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7020222活性エネルギー線硬化型ハードコート剤、硬化塗膜、積層フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型ハードコート剤、硬化塗膜、積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09D 4/02 20060101AFI20220208BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220208BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20220208BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220208BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
C09D4/02
C09D7/61
C09D133/14
B32B27/30 A
B32B27/20 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018053771
(22)【出願日】2018-03-22
(65)【公開番号】P2018159067
(43)【公開日】2018-10-11
【審査請求日】2020-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2017056876
(32)【優先日】2017-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐貫 穂高
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 仁宣
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 浩壽
(72)【発明者】
【氏名】澤田 浩
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-030275(JP,A)
【文献】特開2010-215843(JP,A)
【文献】国際公開第2012/018087(WO,A1)
【文献】特開2009-286972(JP,A)
【文献】特開2011-157436(JP,A)
【文献】特開2010-024447(JP,A)
【文献】特開2009-242647(JP,A)
【文献】特開2011-201938(JP,A)
【文献】国際公開第2012/073659(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0361293(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 4/02
C09D 7/61
C09D 133/14
B32B 27/30
B32B 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基含有モノ(メタ)アクリレートを含むモノマー成分のラジカル重合体(a1-1)及びα,β-不飽和カルボン酸(a1-2)の反応物である水酸基含有(メタ)アクリル共重合体(a1)、又は、
前記水酸基含有(メタ)アクリル共重合体(a1)及び少なくとも3つの(メタ)アクリロイル基を有する水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(a2)、を含む水酸基濃度が0.8mmol/g以上の多官能(メタ)アクリレート類(A)と、
表面シラノール基濃度が100~200μmol/gである親水性シリカ微粒子(B)を、
固形分質量比((A)/(B))で50/50~90/10で含む、活性エネルギー線硬化型ハードコート剤(ただし、分子中に1または2個のビニル基を含有するリン酸化合物を除く。)。
【請求項2】
(A)成分と(B)成分の固形分質量比((A)/(B))が50/50~70/30である、請求項1の活性エネルギー線硬化型ハードコート剤。
【請求項3】
(B)成分の平均一次粒径が10~50nmである、請求項1又は2の活性エネルギー線硬化型ハードコート剤。
【請求項4】
さらに、光重合開始剤(C)を含有する請求項1~3のいずれかの活性エネルギー線硬化型ハードコート剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかのハードコート剤の硬化塗膜。
【請求項6】
表面張力が44~48dyn/cmである請求項5の硬化塗膜。
【請求項7】
請求項5又は6の硬化塗膜を有する積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種物品の表面に高い表面張力の硬化塗膜を形成可能な活性エネルギー線硬化型ハードコート剤、並びに該ハードコート剤より得られる硬化塗膜及び該硬化塗膜を有する積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線硬化型ハードコート剤は、各種物品に塗工し、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより容易に硬化し、高硬度で耐擦傷性、透明性などに優れた硬化塗膜(ハードコート塗膜)を形成する。そのため各種プラスチック、ガラス、紙などの基材の表面を保護するために広く用いられている。
【0003】
しかし、従来のハードコート塗膜はリコート性が悪く、粘着フィルムの粘着層を密着させたり、塗料及び印刷インキ等を塗工したりすることが困難であった(特許文献1、2参照)。この原因として、一般的にハードコート塗膜は表面張力が低く、粘着フィルム、塗料及び印刷インキとの密着性が悪いためとされている。
【0004】
前記課題に関し、特許文献3の積層フィルムは、粘着層に貼り合わせるハードコート層に親水性添加剤を含めることに依り、該ハードコート層の表面張力を向上させ、両層の密着性を改善している。
【0005】
しかしながら、前記ハードコート層の表面張力は未だ低いものであった。また、該ハードコート層に高い表面張力を持たせるためには、ハードコート層へのコロナ放電処理や、親水性添加剤を含んだ粘着層を貼り合わせて、該ハードコート層への親水性添加剤の移行処理が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-170979号公報
【文献】特開2009-161609号公報
【文献】特開2016-126451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、各種物品の表面に、高い表面張力を有する硬化塗膜を形成し得る、新規な活性エネルギー線硬化型ハードコート剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は検討の結果、所定の多官能アクリレート類及び所定の親水性シリカ微粒子を、特定の質量比で含む活性エネルギー線硬化型ハードコート剤によって、前記課題を解決できることを見出した。即ち本発明は、以下の活性エネルギー線硬化型ハードコート剤、該ハードコート剤より得られる硬化塗膜及び該硬化塗膜を有する積層フィルムに関する。
【0009】
1.エポキシ基含有モノ(メタ)アクリレートを含むモノマー成分のラジカル重合体(a1-1)及びα,β-不飽和カルボン酸(a1-2)の反応物である水酸基含有(メタ)アクリル共重合体(a1)、及び/又は、少なくとも3つの(メタ)アクリロイル基を有する水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(a2)、を含む水酸基濃度が0.8mmol/g以上の多官能(メタ)アクリレート類(A)と、
表面シラノール基濃度が60~200μmol/gである親水性シリカ微粒子(B)を、
固形分質量比((A)/(B))で20/80~90/10で含む、活性エネルギー線硬化型ハードコート剤。
【0010】
2.(B)成分の表面シラノール基濃度が100~200μmol/gである、前記項1の活性エネルギー線硬化型ハードコート剤。
【0011】
3.(A)成分と(B)成分の固形分質量比((A)/(B))が30/70~70/30である、前記項1又は2の活性エネルギー線硬化型ハードコート剤。
【0012】
4.(B)成分の平均一次粒径が10~50nmである、前記項1~3のいずれかの活性エネルギー線硬化型ハードコート剤。
【0013】
5.さらに、光重合開始剤(C)を含有する前記項1~4のいずれかの活性エネルギー線硬化型ハードコート剤。
【0014】
6.前記項1~5のいずれかのハードコート剤の硬化塗膜。
【0015】
7.表面張力が44~48dyn/cmである前記項6の硬化塗膜。
【0016】
8.前記項6又は7の硬化塗膜を有する積層フィルム。
【発明の効果】
【0017】
本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート剤は、コロナ放電処理などの追加工程を要さずに、例えば44~48dyn/cm程度の高い表面張力の硬化塗膜(ハードコート塗膜)を与える。そして、該ハードコート塗膜は耐久性にも優れており、該塗膜を加熱処理して表面をアルコール等で拭き取っても、高い表面張力を持続する。また、該ハードコート塗膜の表面からは親水性シリカ微粒子の欠落も無い。さらに、該ハードコート塗膜は、塗膜表面が平滑であり、ゆず肌(オレンジピール)、ピンホール等の発生が抑制されているため、塗膜外観に優れたものとなる。
【0018】
本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート剤によれば、ガラス、紙、プラスチックフィルム及び成形体などの各種物品に高い表面張力のハードコート塗膜を積層出来る。また、該塗膜を積層したフィルムは良好なリコート性を示し、ハードコート剤、塗料、印刷インキ及び粘着層に対して密着性が高く、それらを積層する用途において好適なフィルムとなり得る。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート剤(以下、ハードコート剤)は、所定の多官能アクリレート類(A)(以下、(A)成分)及び所定の親水性シリカ微粒子(B)(以下、(B)成分)を、特定の質量比で含む組成物である。
【0020】
(A)成分は、分子内に水酸基を有し、かつ特定の水酸基濃度を有する多官能(メタ)アクリレート類であれば、各種公知のものを特に制限なく使用できる。具体的には、(A)成分の水酸基濃度が通常0.8mmol/g以上、好ましくは1.6~4.7mmol/g程度、より好ましくは2.0~4.7mmol/g程度となる範囲であれば良い。ここでいう水酸基濃度は、(A)成分中の水酸基数と分子量から算出される値である。具体的には、(A)成分がポリマー以外の場合は、{(A)成分1mol中に含まれる水酸基mol数/(A)成分の分子量}から算出される値であり、また、(A)成分が混合物の場合は、各含有成分で算出した水酸基濃度をそれぞれの含有比率で乗じて、総和した値である。(A)成分がポリマーならば、{(A)成分の繰り返し構造1mol中に含まれる水酸基mol数/(A)成分の繰り返し構造の式量}から算出される値である。水酸基濃度が該範囲であれば、前記ハードコート剤より形成される硬化塗膜(以下、ハードコート塗膜)は高い表面張力を有し、また塗膜外観に優れたものが得られる。理由は不明だが、該塗膜表面に(A)成分の水酸基が配向して、該塗膜の表面張力が高くなるためと推定され、また該水酸基濃度を有する(A)成分は(B)成分に対する相溶性が良好になって、基材にハードコート剤を平滑に塗工でき、さらに(B)成分の凝集も抑制されるためと推定される。
【0021】
(A)成分としては、エポキシ基含有モノ(メタ)アクリレートを含むモノマー成分のラジカル重合体(a1-1)(以下、(a1-1)成分)、及びα,β-不飽和カルボン酸(a1-2)(以下、(a1-2)成分)の付加反応物である水酸基含有(メタ)アクリル共重合体(以下、(a1)成分)、及び/又は、少なくとも3つの(メタ)アクリロイル基を有する水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(a2)(以下、(a2)成分)、を用いる。
【0022】
(a1)成分は、分子中に複数の水酸基と(メタ)アクリロイル基を含有する共重合体であり、(B)成分と組み合わせることにより、高い表面張力と硬度、及び優れた耐擦傷性を有する前記ハードコート塗膜を与える。
【0023】
(a1)成分の水酸基濃度は、(A)成分の前記水酸基濃度を充足する限り特に限定されないが、前記ハードコート塗膜の表面張力及び塗膜外観の観点から、具体的には通常0.8mmol/g以上、好ましくは1.6~4.7mmol/g程度、より好ましくは2.0~4.7mmol/g程度となる範囲であれば良い。また、(a1)成分の重量平均分子量も特に制限されないが、該塗膜の硬度や耐擦傷性の観点から、通常1,000~100,000程度、好ましくは10,000~50,000程度となる範囲であれば良い。ここでいう重量平均分子量は、ゲルパーメーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算値である。
【0024】
(a1―1)成分のエポキシ基含有モノ(メタ)アクリレートとは、分子内に少なくとも1個のエポキシ基と1個の重合性不飽和二重結合を有する化合物である。具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド(すなわち、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン)などが挙げられる。これらはそれぞれを単独で、または2種以上を併用して配合してもよい。これらのうち、入手容易性と調達コストの面から、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0025】
(a1―1)成分を構成するモノマー成分には、前記エポキシ基含有モノ(メタ)アクリレートの他に共重合可能なモノマーを含めてもよい。該モノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル類、エトキシ化o-フェニルフェノールアクリレートなどの芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステル類、アクリロイルモルフォリンなどの窒素含有アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族系ビニル化合物、酢酸ビニル、及びいずれか一方の末端に不飽和二重結合を有し、エポキシ基及びカルボキシル基を含有しないマクロモノマー等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を併用して配合してもよい。
【0026】
(a1-2)成分としては、(a1-1)成分のエポキシ基と付加反応できるα,β-不飽和カルボン酸ならば、各種公知のものを特に限定なく使用することができる。具体的には、(メタ)アクリル酸等のα,β-不飽和モノカルボン酸、マレイン酸やフマル酸等のα,β-不飽和ジカルボン酸などが挙げられる。これらはそれぞれを単独で、または2種以上を併用してもよい。これらのうち、前記(a1-1)成分との反応性や貯蔵安定性の観点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0027】
(a2)成分は、(a1)成分以外の多官能(メタ)アクリレート類であり、1分子中に少なくとも3つの(メタ)アクリロイル基と、少なくとも一つの水酸基を含有する(メタ)アクリレートを含むものであれば、各種公知のものを特に限定なく使用することができる。具体的には、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の分子中に1つ以上の水酸基及び3つ以上の(メタ)アクリロイル基を含むポリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の分子中に1つ以上の水酸基及び3つ以上の(メタ)アクリロイル基を含むポリトリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらはそれぞれを単独で、または2種以上を併用して配合してもよい。2種以上使用する場合の各多官能(メタ)アクリレート成分の使用割合は、特に制限されない。
【0028】
(a2)成分は、水酸基を含まないポリ(メタ)アクリレート類を含んでもよい。該ポリ(メタ)アクリレート類としては、具体的には、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の分子中に水酸基を含まないポリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の分子中に水酸基を含まないポリトリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。(a2)成分における該ポリ(メタ)アクリレート類の含有量は、特に限定されないが、通常10~50質量%程度である。
【0029】
(a2)成分の市販品としては、例えば、アロニックスM-303、M-305、M-306、M-400、M-402、M-403、M-404、M-405、M-406(全て東亞合成(株)製)、NKエステルA-9530、A-9550、A-9550W、A-9570W、A-TMM-3、A-TMM-3L、A-TMM-3LM-N(全て新中村化学工業(株)製)等が挙げられ、これらはそれぞれを単独で、または二種以上を併用できる。
【0030】
(a2)成分の水酸基濃度は、(A)成分の前記水酸基濃度を充足する限り特に限定されないが、前記ハードコート塗膜の表面張力及び塗膜外観の観点から、通常0.8mmol/g以上、好ましくは1.6~4.7mmol/g程度、より好ましくは2.0~4.7mmol/g程度となる範囲であれば良い。
【0031】
(a1)成分と(a2)成分は、それぞれを単独で、または併用して使用することが出来る。併用する場合、それらの質量比は特に限定されないが、ハードコート性や硬化性の観点から通常1/99~80/20程度、好ましくは5/95~50/50程度となる範囲であればよい。
【0032】
(B)成分は、その表面に存在するシラノール基(以下、表面シラノール基)の濃度(以下、表面シラノール基濃度)が特定の範囲であるシリカ微粒子であれば、各種公知のものを特に制限なく使用できる。当該表面シラノール基濃度は、ハードコート塗膜に高い表面張力を付与できる範囲であるのがよく、具体的には、通常60~200μmol/g程度、好ましくは100~200μmol/g程度、より好ましくは120~200μmol/g程度となる範囲であればよい。ここでいう表面シラノール基濃度は、メチルレッド吸着法から求めた値である。メチルレッド吸着法は、例えば、The Journal of the American Chemical Society, 72, 776~782 (1950)、工業化学雑誌 第68巻 第3号 429~432(1965)等に記載されている方法である。
【0033】
(B)成分には、表面シラノール基が多く存在しており、当該表面シラノール基は親水性のため、(B)成分は高い親水性を有する。本発明のハードコート剤に(B)成分が含まれることで、前記ハードコート塗膜は高い表面張力を有する。理由は不明だが、該塗膜表面に表面シラノール基が配向することで、該塗膜の表面張力が高くなるためと推定される。
【0034】
(B)成分の粒子径は、特に制限されないが、平均一次粒径が通常10~50nm程度、好ましくは10~20nm程度の範囲に制御されたものであればよい。当該粒径は、BET法によって計測された平均一次粒径である。該粒径がこの範囲であれば、ハードコート塗膜に高い表面張力を付与することが出来る。
【0035】
(B)成分としては、表面シラノール基濃度が前記範囲であれば、各種公知のものを特に限定なく使用することができる。具体的には、湿式法で製造されるコロイダルシリカや、乾式法で製造されるフュームドシリカなどが挙げられる。また(B)成分は、表面シラノール基濃度が前記範囲であれば、シリカ表面の一部が有機物等で修飾されているものでもよく、シリカ表面が修飾されていないもの(表面未処理シリカ)でもよい。
【0036】
コロイダルシリカは、具体的には水を分散媒とした水性コロイド、またはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールもしくはプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの親水性溶媒にコロイド状に分散させたオルガノゾルの形態であるもの(例えば、オルガノシリカゾル)等が挙げられる。フュームドシリカは、乾式法で作製された非晶質のシリカであり、ケイ素を含む揮発性化合物を気相で反応させることにより得ることができる。具体的には、例えば、四塩化ケイ素(SiCl4)等のケイ素化合物を酸素と水素の炎中で加水分解して生成されたもの等が挙げられる。
【0037】
前記コロイダルシリカの市販品としては、例えば、スノーテックス、MA-ST-M、MA-ST-L、IPA-ST、IPA-ST-L、IPA-ST-ZL、IPA-ST-UP、PGM-ST(全て日産化学工業(株)製)、クォートロン(扶桑化学工業(株)製)、アエロジル(日本アエロジル(株)製)、シルデックス(旭硝子(株)製)、シリシア470(富士シリシア化学(株)製)等が挙げられる。
【0038】
本発明のハードコート剤において、(A)成分及び(B)成分の固形分換算での質量比(以下、(A)/(B))は、ハードコート塗膜に高い表面張力を付与できて、該塗膜の耐久性が高い範囲であればよい。具体的には、(A)/(B)が通常20/80~90/10程度、好ましくは30/70~70/30程度となる範囲であるのがよい。20/80未満では、該塗膜が脆くなり、塗膜表面から(B)成分の欠落が見られる。90/10を超えると、該塗膜の表面張力が低くなる。
【0039】
本発明のハードコート剤には、必要に応じて、光重合開始剤(C)(以下、(C)成分)を含めてよい。(C)成分は、活性エネルギー線により分解してラジカルを発生して重合を開始させることができるものであれば、各種公知のものを特に限定なく使用することができる。具体的には、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-シクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、4-メチルベンゾフェノン等が挙げられる。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組合せて用いることができる。
【0040】
(C)成分の市販品としては、例えば、Irgacure 651、Irgacure 184、Irgacure 1173、Irgacure 2959、Irgacure 127、Irgacure 907、Irgacure 369、Irgacure 819、Irgacure TPO(全てBASF社製)、Omnirad 651、Omnirad 184、Omnirad 1173、Omnirad 2959、Omnirad 127、Omnirad 907、Omnirad 369、Omnirad 819、Omnirad TPO(全てIGM Resins社製)、Speedcure TPO、Speedcure MBP(全てLambson社製)等が挙げられ、これらはそれぞれを単独で、または二種以上を併用できる。
【0041】
(C)成分の使用量は特に限定されないが、通常、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部(固形分換算)に対して0.1~20質量部(固形分換算)程度となる範囲であればよい。
【0042】
本発明のハードコート剤は、更に必要に応じて(A)成分以外の多官能アクリレート類(D)(以下、(D)成分)を含めてもよい。(D)成分は、1分子中に(メタ)アクリロイル基を少なくとも2個有する(メタ)アクリレートであれば、各種公知のものを特に限定なく使用することができる。具体的には、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリ(繰り返し数1~3)プロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリ(繰り返し数1~3)エトキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリ(繰り返し数1~4)プロポキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリ(繰り返し数1~4)エトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(繰り返し数1~6)プロポキシヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(繰り返し数1~6)エトキシヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリ(繰り返し数1~4)プロポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリ(繰り返し数1~4)エトキシジ(メタ)アクリレート、さらにはε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等、が挙げられる。これらはそれぞれを単独で、または2種以上を併用してもよい。ハードコート性及び硬化性の点から好ましくは、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートである。
【0043】
前記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、多価のイソシアネート化合物とポリオールを反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物に、水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート、多価イソシアネート化合物と1つの水酸基を含有する(メタ)アクリレート化合物を反応させて得られる分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0044】
前記ポリオールとしては、2個以上の水酸基を有するものであれば特に限定されず、例えば(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、ビスフェノ-ルA、S、F等が挙げられる。また、ポリ(エチレン-プロピレン)グリコール等の2種以上のアルキレンオキシド骨格を有する2価アルコールであってもよい。
【0045】
(D)成分の使用量は、特に限定されないが、通常、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部(固形分換算)に対して5~95質量部(固形分換算)程度となる範囲であればよい。
【0046】
本発明のハードコート剤は、更に必要に応じて添加剤を配合することもできる。前記添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、表面調整剤、防汚染剤、顔料、帯電防止剤、金属酸化物微粒子分散体が挙げられる。
【0047】
本発明の硬化塗膜(ハードコート塗膜)は、本発明のハードコート剤に活性エネルギー線を照射することにより硬化させて得られる。活性エネルギー線としては、光(紫外線などの光線)、電子線、X線、α線、β線、γ線、中性子線等が挙げられる。
【0048】
本発明のハードコート塗膜は、高い表面張力のためにリコート性が良好であり、各種コーティング剤、塗料、印刷インキ及び粘着層との密着性が高い。該塗膜の表面張力は特に限定されないが、前記リコート性の観点から、具体的には、通常44~48dyn/cm程度、好ましくは46~48dyn/cm程度となる範囲であれば良い。44dyn/cm未満であれば、該塗膜のリコート性が悪くなる。48dyn/cmを超えると、剥離フィルム・シートや保護フィルム・シートにおいて粘着層と接する側に該塗膜を積層した場合に、該フィルム・シートの重剥離化や粘着剤からの糊残りが発生する。該塗膜の表面張力は、JIS K6768 に準拠した測定値であり、例えば、Arcotest社製の表面エネルギー値評価用テストペン(ダインペン)を用いて測定する。
【0049】
前記ハードコート塗膜は耐久性にも優れており、該塗膜を加熱処理して表面をアルコール等で拭き取っても高い表面張力を持続し、塗膜表面から(B)成分の欠落も無い。また、該ハードコート塗膜は、塗膜表面が平滑であり、ゆず肌(オレンジピール)、ピンホール等の発生が抑制されているため、塗膜外観に優れたものとなる。
【0050】
本発明の積層フィルムは、本発明のハードコート塗膜を基材に積層することにより得られる。積層フィルムの基材としては、特に制限はなく、例えば、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ノルボルネン系樹脂等)が挙げられる。該基材は表面処理(コロナ放電等)がされたものであってもよい。また、該基材は、その片面あるいは両面に、本発明のハードコート剤以外のコーティング剤、印刷インキ及び粘着剤による層が設けられていてもよい。
【0051】
前記基材に前記ハードコート塗膜を積層させる方法としては、公知の方法で本発明のハードコート剤を塗布して乾燥させた後に、活性エネルギー線を照射して硬化させることにより行う。該ハードコート剤の塗布方法としては、例えばバーコーター塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷法等が挙げられる。なお、塗布量は特に限定されないが、通常は、乾燥後の重量が0.1~20g/m2、好ましくは0.5~10g/m2になる範囲である。
【0052】
本発明の積層フィルムは、ハードコート層含有フィルムに対して、ハードコート剤、塗料、印刷インキ及び粘着層を積層する用途において、好適なフィルムとなり得る。特に、タッチパネル等で用いられるITOフィルムの透明基材に前記ハードコート塗膜を積層すると、OCA(光学粘着フィルム)及びOCR(光学粘着樹脂)に対して良好な密着性を示す該フィルムを提供することが出来る。
【実施例
【0053】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明を詳しく説明するが、それらにより本発明の範囲が限定されないことはもとよりである。また、各実施例及び比較例において、部又は%は質量基準である。
【0054】
重量平均分子量(Mw)は、下記条件のゲルパーメーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
(GPC測定条件)
機種 :製品名「HLC-8120」(東ソー(株)製)
カラム :製品名「TSKgel SuperHM-L」(東ソー(株)製)×3本
展開溶媒、流量:テトラヒドロフラン、0.6mL/分
測定温度:40℃
検出器 :RI
標準:単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂から固形分換算で0.2%濃度のテトラヒドロフラン溶液を調整し、該溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(20μl)
【0055】
各実施例及び比較例で用いるペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート混合物、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート混合物中の各成分の含有量は、下記条件の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定される、全ピーク面積総和に対する各成分のピーク面積の比率から算出した。
【0056】
(HPLC測定条件)
測定装置;製品名「Waters2695 Separations Module」(WatersCorporation製)
カラム ;製品名「Waters Atlantis T3 5μmODS 4.6×250mm」(WatersCorporation製)1本
検出器 ;製品名「Waters2998 Photodiode Array(210nm)」(WatersCorporation製)
測定条件;カラムオーブン温度 40℃、注入量10μL、流速0.8mL/min
移動相組成条件;メタノール/水=65/35wt%
【0057】
各実施例及び比較例で用いるオルガノシリカゾル中のシリカ微粒子の表面シラノール基濃度は、メチルレッド及び分光光度計を用いて、下記方法により測定した。
【0058】
(表面シラノール基濃度の測定方法)
<吸光度測定用メチルレッド/トルエン溶液の調製>
メチルレッド(和光純薬工業(株)製)808mgをビーカーに秤量し、100mLのトルエン(和光純薬工業(株)製 和光一級トルエン)に溶解させた。溶解液を1Lメスフラスコに移し、ビーカー中の残液を同トルエンで洗い流した洗浄液もメスフラスコに移して、濃度3mmol/Lのメチルレッド/トルエン溶液を1L調製し、吸光度測定用の標準試料とした。
【0059】
<表面シラノール基濃度の定量用被験試料の作成>
オルガノシリカゾル20gを遠心管に秤量し、高速遠心機(「H-201FR」(株)コクサン製)で遠心分離し、シリカ微粒子を沈降させた。上澄みを除去後、分離したシリカ粒子を風乾し、さらにメノウ乳鉢ですりつぶした後、シャーレに移し、常圧乾燥機(100℃)で6時間乾燥させた。乾燥したシリカ粒子をガラス瓶に100mg秤量し、上記のメチルレッド/トルエン標準試料を10mL添加して、振とう機で1時間振とうさせた。振とう後に2時間静置して、上澄みを被験試料とした。
【0060】
<分光光度計による吸光度測定と表面シラノール基濃度の定量>
標準試料、被験試料それぞれ1mLをトルエンで10倍に希釈し、光路長1mmの石英セル(ジーエルサイエンス(株)製)を用いて、分光光度計(「U-3010」(株)日立ハイテクサイエンス製)で波長480nmの最大吸光度を測定した。標準試料の該最大吸光度をA(std)、被験試料の該最大吸光度をA(sample)として、以下の式からシリカ微粒子の表面シラノール基濃度を算出した。

表面シラノール基濃度(μmol/g)={30×(A(std)-A(sample))}/100×1000
【0061】
(水酸基含有(メタ)アクリル共重合体溶液(a1)の製造)
製造例1
撹拌装置、冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応装置に、グリシジルメタアクリレート(以下、GMAという)272部、酢酸ブチル947部及び2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(以下、ABNEという)10.8部を仕込んだ後、窒素気流下に約1時間かけて系内温度が約90℃になるまで昇温し、1時間保温した。次いで、あらかじめGMA815部、酢酸ブチル115.0部、ABNE32.6部からなる混合液を仕込んだ滴下ロートより、窒素気流下に混合液を約2時間を要して系内に滴下し、3時間同温度に保温後、ABNE11.0部、酢酸ブチル20.0部を仕込み、1時間保温した。その後、130℃に昇温し、2時間保温した。60℃まで冷却後、窒素導入管を空気導入管につけ替え、アクリル酸(以下、AAという)548部、メトキノン3.1部及びトリフェニルフォスフィン6.7部を仕込み混合した後、空気バブリング下にて、110℃まで昇温した。同温度にて8時間保温後、メトキノン1.6部を仕込み、冷却して、不揮発分が50%となるよう酢酸エチルを加えて、水酸基含有(メタ)アクリル共重合体溶液(以下、(a1)-1成分とする)を得た。得られた水酸基含有(メタ)アクリル共重合体は、水酸基濃度4.67mmol/g(繰り返し構造1mol中に水酸基1mol、繰り返し構造の式量214.21)、重量平均分子量(GPC法によるスチレン換算値)30,000であった。
【0062】
(表面の一部が有機物で修飾された親水性シリカ微粒子(B)の製造)
製造例2
攪拌機、冷却管、温度計を備えた反応装置に、プロピレングリコールモノメチルエーテル分散シリカゾル(日産化学工業(株)製 商品名「PGM-ST」 シリカ固形分30%、 表面シラノール基濃度166μmol/g、平均一次粒子径10~20nm)(以下、(B)-1成分とする)100部と、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.9部、オクチル酸スズ0.09部を加え、攪拌しながら80℃まで昇温し、2時間加熱攪拌することで表面がメタクリロキシ基で変性されたシリカゾル(以下、(B)-4成分とする)を得た。得られた(B)-4成分は、シリカ固形分31%、表面シラノール基濃度127μmol/g、及び平均一次粒子径10~20nmであった。
【0063】
製造例3
攪拌機、冷却管、温度計を備えた反応装置に、(B)-1成分100部と、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン3.0部、オクチル酸スズ0.10部を加え、攪拌しながら80℃まで昇温し、2時間加熱攪拌することで表面がメタクリロキシ基で変性されたシリカゾル(以下、(B)’-2成分とする)を得た。得られた(B)’-2成分は、シリカ固形分32%、表面シラノール基濃度46μmol/g、及び平均一次粒子径10~20nmであった。
【0064】
(ハードコート剤の製造)
実施例1
(a1)-1成分82.4部に、(B)-1成分15.3部、光重合開始剤としてIrgacure 184(BASF社製)2.3部を配合し、不揮発分が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈調製し、均一に混合してハードコート剤を得た。
【0065】
実施例2
(a1)-1成分57.1部に、(B)-1成分40.8部、光重合開始剤としてIrgacure 184(BASF社製)2.1部を配合し、不揮発分が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈調製し、均一に混合してハードコート剤を得た。
【0066】
実施例3
(a1)-1成分46.5部に、(B)-1成分51.6部、光重合開始剤としてIrgacure 184(BASF社製)1.9部を配合し、不揮発分が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈調製し、均一に混合してハードコート剤を得た。
【0067】
実施例4
(a1)-1成分36.8部に、(B)-1成分61.4部、光重合開始剤としてIrgacure 184(BASF社製)1.8部を配合し、不揮発分が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈調製し、均一に混合してハードコート剤を得た。
【0068】
実施例5
(a1)-1成分20.1部に、(B)-1成分78.2部、光重合開始剤としてIrgacure 184(BASF社製)1.7部を配合し、不揮発分が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈調製し、均一に混合してハードコート剤を得た。
【0069】
実施例6
(a1)-1成分12.8部に、(B)-1成分85.6部、光重合開始剤としてIrgacure 184(BASF社製)1.6部を配合し、不揮発分が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈調製し、均一に混合してハードコート剤を得た。
【0070】
実施例7
(a1)-1成分36.8部に、イソプロピルアルコール分散オルガノシリカゾル(日産化学工業(株)製 商品名「IPA-ST」 シリカ固形分30% 表面シラノール基濃度170μmol/g、平均一次粒子径10~20nm)(以下、(B)-2成分とする)61.4部、光重合開始剤としてIrgacure 184(BASF社製)1.8部を配合し、不揮発分が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈調製し、均一に混合してハードコート剤を得た。
【0071】
実施例8
(a1)-1成分36.8部に、イソプロピルアルコール分散オルガノシリカゾル(日産化学工業(株)製 商品名「IPA-ST-L」 シリカ固形分30% 表面シラノール基濃度63μmol/g、平均一次粒子径40~50nm)(以下、(B)-3成分とする)61.4部、光重合開始剤としてIrgacure 184(BASF社製)1.8部を配合し、不揮発分が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈調製し、均一に混合してハードコート剤を得た。
【0072】
実施例9
水酸基濃度3.38mmol/gのペンタエリスリトールポリアクリレート混合物(ペンタエリスリトールジアクリレート(1mol中に水酸基2mol、分子量244.24)11%、ペンタエリスリトールトリアクリレート(1mol中に水酸基1mol、分子量298.29)74%、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(分子中に水酸基無し)15%)(以下、(a2)-1成分とする)22.6部に、(B)-1成分75.2部、光重合開始剤としてIrgacure 184(BASF社製)2.2部を配合し、不揮発分が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈調製し、均一に混合してハードコート剤を得た。
【0073】
実施例10
水酸基濃度2.08mmol/gのペンタエリスリトールポリアクリレート混合物(ペンタエリスリトールトリアクリレート(1mol中に水酸基1mol、分子量298.29)62%、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(分子中に水酸基無し)38%)(以下、(a2)-2成分とする)22.6部に、(B)-1成分75.2部、光重合開始剤としてIrgacure 184(BASF社製)2.2部を配合し、不揮発分が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈調製し、均一に混合してハードコート剤を得た。
【0074】
実施例11
水酸基濃度1.6mmol/gのジペンタエリスリトールポリアクリレート混合物(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(1mol中に水酸基1mol、分子量524.52)84%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(分子中に水酸基無し)16%) (以下、(a2)-3成分とする)22.6部に、(B)-1成分75.2部、光重合開始剤としてIrgacure 184(BASF社製)2.2部を配合し、不揮発分が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈調製し、均一に混合してハードコート剤を得た。
【0075】
実施例12
水酸基濃度0.8mmol/gのジペンタエリスリトールポリアクリレート混合物(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(1mol中に水酸基1mol、分子量524.52)42%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(分子中に水酸基無し)58%) (以下、(a2)-4成分とする)22.6部に、(B)-1成分75.2部、光重合開始剤としてIrgacure 184(BASF社製)2.2部を配合し、不揮発分が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈調製し、均一に混合してハードコート剤を得た。
【0076】
実施例13
(a1)-1成分20.3部に、(a2)-2成分10.1部、(B)-1成分67.6部、光重合開始剤としてIrgacure 184(BASF社製)2.0部を配合し、不揮発分が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈調製し、均一に混合してハードコート剤を得た。
【0077】
実施例14
(a1)-1成分20.3部に、(a2)-4成分10.1部、(B)-1成分67.6部、光重合開始剤としてIrgacure 184(BASF社製)2.0部を配合し、不揮発分が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈調製し、均一に混合してハードコート剤を得た。
【0078】
実施例15
(a2)-2成分11.3部に、(a2)-4成分11.3部、(B)-1成分75.2部、光重合開始剤としてIrgacure 184(BASF社製)2.2部を配合し、不揮発分が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈調製し、均一に混合してハードコート剤を得た。
【0079】
実施例16
(a1)-1成分82.9部に、(B)-4成分14.8部、光重合開始剤としてIrgacure 184(BASF社製)2.3部を配合し、不揮発分が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈調製し、均一に混合してハードコート剤を得た。
【0080】
実施例17
(a1)-1成分57.9部に、(B)-4成分40.0部、光重合開始剤としてIrgacure 184(BASF社製)2.1部を配合し、不揮発分が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈調製し、均一に混合してハードコート剤を得た。
【0081】
実施例18
(a1)-1成分37.6部に、(B)-4成分60.6部、光重合開始剤としてIrgacure 184(BASF社製)1.8部を配合し、不揮発分が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈調製し、均一に混合してハードコート剤を得た。
【0082】
実施例19
(a1)-1成分20.7部に、(a2)-2成分10.4部、(B)-4成分66.8部、光重合開始剤としてIrgacure 184(BASF社製)2.1部を配合し、不揮発分が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈調製し、均一に混合してハードコート剤を得た。
【0083】
実施例20
(a1)-1成分13.2部に、(B)-4成分85.2部、光重合開始剤としてIrgacure 184(BASF社製)1.6部を配合し、不揮発分が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈調製し、均一に混合してハードコート剤を得た。
【0084】
比較例1
(a1)-1成分97.6部に、光重合開始剤としてIrgacure 184(BASF社製)2.4部を配合し、不揮発分が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈調製し、均一に混合してハードコート剤を得た。
【0085】
比較例2
(a1)-1成分6.2部に、(B)-1成分92.3部、光重合開始剤としてIrgacure 184(BASF社製)1.5部を配合し、不揮発分が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈調製し、均一に混合してハードコート剤を得た。
【0086】
比較例3
(a1)-1成分47.3部に、プロピレングリコールモノメチルエーテル分散オルガノシリカゾル(日産化学工業(株)製 商品名「PGM-AC-2140Y」 シリカ固形分47% 表面シラノール基濃度40μmol/g(表面シラノール基の一部にアクリル化処理)、平均一次粒子径10~20nm)(以下、(B)’-1成分とする)50.3部、光重合開始剤としてIrgacure 184(BASF社製)2.4部を配合し、不揮発分が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈調製し、均一に混合してハードコート剤を得た。
【0087】
比較例4
水酸基濃度0.17mmol/gのペンタエリスリトールポリアクリレート混合物(ペンタエリスリトールトリアクリレート(1mol中に水酸基1mol、分子量298.29)5%、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(分子中に水酸基無し)95%) (以下、(a2)’-1成分とする)22.6部に、(B)-1成分75.2部、光重合開始剤としてIrgacure 184(BASF社製)2.2部を配合し、不揮発分が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈調製し、均一に混合してハードコート剤を得た。
【0088】
比較例5
水酸基濃度0.18mmol/gのジペンタエリスリトールポリアクリレート混合物(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(1mol中に水酸基1mol、分子量524.52)16%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(分子中に水酸基無し)84%) (以下、(a2)’-2成分とする)22.6部に、(B)-1成分75.2部、光重合開始剤としてIrgacure 184(BASF社製)2.2部を配合し、不揮発分が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈調製し、均一に混合してハードコート剤を得た。
【0089】
比較例6
(a2)-4成分75.0部に、UV硬化型親水性ポリマー(大成ファインケミカル(株)製、商品名「アクリット 8WX-030」、40%プロピレングリコールモノメチルエーテル/メタノール溶液)20.8部、光重合開始剤としてIrgacure 184(BASF社製)4.2部を配合し、不揮発分が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈調製し、均一に混合してハードコート剤を得た。
【0090】
比較例7
(a1)-1成分38.3部に、(B)’-2成分59.8部、光重合開始剤としてIrgacure 184(BASF社製)1.9部を配合し、不揮発分が30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈調製し、均一に混合してハードコート剤を得た。
【0091】
(ハードコート塗膜の評価)
実施例1~20、及び比較例1~7のハードコート剤を用いて、下記の方法で基材表面にハードコート塗膜を形成させて、塗膜評価を行った。その結果を表1に示す。
【0092】
<ハードコート塗膜の形成>
厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、バーコーター#5を用いて各ハードコート剤を塗布し、80℃の循風乾燥機中で1分間乾燥した。その後、高圧水銀灯(出力120W/cm)を用いて、照射距離10cm、ベルトスピード10m/min、積算照射量250mJ/cm2の条件で硬化させて、ハードコート塗膜を形成した。
【0093】
<ハードコート塗膜の表面張力測定>
Arcotest社製の表面エネルギー値評価用テストペン(ダインペン)を用いて、次のように測定した。前記で得られたハードコート塗膜に、それぞれ所定の表面張力値(30~70dyn/cm)を有するダインペンから1本を用いて5cmの線を引き、線の形状が5秒以上維持されていれば濡れていると判定した。線の形状が5秒以上維持された場合は、さらに表面張力値の高いダインペンに変えて線を引き、同様に濡れているか判定した。線の形状が5秒未満で崩れた場合は、表面張力値の低いダインペンに変えて線を引き、濡れているか判定した。前記操作を繰り返し、該塗膜表面で線の形状が5秒以上維持されたダインペンの中で最大の表面張力値を、該ハードコート塗膜の表面張力(初期値)とした。
【0094】
<加熱拭取り試験>
前記ハードコート塗膜を150℃の循風乾燥機中に30分間保管し、その後エタノールで湿した綿棒で50往復ラビングした該ハードコート塗膜の表面張力値を前記の方法で測定し、加熱前の該ハードコート塗膜の表面張力(初期値)と比較して評価した。
○=初期値と変化無し ×=初期値より表面張力値が低下
【0095】
<塗膜外観>
前記ハードコート塗膜の外観を、レベリング性(平滑性)、及びゆず肌、ハジキ(ピンホール)等の不具合の有無に関して、目視にて評価した。
○=平滑であり、ゆず肌、ピンホールなどの不具合がない。
×=平滑でなく、ゆず肌、ピンホールなどの不具合がある。
【0096】
【表1】

表1中の略語及び注釈は、以下の通りである。
1)シリカ粒子が塗膜から脱落し、塗膜評価ができなかった。