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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20220208BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G21/00 370
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017203889
(22)【出願日】2017-10-20
(65)【公開番号】P2019078814
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100155620
【弁理士】
【氏名又は名称】木曽 孝
(72)【発明者】
【氏名】田村 暢康
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-244320(JP,A)
【文献】特開平07-319309(JP,A)
【文献】特開2007-156348(JP,A)
【文献】特開2007-058119(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0146937(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/20
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
G03G 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度センサーの検出結果に基づいて点灯制御されるヒーターを有し、当該ヒーターが点灯したときの熱を用いて記録媒体上の未定着トナーを溶かして定着させる定着部と、
前記定着部の定着ニップ位置で前記記録媒体のジャムが発生した場合、ジャム復帰後の前記ヒーターの第1点灯率、および、ジャム発生前の前記ヒーターの第2点灯率を取得する点灯率取得部と、
前記第1点灯率と前記第2点灯率とを比較し、当該比較した結果に応じて、前記温度センサーと前記ヒーターとの間に前記記録媒体が残っているか否かについて判定する判定部と、
を備える、定着装置。
【請求項2】
前記点灯率取得部は、前記第1及び第2の点灯率を、前記定着部の制御状態と関連付けて取得する、請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記定着部の制御状態は、待機中および印刷中を含む、請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記定着部の制御状態に関連付けられた前記第1点灯率と、前記制御状態と同じ制御状態に関連付けられた前記第2点灯率とを比較する、請求項2または3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記点灯率取得部は、前記第1及び第2の点灯率を、前記定着部の温まり状態と関連付けて取得する、請求項1から4のいずれか一項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記第1点灯率に関連づけられた前記定着部の第1温まり状態と、前記第1点灯率と比較される前記第2点灯率に関連付けられた前記定着部の第2温まり状態が異なる場合、点灯率と前記定着部の温まり状態との対応関係に基づいて、前記第1及び第2の点灯率のうちの少なくとも一方を補正する、請求項5に記載の定着装置。
【請求項7】
前記判定部は、ジャム発生前における記録媒体の種類とジャム復帰後における記録媒体の種類とが異なる場合、点灯率と前記記録媒体の種類との対応関係に基づいて、前記第1及び第2の点灯率のうちの少なくとも一方を補正する、請求項1から6のいずれか一項に記載の定着装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記第1点灯率に関連づけられた前記定着部の待機中における目標温度と、前記第1点灯率と比較される前記第2点灯率に関連付けられた前記定着部の待機中における目標温度とが異なる場合、点灯率と前記目標温度との対応関係に基づいて、前記第1及び第2の点灯率のうちの少なくとも一方を補正する、請求項3から7のいずれか一項に記載の定着装置。
【請求項9】
前記ヒーターは、軸方向に分割された複数の領域を有し、
前記複数の領域における点灯は、当該複数の領域に対応してそれぞれ設けられた温度センサーの検出結果に基づいて制御され、
前記判定部は、前記複数の領域における前記第1点灯率を相互に比較し、当該比較した結果に応じて、前記温度センサーと前記ヒーターとの間に前記記録媒体が残っているか否かについて判定する、請求項1から8のいずれか一項に記載の定着装置。
【請求項10】
前記判定部は、前記相互に比較される前記第1点灯率の比較結果を示す点灯率割合の判断基準を、記録媒体における前記軸方向の通紙幅に基づいて変更する、請求項に記載の定着装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の定着装置を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又はこれらの機能を複合的に備えた複合機等の電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着装置として、互いに圧接して回転される一対の加熱ローラーと加圧ローラーとによって記録媒体としての用紙を挟持搬送させながら、加熱ローラーと加圧ローラーとの間に形成される定着ニップにおいて用紙を加熱及び加圧することにより、用紙上の未定着トナー像を定着させる定着装置が知られている。
【0003】
加熱ローラーの内側には熱源としてのヒーターが設けられている。加熱ローラーの外側には、当該加熱ローラーに対向するように温度センサーが設けられている。温度センサーの検出結果(検出温度)と加熱ローラーの目標温度との差に基づいて加熱ローラーの温度が調整されるようにヒーターの点灯が制御される。したがって、温度センサーが異常である場合は、ヒーターの点灯制御が適切に行われず、その結果、加熱ローラーの温度調整ができない場合がある。
【0004】
ヒーターに対する単位時間当たりの通電量の計算値が所定範囲外となる時間が規定時間を超えた場合、温度センサーが異常であると判断する画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-167618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、定着装置においてジャムが発生した場合、画像形成は停止し、ジャムした用紙が除去された後に復帰する。ジャム復帰後に、例えば温度センサーの近傍位置に用紙(例えば紙片)が残っている場合、当該用紙がヒーターの邪魔になって、温度センサーは、用紙が残っていない場合における検出温度より低い温度を検出する。これにより、温度センサーの検出結果に基づくヒーターの点灯制御が適切に行われない場合がある。
【0007】
なお、上記特許文献1に記載の画像形成装置は、温度センサーが異常であるか否かについて判断することを課題としており、ジャム復帰後に用紙が残っているか否かについて的確に判定するための構成を有していない。
【0008】
本発明は、ジャム復帰後に用紙が残っているか否かについて的確に判定することが可能な定着装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明における定着装置は、
温度センサーの検出結果に基づいて点灯制御されるヒーターを有し、当該ヒーターが点灯したときの熱を用いて記録媒体上の未定着トナーを溶かして定着させる定着部と、
前記定着部の定着ニップ位置で前記記録媒体のジャムが発生した場合、ジャム復帰後の前記ヒーターの第1点灯率、および、ジャム発生前の前記ヒーターの第2点灯率を取得する点灯率取得部と、
前記第1点灯率と前記第2点灯率とを比較し、当該比較した結果に応じて、前記温度センサーと前記ヒーターとの間に前記記録媒体が残っているか否かについて判定する判定部と、
を備える。
【0010】
また、本発明における画像形成装置は、上記定着装置を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ジャム復帰後に用紙が残っているか否かについて的確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の全体構成を概略的に示す図
図2】本実施の形態に係る画像形成装置の制御系の主要部を示す図
図3】定着部の構成を概略的に示す図
図4】加熱ローラーの内部構造を概略的に示す図
図5】ジャム発生前後における定着部の制御状態を示す図
図6】本実施の形態に係るヒーターの点灯率の判定処理を示すフローチャート
図7】変形例1における温度センサー雰囲気温度と点灯率の補正係数との対応関係を示す図
図8】変形例2における用紙の種類と点灯率の補正係数との対応関係を示す図
図9】変形例3における待機中の定着ベルトの目標温度と点灯率の補正係数との対応関係を示す図
図10】変形例4における用紙幅と点灯率割合の判断基準との対応関係を示す図
図11】変形例4に係る中央ヒーター及び端部ヒーターの点灯率の判定処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。図2は、本実施の形態に係る画像形成装置1の制御系の主要部を示す。図1、2に示す画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に一次転写し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙S(記録媒体)に二次転写することにより、画像を形成する。
【0014】
また、画像形成装置1には、YMCKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0015】
図2に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60および制御部100を備える。
【0016】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103等を備える。CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部72に格納されている各種データが参照される。記憶部72は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。
【0017】
制御部100は、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部100は、例えば、外部の装置から送信された画像データ(入力画像データ)を受信し、この画像データに基づいて用紙Sに画像を形成させる。通信部71は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
【0018】
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
【0019】
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
【0020】
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿又はコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0021】
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21及び操作部22として機能する。表示部21は、制御部100から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部100に出力する。
【0022】
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定又はユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部100の制御下で、階調補正データ(階調補正テーブル)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
【0023】
画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42等を備える。
【0024】
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示及び説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示すこととする。図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
【0025】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、及びドラムクリーニング装置415等を備える。
【0026】
感光体ドラム413は、例えばアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。電荷発生層は、電荷発生材料(例えばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなり、露光装置411による露光により一対の正電荷と負電荷を発生する。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト樹脂)に分散させたものからなり、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
【0027】
制御部100が感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示略)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413は一定の周速度で回転する。
【0028】
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。感光体ドラム413の電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されることにより、感光体ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
【0029】
現像装置412は、例えば二成分現像方式の現像装置であり、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
【0030】
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレード等を有し、一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーを除去する。
【0031】
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424、及びベルトクリーニング装置426等を備える。
【0032】
中間転写ベルト421は無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも1つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写部におけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0033】
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
【0034】
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるバックアップローラー423Bに対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙Sへトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
【0035】
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の裏面側(一次転写ローラー422と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
【0036】
その後、用紙Sが二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が用紙Sに二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、用紙Sの裏面側(二次転写ローラー424と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は用紙Sに静電的に転写される。トナー像が転写された用紙Sは定着部60に向けて搬送される。
【0037】
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト421の表面に摺接するベルトクリーニングブレード等を有し、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。なお、二次転写ローラー424に代えて、二次転写ローラーを含む複数の支持ローラーに、二次転写ベルトがループ状に張架された構成(いわゆるベルト式の二次転写ユニット)を採用しても良い。
【0038】
定着部60は、用紙Sの定着面(トナー像が形成されている面)側に配置される上加圧ローラー63、用紙Sの裏面(定着面の反対の面)側に配置される下加圧ローラー65、及び加熱源60C等を備える。上加圧ローラー63に下加圧ローラー65が圧接されることにより、用紙Sを狭持して搬送する定着ニップが形成される。
【0039】
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙Sを定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙Sにトナー像を定着させる。定着部60は、定着器F内にユニットとして配置される。定着部60の詳細については後述する。
【0040】
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52、及び搬送経路部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a~51cには、坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙Sが予め設定された種類毎に収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53a等の複数の搬送ローラー対を有する。
【0041】
給紙トレイユニット51a~51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により、給紙された用紙Sの傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
【0042】
次に、図3を参照し、定着部60の構成について説明する。図3は、定着部60の構成を概略的に示す図である。図3において紙面に垂直な方向を「幅方向」又は「軸方向」という場合がある。なお、定着部60および制御部100は、定着装置として機能する。定着部60および制御部100は、ユニットとして構成されて画像形成装置1に取り付けられても良いし、それぞれが別々に画像形成装置1に組み込まれて、定着装置として機能するものであっても良い。
【0043】
定着部60は、無端状の定着ベルト61、加熱ローラー62、上加圧ローラー63、下加圧ローラー65を有している。
【0044】
定着ベルト61は、加熱ローラー62と上加圧ローラー63とに巻き掛けられている。定着ベルト61は、トナー像が形成された用紙Sに接触して、当該トナー像を用紙Sに加熱定着させる。
【0045】
加熱ローラー62は、定着ベルト61を加熱する例えばハロゲンヒーター(以下、単に「ヒーター」と称する)である加熱源60Cを内蔵している。加熱ローラー62は、例えば、アルミニウム等から形成された円筒状の芯金における外周面をPTFEでコーティングした樹脂層で被覆されている。ヒーター60Cは、点灯することにより加熱ローラー62を加熱する。これにより、加熱ローラー62は、定着ベルト61を加熱する。
【0046】
ヒーター60Cは、軸方向に分割された複数の領域を有している。具体的に、ヒーター60Cは、図4に示すように、軸方向中央部の領域としての中央ヒーターH1、軸方向両端部の領域としての端部ヒーターH2とを有する。中央ヒーターH1に対向して温度センサー66が配置されている。また、端部ヒーターH2に対向して温度センサー66が配置されている。中央ヒーターH1は、温度センサー66の検出結果に基づいて点灯制御される。また、端部ヒーターH2は、温度センサー66の検出結果に基づいて点灯制御される。
【0047】
下加圧ローラー65は駆動回転する。下加圧ローラー65は、上加圧ローラー63に定着ベルト61を介して圧接される。下加圧ローラー65の駆動力、及び、下加圧ローラー65から定着ベルト61に伝達される駆動力によって、用紙Sが搬送される。
【0048】
温度センサー66は、図3に示すように、定着ベルト61を挟んで加熱ローラー62に対向して配置されている。温度センサー66は定着ベルト61の表面温度を検出する。制御部100は、温度センサー66の検出結果と定着ベルト61の目標温度との差に基づいて定着ベルト61の表面温度が調整されるようにヒーター60Cを点灯するための電源部(図示略)を制御する。したがって、ヒーター60Cの点灯率(制御周期におけるヒーターの点灯期間)は、温度センサー66の検出結果と定着ベルト61の目標温度との差に応じて高くなる。ここで、「目標温度」とは、定着部60の制御状態(例えば、待機中、印刷中)に応じて予め設定される温度である。例えば、定着部60の待機中における目標温度は、直ちに印刷に移ることができる温度である。定着部60の印刷中における目標温度は、トナー像を定着処理するのに適する温度である。
【0049】
図5を参照し、ジャム発生の前後における定着部60の制御状態について説明する。図5にジャム発生を“X”で示し、ジャム発生前後における定着部60の制御状態としての「待機中」及び「印刷中」を示す。定着部60にジャムの発生がなく、用紙が残っていない場合の「待機中」及び「印刷中」では、制御部100は、温度センサー66により検出された定着ベルト61の表面温度と定着ベルト61の表面温度が目標温度との差に基づいて、定着ベルト61の表面温度が目標温度になるようにヒーター60Cを点灯制御する。
【0050】
一方、定着部60にジャムが発生し、ジャム処理においてジャムした用紙Sが完全に除去されず、定着ベルト61と温度センサー66との間の隙間に用紙Sが残っている場合、用紙Sが温度センサー66の邪魔になって、温度センサー66は、用紙Sが残っていない場合における検出温度より低い温度を検出する。これにより、ジャム復帰後の「待機中」及び「印刷中」においては、低く検出した温度を目標温度に合わせるようにヒーター60Cの点灯制御が行われるため、定着ベルト61が目標温度より高い温度に上昇して、定着ベルト61の表面温度を適切に調整できない場合がある。なお、用紙Sが残っている場所である、定着ベルト61と温度センサー66との間の隙間は、厳密に解釈されないものとし、当該隙間の近傍位置であって、用紙Sが温度センサー66の検出に影響を与える位置が含まれる。以下、隙間および隙間の近傍位置を、温度センサー66の近傍位置という。温度センサー66の近傍位置に用紙Sが残っている場合、定着ベルト61を目標温度より高い温度に上昇させるため、ヒーター60Cの点灯率は、用紙Sが残っていない場合におけるヒーター60Cの点灯率より高くなる。
【0051】
本実施の形態では、制御部100は、点灯率算出部、本発明の点灯率取得部および判定部として機能する。
【0052】
制御部100は、ヒーター60C(中央ヒーターH1、端部ヒーターH2)の点灯率を所定時間毎に算出する。制御部100は、算出した点灯率を定着部60の制御状態(待機中、印刷中)および定着部60の温まり状態に関連付けて記憶部72に記憶させる。ここで、定着部60の温まり状態は、温度センサー雰囲気温度(温度センサー66近傍の温度)をいう。温度センサー雰囲気温度は、温度検出器(図示略)により検出される。
【0053】
制御部100は、定着部60にジャムが発生してからジャム復帰後のヒーター60Cの第1点灯率と、ジャム発生前のヒーター60Cの第2点灯率とを比較する。制御部100は、比較結果が予め定められた値を超えるか否かについて判定し、判定結果出力する。ここで、比較結果は、第2点灯率に対する第1点灯率の割合で示される。例えば、制御部100は、第2点灯率に対する第1点灯率の割合が予め定められた値(例えば、1.3)を超えた場合、判定結果(例えば、用紙残りのメッセージ)を操作表示部20に表示させる。なお、本実施の形態におけるヒーター60Cについて行われる点灯率の算出、点灯率の比較および判定結果の出力は、中央ヒーターH1及び端部ヒーターH2毎に行われる点灯率の算出、点灯率の比較および判定結果の出力をいうものとする。
【0054】
なお、例えば、待機中の定着ベルト61の目標温度は印刷中の定着ベルト61の目標温度より低いため、待機中のヒーター60Cの点灯率は、印刷中のヒーター60Cの点灯率より低くなる。つまり、比較される点灯率における定着部60の制御状態が異なる場合には、点灯率を正しく比較することができない。また、ヒーター60Cの点灯率は、定着部60の温まり状態に影響される。例えば、ウォームアップ前の温まり状態において定着ベルト61の表面温度を目標温度になるようにヒーター60Cを点灯制御する場合の点灯率は、ウォームアップ後の温まり状態において定着ベルト61の表面温度を目標温度になるようにヒーター60Cを点灯制御する場合の点灯率より高くなる。そこで、本実施の形態では、制御部100は、第1点灯率と第2点灯率とを比較する場合、定着部60の制御状態(待機中、印刷中)が同じであり、かつ、定着部60の温まり状態が同じである点灯率同士を比較する。
【0055】
次に、本実施の形態におけるヒーター60Cの点灯率の判定処理について図6を参照して説明する。図6は、ヒーター60Cの点灯率の判定処理を示すフローチャートである。本処理は、定着部60にジャムが発生した場合に開始される。なお、ヒーター60Cの点灯率は、制御部100により所定時間毎に算出され、定着部60の制御状態に関連付けられて記憶部72に記憶される。
【0056】
ステップS100において、制御部100は、ジャム復帰後のヒーター60Cの第1点灯率raを取得する。
【0057】
ステップS110において、制御部100は、ジャム発生前のヒーター60Cの第2点灯率rbを取得する。
【0058】
ステップS120において、制御部100は、第2点灯率rbに対する第1点灯率raの割合が予め定められた値を超えているか否かについて判断する。第2点灯率rbに対する第1点灯率raの割合が予め定められた値を超えている場合(ステップS120:YES)、処理をステップS130に移す。第2点灯率rbに対する第1点灯率raの割合が予め定められた値以下である場合(ステップS120:NO)、処理をステップS140に移す。
【0059】
ステップS130において、制御部100は、印刷を停止させ、また、用紙残りのメッセージを操作表示部20に表示させる。
【0060】
ステップS140において、制御部100は、印刷を継続させる。
【0061】
上記実施の形態に係る定着装置によれば、温度センサー66の検出結果に基づいて点灯制御されるヒーター60Cを有し、ヒーター60Cが点灯したときの熱を用いて用紙S上の未定着トナーを溶かして定着させる定着部60を備える。制御部100は、定着部60の定着ニップ位置でジャムが発生した場合、ジャム復帰後のヒーター60Cの第1点灯率、および、ジャム発生前のヒーター60Cの第2点灯率を取得する。また、制御部100は、第1点灯率と第2点灯率とを比較し、比較した結果に応じて、温度センサー66とヒーター60Cとの間に用紙Sが残っているか否かについて判定する。これにより、ジャム復帰後に用紙Sが残っているか否かについての判定を的確に行うことができる。
【0062】
次に、本実施の形態における変形例1について図7を参照して説明する。図7は、温度センサー雰囲気温度と点灯率の補正係数との対応関係を示す図である。上記実施の形態では、ヒーター60Cの点灯率が定着部60の温まり状態に影響されるため、制御部100は、第1点灯率と第2点灯率とを比較する場合、定着部60の温まり状態が同じである点灯率同士を比較する。
【0063】
これに対して、変形例1では、第1点灯率に関連づけられた定着部60の第1温まり状態と、第1点灯率と比較される第2点灯率に関連付けられた定着部60の第2温まり状態が異なる場合、図7に示す温度センサー雰囲気温度と点灯率の補正係数との対応関係に基づいて、第1及び第2の点灯率のうちの少なくとも一方を補正する。図7に示すように、温度センサー雰囲気温度に対する点灯率の補正係数は、70℃未満の場合、“0.88”である。70℃以上90℃未満の場合、“0.92”である。90℃以上110℃未満の場合、“0.96”である。110℃以上の場合、“1.00”である。
【0064】
制御部100は、第1点灯率に関連付けられた温度センサー雰囲気温度が例えば90℃以上110℃未満の場合、第1点灯率を“0.96”で乗算することにより補正する。また、制御部100は、第2点灯率に関連付けられた温度センサー雰囲気温度が例えば70℃未満である場合、第2点灯率を“0.88”で乗算することにより補正する。制御部100は、補正後に第1点灯率と第2点灯率とを比較する。変形例1では、定着部60の温まり状態が同じである点灯率同士を比較する必要がないため、ジャム復帰後に用紙Sが残っているか否かについて迅速に判定することができる。
【0065】
なお、図7に示す温度センサー雰囲気温度と点灯率の補正係数との対応関係は、中央ヒーターH1の配熱部の電力密度と、端部ヒーターH2の配熱部の電力密度とが同じであることを前提としている。中央ヒーターH1における電力密度と端部ヒーターH2における電力密度が互いに異なる場合、図7に示す点灯率の補正係数を電力密度に応じて変更すればよい。
【0066】
次に、本実施の形態における変形例2について図8を参照して説明する。図8は、用紙Sの種類と点灯率の補正係数との対応関係を示す図である。図8に、坪量を小さいものから順に5段階で示す。上記実施の形態では、ジャム発生前の用紙Sの種類とジャム復帰後の用紙Sの種類とが同じである場合を前提として説明した。ところで、用紙Sの坪量に応じて用紙Sが吸収する熱量が異なるため、加熱ローラー62の表面温度が同じであっても温度センサー66の検出温度が異なる。例えば、用紙Sの坪量が大きくなるに応じて温度センサー66の検出温度が低くなるため、ヒーター60Cの点灯率が高くなる。また、コート紙が吸収する熱量は、普通紙が吸収する熱量より大きい。
【0067】
変形例2では、制御部100は、ジャム発生前における用紙Sの種類とジャム復帰後における用紙Sの種類とが異なる場合、図8に示す用紙Sの種類と点灯率の補正係数との対応関係に基づいて、第1及び第2の点灯率のうちの少なくとも一方を補正する。図8に示すように、用紙Sの種類に対する点灯率の補正係数は、坪量1の普通紙の場合、“1.00”である。坪量1のコート紙の場合、“1.20”である。坪量2の普通紙の場合、“1.30”である。坪量2のコート紙の場合、“1.56”である。坪量3の普通紙の場合、“1.50”である。坪量3のコート紙の場合、“1.80”である。坪量4の普通紙の場合、“1.70”である。坪量4のコート紙の場合、“2.04”である。坪量5の普通紙の場合、“1.90”である。坪量5のコート紙の場合、“2.28”である。
【0068】
制御部100は、ジャム復帰後における用紙Sの種類が例えば坪量2の普通紙である場合、第1点灯率を“1.30”で除算することにより補正する。また、制御部100は、ジャム発生前における用紙Sの種類が例えば坪量1のコート紙である場合、第2点灯率を“1.20”で除算することにより補正する。制御部100は、補正後に第1点灯率と第2点灯率とを比較する。変形例2では、ジャム発生前後で用紙Sの種類が異なる場合であっても、ジャム復帰後に用紙Sが残っているか否かについて的確に判定することができる。
【0069】
次に、本実施の形態における変形例3について図9を参照して説明する。図9は、待機中の定着ベルト61の目標温度と点灯率の補正係数との対応関係を示す図である。図9に、目標温度を低いものから順に5段階で示す。上記実施の形態では、定着ベルト61の目標温度がジャム発生前とジャム復帰後で同じであることを前提として説明した。ところで、実機においては、定着ベルト61の目標温度は、ジャム発生前とジャム復帰後で異なる場合がある。例えば、定着ベルト61の目標温度が高い場合、目標温度と温度センサー66の検出結果との差が大きくなるため、点灯率が高くなる。定着ベルト61の目標温度がジャム発生前とジャム復帰後で異なる場合、第1点灯率と第2点灯率とを正しく比較することが難しくなる。結果的に、ジャム復帰後に用紙Sが残っているか否かについて的確に判定することが困難となる。
【0070】
これに対して、変形例3では、制御部100は、第1点灯率に関連づけられた定着部60の待機中における目標温度と、第1点灯率と比較される第2点灯率に関連付けられた定着部60の待機中における目標温度とが異なる場合、待機中の定着ベルト61の目標温度と点灯率の補正係数との対応関係に基づいて、第1及び第2の点灯率のうちの少なくとも一方を補正する。待機中の目標温度に対する点灯率の補正係数は、目標温度1の場合、“1.00”である。目標温度2の場合、“1.15”である。目標温度3の場合、“1.30”である。目標温度4の場合、“1.45”である。目標温度5の場合、“1.60”である。
【0071】
例えば、制御部100は、ジャム復帰後の待機中の目標温度が“目標温度2”である場合、第1点灯率を“1.15”で除算することにより補正する。また、制御部100は、ジャム発生前の待機中の目標温度が“目標温度3”である場合、第2点灯率を“1.30”で除算することにより補正する。制御部100は、補正後に第1点灯率と第2点灯率とを比較する。変形例3では、ジャム発生前後で目標温度が異なる場合であっても、ジャム復帰後に用紙Sが残っているか否かについて的確に判定することができる。
【0072】
次に、本実施の形態における変形例4について説明する。上記実施の形態では、点灯率の算出、点灯率の比較および判定結果の出力は、中央ヒーターH1及び端部ヒーターH2毎に行われる。例えば、制御部100は、中央ヒーターH1同士の第1点灯率と第2点灯率とを比較し、比較結果を出力する。また、制御部100は、端部ヒーターH2同士の第1点灯率と第2点灯率とを比較し、比較結果を出力する。
【0073】
ところで、中央ヒーターH1は加熱ローラー62の軸方向中央部を温める。そして、加熱ローラー62の軸方向中央部は定着ベルト61の軸方向中央部を温める。また、端部ヒーターH2は加熱ローラー62の軸方向端部を温める。そして、加熱ローラー62の軸方向端部は定着ベルト61の軸方向端部を温める。仮に、定着ベルト61の軸方向端部と温度センサー66との間の隙間に用紙Sが残っていた場合、温度センサー66は、定着ベルト61の軸方向端部の表面温度を実際より低めに検出するため、制御部100は、定着ベルト61の軸方向端部の表面温度とその目標温度との差が実際より大きいと判断する。その結果、端部ヒーターH2の点灯率は必要以上に高くなる。一方、温度センサー66は、定着ベルト61の軸方向中央部の表面温度を正しく検出するため、制御部100は、定着ベルト61の軸方向中央部の表面温度とその目標温度との差を正しく判断する。その結果、中央ヒーターH1の点灯率が必要以上に高くならない。つまり、中央ヒーターH1の点灯率と端部ヒーターH2の点灯率を比較することによって、ジャム復帰後の用紙残りを判定することが可能となる。
【0074】
変形例4では、制御部100は、中央ヒーターH1の点灯率と端部ヒーターH2の点灯率を比較し、比較結果が予め定められた値を超えるか否かについて判定し、判定結果を出力する。例えば、制御部100は、端部ヒーターH2の点灯率に対する中央ヒーターH1の点灯率の割合が0.75以上、1.3以下である場合、用紙残りがないと判定する。また、制御部100は、端部ヒーターH2の点灯率に対する中央ヒーターH1の点灯率の割合が0.75未満である場合、用紙残りが、定着ベルト61の軸方向端部の表面温度を検出する温度センサー66の近傍位置にあると判定する。制御部100は、判定結果(例えば、用紙残りのメッセージ)を操作表示部20に表示させる。また、制御部100は、端部ヒーターH2の点灯率に対する中央ヒーターH1の点灯率の割合が1.3を超える場合、用紙残りが、定着ベルト61の軸方向中央部の表面温度を検出する温度センサー66の近傍位置にあると判定する。制御部100は、判定結果(例えば、用紙残りのメッセージ)を操作表示部20に表示させる。
【0075】
なお、通紙される用紙幅が広くなるに応じて端部ヒーターH2の点灯率が上がるため、端部ヒーターH2の点灯率に対する中央ヒーターH1の点灯率の割合は低くなる。そこで、変形例4では、相互に比較される点灯率の比較結果を示す点灯率割合の判断基準を通紙される用紙幅に応じて変更する。図10は、用紙幅と点灯率割合の判断基準との対応関係を示す図である。
【0076】
制御部100は、通紙される用紙幅に基づいて、図10に示す用紙幅と点灯率割合の判断基準との対応関係を参照して、点灯率割合の判断基準を変更する。例えば、制御部100は、用紙幅が148mm未満の場合、点灯率割合の判断基準を2.0以上、3.5以下に変更する。図10に示すように、用紙幅に対する点灯率割合の判断基準は、用紙幅148mm未満の場合、“2.0-3.5”である。用紙幅148mm以上、210mm未満の場合、“1.3-2.2”である。用紙幅210mm以上、257mm未満の場合、“1.1-1.9”である。用紙幅257mm以上、297mm未満の場合、“0.9-1.55”である。用紙幅297mm以上の場合、“0.75-1.3”である。
【0077】
点灯率割合の判断基準が2.0以上、3.5以下である場合において、制御部100は、端部ヒーターH2の点灯率に対する中央ヒーターH1の点灯率の割合が2.0未満である場合、又は、端部ヒーターH2の点灯率に対する中央ヒーターH1の点灯率の割合が3.5を超える場合、用紙残りがあると判定し、用紙残りのメッセージを操作表示部20に表示させる。具体的に制御部100は、端部ヒーターH2の点灯率に対する中央ヒーターH1の点灯率の割合が2.0未満である場合、用紙残りが、定着ベルト61の軸方向端部の表面温度を検出する温度センサー66の近傍位置にあると判定する。また、制御部100は、端部ヒーターH2の点灯率に対する中央ヒーターH1の点灯率の割合が3.5を超える場合、用紙残りが、定着ベルト61の軸方向中央部の表面温度を検出する温度センサー66の近傍位置にあると判定する。
【0078】
なお、変形例4においても、中央ヒーターH1の配熱部の電力密度と、端部ヒーターH2の配熱部の電力密度とが同じであることを前提としている。中央ヒーターH1における電力密度と端部ヒーターH2における電力密度が互いに異なる場合、図10に示す点灯率割合の判断基準を電力密度に応じて変更すればよい。
【0079】
次に、変形例4に係る中央ヒーターH1及び端部ヒーターH2における点灯率の判定処理について図11を参照して説明する。図11は、中央ヒーターH1及び端部ヒーターH2の点灯率の判定処理を示すフローチャートである。本処理は、定着部60にジャムが発生した場合に開始される。なお、中央ヒーターH1の点灯率r1、端部ヒーターH2の点灯率r2は、制御部100により所定時間毎に算出されて記憶部72に記憶される。
【0080】
ステップS200において、制御部100は、ジャム復帰後の中央ヒーターH1の点灯率r1を取得する。
【0081】
ステップS210において、制御部100は、ジャム復帰後の端部ヒーターH2の点灯率r2を取得する。
【0082】
ステップS220において、制御部100は、点灯率r2に対する点灯率r1の割合が予め定められた値を超えているか否かについて判断する。点灯率r2に対する点灯率r1の割合が予め定められた範囲を超えている場合(ステップS220:YES)、処理をステップS230に移す。点灯率r2に対する点灯率r1の割合が予め定められた範囲内である場合(ステップS220:NO)、処理をステップS240に移す。
【0083】
ステップS230において、制御部100は、印刷を停止させる。また、制御部100は、用紙残りのメッセージを操作表示部20に表示させる。
【0084】
ステップS240において、制御部100は、印刷を継続させる。
【0085】
変形例4によれば、軸方向で点灯率の比較を行うことにより、ジャム復帰後の用紙残りを的確に判定することができる。なお、変形例4における点灯率の判定処理を、上記実施の形態における点灯率の判定処理に代えて行うようにしてもよい。また、上記実施の形態における点灯率の判定処理と、変形例4における点灯率の判定処理とを組み合わせてもよい。これにより、ジャム復帰後の用紙残りをより的確に判定することが可能となる。
【0086】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明の実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0087】
H1 中央ヒーター
H2 端部ヒーター
20 操作表示部
60 定着部
60C ヒーター
61 定着ベルト
62 加熱ローラー
63 上加圧ローラー
65 下加圧ローラー
66 温度センサー
72 記憶部
100 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11