(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20220208BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20220208BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220208BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20220208BHJP
H01M 50/463 20210101ALI20220208BHJP
H01M 50/572 20210101ALI20220208BHJP
H01M 50/593 20210101ALI20220208BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/0566
H01M10/052
H01M50/586
H01M50/463 B
H01M50/572
H01M50/593
(21)【出願番号】P 2018028279
(22)【出願日】2018-02-20
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100169694
【氏名又は名称】荻野 彰広
(72)【発明者】
【氏名】野島 昭信
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-155888(JP,A)
【文献】特開2014-071985(JP,A)
【文献】特表2017-500708(JP,A)
【文献】特開2015-028865(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169130(WO,A1)
【文献】特開2002-151159(JP,A)
【文献】特開2007-265873(JP,A)
【文献】特開2010-287466(JP,A)
【文献】特開2011-216408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/058
H01M 10/0566
H01M 10/052
H01M 50/586
H01M 50/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体と前記正極集電体の少なくとも一面に塗布された正極活物質層とを有する正極と、負極集電体と前記負極集電体の少なくとも一面に塗布された負極活物質層とを有する負極と、セパレータとを備え、前記正極と前記負極との間に前記セパレータを挟んで積層された積層体と、
前記積層体の周囲を巻回する絶縁性の保護層と、
前記積層体及び前記保護層を電解液と共に封入する外装体と、を備え、
前記保護層の厚みは、前記セパレータの厚みより厚
く、
前記保護層と前記外装体との間に、粘着性物質を含む粘着部を備え、
前記粘着部は、前記保護層の最外面と前記外装体の内面とを粘着する、非水電解液二次電池。
【請求項2】
前記積層体の積層方向の少なくとも一面に、金属層とセパレータとが積層された第2積層体を有し、
前記金属層は、前記正極集電体又は前記負極集電体と電気的に接続され、前記正極集電体又は前記負極集電体と等電位である、請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項3】
前記保護層は前記セパレータと連続的に繋がり一体化している、請求項1
又は2に記載の非水電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解液二次電池は、携帯電話、ノートパソコン等のモバイル機器やハイブリットカー等の動力源としても広く用いられている。これらの分野の発展と共に、非水電解液二次電池の様々な性能を高めることが求められている。
【0003】
その性能の一つが安全性である。非水電解液二次電池は、内部短絡すると異常発熱する。非水電解液二次電池の異常発熱は、その他の素子の故障の原因となりうる。
【0004】
特許文献1には、非水電解液二次電池の蓄電部を構成する捲回体において、活物質が塗布されていない領域を最外周又は最内周に1周以上設けることが記載されている。内部短絡した際に、金属箔同士が直接接触することで、非水電解液二次電池の温度が異常上昇することが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年の正極活物質層の高エネルギー密度化に伴い、充電深度が高い状態では、異常発熱を充分に抑制できない場合があった。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、外部圧力を受けた場合にも安全性に優れる非水電解液二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
積層体の周囲に絶縁性の保護層を捲回すると、例えば釘等の金属製の物質が非水電解液二次電池に刺さった場合でも、釘の表面を絶縁性の保護層が被覆し、内部短絡による異常発熱を抑制できることを見出した。
すなわち、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0009】
(1)第1の態様にかかる非水電解液二次電池は、正極集電体と前記正極集電体の少なくとも一面に塗布された正極活物質層とを有する正極と、負極集電体と前記負極集電体の少なくとも一面に塗布された負極活物質層とを有する負極と、セパレータとを備え、前記正極と前記負極との間に前記セパレータを挟んで積層された積層体と、前記積層体の周囲を巻回する絶縁性の保護層と、前記積層体及び前記保護層を電解液と共に封入する外装体と、を備える。
【0010】
(2)上記態様にかかる非水電解液二次電池は、前記積層体の積層方向の少なくとも一面に、金属層とセパレータとが積層された第2積層体を有し、前記金属層は、前記正極集電体又は前記負極集電体と電気的に接続され、前記正極集電体又は前記負極集電体と等電位であってもよい。
【0011】
(3)上記態様にかかる非水電解液二次電池は、前記保護層と前記外装体との間に、粘着性物質を含む粘着部を備えてもよい。
【0012】
(4)上記態様にかかる非水電解液二次電池において、前記保護層は前記セパレータと連続的に繋がり一体化していてもよい。
【0013】
(5)上記態様にかかる非水電解液二次電池において、前記保護層の厚みは、前記セパレータの厚みより厚くてもよい。
【発明の効果】
【0014】
上記態様に係る非水電解液二次電池は、外部圧力を受けた場合にも安全性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態にかかる非水電解液二次電池の模式図である。
【
図2】本実施形態にかかる非水電解液二次電池を正極端子及び負極端子が延在する方向と直交する面で切断した断面模式図である。
【
図3】本実施形態にかかる非水電解液二次電池の別の例の断面模式図である。
【
図4】第2実施形態にかかる非水電解液二次電池を正極端子及び負極端子が延在する方向と直交する面で切断した断面模式図である。
【
図5】第3実施形態にかかる非水電解液二次電池を正極端子及び負極端子が延在する方向と直交する面で切断した断面模式図である。
【
図6】実施例1における非水電解液二次電池の構成を説明するための断面模式図である。
【
図7】実施例4における非水電解液二次電池の構成を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0017】
「第1実施形態」
[非水電解液二次電池]
図1は、本実施形態にかかる非水電解液二次電池の模式図である。
図1に示す非水電解液二次電池100は、発電素子90と外装体20とを備える。発電素子90は、外装体20に設けられた収容空間Kに収容される。発電素子90からは正極端子12と負極端子14が延出している。
図1では、理解を容易にするために、発電素子90が外装体20内に収容される直前の状態を図示している。
【0018】
(発電素子)
図2は、本実施形態にかかる非水電解液二次電池を正極端子12及び負極端子14が延在する方向と直交する面で切断した断面模式図である。発電素子90は、積層体10と保護層30とからなる。
【0019】
<積層体>
積層体10は、正極1と負極2とセパレータ3とを備える。セパレータ3は、正極1と負極2との間に配設される。正極1は、板状(膜状)の正極集電体1Aと正極活物質層1Bとを有する。正極活物質層1Bは、正極集電体1Aの少なくとも一面に形成されている。負極2は、板状(膜状)の負極集電体2Aと負極活物質層2Bとを有する。負極活物質層2Bは、負極集電体2Aの少なくとも一面に形成されている。
【0020】
正極集電体1Aは、導電性の板材であればよく、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル箔の金属薄板を用いることができる。また正極集電体1Aの表面には、例えば酸化アルミニウム等の絶縁性の被覆膜を形成することが好ましい。被覆膜の厚みは、50μm以下とすることが好ましい。被覆膜を形成すると、内部短絡をより抑制できる。なお、被覆膜は正極集電体1Aの導電性を若干低下させるが、全体に影響を及ぼすほどではない。
【0021】
正極活物質層1Bに用いる正極活物質は、イオンの吸蔵及び放出、イオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、イオンとカウンターアニオンのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能な電極活物質を用いることができる。イオンには、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン等を用いることができ、リチウムイオンを用いることが特に好ましい。
【0022】
例えばリチウムイオン二次電池の場合、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMnO2)、リチウムマンガンスピネル(LiMn2O4)、及び、一般式:LiNixCoyMnzMaO2(x+y+z+a=1、0≦x<1、0≦y<1、0≦z<1、0≦a<1、MはAl、Mg、Nb、Ti、Cu、Zn、Crより選ばれる1種類以上の元素)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV2O5)、オリビン型LiMPO4(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素又はVOを示す)、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)、LiNixCoyAlzO2(0.9<x+y+z<1.1)等の複合金属酸化物、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセンなどを、正極活物質として用いることができる。
【0023】
正極活物質層1Bは、導電材を有していてもよい。導電材としては、例えば、カーボンブラック類等のカーボン粉末、カーボンナノチューブ、炭素材料、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属微粉、炭素材料及び金属微粉の混合物、ITO等の導電性酸化物が挙げられる。正極活物質のみで十分な導電性を確保できる場合は、正極活物質層1Bは導電材を含んでいなくてもよい。
【0024】
正極活物質層1Bは、バインダーを含む。バインダーは、公知のものを用いることができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、が挙げられる。
【0025】
上記の他に、バインダーとして、例えば、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF-HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-HFP-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF-PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ペンタフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-PFP-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-パーフルオロメチルビニルエーテル-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-PFMVE-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴムを用いてもよい。
【0026】
負極活物質層2Bに用いる負極活物質は、イオンを吸蔵・放出可能な化合物であればよく、公知の非水電解液二次電池に用いられる負極活物質を使用できる。負極活物質としては、例えば、金属リチウム等のアルカリ又はアルカリ土類金属、イオンを吸蔵・放出可能な黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、カーボンナノチューブ、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温度焼成炭素等の炭素材料、アルミニウム、シリコン、スズ等のリチウム等の金属と化合することのできる金属、SiOx(0<x<2)、二酸化スズ等の酸化物を主体とする非晶質の化合物、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)等を含む粒子が挙げられる。
【0027】
負極集電体2A、導電材及びバインダーは、正極1と同様のものを用いることができる。負極に用いるバインダーは正極に挙げたものの他に、例えば、セルロース、スチレン・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂等を用いてもよい。
【0028】
正極1及び負極2のそれぞれには、外部との電気的接続のための正極端子12と負極端子14とが設けられている(
図1参照)。正極端子12及び負極端子14は、アルミニウム、ニッケル、銅等の導電材料から形成されている。正極端子12は正極1と接続され、負極端子14は負極2と接続される。接続方法は、溶接でもネジ止めでもよい。正極端子12及び負極端子14は短絡を防ぐために、絶縁テープで保護することが好ましい。
【0029】
セパレータ3は、電気絶縁性の多孔質構造から形成されていればよく、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィンからなるフィルムの単層体、積層体や上記樹脂の混合物の延伸膜、或いはセルロース、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種の構成材料からなる繊維不織布が挙げられる。
【0030】
セパレータ3の厚みは5μm以上30μm以下であることが好ましく、8μm以上20μm以下であることがより好ましく、10μmであることがさらに好ましい。
【0031】
積層体10の積層方向の両端は、セパレータ3又は負極2であることが好ましい。積層体10が異常発熱する場合、熱源の主は正極1である。正極1を積層体10の内側に設けることで、外部から侵入してきた釘等の金属体が正極1に到達しにくくなる。その結果、熱源である正極1が発熱することを抑制でき、積層体10全体の異常発熱を抑制できる。また絶縁性のセパレータ3が外部に近い側に存在すると、外部圧力を受けた場合の短絡をより抑制できる。
【0032】
<保護層>
保護層30は、積層体10の周囲を巻回する。正極端子12及び負極端子14が延在する方向は、これらの端子を避けて巻回し難いため、正極端子12及び負極端子14が延在する方向を軸として巻回することが好ましい。
【0033】
保護層30は、絶縁性を有する。保護層30には、セパレータ3と同様の材料を用いることができる。
【0034】
保護層30の厚みは、セパレータ3より厚いことが好ましい。具体的には、保護層30の厚みは、10μm以上40μm以下であることが好ましく、10μm以上30μm以下であることがより好ましく、20μmであることがさらに好ましい。
【0035】
保護層30の巻回数は1周以上であり、2周以上であることが好ましい。一方で放熱性の観点からは、4周以下であることが好ましく、3周以下であることがより好ましい。
【0036】
保護層30は、非水電解液二次電池100に釘等の金属体が刺さった場合に、金属体に纏わりつく。保護層30は絶縁性を有するため、釘等の金属体が刺さった場合でも、内部短絡を抑制できる。
【0037】
図3は、本実施形態にかかる非水電解液二次電池の別の例の断面模式図である。
図3に示す非水電解液二次電池101は、保護層30が積層体10のセパレータ3と連続的に繋がり、一体化している。セパレータ3を延出させ、保護層30として機能させることで、余計な部材の増加を避けることができる。
図3では積層体10の積層方向の両端のセパレータ3を延出させ保護層30として用いているが、積層体10の積層方向のいずれのセパレータ3を延出させ保護層30として用いてもよい。
【0038】
(外装体)
外装体20は、その内部に積層体10及び電解液を密封するものである。外装体20は、電解液の外部への漏出や、外部からの非水電解液二次電池100内部への水分等の侵入等を抑止できる物であれば特に限定されない。
【0039】
例えば
図2に示すように、外装体20として金属箔を高分子膜で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムを用いてもよい。
図2に示す外装体20は、金属箔21と、金属箔21の積層体10側の内面を被覆する樹脂層22と、金属箔21の積層体10と反対側の外面を被覆する樹脂層23と、を有する。
【0040】
金属箔21としては例えばアルミ箔を用いることができる。樹脂層22及び樹脂層23には、ポリプロピレン等の高分子膜を利用できる。樹脂層22を構成する材料と樹脂層23を構成する材料は異なっていてもよい。例えば、外側の材料としては融点の高い高分子、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)等を用い、内側の高分子膜の材料としてはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等を用いることができる。
【0041】
図1に示す外装体20は、凹部を有する第1面と第2面とが折りたたまれて収容空間Kを構成する。第1面と第2面とは、外周をシールして密着する。外装体20は、
図1に示すものに限られず、二枚のフィルムを接合したものでもよい。凹部は、二枚のフィルムのそれぞれに設けてもよいし、一方のフィルムのみに設けてもよい。
【0042】
(非水電解液)
非水電解液は、外装体20内に封入され積層体10内に含浸する。
非水電解液には、リチウム塩等を含む電解質溶液(電解質水溶液、有機溶媒を使用する電解質溶液) を使用することができる。ただし、電解質水溶液は電気化学的に分解電圧が低いため、充電時の耐用電圧が低く制限される。そのため、有機溶媒を使用する電解質溶液(非水電解液溶液)であることが好ましい。
【0043】
非水電解液は、非水溶媒に電解質が溶解されており、非水溶媒として環状カーボネートと、鎖状カーボネートと、を含有してもよい。
【0044】
環状カーボネートとしては、電解質を溶媒和することができるものを用いることができる。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びブチレンカーボネートなどを用いることができる。環状カーボネートは、プロピレンカーボネートを少なくとも含むことが好ましい。
【0045】
鎖状カーボネートは、環状カーボネートの粘性を低下させることができる。例えば、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが挙げられる。その他、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、γ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタンなどを混合して使用してもよい。
【0046】
非水溶媒中の環状カーボネートと鎖状カーボネートの割合は体積にして1:9~1:1にすることが好ましい。
【0047】
電解質としては、金属塩を用いることができる。例えば、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiCF3SO3、LiCF3CF2SO3、LiC(CF3SO2)3、LiN(CF3SO2)2、LiN(CF3CF2SO2)2、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)、LiN(CF3CF2CO)2、LiBOB等のリチウム塩が使用できる。なお、これらのリチウム塩は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。特に、電離度の観点から、電解質としてLiPF6を含むことが好ましい。
【0048】
LiPF6を非水溶媒に溶解する際は、非水電解液中の電解質の濃度を、0.5~2.0mol/Lに調整することが好ましい。電解質の濃度が0.5mol/L以上であると、非水電解液のリチウムイオン濃度を充分に確保することができ、充放電時に十分な容量が得られやすい。また、電解質の濃度が2.0mol/L以内に抑えることで、非水電解液の粘度上昇を抑え、リチウムイオンの移動度を充分に確保することができ、充放電時に十分な容量が得られやすくなる。
【0049】
LiPF6をその他の電解質と混合する場合にも、非水電解液中のリチウムイオン濃度が0.5~2.0mol/Lに調整することが好ましく、LiPF6からのリチウムイオン濃度がその50mol%以上含まれることがさらに好ましい。
【0050】
[非水電解液二次電池の製造方法]
まず、正極1及び負極2を作製する。正極1と負極2とは、活物質となる物質が異なるだけであり、同様の製造方法で作製できる。
【0051】
正極活物質、バインダー及び溶媒を混合して塗料を作製する。必要に応じ導電材を更に加えても良い。溶媒としては例えば、水、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド等を用いることができる。正極活物質、導電材、バインダーの構成比率は、質量比で80wt%~90wt%:0.1wt%~10wt%:0.1wt%~10wt%であることが好ましい。これらの質量比は、全体で100wt%となるように調整される。
【0052】
塗料を構成するこれらの成分の混合方法は特に制限されず、混合順序もまた特に制限されない。上記塗料を、正極集電体1Aに塗布する。塗布方法としては、特に制限はなく、通常電極を作製する場合に採用される方法を用いることができる。例えば、スリットダイコート法、ドクターブレード法が挙げられる。負極についても、同様に負極集電体2A上に塗料を塗布する。
【0053】
続いて、正極集電体1A及び負極集電体2A上に塗布された塗料中の溶媒を除去する。除去方法は特に限定されない。例えば、塗料が塗布された正極集電体1A及び負極集電体2Aを、80℃~150℃の雰囲気下で乾燥させればよい。そして、正極1及び負極2が完成する。
【0054】
次いで、作製した正極1及び負極2の間と、捲きこむ際に外側となる部分にセパレータ3を配設する。そして、正極1、負極2及びセパレータ3の一端側を軸として、これらを捲回する。
【0055】
最後に、積層体10を外装体20に封入する。非水電解液は外装体20内に注入する。非水電解液を注入後に減圧、加熱等を行うことで、積層体10内に非水電解液が含浸する。外装体20は、熱等を加えて封止する。
【0056】
上述のように、本実施形態にかかる非水電解液二次電池100,101は、保護層30で積層体10を巻回している。そのため、釘等の金属体が刺し込まれた場合でも、金属体の表面に絶縁性の保護層30が纏わりつくことで、非水電解液二次電池100,101の短絡を抑制できる。
【0057】
「第2実施形態」
図4は、第2実施形態にかかる非水電解液二次電池を正極端子及び負極端子が延在する方向と直交する面で切断した断面模式図である。
図4に示す非水電解液二次電池102は、粘着部40を有する点が第1実施形態にかかる非水電解液二次電池100と異なる。その他の構成は同一であり、同一の構成には同一の符号を付し、説明を省く。
【0058】
粘着部40は、保護層30と外装体20との間に設けられる。粘着部40は、電解液耐性のある両面テープ等を用いることができる。例えば、ポリプロピレン基材にポリイソブチレンゴムの粘着層が形成された物、ブチルゴム等のゴム、飽和炭化水素樹脂等を用いることができる。
【0059】
釘等の金属体が刺さった場合においても、粘着部40を構成する粘着性物質がまず釘等の金属体に纏わりつく。その状態で金属体が保護層30に侵入すると、保護層30がより金属体に纏わりつきやすくなる。その結果、非水電解液二次電池102に釘等の金属体が刺さった場合でも、金属体に保護層が纏わりつき、内部短絡が生じることをより抑制できる。
【0060】
上述のように、本実施形態にかかる非水電解液二次電池102は、粘着部40により保護層30が刺し込まれた釘等の金属体に纏わりつきやすい。そのため非水電解液二次電池102の短絡をより抑制できる。
【0061】
「第3実施形態」
図5は、第3実施形態にかかる非水電解液二次電池を正極端子及び負極端子が延在する方向と直交する面で切断した断面模式図である。
図5に示す非水電解液二次電池103は、第2積層体50を有する点が第1実施形態にかかる非水電解液二次電池100と異なる。その他の構成は同一であり、同一の構成には同一の符号を付し、説明を省く。
【0062】
第2積層体50は、積層体10の積層方向の少なくとも一面に設けられる。第2積層体50は、セパレータ3と金属層4とが交互に積層されている。
【0063】
金属層4は、正極端子12又は負極端子14(
図1参照)に接続されている。金属層4は、正極1の正極集電体1A又は負極2の負極集電体2Aと等電位である。金属層4は、正極集電体1Aや負極集電体2Aと同様の材料を用いることができる。金属層4の表面には、酸化膜等の絶縁膜が形成されていることが好ましい。金属層4が絶縁膜を有すると、内部短絡がより抑制される。
【0064】
金属層4は金属からなり、放熱性に優れる。そのため、第2積層体50を設けることで、積層体10の発熱を抑制できる。また第2積層体50に釘等の金属体が刺さって短絡した場合でも、低抵抗な金属箔同士が短絡することで、積層体10の異常発熱を抑制できる。
【0065】
第2積層体50の金属層4及びセパレータ3の積層数は、それぞれ少なくとも一層以上あればよい。これらの積層数は、放熱性の観点からは2層以上であることが好ましく、3層以上であることがより好ましい。一方で、非水電解液二次電池103の大型化を避けるためには、3層以下であることが好ましく、2層以下であることがより好ましい。
【0066】
金属層4の厚みは、正極集電体1A及び負極集電体2Aの厚みより厚いことが好ましい。具体的には、金属層4の厚みは、5μm以上20μm以下であることが好ましく、5μm以上15μm以下であることがより好ましく、10μmであることがさらに好ましい。
【0067】
上述のように、本実施形態にかかる非水電解液二次電池103は、第2積層体50を有することで、保護層30を設けた場合でも放熱性を高めることができる。その結果、非水電解液二次電池103の異常発熱をより抑制できる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【実施例】
【0069】
「実施例1」
(正極の作製)
正極活物質には、コバルト酸リチウム(LiCoO2)を用いた。この正極活物質を1.90質量部と、アセチレンブラックを5質量部と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を5質量部と、をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に分散させ、スラリーを調製した。得られたスラリーを厚さ20μmのアルミ箔の両面に塗工した。塗工量は0.325g/1540.25mm2である。その後、温度140℃で30分間乾燥した。
【0070】
次に、ロールプレス装置を用いて線圧1000kgf/cmでプレス処理し正極のロールを得た。そして、正極のロールから一端側に10mm角のタブ溶接箇所を有する正極1を切り出した。正極1の長さは77mm、幅は70mmとした。そして正極のタブ溶接箇所から正極活物質(塗膜)を、メチルエチルケトン(MEK)を染み込ませた綿棒で擦り剥がした。
【0071】
(負極の作製)
天然黒鉛粉末(負極活物質)を90質量部と、PVDFを10質量部とを、NMP中に分散させてスラリーを調製した。得られたスラリーを厚さ15μmの銅箔上に塗工し、銅箔の一方の面は、0.162g/1540.25mm2の塗工量で塗布した。その後温度140℃で30分間減圧乾燥した。
【0072】
次いで、ロールプレス装置を用いてプレス処理することにより、負極ロールを得た。負極ロールから一端側に10mm角のタブ溶接箇所を有する負極2を切り出した。負極2の長さは79mm、幅は71mmであった。そして負極のタブ溶接箇所から負極活物質(塗膜)を、MEKを染み込ませた綿棒で擦り剥がし、負極を得た。
【0073】
(セパレータの準備)
膜厚20μmのポリエチレン微多孔膜(空孔率:40%、シャットダウン温度:134℃)を用意した。このセパレータを長さ81mm、幅72mmに切り出した。
【0074】
(積層体の作製)
図6に示すように、セパレータ3、負極2、セパレータ3、正極1の順に積層されたものを1つの単位Cとして、これを3層積層した。さらに、積層体10の積層方向の一端側はセパレータ3で、他端側は負極2となるように、セパレータ3と負極2とをさらに積層した。
【0075】
(保護層の作製)
保護層30は、
図6に示すようにセパレータと同じ材料を用いた。保護層は、積層体の周囲を1巻させた後、端部をテープで固定した。
【0076】
(非水電解液)
電解質としてエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒に、LiPF6を1.0mol/Lとなるように溶解させた非水電解質溶液を用意した。混合溶媒におけるECとDECとの体積比は、EC:DEC=30:70とした。
【0077】
(電池の作製)
保護層が捲回された積層体を非水電解液と共にアルミラミネートに封入し、実施例1の電池セルを作製した。
【0078】
(電池の表面温度の測定)
作製した実施例1の電池セルを0.1Cの定電流密度で充電終止電圧である4.3V(vs.Li/Li+)まで充電を行った。さらに4.3V(vs.Li/Li+)の定電圧を維持し、電流値が0.05Cの電流密度に低下するまで定電圧充電を行った。なお、電流密度は1Cを158mA/gとして測定を行った。そして、電池の表面の到達温度を測定した。
【0079】
(釘刺し試験)
充電状態の電池に直径2.5mmの釘を150mm/sのスピードで刺し、釘刺し試験を行った。試験は5セルに対して行い、目視で評価した。
【0080】
積層体の具体的な構成の要点を表1にまとめ、電池の表面温度及び釘指し試験の結果を表2にまとめた。
【0081】
「実施例2」
実施例2は、正極活物質をLiNi0.83Co0.12Al0.05O2にした点以外は、実施例1と同様にした。積層体の具体的な構成の要点を表1にまとめ、電池の表面温度及び釘指し試験の結果を表2にまとめた。
【0082】
「実施例3」
実施例3は、正極活物質をLiNi0.6Co0.2Al0.2O2にした点以外は、実施例1と同様にした。積層体の具体的な構成の要点を表1にまとめ、電池の表面温度及び釘指し試験の結果を表2にまとめた。
【0083】
「実施例4」
実施例4は、
図7に示すように積層体10の積層方向の両面に第2積層体50を積層した点以外は実施例1と同様とした。第2積層体50は、セパレータ3、正極集電体1A、セパレータ3、負極集電体2Aが順に積層されたものとした。積層体の具体的な構成の要点を表1にまとめ、電池の表面温度及び釘指し試験の結果を表2にまとめた。
【0084】
「実施例5」
積層体と外装体の間に粘着層を設けた点以外は、実施例1と同様とした。粘着層は蓄電素子の面積よりも大きくした。粘着層には、アクリル系樹脂を用いた。積層体の具体的な構成の要点を表1にまとめ、電池の表面温度及び釘指し試験の結果を表2にまとめた。
【0085】
「実施例6」
実施例6は、正極活物質をLiNi0.83Co0.12Al0.05O2にした点以外は、実施例5と同様にした。積層体の具体的な構成の要点を表1にまとめ、電池の表面温度及び釘指し試験の結果を表2にまとめた。
【0086】
「実施例7」
実施例7は、正極活物質をLiNi0.6Co0.2Al0.2O2にした点以外は、実施例5と同様にした。積層体の具体的な構成の要点を表1にまとめ、電池の表面温度及び釘指し試験の結果を表2にまとめた。
【0087】
「実施例8」
実施例8は、積層体と外装体の間に粘着層を設けた点以外は、実施例4と同様とした。粘着層は蓄電素子の面積よりも大きくした。粘着層には、アクリル系樹脂を用いた。積層体の具体的な構成の要点を表1にまとめ、電池の表面温度及び釘指し試験の結果を表2にまとめた。
【0088】
「実施例9」
実施例9は、セパレータ3、正極集電体1A、セパレータ3、負極集電体2Aが順に積層された第2積層体50を積層体10の積層方向の両面にさらに1組ずつ追加した点以外は実施例4と同様とした。積層体の具体的な構成の要点を表1にまとめ、電池の表面温度及び釘指し試験の結果を表2にまとめた。
【0089】
「実施例10」
実施例10は、セパレータ3、正極集電体1A、セパレータ3、負極集電体2Aが順に積層された第2積層体50を積層体10の積層方向の両面にさらに2組ずつ追加した点以外は実施例4と同様とした。積層体の具体的な構成の要点を表1にまとめ、電池の表面温度及び釘指し試験の結果を表2にまとめた。
【0090】
「比較例1」
比較例1は、保護層を設けなかった点以外は、実施例1と同様にした。積層体の具体的な構成の要点を表1にまとめ、電池の表面温度及び釘指し試験の結果を表2にまとめた。
【0091】
「比較例2」
比較例2は、正極活物質をLiNi0.83Co0.12Al0.05O2にした点以外は、比較例1と同様にした。積層体の具体的な構成の要点を表1にまとめ、電池の表面温度及び釘指し試験の結果を表2にまとめた。
【0092】
「比較例3」
比較例3は、正極活物質をLiNi0.6Co0.2Al0.2O2にした点以外は、比較例1と同様にした。積層体の具体的な構成の要点を表1にまとめ、電池の表面温度及び釘指し試験の結果を表2にまとめた。
【0093】
【0094】
【符号の説明】
【0095】
1 正極
1A 正極集電体
1B 正極活物質層
2 負極
2A 負極集電体
2B 負極活物質層
3 セパレータ
4 金属層
10 積層体
12 正極端子
14 負極端子
20 外装体
21 金属層
22、23 樹脂層
30 保護層
40 粘着部
50 第2積層体
90 発電素子
100 非水電解液二次電池
K 収容空間