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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】紫外線照射装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20220208BHJP
   H01J 65/00 20060101ALI20220208BHJP
   H01J 61/16 20060101ALI20220208BHJP
   H01J 61/35 20060101ALI20220208BHJP
   H01J 61/54 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
B01J19/00 C
H01J65/00 B
H01J61/16 N
H01J61/35 F
H01J61/54 N
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021523084
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(86)【国際出願番号】 JP2020030005
(87)【国際公開番号】W WO2021025063
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2021-04-23
(31)【優先権主張番号】P 2019143960
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019145557
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳生 英昭
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-040867(JP,A)
【文献】特開2018-055965(JP,A)
【文献】特開2007-323995(JP,A)
【文献】特開2017-068944(JP,A)
【文献】特開2011-154862(JP,A)
【文献】特開2018-024546(JP,A)
【文献】特開2013-171660(JP,A)
【文献】特開2018-113116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00-12/02,14/00-19/32
A61L 9/00-9/22
H01J 61/50-65/08
A61L 2/00-2/28,11/00-12/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの面に光取り出し面が形成されたランプハウスと、
前記ランプハウスの内側に収容され、主たる発光波長が190nm以上、230nm以下の第一波長帯に属する紫外線を発するエキシマランプと、
主たる発光波長が250nm以上、300nm以下の第二波長帯に属する紫外線を、前記エキシマランプに対して照射可能な位置に配置された、始動補助光源と、
前記ランプハウス内であって、前記エキシマランプから放射された紫外線が通過する箇所に、前記第一波長帯の紫外線を実質的に透過し、前記第二波長帯の紫外線を実質的に反射する第一光学フィルタを備えたことを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記第一光学フィルタは、前記ランプハウスの光取り出し面に配置されている請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記エキシマランプは、KrCl又はKrBrを含む発光ガスが封入されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記始動補助光源は、前記第二波長帯の紫外線を出射する光出射面を含むLED光源であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記エキシマランプは、当該エキシマランプを構成する管体の外壁に形成され、且つ、前記管体の管軸方向に離間して配置された一対の電極を有し、
前記始動補助光源は、前記光出射面に、前記第二波長帯の紫外線を実質的に透過し、前記第一波長帯の紫外線が当該始動補助光源に照射されるのを阻害する第二光学フィルタを有し、
前記始動補助光源は、前記光取り出し面に対して直交する方向から見たときに、前記管軸方向に関して前記一対の電極の間の位置に配置されていることを特徴とする、請求項4に記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
前記エキシマランプは、当該エキシマランプを構成する管体の外壁に形成され、且つ、前記管体の管軸方向に離間して配置された一対の電極を有し、
前記始動補助光源は、前記光取り出し面に対して直交する方向から見たときに、前記管軸方向に関して前記一対の電極よりも外側の位置に配置されていることを特徴とする、請求項4に記載の紫外線照射装置。
【請求項7】
前記ランプハウスは、前記光取り出し面を除く少なくとも1つの面の内壁が、前記第二波長帯の紫外線を実質的に反射する材料で構成されていることを特徴とする、請求項6に記載の紫外線照射装置。
【請求項8】
前記ランプハウスの壁面の一部に設けられた透光窓を有し、
前記始動補助光源は、前記光出射面を前記透光窓に対向させた状態で、前記ランプハウスの外側において前記ランプハウスの前記壁面に固定して配置されていることを特徴とする、請求項4~7のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射装置に関し、特に、エキシマランプを含む紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エキシマランプは、低温状態や暗黒状態や長時間の休止状態後に点灯を始動する際、高い電圧が必要であったため、点灯用電源が大型化するという課題を有していた。これに対し、下記特許文献1には、390nmの紫外線を放射するUV-LEDを始動補助光源として備え、このUV-LEDからの出射光をエキシマランプに照射することで、始動補助を行う、紫外線照射装置が提案されている。
【0003】
特許文献1には、実施形態としてXeガスを発光ガス(放電用ガス)とする、発光波長が172nmのエキシマランプが記載されている。また、特許文献1には、エキシマランプとして利用され得る発光ガス(放電用ガス)として、Xe以外にも種々の材料が単純列挙されている。具体的には、発光ガスと発光波長の組み合わせとして、Arガスでは126nm、Krガスでは146nm、ArBrガスでは165nm、ArFガスでは193nm、KrClガスでは222nm、XeIガスでは253nm、XeClガスでは308nm、XeBrガスでは283nm、KrBrガスでは207nm、と列挙されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-68944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
主たる発光波長が190nm以上、230nm以下の波長帯(以下、「第一波長帯」と呼ぶ。)の紫外線は、仮に人体の皮膚に対して照射されても、皮膚の角質層で吸収され、それよりも内側(基底層側)には進行しない。角質層に含まれる角質細胞は細胞としては死んだ状態であるため、例えば、波長254nmの紫外線が照射される場合のように、有棘層、顆粒層、真皮など、生きた細胞に吸収されてDNAが破壊されるというリスクがほとんど存在しない。
【0006】
また、この第一波長帯の紫外線は、照射対象物に対する殺菌効果が存在することが分かっている。このため、光殺菌作用を初めとする種々の用途に、上記第一波長帯の紫外線を発するエキシマランプを備えた紫外線照射装置が利用されることが期待される。
【0007】
しかしながら、本発明者が鋭意検討したところ、第一波長帯に属する紫外線を発するエキシマランプについては、始動性があまり高くないことが確認された。
【0008】
上述したように、特許文献1には、172nmのXeエキシマランプ以外にも、第一波長帯に属する波長の紫外線を発するエキシマランプについても記載がある。しかし、本発明者の検討によれば、KrClガスを封入した主たる発光波長が222nmのエキシマランプ(以下、「KrClエキシマランプ」と呼ぶ。)は、390nmの紫外線では全く点灯しなかった。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑み、主たる発光波長が190nm以上、230nm以下の波長帯(第一波長帯)に属するエキシマランプを含み、高い始動性を示す紫外線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る紫外線照射装置は、
少なくとも1つの面に光取り出し面が形成されたランプハウスと、
前記ランプハウスの内側に収容され、主たる発光波長が190nm以上、230nm以下の第一波長帯に属する紫外線を発するエキシマランプと、
主たる発光波長が250nm以上、300nm以下の第二波長帯に属する紫外線を、前記エキシマランプに対して照射可能な位置に配置された、始動補助光源とを備えたことを特徴とする。
【0011】
本明細書において「主たる発光波長」とは、ある波長λに対して±10nmの波長域Z(λ)を発光スペクトル上で規定した場合において、発光スペクトル内における全積分強度に対して40%以上の積分強度を示す波長域Z(λi)における、波長λiを指す。例えばKrCl、KrBr、ArFを含む発光ガスが封入されているエキシマランプなどのように、半値幅が極めて狭く、且つ、特定の波長においてのみ光強度を示す光源においては、通常は、相対強度が最も高い波長(主ピーク波長)をもって、主たる発光波長として構わない。
【0012】
本発明者は、鋭意研究の結果、365nmのUV-LEDを、KrClエキシマランプの始動補助光源として利用した場合、1分間以上待機してもKrClエキシマランプが点灯しないことを確認した。また、本発明者は、鋭意研究の結果、280nmのUV-LEDを、KrClエキシマランプの始動補助光源として利用した場合、KrClエキシマランプが瞬時(1秒以内)に点灯することを確認した。
【0013】
主たる発光波長が190nm以上、230nm以下の波長帯(第一波長帯)の紫外線を発するエキシマランプの場合、発光ガスとして、Cl、Br、Fといったハロゲンガスが含まれる。ハロゲンは電気陰性度が高いため、電子付着性が高い。このため、ハロゲンにより、放電に必要な電子を付着してしまう結果、Xeエキシマランプに比べて、放電が開始しにくいと考えられる。
【0014】
上述したように、紫外線のエネルギーは波長が短いほど高くなる。このため、365nmよりも短い波長の紫外線を、主たる発光波長が第一波長帯に属するエキシマランプに対して照射することで、このエキシマランプに対する始動性が向上することが期待される。本発明者の鋭意研究によれば、主たる発光波長が、250nm以上、300nm以下の第二波長帯に属する紫外線を、前記エキシマランプの始動補助用に用いることで、前記エキシマランプの始動性が向上することが確認された。より詳細な理由については、「発明を実施するための形態」の項で後述される。
【0015】
つまり、上記構成の紫外線照射装置によれば、主たる発光波長が190nm以上、230nm以下の第一波長帯に属する紫外線を発するエキシマランプを備えながらも、始動性を高めることが可能となる。
【0016】
前記紫外線照射装置は、前記ランプハウス内であって、前記エキシマランプから放射された紫外線が通過する箇所に、前記第一波長帯の紫外線を実質的に透過し、前記第二波長帯の紫外線を実質的に反射する第一光学フィルタを備えるものとしても構わない。
【0017】
本明細書において、光学フィルタが「紫外線を実質的に透過する」とは、光学フィルタを透過した紫外線の強度が、光学フィルタに入射された紫外線の強度に対して60%以上であることを意味する。また、本明細書において、「紫外線を実質的に反射する」とは、光学フィルタを反射した紫外線の強度が、光学フィルタに入射された紫外線の強度に対して80%以上であることを意味する。
【0018】
なお、実際には、光学フィルタに対して入射される紫外線の入射角に応じて、光学フィルタにおける紫外線の透過率や反射率は変化する。ここで、エキシマランプや始動補助光源から出射される紫外線は、一定の発散角を有して進行するものの、進行する全ての光線のうち光出射面に対して0°近傍の角度で進行する光線の強度が最も強く、発散角が0°から離れるに連れ、強度が低下する。このため、入射角が20°以内で光学フィルタに入射された紫外線の強度に対して60%以上の透過率を示す光学フィルタは、前記紫外線を実質的に透過するものとして取り扱って構わない。同様に、入射角が30°以内で光学フィルタに入射された紫外線の強度に対して90%以上の反射率を示す光学フィルタは、前記紫外線を実質的に反射するものとして取り扱って構わない。
【0019】
主たる発光波長が250nm以上、300nm以下の第二波長帯に属する紫外線は、主たる発光波長が190nm以上、230nm以下の第一波長帯に属する紫外線とは異なり、人体に対して何らかの影響を及ぼすおそれが考えられる。よって、例えば人間が同一空間に存在する時間帯などにおいては、この第二波長帯の紫外線を、第一波長帯の紫外線と共にそのまま紫外線照射装置の外部に放射するのは好ましくない。
【0020】
これに対し、上記紫外線照射装置によれば、エキシマランプから出射される第一波長帯の紫外線については実質的に透過する一方、始動補助光源から出射される第二波長帯の紫外線については実質的に反射する第一光学フィルタが、ランプハウス内の、エキシマランプから放射された紫外線が通過する箇所に配置されている。これにより、始動補助用に出射された第二波長帯の紫外線については、ランプハウス内で反射させることで、エキシマランプに対して照射して始動補助機能を実現させつつ、紫外線照射装置の外側に放射されにくくなる。一方で、紫外線照射装置の外側に放射されることが想定されている第一波長帯の紫外線については、確実に装置外に取り出すことができる。
【0021】
前記第一光学フィルタは、前記ランプハウスの光取り出し面に配置されているものとしても構わない。
【0022】
前記エキシマランプは、KrCl又はKrBrを含む発光ガスが封入されているものとしても構わない。
【0023】
エキシマランプにKrClを含む発光ガスが封入されている場合、エキシマランプから出射される紫外線の主たる発光波長は222nm近傍であり、エキシマランプにKrBrを含む発光ガスが封入されている場合、エキシマランプから出射される紫外線の主たる発光波長は207nm近傍である。これらの波長帯の紫外線は、高い殺菌性能が示されるため、特に殺菌用途に適した紫外線照射装置が実現される。
【0024】
前記始動補助光源は、前記第二波長帯の紫外線を出射する光出射面を含むLED光源であるものとしても構わない。
【0025】
上記の構成において、
前記エキシマランプは、当該エキシマランプを構成する管体の外壁に形成され、且つ、前記管体の管軸方向に離間して配置された一対の電極を有し、
前記始動補助光源は、前記光出射面に、前記第二波長帯の紫外線を実質的に透過し、前記第一波長帯の紫外線が当該始動補助光源に照射されるのを実質的に阻害する第二光学フィルタを有し、
前記始動補助光源は、前記光取り出し面に対して直交する方向から見たときに、前記管軸方向に関して前記一対の電極の間の位置に配置されているものとしても構わない。
【0026】
エキシマランプが、管軸方向に離間した一対の電極を有する構成である場合、この一対の電極に挟まれた領域が主として発光空間を構成する。このため、始動補助光源を、光取り出し面に対して直交する方向から見たときに、管軸方向に関して一対の電極の間の位置に配置することで、始動補助光源から発光空間に対して第二波長帯の紫外線を高い強度で照射することができる。これにより、エキシマランプの高い始動性が得られる。
【0027】
一方で、上記の位置に始動補助光源を配置した場合、点灯後のエキシマランプから出射される第一波長帯の紫外線の一部が、始動補助光源側に照射される可能性がある。特に、始動補助光源がLED光源である場合、一般的には、LED素子が樹脂などで封止されているため、この封止樹脂が第一波長帯の紫外線に晒されて経時的に劣化するおそれがある。
【0028】
しかし、上記の構成によれば、始動補助光源が、光出射面に、第二波長帯の紫外線を実質的に透過し第一波長帯の紫外線が当該指導補助光源に照射されるのを実質的に阻害する第二光学フィルタを有しているため、点灯後のエキシマランプから出射される第一波長帯の紫外線が始動補助光源側に進行してきても、この紫外線はエキシマランプ側に戻される。これにより、LED光源で構成される始動補助光源の劣化の進行が抑制される。
【0029】
なお、このような第二光学フィルタとしては、例えば、第二波長帯の紫外線については実質的に透過する一方、第一波長帯の紫外線を実質的に反射する機能を示すものとしても構わない。また、別の例として、第二光学フィルタとしては、第二波長帯の紫外線については実質的に透過する一方、第一波長帯の紫外線を実質的に吸収する機能を示すものとしても構わない。
【0030】
前記紫外線照射装置の別の態様として、
前記エキシマランプは、当該エキシマランプを構成する管体の外壁に形成され、且つ、前記管体の管軸方向に離間して配置された一対の電極を有し、
前記始動補助光源は、前記光取り出し面に対して直交する方向から見たときに、前記管軸方向に関して前記一対の電極よりも外側の位置に配置されているものとしても構わない。
【0031】
かかる構成によれば、点灯後のエキシマランプから出射される第一波長帯の紫外線は、始動補助光源に対して照射されにくい。このため、始動補助光源がLED光源で構成されている場合であっても、始動補助光源が経時的に劣化しにくくなる。
【0032】
前記ランプハウスは、前記光取り出し面を除く少なくとも1つの面の内壁が、前記第二波長帯の紫外線を実質的に反射する材料で構成されているものとしても構わない。
【0033】
かかる構成によれば、始動補助光源から出射された第二波長帯の紫外線の一部を、ランプハウスの内壁面で反射させてエキシマランプの発光空間に導くことができる。これにより、エキシマランプの始動性が更に高められる。
【0034】
前記紫外線照射装置は、前記ランプハウスの壁面の一部に設けられた透光窓を有し、
前記始動補助光源は、前記光出射面を前記透光窓に対向させた状態で、前記ランプハウスの外側において前記ランプハウスの前記壁面に固定して配置されているものとしても構わない。
【0035】
なお、前記始動補助光源は、前記第二波長帯の紫外線を出射する低圧水銀ランプで構成されていても構わない。低圧水銀ランプは、エキシマランプと比べて極めて始動性に優れているため、エキシマランプの始動補助光源として利用することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、主たる発光波長が190nm以上、230nm以下の波長帯(第一波長帯)に属するエキシマランプを含みながらも、始動性の高い紫外線照射装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の紫外線照射装置の第一実施形態の構成を模式的に示す断面図である。
図2図1に示すエキシマランプをX方向に見たときの模式的な平面図である。
図3図1に示す1本のエキシマランプをZ方向に見たときの模式的な平面図である。
図4】発光ガスにKrClが含まれる場合における、エキシマランプから出射される紫外線L1のスペクトルの一例である。
図5】検証用に用いられた紫外線照射装置の構造を模式的に示す図面である。
図6】エキシマランプ及び始動補助光源から出射される紫外線(L1,L2)の進行の態様を模式的に示す図面である。
図7】第一光学フィルタの透過スペクトルの一例を示すグラフである。
図8】第一光学フィルタの反射スペクトルの一例を示すグラフである。
図9A】エキシマランプ及び始動補助光源から出射される紫外線(L1,L2)の進行の態様を模式的に示す図面である。
図9B】エキシマランプ及び始動補助光源から出射される紫外線(L1,L2)の進行の別の態様を模式的に示す図面である。
図10】本発明の紫外線照射装置の第二実施形態の構成を模式的に示す断面図である。
図11】本発明の紫外線照射装置の第二実施形態の構成を模式的に示す断面図である。
図12】本発明の紫外線照射装置の第二実施形態の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明に係る紫外線照射装置の各実施形態につき、適宜図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比と実際の寸法比は必ずしも一致していない。また、各図面間においても、寸法比は必ずしも一致していない。
【0039】
[第一実施形態]
本発明に係る紫外線照射装置の第一実施形態について説明する。
【0040】
図1は、本実施形態の紫外線照射装置の構成の一例を模式的に示す断面図である。図1に示すように、紫外線照射装置1は、ランプハウス10と、ランプハウス10の内側に収容されたエキシマランプ3とを備える。なお、以下では、紫外線照射装置1が2つのエキシマランプ(3,3)を備える場合を例に挙げて説明するが、紫外線照射装置1が備えるエキシマランプ3の本数は2本に限られず、1本でも構わないし、3本以上でも構わない。
【0041】
本実施形態では、ランプハウス10は、ほぼ直方体の形状を呈しており、内側にエキシマランプ3などを収容できるように、中空の空間を有している。そして、ランプハウス10の1つの面10aは、エキシマランプ3から出射される紫外線L1をランプハウス10の外側に取り出すための、光取り出し面を構成する。この面10a(以下、「光取り出し面10a」と呼ぶ。)には、第一光学フィルタ21が形成されている。第一光学フィルタ21の特性については、後述される。
【0042】
以下の説明では、ランプハウス10から紫外線L1が取り出される方向をX方向とし、このX方向に直交する平面をYZ平面とする、XYZ座標系が適宜参照される。なお、本実施形態では、Y方向を管軸方向とする2つのエキシマランプ(3,3)が、Z方向に離間して配置されている場合を例に挙げて説明する。
【0043】
図2は、エキシマランプ3をX方向に見たときの模式的な平面図である。管軸方向をY方向とする各エキシマランプ3の外壁には、Y方向に離間した一対の電極(9,9)が形成されている。図1では、一対の電極(9,9)のうちの一方の電極9のみが図示されている。
【0044】
紫外線照射装置1は、始動補助光源5を備える。本実施形態では、始動補助光源5は、LED光源であり、主たる発光波長が250nm以上、300nm以下の第二波長帯に属する紫外線L2(図6参照)を出射する。一例として、始動補助光源5はピーク波長が280nmのLED光源である。本実施形態において、始動補助光源5は、ランプハウス10の外側であって、ランプハウス10の外壁に固定されている。ランプハウス10は、始動補助光源5の光出射面に対向する位置に、透光窓11が形成されている。始動補助光源5から出射された紫外線L2は、透光窓11を介してランプハウス10の内側に入射される。透光窓11は、紫外線L2を透過する材料膜で構成されていても構わないし、単なる開口でも構わない。
【0045】
図3は、エキシマランプ3と、電極(9,9)との位置関係を模式的に示す図面であり、エキシマランプ3をZ方向に見たときの模式的な平面図に対応する。
【0046】
上述したように、エキシマランプ3は、Y方向を管軸方向とする管体30を有する。この管体30の外壁面に、Y方向に離間した位置で、一対の電極(9,9)が接触している。管体30には、発光ガス3Gが封入されている。一対の電極(9,9)の間に、例えば10kHz~5MHz程度の高周波の交流電圧が印加されると、管体30を介して発光ガス3Gに対して前記電圧が印加される。このとき、発光ガス3Gが封入されている放電空間内で放電プラズマが生じ、発光ガス3Gの原子が励起されてエキシマ状態となり、この原子が基底状態に移行する際にエキシマ発光を生じる。
【0047】
発光ガス3Gは、エキシマ発光時に、主たる発光波長が190nm以上、230nm以下の第一波長帯に属する紫外線L1を出射する材料からなる。一例として、発光ガス3Gとしては、KrCl、KrBr、ArFが含まれる。なお、前記のガス種に加えて、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)などの不活性ガスが混合されていても構わない。
【0048】
例えば、発光ガス3GにKrClが含まれる場合には、エキシマランプ3から主たる発光波長が222nm近傍の紫外線L1が出射される。発光ガス3GにKrBrが含まれる場合には、エキシマランプ3からは、主たる発光波長が207nm近傍の紫外線L1が出射される。発光ガス3GにArFが含まれる場合には、エキシマランプ3からは、主たる発光波長が193nm近傍の紫外線L1が出射される。図4は、発光ガス3GにKrClが含まれる、エキシマランプ3から出射される紫外線L1のスペクトルの一例である。
【0049】
ところで、発光ガス3Gとして、上記のKrCl、KrBr、ArFなどのガス種が含まれる場合、単に一対の電極(9,9)の間に電圧を印加しただけでは、時間が経過しても管体30内で放電が開始されない。そこで、本実施形態の紫外線照射装置1は、始動補助光源5を有している。始動補助光源5から出射される紫外線L2が、ランプハウス10内のエキシマランプ3に照射されることで、放電が開始しやすくなる。
【0050】
特に、始動補助光源5から出射される紫外線L2を、主たる発光波長が250nm以上、300nm以下の第二波長帯に属する紫外線とすることで、エキシマランプ3の始動性が極めて向上する。一対の電極(9,9)の間に電圧を印加しつつ、これらの波長帯に属する紫外線L2をエキシマランプ3に対して照射することで、1秒以内、遅くとも数秒以内にはエキシマランプ3を点灯させることができる。この点につき、検証結果を参照して説明する。
【0051】
図5は、検証用の装置構成を、図2にならって模式的に図示した図面である。検証用の紫外線照射装置1aは、上述したエキシマランプ3を4本備えるとともに、各エキシマランプ3に対して電圧を印加するための一対の電極(9,9)、及び始動補助光源5としてのLED光源15を備える。LED光源15は、LED実装基板16上に搭載されている。
【0052】
エキシマランプ3としては、クリプトン(Kr)と塩素(Cl2)を含む発光ガス3Gが封入されたものが利用された。このときの封入ガス圧は10kPaとされた。
【0053】
LED光源15としては、発光波長の異なる5種類の光源が準備された。
【0054】
LED光源15に対して20mAの電流を供給して発光させ、LED光源15からの光(LED光L15)を、エキシマランプ3に向けて出射させた。この状態で、各エキシマランプ3に対して、4kV、70kHz程度の高周波交流電圧を印加することで、始動遅れ時間を測定した。なお、比較例として、LED光源15を点灯せずに同様の検証が行われた。この結果を、下記表1に示す。なお、表1において、LED光L15の波長とは、LED光源15から出射されたLED光L15のピーク波長に対応する。
【0055】
【表1】
【0056】
上記表1の結果によれば、LED光L15の波長をUVC領域に属する280nmとした場合には、電圧印加を開始してから即時にエキシマランプ3が点灯した。一方、LED光L15を白色光とした場合や、ピーク波長を470±5nm、405nm、365nmとした場合には、LED光源15を点灯しなかった場合と同様、電圧印加を開始してから、60秒以上経過してもエキシマランプ3を点灯させることができなかった。
【0057】
この理由について、本発明者は以下のように推察している。
【0058】
上述したように、エキシマランプ3に封入されている発光ガス3Gには、塩素などのハロゲンが含まれる。ハロゲンは電子付着性が強く、放電空間内の電子を奪いやすい。このため、ハロゲンを含む発光ガス3Gが封入されたエキシマランプ3は、始動性が悪くなりやすい。かかる観点から、ハロゲン分子(ここでは塩素分子)を励起・解離できれば、放電空間内の電子を奪いにくくなり、エキシマランプの始動性が向上すると考えられる。
【0059】
塩素分子のエネルギー準位図より、塩素分子の励起、解離エネルギーは4.1eV以上と想定され、これを波長換算すると300nm以下となる。よって、発光波長が300nm以下のLED光源15からLED光L15をエキシマランプ3に照射して、エキシマランプ3内の発光ガス3Gに含まれる塩素ガスを光励起させることにより、エキシマランプ3の始動性が著しく改善したものと推察される。すなわち、主たる発光波長が250nm以上、300nm以下の第二波長帯に属する紫外線L2をエキシマランプ3に照射することで、エキシマランプ3の始動性を高めることができる。
【0060】
他方、LED光L15を白色光とした場合や、LED光L15のピーク波長を470±5nm、405nm、365nmとした場合には、エキシマランプ3内に入射される光エネルギーが塩素分子の励起、解離エネルギーに達せず、エキシマランプ3の始動性を高める効果が得られなかったものと考えられる。
【0061】
しかしながら、上記第二波長帯に属する紫外線L2は、人体に対して影響がある波長であるとされている。かかる観点から、紫外線照射装置1は、この紫外線L2をランプハウス10の外側に出射しにくくするために、光取り出し面10aに第一光学フィルタ21を備えている。図6は、エキシマランプ3及び始動補助光源5から出射される紫外線(L1,L2)の進行の態様を模式的に示す図面である。
【0062】
第一光学フィルタ21は、エキシマランプ3から出射される、第一波長帯の紫外線L1については実質的に透過する一方、始動補助光源5から出射される、第二波長帯の紫外線L2については実質的に反射する特性を有している。このような第一光学フィルタ21は、屈折率の異なる複数の誘電体多層膜で実現される。
【0063】
図7は、第一光学フィルタ21の透過スペクトルの一例を示すグラフであり、図8は、第一光学フィルタ21の反射スペクトルの一例を示すグラフである。図7のグラフは、第一光学フィルタ21に対して入射した光の強度と、第一光学フィルタ21から出射された光の強度の比率を波長毎に測定したものである。また、図8のグラフは、第一光学フィルタ21に対して入射した光の強度と、第一光学フィルタ21で反射された光の強度の比率を波長毎に測定したものである。
【0064】
誘電体多層膜で形成された第一光学フィルタ21は、入射角に依存して光の透過率や反射率が変化する。このため、図7及び図8では、第一光学フィルタ21に対して入射される光の入射角毎に、スペクトルが示されている。ただし、発光部と受光部を同じ光軸上に配置できないため、図8のグラフにおいて入射角が0°の場合のデータは図示されていない。
【0065】
図7及び図8に示す特性を有する第一光学フィルタ21は、エキシマランプ3の発光ガス3GがKrClを含む場合、すなわち、エキシマランプ3が主たる発光波長222nmの紫外線L1を発する場合を想定して設計されたものである。
【0066】
図7によれば、この第一光学フィルタ21は、入射角が20°以内で波長222nmの紫外線L1が入射された場合、60%以上、より詳細には約80%以上の透過率を示す。入射角が30°以内で入射された場合であっても、約40%以上の透過率を示すことが分かる。なお、エキシマランプ3から出射される紫外線L1の主たる発光波長が207nmの場合には、入射角が20°以内で入射された波長207nmの紫外線L1に対して、60%以上の透過率を示すように設計すればよい。同様に、エキシマランプ3から出射される紫外線L1の主たる発光波長が193nmの場合には、入射角が20°以内で入射された波長193nmの紫外線L1に対して、60%以上の透過率を示すように設計すればよい。
【0067】
また、図8によれば、この第一光学フィルタ21は、入射角が30°以内で入射された、250nm以上、300nm以下の第二波長帯に属する紫外線L2に対しては、90%以上、より詳細には95%以上の反射率を示すことが分かる。
【0068】
図6に模式的に示すように、始動補助光源5から出射された、250nm以上、300nm以下の第二波長帯に属する紫外線L2は、エキシマランプ3に照射されて始動補助に利用される。また、X方向に進行した紫外線L2は、光取り出し面10a側(図1参照)に設けられた第一光学フィルタ21に入射されると、そのほとんどがこの第一光学フィルタ21で反射する。この結果、反射光についても、エキシマランプ3の始動補助に利用できると共に、ランプハウス10の外側に放射されることが抑制される。
【0069】
また、紫外線L2によって点灯補助がされることで、放電が開始したエキシマランプ3は、190nm以上、230nm以下の第一波長帯に属する紫外線L1を出射する。第一光学フィルタ21は、この紫外線L1に対しては高い透過性を示すため、光取り出し面10a側(図1参照)に設けられた第一光学フィルタ21に入射されると、そのまま第一光学フィルタ21を透過する。
【0070】
よって、紫外線照射装置1によれば、利用したい190nm以上、230nm以下の第一波長帯に属する紫外線L1については、ランプハウス10の外側に高い強度で放射しつつ、人体に対して影響を及ぼすリスクが存在する、250nm以上、300nm以下の第二波長帯に属する紫外線L2については、ランプハウス10の外側に放射されることが抑制される。
【0071】
なお、本実施形態の紫外線照射装置1は、始動補助光源5の光出射面5a側に、紫外線L1の透過を抑制する第二光学フィルタ22を備えるものとしても構わない(図9A図9B参照)。図9Aに示す例では、第二光学フィルタ22は、第一光学フィルタ21とは異なり、第二波長帯に属する紫外線L2を実質的に透過する一方、第一波長帯に属する紫外線L1を実質的に反射するように設計されている。第二光学フィルタ22も、第一光学フィルタ21と同様に、屈折率の異なる複数の誘電体多層膜で実現される。
【0072】
上述したように、本実施形態の紫外線照射装置1は、X方向から見たときに、Y方向に離間した一対の電極(9,9)の間の位置に、始動補助光源5が設けられている。かかる位置に始動補助光源5が配置されていることで、始動補助光源5から出射された紫外線L2は、エキシマランプ3の一対の電極(9,9)で挟まれた領域、すなわち発光空間に高い強度で照射されやすい。この結果、エキシマランプ3の高い始動性が奏される。
【0073】
一方で、エキシマランプ3が点灯を開始した後は、190nm以上、230nm以下の第一波長帯に属する紫外線L1の一部が、始動補助光源5側に進行する。始動補助光源5がLED光源である場合、LED素子は樹脂封止されているのが一般的であるため、この紫外線L1が照射されることで、経時的に樹脂が劣化するおそれがある。
【0074】
しかし、図9Aに示すように、始動補助光源5が、光出射面5a側に第二光学フィルタ22を有することで、エキシマランプ3から出射して始動補助光源5側に進行してきた紫外線L1を、始動補助光源5の光出射面5aで反射させることができる。この結果、紫外線L1が始動補助光源5に照射されるのを阻害できるため、指導補助光源5の劣化を抑制できる。なお、第二光学フィルタ22は、始動補助光源5から出射される、第二波長帯の紫外線L2については実質的に透過するため、エキシマランプ3に対する始動補助の機能は依然として担保される。
【0075】
また、始動補助光源5の光出射面5aに設けられた第二光学フィルタ22によって、エキシマランプ3から出射された、第一波長帯の紫外線L1が反射されることで、光取り出し面10a側に進行方向を変換できる。これにより、紫外線照射装置1から取り出される紫外線L1の光強度が向上する。
【0076】
別の例として、図9Bに示すように、第二光学フィルタ22を第一波長帯の紫外線L1については吸収するような設計とすることもできる。かかる場合であっても、紫外線L1が始動補助光源5に照射されるのを阻害できるため、指導補助光源5の劣化を抑制できる。この場合においても、第二光学フィルタ22は、始動補助光源5から出射される、第二波長帯の紫外線L2については実質的に透過するため、エキシマランプ3に対する始動補助の機能は依然として担保される。
【0077】
なお、ランプハウス10の壁面や、電極(9,9)についても、第一波長帯の紫外線L1に対する反射率の高い材料で構成されているものとしても構わない。一例として、ランプハウス10の壁面や、電極(9,9)を、Alやステンレスなどの金属や合金製とすることができる。
【0078】
[第二実施形態]
本発明に係る紫外線照射装置の第二実施形態について、第一実施形態と異なる箇所を主として説明する。なお、第一実施形態と共通の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜割愛する。
【0079】
図10は、本実施形態の紫外線照射装置の構成の一例を模式的に示す断面図である。第一実施形態の紫外線照射装置1では、X方向から見たときに、始動補助光源5がY方向に離間した一対の電極(9,9)の間の位置に配置されていた。これに対し、本実施形態では、X方向から見たときに、始動補助光源5は、電極(9,9)よりもY方向に関して外側に位置している点が異なる。
【0080】
かかる構成であっても、光取り出し面10aに形成される第一光学フィルタ21が、始動補助光源5から出射される第二波長帯の紫外線L2に対して、実質的に反射する特性を有しているため、エキシマランプ3の発光空間内に、紫外線L2を導くことができる。この結果、エキシマランプ3の始動性が向上する。また、第一実施形態と同様、第一光学フィルタ21を備えることで、人体に対して影響を及ぼすリスクが存在する波長帯である、第二波長帯の紫外線L2が、ランプハウス10の外側に放射されることが抑制される。
【0081】
また、第一実施形態の構成とは異なり、本実施形態の場合、エキシマランプ3の発光空間から離れた位置に始動補助光源5が配置されている。このため、第一実施形態の構成と比べて、点灯後のエキシマランプ3から出射された第一波長帯の紫外線L1が始動補助光源5に照射されにくい。従って、図9を参照して上述したような、第二光学フィルタ22を始動補助光源5の光出射面5aに設けていなくても、始動補助光源5の劣化が進行しにくいという効果が得られる。
【0082】
なお、図10では、紫外線L2が第一光学フィルタ21及び電極9で反射した後にエキシマランプ3の発光空間内に導かれる場合が示されているが、始動補助光源5から直接エキシマランプ3の発光空間内に紫外線L2が照射されても構わないし、第一光学フィルタ21で1回反射した後にエキシマランプ3の発光空間内に紫外線L2が照射されても構わない。
【0083】
図11は、本実施形態の紫外線照射装置の構成の別の一例を模式的に示す断面図である。図11に示すように、X方向に関して、エキシマランプ3が配置されている位置と同じ位置に始動補助光源5を配置することで、始動補助光源5から出射された紫外線L2を直接エキシマランプ3の発光空間に導きやすくなる。また、始動補助光源5から光取り出し面10a側に向かって進行した第二波長帯の紫外線L2については、第一光学フィルタ21で反射されるため、エキシマランプ3の発光空間内に導くことができると共に、ランプハウス10の外側に放射されることが抑制される。
【0084】
更に、図12に示すように、始動補助光源5をランプハウス10の内側に配置しても構わない。図12に示す例では、始動補助光源5がランプハウス10の内壁に固定されている。なお、図10に示す構成や、図1に示す構成においても、同様に始動補助光源5をランプハウス10の内側に配置しても構わない。
【0085】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0086】
〈1〉上記各実施形態では、始動補助光源5がLED光源である場合について説明した。しかし、始動補助光源5は、主たる発光波長が250nm以上、300nm以下の第二波長帯に属する紫外線L2を出射する光源であって、エキシマランプ3よりも始動性の速い光源である限りにおいて、任意である。LED光源以外の例として、始動補助光源5を低圧水銀ランプで構成することができる。
【0087】
〈2〉図3を参照して上述した、エキシマランプ3の構成はあくまで一例である。エキシマランプ3は、主たる発光波長が190nm以上230nm以下の第一波長帯に属する紫外線L1を出射する限りにおいて、その構造は任意である。一例として、エキシマランプ3は、同心円状に管体が二重に設けられ、内側管と外側管の間に発光ガス3Gが封入される構造であっても構わない(二重管構造)。また、別の例として、エキシマランプ3は、発光ガス3Gが封入された単一の管体の内部と外側に電極が設けられた構造(一重管構造)であっても構わないし、発光ガス3Gが封入された、矩形上の面を有する管体の向かい合う2面に電極が設けられた構造(扁平管構造)であっても構わない。
【0088】
〈3〉上記実施形態では、第一光学フィルタ21がランプハウス10の光取り出し面10aに設けられている場合について説明した。しかし、第一光学フィルタ21が設けられる箇所は光取り出し面10aには限られず、ランプハウス10内において、エキシマランプ3から出射される紫外線L1が通過する箇所に設けられていれば同様の効果を奏する。
【0089】
〈4〉上記実施形態では、紫外線照射装置1が第一光学フィルタ21を備える場合について説明した。しかし、例えば人間が同一空間内に存在しない場合に限って紫外線照射装置1を稼働させる場合など、始動補助光源5から出射される第二波長帯の紫外線を照射空間内に放射することが許容される等の事情がある場合には、紫外線照射装置1は必ずしも第一光学フィルタ21を備えなくても構わない。
【符号の説明】
【0090】
1 : 紫外線照射装置
1a : 検証用の紫外線照射装置
3 : エキシマランプ
3G : 発光ガス
5 : 始動補助光源
5a : 始動補助光源の光出射面
9 : 電極
10 : ランプハウス
10a : 光取り出し面
11 : 透光窓
15 : LED光源
16 : LED実装基板
21 : 第一光学フィルタ
22 : 第二光学フィルタ
30 : 管体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12