(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】建物の壁補強構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20220208BHJP
【FI】
E04B1/94 L
(21)【出願番号】P 2017229048
(22)【出願日】2017-11-29
【審査請求日】2020-09-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】松本 清一郎
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-243176(JP,A)
【文献】特開平10-131288(JP,A)
【文献】特開昭62-206140(JP,A)
【文献】特開2003-171988(JP,A)
【文献】特開2015-94092(JP,A)
【文献】特開2007-308969(JP,A)
【文献】特開2010-071021(JP,A)
【文献】特開2003-064813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
E04B 2/56-2/70
E04B 2/72-2/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の壁部における骨格の一部を構成しかつ建物上下方向に延在すると共に、所定の方向に複数連なって配置された鉄骨柱と、
建物上下方向に延在する角筒状とされると共に、前記鉄骨柱に対して固定されたスタッドと、
前記スタッドに第1ビスで屋内側から取り付けられて複数の前記鉄骨柱を屋内側から覆う耐火材と、
前記耐火材の屋内側に当該耐火材と重ねて配置され、前記スタッドに第2ビスで取り付けられると共に、耐火性を有する材質で構成された内壁材と、
前記内壁材の屋内側に当該内壁材と重ねて配置され、前記スタッドに第3ビスで取り付けられると共に、当該内壁材の材質よりも靭性が高い材質で構成された補強壁材と、
を有
し、
前記鉄骨柱は、角鋼管で構成されると共に、屋内側に面する第1壁面部と、当該第1壁面部と直交する第2壁面部とを備え、
前記第2壁面部に取付可能とされた第1取付片部と、当該第1取付片部から当該第1取付片部と直交して延びると共に前記スタッドを取付可能とされた第2取付片部とを備えたブラケットをさらに備え、
前記補強壁材は、ラワン合板で構成されている、
建物の壁補強構造。
【請求項2】
前記スタッドは、前記所定の方向に複数連なって配置されており、
前記スタッドの上端部同士は、前記所定の方向に延在するランナーで連結されていると共に、
前記ランナーは、前記鉄骨柱の上端部同士を連結する天井大梁に対して固定されている、
請求項
1に記載の建物の壁補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、建物壁部の耐火構造に関する発明が開示されている。この建物壁部の耐火構造では、建物の壁部の骨格を構成すると共に断面形状がI型とされた鉄骨柱における両フランジ部の側面とウェブ部の屋内側の面とが共通の耐火被覆材によって覆われると共に、この耐火被覆材が耐火面材によって屋内側から覆われている。このため、建物の壁部の耐火性能を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された建物壁部の耐火構造では、耐火面材が石膏ボードで構成されていると共に、この耐火面材によって建物の壁部における屋内側の壁面が構成されており、この壁部における屋内側の面にねじ等を用いて重量物を取り付けることが困難である。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、耐火性能を確保しつつ、建物の壁部における屋内側の壁面に重量物を取り付けることができる建物の壁補強構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る建物の壁補強構造は、建物の壁部における骨格の一部を構成しかつ建物上下方向に延在すると共に、所定の方向に複数連なって配置された鉄骨柱と、建物上下方向に延在すると共に、前記鉄骨柱に対して固定されたスタッドと、前記スタッドに屋内側から取り付けられて複数の前記鉄骨柱を屋内側から覆う耐火材と、前記耐火材の屋内側に当該耐火材と重ねて配置され、前記スタッドに取り付けられると共に、耐火性を有する材質で構成された板状の内壁材と、前記内壁材の屋内側に当該内壁材と重ねて配置され、前記スタッドに取り付けられると共に、当該内壁材の材質よりも靭性が高い材質で構成された補強壁材と、を有している。
【0007】
第1の態様に係る建物の壁補強構造では、建物の壁部における骨格の一部が複数の鉄骨柱によって構成されており、当該鉄骨柱は、建物上下方向に延在すると共に所定の方向に連なって配置されている。また、鉄骨柱に対してスタッドが固定されており、当該スタッドは、建物上下方向に延在している。
【0008】
このスタッドには、屋内側から耐火材が取り付けられており、当該耐火材によって複数の鉄骨柱が屋内側から覆われている。そして、耐火材の屋内側には、耐火性を有する材質で構成された内壁材が、当該耐火材と重ねて配置されると共に、スタッドに取り付けられている。このため、本態様では、耐火材に向かう火や熱に対する耐火性能を確保することができる。
【0009】
ところで、耐火性を有する材質で構成された内壁材によって建物の壁部における屋内側の壁面が構成されている場合、当該壁面にねじ等を用いて重量物を取り付けることが困難となることが考えられる。
【0010】
ここで、本態様では、補強壁材が、内壁材の屋内側に当該内壁材と重ねて配置されると共に、スタッドに取り付けられており、当該補強壁材によって建物の壁部における屋内側の壁面を構成することができる。そして、補強壁材は、内壁材よりも靭性が高い材質で構成されており、当該内壁材で建物の壁部における屋内側の壁面を構成する構成と比し、当該壁面にねじ等を用いて重量物を取り付けることが容易となる。
【0011】
第2の態様に係る建物の壁補強構造は、第1の態様に係る建物の壁補強構造において、前記鉄骨柱は、角鋼管で構成されると共に、屋内側に面する第1壁面部と、当該第1壁面部と直交する第2壁面部とを備え、前記スタッドは、角筒状とされると共に、前記第2壁面部に取付可能とされた第1取付片部と、当該第1取付片部から当該第1取付片部と直交して延びると共に前記スタッドを取付可能とされた第2取付片部とを備えたブラケットをさらに備え、前記補強壁材は、ラワン合板で構成されている。
【0012】
第2の態様に係る建物の壁補強構造では、鉄骨柱が角鋼管で構成されており、当該鉄骨柱は、屋内側に面する第1壁面部と、当該第1壁面部と直交する第2壁面部とを備えている。そして、鉄骨柱の第2壁面部には、ブラケットの第1取付片部が取り付けられており、当該第1取付片部から当該第1取付片部と直交して延びる当該ブラケットの第2取付片部には、スタッドが取り付けられている。
【0013】
ところで、鉄骨柱の断面形状がI型とされている場合、ブラケットの第1取付片部を鉄骨柱のウェブ部に取り付けた状態において、当該鉄骨柱のフランジ部の板厚方向から見て、スタッドがフランジ部に隠れていない状態とされている必要がある。そして、施工時にこのような状態になる確度を高めるためには、鉄骨柱に予めブラケットを取り付けた上で、当該ブラケットにスタッドを取り付けることが好ましい。
【0014】
一方で、施工性の観点からは、スタッドにブラケットを取り付けた状態で第1取付片部を鉄骨柱に取付可能とされていることが好ましい。しかしながら、鉄骨柱の断面形状がI型とされていると、スタッドの第2取付片部に対する取付位置の如何によって、当該スタッドが鉄骨柱のフランジ部の板厚方向から見て当該フランジ部に隠れてしまうことが考えられる。
【0015】
この点、本態様では、スタッドにブラケットを予め取り付けた状態で当該ブラケットを鉄骨柱に取り付けても、第1壁面部と対向する方向から見て、当該スタッドが当該鉄骨柱に隠れることがない。しかも、第1壁面部を基準とすることでスタッドの位置決めを容易に行うことができ、ひいては、建物の壁部における屋内側の壁面の位置決めを容易に行うことができる。
【0016】
また、本態様では、補強壁材がラワン合板で構成されており、当該補強壁材の靭性を確保しつつ、当該補強壁材を安価な材料で構成することができる。
【0017】
第3の態様に係る建物の壁補強構造は、第1の態様又は第2の態様に係る建物の壁補強構造において、前記スタッドは、前記所定の方向に複数連なって配置されており、前記スタッドの上端部同士は、前記所定の方向に延在するランナーで連結されていると共に、前記ランナーは、前記鉄骨柱の上端部同士を連結する天井大梁に対して固定されている。
【0018】
第3の態様に係る建物の壁補強構造では、スタッドが所定の方向、すなわち鉄骨柱が連なる方向と同じ方向に複数連なって配置されており、当該スタッドの上端部同士が当該所定の方向に延在するランナーで連結されている。また、ランナーは、鉄骨柱の上端部同士を連結する天井大梁に対して固定されている。このため、本態様では、補強壁材に取り付けられた重量物による荷重を鉄骨柱及び天井大梁で支持することができる。
【0019】
以上説明したように、第1の態様に係る建物の壁補強構造では、耐火性能を確保しつつ、建物の壁部における屋内側の壁面に重量物を取り付けることができるという優れた効果を有する。
【0020】
第2の態様に係る建物の壁補強構造では、施工性を向上させつつコスト低減を図ることができるという優れた効果を有する。
【0021】
第3の態様に係る建物の壁補強構造では、建物の壁部における屋内側の壁面に取り付け可能な重量物の重量の上限を引き上げることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態に係る建物の壁補強構造が適用された壁部の構成を示す平断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る建物の壁補強構造が適用された壁部における建物上方側の部分の構成を示す断面図(
図1の2-2線に沿って切断した状態を示す断面図)である。
【
図3】第1実施形態に係る建物の1階側の部分の構成を示す間取り図である。
【
図4】第2実施形態に係る建物の壁補強構造が適用された間仕切り壁の構成を示す平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1実施形態>
以下、
図1~
図3を用いて、本発明の第1実施形態に係る建物の壁補強構造について説明する。まず、本実施形態に係る「建物10」の全体構造について説明する。この建物10は、一例として、二階建の住宅とされており、
図3にその一部が示される一階部分12と図示しない二階部分とを含んで構成されている。
【0024】
建物10は、鉄骨軸組み工法により構築されており、当該建物10の躯体14は、
図1にその一部が示されるように、図示しない複数の鉄骨柱、ラチス柱16、複数の「天井大梁18」(
図2参照)及び図示しない複数の床大梁を含んで構成されている。天井大梁18は、I型鋼で構成されていると共に、鉄骨柱の上端部同士を連結しており、床大梁は、天井大梁と同じくI型鋼で構成されていると共に、鉄骨柱の下端部同士を連結している。
【0025】
ここで、本実施形態では、一階部分12のキッチン20と屋外側とを仕切る「壁部22」に本実施形態に係る建物の壁補強構造が適用されている。以下、本実施形態の要部である壁部22の構成について詳細に説明する。
【0026】
図1に示されるように、壁部22は、ラチス柱16を含んで構成されており、当該ラチス柱16によって、その骨格の一部が構成されている。ラチス柱16は、「鉄骨柱24、26」とラチス材28とを含んで構成されている。鉄骨柱24と鉄骨柱26とは、所定の方向に連なってかつ当該所定の方向に所定の間隔をあけて配置されており、これらは角鋼管で構成されていると共に、建物上下方向に延在している。また、鉄骨柱24、26は、その上端部同士が天井大梁18で連結されていると共に、その下端部同士が床大梁で連結されている。つまり、鉄骨柱24と鉄骨柱26とは、天井大梁18の延在方向に連なっている。
【0027】
鉄骨柱24は、キッチン20側(屋内側)に面する第1壁面部としての「壁面部24A」と、当該壁面部24Aと直交し、かつ鉄骨柱26に対向する第2壁面部としての「壁面部24B」とを備えている。一方、鉄骨柱26は、キッチン20側に面する第1壁面部としての「壁面部26A」と、当該壁面部26Aと直交し、かつ鉄骨柱24に対向する第2壁面部としての「壁面部26B」とを備えている。
【0028】
一方、ラチス材28は、鋼製とされており、鉄骨柱24の壁面部24Aの板厚方向から見て、壁面部24B、26B間をジグザグ状に屈折されつつ建物上下方向に延在する円柱状とされている。そして、ラチス材28は、当該ラチス柱16に接合された取付板部30を介して壁面部24B、26Bに接合されており、当該ラチス材28によって鉄骨柱24と鉄骨柱26とが連結された状態となっている。
【0029】
壁部22の屋外側の部分は、軽量気泡コンクリート(ALC)製の外壁材32が、複数枚配置されて構成されている。外壁材32は、屋外側から見て建物上下方向を長手方向とされた矩形の板状とされており、天井大梁18の延在方向に連なって配置されている。
【0030】
一方、壁部22のキッチン20側の部分は、「耐火材34」、「内壁材36」、「補強壁材38」及びこれらを支持する一対の「スタッド40」を含んで構成されている。
【0031】
スタッド40は、鉄骨柱24、26のそれぞれに対して配置されており、以下では、鉄骨柱24に対して配置されたものを例に挙げて、スタッド40並びにその周辺部の構成について説明することとする。スタッド40は、不燃材料(本実施形態では一例として鋼材)で構成されていると共に、建物上下方向に延在する角筒状とされている。このスタッド40は、鉄骨柱24と近接した位置、より具体的には、建物上下方向から見て、取付板部30と隣接する位置に配置されている。そして、スタッド40は、「ブラケット42」を介して鉄骨柱24に取り付けられている。
【0032】
ブラケット42は、「第1取付片部42A」と「第2取付片部42B」とを含んで、建物上下方向から見て、L字状に屈曲された板状とされている。より詳しくは、第1取付片部42Aは、板厚方向を鉄骨柱24の壁面部24Bの板厚方向とされ、かつ当該壁面部24Bに面接触された状態で、図示しない取付部材によって当該壁面部24Bに取り付けられている。
【0033】
一方、第2取付片部42Bは、第1取付片部42Aから当該第1取付片部42Aと直交して鉄骨柱26側に向かって延びている。そして、第2取付片部42Bの先端側には、スタッド40が、キッチン20側から面接触された状態で図示しない取付部材によって取り付けられている。
【0034】
耐火材34は、一例として、ケイ酸カルシウム板で板状に構成されており、鉄骨柱24、26をキッチン20側から覆うことが可能とされている。この耐火材34は、ビス44によってスタッド40に取り付けられている。
【0035】
内壁材36は、一例として、石膏ボードで耐火材34と同様の大きさとれた板状に構成されており、耐火材34のキッチン20側に当該耐火材34と重ねて配置されている。この内壁材36は、耐火材34と共に、ビス46によってスタッド40に取り付けられている。なお、内壁材36は、火山性ガラス質複層板等で構成されていてもよい。
【0036】
補強壁材38は、ケイ酸カルシウム板や石膏ボードよりも靭性が高い材質で構成されており、本実施形態では、一例として、補強壁材38がラワン合板で構成されている。この補強壁材38は、内壁材36と同様の大きさとされた板状とされており、内壁材36のキッチン20側に当該内壁材36と重ねて配置されている。そして、補強壁材38は、耐火材34及び内壁材36と共に、ビス48によってスタッド40に取り付けられると共に、壁部22のキッチン20側の壁面を構成している。なお、壁部22のキッチン20側の壁面には、
図3に示されるように、図示しない仕上げ材が貼り付けられていると共に、図示しない取付金具やビス等の取付部材によって食器棚50が取り付けられている。
【0037】
また、
図2に示されるように、スタッド40は、その上端部同士が、天井大梁18の延在方向に延びる「ランナー52」で連結されている。詳しくは、ランナー52は、その長手方向から見た断面形状が建物下方側に開放されたコ字状とされており、当該ランナー52には建物下方側からスタッド40の上端部が嵌合されている。
【0038】
一方、ランナー52の建物上方側には、ハンガー54が配置されており、当該ハンガー54は、建物内側から見て、スタッド40の延在方向一方側に開放されたコ字状に屈曲された板状とされている。そして、ハンガー54の建物下方側の部分を構成する下板部54Aは、図示しない取付部材でランナー52に取り付けられると共に、ハンガー54の建物上方側の部分を構成する上板部54Bは、全ネジボルト56及びナット58によって天井大梁18のフランジ部18Aに取り付けられている。つまり、本実施形態では、耐火材34、内壁材36、補強壁材38及びスタッド40が天井大梁18によっても支持されるようになっている。
【0039】
<本実施形態の作用及び効果>
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0040】
本実施形態では、
図1に示されるように、建物10の壁部22における骨格の一部が鉄骨柱24、26によって構成されており、当該鉄骨柱24、26は、建物上下方向に延在すると共に所定の方向に連なって配置されている。また、鉄骨柱24、26に対してスタッド40が固定されており、当該スタッド40は、不燃材料で構成されていると共に、建物上下方向に延在している。
【0041】
このスタッド40には、屋内側から板状の耐火材34が取り付けられており、当該耐火材34によって鉄骨柱24、26が屋内側から覆われている。そして、耐火材34の屋内側には、耐火性を有する材質で構成された板状の内壁材36が、当該耐火材34と重ねて配置されると共に、スタッド40に取り付けられている。このため、本実施形態では、耐火材34に向かう火や熱に対する耐火性能を確保することができる。
【0042】
ところで、石膏ボード等の耐火性を有する材質で構成された内壁材36によって壁部22における屋内側の壁面が構成されている場合、当該壁面にねじ等を用いて重量物を取り付けることが困難となることが考えられる。
【0043】
ここで、本実施形態では、補強壁材38が、内壁材36の屋内側に当該内壁材36と重ねて配置されると共に、スタッド40に取り付けられており、当該補強壁材38によって壁部22における屋内側の壁面を構成することができる。そして、補強壁材38は、内壁材36よりも靭性が高い材質で構成されており、当該内壁材36で壁部22における屋内側の壁面を構成する構成と比し、当該壁面にねじ等を用いて食器棚50等の重量物を取り付けることが容易となる。したがって、本実施形態では、建物10の壁部22の耐火性能を確保しつつ、壁部22における屋内側の壁面に重量物を取り付けることができる。
【0044】
また、本実施形態では、鉄骨柱24、26が角鋼管で構成されており、当該鉄骨柱24は、屋内側に面する壁面部24Aと、当該壁面部24Aと直交する壁面部24Bとを備えている。一方、鉄骨柱26は、屋内側に面する壁面部26Aと、当該壁面部26Aと直交する壁面部26Bとを備えている、そして、壁面部24B、26Bには、ブラケット42の第1取付片部42Aが取り付けられており、当該第1取付片部42Aから当該第1取付片部42Aと直交して延びる当該ブラケット42の第2取付片部42Bには、スタッド40が取り付けられている。
【0045】
ところで、鉄骨柱24、26の断面形状がI型とされている場合、ブラケット42の第1取付片部42Aを鉄骨柱24、26のウェブ部に取り付けた状態において、当該鉄骨柱24、26のフランジ部の板厚方向から見て、スタッド40がフランジ部に隠れていない状態とされている必要がある。そして、施工時にこのような状態になる確度を高めるためには、鉄骨柱24、26に予めブラケット42を取り付けた上で、当該ブラケット42にスタッド40を取り付けることが好ましい。
【0046】
一方で、施工性の観点からは、スタッド40にブラケット42を取り付けた状態で第1取付片部42Aを鉄骨柱24、26に取付可能とされていることが好ましい。しかしながら、鉄骨柱24、26の断面形状がI型とされていると、スタッド40の第2取付片部42Bに対する取付位置の如何によって、当該スタッド40が鉄骨柱24、26のフランジ部の板厚方向から見て当該フランジ部に隠れてしまうことが考えられる。
【0047】
この点、本実施形態では、スタッド40にブラケット42を予め取り付けた状態で当該ブラケット42を鉄骨柱24、26に取り付けても、壁面部24A、26Aと対向する方向から見て、スタッド40が鉄骨柱24、26に隠れることがない。しかも、壁面部24A、26Aを基準とすることでスタッド40の位置決めを容易に行うことができ、ひいては、壁部22における屋内側の壁面の位置決めを容易に行うことができる。さらに、ブラケット42を平板状に構成して、当該ブラケット42を壁面部24A、26Aに取り付けるような構成と比し、屋内側の壁面の位置を鉄骨柱24、26側に近付けることができるため、室内の空間を広く確保することができる。
【0048】
また、本実施形態では、補強壁材38がラワン合板で構成されており、当該補強壁材38の靭性を確保しつつ、当該補強壁材38を安価な材料で構成することができる。したがって、本実施形態では、施工性を向上させつつコスト低減を図ることができる。
【0049】
ところで、ラワン合板は、安価であるものの、補強壁材38をラワン合板で構成すると、補強壁材38に同じ形状のパーティクルボードやシナ合板を用いる場合と比し、補強壁材38の重量が増加することとなる。この点、本実施形態では、ブラケット42がL字状に屈曲された板状とされており、ブラケット42によって安定した状態で補強壁材38を支持することができる。
【0050】
さらに、本実施形態では、スタッド40が所定の方向、すなわち鉄骨柱24、26が連なる方向と同じ方向に複数連なって配置されており、当該スタッド40の上端部同士が当該所定の方向に延在するランナー52で連結されている。また、ランナー52は、鉄骨柱24、26の上端部同士を連結する天井大梁18に対して固定されている。このため、本実施形態では、補強壁材38に取り付けられた重量物による荷重を鉄骨柱24、26及び天井大梁18で支持することができる。したがって、本実施形態では、建物10の壁部22における屋内側の壁面に取り付け可能な重量物の重量の上限を引き上げることができる。
【0051】
<第2実施形態>
以下、
図3及び
図4を用いて、本発明の第2実施形態に係る建物の壁補強構造について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一構成部分については同一番号を付してその説明を省略する。
【0052】
本実施形態では、キッチン20と当該キッチン20と隣接する部屋60とを仕切る壁部としての「間仕切り壁62」に本実施形態に係る建物の壁補強構造が適用されている。
【0053】
具体的には、間仕切り壁62は、壁部22と同様にラチス柱16によって、その骨格の一部が構成されており、上述した第1実施形態と同様に、ラチス柱16の鉄骨柱24、26のそれぞれに対してスタッド40が固定されている。
【0054】
そして、スタッド40の屋内側、より具体的には、キッチン20側と部屋60側とのそれぞれには、耐火材34、内壁材36及び補強壁材38が、間仕切り壁62の厚さ方向中央側からこの順に取り付けられている。なお、ここでいう屋内側とは、間仕切り壁62の内側を基準として、当該間仕切り壁62で仕切られた部屋の内側を示している。
【0055】
また、本実施形態では、鉄骨柱24における壁面部24Bと反対側の壁面部24Cと、鉄骨柱26における壁面部26Bと反対側の壁面部26Cとのそれぞれに沿って、ケイ酸カルシウム板で板状に構成された耐火材64が配置されている。そして、鉄骨柱24、26及びスタッド40が耐火材34、64によって囲まれた状態となっている。なお、間仕切り壁62の構成を理解しやすくするため、
図4にはラチス材28及びブラケット42を図示していない。
【0056】
このような構成によれば、建物10の二階部分から間仕切り壁62の内側に入り込む火や熱風に対する間仕切り壁62の耐火性能を確保することができる。また、間仕切り壁62におけるキッチン20側の壁面及び部屋60側の壁面の両方に重量物を取り付けることができる。
【0057】
<上記実施形態の補足説明>
(1) 上述した実施形態では、キッチン20と屋外側とを仕切る壁部22に第1実施形態に係る建物の壁補強構造が適用されていると共に、キッチン20と部屋60とを仕切る間仕切り壁62に第2実施形態に係る建物の壁補強構造が適用されていたが、これに限らない。すなわち、キッチン20以外の部屋と屋外側とを仕切る壁部に第1実施形態に係る建物の壁補強構造が適用されていてもよいし、間仕切り壁62以外の間仕切り壁に第2実施形態に係る建物の壁補強構造が適用されていてもよい。そして、建物10の壁部及び間仕切り壁に第1実施形態及び第2実施形態に係る建物の壁補強構造を適宜適用することで、建物10の各壁部及び各間仕切り壁に対して重量物を配置することが可能となり、その結果、建物10の設計プランの自由度を向上させることができる。
【0058】
(2) また、上述した実施形態では、建物10の壁部22及び間仕切り壁62の骨格の一部がラチス柱16を含んで構成されていたが、これに限らない。例えば、壁部22及び間仕切り壁62の骨格を鉄骨柱24、26と同様の構成とされた複数の鉄骨柱のみで構成するような構成としてもよい。また、壁部22及び間仕切り壁62の骨格を構成する鉄骨柱の材料としては、ブラケット42の形状を平板状等に適宜変更することで、角鋼管以外にI形鋼やH形鋼も採用することが可能である。なお、耐火材34、内壁材36及び補強壁材38は、屋内側から3本以上の鉄骨柱を覆うことが可能な大きさとされていてもよい。
【0059】
(3) また、上述した実施形態では、鉄骨柱24、26のそれぞれに対してスタッド40が固定されていたが、これに限らず、ブラケットを鉄骨柱24、26間に架け渡し、当該ブラケットに1本のスタッド40を取り付けるような構成としてもよい。なお、スタッド40は、鉄骨柱24、26に直接取り付けられていてもよい。
【0060】
(4) また、上述した実施形態では、スタッド40が鋼材で構成されていたが、これに限らず、建物10の壁部や間仕切り壁の構成に応じて、角柱状の木材等で構成されていてもよい。
【0061】
(5) また、上述した実施形態では、補強壁材38がラワン合板で構成されていたが、これに限らず、壁部22や間仕切り壁62の配置箇所等に応じて、補強壁材38をパーティクルボードやシナ合板で構成してもよい。
【0062】
(6) 加えて、上述した実施形態では、耐火材34がケイ酸カルシウム板で板状に構成されていたが、これに限らない。例えば、耐火材34をグラスウール等でシート状に構成すると共に、当該耐火材34で鉄骨柱24、26を覆うような構成としてもよいし、鉄骨柱24、26及びスタッド40に耐火性を有する発泡剤等を吹き付けて耐火材34として用いてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 建物
18 天井大梁
22 壁部
24 鉄骨柱
24A 壁面部(第1壁面部)
24B 壁面部(第2壁面部)
26 鉄骨柱
26A 壁面部(第1壁面部)
26B 壁面部(第2壁面部)
34 耐火材
36 内壁材
38 補強壁材
40 スタッド
42 ブラケット
42A 第1取付片部
42B 第2取付片部
44 ビス(第1ビス)
46 ビス(第2ビス)
48 ビス(第3ビス)
52 ランナー
62 間仕切り壁(壁部)