(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】孔壁観察システム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/954 20060101AFI20220208BHJP
【FI】
G01N21/954 A
(21)【出願番号】P 2018077506
(22)【出願日】2018-04-13
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 大輔
(72)【発明者】
【氏名】稲川 雄宣
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-331168(JP,A)
【文献】特開2016-039597(JP,A)
【文献】特開2017-220824(JP,A)
【文献】特開2016-082477(JP,A)
【文献】特開2017-168077(JP,A)
【文献】国際公開第2017/155005(WO,A1)
【文献】特開2017-044606(JP,A)
【文献】特開2016-108800(JP,A)
【文献】登録実用新案第3119012(JP,U)
【文献】特開2003-254913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボーリング孔の内壁を撮影するカメラを搭載した撮影台車と、
前記撮影台車によって撮影された撮影データから孔壁展開図を生成する孔壁展開図生成装置と、を具備し、
前記孔壁展開図生成装置は、
所定時間毎の前記撮影データを取得する画像取得部と、
前記画像取得部によって取得された前記撮影データから、前記ボーリング孔の軸方向が所定長で、周方向全域を写した360度パノラマ画像を部分展開図として生成する部分展開図生成部と、
前記部分展開図生成部によって生成された前記部分展開図から特徴点を抽出した特徴点モニタデータを生成する特徴点抽出部と、
撮影時間が前後する前記部分展開図の前記特徴点モニタデータをマッチングさせ、マッチング時の軸方向及び周方向の変換距離及び変換方向をそれぞれ算出する特徴点マッチング部と、
前記特徴点マッチング部によって算出された軸方向及び周方向の変換距離及び変換方向に基づいて、撮影時間が前後する前記部分展開図を連結して前記孔壁展開図を生成する部分展開図連結部と、を具備
し、
前記カメラによる撮影後に、前記孔壁展開図生成装置による前記孔壁展開図の生成動作を行う場合には、
前記特徴点マッチング部は、撮影時間が前後する前記部分展開図の前記特徴点モニタデータがマッチングしないと、後に撮影された方の前記部分展開図を削除し、さらに後に撮影された方の前記部分展開図を前に撮影された方の前記部分展開図とマッチングさせることを特徴とする孔壁観察システム。
【請求項2】
ボーリング孔の内壁を撮影するカメラを搭載した撮影台車と、
前記撮影台車によって撮影された撮影データから孔壁展開図を生成する孔壁展開図生成装置と、を具備し、
前記孔壁展開図生成装置は、
所定時間毎の前記撮影データを取得する画像取得部と、
前記画像取得部によって取得された前記撮影データから、前記ボーリング孔の軸方向が所定長で、周方向全域を写した360度パノラマ画像を部分展開図として生成する部分展開図生成部と、
前記部分展開図生成部によって生成された前記部分展開図から特徴点を抽出した特徴点モニタデータを生成する特徴点抽出部と、
撮影時間が前後する前記部分展開図の前記特徴点モニタデータをマッチングさせ、マッチング時の軸方向及び周方向の変換距離及び変換方向をそれぞれ算出する特徴点マッチング部と、
前記特徴点マッチング部によって算出された軸方向及び周方向の変換距離及び変換方向に基づいて、撮影時間が前後する前記部分展開図を連結して前記孔壁展開図を生成する部分展開図連結部と、
警告を出力する警告出力部とを具備し、
前記カメラによる撮影と、前記孔壁展開図生成装置による前記孔壁展開図の生成動作とを並行して行っている場合には、
前記特徴点マッチング部は、撮影時間が前後する前記部分展開図の前記特徴点モニタデータがマッチングしないと、前記警告出力部によって警告を出力し、
前記特徴点マッチング部は、撮影時間が前後する前記部分展開図の前記特徴点モニタデータがマッチングしないと、後に撮影された方の前記部分展開図を削除することを特徴とする孔壁観察システム。
【請求項3】
前記カメラは、それぞれの光軸が合致するようにして、互いに逆向きに組み合わせられた2つの撮像光学系を備えた全天球カメラであり、
前記撮影台車は、前記撮像光学系の光軸が前記ボーリング孔の中心軸と直交し、2つの前記撮像光学系と前記ボーリング孔の内壁との光軸上のそれぞれの距離が同じになるように前記全天球カメラを前記ボーリング孔の中心軸上に支持するセントラライザを具備することを特徴とする請求項
1又は2に記載の孔壁観察システム。
【請求項4】
前記部分展開図生成部は、前記全天球カメラの前記撮像光学系の光軸を通る前記ボーリング孔の周方向のラインが、前記ボーリング孔の軸方向の中央ラインとなる前記部分展開図を生成することを特徴とする請求項
3記載の孔壁観察システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボーリング孔内の孔壁観察を行う孔壁観察システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ノンコアボーリング(削孔検層)の実施後や、グランドアンカー孔の削孔後に、ボーリング孔内の孔壁観察を行うことで、地山の脆弱部の位置や原因(亀裂、風化、断層等)を特定することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来、扎壁観察は、ボアホールテレビ(以下、BHTVと称す)と呼ばれる撮影装置により行われている。BHTVは、ボーリング削孔軸方向にカメラを置き、その先に円錐ミラーを設置することで孔壁面を撮影する。ボーリング孔内における撮影位置は、距離計によって測定されており、孔壁画像を撮影位置ごとに並べることで、一連の孔壁展開図を生成している。
【0004】
孔壁展開図によって、地山の脆弱部の位置や原因を定量的(亀裂の幅や間隔、走向傾斜)に把握することができる。また、孔壁展開図を深度ごとに並べて孔内状況を網羅的に把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、BHTVは非常に高価であり、特に円錐ミラーの取り扱いには細心の注意が必要である。また、水平のボーリング孔の孔壁観察を行う場合は、孔壁が崩壊して撮影装置が抜けなくなるリスクが高く、そのリスクに応じた費用が発生してしまう。さらに、撮影しながら精密な距離計測を行う必要があるため、準備に費用と時間を要する。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の課題を解消し、安価なカメラを用いて簡便に孔壁観察を行うことができる孔壁観察システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の孔壁観察システムは、ボーリング孔の内壁を撮影するカメラを搭載した撮影台車と、前記撮影台車によって撮影された撮影データから孔壁展開図を生成する孔壁展開図生成装置とを具備し、前記孔壁展開図生成装置は、所定時間毎の前記撮影データを取得する画像取得部と、前記画像取得部によって取得された前記撮影データから、前記ボーリング孔の軸方向が所定長で、周方向全域を写した360度パノラマ画像を部分展開図として生成する部分展開図生成部と、前記部分展開図生成部によって生成された前記部分展開図から特徴点を抽出した特徴点モニタデータを生成する特徴点抽出部と、撮影時間が前後する前記部分展開図の前記特徴点モニタデータをマッチングさせ、マッチング時の軸方向及び周方向の変換距離及び変換方向をそれぞれ算出する特徴点マッチング部と、前記特徴点マッチング部によって算出された軸方向及び周方向の変換距離及び変換方向に基づいて、撮影時間が前後する前記部分展開図を連結して前記孔壁展開図を生成する部分展開図連結部と、を具備し、前記カメラによる撮影後に、前記孔壁展開図生成装置による前記孔壁展開図の生成動作を行う場合には、前記特徴点マッチング部は、撮影時間が前後する前記部分展開図の前記特徴点モニタデータがマッチングしないと、後に撮影された方の前記部分展開図を削除し、さらに後に撮影された方の前記部分展開図を前に撮影された方の前記部分展開図とマッチングさせることを特徴とする。
また、本発明の孔壁観察システムは、ボーリング孔の内壁を撮影するカメラを搭載した撮影台車と、前記撮影台車によって撮影された撮影データから孔壁展開図を生成する孔壁展開図生成装置と、を具備し、前記孔壁展開図生成装置は、所定時間毎の前記撮影データを取得する画像取得部と、前記画像取得部によって取得された前記撮影データから、前記ボーリング孔の軸方向が所定長で、周方向全域を写した360度パノラマ画像を部分展開図として生成する部分展開図生成部と、前記部分展開図生成部によって生成された前記部分展開図から特徴点を抽出した特徴点モニタデータを生成する特徴点抽出部と、撮影時間が前後する前記部分展開図の前記特徴点モニタデータをマッチングさせ、マッチング時の軸方向及び周方向の変換距離及び変換方向をそれぞれ算出する特徴点マッチング部と、前記特徴点マッチング部によって算出された軸方向及び周方向の変換距離及び変換方向に基づいて、撮影時間が前後する前記部分展開図を連結して前記孔壁展開図を生成する部分展開図連結部と、警告を出力する警告出力部とを具備し、前記カメラによる撮影と、前記孔壁展開図生成装置による孔壁展開図の生成動作とを並行して行っている場合には、前記特徴点マッチング部は、撮影時間が前後する前記部分展開図の前記特徴点モニタデータがマッチングしないと、前記警告出力部によって警告を出力し、前記特徴点マッチング部は、撮影時間が前後する前記部分展開図の前記特徴点モニタデータがマッチングしないと、後に撮影された方の前記部分展開図を削除しても良い。
さらに、本発明の孔壁観察システムにおいて、前記カメラは、それぞれの光軸が合致するようにして、互いに逆向きに組み合わせられた2つの撮像光学系を備えた全天球カメラであり、前記撮影台車は、前記撮像光学系の光軸が前記ボーリング孔の中心軸と直交し、2つの前記撮像光学系と前記ボーリング孔の内壁との光軸上のそれぞれの距離が同じになるように前記全天球カメラを前記ボーリング孔の中心軸上に支持するセントラライザを具備しても良い。
さらに、本発明の孔壁観察システムにおいて、前記部分展開図生成部は、前記全天球カメラの前記撮像光学系の光軸を通る前記ボーリング孔の周方向のラインが、前記ボーリング孔の軸方向の中央ラインとなる部分展開図を生成しても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、撮影データから生成する部分展開図を精密な距離計測結果を用いることなく連結させることができ、安価なカメラを用いて簡便に孔壁観察を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る孔壁観察システムの実施の形態の構成を示す側断図である。
【
図2】
図1に示す孔壁展開図生成装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示す撮影台車を用いたボーリング孔の内壁の撮影手順を説明するための説明図である。
【
図4】
図2に示す部分展開図生成部及び特徴点抽出部の動作を説明するための説明図である。
【
図5】
図2に示す特徴点マッチング部及び部分展開図連結部の動作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。
本実施形態の観察システムは、
図1を参照すると、ボーリング孔の内壁を撮影するカメラを搭載した撮影台車1と、撮影台車1によって撮影された撮影データから孔壁展開図を生成する孔壁展開図生成装置2とで構成されている。
【0012】
撮影台車1は、ボーリング孔の内壁を撮影するカメラとして全天球カメラ11を搭載していると共に、前方カメラ12、照明13及びセントラライザ14を備えている。
【0013】
全天球カメラ11は、上下左右全方位を撮影可能な撮影装置である。本実施形態では、全天球カメラ11として、180度より大きい全画角を有する広角レンズと、広角レンズによる像を撮像するCMOS等の撮像センサとを有する同一構造の撮像光学系15a、15bを2つ組み合わせ、撮像光学系15a、15bは、それぞれの光軸が合致するようにして、互いに逆向きに組み合わせられている。なお、3以上の撮像光学系(例えば、画角90度×4)を組み合わせた全天球カメラ11や、異なる画角の撮像光学系(例えば、画角270度+90度)を組み合わせた全天球カメラ11を採用しても良い。
【0014】
前方カメラ12は、前方を撮影する孔内状況監視用の通常のカメラであり、CMOSイメージセンサを用いたCMOSカメラ等のデジタルカメラを用いることができる。
【0015】
照明13は、全天球カメラ11及び前方カメラ12が撮影する領域に光を照射する。
【0016】
セントラライザ14は、ボーリング孔の内壁に当接して軸方向に走行する車輪を先端に備えた複数のアームを有し、複数のアームをボーリング孔の内壁に向けて放射状に架け渡すことで、全天球カメラ11をボーリング孔の中心軸上に支持する。全天球カメラ11は、セントラライザ14によって、撮像光学系15a、15bにおける広角レンズの光軸がボーリング孔の中心軸と直交し、撮像光学系15a、15bにおけるそれぞれの広角レンズとボーリング孔の内壁との光軸上のそれぞれの距離Ra、Rbが同じになるように支持される。
【0017】
孔壁展開図生成装置2は、パーソナルコンピュータ等のプログラム制御で動作する情報処理装置であり、
図2を参照すると、制御部3と、ハードディスクや半導体メモリ等の記憶手段で構成された記憶部4と、スピーカー等の音声出力装置や警告ランプ、液晶ディスプレイ等の表示装置で構成された警告出力部5と、液晶ディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置で構成された展開図出力部6とを備えている。
【0018】
制御部3は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピューター等の情報処理部である。ROMには孔壁展開図生成装置2の動作制御を行うための制御プログラムが記憶されている。制御部3は、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出し、制御プログラムをRAMに展開させることで、画像取得部31と、部分展開図生成部32と、特徴点抽出部33と、特徴点マッチング部34と、部分展開図連結部35として機能する。
【0019】
画像取得部31は、全天球カメラ11から所定時間毎の撮影データを取得する。画像取得部31は、全天球カメラ11によって所定時間毎に撮影された静止画を撮影データとして取得しても良く、全天球カメラ11によって撮影された動画から指定したフレーム数毎に抽出した静止画を撮影データとして取得しても良い。
【0020】
部分展開図生成部32は、画像取得部31によって取得される所定時間毎の撮影データから部分展開
図H1~nをそれぞれ生成して記憶部4に記憶させる。部分展開図生成部32は、撮影データの歪みを補正し、ボーリング孔の軸方向が所定長L(例えば、L=4cm)で、ボーリング孔の周方向全域を写した360度パノラマ画像を部分展開
図H1~nとしてそれぞれ生成する。部分展開図生成部32が生成する部分展開
図H1~nは、
図1に示すように、全天球カメラ11の撮像光学系15a、15bにおける広角レンズの光軸を通るボーリング孔の周方向のラインが、ボーリング孔の軸方向の中央ラインCとなる、中央ラインCを中心として前後L/2の範囲である。なお、画像取得部31によって取得される撮影データは、全天球カメラ11の撮像光学系15a、15bでそれぞれ撮影された2枚の画像からなり、部分展開図生成部32は、2枚の画像を結合して部分展開
図H1~nを生成する。
【0021】
特徴点抽出部33は、部分展開図生成部32によって生成された部分展開
図H1~nから複数の「特徴点」をそれぞれ抽出し、抽出した「特徴点」の画像座標(x、y)を特徴点モニタデータD
1~nとしてそれぞれ生成して記憶部4に記憶させる。
【0022】
特徴点抽出部33は、ボーリング孔の内壁の亀裂、岩質の変化点等を「特徴点」として抽出する。従って、ボーリング孔の内壁は、亀裂、岩質の変化点といったテクスチャーが多いため、「特徴点」の抽出を容易に行うことができる。
【0023】
これにより、部分展開図生成部32によって所定時間毎の部分展開
図H1~nが生成されると共に、特徴点抽出部33によって部分展開
図H1~n毎の特徴点モニタデータD
1~nが生成される。
【0024】
特徴点マッチング部34は、特徴点のマッチング技術を用いて、撮影時間が前後する部分展開
図H1~nの特徴点モニタデータD
1~nをそれぞれマッチングさせ、マッチング時の軸方向及び周方向の変換距離及び変換方向をそれぞれ算出する。
【0025】
部分展開図連結部35は、特徴点マッチング部34によって算出された軸方向及び周方向の変換距離及び変換方向に基づいて、撮影時間が前後する部分展開
図H1~nを連結してボーリング孔全長にわたる孔壁展開
図Hallを生成する。
【0026】
次に、撮影台車1を用いたボーリング孔の内壁の撮影手順について
図3を参照して詳細に説明する。
まず、観察するボーリング孔の内壁に位置の基準となる目印Mを1か所以上設置する。目印Mの設置場所は、撮影台車1の全天球カメラ11によって撮影可能な場所であればどこでも良く、例えば、入り口から1m程度の設置しやすい場所を選ぶと良い。
【0027】
次に、撮影台車1に引綱16を付けた状態でボーリング孔に挿入して最奥部まで走行させる。引綱16は、撮影台車1の全天球カメラ11及び前方カメラ12と孔壁展開図生成装置2との間の通信ケーブルと兼用しても良い。ボーリング孔が縦孔であったり、下向きの傾斜があったりした場合には、撮影台車1を自重で走行させることができる。ボーリング孔が横孔である場合には、棒によって押し込んだり、撮影台車1に自走機能を備えさせたりすると良い。
【0028】
なお、撮影台車1をボーリング孔の最奥部まで走行させる際には、前方カメラ12によって撮影した映像を孔壁展開図生成装置2の展開図出力部6にリアルタイムで表示させると良い。これにより、孔内状況を確認することができ、撮影台車1をボーリング孔の最奥部まで到達したか否かを判断することができる。
【0029】
次に、引綱16を引いて撮影台車1を手前に走行させながら、全天球カメラ11によってボーリング孔の内壁を撮影する。撮影台車1を走行させるスピートは、一定である必要はない。
【0030】
次に、孔壁展開図生成装置2による孔壁展開図の生成動作について
図4及び
図5を参照して詳細に説明する。
まず、画像取得部31は、
図4(a)に示すような所定時間毎の撮影データP
1~nを全天球カメラ11から取得する。
図4(a)には、画像取得部31によって取得された撮影データP
1~4が示されている。
【0031】
部分展開図生成部32は、
図4(b)に示すように、画像取得部31によって取得される所定時間毎の撮影データP
1~nから部分展開
図H1~nをそれぞれ生成して記憶部4に記憶させる。
図4(b)には、撮影データP
1~4から生成された部分展開
図H1~4が示されている。以下、部分展開
図H1~4を部分展開図連結部35によって連結するまでの動作を説明する。
【0032】
次に、特徴点抽出部33は、
図4(c)に示すように、部分展開
図H1~4から複数の「特徴点」をそれぞれ抽出し、抽出した「特徴点」の画像座標(x、y)を特徴点モニタデータD
1~nとしてそれぞれ生成して記憶部4に記憶させる。
図4(c)において、白抜き+印が「特徴点」を示している。
【0033】
次に、特徴点マッチング部34は、
図5(a)に矢印A
12、A
23、A
34で示すように、特徴点のマッチング技術を用いて、撮影時間が前後する部分展開
図H1~4の特徴点モニタデータD
1~4をそれぞれマッチングさせる。そして、特徴点マッチング部34は、
図5(a)に矢印B
12、B
23、B
34で示すように、マッチング時の軸方向及び周方向の変換距離及び変換方向を、撮影時間が前後する部分展開
図H1~4毎にそれぞれ算出する。なお、
図5(a)では、2つのマッチングペアについて例示しているが、実際には数多くのマッチングペアを求め、特徴点マッチング部34は、特徴点のマッチングペアの数が予め設定された閾値以上の場合に撮影時間が前後する部分展開
図H1~nがマッチングと判断する。
【0034】
撮影時間が前後する部分展開
図Hm-1、H
mの特徴点モニタデータD
m-1、D
mがマッチングしない場合には、撮影台車1の走行速度が速すぎて撮影時間が前後する部分展開
図Hm-1と部分展開
図Hmとで重なりあう領域が小さい場合や、振動等によって距離Raと距離Rbとが異なってしまい、撮影時間が前後する部分展開
図Hm-1と部分展開
図Hmとで撮影条件に変化が生じた場合が考えられる。従って、全天球カメラ11による撮影と、孔壁展開図生成装置2による孔壁展開図の生成動作とを並行して行っている場合には、特徴点マッチング部34は、撮影時間が前後する部分展開
図Hm-1、H
mの内、後で撮影された方の部分展開
図Hmを削除し、警告出力部5によって音や表示で警告を出力する。これにより、作業員は、撮影台車1を逆方向に戻して全天球カメラ11による撮影をやり直すことができる。
【0035】
また、全天球カメラ11によってボーリング孔全長に亘って撮影した後に、孔壁展開図生成装置2による孔壁展開
図Hallの生成動作を行うようにしても良い。この場合には、撮影台車1の走行速度に対して、画像取得部31によって取得する撮影データの時間間隔を十分に短くし、撮影時間が前後する部分展開
図Hm-1、H
mの重なりを大きくする。そして、特徴点マッチング部34は、部分展開
図Hm-1、H
mの特徴点モニタデータD
m-1、D
mがマッチングしない場合、後で撮影された方の部分展開
図Hmを削除し、さらに後で撮影された方の部分展開
図Hm+1を前に撮影された方の部分展開
図Hm-1とマッチングさせる。これにより、不良データを削除してより正確な孔壁展開
図Hallを生成することができる。なお、部分展開
図Hm-1とマッチングしない部分展開図が部分展開
図Hm以降も連続して予め設定された枚数になった場合には、特徴点マッチング部34は、警告出力部5によって音や表示で警告を出力すると良い。
【0036】
次に、部分展開図連結部35は、特徴点マッチング部34によって算出された軸方向及び周方向の変換距離及び変換方向に基づいて、
図5(b)に示すように、撮影時間が前後する部分展開
図H1~4を連結した孔壁展開
図H1~4を生成する。このようにして、撮影時間が前後する部分展開
図H1~nを連結してボーリング孔全長にわたる孔壁展開
図Hallを生成する。そして、孔壁展開
図Hallに位置の基準となる目印Mが含むことで、ボーリング孔全長にわたる位置を把握することができる。
【0037】
撮影時間が前後する部分展開
図H1~4を連結する際には、全天球カメラ11の光軸が通る周方向のライン(以下、中央ラインCと称す)に近い方の画像を優先する。すなわち、孔壁展開
図H1~4では、歪が中央ラインCに近い程、小さい。従って、中央ラインCに近い方の画像を優先することで、より正確に孔壁を再現することができる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態は、ボーリング孔の内壁を撮影する全天球カメラ11を搭載した撮影台車1と、撮影台車1によって撮影された撮影データから孔壁展開
図Hallを生成する孔壁展開図生成装置2とを具備し、孔壁展開図生成装置2は、所定時間毎の撮影データを取得する画像取得部31と、画像取得部31によって取得された撮影データから、ボーリング孔の軸方向が所定長で、周方向全域を写した360度パノラマ画像を部分展開
図H1~nとして生成する部分展開図生成部32と、部分展開図生成部32によって生成された部分展開
図H1~nから特徴点を抽出した特徴点モニタデータD
1~nを生成する特徴点抽出部33と、撮影時間が前後する部分展開
図H1~nの特徴点モニタデータ
D1~nをマッチングさせ、マッチング時の軸方向及び周方向の変換距離及び変換方向をそれぞれ算出する特徴点マッチング部34と、特徴点マッチング部34によって算出された軸方向及び周方向の変換距離及び変換方向に基づいて、撮影時間が前後する部分展開
図H1~nを連結して孔壁展開
図Hallを生成する部分展開図連結部35とを備えている。
この構成により、撮影データから生成する部分展開
図H1~nを精密な距離計測結果を用いることなく連結させることができ、安価なカメラを用いて簡便に孔壁観察を行うことができる。
【0039】
さらに、本実施形態において、全天球カメラ11による撮影後に、孔壁展開図生成装置2による孔壁展開
図Hallの生成動作を行う場合には、特徴点マッチング部34は、撮影時間が前後する部分展開
図Hm-1、H
mの特徴点モニタデータD
1~nがマッチングしないと、後に撮影された方の部分展開
図Hmを削除し、さらに後に撮影された部分展開
図Hm+1を前に撮影された方の部分展開
図Hm-1とマッチングさせる。
この構成により、不良データを削除してより正確な孔壁展開
図Hallを生成することができる。
【0040】
さらに、本実施形態において、警告を出力する警告出力部5を具備し、全天球カメラ11による撮影と、孔壁展開図生成装置2による孔壁展開
図Hallの生成動作とを並行して行っている場合には、特徴点マッチング部34は、撮影時間が前後する部分展開
図Hm-1、H
mの特徴点モニタデータD
m-1、D
mがマッチングしないと、警告出力部5によって警告を出力する。
この構成により、作業員は、撮影台車1を逆方向に戻して全天球カメラ11による撮影をやり直すことができる。
【0041】
さらに、本実施形態において、特徴点マッチング部34は、撮影時間が前後する部分展開
図Hm-1、H
mの特徴点モニタデータD
m-1、D
mがマッチングしないと、後に撮影された方の部分展開
図Hmを削除する。
この構成により、不良データを削除してより正確な孔壁展開
図Hallを生成することができる。
【0042】
さらに、本実施形態において、全天球カメラ11は、それぞれの光軸が合致するようにして、互いに逆向きに組み合わせられた2つの撮像光学系15a、15bを備え、撮影台車1は、撮像光学系15a、15bの光軸がボーリング孔の中心軸と直交し、2つの撮像光学系15a、15bとボーリング孔の内壁との光軸上のそれぞれの距離Ra、Rbが同じになるように全天球カメラ11をボーリング孔の中心軸上に支持するセントラライザ14を備えている。
この構成により、歪の小さい部分展開
図H1~nをそれぞれ同じ条件で生成することができる。
【0043】
さらに、本実施形態において、部分展開図生成部32は、全天球カメラ11の撮像光学系15a、15bの光軸を通るボーリング孔の周方向のラインが、ボーリング孔の軸方向の中央ラインCとなる部分展開
図H1~nを生成する。
この構成により、歪の小さい部分展開
図H1~nを生成することができる。
【0044】
以上、実施形態をもとに本発明を説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせ等にいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0045】
1 撮影台車
11 全天球カメラ
12 前方カメラ
13 照明
14 セントラライザ
15a、15b 撮像光学系
16 引綱
2 孔壁展開図生成装置
3 制御部
4 記憶部
5 警告出力部
6 展開図出力部
31 画像取得部
32 部分展開図生成部
33 特徴点抽出部
34 特徴点マッチング部
35 部分展開図連結部