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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】水質分析装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20060101AFI20220208BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20220208BHJP
【FI】
C02F1/00 V
G06T7/00 350C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018023058
(22)【出願日】2018-02-13
(65)【公開番号】P2019136664
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高▲瀬▼ 信彰
(72)【発明者】
【氏名】木村 雄喜
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-119454(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159614(WO,A1)
【文献】特開昭62-083663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
G06T 7/00- 7/90
G06F 16/00-16/958
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈殿池の画像データについて第1の畳み込みAEを学習して前記沈殿池の色相の特徴量を抽出し、該色相の特徴量からクラスタリングにより前記画像データを色相のクラスタに分類して色相の特徴空間及びクラスタ分布を描画する色相分析部と、
前記画像データについて前記第1の畳み込みAEとは異なる第2の畳み込みAEを学習して前記沈殿池の浮遊物の特徴量を抽出し、該浮遊物の特徴量からクラスタリングにより前記画像データを浮遊物のクラスタに分類して浮遊物の特徴空間及びクラスタ分布を描画する浮遊物分析部とを備える水質分析装置。
【請求項2】
前記画像データについて畳み込みAEを学習して前記沈殿池の密なオプティカルフローで求めた移動方向及び移動速度の特徴量を抽出し、該特徴量からクラスタリングにより前記画像データを移動体のクラスタに分類して移動体の特徴空間及びクラスタ分布を描画する移動体分析部を備える請求項1に記載の水質分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道処理施設等の水質分析装置及び水質分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、下水道処理施設の維持及び管理の効率化が求められている。従来技術の一例である非特許文献1には、浄水場に発生する凝集物であるフロックの監視を、運転操作員の目視に代えて画像処理によって行う技術が開示されている。非特許文献1に開示された技術では、グレースケール画像に対して空間フィルタリング処理を適用することで輝度を調整し、輝度を調整した画像を二値化処理することでフロックを抽出し、抽出したフロックに対してラベリング及び粒径分布計算を行っている。
【0003】
また、従来技術の一例である特許文献1には、オートエンコーダで画像データの特徴抽出を行い、One-Class SVM(Support Vector Machine)等の1クラス分類器を用いて正常値と外れ値とを識別して異常判定を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-5773号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】馬場研二,依田幹雄,谷本正巳、「浄水場におけるフロック画像監視技術の基礎研究」、電気学会論文誌D、1987年、Vol.107、No.7、p.844-851
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に開示された技術によれば、二値化処理のしきい値並びに空間フィルタリング処理のフィルタサイズ及び重みの調整を要し、別の対象に対してはモデルを再構築して再度のチューニングを要する、という問題があった。
【0007】
また、特許文献1に開示された技術では、単一の1クラス分類器により判定を行うため、色、スカム及びフロックといった、水質の多様な特徴に対応することが困難である、という問題があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、特別なチューニングを行うことなく、水質の多様な特徴に対応した水質分析を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決して目的を達成する本発明は、沈殿池の画像データについて畳み込みAE(Auto Encoder)を学習して前記沈殿池の色相の特徴量を抽出し、該色相の特徴量からクラスタリングにより前記画像データを色相のクラスタに分類して色相の特徴空間及びクラスタ分布を描画する色相分析部と、前記画像データについて畳み込みAEを学習して前記沈殿池の浮遊物の特徴量を抽出し、該浮遊物の特徴量からクラスタリングにより前記画像データを浮遊物のクラスタに分類して浮遊物の特徴空間及びクラスタ分布を描画する浮遊物分析部とを備える水質分析装置である。
【0010】
上記構成の水質分析装置は、前記画像データについて畳み込みAEを学習して前記沈殿池の移動体の特徴量を抽出し、該移動体の特徴量からクラスタリングにより前記画像データを移動体のクラスタに分類して移動体の特徴空間及びクラスタ分布を描画する移動体分析部を備えることが好ましい。
【0011】
又は、本発明は、各々が、少なくとも画像加工部と、畳み込みAE学習部と、畳み込みAEパラメータ記憶部と、特徴量抽出部と、クラスタリング部と、クラスタリングパラメータ記憶部と、クラスタ分類部と、特徴空間描画部とを含む、色相分析部及び浮遊物分析部を備える水質分析装置の水質分析方法であって、前記画像加工部が、沈殿池の画像データを加工すること、前記畳み込みAE学習部が、加工した前記画像データについて畳み込みAE学習を要する場合には前記画像データについて畳み込みAE学習を行うこと、前記畳み込みAEパラメータ記憶部が、前記畳み込みAE学習により得られた畳み込みAEパラメータを記憶すること、前記特徴量抽出部が、前記畳み込みAEパラメータを適用したエンコーダに、加工した前記画像データから特徴量抽出を行うこと、前記クラスタリング部が、加工した前記画像データについてクラスタリングを要する場合には前記画像データについてクラスタリングを行うこと、前記クラスタリングパラメータ記憶部が、前記クラスタリングにより得られたクラスタリングパラメータを記憶すること、前記クラスタ分類部が、特徴量抽出を行った前記画像データをクラスタに分類すること、前記特徴空間描画部が、クラスタ分類された前記画像データによる特徴空間及びクラスタ分布を描画することを含む水質分析方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特別なチューニングを行うことなく、水質の多様な特徴に対応した水質分析を行うことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1に係る水質分析装置の構成を示すブロック図である。
図2】畳み込みAEの概要を説明する図である。
図3】学習済みエンコーダによる特徴量抽出の概要を説明する図である。
図4】クラスタリング手法の概要を説明する図である。
図5】実施形態1に係る水質分析装置の色相分析部の動作を示すフローチャートである。
図6】実施形態2に係る水質分析装置の前提となる移動体分析部の構成を示すブロック図である。
図7】実施形態2に係る水質分析装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の水質分析装置及び水質分析方法を実施するための形態について説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態の記載によって限定解釈されるものではない。
【0015】
<実施形態1>
図1は、本実施形態に係る水質分析装置の構成を示すブロック図である。図1に示す水質分析装置100は、データ蓄積部101と、色相分析部110と、浮遊物分析部120とを備える。
【0016】
データ蓄積部101は、下水道処理施設等の沈殿池に設置された、図示しないカメラが取得した沈殿池の画像データを蓄積する。データ蓄積部101は、半導体メモリ及び磁気ディスク等の記録媒体により実現することができる。この画像データは、静止画又は複数の連続した静止画により構成される動画の双方を含む。
【0017】
色相分析部110は、データ蓄積部101の画像データを用いて処理水の色を分析する。色相分析部110を用いて処理水の色を分析することにより、例えば、処理水中に巻き上がる汚泥による沈殿池の色の変化を判別し、処理水中に巻き上がる汚泥の量を評価することが可能である。浮遊物分析部120は、データ蓄積部101の画像データを用いて処理水の浮遊物を分析する。浮遊物分析部120を用いて処理水を分析することにより、例えば、浮遊物の有無を判別することが可能である。また、浮遊物が存在する場合には、当該浮遊物の成分を特定することも可能である。ここで、浮遊物には、スカム及び泡を例示することができる。浮遊物の成分を分析することにより、例えば、この浮遊物がスカムであるか否かの判別が可能となる。色相分析部110及び浮遊物分析部120は、データ蓄積部101に蓄積された画像データについて、畳み込みAE学習、特徴量抽出及びクラスタリングを行う。
【0018】
ここで、色相分析部110の構成について説明する。色相分析部110は、第1の画像加工部111と、第1の畳み込みAE学習部112と、第1の畳み込みAEパラメータ記憶部113と、第1の特徴量抽出部114と、第1のクラスタリング部115と、第1のクラスタリングパラメータ記憶部116と、第1のクラスタ分類部117と、第1の特徴空間描画部118と、第1の学習要否判定部119とを備え、RGB画像データを用いて処理水の色を分析する。
【0019】
第1の画像加工部111は、データ蓄積部101の画像データにトリミング処理又は正規化を行うことで、加工済みのRGB3チャネル画像を得る。第1の画像加工部111は、MPU(Micro-Processing Unit)及びCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより実現することができる。
【0020】
第1の畳み込みAE学習部112は、第1の画像加工部111によって加工済みのRGB3チャネル画像を用いて、畳み込みAEを学習する。第1の畳み込みAE学習部112は、MPU及びCPU等のプロセッサにより実現することができる。第1の畳み込みAEパラメータ記憶部113は、第1の畳み込みAE学習部112で学習されて得られた畳み込みAEパラメータを記憶する。第1の畳み込みAEパラメータ記憶部113は、半導体メモリ及び磁気ディスク等の記録媒体により実現することができる。
【0021】
図2は、畳み込みAEの概要を説明する図である。図2に示すように、畳み込みAEは次元を圧縮するエンコーダと次元を復元するデコーダとを含む。エンコーダとデコーダの間に存在する全結合層は、入力画像に対して次元が低く、学習済みのエンコーダは次元圧縮器として適切に動作する。第1の畳み込みAE学習部112では、教師データを入力画像として、ネットワークが生成する画像と教師データとの誤差が最小となるような学習を行うことで、画像の有する特徴をエンコーダが学習する。ここで、畳み込みAEは、教師なし学習であり、教師データを入力画像として学習を行うため、ユーザが処理水の画像に対して、色及び浮遊物に対するラベリングを行う必要がないという利点がある。また、畳み込みAEでは設計に特別なチューニングを要さず、その学習は画像の入力のみで行われる。
【0022】
第1の特徴量抽出部114は、第1の畳み込みAEパラメータ記憶部113に記憶された畳み込みAEパラメータを適用して、学習済みのエンコーダを含む畳み込みAEを用いて、第1の画像加工部111によって加工済みのデータの特徴量抽出を行う。第1の特徴量抽出部114は、MPU及びCPU等のプロセッサにより実現することができる。
【0023】
図3は、学習済みエンコーダによる特徴量抽出の概要を説明する図である。第1の特徴量抽出部114は、学習済みエンコーダに入力画像を入力し、入力画像の次元圧縮を行うことで特徴量抽出を行う。
【0024】
第1のクラスタリング部115は、第1の特徴量抽出部114が抽出した特徴量に対してクラスタリング手法を適用し、画像データのクラスタリングを行う。第1のクラスタリング部115は、MPU及びCPU等のプロセッサにより実現することができる。なお、このクラスタリングは、ユーザの知識に基づいた判定条件によって可否が決定される。第1のクラスタリングパラメータ記憶部116は、第1のクラスタリング部115によって得られたクラスタリングパラメータを記憶する。第1のクラスタリングパラメータ記憶部116は、半導体メモリ及び磁気ディスク等の記録媒体により実現することができる。第1のクラスタ分類部117は、第1の特徴量抽出部114が特徴量抽出を行った画像データの所属クラスタを特徴量に基づいて決定し、各画像データをクラスタに分類する。第1のクラスタ分類部117は、MPU及びCPU等のプロセッサにより実現することができる。
【0025】
図4は、クラスタリング手法の概要を説明する図である。ここで用いるクラスタリング手法は非階層型クラスタリングであり、k-means法、混合正規分布、DBSCAN(Density-Based Spatial Clustering of Applications with Noise)を例示することができる。図4では、データがクラスタ1、クラスタ2又はクラスタ3のいずれかに分類され、特徴空間に描画されている。
【0026】
第1の特徴空間描画部118は、第1のクラスタリング部115及び第1のクラスタ分類部117の情報に基づいて特徴空間及びクラスタ分布を描画することで情報の可視化を行う。第1の特徴空間描画部118は、例えば、特徴空間を主成分分析(principal component analysis)によって、2次元又は3次元に圧縮することでデータ及びクラスタの分布を提示する。ユーザには、各クラスタが有する特徴が提示され、ユーザは手動で各クラスタのラベル付けを行うことが可能になる。第1の特徴空間描画部118としては、タッチパネル等の入出力装置により実現することができる。
【0027】
なお、第1の畳み込みAE学習部112による学習及び第1のクラスタリング部115によるクラスタリングは、学習が必要な場合、すなわち最初の動作時又は再学習が必要な場合にのみ行えばよい。第1の学習要否判定部119は、第1の畳み込みAE学習部112及び第1のクラスタリング部115の学習の要否を判定し、第1の畳み込みAE学習部112及び第1のクラスタリング部115に対して学習すべきか否かを指示する。ここで、再学習のタイミングは、ユーザによって決定され、設定された一定の周期又は沈殿池の環境変化時とする。設定された一定の周期は、例えば一週間又は一か月であり、沈殿池の環境変化は、例えば、季節の変化又は処理場の工事によって生じるものである。
【0028】
次に、浮遊物分析部120の構成について説明する。浮遊物分析部120は、第2の画像加工部121と、第2の畳み込みAE学習部122と、第2の畳み込みAEパラメータ記憶部123と、第2の特徴量抽出部124と、第2のクラスタリング部125と、第2のクラスタリングパラメータ記憶部126と、第2のクラスタ分類部127と、第2の特徴空間描画部128と、第2の学習要否判定部129とを備え、グレースケール画像を用いて処理水上の浮遊物を分析する。
【0029】
第2の画像加工部121は、データ蓄積部101の画像データを加工する。具体的には、第2の画像加工部121は、浮遊物の分析のために、データ蓄積部101のデータに対してグレースケール変換を行う。
【0030】
第2の畳み込みAE学習部122は、第2の画像加工部121によって加工済みのデータを用いて、畳み込みAEを学習する。畳み込みAEについては、第1の畳み込みAE学習部112の説明を援用する。第2の畳み込みAEパラメータ記憶部123は、第2の畳み込みAE学習部122で学習されて得られた畳み込みAEパラメータを記憶する。
【0031】
第2の特徴量抽出部124は、第2の畳み込みAEパラメータ記憶部123に記憶された畳み込みAEパラメータを適用して、学習済みのエンコーダを含む畳み込みAEを用いて、第2の画像加工部121によって加工済みのデータの特徴量抽出を行う。特徴量抽出については、第1の特徴量抽出部114の説明を援用する。
【0032】
第2のクラスタリング部125は、第2の特徴量抽出部124が抽出した特徴量に対してクラスタリング手法を適用し、画像データのクラスタリングを行う。第2のクラスタリングパラメータ記憶部126は、第2のクラスタリング部125によって得られたクラスタリングパラメータを記憶する。第2のクラスタ分類部127は、第2の特徴量抽出部124が特徴量抽出を行った画像データの所属クラスタを特徴量に基づいて決定し、各画像データをクラスタに分類する。クラスタリング手法については、第1のクラスタリング部115の説明を援用する。
【0033】
第2の特徴空間描画部128は、第2のクラスタリング部125及び第2のクラスタ分類部127の情報に基づいて特徴空間及びクラスタ分布を描画することで情報の可視化を行う。特徴空間及びクラスタ分布の描画については、第1の特徴空間描画部118の説明を援用する。
【0034】
なお、第2の畳み込みAE学習部122による学習及び第2のクラスタリング部125によるクラスタリングは、学習が必要な場合、すなわち最初の動作時又は再学習が必要な場合にのみ行えばよい。第2の学習要否判定部129は、第2の畳み込みAE学習部122及び第2のクラスタリング部125の学習の要否を判定し、第2の畳み込みAE学習部122及び第2のクラスタリング部125に対して学習すべきか否かを指示する。
【0035】
このように、色相分析部110が第1の畳み込みAE学習部112を備え、浮遊物分析部120が第2の畳み込みAE学習部122を備えるため、水質の多様な特徴に対応することが可能であり、単一の畳み込みAEで特徴量抽出を行う構成よりも高精度に特徴量抽出を行うことができる。
【0036】
更には、第1の特徴空間描画部118及び第2の特徴空間描画部128を備えるため、自動生成されたクラスタ分布を視覚的に確認することができ、ユーザは、畳み込みAEにより抽出された特徴を確認することができる。
【0037】
なお、上述の色相分析部110及び浮遊物分析部120が備える構成のうちプロセッサにより実現されるものは同一の1つのプロセッサにより実現されていてもよい。また、上述の色相分析部110及び浮遊物分析部120が備える構成のうち記録媒体により実現されるものは同一の1つの記録媒体により実現されていてもよい。更には、上述の色相分析部110及び浮遊物分析部120が備える構成のうちタッチパネル等の入出力装置により実現されるものは同一の1つの入出力装置により実現されていてもよい。
【0038】
次に、色相分析部110の動作について説明する。図5は、色相分析部110の動作を示すフローチャートである。まず、第1の画像加工部111は、データ蓄積部101から画像データを取得して加工する(S1:画像データ加工ステップ)。第1の学習要否判定部119は、第1の畳み込みAE学習部112の学習の要否を判定する(S2:畳み込みAE学習部の学習要否判定ステップ)。第1の学習要否判定部119が、第1の畳み込みAE学習部112の学習を不要と判定した場合(S2:否)には、フローはS5に進む。第1の学習要否判定部119が、第1の畳み込みAE学習部112の学習を必要と判定した場合(S2:要)には、第1のAE畳み込み学習部112は、加工済みの画像データを用いて畳み込みAEの学習を行い(S3:畳み込みAE学習ステップ)、得られた畳み込みAEパラメータを第1の畳み込みAEパラメータ記憶部113に記憶させる(S4:畳み込みAEパラメータ記憶ステップ)。次に、第1の特徴量抽出部114は、第1の畳み込みAEパラメータ記憶部113から畳み込みAEパラメータを取得し、当該畳み込みAEパラメータを適用したエンコーダに加工済みの画像データを入力して次元圧縮を行うことで特徴量抽出を行う(S5:特徴量抽出ステップ)。第1の学習要否判定部119は、第1のクラスタリング部115の学習の要否を判定する(S6:クラスタリング部の学習要否判定ステップ)。第1の学習要否判定部119が、第1のクラスタリング部115の学習を不要と判定した場合(S6:否)には、フローはS9に進む。第1の学習要否判定部119が、第1のクラスタリング部115の学習を必要と判定した場合(S6:要)には、第1のクラスタリング部115は、第1の特徴量抽出部114で抽出された特徴量を取得してクラスタリングを行い(S7:クラスタリングステップ)、得られたクラスタリングパラメータを第1のクラスタリングパラメータ記憶部116に記憶させる(S8:クラスタリングパラメータ記憶ステップ)。次に、第1のクラスタ分類部117は、特徴量抽出を行った画像データをクラスタに分類する(S9:クラスタ分類ステップ)。次に、第1の特徴空間描画部118は、クラスタ分類された画像データによる特徴空間及びクラスタ分布を描画し(S10:描画ステップ)、処理をエンドする。このように描画された情報はユーザに提示され、提示された情報についてユーザはラベリング処理を行う。
【0039】
浮遊物分析部120の動作は、色相分析部110と同様であるため、色相分析部110の説明を援用する。
【0040】
以上説明した本実施形態によれば、従来技術では必要であった、二値化処理のしきい値並びに空間フィルタリング処理のフィルタサイズ及び重みの調整が不要であり、対象が異なってもモデルの再構築及び再度のチューニングが不要である。更には、複数の畳み込みAE学習部を備えてクラスタリングを行うことから、柔軟な特徴抽出及びクラスタ分類が可能である。従って、特別なチューニングを行うことなく、水質の多様な特徴に対応した水質分析を行うことが可能である。また、本実施形態によれば、色相分析部110及び浮遊物分析部120の出力を連関させることで、高精度な分析が可能となる。
【0041】
<実施形態2>
実施形態1では、色相分析部及び浮遊物分析部を備える水質分析装置を説明したが、本発明に係る水質分析装置は、これに限定されるものではなく、更に移動体分析部を備える構成とすることも可能である。
【0042】
<前提技術>
図6は、本実施形態に係る水質分析装置の前提となる移動体分析部の構成を示すブロック図である。図6に示す移動体分析部210は、画像加工部211と、フロー推定部212と、統計量算出部213とを備える。移動体分析部210は、データ蓄積部201のデータを供給可能に構成されている。データ蓄積部201は、データ蓄積部101と同様に、沈殿池に設置されたカメラが取得した沈殿池の動画データを蓄積する。データ蓄積部201は、半導体メモリ及び磁気ディスク等の記録媒体により実現することができる。画像加工部211は、データ蓄積部201の動画データをグレースケール変換し、複数のグレースケール画像データに加工する。フロー推定部212は、物体の動きをベクトル表示するオプティカル・フロー(Optical Flow)によって移動体のフローを推定する。この移動体は、スカム及びフロックである。ここで、オプティカル・フロー(Optical Flow)の計算アルゴリズムには、画素全体の移動体を解析する、密なオプティカル・フロー(Dense Optical Flow)を用いる。密なオプティカル・フロー(Dense Optical Flow)には、Gunnar Farneback法、TV-L1法、Brox法を例示することができる。統計量算出部213は、フロー推定部212によって得られた速度及び移動方向の情報から統計量を算出する。一般に、スカム及びフロックは、処理水そのものと比較して、乱雑な方向及び速度で移動するため、算出した統計量によりスカム及びフロックの有無を評価することが可能となる。画像加工部211、フロー推定部212及び統計量算出部213は、MPU(Micro-Processing Unit)及びCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより実現することができる。
【0043】
このように、動画を用いた移動体分析部を備えることで、フロック及びスカムの位置、移動方向及び移動速度の定量的な評価が可能である。
【0044】
図7は、本実施形態に係る水質分析装置の構成を示すブロック図である。図7に示す水質分析装置100Aは、データ蓄積部101と、色相分析部110と、浮遊物分析部120と、移動体分析部130とを備える。色相分析部110及び浮遊物分析部120は、図1に示すものと同じであるため実施形態1の説明を援用する。
【0045】
移動体分析部130は、第3の画像加工部131と、第3の畳み込みAE学習部132と、第3の畳み込みAEパラメータ記憶部133と、第3の特徴量抽出部134と、第3のクラスタリング部135と、第3のクラスタリングパラメータ記憶部136と、第3のクラスタ分類部137と、第3の特徴空間描画部138と、第3の学習要否判定部139と、フロー推定部140とを備え、スカム及びフロックの有無を評価可能とする。
【0046】
次に、移動体分析部130の構成について説明する。第3の画像加工部131は、前提技術における図6に示す画像加工部211と同様に、データ蓄積部101の動画データをグレースケール変換し、複数のグレースケール画像データに加工する。フロー推定部140は、第3の画像加工部131によって加工済みのデータを用いて、前提技術における図6に示すフロー推定部212と同様に、オプティカル・フロー(Optical Flow)によって移動体のフローを推定する。これにより、移動体の移動方向及び移動速度の情報が抽出される。
【0047】
第3の畳み込みAE学習部132は、フロー推定部140によって得られた、移動体の移動方向及び移動速度の情報を用いて、畳み込みAEを学習する。畳み込みAEについては、実施形態1における第1の畳み込みAE学習部112の説明を援用する。第3の畳み込みAEパラメータ記憶部133は、第3の畳み込みAE学習部132で学習されて得られた畳み込みAEパラメータを記憶する。
【0048】
第3の特徴量抽出部134は、第3の畳み込みAEパラメータ記憶部133に記憶された畳み込みAEパラメータを適用した学習済みのエンコーダを含む畳み込みAEを用いて、第3の画像加工部131によって加工済みのデータの特徴量抽出を行う。特徴量抽出については、実施形態1における第1の特徴量抽出部114の説明を援用する。
【0049】
第3のクラスタリング部135は、第3の特徴量抽出部134が抽出した特徴量に対してクラスタリング手法を適用し、画像データのクラスタリングを行う。第3のクラスタリングパラメータ記憶部136は、第3のクラスタリング部135によって得られたクラスタリングパラメータを記憶する。第3のクラスタ分類部137は、第3の特徴量抽出部134が特徴量抽出を行った画像データの所属クラスタを特徴量に基づいて決定し、各画像データをクラスタに分類する。クラスタリング手法については、第3のクラスタリング部135の説明を援用する。
【0050】
第3の特徴空間描画部138は、第3のクラスタリング部135及び第3のクラスタ分類部137の情報に基づいて特徴空間及びクラスタ分布を描画することで情報の可視化を行う。特徴空間及びクラスタ分布の描画については、第1の特徴空間描画部118の説明を援用する。
【0051】
なお、第3の畳み込みAE学習部132による学習及び第3のクラスタリング部135によるクラスタリングは、学習が必要な場合、すなわち最初の動作時又は再学習が必要な場合にのみ行えばよい。第3の学習要否判定部139は、第3の畳み込みAE学習部132及び第3のクラスタリング部135の学習の要否を判定し、第3の畳み込みAE学習部132及び第3のクラスタリング部135に対して学習すべきか否かを指示する。
【0052】
なお、上述の移動体分析部130が備える構成のうちプロセッサにより実現されるものは、同一の1つのプロセッサにより実現されていてもよいし、色相分析部110及び浮遊物分析部120が備えるプロセッサと兼用であってもよい。また、上述の移動体分析部130が備える構成のうち記録媒体により実現されるものは、同一の1つの記録媒体により実現されていてもよいし、色相分析部110及び浮遊物分析部120が備える記録媒体と兼用であってもよい。なお、上述の移動体分析部130が備える構成のうちタッチパネル等の入出力装置により実現されるものは、同一の1つのタッチパネルにより実現されていてもよいし、色相分析部110及び浮遊物分析部120が備えるタッチパネルと兼用であってもよい。
【0053】
移動体分析部130の動作は、色相分析部110と同様であるため、色相分析部110の説明を援用する。
【0054】
本実施形態によれば、オプティカル・フロー(Optical Flow)の推定結果に対して畳み込みAE及びクラスタリングを行うことで、移動体の特徴抽出及びクラスタ分類が可能となる。また、本実施形態によれば、統計量によって移動体を分析する前提技術と異なり、移動体の移動方向及び移動速度情報に対して、特徴量抽出を直接行うため、より高精度な分析が可能となる。更には、本実施形態によれば、色相分析部110、浮遊物分析部120及び移動体分析部130の出力を連関させることで、更に高精度な分析が可能となる。
【0055】
以上説明した本実施形態によれば、動画を用いる移動体分析部を備えることで、フロック及びスカムの位置、移動方向及び移動速度の定量的な評価が可能であるため、フロックと他の粒子との判別が可能となる。
【0056】
また、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、上述の構成に対して、構成要素の付加、削除又は転換を行った様々な変形例も含むものとする。
【符号の説明】
【0057】
100 水質分析装置
101 データ蓄積部
110 色相分析部
111 第1の画像加工部
112 第1の畳み込みAE学習部
113 第1の畳み込みAEパラメータ記憶部
114 第1の特徴量抽出部
115 第1のクラスタリング部
116 第1のクラスタリングパラメータ記憶部
117 第1のクラスタ分類部
118 第1の特徴空間描画部
119 第1の学習要否判定部
120 浮遊物分析部
121 第2の画像加工部
122 第2の畳み込みAE学習部
123 第2の畳み込みAEパラメータ記憶部
124 第2の特徴量抽出部
125 第2のクラスタリング部
126 第2のクラスタリングパラメータ記憶部
127 第2のクラスタ分類部
128 第2の特徴空間描画部
129 第2の学習要否判定部
130 移動体分析部
131 第3の画像加工部
132 第3の畳み込みAE学習部
133 第3の畳み込みAEパラメータ記憶部
134 第3の特徴量抽出部
135 第3のクラスタリング部
136 第3のクラスタリングパラメータ記憶部
137 第3のクラスタ分類部
138 第3の特徴空間描画部
139 第3の学習要否判定部
140 フロー推定部
201 データ蓄積部
210 移動体分析部
211 画像加工部
212 フロー推定部
213 統計量算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7