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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】便器装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/10 20060101AFI20220208BHJP
   E03D 11/02 20060101ALI20220208BHJP
   A47K 11/04 20060101ALN20220208BHJP
【FI】
E03D9/10
E03D11/02 Z
A47K11/04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2017186321
(22)【出願日】2017-09-27
(65)【公開番号】P2019060160
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100159846
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 尚
(72)【発明者】
【氏名】藤野 翔太
(72)【発明者】
【氏名】戸崎 正道
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 元太
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-275885(JP,A)
【文献】特開2015-151694(JP,A)
【文献】特開2015-132069(JP,A)
【文献】特開2001-271406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/00- 9/16
E03D 11/00-13/00
A47K 11/00-11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚物を粉砕して排出する便器装置であって、
貯留された溜水の溜水面が形成され且つ汚物を受ける汚物受け面を備えるボウル部と、 上記ボウル部の下部に設けられ且つ上記ボウル部内で汚物を粉砕する粉砕装置と、
上記ボウル部と連通する排出路と、
上記ボウル部内の洗浄水を下流側に排出させる排出装置と、
上記粉砕装置及び上記排出装置を制御する制御部と、を備え、
上記制御部は、
上記排出装置を駆動して上記ボウル部内の溜水面を低下させる水位低下モードと、
上記ボウル部内で汚物を粉砕する汚物粉砕モードとを実行可能に構成され、
上記制御部は、上記水位低下モードの実行後に上記汚物粉砕モードを実行することを特徴とする、便器装置。
【請求項2】
上記ボウル部の上記汚物受け面は、すり鉢状に形成される、請求項1に記載の便器装置。
【請求項3】
上記ボウル部には、上記汚物受け面の下部から縦方向に延びる筒状部分が形成され、
上記制御部は、上記水位低下モードの実行により、上記ボウル部内の溜水面を上記筒状部分まで低下させる、請求項1又は2に記載の便器装置。
【請求項4】
さらに、上記ボウル部に洗浄水を供給する給水装置を備え、
上記制御部は、さらに、上記給水装置により供給された洗浄水により上記ボウル部を洗浄する洗浄モードを実行可能に構成され、
上記制御部は、上記洗浄モードの実行後に上記水位低下モードを実行する、請求項1乃至3の何れか1項に記載の便器装置。
【請求項5】
上記制御部は、さらに、上記排出装置を駆動して上記ボウル部内の洗浄水を下流側に排出させる排出モードを実行可能に構成され、
上記制御部は、上記汚物粉砕モードの実行後に上記排出モードを実行させ、
上記水位低下モードにおいて上記排出装置により排出される単位時間当たりの流量は、上記排出モードにおいて上記排出装置により排出される単位時間当たりの流量よりも小さい、請求項1乃至4の何れか1項に記載の便器装置。
【請求項6】
上記粉砕装置は、自身の一部の回転により上記ボウル部内に旋回流を形成させるものであり、
上記制御部は、上記水位低下モードの実行中に上記粉砕装置も駆動させる、請求項1乃至5の何れか一項に記載の便器装置。
【請求項7】
上記粉砕装置は、自身の一部の回転により上記ボウル部内に旋回流を形成させるものであり、
上記制御部は、さらに、上記粉砕装置を駆動して上記ボウル部内に旋回流を形成させる吸込旋回流形成モードを実行可能に構成され、
上記制御部は、上記吸込旋回流形成モードの実行後に上記水位低下モードを実行する、請求項1乃至6の何れか一項に記載の便器装置。
【請求項8】
上記排出装置は、排出ポンプである、請求項1乃至7の何れか一項に記載の便器装置。
【請求項9】
さらに、上記ボウル部内の水位を検知する水位検知装置を備え、
上記制御部は、上記水位低下モードの開始以後、上記水位検知装置が所定の水位までのボウル部内の水位の低下を検知した場合に、上記水位低下モードの実行を終了させる、請求項1乃至8の何れか一項に記載の便器装置。
【請求項10】
さらに、上記排出路の下流側に接続される可撓性管路を備え、
上記便器装置が移動可能に形成されている、請求項1乃至9の何れか一項に記載の便器装置。
【請求項11】
さらに、上記排出路に上記排出路の外部から空気を取り入れる通気弁を備え、
上記排出路は、排水トラップを形成するように立ち上がる上昇部と、上記排水トラップの上記上昇部と接続する頂部と、上記頂部から下降する下降部と、を備え、
上記通気弁は、
上記排出路側が大気圧以上の圧力である場合に閉弁状態となり、
上記排出路側が上記大気圧より低く開弁圧力より高い第1負圧領域圧力である場合に閉弁状態となり、且つ
上記排出路側が上記開弁圧力以下の第2負圧領域圧力である場合に開弁状態となるように形成され、
上記通気弁と上記排出路との連結部が、上記ボウル部内における上記汚物粉砕モードの開始時の水位高さに上記通気弁の開弁圧力水頭を加えた高さ以上の高さに設けられている、請求項1乃至10の何れか一項に記載の便器装置。
【請求項12】
上記水位低下モードにおいて上記排出装置の駆動を停止したときの上記ボウル部内の水位の高さが、上記汚物粉砕モードの開始時の水位の高さより低い、請求項11に記載の便器装置。
【請求項13】
上記水位低下モードにおいて上記排出装置の駆動を停止したときの上記ボウル部内の水位の高さから上記汚物粉砕モードの開始時の水位の高さまでのボウル部内の容積が、
上記連結部の高さから、上記汚物粉砕モードの開始時の水位の高さに上記通気弁の開弁圧力水頭を加えた高さまでの上記排出路内の容積と等しい、請求項12に記載の便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器装置に係り、特に、汚物を粉砕して排出する便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、介護用のトイレ装置として、便器本体内の底部に撹拌機構を設けたものが知られている。このようなトイレ装置は、撹拌機構が便器本体内の底部で回転して、汚物と排出用水を撹拌し、汚物及び排出用水の全体を均一な流動状態としてから排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-8442号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような特許文献1のようなトイレ装置において、乾燥した状態のボウル面への汚物付着を減らし、ボウル面に汚物が付着したまま残ってしまうことを防ぐため、溜水面の高さをなるべく上昇させ、溜水面を大きく形成したいという要望がある。
しかしながら、特許文献1のようなトイレ装置においては、ボウル面内の溜水面を大きく形成するためには、溜水面の水位を上昇させる必要がある。溜水面の水位が上昇した状態で、汚物を撹拌するために汚物および排出用水を攪拌機構により攪拌させると、撹拌中に汚物が便器本体の外に飛び散ってしまうという懸念がある。
さらに、溜水面の水位が上昇し、ボウル面内の溜水面を大きく形成した状態で、汚物を撹拌する場合、上面視において比較的広い領域で汚物を粉砕している様子が見えることにより、使用者に不快感や嫌悪感を与えてしまう恐れもある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、ボウル部内の汚物付着を抑制することができると共に、粉砕中の汚物の溜水面からボウル部外への飛び跳ねを抑制することができる便器装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明は、汚物を粉砕して排出する便器装置であって、貯留された溜水の溜水面が形成され且つ汚物を受ける汚物受け面を備えるボウル部と、上記ボウル部の下部に設けられ且つ上記ボウル部内で汚物を粉砕する粉砕装置と、上記ボウル部と連通する排出路と、上記ボウル部内の洗浄水を下流側に排出させる排出装置と、上記粉砕装置及び上記排出装置を制御する制御部と、を備え、上記制御部は、上記排出装置を駆動して上記ボウル部内の溜水面を低下させる水位低下モードと、上記ボウル部内で汚物を粉砕する汚物粉砕モードとを実行可能に構成され、上記制御部は、上記水位低下モードの実行後に上記汚物粉砕モードを実行する。
このように構成された本発明においては、水位低下モードの実行によりボウル部内の溜水面を低下させた後に、汚物粉砕モードの実行によりボウル内で汚物が粉砕される。これにより、使用者による排泄時にはボウル部内の溜水面を高く且つ広くして、ボウル部内の溜水面以外の乾燥している部分への汚物付着を抑制することができると共に、汚物粉砕時にはボウル部内の溜水面を低下させて、粉砕中の汚物の溜水面からボウル部外への飛び跳ねを抑制することができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、上記ボウル部の上記汚物受け面は、すり鉢状に形成される。
このように構成された本発明においては、ボウル部がすり鉢状に形成されることにより、水位低下モードの実行によりボウル部内の溜水面が低下すると共に上面視における溜水面の面積が減少される。よって、本発明によれば、粉砕中の汚物の溜水面からボウル部外への飛び跳ねをより抑制することができると共に、粉砕中の汚物が見える溜水面の面積を減少させることにより使用者への嫌悪感を与える可能性を抑制することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記ボウル部には、上記汚物受け面の下部から縦方向に延びる筒状部分が形成され、上記制御部は、上記水位低下モードの実行により、上記ボウル部内の溜水面を上記筒状部分まで低下させる。
このように構成された本発明においては、制御部は、水位低下モードの実行により、ボウル部内の溜水面を筒状部分まで低下させる。これにより、上面視における流路径がほぼ変わらない筒状部分に溜水面が位置する状態で、溜水中で汚物の粉砕を行うことができる。よって、本発明によれば、汚物の粉砕により溜水面が揺動したとしても上面視において溜水面の半径方向の変動が少なくでき、粉砕中の汚物を含む溜水面が広がって見えることにより使用者へ嫌悪感を与える可能性を抑制することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、さらに、上記ボウル部に洗浄水を供給する給水装置を備え、上記制御部は、さらに、上記給水装置により供給された洗浄水により上記ボウル部を洗浄する洗浄モードを実行可能に構成され、上記制御部は、上記洗浄モードの実行後に上記水位低下モードを実行する。
このように構成された本発明においては、洗浄モードの実行によりボウル部を洗浄し、ボウル部内に付着した汚物を下方に流下させた後、水位低下モードの実行によりボウル部内の溜水面を低下させる。これにより、ボウル部内に付着した汚物を水位低下モードの実行により低下された溜水に効率よく集めることができ、ボウル部内の汚物を効率よく粉砕することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記制御部は、さらに、上記排出装置を駆動して上記ボウル部内の洗浄水を下流側に排出させる排出モードを実行可能に構成され、上記制御部は、上記汚物粉砕モードの実行後に上記排出モードを実行させ、上記水位低下モードにおいて上記排出装置により排出される単位時間当たりの流量は、上記排出モードにおいて上記排出装置により排出される単位時間当たりの流量よりも小さい。
このように構成された本発明においては、水位低下モードにおいて排出装置により排出される単位時間当たりの流量が、排出モードにおいて排出装置により排出される単位時間当たりの流量よりも小さい。これにより、水位低下モードにおいて、汚物粉砕後に行われる排出モードにおける排水能力より低い排水能力でボウル部内から洗浄水が排出される。よって、本発明によれば、ボウル部内の未粉砕の汚物が、水位低下モードにおいて排出路に侵入し、排出装置を詰まらせる可能性を抑制することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記粉砕装置は、自身の一部の回転により上記ボウル部内に旋回流を形成させるものであり、上記制御部は、上記水位低下モードの実行中に上記粉砕装置も駆動させる。
このように構成された本発明においては、制御部が水位低下モードの実行中に粉砕装置を駆動させることにより、水位低下モードの実行中に、ボウル部内の溜水面の水位が徐々に低下するとき、溜水に旋回流が形成され、溜水中の汚物を旋回流の流れにのせるような状態としながら下方に導き、汚物をボウル部に沿って残り難くすることができる。よって、水位低下モードの実行終了後に、ボウル部に汚物が残されることを抑制し、ボウル部内の洗浄性能を向上させると共により効率的にボウル部内の汚物を粉砕することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、上記粉砕装置は、自身の一部の回転により上記ボウル部内に旋回流を形成させるものであり、上記制御部は、さらに、上記粉砕装置を駆動して上記ボウル部内に旋回流を形成させる吸込旋回流形成モードを実行可能に構成され、上記制御部は、上記吸込旋回流形成モードの実行後に上記水位低下モードを実行する。
このように構成された本発明においては、制御部は、吸込旋回流形成モードの実行後に水位低下モードを実行する。これにより、ボウル部内に吸込旋回流が形成され、ボウル部に沿っている汚物をボウル部からある程度剥離させた状態で水位低下モードの実行を開始することができる。よって、本発明によれば、水位低下モードの実行終了後に、ボウル部内で低下する水面より上方に汚物が残されることを抑制し、より効率的にボウル部内の汚物を粉砕することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、上記排出装置は、排出ポンプである。
このように構成された本発明においては、汚物を排出ポンプによって加圧して排出することができるため、汚物及び洗浄水が流れる排出路等の配管の径を細くすることができ、便器装置を配置しやすくすることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、さらに、上記ボウル部内の水位を検知する水位検知装置を備え、上記制御部は、上記水位低下モードの開始以後、上記水位検知装置が所定の水位までのボウル部内の水位の低下を検知した場合に、上記水位低下モードの実行を終了させる
このように構成された本発明においては、制御部は、水位低下モードの開始以後、水位検知装置が所定の水位までのボウル部内の水位の低下を検知した場合に、上記水位低下モードの実行を終了させる。よって、本発明によれば、水位検知装置によりボウル部内の水位を所定の水位まで確実に低下させることができ、汚物粉砕時に粉砕中の汚物の溜水面からボウル部外への飛び跳ねをより抑制することができる。よって、排泄時の汚物付着の抑制及び汚物粉砕時のボウル部外への飛び跳ねの抑制の両立をより確実に行うことができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、さらに、上記排出路の下流側に接続される可撓性管路を備え、上記便器装置が移動可能に形成されている。
このように構成された本発明においては、便器装置が移動可能に形成されている場合、便器装置の設置状況によっては排出路の下流側に接続される可撓性管路に逆勾配(可撓性管路よりも下流側の建物配管の方が高い状況)が生じてしまう恐れがある。可撓性管路で逆勾配が生じた場合、圧損要因となる。また、可撓性管路における配管長さの増大、又は配管曲がり等も、圧損要因となる。このような圧損要因により、小便などで溜水が増加していた増加分を可撓性管路から建物配管側に排出できない恐れがあり、建物配管側に排出できなかった水がボウル部まで戻って溜水面が高くなってしまう恐れがある。そこで、本発明によれば、移動可能な便器装置においても、制御部が水位低下モードを備えていることにより、汚物粉砕時にはボウル部内の溜水面を低下させて、粉砕中の汚物の溜水面からボウル部外への飛び跳ねを抑制することができる。さらに、本発明によれば、使用者による排泄時にはボウル部内の溜水面を高く且つ広くして、ボウル部内の溜水面以外の乾燥している部分への汚物付着を抑制することができると共に、汚物粉砕時にはボウル部内の溜水面を低下させて、粉砕中の汚物の溜水面からボウル部外への飛び跳ねを抑制することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、さらに、上記排出路に上記排出路の外部から空気を取り入れる通気弁を備え、上記排出路は、排水トラップを形成するように立ち上がる上昇部と、上記排水トラップの上記上昇部と接続する頂部と、上記頂部から下降する下降部と、を備え、上記通気弁は、上記排出路側が大気圧以上の圧力である場合に閉弁状態となり、上記排出路側が上記大気圧より低く開弁圧力より高い第1負圧領域圧力である場合に閉弁状態となり、且つ上記排出路側が上記開弁圧力以下の第2負圧領域圧力である場合に開弁状態となるように形成され、上記通気弁と上記排出路との連結部が、上記ボウル部内における上記汚物粉砕モードの開始時の水位高さに上記通気弁の開弁圧力水頭を加えた高さ以上の高さに設けられている。
このように構成された本発明においては、通気弁は、排出路側が大気圧より低く開弁圧力より高い第1負圧領域圧力である場合に閉弁状態となり、且つ排出路側が開弁圧力以下の第2負圧領域圧力である場合に開弁状態となる。すなわち、通気弁が閉弁される圧力は大気圧よりも低くなっている。したがって、通気弁が排出路に空気を取り入れた後に通気弁が閉弁してボウル部内の洗浄水の圧力と排出路内の洗浄水の圧力とが釣り合った状態では、ボウル部内の水位よりも排出路内の水位の方が通気弁の開弁圧力水頭だけ高くなる。ここで、ボウル部内の水位を所定の汚物粉砕モードの開始時の水位に設定しようとするならば、通気弁と上記排出路との連結部が、排出路内の水位より高い位置に設けられる必要がある。そこで、本発明によれば、通気弁と排出路との連結部が、ボウル部内における汚物粉砕モードの開始時の水位高さに通気弁の開弁圧力水頭を加えた高さ以上の高さに設けられている。これにより、ボウル部内における汚物粉砕モードの開始時の水位を設定できる。よって、本発明によれば、ボウル部内における汚物粉砕モードの開始時の水位を設定でき、確実にボウル部内の汚物を粉砕できる。
【0017】
本発明において、好ましくは、上記水位低下モードにおいて上記排出装置の駆動を停止したときの上記ボウル部内の水位の高さが、上記汚物粉砕モードの開始時の水位の高さより低い。
このように構成された本発明においては、水位低下モードの実行が終了し且つサイホン現象が終了したときの排出路内の水位は、ボウル部内の水位より高くなる。しかしながら、この状態は排出路内の圧力とボウル部に作用する圧力との間に圧力差があり不安定な状態となっているため、排出路内の圧力とボウル部に作用する大気圧とが釣り合うまで、徐々に排出路内の水位は下がる一方で、ボウル部内の水位が上昇する。このように、汚物粉砕モードの開始時の水位は、水位低下モードの実行が終了したときの水位より高くなる。そこで本発明によれば、水位低下モードにおいて排出装置の駆動を停止したときのボウル部内の水位の高さが、汚物粉砕モードの開始時の水位高さより低い。これにより、水位低下モードの終了時の水位高さから汚物粉砕モード開始時の水位高さまで囲まれるボウル部内の空間に、水位低下モードの終了時の排出路内の水を流入させることができる。よって、本発明によれば、水位低下モードの終了時の水位高さを汚物粉砕モードの開始時の水位高さに設定する場合と比べて、汚物粉砕モードの開始時のボウル部内の水位の高さを低くすることができ、粉砕中の汚物の溜水面からボウル部外への飛び跳ねをより抑制することができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、上記水位低下モードにおいて上記排出装置の駆動を停止したときの上記ボウル部内の水位の高さから上記汚物粉砕モードの開始時の水位の高さまでのボウル部内の容積が、上記連結部の高さから、上記汚物粉砕モードの開始時の水位の高さに上記通気弁の開弁圧力水頭を加えた高さまでの上記排出路内の容積と等しい。
このように構成された本発明においては、水位低下モードにおいて排出装置の駆動を停止したときのボウル部内の水位の高さから汚物粉砕モードの開始時の水位の高さまでのボウル部内の容積が、連結部の高さから、汚物粉砕モードの開始時の水位の高さに通気弁の開弁圧力水頭を加えた高さまでの排出路内の容積と等しい。よって、本発明によれば、汚物粉砕モードの開始時のボウル部内の水位の高さを設定することができ、汚物粉砕モードにおいて確実に汚物を粉砕することができる。また、本発明によれば、通気弁と排出路との連結部の位置の自由度を増すことができるため、便器装置のデザインの自由度を生み出すことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の便器装置によれば、ボウル部内の汚物付着を抑制することができると共に、粉砕中の汚物の溜水面からボウル部外への飛び跳ねを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態によるポータブルトイレ装置を後方斜め上方から見た全体斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態によるポータブルトイレ装置を示す断面図である。
図3】本発明の第1実施形態によるポータブルトイレ装置の通気弁の閉弁状態を示す断面図である。
図4】本発明の第1実施形態によるポータブルトイレ装置の通気弁の開弁状態を示す断面図である。
図5】本発明の第1実施形態によるポータブルトイレ装置の通気弁につき、排水トラップ管路側の第1室の圧力と、通気弁の閉弁状態又は開弁状態の対応を示す図である。
図6】本発明の第1実施形態によるポータブルトイレ装置の給水部、回転体、排出ポンプの動作、及びボウル部内の水位の変化を示すタイムチャートである。
図7図2に示すポータブルトイレ装置において、ボウル部の洗浄モードが実行される状態を示す図である。
図8図2に示すポータブルトイレ装置において、ボウル部内に旋回流を形成させる吸込旋回流形成モードが実行される状態を示す図である。
図9図2に示すポータブルトイレ装置において、ボウル部内の溜水面を低下させる水位低下モードが実行される状態を示す図である。
図10図2に示すポータブルトイレ装置において、ボウル部内で汚物を粉砕する汚物粉砕モードが実行される状態を示す図である。
図11図2に示すポータブルトイレ装置において、ボウル部内の洗浄水及び汚物を下流側に排出させる排出モードが実行される状態を示す図である。
図12図2に示すポータブルトイレ装置において、ボウル部内に溜水を形成する溜水形成モードが実行される状態を示す図である。
図13図2に示すポータブルトイレ装置において、水位低下モードにおいて排出ポンプの駆動を停止した直後のボウル部及び排水トラップ管路内の洗浄水等の状態を示す図である。
図14図13に示すポータブルトイレ装置において、水位低下モードにおいて排出ポンプの駆動を停止した直後に、通気弁が空気を排水トラップ管路内に導入させる状態を示す図である。
図15図14に示すポータブルトイレ装置において、通気弁が空気を排水トラップ管路内にさらに導入させる状態を示す図である。
図16図15に示すポータブルトイレ装置において、通気弁が閉弁してボウル部内の洗浄水の圧力と排水トラップ管路内の洗浄水の圧力とが釣り合った状態を示す図である。
図17図2に示すポータブルトイレ装置の水位検知装置の変形例を示す図である。
図18図2に示すポータブルトイレ装置の排出ポンプに代えて真空排水装置を適用した変形例を示す図である。
図19図2に示すポータブルトイレ装置の排出ポンプに代えてターントラップ装置を適用した変形例を示す図である。
図20】本発明の第2実施形態による便器装置を後方斜め上方から見た全体斜視図である。
図21】本発明の第2実施形態による便器装置を示す断面図である。
図22】本発明の第2実施形態による便器装置の給水部、回転体、排出ポンプの動作、及びボウル部内の水位の変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、添付図面を参照して、本発明の第1実施形態によるポータブルトイレ装置について説明する。最初に、図1及び図2により、本発明の第1実施形態によるポータブルトイレ装置の全体構造を説明する。
【0022】
図1に示すように、本発明の第1実施形態によるポータブルトイレ装置1は、便所以外の場所にも配置できる水洗式の便器装置であり、戸建て住宅、高齢者施設又は病院等(以下「建物」と称する)において、通常のトイレ空間以外の場所、例えば、介護用に使用者の居室、寝室内のベッドサイド等に配置されるトイレ装置として使用される。高齢者や病気の人などで、トイレまで歩いていくことが困難又は比較的負担に感じる人にも、自分で居室において使用することができる水洗式の便器装置となっている。
【0023】
ポータブルトイレ装置1は、便器本体2と、便器本体2に洗浄水を供給する給水装置である給水部4と、便器本体2を支持するフレーム6と、を備えている。
【0024】
また、ポータブルトイレ装置1は、移動可能な非据え付け型の装置である。ポータブルトイレ装置1は、フレーム6のフレーム基部6aが便器本体2等が設置される床面Fに固定されておらず、使用者又は事業者等によって車輪1a等を利用して移動可能に形成されている。
【0025】
図2に示すように、給水部4は、建物Q側の給水設備と可撓性の給水管8を介して接続されている。給水部4は、便器本体2の後方上部に設けられ、ボウル部10に形成された吐水口10cからボウル部10に洗浄水を供給する。なお、給水部4は、貯水タンクから洗浄水を供給するタンク方式のものであってもよい。給水管8は給水ホース等により形成される。
【0026】
便器本体2は、便器本体2の前方側に設けられた汚物を受けるボウル部10と、ボウル部10の底部と連通するように設けられて汚物を洗浄水と共に排出する排出路である排水トラップ管路12と、ボウル部10下方に形成された溜水部14と、を備えている。
【0027】
ボウル部10は、上方に向けて開口したボウル形状の汚物受け面10dを備えている。汚物受け面10dはすり鉢状に形成され、水平断面の汚物受け面10dの内側の面積が下降するにつれ減少している。ボウル部10には、汚物受け面10dの下部から縦方向に延びる筒状部分10aが形成されている。筒状部分10aは上面視における流路径(断面積径)がほぼ変わらず一定になるように形成されている。筒状部分10aは鉛直方向に延びる比較的短い流路を形成する。ボウル部10には、洗浄開始前において、ボウル部10下方に溜水面W0(待機状態の溜水面)を形成するように、溜水を貯留する溜水部14が形成されている。貯留された溜水の溜水面W0は汚物受け面10d上に形成される。溜水部14は、ボウル部10の下部から後方側に延びるL字形状の貯溜部を形成している。溜水部14は、汚物を粉砕する時点において、溜水面W0より下方側且つ後方側に延びる部分において洗浄水を貯溜している状態となっている。
【0028】
ボウル部10の筒状部分10aには、ボウル部10内の水位を検知する水位検知装置13が設けられている。水位検知装置13は、制御部24と電気的に接続され、制御部24に水位情報を伝達する。水位検知装置13は、後述する溜水面W1の水位から溜水面W2に相当する所定の水位までのボウル部10内の水位の低下を検知することができる。例えば、水位検知装置13は、水位が溜水面W2に相当する所定の水位以下に低下したことを判断できる。水位検知装置13は、筒状部分10a内の上部又は下部までの水位の低下を検知してもよい。水位検知装置13は、非接触式の静電容量式のセンサである。水位検知装置13は、例えば、非接触式のマイクロ波センサであってもよい。
【0029】
排水トラップ管路12は、ボウル部の底面に接続する接続部12aと、排水トラップを形成するように立ち上がる上昇部12bと、排水トラップの上昇部12bと接続する頂部12cと、頂部12cから下降する下降部12dと、床面Fのわずかに上方且つ床面Fとほぼ平行に延びる横向部12eとを備えている。このように、排水トラップ管路12は、少なくとも上昇部12bと、頂部12cとにより凸形状の排水トラップ構造を形成する。頂部12cは、頂部12cの底面が平坦面として形成されるような凸形状の折り返し部分を形成している。頂部12cの底面の頂点の高さがボウル部10の初期水位の溜水面W0の高さとなっている。
【0030】
排水トラップ管路12の下流側の横向部12eには、排水管路16が接続される。排水トラップ管路12及び排水管路16は、ポータブルトイレ装置1を移動可能にするため比較的細い配管により形成される。排水トラップ管路12の横向部12eの内径(配管口径)は好ましくは10mm~50mmの範囲であり、より好ましくは20mmである。排水管路16は、可撓性の管路部分16aを有する。可撓性管路である可撓性の管路部分16aは、排水トラップ管路12の下流側の横向部12eに接続される。可撓性の管路部分16aは、排水ホース等の可撓性部材により形成される。排水管路16は、建物側に設けられた排水用の配管16bも含む。可撓性の管路部分16aの内径は、好ましくは10mm~50mmの範囲であり、より好ましくは20mmである。排水管路16の建物Q側の排水用の配管16bには、横向部12e又は可撓性の管路部分16aから連続して延び且つ可撓性の管路部分16aとほぼ同様の配管の内径が続く部分の配管が含まれる。建物Q側の排水用の配管16bには、配管の内径が10mm~50mmの範囲である配管が含まれる。建物Q側の排水用の配管16bの下流端は、配管16bより内径の広い建物Q側の設備配管Sに接続される。
【0031】
ポータブルトイレ装置1は、さらに、ボウル部10内で汚物を粉砕する粉砕装置18と、ボウル部10内の洗浄水を下流側に排出する排出装置である排出ポンプ20と、粉砕装置18と排出ポンプ20との間に設けられるフィルタ22と、使用者が操作する操作部(図示せず)と、ポータブルトイレ装置1の洗浄動作及び粉砕圧送動作等を制御する制御部24と、を備えている。
【0032】
粉砕装置18は、自身の一部の回転によりボウル部10内に旋回流(回転流)を形成させることにより汚物を粉砕する。粉砕装置18は、ボウル部10後方の下部側且つ溜水部14の上部側に設けられる。この粉砕装置18は、溜水部14に貯留された溜水内に配置されると共に汚物を粉砕するように溜水部14内に回転流を発生させる回転体26と、回転体26の回転軸28と、回転体26及び回転軸28を駆動させる電動モーター30とを備えている。
【0033】
排出ポンプ20は、排水トラップ管路12の排水トラップ構造の上流側に配置される。排出ポンプ20は、高揚程が実現可能な遠心式ポンプを形成している。排出ポンプ20は、溜水部14内で粉砕した汚物を洗浄水とともに圧送して排水トラップ管路12及び排水管路16を介し設備配管S側に排出させる。排出ポンプ20は、ポンプ室32と、ポンプ室32の内側で回転されるインペラ34と、インペラ34の回転軸36と、インペラ34及び回転軸36を駆動させる電動モーター38とを備えている。
【0034】
ポンプ室32の中央部の入口には、溜水部14のフィルタ22の下部から延びる接続部12aが接続され、ポンプ室32の上部の外周部には、上昇部12bが接続される。インペラ34の回転によって発生する遠心力により、汚物及び洗浄水がポンプ室32から排水トラップ管路12に向かって比較的強力に押し出され、且つ圧送される。
【0035】
フィルタ22は、溜水部14の底面に配置され、所定以下の大きさに粉砕された汚物のみを通過させる。
【0036】
制御部24は、使用者による操作部の操作又は自己の設定により、給水部4、粉砕装置18及び排出ポンプ20を制御する。制御部24は、これらの制御を行うためのCPU、メモリ等を内蔵している。制御部24は、給水部4、粉砕装置18及び排出ポンプ20等と電気的に接続され、これらの装置等に作動信号を送り、各装置等を作動させるようになっている。
【0037】
制御部24は、給水部4、回転体26、排出ポンプ20を待機状態とする待機モードと、排出ポンプ20を駆動してボウル部10内の溜水面を低下させる水位低下モードと、ボウル部10内で汚物を粉砕する汚物粉砕モードと、給水部4により供給された洗浄水によりボウル部10を洗浄する洗浄モードと、排出ポンプ20を駆動してボウル部10内の洗浄水を下流側に排出させる排出モードと、粉砕装置18を駆動してボウル部10内に旋回流を形成させる吸込旋回流形成モードと、ボウル部10内に溜水を形成する溜水形成モードとを実行可能な制御プログラムを備えている。制御部24は、さらに、他の後述された動作を実行可能な制御プログラムも備えている。
【0038】
次に、図2により、ポータブルトイレ装置1の通気弁40について説明する。
ポータブルトイレ装置1は、さらに、排水トラップ管路12に排水トラップ管路12の外部から空気を取り入れる通気弁40を備えている。通気弁40は、排水トラップ管路12の排出ポンプ20より下流側の頂部12cに配置される。排水トラップ管路12に排水トラップ管路12の外部から空気を取り入れることには、排水トラップ管路12に排水トラップ管路12側から外部空気を取り入れることのみならず、排水トラップ管路12に排水管路16側から外部空気を取り入れることも含む。すなわち、通気弁40は、排水管路16に取付けられていてもよい。
【0039】
図3乃至図5に示すように、通気弁40の弁機構についてより詳細に説明する。
図3は本発明の第1実施形態によるポータブルトイレ装置の通気弁の閉弁状態を示す断面図であり、図4は本発明の第1実施形態によるポータブルトイレ装置の通気弁の開弁状態を示す断面図であり、図5は本発明の第1実施形態によるポータブルトイレ装置の通気弁につき、排水トラップ管路側の第1室の圧力と、通気弁の閉弁状態又は開弁状態の対応を示す図である。
【0040】
通気弁40は、所定圧力以下の負圧により開弁する。通気弁40は、排出ポンプ20が洗浄水を下流側に排出することにより、排水トラップ管路12又は排水管路16においてサイホン現象が発生した場合には、このサイホン現象による負圧により開弁する弁機構を有する。このような通気弁40の弁機構は、第1室46a側が大気圧P0以上の圧力P1では閉弁状態となり、大気圧P0より低く開弁圧力P4より高い第1負圧領域圧力P2では閉弁状態となり、且つ開弁圧力P4以下の第2負圧領域圧力P3で開弁状態となるように形成されている。
【0041】
通気弁40は、弁座42と、弁座42に着座可能である弁部材44と、弁座42及び弁部材44を内部に収容するケーシング46とを備える。弁部材44は、傘状に形成されている。通気弁40は、例えばアンブレラバルブが適用可能である。
【0042】
ケーシング46内は、弁座42及び弁部材44により区切られるような、排水トラップ管路12側の第1室46aと、外気側の第2室46bとを備えている。第1室46aは、排水トラップ管路12の頂部12cの連結部12fと連通する。よって、第1室46aの内部圧力は、排水トラップ管路12の連結部12fの内部圧力と連動する。第2室46bは、大気開放され、外気と連通する。
【0043】
図3に示すように、弁部材44は、排水トラップ管路側の第1室46a内の空気圧が大気圧P0以上の圧力P1である場合に、弁座42に着座して閉弁状態となる。圧力の上限は構造等の条件により設定される。また、弁部材44は、排水トラップ管路側の第1室46a内の空気圧が大気圧P0より低く開弁圧力P4より高い第1負圧領域圧力P2である場合にも、弁座42に着座して閉弁状態となる。弁部材44は、開弁圧力P4に至る前の第1負圧領域圧力P2までは、開弁方向に変形しないようになっている。
【0044】
図4に示すように、弁部材44は、排水トラップ管路側の第1室46a内の空気圧が開弁圧力P4以下の第2負圧領域圧力P3である場合には、開弁状態となるように変形する。第2負圧領域圧力P3の下限は構造等の条件により設定される。第2負圧領域圧力P3は、第1負圧領域圧力P2よりも低い圧力範囲である。弁部材44が開弁状態となる場合、外部空気が、第2室46bから第1室46aに流入し、第1室46aから排水トラップ管路12の連結部12fを介して頂部12cに流入する。
【0045】
なお、変形例として、通気弁40は、大気圧P0以上の圧力P1では閉弁状態となり、大気圧P0より低く開弁圧力P4より高い第1負圧領域圧力P2では閉弁状態となり、且つ開弁圧力P4以下の第2負圧領域圧力P3で開弁状態となるように形成されている弁機構を実現するダイヤフラム弁であってもよい。このようなダイヤフラム弁はゴムの弾性力でシールするようになっている。また、通気弁40は、同様の弁機構を実現するものとして、Oリング状の弁体をばねにより弁座に付勢することによりシールする弁、又は球体状の弁体をばねにより弁座に付勢することによりシールする弁であってもよい。
【0046】
なお、さらなる変形例として、通気弁40は、所定圧力、例えば設定場所の大気圧P0より小さい負圧により開弁するいわゆるドルゴ通気弁であってもよい。このような通気弁の弁機構は、大気圧P0以上の圧力P1では閉弁状態となり、大気圧P0より低い負圧領域圧力では開弁状態となるように形成される。このような通気弁の弁機構は、排水トラップ管路12又は排水管路16においてサイホン現象が発生した場合に、このサイホン現象による負圧により開弁する。
【0047】
次に、図2図6乃至図12により、上述した本発明の第1実施形態によるポータブルトイレ装置の動作(作用)を説明する。図2図6乃至図12において、洗浄水等が存在している部分を液体表示手法により図示している。
図6は本発明の第1実施形態によるポータブルトイレ装置の給水部、回転体、排出ポンプの動作、及びボウル部内の水位の変化を示すタイムチャートであり、図7図2に示すポータブルトイレ装置において、ボウル部の洗浄モードが実行される状態を示す図であり、図8図2に示すポータブルトイレ装置において、ボウル部内に旋回流を形成させる吸込旋回流形成モードが実行される状態を示す図であり、図9図2に示すポータブルトイレ装置において、ボウル部内の溜水面を低下させる水位低下モードが実行される状態を示す図であり、図10図2に示すポータブルトイレ装置において、ボウル部内で汚物を粉砕する汚物粉砕モードが実行される状態を示す図であり、図11図2に示すポータブルトイレ装置において、ボウル部内の洗浄水及び汚物を下流側に排出させる排出モードが実行される状態を示す図であり、図12図2に示すポータブルトイレ装置において、ボウル部内に溜水を形成する溜水形成モードが実行される状態を示す図である。
【0048】
図2は、使用者が便器本体2を使用する前の待機状態の溜水面W0を示している。この状態においては、給水部4は停止された状態であり、粉砕装置18及び排出ポンプ20も停止された状態である。
図6においては、時刻t0以前の時刻においてこのような待機状態となっている。例えば、時刻t0は、使用者が便器本体2の使用を開始する時刻である。制御部24は、便器本体2の使用が開始される前においては、給水部4、回転体26、排出ポンプ20を動作させていない待機状態とする待機モードを実行する。給水部4、回転体26、排出ポンプ20は動作していないOFF状態となっている。図6においては、ボウル部10内の水位の変化が示されている。時刻t0においては、ボウル部10内の水位は初期水位(待機状態の溜水面W0)となっている。
【0049】
図6に示すように、時刻t0~t1において、使用者が便器本体2を使用し、汚物(大便、小便、トイレットペーパー等)A(図7参照)がボウル部10内に入った状態となる。制御部24は、時刻t0~t1において、給水部4、回転体26、排出ポンプ20を待機状態とする待機モードを引き続き実行する。
時刻t0~t1において、ボウル部10内の水位は初期水位でありほぼ一定であるが、使用者の尿や大便、便器本体2上に配置されて使用者の局部等を洗浄する衛生洗浄装置(図示せず)から吐出される水等により水位がわずかに上昇する場合もある。使用者による排泄時にはボウル部10内の溜水面W0を初期水位まで比較的高く且つ広く形成して、ボウル部10内の溜水面以外の乾燥している部分への汚物付着を抑制する。
【0050】
時刻t1において、使用者が操作部の操作スイッチ等を操作すると、洗浄動作が開始される。操作部の操作スイッチ等が操作されると、その操作指令が制御部24に送信され、制御部24が給水部4により供給された洗浄水によりボウル部10を洗浄する洗浄モードを開始させる。図6及び図7に示すように、洗浄モードにおいては、制御部24が、給水部4に給水指令を送り、給水部4からボウル部10への給水動作を開始させ、ボウル部10を洗浄水Bによって洗浄される。図7に示すように、汚物Aは、洗浄水Bにより溜水部14中に移動された状態となる。制御部24は、洗浄モードを数秒程度の所定時間T秒にわたって継続する。洗浄モードにおいては、制御部24は、回転体26及び排出ポンプ20は停止された待機状態を継続する。洗浄モードにおいては、ボウル部10内の水位は給水部4からの給水により初期水位から徐々に上昇する。排水トラップ管路12の排水トラップの部分より下流側の流路及び排水管路16には排水用の勾配が形成されておらず且つ排水トラップ管路12及び排水管路16は比較的細い径を有しているので、排出ポンプ20が停止している状態では、給水された洗浄水は排水トラップ管路12側に流れずボウル部10内に貯留する。
【0051】
第1実施形態によるポータブルトイレ装置1は、洗浄モード中に給水部4からボウル部10へ給水を行っているが、変形例として、洗浄モード、後述する吸込旋回流形成モード及び水位低下モード中に給水部4からボウル部10へ継続して給水を行ってもよい。このように洗浄モードから吸込旋回流形成モード及び水位低下モードまで継続して給水する場合の給水の瞬間流量は、洗浄モード、吸込旋回流形成モード及び水位低下モードのうち洗浄モードのみで給水する場合の給水の瞬間流量よりも低減される。吸込旋回流形成モード中に継続して給水が行われる場合、洗浄水がボウル部10内において旋回流を形成しながら流下するので、給水により吸込旋回流形成モードの旋回流をより強めることができる。
【0052】
再び第1実施形態によるポータブルトイレ装置1について説明する。図6に示すように、時刻t1から所定時間T秒が経過した時刻t2において、制御部24は、粉砕装置18を駆動してボウル部10内に旋回流を形成させる吸込旋回流形成モードを実行する。図6及び図8に示すように、吸込旋回流形成モードにおいては、制御部24は、給水部4からの給水を停止させると共に、粉砕装置18を駆動して回転体26の回転を開始させる。図8において回転体26の回転を矢印Eにより示す。回転体26の回転によりボウル部10内に吸込旋回流Gが形成される。吸込旋回流形成モードにおける回転体26の回転数は、汚物粉砕モードにおける回転体26の回転数と異なっていてもよい。ボウル部10内において上昇している水位の上部部分まで吸込旋回流Gが形成される。吸込旋回流Gがボウル部10に付着している又は沿っているような汚物をボウル部10からある程度剥離させ、旋回流に乗せた状態とすることができる。制御部24は、吸込旋回流形成モードをT秒の2分の1から3分の1程度の比較的短期間にわたって継続する。吸込旋回流形成モードの実行中においては、比較的短時間において回転体26を回転させるのみであるので、回転体26が洗浄水を撹拌することによる洗浄水中の汚物の飛び跳ねを抑制することができる。吸込旋回流形成モードにおいては、制御部24は、給水部4及び排出ポンプ20を停止状態とする。吸込旋回流形成モードにおいては、ボウル部10内の水位は給水部4からの給水が行われた溜水面W1の最高水位となっている。
【0053】
図6に示すように、時刻t3において、制御部24は、排出ポンプ20を駆動してボウル部10内の溜水面を低下させる水位低下モードを実行する。制御部24は、洗浄モードの実行開始以後及び吸込旋回流形成モードの実行開始以後に水位低下モードを実行することとなる。図6及び図9に示すように、水位低下モードにおいては、制御部24が、排出ポンプ20の駆動を開始させ、洗浄水を、溜水面W1の水位を溜水面W2の位置まで下げるような所定流量だけ排水させる。矢印A1により示すように、洗浄水を排水トラップ管路12を介して排水管路16に排出する。溜水部14内に存在する洗浄水量が減少され、溜水部14の溜水面が溜水面W2の位置となる。これにより、水位低下モードの実行後に実行される汚物粉砕モードにおいて、汚物粉砕時にボウル部10内の溜水面を低下させて、粉砕中の汚物の溜水面からボウル部10外への飛び跳ねを抑制することができる。
【0054】
水位低下モードにおいては、制御部24は、排出ポンプ20を第1出力により駆動させる。排出ポンプ20の第1出力は、後述する第2出力よりも低い出力であり、インペラ34を比較的低い回転数で回転させる。水位低下モードにおいて第1出力の排出ポンプ20により排出される単位時間当たりの流量は、後述する排出モードにおいて第2出力の排出ポンプ20により排出される単位時間当たりの流量よりも小さい。これにより、水位低下モードにおいて、汚物粉砕後に行われる排出モードにおける排水能力より低い排水能力でボウル部10内から洗浄水が排出される。よって、本実施形態によれば、ボウル部10内の未粉砕の汚物が、フィルタ22に詰まる、又は接続部12aに侵入し、排出ポンプ20を詰まらせる可能性を抑制することができる。
【0055】
制御部24は、水位低下モードにおいて、ボウル部10内の溜水面を筒状部分10aまで低下させる。これにより、上面視における流路径がほぼ変わらない筒状部分10aに溜水面W2が位置する状態で、溜水中で汚物の粉砕を行うことができる。汚物の粉砕により溜水面W2が揺動したり波打ったりしたとしても上面視において溜水面W2の半径方向の変動が少なくでき、粉砕中の汚物を含む溜水面W2が広がって見えることにより使用者へ嫌悪感を与える可能性を抑制することができる。
【0056】
図6及び図9に示すように、制御部24は、水位低下モードの実行中に粉砕装置18も駆動させる。制御部24が水位低下モードの実行中に回転体26を回転させる。図9において回転体26の回転を矢印Eにより示す。これにより、水位低下モードの実行中に、ボウル部10内の溜水面の水位が徐々に低下するとき、溜水に旋回流が形成され、溜水中の汚物をボウル部10から剥離させ、旋回流にのせるような状態としながら下方に導き、汚物をボウル部10に沿って残り難くすることができる。よって、水位低下モードの実行終了後に、ボウル部10に汚物が残されることを抑制し、ボウル部10内の洗浄性能を向上させると共に効率的にボウル部10内の汚物を粉砕することができる。水位低下モードにおける回転体26の回転数は、汚物粉砕モードにおける回転体26の回転数と異なっていてもよい。水位低下モードの実行中においては、水位を低下させながら回転体26を回転させるので、回転体26が洗浄水を撹拌することによる洗浄水中の汚物の飛び跳ねを抑制することができる。
【0057】
水位低下モードの実行により、ボウル部10内に貯留している洗浄水の体積が減少される。汚物粉砕モードにおいて回転体26の回転により投入される回転エネルギーが一定であるとすれば、ボウル部10内の洗浄水の体積が大きい場合と比べて、ボウル部10内の洗浄水の体積が小さい場合の旋回流の流速が比較的高くなる。よって、水位低下モードの実行により、汚物粉砕モードにおいて比較的高速の旋回流を形成し、より確実に汚物の粉砕を行うことができる。
【0058】
制御部24は、水位低下モードの開始以後、水位検知装置13が溜水面W2に相当する所定の水位までのボウル部10内の水位の低下を検知した場合に、水位低下モードの実行を終了させる。このように、水位検知装置により水位低下モードにおいてボウル部10内の水位を所定の水位まで確実に低下させることができる。
【0059】
制御部24は、水位低下モードをT秒程度の所定時間にわたって継続する。水位低下モードにおいては、制御部24は、給水部4を停止状態としている。制御部24は、排出ポンプ20を所定時間駆動させた後、水位低下モードの終了と共に再び停止させる。汚物Aのうち所定の大きさ以上の汚物は、フィルタ22を通過せず、溜水部14内に留まっている。
【0060】
第1実施形態によるポータブルトイレ装置1において、制御部24は、洗浄モード、吸込旋回流形成モード、水位低下モードを順に実行するが、変形例として、制御部24は、洗浄モード、吸込旋回流形成モード、水位低下モードをほぼ同時に実行してもよい。ほぼ同時に実行する場合には、洗浄モード、吸込旋回流形成モード、水位低下モードをほぼ同時に開始して実行する場合や、これらのモードの開始時期が多少ずれたとしてもこれらのモードの全部又は一部が重複して実行される期間がある場合も含まれる。例えば、制御部24が、洗浄モード、吸込旋回流形成モード、水位低下モードをほぼ同時に開始して実行する場合を説明する。
時刻t1において、制御部24は、洗浄モード、吸込旋回流形成モード、水位低下モードをほぼ同時に開始させる。すなわち、制御部24は、洗浄モードの実行開始以後に水位低下モードを実行する。また、制御部24は、吸込旋回流形成モードの実行開始以後に水位低下モードを実行する。このとき、制御部24は、給水部4からの給水動作を開始させ、回転体26の回転を開始させ、さらに、排出ポンプ20を第1出力により駆動させる。回転体26の回転開始後の初期から吸込旋回流形成モードが実行される。制御部24は、時刻t2において給水部4からの給水動作を終了させる。制御部24は、時刻t2において洗浄モードを先に終了させてもよい。時刻t2において制御部24は、回転体26の回転を継続し、排出ポンプ20の駆動を継続させる。時刻t4において制御部24は、排出ポンプ20の駆動を停止させる。時刻t4において制御部24は、吸込旋回流形成モード、水位低下モードを終了させる。
これらのモードをほぼ同時に開始する場合には、時刻t1から時刻t4までの時間が、これらのモードを順に実行する場合と比べて短くされる。制御部24は、ほぼ同時にこれらのモードを実行し、洗浄モードによりボウル部10を洗浄でき、さらに、ボウル部10内に吸込旋回流Gを形成でき、さらに、ボウル部10内の溜水面を低下させることができる。
【0061】
再び第1実施形態によるポータブルトイレ装置1について説明する。図6及び図10に示すように、時刻t4において、制御部24は、ボウル部10内で汚物を粉砕する汚物粉砕モードを実行する。制御部24が、粉砕装置18を駆動させ、回転体26の回転Eによりボウル部10内に旋回流(矢印A2参照)を形成し、汚物の粉砕動作を行う。溜水部14内で汚物が回転流により粉砕される。汚物Aは粉砕され、所定の大きさ以下の汚物aとなる。水位低下モードの実行によりボウル部内の溜水面を低下させた後に、汚物粉砕モードが実行されるので、汚物粉砕時にはボウル部10内の溜水面W2を低下させて、粉砕中の汚物の溜水面W2からボウル部10外への洗浄水及び汚物の飛び跳ねを抑制することができる。制御部24は、汚物粉砕モードをT秒の1.5倍から2倍の間の所定時間にわたって継続する。汚物粉砕モードにおいては、制御部24は、給水部4及び排出ポンプ20を停止状態とする。汚物粉砕モードにおいては、ボウル部10内の水位は溜水面W2の水位に維持されている。
【0062】
図6及び図11に示すように、時刻t5において、制御部24は、排出ポンプ20を駆動してボウル部10内の洗浄水を下流側に排出させる排出モードを実行する。
排出モードにおいては、汚物粉砕モードの終了後、制御部24は、粉砕装置18を停止させ、排出ポンプ20を第2出力により駆動させる。排出ポンプ20の第2出力は、インペラ34を比較的高い回転数で回転させる。排出ポンプ20は、矢印A3により示すように、洗浄水及び汚物a(以下、洗浄水等と称する)を排水トラップ管路12を介して排水管路16に圧送(排出)する。汚物aは、フィルタ22を通過することができる。このようにして、溜水部14内から汚物aが排出される。排出ポンプ20が洗浄水等を排水トラップ管路12及び排水管路16に排出するとき、これらの配管径が比較的細く且つ管路の勾配がなくほぼ水平に配置されている部分があるため、洗浄水等が排水トラップ管路12又は排水管路16において満水になる部分が生じる。排水トラップ管路12又は排水管路16において洗浄水等が満水になると、排水トラップ管路12又は排水管路16においてサイホン現象が発生する。サイホン現象が一度発生すれば、排水トラップ管路12及び排水管路16においてサイホン現象が発生することとなる。サイホン現象が発生すると、排水トラップ管路12及び排水管路16内に存在する洗浄水が下流側に引き込まれる。排出ポンプ20の作動中においては、排出ポンプ20による圧送の流れとサイホン現象による流れとが排水トラップ管路12及び排水管路16中に形成される。このとき、排水トラップ管路12に設けられた通気弁40には第1室46a側から大気圧以上の正圧がかかっており、通気弁40は閉弁状態となっている。
【0063】
排出モードにおいては、排出ポンプ20により溜水部14内のほぼすべての洗浄水及び汚物aが下流側に排出される。制御部24は、排出モードをT秒の1.5倍から2倍の間の所定時間にわたって継続する。排出モードにおいては、制御部24は、矢印A4に示すように、時刻t5から給水部4からの給水を開始させる。溜水部14内からの汚物等の排出のタイミングに合わせて洗浄水によりボウル部10内に溜水を早期に形成する。排出モードにおいては、制御部24は、回転体26を停止状態としている。排出モードにおいては、ボウル部10内の水位は、溜水面W2から、溜水部14内からほぼすべての洗浄水及び汚物aが排出されてゼロ水位、すなわちほぼなくなるような位置まで低下する。
【0064】
第1実施形態によるポータブルトイレ装置1は、排出モードにおいて制御部24は時刻t5から給水部4からの給水を開始させるが、変形例として、排出モードにおいて制御部24は時刻t5から所定時間が経過した後から給水部4からの給水を開始させてもよい。給水部4からの給水開始を遅延させることにより、給水した洗浄水が排出モードにより排出されてしまう無駄水の消費を抑制することができると共に、給水部4からの給水により溜水を効率よく形成することができる。
【0065】
再び第1実施形態によるポータブルトイレ装置1について説明する。図6及び図12に示すように、時刻t6において、制御部24は、ボウル部10内に溜水を形成する溜水形成モードを実行する。時刻t6において、制御部24は、溜水部14内からの洗浄水等の排出がほぼ終了したと判断し、排出ポンプ20の駆動を停止させる。溜水形成モードにおいては、制御部24は、矢印A4に示すように、給水部4からの給水によりボウル部10内に溜水を形成する。このとき、制御部24は、回転体26及び排出ポンプ20を停止状態としている。制御部24は、溜水形成モードをT秒の1.5倍から3倍の間の所定時間にわたって継続する。ボウル部10内の水位は初期水位まで徐々に上昇する。
【0066】
図12に示すように、時刻t7において、溜水部14内の洗浄水が貯留され、溜水面W0に到達すると、制御部24は、給水部4を停止させ、一連の洗浄動作を終了させる。上昇部12bの水面も、溜水面W0と連動して同じ高さとなる。粉砕装置18及び排出ポンプ20は停止された状態のままである。便器本体2は使用される前の待機状態に戻る。
【0067】
次に、図6図13乃至図16を参照して、水位低下モードにおいて排出ポンプ20の駆動を停止した直後から汚物粉砕モードが開始されるまでの短期間の状態変化についてより詳細に説明する。
図13図2に示すポータブルトイレ装置において、水位低下モードにおいて排出ポンプの駆動を停止した直後のボウル部及び排水トラップ管路内の洗浄水等の状態を示す図であり、図14図13に示すポータブルトイレ装置において、水位低下モードにおいて排出ポンプの駆動を停止した直後に、通気弁が空気を排水トラップ管路内に導入させる状態を示す図であり、図15図14に示すポータブルトイレ装置において、通気弁が空気を排水トラップ管路内にさらに導入させる状態を示す図であり、図16図15に示すポータブルトイレ装置において、通気弁が閉弁してボウル部内の洗浄水の圧力と排水トラップ管路内の洗浄水の圧力とが釣り合った状態を示す図である。図16においては、容積V3及びV4を仮想線により示している。
【0068】
図6に示すように、水位低下モードの実行終了直前において、制御部24は、排出ポンプ20を駆動させ、洗浄水等を排水トラップ管路12及び排水管路16に排出させている。図13に示すように、このとき、排水トラップ管路12又は排水管路16において洗浄水等が満水になるため、排水トラップ管路12及び排水管路16においてサイホン現象が発生している。矢印J1により示すように、洗浄水等は排水トラップ管路12及び排水管路16の下流側に向かって緩やかに移動する。サイホン現象が一度発生すれば、排水トラップ管路12及び排水管路16内の洗浄水が無くなるまでサイホン現象による流れが下流側に向かって発生する。水位低下モードの実行終了に伴い、制御部24は、排出ポンプ20の駆動を停止させる。排出ポンプ20が停止したとき、洗浄水等は、排水トラップ管路12及び排水管路16内に存在している。
【0069】
このように、水位低下モードにおいて排出ポンプ20の駆動を停止したときのボウル部10内の水位X1の高さは、汚物粉砕モードの開始時の適正水位X5の高さより低い。なお、汚物粉砕モードの開始時の水位である適正水位X5の高さは、初期水位(待機状態の溜水面W0)より低く、かつ、汚物の大半がフィルタ22を通過できるような粉砕が可能な水位の高さであり、例えば、筒上部分10aの上端の高さである。
水位低下モードの実行が終了し且つサイホン現象が終了したときの排水トラップ管路12内の水位は、ボウル部10内の水位より高くなる。しかしながら、この状態は排水トラップ管路12内の圧力とボウル部10に作用する圧力との間に圧力差があり不安定な状態となっているため、排水トラップ管路12内の圧力とボウル部10に作用する大気圧とが釣り合うまで、徐々に排水トラップ管路12内の水位は下がる一方で、ボウル部10内の水位が上昇する。このように、汚物粉砕モードの開始時の水位は、水位低下モードの実行が終了したときの水位より高くなる。
水位低下モードにおいて排出ポンプ20の駆動を停止したときのボウル部10内の水位の高さが、汚物粉砕モードの開始時の適正水位高さより低い。これにより、水位低下モードの終了時の水位X1の高さから汚物粉砕モード開始時の適正水位X5の高さまで囲まれるボウル部10内の空間に、水位低下モードの終了時の排水トラップ管路12内の水を流入させることができる。よって、本実施形態によれば、水位低下モードの終了時の水位高さを汚物粉砕モードの開始時の適正水位X5の高さに設定する場合と比べて、汚物粉砕モードの開始時のボウル部10内の水位の高さを低くすることができ、粉砕中の汚物の溜水面からボウル部10外への飛び跳ねをより抑制することができる。
【0070】
図14に示すように、排出ポンプ20の停止後も、排水トラップ管路12及び排水管路16においてサイホン現象が引き続き発生しているので、矢印J2により示すように、洗浄水等は排水トラップ管路12及び排水管路16の下流側に向かって緩やかに移動する。よって、ボウル部10内の水位の高さは、水位X1から低下した水位X2の高さとなり、汚物粉砕モードの開始時の適正水位X5の高さより低い。
【0071】
図14に示すように、洗浄水等が矢印J2に示すようなサイホン現象による流動により、排水トラップ管路12及び排水管路16内に負圧を発生させる場合、通気弁40が負圧により開弁し、矢印C1により示すように、空気が排水トラップ管路12内に導入される。より具体的には、排出ポンプ20が停止した直後から数分の1秒程度のタイミングで通気弁40が負圧により開弁する。よって、排水トラップ管路12に排水トラップ管路12の外部から空気を取り入れてサイホン現象を早期に強制的に終了させることができる。
【0072】
より詳細には、通気弁40は、排水トラップ管路12側が大気圧より低く開弁圧力より高い第1負圧領域圧力である場合に閉弁状態となり、且つ排水トラップ管路12側が開弁圧力以下の第2負圧領域圧力である場合に開弁状態となる。このように通気弁40は、所定の負圧において開弁圧力を有し、その開弁圧力が大気圧よりも低くなっている。よって、図16に示すように、通気弁40が排水トラップ管路12に空気を取り入れた後に通気弁40が閉弁してボウル部10内の洗浄水の圧力と排水トラップ管路12内の洗浄水の圧力とが釣り合った状態では、ボウル部10内の水位よりも排水トラップ管路12内の水位の方が通気弁の開弁圧力水頭Hだけ高くなる。排水トラップ管路12内の通気弁40の近傍の空気圧は開弁圧力の負圧となっている。ここで、ボウル部10内の水位を所定の適正水位X5に設定しようとするならば、通気弁40と排水トラップ管路12との連結部12fが、排水トラップ管路12内の所定水位より高い位置に設けられる必要がある。そこで、本実施形態によれば、通気弁40と排水トラップ管路12との連結部12fが、ボウル部10内における汚物粉砕モードの開始時の適正水位X5の高さに通気弁40の開弁圧力水頭Hを加えた水位X7の高さ以上の高さに設けられている。これにより、ボウル部10内における汚物粉砕モードの開始時の水位を適正水位X5の高さに設定することができる。よって、本実施形態によれば、ボウル部10内における汚物粉砕モードの開始時の水位を適正水位X5の高さにでき、確実にボウル部10内の汚物を粉砕できる。仮に連結部12fが水位X7の高さより低い高さに設けられる場合、汚物粉砕モードの開始時の水位が適正水位X5より低い高さとなってしまうため、連結部12fが水位X7の高さより高く設けられることによりこれを防ぐことができる。
【0073】
図15に示すように、通気弁40からの空気の導入開始後、矢印C2により示すように、空気が排水トラップ管路12内にさらに導入される。連結部12fの下流側においては、矢印J3に示すように、洗浄水は下流側に向けて流れる。連結部12fの上流側においては、排水トラップ管路12内の洗浄水の水位は連結部12fから、上記適正水位X5の高さに開弁圧力水頭Hを加えた高さまで低下する。矢印J3に示すように、この低下分の洗浄水がボウル部10内に戻る。よって、ボウル部10内の溜水の水位が上昇する。水位低下モードにおいて排出ポンプ20の駆動を停止したときのボウル部10内の水位X1の高さから汚物粉砕モードの開始時の適正水位X5の高さまでのボウル部10内の容積は容積V3とする(図16参照)。また、水位低下モードにおいて排出ポンプ20の駆動を停止したときの排水トラップ管路12内のサイホン現象が切れたときの水位X6(図14参照)の高さ(連結部12fの高さ)から、汚物粉砕モードの開始時の適正水位X5の高さに通気弁の開弁圧力水頭Hを加えた合計水位X7の高さ(図16参照)までの排水トラップ管路12内の容積を容積V4とする(図16参照)。この容積V3は、容積V4とほぼ等しい。なお、容積V4は、排水トラップ管路12の連結部12fから合計水位X7の高さまでの容積である。よって、本実施形態によれば、汚物粉砕モードの開始時のボウル部10内の水位の高さを適正水位X5の高さとすることができ、汚物粉砕モードにおいて確実に汚物を粉砕することができる。また、本実施形態によれば、連結部12fの位置の自由度を増すことができるため、ポータブルトイレ装置1のデザインの自由度を生み出すことができる。図16に示すように、排水トラップ管路12内の水位が水位X7となり、ボウル部10内の水位の高さが適正水位X5となった状態で、汚物粉砕モードが開始される。汚物粉砕モードが適正水位X5で開始されることにより、粉砕中の汚物の溜水面からボウル部10外への飛び跳ねをより抑制することができる。
【0074】
このように、図6に示す、水位低下モードと汚物粉砕モードとの間の短時間において、ボウル部10内の水位が水位X1から水位X2に下降した後適正水位X5まで上昇している。汚物粉砕モードは、図6において時刻t4から実行される汚物粉砕モードであるので以後説明を省略する。
【0075】
なお、第1実施形態によるポータブルトイレ装置1は、ボウル部10内の水位を検知する水位検知装置13を備えているが、変形例として、図17に示すように、ポータブルトイレ装置1は、水位検知装置13に代えて、接触式の圧力センサによりボウル部10内の水位を検知する水位検知装置113を備えていてもよい。図17図2に示すポータブルトイレ装置の水位検知装置の変形例を示す図である。水位検知装置113は、ボウル部10の底部且つ前方側に接続する流路113aを備え、この流路113aを介して、ボウル部10の洗浄水等の圧力を測定し、ボウル部10内の洗浄水等の水位を測定する。
【0076】
なお、第1実施形態によるポータブルトイレ装置1は、ボウル部10内の洗浄水を下流側に排出する排出装置である排出ポンプ20を備えているが、変形例として、図18に示すように、ポータブルトイレ装置1は、排出ポンプ20に代えて、ボウル部10内の洗浄水を下流側に排出する排出装置である真空排水装置120を備えていてもよい。図18図2に示すポータブルトイレ装置の排出ポンプに代えて真空排水装置を適用した変形例を示す図である。真空排水装置120は、排水トラップ管路12の排水トラップ構造の下流側に配置される。真空排水装置120は、溜水部14内で粉砕された粉砕後の汚物を洗浄水とともに吸引して排水トラップ管路12の下流側へ排出するように構成されている。
【0077】
なお、第1実施形態によるポータブルトイレ装置1は、ボウル部10内の洗浄水を下流側に排出する排出装置である排出ポンプ20を備えているが、変形例として、図19に示すように、ポータブルトイレ装置1は、排出ポンプ20に代えて、ボウル部10内の洗浄水を下流側に排出する排出装置であるターントラップ装置220を備えていてもよい。図19図2に示すポータブルトイレ装置の排出ポンプに代えてターントラップ装置を適用した変形例を示す図である。ターントラップ装置220は、ボウル部10内から延びる流路212の下流側に配置される。ターントラップ装置220は、基部220aを中心に回動可能に形成されている。溜水部14内で粉砕された粉砕後の汚物が洗浄水とともに下流側に流れる場合に、ターントラップ装置220は、姿勢K1の状態でこの流れを上流側に留める。一定の水量が上流側に溜まった後、ターントラップ装置220の方向を転換して、姿勢K2の状態とし、溜まった洗浄水及び汚物をさらに下流側の排水管路216へ一気に排出するように構成されている。
【0078】
次に、上述した第1実施形態によるポータブルトイレ装置1による作用効果を説明する。
第1実施形態によるポータブルトイレ装置1によれば、水位低下モードの実行によりボウル部10内の溜水面を低下させた後に、汚物粉砕モードの実行によりボウル部10内で汚物が粉砕される。これにより、使用者による排泄時にはボウル部10内の溜水面を高く且つ広くして、ボウル部10内の溜水面以外の乾燥している部分への汚物付着を抑制することができると共に、汚物粉砕時にはボウル部10内の溜水面を低下させて、粉砕中の汚物の溜水面からボウル部10外への飛び跳ねを抑制することができる。
【0079】
また、第1実施形態によるポータブルトイレ装置1によれば、ボウル部10がすり鉢状に形成されることにより、水位低下モードの実行によりボウル部10内の溜水面が低下すると共に上面視における溜水面の面積が減少される。よって、本実施形態によれば、粉砕中の汚物の溜水面からボウル部10外への飛び跳ねをより抑制することができると共に、粉砕中の汚物が見える溜水面の面積を減少させることにより使用者への嫌悪感を与える可能性を抑制することができる。
【0080】
さらに、第1実施形態によるポータブルトイレ装置1によれば、制御部24は、水位低下モードの実行により、ボウル部10内の溜水面を筒状部分10aまで低下させる。これにより、上面視における流路径がほぼ変わらない筒状部分10aに溜水面が位置する状態で、溜水中で汚物の粉砕を行うことができる。よって、本実施形態によれば、汚物の粉砕により溜水面が揺動したとしても上面視において溜水面の半径方向の変動が少なくでき、粉砕中の汚物を含む溜水面が広がって見えることにより使用者へ嫌悪感を与える可能性を抑制することができる。
【0081】
さらに、第1実施形態によるポータブルトイレ装置1によれば、洗浄モードの実行によりボウル部10を洗浄し、ボウル部10内に付着した汚物を下方に流下させた後、水位低下モードの実行によりボウル部10内の溜水面を低下させる。これにより、ボウル部10内に付着した汚物を水位低下モードの実行により低下された溜水に効率よく集めることができ、ボウル部10内の汚物を効率よく粉砕することができる。
【0082】
さらに、第1実施形態によるポータブルトイレ装置1によれば、水位低下モードにおいて排出ポンプ20により排出される単位時間当たりの流量が、排出モードにおいて排出ポンプ20により排出される単位時間当たりの流量よりも小さい。これにより、水位低下モードにおいて、汚物粉砕後に行われる排出モードにおける排水能力より低い排水能力でボウル部10内から洗浄水が排出される。よって、本実施形態によれば、ボウル部10内の未粉砕の汚物が、水位低下モードにおいて排出路に侵入し、排出ポンプ20を詰まらせる可能性を抑制することができる。
【0083】
さらに、第1実施形態によるポータブルトイレ装置1によれば、制御部24が水位低下モードの実行中に粉砕装置18を駆動させることにより、水位低下モードの実行中に、ボウル部10内の溜水面の水位が徐々に低下するとき、溜水に旋回流が形成され、溜水中の汚物を旋回流の流れにのせるような状態としながら下方に導き、汚物をボウル部10に沿って残り難くすることができる。よって、水位低下モードの実行終了後に、ボウル部10に汚物が残されることを抑制し、ボウル部10内の洗浄性能を向上させると共により効率的にボウル部10内の汚物を粉砕することができる。
【0084】
さらに、第1実施形態によるポータブルトイレ装置1によれば、制御部24は、吸込旋回流形成モードの実行後に水位低下モードを実行する。これにより、ボウル部10内に吸込旋回流が形成され、ボウル部10に沿っている汚物をボウル部10からある程度剥離させた状態で水位低下モードの実行を開始することができる。よって、本実施形態によれば、水位低下モードの実行終了後に、ボウル部10内で低下する水面より上方に汚物が残されることを抑制し、より効率的にボウル部10内の汚物を粉砕することができる。
【0085】
さらに、第1実施形態によるポータブルトイレ装置1によれば、汚物を排出ポンプによって加圧して排出することができるため、汚物及び洗浄水が流れる排水管路16等の配管の径を細くすることができ、ポータブルトイレ装置1を配置しやすくすることができる。
【0086】
さらに、第1実施形態によるポータブルトイレ装置1によれば、制御部24は、水位低下モードの開始以後、水位検知装置が所定の水位までのボウル部10内の水位の低下を検知した場合に、水位低下モードの実行を終了させる。よって、本実施形態によれば、水位検知装置13によりボウル部10内の水位を所定の水位まで確実に低下させることができ、汚物粉砕時に粉砕中の汚物の溜水面からボウル部10外への飛び跳ねをより抑制することができる。よって、排泄時の汚物付着の抑制及び汚物粉砕時のボウル部10外への飛び跳ねの抑制の両立をより確実に行うことができる。
【0087】
さらに、第1実施形態によるポータブルトイレ装置1によれば、ポータブルトイレ装置1が移動可能に形成されている場合、ポータブルトイレ装置1の設置状況によっては排出路の下流側に接続される可撓性管路に逆勾配(可撓性管路よりも下流側の建物配管の方が高い状況)が生じてしまう恐れがある。可撓性管路で逆勾配が生じた場合、圧損要因となる。また、可撓性管路における配管長さの増大、又は配管曲がり等も、圧損要因となる。このような圧損要因により、小便などで溜水が増加していた増加分を可撓性管路から建物配管側に排出できない恐れがあり、建物配管側に排出できなかった水がボウル部10まで戻って溜水面が高くなってしまう恐れがある。
そこで、本実施形態によれば、移動可能なポータブルトイレ装置1においても、制御部24が水位低下モードを備えていることにより、汚物粉砕時にはボウル部10内の溜水面を低下させて、粉砕中の汚物の溜水面からボウル部10外への飛び跳ねを抑制することができる。さらに、本実施形態によれば、使用者による排泄時にはボウル部10内の溜水面を高く且つ広くして、ボウル部10内の溜水面以外の乾燥している部分への汚物付着を抑制することができると共に、汚物粉砕時にはボウル部10内の溜水面を低下させて、粉砕中の汚物の溜水面からボウル部10外への飛び跳ねを抑制することができる。
【0088】
さらに、第1実施形態によるポータブルトイレ装置1によれば、通気弁40は、排水トラップ管路12側が大気圧より低く開弁圧力より高い第1負圧領域圧力である場合に閉弁状態となり、且つ排水トラップ管路12側が開弁圧力以下の第2負圧領域圧力である場合に開弁状態となる。すなわち、通気弁40が閉弁される圧力は大気圧よりも低くなっている。したがって、通気弁40が排出路に空気を取り入れた後に通気弁40が閉弁してボウル部10内の洗浄水の圧力と排水トラップ管路12内の洗浄水の圧力とが釣り合った状態では、ボウル部10内の水位よりも排水トラップ管路12内の水位の方が通気弁40の開弁圧力水頭だけ高くなる。ここで、ボウル部10内の水位を所定の汚物粉砕モードの開始時の適正水位X5に設定しようとするならば、通気弁40と排水トラップ管路12との連結部12fが、排水トラップ管路12内の水位より高い位置に設けられる必要がある。
そこで、本実施形態によれば、通気弁40と排水トラップ管路12との連結部12fが、ボウル部10内における汚物粉砕モードの開始時の適正水位高さに通気弁40の開弁圧力水頭を加えた高さ以上の高さに設けられている。これにより、ボウル部10内における汚物粉砕モードの開始時の水位を設定できる。よって、本実施形態によれば、ボウル部10内における汚物粉砕モードの開始時の水位を設定でき、確実にボウル部10内の汚物を粉砕できる。
【0089】
さらに、第1実施形態によるポータブルトイレ装置1によれば、水位低下モードの実行が終了し且つサイホン現象が終了したときの排水トラップ管路12内の水位は、ボウル部10内の水位より高くなる。しかしながら、この状態は排水トラップ管路12内の圧力とボウル部10に作用する圧力との間に圧力差があり不安定な状態となっているため、排水トラップ管路12内の圧力とボウル部10に作用する大気圧とが釣り合うまで、徐々に排水トラップ管路12内の水位は下がる一方で、ボウル部10内の水位が上昇する。このように、汚物粉砕モードの開始時の水位は、水位低下モードの実行が終了したときの水位より高くなる。そこで本実施形態によれば、水位低下モードにおいて排出ポンプ20の駆動を停止したときのボウル部10内の水位の高さが、汚物粉砕モードの開始時の水位高さより低い。これにより、水位低下モードの終了時の水位高さから汚物粉砕モード開始時の水位高さまで囲まれるボウル部10内の空間に、水位低下モードの終了時の排出路内の水を流入させることができる。よって、本実施形態によれば、水位低下モードの終了時の水位高さを汚物粉砕モードの開始時の水位高さに設定する場合と比べて、汚物粉砕モードの開始時のボウル部10内の水位の高さを低くすることができ、粉砕中の汚物の溜水面からボウル部10外への飛び跳ねをより抑制することができる。
【0090】
さらに、第1実施形態によるポータブルトイレ装置1によれば、水位低下モードにおいて排出ポンプ20の駆動を停止したときのボウル部10内の水位の高さから汚物粉砕モードの開始時の水位の高さまでのボウル部10内の容積が、連結部12fの高さから、汚物粉砕モードの開始時の水位の高さに通気弁40の開弁圧力水頭を加えた高さまでの排水トラップ管路12内の容積と等しい。よって、本実施形態によれば、汚物粉砕モードの開始時のボウル部10内の水位の高さを設定することができ、汚物粉砕モードにおいて確実に汚物を粉砕することができる。また、本実施形態によれば、通気弁40と排水トラップ管路12との連結部12fの位置の自由度を増すことができるため、ポータブルトイレ装置1のデザインの自由度を生み出すことができる。
【0091】
次に、図20及び図21を参照して、本発明の第2実施形態による便器装置について説明する。本実施形態の便器装置は、便所に据え付けられる水洗便器装置である点が上述した第1実施形態とは異なる。ここでは、本発明の第2実施形態の第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様な部分については図面に同じ参照符号を付して説明を省略する。
図20は本発明の第2実施形態による便器装置を後方斜め上方から見た全体斜視図であり、図21は本発明の第2実施形態による便器装置を示す断面図であり、図22は本発明の第2実施形態による便器装置の給水部、回転体、排出ポンプの動作、及びボウル部内の水位の変化を示すタイムチャートである。
【0092】
図20に示すように、第2実施形態による便器装置101(便器装置)は、建物の便所に据え付けられる水洗式の便器装置である。本発明の第2実施形態による便器装置101は、例えば、3.8リットル乃至6リットルの洗浄水で洗浄する、節水型の水洗大便器である。便器装置101は、汚物を粉砕して排出するため、比較的少ない洗浄水量により汚物を排出することができる。
【0093】
図21に示すように、便器装置101は、陶器製の便器本体102と、便器本体102に洗浄水を供給する給水装置である給水部4とを備えている。給水部4は、建物側の給水管108と接続されている。給水部4は、便器本体102の後方上部に設けられ、ボウル部110に形成された吐水口110cからボウル部110に洗浄水を供給する。なお、給水部4は、貯水タンクから洗浄水を供給するタンク方式のものであってもよい。給水管108は建物に据え付けられた配管により形成される。
【0094】
便器本体102は、便器本体102の前方側に設けられた汚物を受けるボウル部110と、排水トラップ管路12と、ボウル部10下方に形成された溜水部114と、を備えている。ボウル部110及び溜水部114は、陶器で形成されている。便器装置101は、ボウル部110の外周の下部が床面Fに固定されている据え付け型の装置である。なお、便器本体102は、陶器以外に、樹脂と陶器、又は樹脂のみで形成するようにしても良い。
【0095】
ボウル部110は、上方に向けて開口したボウル形状の汚物受け面110dを備えている。汚物受け面110dはすり鉢状に形成され、水平断面の汚物受け面110dの内側の面積が下降するにつれ減少している。ボウル部110には、汚物受け面110dの下部から縦方向に延びる筒状部分110aが形成されている。筒状部分110aは上面視における流路径(断面積径)がほぼ変わらず一定になるように形成されている。筒状部分110aは鉛直方向に延びる比較的短い流路を形成する。ボウル部110には、洗浄開始前において、ボウル部110下方に溜水面W0(待機状態の溜水面)を形成するように、溜水を貯留する溜水部114が形成されている。貯留された溜水の溜水面W0は汚物受け面110d上に形成される。
【0096】
ボウル部110の筒状部分110aには、ボウル部110内の水位を検知する水位検知装置13が設けられている。
【0097】
排水トラップ管路12は、ボウル部の底面に接続する接続部12aと、排水トラップを形成するように立ち上がる上昇部12bと、排水トラップの上昇部12bと接続する頂部12cとを備えている。排水トラップ管路12は、少なくとも上昇部12bと、頂部12cとにより排水トラップ構造を形成する。排水トラップ管路12の頂部12cには、建物側の排水管路116が接続される。排水管路116は、建物側の排水施設であり、その内部の流路に排水用の勾配が形成されている。便器装置101に用いられる排水トラップ管路12及び排水管路116は比較的太い配管径を有し、排水トラップを超えてオーバーフローする洗浄水を下流側に流しやすくなっている。排水管路116は、建物側の排水配管と接続するための排水ソケットであってもよい。
【0098】
便器装置101は、さらに、便器装置101の洗浄動作及び粉砕圧送動作等を制御する制御部124を備えている。制御部124は、建物の壁面の操作パネル等に配置される。制御部124は、使用者による操作部の操作又は自己の設定により、給水部4、粉砕装置18及び排出ポンプ20を制御する。制御部124は、これらの制御を行うためのCPU、メモリ等を内蔵している。制御部124は、給水部4、粉砕装置18及び排出ポンプ20等と電気的に接続され、これらの装置等に作動信号を送り、各装置等を作動させるようになっている。
【0099】
制御部124は、給水部4、回転体26、排出ポンプ20を待機状態とする待機モードと、排出ポンプ20を駆動してボウル部110内の溜水面を低下させる水位低下モードと、ボウル部110内で汚物を粉砕する汚物粉砕モードと、給水部4により供給された洗浄水によりボウル部110を洗浄する洗浄モードと、排出ポンプ20を駆動してボウル部110内の洗浄水を下流側に排出させる排出モードと、粉砕装置18を駆動してボウル部110内に旋回流を形成させる吸込旋回流形成モードと、ボウル部110内に溜水を形成する溜水形成モードとを実行可能な制御プログラムを備えている。制御部124は、さらに、他の後述された動作を実行可能な制御プログラムも備えている。
【0100】
次に、図20乃至図22により、上述した本発明の第2実施形態による便器装置の動作(作用)を説明する。動作についても、第1実施形態とほぼ同様であるので、本発明の第2実施形態の第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様な部分については図面に同じ参照符号を付して説明を省略する。第2実施形態による便器装置の動作においては、時刻t1乃至時刻t4におけるボウル部10内の水位の変化が第1実施形態によるポータブルトイレ装置の動作と異なっている。
【0101】
図21は、使用者が便器本体2を使用する前の待機状態の溜水面W0を示している。この状態においては、給水部4は停止された状態であり、粉砕装置18及び排出ポンプ20も停止された状態である。
図22においては、時刻t0以前の時刻においてこのような待機状態となっている。例えば、時刻t0は、使用者が便器本体2の使用を開始する時刻である。制御部24は、便器本体2の使用が開始される前においては、待機モードを実行する。時刻t0においては、ボウル部10内の水位は初期水位(待機状態の溜水面W0)となっている。
【0102】
図22に示すように、時刻t0~t1において、使用者が便器本体2を使用し、汚物(大便、小便、トイレットペーパー等)A(図7参照)がボウル部10内に入った状態となる。制御部24は、時刻t0~t1において、待機モードを引き続き実行する。
【0103】
時刻t1において、洗浄モードを開始させる。制御部24は、洗浄モードを数秒程度の所定時間T秒にわたって継続する。洗浄モードにおいては、制御部24は、回転体26及び排出ポンプ20は停止された待機状態を継続する。洗浄モードにおいては、ボウル部10内の水位は初期水位からほぼ一定である。便器装置101が配置される状態において、排水トラップ管路12排水トラップの部分より下流側の流路及び排水管路16には排水用の勾配が形成されているので、排出ポンプ20が停止している状態であっても、給水された洗浄水は排水トラップ管路12を超えた分が下流側に流れる。よって、ボウル部10内の水位は上昇せず初期水位W0を維持している。
【0104】
第2実施形態による便器装置101は、洗浄モード中に給水部4からボウル部110へ給水を行っているが、変形例として、洗浄モード、後述する吸込旋回流形成モード及び水位低下モード中に給水部4からボウル部110へ継続して給水を行ってもよい。このように洗浄モードから吸込旋回流形成モード及び水位低下モードまで継続して給水する場合の給水の瞬間流量は、洗浄モード、吸込旋回流形成モード及び水位低下モードのうち洗浄モードのみで給水する場合の給水の瞬間流量よりも低減される。吸込旋回流形成モード中に継続して給水が行われる場合、洗浄水がボウル部10内において旋回流を形成しながら流下するので、給水により吸込旋回流形成モードの旋回流をより強めることができる。
【0105】
再び第2実施形態による便器装置101について説明する。図22に示すように、時刻t2において、制御部124は、粉砕装置18を駆動してボウル部110内に旋回流を形成させる吸込旋回流形成モードを実行する。吸込旋回流形成モードにおいては、時刻t2においてボウル部110内の水位は初期水位W0となっており、以後時刻t3まで初期水位W0を維持している。
【0106】
図22に示すように、時刻t3において、制御部124は、排出ポンプ20を駆動してボウル部110内の溜水面を低下させる水位低下モードを実行する。図22に示すように、水位低下モードにおいては、制御部124が、排出ポンプ20の駆動を開始させ、洗浄水を、初期水位の溜水面W0の水位を溜水面W2(図21参照)の位置まで下げるような所定流量だけ排水させる。これにより、水位低下モードの実行後に実行される汚物粉砕モードにおいて、汚物粉砕時にボウル部10内の溜水面を低下させて、粉砕中の汚物の溜水面からボウル部10外への飛び跳ねを抑制することができる。
【0107】
制御部124は、水位低下モードにおいて、ボウル部110内の溜水面を筒状部分110aまで低下させる。これにより、上面視における流路径がほぼ変わらない筒状部分110aに溜水面W2が位置する状態で、溜水中で汚物の粉砕を行うことができる。汚物の粉砕により溜水面W2が揺動したり波打ったりしたとしても上面視において溜水面W2の半径方向の変動が少なくでき、粉砕中の汚物を含む溜水面W2が広がって見えることにより使用者へ嫌悪感を与える可能性を抑制することができる。
【0108】
制御部124は、水位低下モードの開始以後、水位検知装置13が溜水面W2に相当する所定の水位までのボウル部110内の水位の低下を検知した場合に、水位低下モードの実行を終了させる。
以後の第2実施形態による便器装置の動作は、第1実施形態のポータブルトイレ装置と同様であるので、説明を省略する。
【0109】
第2実施形態によるポータブルトイレ装置101において、制御部124は、洗浄モード、吸込旋回流形成モード、水位低下モードを順に実行するが、変形例として、制御部124は、洗浄モード、吸込旋回流形成モード、水位低下モードをほぼ同時に実行してもよい。ほぼ同時に実行する場合には、洗浄モード、吸込旋回流形成モード、水位低下モードをほぼ同時に開始して実行する場合や、これらのモードの開始時期が多少ずれたとしてもこれらのモードの全部又は一部が重複して実行される期間がある場合も含まれる。例えば、制御部124が、洗浄モード、吸込旋回流形成モード、水位低下モードをほぼ同時に開始して実行する場合を説明する。
時刻t1において、制御部124は、洗浄モード、吸込旋回流形成モード、水位低下モードをほぼ同時に開始させる。すなわち、制御部124は、洗浄モードの実行開始以後に水位低下モードを実行する。また、制御部124は、吸込旋回流形成モードの実行開始以後に水位低下モードを実行する。このとき、制御部124は、給水部4からの給水動作を開始させ、回転体26の回転を開始させ、さらに、排出ポンプ20を第1出力により駆動させる。回転体26の回転開始後の初期から吸込旋回流形成モードが実行される。制御部124は、時刻t2において給水部4からの給水動作を終了させる。制御部124は、時刻t2において洗浄モードを先に終了させてもよい。時刻t2において制御部124は、回転体26の回転を継続し、排出ポンプ20の駆動を継続させる。時刻t4において制御部124は、排出ポンプ20の駆動を停止させる。時刻t4において制御部24は、吸込旋回流形成モード、水位低下モードを終了させる。
これらのモードをほぼ同時に開始する場合には、時刻t1から時刻t4までの時間が、これらのモードを順に実行する場合と比べて短くされる。制御部124は、ほぼ同時にこれらのモードを実行し、洗浄モードによりボウル部110を洗浄でき、さらに、ボウル部110内に吸込旋回流Gを形成でき、さらに、ボウル部110内の溜水面を低下させることができる。
【0110】
なお、本発明の第2実施形態による便器装置101も、変形例として、水位検知装置13に代えて、水位検知装置113を備えていてもよい。本発明の第2実施形態による便器装置101も、変形例として、排出ポンプ20に代えて、真空排水装置120を備えていてもよい。本発明の第2実施形態による便器装置101も、変形例として、排出ポンプ20に代えて、ターントラップ装置220を備えていてもよい。
【0111】
次に、上述した第2実施形態による便器装置101による作用効果を説明する。
第2実施形態による便器装置101によれば、水位低下モードの実行によりボウル部110内の溜水面を低下させた後に、汚物粉砕モードの実行によりボウル部110内で汚物が粉砕される。これにより、使用者による排泄時にはボウル部110内の溜水面を高く且つ広くして、ボウル部110内の溜水面以外の乾燥している部分への汚物付着を抑制することができると共に、汚物粉砕時にはボウル部110内の溜水面を低下させて、粉砕中の汚物の溜水面からボウル部110外への飛び跳ねを抑制することができる。他の第2実施形態による便器装置101の効果についても、第1実施形態のポータブルトイレ装置1の効果とほぼ同様であるので、説明を省略する。
【符号の説明】
【0112】
1 ポータブルトイレ装置
1a 車輪
2 便器本体
4 給水部
6 フレーム
6a フレーム基部
8 給水管
10 ボウル部
10a 筒状部分
10c 吐水口
10d 汚物受け面
12 排水トラップ管路
12a 接続部
12b 上昇部
12c 頂部
12d 下降部
12e 横向部
12f 連結部
13 水位検知装置
14 溜水部
16 排水管路
16a 管路部分
16b 配管
18 粉砕装置
20 排出ポンプ
22 フィルタ
24 制御部
26 回転体
28 回転軸
30 電動モーター
32 ポンプ室
34 インペラ
36 回転軸
38 電動モーター
40 通気弁
42 弁座
44 弁部材
46 ケーシング
46a 第1室
46b 第2室
101 便器装置
102 便器本体
108 給水管
110 ボウル部
110a 筒状部分
110c 吐水口
110d 汚物受け面
113 水位検知装置
113a 流路
114 溜水部
116 排水管路
120 真空排水装置
124 制御部
212 流路
216 排水管路
220 ターントラップ装置
220a 基部
A 汚物
a 汚物
A1 矢印
A2 矢印
A3 矢印
A4 矢印
B 洗浄水
C1 矢印
C2 矢印
E 回転
F 床面
G 吸込旋回流
H 開弁圧力水頭
J1 矢印
J2 矢印
J3 矢印
K1 姿勢
K2 姿勢
P0 大気圧
P1 圧力
P2 第1負圧領域圧力
P3 第2負圧領域圧力
P4 開弁圧力
P5 負圧領域圧力
Q 建物
S 設備配管
T 所定時間
t0 時刻
t1 時刻
t2 時刻
t3 時刻
t4 時刻
t5 時刻
t6 時刻
t7 時刻
V3 容積
V4 容積
W0 溜水面(初期水位)
W1 溜水面
W2 溜水面
X1 水位
X2 水位
X5 適正水位
X6 水位
X7 水位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22