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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/06 20060101AFI20220208BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20220208BHJP
   F16H 63/18 20060101ALI20220208BHJP
   B62J 23/00 20060101ALN20220208BHJP
【FI】
B60K17/06 G
B60K17/06 A
F16H57/04 G
F16H63/18
B62J23/00 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018019230
(22)【出願日】2018-02-06
(65)【公開番号】P2019137087
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100161953
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 敬直
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 直樹
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-90288(JP,A)
【文献】特開2011-196432(JP,A)
【文献】特開2011-152848(JP,A)
【文献】特開平4-31191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/06
F16H 57/04
F16H 63/18
B62J 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクケースを備えたエンジンと、
前記クランクケースの側面に突出しており、前記エンジンに冷却水を送り込むウォーターポンプと、
前記エンジンから伝達される回転を変速させる変速機と、
前記ウォーターポンプの後方に配置され、シフトペダルに接続されているシフトペダルシャフトと、
前記シフトペダルシャフトと平行に配置されているシフトカムと、
前記シフトカムの回転角を検出するシフトカムセンサと、
前記クランクケースの前記側面に取り付けられたサイドカバーと、を備え、
前記シフトカムセンサは、前記サイドカバーに取り付けられ、前記ウォーターポンプと前記シフトペダルシャフトの間で前記ウォーターポンプの下端部よりも上方に配置されており、
前記シフトカムセンサの下方には、前記シフトカムセンサに走行風を導く導風板が前記サイドカバーと一体で設けられていることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項2】
前記導風板は、車両側面視で、斜め前下方に向かって延びており、
前記導風板の前端部は、車両側面視で、前記シフトカムセンサの中心部の下方に位置していることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記シフトカムセンサは、車両下面視で、前記ウォーターポンプの左右方向外側の端部及び前記導風板の左右方向外側の端部よりも左右方向内側に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記サイドカバーは、前記シフトペダルシャフトを支持するボスを備え、
前記導風板の一端部は、前記ボスに接続されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
前記サイドカバーの左右方向外側に配置されている外カバーを更に備え、
前記外カバーは、前記シフトカムセンサの左右方向外側を覆っていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の鞍乗型車両。
【請求項6】
前記ウォーターポンプと前記外カバーの間に配置されている補助カバーを更に備え、
前記補助カバーは、前記外カバーと共に前記シフトカムセンサの左右方向外側を覆っていることを特徴とする請求項5に記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフトカムセンサを備えた鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車等の鞍乗型車両は、変速機のギヤポジションを変更するシフト装置を備えている。このシフト装置は、例えば、シフトペダルシャフトとシフトカムを備えており、シフトペダルシャフトの回転に伴ってシフトカムが回転することで、シフトカムに係合するシフトフォークが変速機のギヤを移動させ、変速機のギヤポジションが変更される。
【0003】
また、自動二輪車等の鞍乗型車両は、シフトカムの回転角を検出するシフトカムセンサを備えており、このシフトカムセンサからの信号に基づいて、変速機のギヤポジションが判定される。特に、シフトカムセンサが電子基板を内蔵しているような場合、シフトカムセンサの耐熱温度はそれ程高くない。そのため、シフトカムセンサが高温化しないように、シフトカムセンサの取付場所に気を使う必要がある。また、シフトカムセンサは電子部品であるため、飛び石等の異物や泥や泥水からシフトカムセンサを保護する必要もある。
【0004】
例えば、特許文献1には、シフトドラムの回動角を検出するギヤポジションセンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5345579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、ギヤポジションセンサの前方がウォータポンプによって覆われ、ギヤポジションセンサの下方がシフトスピンドルによって覆われている(特許文献1の図6参照)。そのため、走行風がギヤポジションセンサに当たり難く、ギヤポジションセンサの冷却性能が不十分になる恐れがある。
【0007】
また、特許文献1では、ギヤポジションセンサの前端部がウォータポンプによって保護されているが、ギヤポジションセンサの後端部を保護する部材は存在しない(特許文献1の図6参照)。そのため、飛び石等の異物がギヤポジションセンサに接触したり、泥や泥水がギヤポジションセンサに付着したりする恐れがある。
【0008】
そこで、本発明は、シフトカムセンサの冷却性能を向上させると共に、異物や泥や泥水からシフトカムセンサを保護することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る鞍乗型車両は、クランクケースを備えたエンジンと、前記クランクケースの側面に突出しており、前記エンジンに冷却水を送り込むウォーターポンプと、前記エンジンから伝達される回転を変速させる変速機と、前記ウォーターポンプの後方に配置され、シフトペダルに接続されているシフトペダルシャフトと、前記シフトペダルシャフトと平行に配置されているシフトカムと、前記シフトカムの回転角を検出するシフトカムセンサと、前記クランクケースの前記側面に取り付けられたサイドカバーと、を備え、前記シフトカムセンサは、前記サイドカバーに取り付けられ、前記ウォーターポンプと前記シフトペダルシャフトの間で前記ウォーターポンプの下端部よりも上方に配置されており、前記シフトカムセンサの下方には、前記シフトカムセンサに走行風を導く導風板が前記サイドカバーと一体で設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シフトカムセンサの冷却性能を向上させると共に、異物や泥や泥水からシフトカムセンサを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施例に係る自動二輪車を示す左側面図である。
図2】本発明の一実施例に係るエンジン及びその周辺部を示す左側面図である。
図3】本発明の一実施例に係るシフトカムセンサ及びその周辺部を示す左側面図である。
図4】本発明の一実施例に係るシフトカムセンサ及びその周辺部を示す下面図である。
図5】本発明の一実施例に係るシフト装置を示す斜視図である。
図6】本発明の一実施例に係るシフトカムセンサ及び伝達シャフトを示す斜視図である。
図7】本発明の一実施例に係る外カバー、補助カバー及びそれらの周辺部を示す斜視図である。
図8】本発明の一実施例に係る外カバー、補助カバー及びそれらの周辺部を示す後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態では、ウォーターポンプとシフトペダルシャフトの間でウォーターポンプの下端部よりも上方にシフトカムセンサが配置されており、シフトカムセンサの下方には導風板が設けられている。そのため、ウォーターポンプと導風板によってシフトカムセンサを異物や泥や泥水から保護することができる。
【0013】
また、上記のようにシフトカムセンサの下方に導風板が設けられることで、走行風を効率良くシフトカムセンサに導き、シフトカムセンサの冷却性能を向上させることができる。そのため、比較的温度が高いエンジンの周辺にシフトカムセンサが配置されるような場合であっても、シフトカムセンサを正常に動作させることができる。
【実施例
【0014】
(自動二輪車1)
以下、図面に基づき、本発明の一実施例に係るオンロード型の自動二輪車1(鞍乗型車両の一例)について説明する。以下、前後、左右、上下等の方向を示す語は、自動二輪車1の運転者から見た方向を基準として用いる。各図に適宜付される矢印Fr、Rr、L、R、U、Loは、それぞれ自動二輪車1の前方、後方、左方、右方、上方、下方を示している。
【0015】
図1図3を参照して、自動二輪車1は、車体フレーム2と、車体フレーム2の前方に配置されているステアリング機構3及び前輪4と、車体フレーム2の後下方に配置されているスイングアーム5及び後輪6と、車体フレーム2に支持されているエンジン7と、エンジン7の左方(左右方向外側)に配置されているウォーターポンプ8と、エンジン7の後部に支持されている変速機9と、変速機9の下方に配置されているシフト装置10と、シフト装置10の左方(左右方向外側)に配置されているサイドカバー11及び導風板12と、サイドカバー11に取り付けられているシフトカムセンサ13と、サイドカバー11の左方(左右方向外側)に配置されている外カバー14と、ウォーターポンプ8と外カバー14の間に配置されている補助カバー15と、を主体として構成されている。なお、外カバー14及び補助カバー15は、図3図4では表示されていない。以下、上記各構成要素について順番に説明する。
【0016】
(車体フレーム2)
図1を参照して、車体フレーム2は、ヘッドパイプ2aと、ヘッドパイプ2aの後下方に配置されている左右一対のタンクチューブ2bと、左右一対のタンクチューブ2bの後方に配置されている左右一対のシートレール2cと、を主体として構成されている。左右一対のタンクチューブ2bには燃料タンク(図示せず)が支持されており、左右一対のシートレール2cには運転者シート(図示せず)が支持されている。
【0017】
(ステアリング機構3及び前輪4)
図1を参照して、ステアリング機構3は、車体フレーム2のヘッドパイプ2aに挿通されているステアリングシャフト(図示せず)と、ステアリングシャフトに接続されているハンドルバー3a及び左右一対のフロントフォーク3bと、を備えている。左右一対のフロントフォーク3bの下端部には、前輪4が回転可能に支持されている。
【0018】
(スイングアーム5及び後輪6)
図1を参照して、スイングアーム5の前端部は、左右一対のタンクチューブ2bの後部にピボット軸17を介して接続されている。これにより、スイングアーム5がピボット軸17を中心に揺動可能となっている。スイングアーム5の後端部には、後輪6が回転可能に支持されている。
【0019】
(エンジン7)
図2を参照して、エンジン7は、例えば、水冷式の4気筒型エンジンである。エンジン7は、クランクケース21と、クランクケース21の前部上方に配置されているシリンダ22と、シリンダ22の上方に配置されているシリンダヘッド23と、シリンダヘッド23を上方から覆うヘッドカバー24と、を備えている。
【0020】
クランクケース21には、クランクシャフト25が収容されている。クランクシャフト25は、左右方向(エンジン7の幅方向)に延びている。クランクケース21の下方には、オイルパン26が設けられている。クランクケース21の左側面21a(左右方向外側の側面)の前部には、マグネトカバー27が取り付けられている。マグネトカバー27は、クランクシャフト25の左端部に固定された発電用のマグネト(図示せず)の左方(左右方向外側)を覆っている。
【0021】
シリンダ22には、ピストン(図示せず)が収容されている。ピストンは、コネクティングロッド(図示せず)を介してクランクシャフト25に接続されている。シリンダ22とシリンダヘッド23の間には、複数個の燃焼室(図示せず)が設けられている。シリンダヘッド23には、複数個の燃焼室を開閉する複数個の吸気バルブ及び複数個の排気バルブ(いずれも図示せず)が保持されている。
【0022】
(ウォーターポンプ8)
図3図4を参照して、ウォーターポンプ8は、クランクケース21の左側面21aに突出している。ウォーターポンプ8は、ラジエータ(図示せず)によって冷却された冷却水をエンジン7の要冷却部(例えば、シリンダ22やシリンダヘッド23)に送り込むことで、エンジン7の要冷却部を冷却する。
【0023】
ウォーターポンプ8は、ポンプ本体8aと、ポンプ本体8aの左側面(左右方向外側の側面)に突出している下側パイプ8bと、ポンプ本体8aの上面に突出している上側パイプ8cと、を備えている。ポンプ本体8aは、上下一対のボルト29によってクランクケース21の左側面21aに取り付けられている。下側パイプ8bは、斜め前下方に向かって延びている。下側パイプ8bは、ラジエータに配管(図示せず)を介して接続されている。上側パイプ8cは、斜め前上方に向かって延びている。上側パイプ8cは、エンジン7の要冷却部に配管(図示せず)を介して接続されている。
【0024】
(変速機9)
図3を参照して、変速機9は、メインシャフト31と、メインシャフト31の後方に配置されているドライブシャフト32と、メインシャフト31の外周に設けられている複数個のドライブギヤ33(図3では1個のみを表示)と、ドライブシャフト32の外周に設けられている複数個のドリブンギヤ34(図3では1個のみを表示)と、を備えている。
【0025】
メインシャフト31は、左右方向に延びている。メインシャフト31は、クラッチ装置(図示せず)を介してエンジン7のクランクシャフト25(図2参照)に接続されている。
【0026】
図3を参照して、ドライブシャフト32は、左右方向に延びており、メインシャフト31と平行に配置されている。ドライブシャフト32の左端部(左右方向外側の端部)は、クランクケース21の左側面21aよりも左方(左右方向外側)に突出している。ドライブシャフト32の左端部には、ドライブスプロケット36が固定されている。ドライブスプロケット36には、ドライブチェーン37の前端部が巻き掛けられている。図1を参照して、ドライブチェーン37の後端部は、後輪6に取り付けられたドリブンスプロケット38に巻き掛けられている。以上のように、ドライブシャフト32は、ドライブスプロケット36、ドライブチェーン37及びドリブンスプロケット38を介して後輪6に接続されている。
【0027】
図3を参照して、複数個のドライブギヤ33と複数個のドリブンギヤ34は、常に噛み合っている。複数個のドライブギヤ33には、メインシャフト31に対して左右方向にスライド可能なスライドギヤが含まれている。複数個のドリブンギヤ34には、ドライブシャフト32に対して左右方向にスライド可能なスライドギヤが含まれている。
【0028】
(シフト装置10)
図3図5を参照して、シフト装置10は、シフトペダルシャフト41と、シフトペダルシャフト41の右側部に固定されているドライブプレート42と、シフトペダルシャフト41の右前方に配置されているシフトカム43と、シフトカム43の左端部に固定されているシフトカムプレート44及び伝達シャフト45と、シフトカム43の前上方に配置されている前側フォークシャフト46と、シフトカム43の後上方に配置されている後側フォークシャフト47と、前側フォークシャフト46に取り付けられている前側シフトフォーク48と、後側フォークシャフト47に取り付けられている左右一対の後側シフトフォーク49と、を備えている。
【0029】
シフトペダルシャフト41は、左右方向に延びている。シフトペダルシャフト41の左端部(左右方向外側の端部)は、クランクケース21の左側面21aよりも左方(左右方向外側)に突出している。シフトペダルシャフト41の左端部は、ウォーターポンプ8の後方に配置されている。シフトペダルシャフト41の左端部には、シフトペダル50(図3図5では、一部の外形のみを破線で表示)が接続されている。
【0030】
ドライブプレート42は、シフトペダルシャフト41の右側部から前方に向かって延びている。ドライブプレート42の右面には、複数個の爪部(図示せず)が設けられている。
【0031】
シフトカム43は、左右方向に延びており、シフトペダルシャフト41と平行に配置されている。シフトカム43の外周面の左右方向中央部と左右方向両側部には、それぞれ、カム溝43aが設けられている。
【0032】
シフトカムプレート44は、シフトカム43の左端部から左方(左右方向外側)に向かって突出している。シフトカムプレート44の左面には、複数個の突起部(図示せず)が設けられている。複数個の突起部は、ドライブプレート42の右面に設けられた複数個の爪部に係合している。
【0033】
伝達シャフト45は、シフトカム43の左端部から左方(左右方向外側)に向かって突出している。伝達シャフト45は、左右方向に延びており、シフトペダルシャフト41と平行に配置されている。伝達シャフト45の左端部(左右方向外側の端部)の外周には、係合溝45aが設けられている。
【0034】
前側フォークシャフト46及び後側フォークシャフト47は、左右方向に延びており、シフトペダルシャフト41と平行に配置されている。
【0035】
前側シフトフォーク48は、前側フォークシャフト46によって左右方向にスライド可能に支持されている。前側シフトフォーク48の下端部は、シフトカム43の外周面の左右方向中央部に設けられたカム溝43aに係合している。前側シフトフォーク48の上端部は、変速機9の複数個のドライブギヤ33に含まれるスライドギヤに係合している。
【0036】
左右一対の後側シフトフォーク49は、後側フォークシャフト47によって左右方向にスライド可能に支持されている。左右一対の後側シフトフォーク49の下端部は、シフトカム43の外周面の左右方向両側部に設けられたカム溝43aに係合している。左右一対の後側シフトフォーク49の上端部は、変速機9の複数個のドリブンギヤ34に含まれるスライドギヤに係合している。
【0037】
(サイドカバー11)
図3図4を参照して、サイドカバー11は、カバー本体51と、カバー本体51の左側面(左右方向外側の側面)の後部に突出しているボス52と、カバー本体51の左側面の下部に突出しているリブ53と、を備えている。なお、サイドカバー11の各部分51~53は、すべて一体で設けられている。
【0038】
カバー本体51は、クランクケース21の左側面21aに沿って配置されている。カバー本体51の外周部は、複数個のボルト56によってクランクケース21の左側面21aに取り付けられている。
【0039】
ボス52は、円筒状を成しており、左右方向に延びている。ボス52には、シフト装置10のシフトペダルシャフト41が貫通している。これにより、ボス52がシフトペダルシャフト41を支持している。
【0040】
リブ53は、シフトカムセンサ13(詳細は後述)の右方(車両左右方向内側)に設けられている。リブ53は、車両側面視で、斜め前下方に向かって直線状に延びている。リブ53の後端部は、ボス52の外周面に接続されている。リブ53の前端部は、車両側面視で、シフトカムセンサ13の前端部の下方に位置している。
【0041】
(導風板12)
図3図4を参照して、導風板12は、サイドカバー11のカバー本体51及びボス52と一体で設けられている。導風板12は、シフトカムセンサ13(詳細は後述)の下方に設けられている。導風板12は、車両側面視で、斜め前下方に向かって直線状に延びている。導風板12の後端部は、サイドカバー11のボス52の外周面に接続されている。導風板12の前端部は、車両側面視で、シフトカムセンサ13の中心部Xの下方に位置している。導風板12の前後方向の幅は、左方(左右方向外側)に向かって徐々に狭くなっている。導風板12の左端部(左右方向外側の端部)は、シフトカムセンサ13よりも左方(左右方向外側)に位置している。
【0042】
(シフトカムセンサ13)
図3図6を参照して、シフトカムセンサ13は、例えば、電子基板を内蔵した無接点式のセンサであり、ポテンショメータによって構成されている。シフトカムセンサ13は、エンジン7の外部に配置されている。シフトカムセンサ13は、コントロールユニット(図示せず)と電気的に接続されている。
【0043】
シフトカムセンサ13は、ケーシング61と、ケーシング61の前部から下方に向かって突出しているカプラ62と、ケーシング61に支持されている回転子63と、を備えている。ケーシング61は、上下一対のボルト65によって、サイドカバー11のカバー本体51の左側面に取り付けられている。カプラ62は、ハーネス(図示せず)のコネクタと係合している。回転子63の外周部には、係合突起63aが設けられている。係合突起63aは、伝達シャフト45の係合溝45aと係合している。これにより、回転子63が伝達シャフト45と一体に回転可能となっている。
【0044】
シフトカムセンサ13は、車両側面視で、ウォーターポンプ8とシフトペダルシャフト41の間に配置されている。これにより、車両側面視で、前側から順番に、マグネトカバー27、ウォーターポンプ8、シフトカムセンサ13、シフトペダルシャフト41が一直線上に並んでいる。
【0045】
シフトカムセンサ13は、ウォーターポンプ8の後方に、ウォーターポンプ8と隣接して配置されている。つまり、シフトカムセンサ13は、ウォーターポンプ8によって前方から覆われている。シフトカムセンサ13は、ウォーターポンプ8の下端部よりも上方で、且つ、ウォーターポンプ8の上端部よりも下方に位置している。シフトカムセンサ13は、車両前面視で、ウォーターポンプ8の後方に隠れており、視認することができない。
【0046】
シフトカムセンサ13は、サイドカバー11のボス52の前方に、サイドカバー11のボス52と隣接して配置されている。つまり、シフトカムセンサ13は、サイドカバー11のボス52によって後方から覆われている。
【0047】
シフトカムセンサ13は、ドライブシャフト32及びドライブスプロケット36の下方に配置されている。つまり、シフトカムセンサ13は、ドライブシャフト32及びドライブスプロケット36によって上方から覆われている。
【0048】
シフトカムセンサ13の後端部は、導風板12の上方に配置されている。つまり、シフトカムセンサ13の後端部は、導風板12によって下方から覆われている。シフトカムセンサ13の前端部の下方は、走行風を導くために開放されている。つまり、シフトカムセンサ13の前端部は、導風板12によって下方から覆われていない。
【0049】
図4を参照して、シフトカムセンサ13は、車両下面視で、ウォーターポンプ8の右端部(左右方向内側の端部)及び導風板12の右端部(左右方向内側の端部)よりも左方(左右方向外側)に配置されている。シフトカムセンサ13は、車両下面視で、ウォーターポンプ8の左端部(左右方向外側の端部)及び導風板12の左端部(左右方向外側の端部)よりも右方(左右方向内側)に配置されている。
【0050】
(外カバー14)
図7図8を参照して、外カバー14は、上下方向に延びている主壁71と、主壁71の下端部から右方(左右方向内側)に向かって折れ曲がる折曲壁72と、を備えている。
【0051】
主壁71の前後方向の幅は、上方に向かって徐々に狭くなっている。主壁71の前上部と前下部は、それぞれ、ボルト74によって補助カバー15(詳細は後述)の上部と下部に取り付けられている。主壁71の上部は、ドライブスプロケット36の左方(左右方向外側)を覆っている。主壁71の前下部は、シフトカムセンサ13の左方(左右方向外側)を覆っている。
【0052】
折曲壁72の前後方向中央部には、上方に向かって円弧状に湾曲する湾曲部72aが設けられており、この湾曲部72aに沿ってシフトペダルシャフト41とサイドカバー11のボス52が配置されている。折曲壁72の前部は、シフトカムセンサ13のケーシング61の左側面(左右方向外側の側面)と対向している。つまり、折曲壁72は、シフトカムセンサ13の下方を覆っていない。
【0053】
(補助カバー15)
図7図8を参照して、補助カバー15の前後方向の幅は、下方に向かって徐々に狭くなっている。補助カバー15の前上部と後上部は、それぞれ、ボルト76によってクランクケース21の左側面21aに取り付けられている。補助カバー15の下端部は、ボルト77によってサイドカバー11のカバー本体51の左側面に取り付けられている。以上のように、補助カバー15は、クランクケース21とサイドカバー11に跨って取り付けられている。
【0054】
補助カバー15の下部は、外カバー14と共にシフトカムセンサ13の左方(左右方向外側)を覆っている。補助カバー15の上部には、クラッチレリーズ機構78(図7図8において一部のみを表示)が取り付けられている。クラッチレリーズ機構78は、クラッチレバーとクラッチ装置(いずれも図示せず)を接続しており、運転者によるクラッチレバーの操作に応じて、クラッチ装置を接続状態から切断状態に切り換える。これにより、エンジン7のクランクシャフト25から変速機9のメインシャフト31への回転の伝達が遮断される。
【0055】
(自動二輪車1の走行)
エンジン7のクランクシャフト25が回転すると、この回転がクラッチ装置(図示せず)を介してメインシャフト31に伝達され、メインシャフト31が回転する。このようにメインシャフト31が回転すると、この回転がドライブギヤ33及びドリブンギヤ34を介してドライブシャフト32に伝達され、ドライブシャフト32が回転する。その際に、ドライブギヤ33とドリブンギヤ34のギヤ比に応じて、エンジン7のクランクシャフト25から伝達される回転が変速される。
【0056】
上記のようにドライブシャフト32が回転すると、この回転がドライブスプロケット36、ドライブチェーン37及びドリブンスプロケット38を介して後輪6に伝達され、後輪6が回転する。これにより、自動二輪車1が走行する。
【0057】
(変速機9のギヤポジションの変更)
運転者が足でシフトペダル50を操作すると、シフトペダル50に接続されたシフトペダルシャフト41が所定角度回転する。これに伴って、シフトペダルシャフト41に固定されたドライブプレート42がシフトペダルシャフト41を中心に所定角度回転し、ドライブプレート42の複数個の爪部(図示せず)がシフトカムプレート44の複数個の突起部(図示せず)を押圧する。この押圧により、シフトカムプレート44とシフトカム43が一体的に回転する。
【0058】
上記のようにシフトカム43が回転すると、シフトカム43のカム溝43aとシフトフォーク48、49の係合位置が左右方向に変化する。これに伴って、シフトフォーク48、49が左右方向に移動し、複数個のドライブギヤ33に含まれるスライドギヤ又は複数個のドリブンギヤ34に含まれるスライドギヤを左右方向に移動させる。これに伴って、メインシャフト31の回転をドライブシャフト32に伝達するドライブギヤ33とドリブンギヤ34の組み合わせが変化し、変速機9のギヤポジションが変更される。
【0059】
(シフトカム43の回転角の検出)
上記のようにシフトカム43が回転すると、この回転が伝達シャフト45を介してシフトカムセンサ13の回転子63に伝達され、シフトカムセンサ13の回転子63がシフトカム43及び伝達シャフト45と一体に回転する。これにより、シフトカムセンサ13がシフトカム43の回転角を検出し、検出信号をコントロールユニット(図示せず)に送信する。コントロールユニットは、シフトカムセンサ13から送信される検出信号に基づいて、変速機9のギヤポジションを判定する。
【0060】
(シフトカムセンサ13の冷却)
自動二輪車1が走行すると、走行風の一部がウォーターポンプ8と導風板12の間を通ってシフトカムセンサ13の下方の空間に流入する(図3の白抜き矢印A参照)。このようにシフトカムセンサ13の下方の空間に流入した走行風は、導風板12によってシフトカムセンサ13に導かれ、シフトカムセンサ13に当たる(図3の白抜き矢印B参照)。これにより、シフトカムセンサ13が冷却される。
【0061】
(効果)
本実施例では、ウォーターポンプ8とシフトペダルシャフト41の間でウォーターポンプ8の下端部よりも上方にシフトカムセンサ13が配置されており、シフトカムセンサ13の下方には導風板12が設けられている。そのため、ウォーターポンプ8と導風板12によってシフトカムセンサ13を飛び石等の異物や泥や泥水から保護することができる。
【0062】
また、シフトカムセンサ13がサイドカバー11のボス52によって後方から覆われているため、シフトカムセンサ13を異物や泥や泥水から保護する効果を高めることができる。更に、シフトカムセンサ13がドライブシャフト32及びドライブスプロケット36によって上方から覆われているため、シフトカムセンサ13を異物や泥や泥水から保護する効果を一層高めることができる。
【0063】
また、上記のようにシフトカムセンサ13の下方に導風板12が設けられることで、走行風を効率良くシフトカムセンサ13に導き、シフトカムセンサ13の冷却性能を向上させることができる。そのため、比較的温度が高いエンジン7の周辺にシフトカムセンサ13が配置されるような場合であっても、シフトカムセンサ13を正常に動作させることができる。
【0064】
本実施例では特に、電子基板を内蔵した無接点式のセンサによってシフトカムセンサ13が構成されている。このような場合には、接点式のセンサによってシフトカムセンサ13が構成される場合と比較して、より高度な電子制御が可能となる反面、シフトカムセンサ13の耐熱温度が低くなる。そのため、上記のように導風板12によって走行風を効率良くシフトカムセンサ13に導き、シフトカムセンサ13の冷却性能を向上させることの重要性が高い。
【0065】
また、導風板12は、車両側面視で、斜め前下方に向かって延びており、導風板12の前端部は、車両側面視で、シフトカムセンサ13の中心部Xの下方に位置している。このような導風板12の配置により、導風板12の前端部が車両側面視でシフトカムセンサ13の前端部の下方まで延びている場合よりも、シフトカムセンサ13の下方の空間へと走行風を導きやすくなり、走行風によるシフトカムセンサ13の冷却効果を高めることができる。また、上記のような導風板12の配置により、導風板12の前端部が車両側面視でシフトカムセンサ13の後端部の下方までしか延びていない場合よりも、異物や泥や泥水からシフトカムセンサ13を保護する効果を高めることができる。つまり、上記のような導風板12の配置により、シフトカムセンサ13の冷却性能とシフトカムセンサ13の保護を両立させることができる。
【0066】
また、シフトカムセンサ13は、車両下面視で、ウォーターポンプ8の左端部(左右方向外側の端部)及び導風板12の左端部(左右方向外側の端部)よりも右方(左右方向内側)に配置されている。そのため、シフトカムセンサ13の少なくとも一部が車両下面視でウォーターポンプ8の左端部及び導風板12の左端部よりも左方(左右方向外側)に配置されている場合よりも、異物がシフトカムセンサ13に接触し難くなると共に、泥や泥水がシフトカムセンサ13に付着し難くなる。
【0067】
また、シフトカムセンサ13は、クランクケース21の左側面21aに取り付けられたサイドカバー11に取り付けられている。そのため、シフトカムセンサ13がクランクケース21の左側面21aに直接取り付けられる場合よりも、クランクケース21の熱がシフトカムセンサ13に伝わり難くなり、シフトカムセンサ13の高温化を抑制することができる。
【0068】
また、導風板12は、サイドカバー11と一体で設けられている。そのため、導風板12がサイドカバー11と別体で設けられる場合よりも、自動二輪車1の構造を簡易化することができる。これに伴って、自動二輪車1の部品点数や製造コストを削減することができると共に、自動二輪車1の軽量化を図ることができる。また、シフトカムセンサ13が取り付けられるサイドカバー11に対して導風板12が一体で設けられることで、シフトカムセンサ13と導風板12の位置精度を向上させることができる。そのため、導風板12によって走行風を一層効率良くシフトカムセンサ13に導くことができ、走行風によるシフトカムセンサ13の冷却効果を高めることができる。
【0069】
また、導風板12の後端部は、サイドカバー11のボス52に接続されている。そのため、サイドカバー11のボス52の剛性を向上させ、サイドカバー11のボス52によって支持されるシフトペダルシャフト41のたわみを抑制することができる。これに伴って、シフトペダルシャフト41の回転をシフトカム43にスムーズに伝達することができ、ギヤシフトのフィーリングが向上する。
【0070】
また、サイドカバー11の製造時に、金型内において、カバー本体51の成型部分からボス52の成型部分へと溶湯が直接流れ込むだけでなく、カバー本体51の成型部分からボス52の成型部分へと導風板12の成型部分を介して溶湯が流れ込むことになる(図4の二点鎖線矢印参照)。そのため、金型内における湯流れが向上し、サイドカバー11の生産性が向上する。
【0071】
また、サイドカバー11の左方(左右方向外側)に配置されている外カバー14がシフトカムセンサ13の左方(左右方向外側)を覆っている。そのため、シフトカムセンサ13の下方の空間に流入した走行風が左方(左右方向外側)に拡散するのを抑制することができ、走行風がシフトカムセンサ13に当たりやすくなる。そのため、走行風によるシフトカムセンサ13の冷却効果を高めることができる。また、外カバー14がシフトカムセンサ13の左方を覆うことで、異物がシフトカムセンサ13の左側面に接触し難くなると共に、泥や泥水がシフトカムセンサ13の左側面に付着し難くなる。
【0072】
また、外カバー14は、シフトカムセンサ13の下方を覆っていない。そのため、シフトカムセンサ13の下方の空間からシフトカムセンサ13に向かう走行風の流れが外カバー14によって遮断される恐れは無く、走行風をシフトカムセンサ13に確実に当てることができる。
【0073】
更に、ウォーターポンプ8と外カバー14の間に配置されている補助カバー15が外カバー14と共にシフトカムセンサ13の左方(左右方向外側)を覆っている。そのため、走行風が左方(左右方向外側)に拡散するのを一層効果的に抑制し、走行風によるシフトカムセンサ13の冷却効果を一層高めることができると共に、異物や泥や泥水からシフトカムセンサ13の左側面を一層効果的に保護することができる。
【0074】
(変形例)
本実施例では、導風板12がサイドカバー11と一体で設けられている。一方で、他の異なる実施例では、導風板12がクランクケース21や他のカバー(例えば、外カバー14や補助カバー15)と一体で設けられていても良いし、導風板12がその周辺部材とは完全に別体で設けられていても良い。
【0075】
本実施例では、無接点式のセンサによってシフトカムセンサ13が構成されている。一方で、他の異なる実施例では、接点式のセンサによってシフトカムセンサ13が構成されていても良い。
【0076】
本実施例では、オンロード型の自動二輪車1を鞍乗型車両の一例としている。一方で、他の異なる実施例では、オフロード型の自動二輪車を鞍乗型車両の一例としても良いし、自動二輪車以外の車両を鞍乗型車両の一例としても良い。
【符号の説明】
【0077】
1 自動二輪車(鞍乗型車両の一例)
7 エンジン
8 ウォーターポンプ
8a ポンプ本体
8b 下側パイプ
9 変速機
11 サイドカバー
12 導風板
13 シフトカムセンサ
14 外カバー
15 補助カバー
21 クランクケース
21a (クランクケースの)左側面
41 シフトペダルシャフト
43 シフトカム
52 ボス
図1
図2
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図8