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  • 特許-廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/50 20060101AFI20220208BHJP
   F23G 5/00 20060101ALI20220208BHJP
   G06T 7/62 20170101ALI20220208BHJP
【FI】
F23G5/50 H
F23G5/00 109
F23G5/50 C
G06T7/62
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018104756
(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公開番号】P2019211106
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2020-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(72)【発明者】
【氏名】内山 武
(72)【発明者】
【氏名】中山 剛
(72)【発明者】
【氏名】長尾 厚志
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特公昭46-032824(JP,B1)
【文献】特開平11-148626(JP,A)
【文献】特開平06-174219(JP,A)
【文献】特開2002-364818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/00 - 5/50
F23K 3/16
G06T 7/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホッパに投入されて平らな受床上に落下した廃棄物をプッシャによって押し出し、炉本体の落ち口から火格子上に落下させ、前記火格子上で前記廃棄物を搬送しながら燃焼させる廃棄物焼却炉において、
前記炉本体の前記落ち口に空気を吹き込む空気吹込みノズルを設置し、
前記受床の前端よりも前記炉本体の内側に張り出す前記廃棄物の張出し部を燃焼させる廃棄物焼却炉。
【請求項2】
前記空気吹込みノズルは、前記落ち口の上側に設置される第1ノズルと、前記落ち口の下側に設置される第2ノズルと、を備えることを特徴とする請求項1に記載に廃棄物焼却炉。
【請求項3】
ホッパに投入されて受床上に落下した廃棄物をプッシャによって押し出し、炉本体の落ち口から火格子上に落下させ、前記火格子上で前記廃棄物を搬送しながら燃焼させる廃棄物焼却炉において、
前記炉本体の前記落ち口に空気を吹き込む空気吹込みノズルを設置し、
前記受床の前端よりも前記炉本体の内側に張り出す前記廃棄物の張出し部を燃焼させ、
前記張出し部の大きさに基づいて前記空気吹込みノズルからの空気吹込み量を制御する制御装置を備える廃棄物焼却炉。
【請求項4】
前記制御装置が赤外線カメラの熱画像情報により前記張出し部の大きさを求めることを特徴とする請求項3に記載の廃棄物焼却炉。
【請求項5】
ホッパに投入されて平らな受床上に落下した廃棄物をプッシャによって押し出し、炉本体の落ち口から火格子上に落下させ、前記火格子上で前記廃棄物を搬送しながら燃焼させる廃棄物焼却方法において、
前記炉本体の前記落ち口に空気を吹き込む空気吹込みノズルを設置し、
前記受床の前端よりも前記炉本体の内側に張り出す前記廃棄物の張出し部を燃焼させる廃棄物焼却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみ等の廃棄物を焼却する廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみ等の廃棄物を焼却する廃棄物焼却炉として、連続的に供給される廃棄物を焼却する火格子式の廃棄物焼却炉が知られている(特許文献1参照)。この火格子式の廃棄物焼却炉で廃棄物を焼却する際には、まず、クレーンによって廃棄物をホッパに投入し、次いで、シュートを介して受床上に落下させる。受床上には、落下した廃棄物を炉本体に向かって押し出すプッシャが設置され、プッシャによって押し出された廃棄物は、炉本体の落ち口(受床の前端)から火格子上に落下する。火格子は、火格子上に落下した廃棄物を搬送しながら燃焼させる。このような一連の流れを経て、廃棄物は焼却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-164121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、受床の前端に位置する廃棄物は、プッシャによって直接押されずに後続の廃棄物を介して押される。なぜならば、プッシャの前端が廃棄物から露出して炉本体内の高温燃焼ガスと接触すると、プッシャが劣化してしまうため、あえてプッシャを炉本体内まで押し出さないようにしているという理由からである。それゆえ、廃棄物の性状や炉本体内の燃焼状況によっては、プッシャによって押された廃棄物が火格子上に落下せず、受床の前端よりも前方に張り出す張出し部が発生する。張出し部が限界まで大きくなると、その自重により崩れて一気に炉本体内に落ち込む。その結果、炉内における廃棄物の燃焼量が急激に変動してしまう。
【0005】
また、廃棄物を燃焼した際に発生する燃焼熱は廃熱ボイラで熱回収され、廃熱ボイラの蒸気は発電に利用される。このため、廃棄物の燃焼熱を用いて発電する施設では、蒸気量を一定にすることが求められている。しかし、廃棄物の燃焼量の急激な変動が起こると、廃熱ボイラの蒸発量を一定に保つのが難しくなる。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、炉内における廃棄物の燃焼量を一定に保つとともに、廃熱ボイラの蒸気量も一定に保つことが可能な廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、ホッパに投入されて平らな受床上に落下した廃棄物をプッシャによって押し出し、炉本体の落ち口から火格子上に落下させ、前記火格子上で前記廃棄物を搬送しながら燃焼させる廃棄物焼却炉において、前記炉本体の前記落ち口に空気を吹き込む空気吹込みノズルを設置し、前記受床の前端よりも前記炉本体の内側に張り出す前記廃棄物の張出し部を燃焼させる廃棄物焼却炉である。
本発明の他の態様は、ホッパに投入されて受床上に落下した廃棄物をプッシャによって押し出し、炉本体の落ち口から火格子上に落下させ、前記火格子上で前記廃棄物を搬送しながら燃焼させる廃棄物焼却炉において、前記炉本体の前記落ち口に空気を吹き込む空気吹込みノズルを設置し、前記受床の前端よりも前記炉本体の内側に張り出す前記廃棄物の張出し部を燃焼させ、前記張出し部の大きさに基づいて前記空気吹込みノズルからの空気吹込み量を制御する制御装置を備える廃棄物焼却炉である。
【0008】
本発明のさらに他の態様は、ホッパに投入されて平らな受床上に落下した廃棄物をプッシャによって押し出し、炉本体の落ち口から火格子上に落下させ、前記火格子上で前記廃棄物を搬送しながら燃焼させる廃棄物焼却方法において、前記炉本体の前記落ち口に空気を吹き込む空気吹込みノズルを設置し、前記受床の前端よりも前記炉本体の内側に張り出す前記廃棄物の張出し部を燃焼させる廃棄物焼却方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、空気吹込みノズルが落ち口に空気を吹き込んで張出し部を燃焼させるので、張出し部が過剰に大きくなるのを防止することができる。このため、張出し部が一気に炉本体内に装入されて燃焼量が急激に変動するのを防止でき、廃熱ボイラの蒸気量が急激に変動するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態の廃棄物焼却炉の縦断面図である。
図2】プッシャによって押し出された廃棄物に張出し部が発生した状態を示す図である。
図3】廃棄物の張出し部が火格子上に落下した状態を示す図である。
図4】炉本体の落ち口に設置した空気吹込みノズルを示す図である。
図5】赤外線カメラが生成する熱画像情報を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態の廃棄物焼却炉を詳細に説明する。ただし、本発明の廃棄物焼却炉は種々の形態で具体化することができ、明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態の廃棄物焼却炉の縦断面図である。本実施形態の廃棄物焼却炉は、内部に主燃焼室2及び二次燃焼室10を有する炉本体1と、廃棄物が投入されるホッパ3と、廃棄物を受床5上に導くシュート4と、を備える。
【0013】
図示しないクレーンによってホッパ3に投入された廃棄物は、シュート4を介して受床5上に落下する。受床5上には、プッシャ12が設置される。プッシャ12は、受床5上に落下した廃棄物を炉本体1に向かって押し出す。プッシャ12は前後方向(図1の左右方向)に実線の位置から破線の位置まで往復動する。プッシャ12によって押し出された廃棄物は、受床5の前端の落ち口16から火格子7上に落下する。炉本体1には、受床5と火格子7との間に落下のための段差を形成する落差壁8が設けられる。
【0014】
図2は、プッシャ12によって押し出された廃棄物に張出し部Pが発生した状態を示す。図2のSは、プッシャ12の前後方向のストロークを表す。受床5の前端5aに位置する廃棄物は、プッシャ12によって直接押されずに後続の廃棄物を介して押される。なぜならば、プッシャ12の前端12aが廃棄物から露出して炉本体1内の高温燃焼ガスに接触し、劣化するのを防止するためである。それゆえ、廃棄物の性状や炉本体1内の燃焼状況によっては、廃棄物が火格子7上に落下せず、受床5の前端5aよりも前方に張り出す張出し部Pが発生する。
【0015】
図3は、廃棄物の張出し部Pが火格子7上に落下した状態を示す。張出し部Pが限界まで大きくなると、その自重により崩れて一気に火格子7上に落下する。その結果、廃棄物の燃焼量の急激な変動が起こる。
【0016】
図4は、落ち口(受床の前端)に空気を吹き込む空気吹込みノズル18を示す。空気吹込みノズル18は、落ち口16の上側に配置される第1ノズル18aと、落ち口16の下側に配置される第2ノズル18bと、を備える。第1ノズル18aの吹出口21aは、落ち口16の上部に配置される。第1ノズル18aは、斜め下方向に空気を吹き込む。第2ノズル18bの吹出口21bは、落ち口16の下部にある。第2ノズル18bは、斜め上方向に空気を吹き込む。吹出口21a,21bは、廃棄物の張出し部P(図2参照)の前端よりも上流側にある。
【0017】
第1ノズル18aと第2ノズル18bの個数は、炉幅に応じて適宜設定される。例えば、落ち口16の炉幅方向の中央の一箇所に上下一対の第1ノズル18aと第2ノズル18bを配置することもできるし、炉幅方向の複数箇所に上下一対の第1ノズル18aと第2ノズル18bを配置することもできる。
【0018】
第1ノズル18aと第2ノズル18bが常に一定の空気吹込み量を吹き込むようにすることもできるし、張出し部Pの大きさに基づいて空気吹込み量を制御することもできる。常に一定の空気吹込み量を吹き込めば、廃棄物の張出し部Pを徐々に燃焼させ、張出し部Pが過剰に大きくなるのを防止できる。張出し部Pの大きさに基づいて空気吹込み量を制御すれば、廃熱ボイラの蒸発量の変動をさらに抑制できる。空気吹込み量の制御については後述する。
【0019】
図1に示すように、第1ノズル18a及び第2ノズル18bには、エアー配管22を介してコンプレッサ23が接続される。コンプレッサ23は、圧縮空気を第1ノズル18a及び第2ノズル18bに供給する。
【0020】
主燃焼室2の下部には、火格子7が設けられる。火格子7は、上流側から乾燥火格子7a、燃焼火格子7b、後燃焼火格子7cを備える。乾燥火格子7a、燃焼火格子7b、後燃焼火格子7cそれぞれは、可動火格子と固定火格子に分けられ、可動火格子の摺動運動により廃棄物の搬送及び撹拌を行う。廃棄物は、火格子7上を上流側(図1の左側)から下流側(図1の右側)に炉長方向に移動する。
【0021】
乾燥火格子7aは、廃棄物の乾燥及び廃棄物の一部の熱分解を行う。燃焼火格子7bは、廃棄物の熱分解により発生する可燃性ガスと固形分の燃焼を行う。後燃焼火格子7cは、固定炭素などの未燃分の燃焼を行う。燃焼後の灰は、灰落下口6から排出される。
【0022】
乾燥火格子7a、燃焼火格子7b、後燃焼火格子7cそれぞれの下部には、風箱17a,17b,17cが設けられる。ブロワ19により供給される燃焼用一次空気は、空気供給管9を介して風箱17に供給され、乾燥火格子7a、燃焼火格子7b、後燃焼火格子7cを通って主燃焼室2に供給される。なお、一次空気の温度は、蒸気との熱交換を行う加熱装置20によって調整される。一次空気の供給量は、ダンパ11により調整される。
【0023】
二次燃焼室10は、主燃焼室2の燃焼ガス下流端に位置する。二次燃焼室10では、主燃焼室2から排出される排ガス中の未燃ガスを二次燃焼させる。二次燃焼室10には、未燃ガスを二次燃焼させるための二次燃焼用ガスが吹き込まれる。二次燃焼させた後の排ガスは、廃熱ボイラで熱回収された後に外部に放出される。
【0024】
主燃焼室2の下流側の側壁2aには、赤外線カメラ13が設置される。赤外線カメラ13は、炉本体1の上下方向及び炉幅方向に拡がる視野角を有し、この測定視野における熱画像情報を生成する。
【0025】
図5は、赤外線カメラ13が生成する熱画像情報を示す。図5に示すように、赤外線カメラ13は、受床5上の廃棄物層w1の熱画像情報、及び火格子7上の廃棄物層w2の熱画像情報を生成する。主燃焼室2に火炎が存在していても廃棄物層w1,w2の温度分布を取得できるように、赤外線カメラ13にはフィルタが取り付けられる。
【0026】
図1に示すように、赤外線カメラ13には、データ処理装置14が接続される。データ処理装置14は、赤外線カメラ13が生成した熱画像情報をメモリに格納し、熱画像情報を画像処理する。そして、受床5上の廃棄物層w1の張出し部P(図5参照)の大きさを算出し、火格子7上の廃棄物層w2の層厚と温度を算出する。
【0027】
データ処理装置14には、制御装置15が接続される。制御装置15は、火格子7上の廃棄物w2の層厚と温度等に基づいて、プッシャ12、火格子7の送り機構、ダンパ11、加熱装置20等を制御する。また、制御装置15は、張出し部Pの大きさに基づいて、コンプレッサ23を制御し、第1ノズル18aと第2ノズル18bからの空気吹込み量を制御する。例えば制御装置15は、張出し部Pの大きさが所定の閾値よりも大きい場合は、空気吹込みノズル18の空気吹込み量を大きくし、小さい場合は、空気吹込みノズル18の空気吹込み量を小さくする。これにより、廃熱ボイラの蒸気量の変動をさらに抑制することができる。
【0028】
以上に本実施形態の廃棄物焼却炉の構成を説明した。本実施形態の廃棄物焼却炉によれば、以下の効果を奏する。
【0029】
空気吹込みノズル18から落ち口16に空気を吹き込んで張出し部Pを燃焼させるので、張出し部Pが過剰に大きくなるのを防止することができる。このため、張出し部Pが一気に炉本体1内に装入されて燃焼量が急激に変動するのを防止でき、廃熱ボイラの蒸気量が急激に変動するのを防止できる。すなわち、炉内における廃棄物の燃焼量を一定に保つとともに、廃熱ボイラの蒸気量も一定に保つことが可能となる。
【0030】
空気吹込みノズル18が落ち口16の上側に設置される第1ノズル18aと、落ち口16の下側に設置される第2ノズル18bと、を備えるので、張出し部Pを上側と下側から効率的に燃焼させることができる。
【0031】
制御装置15が張出し部Pの大きさに基づいて空気吹込みノズル18からの空気吹込み量を制御するので、廃熱ボイラの蒸気量の変動をさらに抑制することができる。
【0032】
制御装置15が赤外線カメラ13の熱画像情報により張出し部Pの大きさを求めるので、張出し部Pの大きさを正確に求めることができる。
【0033】
なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で他の実施形態に変更可能である。例えば、上記実施形態では、乾燥火格子、燃焼火格子、後燃焼火格子を水平面内に配置しているが、乾燥火格子、燃焼火格子、後燃焼火格子を階段状に配置することもできる。
【符号の説明】
【0034】
1…炉本体
3…ホッパ
5…受床
5a…受床の前端
7…火格子
12…プッシャ
13…赤外線カメラ
15…制御装置
16…落ち口
18…空気吹込みノズル
18a…第1ノズル
18b…第2ノズル
P…廃棄物の張出し部
図1
図2
図3
図4
図5