(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】車両の開閉構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/12 20060101AFI20220208BHJP
B60J 5/06 20060101ALI20220208BHJP
E06B 9/02 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
B60J5/12
B60J5/06 E
E06B9/02 A
(21)【出願番号】P 2018151761
(22)【出願日】2018-08-10
【審査請求日】2020-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 博隆
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-054816(JP,U)
【文献】実開平03-005896(JP,U)
【文献】実開昭61-165820(JP,U)
【文献】特開平05-113083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/12
B60J 5/06
E06B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた開口を挟んで延在するように配置された一対のガイドレールと、
前記一対のガイドレールに摺動可能にガイドされ、前記開口を開閉する開閉ユニットと、を備え、
前記開閉ユニットは、
前記ガイドレールの延在方向に沿って配列された複数の樹脂製のスラットと、
一対の前記ガイドレールのそれぞれにより一対の前記ガイドレールの対向方向への移動が規制され、且つ、前記ガイドレールの延在方向に沿って移動可能に支持される一対の移動体と、
一対の前記移動体を連結する連結部材
であって、前記スラットにおける前記車両の車内側の一面と対向する位置に配置された基部を有する前記連結部材と、
前記スラットと前記連結部材との間に配置され、前記スラットと前記連結部材とを接合するゴム製の接合部材と、を備え
、
前記接合部材は、前記スラットにおける前記一面と、前記連結部材の前記基部との間に配置されている、車両の開閉構造。
【請求項2】
前記スラットを一対の前記ガイドレールの前記対向方向へ移動可能に支持し、前記ガイドレールのそれぞれにより前記ガイドレールの前記延在方向に沿って移動可能に支持されるスラット支持体を備え、
前記スラット支持体は、一対の前記ガイドレールの対向方向及び前記ガイドレールの延在方向に直交する方向において、前記スラットの位置を設定している、請求項1に記載の車両の開閉構造。
【請求項3】
前記移動体は、前記ガイドレールの前記延在方向に沿って移動するガイドローラであり、
前記連結部材は、前記ガイドローラを回転可能に支持している、請求項1又は2に記載の車両の開閉構造。
【請求項4】
一対の前記移動体、前記連結部材及び前記接合部材は、前記ガイドレールの前記延在方向において、所定の間隔をあけて複数設けられている、請求項1~3のいずれか一項に記載の車両の開閉構造。
【請求項5】
前記接合部材は、一対の前記ガイドレールの対向方向に延在している、請求項1~4のいずれか一項に記載の車両の開閉構造。
【請求項6】
前記接合部材は、一対の前記ガイドレールの対向方向において、所定の間隔をあけて複数配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の車両の開閉構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の開閉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における車両の開閉構造としては、例えば特許文献1に記載されている技術が知られている。特許文献1に記載の車両の開閉構造は、リヤゲートの周縁部をなすリヤゲートフレームと、リヤゲートフレームにスライド自在に案内された巻取式のシャッターと、シャッターを巻き取る巻取部とを備えている。シャッターは、スラットを多数上下に重ねて連結した構造を有している。各スラットの両側部分は、リヤゲートフレームの側部に案内されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両では、シャッターを車体後部に設ける場合、後方の視界を確保するために、透過性を有する樹脂でスラットを形成する。樹脂製のスラットは、鋼板等に比べて線膨張係数が大きいため、高温時にスラットが膨張して変形し得る。また、樹脂製のスラットは、低温時にスラットが収縮して変形し得る。このように、樹脂製のスラットは、気温の変化に応じて変形するおそれがある。スラットは、ガイドレールに沿って移動するそのため、樹脂製のスラットに変形が生じると、スラットに連結された移動体のガイドレールに対する位置が変化し得る。これにより、ガイドレールにおける移動体の移動に不具合が生じ、スラットが移動し難くなったりする。
【0005】
本発明の一側面は、樹脂製のスラットの変形による不具合の発生を回避できる車両の開閉構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る車両の開閉構造は、車両に設けられた開口を挟んで延在するように配置された一対のガイドレールと、一対のガイドレールに摺動可能にガイドされ、開口を開閉する開閉ユニットと、を備え、開閉ユニットは、ガイドレールの延在方向に沿って配列された複数の樹脂製のスラットと、一対のガイドレールのそれぞれにより一対のガイドレールの対向方向への移動が規制され、且つ、ガイドレールの延在方向に沿って移動可能に支持される一対の移動体と、一対の移動体を連結する連結部材と、スラットと連結部材との間に配置され、スラットと連結部材とを接合するゴム製の接合部材と、を備える。
【0007】
本発明の一側面に係る車両の開閉構造では、スラットと連結部材とをゴム製の接合部材で接合している。これにより、車両の開閉構造では、スラットが高温時に膨張した場合、スラットの膨張に応じて接合部材が伸びるため、スラットの変形が連結部材に伝達されない。また、車両の開閉構造では、スラットが低温で収縮した場合、スラットの収縮に応じて接合部材が収縮するため、スラットの変形が連結部材に伝達されない。そのため、車両の開閉構造では、スラットの変形が連結部材、ひいては移動体に影響を与えない。したがって、車両の開閉構造では、移動体の位置が変化して移動体の移動に不具合が生じること等を回避できる。その結果、車両の開閉構造では、樹脂製のスラットの変形による不具合の発生を回避できる。
【0008】
一実施形態においては、スラットを一対のガイドレールの対向方向へ移動可能に支持し、ガイドレールのそれぞれによりガイドレールの延在方向に沿って移動可能に支持されるスラット支持体を備え、スラット支持体は、一対のガイドレールの対向方向及びガイドレールの延在方向に直交する方向において、スラットの位置を設定していてもよい。この構成では、スラットが、ガイドレールの延在方向に摺動可能に支持され、スラットのガイドレールの対向方向への移動を可能とするスライドシューによって支持される。したがって、スラットの熱伸縮に影響を及ぼすことなくスラットをガイドレールに対して支持することができ、ガイドレールに対するスラットの板厚方向の位置のずれが生じることを抑制できる。
【0009】
一実施形態では、移動体は、ガイドレールの延在方向に沿って移動するガイドローラであり、連結部材は、ガイドローラを回転可能に支持していてもよい。この構成では、接合部材によってスラットの変形を吸収できるため、スラットの変形がガイドローラの位置に影響を及ぼさない。したがって、車両の開閉構造では、樹脂製のスラットの変形による不具合の発生を回避できる。
【0010】
一実施形態においては、一対の移動体、連結部材及び接合部材は、ガイドレールの延在方向において、所定の間隔をあけて複数設けられていてもよい。この構成において、複数のスラットにおいて変形が生じた場合、複数の移動体に影響を及ぼし得る。複数の移動体の位置に変化が生じた場合、開閉ユニットの開閉動作の操作性が更に低下するおそれがある。したがって、移動体が複数設けられている構成では、接合部材を設ける構成が特に有効である。
【0011】
一実施形態においては、接合部材は、一対のガイドレールの対向方向に延在していてもよい。この構成では、接合部材によって、スラットの変形を適切に吸収できる。
【0012】
一実施形態においては、接合部材は、一対のガイドレールの対向方向において、所定の間隔をあけて複数配置されていてもよい。この構成では、接合部材によって、スラットの変形を適切に吸収できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一側面によれば、樹脂製のスラットの変形による不具合の発生を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る車両の開閉構造を備えた車両の後側部分を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された車両の後側部分においてバックドアが開いた状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示されたバックドアを昇降ガイドレールと共に示す断面図である。
【
図4】
図4は、スラット、接合部材及び連結部材の断面図である。
【
図5】
図5(a)は、スラットが収縮したときの接合部材の状態を示す図であり、
図5(b)は、スラットが膨張したときの接合部材の状態を示す図である。
【
図6】
図6は、他の実施形態に係るバックドアを昇降ガイドレールと共に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1に示されるように、車両1は、車体2を備えている。図中の矢印FRは、車体2の前後方向における前側を示し、図中の矢印UPは、車体2の上下方向における上側を示し、図中の矢印OUTは、車体2の左右方向(車幅方向)における外側を示している。
【0017】
車体2は、ルーフパネル3と、このルーフパネル3の左右両側に配置された一対のサイドパネル4と、を有している。ルーフパネル3は、車体2の上部に設けられている。サイドパネル4は、車体2の側部に設けられている。車体2の後端下部には、バンパー5が設けられている。車体2の後端上部には、スポイラー6が設けられている。
【0018】
車体2の後端部には、
図2に示されるように、開口2aが設けられている。開口2aは、ルーフパネル3の後端と一対のサイドパネル4の後端とバンパー5の上端とにより画成されている。サイドパネル4の後端には、湾曲部4aが設けられている。開口2aにおける湾曲部4aよりも上部の領域(以下、開口2aの上部領域)は、車体2の前側に曲がるような形状を有している。
【0019】
各サイドパネル4の後端部には、バックドア7を車体2の上下方向に摺動可能にガイドする昇降ガイドレール20がそれぞれ取り付けられている。つまり、車両1は、車体2の後端部に設けられた開口2aを挟んで車体2の上下方向に延在するように配置された一対の昇降ガイドレール20を備えている。
【0020】
車両1は、車体2の後端部の開口2aを覆う開閉式のバックドア7を備えている。バックドア7は、開口2aに対して昇降可能な開閉ユニットである。バックドア7は、昇降ガイドレール20に昇降ガイドレールの延在方向へ移動可能に支持されている。
図1は、バックドア7が閉まった状態を示し、
図2は、バックドア7が開いた状態を示している。以下の説明において、バックドア7に関する上下方向は、バックドア7を閉めた状態(
図1参照)での方向である。
【0021】
バックドア7は、
図3に示されるように、車体2の上下方向に沿って配列された複数のスラット8と、位置決め突起(移動体)14と、リーンフォースメント(連結部材)9と、接合部材10と、を備えている。
【0022】
各スラット8は、車幅方向に延在している。最も下側に位置するスラット8には、バックドア7の開閉操作を行うための取っ手11が設けられている。スラット8の車幅方向の両端部には、スラット支持体としてのスライドシュー12がそれぞれ取り付けられている。スライドシュー12は、穴が設けられ、穴にスラット8の端部の一部が嵌め込まれることでスラット8を移動可能に挟持している。スラット8は、耐衝撃性を有する透明樹脂で形成されている。そのような透明樹脂としては、例えばポリカーボネート又はアクリル樹脂等が挙げられる。隣り合うスラット8同士は、接合部15(
図1参照)によって接合されている。
【0023】
位置決め突起14は、スラット8の昇降ガイドレール20に対する位置を設定する(位置決めする)。位置決め突起14は、昇降ガイドレール20により昇降ガイドレールの対向方向への移動が規制されると共に、昇降ガイドレール20の延在方向に沿って移動可能に昇降ガイドレール20に支持される。位置決め突起14は、昇降ガイドレール20に設けられた突起収容部22(後述)に収容されている。位置決め突起14は、例えば、樹脂で形成されている。位置決め突起14は、例えば、立方体形状を呈している。位置決め突起14は、昇降ガイドレール20の延在方向において、複数設けられている。
【0024】
リーンフォースメント9は、車幅方向に延在するように配置されている。リーンフォースメント9は、例えば炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、アルミニウム又は鉄等の剛体により形成されている。
図4に示されるように、リーンフォースメント9の断面は、略U字形状を呈している。具体的には、リーンフォースメント9は、車幅方向に延在する板状の基部9aと、基部9aの上下方向の両端部において、基部9aに対して垂直に立設され、且つ、車幅方向に延在する側部9b,9cと、を有している。リーンフォースメント9の車幅方向の両端は、スラット8の車幅方向の両端よりも車幅方向の内側に位置している。リーンフォースメント9の両端部には、位置決め突起14がそれぞれ設けられている。
【0025】
接合部材10は、スラット8とリーンフォースメント9とを接合している。接合部材10は、車幅方向に延在している。接合部材10は、スポンジゴムで形成されている。接合部材10の断面は、例えば、矩形状を呈している。接合部材10は、スラット8とリーンフォースメント9の基部9aとを接合している。すなわち、接合部材10は、リーンフォースメント9の側部9b,9cには接合されておらず、側部9b,9cと所定の間隔をあけて離間している。
【0026】
接合部材10の位置、すなわちリーンフォースメント9の位置は、スラット8の任意の位置に設定されている。例えば、接合部材10の位置は、スラット8において昇降ガイドレール20の延在方向の中央部に設定される。接合部材10の厚み(
図3における上下方向の寸法)は、スラット8の線膨張係数等に応じて適宜設定される。接合部材10の厚みは、例えば、5.0mmである。
【0027】
上述したバックドア7において、各スラット8は、昇降ガイドレール20の延在方向に沿って配列されている。リーンフォースメント9は、一対の昇降ガイドレール20の対向方向に延在している。
【0028】
昇降ガイドレール20には、バックドア7のスライドシュー12と係合するシュー収容部21と、バックドア7の位置決め突起14と係合する突起収容部22と、が設けられている。突起収容部22は、シュー収容部21よりも車幅方向の内側に配置されている。また、昇降ガイドレール20には、バックドア7を封止するサイドシール23が取り付けられている。サイドシール23は、シュー収容部21よりも車幅方向の内側においてバックドア7を挟んで突起収容部22と対向するように配置されている。
【0029】
バックドア7が昇降ガイドレール20に沿って開閉動作するときは、位置決め突起14が突起収容部22に位置決めされた状態で、スライドシュー12がシュー収容部21を摺動する。
【0030】
ルーフパネル3の車幅方向両端部の下面側であって、図示しない内装部材との間には、バックドア7を車体2の前後方向に摺動可能にガイドするガイドレール(図示しない)がそれぞれ設けられている。つまり、車両1は、車体2の前後方向に延在するように配置された一対のガイドレールを備えている。ガイドレールは、昇降ガイドレール20に連続して配置されていてもよいし、昇降ガイドレール20と若干の間隔をもって配置されていてもよい。なお、ガイドレールの構造については、詳細な説明を省略する。
【0031】
以上のような車両1の開閉構造において、
図1に示されるようにバックドア7が全閉した状態では、ロック機構(図示せず)によりバックドア7がロックされている。その状態からバックドア7のロックを解除し、取っ手11を持ってバックドア7を上昇させると、バックドア7が昇降ガイドレール20に沿って車体2の上側に移動すると共に、バックドア7がガイドレールに沿って車体2の前側に移動し、
図2に示されるようにバックドア7が開くようになる。なお、バックドア7が開いたときは、スライドシュー12と昇降ガイドレール20との摺動抵抗によってバックドア7が開いた状態に保持される。
【0032】
バックドア7が開いた状態から、取っ手11を持ってバックドア7を下降させると、バックドア7が昇降ガイドレール20に沿って車体2の下側に移動すると共に、バックドア7がガイドレールに沿って車体2の後側に移動し、バックドア7が閉じるようになる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係る車両1の開閉構造では、スラット8とリーンフォースメント9とをゴム製の接合部材10で接合している。これにより、車両1の開閉構造では、スラット8が高温時に膨張した場合、スラット8の膨張に応じて接合部材10が伸びるため、スラット8の変形がリーンフォースメント9に伝達されない。また、車両1の開閉構造では、スラット8が低温で収縮した場合、スラット8の収縮に応じて接合部材10が収縮するため、スラット8の変形がリーンフォースメント9に伝達されない。そのため、車両1の開閉構造では、スラット8の変形がリーンフォースメント9、ひいては位置決め突起14に影響を与えない。したがって、車両1の開閉構造では、位置決め突起14の位置が変化して位置決め突起14の移動に不具合が生じること等を回避できる。その結果、車両1の開閉構造では、樹脂製のスラット8の変形による不具合の発生を回避できる。
【0034】
図5(a)に示されるように、バックドア7では、低温時(例えば、-30℃)において、スラット8が収縮した場合、スラット8の収縮に応じて接合部材10が変形して、スラット8の収縮を接合部材10が吸収する。
図5(b)に示されるように、バックドア7では、高温時(例えば、80℃)において、スラット8が膨張した場合、スラット8の膨張に応じて接合部材10が変形して、スラット8の膨張を接合部材10が吸収する。このように、バックドア7では、スラット8の変形がリーンフォースメント9に伝達されない。したがって、車両1の開閉構造では、樹脂製のスラット8の変形による不具合の発生を回避できる。
【0035】
従来の車両の開閉構造において、スラットと位置決め突起とを連結する連結部材を、位置決め突起に対して近接及び離間可能な構成とした場合、以下の問題が生じ得る。スラットが収縮したとき、連結部材が位置決め突起から離間する方向に移動する。これにより、位置決め突起の位置は、昇降ガイドレールに対して変化しない。しかしながら、スラットの収縮によってスラットが移動したときに、サイドシールに対してスラットが移動するため、サイドシールがスラットから外れる可能性がある。この場合、シール性が確保されなくなる。また、当該問題を回避するために、スラットがサイドシールから外れないように、サイドシールの位置を車幅方向の内側に設定すると、一対のサイドシールの間の距離が短くなるため、開口幅が小さくなり、後方の視認性が低下する。
【0036】
本実施形態に係る車両1の開閉構造では、スラット8の変形がリーンフォースメント9に伝達されないため、上記構成を採用する必要がない。車両1の開閉構造では、スラット8とリーンフォースメント9との位置関係に変化(スラット8の中央位置とリーンフォースメント9の中央位置とのズレ)が生じ難い。したがって、車両1の開閉構造では、サイドシール23がスラット8から外れたり、後方の視認性が低下したりするといった問題が発生しない。
【0037】
本実施形態に係る車両1の開閉構造は、スラット8を一対の昇降ガイドレール20の対向方向へ移動可能に支持し、昇降ガイドレール20のそれぞれにより昇降ガイドレール20の延在方向に沿って移動可能に支持されるスライドシュー12を備える。スライドシュー12は、一対の昇降ガイドレール20の対向方向及び昇降ガイドレール20の延在方向に直交する方向において、スラット8の位置を設定する。この構成では、スラット8が、昇降ガイドレール20の延在方向に摺動可能に支持され、スラット8の昇降ガイドレール20の対向方向への移動を可能とするスライドシュー12によって支持される。したがって、スラット8の熱伸縮に影響を及ぼすことなくスラット8を昇降ガイドレール20に対して支持することができ、昇降ガイドレール20に対するスラット8の板厚方向の位置のずれが生じることを抑制できる。
【0038】
本実施形態に係る車両1の開閉構造では、一対の位置決め突起14は、昇降ガイドレール20の延在方向において、所定の間隔をあけて複数設けられている。この構成において、複数のスラット8において変形が生じた場合、複数の位置決め突起14に影響を及ぼし得る。複数の位置決め突起14の位置に変化が生じた場合、バックドア7の開閉動作の操作性が更に低下するおそれがある。したがって、位置決め突起14が複数設けられている構成では、接合部材10を設ける構成が特に有効である。
【0039】
本実施形態に係る車両1の開閉構造では、接合部材10は、一対の昇降ガイドレール20の対向方向(車幅方向)に延在している。この構成では、接合部材10によって、スラット8の変形を適切に吸収できる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0041】
上記実施形態では、スラット支持体としてスライドシュー12を一例に説明した。しかし、スラット支持体は、例えば、ローラ等であってもよい。
【0042】
上記実施形態では、バックドア7が昇降ガイドレール20に沿って開閉動作するときに、位置決め突起14が突起収容部22に位置決めされた状態で、スライドシュー12がシュー収容部21を摺動する形態を一例に説明した。しかし、昇降ガイドレール20をガイドローラが移動する形態であってもよい。
【0043】
図6に示されるように、バックドア7Aは、ガイドローラ(移動体)30a,30bと、連結部材32と、を備えている。ガイドローラ30a,30bは、昇降ガイドレール36は、ブラケット38を介して、サイドパネル4に固定されている。サイドパネル4には、サイドシール23Aが取り付けられている。
【0044】
連結部材32は、ガイドローラ30a,30bを回転可能に支持している。具体的には、連結部材32は、支軸34によって、ガイドローラ30a,30bを回転可能に支持している。接合部材10は、スラット8と連結部材32とを接合している。この構成においても、スラット8が高温時に膨張した場合、スラット8の膨張に応じて接合部材10が伸びるため、スラット8の変形が連結部材32に伝達されない。また、スラット8が低温で収縮した場合、スラット8の収縮に応じて接合部材10が収縮するため、スラット8の変形が連結部材32に伝達されない。そのため、スラット8の変形が連結部材32、ひいてはガイドローラ30a,30bに影響を与えない。したがって、ガイドローラ30a,30bの位置が変化してガイドローラ30a,30bの移動に不具合が生じること等を回避できる。その結果、樹脂製のスラット8の変形による不具合の発生を回避できる。
【0045】
また、バックドア7Aにおいて、スラット8の車幅方向の端部に、スライドシューが更に設けられていてもよい。この場合、例えば、
図6に示すスラット8の車幅方向の寸法を大きくして、ガイドローラ30a,30bよりも車幅方向の外側に、スライドシューを設けることができる。
【0046】
上記実施形態では、バックドア7が手動で開閉される形態を一例に説明した。しかし、バックドア7は、自動で開閉される形態であってもよい。この場合、バックドア7を開閉させる駆動部を備えていればよい。
【0047】
上記実施形態では、接合部材10が車幅方向に延在している形態を一例に説明した。しかし、接合部材は、車幅方向において、所定の間隔をあけて複数配置されていてもよい。すなわち、接合部材は、複数の部材で構成されていてもよい。
【0048】
上記実施形態では、昇降ガイドレール20には、サイドパネル4の湾曲部4aに対応した湾曲部20aが設けられている形態を一例に説明した。しかし、特にその形態には限られず、そのような湾曲部20aが昇降ガイドレール20に設けられていなくてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、スラット8は透明樹脂で形成されている形態を一例に説明した。しかし、スラット8を形成する樹脂としては、透明樹脂以外であってもよい。
【0050】
上記実施形態では、車両1の車体2の後方に、バックドア7(開閉ユニット)を設ける形態を一例に説明した。しかし、開閉ユニットは、車体の側部に設けられていてもよい。また、バックドア7は開口2aに対し下側から上側に移動することにより開く形態としたが、上側から下側に移動することにより開く形態でもよいし、左右方向に移動することにより開く形態であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…車両、2a…開口、3…、7,7A…バックドア(開閉ユニット)、8…スラット、9…リーンフォースメント(連結部材)、10…接合部材、14…位置決め突起、20…昇降ガイドレール(ガイドレール)、30…ガイドローラ(移動体)、32…連結部材。