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  • 特許-空気入りタイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 1/00 20060101AFI20220208BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20220208BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20220208BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20220208BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
B60C1/00 C
B60C9/00 J
C08K3/22
C08K5/09
C08L21/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018030638
(22)【出願日】2018-02-23
(65)【公開番号】P2018158716
(43)【公開日】2018-10-11
【審査請求日】2020-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2017054698
(32)【優先日】2017-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博
(72)【発明者】
【氏名】三俣 友紀
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-306787(JP,A)
【文献】特開2001-322404(JP,A)
【文献】特開昭63-020345(JP,A)
【文献】特開2009-113597(JP,A)
【文献】特開2010-254954(JP,A)
【文献】特表2014-507525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1層以上のスチールベルト層、1層以上のキャッププライ層、及び1層以上のカーカス層を有する空気入りタイヤであって、
前記スチールベルト層を構成するスチールベルト被覆用ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対する酸化亜鉛の含有量が8.0質量部以上であり、
前記キャッププライ層を構成するキャッププライ被覆用ゴム組成物及び前記カーカス層を構成するカーカス被覆用ゴム組成物は、共に、ゴム成分100質量部に対するステアリン酸の含有量及び酸化亜鉛の含有量が下記式(1)及び(2)を満たし、
前記スチールベルト層、前記キャッププライ層及び前記カーカス層の厚みが下記式(3)を満たすことを特徴とする空気入りタイヤ。
式(1)
ステアリン酸の含有量≦3.0質量部
式(2)
ステアリン酸の含有量/酸化亜鉛の含有量≦0.5
式(3)
(カーカス層の厚み+キャッププライ層の厚み)/スチールベルト層の厚み≦1.5
【請求項2】
1層以上のスチールベルト層、1層以上のキャッププライ層、及び1層以上のカーカス層を有する空気入りタイヤであって、
前記スチールベルト層は、スチールコードをスチールベルト被覆用ゴム組成物で被覆したもので、かつ
前記スチールベルト被覆用ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対する酸化亜鉛の含有量が8.0質量部以上であり、
前記キャッププライ層は、コードをキャッププライ被覆用ゴム組成物で被覆したもの、前記カーカス層は、コードカーカス被覆用ゴム組成物で被覆したもので、かつ
前記キャッププライ被覆用ゴム組成物及び前記コードカーカス被覆用ゴム組成物は、共に、ゴム成分100質量部に対するステアリン酸の含有量及び酸化亜鉛の含有量が下記式(1)及び(2)を満たすことを特徴とする空気入りタイヤ。
式(1)
ステアリン酸の含有量≦3.0質量部
式(2)
ステアリン酸の含有量/酸化亜鉛の含有量≦0.5
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用タイヤには、耐久性、操縦安定性等を向上させる目的でスチールコードが使用されており、特に、耐久性を向上させるためには、そのスチールコードとスチールコード被覆用ゴム組成物の接着性を強力で安定化させる必要がある。接着性の安定化手段として、有機酸コバルトをコードの被覆ゴム組成物中に配合する技術が知られているが、更なる改善が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記課題を解決し、耐久性に優れた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記課題について鋭意検討し、スチールベルト層や、その近くに配する部材(隣接部材等)に着目し、スチールベルト層のステアリン酸量、キャッププライ層及びカーカス層のステアリン酸及び酸化亜鉛量が特定の関係を満たすことにより、非常に優れたタイヤの耐久性が得られるという知見を見出し、本発明を完成したものである。
【0005】
本発明は、1層以上のスチールベルト層、1層以上のキャッププライ層、及び1層以上のカーカス層を有する空気入りタイヤであって、前記スチールベルト層を構成するスチールベルト被覆用ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対する酸化亜鉛の含有量が8.0質量部以上であり、前記キャッププライ層を構成するキャッププライ被覆用ゴム組成物及び前記カーカス層を構成するカーカス被覆用ゴム組成物は、共に、ゴム成分100質量部に対するステアリン酸の含有量及び酸化亜鉛の含有量が下記式(1)及び(2)を満たすことを特徴とする空気入りタイヤに関する。
式(1)
ステアリン酸の含有量≦3.0質量部
式(2)
ステアリン酸の含有量/酸化亜鉛の含有量≦0.5
【0006】
前記スチールベルト層、前記キャッププライ層及び前記カーカス層の厚みは、下記式(3)を満たすことが好ましい。
式(3)
(カーカス層の厚み+キャッププライ層の厚み)/スチールベルト層の厚み≦1.5
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、1層以上のスチールベルト層、1層以上のキャッププライ層、及び1層以上のカーカス層を有し、かつ、前記スチールベルト層を構成するスチールベルト被覆用ゴム組成物が酸化亜鉛を所定量含み、前記キャッププライ層を構成するキャッププライ被覆用ゴム組成物及び前記カーカス層を構成するカーカス被覆用ゴム組成物のステアリン酸量及び酸化亜鉛量が共に前記式(1)及び(2)を満たす空気入りタイヤであるので、タイヤに優れた耐久性を付与できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】空気入りタイヤの断面模式図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
前記空気入りタイヤは、1層以上のスチールベルト層、1層以上のキャッププライ層、及び1層以上のカーカス層を有し、かつ、前記スチールベルト層を構成するスチールベルト被覆用ゴム組成物が酸化亜鉛を所定量含み、前記キャッププライ層を構成するキャッププライ被覆用ゴム組成物及び前記カーカス層を構成するカーカス被覆用ゴム組成物のステアリン酸量及び酸化亜鉛量が共に前記式(1)及び(2)を満たすものである。
【0010】
なお、本明細書において、スチールベルト被覆用、キャッププライ被覆用、カーカス被覆用ゴム組成物の薬品の含有量は、全て架橋前のゴム組成物における理論配合量(各部材の被覆用未加硫ゴム組成物に含まれる理論配合量)を意味する。ここで、理論配合量とは、ゴム組成物を調製する際に、混練機に投入した薬品の量を意味する。
【0011】
(スチールベルト層)
スチールベルト層の各層は、スチールコードを、所定量の酸化亜鉛を含むスチールベルト被覆用ゴム組成物で被覆したものである。
【0012】
スチールコードの構造としては、特に限定されず、例えば、1×n構成の単撚りスチールコード、k+m構成の層撚りスチールコード、1×n構成の束撚りスチールコード、m×n構成の複撚りスチールコード等が挙げられる。スチールコードは、表面が黄銅(真鍮)、Zn等でメッキしたものも使用可能である。
【0013】
スチールベルト被覆用ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対する酸化亜鉛の含有量が8.0質量部以上である。所定量の酸化亜鉛を配合することで、スチールコードと該ゴム組成物の接着性の悪化を防止できる。好ましくは10.0質量部以上である。上限は特に限定されないが、更なる増量による改善効果が望めず、経済的に有利であるという点からは、12.0質量部以下に調整することが好適である。
【0014】
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0015】
スチールベルト被覆用ゴム組成物に使用可能なゴム成分としては特に限定されず、天然ゴム(NR)やイソプレンゴム(IR)などのイソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。なかでも、良好な耐久性が得られるという理由から、イソプレン系ゴムが好ましい。
【0016】
イソプレン系ゴムのNRとしては、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用でき、IRとしても、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0017】
スチールベルト被覆用ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは35質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは85質量%以上であり、100質量%でもよい。イソプレン系ゴムの配合量が上記範囲内であると、良好な耐久性が得られる。
【0018】
スチールベルト被覆用ゴム組成物は、カーボンブラックを含むことが好ましい。カーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
スチールベルト被覆用ゴム組成物において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、20m/g以上が好ましく、50m/g以上がより好ましい。下限以上にすることで、良好な耐久性が得られる傾向がある。また、上記NSAは、150m/g以下が好ましく、100m/g以下がより好ましい。上限以下にすることで、カーボンブラックの良好な分散が得られる傾向がある。
なお、本明細書において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001によって求められる。
【0020】
スチールベルト被覆用ゴム組成物において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上である。下限以上にすることで、十分な補強性を得られ、良好な耐久性が得られる傾向がある。また、上記含有量は、好ましくは120質量部以下、より好ましくは90質量部以下である。上限以下にすることで、発熱が抑制され、良好な耐久性が得られる傾向がある。
【0021】
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
【0022】
スチールベルト被覆用ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対するステアリン酸の含有量が0.2質量部以下であることが好ましい。ステアリン酸を低減することで、スチールコードと該ゴム組成物の接着性の悪化を防止できる。より好ましくは0.1質量部以下、更に好ましくは0.01質量部以下であり、含まなくてもよい。
【0023】
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、和光純薬工業(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0024】
(キャッププライ層、カーカス層)
キャッププライ層の各層は、コードを、ステアリン酸量、酸化亜鉛量が式(1)、(2)を満たすキャッププライ被覆用ゴム組成物、カーカス層の各層は、コードを、ステアリン酸量、酸化亜鉛量が式(1)、(2)を満たすカーカス被覆用ゴム組成物で、それぞれ被覆したものである。
【0025】
キャッププライ層を構成するコードとしては、有機繊維からなるものが挙げられる。好ましい有機繊維として、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。カーカス層を構成するコードとしては、繊維コード、スチールコード等が挙げられる。
【0026】
キャッププライ、カーカス被覆用ゴム組成物は、共に、キャッププライ被覆用ゴム組成物、カーカス被覆用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量部に対するステアリン酸の含有量が以下の式(1)を満たす。
式(1)
ステアリン酸の含有量≦3.0質量部
【0027】
スチールベルト層の近くに設けられるキャッププライ層、カーカス層の被覆ゴム組成物中に含まれるステアリン酸量を所定以下に調整することで、ステアリン酸の移行に起因するスチールコード及びその被覆用ゴム組成物間の接着性の悪化を防止できる。好ましくはステアリン酸の含有量≦2.0質量部である。下限は特に限定されないが、ゴムの加硫速度の観点から、好ましくはステアリン酸の含有量≧1.0質量部、より好ましくはステアリン酸の含有量≧1.5質量部である。
【0028】
キャッププライ、カーカス被覆用ゴム組成物は、共に、キャッププライ被覆用ゴム組成物、カーカス被覆用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量部に対するステアリン酸の含有量と酸化亜鉛の含有量との比が以下の式(2)を満たす。
式(2)
ステアリン酸の含有量/酸化亜鉛の含有量≦0.5
【0029】
スチールベルト層の近くに設けられるキャッププライ層、カーカス層の被覆ゴム組成物中の酸化亜鉛量を増加し、ステアリン酸量/酸化亜鉛量を所定以下に調整することで、ステアリン酸の移行に起因するスチールコード及びその被覆用ゴム組成物間の接着性の悪化の影響が軽減する。好ましくはステアリン酸の含有量/酸化亜鉛の含有量≦0.3である。下限は特に限定されない。
【0030】
なお、ステアリン酸、酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、前記と同様のものを使用できる。
【0031】
キャッププライ、カーカス被覆用ゴム組成物に使用可能なゴム成分としては特に限定されず、前記と同様のものが挙げられる。なかでも、良好な耐久性が得られるという理由から、イソプレン系ゴム、SBRが好ましい。
【0032】
イソプレン系ゴムとしては、前記と同様のものが挙げられる。SBRとしては、例えば、アニオン重合法、溶液重合法、乳化重合法等、公知の方法を用いて調製したものが挙げられ、充填剤と親和性のある極性基で変性されたものでもよい。SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されている製品を使用できる。
【0033】
キャッププライ、カーカス被覆用ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは55質量%以上である。該含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。イソプレン系ゴムの配合量が上記範囲内であると、良好な耐久性が得られる。
【0034】
キャッププライ、カーカス被覆用ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。該含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。SBRの配合量が上記範囲内であると、良好な耐久性が得られる。
【0035】
キャッププライ、カーカス被覆用ゴム組成物は、カーボンブラックを含むことが好ましい。カーボンブラックとしては、前記と同様のものが挙げられる。
【0036】
キャッププライ、カーカス被覆用ゴム組成物において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、20m/g以上が好ましく、50m/g以上がより好ましい。下限以上にすることで、良好な耐久性が得られる傾向がある。また、上記NSAは、150m/g以下が好ましく、100m/g以下がより好ましい。上限以下にすることで、カーボンブラックの良好な分散が得られる傾向がある。
【0037】
キャッププライ、カーカス被覆用ゴム組成物において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは15質量部以上、より好ましくは30質量部以上である。下限以上にすることで、十分な補強性を得られ、良好な耐久性が得られる傾向がある。また、上記含有量は、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下である。上限以下にすることで、発熱が抑制され、良好な耐久性が得られる傾向がある。
【0038】
スチールベルト、キャッププライ、カーカス被覆用ゴム組成物は、それぞれ上記成分の他に、従来ゴム工業で使用される配合剤、例えば、他の補強用充填剤、ワックス、酸化防止剤、老化防止剤、軟化剤、加硫剤、加硫促進剤等を配合してもよい。
【0039】
(空気入りタイヤ)
前記空気入りタイヤは、1層以上のスチールベルト層、1層以上のキャッププライ層、及び1層以上のカーカス層を有する。前述の構成を持つスチールベルト層、キャッププライ層及びカーカス層を有することにより、タイヤに優れた耐久性を付与できる。
【0040】
図1は、空気入りタイヤの一例を示す。上下方向がタイヤの半径方向、左右方向がタイヤの軸方向、紙面との垂直方向がタイヤの周方向、である。一点鎖線CLはタイヤの赤道面を表す。このタイヤの形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。この図では、タイヤはリムRに装着されている。
【0041】
空気入りタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、カーカス12、ベルト16、インナーライナー18、一対のチェーファー20及びキャッププライ(バンド)30を備えている。
【0042】
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。サイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6の半径方向外側部分は、トレッド4と接合されている。このサイドウォール6の半径方向内側部分は、クリンチ8と接合されている。サイドウォール6は、カーカス12よりも軸方向外側に位置している。
【0043】
クリンチ8は、サイドウォール6よりも半径方向内側に位置している。クリンチ8は、ビード10及びカーカス12の軸方向外側に位置している。ビード10は、クリンチ8の軸方向内側に位置している。ビード10は、コア32と、このコア32から半径方向外向きに延びるエイペックス34とを備えている。
【0044】
カーカス12は、第一プライ12a及び第二プライ12bからなる。第一プライ12a及び第二プライ12bは、両側のビード10の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6に沿っている。カーカス12が、1枚のプライから形成されてもよい。
【0045】
ベルト16は、カーカス12の外側に積層されている。ベルト16は、カーカス12を補強する。この実施形態では、ベルト16は、第一層16a及び第二層16bからなる。キャッププライ30は、ベルト16の半径方向外側に位置している。キャッププライ30は、有機繊維等のコードとトッピングゴムとからなる。
【0046】
インナーライナー18は、カーカス12の内側に位置している。赤道面の近傍において、インナーライナー18は、カーカス12の内面に接合されている。インナーライナー18は、タイヤ2の内圧を保持する。チェーファー20は、ビード10の近傍に位置している。チェーファー20は、リムRと当接する。この当接により、ビード10の近傍が保護される。
【0047】
空気入りタイヤは、以下の方法など、従来公知の方法で製造できる。
先ず、バンバリーミキサー、オープンロールなどのゴム混練装置に前記架橋剤及び加硫促進剤以外の成分を配合(添加)して混練りした後(ベース練り工程)、得られた混練物に、更に前記架橋剤及び加硫促進剤を配合(添加)して混練することにより、スチールベルト被覆用、キャッププライ被覆用、カーカス被覆用未加硫ゴム組成物をそれぞれ作製する。
【0048】
次いで、それぞれの未加硫ゴム組成物をコードに被覆し、スチールベルト層、キャッププライ層、カーカス層の各形状に合わせて押し出し加工する。そして、タイヤ成型機上にて、これらの部材を他のタイヤ部材とともに貼り合わせて、未加硫タイヤ(=生カバー)を作製した後、その未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することで、空気入りタイヤを製造できる。
【0049】
空気入りタイヤは、スチールベルト層、キャッププライ層及びカーカス層の厚みが下記式(3)を満たすものが好ましい。1層以上のカーカス層と1層以上のキャッププライ層の合計厚みと1層以上のスチールベルト層の厚みの比を1.5以下に調整することにより、タイヤの耐久性を顕著に向上できる。
式(3)
(カーカス層の厚み+キャッププライ層の厚み)/スチールベルト層の厚み≦1.5
【0050】
上記比は、1.3以下がより好ましい。また、上記比の下限は特に限定されない。
【0051】
スチールベルト層の厚みは、好ましくは1.5~4.0mm、より好ましくは2.0~3.5mmである。キャッププライ層の厚みは、好ましくは0.5~2.0mm、より好ましくは1.0~1.5mmである。カーカス層の厚みは、好ましくは0.5~2.0mm、より好ましくは1.0~1.5mmである。上記範囲内に調整することで、タイヤの耐久性を顕著に向上できる。
【0052】
なお、スチールベルト層、キャッププライ層、カーカス層の厚みとは、タイヤの赤道面におけるスチールベルト層、キャッププライ層、カーカス層の厚みを意味する。また、2層以上からなる場合は、その合計厚みであり、例えば、2層以上からなるカーカス層の場合、カーカス層の厚みは、各層の厚みの合計厚みである。
【0053】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤに好適であり、それぞれのサマータイヤ、スタッドレスタイヤとして使用可能である。
【実施例
【0054】
以下に、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:RSS3
SBR:乳化重合SBR
カーボンブラック1:NSA78m/g
カーボンブラック2:NSA84m/g
オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスNH-70S
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
ステアリン酸コバルト:大日本インキ化学工業(株)製のcost-F(コバルト含有量:9.5質量%)
耐熱老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲンRD
硫黄:日本乾溜工業(株)製のセイミOT(10%オイル含有不溶性硫黄)
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(TBBS)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDZ(DCBS)
【0055】
<実施例及び比較例>
(空気入りタイヤの作製)
表1、2に示す配合内容に従い、バンバリーミキサーを用いて、加硫剤(硫黄)及び加硫促進剤以外の材料を160℃の条件下で5分間混練し、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、105℃条件下で3分間練り込み、スチールベルト被覆用、キャッププライ被覆用、カーカス被覆用未加硫ゴム組成物を得た。
【0056】
得られた未加硫ゴム組成物を用いて各タイヤ部材の形状に成形した。ここで、スチールベルト層、キャッププライ層、カーカス層は、各コード(スチールベルト層:1×2×0.30、キャッププライ層:1400dtex/2-N66、カーカス層:1670dtex/2-PET)に各被覆用ゴム組成物を上下から圧着被覆して作製した。そして、表3、4の組合せに従い、未加硫タイヤを形成し、170℃12分間加硫し、図1に示される試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を製造した。なお、スチールベルト層、キャッププライ層、カーカス層の厚みは、表3、4に記載のとおりである。
【0057】
(評価)
得られた試験用タイヤを使用して、下記の評価を行った。評価結果を表3、4に示す。
【0058】
<耐久試験>
JIS規格の最大荷重(最大空気圧条件)に対して、140%である荷重オーバーロード条件で、試験用タイヤ(湿熱劣化タイヤ)をドラム走行させたときの、トレッド部の膨れなど、外観異常、異音の発生までの走行距離を測定した。比較例1を100とし、各配合の走行距離を指数表示した。なお、指数が大きいほどタイヤの耐久性に優れることを示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
1層以上のスチールベルト層、1層以上のキャッププライ層、及び1層以上のカーカス層を有し、スチールベルト被覆用ゴム組成物が酸化亜鉛を所定量含み、キャッププライ被覆用及びカーカス被覆用ゴム組成物のステアリン酸量及び酸化亜鉛量が式(1)及び(2)を満たす実施例の空気入りタイヤは、比較例に比べ、非常に優れた耐久性が得られた。
【符号の説明】
【0064】
2 空気入りタイヤ
4 トレッド
6 サイドウォール
8 クリンチ
10 ビード
12 カーカス
12a 第一プライ
12b 第二プライ
16 ベルト
16a 第一層
16b 第二層
18 インナーライナー
20 チェーファー
30 キャッププライ
32 コア
34 エイペックス
図1