(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】産業車両用遠隔操作システム、産業車両、遠隔操作装置、産業車両用遠隔操作プログラム、及び産業車両用遠隔操作方法
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20220208BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
B66F9/24 R
H04Q9/00 351
(21)【出願番号】P 2018056881
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2020-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】神谷 知典
(72)【発明者】
【氏名】岡本 浩伸
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-025984(JP,A)
【文献】特開2010-222108(JP,A)
【文献】特開2016-168883(JP,A)
【文献】特開2014-001026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/24
G05D 1/02
B60W 10/00
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信を行う車両通信部を有する産業車両と、
前記車両通信部と通信接続状態となることによって無線通信にて前記車両通信部と信号のやり取りを行うリモート通信部を有し、前記産業車両を遠隔操作するのに用いられる遠隔操作装置と、
前記通信接続状態において異常事態を検知する異常事態検知部と、
異常解除操作を検知する解除操作検知部と、
前記産業車両の制御モードを制御するモード制御部と、
を備え、
前記産業車両は、当該産業車両を直接操作するのに用いられる車両操作部を備え、
前記制御モードは、
前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作が行われる遠隔モードと、
前記車両操作部の操作に基づいて前記産業車両を直接操作する有人操作が行われる一方、前記遠隔操作装置による遠隔操作が行われない有人モードと、
前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作
及び前記有人操作の双方が行われず且つ前記遠隔モード
及び前記有人モードの双方への移行が禁止された異常停止モードと、
前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作
及び前記有人操作の双方が行われず且つ前記遠隔モード
及び前記有人モードの双方への移行が許容されたニュートラルモードと、
を含み、
少なくとも前記遠隔モード中は、前記両通信部は前記通信接続状態となっており、
前記異常事態検知部は、前記異常事態として、
前記制御モードに関わらず共通の異常事態である共通異常事態と、
前記遠隔モードに対応させて設定された遠隔モード異常事態と、
前記有人モードに対応させて設定され且つ前記遠隔モード異常事態とは異なる有人モード異常事態と、
を検知するものであり、
前記モード制御部は、
前記制御モードが前記遠隔モードである状況において前記異常事態検知部によって前記共通異常事態又は前記遠隔モード異常事態が検知されたことに基づいて、前記通信接続状態を維持した状態で前記制御モードを前記遠隔モードから前記異常停止モードに移行させ、
前記制御モードが前記有人モードである状況において前記異常事態検知部によって前記共通異常事態又は前記有人モード異常事態が検知されたことに基づいて、前記制御モードを前記有人モードから前記異常停止モードに移行させ、
前記制御モードが前記異常停止モードであり且つ前記通信接続状態である状況において前記解除操作検知部によって前記異常解除操作が検知されたことに基づいて、前記制御モードを前記異常停止モードから前記ニュートラルモードに移行させることを特徴とする産業車両用遠隔操作システム。
【請求項2】
遠隔操作装置に設けられたリモート通信部と通信接続状態となることによって無線通信にて前記リモート通信部と信号のやり取りを行う車両通信部を備えた産業車両であって、
前記通信接続状態において異常事態を検知する異常事態検知部と、
前記産業車両の制御モードを制御するモード制御部と、
前記産業車両を直接操作するのに用いられる車両操作部と、
を備え、
前記制御モードは、
前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作が行われる遠隔モードと、
前記車両操作部の操作に基づいて前記産業車両を直接操作する有人操作が行われる一方、前記遠隔操作装置による遠隔操作が行われない有人モードと、
前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作
及び前記有人操作の双方が行われず且つ前記遠隔モード
及び前記有人モードの双方への移行が禁止された異常停止モードと、
前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作
及び前記有人操作の双方が行われず且つ前記遠隔モード
及び前記有人モードの双方への移行が許容されたニュートラルモードと、
を含み、
少なくとも前記遠隔モード中は、前記両通信部は前記通信接続状態となっており、
前記異常事態検知部は、前記異常事態として、
前記制御モードに関わらず共通の異常事態である共通異常事態と、
前記遠隔モードに対応させて設定された遠隔モード異常事態と、
前記有人モードに対応させて設定され且つ前記遠隔モード異常事態とは異なる有人モード異常事態と、
を検知するものであり、
前記モード制御部は、
前記制御モードが前記遠隔モードである状況において前記異常事態検知部によって前記共通異常事態又は前記遠隔モード異常事態が検知されたことに基づいて、前記通信接続状態を維持した状態で前記制御モードを前記遠隔モードから前記異常停止モードに移行させ、
前記制御モードが前記有人モードである状況において前記異常事態検知部によって前記共通異常事態又は前記有人モード異常事態が検知されたことに基づいて、前記制御モードを前記有人モードから前記異常停止モードに移行させ、
前記制御モードが前記異常停止モードであり且つ前記通信接続状態である状況において前記遠隔操作装置及び前記産業車両の少なくとも一方に対して異常解除操作が行われたことに基づいて、前記制御モードを前記異常停止モードから前記ニュートラルモードに移行させることを特徴とする産業車両。
【請求項3】
産業車両に設けられた車両通信部と通信接続状態となることによって無線通信にて前記車両通信部と信号のやり取りを行うリモート通信部を備え、前記産業車両を遠隔操作するのに用いられる遠隔操作装置であって、
前記産業車両の制御モードを制御するモード制御部を備え、
前記制御モードは、
前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作が行われる遠隔モードと、
前記産業車両に設けられた車両操作部の操作に基づいて前記産業車両を直接操作する有人操作が行われる一方、前記遠隔操作装置による遠隔操作が行われない有人モードと、
前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作
及び前記有人操作の双方が行われず且つ前記遠隔モード
及び前記有人モードの双方への移行が禁止された異常停止モードと、
前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作
及び前記有人操作の双方が行われず且つ前記遠隔モード
及び前記有人モードの双方への移行が許容されたニュートラルモードと、
を含み、
少なくとも前記遠隔モード中は、前記両通信部は前記通信接続状態となっており、
前記モード制御部は、
前記制御モードが前記遠隔モードである状況において、前記制御モードに関わらず共通の異常事態である共通異常事態、又は、前記遠隔モードに対応させて設定された遠隔モード異常事態が発生したことに基づいて、前記通信接続状態を維持した状態で前記制御モードを前記遠隔モードから前記異常停止モードに移行させ、
前記制御モードが前記有人モードである状況において、前記共通異常事態、又は、前記有人モードに対応させて設定され且つ前記遠隔モード異常事態とは異なる有人モード異常事態が発生したことに基づいて、前記制御モードを前記有人モードから前記異常停止モードに移行させ、
前記制御モードが前記異常停止モードであり且つ前記通信接続状態である状況において前記遠隔操作装置及び前記産業車両の少なくとも一方に対して異常解除操作が行われたことに基づいて、前記制御モードを前記異常停止モードから前記ニュートラルモードに移行させることを特徴とする遠隔操作装置。
【請求項4】
産業車両に設けられた車両通信部と通信接続状態となることによって無線通信にて前記車両通信部と信号のやり取りを行うリモート通信部を有する遠隔操作装置を用いて、前記産業車両を遠隔操作するための産業車両用遠隔操作プログラムであって、
前記遠隔操作装置又は前記産業車両を、前記産業車両の制御モードを制御するモード制御部として機能させるものであり、
前記制御モードは、
前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作が行われる遠隔モードと、
前記産業車両に設けられた車両操作部の操作に基づいて前記産業車両を直接操作する有人操作が行われる一方、前記遠隔操作装置による遠隔操作が行われない有人モードと、
前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作
及び前記有人操作の双方が行われず且つ前記遠隔モード
及び前記有人モードの双方への移行が禁止された異常停止モードと、
前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作
及び前記有人操作の双方が行われず且つ前記遠隔モード
及び前記有人モードの双方への移行が許容されたニュートラルモードと、
を含み、
少なくとも前記遠隔モード中は、前記両通信部は前記通信接続状態となっており、
前記モード制御部は、
前記制御モードが前記遠隔モードである状況において、前記制御モードに関わらず共通の異常事態である共通異常事態、又は、前記遠隔モードに対応させて設定された遠隔モード異常事態が発生したことに基づいて、前記通信接続状態を維持した状態で前記制御モードを前記遠隔モードから前記異常停止モードに移行させ、
前記制御モードが前記有人モードである状況において、前記共通異常事態、又は、前記有人モードに対応させて設定され且つ前記遠隔モード異常事態とは異なる有人モード異常事態が発生したことに基づいて、前記制御モードを前記有人モードから前記異常停止モードに移行させ、
前記制御モードが前記異常停止モードであり且つ前記通信接続状態である状況において前記遠隔操作装置及び前記産業車両の少なくとも一方に対して異常解除操作が行われたことに基づいて、前記制御モードを前記異常停止モードから前記ニュートラルモードに移行させることを特徴とする産業車両用遠隔操作プログラム。
【請求項5】
産業車両に設けられた車両通信部と通信接続状態となることによって無線通信にて前記車両通信部と信号のやり取りを行うリモート通信部を有する遠隔操作装置を用いて、前記産業車両を遠隔操作する産業車両用遠隔操作方法であって、
前記遠隔操作装置又は前記産業車両が前記産業車両の制御モードを制御するモード制御ステップを備え、
前記制御モードは、
前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作が行われる遠隔モードと、
前記産業車両に設けられた車両操作部の操作に基づいて前記産業車両を直接操作する有人操作が行われる一方、前記遠隔操作装置による遠隔操作が行われない有人モードと、
前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作
及び前記有人操作の双方が行われず且つ前記遠隔モード
及び前記有人モードの双方への移行が禁止された異常停止モードと、
前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作
及び前記有人操作の双方が行われず且つ前記遠隔モード
及び前記有人モードの双方への移行が許容されたニュートラルモードと、
を含み、
少なくとも前記遠隔モード中は、前記両通信部は前記通信接続状態となっており、
前記モード制御ステップは、
前記制御モードが前記遠隔モードである状況において、前記制御モードに関わらず共通の異常事態である共通異常事態、又は、前記遠隔モードに対応させて設定された遠隔モード異常事態が発生したことに基づいて、前記通信接続状態を維持した状態で前記制御モードを前記遠隔モードから前記異常停止モードに移行させるステップと、
前記制御モードが前記有人モードである状況において、前記共通異常事態、又は、前記有人モードに対応させて設定され且つ前記遠隔モード異常事態とは異なる有人モード異常事態が発生したことに基づいて、前記制御モードを前記有人モードから前記異常停止モードに移行させるステップと、
前記制御モードが前記異常停止モードであり且つ前記通信接続状態である状況において前記遠隔操作装置及び前記産業車両の少なくとも一方に対して異常解除操作が行われたことに基づいて、前記制御モードを前記異常停止モードから前記ニュートラルモードに移行させるステップと、
を備えていることを特徴とする産業車両用遠隔操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業車両用遠隔操作システム、産業車両、遠隔操作装置、産業車両用遠隔操作プログラム、及び産業車両用遠隔操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、産業車両としてのフォークリフトを遠隔操作する遠隔操作装置としての遠隔制御装置が、フォークリフトに対して離れた位置からフォークリフトの荷役作業を遠隔操作する点について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、遠隔操作装置を用いて産業車両の遠隔操作が行われている状況において異常事態が発生する場合がある。この場合、異常事態が生じたまま遠隔操作が継続して行われると安全性の低下が懸念される。
【0005】
これに対して、本願発明者らは、遠隔操作中に異常事態が発生した場合には、例えば遠隔操作を停止させることに着目した。このように遠隔操作が停止する構成では、作業者としては必要に応じて遠隔操作を再開させたい場合がある。一方、作業者の意図しない遠隔操作の再開が行われると安全性の低下が懸念される。
【0006】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、その目的は異常事態に対応できる産業車両用遠隔操作システム、産業車両、遠隔操作装置、産業車両用遠隔操作プログラム、及び産業車両用遠隔操作方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する産業車両用遠隔操作システムは、無線通信を行う車両通信部を有する産業車両と、前記車両通信部と通信接続状態となることによって無線通信にて前記車両通信部と信号のやり取りを行うリモート通信部を有し、前記産業車両を遠隔操作するのに用いられる遠隔操作装置と、前記通信接続状態において異常事態を検知する異常事態検知部と、異常解除操作を検知する解除操作検知部と、前記産業車両の制御モードを制御するモード制御部と、を備え、前記制御モードは、前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作が行われる遠隔モードと、前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作が行われず且つ前記遠隔モードへの移行が禁止された異常停止モードと、前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作が行われず且つ前記遠隔モードへの移行が許容されたニュートラルモードと、を含み、少なくとも前記遠隔モード中は、前記両通信部は前記通信接続状態となっており、前記モード制御部は、前記制御モードが前記遠隔モードである状況において前記異常事態検知部によって前記異常事態が検知されたことに基づいて、前記通信接続状態を維持した状態で前記制御モードを前記遠隔モードから前記異常停止モードに移行させ、前記制御モードが前記異常停止モードであり且つ前記通信接続状態である状況において前記解除操作検知部によって前記異常解除操作が検知されたことに基づいて、前記制御モードを前記異常停止モードから前記ニュートラルモードに移行させることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、制御モードが遠隔モードである状況において異常事態が検知されたことに基づいて、通信接続状態を維持した状態で制御モードが遠隔モードから異常停止モードに移行される。これにより、遠隔操作装置による遠隔操作が停止する。したがって、異常事態が発生したまま遠隔操作が継続されることを抑制でき、安全性の向上を図ることができる。
【0009】
また、制御モードが異常停止モードであって通信接続状態である状況において異常解除操作が行われることに基づいて、制御モードが異常停止モードからニュートラルモードに移行する。これにより、制御モードを遠隔モードに移行させることができる。したがって、制御モードが遠隔モードから異常停止モードに移行した場合であっても、遠隔操作を再開できる。
【0010】
ここで、異常停止モード中及びニュートラルモード中は、遠隔操作装置を用いた産業車両の遠隔操作が行われない。異常停止モード中は、遠隔モードへの制御モードの移行は禁止されている一方、ニュートラルモード中は、遠隔モードへの制御モードの移行は許容されている。このため、制御モードが異常停止モードとなった状態から再度遠隔操作を行うためには、まず異常解除操作を行うことにより制御モードをニュートラルモードにし、その後制御モードを遠隔モードにする必要がある。これにより、必ず異常解除操作を行う必要があるため、異常解除操作を行うことなく遠隔操作が再開されることを回避できる。したがって、意図しない遠隔操作の再開を抑制しつつ、必要に応じて遠隔操作を再開できる。
【0011】
ここで、仮に遠隔モードから異常停止モードへの移行に伴い通信接続状態が解除される場合、ニュートラルモードを介して異常停止モードから再度遠隔モードに移行させる際に、両通信部を再度通信接続状態にする必要があり、それに伴いタイムラグが発生するおそれがある。これに対して、本構成によれば、両通信部は、異常停止モード中及びニュートラルモードの移行時も通信接続状態を維持しているため、上記タイムラグの発生を抑制でき、円滑な遠隔モードへの移行を実現できる。以上のことから、異常事態に対応できる。
【0012】
上記産業車両用遠隔操作システムについて、前記産業車両は異常解除スイッチを有し、前記異常解除操作は、前記異常解除スイッチの操作を含むとよい。
かかる構成によれば、遠隔操作装置を用いることなく異常解除操作を行うことができるため、遠隔操作者以外の者が異常解除操作を行うことができる。これにより、利便性の向上を図ることができる。
【0013】
上記産業車両用遠隔操作システムについて、前記産業車両は、機台を有し、前記機台は、外側側面と、搭乗者が搭乗する運転室を区画する内側側面と、を有し、前記異常解除スイッチは、前記外側側面に設けられているとよい。
【0014】
かかる構成によれば、異常解除スイッチが外側側面に設けられているため、異常解除スイッチの操作者としては、運転室に搭乗することなく、異常解除スイッチの操作を行うことができる。これにより、運転室に搭乗者がいる状態で異常解除操作が行われることを抑制できるため、異常解除操作に伴って産業車両の誤動作が生じた場合であっても、当該誤動作に対応でき、安全性の向上を図ることができる。
【0015】
上記産業車両用遠隔操作システムについて、前記異常解除操作は、前記遠隔操作装置に対する操作を含むとよい。
かかる構成によれば、遠隔操作装置を用いる遠隔操作者としては、産業車両に近づくことなく、異常解除操作を行うことができる。これにより、利便性の向上を図ることができる。
【0016】
上記産業車両用遠隔操作システムについて、前記遠隔操作装置は、タッチパネルと、前記タッチパネルの表示制御を行う表示制御部と、を備え、前記制御モードが前記遠隔モードである場合には前記タッチパネルに対する操作を含む遠隔制御操作によって前記産業車両を遠隔操作するものであり、前記表示制御部は、前記制御モードが前記異常停止モードである場合に前記タッチパネルに異常解除アイコンを表示させるものであり、前記異常解除操作は、前記異常解除アイコンに対する入力操作を含むとよい。
【0017】
かかる構成によれば、異常停止モード時には、異常解除アイコンに対する入力操作を行うことにより、制御モードをニュートラルモードに移行させることができる。これにより、直感的な操作で異常停止モードを解除できる。
【0018】
特に、制御モードが遠隔モードである場合にはタッチパネルに対する操作を含む遠隔制御操作によって産業車両の遠隔操作が行われるため、遠隔操作者にとってタッチパネルへの注目度は高いことが想定される。このような注目度が高いタッチパネルに異常解除アイコンが表示されるため、異常解除操作の契機となる異常解除アイコンが見逃されるといった不都合を抑制できる。
【0019】
上記産業車両用遠隔操作システムについて、前記産業車両は、ドアを有し、前記異常事態検知部は、前記ドアの開閉を検知するドアセンサを含み、前記異常事態は、前記制御モードが前記遠隔モードである状況において前記ドアセンサによって前記ドアの開放が検知されたことを含むとよい。
【0020】
かかる構成によれば、遠隔モード中にドアが開放された場合には、遠隔操作が停止する。これにより、ドアが開放された状態で遠隔操作が継続されることを抑制できる。また、異常解除操作が行われない限り、制御モードがニュートラルモードに移行しないため、遠隔操作者としては、異常解除操作を行う前に、ドアを閉めて異常事態を解消する作業を行うことができる。
【0021】
上記産業車両用遠隔操作システムについて、前記異常事態検知部は、前記産業車両の周辺の障害物を検知する障害物センサを含み、前記異常事態は、前記制御モードが前記遠隔モードである状況において前記障害物センサによって障害物が検知されたことを含むとよい。
【0022】
かかる構成によれば、遠隔モード中に障害物が検知された場合には、遠隔操作が停止する。これにより、障害物が検知された状態で遠隔操作が継続されることを抑制でき、産業車両と障害物との衝突を回避できる。また、異常解除操作が行われない限り、制御モードがニュートラルモードに移行しないため、遠隔操作者としては、異常解除操作を行う前に、障害物を確認又は排除するといった異常事態を解消する作業を行うことができる。
【0023】
上記産業車両用遠隔操作システムについて、前記産業車両は、当該産業車両を直接操作するのに用いられる車両操作部を備え、前記制御モードは、前記車両操作部の操作に基づいて前記産業車両を直接操作する有人操作が行われる一方、前記遠隔操作装置による遠隔操作が行われない有人モードを含み、前記異常停止モードは、前記遠隔操作装置による遠隔操作及び前記有人操作の双方が行われず、且つ、前記遠隔モード及び前記有人モードの双方への移行が禁止された制御モードであり、前記ニュートラルモードは、前記遠隔操作装置による遠隔操作及び前記有人操作の双方が行われず、且つ、前記遠隔モード及び前記有人モードへの移行が許容された制御モードであるとよい。
【0024】
かかる構成によれば、異常停止モード中に異常解除操作が行われたことによって制御モードがニュートラルモードに移行した後は、遠隔モード及び有人モードのうち所望の制御モードに移行させることができる。
【0025】
上記産業車両用遠隔操作システムについて、前記異常事態検知部は、前記異常事態として、前記制御モードに関わらず共通の異常事態である共通異常事態と、前記遠隔モードに対応させて設定された遠隔モード異常事態と、前記有人モードに対応させて設定され且つ前記遠隔モード異常事態とは異なる有人モード異常事態と、を検知するものであり、前記モード制御部は、前記制御モードが前記遠隔モードである状況において前記異常事態検知部によって前記共通異常事態又は前記遠隔モード異常事態が検知されたことに基づいて、前記通信接続状態を維持した状態で前記制御モードを前記遠隔モードから前記異常停止モードに移行させ、前記制御モードが前記有人モードである状況において前記異常事態検知部によって前記共通異常事態又は前記有人モード異常事態が検知されたことに基づいて、前記制御モードを前記有人モードから前記異常停止モードに移行させるとよい。
【0026】
かかる構成によれば、共通異常事態が発生した場合には、制御モードに関わらず、制御モードが異常停止モードへ移行する。これにより、例えば産業車両の異常など、制御モードに無関係な異常事態に対応できる。
【0027】
ここで、遠隔操作を行う遠隔モードと、有人操作を行う有人モードとでは、想定される異常事態も異なる。この点、本構成によれば、各制御モードにおいて想定される特有の異常事態に対しても対応できるため、安全性の更なる向上を図ることができる。
【0028】
上記産業車両用遠隔操作システムについて、前記モード制御部は、前記制御モードが前記ニュートラルモードである場合に遠隔モード移行条件が成立したことに基づいて、前記制御モードを前記ニュートラルモードから前記遠隔モードに移行させ、前記遠隔モード移行条件は、前記共通異常事態が発生していないことを含むとよい。
【0029】
かかる構成によれば、異常解除操作によって異常停止モードからニュートラルモードに移行したとしても、共通異常事態が発生している場合には、制御モードを遠隔モードにすることはできない。これにより、共通異常事態が解消されていない状態で遠隔操作が行われることを抑制できる。また、作業者に対して共通異常事態を解消するように促すことができる。
【0030】
上記産業車両用遠隔操作システムについて、前記モード制御部は、前記制御モードが前記ニュートラルモードである場合に、有人モード移行条件が成立したことに基づいて、前記制御モードを前記ニュートラルモードから前記有人モードに移行させ、前記有人モード移行条件は、前記共通異常事態が発生していないことを含むとよい。
【0031】
かかる構成によれば、異常解除操作によって異常停止モードからニュートラルモードに移行したとしても、共通異常事態が発生している場合には、制御モードを有人モードにすることはできない。これにより、共通異常事態が解消されていない状態で有人操作が行われることを抑制できる。また、作業者に対して共通異常事態を解消するように促すことができる。
【0032】
上記目的を達成する産業車両は、遠隔操作装置に設けられたリモート通信部と通信接続状態となることによって無線通信にて前記リモート通信部と信号のやり取りを行う車両通信部を備えたものであって、前記通信接続状態において異常事態を検知する異常事態検知部と、前記産業車両の制御モードを制御するモード制御部と、を備え、前記制御モードは、前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作が行われる遠隔モードと、前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作が行われず且つ前記遠隔モードへの移行が禁止された異常停止モードと、前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作が行われず且つ前記遠隔モードへの移行が許容されたニュートラルモードと、を含み、少なくとも前記遠隔モード中は、前記両通信部は前記通信接続状態となっており、前記モード制御部は、前記制御モードが前記遠隔モードである状況において前記異常事態検知部によって前記異常事態が検知されたことに基づいて、前記通信接続状態を維持した状態で前記制御モードを前記遠隔モードから前記異常停止モードに移行させ、前記制御モードが前記異常停止モードであり且つ前記通信接続状態である状況において前記遠隔操作装置及び前記産業車両の少なくとも一方に対して異常解除操作が行われたことに基づいて、前記制御モードを前記異常停止モードから前記ニュートラルモードに移行させることを特徴とする。
【0033】
上記目的を達成する遠隔操作装置は、産業車両に設けられた車両通信部と通信接続状態となることによって無線通信にて前記車両通信部と信号のやり取りを行うリモート通信部を備え、前記産業車両を遠隔操作するのに用いられるものであって、前記産業車両の制御モードを制御するモード制御部を備え、前記制御モードは、前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作が行われる遠隔モードと、前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作が行われず且つ前記遠隔モードへの移行が禁止された異常停止モードと、前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作が行われず且つ前記遠隔モードへの移行が許容されたニュートラルモードと、を含み、少なくとも前記遠隔モード中は、前記両通信部は前記通信接続状態となっており、前記モード制御部は、前記制御モードが前記遠隔モードである状況において異常事態が発生したことに基づいて、前記通信接続状態を維持した状態で前記制御モードを前記遠隔モードから前記異常停止モードに移行させ、前記制御モードが前記異常停止モードであり且つ前記通信接続状態である状況において前記遠隔操作装置及び前記産業車両の少なくとも一方に対して異常解除操作が行われたことに基づいて、前記制御モードを前記異常停止モードから前記ニュートラルモードに移行させることを特徴とする。
【0034】
上記目的を達成する産業車両用遠隔操作プログラムは、産業車両に設けられた車両通信部と通信接続状態となることによって無線通信にて前記車両通信部と信号のやり取りを行うリモート通信部を有する遠隔操作装置を用いて、前記産業車両を遠隔操作するためのものであって、前記遠隔操作装置又は前記産業車両を、前記産業車両の制御モードを制御するモード制御部として機能させるものであり、前記制御モードは、前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作が行われる遠隔モードと、前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作が行われず且つ前記遠隔モードへの移行が禁止された異常停止モードと、前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作が行われず且つ前記遠隔モードへの移行が許容されたニュートラルモードと、を含み、少なくとも前記遠隔モード中は、前記両通信部は前記通信接続状態となっており、前記モード制御部は、前記制御モードが前記遠隔モードである状況において異常事態が発生したことに基づいて、前記通信接続状態を維持した状態で前記制御モードを前記遠隔モードから前記異常停止モードに移行させ、前記制御モードが前記異常停止モードであり且つ前記通信接続状態である状況において前記遠隔操作装置及び前記産業車両の少なくとも一方に対して異常解除操作が行われたことに基づいて、前記制御モードを前記異常停止モードから前記ニュートラルモードに移行させることを特徴とする。
【0035】
上記目的を達成する産業車両用遠隔操作方法は、産業車両に設けられた車両通信部と通信接続状態となることによって無線通信にて前記車両通信部と信号のやり取りを行うリモート通信部を有する遠隔操作装置を用いて、前記産業車両を遠隔操作するものであって、前記遠隔操作装置又は前記産業車両が前記産業車両の制御モードを制御するモード制御ステップを備え、前記制御モードは、前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作が行われる遠隔モードと、前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作が行われず且つ前記遠隔モードへの移行が禁止された異常停止モードと、前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作が行われず且つ前記遠隔モードへの移行が許容されたニュートラルモードと、を含み、少なくとも前記遠隔モード中は、前記両通信部は前記通信接続状態となっており、前記モード制御ステップは、前記制御モードが前記遠隔モードである状況において異常事態が発生したことに基づいて、前記通信接続状態を維持した状態で前記制御モードを前記遠隔モードから前記異常停止モードに移行させるステップと、前記制御モードが前記異常停止モードであり且つ前記通信接続状態である状況において前記遠隔操作装置及び前記産業車両の少なくとも一方に対して異常解除操作が行われたことに基づいて、前記制御モードを前記異常停止モードから前記ニュートラルモードに移行させるステップと、を備えていることを特徴とする。
【0036】
上記各構成によれば、制御モードが遠隔モードである状況において異常事態が発生したことに基づいて、通信接続状態を維持した状態で制御モードが遠隔モードから異常停止モードに移行される。これにより、遠隔操作装置による遠隔操作が停止する。したがって、異常事態が発生したまま遠隔操作が継続されることを抑制でき、安全性の向上を図ることができる。
【0037】
また、制御モードが異常停止モードであって通信接続状態である状況において異常解除操作が行われることに基づいて、制御モードが異常停止モードからニュートラルモードに移行する。これにより、制御モードを遠隔モードに移行させることができる。したがって、制御モードが遠隔モードから異常停止モードに移行した場合であっても、遠隔操作を再開できる。
【0038】
ここで、異常停止モード中及びニュートラルモード中は、遠隔操作装置を用いた産業車両の遠隔操作が行われない。異常停止モード中は、遠隔モードへの制御モードの移行は禁止されている一方、ニュートラルモード中は、遠隔モードへの制御モードの移行は許容されている。このため、制御モードが異常停止モードとなった状態から再度遠隔操作を行うためには、まず異常解除操作を行うことにより制御モードをニュートラルモードにし、その後制御モードを遠隔モードにする必要がある。これにより、必ず異常解除操作を行う必要があるため、異常解除操作を行うことなく遠隔操作が再開されることを回避できる。したがって、意図しない遠隔操作の再開を抑制しつつ、必要に応じて遠隔操作を再開できる。
【0039】
ここで、仮に遠隔モードから異常停止モードへの移行に伴い通信接続状態が解除される場合、ニュートラルモードを介して異常停止モードから再度遠隔モードに移行させる際に、両通信部を再度通信接続状態にする必要があり、それに伴いタイムラグが発生するおそれがある。これに対して、本構成によれば、両通信部は、異常停止モード中及びニュートラルモードの移行時も通信接続状態を維持しているため、上記タイムラグの発生を抑制でき、円滑な遠隔モードへの移行を実現できる。以上のことから、異常事態に対応できる。
【発明の効果】
【0040】
この発明によれば、異常事態に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図3】産業車両用遠隔操作システムの電気的構成を示すブロック図。
【
図7】待機画像が表示された遠隔操作装置の正面図。
【
図8】操作画像が表示された遠隔操作装置の正面図。
【
図9】第1実施形態のリモート制御処理のフローチャート。
【
図10】リモート遠隔モード処理のフローチャート。
【
図11】リモートニュートラルモード処理のフローチャート。
【
図12】第1実施形態の車両制御処理のフローチャート。
【
図14】車両ニュートラルモード処理のフローチャート。
【
図17】車両異常停止モード処理のフローチャート。
【
図19】動作停止報知等が行われた場合の産業車両用遠隔操作システムの概要図。
【
図20】異常解除操作が行われた場合の産業車両用遠隔操作システムの概要図。
【
図21】第2実施形態のリモート制御処理のフローチャート。
【
図22】第2実施形態における異常停止モード中の操作画像を示す遠隔操作装置の正面図。
【
図25】車両異常停止モード処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(第1実施形態)
以下、産業車両用遠隔操作システム等の第1実施形態について説明する。
図1に示すように、産業車両用遠隔操作システム10は、産業車両としてのフォークリフト20と、フォークリフト20を遠隔操作するのに用いられる遠隔操作装置70と、を備えている。
【0043】
図1に示すように、フォークリフト20は、例えば搭乗者が起立した状態で搭乗可能なリーチ式である。フォークリフト20は、機台21と、車輪22と、機台21に対して前方に向けて延びた左右一対のリーチレグ23と、リーチレグ23に対して起立したマスト24と、リフトブラケット25を介してマスト24に取り付けられたフォーク26と、を備えている。
【0044】
リーチレグ23は、機台21における前方の下端部から前方に向けて延びている。車輪22は、リーチレグ23の先端部及び機台21の後端部にそれぞれ左右一対ずつ設けられている。
【0045】
マスト24は、リーチレグ23に対して前後方向に移動可能な状態で当該リーチレグ23に取り付けられている。また、マスト24は、リーチレグ23に対して前後方向に傾斜可能に構成されている。
【0046】
フォーク26は、マスト24の前後方向の移動に伴って前後方向に移動し、マスト24の傾斜に伴って傾く。また、フォーク26は、マスト24の延設方向、詳細には上下方向に移動可能に構成されている。すなわち、本実施形態のフォーク26は、前後方向の平行移動であるリーチ動作と、前後方向への傾斜動作であるチルト動作と、上下方向の移動であるリフト動作とが可能となっている。
【0047】
ちなみに、フォークリフト20は、例えばエンジンが搭載されたエンジンタイプであってもよいし、蓄電装置及び電動モータが搭載されたEVタイプであってもよいし、燃料電池及び電動モータが搭載されたFCVタイプであってもよい。また、フォークリフト20は、例えばエンジンと蓄電装置と電動モータとを有するHVタイプでもよい。
【0048】
図2に示すように、機台21は、外側側面31と、搭乗者が起立した状態で搭乗可能な運転室32を区画する床面33及び内側側面34と、を有している。
外側側面31は、左外側側面31a、右外側側面31b及び後外側側面31cを有している。
【0049】
運転室32を区画する内側側面34は、床面33から起立している。内側側面34は、前内側側面34a、左内側側面34b及び右内側側面34cを有している。
運転室32は、機台21の一部が凹むことによって形成された空間であり、詳細には外側側面31(本実施形態では後外側側面31c)から凹むことによって形成されている。運転室32は、搭乗者が搭乗できるように一方向(詳細には後方)に向けて開口している。運転室32内には、搭乗者が着座可能な着座部などは形成されていない。このため、運転室32に搭乗している搭乗者は、床面33に起立することが想定される。
【0050】
機台21には、搭乗者がフォークリフト20を直接操作するのに用いられる車両操作部40が設けられており、フォークリフト20は、車両操作部40の操作によって動作するように構成されている。
【0051】
詳細には、機台21には、運転室32に搭乗した搭乗者が操作可能な位置に配置されたステアリングテーブル35が形成されており、車両操作部40の少なくとも一部は当該ステアリングテーブル35に設けられている。ステアリングテーブル35は、例えば機台21の上面である。なお、機台21の上面は、運転室32を区画する左内側側面34bと連続する傾斜面を含む。
【0052】
本実施形態では、車両操作部40は、フォークリフト20の走行を行わせるディレクションレバー41と、フォークリフト20の操舵角を操作するためのハンドル42と、フォーク26を動作させる荷役レバー43と、を有している。ディレクションレバー41、ハンドル42及び荷役レバー43は、運転室32に搭乗した搭乗者が操作し易い位置、詳細にはステアリングテーブル35における運転室32の付近に設けられている。
【0053】
また、車両操作部40は、前内側側面34aのうち床面33付近に設けられたブレーキペダル44を含む。運転室32に搭乗した搭乗者は、これら車両操作部40を操作することにより、直接フォークリフト20の走行操作及び荷役操作を行うことができる。
【0054】
ちなみに、本実施形態では、フォーク26の動作としてリフト動作、リーチ動作及びチルト動作が可能となっていることに対応させて、荷役レバー43は3つ並設されている。詳細には、荷役レバー43は、チルト動作を行わせるチルトレバーと、リーチ動作を行わせるリーチレバーと、リフト動作を行わせるリフトレバーとを有している。但し、これに限られず、荷役レバー43の数や配置等については任意である。
【0055】
なお、以降の説明において、フォークリフト20に設けられている車両操作部40を操作することによってフォークリフト20を直接操作することを有人操作という。本実施形態のフォークリフト20は、有人操作が可能に構成されている。車両操作部40は、有人操作に用いられるものである。
【0056】
なお、本実施形態では、車両操作部40として、ディレクションレバー41、ハンドル42、荷役レバー43及びブレーキペダル44が採用されているが、これに限られず、これらの少なくとも1つでもよいし、これらに加えて又は代えて、別の操作部が採用されてもよい。要は、車両操作部40の具体的な構成は任意である。
【0057】
また、本実施形態において、フォークリフト20の動作とは、走行及びフォーク26の動作である。但し、フォークリフト20の動作とは、これに限られず、走行及びフォーク26の動作の少なくとも一方でもよいし、これら以外のものを含んでもよい。例えば、フォークリフト20がフォーク26以外の動作対象物を有している場合には、当該動作対象物の動作であってもよい。
【0058】
同様に、車両操作部40は、例えばフォークリフト20の走行及び荷役動作の少なくとも一方を行わせるのに用いられるものであってもよいし、これら以外の動作を行わせるのに用いられるものを含んでもよい。
【0059】
図2に示すように、フォークリフト20は、搭乗者を検知する有人センサ51と、車両操作部40とは別に設けられた切替スイッチ52及び異常解除スイッチ53とを備えている。
【0060】
有人センサ51は、フォークリフト20への搭乗者を検知する。有人センサ51は、例えばフォークリフト20の運転室32の床面33に設けられた圧力センサ等で構成されており、運転室32に搭乗した搭乗者を検知するものである。有人センサ51によって、フォークリフト20は、搭乗者の有無を把握できる。
【0061】
なお、有人センサ51は、フォークリフト20への搭乗者を検知することができれば、具体的な構成は任意であり、例えば搭乗者が着座した状態で操縦するタイプのフォークリフトであれば、有人センサ51は、搭乗者が着座する面に設けられた圧力センサや赤外線センサ等でもよい。
【0062】
切替スイッチ52及び異常解除スイッチ53は、機台21に設けられている。切替スイッチ52は、例えば運転室32に搭乗した搭乗者が操作可能な位置、詳細にはステアリングテーブル35に設けられている。
【0063】
異常解除スイッチ53は、例えば機台21のうち運転室32に搭乗することなく操作可能な位置に設けられている。詳細には、異常解除スイッチ53は、機台21の外側側面31に設けられている。本実施形態では、異常解除スイッチ53は、外側側面31のうち後外側側面31cと左外側側面31aとに設けられている。
【0064】
但し、切替スイッチ52及び異常解除スイッチ53の設置位置は、これに限られず任意である。例えば、切替スイッチ52が外側側面31に設けられていてもよいし、異常解除スイッチ53が運転室32に搭乗した搭乗者が操作可能な位置(例えばステアリングテーブル35)に設けられていてもよい。
【0065】
切替スイッチ52は、フォークリフト20の制御モードを切り替えるのに用いられるスイッチである。本実施形態では、切替スイッチ52は、有人状態に対応する「有人」と、遠隔状態に対応する「遠隔」とに切り替わり可能に構成されている。
【0066】
異常解除スイッチ53は、異常解除操作に用いられるスイッチである。詳細には、異常解除スイッチ53は、フォークリフト20の制御モードが異常停止モードとなった場合に当該異常停止モードを解除するのに用いられるスイッチである。
【0067】
これら各スイッチ52,53の操作は、フォークリフト20の制御モードの切り替えに用いられる一方、フォークリフト20の直接的な操作(有人操作)には用いられない。このため、各スイッチ52,53の操作は、車両操作部40の操作(詳細にはディレクションレバー41、ハンドル42、荷役レバー43又はブレーキペダル44の操作)とは異なる操作である。制御モードの詳細、及び、各スイッチ52,53の具体的な使用態様などについては後述する。
【0068】
なお、本実施形態の機台21は、ステアリングテーブル35から上方に向けて起立した起立フレーム36と、起立フレーム36の先端部に取り付けられた屋根37と、を備えている。起立フレーム36は、マスト24よりも高く延びている。屋根37は、フォークリフト20における最も高い位置に配置されている。
【0069】
図1及び
図2に示すように、機台21の左外側側面31aには開閉可能な第1ドア54が設けられており、当該第1ドア54を開放させることにより機台21の内部を視認できる。また、機台21は、第1ドア54の開閉状態を検知する第1ドアセンサ55を有している。フォークリフト20は、第1ドアセンサ55によって第1ドア54が開放されたことを検知できるようになっている。
【0070】
同様に、運転室32を区画する左内側側面34bに開閉可能な第2ドア56が設けられており、当該第2ドア56を開放させることにより機台21の内部を視認できる。また、機台21は、第2ドア56の開閉状態を検知する第2ドアセンサ57を有している。フォークリフト20は、第2ドアセンサ57によって第2ドア56が開放されたことを検知できるようになっている。
【0071】
図3に示すように、フォークリフト20は、所定の動作を行わせる駆動部としての走行アクチュエータ61及び荷役アクチュエータ62と、車両操作部40の操作を検知する操作センサ63と、両アクチュエータ61,62を駆動制御する車両CPU64と、車両メモリ65と、車両状態検知部66と、を備えている。
【0072】
走行アクチュエータ61は、フォークリフト20の走行に用いられるものであり、具体的には車輪22を回転駆動させるとともに操舵角(進行方向)を変更する。なお、例えばフォークリフト20がエンジンタイプであれば、走行アクチュエータ61はエンジン及び操作角を変更する操舵装置等であり、例えばフォークリフト20がEVタイプであれば、走行アクチュエータ61は車輪22を回転駆動させる電動モータ及び操舵装置等である。
【0073】
荷役アクチュエータ62は、走行とは異なる動作に用いられるものであり、本実施形態では荷役動作に用いられるものである。詳細には、荷役アクチュエータ62は、マスト24及びフォーク26を駆動させるものである。例えば、荷役アクチュエータ62は、リフト動作、リーチ動作及びチルト動作が行われるようにマスト24及びフォーク26を駆動させる。なお、フォーク26の動作としては、リフト動作、リーチ動作及びチルト動作のいずれか1つであってもよい。
【0074】
操作センサ63は、車両操作部40の操作の有無及びその操作態様を検知し、その検知結果を車両CPU64に出力するものである。
車両CPU64は、有人操作が可能な条件下(詳細には制御モードが有人モードである条件下)において、操作センサ63によって車両操作部40の操作が検知されたことに基づいて、走行アクチュエータ61及び荷役アクチュエータ62を駆動制御する。これにより、有人操作によるフォークリフト20の動作、詳細にはフォークリフト20において車両操作部40の操作に対応した動作が行われる。なお、車両CPU64は、車両ECUとも車両MPUとも言える。
【0075】
有人操作の一例としては、例えば車両CPU64は、ディレクションレバー41の操作方向に基づいて前進/後退を決定し、ディレクションレバー41の操作量に基づいて走行速度及び加速度を決定して、走行アクチュエータ61を駆動制御する。車両CPU64は、ハンドル42が操作されることに基づいて、当該ハンドル42の操作量(操作角度)に対応する変更量だけフォークリフト20の操舵角が変更されるように走行アクチュエータ61を駆動制御する。車両CPU64は、ブレーキペダル44が操作されることにより、フォークリフト20が減速又は停止するように走行アクチュエータ61を駆動制御する。この場合、車両CPU64は、ブレーキペダル44の操作量に基づいて、フォークリフト20の減速度(加速度)を制御する。
【0076】
また、車両CPU64は、荷役レバー43が操作されることに基づいて、フォーク26の動作が行われるように荷役アクチュエータ62を駆動制御する。この場合、車両CPU64は、荷役レバー43の操作態様に基づいて、フォーク26の移動方向を決定してもよい。例えば、車両CPU64は、荷役レバー43のうちリフトレバーが第1方向に操作された場合にはフォーク26が上昇する一方、荷役レバー43が第1方向とは反対方向である第2方向に操作された場合にはフォーク26が下降するように荷役アクチュエータ62を駆動制御してもよい。チルトレバーやリーチレバーなどについても同様である。
【0077】
車両状態検知部66は、フォークリフト20の状態を検知するものである。フォークリフト20の状態とは、例えばフォークリフト20の走行状態、フォーク26の動作状態及びフォークリフト20の異常等を含む。
【0078】
詳細には、車両状態検知部66は、現在のフォークリフト20の走行状態を検知し、その検知結果である走行情報Dy1が設定された走行検知信号を車両CPU64に向けて出力する。車両CPU64は、車両状態検知部66から入力される走行検知信号に基づいて、フォークリフト20の現在の走行状態を把握する。走行情報Dy1は、例えばフォークリフト20の走行速度、加速度及び操舵角に関する情報を含む。
【0079】
また、車両状態検知部66は、現在のフォーク26の動作状態を検知し、その検知結果である荷役情報Dy2が設定された荷役検知信号を車両CPU64に向けて出力する。車両CPU64は、車両状態検知部66から入力される荷役検知信号に基づいて、現在のフォーク26の動作状態を把握する。
【0080】
荷役情報Dy2は、上下方向におけるフォーク26の位置(リフト位置)及びリフト動作中の場合にはその動作速度に関する情報と、前後方向におけるフォーク26の位置(リーチ位置)及びリーチ動作中の場合にはその動作速度に関する情報と、鉛直方向に対するフォーク26の傾斜角度及びチルト動作中の場合にはその動作速度に関する情報とを含む。
【0081】
車両状態検知部66は、各センサ51,55,57を含む。各センサ51,55,57は、その検知結果を車両CPU64に出力する。これにより、車両CPU64は、搭乗者の有無及び両ドア54,56の開閉状態を把握できる。
【0082】
例えば、車両CPU64は、有人センサ51がON状態である場合には搭乗者を検知したと判定する一方、有人センサ51がOFF状態である場合には搭乗者を検知していないと判定する。
【0083】
車両状態検知部66は、切替スイッチ52の状態を検知し、その検知結果を車両CPU64に出力する。これにより、車両CPU64は切替スイッチ52の状態を把握できる。
更に車両状態検知部66は、異常解除スイッチ53が操作されたか否かを検知し、その検知結果を車両CPU64に出力する。これにより、車両CPU64は、異常解除スイッチ53が操作されたか否かを把握できる。なお、異常解除スイッチ53の操作を検知する車両状態検知部66が「解除操作検知部」に対応する。
【0084】
車両状態検知部66は、フォークリフト20の周辺の障害物を検知し、その検知結果を車両CPU64に出力する障害物センサ67を含む。このため、車両CPU64は、フォークリフト20の周辺に存在している障害物を把握できる。
【0085】
車両状態検知部66は、フォークリフト20の異常の有無を検知し、その検知結果を車両CPU64に出力する異常検知センサ68を含む。
異常検知センサ68の検知対象であるフォークリフト20の異常とは、例えば、走行アクチュエータ61の異常、荷役アクチュエータ62の異常、又は車輪22の異常を含む。
【0086】
但し、フォークリフト20の異常は、これに限られず任意であり、例えばフォークリフト20が蓄電装置を有する構成においては、蓄電装置の異常を含んでもよい。蓄電装置の異常とは、蓄電装置のSOCが閾値SOC未満となること又はSOHが閾値SOH未満となることを含む。
【0087】
図1及び
図3に示すように、遠隔操作装置70は、通信機能を有する操作端末である。遠隔操作装置70は、例えばスマートフォン又はタブレット端末といった汎用品である。
但し、これに限られず、遠隔操作装置70は任意であり、例えばゲーム装置に用いられるコントローラ、携帯電話又はヴァーチャルリアリティ端末などでもよいし、遠隔操作のための専用品であってもよい。
図1に示すように、本実施形態では、遠隔操作装置70は、一方を長手方向とし他方を短手方向とする矩形板状である。
【0088】
図3に示すように、遠隔操作装置70は、タッチパネル71と、タッチセンサ72と、リモートCPU73と、リモートメモリ74と、姿勢検知部75と、を備えている。
図1に示すように、タッチパネル71は、遠隔操作装置70の一方の板面に形成されている。タッチパネル71は長手方向及び短手方向を有する矩形状であり、タッチパネル71の長手方向は遠隔操作装置70の長手方向と一致している。タッチパネル71は、所望の画像を表示させることが可能に構成されており、表示画面を構成している。
【0089】
ちなみに、遠隔操作者によって遠隔操作装置70が横向きに把持された場合、タッチパネル71の短手方向は遠隔操作者から見て上下方向又は前後方向であり、タッチパネル71の長手方向は遠隔操作者から見て左右方向である。
【0090】
なお、説明の便宜上、以降の説明では、タッチパネル71を視認できるように遠隔操作装置70が横向きに把持された場合において、遠隔操作者から見てタッチパネル71の上端側(
図7,8における紙面上方向)を上方とし、遠隔操作者から見て下端側(
図7,8における紙面下方向)を下方とする。
【0091】
タッチセンサ72は、遠隔操作装置70に対する操作の一種である、タッチパネル71に対する入力操作を検知するものである。
詳細には、タッチセンサ72は、タッチパネル71に対して指が接触しているか否かを検知するとともに、指の接触が検知された場合にはその位置を検知する。そして、タッチセンサ72は、検知結果をリモートCPU73に出力する。これにより、リモートCPU73は、タッチパネル71に対する入力操作を把握できる。なお、タッチセンサ72の具体的な構成は任意であるが、例えば静電容量の変化に基づいて検知する静電容量式センサや圧力センサ等がある。
【0092】
なお、タッチパネル71に対する入力操作は種々の操作態様を含み、例えばタップ操作、ダブルタップ操作、タップ操作を規定期間に亘って継続させるロングタップ操作、及びスライド操作を含む。
【0093】
リモートCPU73は、リモートメモリ74に記憶されている各種プログラムを用いて各種処理を実行するものである。詳細には、リモートメモリ74には、タッチパネル71の画像制御に関するプログラムが記憶されており、リモートCPU73は、当該プログラムを読み出し実行することによってタッチパネル71の表示制御を行う。すなわち、本実施形態では、リモートCPU73が「表示制御部」に対応する。また、リモートCPU73は、タッチセンサ72及び姿勢検知部75から入力される信号に基づいて、遠隔操作装置70に対する各種操作を把握する。
【0094】
姿勢検知部75は、遠隔操作装置70の姿勢を検知するものである。姿勢検知部75は、例えば3軸の加速度センサと3軸のジャイロセンサとを含み、これらのセンサから得られる情報に基づいて、遠隔操作装置70の向き及びその変化を検知する。
【0095】
例えば、
図1に示すように、遠隔操作装置70の長手方向の両端部が遠隔操作者によって把持されている場合においては、姿勢検知部75は、遠隔操作装置70の中心を通り当該遠隔操作装置70の厚さ方向に延びた第1中心線M1を第1回転軸とする回転操作(以降、単に「第1回転操作」という。)を検知する。更に姿勢検知部75は、遠隔操作装置70の中心を通り当該遠隔操作装置70の長手方向に延びた第2中心線M2を第2回転軸とする回転操作(以降、単に「第2回転操作」という。)を検知する。第1中心線M1(第1回転軸)と第2中心線M2(第2回転軸)とは互いに直交している。
【0096】
第1回転操作方向は、遠隔操作装置70の厚さ方向を回転中心とする遠隔操作装置70の回転方向であり、第2回転操作方向は、遠隔操作装置70の長手方向を回転中心とする遠隔操作装置70の回転方向である。換言すれば、姿勢検知部75は、第1回転操作方向における遠隔操作装置70の回転位置の変化、及び、第2回転操作方向における遠隔操作装置70の回転位置の変化を検知するものである。
【0097】
姿勢検知部75は、第1回転操作及び第2回転操作の少なくとも一方が行われているか否か、及び、両回転操作の少なくとも一方が行われている場合には当該回転操作の態様を検知し、その検知結果をリモートCPU73に出力する。これにより、リモートCPU73は、遠隔操作装置70に対する操作の一種である第1回転操作及び第2回転操作を把握できる。回転操作の態様とは、回転角度や回転速度などを含む。
【0098】
図3に示すように、遠隔操作装置70とフォークリフト20とは無線通信可能に構成されている。詳細には、遠隔操作装置70は、無線通信を行うリモート通信部76を有しており、フォークリフト20は、リモート通信部76と無線通信を行う車両通信部69を有している。
【0099】
車両通信部69及びリモート通信部76は、無線通信を行う通信インターフェースであり、例えば1つ以上の専用のハードウェア回路、及び、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ(制御回路)の少なくとも一方によって実現されている。
【0100】
リモート通信部76は、通信範囲内に登録済みのフォークリフト20が存在する場合には、当該フォークリフト20の車両通信部69との通信接続(ペアリング)を確立する。これにより、遠隔操作装置70とフォークリフト20との間で信号のやり取りが可能となる。
【0101】
ここで、上記のように車両通信部69とリモート通信部76との間で信号のやり取りが可能となった状態を通信接続状態という。通信接続状態とは、車両通信部69とリモート通信部76とが無線通信によって接続された状態とも言え、両通信部69,76が互いに情報のやり取りを行ってもよいと認証した状態(換言すればペアリング済みの状態)とも言える。
【0102】
本実施形態では、車両通信部69及びリモート通信部76間の無線通信形式は、Wi-Fi(換言すればIEEE802.11規格の無線LAN)である。両通信部69,76は、パケット通信によって信号の送受信を行う。
【0103】
なお、Wi-Fiには、IEEE802.11aやIEEE802.11ac等といった複数の規格が存在するが、車両通信部69及びリモート通信部76間の無線通信形式は、上記複数の規格のうちいずれでもよい。
【0104】
更に、車両通信部69とリモート通信部76との間の無線通信形式については、Wi-Fiに限られず、任意であり、例えばBluetooth(登録商標)及びZigbee(登録商標)等であってもよい。また、両通信部69,76間の信号の送受信は、パケット通信に限られず任意である。
【0105】
ちなみに、リモート通信部76の通信範囲内に登録済みのフォークリフト20が複数存在する場合には、リモート通信部76は、これら複数のフォークリフト20の車両通信部69と通信接続を確立する。この場合、遠隔操作装置70は、複数のフォークリフト20と通信接続状態となり、これら複数のフォークリフト20と信号のやり取りが可能となる。
【0106】
一方、通信接続状態となったフォークリフト20の車両通信部69は、通信接続状態が解除されるまで、通信接続状態の相手である遠隔操作装置70のリモート通信部76とは異なるリモート通信部とは通信接続しない。すなわち、本実施形態の車両通信部69は、同時に複数のリモート通信部76と通信接続状態とならないように構成されている。
【0107】
リモート通信部76は、リモートCPU73と電気的に接続されている。リモートCPU73は、遠隔操作装置70を用いて遠隔操作を行う場合には、フォークリフト20の遠隔操作に用いられる遠隔操作信号SGx1を生成する。リモート通信部76は、生成された遠隔操作信号SGx1を車両通信部69に向けて順次送信する。換言すれば、リモートCPU73は、リモート通信部76を用いて遠隔操作信号SGx1を送信するように構成されている。遠隔操作信号SGx1は、無線通信用規格に対応する信号であり、本実施形態ではWi-Fi規格に対応したパケット信号である。
【0108】
図4に示すように、遠隔操作信号SGx1は、遠隔操作に関する各種情報が設定された信号であり、詳細には遠隔操作に関する情報として、走行操作に関する走行操作情報Dx1と、荷役操作に関する荷役操作情報Dx2とを含む。
【0109】
走行操作情報Dx1は、例えばフォークリフト20の走行速度が設定された速度情報Dxvと、フォークリフト20の加速度が設定された加速度情報Dxαと、フォークリフト20の操舵角が設定された操舵角情報Dxθと、を有している。
【0110】
荷役操作情報Dx2は、例えばリフト動作のストローク量が設定されたリフト情報Dxfaと、リーチ動作のストローク量が設定されたリーチ情報Dxfbと、チルト動作の傾斜角度が設定されたチルト情報Dxfcと、を有している。
【0111】
また、本実施形態では、リモート通信部76は、遠隔操作信号SGx1とは別に、リモート開始信号SGx4やリモート停止信号SGx2といった無線通信用規格の各種信号を送信するように構成されている。
【0112】
図3に示すように、フォークリフト20の車両通信部69は、受信された無線通信用規格の各種信号を、車内通信用規格に対応した制御信号に変換する信号変換部69aを備えている。本実施形態では、フォークリフト20の具体的な車内通信用規格はCAN規格である。すなわち、本実施形態では、制御信号はCAN信号である。但し、これに限られず、具体的な車内通信用規格は任意である。
【0113】
遠隔操作信号SGx1を変換して得られる制御信号には、走行操作情報Dx1及び荷役操作情報Dx2が設定されている。すなわち、信号変換部69aは、遠隔操作信号SGx1に設定されている両操作情報Dx1,Dx2を保持しつつ、無線通信用規格に対応した遠隔操作信号SGx1を、車内通信用規格に対応した制御信号に変換する。
【0114】
車両通信部69は、車両CPU64と電気的に接続されており、両者の間で信号のやり取りが可能となっている。車両通信部69は、遠隔操作信号SGx1を受信した場合には、信号変換部69aを用いて遠隔操作信号SGx1を制御信号に変換し、当該制御信号を車両通信部69に設けられた受信バッファ69bに一時的に記憶しておく。
【0115】
車両CPU64は、遠隔操作装置70を用いてフォークリフト20を遠隔操作する場合には、受信バッファ69bに記憶されている遠隔操作信号SGx1の制御信号に対応した態様でフォークリフト20(詳細には両アクチュエータ61,62)を駆動させる。これにより、フォークリフト20が、遠隔操作信号SGx1に設定された走行操作情報Dx1及び荷役操作情報Dx2に対応した動作を行う。
【0116】
以上のことから、遠隔操作装置70及びフォークリフト20(詳細には両通信部69,76)が通信可能な範囲内に配置されている場合には、両通信部69,76間で送受信される遠隔操作信号SGx1に基づいて、フォークリフト20の遠隔操作を行うことができる。すなわち、本実施形態の産業車両用遠隔操作システム10は、有人操作、及び、遠隔操作装置70を用いた遠隔操作の双方によってフォークリフト20を動作させることが可能に構成されている。
【0117】
ここで、両通信部69,76の通信接続が確立している状況下では、車両通信部69は、後述する制御モードに関わらず、フォークリフト20の車両情報が設定された車両信号SGyを定期的にリモート通信部76に向けて送信している。詳細には、車両CPU64は、車両状態検知部66の検知結果等に基づいて車両情報が設定された車内通信用規格の制御信号を生成し、当該制御信号を車両通信部69に出力する処理を定期的に実行する。車両通信部69は、信号変換部69aを用いて、入力された制御信号を、無線通信用規格であって車両情報が設定された車両信号SGyに変換し、当該車両信号SGyをリモート通信部76に向けて順次送信している。リモートCPU73は、リモート通信部76によって受信された車両信号SGyに基づいて、現在のフォークリフト20の動作状態及び異常を把握できる。
【0118】
車両信号SGyについてより詳細に説明する。
図5に示すように、車両信号SGyには、車両情報として、走行情報Dy1、荷役情報Dy2及び機台情報Dy3が含まれている。機台情報Dy3は、例えば、搭乗者の有無を示す有人情報Dy3aと、切替スイッチ52の状態を示す切替情報Dy3bと、制御モードを示すモード情報Dy3cと、フォークリフト20の異常を示す異常情報Dy3dとを含む。
【0119】
なお、機台情報Dy3は、車両状態検知部66の検知結果に基づいて設定される情報である。ちなみに、異常情報Dy3dは、少なくともフォークリフト20の異常の有無を示す情報であればよく、フォークリフト20の異常の有無のみを示す情報でもよいし、異常の具体的な内容を特定できる情報でもよい。
【0120】
リモートCPU73は、車両信号SGyに含まれる走行情報Dy1及び荷役情報Dy2に基づいて、フォークリフト20の走行状態及びフォーク26の動作状態を把握できる。更に、リモートCPU73は、車両信号SGyに含まれる機台情報Dy3に基づいて、切替スイッチ52の状態、搭乗者の有無、制御モード及び異常の有無を把握できる。
【0121】
図6に示すように、本実施形態の産業車両用遠隔操作システム10は、フォークリフト20の制御モードを複数備えている。詳細には、産業車両用遠隔操作システム10は、制御モードとして、遠隔モード、有人モード、ニュートラルモード及び異常停止モードを有している。各制御モードについて説明する。
【0122】
遠隔モードは、車両操作部40の操作ではなく、遠隔操作装置70による遠隔操作によってフォークリフト20の動作が行われる制御モードである。
図6に示すように、制御モードが遠隔モードである場合には、フォークリフト20において遠隔操作装置70に対する操作に対応した動作が行われる一方、車両操作部40の操作に基づくフォークリフト20の動作は禁止(換言すれば規制)されている。
【0123】
換言すれば、遠隔モードは、遠隔操作装置70による遠隔操作が行われる一方、有人操作(詳細には車両操作部40の操作に基づくフォークリフト20の直接操作)が停止している制御モードと言える。なお、有人操作が停止しているとは、有人操作が禁止又は規制されているとも言える。
【0124】
有人モードは、遠隔操作装置70による遠隔操作ではなく、車両操作部40の操作によってフォークリフト20の動作が行われる制御モードである。
図6に示すように、制御モードが有人モードである場合には、フォークリフト20において車両操作部40の操作に対応した動作が行われる一方、遠隔操作装置70によるフォークリフト20の遠隔操作は禁止(換言すれば規制)されている。
【0125】
換言すれば、有人モードは、有人操作が行われる一方、遠隔操作装置70による遠隔操作が停止している制御モードと言える。なお、遠隔操作が停止しているとは、遠隔操作が禁止又は規制されているとも言える。
【0126】
ニュートラルモードは、遠隔操作装置70による遠隔操作に基づくフォークリフト20の動作及び車両操作部40の操作に基づくフォークリフト20の動作の双方が行われない制御モードである。すなわち、ニュートラルモードは、遠隔操作装置70の遠隔操作及び有人操作の双方を受け付けない制御モードである。換言すれば、ニュートラルモードは、遠隔操作装置70による遠隔操作及び有人操作の双方が停止している制御モードと言える。
【0127】
異常停止モードは、制御モードが遠隔モードである状況においてフォークリフト20に誰かが搭乗した場合等といった想定とは異なる異常事態が発生した場合に設定される制御モードである。異常停止モードは、ニュートラルモードと同様に、遠隔操作装置70による遠隔操作に基づくフォークリフト20の動作及び車両操作部40の操作に基づくフォークリフト20の動作の双方が行われない制御モードである。制御モードが異常停止モードである場合には、遠隔操作装置70の操作及び車両操作部40の操作の双方に関わらず、フォークリフト20は停止されており、その停止状態を維持する。すなわち、異常停止モードは、フォークリフト20が動作を停止しており、遠隔操作装置70の遠隔操作及び有人操作の双方を受け付けない制御モードである。換言すれば、異常停止モードは、遠隔操作装置70による遠隔操作及び有人操作の双方が停止している制御モードと言える。
【0128】
ここで、ニュートラルモードは、遠隔モード又は有人モードへの移行が許容された制御モードである。詳細には、ニュートラルモード中に遠隔モード移行条件が成立した場合には、制御モードはニュートラルモードから遠隔モードに移行する一方、ニュートラルモード中に有人モード移行条件が成立した場合には、制御モードはニュートラルモードから有人モードに移行する。なお、ニュートラルモードは許容モードとも言える。
【0129】
これに対して、異常停止モードは、遠隔モード又は有人モードへの移行が禁止されている制御モードである。詳細には、異常停止モード中に遠隔モード移行条件が成立した場合であっても、異常停止モードから遠隔モードへの制御モードの移行は行われない。同様に、異常停止モード中に有人モード移行条件が成立した場合であっても、異常停止モードから有人モードへの制御モードの移行は行われない。なお、異常停止モードは、ニュートラルモードへの移行が許容されている制御モードである。この点については後述する。
【0130】
図3に示すように、リモートメモリ74には、フォークリフト20の遠隔操作に関する各種処理を実行するためのリモートプログラム74aが記憶されている。リモートプログラム74aは、遠隔操作装置70を用いてフォークリフト20の遠隔操作を行うためのアプリケーションプログラムである。
【0131】
リモートCPU73は、予め定められた遠隔操作起動条件が成立した場合には、リモートプログラム74a(遠隔操作アプリケーション)を起動させる。
本実施形態では、遠隔操作起動条件は遠隔操作装置70に対して起動操作が行われることである。起動操作とは、例えばタッチパネル71に遠隔操作アイコンが表示されている構成においては、当該遠隔操作アイコンに対する入力操作である。
【0132】
但し、遠隔操作起動条件は、これに限られず任意であり、例えば遠隔操作装置70のリモート通信部76とフォークリフト20の車両通信部69との通信接続が確立したことでもよいし、両通信部69,76間の通信接続が確立した条件下において起動操作が行われることでもよい。なお、遠隔操作起動条件において、遠隔操作者の操作は必須ではない。
【0133】
リモートCPU73は、リモートプログラム74aの起動に伴い、まずリモート通信部76と通信可能な範囲内に通信接続が可能なフォークリフト20(換言すれば登録済みのフォークリフト20)をサーチし、当該フォークリフト20が存在する場合には当該フォークリフト20の車両通信部69と通信接続を確立する。これにより、車両通信部69とリモート通信部76とが通信接続状態となる。その後、リモートCPU73は、タッチパネル71に待機画像G1を表示させる。
【0134】
待機画像G1について
図7を用いて説明する。
図7に示すように、待機画像G1には、制御モードが遠隔モードではないことを示す旨が表示されており、例えば待機画像G1の上端付近に「リモートOFF中」と表示されている。なお、当該表示は省略してもよい。
【0135】
また、待機画像G1には、通信接続されているフォークリフト20を示すリモート対象アイコンIc1と、終了アイコンIc2とが表示されている。遠隔操作者は、リモート対象アイコンIc1及び終了アイコンIc2に対して入力操作(例えばタップ操作)を行うことができる。
【0136】
ちなみに、既に説明したとおり、本実施形態の遠隔操作装置70は、複数のフォークリフト20と通信接続を行うことができる。このため、仮に遠隔操作装置70の周囲に通信接続が可能なフォークリフト20が複数存在する場合には、遠隔操作装置70は複数のフォークリフト20と通信接続を確立する。リモートCPU73は、複数のフォークリフト20と通信接続が確立している場合には、待機画像G1に、複数のリモート対象アイコンIc1を表示させる。すなわち、リモートCPU73は、本遠隔操作装置70が複数のフォークリフト20と通信接続している場合には、各フォークリフト20に対応したリモート対象アイコンIc1をそれぞれ表示させる。
【0137】
リモート対象アイコンIc1の表示態様は、制御モードを遠隔モードにすることができるリモート可能状態である場合と、制御モードを遠隔モードにすることができないリモート不可状態である場合とで異なっている。
【0138】
例えば、
図7における2つのリモート対象アイコンIc1のうち下側のものが示すように、リモートCPU73は、リモート不可状態であるフォークリフト20に対応するリモート対象アイコンIc1に、リモート不可状態であることを示す不可表示を行う。具体的には、リモートCPU73は、リモート不可状態であるフォークリフト20に対応するリモート対象アイコンIc1に「×」を表示させる。
【0139】
一方、
図7における2つのリモート対象アイコンIc1のうち上側のものが示すように、リモートCPU73は、リモート可能状態であるフォークリフト20に対応するリモート対象アイコンIc1には不可表示(具体的には「×」の表示)を行わない。これにより、遠隔操作者としては、上側のリモート対象アイコンIc1に対応するフォークリフト20を遠隔操作することができると理解できる。
【0140】
なお、リモート対象アイコンIc1の表示態様は、リモート可能状態とリモート不可状態とで異なっていれば、その具体的な態様は任意である。
本実施形態において、リモート可能状態とは、(A)制御モードがニュートラルモードであり、(B)搭乗者がおらず(すなわち有人センサ51がOFF状態であり)、(C)切替スイッチ52が「遠隔」である、という3つの条件を全て満たしている状態である。一方、リモート不可状態は、リモート可能状態ではない場合、すなわち(A)~(C)の3つの条件のうちいずれか1つでも満たしていない場合である。
【0141】
終了アイコンIc2は、リモートプログラム74aを終了するのに用いられるアイコンである。終了アイコンIc2は、例えば待機画像G1のコーナ部分に設けられている。終了アイコンIc2には、アプリを終了する旨が表示されている。なお、リモート対象アイコンIc1及び終了アイコンIc2の具体的な形状、配置及び表示態様は、上記に限られず、任意である。
【0142】
リモートCPU73は、リモート可能状態であるフォークリフト20に対応したリモート対象アイコンIc1に対する入力操作が行われた場合には、当該フォークリフト20を遠隔操作するための操作画像G2を表示させる。
【0143】
操作画像G2について
図8を用いて説明する。
図8に示すように、操作画像G2はタッチパネル71の全面に表示されている。タッチパネル71が長手方向及び短手方向を有する形状(詳細には矩形状)であることに対応させて、操作画像G2は、長手方向及び短手方向を有する形状(詳細には矩形状)である。
【0144】
操作画像G2には、操作領域A1と、操作領域A1に対して異なる位置に設けられた走行アイコンIc3、荷役アイコンIc4及びリモート停止アイコンIc5とが表示されている。
【0145】
操作領域A1は、操作画像G2における長手方向の両端部のうち一方の端部側に配置されている。操作領域A1は、両手で遠隔操作装置70を把持した場合に、左手の指(例えば親指)が自然と配置される位置に設けられている。なお、操作領域A1内には、フォークリフト20の画像が表示されていてもよい。
【0146】
走行アイコンIc3は、操作画像G2内において操作領域A1に対してタッチパネル71の長手方向に離間した位置に設けられており、詳細には操作画像G2の中央部付近に設けられている。
【0147】
荷役アイコンIc4は、操作画像G2のうち走行アイコンIc3の下方に配置されている。荷役アイコンIc4は、リフトアイコンIc4aと、リーチアイコンIc4bと、チルトアイコンIc4cとを有している。各アイコンIc4a~Ic4cは、タッチパネル71の長手方向に離間して配列されている。なお、操作領域A1、及び、各アイコンIc3,Ic4a~Ic4cの形状や位置関係については、これに限られず、任意である。
【0148】
本実施形態では、リモートCPU73は、各アイコンIc3,Ic4a~Ic4cのいずれかが入力操作(例えばタップ操作)されることにより選択され、その選択されたアイコンに対応した動作が、操作領域A1に対する操作態様に対応する態様で行われるように遠隔操作信号SGx1を生成する。例えば、走行アイコンIc3が選択されている場合には、リモートCPU73は、操作領域A1に対する操作態様に対応する走行速度及び加速度で走行が行われるように遠隔操作信号SGx1を生成する。
【0149】
本実施形態では、操作画像G2において選択されているアイコンは強調表示されている。例えば、走行アイコンIc3が選択されている場合、
図8に示すように、荷役アイコンIc4よりも走行アイコンIc3が強調表示されている。なお、操作領域A1内の画像は、対象動作(走行、リフト動作、リーチ動作、及びチルト動作)に応じて異なってもよい。
【0150】
リモート停止アイコンIc5は、遠隔操作者が遠隔操作を停止させるのに用いられるアイコンである。リモート停止アイコンIc5には、遠隔操作の停止を示唆する表示が行われている。
【0151】
リモート停止アイコンIc5は、例えば操作画像G2のうち操作領域A1に対して反対側に配置されている。すなわち、操作領域A1とリモート停止アイコンIc5とは、操作画像G2における長手方向の両端側に互いに離間して配置されている。このため、リモート停止アイコンIc5は、操作領域A1に対する入力操作を行う手(本実施形態では左手)とは別の手(本実施形態では右手)にて操作し易い位置に配置されている。
【0152】
また、リモート停止アイコンIc5は、操作画像G2における短手方向の中央線よりも上端側に配置されている。このため、遠隔操作者としては、意識的に指を上方に配置しなければリモート停止アイコンIc5をタップ操作することができないため、誤操作が生じにくくなっている。
【0153】
なお、リモートCPU73は、リモートプログラム74aの起動中、待機画像G1又は操作画像G2の他に、所定の画像、例えば各種設定を行う設定画像を表示させてもよい。
リモートCPU73は、リモートプログラム74aの起動に伴い、両通信部69,76の通信接続の確立等の初期設定を行った後は、リモートプログラム74aに設けられたリモート制御処理プログラムを読み出し、リモート制御処理を繰り返し(換言すれば定期的に)実行する。リモート制御処理は、車両通信部69に向けて送信する各種信号を生成する処理である。
【0154】
リモート制御処理について
図9~
図11を用いて説明する。なお、説明の便宜上、以降の説明では、遠隔操作装置70と通信接続が確立しているフォークリフト20は1台とする。
【0155】
図9に示すように、リモートCPU73は、まずステップS101にて、遠隔操作装置70に対して終了操作が行われたか否かを判定する。本実施形態では、終了操作は、終了アイコンIc2への入力操作である。リモートCPU73は、現在表示されている画像及びタッチセンサ72の検知結果に基づいて、終了アイコンIc2への入力操作が行われたか否かを判定する。
【0156】
なお、本実施形態では、終了アイコンIc2は、待機画像G1では表示されている一方、操作画像G2では表示されていない。このため、本実施形態では、終了操作は、待機画像G1が表示されている状況下でのみ行えるようになっている。但し、これに限られず、操作画像G2に終了アイコンIc2が表示され、遠隔操作中に終了操作が可能に構成されていてもよい。また、終了アイコンIc2に対する入力操作の具体的な態様は任意であり、例えば、タップ操作でもよいしロングタップ操作でもよい。
【0157】
リモートCPU73は、終了操作が行われている場合には、ステップS102に進み、リモートプログラム74aを終了するためのアプリ終了処理を実行する。アプリ終了処理は、両通信部69,76の通信接続(ペアリング)の解除、及び、待機画像G1の表示の終了を含む。
【0158】
なお、念のために説明すると、リモートプログラム74aの終了と、遠隔操作装置70による遠隔操作の停止(換言すれば遠隔モードの停止)とは別であり、遠隔モードが停止したからといってリモートプログラム74aは実行中である。このため、遠隔モードが一旦停止して、その後再度遠隔モードが再開される場合がある。また、遠隔モードが停止した後も、両通信部69,76の通信接続状態は維持される。
【0159】
リモートCPU73は、終了操作が行われていない場合には、ステップS103に進み、現在の車両状態を把握する。詳細には、既に説明したとおり、両通信部69,76間の通信接続が確立(換言すれば完了)している状況下では、車両通信部69は、制御モードがいずれであっても、定期的に車両信号SGyをリモート通信部76に向けて送信している。このため、リモート通信部76は、車両信号SGyを定期的に受信する。そして、リモート通信部76は、受信された車両信号SGyに含まれている車両情報(詳細には各情報Dy1~Dy3)を一時的に記憶させておく受信バッファを有している。
【0160】
かかる構成において、リモートCPU73は、ステップS103では、受信バッファに記憶されている最新の車両情報を参照して、フォークリフト20の走行状態、フォーク26の動作状態、切替スイッチ52の状態、搭乗者の有無、制御モード、及びフォークリフト20の異常の有無等の車両状態を把握する。
【0161】
なお、最新の車両情報とは、例えばステップS103の処理の実行前に受信した車両信号SGyのうち最も新しい車両信号SGyの車両情報である。但し、これに限られず、例えばリモートCPU73は、ステップS103において、リモート通信部76が車両信号SGyを受信するまで待機してもよい。
【0162】
また、例えば、リモートCPU73は、ステップS103の処理の実行前にリモート通信部76が1度も車両信号SGyを受信していない場合にのみ車両信号SGyの受信を待機してもよいし、例えば少なくとも1回は車両信号SGyを受信してからリモート制御処理を実行してもよい。
【0163】
なお、遠隔操作装置70が車両状態を把握する具体的な構成は任意である。例えば、リモートメモリ74に、フォークリフト20の車両情報が記憶される記憶領域が設けられており、リモートCPU73は、リモート通信部76が車両信号SGyを受信する度に、当該車両信号SGyに含まれる各情報Dy1~Dy3に基づいて、上記記憶領域を更新する構成でもよい。この場合、リモートCPU73は、上記記憶領域に記憶されている情報を参照することにより、車両状態を把握する。
【0164】
続くステップS104では、リモートCPU73は、ステップS103にて把握された車両状態に基づいて、現在の制御モードが遠隔モードであるか否かを判定する。
現在の制御モードが遠隔モードである場合には、リモートCPU73は、ステップS105にて、リモート遠隔モード処理を実行して、本リモート制御処理を終了する。
【0165】
リモート遠隔モード処理について
図10を用いて説明する。
図10に示すように、リモートCPU73は、まずステップS201にて、操作画像G2を表示させる。なお、既に操作画像G2が表示中である場合には、リモートCPU73は、操作画像G2の表示を維持する。
【0166】
その後、リモートCPU73は、ステップS202にて、遠隔操作装置70に対してリモート停止操作が行われているか否かを判定する。
本実施形態のリモート停止操作は、一例としてリモート停止アイコンIc5に対する入力操作(例えばタップ操作)である。リモートCPU73は、ステップS202では、タッチセンサ72の検知結果に基づいて、リモート停止アイコンIc5に対する入力操作の有無を判定する。
【0167】
リモートCPU73は、リモート停止アイコンIc5に対する入力操作があった場合には、ステップS203にて、遠隔操作装置70による遠隔操作を正常に停止させるための処理を実行して、本リモート遠隔モード処理を終了する。詳細には、リモートCPU73は、遠隔操作装置70による遠隔操作を正常停止することを示す無線通信用規格の信号であるリモート停止信号SGx2を生成し、リモート通信部76を用いて当該リモート停止信号SGx2を車両通信部69に向けて送信する。
【0168】
本実施形態では、リモート停止信号SGx2は、遠隔操作信号SGx1とはデータ形式等が異なる信号である。但し、これに限られず、リモート停止信号SGx2と遠隔操作信号SGx1とは同一のデータ形式の信号でもよい。この場合、遠隔操作信号SGx1に、両操作情報Dx1,Dx2に加えて、リモート停止操作の有無を特定するための情報が設定されているとよい。かかる構成においては、リモート停止操作が行われたことを示す情報が設定された遠隔操作信号SGx1がリモート停止信号SGx2に対応する。なお、リモート停止信号SGx2は、リモート停止操作が行われたことを示す信号とも言える。
【0169】
一方、リモートCPU73は、リモート停止操作が行われていない場合には、ステップS202を否定判定し、遠隔操作装置70に対する操作の一種である遠隔制御操作に対応した遠隔操作信号SGx1の生成及び送信を行うためのステップS204及びステップS205の処理を実行する。
【0170】
詳細には、リモートCPU73は、まずステップS204にて、タッチセンサ72の検知結果及び姿勢検知部75の検知結果に基づいて、遠隔操作装置70に対する遠隔制御操作を把握する。
【0171】
遠隔制御操作は、リモート開始操作及びリモート停止操作とは異なる操作であって、遠隔操作によってフォークリフト20を動作させるための操作である。本実施形態では、遠隔操作装置70に対する遠隔制御操作とは、タッチパネル71における操作領域A1に対する入力操作、第1回転操作及び第2回転操作のうち少なくとも1つである。
【0172】
例えば、リモートCPU73は、タッチセンサ72の検知結果に基づいて、操作領域A1に対する入力操作の一種として、操作領域A1内に対する入力操作を契機とするスライド操作の有無を把握する。スライド操作とは、タッチパネル71に対して入力操作が行われている状態を維持しつつ該入力操作が行われる位置が移動する一連の入力操作である。
【0173】
リモートCPU73は、最初に操作領域A1内に対して入力操作が行われ、その後も入力操作位置が連続している状態で当該入力操作が継続して行われている場合には、スライド操作が行われていると判定し、最初に入力操作が行われた位置である開始位置と現在入力操作が行われている位置との相対位置を把握する。
【0174】
更に、リモートCPU73は、姿勢検知部75の検知結果に基づいて、第1回転操作の有無、及び、第1回転操作が行われている場合にはその回転角度を把握する。
続くステップS205では、リモートCPU73は、ステップS204の把握結果に基づいて、遠隔操作信号SGx1の生成及び送信を行う。
【0175】
詳細には、リモートCPU73は、ステップS204の把握結果に基づいて走行操作情報Dx1を設定する。例えば、各アイコンIc3,Ic4a~Ic4cのうち走行アイコンIc3が選択されている場合、リモートCPU73は、操作領域A1に対するスライド操作の操作態様に基づいて、速度情報Dxv及び加速度情報Dxαを設定し、第1回転操作の操作態様に基づいて操舵角情報Dxθを設定する。
【0176】
また、例えば各アイコンIc3,Ic4a~Ic4cのうち走行アイコンIc3以外が選択されている場合、リモートCPU73は、走行停止に対応した走行操作情報Dx1を設定する。走行停止に対応した走行操作情報Dx1とは、例えば、速度情報Dxv、加速度情報Dxα及び操舵角情報Dxθの全てに「0」が設定されている走行操作情報Dx1である。
【0177】
更に、リモートCPU73は、ステップS204の把握結果に基づいて、荷役操作情報Dx2を設定する。例えば、各アイコンIc4a~Ic4cのいずれかが選択されている場合、リモートCPU73は、選択されているアイコンに対応した荷役操作情報Dx2を設定する。
【0178】
そして、リモートCPU73は、遠隔制御操作に対応した走行操作情報Dx1及び荷役操作情報Dx2が設定された遠隔操作信号SGx1を、リモート通信部76を用いて車両通信部69に向けて送信する。
【0179】
かかる構成によれば、操作画像G2が表示されている状況においてリモート停止操作(詳細にはリモート停止アイコンIc5への入力操作)が行われることに基づいて、リモート停止信号SGx2の送信が行われる。車両CPU64は、車両通信部69がリモート停止信号SGx2を受信することに基づいて、遠隔操作装置70による遠隔操作を正常に停止させるための処理を実行する。これにより、遠隔操作装置70を用いた遠隔操作が正常に停止する。
【0180】
なお、ステップS202の判定処理は、リモート遠隔モード処理において実行される一方、他の制御モード中には実行されない。このため、本実施形態のリモートCPU73は、制御モードが遠隔モードである場合にリモート停止操作について受け付けてリモート停止に係る処理を実行する一方、制御モードが遠隔モードではない場合にはリモート停止操作を受け付けない。
【0181】
また、本実施形態では、リモート停止アイコンIc5は、操作画像G2に表示される一方、待機画像G1には表示されない。この点に着目すれば、本実施形態の遠隔操作装置70は、操作画像G2が表示されている場合にリモート停止操作が可能に構成されている一方、操作画像G2が表示されていない場合にはリモート停止操作が行われないように構成されているとも言える。
【0182】
図9に示すように、リモートCPU73は、現在の制御モードが遠隔モードではない場合には、ステップS106に進み、現在の制御モードが有人モードであるか否かを判定し、現在の制御モードが有人モードである場合には有人モードに対応した処理を実行する。
【0183】
詳細には、リモートCPU73は、ステップS107にて、待機画像G1を表示させる。なお、既に待機画像G1が表示されている場合には、リモートCPU73は、ステップS107では、待機画像G1の表示を維持する。
【0184】
その後、リモートCPU73は、ステップS108にて、両通信部69,76の通信接続状態を維持するための接続維持信号SGx3を送信するための処理を実行して、本リモート制御処理を終了する。
【0185】
詳細には、両通信部69,76は、互いに信号のやり取りを定期的に行っており、規定期間が経過しても信号を受信しない場合には、通信エラーが生じていると判定し、通信接続状態を解除するように構成されている。このため、リモートCPU73は、通信接続状態を維持させるために、リモート通信部76を用いて接続維持信号SGx3を送信する。
【0186】
接続維持信号SGx3の具体的な構成は任意であるが、例えばフォークリフト20の動作を停止させる又は動作停止状態を維持する停止用の遠隔操作信号SGx1であり、詳細には両操作情報Dx1,Dx2に動作停止に対応した数値情報(例えば「0」)が設定された遠隔操作信号SGx1である。
【0187】
かかる構成によれば、制御モードが有人モードである場合には、遠隔制御操作に基づく遠隔操作信号SGx1の生成及び送信は行われない一方、接続維持信号SGx3が定期的に送信される。このため、両通信部69,76の通信接続状態が維持される。また、接続維持信号SGx3は停止用の遠隔操作信号SGx1であるため、仮に接続維持信号SGx3に基づくフォークリフト20の遠隔操作が行われたとしても、フォークリフト20の動作は行われず、停止している。
【0188】
リモートCPU73は、ステップS106にて、現在の制御モードが有人モードではないと判定した場合、ステップS109に進み、現在の制御モードがニュートラルモードであるか否かを判定する。
【0189】
リモートCPU73は、現在の制御モードがニュートラルモードである場合には、ステップS110に進み、リモートニュートラルモード処理を実行する。リモートニュートラルモード処理について
図11を用いて説明する。
【0190】
図11に示すように、リモートCPU73は、ステップS301にて、待機画像G1を表示させる。なお、既に待機画像G1が表示中である場合には、リモートCPU73は、待機画像G1の表示を維持する。
【0191】
その後、リモートCPU73は、ステップS302にて、通信接続が行われているフォークリフト20がリモート可能状態であるか否かを判定する。
詳細には、リモートCPU73は、ステップS103にて参照した車両情報の切替情報Dy3bに基づいて、切替スイッチ52が「遠隔」になっているか否かの判定を行う。また、リモートCPU73は、ステップS103にて参照した車両情報の有人情報Dy3aに基づいて搭乗者の有無の判定を行う。
【0192】
リモートCPU73は、切替スイッチ52が「有人」となっている場合又は搭乗者が検知されている場合には、リモート不可状態であるとして、ステップS302を否定判定し、ステップS303に進む。ステップS303では、リモートCPU73は、待機画像G1に表示されているリモート対象アイコンIc1を不可表示する。その後、リモートCPU73は、ステップS304にて、接続維持信号SGx3を送信するための処理を実行して、本リモートニュートラルモード処理を終了する。
【0193】
一方、リモートCPU73は、切替スイッチ52が「遠隔」となっており且つ搭乗者が検知されていない場合には、リモート可能状態であるとして、ステップS302を肯定判定する。この場合、リモートCPU73は、リモート対象アイコンIc1を不可表示することなく、ステップS305に進む。
【0194】
ステップS305では、リモートCPU73は、遠隔操作装置70に対してリモート開始操作が行われているか否かを判定する。リモート開始操作は、ニュートラルモードから遠隔モードへの移行条件の1つである。リモート開始操作は、例えば待機画像G1に表示されているリモート対象アイコンIc1に対する入力操作(例えばタップ操作)であり、特に本実施形態ではリモート可能状態のフォークリフト20に対応するリモート対象アイコンIc1に対する入力操作である。但し、リモート開始操作は、これに限られず任意である。
【0195】
リモートCPU73は、ステップS305では、タッチセンサ72の検知結果に基づいて、リモート対象アイコンIc1への入力操作の有無を判定する。リモートCPU73は、リモート対象アイコンIc1への入力操作がない場合には、ステップS304に進む一方、リモート対象アイコンIc1への入力操作がある場合には、遠隔操作装置70による遠隔操作を開始すると判定し、ステップS306にてリモート開始信号SGx4を送信するための処理を実行する。
【0196】
リモート開始信号SGx4は、遠隔操作装置70による遠隔操作を開始することを示す無線通信用規格の信号である。リモートCPU73は、ステップS306では、リモート開始信号SGx4を生成し、リモート通信部76を用いて当該リモート開始信号SGx4を車両通信部69に向けて送信する。
【0197】
本実施形態では、リモート開始信号SGx4は、遠隔操作信号SGx1とはデータ形式等が異なる信号である。但し、これに限られず、リモート開始信号SGx4と遠隔操作信号SGx1とは同一のデータ形式の信号でもよい。この場合、遠隔操作信号SGx1に、両操作情報Dx1,Dx2に加えて、リモート開始操作の有無を特定するための情報が設定されているとよい。この場合、リモート開始操作が行われたことを示す情報が設定された遠隔操作信号SGx1がリモート開始信号SGx4に対応する。なお、リモート開始信号SGx4は、リモート開始操作が行われたことを示す信号とも言える。
【0198】
かかる構成によれば、待機画像G1には通信接続が確立しているフォークリフト20に対応したリモート対象アイコンIc1が表示される。リモート対象アイコンIc1は、フォークリフト20がリモート可能状態である場合には不可表示が行われない一方、フォークリフト20がリモート不可状態である場合には不可表示が行われる。そして、フォークリフト20がリモート可能状態である状況においてリモート開始操作が行われることに基づいて、リモート開始信号SGx4が送信される。
【0199】
なお、本実施形態におけるニュートラルモードから遠隔モードへの移行条件である遠隔モード移行条件は、切替スイッチ52が「遠隔」となっており且つ搭乗者が検知されていない状況においてリモート開始操作が行われることである。
【0200】
図9に示すように、ステップS104,S106,S109の判定処理が全て否定判定である場合には、現在の制御モードが異常停止モードであることを意味する。この場合、リモートCPU73は、異常停止モードに対応したステップS111,S112の処理を実行して、本リモート制御処理を終了する。
【0201】
詳細には、リモートCPU73は、ステップS111にて、動作を停止していることを報知する動作停止報知の一種である異常停止表示を行う。
異常停止表示とは、遠隔操作者に対して異常停止が行われていることを示す報知である。本実施形態における異常停止表示とは、例えば
図8に示すように、操作画像G2に「異常停止中」と表示されることである。
【0202】
但し、異常停止表示の具体的な表示態様は、これに限られず任意であり、例えば強調されるように、異常停止表示が他のアイコンとは異なる色等で行われてもよい。また、リモートCPU73は、異常停止表示として、待機画像G1又は操作画像G2とは異なる専用の画像を表示させてもよい。
【0203】
なお、既に異常停止表示が行われている場合には、リモートCPU73は、ステップS111では異常停止表示を維持する。また、本実施形態では、制御モードが遠隔モードから異常停止モードに移行した場合には、操作画像G2に異常停止表示が行われる一方、制御モードが有人モードから異常停止モードに移行した場合には、待機画像G1に異常停止表示が行われる。つまり、異常停止モードへの移行元の制御モードに応じて、タッチパネル71に表示される画像が異なっている。但し、これに限られず、移行元の制御モードに関わらず、待機画像G1又は操作画像G2のいずれか一方が表示されてもよい。
【0204】
次にステップS112では、リモートCPU73は、リモート通信部76を用いて接続維持信号SGx3を車両通信部69に向けて送信するための処理を実行する。
かかる構成によれば、制御モードが遠隔モードである場合には、タッチパネル71に操作画像G2が表示される一方、制御モードがニュートラルモード又は有人モードである場合には、タッチパネル71に待機画像G1が表示される。
【0205】
このため、例えば制御モードがニュートラルモードから遠隔モードに切り替わった場合には、タッチパネル71に表示される画像が待機画像G1から操作画像G2に切り替わる。これにより、遠隔操作者は、遠隔操作装置70を用いた遠隔操作を実行できる。
【0206】
一方、例えばリモート停止操作が行われることによって制御モードが遠隔モードからニュートラルモードに移行した場合には、タッチパネル71に表示される画像が操作画像G2から待機画像G1に切り替わる。これにより、遠隔操作者は、遠隔操作装置70を用いた遠隔操作が停止したことを理解できる。
【0207】
また、制御モードが異常停止モードである期間に亘って、異常停止表示が継続して行われる。詳細には、異常停止表示は、制御モードが遠隔モード又は有人モードから異常停止モードに切り替わることに基づいて開始され、制御モードが異常停止モードからニュートラルモードに切り替わることに基づいて終了する。例えば、制御モードが遠隔モード→異常停止モード→ニュートラルモードに切り替わった場合には、タッチパネル71に表示される画像は、異常停止表示なしの操作画像G2→異常停止表示ありの操作画像G2→待機画像G1に切り替わる。
【0208】
ここで、本実施形態では、制御モードに関わらず、リモート通信部76から車両通信部69に向けて信号が定期的に送信されている。このため、両通信部69,76の通信接続状態は、制御モードに関わらず、維持されている。つまり、両通信部69,76の通信接続状態は、遠隔操作装置70を用いた遠隔操作が行われない制御モード中であっても維持されており、制御モードの移行は、通信接続状態が維持された状態で行われる。
【0209】
次に、フォークリフト20の車両CPU64による各種制御について説明する。
車両CPU64は、車両通信部69とリモート通信部76との通信接続が確立したこと、すなわち車両通信部69とリモート通信部76とが通信接続状態となったことに基づいて、各種初期設定を行う。
【0210】
例えば、車両CPU64は、制御モードをニュートラルモードに設定する。詳細には、車両メモリ65には、制御モードを特定するためのモード情報が記憶されたモード記憶領域が設けられており、車両CPU64は、上記記憶領域に記憶されているモード情報に基づいて、現在の制御モードを特定する。かかる構成において、車両CPU64は、初期設定として、上記モード情報を、ニュートラルモードに対応した情報に設定する。つまり、本実施形態における初期制御モードはニュートラルモードである。
【0211】
また、車両CPU64は、初期設定として、現在の車両状態を把握し、車両通信部69を用いて現在の車両状態に対応した車両信号SGyを送信する。これにより、リモートCPU73が、通信接続が確立した段階、換言すれば初期段階での車両状態を把握できる。
【0212】
図3に示すように、車両メモリ65には、フォークリフト20の制御と車両信号SGyの送信とを行う車両制御処理を実行するための車両制御処理実行プログラム65aが記憶されている。車両制御処理は、遠隔操作装置70を用いてフォークリフト20を遠隔操作するための処理を含む。このため、車両制御処理実行プログラム65aは、遠隔操作装置70を用いてフォークリフト20を遠隔操作するためのプログラムと言える。
【0213】
本実施形態では、車両制御処理実行プログラム65aが「産業車両用遠隔操作プログラム」に対応する。また、車両制御処理実行プログラム65aが記憶されている車両メモリ65は、産業車両用遠隔操作プログラムを格納するコンピュータ読取可能媒体である。コンピュータ読取可能媒体は、電子的、磁気的、光学的、電磁気的など任意の態様で各種コンピュータプログラムを格納する任意の媒体である。コンピュータ読取可能媒体は、非一時的コンピュータ読取可能媒体を含む。
【0214】
車両CPU64は、車両通信部69とリモート通信部76とが通信接続状態となっている場合に、車両制御処理実行プログラム65aを読み出し、車両制御処理を繰り返し実行する。
【0215】
なお、本実施形態では、車両制御処理は、特定周期で定期的に実行される。このため、車両信号SGyは、特定周期で定期的に送信されることとなる。但し、車両信号SGyの送信間隔は特定周期から前後してもよい。つまり、車両信号SGyは繰り返し送信されればよく、車両信号SGyの送信間隔は一定である必要はない。
【0216】
車両制御処理について
図12~
図17を用いて説明する。
図12に示すように、車両CPU64は、まずステップS401にて、今回の車両制御処理において対象となる制御信号(換言すればリモート通信部76からの受信信号)を把握する。
【0217】
詳細には、車両CPU64は、車両通信部69に設けられている受信バッファ69bに記憶されている制御信号が遠隔操作信号SGx1(又は接続維持信号SGx3)、リモート停止信号SGx2、及びリモート開始信号SGx4のうちいずれの信号を変換したものであるのかを把握する。また、制御信号が遠隔操作信号SGx1である場合には、車両CPU64は、当該制御信号に含まれる各操作情報Dx1,Dx2についても把握する。
【0218】
なお、受信バッファ69bは、1つの制御信号を記憶している構成でもよいし、複数の制御信号を記憶している構成でもよい。受信バッファ69bに複数の制御信号が記憶されている構成においては、車両CPU64は、受信バッファ69bに記憶されている複数の制御信号のうち最も古いものを把握する。
【0219】
続くステップS402では、車両CPU64は、車両操作部40の操作に関わらず動作を停止させる動作停止制御中であるか否かを判定する。詳細には、車両メモリ65には、動作停止制御中であるか否かを特定するための動作停止制御フラグがセットされる記憶領域が設けられている。車両CPU64は、動作停止制御が行われている場合に動作停止制御フラグをセットするように構成されている。
【0220】
車両CPU64は、上記記憶領域に動作停止制御フラグがセットされている場合には、動作停止制御中であると判定する一方、動作停止制御フラグがセットされていない場合には、動作停止制御中ではないと判定する。
【0221】
車両CPU64は、動作停止制御中であると判定した場合には、ステップS403にて、動作停止制御中に対応した動作停止制御中処理を実行して、ステップS411に進む。
動作停止制御中処理は、動作停止制御が開始されてから当該動作停止制御が終了するまでの期間中に行われる処理である。詳細には、フォークリフト20の走行及びフォーク26の動作は、慣性力が働く関係上、動作停止制御が開始されてから直ちに停止しない場合がある。このため、動作停止制御が開始されてから当該動作停止制御が終了するまでにはタイムラグが生じ得る。当該タイムラグ(特に走行停止に係る停止制御)は、車両制御処理の実行周期よりも長い場合がある。このため、本実施形態では、車両CPU64は、動作停止制御中処理を実行するように構成されている。
【0222】
動作停止制御中処理について
図13を用いて説明する。
図13に示すように、車両CPU64は、まずステップS501にて、フォークリフト20の動作が停止しているか否かを判定する。詳細には、車両CPU64は、車両状態検知部66の検知結果に基づいて、走行且つフォーク26の動作が停止しているか否かを判定する。
【0223】
車両CPU64は、走行又はフォーク26の動作のいずれかが行われている場合には、ステップS502に進み、動作停止制御を継続して、本動作停止制御中処理を終了する。
ステップS502の処理について詳細に説明すると、車両CPU64は、現在走行中である場合には、当該走行が停止するように走行アクチュエータ61の駆動制御を継続させる。この場合、車両CPU64は、一定の強制停止用減速度でフォークリフト20を減速させる構成でもよいし、ステップS502の処理を実行するごとに、現在の走行速度又は加速度に基づいて強制停止用減速度を算出し、該強制停止用減速度で減速させてもよい。
【0224】
要は、動作停止制御における減速態様としては、一定の減速度で減速する構成に限られず、減速度が可変となっている構成でもよい。減速度が可変である構成においては、例えば車両CPU64は、徐々に減速度を大きくしてもよいし、徐々に減速度を小さくしてもよい。
【0225】
また、フォーク26が動作中である場合には、車両CPU64は、フォーク26の動作が直ちに停止するように荷役アクチュエータ62の駆動制御を継続する。
一方、フォークリフト20の動作が停止している場合には、車両CPU64は、動作停止制御が完了したとして、ステップS501を肯定判定し、ステップS503に進む。
【0226】
ステップS503では、車両CPU64は、動作停止制御を終了する処理を実行して、本動作停止制御中処理を終了する。詳細には、車両CPU64は、動作停止制御中フラグを消去する。これにより、車両CPU64は動作停止制御の終了を特定できる。
【0227】
なお、動作停止制御中処理では、ステップS401にて把握された制御信号に対応する処理、及び、車両操作部40の操作に対応する処理は実行されない。すなわち、フォークリフト20は、動作停止制御中は、遠隔操作装置70から送信される信号に対応した動作、及び、車両操作部40の操作に対応した動作を行わないように構成されている。換言すれば、動作停止制御とは、遠隔制御操作及び車両操作部40の操作に関わらず、動作を停止させる制御であるとも言える。
【0228】
図12に示すように、車両CPU64は、動作停止制御中ではない場合には、ステップS402を否定判定し、ステップS404にて、現在の制御モードがニュートラルモードであるか否かを判定する。詳細には、車両CPU64は、車両メモリ65に設けられているモード記憶領域に記憶されているモード情報に基づいて現在の制御モードを特定し、現在の制御モードがニュートラルモードであるか否かを判定する。
【0229】
車両CPU64は、現在の制御モードがニュートラルモードではない場合には、ステップS406に進む一方、現在の制御モードがニュートラルモードである場合には、ステップS405にて車両ニュートラルモード処理を実行して、ステップS411に進む。
【0230】
車両ニュートラルモード処理について
図14を用いて説明する。
図14に示すように、車両CPU64は、まずステップS601にて、ニュートラルモードから有人モードへの移行条件である有人モード移行条件が成立しているか否かを判定する。
【0231】
本実施形態における有人モード移行条件は、搭乗者がいること(詳細には有人センサ51がON状態であること)、且つ、切替スイッチ52が「有人」であることである。
車両CPU64は、有人センサ51がON状態であり、且つ、切替スイッチ52が「有人」となっている場合には、有人モード移行条件が成立しているとして、ステップS602に進み、制御モードをニュートラルモードから有人モードに移行させて本車両ニュートラルモード処理を終了する。詳細には、車両CPU64は、モード記憶領域に記憶されているモード情報を、有人モードに対応した情報に更新する。
【0232】
一方、車両CPU64は、有人モード移行条件が成立していない場合、すなわち有人センサ51がOFF状態、又は、切替スイッチ52が「遠隔」となっている場合には、ステップS603に進み、遠隔モード移行条件が成立しているか否かを判定する。
【0233】
詳細には、車両CPU64は、現在のフォークリフト20がリモート可能状態であり且つリモート開始信号SGx4を受信しているか否かを判定する。
既に説明したとおり、リモート可能状態とは、(A)制御モードがニュートラルモードであり、(B)有人センサ51がOFF状態であり、(C)切替スイッチ52が「遠隔」である、という3つの条件を全て満たしている状態である。ここで、車両ニュートラルモード処理は、制御モードがニュートラルモードである場合に実行される処理であるため、既に(A)の条件は満たしている。このため、車両CPU64は、ステップS603では、(B),(C)の条件を満たし、且つ、今回の車両制御処理におけるステップS401にて把握した制御信号がリモート開始信号SGx4の変換信号であるか否かを判定する。
【0234】
車両CPU64は、有人センサ51がON状態である場合、切替スイッチ52が「有人」である場合、又は今回の車両制御処理のステップS401において把握した制御信号がリモート開始信号SGx4の変換信号ではない場合には、制御モードをニュートラルモードに維持したまま、本車両ニュートラルモード処理を終了する。
【0235】
一方、車両CPU64は、(B),(C)の条件を満たし、且つ、リモート開始信号SGx4を受信している場合には、ステップS604に進み、制御モードをニュートラルモードから遠隔モードに移行させて、本車両ニュートラルモード処理を終了する。具体的には、車両CPU64は、モード情報を、遠隔モードに対応した情報に更新する。
【0236】
かかる構成によれば、ニュートラルモード中に有人モード移行条件が成立している場合には、ニュートラルモードから有人モードへの制御モードの移行が行われる一方、遠隔モード移行条件が成立している場合には、ニュートラルモードから遠隔モードへの制御モードの移行が行われる。
【0237】
ここで、本実施形態では、遠隔モード移行条件と有人モード移行条件とは、同時に成立し得ないように構成されている。例えば、有人モード移行条件は、有人センサ51がON状態であることを含む一方、遠隔モード移行条件は有人センサ51がOFF状態であることを含む。このため、遠隔モード移行条件と有人モード移行条件とが同時に成立することによる不都合、詳細にはどちらの制御モードに移行するのか不定となることに起因してフォークリフト20の動作が不安定となったり操作性が低下したりすることを回避できる。
【0238】
ちなみに、車両ニュートラルモード処理においては、車両通信部69が受信した信号に基づく各アクチュエータ61,62の駆動制御処理、及び、車両操作部40の操作に基づく各アクチュエータ61,62の駆動制御処理は実行されない。すなわち、車両CPU64は、ニュートラルモード中には、遠隔操作装置70を用いた遠隔操作及び有人操作の双方が行われないように規制(換言すれば禁止)している。
【0239】
図12に示すように、車両CPU64は、ステップS406では、現在の制御モードが有人モードであるか否かを判定する。車両CPU64は、現在の制御モードが有人モードではない場合にはステップS408に進む一方、現在の制御モードが有人モードである場合には、ステップS407にて車両有人モード処理を実行して、ステップS411に進む。
【0240】
車両有人モード処理について
図15を用いて説明する。
図15に示すように、車両CPU64は、まずステップS701にて、有人センサ51がON状態であるか否かを判定する。車両CPU64は、有人センサ51がON状態である場合には、ステップS702~S706にて、有人操作を実行するための処理を実行する。
【0241】
詳細には、車両CPU64は、ステップS702にて、操作センサ63の検知結果に基づいて、車両操作部40の操作が行われているか否かを判定する。車両CPU64は、車両操作部40の操作が行われている場合には、ステップS703に進み、車両操作部40の操作態様である車両操作態様を把握する。例えばディレクションレバー41が操作されている場合には、車両CPU64は、操作センサ63の検知結果に基づいて、当該ディレクションレバー41の操作方向及び操作量を把握する。同様に、例えば荷役レバー43が操作されている場合には、車両CPU64は、操作センサ63の検知結果に基づいて、どの荷役レバー43が操作されているのかを把握するとともに、その荷役レバー43の操作方向及び操作量を把握する。ブレーキペダル44やハンドル42についても同様である。
【0242】
その後、車両CPU64は、ステップS704にて、ステップS703にて把握された車両操作態様に基づいて各アクチュエータ61,62を駆動制御して、本車両有人モード処理を終了する。
【0243】
一方、車両CPU64は、車両操作部40の操作がない場合には、ステップS702を否定判定し、ステップS705に進む。ステップS705では、車両CPU64は、フォークリフト20が動作中であるか否かを判定する。
【0244】
車両CPU64は、フォークリフト20が動作中ではない場合、すなわち走行停止中であって且つフォーク26が停止している場合には、車両有人モード処理を終了する。
一方、車両CPU64は、フォークリフト20が動作中である場合、すなわち走行中又はフォーク26の動作中である場合には、ステップS706にて、動作を停止させるように各アクチュエータ61,62を制御する動作停止制御を開始し、車両有人モード処理を終了する。なお、動作停止制御は、動作停止制御中であることを示す動作停止制御フラグをセットする処理を含む。
【0245】
なお、動作停止制御の開始時における具体的な駆動制御態様は任意であり、例えばフォークリフト20が走行中に動作停止制御が開始される場合には、車両CPU64は、規定の強制停止用減速度で減速を開始してもよいし、現在の走行速度及び加速度に基づいて強制停止用減速度を導出し、当該強制停止用減速度で減速するようにしてもよい。また、フォーク26の動作中に動作停止制御が開始される場合には、車両CPU64は、直ちにフォーク26の動作を停止させてもよいし、所定の減速度で動作速度を下げてから動作を停止させてもよい。
【0246】
かかる構成によれば、有人センサ51によって搭乗者が検知されている状況下では車両操作部40の操作に基づいてフォークリフト20の動作が行われる。また、有人センサ51によって搭乗者が検知されている場合であっても、車両操作部40の操作が行われていない場合には、自動的にフォークリフト20の動作が停止する。
【0247】
ちなみに、車両有人モード処理においては、遠隔操作信号SGx1に対応する処理は実行されない。すなわち、車両CPU64は、有人モード中には、遠隔操作装置70を用いた遠隔操作が行われないように規制(換言すれば禁止)している。
【0248】
車両CPU64は、有人センサ51がON状態ではない場合、すなわち有人センサ51によって搭乗者が検知されていない場合には、ステップS701を否定判定し、ステップS707に進む。ステップS707では、車両CPU64は、フォークリフト20が動作中であるか否かを判定する。
【0249】
フォークリフト20が動作中ではない場合(すなわち動作停止中である場合)には、車両CPU64は、有人モードを正常に終了するための処理を実行する。詳細には、車両CPU64は、ステップS708に進み、制御モードを有人モードからニュートラルモードに移行して、本車両有人モード処理を終了する。
【0250】
一方、フォークリフト20が動作中である場合には、車両CPU64は、異常停止に係る処理を実行する。
詳細には、車両CPU64は、ステップS709にて、制御モードを有人モードから異常停止モードに移行させる。詳細には、車両CPU64は、モード情報を、異常停止モードに対応した情報に更新する。そして、車両CPU64は、ステップS710にて、動作停止制御を開始して、本車両有人モード処理を終了する。なお、ステップS710の具体的な処理内容は、ステップS706と同様である。
【0251】
かかる構成によれば、制御モードが有人モードであってフォークリフト20が動作停止中である状況において有人センサ51がOFF状態となることに基づいて、制御モードが有人モードからニュートラルモードに移行する。これにより、フォークリフト20の動作が停止してから搭乗者が運転室32から降車することにより、正常に有人モードを終了することができる。
【0252】
一方、制御モードが有人モードであってフォークリフト20の動作が行われている状況において有人センサ51がOFF状態となることに基づいて、制御モードが有人モードから異常停止モードに移行する。これにより、例えば車両操作部40の操作に基づく動作が行われたまま搭乗者が降車した場合には、異常事態であるとして、制御モードが有人モードから異常停止モードに移行する。更に、動作停止制御が行われ、フォークリフト20の動作が停止する。
【0253】
図12に示すように、車両CPU64は、ステップS408では、現在の制御モードが遠隔モードであるか否かを判定する。車両CPU64は、現在の制御モードが遠隔モードである場合には、ステップS409にて車両遠隔モード処理を実行して、ステップS411に進む。
【0254】
車両遠隔モード処理について
図16を用いて説明する。
図16に示すように、車両CPU64は、まずステップS801にて、有人センサ51がOFF状態であるか否かを判定する。
【0255】
有人センサ51がOFF状態である場合、すなわち運転室32に搭乗者がいない場合には、車両CPU64は、ステップS802~S808にて、リモート通信部76から送信された信号に対応した処理を実行する。
【0256】
詳細には、車両CPU64は、ステップS802にて、車両通信部69がリモート停止信号SGx2を受信しているか否かを判定する。詳細には、車両CPU64は、今回の車両制御処理のステップS401において把握した制御信号がリモート停止信号SGx2の変換信号であるか否かを判定する。
【0257】
車両CPU64は、今回把握した制御信号がリモート停止信号SGx2の変換信号である場合には、ステップS803~S805にて、正常に遠隔モードを終了させるための処理を実行する。
【0258】
具体的には、車両CPU64は、ステップS803にて、制御モードを遠隔モードからニュートラルモードに移行させる。
その後、車両CPU64は、ステップS804,S805の処理を実行する。当該ステップS804,S805の処理は、ステップS705,S706の処理と同一であるため、詳細な説明を省略する。
【0259】
車両通信部69がリモート停止信号SGx2を受信していない場合には、車両CPU64は、ステップS802を否定判定して、ステップS806に進み、車両通信部69が遠隔操作信号SGx1を受信しているか否かを判定する。詳細には、車両CPU64は、今回の車両制御処理のステップS401において把握した制御信号が遠隔操作信号SGx1の変換信号であるか否かを判定する。
【0260】
車両CPU64は、今回把握した制御信号が遠隔操作信号SGx1の変換信号ではない場合には、ステップS804に進む。一方、車両CPU64は、今回把握した制御信号が遠隔操作信号SGx1の変換信号である場合には、ステップS807,S808にて、フォークリフト20が遠隔操作信号SGx1に対応した動作を行うように各アクチュエータ61,62を駆動制御する。
【0261】
詳細には、車両CPU64は、ステップS807にて、今回の遠隔操作信号SGx1に含まれている両操作情報Dx1,Dx2を把握する。そして、車両CPU64は、ステップS808にて、操作情報Dx1,Dx2に基づいてアクチュエータ61,62を制御して、本車両遠隔モード処理を終了する。
【0262】
かかる構成によれば、遠隔モード中に車両通信部69がリモート停止信号SGx2を受信している場合、すなわちリモート停止操作が行われた場合、フォークリフト20が動作中であるか否かに関わらず、制御モードが遠隔モードからニュートラルモードに移行する。これにより、遠隔操作装置70による遠隔操作が停止する。すなわち、本実施形態において、遠隔モードからニュートラルモードへの移行条件は、フォークリフト20の動作の有無に関わらずリモート停止操作が行われることである。また、フォークリフト20が動作中にリモート停止操作が行われた場合には、遠隔制御操作及び車両操作部40の操作に関わらず、フォークリフト20の動作が停止する。
【0263】
車両CPU64は、有人センサ51がON状態である場合には、ステップS809~S811にて、異常停止に係る処理を実行する。すなわち、本実施形態において、遠隔モードから異常停止モードへの移行条件は、有人センサ51がON状態となることである。
【0264】
詳細には、車両CPU64は、ステップS809にて、制御モードを遠隔モードから異常停止モードに移行させる。続くステップS810にて、車両CPU64は、フォークリフト20が動作中であるか否かを判定する。そして、車両CPU64は、フォークリフト20が動作中ではない場合にはそのまま本車両遠隔モード処理を終了する一方、フォークリフト20が動作中である場合には、ステップS811にて動作停止制御を開始して、本車両遠隔モード処理を終了する。なお、ステップS811の具体的な処理内容はステップS710と同様である。
【0265】
かかる構成によれば、制御モードが遠隔モードである状況において、異常停止モードへの移行条件及びニュートラルモードへの移行条件の双方が成立しておらず、且つ、車両通信部69が遠隔操作信号SGx1を受信している場合には、当該遠隔操作信号SGx1に対応した動作(換言すれば遠隔制御操作に対応した動作)が行われる。これにより、遠隔操作装置70を用いてフォークリフト20を遠隔操作することができる。
【0266】
一方、異常停止モードへの移行条件又はニュートラルモードへの移行条件が成立している場合には、制御モードが遠隔モードから異常停止モード又はニュートラルモードに移行する。
【0267】
ここで、本実施形態では、異常停止モードへの移行条件の成否判定(ステップS801)は、ニュートラルモードへの移行条件の成否判定(ステップS802)よりも先に行われる。このため、車両CPU64は、異常停止モードへの移行条件とニュートラルモードへの移行条件との双方が成立している場合には、異常停止モードへの移行を優先する。これにより、異常事態であるにも関わらず正常に遠隔操作が停止されることを回避できる。
【0268】
なお、有人センサ51がOFF状態である場合にステップS802の処理が実行されることを鑑みれば、遠隔モードからニュートラルモードへの移行条件は、有人センサ51がOFF状態であり且つリモート停止操作が行われていることとも言える。
【0269】
また、車両遠隔モード処理では、車両操作部40の操作に基づく各アクチュエータ61,62の駆動制御処理は実行されない。このため、車両CPU64は、遠隔モード中には、フォークリフト20の有人操作を規制(換言すれば禁止)していると言える。
【0270】
ちなみに、本実施形態では、遠隔モードからニュートラルモードに移行するときにフォークリフト20が動作中であれば動作停止制御が行われる。そして、車両CPU64は、動作停止制御中は、車両ニュートラルモード処理を実行しないように構成されている。このため、本実施形態では、フォークリフト20の動作中に制御モードが遠隔モードからニュートラルモードに移行した場合には、当該動作が停止するまでは、ニュートラルモードから遠隔モード又は有人モードへの移行が行われないようになっている。これにより、安全性の向上を図ることができる。
【0271】
但し、これに限られず、車両CPU64は、フォークリフト20の動作中に制御モードが遠隔モードからニュートラルモードに移行した場合には、当該動作が停止する前に、ニュートラルモードから遠隔モード又は有人モードへの移行を許容してもよい。この場合、制御モードの早期の移行を実現でき、応答性の向上を図ることができる。
【0272】
なお、本実施形態では、有人モードからニュートラルモードへの移行条件の1つは動作が停止していることであるため、有人モードからニュートラルモードへ移行した時点で、既にフォークリフト20の動作は停止している。
【0273】
図12に示すように、車両CPU64は、現在の制御モードが遠隔モードではない場合には、ステップS410にて車両異常停止モード処理を実行して、ステップS411に進む。
【0274】
車両異常停止モード処理について
図17を用いて説明する。
図17に示すように、車両CPU64は、ステップS901にて、異常解除操作が行われたか否かを判定する。本実施形態における異常解除操作は、異常解除スイッチ53を操作することである。
【0275】
なお、異常解除スイッチ53が2つ設けられている本実施形態においては、異常解除操作は、両異常解除スイッチ53の少なくとも一方が操作されることである。但し、異常解除操作は、これに限られず任意である。
【0276】
車両CPU64は、異常解除スイッチ53が操作されていない場合には、異常停止モードをそのまま継続して本車両異常停止モード処理を終了する。
一方、車両CPU64は、異常解除スイッチ53が操作されている場合には、ステップS902にて、異常停止モードを終了(換言すれば解除)する。詳細には、車両CPU64は、制御モードを、異常停止モードからニュートラルモードに移行させる。その後、車両CPU64は、車両異常停止モード処理を終了する。
【0277】
ここで、既に説明したとおり、制御モードが異常停止モードに移行した場合においてフォークリフト20が動作中である場合には、動作停止制御が開始される(ステップS710,S811)。当該動作停止制御は、動作が停止するまで継続され、動作停止制御が行われている期間中は、車両異常停止モード処理は実行されない。このため、仮に動作停止制御中に異常解除操作が行われたとしても、制御モードは、ニュートラルモードに移行することなく、異常停止モードを維持する。
【0278】
また、本実施形態では、車両異常停止モード処理は、動作停止制御の終了後、すなわちフォークリフト20の動作が停止しているときに実行される。この点に着目すれば、本実施形態における異常停止モードの解除条件は、動作停止中に異常解除操作が行われることとも言える。
【0279】
図12に示すように、車両CPU64は、ステップS411では、今回把握した制御信号を受信バッファ69bから消去する。これにより、車両制御処理を実行する度に、受信バッファ69bに記憶されている制御信号が消去される。なお、受信バッファ69bに複数の制御信号が記憶されており、車両CPU64が古い制御信号から順に把握する構成においては、古い制御信号から順に消去される。
【0280】
ここで、本実施形態では、制御信号は用いられることなく消去される場合がある。例えば、動作停止制御中処理及び異常停止モード処理では、制御信号は参照されない。また、車両遠隔モード処理において、異常停止モード又はニュートラルモードへの移行が行われる場合には、制御信号は参照されない。これらの場合には、制御信号は、当該制御信号に含まれる情報に基づく制御が行われることなく、消去される。
【0281】
特に、本実施形態では、リモートCPU73は、制御モードが異常停止モード中であっても、定期的に接続維持信号SGx3を送信し続ける。この場合、車両CPU64は、異常停止モード中は、異常解除操作が行われるまで、制御信号を参照することなく異常停止モードを維持する。このため、フォークリフト20は、異常停止モード中には、車両通信部69が受信する接続維持信号SGx3に対応した動作を行うことなく、当該接続維持信号SGx3を変換して得られる制御信号を消去し続ける。
【0282】
その後、車両CPU64は、車両信号SGyを送信するための処理を実行して、本車両制御処理を終了する。
詳細には、車両CPU64は、ステップS412にて、現在の車両状態を把握する。車両状態は、走行情報Dy1に関する走行速度や加速度、及び、荷役情報Dy2に関するフォーク26の位置や動作速度を把握する。更に、車両CPU64は、車両状態検知部66の検知結果やモード記憶領域の情報に基づいて、機台情報Dy3に関するものとして、有人センサ51の検知結果、切替スイッチ52の状態、現在の制御モード及びフォークリフト20の異常を把握する。
【0283】
続くステップS413では、車両CPU64は、ステップS412にて把握された車両状態に基づいて、走行情報Dy1、荷役情報Dy2及び機台情報Dy3が設定された車内通信用規格の制御信号を生成し、当該制御信号を車両通信部69に出力する。車両通信部69は、上記制御信号が入力されることに基づいて、信号変換部69aを用いて、無線通信用規格の車両信号SGyに変換し、当該車両信号SGyをリモート通信部76に向けて送信する。
【0284】
かかる構成によれば、現在の制御モードに対応した処理又は動作停止制御中処理が実行された後には、現在の車両状態に対応した車両信号SGyが送信される。これにより、リモートCPU73は、車両状態を把握することができる。
【0285】
ここで、既に説明したとおり、車両制御処理は定期的に実行されるため、車両信号SGyを送信する処理(ステップS413)は定期的に実行される。これにより、車両信号SGyは定期的に送信されることとなる。例えば、制御モードが異常停止モードである場合、異常停止モードを示すモード情報Dy3cが設定された車両信号SGyが繰り返し送信され、制御モードがニュートラルモードである場合、ニュートラルモードを示すモード情報Dy3cが設定された車両信号SGyが繰り返し送信される。
【0286】
本実施形態では、車両制御処理が「モード制御ステップ」に対応し、当該車両制御処理を実行する車両CPU64が「モード制御部」に対応する。
次に本実施形態の作用として、ニュートラルモード、遠隔モード、有人モード及び異常停止モードの関係性について
図18を用いて説明する。
【0287】
図18に示すように、ニュートラルモード中には、有人センサ51がOFF状態であり且つ切替スイッチ52が「遠隔」である状況においてリモート開始操作が行われたことに基づいて、制御モードが遠隔モードに移行する一方、有人センサ51がON状態であり且つ切替スイッチ52が「有人」である場合には、制御モードが有人モードに移行する。
【0288】
遠隔モード中には、リモート停止操作が行われることによって、制御モードがニュートラルモードに移行する。また、フォークリフト20の動作が行われている状況においてリモート停止操作が行われた場合には、ニュートラルモードへの移行に加えて、遠隔制御操作及び車両操作部40の操作に関わらず当該動作を停止する動作停止制御が行われる。
【0289】
また、遠隔モード中に有人センサ51がON状態となることによって、制御モードが異常停止モードに移行する。また、フォークリフト20の動作が行われている状況において有人センサ51がON状態となった場合には、異常停止モードへの移行に加えて動作停止制御が行われる。
【0290】
図18に示すように、有人モード中において、動作停止中に有人センサ51がOFF状態となることによって、制御モードがニュートラルモードに移行する。一方、有人モード中において、フォークリフト20の動作中に有人センサ51がOFF状態となることによって、制御モードが異常停止モードに移行し、且つ、動作停止制御が実行される。
【0291】
異常停止モード中には、フォークリフト20の動作停止中に異常解除操作が行われることによって、制御モードがニュートラルモードに移行する一方、異常解除操作が行われない限り、異常停止モードが維持される。
【0292】
なお、本実施形態では、異常停止モードから遠隔モード又は有人モードへの移行は行われない。このため、異常停止モードから遠隔モード又は有人モードへ移行させるためには、必ずニュートラルモードを経由する必要がある。詳細には、異常停止モードから遠隔モードに移行させるためには、異常解除操作とニュートラルモードから遠隔モードへの移行条件を満たす操作とを順番に行う必要がある。同様に、異常停止モードから有人モードに移行させるためには、異常解除操作とニュートラルモードから有人モードへの移行条件を満たす操作とを順番に行う必要がある。
【0293】
ちなみに、既に説明したとおり、車両制御処理は、車両通信部69とリモート通信部76とが通信接続状態となっている状況において実行されるものである。このため、車両CPU64は、動作停止制御中及び動作停止制御の終了後であっても、車両通信部69とリモート通信部76との通信接続状態を維持しており、通信接続状態を維持した状態で制御モードを移行させる。このため、いずれの制御モードであっても、車両通信部69とリモート通信部76との通信接続状態は維持されている。
【0294】
両通信部69,76が通信接続状態となっている条件下で各種制御モードへの移行を行う車両制御処理が実行されるものである点に着目すれば、本実施形態では、遠隔モードを含めた各種制御モードは、両通信部69,76が通信接続状態となっている場合に設定される制御モードであるといえる。
【0295】
なお、何らかの要因によって両通信部69,76の通信接続が解除又は切断された場合には、リモートCPU73はアプリ終了処理を実行するとよく、車両CPU64は、車両制御処理を終了する。
【0296】
次に、
図19及び
図20を用いて、異常事態の一例として、遠隔操作中のフォークリフト20に搭乗者が搭乗した場合の産業車両用遠隔操作システム10の動作について説明する。
【0297】
図19に示すように、制御モードが遠隔モードであって遠隔制御操作によってフォークリフト20が走行している状況において、搭乗者がフォークリフト20に搭乗したとする。この場合、動作停止制御が行われ、フォークリフト20の走行が停止する。
【0298】
また、制御モードが異常停止モードに移行するため、遠隔操作装置70による遠隔操作が停止する。更に、モード情報Dy3cに異常停止モードが設定された車両信号SGyが、車両通信部69からリモート通信部76に向けて送信される。リモート通信部76が上記車両信号SGyを受信することによって操作画像G2に異常停止表示が行われる。これにより、遠隔操作装置70を操作している遠隔操作者が異常停止したことを認識できる。
【0299】
その後、
図20に示すように、異常解除操作(詳細には異常解除スイッチ53の操作)が行われたとする。これにより、異常停止モードが解除され、制御モードがニュートラルモードに設定される。すると、モード情報Dy3cにニュートラルモードが設定された車両信号SGyが送信される。リモート通信部76が当該車両信号SGyを受信することによって、異常停止表示が終了し、タッチパネル71に表示される画像が操作画像G2から待機画像G1に切り替わる。これにより、遠隔操作者は、異常停止モードが解除されたことを認識できる。
【0300】
ここで、異常解除スイッチ53は、機台21の外側側面31に設けられているため、搭乗者としては運転室32から降りて操作することが想定される。このため、異常停止モードから復帰したニュートラルモードにおいて、フォークリフト20はリモート可能状態であることが想定される。したがって、リモート対象アイコンIc1には不可表示は行われない。
【0301】
その後、遠隔操作者がリモート開始操作(詳細にはリモート対象アイコンIc1の入力操作)を行うと、操作画像G2が表示され、遠隔制御操作に基づいてフォークリフト20が動作する。
【0302】
なお、念のために説明すると、異常停止モード前の制御モードは遠隔モードであり、当該遠隔モードの移行条件には切替スイッチ52は「遠隔」となっていることが含まれている。このため、ニュートラルモード中の切替スイッチ52は「遠隔」に設定されている蓋然性が高い。
【0303】
一方、
図20の状況において有人操作を開始する場合には、搭乗者が運転室32に搭乗して、切替スイッチ52を「遠隔」から「有人」に切り替える。これにより、有人操作が可能となる。
【0304】
以上詳述した本実施形態によれば以下の効果を奏する。
(1-1)産業車両用遠隔操作システム10は、産業車両としてのフォークリフト20及びフォークリフト20を遠隔操作するのに用いられる遠隔操作装置70を備えている。フォークリフト20は、無線通信を行う車両通信部69、有人センサ51、及び、有人操作に用いられる車両操作部40を備えている。遠隔操作装置70は、車両通信部69と無線通信を行うリモート通信部76を備えている。産業車両用遠隔操作システム10は、遠隔操作装置70による遠隔操作によってフォークリフト20にて動作が行われている状況において有人センサ51によって搭乗者が検知されたことに基づいて、車両操作部40の操作に関わらず当該動作を停止させる動作停止制御と遠隔操作を停止させる遠隔操作停止制御とを行う車両CPU64を備えている。
【0305】
かかる構成によれば、遠隔操作による動作が行われているフォークリフト20に搭乗者が搭乗した場合には、当該動作が停止し且つ遠隔操作装置70による遠隔操作が停止する。これにより、搭乗者が搭乗した後もフォークリフト20の動作が継続されることを抑制でき、且つ、遠隔操作が行われることを抑制できる。したがって、安全性の向上を図ることができる。
【0306】
特に、有人操作及び遠隔操作の双方が可能なフォークリフト20では、例えば遠隔操作による動作が行われているフォークリフト20を直接操作しようとして、動作中のフォークリフト20に搭乗者が搭乗して車両操作部40の操作を行う場合が考えられる。この場合、遠隔操作と有人操作との2つの異なる操作が同時に行われ得るため、フォークリフト20の動作が不安定となる不都合が生じ得る。
【0307】
これに対して、本実施形態では、動作停止制御は、車両操作部40の操作に関わらず実行される。このため、仮に動作中のフォークリフト20に搭乗者が搭乗して車両操作部40を操作しても、遠隔操作によって行われていた動作は停止する。これにより、上記不都合を抑制でき、安全性の向上を図ることができる。
【0308】
(1-2)産業車両用遠隔操作システム10は、動作停止制御及び遠隔操作停止制御の他に、動作停止報知を行うように構成されている。かかる構成によれば、遠隔操作装置70の遠隔操作者又は搭乗者が、フォークリフト20の動作が停止したことを認識することができる。これにより、遠隔操作者又は搭乗者にその後の対応を促すことができる。
【0309】
(1-3)車両CPU64は、遠隔操作によるフォークリフト20の動作中に搭乗者が検知されたことに基づいて、車両通信部69を用いて、動作停止を示す車両信号SGyをリモート通信部76に送信する車両信号送信処理(ステップS413)を実行する。リモートCPU73は、リモート通信部76が動作停止を示す車両信号SGyを受信したことに基づいて、遠隔操作装置70に設けられた報知部としてのタッチパネル71を用いて動作停止報知を行う。
【0310】
かかる構成によれば、遠隔操作装置70を操作している遠隔操作者に対して動作停止が行われたことを認識させ易い。特に、遠隔操作装置70を用いて遠隔操作を行う遠隔操作者としては、操作に集中して、フォークリフト20ではなく遠隔操作装置70に注目してしまう場合があり得る。この場合、動作停止を認識するタイミングが遅くなる場合がある。これに対して、本実施形態では、遠隔操作装置70にて動作停止報知が行われるため、遠隔操作装置70に注目していた場合であっても、動作停止を早期に認識させることができる。
【0311】
なお、車両CPU64が動作停止を示す車両信号SGyを送信することによって動作停止報知が行われることに着目すれば、車両CPU64が動作停止報知を実行しているとも言える。換言すれば、車両CPU64は、動作停止報知が行われるように遠隔操作装置70に対して指示するものとも言える。
【0312】
(1-4)産業車両用遠隔操作システム10は、制御モードとして、遠隔モード、有人モード、及び異常停止モードを有している。
遠隔モードは、車両操作部40の操作ではなく遠隔操作装置70の遠隔操作によってフォークリフト20が動作する制御モードである。有人モードは、遠隔操作装置70による遠隔操作ではなく、車両操作部40の操作によってフォークリフト20が動作する制御モードである。異常停止モードは、遠隔操作装置70による遠隔操作に基づく動作、及び、車両操作部40の操作に基づく動作の双方が行われない制御モードである。
【0313】
かかる構成において、両通信部69,76は、遠隔モード中は信号のやり取りを行う通信接続状態となっている。そして、車両CPU64は、遠隔操作停止制御として、両通信部69,76の通信状態を維持しつつ、制御モードを遠隔モードから異常停止モードに移行させる。
【0314】
かかる構成によれば、制御モードが異常停止モードに移行することによって、遠隔操作が停止するとともに車両操作部40の操作に基づくフォークリフト20の動作も行われない。これにより、いずれの操作であってもフォークリフト20は停止しているため、搭乗者と遠隔操作者とで互いに異なる対応を行うことに起因するフォークリフト20の誤動作を抑制できる。
【0315】
また、異常停止モード中においても、両通信部69,76の通信接続状態が維持されているため、遠隔操作装置70及びフォークリフト20は、異常停止モード中においても信号の送受信を行うことができる。これにより、遠隔操作装置70は、当該遠隔操作装置70による遠隔操作が行われない状況下であってもフォークリフト20と情報のやり取りを行うことができ、それを通じて状況の変化(例えば制御モードの移行)を把握できる。
【0316】
(1-5)制御モードは、遠隔操作装置70による遠隔操作に基づく動作、及び、車両操作部40の操作に基づく動作の双方が行われないニュートラルモードを含む。異常停止モードは、遠隔モード及び有人モードの双方への移行が禁止されている制御モードである一方、ニュートラルモードは、遠隔モード及び有人モードの双方への移行が許容されている制御モードである。そして、車両CPU64は、異常停止モード中に異常解除操作が行われたことに基づいて、両通信部69,76の通信接続状態を維持しつつ、制御モードを異常停止モードからニュートラルモードに移行させる。
【0317】
かかる構成によれば、制御モードが異常停止モードである状況において遠隔操作又は有人操作を再開する場合には、必ず異常解除操作を行う必要がある。これにより、異常解除操作を行うことなく遠隔操作又は有人操作が再開されることを抑制できるため、意図せず遠隔操作又は有人操作が再開されることを抑制できる。また、遠隔操作者又は搭乗者としては、異常確認を行った後に異常解除操作を行えばよいため、異常確認を行う猶予を確保できる。したがって、異常停止モードの解除を安全に行うことができる。
【0318】
また、異常停止モードからニュートラルモードへ移行した場合であっても、通信接続状態は維持されているため、ニュートラルモードから遠隔モードへの移行時に再接続をする必要がない。これにより、ニュートラルモードから遠隔モードへの移行を円滑に行うことができる。
【0319】
(1-6)車両信号SGyには、制御モードを示すモード情報Dy3cが含まれており、車両CPU64は、異常停止モード中には、リモート通信部76を用いて、動作停止を示す車両信号SGyとして、異常停止モードを示すモード情報Dy3cを含む車両信号SGyを繰り返し送信する。一方、車両CPU64は、ニュートラルモード中には、リモート通信部76を用いて、ニュートラルモードを示すモード情報Dy3cを含む車両信号SGyを繰り返し送信する。
【0320】
そして、リモートCPU73は、リモート通信部76が異常停止モードを示すモード情報Dy3cを含む車両信号SGyを受信している期間に亘って、動作停止報知を継続する一方、リモート通信部76がニュートラルモードを示すモード情報Dy3cを含む車両信号SGyを受信したことに基づいて、前記動作停止報知を終了する。
【0321】
かかる構成によれば、異常停止モード中は動作停止報知が継続して実行され、制御モードが異常停止モードからニュートラルモードに移行することによって動作停止報知が終了する。これにより、遠隔操作者としては、動作停止報知が終了することによって、異常停止モードが解除されたことを認識できる。
【0322】
また、異常解除操作が行われることによって制御モードが異常停止モードからニュートラルモードに移行することに着目すれば、異常解除操作が行われるまで、動作停止報知が行われることとなる。これにより、遠隔操作者又は搭乗者に対して異常解除操作を促すことができる。
【0323】
ちなみに、異常解除操作によって異常停止モードからニュートラルモードへの移行が行われる点に着目すれば、リモートCPU73は、異常解除操作が行われるまで動作停止報知を継続しているとも言える。
【0324】
(1-7)車両CPU64は、ニュートラルモード中に有人モード移行条件が成立したことに基づいて、制御モードをニュートラルモードから有人モードに移行させるステップS602の処理を実行する。車両CPU64は、ニュートラルモード中に遠隔モード移行条件が成立したことに基づいて、制御モードをニュートラルモードから遠隔モードに移行させるステップS604の処理を実行する。有人モード移行条件と遠隔モード移行条件とは、同時に成立することがないように設定されている。
【0325】
かかる構成によれば、ニュートラルモード中に有人モード移行条件と遠隔モード移行条件とが同時に成立しないため、両移行条件が成立することに起因する不都合、詳細には両移行条件の成立時に移行先の制御モードが不定となることを抑制できる。
【0326】
(1-8)有人モード移行条件は、有人センサ51によって搭乗者が検知されていることを含み、遠隔モード移行条件は、有人センサ51によって搭乗者が検知されていないことを含む。これにより、(1-7)の効果を得ることができる。
【0327】
(1-9)フォークリフト20は、有人状態に対応する「有人」と、遠隔状態に対応する「遠隔」とに切り替わる切替スイッチ52を備えている。有人モード移行条件は、切替スイッチ52が「有人」であることを含み、遠隔モード移行条件は、切替スイッチ52が「遠隔」であることを含む。切替スイッチ52の操作は異常解除操作とは別操作である。
【0328】
かかる構成によれば、遠隔モード移行条件に切替スイッチ52が「遠隔」であることが含まれているため、遠隔モード中は切替スイッチ52が「遠隔」となっていることが想定される。このため、仮に遠隔モード中に搭乗者が搭乗することにより異常停止モードとなり、その後異常解除操作が行われたことによって異常停止モードからニュートラルモードになった場合には、切替スイッチ52は「遠隔」となっていることが想定される。したがって、かかる状況下において有人操作を行うためには、切替スイッチ52を「遠隔」から「有人」に切り替える必要がある。当該切替スイッチ52の操作は、異常解除操作とは別の操作であるため、異常停止モードを解除して有人操作を行うためには、少なくとも異常解除操作と切替スイッチ52の操作とを行う必要がある。これにより、異常停止モードである状態から有人操作を行うためには、搭乗者が複数の操作を行う必要があるため、誤って有人操作が行われることを抑制できる。
【0329】
(1-10)有人モード移行条件は、切替スイッチ52が「有人」であり且つ有人センサ51によって搭乗者が検知されたことである。かかる構成によれば、ニュートラルモードを介する異常停止モードから有人モードへの制御モードの意図しない移行が行われることを抑制できる。
【0330】
詳述すると、例えば有人モード移行条件が有人センサ51によって搭乗者が検知されることのみである場合、異常停止モード中において搭乗者が搭乗した状態で異常解除操作を行うことによって、自ずとニュートラルモードを介して異常停止モードから有人モードへの移行が行われる。すると、意図しない有人モードへの移行が行われるという不都合が懸念される。
【0331】
これに対して、本実施形態によれば、仮に遠隔モード中に搭乗者が検知されたことによって異常停止モードとなった場合には、異常解除操作だけでは有人モードへの移行は行われない。換言すれば、遠隔モードから異常停止モードに移行した後に有人操作を行うためには、切替スイッチ52を「遠隔」から「有人」に切り替えるという積極的な操作が必要となる。これにより、上記不都合を抑制できる。
【0332】
(1-11)遠隔モード移行条件は、有人センサ51によって搭乗者が検知されておらず且つ切替スイッチ52が「遠隔」である状況において遠隔操作装置70に対してリモート開始操作が行われることである。異常解除操作とリモート開始操作とは別操作である。
【0333】
かかる構成によれば、異常解除操作によって異常停止モードからニュートラルモードに移行した場合であっても、リモート開始操作が行われない限り、ニュートラルモードから遠隔モードへの移行は行われない。これにより、異常停止モードである状況から遠隔操作装置70による遠隔操作を開始しようとする場合には、最初に異常解除操作を行い、その後リモート開始操作を行うという少なくとも2段階の操作を行う必要がある。したがって、意図しない遠隔操作が開始されることを抑制できる。
【0334】
また、遠隔モード移行条件には、有人センサ51によって搭乗者が検知されていないことが含まれているため、搭乗者が存在している状態で遠隔操作が再開されることを抑制できる。
【0335】
(1-12)遠隔操作装置70は、タッチパネル71を有し、当該タッチパネル71に対する操作を含む遠隔制御操作によってフォークリフト20を遠隔操作するものである。リモートCPU73は、動作停止報知として、タッチパネル71に対して異常停止表示を行うものである。
【0336】
かかる構成によれば、タッチパネル71に対する操作を含む遠隔制御操作によってフォークリフト20の遠隔操作が行われるため、遠隔操作者にとってタッチパネル71への注目度は高いことが想定される。このような注目度が高いタッチパネル71に異常停止表示が行われるため、遠隔操作者としては異常停止が行われたことを認識し易い。これにより、遠隔操作者への動作停止報知を好適に行うことができる。
【0337】
(1-13)リモート通信部76は、フォークリフト20の遠隔操作に用いられる遠隔操作信号SGx1を車両通信部69に向けて送信する。フォークリフト20は、走行及び荷役動作を行わせる駆動部としてのアクチュエータ61,62を備えており、車両CPU64は、車両通信部69によって受信された遠隔操作信号SGx1に基づいて、アクチュエータ61,62を駆動制御するステップS807,S808の処理を実行する機能を有している。
【0338】
かかる構成において、車両CPU64は、アクチュエータ61,62を駆動制御することにより動作停止制御を行うとともに、当該動作停止制御中に亘って遠隔操作信号SGx1に基づく駆動制御を禁止する(ステップS710,S811の処理及び動作停止制御中処理)。
【0339】
かかる構成によれば、遠隔操作信号SGx1に関わらず動作停止制御が行われるため、動作停止制御中に遠隔操作信号SGx1に基づくフォークリフト20の動作が行われることを回避できる。これにより、遠隔操作装置70に対する操作によって動作停止制御が阻害されることを抑制でき、円滑な動作停止制御を実現できる。
【0340】
(1-14)車両CPU64は、有人操作によってフォークリフト20の動作が行われている状況において有人センサ51によって搭乗者が検知されなくなったことに基づいて、動作停止制御、有人操作を停止させる有人停止制御及び動作停止報知を行う処理(ステップS709,S710及び動作停止制御処理)を実行する。
【0341】
かかる構成によれば、有人操作によるフォークリフト20の動作中に搭乗者が降車した場合には、当該動作が停止するとともに有人操作が停止する。これにより、搭乗者が不在の状態で動作が継続されること、及び、有人操作によって新たな動作が行われることを抑制できる。更に、動作停止報知が行われることによって、遠隔操作者又は降車した作業者に対して、動作停止が行われたことを認識させることができる。
【0342】
(1-15)車両CPU64は、動作停止制御中に異常解除操作が行われた場合であっても、制御モードを異常停止モードに維持する。これにより、動作停止制御中に制御モードがニュートラルモードに移行することを抑制できるため、動作停止制御中に制御モードが再度遠隔モード又は有人モードに移行することを回避できる。したがって、フォークリフト20の動作を確実に停止させることができる。
【0343】
(1-16)リモート通信部76は、異常停止モード中には、接続維持信号SGx3を繰り返し送信する。これにより、仮に車両通信部69が規定期間を経過しても信号を受信しないことに基づいて通信エラーと判定する構成である場合であっても、通信接続状態を維持することができる。
【0344】
また、接続維持信号SGx3は、停止用の遠隔操作信号SGx1であるため、仮に何らかの要因によって接続維持信号SGx3に基づく各アクチュエータ61,62の駆動制御が行われたとしても、フォークリフト20は停止する。これにより、異常停止モード中におけるフォークリフト20の誤動作を抑制できる。
【0345】
本実施形態では、リモート通信部76は、ニュートラルモード中も、接続維持信号SGx3を繰り返し送信する。これにより、ニュートラルモード中においても同様の効果を奏する。
【0346】
(1-17)有人センサ51及び車両操作部40を有するフォークリフト20は、遠隔操作による動作中に有人センサ51によって搭乗者が検知されたことに基づいて、動作停止制御及び遠隔操作停止制御を行う処理(詳細にはステップS809~S811の処理及び動作停止制御中処理)を実行する車両CPU64を備えている。これにより、(1-1)の効果を奏する。また、車両CPU64は、車両通信部69を用いて動作停止を示す車両信号SGy(本実施形態では異常停止モードが設定されたモード情報Dy3cを有する車両信号SGy)を送信することによって、遠隔操作装置70にて動作停止報知を行わせる。これにより、(1-2)の効果を奏する。
【0347】
(1-18)車両制御処理実行プログラム65aは、遠隔操作装置70を用いてフォークリフト20を遠隔操作するためのものである。車両制御処理実行プログラム65aは、車両CPU64を、遠隔操作装置70による遠隔操作によってフォークリフト20にて動作が行われている状況において有人センサ51によって搭乗者が検知されたことに基づいて、動作停止制御及び遠隔操作停止制御を実行させるものとして機能させる。これにより、(1-1)の効果を奏する。
【0348】
また、車両制御処理実行プログラム65aは、車両CPU64を、動作停止を示す車両信号SGyを送信させるものとして機能させることにより、動作停止報知を行うものとして機能させる。これにより、(1-2)の効果を奏する。
【0349】
(1-19)産業車両用遠隔操作方法は、遠隔操作装置70を用いて、有人センサ51を有するフォークリフト20を遠隔操作するものである。産業車両用遠隔操作方法は、遠隔操作装置70による遠隔操作によってフォークリフト20にて動作が行われている状況において有人センサ51によって搭乗者が検知されたことに基づいて、フォークリフト20(詳細には車両CPU64)が動作停止制御及び遠隔操作停止制御を行うステップを備えている。これにより、(1-1)の効果を奏する。
【0350】
更に、産業車両用遠隔操作方法は、フォークリフト20が動作停止を示す車両信号SGyを送信することによって動作停止報知を行うステップを備えている。これにより、(1-2)の効果を奏する。
【0351】
(第2実施形態)
本実施形態では、異常停止モードへの移行条件及び異常解除操作が第1実施形態と異なっている。この点について、以下に説明する。
【0352】
図21に示すように、本実施形態のリモート制御処理では、リモートCPU73は、ステップS109を否定判定した場合には、ステップS1001にて、異常停止表示を行うとともに、タッチパネル71に異常解除アイコンIc10を表示させる。
【0353】
図22に示すように、異常解除アイコンIc10は、遠隔操作者が意図しない限り入力操作が行われにくい位置、例えばタッチパネル71における左上部分に配置されている。異常解除アイコンIc10は、遠隔操作装置70が異常解除操作を受け付けるためのアイコンである。換言すれば、異常解除アイコンIc10は、遠隔操作装置70が異常解除操作を受け付けるための異常解除操作受付部とも言える。
【0354】
なお、既にタッチパネル71にて異常停止表示及び異常解除アイコンIc10が表示中である場合には、ステップS1001では、リモートCPU73は、これらの表示を維持する。
【0355】
図21に示すように、リモートCPU73は、ステップS1001の処理を実行後は、ステップS1002にて、遠隔操作装置70に対して異常解除操作が行われているか否かを判定する。詳細には、リモートCPU73は、タッチセンサ72の検知結果に基づいて、異常解除アイコンIc10への入力操作が行われているか否かを判定する。
【0356】
リモートCPU73は、異常解除アイコンIc10への入力操作がない場合には、ステップS112にて、リモート通信部76を用いて接続維持信号SGx3を送信する処理を実行して、本リモート制御処理を終了する。
【0357】
一方、リモートCPU73は、異常解除アイコンIc10への入力操作がある場合には、ステップS1003にて、リモート通信部76を用いて異常解除信号SGx5を送信する処理を実行して、本リモート制御処理を終了する。異常解除信号SGx5は、異常解除操作が行われていることを示す無線通信用規格の信号である。
【0358】
本実施形態では、異常解除信号SGx5は、遠隔操作信号SGx1とはデータ形式等が異なる信号である。但し、これに限られず、異常解除信号SGx5と遠隔操作信号SGx1とは同一のデータ形式の信号でもよい。この場合、遠隔操作信号SGx1に、両操作情報Dx1,Dx2に加えて、異常解除操作の有無を特定するための情報が設定されているとよい。かかる構成においては、異常解除操作が行われたことを示す情報が設定された遠隔操作信号SGx1が異常解除信号SGx5に対応する。
【0359】
次に本実施形態における車両有人モード処理について説明する。
図23に示すように、車両CPU64は、まずステップS1101にて、異常事態が発生しているか否かを判定する。
【0360】
ここで、異常事態とは、制御モードに関わらず共通した異常事態である共通異常事態と、制御モードごとに設定されたモード異常事態とを含む。
共通異常事態は、フォークリフト20の動作に支障が生じるおそれがあるものであれば任意であるが、例えばフォークリフト20の異常、フォークリフト20周辺の障害物の存在、第1ドア54の開放及び第2ドア56の開放の少なくとも1つを含む。
【0361】
共通異常事態は、車両状態検知部66によって検知される。例えば、フォークリフト20の異常は、異常検知センサ68によって検知され、障害物は障害物センサ67によって検知され、ドア54,56の開放はドアセンサ55,57によって検知される。
【0362】
モード異常事態は、設定されている制御モードにおいて想定外の事態を含む。例えば、制御モードが有人モードである場合におけるモード異常事態(以下、単に「有人モード異常事態」という。)は、フォークリフト20の動作中に搭乗者が検知されなくなること、又は、切替スイッチ52が「遠隔」となることである。
【0363】
かかる構成において、車両CPU64は、ステップS1101では、車両状態検知部66の検知結果に基づいて、共通異常事態又は有人モード異常事態が発生しているか否かを判定する。
【0364】
車両CPU64は、共通異常事態又は有人モード異常事態が発生している場合には、ステップS1102に進み、制御モードを異常停止モードに設定する。詳細には、車両CPU64は、制御モードを有人モードから異常停止モードへ移行させる。これにより、有人操作が停止する。
【0365】
その後、車両CPU64は、ステップS1103にて、フォークリフト20が動作中であるか否かを判定する。車両CPU64は、動作中ではない場合には、そのまま本車両有人モード処理を終了する一方、動作中である場合には、ステップS1104にて、動作停止制御を開始して本車両有人モード処理を終了する。
【0366】
一方、車両CPU64は、共通異常事態及び有人モード異常事態の双方が発生していない場合には、ステップS1101を否定判定し、ステップS1105にて、ニュートラルモードへの移行条件が成立しているか否かを判定する。詳細には、車両CPU64は、フォークリフト20が動作停止中であり且つ有人センサ51がOFF状態であるかを判定する。
【0367】
車両CPU64は、ニュートラルモードへの移行条件が成立している場合には、ステップS1106にて、制御モードを有人モードからニュートラルモードへ移行させて、本処理を終了する。一方、車両CPU64は、ニュートラルモードへの移行条件が成立していない場合には、ステップS702~S706の処理を実行する。
【0368】
かかる構成によれば、制御モードが有人モードである状況において共通異常事態又は有人モード異常事態が発生した場合には、有人操作が停止し、更にフォークリフト20が動作中である場合には動作停止制御が行われる。なお、有人操作が停止中である場合であっても通信接続状態は維持されている。
【0369】
次に本実施形態における車両遠隔モード処理について説明する。
図24に示すように、車両CPU64は、ステップS1201にて、異常事態が発生しているか否かを判定する。詳細には、車両CPU64は、車両状態検知部66の検知結果に基づいて、共通異常事態又は遠隔モード異常事態が発生しているか否かを判定する。
【0370】
遠隔モード異常事態とは、制御モードが遠隔モードである場合におけるモード異常事態である。本実施形態における遠隔モード異常事態とは、例えば、搭乗者が検知されること、又は、切替スイッチ52が「有人」となることである。
【0371】
車両CPU64は、共通異常事態又は遠隔モード異常事態が発生している場合には、ステップS1202に進み、制御モードを異常停止モードに設定する。詳細には、車両CPU64は、制御モードを遠隔モードから異常停止モードへ移行させる。これにより、遠隔操作が停止する。
【0372】
その後、車両CPU64は、ステップS1203にて、フォークリフト20が動作中であるか否かを判定する。車両CPU64は、動作中ではない場合には、そのまま本車両遠隔モード処理を終了する一方、動作中である場合にはステップS1204にて動作停止制御を開始して本車両遠隔モード処理を終了する。
【0373】
一方、車両CPU64は、共通異常事態又は遠隔モード異常事態が発生していない場合には、ステップS802~S808の処理を実行する。
かかる構成によれば、制御モードが遠隔モードである状況において共通異常事態又は遠隔モード異常事態が発生した場合には、遠隔操作装置70による遠隔操作が停止し、更にフォークリフト20が動作中である場合には動作停止制御が行われる。なお、遠隔操作が停止中である場合であっても通信接続状態は維持されている。
【0374】
次に本実施形態の車両異常停止モード処理について
図25を用いて説明する。
図25に示すように、車両CPU64は、ステップS1301にて、異常解除操作としての異常解除スイッチ53の操作が行われているか否かを判定する。
【0375】
車両CPU64は、異常解除スイッチ53の操作が行われていない場合には、ステップS1302に進み、異常解除信号SGx5を受信しているか否かを判定する。詳細には、車両CPU64は、今回の車両制御処理のステップS401にて把握した制御信号が異常解除信号SGx5を変換したものであるか否かを判定する。
【0376】
ここで、異常解除信号SGx5は、異常解除アイコンIc10に対する入力操作が行われたことに基づいてリモート通信部76から送信される信号であることを鑑みれば、ステップS1302の処理は、異常解除アイコンIc10に対する入力操作が行われたか否かを判定する処理とも言える。
【0377】
車両CPU64は、異常解除スイッチ53の操作、又は、異常解除信号SGx5の受信のいずれか一方が行われている場合には、ステップS1303にて、制御モードをニュートラルモードに設定して、本処理を終了する。詳細には、車両CPU64は、制御モードを異常停止モードからニュートラルモードに移行させる。一方、車両CPU64は、異常解除スイッチ53の操作、及び、異常解除信号SGx5の受信の双方とも行われていない場合には、制御モードを異常停止モードに維持したまま本処理を終了する。
【0378】
かかる構成によれば、制御モードが異常停止モードである場合、フォークリフト20に設けられた異常解除スイッチ53の操作、又は、異常解除アイコンIc10に対する入力操作が行われたことに基づいて、異常停止モードが解除され、制御モードがニュートラルモードに移行する。つまり、本実施形態における異常解除操作は、異常解除スイッチ53の操作、又は、異常解除アイコンIc10に対する入力操作である。
【0379】
ちなみに、第1実施形態で説明したとおり、車両CPU64は、両通信部69,76が通信接続状態を維持した状態で制御モードを移行させるものである。そして、車両CPU64は、制御モードに関わらず、通信接続状態を維持している。このため、例えば制御モードが異常停止モードであっても、両通信部69,76間にて信号のやり取りは定期的に行われている。
【0380】
なお、第1実施形態で説明したとおり、動作停止制御中は、リモート通信部76から受信し変換された制御信号に基づく制御は行われず、当該制御信号は消去される。このため、仮に動作停止制御中に車両通信部69が異常解除信号SGx5を受信したとしても、制御モードは異常停止モードを維持する。すなわち、車両CPU64は、動作停止制御中に遠隔操作装置70に対して異常解除操作が行われた場合であっても、制御モードを異常停止モードに維持する。
【0381】
本実施形態におけるリモート可能状態は、第1実施形態の(A)~(C)の条件に加えて、(D)共通異常事態が発生していないことである。リモートCPU73は、ステップS302では、第1実施形態の判定に加えて、車両信号SGyに含まれる機台情報Dy3の異常情報Dy3dに基づいて共通異常事態が発生しているか否かを判定する。このため、例えばフォークリフト20に異常が発生している場合には、(A)~(C)の条件が成立している場合であっても、不可表示が行われる。
【0382】
また、本実施形態における遠隔モード移行条件は、第1実施形態の条件に加えて、共通異常事態が発生していないことを含む。すなわち、本実施形態の遠隔モード移行条件は、切替スイッチ52が「遠隔」となっており、搭乗者が検知されておらず、且つ共通異常事態が発生していない状況においてリモート開始操作が行われることである。車両CPU64は、ステップS601にて、第1実施形態の判定に加えて、共通異常事態の有無についても判定する。
【0383】
本実施形態における有人モード移行条件は、第1実施形態の条件に加えて、共通異常事態が発生していないことを含む。すなわち、本実施形態の有人モード移行条件は、搭乗者がいること、切替スイッチ52が「有人」であること、及び共通異常事態が発生していないことである。車両CPU64は、ステップS603にて、第1実施形態の判定に加えて、共通異常事態の有無についても判定する。
【0384】
本実施形態では、車両状態検知部66及びステップS1101,S1201の処理を実行する車両CPU64が「異常事態検知部」に対応する。異常解除アイコンIc10への入力操作を検知するタッチセンサ72及び異常解除スイッチ53の操作を検知する車両状態検知部66が「解除操作検知部」に対応する。なお、車両CPU64は、異常解除信号SGx5の受信に基づいて異常事態を検知することに着目すれば、異常解除信号SGx5の受信の有無の判定処理が「解除操作検知部」に対応するとも言える。
【0385】
本実施形態では、車両制御処理が「モード制御ステップ」に対応し、当該車両制御処理を実行する車両CPU64が「モード制御部」に対応する。
次に本実施形態の作用について説明する。
【0386】
遠隔モード中に異常事態が検知された場合には、両通信部69,76の通信接続状態が維持された状態で、制御モードが遠隔モードから異常停止モードに移行する。異常停止モード中も、両通信部69,76間の通信接続状態は維持される。
【0387】
その後、異常解除操作が行われたことに基づいて、通信接続状態が維持された状態で制御モードが異常停止モードからニュートラルモードに移行する。これにより、遠隔モードへの移行が可能となる。
【0388】
なお、本実施形態では、制御モードが遠隔モードである状況下では、フォークリフト20が動作停止中であっても共通異常事態が発生した場合には、遠隔モードから異常停止モードに移行する。
【0389】
ちなみに、本実施形態では、共通異常事態(例えばフォークリフト20の異常)が発生しており、当該共通異常事態が解消されていない場合であっても、異常解除操作が行われることによって制御モードが異常停止モードからニュートラルモードに移行する。
【0390】
但し、この場合、異常を示す異常情報Dy3dが設定された車両信号SGyが送信されるため、当該フォークリフト20はリモート不可状態であると判定され、リモート不可表示が行われる。これにより、遠隔操作者は異常が解消されておらず、遠隔操作ができないことを認識できる。
【0391】
また、本実施形態では、遠隔モード移行条件及び有人モード移行条件に、共通異常事態が発生していないことが含まれているため、共通異常事態が解消されない限り、遠隔モード又は有人モードへの制御モードの移行は行われない。
【0392】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(2-1)産業車両用遠隔操作システム10(本実施形態ではフォークリフト20)は、フォークリフト20の制御モードを制御する車両CPU64を備えている。車両CPU64は、遠隔モード中に異常事態(詳細には共通異常事態又は遠隔モード異常事態)が検知されたことに基づいて、両通信部69,76の通信接続状態を維持しつつ制御モードを遠隔モードから異常停止モードに移行させる。そして、車両CPU64は、異常停止モード中に異常解除操作が行われたことに基づいて、通信接続状態を維持しつつ制御モードを異常停止モードからニュートラルモードに移行させる。
【0393】
かかる構成によれば、制御モードが遠隔モードである状況において異常事態が検知されたことに基づいて、通信接続状態を維持した状態で制御モードが遠隔モードから異常停止モードに移行される。これにより、遠隔操作装置70を用いたフォークリフト20の遠隔操作が停止する。したがって、異常事態が発生したまま遠隔操作が継続されることを抑制でき、安全性の向上を図ることができる。
【0394】
また、制御モードが異常停止モードであって通信接続状態である状況において異常解除操作が行われることに基づいて、制御モードが異常停止モードからニュートラルモードに移行する。これにより、制御モードを遠隔モードに移行させることができる。したがって、制御モードが遠隔モードから異常停止モードに移行した場合であっても、遠隔操作を再開できる。
【0395】
ここで、異常停止モード中及びニュートラルモード中は、遠隔操作装置70を用いたフォークリフト20の遠隔操作が行われない。異常停止モード中は、遠隔モードへの制御モードの移行は禁止されている一方、ニュートラルモード中は、遠隔モードへの制御モードの移行は許容されている。このため、制御モードが異常停止モードとなった状態から再度遠隔操作を行うためには、まず異常解除操作を行うことにより制御モードをニュートラルモードにし、その後制御モードを遠隔モードにする必要がある。これにより、必ず異常解除操作を行う必要があるため、異常解除操作を行うことなく遠隔操作が再開されることを回避できる。したがって、意図しない遠隔操作の再開を抑制しつつ、必要に応じて遠隔操作を再開できる。
【0396】
(2-2)特に、本実施形態によれば、両通信部69,76は、異常停止モード中及びニュートラルモードの移行時も通信接続状態を維持しているため、互いに信号のやり取りを行うことができる。これにより、遠隔操作装置70とフォークリフト20とは、異常停止モード中であっても互いの状態を把握できる。したがって、例えばフォークリフト20が、遠隔操作装置70に対して異常解除操作が行われたことを把握できる。
【0397】
また、仮に遠隔モードから異常停止モードへの移行に伴い通信接続状態が解除される場合、ニュートラルモードを介して異常停止モードから再度遠隔モードに移行させる際に、両通信部69,76を再度通信接続状態にする必要があり、それに伴いタイムラグが発生するおそれがある。これに対して、本構成によれば、両通信部69,76の通信接続状態が維持されているため、上記タイムラグの発生を抑制でき、円滑な遠隔モードへの移行を実現できる。
【0398】
(2-3)異常解除操作は、フォークリフト20に設けられた異常解除スイッチ53の操作でもよい。
かかる構成によれば、遠隔操作装置70を用いることなく異常解除操作を行うことができるため、遠隔操作者以外の者が異常解除操作を行うことができる。例えば、仮に運転室32に搭乗者がいる状況において異常停止モードとなった場合には、当該搭乗者が異常解除スイッチ53を操作することで、制御モードをニュートラルモードにすることができる。これにより、利便性の向上を図ることができる。
【0399】
なお、仮に遠隔操作者以外の者が存在しない状況において異常事態が発生した場合には、遠隔操作者が、フォークリフト20に近づいて、異常解除スイッチ53を直接操作してもよい。
【0400】
(2-4)フォークリフト20は、機台21を備えている。機台21は、外側側面31と、搭乗者が搭乗する運転室32を区画する内側側面34とを有している。異常解除スイッチ53は、外側側面31に設けられている。
【0401】
かかる構成によれば、異常解除スイッチ53が外側側面31に設けられているため、異常解除スイッチ53の操作者としては、運転室32に搭乗することなく、異常解除スイッチ53を操作できる。これにより、運転室32に搭乗者がいる状態で異常解除操作が行われることを抑制できるため、異常解除操作に伴ってフォークリフト20の誤動作が生じた場合であっても、当該誤動作に対応でき、安全性の向上を図ることができる。
【0402】
(2-5)有人モード移行条件は、運転室32に搭乗者がいることを含む。かかる構成によれば、搭乗者が不在の状態で有人モードになることを抑制できる。
ここで、仮に運転室32に搭乗者がいる状態で異常解除操作が行われると、異常解除操作に伴って意図せず異常停止モード→ニュートラルモード→有人モードに移行するおそれがある。
【0403】
これに対して、(2-4)に示すように、本実施形態では、運転室32に搭乗者がいる状態で異常解除操作が行われることを抑制できるため、上記のような異常解除操作に伴う意図しない有人モードへの移行を抑制できる。
【0404】
(2-6)異常解除操作は、遠隔操作装置70に対する操作でもよい。かかる構成によれば、遠隔操作者としては、フォークリフト20に近づくことなく、異常解除操作を行うことができる。これにより、利便性の向上を図ることができる。
【0405】
(2-7)遠隔操作装置70は、タッチパネル71と、タッチパネル71の表示制御を行うリモートCPU73とを備え、遠隔モード中はタッチパネル71に対する操作を含む遠隔制御操作によってフォークリフト20を遠隔操作するものである。リモートCPU73は、制御モードが異常停止モードである場合にはタッチパネル71に異常解除アイコンIc10を表示させる。異常解除操作は、異常解除アイコンIc10に対する入力操作でもよい。
【0406】
かかる構成によれば、異常停止モード中には、異常解除アイコンIc10に対する入力操作を行うことにより、制御モードをニュートラルモードに移行させることができる。これにより、直感的な操作で異常停止モードを解除することができる。
【0407】
特に、制御モードが遠隔モードである場合にはタッチパネル71に対する操作を含む遠隔制御操作によってフォークリフト20の遠隔操作が行われるため、遠隔操作者にとってタッチパネル71への注目度は高いことが想定される。このような注目度が高いタッチパネル71に異常解除アイコンIc10が表示されるため、異常解除操作の契機となる異常解除アイコンIc10が見逃されるといった不都合を抑制できる。
【0408】
(2-8)異常解除アイコンIc10は、制御モードが異常停止モードである場合に表示される一方、異常停止モード以外の制御モード中には表示されない。かかる構成によれば、異常停止モード以外の制御モード中には、異常解除操作が行われないようになっている。これにより、遠隔操作者の誤操作及びフォークリフト20の誤動作を抑制できる。
【0409】
(2-9)フォークリフト20は、ドア54,56を有しており、車両状態検知部66はドアセンサ55,57を含む。そして、遠隔モードから異常停止モードへ移行する契機となる異常事態は、遠隔モード中にドアセンサ55,57によってドア54,56の開放が検知されたことを含む。
【0410】
かかる構成によれば、遠隔モード中にドア54,56が開放された場合には、遠隔操作が停止する。これにより、ドア54,56が開放された状態で遠隔操作が継続されることを抑制できる。また、異常解除操作が行われない限り、制御モードがニュートラルモードに移行しないため、遠隔操作者としては、異常解除操作を行う前に、ドア54,56を閉めて異常事態を解消する作業を行うことができる。
【0411】
(2-10)車両状態検知部66は、フォークリフト20の周辺の障害物を検知する障害物センサ67を含み、遠隔モードから異常停止モードへ移行する契機となる異常事態は、遠隔モード中に障害物センサ67によって障害物が検知されたことを含む。
【0412】
かかる構成によれば、遠隔モード中に障害物が検知された場合には、遠隔操作が停止する。これにより、障害物が検知された状態で遠隔操作が継続されることを抑制でき、フォークリフト20と障害物との衝突を回避できる。また、異常解除操作が行われない限り、制御モードがニュートラルモードに移行しないため、遠隔操作者としては、異常解除操作を行う前に、障害物を確認又は排除して異常事態を解消する作業を行うことができる。
【0413】
(2-11)フォークリフト20は、当該フォークリフト20を直接操作する有人操作に用いられる車両操作部40を備えており、制御モードは、車両操作部40の操作に基づいてフォークリフト20が動作する有人モードを含む。異常停止モード中は遠隔モード及び有人モードの双方への移行が禁止されている一方、ニュートラルモード中は遠隔モード及び有人モードの双方への移行が許容されている。
【0414】
かかる構成によれば、異常停止モード中に異常解除操作が行われたことによって制御モードがニュートラルモードに移行した後は、遠隔モード及び有人モードのうち所望の制御モードに移行させることができる。
【0415】
(2-12)車両CPU64は、遠隔モード中に異常事態として共通異常事態又は遠隔モード異常事態が発生したことに基づいて、制御モードを遠隔モードから異常停止モードに移行させる。車両CPU64は、有人モード中に異常事態として共通異常事態又は有人モード異常事態が発生したことに基づいて、制御モードを有人モードから異常停止モードに移行させる。遠隔モード異常事態は遠隔モードに対応させて設定されており、有人モード異常事態は有人モードに対応させて設定されており、両異常事態は異なっている。
【0416】
かかる構成によれば、共通異常事態が発生した場合には、制御モードに関わらず、制御モードが異常停止モードへ移行する。これにより、例えばフォークリフト20の異常など、制御モードに無関係な異常事態に対応できる。
【0417】
ここで、遠隔操作を行う遠隔モードと、有人操作を行う有人モードとでは、想定される異常事態も異なる。この点、本実施形態によれば、各制御モードにおいて想定される特有の異常事態、例えば遠隔モード中に搭乗者が検知される異常事態や有人モード中に搭乗者が不在となる異常事態にも対応できる。
【0418】
(2-13)車両CPU64は、ニュートラルモード中に遠隔モード移行条件が成立したことに基づいて、制御モードをニュートラルモードから遠隔モードに移行させる。遠隔モード移行条件は、共通異常事態が発生していないことを含む。
【0419】
かかる構成によれば、異常解除操作によって異常停止モードからニュートラルモードに移行したとしても、共通異常事態が発生している場合には、制御モードを遠隔モードにすることはできない。これにより、共通異常事態が解消されていない状態で遠隔操作が行われることを抑制できる。また、作業者に対して共通異常事態を解消するように促すことができる。
【0420】
(2-14)車両CPU64は、ニュートラルモード中に有人モード移行条件が成立したことに基づいて、制御モードをニュートラルモードから有人モードに移行させる。有人モード移行条件は、共通異常事態が発生していないことを含む。
【0421】
かかる構成によれば、異常解除操作によって異常停止モードからニュートラルモードに移行したとしても、共通異常事態が発生している場合には、制御モードを有人モードにすることはできない。これにより、共通異常事態が解消されていない状態で有人操作が行われることを抑制できる。また、作業者に対して共通異常事態を解消するように促すことができる。
【0422】
(2-15)遠隔操作装置70を用いてフォークリフト20を遠隔操作するための車両制御処理実行プログラム65aは、車両CPU64を、フォークリフト20の制御モードを制御するものとして機能させるものである。車両制御処理実行プログラム65aは、車両CPU64を、遠隔モード中に異常事態が検知されたことに基づいて、両通信部69,76の通信接続状態を維持しつつ制御モードを遠隔モードから異常停止モードに移行させるものとして機能させる。そして、車両制御処理実行プログラム65aは、車両CPU64を、異常停止モード中に異常解除操作が行われたことに基づいて、通信接続状態を維持しつつ制御モードを異常停止モードからニュートラルモードに移行させるものとして機能させる。かかる構成によれば、(2-1)等の効果を奏する。
【0423】
(2-16)遠隔操作装置70を用いてフォークリフト20を遠隔操作する産業車両用遠隔操作方法は、車両CPU64が、遠隔モード中に異常事態が検知されたことに基づいて、両通信部69,76の通信接続状態を維持しつつ制御モードを遠隔モードから異常停止モードに移行させるステップS1202を備えている。更に産業車両用遠隔操作方法は、車両CPU64が、異常停止モード中に異常解除操作が行われたことに基づいて、通信接続状態を維持しつつ制御モードを異常停止モードからニュートラルモードに移行させるステップS1303を備えている。かかる構成によれば、(2-1)等の効果を奏する。
【0424】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 動作停止報知は、異常と動作停止との双方を示す構成に限られず、単に動作停止が行われたことを報知するものであってもよい。
【0425】
○ 動作停止報知の報知態様は、タッチパネル71を用いた表示に限られず、任意であり、例えばスピーカ等を用いて音声報知が行われてもよいし、表示と音声との双方が行われてもよい。
【0426】
○ 動作停止報知は、動作が停止したことに加えて又は代えて、異常解除操作を促す報知を行ってもよいし、異常確認を促す報知を行ってもよい。
○ 動作停止報知は、フォークリフト20において行われてもよい。この場合、フォークリフト20に動作停止報知を行うための専用の報知部(例えばランプ)が設けられていてもよい。
【0427】
例えば、フォークリフト20の屋根37に、動作停止報知を行う報知部が設けられていてもよい。この場合、フォークリフト20の最も高い位置である屋根37に報知部が設けられているため、遠隔操作装置70の遠隔操作者が視認し易い。
【0428】
また、例えば、ステアリングテーブル35に報知部が設けられていてもよい。この場合、搭乗者が報知部を視認し易いため、搭乗者が動作停止を容易に確認できる。なお、ステアリングテーブル35に、フォークリフト20に関する各種情報を示す表示パネルが設けられている場合には、当該表示パネルを用いて動作停止報知が行われてもよい。要は、動作停止報知は、遠隔操作装置70及びフォークリフト20の少なくとも一方で行われればよい。
【0429】
ちなみに、遠隔モード中に搭乗者が検知される場合は、遠隔操作装置70を操作している遠隔操作者と、フォークリフト20に搭乗している搭乗者との双方が存在している蓋然性が高いため、動作停止報知は、遠隔操作装置70及びフォークリフト20の双方で行われてもよい。
【0430】
なお、フォークリフト20に報知部が設けられている場合には、車両CPU64が報知部を用いて動作停止報知を行うとよい。すなわち、フォークリフト20が「報知実行部」を備えているとよい。
【0431】
○ 動作停止を示す車両信号SGyは、モード情報Dy3cに異常停止モードが設定された車両信号SGyに限られず、例えば異常を示す異常情報Dy3dが設定された車両信号SGyでもよい。この場合、リモートCPU73は、異常を示す異常情報Dy3dが設定された車両信号SGyが受信されたことに基づいて、異常停止報知を行ってもよい。
【0432】
○ 機台情報Dy3に設定される情報は任意である。例えば、機台情報Dy3からモード情報Dy3cを省略してもよい。
○ ニュートラルモードを省略してもよい。この場合、異常停止モードは、遠隔モード又は有人モードへの移行が許容された制御モードでもよい。かかる構成においては、例えば車両CPU64は、異常解除操作が行われたことに基づいて、異常停止モードに移行する前の制御モードに再度設定する構成でもよい。
【0433】
○ ニュートラルモードを介することなく、遠隔モード及び有人モード間の制御モードの直接移行が行われる構成でもよい。
○ 異常解除操作を省略してもよい。例えば、車両CPU64は、異常停止モード中、車両状態検知部66の検知結果に基づいて、異常事態が解消されたか否かを判定し、異常事態が解消された場合には、自動的に制御モードを異常停止モードからニュートラルモードに移行させる構成でもよい。すなわち、異常解除操作は必須ではない。但し、確認作業の時間確保などの安全性の観点に着目すれば、異常停止モードからニュートラルモードへの移行条件に異常解除操作が含まれている方が好ましい。
【0434】
○ 動作停止報知、動作停止制御及び遠隔操作停止制御の実行タイミングは、同時でもよいし、互いに前後してもよい。例えば動作停止制御及び遠隔操作停止制御が行われた後に、動作停止報知が行われてもよいし、その逆であってもよい。また、動作停止制御が行われてから、遠隔操作停止制御が行われてもよいし、その逆であってもよい。要は、異常事態が発生した場合に、これらの制御が行われればよい。
【0435】
具体的には、例えば車両CPU64は、先に動作停止制御を開始してから、制御モードを異常停止モードに移行させてもよい。この場合、動作停止制御中に制御モードの移行が行われることとなる。また、車両CPU64は、動作停止制御の終了後に、制御モードを異常停止モードに移行させてもよい。この場合であっても、動作停止制御中は、遠隔操作信号SGx1に基づく動作が禁止されている。すなわち、異常停止モードへの制御モードの移行は、動作停止制御の前に行われてもよいし、動作停止制御中に行われてもよいし、動作停止制御後に行われてもよい。
【0436】
○ 産業車両用遠隔操作システム10は、異常停止モード中及びニュートラルモード中、遠隔制御操作に基づくフォークリフト20の動作及び車両操作部40の操作に基づくフォークリフト20の動作の双方が行われないように構成されていれば、その具体的な構成は任意である。
【0437】
○ 切替スイッチ52を省略してもよい。この場合、有人モード移行条件は、有人センサ51によって搭乗者が検知されていることでもよいし、遠隔モード移行条件は、有人センサ51によって搭乗者が検知されていない状況下でリモート開始操作が行われることでもよい。
【0438】
○ リモート可能状態の条件のうち(B)又は(C)の条件を省略してもよい。
○ 遠隔操作装置70は、タッチパネル71を備えていなくてもよく、遠隔操作装置70に対する異常解除操作は、異常解除アイコンIc10に対する入力操作に限られない。例えば、遠隔操作装置70に対する異常解除操作とは、遠隔操作装置70に設けられた異常解除スイッチの操作でもよい。
【0439】
○ 異常停止モード中又は有人モード中は、両通信部69,76は通信接続状態を解除してもよい。この場合、両通信部69,76は、異常停止モードからニュートラルモードへ移行する場合、又は、有人モードからニュートラルモードへ移行する場合には、再度通信接続状態となるとよい。要は、少なくとも遠隔モード中は、両通信部69,76が通信接続状態となっていればよい。但し、互いの状態を把握できる観点に着目すれば、制御モードに関わらず、両通信部69,76の通信接続状態は維持されている方が好ましい。
【0440】
○ 異常停止モードへの移行に伴う動作停止制御(ステップS710,S811)と、ニュートラルモードへの移行又は制御モードの移行を伴わない動作停止制御(ステップS706,S805)とで、制御態様が異なっていてもよい。例えば、ステップS706,S805の処理を契機とする動作停止制御は、ステップS710,S811の処理を契機とする動作停止制御よりも、ゆっくりと停止するように強制停止用減速度が低く設定されてもよい。これにより、緊急時には素早くフォークリフト20の動作を停止させることができる一方、緊急時ではない場合には、円滑にフォークリフト20の動作を停止させることができる。
【0441】
○ 動作停止報知を省略してもよい。すなわち、動作停止報知は必須ではない。
○ 産業車両用遠隔操作システム10は、遠隔操作装置70及びフォークリフト20の少なくとも一方に対してリセット操作が行われた場合には、遠隔操作アプリケーションのリセット(再起動)処理を実行するように構成されていてもよい。リセットとは、例えば一旦両通信部69,76の通信接続状態を解除して、アプリケーションを終了し、その後再度初期設定から行うことである。
【0442】
かかる構成において、異常解除操作はリセット操作を含んでいてもよい。詳細には、車両CPU64は、異常停止モード中であって通信接続状態である状況においてリセット操作が行われた場合には、リセット処理を実行してもよい。この場合、一旦両通信部69,76の通信接続状態が解除され、その後初期設定が行われる。これにより、制御モードが初期設定の制御モードであるニュートラルモードに設定される。この場合であっても、異常停止モードを解除できる。つまり、異常停止モードからニュートラルモードへの移行の際、通信接続状態は一旦解除されてもよい。なお、遠隔モード又は有人モードから異常停止モードへの移行時についても同様である。
【0443】
○ フォークリフト20に対する異常解除操作は、異常解除スイッチ53に限られず任意である。
○ 異常解除アイコンIc10は、制御モードに関わらず表示される構成でもよい。この場合、リモートCPU73は、異常停止モード中に異常解除アイコンIc10に対する入力操作があった場合に異常解除操作が行われたと判定するとよい。
【0444】
○ 異常解除操作は、異常解除スイッチ53の操作、及び、異常解除アイコンIc10に対する入力操作の双方が行われることでもよい。すなわち、異常解除操作は、複数段階の操作でもよいし、遠隔操作装置70に対する操作と、フォークリフト20に対する操作との組み合わせでもよい。これにより、異常解除操作が複雑となるため、意図的に行う必要が生じる。したがって、誤って異常解除操作が行われることを抑制できる。
【0445】
○ 有人モード異常事態及び遠隔モード異常事態は、第2実施形態で示したものに限られず任意である。例えば、有人モード異常事態は、搭乗者が不在である条件下で車両操作部40の操作が行われることでもよいし、遠隔モード異常事態は、車両操作部40の操作が行われることでもよい。なお、車両操作部40の操作の有無は、操作センサ63によって検知される。
【0446】
○ 異常停止モードへ移行する契機となる異常事態として、遠隔モード異常事態及び有人モード異常事態を省略してもよい。
○ 車両CPU64は、有人モードにおいて車両操作部40の操作がない場合には、動作を停止する処理(ステップS705,S706)を実行するように構成されていたが、これに限られず、上記ステップS705,S706を省略してもよい。この場合であっても、例えばフォークリフト20の動作中に車両操作部40の操作を止めて直ちに降車した場合には、制御モードは異常停止モードに移行して動作停止制御が行われる。
【0447】
○ 車両CPU64は、制御モードが遠隔モードであってフォークリフト20の停止中に有人センサ51によって搭乗者が検知されたことに基づいて、制御モードを遠隔モードからニュートラルモードに移行させてもよい。
【0448】
○ 不可表示を省略してもよい。この場合、リモート不可状態のフォークリフト20に対するリモート開始操作、詳細にはリモート不可状態のフォークリフト20に対応するリモート対象アイコンIc1に対する入力操作(タップ操作)が行われる場合がある。この場合であっても、リモート不可状態のフォークリフト20の制御モードは、遠隔モードに移行しない。このため、リモート通信部76としては、遠隔モードではない制御モードが設定された車両信号SGyを受信することとなる。したがって、リモートCPU73は、タッチパネル71の画像を待機画像G1から操作画像G2に切り替えることなく、待機画像G1が表示された状態を維持する。これにより、遠隔操作者としては、リモート不可状態であることを認識できる。但し、遠隔操作者に対してリモート可能状態か否かを報知することができる観点に着目すれば、タッチパネル71に不可表示が行われる方がよい。
【0449】
○ 終了操作は、タッチパネル71(詳細には待機画像G1)の特定箇所への入力操作に限られず、任意である。例えば、遠隔操作装置70に専用の終了ボタンが設けられている場合には、当該終了ボタンを操作することでもよい。
【0450】
リモート開始操作及びリモート停止操作についても任意であり、例えば第2回転操作であってもよいし、タッチパネル71に対して同時に複数箇所の入力操作を行うことでもよいし、専用ボタンが設けられている場合には当該専用ボタンを操作することでもよい。
【0451】
○ 車両CPU64は、動作停止制御中に制御モードの移行を行ってもよい。例えば、車両CPU64は、動作停止制御中に異常解除操作が行われたことに基づいて、制御モードを異常停止モードからニュートラルモードに移行させてもよい。この場合、ニュートラルモードから遠隔モード又は有人モードへの移行条件に、フォークリフト20が動作停止中であることを追加するとよい。
【0452】
○ 待機画像G1又は操作画像G2を省略してもよく、制御モードに関わらず、タッチパネル71には同一の画像が表示されている構成でもよい。
○ ニュートラルモードと有人モードとで、表示される画像を異ならせてもよい。
【0453】
○ リモートCPU73は、遠隔操作装置70に対する遠隔制御操作に基づいて遠隔操作信号SGx1を生成することができれば、その具体的な制御態様については各実施形態のものに限定されず任意である。
【0454】
○ 各実施形態の産業車両用遠隔操作システム10は、走行とフォーク26の動作とが同時に行われないように構成されているが、走行とフォーク26の動作とが同時に行われ得るように構成されていてもよい。
【0455】
○ 遠隔操作装置70は、遠隔操作者が把持できるような小型なものに限られない。例えば、遠隔操作装置70は、フォークリフト20を管理する管制室に設けられた専用装置であってもよい。
【0456】
かかる別例においては、遠隔操作者としては、管制室から直接視認することなく、フォークリフト20の遠隔操作を行ってもよい。この場合、フォークリフト20にカメラを設け、遠隔操作装置70は、当該カメラの画像を表示させる表示部を有しているとよい。これにより、遠隔操作者としては、フォークリフト20を直接視認しなくても、カメラの画像を見ながら遠隔操作を行うことができるため、安全性の向上を図ることができる。
【0457】
すなわち、遠隔操作装置70による遠隔操作は、フォークリフト20を直接視認できる程度の近距離の範囲に限られず、直接視認できないような遠距離の範囲のものであってもよい。換言すれば、本産業車両用遠隔操作システム10は、上記遠距離の範囲での遠隔操作に対しても適用できる。
【0458】
○ 遠隔操作装置70が制御モードを制御してもよい。すなわち、遠隔操作装置70が「モード制御部」を備えていてもよい。詳細には、リモートプログラム74aが、リモートCPU73を、制御モードを制御するものとして機能させてもよい。この場合、車両通信部69は、制御モードを特定するための各種情報を定期的に送信し、リモートCPU73は、上記各種情報及び遠隔操作装置70に対する操作に基づいて制御モードを制御すればよい。
【0459】
例えば、車両信号SGyの機台情報Dy3は、異常解除スイッチ53の状態を示す情報を含むとよい。そして、リモートCPU73は、受信された機台情報Dy3に基づいて制御モードを制御するとよい。例えばリモートCPU73は、遠隔モード中にリモート通信部76が異常情報Dy3dに異常を示す情報が設定された車両信号SGyを受信したことに基づいて、制御モードを遠隔モードから異常停止モードに移行させてもよい。
【0460】
本別例では、車両信号SGyに基づいて異常事態を検知するリモートCPU73が「異常事態検知部」に対応する。すなわち、「異常事態検知部」は、産業車両に設けられている構成に限られず、遠隔操作装置70に設けられていてもよい。
【0461】
また、本別例では、リモートCPU73は、車両信号SGyの機台情報Dy3に含まれる異常解除スイッチ53の状態を示す情報に基づいて、異常解除スイッチ53の操作の有無を判定する処理を実行する。この点に着目すれば、当該判定処理を実行するリモートCPU73が「解除操作検知部」に対応するとも言える。
【0462】
○ リモートCPU73が動作停止制御を実行してもよい。詳細には、リモートCPU73は、動作停止制御として、フォークリフト20の動作が停止するまで、遠隔制御操作に関わらず、強制停止に対応した各種情報が設定された遠隔操作信号SGx1を繰り返し送信する制御を行う。この場合、車両CPU64は、車両操作部40の操作に関わらず上記遠隔操作信号SGx1に基づいて各アクチュエータ61,62を制御する。この場合であっても、遠隔制御操作及び車両操作部40の操作に関わらず、フォークリフト20の動作が停止する。
【0463】
つまり、動作停止制御の実行主体は、フォークリフト20でもよいし、遠隔操作装置70でもよい。換言すれば、遠隔操作装置70が「停止制御部」を有していてもよいし、フォークリフト20が「停止制御部」を有していてもよいし、遠隔操作装置70が「停止制御部」の一部を有し、フォークリフト20が他の部分を有していてもよい。
【0464】
○ 遠隔操作装置70のリモートプログラム74aは、異常事態が発生したことに基づいて動作停止制御、遠隔操作停止制御及び動作停止報知を行うための処理を実行するための実行プログラムを含んでいてもよい。要は、動作停止制御、遠隔操作停止制御及び動作停止報知を行うための処理を実行するための実行プログラム(産業車両用遠隔操作プログラム)は、車両メモリ65及びリモートメモリ74のいずれに記憶されていてもよい。
【0465】
○ 産業車両は、フォークリフト20に限られず任意であり、フォーク26以外の動作対象物(換言すれば操作対象物)を1又は複数有するものでもよい。産業車両の動作とは、走行及び動作対象物の動作の少なくとも一方でよく、また動作対象物を複数有する産業車両であれば、産業車両の動作とは、複数の動作対象物のうち少なくとも1つの動作対象物の動作でもよい。
【0466】
○ 車両操作部40又は運転室32がなく有人操作ができない産業車両でもよい。すなわち、有人モードは必須ではない。上記のような有人操作ができない産業車両においては、有人センサ51を省略してもよい。
【0467】
○ リモートプログラム74a又は車両制御処理実行プログラム65aが記憶された記憶媒体を別途用意し、当該記憶媒体を遠隔操作装置70又はフォークリフト20に接続した状態で、遠隔操作装置70によるフォークリフト20の遠隔操作等を行う構成でもよい。
【0468】
○ 各実施形態及び各別例を適宜組み合わせてもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる好適な一例について以下に記載する。
(イ)車両操作部及び無線通信を行う車両通信部を有する産業車両と、前記産業車両を遠隔操作するのに用いられる遠隔操作装置と、異常事態を検知する異常事態検知部と、前記産業車両の制御モードを制御するモード制御部と、を備え、前記制御モードは、前記遠隔操作装置による前記産業車両の遠隔操作が行われる遠隔モードと、前記車両操作部の操作に基づいて前記産業車両を直接操作する有人操作が行われる有人モードと、前記遠隔操作装置による遠隔操作及び前記有人操作の双方が行われない異常停止モードと、を含み、前記異常事態は、前記遠隔モード及び前記有人モードに関わらず共通の異常事態である共通異常事態と、前記遠隔モードに対応させて設定された遠隔モード異常事態と、前記有人モードに対応させて設定されたものであって前記遠隔モード異常事態とは異なる有人モード異常事態と、を含み、前記モード制御部は、前記制御モードが前記遠隔モードである状況において前記異常事態検知部によって前記共通異常事態又は前記遠隔モード異常事態が検知されたことに基づいて、前記制御モードを前記遠隔モードから前記異常停止モードに移行させ、前記制御モードが前記有人モードである状況において前記異常事態検知部によって前記共通異常事態又は前記有人モード異常事態が検知されたことに基づいて、前記制御モードを前記有人モードから前記異常停止モードに移行させることを特徴とする産業車両用遠隔操作システム。
【0469】
かかる構成によれば、共通異常事態が発生した場合には、制御モードに関わらず、制御モードが異常停止モードへ移行する。これにより、例えば産業車両の異常など、制御モードに無関係な異常事態に対応できる。
【0470】
ここで、遠隔操作を行う遠隔モードと、有人操作を行う有人モードとでは、想定される異常事態も異なる。この点、本構成によれば、各制御モードにおいて想定される特有の異常事態に対しても対応できるため、安全性の更なる向上を図ることができる。
【0471】
なお、(イ)は「産業車両用遠隔操作システム」であったが、(イ)が示す主要な技術的思想は、「産業車両用遠隔操作システム」に限られず、「産業車両」、「遠隔操作装置」、「産業車両用遠隔操作プログラム」及び「産業車両用遠隔操作方法」に対しても適用できる。
【符号の説明】
【0472】
10…産業車両用遠隔操作システム、20…フォークリフト(産業車両)、21…機台、26…フォーク、31…外側側面、32…運転室、34…内側側面、40…車両操作部、51…有人センサ、52…切替スイッチ、53…異常解除スイッチ、54,56…ドア、55,57…ドアセンサ、61、62…アクチュエータ(駆動部)、64…車両CPU、65a…車両制御処理実行プログラム、66…車両状態検知部、67…障害物センサ、68…異常検知センサ、69…車両通信部、70…遠隔操作装置、71…タッチパネル、73…リモートCPU、74a…リモートプログラム、76…リモート通信部、77…リモートプログラム、SGx1…遠隔操作信号、SGy…車両信号、Ic10…異常解除アイコン。