(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】蓄電素子
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20220208BHJP
H01M 50/54 20210101ALI20220208BHJP
H01G 11/72 20130101ALI20220208BHJP
H01G 11/12 20130101ALI20220208BHJP
H01M 50/477 20210101ALI20220208BHJP
H01M 50/474 20210101ALI20220208BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/54
H01G11/72
H01G11/12
H01M50/477
H01M50/474
(21)【出願番号】P 2017190452
(22)【出願日】2017-09-29
【審査請求日】2020-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】吉竹 伸介
(72)【発明者】
【氏名】川上 悟
(72)【発明者】
【氏名】相田 広徳
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-174864(JP,A)
【文献】国際公開第2012/111752(WO,A1)
【文献】特開2008-311173(JP,A)
【文献】特開2013-041741(JP,A)
【文献】特開2001-210293(JP,A)
【文献】特開2016-004633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04-39
H01M 50/40-598
H01G 11/72
H01G 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極板及びセパレータが積層された積層列を有する電極体
と、前記電極体を収容する容器とを備える蓄電素子であって、
前記積層列の積層方向における両端以外のいずれかの位置には、さらに、前記極板及び前記セパレータとは異なる板状部材が配置されており
前記板状部材は、板厚方向に曲がった曲げ部を有
し、
前記曲げ部は、前記板状部材において、前記板厚方向と直交する方向に複数並んで配置されており、
前記電極体は、電極体本体と、前記電極体本体から第一方向に突出して設けられた、前記極板の端部が積層されることで形成された集束部とを有し、
複数の前記曲げ部は、前記板状部材の、前記電極体本体に対応する部分において、前記第一方向と直交する第二方向に並んで配置されており、
前記板状部材は、前記集束部に対応する位置に導通部を有し、
前記電極体と、前記容器の、前記積層列の積層方向の壁部との間には、板厚方向に曲がった曲げ部を有する板状部材が配置されていない、
蓄電素子。
【請求項2】
前記積層列の積層方向における両端以外のいずれかの位置に配置された前記板状部材において、前記導通部と、前記複数の前記曲げ部との間に、切断部が形成されている
請求項
1記載の蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極板及びセパレータが積層された積層列を有する電極体を備える蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の極板が積層されることで形成された電極体を備える蓄電素子が広く知られている。例えば、特許文献1には、電槽とその中の極板群との隙間にスペーサが介在されている鉛蓄電池が開示されている。この鉛蓄電池において、スペーサにはその長手方向に沿って波型の曲げぐせが与えられており、当該スペーサは電槽の底部とストラップとの間で波型状態に変形して極板群に加圧接触されている。特許文献1には、上記構造により、自動化ラインに対応できる耐震型の鉛蓄電池が得られる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
極板がセパレータを介して積層された構造を有する電極体では、例えば、電極体の耐振動性または耐衝撃性の向上の観点から、電極体は、容器内において適度な力によって積層方向に押圧された状態で保持されていることが好ましい。また、電極体が積層方向に押圧されることで、極板の間隔(具体的には正極板と負極板との間隔)が狭められ、このことは、発電効率の向上の観点、または、容器内の容積における電極体の体積の割合の増加(すなわちエネルギー密度の向上)等の観点から有利である。
【0005】
そこで、例えば上記従来の技術のように、極板群(電極体)の両側に波板状のスペーサを配置することで電極体を押圧することが考えられる。しかしながらこの場合、電極体と容器の側壁との間に波板状のスペーサが配置されるため、例えば、電極体の熱が容器に伝わり難くなり、これにより電極体が温度上昇しやすくなるという問題が生じ得る。また、電極体の両側に配置されるスペーサにより容器内の容積が消費されるため、例えば、エネルギー密度の向上が困難である。さらに、電極体の両側のスペーサが、例えば、電解液の電極体への浸透の妨げとなる可能性もある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、極板及びセパレータが積層された積層列を有する電極体を備える蓄電素子であって、品質の高い蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る蓄電素子は、極板及びセパレータが積層された積層列を有する電極体を備える蓄電素子であって、前記積層列の積層方向における両端以外のいずれかの位置には、さらに、前記極板及び前記セパレータとは異なる板状部材が配置されており、前記板状部材は、板厚方向に曲がった曲げ部を有する。
【0008】
この構成によれば、極板及びセパレータの積層列に含まれる板状部材に曲げ部が存在することで、例えば、電極体に振動または衝撃が与えられた場合に、板状部材の曲げ部が平らになるように弾性変形することで、振動または衝撃を吸収することができる。また、電極体における積層列の両端以外の位置に板状部材が配置されることで、例えば、板状部材が、電極体から電極体を収容する容器への熱伝導を阻害する可能性が低減される。また、例えば、電極体の積層方向における両側からの電解液の浸透を板状部材が阻害する可能性が低減される。
【0009】
また、曲げ部を有する板状部材によって、電極体に、積層方向における弾性変形能が付加されるため、例えば、電極体の積層方向の幅を縮めながら、電極体を容器に収容することができる。その結果、曲げ部の復元力により、電極体は、積層方向の両側の壁部(容器の壁部)から押圧された状態と実質的に等価な状態となる。これにより、極板の間隔が狭められることによる発電効率の向上、または、容器内の電極体の体積割合の増加によるエネルギー密度の向上等の効果が得られる。このように、本態様に係る蓄電素子は品質が高い蓄電素子である。
【0010】
また、本発明の一態様に係る蓄電素子において、前記曲げ部は、前記板状部材において、前記板厚方向と直交する方向に複数並んで配置されているとしてもよい。
【0011】
この構成によれば、板状部材を板厚方向(電極体における積層方向)から見た場合に、複数の曲げ部が分散して配置される。これにより、電極体に与えられる振動または衝撃が板状部材によって効率よく吸収される。また、板状部材による、電極体が含む要素に対する押圧力の分散が図られ、例えば、極板の広い範囲を適度な力で押圧することができる。
【0012】
また、本発明の一態様に係る蓄電素子において、前記電極体は、電極体本体と、前記電極体本体から第一方向に突出して設けられた、前記極板の端部が積層されることで形成された集束部とを有し、複数の前記曲げ部は、前記板状部材の、前記電極体本体に対応する部分において、前記第一方向と直交する第二方向に並んで配置されているとしてもよい。
【0013】
この構成によれば、例えば電極体が押圧されることで、板状部材が、複数の曲げ部が伸ばされるように変形した場合、板状部材では、主として第二方向の幅が長くなる。そのため、例えば、板状部材が第一方向に伸びる場合に生じ得る、板状部材と集束部との干渉の問題が生じ難い。
【0014】
また、本発明の一態様に係る蓄電素子において、前記板状部材は、前記集束部に対応する位置に導通部を有するとしてもよい。
【0015】
この構成によれば、集束部の厚み方向(積層列の積層方向)のいずれかの位置に導通部が存在するため、極板の端部を、厚み方向で束ねて導通部に接合することができる。そのため、集束部の電極体本体からの突出量が比較的に短い場合であっても、集束部を導通部に接合することが可能であり、かつ、導通部を介して電極端子と電気的に接続することも可能である。これにより、例えば、電極体を収容する容器内における、蓄電または発電を行う実体的な部分である電極体本体の割合を大きくすることができ、その結果、蓄電素子のエネルギー密度が向上される。つまり、本態様に係る板状部材は、耐振動性または耐衝撃性の向上等の役割の他、エネルギー密度を向上させる役割も担うことができる。
【0016】
また、本発明の一態様に係る蓄電素子では、前記板状部材において、前記導通部と、前記複数の前記曲げ部との間に、切断部が形成されているとしてもよい。
【0017】
この構成によれば、例えば、板状部材の、複数の曲げ部が配置された部分と、導通部が配置された部分との間に、不連続な部分(切断部)が存在する。そのため、複数の曲げ部が配置された部分における伸縮が、導通部の位置を移動させるように作用する可能性が低減する。つまり、板状部材の、振動または衝撃の吸収等の機能、及び、導通部を支持する機能の双方の実効性が向上する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、極板及びセパレータが積層された積層列を有する電極体を備える蓄電素子であって、品質の高い蓄電素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施の形態に係る蓄電素子の外観を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態に係る蓄電素子の分解斜視図である。
【
図3】実施の形態に係る電極体の構成概要を示す斜視図である。
【
図4】実施の形態に係る板状部材の横断面図である。
【
図5】実施の形態に係る第一導通部に正極集束部が接合された状態を示す側面図である。
【
図6】実施の形態に係る第一導通部と正極端子との接合箇所を示す部分断面図である。
【
図7】実施の形態の変形例1に係る板状部材の構成を示す斜視図である。
【
図8】実施の形態の変形例2に係る板状部材の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態及びその変形例に係る蓄電素子について説明する。なお、以下で説明する実施の形態及びその変形例は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態及びその変形例で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態及びその変形例における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図は、模式図であり、寸法等は必ずしも厳密に図示したものではない。
【0021】
また、以下の説明及び図面中において、蓄電素子が有する一対の電極端子の並び方向、電極体の一対の集束部の並び方向、または、容器の短側面の対向方向をX軸方向と定義する。また、容器の長側面の対向方向、容器の短側面の短手方向、容器の厚さ方向、または、電極体の極板の積層方向をY軸方向と定義する。また、蓄電素子の容器本体と蓋との並び方向、容器の短側面の長手方向、電極端子の軸部の軸方向、または、上下方向をZ軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。なお、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。また、以下の説明において、例えば、X軸方向プラス側とは、X軸の矢印方向側を示し、X軸方向マイナス側とは、X軸方向プラス側とは反対側を示す。Y軸方向やZ軸方向についても同様である。
【0022】
(実施の形態)
[1.蓄電素子の全般的な説明]
まず、
図1及び
図2を用いて、本実施の形態における蓄電素子10の全般的な説明を行う。
図1は、実施の形態に係る蓄電素子10の外観を示す斜視図である。また、
図2は、実施の形態に係る蓄電素子10の分解斜視図である。
【0023】
蓄電素子10は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。蓄電素子10は、例えば、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)またはプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)等の自動車用(または移動体用)電源、電子機器用電源、または電力貯蔵用電源などに適用される。なお、蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。蓄電素子10は、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。また、蓄電素子10は、固体電解質を用いた電池であってもよい。
【0024】
これらの図に示すように、蓄電素子10は、容器100と、電極体400と、正極端子200と、負極端子300と、上ガスケット500と、上ガスケット600とを備えている。また、蓄電素子10の容器100の内部には電解液(非水電解質)が封入されているが、図示は省略する。なお、容器100に封入される電解液としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく、様々なものを選択することができる。
【0025】
容器100は、矩形筒状で底を備える容器本体110と、容器本体110の開口を閉塞する蓋板120とで構成されている。容器100は、電極体400等を内部に収容後、蓋板120と容器本体110とが溶接等されることにより、内部を密封する構造を有している。また、容器100(蓋板120及び容器本体110)は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、またはアルミニウム合金などの溶接可能な金属で形成されている。なお、蓋板120と容器本体110とは、同じ材質で形成されているのが好ましいが、異なる材質で形成されていてもかまわない。また、蓋板120には、容器100内部に電解液を注入するための注液部や、容器100の内圧が上昇したときに容器100内部のガスを排出するガス排出弁等が配置されていてもよい。
【0026】
電極体400は、正極板と負極板とセパレータとを備え、電気を蓄えることができる蓄電要素(発電要素)であり、容器100の内方に配置される。具体的には、電極体400は、正極板と負極板とがセパレータを挟んで交互に並べられた積層型の電極体である。つまり、電極体400は、正極板410、負極板420及びセパレータ480が積層された積層列を有している。電極体400は、発電及び蓄電する部分である電極体本体401と、電極体本体401と外部との電力のやり取りを行う部分である正極集束部415及び負極集束部425とを有する。
【0027】
また、本実施の形態では、電極体400における積層列の両端以外のいずれかの位置に板状部材440が配置されている。板状部材440は、第一導通部450及び第二導通部460を有し、第一導通部450には正極集束部415が接合され、第二導通部460には負極集束部425が接合されている。さらに、第一導通部450は、正極端子200と接合され、第二導通部460は、負極端子300と接合されている。これにより、電極体400は、正極端子200及び負極端子300を介して、外部の装置等との間で電力のやり取りを行うことができる。板状部材440及び電極体400の構成については
図3~
図6を用いて後述する。
【0028】
上ガスケット500及び600は、容器100の蓋板120と正極端子200及び負極端子300との間に配置される絶縁性の封止部材である。上ガスケット500及び600は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、または、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等の樹脂などによって形成されている。なお、蓋板120を挟んで上ガスケット500及び600それぞれに対向する位置には下ガスケットが配置されている。上ガスケット500及びその周辺の構造については、
図6を用いて後述する。
【0029】
正極端子200及び負極端子300は、電極体400の正極板及び負極板に電気的に接続される部材である。つまり、正極端子200及び負極端子300は、電極体400に蓄えられている電気を蓄電素子10の外部空間に導出し、また、電極体400に電気を蓄えるために蓄電素子10の内部空間に電気を導入するための金属製の部材である。例えば、正極端子200は、アルミニウムまたはアルミニウム合金などで形成され、負極端子300は、銅または銅合金などで形成されている。また、正極端子200は上ガスケット500を介して蓋板120に固定されており、負極端子300は、上ガスケット600を介して蓋板120に固定されている。
【0030】
[2.電極体及び板状部材の構成]
次に、本実施の形態に係る電極体400及び板状部材440の構成について、
図3~
図6を用いて説明する。
【0031】
図3は、実施の形態に係る電極体400の構成概要を示す斜視図である。なお、
図3では、電極体400の極板等の構成要素が視認しやすいように、各構成要素を離し、かつ、各構成要素の厚みを大きくするなどの加工がなされている。このことは、後述する
図5にも適用される。
図4は、実施の形態に係る板状部材440の横断面図である。具体的には、
図4では、
図3のIV-IV線を通るXY平面における板状部材440の断面が示されている。
【0032】
図5は、実施の形態に係る第一導通部450に正極集束部415が接合された状態を示す側面図(X軸方向から見た場合の図)である。なお、
図5では、正極板410は、太線の実線で表されており、負極板420は太線の点線で表されている。
【0033】
図3及び
図5に示すように、本実施の形態に係る電極体400は、正極板410及び負極板420がセパレータ480を介して積層されることで形成されている。
【0034】
正極板410は、アルミニウムまたはアルミニウム合金などからなる平板状かつ矩形状の基材層と、基材層の表面に形成された正極活物質層とを有している。また、正極板410は、Z軸方向プラス側に突出した端部を有している。当該端部は正極活物質層が形成されていない活物質層非形成部であり、以下、正極タブ411という。
【0035】
負極板420は、銅または銅合金などからなる平板状かつ矩形状の基材層と、基材層の表面に形成された負極活物質層とを有している。また、負極板420は、Z軸方向プラス側に突出した端部を有している。当該端部は負極活物質層が形成されていない活物質層非形成部であり、以下、負極タブ421という。なお、負極タブ421は、X軸方向において、正極タブ411とは異なる位置に設けられている。
【0036】
電極体400の正極集束部415は、複数の正極板410の端部(正極タブ411)が積層されることで形成されており、電極体400の負極集束部425は、複数の負極板420の端部(負極タブ421)が積層されることで形成されている。なお、正極集束部415及び負極集束部425の、電極体本体401からの突出方向(本実施の形態ではZ軸方向プラス側)は第一方向の一例である。
【0037】
また電極体400の積層列にはさらに、積層方向の両端以外の位置に、正極板410、負極板420及びセパレータ480とは異なる板状部材440が配置されている。本実施の形態では、Y軸方向に並ぶ積層列における略中央位置に板状部材440が配置されている。なお、板状部材440を含む電極体400の最外周は、例えば、一周以上巻かれた図示しない絶縁シート(例えセパレータ480と同じ素材の長尺状のシート)で形成されている。つまり、正極板410、負極板420及びセパレータ480からなる積層列及び当該積層列に含まれる板状部材440は、絶縁シートで巻かれることで固定されている。
【0038】
板状部材440は、
図3~
図5に示すように、PP、PE、またはPPS等の樹脂によって形成された本体部441と、電極体400の正極集束部415に対応する位置に配置された第一導通部450、及び、電極体400の負極集束部425に対応する位置に配置された第二導通部460とを有する。具体的には、第一導通部450及び第二導通部460のそれぞれは、本体部441のZ軸方向プラス側の端縁である上端縁442に取り付けられている。
【0039】
電極体400の正極集束部415は、第一導通部450と接合され、電極体400の負極集束部425は第二導通部460と接合されている。具体的には、例えば
図5に示すように、第一導通部450の両側面に、正極集束部415が寄せ集められた状態で、正極集束部415が第一導通部450に接合される。なお、接合の手法に特に限定はなく、例えば超音波接合、抵抗溶接、及びかしめ接合等が採用される。
【0040】
このように、第一導通部450に正極集束部415が接合されることで、第一導通部450は、電極体400が有する正極側の端子として機能する。具体的には、第一導通部450は第一方向(Z軸方向プラス側)の端部に導電部材が接続される接続部451を有している。本実施の形態では、第一導通部450のZ軸方向プラス側の端面が、導電部材の一例である正極端子200と接合される接続部451として機能する。なお、第一導通部450と正極端子200との接合箇所については、
図6を用いて後述する。
【0041】
ここで、極板がセパレータを介して積層された構造を有する電極体では、上述のように、電極体の耐振動性または耐衝撃性の向上の観点から、電極体は、容器内において適度な力によって積層方向に押圧された状態で保持されていることが好ましい。この点に関し、長尺帯状の極板がセパレータを介して積層され、かつ、巻回されることで形成された巻回型の電極体であれば、湾曲部が存在することで、押圧に対する柔軟性を有している。具体的には、巻回型の電極体における一対の湾曲部の間の平坦部を、巻回軸と直交する方向の両側から押圧した場合、湾曲部が幅を狭めるように変形することで電極体の全体が弾性変形する。従って、その状態で電極体を容器に収容することで、少なくとも平坦部における極板の間隔が狭められた状態で電極体が容器に保持される。
【0042】
しかしながら、本実施の形態に係る電極体400のような積層型の電極体の場合、積層方向における弾性には期待できないため、例えば積層方向に押圧することで幅を縮めながら容器に収容することに有意性はなく、かつ、技術的にも困難である。また、電極体の積層方向の幅と略同一の幅を有する容器に電極体を収容することで、容器内における電極体の体積割合を向上させることは可能であるが、この場合、例えば、収容作業において。容器の開口の縁で電極体を傷つけやすいという問題が生じる。また、上記従来の技術のように、電極体と容器の側壁との間にスペーサを配置した場合、上述のように、放熱性の低下等の問題が生じ得る。
【0043】
そこで、本実施の形態に係る蓄電素子10では、電極体400の積層列に含まれる板状部材440によって、電極体400に積層方向の弾性変形能を付加する構成が採用されている。具体的には、板状部材440は、
図3及び
図4に示すように、板厚方向(本実施の形態ではY軸方向)に曲がった曲げ部445を有している。板状部材440は上述のように、例えば樹脂により形成されており、曲げ部445は、板厚方向に押圧された場合、平らになるように弾性変形することができる。
【0044】
つまり、本実施の形態に係る蓄電素子10は、正極板410、負極板420、及びセパレータ480が積層された積層列を有する電極体400を備える。この蓄電素子10において、電極体400の積層列の積層方向における両端以外のいずれかの位置には、さらに正極板410、負極板420、及びセパレータ480とは異なる板状部材440が配置されている。板状部材440は、板厚方向に曲がった曲げ部445を有する。
【0045】
この構成によれば、電極体400の積層列に含まれる板状部材440に曲げ部445が存在することで、例えば、電極体400に振動または衝撃が与えられた場合に、板状部材440の曲げ部445が平らになるように弾性変形することで、振動または衝撃を吸収することができる。言い換えると、板状部材440は積層列に含まれる部分(本体部441)の厚みを変化させるように弾性変形することで、振動または衝撃を吸収することができる。また、電極体400における積層列の両端以外の位置に板状部材440が配置されることで、例えば、板状部材440が、電極体400から容器100への熱伝導を阻害する可能性が低減される。これにより、電極体400の熱を、容器100を介して外部に効率よく放出することができる。また、例えば、電極体400の積層方向における両側からの電解液の浸透を板状部材440が阻害する可能性が低減される。
【0046】
また、曲げ部445を有する板状部材440によって、積層型の電極体400に、積層方向における弾性変形能が付加されるため、例えば、電極体400の積層方向の幅を縮めながら、電極体400を容器100に収容することができる。その結果、伸ばされた曲げ部445の復元力により、電極体400は、積層方向の両側の壁部(容器100のY軸方向の壁部)から押圧された状態と実質的に等価な状態となる。これにより、例えば正極板410と負極板420との間隔が狭められることによる発電効率の向上、または、容器100内の電極体400の体積割合の増加によるエネルギー密度の向上等の効果が得られる。このように、本態様に係る蓄電素子10は品質が高い蓄電素子である。
【0047】
より具体的には、本実施の形態に係る蓄電素子10において、曲げ部445は、板状部材440において、板厚方向と直交する方向に複数並んで配置されている。
【0048】
すなわち、本実施の形態では、板状部材440を板厚方向(電極体400における積層方向)から見た場合に、複数の曲げ部445が分散して配置されている。これにより、電極体400に与えられる振動または衝撃が板状部材440によって効率よく吸収される。また、板状部材440による、電極体400が含む要素(正極板410、負極板420、及びセパレータ480)に対する押圧力の分散が図られ、例えば、正極板410及び負極板420の広い範囲を適度な力で押圧することができる。
【0049】
また、本実施の形態では、板状部材440の本体部441において、曲げ部445が連続して形成されていることで、本体部441は波板の形状を有している。また、複数の曲げ部445の並び方向は、例えば正極集束部415の突出方向と直交する方向である。
【0050】
つまり、本実施の形態に係る蓄電素子10において、電極体400は、電極体本体401と、電極体本体401から第一方向に突出して設けられた、正極タブ411が積層されることで形成された正極集束部415とを有する。複数の曲げ部445は、板状部材440の、電極体本体401に対応する部分において、第一方向と直交する第二方向に並んで配置されている。なお、本実施の形態では、第一方向は、Z軸方向プラス側であり、第二方向は、X軸方向プラス側またはマイナス側である。つまり、本実施の形態において、複数の曲げ部445が並ぶことで形成された波形状における稜線及び谷線は、第一方向と平行である。
【0051】
この構成によれば、例えば電極体400が押圧されることで、板状部材440が、複数の曲げ部445が伸ばされるように変形した場合、板状部材440は、主として第二方向(X軸方向)の幅が長くなる。そのため、例えば、板状部材440が第一方向に伸びる場合に生じ得る、板状部材440と正極集束部415との干渉の問題が生じ難い。
【0052】
また、本実施の形態に係る板状部材440は、曲げ部445を有することによる、振動または衝撃の吸収、及び、極板の押圧等の役割の他、導通部を支持する役割も担っている。
【0053】
具体的には、本態様に係る蓄電素子10において、板状部材440は、正極集束部415に対応する位置に第一導通部450を有している。
【0054】
このように、本実施の形態では、正極集束部415の厚み方向(積層列の積層方向)のいずれかの位置に第一導通部450が存在するため、正極タブ411を、厚み方向で束ねて第一導通部450と接合することができる。そのため、正極集束部415の電極体本体401からの突出量が比較的に短い場合であっても、正極集束部415を第一導通部450に接合することが可能であり、かつ、第一導通部450を介して正極端子200と電気的に接続することができる。これにより、例えば、容器100内における、蓄電または発電を行う実体的な部分である電極体本体401の割合を大きくすることができ、その結果、蓄電素子10のエネルギー密度が向上される。つまり、本実施の形態に係る板状部材440は、耐振動性または耐衝撃性の向上等の役割の他、エネルギー密度を向上させる役割も担うことができる。従って、本実施の形態に係る蓄電素子10は、例えば、振動または衝撃が与えられやすい環境に置かれる、自動車等の移動体に搭載される蓄電素子であって、小型化と大出力とを求められる蓄電素子として好適である。
【0055】
より詳細には、本実施の形態において、板状部材440が有する本体部441は、第一導通部450から、電極体400の、正極集束部415とは反対側の端部まで延設されている。
【0056】
すなわち、電極体400の正極集束部415を上向きの姿勢で電極体400を容器100に収納した状態において、本体部441が容器100の底に到達する。従って、第一導通部450の高さ方向の位置規制が本体部441によってなされた状態で、第一導通部450と正極端子200との接合作業を行うことができる。つまり、例えば正極端子200を第一導通部450に押し当てた状態で、溶接等の接合の作業を行うことができるため、これにより、例えば接合強度の向上が図られる。その結果、エネルギー密度が高い蓄電素子であって、信頼性が向上された蓄電素子10を得ることができる。
【0057】
また、上述のように、本体部441において、複数の曲げ部445はX軸方向に並んで配置されているため、複数の曲げ部445が伸ばされるように変形した場合、板状部材440は、主としてX軸方向の幅が長くなる。そのため、本体部441の下端部(Z軸方向マイナス側の端部)が容器100の底に接触した状態であっても、複数の曲げ部445の変形は妨げられない。つまり、板状部材440による、振動または衝撃の吸収機能は発揮される。
【0058】
なお、本実施の形態に係る板状部材440はさらに、負極集束部425に対応する位置に第二導通部460を有している。つまり、本実施の形態では、一枚の板状部材440が、正極用及び負極用の2つの導通部(450、460)を有しているため、正極集束部415及び負極集束部425の両方が比較的に短い場合であっても、それぞれの集束部は対応する導通部に接合することができる。つまり、一つの板状部材440を備えるという簡易な構成によってエネルギー密度が向上された蓄電素子10を得ることができる。
【0059】
ここで、本実施の形態に係る蓄電素子10では、上述のように、正極側では第一導通部450と正極端子200とが接合され、かつ、負極側では第二導通部460と負極端子300とが接合される。また、導通部と電極端子との接合の態様は正極側と負極側とで実質的に同一であるため、正極側及び負極側の代表として、正極側の第一導通部450と正極端子200との接合の態様について
図6を用いて説明する。
【0060】
図6は、実施の形態に係る第一導通部450と正極端子200との接合箇所を示す部分断面図である。具体的には、
図6は、
図2のVI-VI線を通るXZ平面における蓄電素子10の部分断面が示されている。また、板状部材440については断面ではなく側面が図示されており、電極体400の図示は省略されている。
【0061】
図6に示すように、正極端子200は、バスバー等が接合される端子本体210と、端子本体210から延設された軸部220とを有している。本実施の形態では、軸部220は、有底筒状に形成されている。
図6に示すように、軸部220の先端部が、容器100の内側(下ガスケット510の下方)でかしめられることで、正極端子200が、上ガスケット500及び下ガスケット510とともに蓋板120に固定される。
【0062】
また、かしめられることで平坦な形状となった軸部220の先端部は、第一導通部450の上端面(つまり接続部451)と、例えばレーザ溶接によって接合される。つまり、
図6におけるAで示される領域において、正極端子200と第一導通部450とが機械的及び電気的に接続される。
【0063】
なお、正極端子200と第一導通部450との接合の手法は溶接には限定されない。例えば、第一導通部450に、接続部451としてのネジ軸を設け、軸部220の先端部を貫通したネジ軸にナットを螺合させることで正極端子200と第一導通部450とを接続してもよい。また、第一導通部450に、接続部451としてのネジ穴を設け、軸部220の先端部を貫通したネジ軸をネジ穴に螺合させることで正極端子200と第一導通部450とを接続してもよい。また、接続部451としてのネジ軸またはネジ穴を第一導通部450に設ける場合、例えば樹脂製のO(オー)リングを用いて、軸部220におけるネジ軸が貫通する箇所の気密を維持してもよい。また、接続部451としてのネジ軸を第一導通部450に設ける場合、ネジ軸は、第一導通部450に一体に設けられていてもよく、第一導通部450に溶接またはかしめ等で取り付けられた別部品であってもよい。
【0064】
また、詳細な図示及び説明は省略するが、電極体400の負極側も、正極側と同様の態様で負極端子300と電気的に接続される。すなわち、負極集束部425は、第二導通部460に超音波接合等によって接合され、第二導通部460の接続部461は、負極端子300とレーザ溶接等によって接続される。
【0065】
以上、実施の形態に係る蓄電素子10について説明したが、蓄電素子10は、
図3~
図5に示す態様とは異なる態様の板状部材440を備えてもよい。そこで、以下に、蓄電素子10が備える板状部材440についての変形例を、上記実施の形態との差分を中心に説明する。
【0066】
(変形例1)
図7は、実施の形態の変形例1に係る板状部材440aの構成を示す斜視図である。
図7に示すように、本変形例に係る板状部材440aは、X軸方向に並ぶ複数の曲げ部445を有する本体部441と、本体部441の上端部においてX軸方向に離間して配置された第一導通部450及び第二導通部460とを有する。この基本構成において、本変形例に係る板状部材440aは、上記実施の形態に係る板状部材440と共通する。本変形例では、板状部材440aにおいて、第一導通部450と、複数の曲げ部445との間に、切断部446が形成されている点に特徴を有する。なお、本変形例では、第二導通部460と複数の曲げ部445との間にも切断部446が形成されている。また、本変形例では、本体部441のX軸方向の端縁から、本体部441のX軸方向の中心部に向かって伸びるスリットが切断部446として設けられている。
【0067】
このように、本変形例では、板状部材440aの、複数の曲げ部445が配置された部分と、第一導通部450及び第二導通部460が配置された部分との間に、不連続な部分(切断部446)が存在する。そのため、複数の曲げ部445が配置された部分における伸縮が、第一導通部450及び第二導通部460の位置を移動させるように作用する可能性が低減する。つまり、板状部材440aの、振動または衝撃の吸収等の機能、及び、導通部を支持する機能の双方の実効性が向上する。
【0068】
なお、
図7に示される切断部446のサイズ、形状、及び位置は一例であり、切断部446は、
図7とは異なるサイズ、形状、または位置に形成されてもよい。例えば、Z軸方向の幅が実質的にゼロと認識されるスリットが、切断部446として板状部材440aに設けられてもよい。つまり、X軸方向に伸びる線状の切り込みが、切断部446として板状部材440aに設けられてもよい。この場合、例えば切断部446の形成が容易である。
【0069】
また、切断部446のX軸方向の長さにも特に限定はないが、
図7に示すように、例えば正極側において、第一導通部450の直下(Z軸方向マイナス側)の領域を通過する長さに切断部446を配置することで、以下の効果が生じる。すなわち、複数の曲げ部445が変形することで本体部441がX軸方向に伸縮した場合において、その伸縮が、第一導通部450の位置に与える影響がほぼなくなる。このことは、負極側の切断部446についても同じである。
【0070】
また、例えば、本体部441における、第一導通部450の直下(Z軸方向マイナス側)の領域の少なくとも一部に、切断部446が存在しないように、切断部446を配置してもよい。この場合は、第一導通部450の直下に、本体部441の下端部(Z軸方向マイナス側の端部)まで連続する部分が存在する。そのため、例えば、正極端子200と第一導通部450との接合作業の際における、本体部441による第一導通部450の支持の安定化が図られる。このことは、負極側の切断部446についても同じである。
【0071】
(変形例2)
図8は、実施の形態の変形例2に係る板状部材440bの構成を示す斜視図である。
図8に示すように、本変形例に係る板状部材440bは、複数の曲げ部445を有する本体部441と、本体部441の上端部においてX軸方向に離間して配置された第一導通部450及び第二導通部460とを有する。この基本構成において、本変形例に係る板状部材440bは、上記実施の形態に係る板状部材440と共通する。本変形例では、板状部材440bにおいて、複数の曲げ部445がZ軸方向に並べられている点に特徴を有する。つまり、複数の曲げ部445は、電極体400における正極集束部415及び負極集束部425の突出方向である第一方向と平行な方向に並べられている。
【0072】
この場合であっても、板状部材440bは、積層型の電極体400に、積層方向における弾性変形能を付加することができるため、例えば振動または衝撃を吸収する機能、及び、正極板410と負極板420との間隔を狭める機能等が発揮される。また、第一導通部450及び第二導通部460を有することで、上述のように、正極集束部415及び負極集束部425の短縮化等が図られる。
【0073】
なお、本変形例において、板状部材440bの本体部441が板厚方向(Y軸方向)に押圧された場合、本体部441は、Z軸方向に伸びることで、第一導通部450及び第二導通部460を、Z軸方向プラス側(上向き)に押圧する可能性がある。しかし、その押圧力の向きは、第一導通部450及び第二導通部460を、正極端子200及び負極端子300の方向に押さえる向きである。従って、その押圧力が、第一導通部450と正極端子200との接合箇所、及び、第二導通部460と負極端子300との接合箇所に不具合を起こすように作用する可能性は低い。また、複数の曲げ部445が変形することによる本体部441の伸びを阻害しないように、本体部441は、本体部441の下端部が容器100の底に接触しないサイズまたは形状に形成されていることが好ましい。つまり、この場合は、本体部441は、上端部が第一導通部450及び第二導通部460に拘束されていることにより、主としてZ軸方向マイナス側(下向き)に伸びる。
【0074】
また、複数の曲げ部445の並び方向は、Z軸方向に対して傾いた方向であってもよい。つまり、複数の曲げ部445は、XZ平面内における任意の方向に並べることができ、かつ、どの方向に並べた場合であっても、少なくとも、積層型の電極体400に積層方向における弾性変形能を付加する機能は発揮される。
【0075】
(他の実施の形態)
以上、本発明に係る蓄電素子について、実施の形態及びその変形例に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、上記実施の形態及び変形例に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記実施の形態または変形例に施したものも、あるいは、上記説明された複数の構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0076】
例えば、板状部材440が有する曲げ部445の数は1以上であればよい。つまり、板状部材440は、少なくとも1つの曲げ部445を有すれば、電極体400に積層方向の弾性変形能を付加することができる。つまり、耐振動性または耐衝撃性の向上等の効果が得られる。
【0077】
また、曲げ部445の形状は、
図4に示される形状には限定されないが、曲げ部445における、正極板410、負極板420またはセパレータ480に接触する部分は、曲面または平面であることが好ましい。これにより、曲げ部445が、直接的に押圧する正極板410、負極板420またはセパレータ480を損傷する可能性が低減される。
【0078】
また、曲げ部445の形状の別例としては、例えばドーム形状が挙げられる。つまり、本体部441からY軸方向に膨出したドーム状の部分が、曲げ部445として機能してもよい。この場合、ドーム状の部分をY軸方向から見た場合の形状としては、円形、長円形、楕円形、多角形など各種の形状を採用し得る。このように、曲げ部445としてドーム状の形状を採用した場合、例えば、1つの曲げ部445が比較的に広い範囲を押圧することができる。これにより、例えば、曲げ部445による押圧力が所定の点または線上に集中することが避けられる。
【0079】
また、
図4では、曲げ部445は連続して並べられているが、隣り合う2つの曲げ部445の間に、フラットな領域(XZ平面に平行な領域)が存在してもよい。例えば、本体部441において、XZ平面内の所定の部分のみに1以上の曲げ部445を配置し、他の部分はフラットな領域としてもよい。これにより、Y軸方向から見た場合における電極体400の一部の領域であって、当該所定の部分に対応する領域を、主として押圧された状態に置くことができる。
【0080】
また、例えば
図5において、板状部材440は、セパレータ480に挟まれているが、板状部材440の本体部441が樹脂等の絶縁材料により形成されている場合、板状部材440の側面にセパレータ480が配置されていなくてもよい。つまり、板状部材440の両側に、セパレータ480を介在させずに、正極板410または負極板420が配置されていてもよい。
【0081】
また、板状部材440は、PP、PE、またはPPS等の樹脂で形成された本体部441に、金属製の第一導通部450及び第二導通部460が取り付けられるとしたが、板状部材440の構成はこれに限定されない。例えば、金属板の一部を残し、他の部分の表面を樹脂でコーティングすることで、樹脂がコーティングされた部分である本体部と、金属板が露出した部分である第一導通部とを有する板状部材が構成されてもよい。なお、この場合、本体部に第二導通部としての金属部材を取り付けることで、金属板を基材とする板状部材であって、実質的に板状部材440と同一の機能を備える板状部材を得ることができる。なお、板状部材440の基材として金属が採用された場合であっても、例えば、電極体400に押圧力が働いた場合に、正極板410、負極板420、及びセパレータ480を損傷させることなく曲げ部445を弾性変形させることは可能である。また、インサート成形によって、金属製の第一導通部450及び第二導通部460と、樹脂製の本体部441とを有する板状部材440が作製されてもよい。
【0082】
また、導通部を備える板状部材は、正極用と負極用とで別々に配置されていてもよい。例えば、本体部441(
図3参照)に第一導通部450のみを取り付けることで正極用の板状部材を構成し、別の本体部441に第二導通部460のみを取り付けることで負極用の板状部材を構成してもよい。この場合、電極体400に、積層方向の厚みを変化させるように弾性変形する板状部材が、積層列に2つ含まれることになる。そのため、例えば、積層型の電極体400における積層方向の弾性変形能が向上する。その結果、例えば電極体400の耐振動性または耐衝撃性が向上する。また、例えば、第一導通部450及び第二導通部460の位置が、積層方向においてずらされる。そのため、例えば、正極端子200及び負極端子300の構造、サイズ、及び容器100における位置等に応じて、第一導通部450及び第二導通部460のそれぞれを適切な位置に配置することができる。
【0083】
また、第一導通部450と正極端子200とは直接的に接続される必要はない。例えば、第一導通部450と正極端子200との間に、例えば集電体と呼ばれる金属部材が介在してもよい。このことは、負極側の第二導通部460についても同じである。
【0084】
また、板状部材440は、第一導通部450及び第二導通部460を備えなくてもよい。つまり、板状部材440は、1以上の曲げ部445を有することで、電極体400に、積層方向における弾性変形能を付加することができる。これにより、上述のように、電極体400の耐振動性もしくは耐衝撃性の向上、極板の間隔が狭められることによる発電効率の向上、または、容器100内の電極体400の体積割合の増加によるエネルギー密度の向上等の効果をもたらすことができる。
【0085】
また、板状部材440は、例えば、長尺帯状の極板を山折りと谷折りとの繰り返しによって蛇腹状に積層した構造を有する電極体に対して配置されてもよい。この場合であっても、電極体は、正極板、負極板及びセパレータが積層された積層列を有しており、かつ、積層列の、積層方向と直交する方向の端部には集束部が形成されている。従って、この積層列のいずれかの位置に板状部材440を配置することで、耐振動性または耐衝撃性の向上等の効果を得ることは可能である。
【0086】
なお、上記の板状部材440に関する各種の補足事項は、変形例1に係る板状部材440a及び変形例2に係る板状部材440bのそれぞれにも適用される。また、上記実施の形態及び上記変形例を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子等に適用できる。
【符号の説明】
【0088】
10 蓄電素子
100 容器
110 容器本体
120 蓋板
200 正極端子
210 端子本体
220 軸部
300 負極端子
400 電極体
401 電極体本体
410 正極板
411 正極タブ
415 正極集束部
420 負極板
421 負極タブ
425 負極集束部
440、440a、440b 板状部材
441 本体部
445 曲げ部
446 切断部
450 第一導通部
451、461 接続部
460 第二導通部
480 セパレータ
500、600 上ガスケット
510 下ガスケット