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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】運搬台車
(51)【国際特許分類】
   B62B 3/04 20060101AFI20220208BHJP
   B62B 3/00 20060101ALI20220208BHJP
   B62B 3/02 20060101ALI20220208BHJP
   B62B 5/00 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
B62B3/04 B
B62B3/00 D
B62B3/02 C
B62B5/00 B
B62B3/02 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018123644
(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公開番号】P2020001577
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2020-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】蟹江 達哉
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大貴
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-105269(JP,U)
【文献】実開平02-096266(JP,U)
【文献】特開平08-091006(JP,A)
【文献】実開昭52-030053(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/00-5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の複数箇所をそれぞれ支持する複数の支持部を備える運搬台車であって、
第1支柱と、
前記第1支柱の長さ方向に沿って前記第1支柱に摺動可能に支持された操作部材と、
前記第1支柱に連結され、互いに間隔をおいて平行に配置された一対の第2支柱と、
前記第2支柱の長さ方向に沿って前記一対の第2支柱にそれぞれ摺動可能に支持された可動支柱と、
前記操作部材と前記可動支柱とを連結するとともに、前記第1支柱と前記可動支柱との距離を変更するリンク機構と、
前記第2支柱の長さ方向において前記可動支柱を位置決め可能な位置決め機構と、を備え、
前記複数の支持部は、前記第2支柱の長さ方向において互いに間隔をおいて設けられており、前記複数の支持部の少なくとも1つが前記可動支柱に設けられている、
運搬台車。
【請求項2】
一対の前記可動支柱が、前記第2支柱の長さ方向において前記第1支柱を挟んで設けられており、
前記操作部材と前記一対の可動支柱とは、前記リンク機構を介してそれぞれ連結されており、
前記一対の可動支柱には、前記支持部がそれぞれ設けられている、
請求項1に記載の運搬台車。
【請求項3】
前記位置決め機構は、前記第1支柱に固定され、前記第1支柱の長さ方向に間隔をおいて形成された複数の係合凹部を有する係合部材と、前記操作部材に対して相対変位可能に支持され、前記係合凹部に係合可能な係合凸部を有する操作レバーと、を備え、
前記操作レバーは、前記係合凸部が前記係合凹部に係合する係合位置と、前記係合凸部が前記係合凹部から退避した退避位置との間で変位可能とされている、
請求項1または請求項2に記載の運搬台車。
【請求項4】
前記第1支柱及び前記可動支柱は、上下方向に沿って延在しており、
前記一対の第2支柱は、上下に間隔をおいて配置されている、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の運搬台車。
【請求項5】
前記操作部材が降下するときの速度を抑制する速度抑制機構が設けられている、
請求項4に記載の運搬台車。
【請求項6】
前記第1支柱における前記操作部材と上側の前記第2支柱との間には、前記操作部材を下方に向けて付勢する付勢部材が設けられている、
請求項4または請求項5に記載の運搬台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両のバンパーを搬送する搬送装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。同文献1に記載の搬送装置は、台車と、台車に立設された2つの支持部材と、各支持部材に支持された2本の脚部を有し、バンパーが載置される受け具とを備えている。各支持部材は、台車の前後方向に互いに間隔をおいて設けられている。
【0003】
受け具は、各脚部の上端部から前方及び後方の双方に延在する一対の水平アームを有している。各水平アームの両端部には、発泡ウレタン材からなるパッドが設けられている。バンパーは、その長手方向を台車の前後方向に沿わせた状態でパッド上に載置される。
【0004】
2本の脚部のうちの一方の脚部は、パイプ材からなり、支持部材に対して密嵌状態にて嵌合されている。他方の脚部は、1枚の細長い金属板材を長手方向の中央で折り曲げて構成されており、車両の前後方向及び上下方向の双方に直交する幅方向から支持部材を挟持している。これにより、他方の脚部は、車両の前後方向にのみ移動が許容されている。
【0005】
こうした搬送装置によれば、台車側の支持部材間の距離と、受け具側の脚部間の距離とに製造のばらつきがある場合であっても、当該ばらつきにかかわらず支持部材と脚部材とが嵌合される。これにより、各支持部材に対する脚部のがたつきが規制され、バンパーの姿勢が常に維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開平3-19788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載の搬送装置を含む従来の運搬台車においては、運搬されるバンパーの形状に対応した形状を有する専用の受け具が必要となる。そのため、特に、他品種少量生産を行う工場にあっては、バンパーの種類毎に専用の受け具を備えた複数種類の台車を用意しなければならない。
【0008】
なお、こうした問題は、車両のバンパーを運搬する台車に限ったものではなく、他の対象物を運搬する台車においては概ね共通して生じるものである。
本発明の目的は、形状が異なる対象物を運搬できる運搬台車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための運搬台車は、対象物の複数箇所をそれぞれ支持する複数の支持部を備える運搬台車であって、第1支柱と、前記第1支柱の長さ方向に沿って前記第1支柱に摺動可能に支持された操作部材と、前記第1支柱に連結され、互いに間隔をおいて平行に配置された一対の第2支柱と、前記第2支柱の長さ方向に沿って前記一対の第2支柱にそれぞれ摺動可能に支持された可動支柱と、前記操作部材と前記可動支柱とを連結するとともに、前記第1支柱と前記可動支柱との距離を変更するリンク機構と、前記第2支柱の長さ方向において前記可動支柱を位置決め可能な位置決め機構と、を備え、前記複数の支持部は、前記第2支柱の長さ方向において互いに間隔をおいて設けられており、前記複数の支持部の少なくとも1つが前記可動支柱に設けられている。
【0010】
同構成によれば、第1支柱の長さ方向に沿って操作部材を摺動させると、このことに伴ってリンク機構を介して可動支柱が第2支柱の長さ方向に対して摺動する。これにより、操作部材と可動支柱との距離が変更される。また、複数の支持部が第2支柱の長さ方向において互いに間隔をおいて設けられており、そのうちの少なくとも1つが可動支柱に設けられている。これらのことから、第1支柱と可動支柱との距離を変更することにより、可動支柱に設けられた支持部と他の支持部との距離を変更することができる。
【0011】
また、第2支柱の長さ方向において可動支柱を位置決め可能な位置決め機構が設けられているため、可動支柱に設けられた支持部の位置を所定の位置にて固定することができる。これにより、支持部同士の距離を所定の距離にて固定することができる。したがって、対象物の形状に応じて支持部同士の距離を変更することにより、異なる形状の対象物を運搬することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、形状が異なる対象物を運搬することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】運搬台車の一実施形態について、操作部が第1の位置にある状態の運搬台車の正面図。
図2】同実施形態の運搬台車の側面図。
図3図2の3-3線に沿った断面図。
図4図1の操作部を中心として拡大して示す拡大正面図。
図5図4に対応する図であって、操作部が第1の位置と第2の位置との間にある状態を示す拡大正面図。
図6図4に対応する図であって、操作部が第2の位置にあるとき状態を示す拡大正面図。
図7図4に対応する図であって、操作部が第2の位置と第3の位置との間にある状態を示す拡大正面図。
図8図4に対応する図であって、操作部が第3の位置にある状態を示す拡大正面図。
図9図1に対応する図であって、操作部が第2の位置にある状態を示す正面図。
図10図1に対応する図であって、操作部が第3の位置にある状態を示す正面図。
図11】変更例の運搬台車を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1図10を参照して、一実施形態について説明する。
図1に示すように、運搬台車10は、車両のバンパーなどの対象物1を運搬するものである。
【0015】
図1図3に示すように、運搬台車10は、底部フレーム20を備えている。底部フレーム20は、互いに平行に延在する一対の円柱状の底部支柱21と、底部支柱21の中央部同士を連結する円柱状の連結部材22とを備えており、平面視H字状をなしている。
【0016】
なお、以降において、底部支柱21の延在方向を長手方向X、図1の上下方向を上下方向Y、長手方向Xと上下方向Yの双方に直交する方向を幅方向Zとして説明する。
図1及び図3に示すように、底部フレーム20の長手方向Xの両端部には、一対の側部フレーム30が連結されている。
【0017】
図2に示すように、各側部フレーム30は、幅方向Zに沿って延在するとともに上下方向Yにおいて互いに間隔をおいて設けられた一対の円柱状の第1支持部32と、上下方向Yに沿って延在するとともに各第1支持部32の端部同士を連結する一対の円柱状の第2支持部33とを有しており、側面視略長方形状の枠体31を備えている。枠体31における互いに対向する辺の中央部同士は、側面視十字状をなす連結体34により互いに連結されている。
【0018】
図2及び図3に示すように、各第1支持部32の両端部には、都合4つのキャスター40が取り付けられている。
図1図3に示すように、底部フレーム20の連結部材22の中央部には、上方に向かって延在する円柱状の第1支柱50が連結されている。また、連結部材22の中央部には、キャスター40が取り付けられている。
【0019】
図1図3に示すように、第1支柱50には、長手方向Xに沿って延在する一対の円柱状の第2支柱60が上下方向Yに互いに間隔をおいてそれぞれ連結されている。
上側の第2支柱60は、第1支柱50の上端部から長手方向Xの両側に向かって延在している。上側の第2支柱60の両端部は、各側部フレーム30の上側の第1支持部32の中央部に連結されている。
【0020】
一方、下側の第2支柱60は、第1支柱50のうち、第1支柱50と連結部材22との連結部分よりも上方の部分から長手方向Xの両側に向かって延在している。下側の第2支柱60の両端部は、各側部フレーム30の連結体34の下部に連結されている(図2参照)。
【0021】
図1に示すように、各第2支柱60の間には、上下方向Yに沿って延在する一対の円柱状の可動支柱70が設けられている。各可動支柱70は、長手方向Xにおいて第1支柱50を挟んで設けられている。各可動支柱70は、上下方向Yに沿って延在する支柱本体70aと、支柱本体70aの上端部及び下端部にそれぞれ取り付けられた上下一対のT字筒状の摺動部材71とを有している。各摺動部材71は、各第2支柱60に対して摺動可能に挿通されている。各可動支柱70は、上下の各第2支柱60に対して摺動可能に支持されている。
【0022】
図1及び図2に示すように、各可動支柱70には、円柱状をなす複数対(本実施形態では3対)の支持部80が上下方向Yに互いに間隔をおいて設けられている。対をなす2つの支持部80は、可動支柱70から幅方向Zの両側に向かってそれぞれ突設されている。図2に示すように、各支持部80は、先端側ほど上方に位置するように傾斜して延びている。各支持部80の先端部には、例えば有底円筒状をなすゴム製の保護材81が外嵌されている。
【0023】
図1及び図4に示すように、第1支柱50には、正面視略長方形状の枠部91を有する操作部材90が上下方向Yに沿って摺動可能に支持されている。枠部91は、長手方向Xに沿って延在する上下一対の円柱状の横枠部91a,91bと、上下方向Yに沿って延在するとともに各横枠部91a,91bの端部同士を連結する縦枠部91c,91dとを有している。枠部91の各横枠部91a,91bにおける長手方向Xにおける中央部には、円筒状をなし、第1支柱50に外挿されるとともに第1支柱に対して摺動可能な摺動部材92がそれぞれ設けられている。
【0024】
枠部91の各縦枠部91c,91dには、長手方向Xの外側に向かってそれぞれ突出する把手93c,93dが設けられている。
一方の縦枠部91cには、上下方向Yに沿って延在するとともに枠部91の長手方向Xの内側に向かって突出する長方形状のプレート94が固定されている。プレート94は、一方の把手93cの下方に位置している。
【0025】
図4に拡大して示すように、プレート94の下部には、幅方向Zに沿って延在する軸部103が設けられている。軸部103には、正面視略L字状をなす操作レバー100が軸部103を中心に回動可能に支持されている。操作レバー100は、同図に示す状態において長手方向Xに延在する把持部101と、把持部101の一端部(同図の左端部)、詳しくは、プレート94よりも枠部91の長手方向Xの内側に位置する一端部から屈曲して下方に向かって延在する延在部102とを有している。把持部101における延在方向の途中の部分が軸部103により回動可能に支持されている。操作レバー100の屈曲部100aには、引張コイルばね104の下端が固定されている。引張コイルばね104の上端は、プレート94の上部に固定されている。引張コイルばね104の軸線は、引張コイルばね104の上端側ほど枠部91の長手方向Xの外側に位置するように傾斜している。
【0026】
操作レバー100の延在部102の下端部には、幅方向Zに沿って延在する円柱状の係合凸部105が設けられている。延在部102の下端部には、枠部91における長手方向Xの外側(図1及び図4の右側)に向けて回動規制部106が突設されている。操作レバー100が軸部103を中心に回動された際に、回動規制部106が枠部91(91c)に当接することで、操作レバー100の更なる回動が規制される。
【0027】
第1支柱50には、上下方向Yに沿って延在する長尺板状の係合部材110が操作レバー100に向けて突設されている。係合部材110には、操作レバー100の係合凸部105が係合可能な複数(本実施形態では3つ)の係合凹部111,112,113が上下方向Yに、すなわち第1支柱50の長さ方向に互いに間隔をおいて設けられている。上側に位置する第1係合凹部111の深さ(図4の長手方向Xにおける長さ)は、上下方向Y全体にわたって同一である。中間に位置する第2係合凹部112及び下側の第3係合凹部113は、深さが上側ほど浅くされた傾斜部112a,113aをそれぞれ有している。
【0028】
係合部材110における第3係合凹部113よりも下方の部分には、第1支柱50とは反対側に向けてメカストッパ114が突設されている。
なお、操作レバー100と係合部材110とにより位置決め機構120が構成されている。
【0029】
第1支柱50には、係合部材110とは反対側に向けて突出部131が突設されている。突出部131の先端には、幅方向Zに延在する軸線を中心にピニオンギア132が回動可能に設けられている。また、枠部91には、上下方向に沿って延在する取付板133が第1支柱50に向けて突設されている。取付板133は、把手93dよりも下方に設けられている。取付板133には、ピニオンギア132と噛合するラックギア134が上下方向Yに沿って取り付けられている。ラックギア134は、操作部材90の第1支柱50に対する摺動に伴いピニオンギア132と噛合する範囲における上端よりも上方から、同範囲における下端よりも下方まで設けられている。なお、ピニオンギア132とラックギア134とにより速度抑制機構140が構成されている。
【0030】
図1に示すように、操作部材90の縦枠部91c,91dと各可動支柱70とは、第1支柱50と各可動支柱70との距離を変更する上下一対のリンク機構150によりそれぞれ連結されている。リンク機構150は、縦枠部91c(91d)に固定された上側支持部151と、上側支持部151よりも下方において可動支柱70に固定された下側支持部152と、各支持部151,152に設けられ、幅方向Zに沿って延在する支持軸151a,152aにそれぞれ傾動可能に支持された両端を有する円柱状のリンク柱153とを備えている。
【0031】
こうした運搬台車10においては、操作レバー100は、係合部材110の係合凹部111,112,113のいずれか1つに係合凸部105が係合する係合位置と、係合凹部111,112,113のいずれからも係合凸部105が退避した退避位置との間で回動可能とされている。
【0032】
操作レバー100を退避位置にすることで、操作部材90が第1支柱50に対して摺動可能となる。このとき、操作部材90の位置に応じて、各リンク機構150を介して各可動支柱70が第1支柱50に対して近接または離間する。
【0033】
そして、操作レバー100を係合位置にすることで、各可動支柱70(操作部材90)が位置決めされる。以降において、操作レバー100の係合凸部105が、係合部材110の第1係合凹部111に係合されているときの各可動支柱70の位置を第1の位置と称する。また、係合凸部105が第2係合凹部112に係合されているときの各可動支柱70の位置を第2の位置と称する。また、係合凸部105が第3係合凹部113に係合されているときの各可動支柱70の位置を第3の位置と称する。
【0034】
図1に示すように、第1支柱50の上端部の外周には、円筒状のストッパ95が固定されている。第1支柱50におけるストッパ95の下方には、付勢部材としての圧縮コイルばね96が外挿されている。圧縮コイルばね96の内径は、ストッパ95の外径よりも小さい。操作レバー100の係合凸部105が、係合部材110の第1係合凹部111に係合されている状態において、圧縮コイルばね96は、操作部材90とストッパ95とによって圧縮されており、操作部材90を下方に向けて付勢している。
【0035】
本実施形態の作用について説明する。
本実施形態の運搬台車10においては、以下のようにして支持部80同士の距離が変更される。
【0036】
まず、支持部80同士の距離を大きくする過程について説明する(以下、過程A)。
図1及び図4に示すように、各可動支柱70が第1の位置にある状態から操作レバー100を退避位置に回動させると、操作レバー100の係合凸部105が第1係合凹部111から退避するため、操作部材90が自重により降下する。このとき、操作部材90と共に操作部材90に連結された各リンク機構150の各上側支持部151が降下する。また、下側支持部152は、可動支柱70に固定されている。これらのことから、上側支持部151、リンク柱153及び下側支持部152を介して各可動支柱70が長手方向Xの外側に向かって押圧される。これにより、各可動支柱70が、第1支柱50から離間する方向に各第2支柱60上を摺動する。
【0037】
このとき、図5に示すように、引張コイルばね104を伸張する方向に操作レバー100が回動操作される。このため、操作レバー100は、伸長された引張コイルばね104の復元力により軸部103を中心に正面視時計回りに回動しようとする。したがって、係合凸部105が係合部材110の縁部に押し付けられつつ、操作部材90が第1支柱50に対して降下することとなる。
【0038】
次に、操作部材90が、図5に示す状態からさらに降下すると、上述したように操作レバー100が軸部103を中心に時計回りに回動しようとしているため、係合凸部105は、傾斜部112a上を摺動しながら第2係合凹部112に係合される(図6参照)。すなわち、操作レバー100の位置が再び係合位置となる。これにより、図9に示すように、各可動支柱70が第2の位置において位置決めされる。この状態においては、各可動支柱70が第1の位置にあるときよりも各支持部80同士の距離が大きくなる。
【0039】
次に、各可動支柱70が第2の位置にある状態から操作レバー100を退避位置に回動させると、図7に示すように、操作部材90が自重によりさらに降下する。このとき、上記態様と同様にして、係合凸部105が係合部材110の縁部に押し付けられつつ、操作部材90が第1支柱50に対して降下することとなる。
【0040】
次に、操作部材90が、図7の状態からさらに降下すると、上述したように操作レバー100が軸部103を中心に時計回りに回動しようとしているため、係合凸部105は、傾斜部113a上を摺動しながら第3係合凹部113に係合される(図8参照)。すなわち、操作レバー100の位置が再び係合位置となる。これにより、図10に示すように、各可動支柱70が第3の位置において位置決めされる。この状態においては、各可動支柱70が第2の位置にあるときよりも各支持部80同士の距離が大きくなる。
【0041】
ここで、第1支柱50と操作部材90との間には、互いに噛合されたピニオンギア132とラックギア134とからなる速度抑制機構140が設けられている。操作部材90が降下する際には、操作部材90と一体のラックギア134がピニオンギア132を回転させることとなる。このとき、ピニオンギア132の回転運動が操作部材90の降下に対して機械抵抗として作用するため、操作部材90の降下する速度が抑制される。
【0042】
また、係合部材110の下端部には、メカストッパ114が設けられている。このため、各可動支柱70が第3の位置にある状態から、操作レバー100が退避位置に回動することで操作部材90がさらに降下した場合に、係合凸部105とメカストッパ114が当接する。またこのとき、回動規制部106が操作部材90の枠部91に当接する。これらにより、操作部材90の降下が規制される。
【0043】
続いて、支持部80同士の距離を小さくする過程について説明する(以下、過程B)。
なお、過程Bは過程Aの逆であるため、詳細な説明については省略して、過程Aとの相違点のみを説明する。
【0044】
支持部80同士の距離を小さくする場合、操作部材90の把手93c又は把手93dを把持して操作部材90を第1支柱50に対して上方に摺動させる。各可動支柱70が第3の位置(第2の位置)にある状態から操作部材90が上昇された場合、操作レバー100の係合凸部105が、第3係合凹部113(第2係合凹部112)の傾斜部113a(112a)上を摺動しながら移動する。これにより、操作レバー100が係合位置から退避位置に回動されることとなる。
【0045】
次に、さらに操作部材90が上昇されると、係合凸部105が第2係合凹部112(第1係合凹部111)に係合され、各可動支柱70が第2の位置(第1の位置)に位置決めされる。
【0046】
このようにして、各可動支柱70に設けられた支持部80同士の距離が変更される。
本実施形態の効果について説明する。
(1)運搬台車10は、第1支柱50と、上下方向Yに沿って第1支柱50に摺動可能に支持された操作部材90と、第1支柱50に連結され、互いに間隔をおいて平行に配置された一対の第2支柱60とを備える。また、長手方向Xに沿って一対の第2支柱60にそれぞれ摺動可能に支持されるとともに、長手方向Xにおいて第1支柱50を挟んで設けられた一対の可動支柱70を備える。また、操作部材90と各可動支柱70とを連結するとともに、第1支柱50と可動支柱70との距離を変更するリンク機構150と、長手方向Xにおいて可動支柱70を位置決め可能な位置決め機構120とを備える。各可動支柱70には、対象物1の複数箇所をそれぞれ支持する支持部80が設けられている。
【0047】
こうした構成によれば、第1支柱50に沿って操作部材90を摺動させると、このことに伴ってリンク機構150を介して各可動支柱70が第2支柱60に沿って摺動する。これにより、操作部材90と各可動支柱70との距離が変更される。また、一対の可動支柱70が長手方向Xにおいて第1支柱50を挟んで設けられている。また、各可動支柱70には支持部80がそれぞれ設けられている。これらのことから、操作部材90を上下方向Yに沿って摺動させることで、操作部材90と各可動支柱70との距離を変更することができるとともに、可動支柱70同士の距離、すなわち支持部80同士の距離を変更することができる。これにより、可動支柱70を1つだけ備えた構成と比較して、操作部材90の操作量に対する支持部80同士の距離の変更量を大きくすることができる。
【0048】
また、長手方向Xにおいて各可動支柱70を位置決め可能な位置決め機構120が設けられているため、各可動支柱70に設けられた各支持部80の位置を所定の位置にて固定することができる。これにより、支持部80同士の距離を所定の距離にて固定することができる。したがって、対象物1の形状に応じて支持部80同士の距離を変更することにより、異なる形状の対象物1を運搬することができる。
【0049】
(2)位置決め機構120は、第1支柱50に固定され、上下方向Yに間隔をおいて形成された複数の係合凹部111,112,113を有する係合部材110と、操作部材90のプレート94に対して回動可能に支持され、係合凹部111,112,113に係合可能な係合凸部105を有する操作レバー100とを備える。操作レバー100は、係合凸部105が係合凹部111,112,113に係合する係合位置と、係合凸部105が係合凹部111,112,113から退避した退避位置との間で変位可能とされている。
【0050】
こうした構成によれば、操作部材90には、位置決め機構120の操作レバー100が設けられている。また、操作レバー100は、操作レバー100の係合凸部105が第1支柱50に固定された係合部材110の係合凹部111,112,113に係合する係合位置と、係合凸部105が係合凹部111,112,113から退避した退避位置とに変位可能とされている。このため、操作レバー100が係合位置にある状態においては、第1支柱50に対する操作部材90の摺動が規制されることで長手方向Xにおける各可動支柱70の位置が決められる。また、操作レバー100が退避位置にある状態においては、第1支柱50に対する操作部材90の摺動が許容されるため、長手方向Xにおける各可動支柱70の位置を変更することができる。したがって、位置決め機構120を簡易な構成で実現することができる。
【0051】
(3)第1支柱50及び各可動支柱70は、上下方向Yに沿って延在しており、一対の第2支柱60は、上下に間隔をおいて配置されている。
こうした構成によれば、操作部材90が上下方向Yに沿って第1支柱50を摺動することとなる。このため、操作部材90を降下させる際に、操作部材90の自重を利用することができるようになり、操作部材90を操作する力を低減できる。したがって、操作部材90の操作性を向上させることができる。
【0052】
(4)操作部材90が降下するときの速度を抑制する速度抑制機構140が設けられている。
第1支柱50が上下方向Yに沿って延びている構成においては、操作部材90が自重により降下するため、操作部材90が勢いよく降下するおそれがある。
【0053】
この点、上記構成によれば、速度抑制機構140が設けられているため、操作部材90が勢いよく降下することを抑制できる。
(5)第1支柱50における操作部材90と上側の第2支柱60との間には、操作部材90を下方に向けて付勢する付勢部材としての圧縮コイルばね96が設けられている。
【0054】
各可動支柱70と各第2支柱60との摺動抵抗が大きい場合には、操作部材90を降下させる際に大きな操作力が必要となる。
この点、上記構成によれば、操作部材90を降下させる操作が圧縮コイルばね96の付勢力によって支援されるようになる。このため、操作部材90の操作性を向上させることができる。
【0055】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
図11に示すように、本実施形態の速度抑制機構140に加えて、あるいは、これに代えて、速度抑制機構240を設けることもできる。速度抑制機構240は、一端に錘203が連結されたロープ201と、上方の第2支柱60において長手方向Xに互いに間隔をおいて設けられた複数の滑車204とを備えており、長手方向Xにおいて第1支柱50を挟んで一対設けられている。ロープ201の他端は、上側の横枠部91aに設けられた固定具202に連結されている。ロープ201が滑車204を介して張られることで、操作部材90の上下方向Yに沿った昇降に伴って、錘203が操作部材90の昇降する向きとは逆向きに昇降される。
【0056】
こうした構成によれば、操作部材90が勢いよく降下することを抑制できるとともに、操作部材90を上昇させる操作が支援されるようになる。したがって、操作部材90の操作性を向上させることができる。
【0057】
・第1支柱50における操作部材90と下側の第2支柱60との間には、操作部材90を上方に向けて付勢する圧縮コイルばね96が設けられていてもよい。この場合、操作部材90が圧縮コイルばね96を圧縮しようとする力が、操作部材90に対しては抵抗力として作用するため、上記変更例と同様の効果を奏することができる。
【0058】
・圧縮コイルばね96に代えて、操作部材90と上側の第2支柱60との間に、互いの磁極が同一となるように対向した一対の磁石を設けるようにしてもよい。また、こうした一対の磁石を操作部材90と下側の第2支柱60との間に設けることもできる。
【0059】
・本実施形態の運搬台車10は、操作部材90は上下方向Yに沿って摺動するように構成されたものであったが、操作部材90が長手方向Xまたは幅方向Zに沿って摺動するように構成されたものであってもよい。この場合であっても、各支持部80同士の距離を変更することができる。
【0060】
またこの場合、各第2支柱60において、各可動支柱70の位置決めを行うようにしてもよい。すなわち、例えば、各第2支柱60の所定の位置に凹溝を設けるとともに、各可動支柱70の摺動部材71の内部に第2支柱60に向かって突出するプランジャを設けるようにすればよい。こうした構成によれば、各可動支柱70が上記所定の位置に移動した際に、プランジャが凹溝に入り込むことで各可動支柱70が位置決めされる。
【0061】
・本実施形態では、一対の可動支柱70が長手方向Xにおいて第1支柱50を挟んで設けられているが、1つの可動支柱70を長手方向Xにおいて第1支柱50の片側に設けるようにしてもよい。この場合、一対の支持部80の一方を可動支柱70に設け、他方を例えば、側部フレーム30または第2支柱60同士を支持する可動支柱70とは別の固定支持柱に設けるようにすればよい。
【符号の説明】
【0062】
1…対象物、10…運搬台車、20…底部フレーム、21…底部支柱、22…連結部材、30…側部フレーム、31…枠体、32…第1支持部、33…第2支持部、34…連結体、40…キャスター、50…第1支柱、60…第2支柱、70…可動支柱、70a…支柱本体、71…摺動部材、80…支持部、81…保護材、90…操作部材、91…枠部、91a…横枠部、91b…横枠部、91c…縦枠部、91d…縦枠部、92…摺動部材、93c…把手、93d…把手、94…プレート、95…ストッパ、96…圧縮コイルばね、100…操作レバー、100a…屈曲部、101…把持部、102…延在部、103…軸部、104…引張コイルばね、105…係合凸部、106…回動規制部、110…係合部材、111…第1係合凹部、112…第2係合凹部、112a…傾斜部、113…第3係合凹部、113a…傾斜部、114…メカストッパ、120…位置決め機構、131…突出部、132…ピニオンギア、133…取付板、134…ラックギア、140…速度抑制機構、150…リンク機構、151…上側支持部、151a…支持軸、152…下側支持部、152a…支持軸、153…リンク柱、201…ロープ、202…固定具、203…錘、204…滑車、240…速度抑制機構。
図1
図2
図3
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図5
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図7
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図9
図10
図11