(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】ターボチャージャに用いられるリンク機構
(51)【国際特許分類】
F02B 37/24 20060101AFI20220208BHJP
F02B 39/00 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
F02B37/24
F02B39/00 Z
(21)【出願番号】P 2018244762
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樹杉 剛
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-124581(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0315964(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0361820(US,A1)
【文献】特開2007-100587(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0291757(US,A1)
【文献】特開2018-13227(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第1391585(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/24
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボチャージャに用いられるリンク機構であって、
駆動軸に接続可能であり、前記駆動軸に接続された状態において前記駆動軸とともに前記駆動軸周りに回転可能なリンク部材と、
前記リンク部材とアクチュエータとを連結可能であり、前記リンク部材と前記アクチュエータとを連結した状態において前記リンク部材を前記駆動軸周りに回転させるロッドと、を備え、
前記リンク部材は、
前記駆動軸が接続される駆動軸接続部と、
前記ロッドが接続されるロッド接続部と、を有し、
前記ロッドは、
前記アクチュエータに接続されるアクチュエータ接続部と、
前記ロッド接続部に対して相対回転可能となるように前記ロッド接続部に接続されるピン部と、
前記アクチュエータ接続部と前記ピン部とを連結する連結部と、
前記ピン部の軸方向と平行な方向に前記連結部と隙間を置いて対向する対向部と、を有し、
前記ロッド接続部に前記ピン部が接続された状態において、前記ロッド接続部は、前記駆動軸と前記ピン部とを結ぶ第1直線と前記ピン部と前記対向部とを結ぶ第2直線とのなす角が予め設定された角度範囲内であるときに、前記ロッドと前記リンク部材との接続状態が維持されるように前記対向部の前記ピン部の軸方向と平行な方向への移動を規制し、
前記ロッド接続部は、前記角が前記角度範囲外であるときに、前記ロッドが前記リンク部材に接続された接続状態と前記ロッドが前記リンク部材に接続されていない非接続状態との切換えが可能となるように前記対向部の前記ピン部の軸方向と平行な方向への移動を許容する、リンク機構。
【請求項2】
前記ロッド接続部は、
前記リンク部材に前記ロッドが接続された状態において、前記ピン部が回転可能となるように前記ピン部を保持する保持部と、
前記保持部に前記ピン部が保持された状態において、前記角が前記角度範囲内であるときに、前記対向部の前記ピン部の軸方向えと平行な方向への移動が阻止されるように前記対向部と前記連結部との間において前記ピン部の軸方向と平行な方向に前記対向部に重なる重なり部と、
前記保持部の周方向に関して前記重なり部に隣接する位置に設けられており、前記保持部に前記ピン部が保持された状態において、前記角が前記角度範囲外であるときに、前記対向部の前記ピン部の軸方向と平行な方向への移動を許容する許容部と、を有する、請求項1に記載のリンク機構。
【請求項3】
前記ピン部と前記対向部との間の距離は、前記保持部と前記許容部との間の距離以上であり、かつ、前記保持部と前記重なり部との間の距離未満である、請求項2に記載のリンク機構。
【請求項4】
前記駆動軸は、排ガスの排気流路の流路面積の大きさを調整可能な可変ノズルユニットのユニゾンリングをその中心軸周りに回転させるクランクレバーに連結されており、
前記リンク部材は、前記角が前記角度範囲の最大の角度または最小の角度のときに前記ターボチャージャのハウジング当接するストッパ部をさらに有する、請求項1から3のいずれか1項に記載のリンク機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ターボチャージャに用いられるリンク機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ターボチャージャには、種々のリンク機構が用いられている。たとえば、特開2018-13227号公報(以下、「特許文献1」という。)には、ターボチャージャのタービンホイールに向かう排ガスの流路面積の大きさを変化させる可変ノズルユニットのユニゾンリングに対し、アクチュエータの回転力を伝達するコントロールリンク(リンク機構)が開示されている。このコントロールリンクは、第1駆動レバーと、第2駆動レバーと、コントロールロッドと、スナップリングと、を有している。第1駆動レバーは、アクチュエータとしてのモータに接続されている。第2駆動レバーは、ユニゾンリングを回転させるクランクレバーに接続されたクランク軸に接続されている。コントロールロッドは、第1駆動レバーと第2駆動レバーとを連結している。具体的に、コントロールロッドは、第1駆動レバーに設けられた穴に連結される第1リンクピンと、第2駆動レバーに設けられた穴に連結される第2リンクピンと、を有している。スナップリングは、第2リンクピンが第2駆動レバーから抜けるのを規制するように当該第2リンクピンに取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるようなリンク機構では、コントロールロッドが第2駆動レバーから抜けるのを規制するための専用部品(例えば、スナップリング)が必要となる。この課題は、ユニゾンリングに係合したクランクレバーを回転させる駆動軸とアクチュエータとを連結するリンク機構に限らず、ターボチャージャに用いられる他のリンク機構においても同様に生じ得る。
【0005】
本発明の目的は、リンク部材からロッドが抜けるのを規制するための専用部品を省略することが可能なターボチャージャに用いられるリンク機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従ったターボチャージャに用いられるリンク機構は、駆動軸に接続可能であり、前記駆動軸に接続された状態において前記駆動軸とともに前記駆動軸周りに回転可能なリンク部材と、前記リンク部材とアクチュエータとを連結可能であり、前記リンク部材と前記アクチュエータとを連結した状態において前記リンク部材を前記駆動軸周りに回転させるロッドと、を備える。前記リンク部材は、前記駆動軸が接続される駆動軸接続部と、前記ロッドが接続されるロッド接続部と、を有する。前記ロッドは、前記アクチュエータに接続されるアクチュエータ接続部と、前記ロッド接続部に対して相対回転可能となるように前記ロッド接続部に接続されるピン部と、前記アクチュエータ接続部と前記ピン部とを連結する連結部と、前記ピン部の軸方向と平行な方向に前記連結部と隙間を置いて対向する対向部と、を有する。前記ロッド接続部に前記ピン部が接続された状態において、前記ロッド接続部は、前記駆動軸と前記ピン部とを結ぶ第1直線と前記ピン部と前記対向部とを結ぶ第2直線とのなす角が予め設定された角度範囲内であるときに、前記ロッド部材と前記リンク部材との接続状態が維持されるように前記対向部の前記ピン部の軸方向と平行な方向への移動を規制する。前記ロッド接続部は、前記角が前記角度範囲外であるときに、前記ロッド部材が前記リンク部材に接続された接続状態と前記ロッド部材が前記リンク部材に接続されていない非接続状態との切換えが可能となるように前記対向部の前記ピン部の軸方向と平行な方向への移動を許容する。
【0007】
本リンク機構では、ロッド接続部は、第1直線と第2直線とのなす角が予め設定された角度範囲外であるときに、接続状態と非接続状態との切換えが可能となるようにピン部の軸方向と平行な方向への対向部の移動を許容するため、リンク部材にロッドを組み付ける際、前記角が角度範囲外となる状態において、ピン部の軸方向と平行な方向に沿って対向部にロッド接続部を通過させながらピン部をロッド接続部に接続し、その後、前記角が角度範囲内となるようにピン部を中心としてロッドを回転させることにより、リンク部材にロッドが組み付けられる。この状態において、ロッド接続部は、対向部のピン部の軸方向と平行な方向への移動を規制するため、ロッドのリンク部材からの抜けが防止される。よって、リンク部材からロッドが抜けるのを規制するための専用部品を省略することが可能となる。
【0008】
前記リンク機構において、前記ロッド接続部は、前記リンク部材に前記ロッドが接続された状態において、前記ピン部が回転可能となるように前記ピン部を保持する保持部と、前記保持部に前記ピン部が保持された状態において、前記角が前記角度範囲内であるときに、前記対向部の前記ピン部の軸方向と平行な方向への移動が阻止されるように前記対向部と前記連結部との間において前記ピン部の軸方向と平行な方向に前記対向部に重なる重なり部と、前記保持部の周方向に関して前記重なり部に隣接する位置に設けられており、前記保持部に前記ピン部が保持された状態において、前記角が前記角度範囲外であるときに、前記対向部の前記ピン部の軸方向と平行な方向への移動を許容する許容部と、を有することが好ましい。
【0009】
この態様では、上記の効果が有効に得られる。
【0010】
具体的に、前記ピン部と前記対向部との間の距離は、前記保持部と前記許容部との間の距離以上であり、かつ、前記保持部と前記重なり部との間の距離未満であることが好ましい。
【0011】
この態様では、上記の効果が確実に達成される。
【0012】
また、前記駆動軸は、排ガスの排気流路の流路面積の大きさを調整可能な可変ノズルユニットのユニゾンリングをその中心軸周りに回転させるクランクレバーに連結されていてもよい。この場合において、前記リンク部材は、前記角が前記角度範囲の最大の角度または最小の角度のときに前記ターボチャージャのハウジング当接するストッパ部をさらに有することが好ましい。
【0013】
この態様では、前記角が角度範囲の最大の角度または最小の角度であるときに排ガスの排気流路の流路面積の大きさが最大または最小となるように可変ノズルユニットを設計することにより、前記角が最小の角度未満となる、または、最大の角度よりも大きくなるようにリンク部材が回動することが規制されるため、排気流路の流路面積が所望の範囲に維持される。
【発明の効果】
【0014】
以上に説明したように、この発明によれば、リンク部材からロッドが抜けるのを規制するための専用部品を省略することが可能なターボチャージャに用いられるリンク機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態のリンク機構を含むターボチャージャの構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図1に示されるリンク機構のリンク部材の斜視図である。
【
図3】
図1に示されるリンク機構のロッドの斜視図である。
【
図4】第1直線と第2直線とのなす角が最小となった状態のリンク部材およびロッドの正面図である。
【
図5】第1直線と第2直線とのなす角が最大となった状態のリンク部材およびロッドの正面図である。
【
図6】リンク部材に対するロッドの組み付け方を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態のリンク機構を含むターボチャージャの構成を概略的に示す図である。
図1に示されるように、ターボチャージャ1は、コンプレッサハウジング10と、タービンホイール12と、ベアリングハウジング16と、可変ノズルユニット20と、クランクレバー30と、駆動軸32と、リンク機構40は、を有している。このターボチャージャ1は、自動車等の車両に搭載される。
【0018】
コンプレッサハウジング10は、大気等のガスを圧縮するコンプレッサホイール(図示略)を収容している。
【0019】
タービンホイール12は、エンジン(図示略)から排出された排ガスによって回転駆動される。このタービンホイール12は、シャフト(図示略)によってコンプレッサホイールと連結されている。このため、タービンホイール12の回転駆動力がコンプレッサホイールに伝達される。タービンホイール12は、タービンハウジング(図示略)に収容されている。
【0020】
ベアリングハウジング16は、コンプレッサハウジング10とタービンハウジングとの間に配置されている。ベアリングハウジング16は、シャフトと、このシャフトを受けるベアリング(図示略)と、を収容している。
【0021】
可変ノズルユニット20は、タービンハウジング内に配置されている。可変ノズルユニット20は、排ガスの排気流路の流路面積の大きさを調整可能である。具体的に、可変ノズルユニット20は、図示略の一対のプレートと、複数のノズルベーン21と、複数のベーンアーム23と、ユニゾンリング24と、複数のスライダー25と、を有している。
【0022】
各ノズルベーン21は、一対のプレートに対して相対回転可能となるように当該一対のプレートに保持された回転軸部21aと、回転軸部21aに接続されたベーン21bと、を有している。なお、一対のプレート間に排気流路が形成されている。各ベーン21bは、一対のプレート間に配置されている。各ベーン21bは、回転軸部21aの中心軸周りに当該回転軸部21aとともに回転することにより、排気流路の流路面積の大きさを変更する。
【0023】
各ベーンアーム23は、各回転軸部21aの端部に接続(たとえば溶接)されている。各ベーンアーム23は、各回転軸部21aをその中心軸周りに回転させる。
【0024】
ユニゾンリング24は、全てのベーンアーム23を同時に各回転軸部21a周りに回転させる部材である。ユニゾンリング24は、一対のプレートに対して当該プレートの中心軸周りに相対回転可能となるようにプレートに支持されている。ユニゾンリング24には、各ベーンアーム23が係合している。このため、一対のプレートに対してユニゾンリング24が相対回転することにより、各回転軸部21aの回転中心軸周りに各ベーンアーム23と回転軸部21aとが一体的に回転する。これにより、各ベーン21bの姿勢が変更されるため、排気流路の流路面積の大きさが変更される。
【0025】
各スライダー25は、一対のプレートの一方のプレートに対して相対回転可能となるように当該一方のプレートに接続されている。各スライダー25は、ユニゾンリング24の径方向においてユニゾンリング24の内周部に接触するように配置されている。各スライダー25は、ユニゾンリング24の回転時に前記一方のプレートに対して相対回転しながらユニゾンリング24の回転を案内する。
【0026】
クランクレバー30は、ユニゾンリング24に係合している。クランクレバー30は、ユニゾンリング24をその中心軸周りに回転させる。
【0027】
駆動軸32は、クランクレバー30に連結されている。駆動軸32は、当該駆動軸32の中心軸周りにクランクレバー30とともに回転する。つまり、駆動軸32が回転すると、クランクレバー30を介してユニゾンリング24が回転するため、各ノズルベーン21の姿勢(排気流路の流路面積)が変更される。
【0028】
アクチュエータ34は、駆動軸32を回転させる回転力を生じさせる。アクチュエータ34は、駆動軸32から当該駆動軸32の軸方向と直交する方向に離間した位置(本実施形態では、コンプレッサハウジング10の上方)に配置されている。
【0029】
リンク機構40は、アクチュエータ34の回転力を駆動軸32に伝達する機構である。リンク機構40は、リンク部材100と、ロッド200と、を有している。
【0030】
リンク部材100は、駆動軸32に接続されており、駆動軸32とともに駆動軸32周りに回転可能である。
図2に示されるように、リンク部材100は、駆動軸接続部110と、ロッド接続部120と、ストッパ部130と、を有している。
【0031】
駆動軸接続部110は、駆動軸32が接続される部位である。駆動軸接続部110には、駆動軸32を接続するための接続孔110hが設けられている。接続孔110hは、駆動軸接続部110に対する駆動軸32の相対回転を禁止する形状に設定されている。
【0032】
ロッド接続部120およびストッパ部130については、後述する。
【0033】
ロッド200は、アクチュエータ34とリンク部材100とを連結している。ロッド200は、リンク部材100を駆動軸32周りに回転させる部材である。ロッド200は、例えば樹脂により形成される。
図3に示されるように、ロッド200は、アクチュエータ接続部210と、ピン部220と、連結部230と、抜け止め部240と、を有している。
【0034】
アクチュエータ接続部210は、アクチュエータ34に接続される部位である。アクチュエータ接続部210は、アクチュエータ34に対して相対回転可能となるようにアクチュエータ34に接続される。アクチュエータ接続部210には、円形の孔が形成されている。
【0035】
ピン部220は、ロッド接続部120に対して相対回転可能となるようにロッド接続部120に接続される。ピン部220は、円柱状に形成されている。
【0036】
連結部230は、アクチュエータ接続部210とピン部220とを連結している。具体的に、連結部230は、アクチュエータ接続部210に設けられた孔の中心軸とピン部220の軸方向とが互いに平行となるようにアクチュエータ接続部210とピン部220とを接続している。
【0037】
抜け止め部240は、ピン部220がリンク部材100から抜けるのを阻止する部位である。抜け止め部240は、連結部230に接続されている。抜け止め部240は、起立部242と、対向部244と、を有している。
【0038】
起立部242は、連結部230から起立する形状を有している。具体的に、起立部242は、連結部230からピン部220が突出する向きと同じ向きに連結部230から突出する形状を有している。
【0039】
対向部244は、ピン部220の軸方向と平行な方向に連結部230と隙間を置いて対向する部位である。対向部244は、起立部242の先端部(起立部242のうち連結部230側と反対側の端部)からピン部220に向かって突出する形状を有している。具体的に、対向部244は、起立部242の先端部からピン部220の軸方向と直交する方向に沿って延びる形状を有している。対向部244の先端部(対向部244のうち起立部242側と反対側の端部)は、ピン部220から離間する方向に凸となるように湾曲する形状を有している。
【0040】
ここで、ロッド接続部120について説明する。ロッド接続部120は、ロッド200のピン部220が接続される部位である。
図4は、第1直線と第2直線とのなす角が最小となった状態のリンク部材およびロッドの正面図である。
図5は、第1直線と第2直線とのなす角が最大となった状態のリンク部材およびロッドの正面図である。第1直線L1は、駆動軸32とピン部220とを結ぶ直線である。第2直線L2は、ピン部220と対向部244とを結ぶ直線である。
【0041】
図4及び
図5に示されるように、ロッド接続部120は、当該ロッド接続部120にピン部220が接続された状態において、第1直線L1と第2直線L2とのなす角θが予め設定された角度範囲内であるときに、対向部244と連結部230との間に位置する。換言すれば、ロッド接続部120は、当該ロッド接続部120にピン部220が接続された状態において、角θが前記角度範囲内であるときに、ロッド200とリンク部材100との接続状態が維持されるように、対向部244のピン部220の軸方向と平行な方向への移動を規制する。前記角度範囲は、各ノズルベーン21が全閉となる位置と全開となる位置との間でリンク部材100が回転する範囲に設定される。本実施形態では、
図1および
図5に示されるように、角θが前記角度範囲の最大の角度であるときに、各ノズルベーン21が全閉となり、
図4に示されるように、角θが前記角度範囲の最小の角度であるときに、各ノズルベーン21が全開となる。ただし、角θが前記角度範囲の最小の角度であるときに、各ノズルベーン21が全閉となり、角θが前記角度範囲の最大の角度であるときに、各ノズルベーン21が全開となるように構成されてもよい。
【0042】
ロッド接続部120は、角θが前記角度範囲外であるときに、ピン部220の軸方向と平行な方向への対向部244の通過を許容する。より詳細には、ロッド接続部120は、角θが前記角度範囲外であるときに、ロッド200がリンク部材100に接続された接続状態とロッド200がリンク部材100に接続されていない非接続状態との切換えが可能となるように、対向部244のピン部220の軸方向と平行な方向への移動を許容する。
【0043】
本実施形態では、ロッド接続部120は、保持部122と、重なり部124と、許容部126と、を有している。
【0044】
保持部122は、ピン部220が回転可能となるようにピン部220を保持する。保持部122は、駆動軸接続部110から離間した位置に設けられている。本実施形態では、保持部122は、ロッド接続部120をその厚さ方向に貫通するとともにピン部220の挿通を許容する挿通孔で構成されている。保持部122は、円形に形成されている。
【0045】
重なり部124は、保持部122の周囲の一部に設けられている。重なり部124は、保持部122から当該保持部122の径方向の外向きに張り出すとともに、保持部122の周方向に沿って延びる形状を有している。重なり部124は、ピン部220が保持部122に保持された状態において角θが前記角度範囲内であるとき(駆動軸32を回転中心として保持部122が回転する範囲内であるとき)に、対向部244のピン部220の軸方向と平行な方向への移動が阻止されるように、対向部244と連結部230との間においてピン部220の軸方向と平行な方向に対向部244に重なる。重なり部124の外縁部は、円弧状に形成されている。
【0046】
許容部126は、ピン部220の周方向(保持部122の周方向)に関して重なり部124に隣接する位置に設けられている。許容部126は、保持部122から当該保持部122の径方向の外向きに張り出すとともに、保持部122の周方向に沿って延びる形状を有している。許容部126の保持部122からの保持部122の径方向への張出量は、重なり部124のそれよりも小さい。許容部126は、ピン部220と保持部122とがピン部220の軸方向に並んだ状態(ピン部220が保持部122に保持されていない状態)において、角θが前記角度範囲外であるときに、ピン部220の軸方向と平行な方向へ対向部244が通過するのを許容する。同様に、許容部126は、保持部122にピン部220が保持された状態において、角θが前記角度範囲外であるときに、対向部244のピン部220の軸方向と平行な方向への移動を許容する。許容部126の外縁部は、円弧状に形成されている。
【0047】
保持部122から許容部126の外縁部までの距離L11は、保持部122から重なり部124の外縁部までの距離L12よりも小さい。距離L11は、ピン部220と対向部244との間の距離L21以下である。距離L12は、距離L21よりも大きく、かつ、ピン部220と起立部242との間の距離L22以下である。
【0048】
次に、ストッパ部130について説明する。ストッパ部130は、角θが前記角度範囲の最大の角度または最小の角度のときにターボチャージャ1のハウジング当接する。本実施形態では、
図4に示されるように、ストッパ部130は、角θが前記角度範囲の最小の角度のときに、ベアリングハウジング16に設けられた受け部17に当接する。これにより、角θが最小の角度未満となるようにリンク部材100が回動することが規制されるため、各ノズルベーン21により調整される排気流路の流路面積が所望の範囲に維持される。
【0049】
ここで、リンク部材100へのロッド200の組み付け方法について、
図6を参照しながら説明する。
図6は、リンク部材に対するロッドの組み付け方を説明するための図である。なお、リンク部材100へのロッド200の組み付け前に、駆動軸32にリンク部材100が接続される。具体的には、駆動軸32が接続孔110hに挿通される。
【0050】
続いて、抜け止め部240がピン部220の軸方向に許容部126と重なる状態でピン部220を保持部122に接続する。より詳細には、ピン部220の軸方向と平行な方向に沿って対向部244を含む抜け止め部240に許容部126を通過させながら、ピン部220を保持部(挿通孔)122に挿入する。この工程後のロッド200は、
図6において二点鎖線で示されている。
【0051】
その後、対向部244がピン部220の軸方向に重なり部124と重なるように、ピン部220を回転中心として、ロッド200を
図6において矢印で示される方向に回転させる。これにより、ピン部220の軸方向に対向部244と重なり部124とが互いに重なり合うため、ロッド200のリンク部材100からの抜けが防止される。
【0052】
最後に、アクチュエータ接続部210がアクチュエータ34に接続される。
【0053】
以上に説明したように、本実施形態のリンク機構40では、ピン部220の軸方向に対向部244と重なり部124とが互いに重なり合うことにより、ロッド200のリンク部材100からの抜けが防止されるため、リンク部材100からロッド200が抜けるのを規制するための専用部品を省略することが可能となる。
【0054】
なお、上記実施形態において、保持部122は、ロッド接続部120をその厚さ方向に貫通する挿通孔ではなく、ピン部220を受け入れ可能となるようにロッド接続部120の厚さ方向に窪む凹部で構成されてもよい。
【0055】
また、上記実施形態のリンク機構40は、ターボチャージャ1のいわゆるウエストゲートバルブ(排ガスの一部を分流させることによって、可変ノズルユニット20に向かう排ガスの流量を調節するバルブ)の開度を調整する機構として用いられることも可能である。
【0056】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1 ターボチャージャ、10 コンプレッサハウジング、12 タービンホイール、16 ベアリングハウジング、17 受け部、20 可変ノズルユニット、21 ノズルベーン、21a 回転軸部、21b ベーン、23 ベーンアーム、24 ユニゾンリング、30 クランクレバー、32 駆動軸、34 アクチュエータ、40 リンク機構、100 リンク部材、110 駆動軸接続部、110h 接続孔、120 ロッド接続部、122 保持部、124 重なり部、126 許容部、130 ストッパ部、200 ロッド、210 アクチュエータ接続部、220 ピン部、230 連結部、240 抜け止め部、242 起立部、244 対向部、L1 第1直線、L2 第2直線。