IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オムロンヘルスケア株式会社の特許一覧

特許7019951血圧データ処理装置、血圧データ処理方法、およびプログラム
<>
  • 特許-血圧データ処理装置、血圧データ処理方法、およびプログラム 図1
  • 特許-血圧データ処理装置、血圧データ処理方法、およびプログラム 図2
  • 特許-血圧データ処理装置、血圧データ処理方法、およびプログラム 図3
  • 特許-血圧データ処理装置、血圧データ処理方法、およびプログラム 図4
  • 特許-血圧データ処理装置、血圧データ処理方法、およびプログラム 図5
  • 特許-血圧データ処理装置、血圧データ処理方法、およびプログラム 図6
  • 特許-血圧データ処理装置、血圧データ処理方法、およびプログラム 図7
  • 特許-血圧データ処理装置、血圧データ処理方法、およびプログラム 図8
  • 特許-血圧データ処理装置、血圧データ処理方法、およびプログラム 図9
  • 特許-血圧データ処理装置、血圧データ処理方法、およびプログラム 図10
  • 特許-血圧データ処理装置、血圧データ処理方法、およびプログラム 図11
  • 特許-血圧データ処理装置、血圧データ処理方法、およびプログラム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】血圧データ処理装置、血圧データ処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/022 20060101AFI20220208BHJP
【FI】
A61B5/022 400L
A61B5/022 500A
A61B5/022 ZDM
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017048954
(22)【出願日】2017-03-14
(65)【公開番号】P2018149186
(43)【公開日】2018-09-27
【審査請求日】2020-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】尾林 慶一
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 宏
(72)【発明者】
【氏名】土屋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】和田 洋貴
(72)【発明者】
【氏名】小久保 綾子
(72)【発明者】
【氏名】武良 盛太郎
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-064125(JP,A)
【文献】特開2004-195204(JP,A)
【文献】特開2003-070758(JP,A)
【文献】特開平10-295657(JP,A)
【文献】特開2015-154884(JP,A)
【文献】特開2006-212218(JP,A)
【文献】特開2014-094085(JP,A)
【文献】特開2016-087282(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0331247(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02- 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
睡眠中の被測定者に関する血圧データを取得する血圧データ取得部と、
前記血圧データから生成される収縮期血圧または拡張期血圧の時系列データにおいて、前記収縮期血圧または前記拡張期血圧が上昇しその後に下降する時間区間における血圧波形サージ血圧として検出するサージ血圧検出部と、
前記血圧データのうちの前記検出されたサージ血圧に対応する部分から一心拍以上の血圧波形を抽出する血圧波形抽出部と、
前記一心拍以上の血圧波形から分離した一心拍分の血圧波形の各々について、または、前記一心拍以上の血圧波形から分離した前記一心拍分の血圧波形を平均した平均血圧波形について、波形特徴量を算出する波形特徴量算出部と、
前記波形特徴量に基づいて、所定の要因の中から前記検出されたサージ血圧が発生した要因を識別する要因識別部と、
を具備する血圧データ処理装置。
【請求項2】
前記要因識別部は、前記所定の要因それぞれに対応する波形特徴量を学習することにより得られた学習結果を用いて、前記検出されたサージ血圧が発生した要因を識別する、請求項1に記載の血圧データ処理装置。
【請求項3】
前記波形特徴量は、複数種類の波形特徴量を含み、
前記要因識別部は、前記複数種類の波形特徴量と、前記所定の要因それぞれに関する境界であって特徴空間に設定された境界と、に基づいて、前記検出されたサージ血圧が発生した要因を識別する、請求項1または請求項2に記載の血圧データ処理装置。
【請求項4】
前記サージ血圧は、立ち上がり部分および前記立ち上がり部分の後に続く立ち下がり部分を含み、
前記血圧波形抽出部は、前記サージ血圧の前記立ち上がり部分から前記一心拍以上の血圧波形を抽出する、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の血圧データ処理装置。
【請求項5】
前記波形特徴量は、ダイアストリックピークの時刻からシストリックピークの時刻までの時間間隔、前記ダイアストリックピークの前記時刻からダイクロティックピークの時刻までの時間間隔、前記シストリックピークの時間幅、全パルス時間、前記シストリックピークの振幅、および前記ダイクロティックピークの振幅の少なくとも1つに基づいている、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の血圧データ処理装置。
【請求項6】
前記波形特徴量は、前記シストリックピークの前記時間幅と前記全パルス時間との比に基づく波形特徴量を含む、請求項5に記載の血圧データ処理装置。
【請求項7】
前記波形特徴量算出部は、前記一心拍以上の血圧波形に対して一次微分または二次微分を含む前処理を行い、前記前処理により得られる波形に基づいて前記ダイアストリックピーク、前記シストリックピーク、および前記ダイクロティックピークを特定する、請求項5または請求項6に記載の血圧データ処理装置。
【請求項8】
前記要因識別部により識別したサージ血圧の要因に関する情報を出力する出力部をさらに具備する請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の血圧データ処理装置。
【請求項9】
睡眠中の被測定者に関する血圧データを取得することと、
前記血圧データから生成される収縮期血圧または拡張期血圧の時系列データにおいて、前記収縮期血圧または前記拡張期血圧が上昇しその後に下降する時間区間における血圧波形サージ血圧として検出することと、
前記血圧データのうちの前記検出されたサージ血圧に対応する部分から一心拍以上の血圧波形を抽出することと、
前記一心拍以上の血圧波形から分離した一心拍分の血圧波形の各々について、または、前記一心拍以上の血圧波形から分離した前記一心拍分の血圧波形を平均した平均血圧波形について、波形特徴量を算出することと、
前記波形特徴量に基づいて、所定の要因の中から前記検出されたサージ血圧が発生した要因を識別することと、
を具備する血圧データ処理方法。
【請求項10】
コンピュータを請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の血圧データ処理装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧データを処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠時無呼吸症候群(SAS;Sleep Apnea Syndrome)を罹患している患者において、無呼吸後の呼吸再開時に、血圧が急激に上昇しその後に下降することが知られている。以下では、このような急激な血圧変動をサージ血圧と呼ぶ。患者に発生したサージ血圧に関連する指標(例えば、単位時間当たりにサージ血圧が発生した回数)は、SASや高血圧のような、脳疾患または心血管疾患の発症リスクを高める疾患の診断や治療に役立つと考えられる。
【0003】
サージ血圧を観測するためには、例えば一心拍ごとの血圧を得ることができるような、血圧を連続的に測定することができる血圧測定装置が必要となる。連続血圧測定によって得られた血圧データの量は膨大であり、医師や研究者などの専門家が血圧データを分析してサージ血圧を抽出することは困難である。このため、血圧データからサージ血圧を自動で抽出する技術の開発が進められている。
【0004】
ところで、血圧測定装置は健康管理や病気の治療または診断などの様々なシーンで利用されている。特許文献1には、患者の心拍数における変動をモニターし、心拍数の変動が検出されたことに応答して血圧を測定する血圧測定装置が開示されている。この血圧測定装置は、心拍数の変動に基づいて、血圧が危険なレベルに下降または上昇するような血圧変動が患者に起こることを予測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-299707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
サージ血圧は、無呼吸以外の要因によっても発生する。例えば、睡眠中にサージ血圧が発生する主な要因としては、無呼吸、レム(REM;Rapid Eye Movement)睡眠および覚醒反応が挙げられる。サージ血圧がいずれの要因により発生したのかは、PSG(polysomnography)によって睡眠状態と血圧を計測することにより判断することができる。しかしながら、PSGは高価かつ大掛かりなデバイスであり、PSGを用いた計測を家庭で気軽に行うことはできない。また、特許文献1に開示された血圧測定装置では、血圧変動が生じることを予測することができるが、その血圧変動に寄与している身体の原因を特定することはできない。PSGのような高価かつ大掛かりなデバイスを用いることなく、サージ血圧の発生要因を特定することができることが求められている。
【0007】
本発明は、上記の事情に着目してなされたものであり、その目的は、血圧データからサージ血圧が発生した要因を識別することができる血圧データ処理装置、血圧データ処理方法、およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様では、血圧データ処理装置は、血圧データを取得する血圧データ取得部と、前記血圧データからサージ血圧を検出するサージ血圧検出部と、前記サージ血圧から一心拍以上の血圧波形を抽出する血圧波形抽出部と、前記一心拍以上の血圧波形から分離した一心拍分の血圧波形の各々について、または、前記一心拍以上の血圧波形から分離した前記一心拍分の血圧波形を平均した平均血圧波形について、波形特徴量を算出する波形特徴量算出部と、前記波形特徴量に基づいて、所定の要因の中から前記サージ血圧の要因を識別する要因識別部と、を備える。
【0009】
本発明の第2の態様では、前記要因識別部は、前記所定の要因それぞれに対応する波形特徴量を学習することにより得られた学習結果を用いて、前記サージ血圧の要因を識別する。
【0010】
本発明の第3の態様では、前記波形特徴量は、複数種類の波形特徴量を含み、前記要因識別部は、前記複数種類の波形特徴量と、前記所定の要因それぞれに関する境界であって特徴空間に設定された境界と、に基づいて、前記サージ血圧の要因を識別する。
【0011】
本発明の第4の態様では、前記サージ血圧は、立ち上がり部分および前記立ち上がり部分の後に続く立ち下がり部分を含み、前記血圧波形抽出部は、前記サージ血圧の前記立ち上がり部分から前記一心拍以上の血圧波形を抽出する。
【0012】
本発明の第5の態様では、前記波形特徴量は、ダイアストリックピークの時刻からシストリックピークの時刻までの時間間隔、前記ダイアストリックピークの前記時刻からダイクロティックピークの時刻までの時間間隔、前記シストリックピークの時間幅、全パルス時間、前記シストリックピークの振幅、および前記ダイクロティックピークの振幅の少なくとも1つに基づいている。
【0013】
本発明の第6の態様では、前記波形特徴量は、前記シストリックピークの前記時間幅と前記全パルス時間との比に基づく波形特徴量を含む。
【0014】
本発明の第7の態様では、前記波形特徴量算出部は、前記一心拍以上の血圧波形に対して一次微分または二次微分を含む前処理を行い、前記前処理により得られる波形に基づいて前記ダイアストリックピーク、前記シストリックピーク、および前記ダイクロティックピークを特定する。
【0015】
本発明の第8の態様では、血圧データ処理装置は、前記要因識別部により識別したサージ血圧の要因に関する情報を出力する出力部をさらに備える。
【発明の効果】
【0016】
第1の態様によれば、血圧データからサージ血圧が検出され、サージ血圧から一心拍以上の血圧波形が抽出され、一心拍以上の血圧波形から分離した一心拍分の血圧波形の各々について、または、前記一心拍以上の血圧波形から分離した前記一心拍分の血圧波形を平均した平均血圧波形について、波形特徴量が算出され、波形特徴量に基づいて所定の要因の中から前記サージ血圧の要因が識別される。これにより、PSGのような高価かつ大掛かりなデバイスを用いることなく、血圧データからサージ血圧が発生した要因を識別することが可能になる。
【0017】
第2の態様によれば、サージ血圧の要因を識別するために、前記所定の要因それぞれに対応する波形特徴量を学習することにより得られた学習結果が用いられる。これにより、サージ血圧の要因を識別するために必要なデータを容易に生成することができる。
【0018】
第3の態様によれば、所定の要因それぞれに関する境界が特徴空間上に予め定められる。これにより、少ない処理量でサージ血圧の要因を識別することが可能になる。
【0019】
第4の態様によれば、波形特徴量は、サージ血圧の立ち上がり部分に含まれる一心拍分の血圧波形の各々または平均血圧波形について算出される。これにより、サージ血圧が発生した要因を精度よく識別することが可能になる。
【0020】
第5の態様によれば、ダイアストリックピークの時刻からシストリックピークの時刻までの時間間隔、ダイアストリックピークの時刻からダイクロティックピークの時刻までの時間間隔、シストリックピークの時間幅、全パルス時間、シストリックピークの振幅、およびダイクロティックピークの振幅の少なくとも1つに基づく波形特徴量が用いられる。これにより、サージ血圧が発生した要因を精度よく識別することが可能になる。
【0021】
第6の態様によれば、シストリックピークの時間幅と全パルス時間との比に基づく波形特徴量が用いられる。これにより、サージ血圧が発生した要因を精度よく識別することが可能になる。
【0022】
第7の態様によれば、一心拍以上の血圧波形に対して一次微分または二次微分を含む前処理が行われる。これにより、ダイアストリックピーク、シストリックピーク、およびダイクロティックピークなどの特徴点を特定する処理が容易になる。
【0023】
第8の態様によれば、前記要因識別部により識別したサージ血圧の要因に関する情報が出力される。この情報により、医師は、患者の病状に対する対処法を検討することができるようになる。
【0024】
すなわち、本発明によれば、血圧データからサージ血圧が発生した要因を識別することができる血圧データ処理装置、血圧データ処理方法、およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1の実施形態に係る血圧データ処理装置を示すブロック図。
図2図1に示した血圧測定装置の一例を示すブロック図。
図3図2に示した血圧測定部の外観を示す側面図。
図4図2に示した血圧測定部を示す断面図。
図5図2に示した血圧測定部を示す平面図。
図6】サージ血圧の波形の一例を示す図。
図7図1に示した要因識別部を示すブロック図。
図8】波形特徴量を説明するための図。
図9】要因識別用データを生成する方法例を説明するための図。
図10】第1の実施形態に係る血圧データ処理装置の処理例を示すフローチャート。
図11図1に示した情報出力部によって出力された測定血圧情報を例示する図。
図12図1の血圧データ処理装置のハードウェア構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0027】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る血圧データ処理装置10を概略的に示している。図1に示すように、血圧データ処理装置10は、被測定者(ユーザ)の血圧を測定する血圧測定装置20において得られた血圧データを処理するものである。血圧データ処理装置10は、例えば、パーソナルコンピュータまたはサーバなどのコンピュータ上に実装されることができる。
【0028】
まず、血圧測定装置20について説明する。血圧測定装置20は、被測定者の血圧を連続的に測定して血圧データを生成する。具体的には、血圧測定装置20は、被測定者の動脈の脈波を測定し、測定した脈波を血圧に変換することで、血圧データを生成する。血圧データは、測定した脈波の波形に対応する血圧波形のデータを含む。血圧データは、血圧特徴量(血圧値)の時系列データをさらに含んでもよい。血圧特徴量は、例えば、収縮期血圧(SBP;Systolic Blood Pressure)および拡張期血圧(DBP;Diastolic Blood Pressure)を含むが、これに限定されない。一心拍分の脈波波形における最大値は収縮期血圧に対応し、一心拍分の脈波波形における最小値は拡張期血圧に対応する。
【0029】
第1の実施形態では、血圧測定装置20は、トノメトリ法により脈波としての圧脈波を測定する。ここで、トノメトリ法とは、皮膚の上から動脈を適切な圧力で押圧して動脈に扁平部を形成し、動脈内部と外部とのバランスがとれた状態で圧力センサにより非侵襲的に圧脈波を計測する方法をいう。トノメトリ法によれば、一心拍ごとの血圧値を得ることができる。
【0030】
血圧測定装置20は、被測定者に装着されるウェアラブル装置であってもよく、被測定者の上腕を固定台に載置した状態で血圧測定を行うような据え置き型装置であってもよい。図2から図5を参照して以下に説明する例では、血圧測定装置20は、被測定者の手首に装着されるウェアラブル装置である。
【0031】
図2は、血圧測定装置20の一例を概略的に示している。図2に示す血圧測定装置20は、血圧測定部21、加速度センサ24、記憶部25、入力部26、出力部27、および制御部28を備える。制御部28は、血圧測定装置20の各部を制御する。制御部28の機能は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサがROM(Read-Only Memory)などのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶されている制御プログラムを実行することにより実現されることができる。
【0032】
血圧測定部21は、橈骨動脈の圧脈波を測定する。図3は、血圧測定部21が図示しないベルトによって被測定者の手首Wに装着された状態を示す側面図であり、図4は、血圧測定部21の構造を概略的に示す断面図である。図3および図4に示すように、血圧測定部21は、センサ部22および押圧機構23を備える。センサ部22は、橈骨動脈RAが内部に存在する部位(この例では手首W)に接触するように配置される。押圧機構23は、センサ部22を手首Wに対して押圧する。トノメトリ法では、最適な押圧条件下では圧脈波と血圧が等しくなる。
【0033】
図5は、センサ部22の手首Wと接触する側の面を示している。図5に示すように、センサ部22は、1以上の(この例では2つの)圧力センサアレイ221を備え、圧力センサアレイ221の各々は、方向Bに配列された複数の(例えば46個の)圧力センサ222を有する。方向Bは、血圧測定装置20が被測定者に装着された状態において橈骨動脈の伸びる方向Aと交差する方向である。圧力センサ222の配置は図5に示す例に限定されない。圧力センサ222には、識別情報としてのチャンネル番号が付与されている。
【0034】
各圧力センサ222は、圧力を測定して圧力データを生成する。圧力センサとしては、圧力を電気信号に変換する圧電素子を用いることができる。圧電素子の出力信号は、所定の(例えば125Hzの)サンプリング周波数でデジタル信号に変換され、それにより圧力データが得られる。上述した脈波データに対応する圧脈波データは、圧力センサ222の中から適応的に選択された1つの圧力センサ(アクティブチャンネル)222から出力された圧力データに基づいて生成される。
【0035】
押圧機構23は、例えば、空気袋と空気袋の内圧を調整するポンプとを含む。ポンプが空気袋の内圧を高めるように制御部28によって駆動されると、空気袋の膨張により圧力センサ222が手首Wに押し当てられる。なお、押圧機構23は、空気袋を用いた構造に限定されず、圧力センサ222を手首Wに押し当てる力を調整できるいかなる構造により実現されてもよい。
【0036】
加速度センサ24は、血圧測定装置20に作用する加速度を検出して加速度データを生成する。加速度センサ24としては、例えば、三軸加速度センサを用いることができる。加速度の検出は、血圧測定と並行して実行される。
【0037】
記憶部25は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体を含む。例えば、記憶部25は、ROM、RAM(Random Access Memory)、および補助記憶装置を含む。ROMは、上述した制御プログラムを記憶する。RAMはCPUによってワークメモリとして使用される。補助記憶装置は、血圧測定部21によって生成された血圧データおよび加速度センサ24によって生成された加速度データを含む各種データを記憶する。補助記憶装置は、例えば、フラッシュメモリを含む。補助記憶装置は、血圧測定装置20に内蔵された記憶媒体、メモリーカードなどのリムーバブルメディア、またはこれら両方を含む。
【0038】
入力部26は、被測定者からの指示を受け付ける。入力部26は、例えば、操作ボタン、タッチパネルなどを含む。出力部27は、血圧測定結果などの情報を出力する。出力部27は、例えば、液晶表示装置などの表示装置を含む。
【0039】
上述した構成を有する血圧測定装置20によれば、血圧データおよび加速度データが得られる。例えば、被測定者が睡眠している期間全体(例えば一晩)にわたって測定が行われ、測定で得られた血圧データおよび加速度データが血圧データ処理装置10へ入力される。
【0040】
なお、血圧測定装置20は、トノメトリ法による血圧測定装置に限らず、血圧を連続的に測定できる任意のタイプの血圧測定装置であってもよい。例えば、脈波としての容積脈波を測定する血圧測定装置を用いてもよい。この血圧測定装置は、例えば、光電センサまたは超音波プローブを用いて動脈の容積脈波を測定し、測定した容積脈波に基づいて血圧を推定することができる。また、動脈を伝播する脈波の伝播時間である脈波伝播時間(PTT;Pulse Transit Time)を測定し、測定した脈波伝播時間に基づいて血圧を推定する血圧測定装置を用いてもよい。
【0041】
次に、血圧データ処理装置10について説明する。図1に示すように、血圧データ処理装置10は、血圧データ取得部11、血圧データ記憶部12、前処理部13、サージ血圧検出部14、要因判定部15、情報生成部16、および情報出力部17を備える。
【0042】
血圧データ取得部11は、血圧測定装置20から血圧データを取得し、血圧データ記憶部12に保存する。血圧データは、メモリーカードなどのリムーバブルメディアによって血圧測定装置20から血圧データ処理装置10へ提供されてもよい。あるいは、血圧データは、通信(有線通信または無線通信)によって血圧測定装置20から血圧データ処理装置10へ提供されてもよい。さらに、血圧データ取得部11は、血圧測定装置20に設けられた加速度センサから出力された加速度データなどをさらに取得してもよい。
【0043】
前処理部13は、血圧データ記憶部12から血圧データを受け取り、血圧データに対して前処理を行う。例えば、前処理部13は、血圧データに含まれるまたは血圧データから生成された収縮期血圧の時系列データに対して、平滑化、スパイクノイズ除去、高周波成分除去などの前処理を行う。前処理は、加速度データを用いて被測定者の体動を検出し、体動が検出された時間区間の血圧データを補正する処理を含んでもよい。
【0044】
サージ血圧検出部14は、前処理された血圧データからサージ血圧を検出する。サージ血圧を検出する方法はいかなるものであってもよい。例えば、サージ血圧を検出する処理は、例えば、収縮期血圧または拡張期血圧の時系列データを用いて実行されてもよい。第1の実施形態では、どのような血圧波形をサージ血圧として検出するかについての制限はない。
【0045】
図6は、サージ血圧の一例を示している。図6において、横軸は時間であり、縦軸は血圧である。時刻tから時刻tまでの時間区間(サージ区間と呼ぶ)における血圧波形がサージ血圧に対応する。サージ区間において、血圧が上昇しその後に下降している。サージ血圧は、識別番号、サージ区間において血圧値が最大となる時刻(ピーク時刻と呼ぶ)t、サージ区間の開始時刻t、およびサージ区間の終了時刻tを含む情報で管理されることができる。この情報は、サージ区間における最大血圧値を含んでもよい。
【0046】
要因判定部15は、サージ血圧検出部14によって検出されたサージ血圧が所定の要因のうちのいずれの要因によって発生したかを判定する。一例として、所定の要因は、無呼吸、レム睡眠、および覚醒反応を含む。なお、所定の要因は、その他(具体的には、無呼吸、レム睡眠、および覚醒反応以外の要因)を含んでもよい。要因の数は2以上であればよい。無呼吸、レム睡眠、および覚醒反応は、要因の例であって、これらに限定されない。要因は、無呼吸のように、何らかの疾患に関連する要素から選択されることができる。要因判定部15の処理については後により詳細に説明する。
【0047】
情報生成部16は、測定血圧情報を生成する。情報生成部16は、要因判定部15によりサージ血圧と判定された血圧波形に基づいて、サージ血圧に関連する指標を生成することができる。サージ血圧に関連する指標は、例えば、単位時間当たりにサージ血圧が発生した回数、サージ血圧それぞれの最大血圧値の平均値、およびサージ血圧それぞれの最大血圧値における最大値を含む。これにより、被測定者に発生したサージ血圧に関連する指標を提供することが可能になる。さらに、情報生成部16は、血圧データ記憶部12に記憶されている血圧データに基づいて、平均血圧値など、血圧に関連する様々な指標を生成することができる。
【0048】
情報出力部17は、情報生成部16によって生成された測定血圧情報を出力する。例えば、情報出力部17は測定血圧情報を含む画像データを生成し、画像データに応じた画像が表示装置に表示される。
【0049】
要因判定部15について詳細に説明する。
図7は、要因判定部15の構成例を概略的に示している。図7に示すように、要因判定部15は、対象区間設定部151、血圧波形抽出部152、波形特徴量算出部153、要因識別部154、要因識別用データ生成部155、およびサージ血圧波形記憶部156を備える。
【0050】
対象区間設定部151は、サージ血圧から一心拍以上の血圧波形を抽出するための対象区間を設定する。例えば、サージ血圧の立ち上がり期間が対象区間として設定される。サージ血圧の立ち上がり期間は、開始時刻tからピーク時刻tまでの時間区間を指す。立ち上がり期間の一部が対象区間として設定されてもよい。また、立ち下がり期間の一部または全部が対象区間として設定されてもよい。立ち下がり期間は、ピーク時刻tから終了時刻tまでの時間区間を指す。本発明者らは、サージ血圧の立ち上がり期間を対象区間として使用することで、サージ血圧がいずれの要因で発生したかの判定を精度よく行うことができることを確認した。したがって、好適には、サージ血圧の立ち上がり期間の一部または全部が対象区間として設定される。
【0051】
血圧波形抽出部152は、対象区間におけるサージ血圧から一心拍以上の血圧波形を抽出する。サージ血圧の立ち上がり期間は典型的には5~25秒程度であり、したがって、複数心拍にわたる血圧波形が抽出される。なお、サージ血圧の立ち上がり期間の一部が対象区間として使用される場合のように対象区間が短い場合、二心拍分に満たない血圧波形が抽出されることもある。
【0052】
波形特徴量算出部153は、血圧波形抽出部152によって抽出された一心拍以上の血圧波形から波形特徴量を抽出する。例えば、波形特徴量算出部153は、血圧波形抽出部152によって抽出された一心拍以上の血圧波形から1つ以上の一心拍分の血圧波形を分離または抽出し、分離した一心拍分の血圧波形の各々について波形特徴量を算出する。また、波形特徴量算出部153は、分離または抽出した一心拍分の血圧波形を平均した平均血圧波形を生成し、平均血圧波形について波形特徴量を算出してもよい。波形特徴量は、一心拍分の血圧波形の形状に基づいて算出される。波形特徴量は、1種類または複数種類の波形特徴量を含む。第1の実施形態では、複数種類の波形特徴量が使用される。波形特徴量は、特徴ベクトルで表すことができる。
【0053】
図8を参照して波形特徴量について説明する。図8は、一心拍分の血圧波形を例示している。図8において、T0は、一心拍分の血圧波形において血圧値(例えば圧脈波の値)が最小になる点である。点T0をダイアストリックピーク(diastolic peak)またはダイアストリックオンセット(diastolic onset)と呼ぶ。T1は、一心拍分の血圧波形において血圧値が最大になる点である。点T1をシストリックピーク(systolic peak)と呼ぶ。T2は、点T1の後に現れる変曲点である。点T2をダイクロティックノッチ(dicrotic notch)と呼ぶ。T3は、点T2の後に現れる変曲点、すなわち、最大点T1より後に現れる血圧値が極大になる点である。点T3をダイクロティックピーク(dicrotic peak)と呼ぶ。T4は、血圧値が最小になる点であって、次の一心拍分の血圧波形の始点となる点である。AP1は、シストリックピークの振幅、すなわち、最大値から最小値を引いた差分値を表す。AP2は、ダイクロティックピークの振幅、すなわち、2番目の極大値から最小値を引いた差分値を表す。TP1は、シストリックピークまでの時間、すなわち、最小値の時刻から最大値の時刻までの時間を表す。TP2は、ダイクロティックピークまでの時間、すなわち、最小値の時刻から2番目の極大値の時刻までの時間を表す。TPTは、全パルス時間、すなわち、一心拍分の血圧波形の時間長を表す。IWTは、シストリックピークの時間幅を表す。例えば、IWTは、シストリックピークの高さ(AP1)の3分の2の値をとる波間時間である。波形特徴量は、これらのパラメータAP1、AP2、TP1、TP2、TPT、IWTのうちの少なくとも1つに基づくことができる。例えば、TP1、IWT/TPT、TP1/TPT、TP2/TPT、(TP2-TP1)/TPT、AP2/AP1などに基づく波形特徴量を用いることができる。一例では、IWT/TPTとAP2/AP1の2種類の波形特徴量が用いられる。例えば、IWT/TPTの波形特徴量は、サージ血圧が無呼吸か無呼吸以外の要因かを識別するのに有用である。なお、波形特徴量は、上述したパラメータとは異なるパラメータに基づいていてもよい。
【0054】
波形特徴量算出部153は、点T0、T1、T2、T3、T4などの特徴点を特定するために、血圧波形に対して一次微分および/または二次微分を含む前処理を行ってもよい。血圧波形の一次微分および/または二次微分を用いることにより、特徴点を特定する処理が容易になる。
【0055】
また、波形特徴量算出部153は、サージ血圧を含む期間の血圧波形から、心電図におけるR波間の間隔である瞬時心拍(RRI;R-R interval)を算出し、RRIを周波数スペクトル解析し、低周波成分LFおよび高周波数成分HFを算出し、低周波成分LFと高周波数成分HFの比を特徴量として算出してもよい。例えば、波形特徴量算出部153は、RRIについてパワースペクトル密度を算出し、自己回帰モデルを用いてパワースペクトル密度を計算し、0.05Hzから0.15Hzまでの周波数領域にわたるパワーの積分値をLFとして算出し、0.15Hzから0.40Hzまでの周波数領域にわたるパワーの積分値をHFとして算出することができる。比LF/HFは自律神経のバランスを表すことが知られている。このため、比LF/HFを特徴量として用いることにより、サージ血圧がレム睡眠に由来するものか否かを判定することが可能となる。
【0056】
要因識別部154は、波形特徴量算出部153によって算出された波形特徴量に基づいて、所定の要因の中からサージ血圧の要因を識別する。要因識別部154は、識別を行うために、要因識別用データ生成部155によって生成された要因識別用データを使用する。要因識別部154についての具体的な説明を行う前に、要因識別用データについて説明する。
【0057】
サージ血圧波形記憶部156は、典型的なサージ血圧波形のデータを格納している。ここでいうサージ血圧波形は、図8に示すような一心拍分の血圧波形を指す。典型的なサージ血圧波形は、医師や研究者などの専門家が任意の被測定者について得られた血圧データを解析することで得ることができる。睡眠中にサージ血圧が発生する要因としては、主として、無呼吸、レム睡眠、および覚醒反応が考えられる。図9に示す例では、無呼吸、REM、および覚醒反応の3つの要因(クラス)でラベル付けされた、典型的なサージ血圧波形の3つのデータセットが用意される。このようなデータセットは、PSGによって睡眠状態と血圧を計測することにより用意することができる。サージ血圧は複合的な要因により発生することもある。例えば、無呼吸とREM睡眠とによりサージ血圧が発生することもある。また、無呼吸とREM睡眠と覚醒反応とによりサージ血圧が発生することもある。なお、要因を特定できないサージ血圧もある。
【0058】
要因識別用データ生成部155は、サージ血圧波形記憶部156に格納されているサージ血圧波形データに基づいて、要因識別部154が識別を行うために使用するデータ(要因識別用データ)を生成する。要因識別用データ生成部155は、サージ血圧波形記憶部156に格納されているサージ血圧波形データを学習することで要因識別用データを生成することができる。
【0059】
一例では、要因識別用データ生成部155は、3つのクラスの各々に関して、次のようにして特徴空間上に境界を定める。要因識別用データ生成部155は、各クラスに属するサージ血圧波形から波形特徴量を算出する。波形特徴量の算出は、波形特徴量算出部153に関して説明したものと同様の方法で行われることができる。要因識別用データ生成部155は、算出した波形特徴量に基づいて、クラスを識別するための境界線または面を特徴空間上に定める。要因識別用データ生成部155は、2σ法または3σ法のようにデータの約95.4%または約99.7%が含まれる境界線または境界面を特徴空間上に定める。境界は、例えば、マハラノビス距離、1クラスサポートベクターマシン(SVM;Support Vector Machine)などを用いて決定することができる。2種類の波形特徴量を用いる場合、図9に示すように、3つのクラスそれぞれの境界線が定められる。境界の各々は、他の境界と部分的に重なり得る。要因識別用データは、3つのクラスそれぞれに関する特徴空間上の境界を示すデータを含む。
【0060】
要因識別部154は、波形特徴量算出部153によって算出された波形特徴量と特徴空間上に設定された境界とに基づいて、サージ血圧が所定の要因のいずれの要因によって発生したかを識別する。具体的には、要因識別部154は、波形特徴量を要素として含む特徴ベクトルがどのクラスの境界の内側にあるかに基づいて、サージ血圧がいずれの要因によって発生したかを識別する。血圧波形抽出部152によって複数の一心拍分の血圧波形が抽出されている場合、要因識別部154は、例えば、多数決で識別を行うことができる。具体的には、要因識別部154は、特徴空間上の境界の内側に位置する特徴ベクトルの数が最も多いクラスに対応する要因をサージ血圧の要因として決定する。
【0061】
前述したように、境界は他の境界と重なることがある。このため、特徴ベクトルが2以上のクラスの境界の内側にあることもある。この場合、要因識別部154は、これらのクラスに対応する要因をサージ血圧の要素として決定してもよい。
【0062】
他の例では、要因識別部154は、特徴ベクトルと各クラスの重心(中心)との間のマハラノビス距離を算出し、算出したマハラノビス距離に基づいて識別を行ってもよい。要因識別部154は、特徴ベクトルとのマハラノビス距離が最も小さいクラスに対応する要因をサージ血圧の要素として決定してもよい。この場合、要因識別用データは、各クラスについて、特徴空間上の重心位置および共分散行列の逆行列を含む。
【0063】
さらに他の例では、要因識別部154は、サポートベクターマシンを用いて識別を行ってもよい。この場合、要因識別用データ生成部155は、サージ血圧波形記憶部156に格納されているサージ血圧波形データに基づいてサポートベクターマシンを生成する。
【0064】
次に、血圧データ処理装置10の動作について説明する。
図10は、第1の実施形態に係るサージ血圧が発生した要因を識別する手順例を示している。図10のステップS101において、血圧データが血圧データ記憶部12から読み出される。ステップS102において、サージ血圧検出部14は、血圧データからサージ血圧を検出する。ここでは、説明を簡単にするために、1つのサージ血圧が検出されたとする。複数のサージ血圧が検出された場合には、各々について次に説明する処理が実行される。
【0065】
ステップS103において、要因判定部15は、サージ血圧に対して対象区間を設定する。ステップS104において、要因判定部15は、対象区間のサージ血圧の波形から一心拍以上の血圧波形を抽出する。ステップS105において、要因判定部15は、抽出した一心拍以上の血圧波形から波形特徴量を算出する。一例として、要因判定部15は、一心拍以上の血圧波形から分離した一心拍分の血圧波形の各々について波形特徴量を算出する。他の例では、要因判定部15は、一心拍以上の血圧波形から分離した一心拍分の血圧波形を平均した平均血圧波形について波形特徴量を算出してもよい。ステップS116において、要因判定部15は、算出した波形特徴量に基づいて、抽出した一心拍分の血圧波形がいずれのクラスに属するかを識別する。例えば、要因判定部15は、算出した波形特徴量を要素として含む特徴ベクトルが特徴空間上に設定されたあるクラスの境界の内側にある場合に、抽出した一心拍分の血圧波形がそのクラスに属すると判定する。要因判定部15は、抽出した一心拍分の血圧波形が属すると判定したクラスに対応する要因のスコアに1ポイント加算する。
【0066】
ステップS103において抽出された対象区間の血圧波形に複数の一心拍分の血圧波形が含まれる場合、ステップS104~S106の処理は、一心拍分の血圧波形それぞれに対して行われる。
【0067】
ステップS107において、要因判定部15は、繰り返し実行された識別(ステップS106)の結果に基づいて、サージ血圧が所定の要因のいずれの要因によって発生したかを判定する。具体的には、要因判定部15は、スコアが最も高い要因をサージ血圧の要因として決定する。
【0068】
図11は、情報出力部17によって表示される血圧波形の一例を示している。図11に示す例では、サージ血圧が四角の枠で囲まれ、枠内に、要因判定部15の要因識別部154により識別されたサージ血圧の要因に関する情報が付されている。サージ血圧とともにその要因を示すことにより、医師が血圧データを病気の診断または治療に利用することが容易になる。
【0069】
以上のように、第1の実施形態に係る血圧データ処理装置10は、血圧データを取得し、血圧データからサージ血圧を検出し、サージ血圧から一心拍以上の血圧波形を抽出し、一心拍以上の血圧波形から分離した一心拍分の血圧波形の各々について、または、前記一心拍以上の血圧波形から分離した前記一心拍分の血圧波形を平均した平均血圧波形について、波形特徴量を算出し、波形特徴量に基づいて、所定の要因の中から前記サージ血圧の要因を識別する。これにより、PSGのような高価かつ大掛かりなデバイスを用いることなく、血圧データからサージ血圧が発生した要因を識別することが可能である。その結果、無呼吸などの特定の要因によって発生したサージ血圧に関連する情報を提供することができる。サージ血圧の発生要因を明確にすることで、患者の治療すべき箇所を明確にすることができる。
【0070】
図12を参照して血圧データ処理装置10のハードウェア構成例について説明する。
血圧データ処理装置10は、CPU31、ROM32、RAM33、補助記憶装置34、入力装置35、出力装置36、および送受信器37を備え、これらがバスシステム38を介して互いに接続されている。血圧データ処理装置10の上述した機能は、CPU31がコンピュータ読み取り可能な記憶媒体(ROM32および/または補助記憶装置34)に記憶されたプログラムを読み出し実行することにより実現されることができる。RAM33は、CPU31によってワークメモリとして使用される。補助記憶装置34は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)またはソリッドステートドライブ(SDD)を含む。補助記憶装置34は、血圧データ記憶部12(図1)およびサージ血圧波形記憶部156(図7)として使用される。入力装置は、例えば、キーボード、マウス、およびマイクロフォンを含む。出力装置は、例えば、液晶表示装置などの表示装置およびスピーカを含む。送受信器37は、他のコンピュータとの間で信号の送受信を行う。例えば、送受信器37は、血圧測定装置20から血圧データを受信する。
【0071】
[その他の実施形態]
上述した実施形態では、要因識別用データ生成部155およびサージ血圧波形記憶部156は血圧データ処理装置10の要因判定部15に設けられている。他の実施形態では、要因識別用データ生成部155およびサージ血圧波形記憶部156は血圧データ処理装置10と異なる装置に設けられていてもよい。言い換えると、外部装置において要因識別用データが生成されて、要因識別用データが血圧データ処理装置10に与えられもよい。
【0072】
また、上述した実施形態では、血圧データ処理装置10は血圧測定装置20とは別に設けられている。他の実施形態では、血圧データ処理装置10の機能の一部または全部が血圧測定装置20に設けられていてもよい。
【0073】
要するに本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0074】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られるものではない。
【0075】
(付記1)
ハードウェアプロセッサと、
前記ハードウェアプロセッサに結合されたメモリと、
を備え、
前記ハードウェアプロセッサは、
血圧データを取得し、
前記血圧データからサージ血圧を検出することと、
前記サージ血圧から一心拍以上の血圧波形を抽出し、
前記一心拍以上の血圧波形から波形特徴量を算出し、
前記波形特徴量に基づいて、所定の要因の中から前記サージ血圧の要因を識別し、
ように構成された、血圧データ処理装置。
【0076】
(付記2)
少なくとも1つのハードウェアプロセッサを用いて、血圧データを取得することと、
少なくとも1つのハードウェアプロセッサを用いて、前記血圧データからサージ血圧を検出することと、
少なくとも1つのハードウェアプロセッサを用いて、前記サージ血圧から一心拍以上の血圧波形を抽出することと、
少なくとも1つのハードウェアプロセッサを用いて、前記一心拍以上の血圧波形から分離した一心拍分の血圧波形の各々について、または、前記一心拍以上の血圧波形から分離した前記一心拍分の血圧波形を平均した平均血圧波形について、波形特徴量を算出することと、
少なくとも1つのハードウェアプロセッサを用いて、前記波形特徴量に基づいて、所定の要因の中から前記サージ血圧の要因を識別することと、
を備える血圧データ処理方法。
【符号の説明】
【0077】
10…血圧データ処理装置、11…血圧データ取得部、12…血圧データ記憶部、13…前処理部、14…サージ血圧検出部、15…要因判定部、16…情報生成部、17…情報出力部、20…血圧測定装置、21…血圧測定部、22…センサ部、23…押圧機構、24…加速度センサ、25…記憶部、26…入力部、27…出力部、28…制御部、31…CPU、32…ROM、33…RAM、34…補助記憶装置、35…入力装置、36…出力装置、37…送受信器、38…バスシステム、151…対象区間設定部、152…血圧波形抽出部、153…波形特徴量算出部、154…要因識別部、155…要因識別用データ生成部、156…サージ血圧波形記憶部、221…圧力センサアレイ、222…圧力センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12