(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】熱硬化剥離コーティング剤ならびに剥離フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 133/14 20060101AFI20220208BHJP
C08F 220/18 20060101ALI20220208BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220208BHJP
C09D 161/28 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
C09D133/14
C08F220/18
C09D7/63
C09D161/28
(21)【出願番号】P 2021118374
(22)【出願日】2021-07-19
(62)【分割の表示】P 2017004858の分割
【原出願日】2017-01-16
【審査請求日】2021-07-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 良樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 洋平
(72)【発明者】
【氏名】山崎 彰寛
(72)【発明者】
【氏名】東本 徹
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-079238(JP,A)
【文献】特開平08-262808(JP,A)
【文献】特開昭60-036523(JP,A)
【文献】特開昭60-040114(JP,A)
【文献】特開2007-137940(JP,A)
【文献】特開2006-037069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D,C08F,C09K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基であり、R
2は炭素数12~28のアルキル基である。)
で表わされるラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ヘンイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート、トリコシル(メタ)アクリレート、テトラコシル(メタ)アクリレート、ペンタコシル(メタ)アクリレート、ヘキサコシル(メタ)アクリレート、ヘプタコシル(メタ)アクリレート、及びオクタコシル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1つ以上の長鎖アルキル基含有(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位1を(A)ポリマーの重量に対して50~89重量%
、一般式(2)
【化2】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基であり、R
3はOR
3’であり、R
3’は水酸基含有アルキル基である。)
で表わされる2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1つ以上の水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーに由来する構成単位2を(A)ポリマーの重量に対して11~23.5重量%
及び一般式(3)
【化3】
(式中、R
1
は水素原子またはメチル基であり、R
4
は炭素数1~4のアルキル基である。)
で表わされるメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート及びブチル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1つ以上の短鎖アルキル基含有(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位3を(A)ポリマーの重量に対して0~30重量%からなる(A)ポリマー
を含み、フルエーテル型メチル化メラミン樹脂及び酸触媒とともに用いられる熱硬化剥離コーティング剤用ポリマー
溶液。
【請求項2】
前記フルエーテル型メチル化メラミン樹脂が平均重合度1.1~10のフルエーテル型メチル化メラミン樹脂である、請求項1に記載の熱硬化剥離コーティング剤用ポリマー
溶液。
【請求項3】
前記(A)ポリマーの重量に対して、前記構成単位1
が50~79重量%、前記構成単位2
が11~25重量%および
前記構成単位3
が10~30重量%
からなる、請求項1又は2に記載の熱硬化剥離コーティング剤用ポリマー
溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化剥離コーティング剤ならびに剥離フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートに代表される二軸延伸ポリエステルフィルムは、透明性、寸法安定性、機械的特性、耐薬品性等の性能に優れており、種々の産業分野で利用されている。近年では、各種光学用フィルムに多く使用され、LCD部材のプリズムシート、光拡散シート、反射板、タッチパネル等のベースフィルムや反射防止用ベースフィルム等の各種用途に用いられている。また、剥離フィルムとして使用されることも多く、粘着シート・粘着テープ、また、タッチパネル用保護フィルム等のセパレータとして、電子材料用途にも広く用いられている。
【0003】
剥離フィルムを作成するための、剥離コーティング剤として様々な種類のものが提案されている。たとえば特許文献1には、ビニルアルコール系重合体またはポリエチレンイミンから選ばれたポリマーと長鎖アルキルイソシアネートとの反応物からなる主剤を含む剥離処理剤について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の剥離剤は、その剥離性能は良好であるものの、架橋されていないため、耐溶剤性は低いという課題があった。
【0006】
本発明は、優れた剥離性能および耐溶剤性を有する熱硬化剥離コーティング剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、(A)長鎖アルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル(a1)と水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー (a2)を含むモノマーから合成される、ポリマー、(B)メチル化メラミン樹脂および(C)酸触媒を含む、熱硬化剥離コーティング剤により、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば耐溶剤性に優れ、剥離力が小さい硬化膜を短時間の熱乾燥で形成することができるため、特に、基材フィルムがポリエステルフィルムである剥離フィルムとして好適である。具体的には、セラミックコンデンサ、合成皮革、化粧板、炭素繊維プリプレグ等の製造工程用剥離フィルム、転写印刷関連製品用剥離フィルム、あるいは偏光板、位相差板等の粘着層保護用剥離フィルム等が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示により以下の項目が提供される。
(項目1)
(A)一般式(1)
【化1】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基であり、R
2は炭素数12~28のアルキル基である。)
で表わされる構成単位1および一般式(2)
【化2】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基であり、R
3はNHR
3’またはOR
3’であり、R
3’は水酸基含有アルキル基または水酸基含有シクロアルキル基である。)
で表わされる構成単位2を含む、ポリマー
(B)メチル化メラミン樹脂および
(C)酸触媒
を含む、熱硬化剥離コーティング剤。
(項目2)
前記(A)ポリマーの重量に対して、前記構成単位1を50~89重量%および前記構成単位2を11~50重量%含む、上記項目に記載の熱硬化剥離コーティング剤。
(項目3)
前記(A)ポリマーの重量に対して、前記構成単位1を50~79重量%、前記構成単位2を11~40重量%および一般式(3)
【化3】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基であり、R
4は炭素数1~11のアルキル基またはシクロアルキル基である。)
で表わされる構成単位3を10~30重量%含む、上記項目のいずれか1項に記載の熱硬化剥離コーティング剤。
(項目4)
前記(B)メチル化メラミン樹脂は、フルエーテル型メチル化メラミン由来の構成単位を含む、上記項目のいずれか1項に記載の熱硬化剥離コーティング剤。
(項目5)
前記(C)酸触媒は、有機スルホン酸及び/又は有機リン酸である、上記項目のいずれか1項に記載の熱硬化剥離コーティング剤。
(項目6)
前記(A)ポリマーを45~95重量%、前記(B)メチル化メラミン樹脂を4.5~50重量%、および前記(C)酸触媒を0.5~5重量%含む、上記項目のいずれか1項に記載の熱硬化剥離コーティング剤。
(項目7)
上記項目のいずれか1項に記載の熱硬化剥離コーティング剤の硬化膜およびプラスチックフィルムを含む、熱硬化剥離フィルム。
(項目8)
前記プラスチックフィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムである、上記項目のいずれか1項に記載の熱硬化剥離フィルム。
(項目9)
上記項目のいずれか1項に記載の剥離コーティング剤をプラスチックフィルムの少なくとも片面に塗工し、加熱処理する工程を含む、熱硬化剥離フィルムの製造方法。
(項目10)
前記プラスチックフィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムである、上記項目のいずれか1項に記載の熱硬化剥離フィルムの製造方法。
【0010】
本開示において、上述した1または複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得る。当業者は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解することにより、上記以外のさらなる実施形態及び利点を認識することができる。
【0011】
(好ましい実施形態の説明)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでない。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができる。また、本発明の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができる。
【0012】
なお、本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願等の参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0013】
また本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含む。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられる。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語及び科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0014】
(1)熱硬化剥離コーティング剤
本開示は、下記(A)ポリマー、下記(B)メチル化メラミン樹脂および下記(C)酸触媒を含む、熱硬化剥離コーティング剤を提供する。以下各成分について詳細に説明する。
【0015】
(A)ポリマー(以下、「(A)成分」ともいう)
本発明の(A)ポリマーは、
一般式(1)
【化4】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基であり、R
2は炭素数12~28のアルキル基である。)
で表わされる構成単位1および
一般式(2)
【化5】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基であり、R
3はNHR
3’またはOR
3’であり、R
3’は水酸基含有アルキル基または水酸基含有シクロアルキル基である。)
で表わされる構成単位2を含む、ポリマーである。
【0016】
1つの実施形態において、本発明の(A)ポリマーは、構成単位1および2に加えて
一般式(3)
【化6】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基であり、R
4は炭素数1~11のアルキル基またはシクロアルキル基である。)
で表わされる構成単位3をさらに含む、ポリマーである。
【0017】
構成単位1は、モノマーとして、長鎖アルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル(a1)
【化7】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基であり、R
2は炭素数12~28のアルキル基である。)
を用いた場合にポリマー鎖に含まれる構成単位である。炭素数12~28のアルキル基は直鎖アルキル基であっても分岐アルキル基であってもよい。ただし、剥離力を軽くする点において直鎖アルキル基が好ましい。
【0018】
長鎖アルキル基含有(メタ)アクリル酸エステルの例としては、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ヘンイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート、トリコシル(メタ)アクリレート、テトラコシル(メタ)アクリレート、ペンタコシル(メタ)アクリレート、ヘキサコシル(メタ)アクリレート、ヘプタコシル(メタ)アクリレート、オクタコシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソペンタデシル(メタ)アクリレート、イソヘキサデシル(メタ)アクリレート、イソヘプタデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、特にステアリル(メタ)アクリレートが入手の容易性および軽剥離化の点から好ましい。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
構成単位2は、モノマーとして、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)
【化8】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基であり、R
3はNHR
3’またはOR
3’であり、R
3’は水酸基含有アルキル基または水酸基含有シクロアルキル基である。)
を用いた場合にポリマー鎖に含まれる構成単位である。水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)の例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N-(1-メチル-2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド等のヒドロキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
構成単位3は、モノマーとして、短鎖アルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル(a3)
【化9】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基であり、R
4は炭素数1~11のアルキル基またはシクロアルキル基である。)
を用いた場合にポリマー鎖に含まれる構成単位である。短鎖アルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル(a3)の例としてはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
(A)ポリマーに含まれる構成単位1および2の含有率は特に限定されることなく、設定することができる。1つの実施形態において、(A)ポリマーに含まれる構成単位1の上限は、(A)ポリマーの重量に対して、89、88.2、85、80、76.5、75、70、65、60、55、51重量%であり、下限は、(A)ポリマーの重量に対して、88.2、85、80、76.5、75、70、65、60、55、51、50重量%である。また(A)ポリマーに含まれる構成単位2の上限は、(A)ポリマーの重量に対して、50、45、40、35、30、25、23.5、20、15、12、11.8重量%であり、下限は(A)ポリマーの重量に対して、45、40、35、30、25、23.5、20、15、12、11.8、11重量%である。構成単位1および2の含有率の範囲は上記上限および下限の値を適宜選択して設定することができるが、軽剥離化と耐溶剤性が両立できる観点から、(A)ポリマーの重量に対して、構成単位1を50~89重量%および構成単位2を11~50重量%含むことが好ましい。従来、構成単位2の基となるモノマー、すなわち、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)は、良好な剥離性能を得るため、(メタ)アクリル系単量体を含めた単量体全体の10重量%以下としてポリマーを重合することがよいとされていたが、本発明者らが鋭意検討した結果、驚くべきことに(メタ)アクリル系単量体を含めた単量体全体の11重量%以上用いても、すなわち、ポリマー中に構成単位2が11重量%以上含有していても良好な剥離性能が得られることが明らかになったものである。
【0022】
1つの実施形態において、(A)ポリマーが構成単位3を含む場合、(A)ポリマーにおける、構成単位1の含有率の上限は、79、75、70、65、60、55、51であり、下限は78、75、70、65、60、55、51、50である。また(A)ポリマーにおける、構成単位2の含有率の上限は、40、35、30、25、23.5、20、15、12であり、下限は39、35、30、25、23.5、20、15、12、11である。さらに(A)ポリマーにおける、構成単位3の含有率の上限は、30、26.5、25、20、16.5、15、11であり、下限は29、26.5、25、20、16.5、15、11、10である。
上記構成単位1、2、3の含有率の範囲は上記上限および下限の値を適宜選択して設定することができ、速硬化性の観点から、(A)ポリマーの重量に対して、構成単位1を50~79重量%、構成単位2を11~40重量%、構成単位3を10~30重量%含むことが好ましい。
【0023】
(A)ポリマーにおける構成単位1と構成単位2との比率(構成単位1の重量/構成単位2の重量)の上限は、8、7、6、5、4、3.3、3、2.6、2.1であり、下限は7、6、5、4、3、2.6、2.1、2である。(構成単位1の重量/構成単位2の重量)の範囲は上記上限および下限の値を適宜選択して設定することができ、通常2~8が好ましい。
【0024】
(A)ポリマーが構成単位3を含む場合、(A)ポリマーにおける構成単位1と構成単位3との比率(構成単位1の重量/構成単位3の重量)の上限は、8、7、6、5、4、3.6、3、2であり、下限は7、6、5、4、3.6、3、2、1.5である。(構成単位1の重量/構成単位3の重量)の範囲は上記上限および下限の値を適宜選択して設定することができ、通常1.5~8が好ましい。
【0025】
(A)ポリマーが構成単位3を含む場合、(A)ポリマーにおける構成単位2と構成単位3との比率(構成単位2の重量/構成単位3の重量)の上限は、2、1.5、1.4、1、0.9、0.6であり、下限は1.5、1.4、1、0.9、0.6、0.5である。(構成単位2の重量/構成単位3の重量)の範囲は上記上限および下限の値を適宜選択して設定することができ、通常0.5~2が好ましい。
【0026】
1つの実施形態において、(A)ポリマーは、構成単位1~3以外の構成単位を含む。構成単位1~3以外の構成単位とは、例えば、(メタ)アクリル酸、スチレン、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート等をモノマーに用いた場合にポリマー鎖に含まれる構成単位である。(A)ポリマーに構成単位1~3以外の構成単位を含む場合、構成単位1、2および3の重量の合計に対し、その含有率の上限は、10、9、8、7、6、5、4、3、2重量%であり、下限は9、8、7、6、5、4、3、2、1重量%である。構成単位1~3以外の構成単位の含有率の範囲は、上記上限および下限の値を適宜選択して設定することができ、構成単位1、2および3の重量の合計に対し、通常1~10重量%である。
【0027】
(A)ポリマーの数平均分子量の上限は、80,000、75,000、70,000、65,000、60,000、55,000、50,000、45,000、43,000、41,000、40,000、35,000、30,000、29,000、25,000、21,000、20,000、15,000、10,000、9,000であり、下限は75,000、70,000、65,000、60,000、55,000、50,000、45,000、43,000、41,000、40,000、35,000、30,000、29,000、25,000、21,000、20,000、15,000、10,000、9,000、8,000である。(A)ポリマーの数平均分子量の範囲は、上記上限および下限の値を適宜選択して設定することができ、通常硬化性の観点から、8,000~80,000が好ましい。
【0028】
(A)ポリマーの重量平均分子量の上限は、200,000、190,000、180,000、170,000、160,000、150,000、140,000、135,000、130,000、120,000、110,000、100,000、90,000、88,000、84,000、80,000、70,000、60,000、53,000、50,000、40,000、30,000、25,000であり、下限は190,000、180,000、170,000、160,000、150,000、140,000、135,000、130,000、120,000、110,000、100,000、90,000、88,000、84,000、80,000、70,000、60,000、53,000、50,000、40,000、30,000、25,000、20,000である。(A)ポリマーの重量平均分子量の範囲は、上記上限および下限の値を適宜選択して設定することができ、通常硬化性の観点から、20,000~200,000が好ましい。
【0029】
(A)ポリマーの水酸基価の上限は、200、150、100、80、60、55であり、下限は190、150、100、80、60、55、50である。(A)ポリマーの水酸基価の範囲は上記上限および下限の値を適宜選択して設定することができ、耐溶剤性の観点から、50~200が好ましい。
【0030】
(A)ポリマーの製造方法は、各種公知の製造方法を用いて製造することができる。たとえば公知のラジカル重合法を採用することができる。ラジカル重合は、ラジカル重合開始剤の存在下、加熱することにより得られる。ラジカル重合開始剤としては、特に限定されず、公知のものを使用することができる。具体例としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の無機過酸化物、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等の有機過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート等のアゾ系化合物等が挙げられる。また、これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。なお、ラジカル重合開始剤の使用量は、全モノマー成分100重量部に対し、1~10重量部程度とすることが好ましい。なお、必要に応じ、連鎖移動剤などを用いてもよい。連鎖移動剤の具体例としては、ラウリルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、2-メルカプトベンゾチアゾール、ブロムトリクロルメタン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。連鎖移動剤の使用量は、全モノマー成分100重量部に対し、0.01~5重量部程度とすることが好ましい。
【0031】
(B)メチル化メラミン樹脂(以下、「(B)成分」ともいう)
本開示において、(B)メチル化メラミン樹脂は、下記式で表されるメチル化メラミンに由来する構成単位を含む樹脂である。本発明におけるメチル化メラミン樹脂は、メトキシメチル基(-CH2OCH3)を少なくとも1つ有することが必要であり、平均重合度は1.1~10である。
【0032】
【化10】
(式中、R
1~R
6は、少なくとも1つ以上がメトキシメチル基(-CH
2OCH
3)であり、残りは水素原子、メチロール基、エトキシメチル基、n-ブトキシメチル基及びイソブトキシメチル基から選択されるいずれか一種以上の組み合わせを表す。)
【0033】
本開示において、「フルエーテル型メチル化メラミン」とは、R1~R6がすべて、メトキシメチル基(-CH2OCH3)であるメラミンを指す。
なお、後述する(C)酸触媒について、「フルエーテル型メチル化メラミン」に対しては強酸(例えばスルホン酸)、「メチロール型メチル化メラミン」および「イミノ型メチル化メラミン」に対しては弱酸(例えばリン酸)を触媒として使用することが好ましい。
【0034】
市販されているメチル化メラミン樹脂としては、例えば、サイメル300、サイメル301、サイメル303LF、サイメル350、サイメル370N、サイメル771、サイメル325、サイメル327、サイメル703、サイメル712、サイメル701、サイメル266、サイメル267、サイメル285、サイメル232、サイメル235、サイメル236、サイメル238、サイメル272、サイメル212、サイメル253、サイメル254、サイメル202、サイメル207(オルネクスジャパン(株)製)、ニカラックMW-30M、ニカラックMW-30、ニカラックMW-30HM、ニカラックMW-390、ニカラックMW-100LM、ニカラックMX-750LM、ニカラックMW-22、ニカラックMS-21、ニカラックMS-11、ニカラックMW-24X、ニカラックMS-001、ニカラックMX-002、ニカラックMX-730,ニカラックMX-750、ニカラックMX-708、ニカラックMX-706、ニカラックMX-042、ニカラックMX-035、ニカラック、MX-45、ニカラックMX-43、ニカラックMX-417、ニカラックMX-410((株)三和ケミカル製)等が挙げられる。これらの中では、フルエーテル型のメチル化メラミン樹脂が低温・短時間での硬化性、及びポリエステルフィルムへの密着性の点で好ましい。したがって1つの実施形態において、(B)メチル化メラミン樹脂は、フルエーテル型メチル化メラミン由来の構成単位を含む。フルエーテル型のメチル化メラミン樹脂の例としては、上記R1~R6がすべてメトキシメチル基である2,4,6-トリス[ビス(メトキシメチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン(フルエーテル型)、市販品としてはサイメル303LF、ニカラックMW-30等が挙げられる。これらの(B)メチル化メラミン樹脂は1種単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0035】
(C)酸触媒(以下、「(C)成分」ともいう)
本発明において用いられる酸触媒は、特に限定されないが、無機酸や有機酸等が挙げられる。
無機酸の例としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。
有機酸の例としては、有機カルボン酸、有機スルホン酸、有機リン酸等が挙げられる。
有機カルボン酸の例としては、シュウ酸、酢酸、ギ酸等が挙げられる。
有機スルホン酸の例としては、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、カンファースルホン酸、ヘキサンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ノナンスルホン酸、デカンスルホン酸、ヘキサデカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸等が挙げられる。
有機リン酸の例としては、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、ビスフェノールAアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ-2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェート、ビスノニルフェニルアシッドホスフェート等が挙げられる。
熱酸発生剤の例としては、スルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられる。
上記酸触媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。本発明においては、(A)ポリマー、(B)メチル化メラミン樹脂等の樹脂との相溶性の点において有機酸を用いるのが好ましい。より好ましい例としては、有機スルホン酸及び/又は有機リン酸が挙げられる。
【0036】
本発明の熱硬化剥離コーティング剤における、(A)ポリマーの含有率の上限は、熱硬化剥離コーティング剤の95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、46重量%であり、下限は、94、90、85、80、75、70、65、60、55、50、46、45重量%である。
本発明の熱硬化剥離コーティング剤における、(B)メチル化メラミン樹脂の含有率の上限は、熱硬化剥離コーティング剤の50、45、40、35、30、25、20、15、10、5重量%であり、下限は、45、40、35、30、25、20、15、10、5、4.5重量%である。
本発明の熱硬化剥離コーティング剤における、(C)酸触媒の含有率の上限は、熱硬化剥離コーティング剤の5、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.6重量%であり、下限は、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.6、0.5重量%である。
上記(A)ポリマー、(B)メチル化メラミン樹脂、(C)酸触媒の含有率の範囲は上記上限および下限の値を適宜選択して設定することができ、軽剥離化と耐溶剤性が両立できる観点から上記(A)ポリマーを45~95重量%、上記(B)メチル化メラミン樹脂を4.5~50重量%、および上記(C)酸触媒を0.5~5重量%含むことが好ましい。
【0037】
(A)ポリマーと(B)メチル化メラミン樹脂との比率((A)成分の重量/(B)成分の重量)の上限は、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2.3、2であり、下限は19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2.3、2、1である。((A)成分の重量/(B)成分の重量)の範囲は、上記上限および下限の値を適宜選択して設定することができ、通常1~20が好ましい。
【0038】
(A)ポリマーと(C)酸触媒との比率((A)成分の重量/(C)成分の重量)の上限は、50、47.5、45、40、35、30、25、22.5、20、15、11であり、下限は49、47.5、45、40、35、30、25、22.5、20、15、11、10である。((A)成分の重量/(C)成分の重量)の範囲は、上記上限および下限の値を適宜選択して設定することができ、通常10~50が好ましい。
【0039】
(B)メチル化メラミン樹脂と(C)酸触媒との比率((B)成分の重量/(C)成分の重量)の上限は、25、20、15、10、5、3、2.5であり、下限は24、20、15、10、5、3、2.5、2である。((B)成分の重量/(C)成分の重量)の範囲は、上記上限および下限の値を適宜選択して設定することができ、通常2~25が好ましい。
【0040】
本発明の熱硬化剥離コーティング剤は、上記成分以外に(D)添加剤(以下、「(D)成分」ともいう)として各種公知のもの、例えば、バインダー、消泡剤、防滑剤、防腐剤、防錆剤、pH調整剤、酸化防止剤、顔料、染料、滑剤、レベリング剤、導電剤、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリペンタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、イソプレン・ブタジエン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、ポリオレフィンおよびこれらの誘導体等、シリコーン樹脂、イソシアネート基含有化合物、エポキシ基含有化合物、アミン、カルボン酸無水物、長鎖アルキル基含有アルコールを配合することもできる。上記バインダーは、特に限定されず周知のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂等を用いることができる。(D)添加剤を含む場合、1つの実施形態において、その使用量は、熱硬化剥離コーティング剤の重量の合計に対し、その上限は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、2、0.5重量%であり、その下限は、9、8、7、6、5、4、3、2、2、0.5、0.1重量%である。(D)添加剤の使用範囲は上記上限および下限の値を適宜選択して設定することができ、熱硬化剥離コーティング剤の重量の合計に対し、通常0.1~10重量%である。また別の実施形態において上記(A)成分の重量に対し、(D)添加剤の使用量の上限は、9、5、2重量%であり、下限は、5、2、1重量%、(A)成分の重量に対する(D)添加剤の使用量の範囲は上記上限および下限の値を適宜組み合わせて設定することができるが、例えば、1~9重量%がその例として挙げられる。
また添加剤としてステアリルアルコールなどの長鎖アルキル基含有アルコールを添加すると、剥離性能が向上する。長鎖アルキル基含有アルコールの使用量は耐溶剤性の観点からその使用量は、上記(A)~(C)成分の重量の合計に対し、10~50重量%である。
【0041】
上記各成分の配合方法は、特に限定されず、どの成分から混合しても良い。本発明の熱硬化剥離コーティング剤は、必要に応じ、希釈剤として、有機溶剤や水を用いることができる。該希釈剤の使用量は、塗工適正の観点から、本発明の熱硬化剥離コーティング剤組成物の固形分濃度が通常1~50重量部%程度となる範囲である。かかる数値範囲であることにより、硬化膜硬化性、及びポットライフのバランスをとりやすくすることができる。
【0042】
上記有機溶媒としては、特に限定されず、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、イソプロピルアルコール、エタノール、ブタノール等が挙げられる。これらの中でも樹脂の溶解性の点でメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエンが好ましい。
【0043】
(2)熱硬化剥離フィルム
1つの局面において、本開示は、上記熱硬化剥離コーティング剤の硬化膜およびプラスチックフィルムを含む、熱硬化剥離フィルムを提供する。本発明の熱硬化剥離フィルムは、上記熱硬化剥離コーティング剤をプラスチックフィルムの少なくとも片面に塗工して得られる剥離層を有する剥離フィルムである。
【0044】
上記剥離層(硬化被膜)は、本発明の熱硬化剥離コーティング剤組成物を、各種基材上に、乾燥後の重量が0.1~10g/m2程度、好ましくは0.2~5g/m2になるように塗工し、乾燥することにより得られる。
【0045】
上記塗工方法は特に限定されず、各種公知の手段による。具体的には、例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター等が挙げられる。
【0046】
本発明の剥離フィルムは、上記塗工後、剥離層を熱硬化させることにより得られる。本発明の熱硬化剥離コーティング剤組成物は、通常90~170℃で30秒~2分で硬化する。
【0047】
上記プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリオレフィン、ナイロン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ノルボルネン系樹脂等のプラスチックからなるフィルムが挙げられ、これらは必要に応じて表面処理(コロナ放電等)がなされていてもよい。また、プラスチックフィルムは、その片面あるいは両面に、本発明の熱硬化剥離コーティング剤組成物以外のコーティングによる層が設けられていてもよい。これらの中でも透明性、寸法安定性、機械的特性、耐薬品性等の性能の点でポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0048】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供するものではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0049】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明を具体的に説明する。但し、上述の好ましい実施形態における説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供するものではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。また、各実施例及び比較例において、部又は%は重量基準である。
【0050】
製造例1
撹拌器、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備え付けた4口フラスコにステアリルメタクリレートを76.5部、2-ヒドロキシルエチルメタクリレートを23.5部加え、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを2部、溶媒として酢酸ブチルを153部込み、80℃まで徐々に昇温し、9時間反応を行い、固形分濃度40%のポリマー溶液を得た。得られたポリマーの数平均分子量(ゲルパーメーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値、以下同じ)は41,000、水酸基価は100mgKOH/gであった。
【0051】
製造例2~5
モノマー組成を表1に記載した組成に変更した以外は製造例1と同様の手順でポリマーを製造した。
【0052】
【表1】
SMA:ステアリルメタクリレート
HEMA:2-ヒドロキシルエチルメタクリレート
MMM:メチルメタクリレート
BA:ブチルアクリレート
HEA:2-ヒドロキシルエチルアクリレート
【0053】
実施例1
(A)成分として製造例1で製造したポリマー溶液225部(固形換算で90部)、(B)成分としてサイメル303LF(フルエーテル型メチル化メラミン樹脂 固形分100%:オルネクスジャパン(株)製)10部、(C)成分としてパラトルエンスルホン酸2部を添加し、これをトルエンで希釈して固形分が10%になるように配合した。次にこの溶液をポリエチレンテレフタレートフィルム(膜厚75μm)に乾燥塗膜の膜厚が1μmになるように塗工し、165℃で30秒乾燥させ、剥離フィルムを得た。
【0054】
実施例2~9および比較例1~4
成分組成を表2に記載した成分組成に変更した以外は実施例1と同様の手順で剥離フィルムを得た。
【0055】
(耐溶剤性)
前記剥離フィルムの硬化皮膜をメチルエチルケトンに浸した綿棒で擦り、基材が露出するまでの回数
◎:50回以上擦っても塗膜が露出しない
○:30~49回擦った際に塗膜が露出する
△:10~29回擦った際に塗膜が露出する
×:1~9回擦った際に塗膜が露出する
【0056】
(剥離力)
作製した剥離フィルムの硬化皮膜表面に、ポリエステル粘着テープ(日東電工(株)製31Bテープ:25mm幅)を2kgのローラーで圧着させながら貼り合わせ、23℃で30分間保管した。ついで、このテープを180℃の角度で剥離速度0.3m/min.で引っ張り、剥離するのに要する力(N/25mm)を測定した。
【0057】
【表2】
各成分の使用量については、いずれも固形分換算の値で示す。
サイメル303LF:フルエーテル型メチル化メラミン(固形分100%:オルネクスジャパン(株)製)
サイメル325:イミノ基型メチル化メラミン(固形分80%:オルネクスジャパン(株)製)
サイメル370N:メチロール基型メチル化メラミン(固形分88%:オルネクスジャパン(株)製)
PTS:パラトルエンスルホン酸(明友産業(株)製)
AP-1:メチルアシッドホスフェート(大八化学工業(株)製)
ユーバン20SE60:ブチル化メラミン樹脂(固形分60%:三井化学(株)製)
【0058】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきである。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきである。