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  • 特許-車両用荷台結合構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】車両用荷台結合構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 33/02 20060101AFI20220208BHJP
【FI】
B62D33/02 S
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017201492
(22)【出願日】2017-10-18
(65)【公開番号】P2019073197
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 俊輔
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-007083(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物自動車のキャビンと荷台とを結合する車両用荷台結合構造であって、
前記荷台の側壁の前縁に沿って該荷台の床よりも下方にまで延びていて該側壁が結合されるデッキフロントピラーと、
前記デッキフロントピラーのうち前記荷台の床よりも上側で前記キャビンと結合する上側結合部と、
前記デッキフロントピラーのうち前記荷台の床よりも下側で前記キャビンと結合する下側結合部と
前記下側結合部よりも車幅方向内側に存在するデッキフロアサイドフレームと該下側結合部近傍とを車幅方向につなぐデッキピラーロアガセットとを備えることを特徴とする車両用荷台結合構造。
【請求項2】
前記上側結合部は、
前記デッキフロントピラーおよび前記キャビンを車両前後方向にまたぐブラケットと、
前記ブラケットと前記デッキフロントピラーおよび前記キャビンを車幅方向に結合する所定の締結具とを含み、
前記下側結合部は、前記デッキフロントピラーと前記キャビンとを車両前後方向に結合していることを特徴とする請求項1に記載の車両用荷台結合構造。
【請求項3】
前記ブラケットは、前記キャビンの後面を構成するキャビンバックパネルに結合されていて、
前記キャビンバックパネルの側縁は車両後方に屈曲していて、該側縁に前記ブラケットが重なっていることを特徴とする請求項2に記載の車両用荷台結合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用荷台結合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラック(貨物自動車)のうち、キャビンの後方に無蓋の荷台を備える一般的なタイプは「平ボディ」と呼ばれ、箱型の架装物を備える「バン」と区別されている。平ボディタイプのトラックは、荷台が床面と側壁(通称「あおり」)で構成されていて、後方の側壁のみが開閉できるものを「一方開」と呼び、後方および左右の側壁が開閉できるものを「三方開」と呼ぶ。
【0003】
トラックでは、荷台の振動等を抑えるために、キャビンと荷台との結合剛性の向上が望まれている。例えば、特許文献1には、トラックのキャビンと荷台の取付構造が開示されている。特許文献1の技術では、荷台の前面であるデッキフロントパネル9にデッキマウントブラケット10を設け、このデッキマウントブラケット10を介して荷台をキャビンに結合させることで、キャビンと荷台との結合剛性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-327170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、トラックの車種によっては、特許文献1に記載のデッキフロントパネル9は存在せず、キャビンバックパネル4がそのまま荷台の前壁の役割をしている場合もある。すなわち、キャビンと荷台との結合剛性の向上にあたって、デッキマウントブラケット10に代わる別の構造が求められる場合がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、キャビンと荷台との結合剛性の向上が可能な車両用荷台結合構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用荷台結合構造の代表的な構成は、貨物自動車のキャビンと荷台とを結合する車両用荷台結合構造であって、荷台の側壁の前縁に沿って荷台の床よりも下方にまで延びていて側壁が結合されるデッキフロントピラーと、デッキフロントピラーのうち荷台の床よりも上側でキャビンと結合する上側結合部と、デッキフロントピラーのうち荷台の床よりも下側でキャビンと結合する下側結合部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、キャビンと荷台との結合剛性の向上が可能な車両用荷台結合構造を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例にかかる車両用荷台結合構造の概要を示す図である。
図2図1(b)のデッキフロントピラーを荷台の内側上方から示す斜視図である。
図3図2(b)のデッキフロントピラーのB-B断面を各方向から示す斜視図である。
図4図2(b)のデッキフロントピラーの下端付近を別方向から示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る車両用荷台結合構造は、貨物自動車のキャビンと荷台とを結合する車両用荷台結合構造であって、荷台の側壁の前縁に沿って荷台の床よりも下方にまで延びていて側壁が結合されるデッキフロントピラーと、デッキフロントピラーのうち荷台の床よりも上側でキャビンと結合する上側結合部と、デッキフロントピラーのうち荷台の床よりも下側でキャビンと結合する下側結合部とを備えることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、荷台の床に交差して上下に延びるデッキフロントピラーを介することで、荷台の側壁のキャビンへの結合剛性を向上させることができる。したがって、走行中の振動や異音なども抑えることが可能になる。
【0012】
上記の上側結合部は、デッキフロントピラーおよびキャビンを車両前後方向にまたぐブラケットと、ブラケットとデッキフロントピラーおよびキャビンを車幅方向に結合する所定の締結具とを含み、下側結合部は、デッキフロントピラーとキャビンとを車両前後方向に結合しているとよい。
【0013】
上記構成によれば、上側結合部と下側結合部とで互いに異なる方向に結合しているため、デッキフロントピラーとキャビンとの結合剛性をさらに向上させることが可能になる。
【0014】
上記のブラケットは、キャビンの後面を構成するキャビンバックパネルに結合されていて、キャビンバックパネルの側縁は車両後方に屈曲していて、側縁にブラケットが重なっていてもよい。
【0015】
上記構成によって、キャビンバックパネルとブラケットとを好適に結合することが可能になる。
【0016】
当該車両用荷台結合構造はさらに、下側結合部よりも車幅方向内側に存在するデッキフロアサイドフレームと下側結合部近傍とを車幅方向につなぐデッキピラーロアガセットを備えてもよい。
【0017】
上記構成によって、下側結合部付近の剛性を向上させ、デッキフロントピラーを介したキャビンと荷台との結合剛性も向上させることが可能になる。
【実施例
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
図1は、本発明の実施例にかかる車両用荷台結合構造(結合構造100)の概要を示す図である。図1(a)は、結合構造100の実施されたトラック102を示している。以下、図1その他の本願のすべての図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Backward)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Leftward)、R(Rightward)、車両上下方向をそれぞれ矢印U(upward)、D(downward)で例示する。
【0020】
トラック102は、平ボディタイプの三方開のものであって、荷台104の左右の側壁(サイドゲートパネル106)を開閉することが可能になっている。当該結合構造100は、このサイドゲートパネル106と、客室側であるキャビン108とを高い剛性で結合することが可能になっている。
【0021】
図1(b)は、図1(a)のトラック102のA部拡大図である。本実施例では、サイドゲートパネル106とキャビン108とを、デッキフロントピラー110を介して結合している。デッキフロントピラー110は、上下方向に延びる柱状の部材であって、サイドゲートパネル106の前縁に沿いつつ、荷台104の床(デッキフロアパネル112)よりも下方にまで延びている。デッキフロントピラー110の上部の車幅方向外側にはゲートフック114が設けられていて、ゲートフック114を使用してサイドゲートパネル106を連結させることが可能になっている。
【0022】
図2は、図1(b)のデッキフロントピラー110を荷台104の内側上方から示す斜視図である。デッキフロントピラー110は、デッキフロアパネル112に交差して上下方向に延びている。当該結合構造100では、デッキフロントピラー110の上側結合部を、ブラケット116と複数の締結具(ボルト118)によって実現している。上側結合部は、デッキフロントピラー110のうちデッキフロアパネル112よりも上側である上端付近を、キャビン108のキャビンバックパネル120に結合している。
【0023】
図2(b)は、図2(a)のデッキフロアパネル112を省略した図である。当該結合構造100では、デッキフロントピラー110の下側結合部を、複数のボルト122によって実現している。下側結合部は、デッキフロントピラー110のうちデッキフロアパネル112よりも下側である下端付近を、キャビン108の車幅方向の脇のピラー部124に結合している。
【0024】
図3は、図2(b)のデッキフロントピラー110のB-B断面を各方向から示す斜視図である。図3(a)では、デッキフロントピラー110のB-B断面を、車両後方の左斜め上方から示している。デッキフロントピラー110は、主にデッキフロアパネル112(図2(a)参照)よりも上側が、閉断面を形成する四角柱になっている。
【0025】
ブラケット116は、デッキフロントピラー110およびキャビンバックパネル120を車両前後方向にまたいでいる。ボルト118は、ブラケット116とデッキフロントピラー110およびキャビン108に対して車幅方向の内側から外側に向かって通され、これらを締結している。
【0026】
図3(b)では、デッキフロントピラー110のB-B断面を、車幅方向右側の斜め上方から示している。ここで、キャビンバックパネル120は、キャビン108の後面を構成する部材であるが、側縁126が車両後方に屈曲している。そして、側縁126は、閉断面を有するキャビン108のピラー部124に車幅方向内側から重なっている。ブラケット116は、側縁126に対してさらに車幅方向内側から重なって、これら側縁126およびピラー部124にボルト118によって締結されている。この構成によって、デッキフロントピラー110の上端付近は、キャビン108に高い剛性で結合される。
【0027】
図4は、図2(b)のデッキフロントピラー110の下端付近を別方向から示す図である。図4(a)は、図2(b)のデッキフロントピラー110のC-C断面を車両後方の左側斜め上方から示している。デッキフロントピラー110の下端付近は、ボルト122によってキャビン108のピラー部124に車両前後方向に結合される。このとき、デッキフロントピラー110の下端付近は、車両後方側が開口した断面コ字状になっていて、車両後方側からのボルト122の締結がしやすくなっている。
【0028】
再び図2(b)を参照する。上記説明した上側結合部(ブラケット116、ボルト118)および下側結合部(ボルト122)によって、デッキフロントピラー110は、上端付近がキャビン108に車幅方向に結合され、下端付近がキャビン108に車両前後方向に結合されている。すなわち、デッキフロントピラー110は、上端付近と下端付近とが互いに異なる方向に結合されている。
【0029】
走行時の車体のねじれなどによるサイドゲートパネル106からの荷重は、ゲートフック114(図1(b)参照)からデッキフロントピラー110に伝わり、デッキフロントピラー110の上側結合部および下側結合部からキャビン108へと伝わる。本実施例では、上記のように上側結合部と下側結合部とで互いに異なる方向に結合しているため、デッキフロントピラー110を介したサイドゲートパネル106とキャビン108との結合剛性をさらに向上させることが可能になっている。したがって、走行中におけるサイドゲートパネル106の振動や異音なども抑えることが可能になっている。
【0030】
図4(b)は、図2(b)のデッキフロントピラー110の下端付近を下方から示した斜視図である。デッキフロントピラー110の下端付近の車幅方向内側には、デッキピラーロアガセット128が設けられている。
【0031】
デッキピラーロアガセット128は、デッキフロントピラー110の下端付近と、デッキフロントピラー110よりも車幅方向内側に存在するデッキフロアサイドフレーム130とを車幅方向につなぐ部材である。デッキフロアサイドフレーム130は、荷台104(図1(a)参照)を支える車両前後方向に延びる構造物であって、本来的に剛性が高い。デッキピラーロアガセット128は、デッキフロアサイドフレーム130とデッキフロントピラー110の下端近傍とを車幅方向につなぐことで、下側結合部であるボルト122付近の剛性を向上させる。したがって、デッキピラーロアガセット128を備えることで、デッキフロントピラー110を介したキャビン108と荷台104との結合剛性も向上させることが可能になっている。
【0032】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、車両用荷台結合構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
100…結合構造、102…トラック、104…荷台、106…サイドゲートパネル、108…キャビン、110…デッキフロントピラー、112…デッキフロアパネル、114…ゲートフック、116…ブラケット、118…ボルト、120…キャビンバックパネル、122…ボルト、124…ピラー部、126…側縁、128…デッキピラーロアガセット、130…デッキフロアサイドフレーム
図1
図2
図3
図4