(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】クリーニング装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20220208BHJP
【FI】
G03G21/00 310
(21)【出願番号】P 2018088793
(22)【出願日】2018-05-02
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】目黒 太一
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-139536(JP,A)
【文献】特開2011-95358(JP,A)
【文献】特開2005-156706(JP,A)
【文献】特開2005-275219(JP,A)
【文献】特開2012-13950(JP,A)
【文献】特開平10-49016(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0291885(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に当接し、前記像担持体を清掃するクリーニングブレードと、
前記クリーニングブレードよりも前記像担持体の搬送方向の上流側において前記像担持体に当接し、前記像担持体にトナーを塗布する塗布ローラーと、
前記塗布ローラーに当接し、前記塗布ローラーに前記トナーを塗布する板状部材と、
を有し、
前記塗布ローラーに対する前記板状部材の当接力は、5N以上40N未満であり、
前記像担持体に対する前記塗布ローラーの押圧力は、0.5N以上40N未満であるクリーニング装置。
【請求項2】
前記板状部材は、当該板状部材の非エッジ部が前記塗布ローラーに当接するように配置される請求項1に記載のクリーニング装置。
【請求項3】
前記板状部材および前記塗布ローラーは、前記板状部材および前記塗布ローラーの当接部の上方に前記トナーを貯留する空間を形成するように配置され、
前記板状部材は、前記空間に貯留された前記トナーを前記塗布ローラーに塗布し、
前記板状部材の上端は、自由端であり、前記空間の容量を超えた前記トナーは、前記自由端から下方に排出される請求項1または2に記載のクリーニング装置。
【請求項4】
前記板状部材の前記上端の位置は、前記クリーニングブレードの下端の位置よりも低い請求項3に記載のクリーニング装置。
【請求項5】
前記板状部材によって前記塗布ローラーに塗布される前記トナーの量は、5g/m
2以上50g/m
2未満であり、
前記塗布ローラーによって前記像担持体に塗布され、前記クリーニングブレードに供給される前記トナーの量は、0.5g/m
2以上4g/m
2未満である請求項1~4のいずれか一項に記載のクリーニング装置。
【請求項6】
前記板状部材は、50μm以上200μm未満の厚みを有する金属製の板バネ材であり、
前記塗布ローラーに対する前記板状部材の食い込み量は、0.5mm以上3mm未満である請求項1~5のいずれか一項に記載のクリーニング装置。
【請求項7】
前記塗布ローラーは、発泡スポンジから構成される弾性層を有する請求項1~6のいずれか一項に記載のクリーニング装置。
【請求項8】
前記像担持体と、
請求項1~7のいずれか一項に記載のクリーニング装置と、
を備え、
前記像担持体は、中間転写ベルトである画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニング装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置において、クリーニングブレード(以下、単に「ブレード」とも呼ぶ)によって、中間転写ベルトや感光体ドラム等の像担持体を清掃する技術が知られている。具体的には、像担持体およびブレードの当接部において、トナーから離脱した外添剤が堰き止められることによって、外添剤の静止層が形成され、静止層がトナーを堰き止めることによって、像担持体が清掃される。
【0003】
このような静止層は、像担持体によるブレードの引き連れを防止する機能も有する。具体的には、静止層を形成する外添剤が、像担持体およびブレードの当接部をわずかにすり抜けることによって、像担持体およびブレードの接触面積が減少するため、像担持体およびブレードの間の摩擦力も減少し、ブレードの引き連れが防止される。
【0004】
しかし、低カバレッジの画像や、感光体ドラムの軸方向において位置が偏った画像等が連続して印刷されると、トナーに添加された外添剤の供給量が減少し、静止層が枯渇する。静止層が枯渇すると、ブレードが像担持体によって過度に引き込まれるため、ブレードのカット面摩耗(エッジからカット面側(摺擦上流側)に入った面取り部分の摩耗)が発生しうる。カット面摩耗が発生した状態で印刷が継続されると、カット面摩耗を起点としてブレードのエッジが損耗し、クリーニング不良が発生しうる。すなわち、クリーニング不良の発生を防止するためには、ブレードのカット面摩耗を防止する必要があり、トナーをブレードに安定して供給する必要がある。
【0005】
上記に関連して、たとえば特許文献1には、ブレードの上流側に配置された複数の部材によって滞留させたトナーを、ローラーによってブレードに供給する技術が記載されている。この技術では、滞留したトナーが、当該トナーと像担持体との間に働くファンデルワールス力によって像担持体に付着し、当該像担持体によって搬送されることによって、ブレードに供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ファンデルワールス力は、温度や湿度、像担持体の表面状態等によって容易に変化する。したがって、特許文献1に記載の技術では、トナーがブレードに安定して供給されず、ブレードのカット面摩耗が防止されないという問題がある。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものである。したがって、本発明の目的は、トナーをクリーニングブレードに安定して供給することによって、クリーニングブレードのカット面摩耗を防止するクリーニング装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記の目的は、下記の手段によって達成される。
【0010】
(1)像担持体に当接し、前記像担持体を清掃するクリーニングブレードと、前記クリーニングブレードよりも前記像担持体の搬送方向の上流側において前記像担持体に当接し、前記像担持体にトナーを塗布する塗布ローラーと、前記塗布ローラーに当接し、前記塗布ローラーに前記トナーを塗布する板状部材と、を有し、前記塗布ローラーに対する前記板状部材の当接力は、5N以上40N未満であり、前記像担持体に対する前記塗布ローラーの押圧力は、0.5N以上40N未満であるクリーニング装置。
【0011】
(2)前記板状部材は、当該板状部材の非エッジ部が前記塗布ローラーに当接するように配置される上記(1)に記載のクリーニング装置。
【0012】
(3)前記板状部材および前記塗布ローラーは、前記板状部材および前記塗布ローラーの当接部の上方に前記トナーを貯留する空間を形成するように配置され、前記板状部材は、前記空間に貯留された前記トナーを前記塗布ローラーに塗布し、前記板状部材の上端は、自由端であり、前記空間の容量を超えた前記トナーは、前記自由端から下方に排出される上記(1)または(2)に記載のクリーニング装置。
【0013】
(4)前記板状部材の前記上端の位置は、前記クリーニングブレードの下端の位置よりも低い上記(3)に記載のクリーニング装置。
【0014】
(5)前記板状部材によって前記塗布ローラーに塗布される前記トナーの量は、5g/m2以上50g/m2未満であり、前記塗布ローラーによって前記像担持体に塗布され、前記クリーニングブレードに供給される前記トナーの量は、0.5g/m2以上4g/m2未満である上記(1)~(4)のいずれか一つに記載のクリーニング装置。
【0015】
(6)前記板状部材は、50μm以上200μm未満の厚みを有する金属製の板バネ材であり、前記塗布ローラーに対する前記板状部材の食い込み量は、0.5mm以上3mm未満である上記(1)~(5)のいずれか一つに記載のクリーニング装置。
【0016】
(7)前記塗布ローラーは、発泡スポンジから構成される弾性層を有する上記(1)~(6)のいずれか一つに記載のクリーニング装置。
【0017】
(8)前記像担持体と、上記(1)~(7)のいずれか一つに記載のクリーニング装置と、を備え、前記像担持体は、中間転写ベルトである画像形成装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、クリーニング装置は、像担持体に当接するクリーニングブレードと、クリーニングブレードよりも像担持体の搬送方向の上流側において像担持体に当接する塗布ローラーと、塗布ローラーに当接する板状部材とを有する。そして、塗布ローラーに対する板状部材の当接力が、5N以上40N未満に設定され、像担持体に対する塗布ローラーの押圧力が、0.5N以上40N未満に設定される。これにより、カット面摩耗を防止するのに必要な量のトナーがクリーニングブレードに安定して供給され、クリーニングブレードのカット面摩耗が効果的に防止されうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
【
図3】クリーニング装置の概略構成を示す図である。
【
図4】板状部材の当接方法について説明するための図である。
【
図5】トナーの貯留空間の一例について説明するための図である。
【
図6】トナーの貯留空間の一例について説明するための図である。
【
図7】トナーの貯留空間の他の例について説明するための図である。
【
図8】実施例におけるクリーニング装置の概略構成を示す図である。
【
図9】当接力および押圧力を変化させた場合のカット面摩耗の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張され、実際の比率とは異なる場合がある。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
図2は、作像ユニットの概略構成を示す図である。
【0022】
図1に示すように、画像形成装置1は、制御部10、記憶部20、通信部30、操作パネル40、給紙部50、搬送部60、画像形成部70および定着部80を備える。各構成要素は、信号をやり取りするためのバスを介して、相互に接続されている。
【0023】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)であり、プログラムに従い、上記各構成要素の制御や各種の演算処理を実行する。
【0024】
記憶部20は、予め各種プログラムや各種データを記憶するROM(Read Only Memory)、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶するRAM(Random Access Memory)、各種プログラムや各種データを記憶するハードディスク等から構成される。
【0025】
通信部30は、LAN(Local Area Network)等のネットワークを介して、ユーザーのPC(Personal Computer)等の他の機器と通信するためのインターフェースである。
【0026】
操作パネル40は、たとえば、タッチパネル、テンキー、スタートボタンおよびストップボタン等を備え、各種情報を表示したり、各種操作を受け付けたりする。
【0027】
給紙部50は、印刷に使用される用紙を収容する給紙トレイを備え、給紙トレイに収容された用紙を一枚ずつ給紙する。
【0028】
搬送部60は、搬送路、搬送路に沿って配置された複数の搬送ローラー対、および搬送ローラー対を駆動する駆動モーター(図示せず)を備え、給紙部50によって給紙された用紙を搬送路に沿って搬送する。
【0029】
画像形成部70は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)等の各色の作像ユニット71、中間転写ベルト72、および中間転写ベルト72を清掃するクリーニング装置73を備える。
【0030】
作像ユニット71は、各色のトナーによる画像を形成する。各作像ユニット71は、
図2に示すように、像担持体としての感光体ドラム711を備える。また、作像ユニット71は、感光体ドラム711の周囲に、帯電装置712、露光装置713、現像装置714、転写ローラー715、クリーニング装置716およびイレーサー717を備える。帯電装置712は、感光体ドラム711の表面を一定の電位に一様に帯電させる。露光装置713は、帯電装置712によって帯電させられた感光体ドラム711の表面を露光し、画像データに応じた静電潜像を形成する。現像装置714は、露光装置713によって形成された静電潜像をトナー像に現像する。転写ローラー715は、現像装置714によって形成され、感光体ドラム711によって搬送されてきたトナー像を、中間転写ベルト72に転写する。クリーニング装置716は、クリーニングブレード等によって感光体ドラム711上のトナー等を堰き止めて、感光体ドラム711を清掃する。イレーサー717は、感光体ドラム711の表面を除電する。
【0031】
像担持体としての中間転写ベルト72は、
図1に示すように、複数のローラーによって走行可能に支持された無端ベルトである。中間転写ベルト72は、一次転写領域において作像ユニット71の転写ローラー715によって転写されたトナー像を、二次転写領域に搬送し、二次転写領域において用紙に転写する。中間転写ベルト72は、たとえば、ポリイミドから構成される、体積抵抗率8~11LOGΩ・cm、厚み80μmの半導体ベルトであってもよい。
【0032】
中間転写ベルト72は、上述したように、中間転写ベルト72を清掃するクリーニング装置73を備える。クリーニング装置73の詳細については、
図3を参照して後述する。
【0033】
定着部80は、加熱ローラーおよび加圧ローラーを備え、画像形成部70によって画像が形成された用紙を加熱および加圧して、用紙に画像を定着させる。
【0034】
なお、画像形成装置1は、上記の構成要素以外の構成要素を含んでもよく、あるいは、上記の構成要素のうちの一部を含まなくてもよい。
【0035】
続いて、
図3を参照して、中間転写ベルト72を清掃するクリーニング装置73の詳細について説明する。
【0036】
図3は、クリーニング装置の概略構成を示す図である。
【0037】
図3に示すように、クリーニング装置73は、板状部材731、塗布ローラー732、クリーニングブレード(ブレード)733、およびこれらを収容するハウジング734を備える。
【0038】
板状部材731は、塗布ローラー732に当接し、塗布ローラー732にトナーを塗布する(塗り付ける)板状の部材である。本実施形態では、板状部材731は、所定の当接力によって塗布ローラー732に当接するように配置される。
図3に示すように、板状部材731の一端(上端)は、自由端であることが好ましい。また、板状部材731の他端(下端)は、たとえば、ハウジング734に取り付けられた保持部材に固定される固定端である。
【0039】
板状部材731は、クリープ変形を回避するために、金属製の板バネ材であることが好ましい。板状部材731の材料としては、たとえば、SUS301-CSP、SUS304-CSP、SUS361-CSP等のバネ用ステンレス鋼帯等が挙げられるが、これらに限定されない。また、板状部材731は、塗布ローラー732に対する当接力を確保しつつ、塗布ローラー732に対する追従性も確保するために、50μm以上200μm未満の厚みを有することが好ましい。
【0040】
続いて、塗布ローラー732は、中間転写ベルト72に当接して回転し、板状部材731によって塗布されたトナーを、中間転写ベルト72に塗布する部材である。本実施形態では、塗布ローラー732は、所定の押圧力によって中間転写ベルト72を押圧するように配置される。
【0041】
板状部材731および中間転写ベルト72の各々と塗布ローラー732との間に所定のニップを確保するために、塗布ローラー732は、弾性層を有することが好ましい。また、弾性層は、塗布ローラー732の表面において十分な量のトナーを保持するため、発泡スポンジから構成されることが好ましい。弾性層を構成する発泡スポンジは、セル径が100μm以上350μm以下であって、単位面積当たりのセル占有率が30%以上70%未満であることが好ましい。なお、本実施形態において、単位面積当たりのセル占有率とは、塗布ローラー732の表面における単位面積(1mm×1mm)内に存在するセルの面積(セル面積)の合計値を、単位面積で除算した値をいう。
【0042】
続いて、ブレード733は、中間転写ベルト72に当接し、中間転写ベルト72を清掃する平板状の部材である。ブレード733は、
図3に示すように、塗布ローラー732よりも中間転写ベルト72の搬送方向の下流側において、中間転写ベルト72の搬送方向に対してカウンター方向に当接する。このため、中間転写ベルト72およびブレード733の当接部において、塗布ローラー732によって塗布されたトナーから離脱した外添剤が堰き止められ、外添剤の静止層が形成される。ブレード733は、静止層によって中間転写ベルト72上のトナー等を堰き止めて、中間転写ベルト72を清掃する。
【0043】
ブレード733は、トナーに対する所望のクリーニング性能を達成するために、たとえば、ウレタンゴムから構成されてもよく、中間転写ベルト72に対するブレード733の当接圧は15~40N/m、当接角は14~23°であってもよい。ただし、ブレード733の材料や、中間転写ベルト72に対する当接条件等は、これらの例に限定されず、所望のクリーニング性能が達成できるように設定されればよい。
【0044】
以上のように構成されるクリーニング装置73では、板状部材731によって塗布ローラー732に塗布されたトナーが、塗布ローラー732によって中間転写ベルト72に塗布される。そして、中間転写ベルト72に塗布されたトナーは、中間転写ベルト72の搬送に伴い、ブレード733に供給される。以下、クリーニング装置73の各構成について、さらに詳細な条件を検討する。
【0045】
(当接力および押圧力の設定)
板状部材731によって塗布ローラー732に塗布されるトナーの量は、塗布ローラー732に対する板状部材731の当接力(以下、単に「当接力」とも呼ぶ)によって制御される。また、塗布ローラー732によって中間転写ベルト72に塗布され、ブレード733に供給されるトナーの量は、中間転写ベルト72に対する塗布ローラー732の押圧力(以下、単に「押圧力」とも呼ぶ)によって制御される。
【0046】
カット面摩耗を防止するのに必要な量のトナーをブレード733に供給するために、塗布ローラー732に対する板状部材731の当接力、および中間転写ベルト72に対する塗布ローラー732の押圧力が、適切な範囲に設定される必要がある。また、トナーがブレード733に過剰に供給されると、ブレード733がトナーを清掃しきれなくなり、過剰な量のトナーによるブレード733のクリーニング不良が発生する。このため、当接力および押圧力の閾値としては、各々の下限値だけでなく、上限値も設定されることが好ましい。
【0047】
一実施形態では、塗布ローラー732に対する板状部材731の当接力は、5N以上40N未満に設定されることが好ましく、15N以上30N未満に設定されることがより好ましい。板状部材731の当接力が5N以上40N未満に設定されることによって、板状部材731によって塗布ローラー732に塗布されるトナーの量(塗布ローラー732上のトナーの付着量)が、5g/m2以上50g/m2未満に制御される。
【0048】
また、中間転写ベルト72に対する塗布ローラー732の押圧力は、0.5N以上40N未満に設定されることが好ましく、10N以上20N未満に設定されることがより好ましい。板状部材731の当接力が5N以上40N未満、かつ、塗布ローラー732の押圧力が0.5N以上40N未満に設定されることによって、塗布ローラー732によって中間転写ベルト72に塗布され、ブレード733に供給されるトナーの量が、0.5g/m2以上4g/m2未満に制御される。なお、ブレード733に供給されるトナーの量は、中間転写ベルト72上のトナーの付着量に相当する。これにより、ブレード733に供給されるトナーの量は、ブレード733のカット面摩耗を防止しつつ、クリーニング不良の発生も防止できるトナーの量に制御される。
【0049】
なお、板状部材731によって塗布ローラー732に塗布されるトナーの量は、塗布ローラー732に対する板状部材731の当接力によって制御されると説明したが、本実施形態はこれに限定されない。板状部材731によって塗布ローラー732に塗布されるトナーの量は、たとえば、塗布ローラー732に対する板状部材731の食い込み量によって制御されてもよい。板状部材731が、所定の当接力を確保して、塗布ローラー732に必要な量のトナーを塗布しつつ、過剰な量のトナーを塗布しないようにするために、当該食い込み量は、0.5mm以上3mm未満に設定されることが好ましい。なお、0.5mm以上3mm未満の食い込み量は、5N以上40N未満の当接力に対応してもよい。
【0050】
また、本実施形態では、塗布ローラー732に対する板状部材731の食い込み量は、板状部材731および塗布ローラー732が当接力0で当接する場合において、0mmであると定義する。そして、当該食い込み量は、塗布ローラー732の中心点と、板状部材731および塗布ローラー732の当接部とを結ぶ直線上において、塗布ローラー732の中心部に板状部材731を近付けることによって、増加する。
【0051】
(非エッジ当接)
本実施形態では、
図3に示すように、板状部材731の非エッジ部が塗布ローラー732に当接(「腹当たり」または「非エッジ当接」とも呼ぶ)するように、板状部材731が配置される。この点について、
図4を参照して、さらに詳細に説明する。
【0052】
図4は、板状部材の当接方法について説明するための図である。
【0053】
図4(a)は、板状部材731のエッジ部が塗布ローラー732に当接(エッジ当接)する場合における、板状部材731の当接力と塗布ローラー732に塗布されるトナーの量との関係性を示す。エッジ当接における当接力が大きい場合、塗布ローラー732にトナーを塗布すべき板状部材731が、逆に塗布ローラー732からトナーを掻き取ってしまい、必要なトナーの塗布量が確保されない。このため、エッジ当接の場合、
図4(a)に示すように、設定可能な当接力の範囲が狭い。また、エッジ当接における当接力が大きい場合、板状部材731のエッジ部が塗布ローラー732の表面を傷つけたり、劣化させたりする虞があるため、塗布ローラー732の表面を保護する観点からも、設定可能な当接力の上限値が小さい。
【0054】
また、必要な量のトナーを塗布可能な当接力が設定された場合でも、クリーニング装置73の使用環境や各構成要素の寸法のばらつき等に起因して、当接力の誤差が生じうる。上述したように、エッジ当接の場合、設定可能な当接力の範囲が狭いため、当接力の誤差が少しでも生じると、必要なトナーの塗布量が確保されない虞がある。
【0055】
そこで、本実施形態では、板状部材731は、塗布ローラー732に非エッジ当接するように配置される。
図4(b)は、非エッジ当接の場合における、板状部材731の当接力と塗布ローラー732に塗布されるトナーの量との関係性を示す。非エッジ当接の場合、当接力の大きさに関わらず、板状部材731が塗布ローラー732からトナーを掻き取ることがないため、設定可能な当接力の範囲が広い。また、非エッジ当接の場合、板状部材731のエッジ部が塗布ローラー732の表面を傷つけたり、劣化させたりすることもなく、当接力の誤差が生じた場合でも、必要なトナーの塗布量が確保される。
【0056】
(貯留空間の形成)
本実施形態では、
図3に示すように、板状部材731および塗布ローラー732は、板状部材731および塗布ローラー732の当接部の上方にトナーを貯留する空間を形成するように配置される。この点について、
図5および
図6を参照して、さらに詳細に説明する。
【0057】
図5および
図6は、トナーの貯留空間の一例について説明するための図である。
【0058】
図5に示すように、板状部材731および塗布ローラー732は、当接部の上方(重力方向に反する方向)に形成されたトナーの貯留空間(
図5における斜線部)に、トナーを貯留するように構成される。板状部材731は、上述したように、所定の当接力によって塗布ローラー732に当接し、当接部において、貯留空間に貯留されたトナーを塗布ローラー732に塗布する。
【0059】
ただし、トナーが貯留空間に過剰に貯留され、ブレード733に過剰に供給されると、クリーニング不良が発生する。たとえば、
図6に示すように、板状部材731の上端が、ブレード733の下端よりも上方に位置するように設定されていると仮定する。この場合、過剰な量のトナーが貯留空間(
図6における斜線部)に貯留(過貯留)され、ブレード733の下端まで到達し、トナーの粉圧によってブレード733の姿勢を変化させることによって、クリーニング不良が発生する。
【0060】
そこで、本実施形態では、
図5に示すように、板状部材731の上端は自由端として構成され、貯留空間の容量を超えたトナーは、自由端から矢印の方向に落下し、排出される。すなわち、板状部材731の自由端の上方に、貯留空間からトナーを溢れ出させるための空間が存在する。また、板状部材731の自由端からハウジング734までの距離は、水平方向および上下方向において、貯留空間を超えたトナーが排出されるように、所定以上の距離だけ離れるように配置される。
【0061】
また、板状部材731の上端の位置は、ブレード733の下端の位置よりも低くなるように設定される。言い換えれば、
図5に示すように、板状部材731および塗布ローラー732の当接部から板状部材731の上端までの高さAは、当該当接部からブレード733の下端までの高さBよりも低くなるように設定される。なお、高さAは、当該当接部からトナーの液面までの最大の高さに相当する。すなわち、A<Bの関係が満たされる場合、トナーの液面はブレード733の下端に到達しないため、過貯留によるクリーニング不良の発生が防止される。
【0062】
以上のように、クリーニング装置73は、中間転写ベルト72に当接するブレード733と、ブレード733よりも中間転写ベルト72の搬送方向の上流側において中間転写ベルト72に当接する塗布ローラー732と、塗布ローラー732に当接する板状部材731とを有する。そして、塗布ローラー732に対する板状部材731の当接力が、5N以上40N未満に設定され、中間転写ベルト72に対する塗布ローラー732の押圧力が、0.5N以上40N未満に設定される。これにより、カット面摩耗を防止するのに必要な量のトナーがブレード733に安定して供給され、ブレード733のカット面摩耗が効果的に防止されうる。また、トナーがブレード733に過剰に供給されることがないため、ブレード733における、過剰な量のトナーによるクリーニング不良の発生も防止されうる。
【0063】
また、板状部材731は、板状部材731の非エッジ部が塗布ローラー732に当接するように配置される。これにより、板状部材731の当接力の大きさに関わらず、板状部材731が塗布ローラー732からトナーを掻き取ることがないため、設定可能な当接力の範囲が広くなる。また、板状部材731のエッジ部が塗布ローラー732の表面を傷つけたり、劣化させたりすることもなく、当接力の誤差が生じた場合でも、必要なトナーの塗布量が確保される。
【0064】
また、板状部材731および塗布ローラー732は、板状部材731および塗布ローラー732の当接部の上方にトナーを貯留する空間を形成するように配置される。これにより、クリーニング装置73は、複雑な構成を必要とせず、板状部材731および塗布ローラー732という構成のみによって貯留空間を形成でき、貯留空間にトナーを貯留できる。そして、板状部材731は、貯留空間に貯留されたトナーを塗布ローラー732に塗布し、貯留空間の容量を超えたトナーは、板状部材731の上端から下方に排出される。これにより、板状部材731は、貯留空間に貯留された、カット面摩耗を防止するのに必要な量のトナーを塗布ローラー732に確実に塗布できる。また、板状部材731が、過剰な量のトナーを排出するように構成されることによって、過貯留によるクリーニング不良の発生も防止される。
【0065】
また、板状部材731の上端の位置は、ブレード733の下端の位置よりも低くなるように設定される。これにより、トナーの液面はブレード733の下端に到達しないため、過貯留によるクリーニング不良の発生が防止される。
【0066】
また、板状部材731によって塗布ローラー732に塗布されるトナーの量は、5g/m2以上50g/m2未満に設定される。そして、塗布ローラー732によって中間転写ベルト72に塗布され、ブレード733に供給されるトナーの量は、0.5g/m2以上4g/m2未満に設定される。上述したような量のトナーがブレード733に安定して供給されることによって、ブレード733のカット面摩耗は、効果的に防止される。
【0067】
また、板状部材731は、50μm以上200μm未満の厚みを有する金属製の板バネ材である。これにより、板状部材731が、たとえばPET(ポリエチレンテレフタレート)製であったり、板バネ材でなかったりする場合に生じうる、板状部材731のクリープ変形が回避される。したがって、塗布ローラー732に対する板状部材731の塗布性能が確保される。そして、塗布ローラー732が、外径や表面状態等に部分的なバラつきを有する場合でも、板状部材731は、塗布ローラー732に対する追従性を確保でき、塗布ローラー732との間に安定した所定のニップを形成できる。
【0068】
また、塗布ローラー732に対する板状部材731の食い込み量は、0.5mm以上3mm未満に設定される。これにより、板状部材731は、所定の当接力を確保して、塗布ローラー732に必要な量のトナーを塗布しつつ、過剰な量のトナーを塗布しないで済む。
【0069】
また、塗布ローラー732は、発泡スポンジから構成される弾性層を有する。これにより、塗布ローラー732は、塗布ローラー732の軸方向において傾斜していたり、外径に部分的なバラつきを有したりする場合でも、弾性層によって傾斜やバラつきを吸収できる。したがって、塗布ローラー732は、板状部材731および中間転写ベルト72の各々と塗布ローラー732との間に、安定した所定のニップを形成できる。塗布ローラー732は、板状部材731および中間転写ベルト72の各々から完全に離間することがないため、板状部材731からトナーを安定して供給され、中間転写ベルト72にもトナーを安定して供給できる。
【0070】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されず、特許請求の範囲内において、種々の変更や改良等が可能である。
【0071】
たとえば、上述した実施形態では、中間転写ベルト72を清掃するクリーニング装置73における、ブレード733のカット面摩耗を防止する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明が適用されるクリーニング装置は、中間転写ベルト72を清掃するクリーニング装置73に限定されず、感光体ドラム711を清掃するクリーニング装置716であってもよい。すなわち、感光体ドラム711を清掃するクリーニング装置716における、クリーニングブレードのカット面摩耗を防止するために、本発明が適用されてもよい。
【0072】
また、上述した実施形態では、板状部材731および塗布ローラー732が、
図5に示すようなトナーの貯留空間を形成すると説明した。しかし、板状部材731および塗布ローラー732によって形成されるトナーの貯留空間の形態は、
図5に示す例に限定されない。
【0073】
図7は、トナーの貯留空間の他の例について説明するための図である。
【0074】
板状部材731および塗布ローラー732は、当接部の上方に、
図7の(a)~(d)に例示するようなトナーの貯留空間を形成してもよい。板状部材731は、
図5に示す例と同様に、所定の当接力によって塗布ローラー732に当接し、当接部において、貯留空間に貯留されたトナーを塗布ローラー732に塗布すればよい。ただし、
図5に示す例と同様に、板状部材731の上端は自由端として構成され、貯留空間の容量を超えたトナーは、自由端から下方に排出されることが好ましい。さらに、板状部材731の上端の位置は、ブレード733の下端の位置よりも低くなるように設定されることが好ましい。
【0075】
なお、
図5ならびに
図7の(a)および(b)に示すように、貯留空間は、板状部材731および塗布ローラー732のみによって形成されることがより好ましい。板状部材731および塗布ローラー732のみによって貯留空間が形成される場合には、たとえば、トナーの流動性が悪化してトナーの液面の高さが変動した場合でも、過貯留によるクリーニング不良の発生が確実に防止されるためである。
【実施例】
【0076】
以下、実施例によって、本発明の実施形態をより詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例によって何ら限定されない。
【0077】
図8は、実施例におけるクリーニング装置の概略構成を示す図である。
【0078】
上述した実施形態と同様の構成を備えるクリーニング装置を用いた。板状部材として、SUS304-CSPから構成される、厚み70μmの部材を使用した。
図8に示すように、板状部材および塗布ローラーの当接部の中心(ニップの中心)から板状部材の上端(自由端)までの距離Aを8mm、当該当接部の中心からブレードの下端までの距離Bを12mmに設定した。また、当該当接部の中心から板状部材の下端(固定端)までの距離を8mmに設定した。
【0079】
また、板状部材の上端からハウジング(クリーニング装置の側壁)の内壁までの距離を4mmを設定した。さらに、板状部材の上端を通る面(貯留空間におけるトナーの推定液面)からハウジング(クリーニング装置の上壁)の内壁までの距離も4mmに設定した。これらの距離を3mm未満に設定すると、トナーのパッキング(詰まり)が発生し、貯留空間から溢れ出ようとするトナーの流動性が悪化して、トナーの排出が阻害されることが懸念されるため、これらの距離を3mm以上に設定した。
【0080】
塗布ローラーとして、ニトリルゴム(NBR:Nitrile Butadiene Rubber)から構成される、外径17mmのローラーを使用した。塗布ローラーの弾性層として、厚み2mm、硬度(アスカーC硬度)30°の発泡スポンジを使用した。塗布ローラーを、中間転写ベルトの回転方向に対してウィズ方向(表面が同一方向に移動する方向)に、中間転写ベルトに対する線速度比0.45の速度で回転させた。これにより、塗布ローラーが、中間転写ベルトに対して、押圧力に加えて摺擦力も付与するように構成し、塗布ローラーに、トナーをより効率的に塗布させた。また、中間転写ベルトに対する塗布ローラーの食い込み量を、1.3mmに設定した。
【0081】
ブレードとして、ウレタンゴムから構成される部材を使用し、中間転写ベルトに対する当接圧を27N/m、当接角を19°に設定した。
【0082】
(実施例1)
塗布ローラーに対する板状部材の当接力、および中間転写ベルトに対する塗布ローラーの押圧力を変化させて、ブレードのカット面摩耗を評価した。
【0083】
図9は、当接力および押圧力を変化させた場合のカット面摩耗の評価結果を示す図である。
【0084】
図9に示すように、塗布ローラーに対する板状部材の当接力を5N以上40N未満に設定し、中間転写ベルトに対する塗布ローラーの押圧力を0.5N以上40N未満に設定すると、ブレードのカット面摩耗およびクリーニング不良が防止されることが確認された。この場合、塗布ローラー上のトナーの付着量は5g/m
2以上50g/m
2未満であり、中間転写ベルト上のトナーの付着量は0.5g/m
2以上4g/m
2未満であった。
【0085】
一方、板状部材の当接力を5N未満に設定すると、板状部材によって塗布ローラーに十分な量のトナーが塗布されないため、塗布ローラー上のトナーの付着量が5g/m2未満になり、結果として、ブレードのカット面摩耗が発生した。板状部材の当接力を40N以上に設定すると、板状部材によって塗布ローラーに過剰な量のトナーが塗布されるため、塗布ローラー上のトナーの付着量が50g/m2以上になり、結果として、クリーニング不良が発生した。
【0086】
また、塗布ローラーの押圧力を0.5N未満に設定すると、塗布ローラーによって中間転写ベルトに十分な量のトナーが塗布されないため、中間転写ベルト上のトナーの付着量が0.5g/m2未満になり、ブレードのカット面摩耗が発生した。塗布ローラーの押圧力を40N以上に設定すると、塗布ローラーによって中間転写ベルトに過剰な量のトナーが塗布されるため、中間転写ベルト上のトナーの付着量が、クリーニング限界を超える4g/m2以上になり、クリーニング不良が発生した。
【0087】
さらに、板状部材の当接力を15N以上30N未満に設定し、塗布ローラーの押圧力を10N以上20N未満に設定すると、クリーニング装置の使用環境等の外乱の影響があっても、カット面摩耗を防止するのに必要な量のトナーがブレードに安定して供給されることが確認された。
【0088】
(実施例2)
塗布ローラーにおける弾性層を構成する発泡スポンジの、セル径および単位面積当たりのセル占有率を変化させて、発泡スポンジのトナーの保持状態を評価した。
【0089】
塗布ローラーの表面写真を撮影し、単位面積(1mm×1mm)内に存在するセルの径(セル径)を測定した。また、測定したセル径に基づいてセル面積を算出し、単位面積内におけるセル面積の合計値を単位面積で除算して、単位面積当たりのセル占有率を算出した。
【0090】
表1は、セル径および単位面積当たりのセル占有率を変化させた場合における、発泡スポンジのトナーの保持状態の評価結果を示す。
【0091】
【0092】
表1に示すように、セル径を100μm以上350μm以下、単位面積当たりのセル占有率を30%以上70%未満に設定すると、発泡スポンジにおいて、ブレードのカット面摩耗を防止するのに必要な量のトナーが保持されることが確認された。
【0093】
一方、セル径を100μm未満、かつ、単位面積当たりのセル占有率を30%未満に設定すると、発泡スポンジにおいて、ブレードのカット面摩耗を防止するのに必要な量のトナーが保持されなかった。
【0094】
また、セル径を350μmより大きく設定すると、弾性層を構成する発泡スポンジの厚み方向において、発泡スポンジがスカスカになる。このため、塗布ローラーに対して板状部材を当接させたり、中間転写ベルトに対して塗布ローラーを押圧させたりすることによって、発泡スポンジが削れる場合がある。発泡スポンジが削れると、塗布ローラーの外径が小さくなり、板状部材および中間転写ベルトの各々と塗布ローラーとの食い込み量も小さくなるため、発泡スポンジにおいて、ブレードのカット面摩耗を防止するのに必要な量のトナーが保持されない。
【0095】
また、単位面積当たりのセル占有率を80%以上に設定すると、板状部材および中間転写ベルトの各々と塗布ローラーにおける非セル部分との接触面積が小さくなる。このため、塗布ローラーに対する板状部材の当接力や、中間転写ベルトに対する塗布ローラーの押圧力が非セル部分に集中することによって、セル骨格が千切れる場合がある。セル骨格が千切れると、発泡スポンジの体積が減少するため、発泡スポンジにおいて、ブレードのカット面摩耗を防止するのに必要な量のトナーが保持されない。
【0096】
(実施例3)
金属製の板バネである板状部材の厚みを70μmから変化させて、板状部材の当接状態を評価した。
【0097】
表2は、板状部材の厚みを変化させた場合における、塗布ローラーに対する板状部材の当接状態の評価結果を示す。
【0098】
【0099】
表2に示すように、板状部材の厚みを50μm以上200μm未満に設定すると、塗布ローラーに対する板状部材の当接力および当接の均一性が確保されることが確認された。
【0100】
一方、板状部材の厚みを50μm未満に設定すると、板状部材の当接力が確保されないため、板状部材によって塗布ローラーに十分な量のトナーが塗布されなかった。板状部材の厚みを200μm以上に設定すると、板状部材が塗布ローラーに接触しない場合がある等、塗布ローラーに対する板状部材の追従性が悪くなる場合があり、安定したニップが確保されないため、塗布ローラーにトナーが均一に塗布されなかった。
【0101】
(実施例4)
塗布ローラーに対する板状部材の食い込み量を変化させて、板状部材の塗布性能を評価した。なお、実施例4において、板状部材および塗布ローラーの弾性変形については、考慮しないものとした。
【0102】
塗布ローラーに対する板状部材の食い込み量を0.5mm以上3mm未満に設定すると、板状部材の塗布性能が確保されることが確認された。一方、食い込み量を0.5mm未満に設定すると、塗布ローラーに対する板状部材の当接力が確保されないため、塗布ローラーに十分な量のトナーが塗布されなかった。食い込み量を3mm以上に設定すると、塗布ローラーに過剰な量のトナーが塗布され、結果として、クリーニング性能が悪化した。
【0103】
(実施例5)
実施例2における発泡スポンジのトナーの保持状態、実施例3における板状部材の当接状態、および実施例4における板状部材の塗布性能が全て良好になる条件において、ブレードのカット面摩耗を評価した。
【0104】
すなわち、塗布ローラーにおける弾性層を構成する発泡スポンジのセル径を100μm以上350μm以下、単位面積当たりのセル占有率を30%以上70%未満に設定した(実施例2)。また、板状部材の厚みを50μm以上200μm未満に設定した(実施例3)。また、塗布ローラーに対する板状部材の食い込み量を0.5mm以上3mm未満に設定した(実施例4)。
【0105】
表3は、板状部材の当接力および塗布ローラーの押圧力を変化させた場合のブレードのカット面摩耗の評価結果を示す。なお、表3において、「○」は、ブレードのカット面摩耗が発生しなかったこと、「△」はブレードのカット面摩耗が発生したこと、「×」は、ブレードのカット面摩耗を起点としてブレードのエッジが損耗し、クリーニング不良が発生したことを示す。
【0106】
【0107】
表3に示すように、塗布ローラーに対する板状部材の当接力を5N以上40N未満に設定し、かつ、中間転写ベルトに対する塗布ローラーの押圧力を0.5N以上40N未満に設定すると、長期にわたってクリーニングブレードのカット面摩耗が防止され、安定したクリーニング性能が確保されることが確認された。
【符号の説明】
【0108】
1 画像形成装置、
10 制御部、
20 記憶部、
30 通信部、
40 操作パネル、
50 給紙部、
60 搬送部、
70 画像形成部、
71 作像ユニット、
711 感光体ドラム、
712 帯電装置、
713 露光装置、
714 現像装置、
715 転写ローラー、
716 クリーニング装置、
717 イレーサー、
72 中間転写ベルト、
73 クリーニング装置、
731 板状部材、
732 塗布ローラー、
733 ブレード、
734 ハウジング、
80 定着部。