IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スズキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両用ジョイントカバー 図1
  • 特許-車両用ジョイントカバー 図2
  • 特許-車両用ジョイントカバー 図3
  • 特許-車両用ジョイントカバー 図4
  • 特許-車両用ジョイントカバー 図5
  • 特許-車両用ジョイントカバー 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】車両用ジョイントカバー
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/16 20060101AFI20220208BHJP
   F16D 3/38 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
B62D1/16
F16D3/38 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018085298
(22)【出願日】2018-04-26
(65)【公開番号】P2019189088
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 崇
(72)【発明者】
【氏名】恩田 健市
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-145887(JP,A)
【文献】実開昭62-156581(JP,U)
【文献】実開昭57-031279(JP,U)
【文献】実開平01-102070(JP,U)
【文献】特開平07-257403(JP,A)
【文献】特開2002-029427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00 - 1/28
F16D 1/00 - 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のステアリングシャフトから延びるシャフト側ヨーク部品とギアボックスから延びるギア側ヨーク部品との所定の軸部品を介したジョイント部分を覆う車両用ジョイントカバーであって、
当該車両用ジョイントカバーは、
前記軸部品の周囲を非接触に囲う円筒部分と、
前記円筒部分から前記ギア側ヨーク部品に沿って筒状に延びて該ギア側ヨーク部品を把持する把持部分とを有し、
前記把持部分は、
前記ギア側ヨーク部品を挟んで面接触する一対の把持面と、
前記把持面から突出して前記ギア側ヨーク部品に引っ掛けられる一対のツメとを有することを特徴とする車両用ジョイントカバー。
【請求項2】
前記一対のツメは、前記把持面のうち前記円筒部分との境界付近から突出していて、
当該車両用ジョイントカバーはさらに、前記円筒部分のうち前記一対の把持面との境界付近から外側に突出している一対の突起部を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用ジョイントカバー。
【請求項3】
前記把持部分はさらに、前記一対の把持面の間から前記ギア側ヨーク部品に向かって張り出している段差部を有し、
前記段差部が前記ギア側ヨーク部品と干渉することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ジョイントカバー。
【請求項4】
前記円筒部分は、
円筒状の外周壁と、
前記外周壁から中央に向かって延びて前記把持部分につながっている底部と、
前記外周壁の前記ステアリングシャフト側に形成されている開口とを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用ジョイントカバー。
【請求項5】
前記円筒部分はさらに、
前記底部に沿って前記外周壁に開けられている1または複数の排水孔と、
前記底部のうち前記排水孔に隣接する箇所から外側に突出しているフラップとを有し、
前記フラップは、前記排水孔よりも前記円筒部分の周方向に広い形状になっていることを特徴とする請求項4に記載の車両用ジョイントカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ジョイントカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両のステアリングシャフトとギアボックスとは、自在継手(別名ユニバーサルジョイント。以下、「ジョイント部分」と総称する。)によってつながっている。主なジョイント部分は、ステアリングシャフト側とギアボックス側とのそれぞれに二又のヨーク部品が備えられ、これらヨーク部品が十字状の軸部品を介して接続された構造になっている。
【0003】
ジョイント部分は、多くの場合はダッシュパネルよりも前方のパワーユニット搭載ルームに設置されていて、車室内などに比べて雨水に触れる機会が多い。そこで、従来から、ジョイント部分には、専用のカバーを設置することがあった。例えば、特許文献1に記載の技術では、ステアリングシャフト1の先に、遮水カバー7が設置されている。この遮水カバー7は、低硬度弾性樹脂部材で形成されたカップのような形になっていて、開口を下方の自在継手5に向け、締め付けバンド9を利用してステアリングシャフト1に締結されている。特許文献1では、遮水カバー7の開口の内側に環状突起21などの部材を設ける構成についても述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-30646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成では、環状突起21が備えられるとはいえ、開口が下方を向いているため、洗車時や走行中などに車体下側から高圧の水流がかかった際には浸水を許すおそれがある。また、特許文献1では、遮水カバー7を取り付けるにあたり、別部品である締め付けバンド9が必要になっていて、部品点数や作業効率の点において改善の余地を残している。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、防水性能が高く取付けも簡単な車両用ジョイントカバーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用ジョイントカバーの代表的な構成は、車両のステアリングシャフトから延びるシャフト側ヨーク部品とギアボックスから延びるギア側ヨーク部品との所定の軸部品を介したジョイント部分を覆う車両用ジョイントカバーであって、当該車両用ジョイントカバーは、軸部品の周囲を非接触に囲う円筒部分と、円筒部分からギア側ヨーク部品に沿って筒状に延びてギア側ヨーク部品を把持する把持部分とを有し、把持部分は、ギア側ヨーク部品を挟んで面接触する一対の把持面と、把持面から突出してギア側ヨーク部品に引っ掛けられる一対のツメとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、防水性能が高く取付けも簡単な車両用ジョイントカバーを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例にかかる車両用ジョイントカバーの概要を示す図である。
図2図1(a)のカバーの付近を拡大して示した図である。
図3図2(b)のカバーをジョイント部分から外した状態で示した図である。
図4図3のカバーを単独で各方向から示した図である。
図5図2(b)のカバー付近の各断面図である。
図6図5(a)のカバーの矢視C図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る車両用ジョイントカバーは、車両のステアリングシャフトから延びるシャフト側ヨーク部品とギアボックスから延びるギア側ヨーク部品との所定の軸部品を介したジョイント部分を覆う車両用ジョイントカバーであって、当該車両用ジョイントカバーは、軸部品の周囲を非接触に囲う円筒部分と、円筒部分からギア側ヨーク部品に沿って筒状に延びてギア側ヨーク部品を把持する把持部分とを有し、把持部分は、ギア側ヨーク部品を挟んで面接触する一対の把持面と、把持面から突出してギア側ヨーク部品に引っ掛けられる一対のツメとを有することを特徴とする。
【0011】
上記の車両用ジョイントカバーは、把持部分を利用してギア側ヨーク部品に取り付けられていて、円筒部分がステアリングシャフト側を向いた姿勢となっている。一般に、ステアリングシャフトは、ダッシュパネルから車両前方斜め下に向かって延びてギアボックスに接続されている。すなわち、当該車両用ジョイントカバーは、円筒部分が上方を向いた姿勢となって設置される。この構成によれば、洗車時や走行中に水をはねた場合など、車体前側や下側から高圧の水流がかかった場合であっても、ジョイント部分の特に軸部材への浸水を効率良く防ぐことができる。また、当該車両用ジョイントカバーには、把持部分に把持面やツメが備えられている。この構成によれば、他の締結具を使用することなく、ギア側ヨーク部品に簡単に取り付けることが可能になっていて、取付時の作業効率を向上させることが可能である。
【0012】
上記の一対のツメは、把持面のうち円筒部分との境界付近から突出していて、当該車両用ジョイントカバーはさらに、円筒部分のうち一対の把持面との境界付近から外側に突出している一対の突起部を有する。
【0013】
上記構成によれば、当該車両用ジョイントカバーは、一対の突起部を引っ張ることで、ギア側ヨーク部品から簡単に外すことができ、取外時の作業効率を向上させることができる。
【0014】
上記の把持部分はさらに、一対の把持面の間からギア側ヨーク部品に向かって張り出している段差部を有し、段差部がギア側ヨーク部品と干渉する。
【0015】
上記の段差部によれば、当該車両用ジョイントカバーの位置ずれを防ぐことが可能になる。
【0016】
上記の円筒部分は、円筒状の外周壁と、外周壁から中央に向かって延びて把持部分につながっている底部と、外周壁のステアリングシャフト側に形成されている開口とを有している。
【0017】
上記構成によれば、円筒部分は、開口を車両後側上方のステアリングシャフトに向け、底部を車両前側下方に向けた姿勢となるため、車体前側および下側からジョイント部分への浸水を効率良く防ぐことが可能になる。
【0018】
上記の円筒部分はさらに、底部に沿って外周壁に開けられている1または複数の排水孔と、底部のうち排水孔に隣接する箇所から外側に突出しているフラップとを有し、フラップは、排水孔よりも円筒部分の周方向に広い形状になっている。
【0019】
上記の排水孔を設けることで、仮に円筒部分の内側に水が浸入したとしても、その水を円滑に排出することができる。また、排水孔に隣接してフラップを設けることで、排水孔からの浸水を防ぐことができる。なお、このフラップは、上述した突起部と機能を併用した部位として設けることが可能である。
【実施例
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0021】
図1は、本発明の実施例にかかる車両用ジョイントカバー(以下カバー100(図1(b)参照))の概要を示す図である。図1(a)は、当該カバー100が利用される車体前端部102を示した斜視図である。以下、図1その他の本願のすべての図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Backward)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Leftward)、R(Rightward)、車両上下方向をそれぞれ矢印U(Upward)、D(Downward)で例示する。
【0022】
車体前端部102には、前面のフロントバンパ104とその後方に設置されているダッシュパネル106などが含まれている。フロントバンパ104とダッシュパネル106との間はパワーユニット搭載ルームE1となっていて、ダッシュパネル106の後方は客室E2となっている。ステアリングシャフト108は、不図示のステアリングホイールの操作をギアボックス110(図1(b)参照)に伝える部材であり、ステアリングコラム112からダッシュパネル106を貫通して車両前方斜め下へと延びている。
【0023】
図1(b)は、図1(a)の車体前端部102を車幅方向左側から見た図である。ステアリングシャフト108は、パワーユニット搭載ルームE1にてギアボックス110に接続されている。ギアボックス110は、ステアリングシャフト108の回転運動を車輪の向きを変える運動に変換する装置であり、パワーユニット搭載ルームE1の前側の下部に設置されている。
【0024】
当該カバー100は、ステアリングシャフト108とギアボックス110とのジョイント部分114(図2(a)参照)を覆っている。ジョイント部分114が存在しているパワーユニット搭載ルームE1の前側の下部は、前方のフロントバンパ104にグリル116(図1(a)参照)が設けられていたり、下方に外部に通じる隙間が存在していたりするため、高圧の洗浄水や走行中に跳ね上げられた泥水などに触れるおそれがある。当該カバー100は、これらの水がジョイント部分114にかかるのを防いでいる。
【0025】
図2は、図1(a)のカバー100の付近を拡大して示した図である。図2(a)は、図1(a)と同じ方向からカバー100を示している。ギアボックスは、破線で示している。カバー100は、材質に軟質樹脂を用いた全体的に円筒型になっていて、中心をジョイント部分114が貫通する構造になっている。カバー100は、軟質樹脂製であることで、軽量かつ水に強いだけでなく、金属部品が集合しているジョイント部分114を傷つけることがなく、加えてある程度の変形を許容できるため取付作業が行いという利点を有している。
【0026】
図2(b)は、図2(a)のカバー100を上方から見た図である。カバー100の防水機能は、主に円筒部分100aが担っている。円筒部分100aは、開口118がステアリングシャフト108側を向いていて、底部120がギアボックス110側を向いている。すなわち、円筒部分100aは、開口118が車両後方上側を向いた姿勢となって設置されている。
【0027】
図3は、図2(b)のカバー100をジョイント部分114から外した状態で示した図である。まず、ジョイント部分114の構成について説明する。ジョイント部分114は、ステアリングシャフト108から延びるシャフト側ヨーク部品122と、ギアボックス110(図2(b)参照)から延びるギア側ヨーク部品124とがつながっている箇所である。シャフト側ヨーク部品122とギア側ヨーク部品124は、共に二又の構造になっていて、十字型の軸部品126を介してつながり、互いの角度を変えることが可能になっている。
【0028】
カバー100は、大きく分けて、軸部品126の周囲を非接触に囲う円筒部分100aと、ギア側ヨーク部品124を把持する把持部分100bとから構成されている。把持部分100bもまた、円筒部分100aと同様に筒状になっていて、円筒部分100aからギア側ヨーク部品124の周囲に沿って延びている。
【0029】
図4は、図3のカバー100を単独で各方向から示した図である。図4(a)は、カバー100を円筒部分100a側から見た斜視図である。円筒部分100aは外周壁128が円筒状を成していて、この外周壁128によって軸部品126(図3参照)を中心とした範囲の全周を覆う。なお、外周壁128の高さ、すなわち底部120から開口118までの寸法は、ジョイント部分114(図3参照)を上方から見たときに、軸部品126を覆い隠すことが出来る程度に設定されている。
【0030】
円筒部分100aには、1または複数(本実施例では2つ)の排水孔130a、130b(図4(a)参照)も設けられている。排水孔130a等は、底部120に沿って外周壁128に開けられている。排水孔130a、130bは、仮に円筒部分100aの内側に水が浸入した場合に、その水を外部に排出する部位である。外周壁128の底部120側(すなわち下部側)に排水孔130a、130bが設けられていることで、ステアリングシャフト108(図3参照)が回転した際に、円滑に排水することが可能になっている。
【0031】
底部120のうち排水孔130a、130bに隣接する箇所には、フラップ132a、132bが外側に突出するよう設けられている。フラップ132a、132bは、排水孔130a、130bから内部への浸水を防ぐ部位であり、円筒部分100aの周方向において排水孔130a、130bよりも広い形状になっている。この構成によって、円筒部分100aを下側から見た場合(図6参照)、排水孔130a、130bはフラップ132a、132bによって覆い隠され、外部から排水孔130a、130bへの浸水が好適に防がれる。
【0032】
図4(b)は、図4(a)のカバー100の部分断面図である。図4(b)に示すように、円筒部分100aの底部120は、外周壁128から中央に向かって延び、把持部分100bへとつながっている。把持部分100bは、ギア側ヨーク部品124(図3参照)を把持する部位であるため、円筒部分100aに比べて内側が狭くなっている。
【0033】
把持部分100bの内側のうち、把持面134bは、ギア側ヨーク部品124(図3参照)に面接触する部位であり、反対側にも把持面134a(図5(a)参照)が設けられている。把持面134bのうち、円筒部分100aとの境界付近からは、ツメ136bが突出している。ツメ136bは、ギア側ヨーク部品124に引っ掛けられる部位であり、反対側にもツメ136a(図5(a)参照)が設けられている。
【0034】
図4(c)は、図4(b)のカバー100を把持部分100b側から見た斜視図である。把持部分100bは、ギア側ヨーク部品124の形状に沿って、矩形に近い形状になっている。前述した把持面134a、134bおよびツメ136a、136bは、把持部分100bの内部の両側に一対設けられている(図5(a)参照)。
【0035】
把持部分100bには、段差部138も設けられている。段差部138は、一対の把持面134a、136bの間から、ギア側ヨーク部品124(図5(b)参照)に向かって張り出している。段差部138がギア側ヨーク部品124と干渉することで、ギア側ヨーク部品124の把持部分100b側への移動が防がれる。
【0036】
図5は、図2(b)のカバー100付近の各断面図である。図5(a)は、図2(a)のカバー100付近のA-A断面図である。一対の把持面134a、134bは、互いに向かい合って、ギア側ヨーク部品124に面接触してこれを挟む。そして、一対のツメ136a、136bは、両側からギア側ヨーク部品124に向かって突出し、二又の間隙部140(図3参照)に引っ掛けられる。ツメ136a、136bが干渉することで、ギア側ヨーク部品124の円筒部分100a側への移動が防がれる。
【0037】
当該カバー100は、把持面134a、134bおよびツメ136a、136bを利用することで、バンド等の他の締結具を使用することなく、ギア側ヨーク部品124に簡単に取り付けることが可能になっている。この構成によれば、部品点数が削減でき、取付作業も簡単であるため、コストや作業効率の面で有益である。
【0038】
フラップ132a、132bは、一対の突起部として半円の板状に突出していて、それぞれユーザが指で把持可能な形状になっている。フラップ132a、132bは、円筒部分100aのうち把持面134a、134bおよびツメ136a、136bとそれぞれ同じ側にて、把持面134a、134bと円筒部分100aとの境界付近から外側に突出している。したがって、フラップ132a、132bを引き離す方向へ引っ張ることで、把持面134a、134bおよびツメ136a、136bを、ギア側ヨーク部品124から簡単に外すことができる。このように、フラップ132aは、上述した排水孔を覆い隠す機能だけでなく、ユーザによる操作を受けることが可能になっていて、当該カバー100の取付けおよび取外し時の作業効率の向上にも役立っている。
【0039】
図5(b)は、図5(a)のカバー100付近のB-B断面図である。上述したように、段差部138は、ギア側ヨーク部品124に向かって張り出した部位である。段差部138は、ギア側ヨーク部品124のうち二又の付け根の細まっている部分にはまり、ギア側ヨーク部品124がそれ以上、把持部分100b側へ移動することを防ぐ。これらのように、把持部分100bは、ギア側ヨーク部品124に対して、車両前方側では段差部138が干渉し、車両後方側では前述のツメ136a、136b(図5(a)参照)が干渉するため、カバー100とギア側ヨーク部品124との相対的な移動、すなわち位置ずれを防ぐことが可能になっている。
【0040】
図6は、図5(a)のカバー100の矢視C図である。この矢視Cは、カバー100およびギア側ヨーク部品124を、車両前方斜め下から見た図でもある。図6に示すように、把持部分100bは、一対の把持面134a、134bがギア側ヨーク部品124に両側から面接触し、そして段差部138もギア側ヨーク部品124側に張り出していることで、ギア側ヨーク部品124との隙間がほとんど埋まった状態になっている。加えて、一対のフラップ132a、132bによって、排水孔130a、130b(図4(a)参照)も覆い隠されている。これらによって、当該カバー100は、車体前側および下側からの水の浸入経路がほぼ塞がれていて、ジョイント部分114(図3参照)の特に軸部品126の被水を効率よく防ぐことが可能になっている。
【0041】
以上のように、当該カバー100によれば、図2(a)等に示したように、円筒部分100aの開口118を上方のステアリングシャフト108側に向け、そして底部120を下方に向けた姿勢となるため、ジョイント部分114の浸水を効率良く防ぐことが可能になっている。また、把持部分100bの把持面134a、134b(図5(a)参照)やツメ136a、136bを利用することで、他の締結部材を用いることなく、ジョイント部分114に対して単独で簡易に取り付けることが可能になっている。
【0042】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、車両用ジョイントカバーに利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
E1…パワーユニット搭載ルーム、E2…客室、100…カバー、100a…円筒部分、100b…把持部分、102…車体前端部、104…フロントバンパ、106…ダッシュパネル、108…ステアリングシャフト、110…ギアボックス、112…ステアリングコラム、114…ジョイント部分、116…グリル、118…開口、120…底部、122…シャフト側ヨーク部品、124…ギア側ヨーク部品、126…軸部品、128…外周壁、130a、130b…排水孔、132a、132b…フラップ、134a、134b…把持面、136a、136b…ツメ、138…段差部
図1
図2
図3
図4
図5
図6