(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】X線撮影システム
(51)【国際特許分類】
G01N 23/041 20180101AFI20220208BHJP
【FI】
G01N23/041
(21)【出願番号】P 2017232259
(22)【出願日】2017-12-04
【審査請求日】2020-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪井 泰憲
(72)【発明者】
【氏名】北村 光晴
【審査官】佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-251750(JP,A)
【文献】特開2016-050891(JP,A)
【文献】特開2017-072399(JP,A)
【文献】特開2017-198600(JP,A)
【文献】特開2017-006398(JP,A)
【文献】百生 敦,X線管を用いた位相イメージング装置の開発,非破壊検査,2017年05月,第66巻5号(2017),196頁~203頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC
G01N 3/00-G01N 3/62、
G01N 23/00-G01N 23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体台と、X線源と、複数の格子と、X線検出器とがX線照射軸方向に並んで設けられ、前記X線源から被写体及び前記複数の格子を介して前記X線検出器にX線を照射して前記被写体の再構成画像の生成に必要なモアレ画像を取得するX線タルボ撮影装置と、
前記被写体台に設置されるとともに前記被写体を保持し、前記被写体に対して引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する試験機と、
を備えたX線撮影システムであって、
前記X線タルボ撮影装置は、
前記被写体の再構成画像の生成に必要な前記モアレ画像を取得するための一連の撮影を行わせる制御部を有しており、
前記試験機は、
前記被写体台に設置され、かつ前記X線照射軸上及びその周囲のX線照射範囲に、周囲よりもX線の透過を妨げにくいX線透過部があるベース部と、
前記ベース部に対して突出して設けられるとともに前記X線透過部を挟むようにして配置され、前記被写体に対して引張り荷重又は圧縮荷重を負荷するチャック部と、を有しており、
前記チャック部の動作は、前記X線タルボ撮影装置の前記制御部によって前記X線タルボ撮影装置と連動して自動制御可能とされ
、
前記制御部は、撮影時に、前記被写体の弾性変形域では前記チャック部による前記被写体への引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する動作を静止するように制御し、前記被写体の塑性変形域では前記チャック部による前記被写体への引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する動作を継続するように制御することを特徴とするX線撮影システム。
【請求項2】
被写体台と、X線源と、複数の格子と、X線検出器とがX線照射軸方向に並んで設けられ、前記X線源から被写体及び前記複数の格子を介して前記X線検出器にX線を照射して前記被写体の再構成画像の生成に必要なモアレ画像を取得するX線タルボ撮影装置と、
前記被写体台に設置されるとともに前記被写体を保持し、前記被写体に対して引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する試験機と、
を備えたX線撮影システムであって、
前記X線タルボ撮影装置は、
前記被写体の再構成画像の生成に必要な前記モアレ画像を取得するための一連の撮影を行わせる制御部を有しており、
前記試験機は、
前記被写体台に設置され、かつ前記X線照射軸上及びその周囲のX線照射範囲に、周囲よりもX線の透過を妨げにくいX線透過部があるベース部と、
前記ベース部に対して突出して設けられるとともに前記X線透過部を挟むようにして配置され、前記被写体に対して引張り荷重又は圧縮荷重を負荷するチャック部と、を有しており、
前記チャック部の動作は、前記X線タルボ撮影装置の前記制御部によって前記X線タルボ撮影装置と連動して自動制御可能とされ
、
前記制御部は、撮影時に、前記チャック部による前記被写体への引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する動作を継続するように制御し、
さらに、前記制御部は、前記X線検出器における複数の画素のピッチと、各画素が検出する像の拡大率と、撮影時間とに基づく所定の計算式によって、前記チャック部による前記被写体への引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する際の許容最大速度を算出し、その算出結果を、前記X線タルボ撮影装置と連携する表示部に表示することを特徴とするX線撮影システム。
【請求項3】
被写体台と、X線源と、複数の格子と、X線検出器とがX線照射軸方向に並んで設けられ、前記X線源から被写体及び前記複数の格子を介して前記X線検出器にX線を照射して前記被写体の再構成画像の生成に必要なモアレ画像を取得するX線タルボ撮影装置と、
前記被写体台に設置されるとともに前記被写体を保持し、前記被写体に対して引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する試験機と、
を備えたX線撮影システムであって、
前記X線タルボ撮影装置は、
前記被写体の再構成画像の生成に必要な前記モアレ画像を取得するための一連の撮影を行わせる制御部を有しており、
前記試験機は、
前記被写体台に設置され、かつ前記X線照射軸上及びその周囲のX線照射範囲に、周囲よりもX線の透過を妨げにくいX線透過部があるベース部と、
前記ベース部に対して突出して設けられるとともに前記X線透過部を挟むようにして配置され、前記被写体に対して引張り荷重又は圧縮荷重を負荷するチャック部と、を有しており、
前記チャック部の動作は、前記X線タルボ撮影装置の前記制御部によって前記X線タルボ撮影装置と連動して自動制御可能とされ
、
前記制御部は、撮影時に、前記チャック部による前記被写体への引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する動作を継続するように制御し、
さらに、前記制御部は、目標とする引張り荷重又は圧縮荷重に到達した瞬間の撮影を行うに際し、撮影開始前の前記被写体のひずみ量の遷移から、撮影中の前記被写体のひずみ量を推定し、推定された前記被写体のひずみ量に基づいて、前記被写体のひずみ量が最小となる撮影開始時間を設定することを特徴とするX線撮影システム。
【請求項4】
被写体台と、X線源と、複数の格子と、X線検出器とがX線照射軸方向に並んで設けられ、前記X線源から被写体及び前記複数の格子を介して前記X線検出器にX線を照射して前記被写体の再構成画像の生成に必要なモアレ画像を取得するX線タルボ撮影装置と、
前記被写体台に設置されるとともに前記被写体を保持し、前記被写体に対して引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する試験機と、
を備えたX線撮影システムであって、
前記X線タルボ撮影装置は、
前記被写体の再構成画像の生成に必要な前記モアレ画像を取得するための一連の撮影を行わせる制御部を有しており、
前記試験機は、
前記被写体台に設置され、かつ前記X線照射軸上及びその周囲のX線照射範囲に、周囲よりもX線の透過を妨げにくいX線透過部があるベース部と、
前記ベース部に対して突出して設けられるとともに前記X線透過部を挟むようにして配置され、前記被写体に対して引張り荷重又は圧縮荷重を負荷するチャック部と、を有しており、
前記チャック部の動作は、前記X線タルボ撮影装置の前記制御部によって前記X線タルボ撮影装置と連動して自動制御可能とされ
、
前記制御部は、撮影時に、前記チャック部による前記被写体への引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する動作を継続するように制御し、
前記X線タルボ撮影装置は、前記複数の格子のいずれかを他の格子に対して相対移動させて縞走査を行い、照射されたX線に応じて前記X線検出器が画像信号を読み取る撮影を繰り返すことにより、前記被写体の再構成画像の生成に必要な複数の前記モアレ画像を取得しており、
前記制御部は、前記縞走査によって前記複数のモアレ画像を取得するに際し、前記縞走査による撮影は3段階以上に分けて行われ、前記縞走査の周期に合わせ、前記チャック部によって前記被写体に対して引張り荷重又は圧縮荷重の負荷を行うことを特徴とするX線撮影システム。
【請求項5】
前記X線タルボ撮影装置と前記試験機は機械的に独立して設けられており、
前記X線タルボ撮影装置の前記被写体台と前記試験機のうち少なくとも一方は、前記被写体への振動の伝達を防ぐための防振機構を有していることを特徴とする請求項
1~4のいずれか一項に記載のX線撮影システム。
【請求項6】
前記試験機は、前記X線タルボ撮影装置の前記被写体台に、前記X線照射範囲に対して進退可能に設けられていることを特徴とする請求項
1~5のいずれか一項に記載のX線撮影システム。
【請求項7】
前記複数の格子は、一次元格子とされており、
前記X線タルボ撮影装置の前記被写体台と前記試験機のうち、いずれか一方は、前記被写体を前記X線照射軸の軸周りに回転させる回転機構を有していることを特徴とする請求項1~
6のいずれか一項に記載のX線撮影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線タルボ撮影装置を備えたX線撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属系、高分子系、セラミック系、複合材料などの工業材料および生体材料に引張り・圧縮等の荷重を加えた応力下で材料内部の力学的挙動を観察するX線透視型の材料試験機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、従来、X線撮影装置として、複数の格子を有するタルボ干渉計又はタルボ・ロー干渉計を用いたX線撮影装置(以下、X線タルボ撮影装置という)が知られている。そして、X線タルボ撮影装置により高精細の再構成画像を得るには、複数の格子のうちのひとつを格子のスリット周期の1/M(Mは正の整数、吸収画像はM>2、微分位相画像と小角散乱画像はM>3)ずつスリット周期方向に移動させ、M回撮影した画像(モアレ画像)を用いて再構成を行う縞走査法が用いられている(例えば、特許文献2参照。)。また、被写体が存在する状態で、X線タルボ撮影装置でモアレ画像を1枚撮影し、画像処理において、そのモアレ画像をフーリエ変換する等して微分位相画像等の画像を再構成して生成するフーリエ変換法を用いることも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公平8-20383
【文献】特許第4445397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載のようなX線タルボ撮影装置によれば、特許文献1のようなX線透視型の材料試験機を含む通常のX線撮影装置では撮影できない画像を撮影することができる。そのため、引張り・圧縮等の荷重を加えた応力下で、X線タルボ撮影装置によって被写体の撮影を行いたいという要望があった。
ところで、特許文献1のようなX線透視型の材料試験機を含む通常のX線撮影装置の場合、X線タルボ撮影装置と比較すると短時間での撮影が可能で、振動や被写体の変形が撮影画像に与える影響が少ないという利点がある。一方、特許文献2のようなX線タルボ撮影装置での撮影は比較的時間がかかるため、引張り・圧縮等の荷重を加えた応力下で被写体の撮影を行う場合には、振動や被写体の変形が撮影画像に与える影響を最小にすることが求められる。
【0006】
本発明の課題は、引張り・圧縮等の荷重を加えた応力下で、X線タルボ撮影装置によって被写体の撮影を行う場合に、振動や被写体の変形が撮影画像に与える影響を最小にし、撮影画像の画質向上を図ることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、被写体台と、X線源と、複数の格子と、X線検出器とがX線照射軸方向に並んで設けられ、前記X線源から被写体及び前記複数の格子を介して前記X線検出器にX線を照射して前記被写体の再構成画像の生成に必要なモアレ画像を取得するX線タルボ撮影装置と、
前記被写体台に設置されるとともに前記被写体を保持し、前記被写体に対して引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する試験機と、
を備えたX線撮影システムであって、
前記X線タルボ撮影装置は、
前記被写体の再構成画像の生成に必要な前記モアレ画像を取得するための一連の撮影を行わせる制御部を有しており、
前記試験機は、
前記被写体台に設置され、かつ前記X線照射軸上及びその周囲のX線照射範囲に、周囲よりもX線の透過を妨げにくいX線透過部があるベース部と、
前記ベース部に対して突出して設けられるとともに前記X線透過部を挟むようにして配置され、前記被写体に対して引張り荷重又は圧縮荷重を負荷するチャック部と、を有しており、
前記チャック部の動作は、前記X線タルボ撮影装置の前記制御部によって前記X線タルボ撮影装置と連動して自動制御可能とされ、
前記制御部は、撮影時に、前記被写体の弾性変形域では前記チャック部による前記被写体への引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する動作を静止するように制御し、前記被写体の塑性変形域では前記チャック部による前記被写体への引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する動作を継続するように制御することを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、被写体台と、X線源と、複数の格子と、X線検出器とがX線照射軸方向に並んで設けられ、前記X線源から被写体及び前記複数の格子を介して前記X線検出器にX線を照射して前記被写体の再構成画像の生成に必要なモアレ画像を取得するX線タルボ撮影装置と、
前記被写体台に設置されるとともに前記被写体を保持し、前記被写体に対して引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する試験機と、
を備えたX線撮影システムであって、
前記X線タルボ撮影装置は、
前記被写体の再構成画像の生成に必要な前記モアレ画像を取得するための一連の撮影を行わせる制御部を有しており、
前記試験機は、
前記被写体台に設置され、かつ前記X線照射軸上及びその周囲のX線照射範囲に、周囲よりもX線の透過を妨げにくいX線透過部があるベース部と、
前記ベース部に対して突出して設けられるとともに前記X線透過部を挟むようにして配置され、前記被写体に対して引張り荷重又は圧縮荷重を負荷するチャック部と、を有しており、
前記チャック部の動作は、前記X線タルボ撮影装置の前記制御部によって前記X線タルボ撮影装置と連動して自動制御可能とされ、
前記制御部は、撮影時に、前記チャック部による前記被写体への引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する動作を継続するように制御し、
さらに、前記制御部は、前記X線検出器における複数の画素のピッチと、各画素が検出する像の拡大率と、撮影時間とに基づく所定の計算式によって、前記チャック部による前記被写体への引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する際の許容最大速度を算出し、その算出結果を、前記X線タルボ撮影装置と連携する表示部に表示することを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、被写体台と、X線源と、複数の格子と、X線検出器とがX線照射軸方向に並んで設けられ、前記X線源から被写体及び前記複数の格子を介して前記X線検出器にX線を照射して前記被写体の再構成画像の生成に必要なモアレ画像を取得するX線タルボ撮影装置と、
前記被写体台に設置されるとともに前記被写体を保持し、前記被写体に対して引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する試験機と、
を備えたX線撮影システムであって、
前記X線タルボ撮影装置は、
前記被写体の再構成画像の生成に必要な前記モアレ画像を取得するための一連の撮影を行わせる制御部を有しており、
前記試験機は、
前記被写体台に設置され、かつ前記X線照射軸上及びその周囲のX線照射範囲に、周囲よりもX線の透過を妨げにくいX線透過部があるベース部と、
前記ベース部に対して突出して設けられるとともに前記X線透過部を挟むようにして配置され、前記被写体に対して引張り荷重又は圧縮荷重を負荷するチャック部と、を有しており、
前記チャック部の動作は、前記X線タルボ撮影装置の前記制御部によって前記X線タル
ボ撮影装置と連動して自動制御可能とされ、
前記制御部は、撮影時に、前記チャック部による前記被写体への引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する動作を継続するように制御し、
さらに、前記制御部は、目標とする引張り荷重又は圧縮荷重に到達した瞬間の撮影を行うに際し、撮影開始前の前記被写体のひずみ量の遷移から、撮影中の前記被写体のひずみ量を推定し、推定された前記被写体のひずみ量に基づいて、前記被写体のひずみ量が最小となる撮影開始時間を設定することを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、被写体台と、X線源と、複数の格子と、X線検出器とがX線照射軸方向に並んで設けられ、前記X線源から被写体及び前記複数の格子を介して前記X線検出器にX線を照射して前記被写体の再構成画像の生成に必要なモアレ画像を取得するX線タルボ撮影装置と、
前記被写体台に設置されるとともに前記被写体を保持し、前記被写体に対して引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する試験機と、
を備えたX線撮影システムであって、
前記X線タルボ撮影装置は、
前記被写体の再構成画像の生成に必要な前記モアレ画像を取得するための一連の撮影を行わせる制御部を有しており、
前記試験機は、
前記被写体台に設置され、かつ前記X線照射軸上及びその周囲のX線照射範囲に、周囲よりもX線の透過を妨げにくいX線透過部があるベース部と、
前記ベース部に対して突出して設けられるとともに前記X線透過部を挟むようにして配置され、前記被写体に対して引張り荷重又は圧縮荷重を負荷するチャック部と、を有しており、
前記チャック部の動作は、前記X線タルボ撮影装置の前記制御部によって前記X線タルボ撮影装置と連動して自動制御可能とされ、
前記制御部は、撮影時に、前記チャック部による前記被写体への引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する動作を継続するように制御し、
前記X線タルボ撮影装置は、前記複数の格子のいずれかを他の格子に対して相対移動させて縞走査を行い、照射されたX線に応じて前記X線検出器が画像信号を読み取る撮影を繰り返すことにより、前記被写体の再構成画像の生成に必要な複数の前記モアレ画像を取得しており、
前記制御部は、前記縞走査によって前記複数のモアレ画像を取得するに際し、前記縞走査による撮影は3段階以上に分けて行われ、前記縞走査の周期に合わせ、前記チャック部によって前記被写体に対して引張り荷重又は圧縮荷重の負荷を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、引張り・圧縮等の荷重を加えた応力下で、X線タルボ撮影装置によって被写体の撮影を行う場合に、振動や被写体の変形が撮影画像に与える影響を最小にし、撮影画像の画質向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】X線タルボ撮影装置及び防振機構を有する試験機の全体像を表す概略図である。
【
図2】X線タルボ撮影装置及び回転機構を有する試験機の全体像を表す概略図である。
【
図4】線源格子や第1格子、第2格子の概略平面図である。
【
図5】試験機の全体像を表しており、(a)は平置きした場合の概略平面図であり、(b)は立置きした場合の概略平面図である。
【
図6】試験機を移動させる移動機構の構成を表す概略図である。
【
図7】ピーク荷重に到達するまでの予測時間を説明するためのグラフである。
【
図8】画像取得タイミングを説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態および図示例に限定するものではない。
【0011】
本実施形態では、試験機30によって、被写体Hに対して引張り荷重又は圧縮荷重を負荷するとともに、X線タルボ撮影装置1によって被写体Hの撮影を行うことによって、通常のX線撮影装置では撮影できない、引張り・圧縮等の荷重を加えた応力下にある被写体Hの画像を撮影することができるX線撮影システムについて説明する。
なお、被写体Hは、人体や動植物、各種試験や各種検査の対象となる物品を始めとする様々なものが挙げられ、特に限定されるものではない。ただし、本実施形態における被写体Hは、金属、樹脂、複合材料や織物などの試料全般であり、内部特性の検証が望まれるもの全般が対象となっている。そして、X線タルボ撮影装置1による撮影によって、このような被写体Hにおける内部メカニズムの観察ができるようになっている。
【0012】
本実施形態においては、X線タルボ撮影装置1として、線源格子(マルチ格子やマルチスリット、G0格子等ともいう。)12を備えるタルボ・ロー干渉計を用いたものが採用されている。なお、線源格子12を備えず、第1格子(G1格子ともいう。)14と第2格子(G2格子ともいう。)15のみを備えるタルボ干渉計を用いたX線タルボ撮影装置を採用することもできる。
【0013】
[X線タルボ撮影装置について]
図1は、本実施形態におけるX線タルボ撮影装置1及び防振機構30aを有する試験機30の全体像を表す概略図である。
図2は、X線タルボ撮影装置1及び回転機構30bを有する試験機30の全体像を表す概略図である。
本実施形態に係るX線タルボ撮影装置1は、X線発生装置11と、線源格子12と、被写体台13と、第1格子14と、第2格子15と、X線検出器16と、支柱17と、基台部18と、を備えている。
【0014】
このようなX線タルボ撮影装置1によれば、被写体台13に対して所定位置にある被写体Hのモアレ画像を縞走査法の原理に基づく方法で撮影したり、モアレ画像をフーリエ変換法を用いて解析したりすることで、少なくとも3種類の画像を再構成することができる(再構成画像という)。すなわち、モアレ画像におけるモアレ縞の平均成分を画像化した吸収画像(通常のX線の吸収画像と同じ)と、モアレ縞の位相情報を画像化した微分位相画像と、モアレ縞のVisibility(鮮明度)を画像化した小角散乱画像の3種類の画像である。なお、これらの3種類の再構成画像を再合成する等してさらに多くの種類の画像を生成することもできる。
【0015】
なお、縞走査法とは、複数の格子のうちのひとつを格子のスリット周期の1/M(Mは正の整数、吸収画像はM>2、微分位相画像と小角散乱画像はM>3)ずつスリット周期方向に移動させてM回撮影したモアレ画像を用いて再構成を行い、高精細の再構成画像を得る方法である。
【0016】
また、フーリエ変換法とは、被写体が存在する状態で、X線タルボ撮影装置でモアレ画像を1枚撮影し、画像処理において、そのモアレ画像をフーリエ変換する等して微分位相画像等の画像を再構成して生成する方法である。
【0017】
ここで、まず、タルボ干渉計やタルボ・ロー干渉計に共通する原理について、
図3を用いて説明する。
【0018】
なお、
図3では、タルボ干渉計の場合が示されているが、タルボ・ロー干渉計の場合も基本的に同様に説明される。また、
図3におけるz方向が
図1,
図2のX線タルボ撮影装置1における鉛直方向に対応し、
図3におけるx、y方向が
図1,
図2のX線タルボ撮影装置1における水平方向(前後、左右方向)に対応する。
【0019】
また、
図4に示すように、第1格子14や第2格子15には(タルボ・ロー干渉計の場合は線源格子12にも)、X線の照射方向であるz方向と直交するx方向に、所定の周期dで複数のスリットSが配列されて形成されている。
【0020】
図3に示すように、X線源11aから照射されたX線(タルボ・ロー干渉計の場合はX線源11aから照射されたX線が線源格子12(
図3では図示省略)で多光源化されたX線)が第1格子14を透過すると、透過したX線がz方向に一定の間隔で像を結ぶ。この像を自己像(格子像等ともいう。)といい、このように自己像がz方向に一定の間隔をおいて形成される現象をタルボ効果という。
【0021】
すなわち、タルボ効果とは、
図4に示すように一定の周期dでスリットSが設けられた第1格子14を可干渉性(コヒーレント)の光が透過すると、上記のように光の進行方向に一定の間隔でその自己像を結ぶ現象をいう。
【0022】
そして、
図3に示すように、第1格子14の自己像が像を結ぶ位置に、第1格子14と同様にスリットSが設けられた第2格子15を配置する。その際、第2格子15のスリットSの延在方向(すなわち
図3ではx軸方向)が、第1格子14のスリットSの延在方向に対して略平行になるように配置すると、第2格子15上でモアレ画像Moが得られる。
【0023】
なお、
図3では、モアレ画像Moを第2格子15上に記載するとモアレ縞とスリットSとが混在する状態になって分かりにくくなるため、モアレ画像Moを第2格子15から離して記載している。しかし、実際には第2格子15上およびその下流側でモアレ画像Moが形成される。そして、このモアレ画像Moが、第2格子15の直下に配置されるX線検出器16で撮影される。
【0024】
また、
図1~
図3に示すように、X線源11aと第1格子14との間に被写体Hが存在すると、被写体HによってX線の位相がずれるため、モアレ画像Moのモアレ縞が被写体Hの辺縁を境界に乱れる。一方、図示を省略するが、X線源11aと第1格子14との間に被写体Hが存在しなければ、モアレ縞のみのモアレ画像Moが現れる。以上がタルボ干渉計やタルボ・ロー干渉計の原理である。
【0025】
この原理に基づいて、本実施形態に係るX線タルボ撮影装置1においても、例えば
図1,
図2に示すように、第2のカバーユニット130内で、第1格子14の自己像が像を結ぶ位置に第2格子15が配置されるようになっている。また、前述したように、第2格子15とX線検出器16とを離すとモアレ画像Mo(
図3参照)がぼやけるため、本実施形態では、X線検出器16は第2格子15の直下に配置されるようになっている。また、第2格子15をシンチレーターやアモルファスセレンなどの発光材料で構成し、第2格子15とX線検出器16とを一体化させてもよい。
【0026】
なお、第2のカバーユニット130は、人や物が第1格子14や第2格子15、X線検出器16等にぶつかったり触れたりしないようにして、X線検出器16等を防護するために設けられている。
【0027】
図示を省略するが、X線検出器16は、照射されたX線に応じて電気信号を生成する変換素子が二次元状(マトリクス状)に配置され、変換素子により生成された電気信号を画像信号として読み取るように構成されている。そして、本実施形態では、X線検出器16は、第2格子15上に形成されるX線の像である上記のモアレ画像Moを変換素子ごとの画像信号として撮影するようになっている。X線検出器16の画素サイズは10~300(μm)であり、さらに好ましくは50~200(μm)である。
X線検出器16としては、FPD(Flat Panel Detector)を用いることができる。FPDには、検出されたX線を光電変換素子を介して電気信号に変換する間接変換型、検出されたX線を直接的に電気信号に変換する直接変換型があるが、何れを用いてもよい。
間接変換型は、CsIやGd2O2S等のシンチレータプレートの下に、光電変換素子がTFT(薄膜トランジスタ)とともに2次元状に配置されて各画素を構成する。X線検出器16に入射したX線がシンチレータプレートに吸収されると、シンチレータプレートが発光する。この発光した光により、各光電変換素子に電荷が蓄積され、蓄積された電荷は画像信号として読み出される。
直接変換型は、アモルファスセレンの熱蒸着により、100~1000(μm)の膜圧のアモルファスセレン膜がガラス上に形成され、2次元状に配置されたTFTのアレイ上にアモルファスセレン膜と電極が蒸着される。アモルファスセレン膜がX線を吸収するとき、電子正孔対の形で物質内に電圧が遊離され、電極間の電圧信号がTFTにより読み取られる。
なお、CCD(Charge Coupled Device)、X線カメラ等の撮影手段をX線検出器16として用いてもよい。
【0028】
本実施形態では、X線タルボ撮影装置1は、いわゆる縞走査法を用いてモアレ画像Moを複数枚撮影するようになっている。すなわち、本実施形態に係るX線タルボ撮影装置1では、第1格子14と第2格子15との相対位置を
図1~
図4におけるx軸方向(すなわちスリットSの延在方向(y軸方向)に直交する方向)にずらしながらモアレ画像Moを複数枚撮影する。
【0029】
そして、X線タルボ撮影装置1から複数枚分のモアレ画像Moの画像信号を受信した図示しない画像処理装置における画像処理で、複数枚のモアレ画像Moに基づいて、吸収画像や、微分位相画像や、小角散乱画像等を再構成するようになっている。
【0030】
そのため、本実施形態に係るX線タルボ撮影装置1は、縞走査法によりモアレ画像Moを複数枚撮影するために、第1格子14をx軸方向に所定量ずつ移動させることが可能となっている。なお、第1格子14を移動させる代わりに第2格子15を移動させたり、或いは両方とも移動させたりするように構成することも可能である。
【0031】
また、X線タルボ撮影装置1で、第1格子14と第2格子15との相対位置を固定したままモアレ画像Moを1枚だけ撮影し、画像処理装置における画像処理で、このモアレ画像Moをフーリエ変換法等を用いて解析する等して吸収画像や微分位相画像等を再構成するように構成することも可能である。
【0032】
本実施形態に係るX線タルボ撮影装置1における他の部分の構成について説明する。本実施形態では、いわゆる縦型であり、X線発生装置11、線源格子12、被写体台13、第1格子14、第2格子15、X線検出器16が、この順序に重力方向であるz方向に配置されている。すなわち、本実施形態では、z方向が、X線発生装置11からのX線の照射方向ということになる。
【0033】
X線発生装置11は、X線源11aとして、例えば医療現場で広く一般に用いられているクーリッジX線源や回転陽極X線源等を備えている。また、それ以外のX線源を用いることも可能である。本実施形態のX線発生装置11は、焦点からX線をコーンビーム状に照射するようになっている。つまり、
図1,
図2に示すように、z方向と一致するX線照射軸Caを中心軸としてX線発生装置11から離れるほどX線が広がるように照射される(すなわち、X線照射範囲)。
【0034】
そして、本実施形態では、X線発生装置11の下方に線源格子12が設けられている。その際、X線源11aの陽極の回転等により生じるX線発生装置11の振動が線源格子12に伝わらないようにするために、本実施形態では、線源格子12は、X線発生装置11には取り付けられず、支柱17に設けられた基台部18に取り付けられた固定部材12aに取り付けられている。
【0035】
なお、本実施形態では、X線発生装置11の振動が支柱17等のX線タルボ撮影装置1の他の部分に伝播しないようにするために(あるいは伝播する振動をより小さくするために)、X線発生装置11と支柱17との間に緩衝部材17aが設けられている。
【0036】
本実施形態では、上記の固定部材12aには、線源格子12のほか、線源格子12を透過したX線の線質を変えるためのろ過フィルター(付加フィルターともいう。)112や、照射されるX線の照射野を絞るための照射野絞り113、X線を照射する前にX線の代わりに可視光を被写体に照射して位置合わせを行うための照射野ランプ114等が取り付けられている。
【0037】
なお、線源格子12とろ過フィルター112と照射野絞り113とは、必ずしもこの順番に設けられる必要はない。また、本実施形態では、線源格子12等の周囲には、それらを保護するための第1のカバーユニット120が配置されている。
【0038】
また、コントローラー19(
図1,
図2参照)は、本実施形態では、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピューターで構成されている。なお、コントローラー19を、本実施形態のような汎用のコンピューターではなく、専用の制御装置として構成することも可能である。また、コントローラー19には、図示はしないが、操作部を含む入力手段や出力手段、記憶手段、通信手段等の適宜の手段や装置が設けられている。
出力手段には、X線タルボ撮影装置1の各種操作を行うために必要な情報や、生成された再構成画像を表示する表示部(図示省略)が含まれている。
【0039】
コントローラー19は、X線タルボ撮影装置1に対する全般的な制御を行うようになっている。すなわち、例えば、コントローラー19は、X線発生装置11に接続されており、X線源11aに管電圧や管電流、照射時間等を設定することができるようになっている。また、例えば、コントローラー19が、X線検出器16と外部の図示しない画像処理装置等との信号やデータの送受信を中継するように構成することも可能である。
つまり、本実施形態におけるコントローラー19は、被写体Hの再構成画像の生成に必要な複数のモアレ画像Mo(フーリエ変換法の場合は1枚のモアレ画像)を取得するための一連の撮影を行わせる制御部として機能している。
【0040】
[試験機について]
試験機30は、
図1,
図2に示すように、被写体台13に設けられるとともに被写体Hが設置され、被写体Hに対して引張り荷重又は圧縮荷重を負荷するものである。
このような試験機30は、
図5に示すように、ベース部31と、チャック部32と、を有する。
【0041】
ベース部31は、被写体台13に設置される。この場合、被写体台13には固定されてもよいし、非固定状態であってもよい。
ベース部31には、X線照射軸Ca上及びその周囲のX線照射範囲に、周囲よりもX線の透過を妨げにくいX線透過部31aがある。本実施形態におけるX線透過部31aは、ベース部31に形成された開口部である。換言すれば、X線透過部31aは、ベース部31を厚み方向に貫通する貫通孔でもあり、X線の透過を妨げないようになっている。
このようなX線透過部31aは、被写体Hにおける撮影部位をカバーできるようなサイズに形成されている。
【0042】
なお、本実施形態においては、X線透過部31aは開口部(貫通孔)であるとしたが、これに限られるものではなく、X線透過部31aを、X線透過率の高い材料(例えば樹脂又は炭素繊維やガラス繊維を混ぜた樹脂など)によって構成するようにしてもよい。
また、本実施形態におけるベース部31のうち、X線透過部31aを除く部位は、主に金属によって構成されているが、X線透過率の高い材料によって構成されるものとしてもよい。
【0043】
チャック部32は、被写体Hに対して引張り荷重又は圧縮荷重を負荷するものであり、被写体Hを保持可能に構成されている。より詳細に説明すると、このチャック部32はベース部31に対して複数(本実施形態においては一対)設けられ、被写体Hの両端部を直接的に又は専用の固定具(図示省略)等を用いて間接的に固定できるようになっている。
また、一対のチャック部32は、
図5に示すように、ベース部31に対して突出して設けられるとともにX線透過部31aを挟むようにして配置されている。
【0044】
一対のチャック部32は、被写体Hに対して引張り荷重を負荷する際には、一対のチャック部32同士が離間する方向に動作し、被写体Hに対して圧縮荷重を負荷する際には、一対のチャック部32同士が接近する方向に動作する。被写体Hに対して引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する場合、本実施形態においては一対のチャック部32同士が連動して動作するが、これに限られるものではなく、一方のチャック部32は固定状態とされ、他方のチャック部32のみが動作するようにしてもよい。
また、ベース部31には、例えば図示しないガイドレールや駆動部等のような、チャック部32を動作させるために必要な構成要素を備えているものとする。
【0045】
そして、このようなチャック部32の動作は、X線タルボ撮影装置1のコントローラー19(制御部)によってX線タルボ撮影装置1と連動して自動制御可能とされている。
すなわち、X線タルボ撮影装置1によって複数のモアレ画像Moを取得するための一連の撮影を行う際には、コントローラー19によって制御されるが、この一連の撮影時に、被写体Hに対して引張り荷重又は圧縮荷重を負荷するチャック部32の動作もコントローラー19で行うことができるようになっている。つまり、コントローラー19とチャック部32を動作させる駆動部とが通信可能に接続された状態となっている。
【0046】
試験機30は、基本的に、
図5(a)に示すように、ベース部31のうち広い面積を有する表面であって、かつチャック部32が設けられていない面を、被写体台13側に向けて使用される。すなわち、平置きして使用される。
被写体Hをチャック部32で保持したまま、被写体Hの撮影向きを変更したい場合は、
図5(b)に示すように、平置きの状態からベース部31を立てて置いた状態で使用することも可能となっている。すなわち、立置きして使用することが可能となっている。
このように試験機30の向きを適宜変更することで、チャック部32によって被写体Hを保持したまま、被写体Hの異なる側面から撮影を行うことができる。つまり、チャック部32による引張り荷重又は圧縮荷重を負荷した動作を維持した状態で、被写体Hの向きを変更できる。
【0047】
[試験機の構成例1]
X線タルボ撮影装置1と試験機30は、上記のようにコントローラー19とチャック部32を動作させる駆動部とが通信可能に接続された状態とはなっているものの、機械的には独立して設けられている。そのため、例えば上記のように緩衝部材17aを用いたり、X線タルボ撮影装置1と設置床面との間に緩衝部材(図示省略)を設けたりすることで、X線タルボ撮影装置1に生じる振動の抑制を行うだけでなく、試験機30に伝わる(又は試験機30から発生する)振動の抑制も必要となっていた。
そこで、
図1に示すように、X線タルボ撮影装置1の被写体台13と試験機30のうち少なくとも一方は、被写体Hへの振動の伝達を防ぐための防振機構30aを有している。
本実施形態における防振機構30aとしては、例えば防振ばねが用いられているが、これに限られるものではなく、防振ゴムを用いてもよい。
防振機構30aは、
図1に示すように、被写体台13と試験機30のベース部31との間に位置しており、下端部が被写体台13に取り付けられ、上端部がベース部31に取り付けられている。
なお、本実施形態においては試験機30が防振機構30aを有しているものとするが、X線タルボ撮影装置1の被写体台13が防振機構30aを有するものとしてもよい。
【0048】
[試験機の構成例2]
複数の格子12,14,15は、一次元格子とされている。そのため、X線タルボ撮影装置1によって取得されるモアレ画像Moには方向が出てくることになる。すなわち、被写体Hの撮影方向によっては、見える箇所と見えない箇所とが生じてしまう場合がある。
そこで、
図2に示すように、X線タルボ撮影装置1の被写体台13と試験機30のうち、いずれか一方は、被写体HをX線照射軸Caの軸周りに回転させる回転機構30bを有している。被写体Hを保持した状態の試験機30を、回転機構30bによって任意の角度に回転させた場合、回転前に撮影された被写体Hの画像と、回転後に撮影された被写体Hの画像は見え方が異なり、回転前に見えていなかった被写体Hの所定部位が、回転後に撮影された画像では見えるようになる。
本実施形態における回転機構30bとしては、例えば中央に開口部(図示省略)が形成された円状又は枠状とされ、かつ回転中心がX線照射軸Caに対応する回転部材が用いられている。また、中央に形成された開口部は、ベース部31のX線透過部31a(開口部)に対応するものであり、X線を透過しやすくなっている。
また、X線透過部31aと同様に、回転機構30bを形成する材料を、X線透過率の高い材料によって構成してもよい。この場合、中央に開口部を形成しなくてもよい。
回転機構30bは、被写体台13と試験機30のベース部31との間に位置しており、下端面が被写体台13に取り付けられ、上端面がベース部31に取り付けられている。また、この回転機構30bは、上端面側に、試験機30のベース部31が取り付けられて回転可能に構成された回転体(図示省略)を備えており、下端面側に、回転体を回転させるための駆動部を備えているものとする。
なお、本実施形態においては試験機30が回転機構30bを有しているものとするが、X線タルボ撮影装置1の被写体台13が回転機構30bを有するものとしてもよい。
また、回転機構30bの回転動作は、X線タルボ撮影装置1のコントローラー19(制御部)によってX線タルボ撮影装置1と連動して自動制御可能とされている。つまり、コントローラー19と回転体を動作させる駆動部とが通信可能に接続された状態となっている。
【0049】
[試験機の構成例3]
試験機30は、必ずしも毎回の撮影で用いられるものではなく、引張り荷重又は圧縮荷重を負荷しながらの撮影と、通常のX線タルボ撮影とを併せて行うことで、被写体Hに関する精度の高い情報を得ることができるようになっている。
そこで、試験機30は、
図6に示すように、X線タルボ撮影装置1の被写体台13に、X線照射範囲に対して進退可能に設けられている。換言すれば、試験機30は、X線照射範囲に対して進退可能となるように、X線タルボ撮影装置1の被写体台13に設けられている。
被写体台13には、試験機30を、X線照射範囲から遠ざけたり近づけたりするように移動させる移動機構40が設けられている。
移動機構40は、被写体台13に取り付けられた設置台41と、設置台41の長さ方向に沿って長尺なガイドレール42と、を備える。
設置台41は、矩形板状に形成され、被写体台13の上面よりも外方に突出する長さに設定されている。また、この設置台41のうち被写体台13の上面に載せられた部位には、X線照射範囲に対応する開口部41aが形成されており、X線の透過を妨げにくくなっている。
ガイドレール42は、設置台41に一対で設けられているとともに、設置台41の長さ方向に沿って長尺に設定されている。また、ガイドレール42は、このガイドレールに沿って移動可能な移動体(図示省略)と、移動体を動作させるための駆動部(図示省略)と、を有している。
試験機30は、ガイドレール42の移動体に対して取り付けられており、被写体台13のX線照射範囲に対応する位置から、被写体台13の外方までの間を移動(進退)できるようになっている。
試験機30を用いた撮影を行う場合は、
図6(a)に示す状態で撮影が行われ、通常のX線タルボ撮影を行う場合は、
図6(b)に示す状態で撮影が行われる。
なお、移動機構40における移動体の動作は、X線タルボ撮影装置1のコントローラー19(制御部)によってX線タルボ撮影装置1と連動して自動制御可能とされている。つまり、コントローラー19と移動体を動作させる駆動部とが通信可能に接続された状態となっている。
【0050】
上記した試験機30の構成例1~3で示す防振機構30a、回転機構30b、移動機構40は、それぞれ別々に用いるようにしてもよいし、適宜組み合わせて用いるようにしてもよい。適宜組み合わせて用いる場合は、各機構30a,30b,40それぞれが確実に機能し、かつ、試験機30によって被写体Hに対して引張り荷重又は圧縮荷重を負荷することができればよいものとする。
【0051】
[X線タルボ撮影装置による撮影時の制御について]
試験機30におけるチャック部32の動作は、上記したように、X線タルボ撮影装置1のコントローラー19によってX線タルボ撮影装置1と連動して自動制御可能とされている。したがって、試験機30によって被写体Hに対して引張り荷重又は圧縮荷重を負荷しながら、X線タルボ撮影装置1による撮影を行うことができる。
【0052】
(1)動作静止の制御
X線タルボ撮影装置1の制御部は、撮影時に、チャック部32による被写体Hへの引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する動作を静止するように制御することができる。
弾性変形域では例えばバネと同じで、チャック部32の動作を静止させれば、被写体Hに負荷される荷重及び変形量は一定となる。
以上のように制御することによって、被写体Hの弾性変形域において、被写体Hに対して一定荷重・一定変形量を加え、変化を見る検証に際し、意図しない被写体Hの変形による撮影画像の画質の低下を防ぐことができる。
【0053】
(2)動作継続の制御
X線タルボ撮影装置1の制御部は、撮影時に、チャック部32による被写体Hへの引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する動作を継続するように制御することができる。
塑性変形域では、チャック部32の動作を静止させても、被写体Hが変形してしまう(伸びる・縮む)ので、一定荷重を与えることができないため、被写体Hの変形に応じて引っ張り動作を適切に変更する必要がある。
以上のように制御することによって、被写体Hの塑性変形域において、被写体Hに対して一定荷重・一定変形量を加え、変化を見る検証に際し、意図しない被写体Hの変形による撮影画像の画質の低下を防ぐことができる。
【0054】
(3)許容最大速度
チャック部32によって被写体Hに引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する動作を継続したまま撮影を行う場合に、任意の画素数(例えば2画素)分以上変形してしまうと、生成される再構成画像にブレが生じる場合がある。また、X線タルボ撮影装置1での撮影は比較的時間がかかるため、被写体Hに引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する場合は、撮影時間を考慮し、被写体Hの変形が撮影画像に与える影響を最小にすることが求められる。
そのため、本実施形態においては、チャック部32によって被写体Hを変形させる場合に、制御部が、撮影時間中において2画素分以上の変形が生じない速度で荷重を負荷するように制御している。
【0055】
より詳細に説明すると、制御部は、X線検出器16における複数の画素における画素ピッチと、各画素が検出する像の拡大率と、撮影時間とに基づく所定の計算式によって、チャック部32による被写体Hへの引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する際の許容最大速度を算出する。
【0056】
計算式:許容最大速度=2×画素ピッチ×拡大率/撮影時間×許容係数(<1)
【0057】
ここで、画素ピッチとは、上記した画素サイズと同義であり、この画素サイズは、10~300(μm)であり、さらに好ましくは50~200(μm)であるとされている。本実施形態においては、例えば100μmとされている。
像の拡大率とは、
図3で表すとおりであり、X線発生装置11は、焦点からX線をコーンビーム状に照射するようになっているため、X線検出器16でX線を検出した際には、実際の被写体Hの大きさよりも拡大されたモアレ画像Moが得られることになる。どれだけ拡大するかは、被写体HからX線検出器16までの距離から導き出すことができ、その拡大率が前記所定の計算式に用いられるようになっている。本実施形態においては、例えば1.5倍とされている。
撮影時間は、被写体Hごと、又は被写体Hの種類や材質等によって適宜設定される。本実施形態においては、例えば10秒とされている。
許容係数は、用途によって任意に設定される安全率であり、本実施形態においては例えば1以下とされている。
したがって、本実施形態における許容最大速度は、30μm/秒とされている。
【0058】
そして、制御部は、算出された許容最大速度(算出結果)を、X線タルボ撮影装置1と連携するコントローラー19の表示部に表示する。
放射線技師や検査員等のユーザーは、表示部に表示された許容最大速度に確認し、引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する場合の速度が許容最大速度以下となるように操作しながらX線タルボ撮影装置1による撮影操作を行うことができるので、生成される再構成画像にブレが生じにくくなり、鮮明な画像を取得することができる。
【0059】
(4)撮影開始時間の設定
被写体Hに対し、引張り荷重又は圧縮荷重を負荷し続けると、被写体Hにおける塑性変形域では、
図7に示すように、ひずみ量が徐々に大きくなっていく(
図7に示す曲線を参照。)。そのため、X線タルボ撮影装置1の制御部は、目標とする引張り荷重又は圧縮荷重に到達した瞬間の撮影を行うに際して、撮影開始前の被写体Hのひずみ量の遷移から、撮影中の被写体Hのひずみ量を推定し、推定された被写体Hのひずみ量に基づいて、被写体Hのひずみ量が最小となる撮影開始時間を設定するような制御を行う。
【0060】
より詳細に説明すると、まず、ひずみ量を推定するための素材は、事前にチャック部32によって荷重を負荷したサンプル(被写体Hと同様のもの)のひずみ量や、線形近似から得ることができる。
そして、実際に被写体Hの撮影を行う場合は、制御部が、t1時点でのひずみ量の遷移から、その先のカーブを予測する。すなわち、ピーク荷重に到達するまでの予測時間を導き出す。ひずみ量の狙い値を含み、t2-t3間のひずみ量が最小となるt2を、撮影開始時間に設定する。これにより、撮影時間内のひずみ量を最小限に抑えることで、画像への影響を最小限にすることができる。
なお、
図7は、被写体Hに対して引張り荷重を負荷した場合のグラフとなっており、圧縮荷重を負荷する場合は、
図7とは正反対に曲線が表れる。
【0061】
(5)画像取得タイミング
上記したように、X線タルボ撮影装置1での撮影は比較的時間がかかるため、例えば被写体Hが弾性変形領域を超えて不可逆的に変形するもの(例えば伸ばす荷重を負荷すると伸び続けるもの)であった場合は、被写体Hの変形により負荷荷重は徐々に小さくなる。
そこで、X線タルボ撮影装置1の制御部は、縞走査によって複数のモアレ画像Moを取得するに際し、縞走査による撮影は3段階以上に分けて行われ、縞走査の周期に合わせ、チャック部32によって被写体Hに対して引張り荷重又は圧縮荷重の負荷を行うように制御する。
【0062】
本実施形態においては、
図8に示すように、X線の曝射を行う回数は合計4回となっている(
図8中の「▲」で表している)。制御部は、X線の曝射にタイミングを合わせて、チャック部32の動作を制御する。
換言すれば、撮影時間のうち、合計4回のX線の曝射のタイミングに合致する時間t1~t4に、被写体Hに対して狙いの荷重がかかるように、制御部がチャック部32の動作を制御している。
以上のような制御を行うことによって、撮影時間内の実際に画像取得を行うタイミングでのみ荷重を負荷することになり、撮影全体での被写体Hの伸びを最小にでき、撮影画像への影響を最小限にすることができる。
【0063】
以上説明したように、本実施の形態によれば、引張り荷重がかかった状態における被写体Hの内部状態の確認ができるようになるため、荷重がかかった時の物質内の変動を見ることができる。また、特に少しずつ荷重をかけた途中経過を観察することによって、被写体Hを構成する物質の変動メカニズムを見ることができる。そして、このような状態をタルボ画像特有の微分位相画像や小角散乱画像、通常の吸収画像で同時に捉えることで、従来の引張り試験や圧縮試験で見えなかった被写体Hの内部メカニズムを明らかにすることができる。
したがって、引張り・圧縮等の荷重を加えた応力下で、X線タルボ撮影装置1によって被写体Hの撮影を行う場合に、振動や被写体Hの変形が撮影画像に与える影響を最小にし、撮影画像の画質向上を図ることができるようになる。
【0064】
また、X線タルボ撮影装置1と試験機30は機械的に独立して設けられており、X線タルボ撮影装置1の被写体台13と試験機30のうち少なくとも一方は、被写体Hへの振動の伝達を防ぐための防振機構30aを有しているので、外部からX線タルボ撮影装置1に伝達された振動や、X線タルボ撮影装置1で生じた振動が被写体Hに伝達されることを防ぐことができ、撮影画像の画質を向上させることができる。
【0065】
また、試験機30は、X線タルボ撮影装置1の被写体台13に、X線照射範囲に対して進退可能に設けられているので、試験機30を使用するX線タルボ撮影装置1による撮影と、試験機30を使用しない通常のX線タルボ撮影装置1による撮影を適宜切り替えることができる。
【0066】
また、複数の格子12,14,15は、一次元格子とされており、X線タルボ撮影装置1の被写体台13と試験機30のうち、いずれか一方は、被写体HをX線照射軸Caの軸周りに回転させる回転機構30bを有しているので、回転前に撮影された被写体Hの画像と、回転後に撮影された被写体Hの画像は見え方が異なり、回転前に見えていなかった被写体Hの部位(例えば傷、欠損等)が、回転後に撮影された画像では見えるようになり、被写体Hの検査を詳細に行うことができる。
【0067】
また、X線タルボ撮影装置1の制御部は、撮影時に、チャック部32による被写体Hへの引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する動作を静止するように制御するので、被写体Hの弾性変形域において、意図しない被写体Hの変形による撮影画像の画質の低下を防ぐことができる。
【0068】
また、X線タルボ撮影装置1の制御部は、撮影時に、チャック部32による被写体Hへの引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する動作を継続するように制御するので、被写体Hの塑性変形域において、意図しない被写体Hの変形による撮影画像の画質の低下を防ぐことができる。
【0069】
また、X線タルボ撮影装置1の制御部は、X線検出器16における複数の画素のピッチと、各画素が検出する像の拡大率と、撮影時間とに基づく所定の計算式によって、チャック部32による被写体Hへの引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する際の許容最大速度を算出し、その算出結果を、X線タルボ撮影装置1と連携する表示部に表示するので、ユーザーは、表示部に表示された許容最大速度に確認し、引張り荷重又は圧縮荷重を負荷する場合の速度が許容最大速度以下となるように操作しながらX線タルボ撮影装置1による撮影操作を行うことができる。これにより、生成される再構成画像にブレが生じにくくなり、鮮明な画像を取得することができる。
【0070】
また、X線タルボ撮影装置1の制御部は、目標とする引張り荷重又は圧縮荷重に到達した瞬間の撮影を行うに際し、撮影開始前の被写体Hのひずみ量の遷移から、撮影中の被写体Hのひずみ量を推定し、推定された被写体Hのひずみ量に基づいて、被写体Hのひずみ量が最小となる撮影開始時間を設定するので、撮影時間内のひずみ量を最小限に抑えることができ、画像への影響を最小限にすることができる。
【0071】
また、X線タルボ撮影装置1の制御部は、縞走査によって複数のモアレ画像Moを取得するに際し、縞走査による撮影は3段階以上に分けて行われ、縞走査の周期に合わせ、チャック部32によって被写体Hに対して引張り荷重又は圧縮荷重の負荷を行うので、撮影時間内の実際に画像取得を行うタイミングでのみ荷重を負荷することになり、撮影全体での被写体Hの伸びを最小にでき、撮影画像への影響を最小限にすることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 X線タルボ撮影装置
11 X線発生装置
11a X線源
112 ろ過フィルター
113 照射野絞り
114 照射野ランプ
12 線源格子(G0格子)
120 第1のカバーユニット
12a 固定部材
13 被写体台
130 第2のカバーユニット
14 第1格子(G1格子)
15 第2格子(G2格子)
16 X線検出器(FPD)
17 支柱
17a 緩衝部材
18 基台部
19 コントローラー(制御部)
30 試験機
30a 防振機構
30b 回転機構
31 ベース部
31a X線透過部
32 チャック部
40 移動機構
41 設置台
41a 開口部
42 ガイドレール
H 被写体
S スリット
d 周期
Mo モアレ画像
Ca X線照射軸