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特許7020211データ出力設定調整方法、画像データ処理装置及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】データ出力設定調整方法、画像データ処理装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20220208BHJP
   B41J 21/00 20060101ALI20220208BHJP
   B41J 29/393 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 209
B41J2/01 307
B41J2/01 451
B41J21/00 Z
B41J29/393 101
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018050424
(22)【出願日】2018-03-19
(65)【公開番号】P2019162725
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川邊 徹
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-184458(JP,A)
【文献】特開2017-056654(JP,A)
【文献】特開2016-101745(JP,A)
【文献】特開2016-203424(JP,A)
【文献】特開2015-131485(JP,A)
【文献】特開2006-027161(JP,A)
【文献】特開2009-113312(JP,A)
【文献】特開2017-149111(JP,A)
【文献】特開2010-137553(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0267632(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B41J 21/00
B41J 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録モジュールが所定の幅方向について互いに異なる位置に設けられた記録動作部を備え、前記複数の記録モジュールには、それぞれ、画素単位で各々記録動作を行う複数の記録素子が前記幅方向について所定の間隔で配列され、前記幅方向について隣り合う前記記録モジュールの間では、当該記録モジュールにおいて前記複数の記録素子が設けられた配列範囲の端部同士が前記幅方向について重複しており、前記幅方向に直交する相対移動方向への前記記録動作部と記録媒体との間での相対移動と、前記記録動作部の動作とによって前記記録媒体上に画像を形成する画像形成装置による形成対象とされる画像の画素配列データに応じて、前記複数の記録素子の駆動設定を前記複数の記録モジュールについて各々定める複数の駆動用データのデータ出力設定調整方法であって、
前記複数の記録モジュールの前記配列範囲に係る相対位置の計測値に対応して、前記画素配列データにおける前記複数の駆動用データの対応範囲をそれぞれ調整する範囲調整ステップ、
前記隣り合う記録モジュールに係る前記駆動用データの各々において、前記重複している部分で前記幅方向の位置が対応する前記記録素子の駆動状態をそれぞれ相補的に定める選択設定パターンの当該駆動用データの各々に対する適用範囲を、前記隣り合う記録モジュールの相対位置の計測値に応じて前記重複している部分から変更するパターン適用調整ステップ
を含み、
前記画像形成装置は、前記相対移動方向について互いに異なる位置に設けられている複数の前記記録動作部を備え、
前記複数の記録動作部は、少なくとも一部が異なる色の画素を形成し、前記画素配列データは、前記記録動作部ごとに生成されており、
前記範囲調整ステップは、
前記記録動作部のうち所定の基準記録動作部について、前記複数の記録モジュールの前記対応範囲の調整を行う第1の調整と、
前記基準記録動作部以外の前記記録動作部における前記複数の記録モジュールと、当該複数の記録モジュールにそれぞれ対応する前記基準記録動作部の前記記録モジュールとの位置ずれ量に応じて前記対応範囲の調整を行う第2の調整と、
を含み、
前記パターン適用調整ステップでは、
前記基準記録動作部以外の前記記録動作部における前記複数の記録モジュールについて、前記範囲調整ステップで前記第1の調整及び前記第2の調整により生じるずれに応じて前記適用範囲を変更する
ことを特徴とするデータ出力設定調整方法。
【請求項2】
前記隣り合う記録モジュールのうち一方において前記重複する部分に含まれる所定の第1基準記録素子により第1基準画素を形成させ、前記隣り合う記録モジュールのうち他方において前記第1基準記録素子と前記幅方向の位置が対応する第1対応記録素子を含む所定範囲の前記記録素子によりそれぞれ比較画素を形成させ、前記第1基準画素の形成位置に対する前記第1対応記録素子による前記比較画素の形成位置のずれ量に応じて、前記相対位置を決定する相対位置決定ステップを含むことを特徴とする請求項1記載のデータ出力設定調整方法。
【請求項3】
前記選択設定パターンは、前記幅方向の位置が対応する前記記録素子のいずれにより前記記録動作を可能とさせるかを排他的に定める
ことを特徴とする請求項1又は2記載のデータ出力設定調整方法。
【請求項4】
前記基準記録動作部の各記録モジュールにおいてそれぞれ所定の一つの側で前記隣り合う記録モジュールがある場合に、当該隣り合う記録モジュールと重複している部分に含まれない前記記録素子の数を同定することで、当該基準記録動作部における前記相対位置を取得する基準相対位置決定ステップ、
前記基準記録動作部の各記録モジュールにおける所定の第2基準記録素子によりそれぞれ第2基準画素を形成させ、前記基準記録動作部以外の前記記録動作部において前記第2基準記録素子とそれぞれ前記幅方向についての位置が対応する第2比較記録素子を含む複数の画素によりそれぞれ比較画素を形成させ、前記第2基準画素の形成位置に対する前記第2比較記録素子による画素の形成位置のずれ量をそれぞれ同定することで、前記基準記録動作部の前記記録モジュールに対する前記基準記録動作部以外の前記記録モジュールの前記位置ずれ量をそれぞれ取得する位置ずれ量決定ステップ
を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のデータ出力設定調整方法。
【請求項5】
前記複数の記録動作部は、各々異なる色の画素を形成し、前記画素配列データは、当該異なる色ごとに生成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のデータ出力設定調整方法。
【請求項6】
前記記録動作部は、ラインヘッドであることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のデータ出力設定調整方法。
【請求項7】
複数の記録モジュールが所定の幅方向について互いに異なる位置に設けられた記録動作部を備え、前記複数の記録モジュールには、それぞれ、画素単位で各々記録動作を行う複数の記録素子が前記幅方向について所定の間隔で配列され、前記幅方向について隣り合う前記記録モジュールの間では、当該記録モジュールにおいて前記複数の記録素子が設けられた配列範囲の端部同士が前記幅方向について重複しており、前記幅方向に直交する相対移動方向への前記記録動作部と記録媒体との間での相対移動と、前記記録動作部の動作とによって前記記録媒体上に画像を形成する画像形成装置による形成対象とされる画像の画素配列データに応じて、前記複数の記録素子の駆動設定を前記複数の記録モジュールについて各々定める複数の駆動用データのデータ出力設定調整を行う制御部を備え、
前記制御部は、
前記複数の記録モジュールの前記配列範囲に係る相対位置の計測値に対応して、前記画素配列データにおける前記複数の駆動用データの対応範囲をそれぞれ調整し、
前記隣り合う記録モジュールに係る前記駆動用データの各々において、前記重複している部分で前記幅方向の位置が対応する前記記録素子の駆動状態をそれぞれ相補的に定める選択設定パターンの当該駆動用データの各々に対する適用範囲を、前記隣り合う記録モジュールの相対位置の計測値に応じて前記重複している部分から変更し、
前記画像形成装置は、前記相対移動方向について互いに異なる位置に設けられている複数の前記記録動作部を備え、
前記複数の記録動作部は、少なくとも一部が異なる色の画素を形成し、前記画素配列データは、前記記録動作部ごとに生成されており、
前記制御部は、
前記データ出力設定調整において、
前記記録動作部のうち所定の基準記録動作部について、前記複数の記録モジュールの前記対応範囲の調整を行う第1の調整と、
前記基準記録動作部以外の前記記録動作部における前記複数の記録モジュールと、当該複数の記録モジュールにそれぞれ対応する前記基準記録動作部の前記記録モジュールとの位置ずれ量に応じて前記対応範囲の調整を行う第2の調整と、
を行い、
前記複数の駆動用データの対応範囲の調整において、
前記基準記録動作部以外の前記記録動作部における前記複数の記録モジュールについて、前記第1の調整及び前記第2の調整により生じるずれに応じて前記適用範囲を変更する
ことを特徴とする画像データ処理装置。
【請求項8】
複数の記録モジュールが所定の幅方向について互いに異なる位置に設けられた記録動作部と、
制御部と、
を備え、
前記複数の記録モジュールには、それぞれ、画素単位で各々記録動作を行う複数の記録素子が前記幅方向について所定の間隔で配列され、
前記幅方向について隣り合う前記記録モジュールの間では、当該記録モジュールにおいて前記複数の記録素子が設けられた配列範囲の端部同士が前記幅方向について重複しており、
前記制御部は、
形成対象とされる画像の画素配列データに応じて、前記複数の記録素子の駆動設定を前記複数の記録モジュールについて各々定める複数の駆動用データを生成し、
前記幅方向に直交する相対移動方向へ前記記録動作部と記録媒体との間で相対移動させ、かつ前記複数の駆動用データに基づいて前記記録動作部を動作させることによって前記記録媒体上に画像を形成し、
前記複数の記録モジュールの前記配列範囲に係る相対位置の計測値に対応して、前記画素配列データにおける前記複数の駆動用データの対応範囲をそれぞれ調整し、
前記隣り合う記録モジュールに係る前記駆動用データの各々において、前記重複している部分で前記幅方向の位置が対応する前記記録素子の駆動状態をそれぞれ相補的に定める選択設定パターンの当該駆動用データの各々に対する適用範囲を、前記隣り合う記録モジュールの相対位置に応じて前記重複している部分から変更するデータ出力設定調整を行い、
前記記録動作部は、複数が前記相対移動方向について互いに異なる位置に設けられており、
前記複数の記録動作部は、少なくとも一部が異なる色の画素を形成し、前記画素配列データは、前記記録動作部ごとに生成されており、
前記制御部は、
前記複数の駆動用データの対応範囲の調整において、
前記記録動作部のうち所定の基準記録動作部について、前記複数の記録モジュールの前記対応範囲の調整を行う第1の調整と、
前記基準記録動作部以外の前記記録動作部における前記複数の記録モジュールと、当該複数の記録モジュールにそれぞれ対応する前記基準記録動作部の前記記録モジュールとの位置ずれ量に応じて前記対応範囲の調整を行う第2の調整と、
を行い、
前記データ出力設定調整において、
前記基準記録動作部以外の前記記録動作部における前記複数の記録モジュールについて、前記第1の調整及び前記第2の調整により生じるずれに応じて前記適用範囲を変更する
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、データ出力設定調整方法、画像データ処理装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出するノズルといった記録素子を複数配列して各々画素を形成する記録動作を行わせることで画像を形成する画像形成装置がある。画像形成装置では、画像の形成速度の向上などの要求に応じて、複数の記録素子を所定の幅方向について画像形成幅にわたって配列したラインヘッドを用い、当該幅方向と直交する方向に記録媒体を搬送させながらワンパスで画像を形成する技術が知られている。
【0003】
このようなラインヘッドとして、複数の記録素子が配列された記録モジュールを幅方向に複数配列して形成したものを用いる技術がある。この場合、記録モジュールの取り付け誤差を考慮して、各記録モジュールにおける記録素子の配置範囲が幅方向について一部重複するように各記録モジュールが配置される。形成対象の画像データは、当該重複部分について、両記録モジュールのいずれかの記録素子により選択的に記録動作がなされるように振り分けられる。
【0004】
各記録モジュールに対する画像データの振り分けを調整することで、重複部分における画質の低下を抑制する技術がある。特許文献1には、複数の記録モジュールに対して多階調データを振り分け、各記録モジュールで各々別個に二値化処理させることで、幅方向について同一位置のノズルに対して相補的にならない分配を行うことにより記録モジュール間の位置ずれによる濃度むらを抑制する技術が開示されている。また、異なる色の画像を形成する複数のラインヘッドを配列する場合に、当該複数のラインヘッド間での色ずれを抑制するために、重複部分に画素を挿入したり又は画素を削除したりして相対位置を合わせる技術が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-6260号公報
【文献】特開2015-58677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ずれの調整、特に微調整を行って適切な画質を得たい場合に従来の処理では手間がかかるという課題がある。
【0007】
この発明の目的は、より容易に適切な画質の画像を得ることのできるデータ出力設定調整方法、画像データ処理装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
複数の記録モジュールが所定の幅方向について互いに異なる位置に設けられた記録動作部を備え、前記複数の記録モジュールには、それぞれ、画素単位で各々記録動作を行う複数の記録素子が前記幅方向について所定の間隔で配列され、前記幅方向について隣り合う前記記録モジュールの間では、当該記録モジュールにおいて前記複数の記録素子が設けられた配列範囲の端部同士が前記幅方向について重複しており、前記幅方向に直交する相対移動方向への前記記録動作部と記録媒体との間での相対移動と、前記記録動作部の動作とによって前記記録媒体上に画像を形成する画像形成装置による形成対象とされる画像の画素配列データに応じて、前記複数の記録素子の駆動設定を前記複数の記録モジュールについて各々定める複数の駆動用データのデータ出力設定調整方法であって、
前記複数の記録モジュールの前記配列範囲に係る相対位置の計測値に対応して、前記画素配列データにおける前記複数の駆動用データの対応範囲をそれぞれ調整する範囲調整ステップ、
前記隣り合う記録モジュールに係る前記駆動用データの各々において、前記重複している部分で前記幅方向の位置が対応する前記記録素子の駆動状態をそれぞれ相補的に定める選択設定パターンの当該駆動用データの各々に対する適用範囲を、前記隣り合う記録モジュールの相対位置の計測値に応じて前記重複している部分から変更するパターン適用調整ステップ
を含み、
前記画像形成装置は、前記相対移動方向について互いに異なる位置に設けられている複数の前記記録動作部を備え、
前記複数の記録動作部は、少なくとも一部が異なる色の画素を形成し、前記画素配列データは、前記記録動作部ごとに生成されており、
前記範囲調整ステップは、
前記記録動作部のうち所定の基準記録動作部について、前記複数の記録モジュールの前記対応範囲の調整を行う第1の調整と、
前記基準記録動作部以外の前記記録動作部における前記複数の記録モジュールと、当該複数の記録モジュールにそれぞれ対応する前記基準記録動作部の前記記録モジュールとの位置ずれ量に応じて前記対応範囲の調整を行う第2の調整と、
を含み、
前記パターン適用調整ステップでは、
前記基準記録動作部以外の前記記録動作部における前記複数の記録モジュールについて、前記範囲調整ステップで前記第1の調整及び前記第2の調整により生じるずれに応じて前記適用範囲を変更する
ことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のデータ出力設定調整方法において、
前記隣り合う記録モジュールのうち一方において前記重複する部分に含まれる所定の第1基準記録素子により第1基準画素を形成させ、前記隣り合う記録モジュールのうち他方において前記第1基準記録素子と前記幅方向の位置が対応する第1対応記録素子を含む所定範囲の前記記録素子によりそれぞれ比較画素を形成させ、前記第1基準画素の形成位置に対する前記第1対応記録素子による前記比較画素の形成位置のずれ量に応じて、前記相対位置を決定する相対位置決定ステップを含むことを特徴とする。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のデータ出力設定調整方法において、
前記選択設定パターンは、前記幅方向の位置が対応する前記記録素子のいずれにより前記記録動作を可能とさせるかを排他的に定める
ことを特徴とする。
【0013】
また、請求項記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載のデータ出力設定調整方法において、
前記基準記録動作部の各記録モジュールにおいてそれぞれ所定の一つの側で前記隣り合う記録モジュールがある場合に、当該隣り合う記録モジュールと重複している部分に含まれない前記記録素子の数を同定することで、当該基準記録動作部における前記相対位置を取得する基準相対位置決定ステップ、
前記基準記録動作部の各記録モジュールにおける所定の第2基準記録素子によりそれぞれ第2基準画素を形成させ、前記基準記録動作部以外の前記記録動作部において前記第2基準記録素子とそれぞれ前記幅方向についての位置が対応する第2比較記録素子を含む複数の画素によりそれぞれ比較画素を形成させ、前記第2基準画素の形成位置に対する前記第2比較記録素子による画素の形成位置のずれ量をそれぞれ同定することで、前記基準記録動作部の前記記録モジュールに対する前記基準記録動作部以外の前記記録モジュールの前記位置ずれ量をそれぞれ取得する位置ずれ量決定ステップ
を含むことを特徴とする。
【0014】
また、請求項記載の発明は、請求項1~4のいずれか一項に記載のデータ出力設定調整方法において、
前記複数の記録動作部は、各々異なる色の画素を形成し、前記画素配列データは、当該異なる色ごとに生成されていることを特徴とする。
【0015】
また、請求項記載の発明は、請求項1~のいずれか一項に記載のデータ出力設定調整方法において、
前記記録動作部は、ラインヘッドであることを特徴とする。
【0016】
また、請求項記載の発明は、
複数の記録モジュールが所定の幅方向について互いに異なる位置に設けられた記録動作部を備え、前記複数の記録モジュールには、それぞれ、画素単位で各々記録動作を行う複数の記録素子が前記幅方向について所定の間隔で配列され、前記幅方向について隣り合う前記記録モジュールの間では、当該記録モジュールにおいて前記複数の記録素子が設けられた配列範囲の端部同士が前記幅方向について重複しており、前記幅方向に直交する相対移動方向への前記記録動作部と記録媒体との間での相対移動と、前記記録動作部の動作とによって前記記録媒体上に画像を形成する画像形成装置による形成対象とされる画像の画素配列データに応じて、前記複数の記録素子の駆動設定を前記複数の記録モジュールについて各々定める複数の駆動用データのデータ出力設定調整を行う制御部を備え、
前記制御部は、
前記複数の記録モジュールの前記配列範囲に係る相対位置の計測値に対応して、前記画素配列データにおける前記複数の駆動用データの対応範囲をそれぞれ調整し、
前記隣り合う記録モジュールに係る前記駆動用データの各々において、前記重複している部分で前記幅方向の位置が対応する前記記録素子の駆動状態をそれぞれ相補的に定める選択設定パターンの当該駆動用データの各々に対する適用範囲を、前記隣り合う記録モジュールの相対位置の計測値に応じて前記重複している部分から変更し、
前記画像形成装置は、前記相対移動方向について互いに異なる位置に設けられている複数の前記記録動作部を備え、
前記複数の記録動作部は、少なくとも一部が異なる色の画素を形成し、前記画素配列データは、前記記録動作部ごとに生成されており、
前記制御部は、
前記データ出力設定調整において、
前記記録動作部のうち所定の基準記録動作部について、前記複数の記録モジュールの前記対応範囲の調整を行う第1の調整と、
前記基準記録動作部以外の前記記録動作部における前記複数の記録モジュールと、当該複数の記録モジュールにそれぞれ対応する前記基準記録動作部の前記記録モジュールとの位置ずれ量に応じて前記対応範囲の調整を行う第2の調整と、
を行い、
前記複数の駆動用データの対応範囲の調整において、
前記基準記録動作部以外の前記記録動作部における前記複数の記録モジュールについて、前記第1の調整及び前記第2の調整により生じるずれに応じて前記適用範囲を変更する
ことを特徴とする画像データ処理装置である。
【0017】
また、請求項記載の発明は、
複数の記録モジュールが所定の幅方向について互いに異なる位置に設けられた記録動作部と、
制御部と、
を備え、
前記複数の記録モジュールには、それぞれ、画素単位で各々記録動作を行う複数の記録素子が前記幅方向について所定の間隔で配列され、
前記幅方向について隣り合う前記記録モジュールの間では、当該記録モジュールにおいて前記複数の記録素子が設けられた配列範囲の端部同士が前記幅方向について重複しており、
前記制御部は、
形成対象とされる画像の画素配列データに応じて、前記複数の記録素子の駆動設定を前記複数の記録モジュールについて各々定める複数の駆動用データを生成し、
前記幅方向に直交する相対移動方向へ前記記録動作部と記録媒体との間で相対移動させ、かつ前記複数の駆動用データに基づいて前記記録動作部を動作させることによって前記記録媒体上に画像を形成し、
前記複数の記録モジュールの前記配列範囲に係る相対位置の計測値に対応して、前記画素配列データにおける前記複数の駆動用データの対応範囲をそれぞれ調整し、
前記隣り合う記録モジュールに係る前記駆動用データの各々において、前記重複している部分で前記幅方向の位置が対応する前記記録素子の駆動状態をそれぞれ相補的に定める選択設定パターンの当該駆動用データの各々に対する適用範囲を、前記隣り合う記録モジュールの相対位置に応じて前記重複している部分から変更するデータ出力設定調整を行い、
前記記録動作部は、複数が前記相対移動方向について互いに異なる位置に設けられており、
前記複数の記録動作部は、少なくとも一部が異なる色の画素を形成し、前記画素配列データは、前記記録動作部ごとに生成されており、
前記制御部は、
前記複数の駆動用データの対応範囲の調整において、
前記記録動作部のうち所定の基準記録動作部について、前記複数の記録モジュールの前記対応範囲の調整を行う第1の調整と、
前記基準記録動作部以外の前記記録動作部における前記複数の記録モジュールと、当該複数の記録モジュールにそれぞれ対応する前記基準記録動作部の前記記録モジュールとの位置ずれ量に応じて前記対応範囲の調整を行う第2の調整と、
を行い、
前記データ出力設定調整において、
前記基準記録動作部以外の前記記録動作部における前記複数の記録モジュールについて、前記第1の調整及び前記第2の調整により生じるずれに応じて前記適用範囲を変更する
ことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に従うと、より容易に適切な画質を得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】インクジェット記録装置の全体斜視図である。
図2】ヘッドユニットの搬送面と対向する面を示した底面図である。
図3】インクジェット記録装置の機能構成を示すブロック図である。
図4】インク吐出可能ノズルの振り分けについて説明する図である。
図5】ヘッドモジュール間の相対位置合わせについて説明する図である。
図6】ヘッドユニット間の各ヘッドユニットの位置関係について説明する図である。
図7】非基準ヘッドユニットにおけるヘッドモジュール間のずれの同定について説明する図である。
図8】非基準ヘッドユニットにおけるヘッドモジュール間の位置ずれによる振り分けずれについて説明する図である。
図9】駆動用データ出力設定処理の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の画像形成装置の実施形態であるインクジェット記録装置100の全体斜視図である。
【0021】
このインクジェット記録装置100は、複数のラインヘッドを有し、シングルパス方式でインクの吐出を行ってカラー画像の記録を行うことが可能なものであって、搬送部10と、画像記録部20と、インク貯留部30と、画像読取部60などを備える。
【0022】
搬送部10は、駆動ローラー11と、搬送駆動部12と、搬送ベルト14などを備える。搬送駆動部12は、駆動ローラー11を所定の速度で回転動作させる回転モーターを有する。駆動ローラー11には、図示略の従動ローラーとともに無端状の搬送ベルト14が巻回されて、当該駆動ローラー11の回転により搬送ベルト14が周回移動する。この搬送ベルト14の外側面を搬送面として当該搬送面上に記録媒体が載置されて、記録媒体は、搬送ベルト14の周回移動に伴って搬送方向(相対移動方向)に搬送(ヘッドユニット21(図2参照)に対して相対移動)される。記録媒体としては、ここでは、巻回された長尺状の布帛が順次繰り出されて搬送される。あるいは、連続紙などが用いられてもよく、記録媒体の種別は特には限られない。
【0023】
画像記録部20は、キャリッジ22と、キャリッジ昇降部23などを備え、キャリッジ22とキャリッジ昇降部23との組み合わせがインクの色数(複数色)に応じた組数(ここでは8組)設けられている。キャリッジ22は、それぞれ、搬送部10による記録媒体の搬送方向と交差する向き、ここでは直交する幅方向に延在している。キャリッジ22は、搬送部10による記録媒体の搬送面の上方(高さ方向)に配置され、搬送される記録媒体の全幅にわたってノズル27(図2参照)の開口からインクの液滴を吐出可能にヘッドユニット21(図2参照)が固定されて、それぞれ、搬送方向について互いに異なる位置に設けられたラインヘッドをなしている。キャリッジ22は、キャリッジ昇降部23により搬送面から高さ方向についての距離が変更可能に設けられている。
【0024】
キャリッジ昇降部23は、キャリッジ22の搬送面からの距離を変更させる。キャリッジ昇降部23は、昇降モーター232と、電磁ブレーキ233と、梁部材234と、支持部235などを備える。
梁部材234は、搬送ベルト14の上部(記録媒体の搬送面側)において搬送方向と交差する向き(ここでは直交する向き、すなわち幅方向)で略平行に二本設けられ、当該梁部材234の両端にそれぞれ支持部235が固定される。支持部235には、昇降モーター232、電磁ブレーキ233及びキャリッジ22が取り付けられている。
キャリッジ22は、制御部40(図3参照)からの制御信号に基づいて駆動される昇降モーター232及び電磁ブレーキ233の動作に応じて上下されて位置が定められる。
【0025】
昇降モーター232は、所定の昇降速度でキャリッジ22を移動させる。昇降モーター232としては、例えば、サーボモーターやステッピングモーターが用いられる。
【0026】
電磁ブレーキ233は、キャリッジ22の固定状態を維持するものであり、駆動信号に応じてこの固定状態が解除されることで、昇降モーター232によるキャリッジ22の移動を一時的に可能とする。すなわち、電力供給の切断時を含めた通常の状態では、電磁ブレーキ233は、キャリッジ22を固定する。電磁ブレーキ233としては、例えば、ディスクブレーキが用いられる。
【0027】
インク貯留部30は、画像形成に用いられる各色のインクを貯留し、当該インクをヘッドユニット21(図2参照)に供給する。インク貯留部30は、インクタンク31と専用のラック32などを有し、インクタンク31は、チューブなどの配管を介して画像記録部20と接続されている。インク貯留部30は、特には限られないが、例えば、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)及びK(黒色)を含む複数色(ここでは8色)のインクが各々インクタンク31に貯留されて、それぞれ別個のキャリッジ22に取り付けられたヘッドユニット21に供給される。すなわち、複数のヘッドユニット21は、それぞれ異なる色のインクを吐出してドット(画素)を形成する。ヘッドユニット21に接続、供給されるインクの色や種別は、交換可能であってもよい。
【0028】
画像読取部60は、画像記録部20による画像形成位置(インク着弾位置)を通過した記録媒体の表面を搬送方向について下流側で読み取る。画像読取部60は、幅方向についてヘッドユニット21(図2参照)による画像形成可能幅にわたって撮像が可能なラインセンサー61(図3参照)を備え、記録媒体の搬送に応じて二次元画像を読み取ることが可能となっている。
【0029】
図2は、本実施形態のインクジェット記録装置100におけるヘッドユニット21の搬送面と対向する面を示した底面図である。ここでは、8つのヘッドユニット21は、いずれも同一の構成である。
【0030】
図2(a)に示すように、キャリッジ22に固定されたヘッドユニット21(記録動作部)の底面には、ヘッドモジュール210(記録モジュール)が幅方向について互いに異なる位置に複数、ここでは8個、千鳥格子状に配列されている。ヘッドモジュール210は、それぞれ、2個の記録ヘッド211を有する。各記録ヘッド211の底面には、幅方向について異なる位置に、間隔が所定のノズル間隔dpの2倍となるようにノズル27の開口部が千鳥格子状に配列されている。各ヘッドモジュール210における2個の記録ヘッド211は、幅方向について互いにノズル間隔dpずれて配置されている。これにより、複数のノズル27は、ヘッドモジュール210の全体で幅方向について開口部がノズル間隔dp(所定の間隔)となるように異なる位置に配置(配列)されている。
【0031】
図2(b)に示すように、各ヘッドモジュール210においてノズル27(開口部)が配列されている範囲であるノズル配置範囲(配列範囲)には、幅方向について隣り合うヘッドモジュール210の間で当該幅方向についてそれぞれ一部ずつ端部同士で重複する部分がある。ヘッドモジュール210がヘッドユニット21に対して全て正確に取り付けられている場合には、幅Baの重複部分では、幅方向について同一位置(ドット位置)に対し、2個のヘッドモジュール210にそれぞれ属する1つずつのノズル27によりインクが吐出可能となる。後述のように、この重複部分では、いずれかのノズル27によるインクが吐出可能とされるように振り分けがなされる。
【0032】
次に、本実施形態のインクジェット記録装置100の機能構成について説明する。
図3は、インクジェット記録装置100の機能構成を示すブロック図である。
インクジェット記録装置100は、上述の搬送駆動部12、画像記録部20及び画像読取部60に加えて、制御部40と、記憶部50と、通信部71と、表示部72と、操作受付部73と、バス90などを備える。
【0033】
画像記録部20は、上述のように複数のヘッドモジュール210に配置された複数のノズル27と、圧力発生機構26と、当該圧力発生機構26を動作させて複数のノズル27からインクを吐出させるヘッド駆動部25と、キャリッジ駆動部24などを有する。
【0034】
キャリッジ駆動部24は、制御部40からの制御信号に応じて電磁ブレーキ233及び昇降モーター232に駆動信号を出力し、電磁ブレーキ233を緩めるとともに昇降モーター232を動作させてキャリッジを所望の位置に移動させたり、昇降モーター232を停止させるとともに電磁ブレーキ233でキャリッジを固定させたりする。
【0035】
ヘッド駆動部25は、インクタンク31からインクの供給を受けて、圧力発生機構26に駆動信号を出力して当該圧力発生機構26を動作させる。圧力発生機構26は、各ノズル27に連通してインクを流すインク流路において、当該インクに圧力を加えるものであり、例えば、インク流路中に設けられた圧力室の壁面を変形させる圧電素子である。ヘッド駆動部25は、制御部40からの制御信号に基づいて予め記憶された電圧波形パターンを選択して電力増幅した駆動電圧信号を生成し、記憶部50から入力された画像データに応じて各圧力発生機構26(圧電素子)に対するインク吐出動作に係る駆動電圧信号の出力可否をそれぞれ切り替える。インク吐出動作に係る駆動電圧信号に応じた圧力発生機構26の動作(圧電素子の変形)により圧力室が変形して、インクに対して所定パターンで変動する圧力が加えられ、これに応じてノズル27により所定の量のインク液滴が所定速度で吐出される。すなわち、ここでは、各ノズル27(圧力発生機構26)は、インクが吐出されるか否かの二階調(二段階)の駆動状態のいずれかに定められる。ただし、上述のように、所定の量や所定速度には、ヘッドモジュール210ごとに微小なむらがある場合がある。
各ノズル27と当該ノズル27に各々対応する圧力発生機構26(ここでは、圧電素子)の組み合わせが各々本実施形態のインクジェット記録装置100における記録素子を構成する。記録素子がそれぞれ画素単位での記録動作、すなわち、ドット形成を行う。
【0036】
制御部40は、インクジェット記録装置100の全体動作を統括し、各部の動作を制御する。制御部40は、CPU41(Central Processing Unit)と、RAM42(Random Access Memory)などを備える。
【0037】
CPU41は、各種演算処理を行い、インクジェット記録装置100における出力対象画像の画像処理、記録媒体の搬送、インクの供給、インクの吐出やメンテナンス動作などの制御を行う。また、CPU41は、記憶部50から読み出されたプログラムに従って画像データ、各部のステータス信号やクロック信号などに基づく画像形成に係る種々の処理を行う。
【0038】
RAM42は、CPU41に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。RAM42には、不揮発性メモリーが含まれていてもよく、この不揮発性メモリーに記憶されるデータと記憶部50に記憶されるデータとは、適宜割り振られる。
制御部40は、本実施形態の画像データ処理装置に含まれる。
【0039】
記憶部50は、通信部71を介して外部から取得された画像形成に係るジョブデータ、及び制御部40の各種制御動作に係る制御プログラムや設定データなどを記憶する。ジョブデータやその処理データを一時記憶する構成としては、主にDRAMが用いられ、制御プログラムや設定データを記憶する構成としては、フラッシュメモリーといった不揮発性メモリーやHDD(Hard Disk Drive)などが用いられるが、これらに限られない。例えば、ジョブデータが不揮発性メモリーに記憶されてもよいし、初期プログラムや初期設定データなどは、書き換え更新のできないマスクROMなどに記憶されてもよい。制御プログラムには、ジョブデータで取得された形成対象とされる画像の画像データを必要に応じて画素単位の画像データ(画素配列データ)、すなわち、ビットマップデータやピクスマップデータなどに変換し、さらにヘッドモジュール210ごとに複数の圧力発生機構26をそれぞれ動作させる(記録素子を記録動作させる)か否か(駆動状態。ここでは、上述のように二段階のみ)に係る駆動設定情報が配列された駆動用画像データ(駆動用データ)に変換する変換処理プログラム51が含まれる。
【0040】
また、記憶部50に記憶されるデータには、変換処理プログラム51の実行時に参照される位置関係情報52及び振り分けマトリクス53(選択設定パターン)が含まれる。位置関係情報52は、各色8つ、全体で64個のヘッドモジュール210の相対的な位置関係に係る情報を含む。振り分けマトリクス53は、上述の重複部分において、いずれのヘッドモジュール210からインクを吐出可能とさせるかの振り分け(相補的、ここでは排他的な設定)に用いられる。
【0041】
画像読取部60のラインセンサー61には、幅方向について画像形成可能幅にわたって配列された複数の撮像素子を有する。撮像素子としては、例えば、CMOSセンサーやCCDセンサーが用いられる。ラインセンサー61は、カラー画像の読み取りが可能であり、例えば、RGBの3波長帯でそれぞれ撮像を行う。幅方向についての撮像素子の配列は、RGB各波長帯での撮像が適切に行われるように搬送方向について複数列に配列されていてよい。
【0042】
通信部71は、外部機器との間での通信動作を制御する通信インターフェイスである。通信インターフェイスとしては、例えば、LANカードなど、各種通信プロトコルに対応したものが一又は複数含まれる。通信部71は、制御部40の制御に基づいて外部機器から形成対象の画像データや画像形成に係る設定データ(ジョブデータ)を取得し、また、外部機器に対してステータス情報などを送信することができる。
【0043】
表示部72は、制御部40からの制御信号に応じて、インクジェット記録装置100のステータスや操作メニューなどの表示を行う。表示部72は、液晶画面(LCD)や有機EL画面(Electro-Luminescent)などの表示画面などを有する。表示部72は、これらに加えて、LEDランプなどを備えていてもよい。
【0044】
操作受付部73は、ユーザーの操作を受け付けて制御部40に出力する。操作受付部73は、例えば、表示画面に重ねて設けられたタッチセンサーなどを有する。操作受付部73は、受け付けられたユーザーのタッチ操作の種別や位置の情報を制御部40に出力する。操作受付部73は、押しボタンスイッチやテンキーなどを備えていてもよい。
【0045】
バス90は、制御部40と上記の各構成との間を電気的に接続して信号のやり取りを行う信号伝送経路である。
【0046】
次に、本実施形態のインクジェット記録装置100における画像形成動作について説明する。
上述のように、インクジェット記録装置100は、外部から受け付けられた形成対象画像データを必要に応じて各ノズル27のインク吐出有無に応じたドット配列、すなわち画素配列データに変換し、また、調整処理し、得られたデータを各圧力発生機構26の駆動用データに変換する。そして、当該駆動用データに応じて圧力発生機構26を動作させて、各ノズル27から記録媒体に対して適切なタイミングでインクを吐出させていくことで画像の形成を行う。
【0047】
得られた画素配列データは、各ヘッドモジュール210に振り分けられる。振り分け範囲(画素配列データにおける各ヘッドモジュール210の駆動用データの対応範囲)は、位置関係情報52に基づいて定められる。
【0048】
また、各ヘッドモジュール210のノズル配置範囲のうち他のヘッドモジュール210と幅方向について隣り合う範囲には、上述のように幅Baの重複部分を有する。当該重複部分では、いずれかのヘッドモジュール210に属するノズル27からインクの吐出を可能とさせるかを相補的に定めるために、振り分けマトリクス53が適用される。
【0049】
隣り合うヘッドモジュール210の間では、インクの吐出特性(速度やインク量)などに微妙な差が生じやすい。また、これら2つのヘッドモジュール210における対応するノズル27の開口部の位置には、幅方向について微妙な差が残る。したがって、振り分けを幅方向について急激に変化させると、その変化領域をまたいだ境界部分でこれらの差に応じた不連続が生じる。そこで、振り分けマトリクス53による振り分けは、上述のような微妙な差を目立たせないようになされる。
【0050】
図4は、インク吐出可能ノズルの振り分けについて説明する図である。
図4(a)に示すように、隣り合うヘッドモジュール210a、210bに係る重複部分では、ヘッドモジュール210aへの振り分け率Ra及びヘッドモジュール210bへの振り分け率Rbは、それぞれノズル配置範囲の中央から端部に向けて100%から0%に向けて徐々に低下していく。幅方向について同一位置での振り分け率Ra、Rbの和は、100%である。
【0051】
また、図4(b)には、振り分けマトリクス53を模式的に示している。ここでは、例えば、白い行列要素に応じた位置がヘッドモジュール210aのノズル27からのインク吐出に割り振られ、黒い行列要素に応じた位置がヘッドモジュール210bのノズル27からのインク吐出に割り振られる。すなわち、振り分け率は、搬送方向についての所定画素数の内での確率的な振り分け画素数により定まる値であり、重複部分では、この幅方向と搬送方向の二次元面内で振り分け先が分散される。振り分け先の分散のパターンは、分布の視認性への影響を考慮して、例えば、ブルーノイズなどに応じた空間周波数分布でなされればよい。
【0052】
振り分けマトリクス53は、重複部分について搬送方向に上記所定画素数ごとに繰り返し適用される。すなわち、画素配列データが各ヘッドモジュール210の駆動用データに振り分けられる際に、この振り分けマトリクス53をマスクとして、搬送方向について各行ごとに、画素データにかかわらずインクを吐出させない記録素子(圧力発生機構26及びノズル27)を定めてインク吐出なしの設定とする。
【0053】
次に、各ヘッドモジュール210の相対的な位置関係の同定について説明する。
上述のように形成対象画像に係る画素配列データに対する各ヘッドモジュール210の駆動用データの対応範囲を同定するには、位置関係情報52に含まれるヘッドモジュール210間の相対位置の情報が用いられる。相対位置の情報としては、ヘッドユニット21内における複数のヘッドモジュール210間の相対位置と、異なるヘッドユニット21間における幅方向について対応する位置のヘッドモジュール210間の相対位置とがある。
【0054】
図5は、ヘッドユニット21内のヘッドモジュール210間の相対位置合わせについて説明する図である。
ここでは、8色のヘッドユニット21にそれぞれユニット番号h=0~7が付されている。また、各ヘッドユニット21内の8つのヘッドモジュール210に対し、幅方向について一方の端部から順番にモジュール番号i=0~7が付されており、個々のヘッドモジュール210は、ユニット番号h及びモジュール番号iを用いてヘッドモジュール210[h、i]として特定される。また、各ヘッドモジュール210[h、i]には、それぞれ、ノズル27が「J0+1」本(例えば、2048本)設けられており、上述の一方の端部の側から幅方向について順番にノズル番号j=0~J0が付されている。個々のノズル27は、これらユニット番号h、モジュール番号i、及びノズル番号jを用いて、ノズル27[h、i、j]として特定される。
【0055】
インクジェット記録装置100では、まず、基準となるヘッドユニット21(基準記録動作部)、例えば、黒色(K色)のヘッドユニット21がユニット番号h=0とされる。このヘッドユニット21について、8個のヘッドモジュール210の位置関係を取得する。
【0056】
図5(a)に示すように、モジュール番号i≧1の各ヘッドモジュール210(ここでは、ヘッドモジュール210b)について、先頭のノズル27[0、i、0]が一つ前のヘッドモジュール210(ここでは、ヘッドモジュール210a)のどのノズル27[0、i-1、j]と対応するかを同定する。例えば、ノズル27[0、i、0]と幅方向についてインク吐出位置が重なるものとして本来設定されているノズル番号jに対し、ヘッドモジュール210のヘッドユニット21への取り付け精度に応じて想定され得るずれ量の最大値に応じた範囲で、ヘッドモジュール210[h、i-1]の各ノズル27からインクを吐出させ、また、ノズル27[0、i、0]からインクを吐出させて、それぞれ、記録媒体上に搬送方向へ伸びる直線を記録させる。これを画像読取部60により読み取らせ、ノズル27[0、i、0]と幅方向についての位置が最も近いノズル27[0、i-1、j]のノズル番号jが番号J1[i-1]として設定される。この場合、ヘッドモジュール210[h、i-1]において、ヘッドモジュール210[h、i]と重複していない(重複部分外にある)ノズル27の本数は、J1[i-1]であり、重複部分にあるノズル27の本数は、「J0-J1[i-1]+1」と同定される。ここでは、ノズル27[0、i、0]とノズル27[0、i-1、J1[i-1]]との間に微小差dw1(0.5×dp未満)が残っている。
【0057】
図5(b)に示すように、ヘッドモジュール210[0、0]の先頭のノズル27[0、0、0]に画素配列データにおける幅方向の一端から「0」番目の画素を割り当てるものとして固定すると、最後のノズル27[0、0、J0]には、当該一端からの順番が「J0」の画素が割り当てられる。すなわち、画素配列データにおけるヘッドモジュール210[0、0]の駆動用データの対応範囲は、画素配列順で「0」~「J0」となる。
【0058】
ヘッドモジュール210[0、i]の先頭のノズル27[0、i、0]は、上述の一端からの順番が「Σ(ik=0~i-1)J1[ik]」の画素、すなわち、一つ手前のヘッドモジュール210[0、ik](ik=i-1)までで、次のヘッドモジュール210[0、ik]のノズルと幅方向について重複しない範囲のノズル数J1[ik](ik=0~i-1)の和に対応することになる。また、ヘッドモジュール210[0、i]の最後のノズル27[0、i、J0]は、上述の一端からの順番が「Σ(ik=0~i-1)J1[ik]+J0」の画素に対応する。すなわち、画素配列データにおけるヘッドモジュール210[0、i](1≦i≦7)の駆動用データの対応範囲は、それぞれ、画素配列順で「Σ(ik=0~i-1)J1[ik]」~「Σ(ik=0~i-1)J1[ik]+J0」となる。
【0059】
次いで、インクジェット記録装置100では、基準となるヘッドユニット21の各ヘッドモジュール210において基準とされるノズル27[0、i、J2]が、これ以外のヘッドユニット21における対応するヘッドモジュール210[h、i]においていずれのノズル27[h、i、j]と対応するかを同定する。
【0060】
図6は、ヘッドユニット21間の各ヘッドモジュール210の位置関係について説明する図である。
図6(a)に示すように、基準ヘッドユニット21a(基準記録動作部;上記例では、K色のインクを吐出するヘッドユニット21)の各ヘッドモジュール210[0、h]におけるノズル27[0、h、J2](第2基準記録素子)によるインクの幅方向についての着弾位置に対し、基準ヘッドユニット21a(基準記録動作部)以外の非基準ヘッドユニット21b(ここでは、ユニット番号h=1~7)において、それぞれ最も近い着弾位置となるノズル27[h、i、j]を特定する。着弾位置は、図5の場合と同様に搬送方向に延びる線(画素(第2基準画素、比較画素)の連なり)を形成させて、当該線の位置を読み取ることで同定される。対応するノズル番号jは、全てのヘッドモジュール210及びヘッドユニット21が正確に取り付けられていれば、番号J2と等しくなる。実際には、ノズル27[0、i、J2]のインク着弾位置と、ノズル27[h、i、J2](第2比較記録素子)のインク吐出位置の間には、若干のずれがあり得るので、ヘッドモジュール210ごとに差dj[h、i](位置ずれ量、ずれ量)を伴って、ずれ分だけ手前(差dj[h、i]が負の場合には先)のノズル番号j=J2-dj[h、i]となる。この場合も、ノズル27[0、i、J2]によるインク吐出位置と、ノズル27[h、i、J2-dj[h、i]]によるインク吐出位置との間には、微小差dw2(0.5×dp未満)が残る。
【0061】
図6(b)に示すように、上述の場合には、ノズル27[h、i、j]に割り当てられる画素データは、ノズル27[0、i、j]に割り当てられる画素より差dj[h、i]だけずれたものとされることで、色ずれが抑制される。したがって、各ノズル27[h、i、0]~ノズル27[h、i、J0]にそれぞれ割り当てられる画素は、一端側からΣ(ik=0~i-1)J1[i]+dj[h、i]~Σ(ik=0~i-1)J1[i]+dj[h、i]+J0となる。すなわち、画素配列データにおけるこれらのヘッドモジュール210[h、i]の駆動用データの対応範囲は、この差dj[h、i]だけヘッドモジュール210[0、i]の対応範囲からずれることになる。
【0062】
最後に、非基準ヘッドユニット21bにおけるヘッドモジュール210間のずれを調整する。
【0063】
図7は、非基準ヘッドユニット21bにおけるヘッドモジュール210間のずれの同定について説明する図である。
上述の処理により、各ノズルには、画素配列データ上で最も適切な位置の画素データが割り当てられ、色ずれも抑制される。しかしながら、非基準ヘッドユニット21bでは、隣り合うヘッドモジュール210がそれぞれ有する差dj[h、i-1]、dj[h、i]の差分、及びヘッドモジュール210間にある微小差dw1、dw2が重複部分で加算されて(第1の調整及び第2の調整により)、隣り合うヘッドモジュール210間で0.5×dp以上のずれが生じる場合がある。すなわち、図7(a)に示すように、ノズル27[h、i-1、J1[i-1]]のインク着弾位置に最も近くにインク着弾させるノズル27がノズル27[h、i、0]と異なるものになる場合がある。ここでは、このずれを同定する。
【0064】
図7(b)に示すように、非基準ヘッドユニット21bにおける隣り合うヘッドモジュール210[h、i-1]、210[h、i]の重複部分において、一方のヘッドモジュール210[h、i-1]の基準ノズル27[h、i-1、J3](第1基準記録素子;J1[i-1]+a<J3<J0-a、aは想定されるずれ量(例えば、±1~2程度)の最大値以上の値であり、例えば、「3」)を中心に所定ノズル数間隔(ここでは、20個)で両側に複数本ずつ(例えば、上記のaに対応する3本ずつ)線(すなわち、複数画素=第1基準画素、の連なり)を形成させる(エリアAL[h、i-1])。また、他方のヘッドモジュール210[h、i]の基準ノズル27[h、i、J3-J1[i-1]](第1対応記録素子)を中心に、上記所定ノズル数間隔より一つ異なる間隔(ここでは1つ広い、すなわち、21個)で両側に同本数ずつ(所定範囲;3本ずつ)線(比較画素)を形成させる(エリアAL[h、i])。この形成された画像により、ここでは、ノズル27[h、i-1、J3+20]とノズル27[h、i、J3-J1[i-1]+21]とが幅方向について最も近いと判断されるので、ヘッドモジュール210[h、i]がヘッドモジュール210[h、i-1]よりも1ノズル分番号の小さい側(図内左側)に相対的にずれていることが分かる。実際には、このずれ量は整数には限られず、すなわち、いずれかの線の組が幅方向について同一位置になるとは限られないが、上述のように、最も近い線の組が選択されることで、最も近い整数値に四捨五入されることになる。
【0065】
なお、上記図5のJ1[i]、図6のdj[h、i]及び図7の位置ずれ量を同定するための各画像を画像記録部20により記録させて画像読取部60により読み取らせる場合には、一度に全ての画像を記録させてまとめて一度で読み取らせることとしてもよい。
【0066】
図8は、非基準ヘッドユニット21bにおけるヘッドモジュール210間の位置ずれによる振り分けずれについて説明する図である。
上述のように、重複部分では、当該重複部分に係る2つのヘッドモジュール210のいずれかによりインクが吐出されるように振り分けマトリクス53に従った振り分けがなされる。しかしながら、ヘッドモジュール210間で位置ずれがあると、振り分け位置にもずれが生じる。例えば、図8(a)に示すように、図4により示した振り分けマトリクス53の例に基づき、いずれかのノズルからインクが吐出される領域sdだけではなく、両方のノズルからインクが吐出可能となる領域ddと、いずれのノズルからもインクが吐出されない領域zdとが生じ、濃度むらとなる。
【0067】
本実施形態のインクジェット記録装置100では、非基準ヘッドユニット21bの重複部分では、対応する画素データの移動や変更を行わずに振り分けマトリクス53の適用範囲を相対移動させる調整を行う。すなわち、図7に示したように相対位置に1ノズル分(1画素分)以上のずれがある場合には、振り分けマトリクス53による一方のヘッドモジュール210(例えば、配列順で後ろの側のヘッドモジュール210[h、i])における振り分け先のノズル27を当該ずれの量の分だけそれぞれずらす。図8(b)の図表に示すように、各重複部分において振り分けマトリクス53による所定の一方のヘッドモジュール210に対する振り分け位置のずれ量が記憶され、振り分けマトリクス53の適用範囲が1つずつ変更される。
【0068】
なお、各ヘッドモジュール210におけるノズル配列の端部側へ振り分けマトリクス53の適用範囲が移動された場合、振り分けマトリクス53が適用される対象のノズルが存在しない場合が生じる。しかしながら、吐出対象となるノズルがなく、吐出されない場合は、図4に示したように、当該端部ではゼロに近いので、画質への悪影響は、十分に小さく抑制される。
【0069】
図9は、本実施形態のインクジェット記録装置100で実行される駆動用画像データ設定処理の制御部40による制御手順を示すフローチャートである。
【0070】
本実施形態における駆動用データのデータ出力設定調整方法(データ出力設定調整)であるこの駆動用データ出力設定処理は、画像形成命令(プリントジョブ)が取得されて形成対象画像データが各インク色ごとの各ドット画像データ(すなわち画素配列データ)に分解、生成処理された後に、引き続いて呼び出されて実行される。
【0071】
駆動用データ出力設定処理が開始されると、制御部40は、上述の図5図7の説明で示したテスト画像を画像記録部20により記録させ、画像読取部60により読み取らせる(ステップS101)。上述のように、制御部40は、これらの3つの計測値に係るテスト画像をまとめて形成させることができ、また、まとめて読み取らせることができる。制御部40は、予め定められた基準ヘッドユニット21a(例えば、K色インクを吐出するヘッドユニット21)について、隣り合うヘッドモジュール210(モジュール)間の位置関係(上述のノズル27[0、i、J1[i]]における番号J1[i]。すなわち、各ヘッドモジュール210(i=7以外)におけるノズル27の配列順について後ろ側の端部(所定の一つの側)での重複部分に含まれないノズル数を示す)を同定する(ステップS102)。ステップS101の図5に係るテスト画像の形成とステップS102の処理とにより、本実施形態のデータ出力設定調整方法における基準相対位置決定ステップが構成される。
【0072】
制御部40は、基準ヘッドユニット21aの各ヘッドモジュール210(モジュール)に対する画素配列データの割り当て画素範囲(画素配列データにおけるヘッドモジュール210の駆動用データの対応範囲)を設定(調整)する(ステップS103;第1の調整)。
【0073】
制御部40は、非基準ヘッドユニット21b(K色インク以外を吐出するヘッドユニット21)の各ヘッドモジュール210(モジュール)について、基準ヘッドユニット21aにおける同一の(対応する)モジュール番号iのノズル27の配列(ここでは、基準ノズル27[0、i、J2])との位置ずれ量(ここでは、ノズル27[h、i、J2+dj[h、i]]におけるずれdj[h、i])を同定する(ステップS104)。ステップS101の図6に係るテスト画像の形成とステップS104の処理とにより、本実施形態のデータ出力設定調整方法における位置ずれ量決定ステップが構成される。
【0074】
制御部40は、ずれdj[h、i]に基づいて、各非基準ヘッドユニット21bの各ヘッドモジュール210[h、i](モジュール)に対する画素配列データの割り当て画素範囲(画素配列データにおけるヘッドモジュール210[h、i]の駆動用データの対応範囲)を設定(調整)する(ステップS105;第2の調整)。
上記ステップS103及びステップS105の処理が本実施形態のデータ出力設定調整方法における範囲調整ステップを構成する。
【0075】
制御部40は、読取画像から、非基準ヘッドユニット21bについて、隣り合うヘッドモジュール210(モジュール)間での位置関係(形成位置)のずれ量(相対位置の計測値)を同定する(ステップS106)。ステップS101の図7に係るテスト画像の形成とステップS106の処理とにより、本実施形態のデータ出力設定調整方法における相対位置決定ステップが構成される。
[0063]
制御部40は、同定された位置ずれ量に基づいて、非基準ヘッドユニット21bにおける各ヘッドモジュール210[h、i](モジュール)に対して適用される振り分けマトリクス53の適用範囲をずらす(変更させる)設定を行う(ステップS107;パターン適用調整ステップ)。そして、制御部40は、駆動用データ出力設定処理を終了する。
【0076】
以上のように、本実施の形態は、複数のヘッドモジュール210が所定の幅方向について互いに異なる位置に設けられたヘッドユニット21を備え、複数のヘッドモジュール210には、それぞれ、画素単位で各々記録動作を行う複数の記録素子(ノズル27及び圧力発生機構26)が幅方向について所定のノズル間隔dpで配列され、幅方向について隣り合うヘッドモジュール210の間では、当該ヘッドモジュール210において複数のノズル27(の開口)が設けられた配列範囲の端部同士が幅方向について重複しており、幅方向に直交する搬送方向へのヘッドユニット21と記録媒体Mとの間での相対移動と、ヘッドユニット21の動作とによって記録媒体M上に画像を形成するインクジェット記録装置100による形成対象とされる画像の画素配列データに応じて、複数の記録素子の駆動設定を複数のヘッドモジュール210について各々定める複数の駆動用データのデータ出力設定調整方法である。このデータ出力設定調整方法は、隣り合うヘッドモジュール210に係る駆動用データの各々において、ノズル27の配列範囲の重複部分で幅方向の位置が対応するノズル27に係る記録素子の駆動状態をそれぞれ相補的に定める振り分けマトリクス53の駆動用データの各々に対する適用範囲を、隣り合うヘッドモジュール210の相対位置の計測値に応じて重複部分から変更するパターン適用調整ステップを含む。
このような調整方法を用いることで、画像データも振り分けマトリクス53も中身を変更することなく、振り分けマトリクス53の適用範囲のみを移動させる容易な処理で、重複部分における濃度むらや人工的な模様(モアレなど)の発生を抑えることができる。特に、おおもとのヘッドモジュール210間の位置関係に応じた画像の割り当てがなされた後にこの処理が行われることで、先に行われた処理による画像のゆがみの低減や色むらの抑制といった効果を相殺させずに効果的に濃度むらを抑えることができる。これにより、容易かつ安定して適切な出力画像の画質が得られる。
特に、このような容易な処理は、初期設定時やヘッドユニット21の交換時などだけでなく、インクジェット記録装置100の使用中の経時変化などに対応した微修正に有効である。このような処理により、安定して画像のゆがみと濃度むらを抑制し、長期間高画質の画像形成を継続させることができる。
【0077】
また、この駆動用データ出力設定処理では、隣り合う一方のヘッドモジュール210aにおいて重複部分に含まれる基準となるノズル27[h、i-1、J3]により画素(搬送方向に延びる線)を形成させ、隣り合う他方のヘッドモジュール210bにおいてノズル27[h、i-1、J3]と幅方向の位置が対応するノズル27[h、i、J3]を含む所定範囲のノズル27によりそれぞれ比較画素(搬送方向に延びる線)を形成させ、ノズル27[h、i-1、J3]による画素の形成位置に対するノズル27[h、i、J3]による比較画素の形成位置のずれ量に応じて、ヘッドモジュール210aとヘッドモジュール210bの相対位置を決定する相対位置決定ステップ(ステップS101、S106)を含む。
このように、実際の画素形成位置のずれを求め、このずれに応じて上記のように振り分けマトリクス53の適用範囲を変更するので、確実に振り分けマトリクス53の適用範囲を最適化して、実質上相補的とすることができる。
【0078】
また、選択設定パターンは、幅方向の位置が対応するノズル27のいずれによりインク吐出動作を可能とさせるかを排他的に定める。
すなわち、重複部分の各ノズル27について、インク吐出動作の可否のみが二値的に定められる。このような場合に、位置ずれにより排他的な位置関係から大きく外れてインクが吐出されると、濃度むらが目立つので、上記のように最も排他的な位置関係となるように振り分けマトリクス53の適用範囲を変更することで、容易かつより安定して適正な画質の画像を形成することができる。
【0079】
また、この駆動用データ出力設定処理では、複数のヘッドモジュール210におけるノズル27の配列範囲に係る相対位置の計測値に対応して、画素配列データにおける複数の駆動用データの対応範囲をそれぞれ調整する範囲調整ステップ(ステップS103、S105)を含む。
このように、そもそもヘッドモジュール210の配置間隔に不均一がある場合には、元の画像データに対する対応範囲を調整することで、画像のゆがみを最小限として適正に各ヘッドモジュール210の各ノズル27からその位置関係に応じたインク吐出を行わせることができる。また、このような場合でも、その後の経時的な多少のずれの発生や、上記実施形態のように、色ずれの調整により加算的に生じてしまうずれに対して、上記パターン適用調整ステップによる調整を行うことで、より容易かつより安定して濃度ムラの抑制された適正な画質の画像を形成することができる。
【0080】
また、インクジェット記録装置100は、搬送方向について互いに異なる位置に設けられている複数のヘッドユニット21を備える。範囲調整ステップは、ヘッドユニット21のうち所定の基準となる基準ヘッドユニット21aについて、複数のヘッドモジュール210の対応範囲の調整を行う第1の調整(ステップS103)と、非基準ヘッドユニット21bにおける複数のヘッドモジュール210と、複数のヘッドモジュール210にそれぞれ対応する基準ヘッドユニット21aのヘッドモジュール210との位置ずれ量に応じて対応範囲の調整を行う第2の調整(ステップS105)と、を含む。パターン適用調整ステップ(ステップS107)では、非基準ヘッドユニット21bにおける複数のヘッドモジュール210について、範囲調整ステップで第1の調整(ステップS103)及び第2の調整(ステップS105)により生じるずれに応じて適用範囲を変更する。
すなわち、上記2つの処理で、各ノズル27のインク吐出設定は、出力対象画像に合わせて最適化されて、色ずれも抑えられるが、それぞれ、0.5画素未満の微小なずれが残る。非基準ヘッドユニット21bのヘッドモジュール210の重複部分では、これらのずれが加算されて0.5画素以上となることがあり、振り分けマトリクス53の適用位置にずれが生じることになる。したがって、この重複部分におけるずれ量に応じて適用位置を調整することで、画像のゆがみや色ずれの抑制効果を維持したまま、重複部分の色むらの発生を抑制することができる。これにより、容易により安定して画質を適正に維持することができる。
【0081】
また、駆動用データ出力設定処理は、基準ヘッドユニット21aの各ヘッドモジュール210においてそれぞれ幅方向について後端側で隣り合うヘッドモジュール210がある場合に(すなわち、ヘッドモジュール210[0、7]を除くヘッドモジュール210[0、i])、隣り合うヘッドモジュール210[0、i+1]と重複している部分に含まれないノズル27の数J1[i]を同定することで、基準ヘッドユニット21aにおける相対位置を取得する基準相対位置決定ステップ(ステップS101、S102)、基準ヘッドユニット21aの各ヘッドモジュール210における所定のノズル27[0、i、J2]によりそれぞれ画素(搬送方向に延びる直線)を形成させ、非基準ヘッドユニット21bにおいてノズル27[0、i、J2]とそれぞれ幅方向についての位置が対応するノズル27[h、i、J2]を含む複数の画素によりそれぞれ比較画素(搬送方向に延びる直線)を形成させ、ノズル27[0、i、J2]による形成位置に対するノズル27[h、i、J2]による画素の形成位置のずれ量dj[h、i]をそれぞれ同定することで、基準ヘッドユニット21aのヘッドモジュール210[0、i]に対する非基準ヘッドユニット21bのヘッドモジュール210[h、i]の位置ずれ量をそれぞれ取得する位置ずれ量決定ステップ(ステップS101、S104)を含む。
このように、基準ヘッドユニット21a内の位置関係及び基準ヘッドユニット21aと非基準ヘッドユニット21bとの位置関係を二次元的に網羅することで、容易かつ確実に各ヘッドユニット21位置関係が同定される。これにより、色ずれや形成画像のゆがみを抑えることができる。そしてさらに上述のように非基準ヘッドユニット21bでのヘッドモジュール210間での位置ずれに応じた振り分けマトリクス53の適用範囲を調整するので、形成画像の色ずれ、ゆがみ及び濃度むらをバランスよく抑制することができる。
【0082】
また、複数のヘッドユニット21は、各々異なる色の画素を形成し、画素配列データは、当該異なる色ごとに生成されている。すなわち、上記実施の形態では、異なる色間での形成画像の色ずれを効果的に抑えながら同時に重複部分での濃度むらやモアレなどの発生を抑制することができる。
【0083】
また、ヘッドユニット21は、ラインヘッドである。複数のヘッドモジュール210が組み合わせて長尺ヘッドによるラインヘッドに対して上記技術を用いることで、高速な画像処理と、安定したが高画質と、相対位置ずれに係るメンテナンス調整の容易化とを並立させることができる。
【0084】
また、本実施形態の画像データ処理装置は、上述のように、複数のヘッドモジュール210が所定の幅方向について互いに異なる位置に設けられたヘッドユニット21を備え、複数のヘッドモジュール210には、それぞれ、画素単位で各々記録動作を行う記録素子、すなわち、複数のノズル27及び各ノズル27からインクを吐出させる圧力発生機構26が幅方向について所定の間隔dpで配列され、幅方向について隣り合うヘッドモジュール210の間では、当該ヘッドモジュール210において複数のノズル27が設けられた配列範囲の端部同士が幅方向について重複しており、幅方向に直交する搬送方向への記録媒体Mの相対移動と、ヘッドユニット21の動作とによって当該記録媒体M上に画像を形成するインクジェット記録装置100による形成対象とされる画像の画素配列データに応じて、前記複数の記録素子の駆動設定を複数のヘッドモジュール210について各々定める複数の駆動用データのデータ出力設定調整を行う制御部40を備える。制御部40は、隣り合うヘッドモジュール210に係る駆動用データの各々において、ノズル27の配置範囲の重複部分で幅方向の位置が対応する記録素子の駆動状態をそれぞれ相補的に定める振り分けマトリクス53の当該駆動用データの各々に対する適用範囲を、隣り合うヘッドモジュール210の相対位置の計測値に応じて、元の重複部分から変更する。
このような駆動データの調整処理を行うことで、インクジェット記録装置100により、容易に画像のゆがみや濃度むらを抑制した適正な画像の出力を維持することができる。
【0085】
また、本実施形態のインクジェット記録装置100(画像形成装置)は、上述の画像データ処理装置の対象となるインクジェット記録装置であって、複数のヘッドモジュール210が幅方向について互いに異なる位置に設けられたヘッドユニット21と、制御部40と、を備える。複数のヘッドモジュール210には、それぞれ、画素単位で各々記録動作を行う複数の記録素子(ノズル27及び圧力発生機構26)が幅方向について所定の間隔dpで配列され、幅方向について隣り合うヘッドモジュール210の間では、当該ヘッドモジュール210において複数のノズル27が設けられた配列範囲の端部同士が幅方向について重複している。制御部40は、形成対象とされる画像の画素配列データに応じて、複数の記録素子の駆動設定を複数のヘッドモジュール210について各々定める複数の駆動用データを生成し、幅方向に直交する搬送方向へヘッドユニット21と記録媒体Mとの間で相対移動させ、かつ複数の駆動用データに基づいてヘッドユニット21を動作させることによって記録媒体M上に画像を形成する。制御部40は、隣り合うヘッドモジュール210に係る駆動用データの各々において、ノズル27の配置範囲の重複部分で幅方向の位置が対応するノズル27(記録素子)の駆動状態をそれぞれ相補的に定める振り分けマトリクス53の当該駆動用データの各々に対する適用範囲を、隣り合うヘッドモジュール210の相対位置に応じて本来の重複部分から変更するデータ出力設定調整を行う。
このように、上述の処理が可能なインクジェット記録装置100では、容易に画像のゆがみや濃度むらを抑制可能に調整を行うことができ、適正な画像の出力を維持することができる。
【0086】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、一度上述の対応範囲の調整と、適用範囲の調整とが行われたヘッドユニットに対して、経時的な変化に応じた微調整を行う場合などには、適用範囲の調整のみが単独で行われてもよい。また、この場合、全てのヘッドユニット21に対して調整が行われなければならないわけではない。問題が生じたと思われるヘッドユニット21のみを選択的して調整を行ってもよい。
【0087】
また、色ずれ補正などの方法は、上記実施形態で示したものに限られない。例えば、ヘッドユニット21間のヘッドモジュール210の相対位置ずれ量に応じて画素を挿入したり削除したりして一度調整がなされた画像を再調整する場合などに上記実施形態で示した方法に従って振り分けマトリクス53の適用範囲の調整がなされてもよい。
【0088】
また、上記実施の形態では、各ノズル27からインクが吐出されるか否かのみの二段階での動作切り替えがなされたが、複数の液滴量の設定がなされてもよい。この場合、重複部分における振り分けは、吐出動作の可否を排他的に切り替えるだけではなく、上限値の合計が一ノズルから吐出可能な最大液滴量となるように振り分けられてもよい。
【0089】
また、上記実施の形態では、複数のヘッドユニット21から異なる色のインクを吐出する場合における色ずれを例に挙げて説明したが、同一の色のインクを吐出するヘッドユニットや透明な異なる用途の液滴が吐出されるヘッドユニットが含まれていてもよく、また、ヘッドユニットが1つであってもよい。
【0090】
また、上記実施の形態では、画像読取部60による読み取り結果に基づいて制御部40がずれ量などの同定や、調整量の算出設定などを行うこととしたが、ユーザーが読み取って操作受付部73により入力操作を行い、当該入力結果に基づいて制御部40が調整量の算出を行ってもよい。あるいは、ユーザーによって求められた調整量の入力結果に応じて制御部40が振り分けマトリクス53の適用範囲を変更するだけであってもよい。
【0091】
また、上記実施の形態では、ラインヘッドとして説明したが、ヘッドユニットを走査させて画像を形成する画像形成装置であっても複数のヘッドモジュールが走査方向に垂直な方向に配列されたものであれば、同一の課題が生じ、上記で開示した技術により当該課題を解決することができる。
【0092】
また、上記実施の形態では、インクジェット記録装置を例に挙げて説明したが、多数の記録素子が複数のヘッドモジュールにそれぞれ配列されたヘッドユニットを有する画像形成装置、例えば、LED素子が記録素子として配列されたLEDプリンターなどにおいても上記実施の形態と同様に振り分けマトリクス53の適用範囲の調整や、ヘッドモジュール210に対応する形成対象の画像データの範囲の設定を行うことができる。
その他、上記実施の形態で示した構成、配置、処理内容や手順などの具体的な細部は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0093】
10 搬送部
11 駆動ローラー
12 搬送駆動部
14 搬送ベルト
20 画像記録部
21 ヘッドユニット
21a 基準ヘッドユニット
21b 非基準ヘッドユニット
210、210a、210b ヘッドモジュール
211 記録ヘッド
22 キャリッジ
23 キャリッジ昇降部
232 昇降モーター
233 電磁ブレーキ
234 梁部材
235 支持部
24 キャリッジ駆動部
25 ヘッド駆動部
26 圧力発生機構
27 ノズル
30 インク貯留部
31 インクタンク
32 ラック
40 制御部
41 CPU
42 RAM
50 記憶部
51 変換処理プログラム
52 位置関係情報
53 振り分けマトリクス
60 画像読取部
61 ラインセンサー
71 通信部
72 表示部
73 操作受付部
90 バス
100 インクジェット記録装置
図1
図2
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図9