治療することができる三尖弁逆流症手術用器具を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、遮断部が三尖弁オリフィスに斜めに貫通して安定的に三尖弁オリフィスを塞ぐことができる三尖弁逆流症手術用器具を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、固定部材を肺動脈及び下大静脈に固定して呼吸の際に横隔膜の動きに影響を受けるため三尖弁オリフィスの中心位置(centerline orientation)がうまく維持される三尖弁逆流症手術用器具を提供することにある。
【0012】
本発明の目的は、上述した目的に限定されず、上述していない別の目的は、以降の記載から本発明の技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解できるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明は、三尖弁逆流症手術用器具において、
【0014】
肺動脈に設置される肺動脈固定部材、下大静脈に設置される下大静脈固定部材、前記肺動脈固定部材と前記下大静脈固定部材とを連結する連結チューブ、及び三尖弁を斜めに貫通する遮断部を含む。
【0015】
前記連結チューブは、ガイドワイヤーに沿って移動できるように内部にガイドワイヤー案内用ルーメンが形成されていることを特徴とする。
【0016】
前記肺動脈固定部材又は前記下大静脈固定部材は、下部に肺動脈固定部材胴体又は下大静脈固定部材胴体と、前記肺動脈固定部材胴体又は下大静脈固定部材胴体に放射状に結合される多数の肺動脈固定体又は下大静脈固定体を含む。
【0017】
前記肺動脈固定部材胴体又は下大静脈固定部材胴体は、中心軸上にホールを有する円筒状に形成され、前記連結チューブと結合されることを特徴とする。
【0018】
前記下大静脈固定部材胴体は、下面に結合され、外部から挿入されるフックを用いて掛けることができる下大静脈突出フックを含む。
【0019】
前記肺動脈固定部材胴体又は下大静脈固定部材胴体は、リング状に形成され、前記肺動脈固定部材又は前記下大静脈固定部材は、一端が前記肺動脈固定部材胴体と結合されて前記連結チューブに挿入され、他端が下大静脈固定部材胴体と結合される固定部材連結ワイヤーを含む。
【0020】
前記肺動脈固定部材又は前記下大静脈固定部材は、リボン形状を有するワイヤーで形成された肺動脈固定体又は下大静脈固定体と、前記肺動脈固定体又は下大静脈固定体の一端に結合されている肺動脈固定部材胴体又は下大静脈固定部材胴体を含む。
【0021】
前記肺動脈固定部材胴体又は下大静脈固定部材胴体は、中心軸上にホールを有する円筒状に形成され、前記連結チューブと結合されることを特徴とする。
【0022】
前記肺動脈固定部材胴体又は下大静脈固定部材胴体は、リング状に形成され、前記肺動脈固定部材又は前記下大静脈固定部材は、一端が前記肺動脈固定部材胴体と結合されて前記連結チューブに挿入され、他端が下大静脈固定部材胴体と結合される固定部材連結ワイヤーを含む。
【0023】
前記遮断部は、両端が前記連結チューブに結合される支持ワイヤーと、一側が前記連結チューブに固定され、前記支持ワイヤーによって支持される遮断膜とを含む。
【0024】
前記遮断部は、膨張又は収縮することができるバルーン状の遮断バルーン(blocking balloon)であるが、一端が前記遮断バルーンに連結されて連通するバルーンチューブと、前記バルーンチューブの他端に連結されて患者の体外に設置され、前記遮断バルーンを膨張又は収縮させるバルーン調節ハブとをさらに含む。
【0025】
前記遮断部は、前記連結チューブが貫通するように設置され、中心軸が前記連結チューブに斜めに形成されたリング状ワイヤーと、前記連結チューブと前記リング状ワイヤーとを連結する遮断膜とを含む
【0026】
三尖弁逆流症手術用器具は、体内へ移動するために、前記三尖弁逆流症手術用器具を挿入することができるルーメン(lumen)が形成されたシースチューブをさらに含む。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る三尖弁逆流症手術用器具は、下大静脈-三尖弁-肺動脈へと移動して比較的簡単に遮断部を三尖弁に位置させることができ、手術時間が短い。
【0028】
また、遮断部が三尖弁オリフィスの中心を斜めに貫通して安定的に三尖弁オリフィスを塞ぐことができる。
【0029】
また、肺動脈及び下大静脈に固定部材を固定することにより、呼吸の際に横隔膜の動きに影響を受けないため、三尖弁オリフィスの中心を貫通する遮断部の位置変動が殆どない。
【0030】
また、本発明に係る三尖弁逆流症手術用器具の遮断部は、三尖弁の平面とほぼ同じ面に位置するので、下部構造である腱索(chorda tendineas)又は乳頭筋(papillary muscle)とは相互作用が殆どないため、これによる問題発生のおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の好適な実施形態に係る三尖弁逆流症手術用器具の斜視図である。
図2図1の三尖弁逆流症手術用器具を用いて手術後の様子を説明するための斜視断面図である。
図3図1の三尖弁逆流症手術用器具の肺動脈固定部材及び下大静脈固定部材の他の実施形態を示す斜視図である。
図4図1の三尖弁逆流症手術用器具の肺動脈固定部材及び下大静脈固定部材の別の実施形態を示す斜視図である。
図5図1の三尖弁逆流症手術用器具の肺動脈固定部材及び下大静脈固定部材の別の実施形態を示す斜視図である。
図6】本発明の好適な他の実施形態に係る三尖弁逆流症手術用器具の斜視図である。
図7図6の三尖弁逆流症手術用器具を用いた手術後の様子を説明するための斜視断面図である。
図8】本発明の好適な別の実施形態に係る三尖弁逆流症手術用器具の斜視図である。
図9図8の三尖弁逆流症手術用器具を用いた手術後の様子を説明するための斜視断面図である。
図10】本発明の三尖弁逆流症手術用器具を用いた三尖弁逆流症手術の手順を示すフローチャートである。
図11】本発明の三尖弁逆流症手術用器具を用いて三尖弁逆流症を治療する原理を説明するための斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付図面と共に詳細に後述されている実施形態を参照すると明確になるだろう。しかし、本発明は、以下で開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現されるものであり、但し、本実施形態は、本発明の開示を完全たるものにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0033】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施のための具体的な内容を詳細に説明する。図面に関係なく、同じ部材番号は同じ構成要素を指し、「及び/又は」は記載されたアイテムのそれぞれ及び1つ以上の全ての組み合わせを含む。
【0034】
本明細書で使用された用語は、実施形態を説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。本明細書において、単数形は、特に記載しない限り、複数形も含む。明細書で使用される「含む(comprises)」及び/又は「含む(comprising)」は、記載された構成要素の他に一つ以上の他の構成要素の存在又は追加を排除しない。
【0035】
他の定義がなければ、本明細書で使用されるすべての用語(技術及び科学的用語を含む)は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に共通に理解できる意味で使用できる。また、一般的に使用される辞典に定義されている用語は、明白に特別に定義されていない限り、理想的又は過度に解釈されない。
【0036】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。
【0037】
図1は本発明の好適な実施形態に係る三尖弁逆流症手術用器具の斜視図である。
【0038】
図1を参照すると、本発明の三尖弁逆流症手術用器具100は、基本的に、肺動脈固定部材30、下大静脈固定部材60、連結チューブ20及び遮断部10を含む。
【0039】
前記肺動脈固定部材30は、肺動脈に固定されるもので、下部に肺動脈固定部材胴体34と、前記肺動脈固定部材胴体34の上面に放射状に結合された多数の肺動脈固定体32とを含む。
【0040】
前記下大静脈固定部材60は、下大静脈に固定されるもので、下部に設けられた下大静脈固定部材胴体64と、前記下大静脈固定部材胴体64の上面に放射状に結合された多数の下大静脈固定体62と、前記下大静脈固定部材胴体64の下面に形成された下大静脈突出フック66とを含む。
【0041】
前記肺動脈固定体32と前記下大静脈固定体62は、金属製(ステンレス鋼、金属製にナイロンコーティングなど)ワイヤーなどが使用でき、形状記憶合金又は弾性体又は自己拡張型スタンド(self expandable stent)で構成できる。
【0042】
前記肺動脈固定部材胴体34と前記下大静脈固定部材胴体64は、中心軸上にホールを有する円筒状に形成され、前記連結チューブ20の外周面と密接に結合される内周面を有することを特徴とする。
【0043】
前記連結チューブ20は、ガイドワイヤー50に沿って移動できるように内部にガイドワイヤー案内用ルーメン22が形成されていることを特徴とする。
【0044】
前記連結チューブ20は、ゴム材や延性プラスチック材などの合成樹脂材などで構成でき、柔らかく延性が高く、心臓の拍動に応じて動ける柔軟性及び復元性に優れた材質が使用される。
【0045】
前記肺動脈固定部材30と前記下大静脈固定部材60は同じ方向に設置され、前記連結チューブ20の一端は前記肺動脈固定部材胴体34の下側に嵌合され、前記連結チューブ20の他端は前記下大静脈固定部材胴体64の上側に嵌合される。
【0046】
図1に示したものの他に、前記肺動脈固定部材30と前記下大静脈固定部材60は、上側又は下側に関係なく、連結チューブ20との嵌合が可能であるのはもちろんである。
【0047】
前記下大静脈突出フック66は、患者の体内で三尖弁逆流症手術用器具100を除去しなければならない場合、簡単に除去するためのものであり、より詳細には、下大静脈を介して三尖弁逆流症手術用器具100を除去するために、上端がフック形状であるワイヤー(図示せず)を挿入して前記下大静脈突出フック66に掛けて引くと、容易に患者の体内から三尖弁逆流症手術用器具100を除去することができる。
【0048】
三尖弁逆流症手術用器具100は、体内へ移動するために、内部にルーメンが形成されたシースチューブ40をさらに含む。前記肺動脈固定部材30及び前記下大静脈固定部材60は、体内への移動時に前記シースチューブ40内に窄まった状態で挿入され、前記シースチューブ40の除去時に復元されて放射状に広がり、肺動脈及び下大静脈に固定される。三尖弁逆流症手術用器具100の体内挿入過程は、図10及び図11で詳細に説明する。
【0049】
前記遮断部10は、三尖弁の不完全な閉鎖現象により発生するオリフィス(orifice)を塞ぐ部分であって、前記連結チューブ20の一側に結合され、三尖弁に斜めに挿入されることを特徴とする。
【0050】
前記遮断部10は、遮断膜12又は遮断バルーン(blocking balloon)16などが使用される。図1では、前記遮断膜12を示したものである。前記遮断膜12は、延性を持つが、破れ難く、人体に適した材質が使用され、医療用ポリウレタン、ポリオレフィン、シリコーン、e-PTFE、PTFEなどが使用される。
【0051】
前記遮断部10は、前記遮断膜12の形を保持するための支持ワイヤー14を含む。図1では、前記支持ワイヤー14の両端が前記連結チューブ20に固定された形態を示すが、必ずしもこれに限定されるものではなく、両方又は一方が前記連結チューブ20に固定されない場合も可能であるのはもちろんである。
【0052】
前記遮断膜12は、図1に示すように半円形状だけでなく、円形状も可能であり、前記円形状の遮断膜12の位置調整または形態固定のために複数の連結チューブ20が設置されてもよい。
【0053】
また、前記支持ワイヤー14の材質は、ナイロンなどの合成樹脂又は金属製(ステンレス鋼、金属製にナイロンコーティングなど)ワイヤーなどが使用できる。前記支持ワイヤー14は、一つのワイヤーであってもよく、多数の細いワイヤーを撚って作ったタイプであってもよい。
【0054】
前記遮断膜12は、一重からなり、前記連結チューブ20と前記支持ワイヤー14とを連結することも可能であるが、前記遮断膜12は、二重からなり、前記遮断膜12に前記支持ワイヤー14が挿入された形で構成することも可能である。
【0055】
図2図1の三尖弁逆流症手術用器具を用いた手術後の様子を説明するための斜視断面図である。
【0056】
図2を参照すると、本発明の好適な実施形態に係る三尖弁逆流症手術用器具100が患者の心臓内部に挿入された状態を示す。肺動脈に前記肺動脈固定部材30が設置され、下大静脈に前記下大静脈固定部材60が設置されて三尖弁逆流症手術用器具100を固定し、前記遮断部10が三尖弁オリフィスに斜めに貫通して前記オリフィスを遮断することにより、三尖弁逆流症を治療する。
【0057】
従って、本発明に係る三尖弁逆流症手術用器具100は、下大静脈-三尖弁-肺動脈を介して移動して前記遮断部10を三尖弁オリフィスに位置させることができ、前記遮断部10を三尖弁オリフィスに斜めに貫通させて安定的に三尖弁オリフィスを塞ぐことができる。また、肺動脈及び下大静脈に前記肺動脈固定部材30及び前記下大静脈固定部材60を固定して、呼吸の際に横隔膜の動きにも影響を受けないため、時間が経っても前記遮断部10の位置変動可能性が少ない。
【0058】
図3図1の三尖弁逆流症手術用器具の肺動脈固定部材及び下大静脈固定部材の他の実施形態を示す斜視図である。
【0059】
図3を参照すると、肺動脈固定部材30及び下大静脈固定部材60は、下部の肺動脈固定部材胴体34及び下大静脈固定部材胴体64と、前記肺動脈固定部材胴体34及び下大静脈固定部材胴体64に放射状に結合された多数の肺動脈固定体32及び下大静脈固定体62を含む。また、前記肺動脈固定部材30は、前記肺動脈固定部材30と前記下大静脈固定部材60とを連結するための固定部材連結ワイヤー36を含む。前記連結チューブ20及び前記遮断部10は図1と同様である。
【0060】
前記肺動脈固定部材胴体34及び下大静脈固定部材胴体64は、リング状に形成され、前記固定部材連結ワイヤー36の一端は、前記肺動脈固定部材胴体34に結合されて前記連結チューブ20内に挿入され、前記固定部材連結ワイヤー36の他端は、前記下大静脈固定部材胴体64に結合される。前記固定部材連結ワイヤー18は前記支持ワイヤー42と同じ材質であってもよい。
【0061】
前記肺動脈固定部材30及び前記下大静脈固定部材60は、体内へ移動するために前記シースチューブ40内への挿入時に窄まった状態で挿入され、前記シースチューブ40の除去時に復元されて放射状に広がり、肺動脈及び下大静脈に固定される。
この時、前記肺動脈固定体32及び下大静脈固定体62は、前記シースチューブ40に挿入されず、前記連結チューブ20内に挿入されることも可能である。
図4図1の三尖弁逆流症手術用器具の肺動脈固定部材及び下大静脈固定部材の別の実施形態を示す斜視図である。
【0062】
図4を参照すると、別の肺動脈固定部材30及び下大静脈固定部材60は、中心部が凸なリボン状を有するワイヤーで形成された肺動脈固定体32及び下大静脈固定体62と、前記肺動脈固定体32及び下大静脈固定体62の一端に結合されている肺動脈固定部材胴体34及び下大静脈固定部材胴体64とを含む。前記連結チューブ20及び前記遮断部10は、図1と同様である。
【0063】
前記肺動脈固定部材胴体34及び下大静脈固定部材胴体64は、中心軸上にホールを有する円筒状に形成され、前記連結チューブ20の外周面と密接に結合される内周面を有することを特徴とする。
【0064】
中心部が凸なリボン形状を有するワイヤーで形成された前記肺動脈固定体32及び前記下大静脈固定体62は、形状記憶合金又は弾性体又は自己拡張型スタンドで形成できる。前記肺動脈固定部材胴体34は、前記連結チューブ20の一端に嵌合され、前記下大静脈固定部材胴体64は、前記連結チューブ20の他端に嵌合される。
【0065】
図4の三尖弁逆流症手術用器具100は、患者の体内への移動時に前記シースチューブ40内に挿入され、前記肺動脈固定体32及び前記下大静脈固定体62は、前記シースチューブ40内に挿入されるために凸な中心部が押された状態で挿入され、前記シースチューブ40の除去時には中心部が凸なリボン状に復元され、肺動脈又は下大静脈に固定される。
【0066】
図5図1の三尖弁逆流症手術用器具の肺動脈固定部材及び下大静脈固定部材の別の実施形態を示す斜視図である。
【0067】
図5を参照すると、肺動脈固定部材30及び下大静脈固定部材60は、中心部が凸なリボン状を有するワイヤーで形成された肺動脈固定体32及び下大静脈固定体62と、前記肺動脈固定体32及び下大静脈固定体62の一端に結合されているリング状の肺動脈固定部材胴体34及び下大静脈固定部材胴体64とを含む。また、前記肺動脈固定部材30は、前記肺動脈固定部材30と前記下大静脈固定部材60とを連結するための固定部材連結ワイヤー36を含む。
【0068】
また、前記固定部材連結ワイヤー36は、一端が前記肺動脈固定体32と結合されて前記肺動脈固定部材胴体34の中心軸を貫通して前記連結チューブ20内に挿入され、他端が前記下大静脈固定部材胴体64の中心軸を貫通して前記下大静脈固定体62と結合される。前記連結チューブ20及び前記遮断部10は、図1と同様である。
【0069】
前記肺動脈固定体32及び下大静脈固定体62は、患者の胴体の内部へ移動するために、前記シースチューブ40内に平らなリボン状に挿入され、前記シースチューブ40の除去時に、前記シースチューブ40で前記肺動脈固定部材胴体34及び下大静脈固定部材胴体64、又は前記肺固定体32及び下大静脈固定体62を前方に押す。これにより、前記肺動脈固定体32及び下大静脈固定体62は、中心部が凸なリボン状をし、肺動脈又は下大静脈に固定される。
【0070】
この時、前記肺動脈固定体32及び下大静脈固定体62は、前記シースチューブ40に挿入されず、前記連結チューブ20内に挿入されることも可能である。
上述した形態の肺動脈固定部材30及び下大静脈固定部材60以外の他の形態も可能である。
【0071】
図6は本発明の好適な他の実施形態に係る三尖弁逆流症手術用器具の斜視図であり、図7図6の三尖弁逆流症手術用器具を用いた手術後の様子を説明するための斜視断面図である。
【0072】
図6及び図7を参照すると、本発明の好適な他の実施形態に係る三尖弁逆流症手術用器具100は、肺動脈に固定される肺動脈固定部材30、下大静脈に固定される前記下大静脈固定部材60、前記肺動脈固定部材30と前記下大静脈固定部材60とを連結する連結チューブ20、及び前記連結チューブ20の一側に結合される遮断部10を含む。
【0073】
前記遮断部10は、膨張又は収縮可能なバルーン状の遮断バルーン16と、一端が前記遮断バルーン16に結合されて連通するバルーンチューブ17と、前記バルーンチューブ17の他端に結合され、前記遮断バルーン16へ空気、酸素、フォーム(Form)などを供給するバルーン調節ハブ18とを含む。
【0074】
前記バルーン調節ハブ18は、患者のボディの外部に設置され、前記遮断バルーン16は、前記バルーン調節ハブ18から供給する空気、酸素、フォーム(Form)などによって膨張又は収縮できる。
【0075】
前記遮断バルーン16は、前記バルーン調節ハブ18から空気、酸素、フォームなどの供給を受けて膨張して三尖弁オリフィスを遮断し、前記遮断バルーン16の大きさは、前記オリフィスの大きさに応じて調節可能である。
【0076】
前記肺動脈固定部材30と前記下大静脈固定部材60は、図6及び図7に示す形態だけでなく、図3乃至図5で上述した形態も可能であるのはもちろんである。
【0077】
図8は本発明の好適な別の実施形態に係る三尖弁逆流症手術用器具の斜視図であり、図9図8の三尖弁逆流症手術用器具を用いた手術後の様子を説明するための斜視断面図である。
【0078】
図8及び図9を参照すると、本発明の好適な別の実施形態に係る三尖弁逆流症手術用器具100は、肺動脈に固定される肺動脈固定部材30、下大静脈に固定される下大静脈固定部材60、前記肺動脈固定部材30と下大静脈固定部材60とを連結する連結チューブ20、及び前記連結チューブ20の外周面に結合される遮断部10を含む。
【0079】
前記肺動脈固定部材30と前記下大静脈固定部材60は、図8及び図9に示した形態だけでなく、図3乃至図5で上述した形態も可能であるのはもちろんである。
【0080】
前記遮断部10は、前記連結チューブ20が貫通するように設置され、中心軸が前記連結チューブ20に斜めに形成されたリング状ワイヤー19と、前記連結チューブ20と前記リング状ワイヤー19とを連結する遮断膜41とを含む。
【0081】
前記リング状ワイヤー19は、中心軸が前記連結チューブ20に斜めに形成されるので、一定の角度傾いている三尖弁と平行に位置する。よって、三尖弁オリフィスを効果的に遮断することができる。
【0082】
以下、前記三尖弁逆流症手術用器具100を用いて三尖弁逆流症を手術する過程を説明する。
【0083】
図10は本発明の三尖弁逆流症手術用器具を用いた三尖弁逆流症手術の手順を示すフローチャートであり、図11は本発明の三尖弁逆流症手術用器具を用いて三尖弁逆流症を治療する原理を説明するための斜視断面図である。
【0084】
図10及び図11を参照すると、ガイドワイヤーの移動ステップ(S10)、三尖弁逆流症手術用器具の移動ステップ(S20)、及び三尖弁逆流症手術用器具の固定ステップ(S30)を含む。また、本発明の三尖弁逆流症手術用器具100は、患者のボディの内部で容易に移動するためにガイドワイヤー50とシースチューブ40をさらに含む。
【0085】
前記ガイドワイヤーの移動ステップ(S10)は、前記ガイドワイヤー50を下大静脈-三尖弁-肺動脈に挿入して、本発明の三尖弁逆流症手術用器具100が容易に体内へ移動することができるようにするステップである。体内でのワイヤー及びカテーテルの移動は、X線を介して観察することができる。前記ガイドワイヤー50が安全に三尖弁を通過するために、内部にルーメンが形成されたガイドワイヤー案内用チューブ(図示せず)がさらに必要である。前記ガイドワイヤー案内用チューブ(図示せず)は、三尖弁のセーフゾーン(safe zone)を通過するために、上端にバルーン又は豚尾状の係止手段が形成されている。前記セーフゾーンとは、三尖弁の弁尖(leaflet)と、三尖弁の腱索及び乳頭筋などの弁下部構造物及びモデレーターバンド(moderator band)がない空間をいう。前記バルーン又は豚尾状の係止手段は、セーフゾーン以外の場所へ移動するとき、前記弁下部構造物及び前記モデレーターバンドにかかって前進しないようにする。したがって、前記ガイドワイヤー案内用チューブ(図示せず)が下大静脈-三尖弁のセーフゾーン-肺動脈へと移動し、前記ガイドワイヤー案内用チューブに前記ガイドワイヤー50が挿入されて移動する。前記ガイドワイヤー50の一端が肺動脈まで移動すると、前記ガイドワイヤー案内用チューブを体外に除去する。このとき、三尖弁逆流症手術用器具100は、前記シースチューブ40内に挿入されて体内へ移動できるように準備する。前記肺動脈固定体32及び前記下大静脈固定体62は、窄まった状態で前記シースチューブ40内に挿入され、前記遮断部10は、前記連結チューブ20の外周面に巻かれた状態で前記シースチューブ40内に挿入される。
【0086】
前記三尖弁逆流症手術用器具の移動ステップ(S20)は、前記ガイドワイヤー50を、前記シースチューブ40の内部に形成された前記ガイドワイヤー案内用ルーメン22に挿入して、三尖弁逆流症手術用器具100を体内へ移動させるステップである。前記ガイドワイヤー50が挿入された経路(下大静脈-三尖弁-肺動脈)に沿って、前記シースチューブ40内に挿入された三尖弁逆流症手術用器具100が体内に挿入され、前記遮断部10が三尖弁オリフィスに位置すると、移動を停止する。
【0087】
前記三尖弁逆流症手術用器具の固定ステップ(S30)は、前記ガイドワイヤー50と前記シースチューブ40を体外に除去して三尖弁逆流症手術用器具100が肺動脈及び下大静脈に固定されるようにするステップである。前記遮断部10が三尖弁オリフィスに斜めに貫通するように位置すると、前記ガイドワイヤー50を体外に除去する。また、前記シースチューブ40も体外に除去すると、形状記憶合金又は弾性体又は自己拡張型スタンドで形成された前記肺動脈固定体32及び前記下大静脈固定体62が放射状に復元され、前記肺動脈固定部材30は肺動脈に固定され、前記下大静脈固定部材60は下大静脈に固定される。また、前記シースチューブ40に巻かれた状態で挿入されていた前記遮断部10も復元され、三尖弁の不完全な閉鎖現象により発生するオリフィスを遮断して三尖弁逆流症を治療する。
【0088】
以上、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想又は必須の特徴を変更することなく様々な具体的形態で実施できることを理解することができるだろう。したがって、上述した実施形態は、あらゆる面で例示的なもので、限定的なものではないと理解されるべきである。
【符号の説明】
【0089】
14 支持ワイヤー
16 遮断バルーン
17 バルーンチューブ
18 バルーン調節ハブ
19 リング状ワイヤー
20 連結チューブ
22 ガイドワイヤー案内用ルーメン
30 肺動脈固定部材
32 肺動脈固定体
34 肺動脈固定部材胴体
36 固定部材連結ワイヤー
40 シースチューブ
50 ガイドワイヤー
60 下大静脈固定部材
62 下大静脈固定体
64 下大静脈固定部材胴体
66 下大静脈突出フック
100 三尖弁逆流症手術用器具
S10 ガイドワイヤーの移動ステップ
S20 三尖弁逆流症手術用器具の移動ステップ
S30 三尖弁逆流症手術用器具の固定ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11