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特許7020606保護フィルム用粘着剤組成物及び保護フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】保護フィルム用粘着剤組成物及び保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20220208BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20220208BHJP
   C09J 11/02 20060101ALI20220208BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220208BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
C09J133/00
C09J175/04
C09J11/02
C09J7/38
C09J11/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018017312
(22)【出願日】2018-02-02
(65)【公開番号】P2019035066
(43)【公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】P 2017156120
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】藤川 はる奈
(72)【発明者】
【氏名】吉原 悠
(72)【発明者】
【氏名】鴨井 彬
(72)【発明者】
【氏名】中野 宏人
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-128636(JP,A)
【文献】特開2013-185007(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0101987(KR,A)
【文献】特開2010-018813(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0024708(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0075008(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂(A)と、
イソシアネート化合物(B)と、
前記イソシアネート化合物(B)以外のポリシロキサン構造及びアルキレンオキシド構造を有するイソシアネート化合物(C)と、
帯電防止剤(D)と、を含み、
前記イソシアネート化合物(C)の含有量は、前記(メタ)アクリル系樹脂(A)100質量部に対して0.10質量部以上であ
前記イソシアネート化合物(C)は下記構造式(1)で表される構造を含む、保護フィルム用粘着剤組成物。
【化1】

[構造式(1)中、rは1~100の整数を表し、bは1~100の整数を表し、Xはイソシアネート基を含む1価の有機基を表す。]
【請求項2】
前記イソシアネート化合物(B)に対する前記イソシアネート化合物(C)の質量比[(C)/(B)]は、1/1~1/20である、請求項1に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記イソシアネート化合物(C)は下記一般式(1-1)で表される、請求項1又は請求項2に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
【化2】

[一般式(1-1)中、p又はqは、それぞれ独立に0~100の整数を表し、rは1~100の整数を表し、aは0~100の整数を表し、bは1~100の整数を表し、Xはイソシアネート基を含む1価の有機基を表す。]
【請求項4】
前記帯電防止剤(D)は、アルカリ金属塩又は有機塩である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項5】
光学部材に用いる、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項6】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の保護フィルム用粘着剤組成物の架橋物である粘着剤層と、基材と、を有する保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護フィルム用粘着剤組成物及び保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
保護フィルムは、例えば、液晶型表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)型表示装置などの表示装置に用いられる光学部材等を保護するために、広く用いられている。
保護フィルムは、光学部材の表面に積層されて、その光学部材の表面が汚染されたり損傷したりしないよう保護し、表面保護が不要となった段階で光学部材から剥離除去される。そのため、保護フィルムには、剥離後に光学部材(被着体)の表面を汚染しないこと(耐汚染性)が求められる。
【0003】
また、保護フィルムを光学部材から剥離する際に、静電気が発生すると、光学部材にほこり等の付着、液晶表示装置回路の破壊などの不具合が生じるため、保護フィルムには、剥離時に発生する静電気を防止できる性質(帯電防止性)が求められる。
【0004】
容易に剥離することができ、且つ、被着体の汚染が少ない粘着フィルムを形成可能な粘着剤組成物として、例えば、酸性基及び水酸基を有する(メタ)アクリル共重合体と、反応性基を有するジメチルポリシロキサン化合物と、架橋剤とを含む粘着剤組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照。)
帯電防止性に優れ、被保護体への汚染性が低減された粘着剤組成物として、アルカリ金属塩を含み、(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加物15重量%~100重量%を単量体成分として使用した粘着剤組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-160907号公報
【文献】特開2005-314579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、保護フィルムに対して、被着体の汚染防止に対する要求が向上している。発明者らが検討したところ、特許文献1に記載の粘着剤組成物に対して、更なる耐汚染性の改良が求められている。
耐汚染性を更に向上させる為には、例えば、ジメチルポリシロキサン化合物等の帯電防止助剤及び帯電防止剤の添加量を減らすことが考えられる。しかしながら、単に帯電防止助剤又は帯電防止剤の添加量を減らした場合、帯電防止性が低下する傾向があるため、保護フィルムを剥離除去した際に、静電気が発生しやすくなり、液晶表示装置等の不具合が生じる可能性がある。そのため、従来の粘着剤組成物では、耐汚染性と帯電防止性との両立を高いレベルで維持することが困難であった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、耐汚染性及び帯電防止性に優れる保護フィルム用粘着剤組成物並びに保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための具体的な手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 少なくとも架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂(A)と、
イソシアネート化合物(B)と、
前記イソシアネート化合物(B)以外のポリシロキサン構造及びアルキレンオキシド構造を有するイソシアネート化合物(C)と、
帯電防止剤(D)と、を含み、
前記イソシアネート化合物(C)の含有量は、前記(メタ)アクリル系樹脂(A)100質量部に対して0.10質量部以上である、保護フィルム用粘着剤組成物。
<2> 前記イソシアネート化合物(B)に対する前記イソシアネート化合物(C)の質量比[(C)/(B)]は、1/1~1/20である、<1>に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
<3> 前記イソシアネート化合物(C)は下記構造式(1)で表される構造を含む、<1>又は<2>に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
【0009】
【化1】
【0010】
構造式(1)中、rは1~100の整数を表し、bは1~100の整数を表し、Xはイソシアネート基を含む1価の有機基を表す。
【0011】
<4> 前記イソシアネート化合物(C)は下記一般式(1-1)で表される、<1>~<3>のいずれか1つに記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
【0012】
【化2】
【0013】
一般式(1-1)中、p又はqは、それぞれ独立に0~100の整数を表し、rは1~100の整数を表し、aは0~100の整数を表し、bは1~100の整数を表し、Xはイソシアネート基を含む1価の有機基を表す。
【0014】
<5> 前記帯電防止剤(D)は、アルカリ金属塩又は有機塩である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
<6> 光学部材に用いる、<1>~<5>のいずれか1つに記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
<7> <1>~<6>のいずれか1つに記載の保護フィルム用粘着剤組成物の架橋物である粘着剤層と、基材と、を有する保護フィルム。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、耐汚染性及び帯電防止性に優れる保護フィルム用粘着剤組成物並びに保護フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の粘着剤組成物について詳細に説明する。
なお、本発明において、数値範囲における「~」は、「~」の前後の数値を含むことを意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する該複数の物質の合計量を意味する。
【0017】
本明細書において、(メタ)アクリル系樹脂又は(メタ)アクリル系オリゴマーとは、これを構成する単量体のうち少なくとも主成分である単量体が(メタ)アクリロイル基を有する単量体が重合して形成された樹脂又はオリゴマーを意味する。
(メタ)アクリル系樹脂又は (メタ)アクリル系オリゴマーにおける主成分とは、樹脂又はオリゴマーを形成する単量体成分の中で最も含有率(質量%)が多いことを意味する。例えば、(メタ)アクリル系樹脂の場合、主成分となる(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位の50質量%以上であることをいう。
本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の少なくとも一方を意味する。
【0018】
≪保護フィルム用粘着剤組成物≫
本発明の保護フィルム用粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」ともいう。)は、少なくとも架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂(A)と、イソシアネート化合物(B)と、前記イソシアネート化合物(B)以外のポリシロキサン構造及びアルキレンオキシド構造を有するイソシアネート化合物(C)と、帯電防止剤(D)と、を含み、前記イソシアネート化合物(C)の含有率は、前記(メタ)アクリル系樹脂(A)100質量部に対して0.10質量部以上である。
【0019】
粘着剤組成物が上記構成を有していることで、耐汚染性及び帯電防止性に優れる粘着剤層を形成することが可能である。この理由は、明らかではないが、以下のように推測される。
【0020】
一般に、アルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物は帯電防止助剤として作用することが知られている。帯電防止剤とアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物とを含む粘着剤組成物を基材上に塗工して形成された粘着剤層は、塗工直後、シリコーン化合物中のアルキレンオキシド構造が帯電防止剤に配位した状態で粘着剤層の表面付近に局在するので、少量の帯電防止剤であっても帯電防止性が発揮されやすい。
一方、上記シリコーン化合物は、粘着剤層の表面付近に局在しやすいので、転着によって被着体の表面を汚染する要因の一つとなりやすいことが知られている。
【0021】
本発明の粘着剤組成物は、少なくとも架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂(A)と、一定量以上の、イソシアネート化合物(B)以外のポリシロキサン構造及びアルキレンオキシド構造を有するイソシアネート化合物(C)(以下、単に「シリコーン系イソシアネート化合物(C)」ともいう。)と、を形成された粘着剤層では、表面付近に、シリコーン系イソシアネート化合物(C)が局在し、次いで、シリコーン系イソシアネート化合物(C)中のイソシアネート(NCO)基と、(メタ)アクリル系樹脂(A)中の架橋性官能基とが反応して架橋構造を形成している。架橋構造の形成により、シリコーン系イソシアネート化合物(C)は、粘着剤層中にアンカーされた状態に保たれていると推察される。そのため、保護フィルムを被着体から剥離する際に、粘着剤組成物中に含まれる例えば、帯電防止剤及び帯電防止助剤(以下、「汚染成分」ともいう。)の被着体表面への転着を抑制することができ、本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層は優れた耐汚染性を発揮する。
また、シリコーン系イソシアネート化合物(C)は、分子中にポリシロキサン構造を有するため、表面自由エネルギーが低くなり(メタ)アクリル系樹脂(A)と相溶しにくく、シリコーン系イソシアネート化合物(C)は粘着剤層の表面付近に局在すると推察される。さらに、シリコーン系イソシアネート化合物(C)は、分子中にアルキレンオキシド構造を有するため、帯電防止助剤として一般的に用いられるアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物と同様に、帯電防止剤と配位する。そのため帯電防止剤を粘着剤層表面へ局在させることが可能となり、本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層は、少量の帯電防止剤でも優れた帯電防止性能を発揮する。
【0022】
以上より、本発明の粘着剤組成物は、耐汚染性及び帯電防止性に優れる粘着剤層の形成に適している。
以下、本発明の粘着剤組成物に用いられる各成分の詳細について説明する。
【0023】
<(メタ)アクリル系樹脂(A)>
粘着剤組成物は、少なくとも架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂(A)(以下、「特定(メタ)アクリル系樹脂」ともいう。)を有する。特定(メタ)アクリル系樹脂中の架橋性官能基は、後述するイソシアネート化合物(B)及びシリコーン系イソシアネート化合物(C)と反応して、架橋構造を形成する。シリコーン系イソシアネート化合物(C)が特定(メタ)アクリル系樹脂と反応して架橋構造を形成するので、シリコーン系イソシアネート化合物(C)は粘着剤層中にアンカーされた状態に保たれやすい。これにより、保護フィルムを剥離する際に、汚染成分が被着体に転着することを抑制し、粘着剤組成物より形成された粘着剤層は、耐汚染性に優れる。
【0024】
特定(メタ)アクリル系樹脂は、少なくとも、架橋性官能基を有する。特定(メタ)アクリル系樹脂は、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体を単独重合して形成された樹脂であってもよく、架橋性官能基を有さない(メタ)アクリロイル基を有する単量体と、架橋性官能基を有する単量体とを、付加重合反応により形成された樹脂であってもよい。
【0025】
架橋性官能基を有する単量体としては、後述するイソシアネート化合物(B)及びシリコーン系イソシアネート化合物(C)と架橋構造を形成可能であれば、特に制限はされない。
架橋性官能基を有する単量体としては、カルボキシ基、メチロール基、水酸基、グリシジル基、アミド基、アミノ基などを有する単量体が挙げられる。
これらの中でも、シリコーン系イソシアネート化合物(C)との反応性の観点から、架橋性官能基としては、カルボキシ基、水酸基、アミノ基及びグリシジル基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、カルボキシ基及び水酸基の少なくとも一方であることがより好ましい。
架橋性官能基を有する単量体は、1種を単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用してもよい。
【0026】
また、特定(メタ)アクリル系樹脂は、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位を2種以上含有することが好ましく、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位と水酸基を有する単量体に由来する構成単位とを含有することがより好ましい。
【0027】
カルボキシ基を有する単量体としては、特に制限はなく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フマル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,2-ジカルボキシシクロヘキサンモノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー及びω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
カルボキシ基を有する単量体は、1種を単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用してもよい。
【0028】
後述のシリコーン系イソシアネート化合物(C)との反応性の観点から、カルボキシ基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸及びω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、及びω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、アクリル酸が更に好ましい。
【0029】
水酸基を有する単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート及び3-メチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0030】
後述のシリコーン系イソシアネート化合物(C)との反応性の観点から、水酸基を有する単量体としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及び6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの少なくとも一方を含むことがより好ましい。
【0031】
架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特定(メタ)アクリル系樹脂の全構成単位に対して0.1質量%~10質量%であることが好ましい。
架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、0.1質量%~10質量%であると、後述するイソシアネート化合物(B)及びシリコーン系イソシアネート化合物(C)の少なくとも一方と反応して、架橋構造を十分に形成することができ、被着体への汚染成分の転着をより抑制することが可能となる。
上記観点から、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位の含有率としては、0.5質量%~8質量%であることが好ましく、1質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0032】
特定(メタ)アクリル系樹脂が、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位として、カルボキシ基を有する単量体を含む場合、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特定(メタ)アクリル系樹脂の全構成単位に対して、0.1質量%~5質量%であることが好ましい。
カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が0.1質量%~510質量%であると、後述するイソシアネート化合物(B)及びシリコーン系イソシアネート化合物(C)の少なくとも一方と反応して、架橋構造を十分に形成することができ、被着体への汚染成分の転着をより抑制することが可能となる。
上記観点から、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、0.2質量%~5質量%であることがより好ましく、0.3質量%~3質量%であることが更に好ましい。
【0033】
特定(メタ)アクリル系樹脂が、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位として、水酸基を有する単量体を有する場合、水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特定(メタ)アクリル系樹脂の全構成単位に対して、0.5質量%~10質量%であることが好ましい。
水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が0.5質量%~10質量%であると、後述するイソシアネート化合物(B)と反応して、架橋構造を十分に形成することができ、被着体への汚染成分の転着をより抑制することが可能となる。
上記観点から、水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、1質量%~9質量%であることがより好ましく、2質量%~8質量%であることが更に好ましい。
【0034】
特定(メタ)アクリル系樹脂は、上記架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位に加えて、更に、架橋性官能基を有さないアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含んでいてもよい。
特定(メタ)アクリル系樹脂が、架橋性官能基を有さないアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む場合、架橋性官能基を有さないアルキル(メタ)アクリレートとしては、無置換のアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましく、その種類は特に制限されない。
アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよい。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は、1~18の範囲であることが好ましく、1~12の範囲であることがより好ましい。アルキル基の炭素数が上記の範囲内であると、保護フィルムに適した接着性により優れる傾向がある。
【0035】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用してもよい。
【0036】
保護フィルムに適した接着性の観点から、アルキル(メタ)アクリレートとしては、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0037】
被着体に対する接着性を向上させる観点から、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有率としては、特定(メタ)アクリル系樹脂の全構成単位に対して、70.0質量%~99.99質量%であることが好ましく、85.0質量%~99.9質量%であることがより好ましく、80.0質量%~99.0質量%であることが更に好ましい。
【0038】
特定(メタ)アクリル系樹脂は、本発明の効果が発揮される範囲内において、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位及びアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位以外のその他の単量体に由来する構成単位(以下、「その他の構成単位」ともいう。)を含んでもいてもよい。その他の構成単位を構成する単量体は、架橋性官能基を有する単量体と共重合できるものであれば特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0039】
その他の構成単位を構成する単量体としては、例えば、多官能アクリル系単量体、芳香族モノビニル単量体が挙げられる。
【0040】
多官能アクリル系単量体としては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチルプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0041】
芳香族モノビニル単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、tert-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエンが挙げられる。
【0042】
特定(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、10万~190万であることが好ましい。特定(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)が上記範囲であると、本発明の保護フィルム用粘着剤組成物から形成された粘着剤層は、保護フィルムに適した接着性がより発現しやすい傾向がある。
上記観点から、特定(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、30万~180万であることがより好ましく、40万~150万であることが更に好ましく、40万~130万であることが特に好ましく、40万~100万であることが最も好ましい。
【0043】
特定(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、下記の方法により測定された値である。
(重量平均分子量(Mw)の測定方法)
下記(1)~(3)に従って測定する。
(1)特定(メタ)アクリル系樹脂の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥し、フィルム状の特定(メタ)アクリル系樹脂を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の特定(メタ)アクリル系樹脂とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。
(3)下記条件にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、標準ポリスチレン換算値として、特定(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)を測定する。
(条件)
GPC :HLC-8220 GPC〔東ソー(株)製〕
カラム :TSK-GEL GMHXL 使用
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流速 :0.6mL/分
カラム温度:40℃
【0044】
特定(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度は、剥離性の観点から、-40℃以下であることが好ましく、-50℃以下であることがより好ましい。
【0045】
特定(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、下記式の計算により求められるモル平均ガラス転移温度である。
1/Tg=m/Tg+m/Tg+・・・+m(k-1)/Tg(k-1)+m/Tg
・・・(式1)
式1中、Tg、Tg、・・・、Tg(k-1)、Tgは、特定(メタ)アクリル系樹脂を構成する各単量体を単独重合体としたときの絶対温度(K)で表されるガラス転移温度である。m、m、・・・、m(k-1)、mは、特定(メタ)アクリル系樹脂を構成する各単量体のモル分率をそれぞれ表し、m+m+・・・+m(k-1)+m=1である。
【0046】
なお、「単独重合体としたときの絶対温度(K)で表されるガラス転移温度」は、その単量体を単独で重合して製造した単独重合体の絶対温度(K)で表されるガラス転移温度をいう。単独重合体のガラス転移温度は、その単独重合体を、示差走査熱量測定装置(DSC)(セイコーインスツルメンツ(株)製、EXSTAR6000)を用い、窒素気流中、測定試料10mg、昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、得られたDSCカーブの変曲点を、単独重合体のガラス転移温度としたものである。
【0047】
代表的な単量体の「単独重合体のセルシウス温度(℃)で表されるガラス転移温度」は、メチルアクリレートは5℃であり、エチルアクリレートは-27℃であり、メチルメタクリレートは103℃であり、n-ブチルアクリレートは-57℃であり、2-エチルヘキシルアクリレートは-76℃であり、n-オクチルアクリレートは-65℃であり、イソオクチルアクリレートは-58℃であり、イソノニルアクリレートは-58℃であり、アクリル酸は163℃であり、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレートは-30℃であり、2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸は-40℃である。
例えば、これら代表的な単量体を用いることで、既述のガラス転移温度を適宜調整することが可能である。
【0048】
粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系樹脂の含有率は、目的に応じて適宜選択することができる。特定(メタ)アクリル系樹脂の含有率としては、粘着剤組成物の固形分総質量中に、80質量%~99質量%であることが好ましく、85質量%~99質量%であることがより好ましく、90質量%~98質量%であることが更に好ましい。
なお、固形分総質量とは粘着剤組成物から、溶剤などの揮発性成分を除いた残渣の総質量を意味する。
【0049】
<イソシアネート化合物(B)>
本発明の粘着剤組成物は、イソシアネート化合物(B)を含む。イソシアネート化合物(B)は、特定(メタ)アクリル系樹脂中の架橋性官能基と反応して架橋構造を形成する。これにより、本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層に適度な硬さを付与することが可能となる。また、保護フィルムとして必要な粘着力を粘着剤層に付与しつつ、保護フィルムの用途に適した剥離性を保持させることが可能である。
【0050】
イソシアネート化合物(B)としては、特定(メタ)アクリル系樹脂中の架橋性官能基と反応可能であれば特に制限はなく、例えば、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリレンジイソシアネートに代表される芳香族ポリイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート化合物の水素添加物に代表される鎖状又は環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物等の2官能以上のポリイソシアネート化合物、並びに、これらのポリイソシアネート化合物のビュレット体、2量体(例えば、ウレトジオン変性体)、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体)又は5量体、並びにこれらのポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパンなどのポリオール化合物とのアダクト体が挙げられる。
これらのイソシアネート化合物(B)は、1種を単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用してもよい。
【0051】
これらの中でも、架橋性官能基との反応性の観点から、イソシアネート化合物(B)としては、鎖状若しくは環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物、鎖状若しくは環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物の2量体、鎖状若しくは環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とのアダクト体、鎖状若しくは環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体を含む3量体若しくは5量体、又は、鎖状若しくは環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物のビュレット体などに由来するポリイソシアネート化合物であることが好ましい。
更に、反応性に優れ架橋密度を高めることができ、かつ、特定(メタ)アクリル系樹脂との相溶性に優れる観点から、イソシアネート化合物(B)としては、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体及びイソホロンジイソシアネートの少なくとも一方であることが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体であることがより好ましい。
【0052】
イソシアネート化合物(B)は、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、「コロネートHX」、「コロネートHL-S」、「コロネートL」、「コロネート2031」、「コロネート2030」、「コロネート2037」、「コロネート2234」、「コロネート2785」、「コロネートT-80」、「アクアネート200」、及び「アクアネート210」及び「HDI」〔以上、東ソー(株)製〕、「スミジュールN-3300」、「デスモジュールN-3400」、「スミジュールN-75」及び「デスモジュールI」〔以上、住化コベストロウレタン社製〕、「デュラネートE-405-80T」、「デュラネート24A-100」、及び「デュラネートTSE-100」〔以上、旭化成(株)製〕、並びに、「タケネート500」、「タケネート600」、「タケネートD-110N」、「タケネートD-120N」、「タケネートM-631N」及び「MT-オレスターNP1200」〔以上、三井化学(株)製〕の商品名により市販されているものを好適に使用できる。
【0053】
イソシアネート化合物(B)(2種以上を用いる場合には総含有量)の含有量としては、特定(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して0.5質量部~8.0質量部であることが好ましく、1.0質量部~7.0質量部であることがより好ましく、3.0質量部~6.0質量部であることが更に好ましい。
イソシアネート化合物(B)の含有量が上記範囲内であると、被着体からの剥がれをより抑制し、かつ、保護フィルムの用途により適した粘着力を保つ傾向がある。
【0054】
<シリコーン系イソシアネート化合物(C)>
粘着剤組成物は、イソシアネート化合物(B)以外のポリシロキサン構造及びアルキレンオキシド構造を有するイソシアネート化合物(C)(シリコーン系イソシアネート化合物(C))を含む。
シリコーン系イソシアネート化合物(C)はイソシアネート基を含有するため、特定(メタ)アクリル系樹脂中の架橋性官能基と反応して架橋構造を形成して、粘着剤層中にアンカーされた状態に保たれやすくなる。そのため、保護フィルムを剥離する際に、汚染成分の被着体表面への転着が抑制されるので、本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層は優れた耐汚染性を発揮する。
また、シリコーン系イソシアネート化合物(C)は、分子中にポリシロキサン構造を有するため、特定(メタ)アクリル系樹脂と相溶しにくく、粘着剤層の表面付近に局在する傾向がある。さらに、シリコーン系イソシアネート化合物(C)は分子中にアルキレンオキシド構造を有するので、帯電防止助剤として用いられるアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物と同様に、帯電防止剤に配位した状態で、粘着剤層の表面付近に局在する傾向がある。そのため、粘着剤組成物より形成された粘着剤層は、少量の帯電防止剤であっても優れた帯電防止性能を発揮する。
本明細書において、ポリシロキサン構造とは、シロキサン基(-Si-O-)が連結した構造を指す。本発明に用いるシリコーン系イソシアネート化合物(C)中のポリシロキサン構造に含まれるケイ素原子の数は、1~100の範囲であることが好ましい。
【0055】
シリコーン系イソシアネート化合物(C)は、反応性基を有し、かつアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物と、イソシアネート化合物と、の反応(以下、「プレ反応」ともいう。)により得ることができる。
【0056】
反応性基を有し、かつアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物における反応性基としては、水酸基、カルボキシ基、置換又は無置換のアミド基、置換又は無置換のアミノ基、エポキシ基、メルカプト基、ケイ素含有基等の反応性基が挙げられる。
これらの中でも、反応性基とイソシアネート化合物中のNCO基との反応が効果的に促進され、かつ、被着体に対する汚染の発生を効果的に抑制できる観点から、反応性基としては、水酸基であることが好ましい。
反応性基は、アルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物の両末端、片末端、側鎖の何れに導入されていてもよい。
ここで、片末端とは、例えば、シロキサン基の繰り返し単位を有するポリシロキサン鎖(主鎖)を有するシリコーン化合物の前記主鎖の一方の末端を意味する。両末端とは、例えば、シロキサン基の繰り返し単位を有する分子鎖(主鎖)を有するシリコーン化合物の前記主鎖の両方の末端を意味する。
【0057】
反応性基を有し、かつアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物としては、例えば、シリコーン鎖(ポリシロキサン主鎖)に、アルキレンオキシド構造がグラフト状に結合した化合物、又はブロック状に結合した化合物が挙げられる。
上記アルキレンオキシド構造を有する化合物としては、例えば、反応性基を有するポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等が挙げられ、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとがブロック状又はランダムに付加したポリアルキレンオキシドであってもよい。
【0058】
優れた帯電防止性を示し、かつ、被着体に対する汚染を効果的に抑制する点から、反応性基を有し、かつアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物は、アルキレンオキシド構造と、アルキレンオキシド構造の末端に水酸基が結合した構造と、を含有するシリコーン化合物(以下、「特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物」ともいう。)であることが好ましい。
特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物が、アルキレンオキシド構造の末端に水酸基が結合した構造を有すると、より優れた耐汚染性を発揮することが可能となる。
アルキレンオキシド鎖を有するシリコーン化合物は、後述の帯電防止剤(D)と相互作用し、粘着剤層の表面付近に局在する傾向がある。その結果、粘着剤層の表面における表面抵抗値を低下させると推察される。すなわち、シリコーン系イソシアネート化合物(C)は、本発明の粘着剤組成物における帯電防止剤の量を抑えることが可能となる。
【0059】
帯電防止性を付与し、かつ、被着体に対する汚染性を低くする観点から、特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物としては、ジアルキルシロキサンに由来する構成単位と、アルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンに由来する構成単位と、を含むポリシロキサン化合物であることが好ましい。
ジアルキルシロキサンにおけるアルキル基の炭素数は、1~4であることが好ましく、1であることがより好ましい。
またアルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンにおけるアルキレンオキシド鎖の炭素数は、2~4であることが好ましく、2~3であることがより好ましい。
アルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンにおけるアルキレンオキシド鎖の含有数は、1~100であることが好ましく、10~100であることがより好ましい。アルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンにおけるアルキル基の炭素数は、1~4であることが好ましい。
【0060】
特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物が、ジアルキルシロキサンに由来する構成単位とアルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンに由来する構成単位とを含む場合、ジアルキルシロキサンに由来する構成単位の含有数は100以下であることが好ましく、1~80であることがより好ましい。またアルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンに由来する構成単位の含有数は2~100であることが好ましく、2~80であることがより好ましい。
【0061】
特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物は、粘着性、帯電防止性及び被着体に対する汚染性を低くする観点から、下記一般式(3)又は一般式(4)で表される化合物であることが好ましい。
【0062】
【化3】
【0063】
一般式(3)中、pはジメチルシロキサン構造単位の繰り返し数であって0~100の数を表す。qはポリエチレンオキシド鎖を有するメチルプロピレンシロキサン構造単位の繰り返し数であって2~100の数を表す。またaはエチレンオキシド構造単位の繰り返し数であって1~100の数をそれぞれ表わす。ここで、一般式(3)で表される化合物が複数の化合物の集合体である場合、p、q及びaは化合物の集合体としての平均値であり、有理数である。
【0064】
エチレンオキシド構造単位の繰り返し数aは1~100の数であり、10~100の数であることが好ましい。aが1以上であると十分な導電性が得られ、帯電防止効果が更に向上する傾向がある。またaが100以下であると粘着剤層の表面付近に局在しやすくなる。
【0065】
また、ジメチルシロキサン構造単位の繰り返し数pは、0~100の数であり、1~80の数であることが好ましい。pが0以上の場合には帯電防止効果が向上する傾向がある。また、pが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性が向上する傾向がある。
さらに、メチルプロピレンシロキサン構造単位の繰り返し数qは、2~100の数であり、2~80の数であることが好ましい。qが2以上であると十分な導電性が得られやすく、帯電防止効果を向上させる傾向がある。またqが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性がより向上し、粘着剤層の透明性が向上する傾向がある。
【0066】
一般式(3)で表される化合物の具体例としては、「SF-8428」、「FZ-2162」、「SH-3773M」、「FZ-77」、「FZ-2104」、「FZ-2110」、「L-7001」、「L-7002」、「SH-3749」〔以上、東レ・ダウコーニング(株)製〕が挙げられる。
【0067】
【化4】
【0068】
一般式(4)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキレン基を表し、cは10~80の整数を表し、dはエチレンオキシド(EO)構成単位の繰り返し数であって、1以上の整数を表し、eはプロピレンオキシド(PO)構成単位の繰り返し数であって、0以上の整数を表し、さらにd+eは1~30の整数を表す。エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの順序はランダムであってもよい。
【0069】
一般式(4)で表される化合物の具体例としては、「BY-16-201」、「SF-8427」〔以上、東レ・ダウコーニング(株)製〕が挙げられる。
【0070】
特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物の重量平均分子量(Mw)としては、特に制限はなく、例えば、1,000~20,000であることが好ましく、3,000~15,000であることがより好ましい。
特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物の重量平均分子量(Mw)は、既述の特定(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)の測定方法と同様にして測定することができる。
【0071】
また、特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物のHLB値については特に制限されない。特定(メタ)アクリル系樹脂との相溶性、局在のしやすさ、及び保護フィルムに適した接着性の観点から、HLB値としては、5以上16未満であることが好ましく、7~15であることがより好ましい。
【0072】
HLB値は、アルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物の親水性と疎水性とのバランスを示す尺度である。本明細書においては、下記式で算出されるグリフィン法の定義に従い、アルキレンオキシド構造を有するシリコーンが市販品である場合、市販品のカタログデータを優先して採用する。
HLB= {(親水性基部分の式量の総和)/(アルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物の分子量)}×20
【0073】
特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物は、上記のような市販品から選択されたものであってもよく、また、特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物は、水素化ケイ素を有するジメチルポリシロキサン主鎖に対し、不飽和結合及びポリエチレンオキシド鎖を有する有機化合物をヒドロシリル化反応によりグラフトさせることによって得てもよい。
【0074】
シリコーン系イソシアネート化合物(C)のプレ反応に用いられるイソシアネート化合物としては、上記反応性基を有し、かつアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物と反応できれば特に制限はない。
このようなイソシアネート化合物としては、例えば、既述のイソシアネート化合物(B)が挙げられ、イソシアネート化合物(B)の具体例と同様である。
【0075】
プレ反応における反応性の観点から、プレ反応に用いられるイソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート若しくはキシレンジイソシアネート、及び、ヘキサメチレンジイソシアネートと、ポリオールと、のイソシアヌレート変性体から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、後述するプレ反応時のゲル化を特に抑制する観点から、イソホロンジイソシアネート及びキシレンジイソシアネートの少なくとも一方であることがより好ましい。
【0076】
さらに、帯電防止性の観点から、プレ反応に用いられるイソシアネート化合物としては、前記イソシアネート化合物(B)と異なるイソシアネート化合物であることが好ましい。
イソシアネート化合物(B)とシリコーン系イソシアネート化合物(C)のプレ反応に用いられるイソシアネート化合物とが異なると、粘着剤層中においてイソシアネート化合物(B)とシリコーン系イソシアネート化合物(C)とが相溶しにくく、シリコーン系イソシアネート化合物(C)がより粘着剤層表面へ局在しやすくなるため、より優れた帯電防止性が得られる傾向にある。
【0077】
プレ反応に用いられるイソシアネート化合物は、1種を単独で使用してもよく、又は、2種以上併用してもよい。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートとイソホロンジイソシアネートとを併用した場合、プレ反応時のゲル化をより抑制できる傾向にある。
【0078】
シリコーン系イソシアネート化合物(C)は、下記構造式(1)で表される構造を含むことが好ましい。
【0079】
【化5】
【0080】
構造式(1)中、rは1~100の整数を表し、bは1~100の整数を表し、Xはイソシアネート基を含む1価の有機基を表す。
【0081】
メチルプロピレンシロキサン構造単位の繰り返し数rは、2~80の整数であることが好ましい。rが1以上であると十分な導電性が得られ、帯電防止性がより向上する傾向がある。またrが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性が更に向上する傾向がある。
【0082】
エチレンオキシド構造単位の繰り返し数bは1~100の整数であるが、10~100の整数であることが好ましい。bが1以上であると十分な導電性が得られ、帯電防止性が向上する傾向がある。またbが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性がより向上する傾向がある。
【0083】
Xで表される1価の有機基としては、既述の2官能以上のイソシアネート化合物(B)から、イソシアネート基(NCO基)を1つ除いた1価の基が挙げられる。
これらの中でも、特定(メタ)アクリル系樹脂との反応性の観点から、Xで表される1価の有機基としては、鎖状若しくは環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物、鎖状若しくは環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物の2量体、及び、鎖状若しくは環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体を含む3量体又は5量体から選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート化合物からイソシアネート基を1つ除いた1価の基が好ましく、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの2量体、及び、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体を含む3量体又は5量体から選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート化合物からイソシアネート基を1つ除いた1価の基がより好ましく、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体を含む3量体の少なくとも一方からイソシアネート基を1つ除いた1価の基が更に好ましく、イソホロンジイソシアネート及びキシレンジイソシアネートの少なくとも一方からイソシアネート基を1つ除いた1価の基が特に好ましい。
また、帯電防止性の観点から、Xで表される1価の有機基としては、本発明の粘着剤組成物に含まれるイソシアネート化合物(B)と異なる他の2官能以上のイソシアネート化合物から、イソシアネート基(NCO基)を1つ除いた1価の基であることが好ましい。
【0084】
上記構造式(1)で表される構造の具体例を以下に示す。なお、構造式(1)で表される構造は、以下の例示構造に限定されず、構造式(1)で表される構造に包含される構造であれば特に制限されない。
【0085】
【化6】
【0086】
【化7】
【0087】
【化8】
【0088】
【化9】
【0089】
【化10】
【0090】
耐汚染性の観点から、シリコーン系イソシアネート化合物(C)としては、一般式(1-1)又は一般式(2)で表される化合物であることが好ましく、一般式(1-1)で表される化合物であることがより好ましい。
【0091】
【化11】
【0092】
一般式(1-1)中、p又はqはそれぞれ独立に0~100の整数を、q及びrはそれぞれ独立に1~100の整数を、aは0~100の、bは1~100の整数をそれぞれ表す。また、Xはイソシアネート基を含む1価の有機基を表す。
ここで、一般式(1-1)で表される化合物が複数の化合物の集合体である場合、p、q、r、a及びbは化合物の集合体としての平均値であり、有理数である。
【0093】
エチレンオキシド構造単位の繰り返し数aは1~100の整数であるが、10~100の数であることが好ましい。aが1以上であると十分な導電性が得られ、帯電防止性が向上する傾向がある。またaが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性がより向上する傾向がある。
【0094】
またジメチルシロキサン構造単位の繰り返し数pは、0~100の整数であるが、1~80の整数であることが好ましい。pが0以上の場合には帯電防止性が向上する傾向がある。
またpが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性が向上する傾向がある。
更にメチルプロピレンシロキサン構造単位の繰り返し数qは、2~80の数であることが好ましい。qが2以上であると十分な導電性が得られ、帯電防止性がより向上する傾向がある。またqが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性が更に向上する傾向がある。
【0095】
一般式(1-1)中、r及びbは、構造式(1)中のr及びbと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0096】
【化12】
【0097】
一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキレン基を表し、cは10~80の整数を表し、dはエチレンオキシド(EO)構造単位の繰り返し数であって、1以上の整数を表し、eはプロピレンオキシド(PO)構造単位の繰り返し数であって、0以上の整数を表し、さらにd+eは1~30の整数を表す。エチレンオキシド構造単位及びプロピレンオキシド構造単位の順序はランダムであってもよい。
【0098】
一般式(2)、R又はRで表される炭素数1~6のアルキレン基としては、特に限定されるものではなく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
【0099】
エチレンオキシド構造単位の繰り返し数dは1~100の整数であることが好ましく、10~100の整数であることがより好ましい。
dが1以上であると十分な導電性が得られ、帯電防止性が向上する傾向がある。またdが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性がより向上する傾向がある。
【0100】
プロピレンオキシド構造単位の繰り返し数eは1~100の整数であることが好ましく、10~100の整数であることがより好ましい。
eが1以上であると十分な導電性が得られ、帯電防止性が向上する傾向がある。またeが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性がより向上する傾向がある。
【0101】
エチレンオキシド構造単位の繰り返し数dとプロピレンオキシド構造単位の繰り返し数eとの和は、1~50の整数であることがより好ましい。
【0102】
シリコーン系イソシアネート化合物(C)の具体例を以下に示す。なお、シリコーン系イソシアネート化合物(C)は、以下の例示化合物に限定されず、既述の構造式(1)で表される構造を含む化合物に包含される化合物であれば特に制限されない。
【0103】
【化13】
【0104】
【化14】
【0105】
【化15】
【0106】
【化16】
【0107】
【化17】
【0108】
【化18】
【0109】
【化19】
【0110】
【化20】
【0111】
【化21】
【0112】
【化22】
【0113】
【化23】
【0114】
【化24】
【0115】
【化25】
【0116】
【化26】
【0117】
【化27】
【0118】
【化28】
【0119】
シリコーン系イソシアネート化合物(C)の製造方法は特に制限されず、公知の製造方法を適用することができる。
例えば、反応容器に、反応性基を有し、かつアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物と、イソシアネート化合物と、を所定量づつ投入し、均一に撹拌して反応(プレ反応)させることで、シリコーン系イソシアネート化合物(C)を得ることができる。
【0120】
プレ反応の温度としては、40℃~100℃であることが好ましく、45℃~95℃であることがより好ましく、50℃~95℃であることが更に好ましい。
【0121】
シリコーン系イソシアネート化合物(C)の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂(A)100質量部に対して0.10質量部以上である。
シリコーン系イソシアネート化合物(C)の含有量が0.10質量部以上であると、シリコーン系イソシアネート化合物(C)は、イソシアネート基を含有するため、特定(メタ)アクリル系樹脂中の架橋性官能基と反応して架橋構造を形成し、粘着剤層中にアンカーされた状態に保たれやすくなる。そのため、保護フィルムを被着体から剥離する際に、汚染成分の被着体への転着を抑制し、粘着剤組成物より形成された粘着剤層は優れた耐汚染性を発揮する。
また、シリコーン系イソシアネート化合物(C)は、分子中にポリシロキサン構造を有するため、特定(メタ)アクリル系樹脂と相溶しにくく、粘着剤層の表面付近に局在しやすい。さらに、シリコーン系イソシアネート化合物(C)は、分子中にアルキレンオキシド構造を有するので、帯電防止助剤として一般的に用いられるアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物と同様に、帯電防止剤に配位した状態で、粘着剤層の表面付近に局在しやすい。そのため、粘着剤組成物より形成された粘着剤層は、少量の帯電防止剤でも優れた帯電防止性能を発揮する。
上記観点から、シリコーン系イソシアネート化合物(C)の含有量としては、(メタ)アクリル系樹脂(A)100質量部に対して、0.2質量部~3質量部であることが好ましく、0.25質量部~2.5質量部であることがより好ましく、0.3質量部~2質量部であることが更に好ましい。
【0122】
イソシアネート化合物(B)に対するシリコーン系イソシアネート化合物(C)の質量比[(C)/(B)]は、1/1~1/20であることが好ましい。
質量比[(C)/(B)]が1/20以下であると、粘着剤組成物中に含まれるイソシアネート化合物(B)が多くなりすぎず、かつ、シリコーン系イソシアネート化合物(C)が適度に存在しているため、耐汚染性がより抑えられる傾向がある。また、質量比[(C)/(B)]が1/1以上であると、特定(メタ)アクリル系樹脂(A)と、イソシアネート化合物(B)と、が十分に反応して架橋構造を形成することができ、より適切な粘着力を粘着剤層に付与する傾向がある。
上記観点から、質量比[(C)/(B)]としては、1/2~1/15であることがより好ましく、1/3~1/10であることが更に好ましい。
【0123】
<帯電防止剤(D)>
粘着剤組成物は、帯電防止剤(D)を含有する。粘着剤組成物より形成された粘着剤層は、優れた帯電防止性能を発揮する。
帯電防止剤としては、イオン性化合物が挙げられる。イオン性化合物としては、特に制限はなく、アルカリ金属塩、有機塩などが挙げられる。
イオン解離性が高く、かつ、少量であっても優れた帯電防止性を発現しやすい点から、帯電防止剤としては、アルカリ金属塩又は有機塩であることが好ましい。
【0124】
アルカリ金属塩としては、リチウムイオン(Li)、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、ルビジウム(Rb)などをカチオンとする金属塩であれば特に制限されない。
例えば、Li、Na及びKからなる群より選ばれる少なくとも1種のカチオンと、Cl、Br、I、BF 、PF 、SCN、ClO 、CFSO 、(FSO、(CFSO、(CSO及び(CFSOからなる群より選ばれる少なくとも1種のアニオンと、から構成される金属塩を好適に用いることができる。
【0125】
中でも、アルカリ金属塩としては、帯電防止性の観点から、LiBr、LiI、LiBF、LiPF、LiSCN、LiClO、LiCFSO(LiTFS)、Li(FSON、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CFSOCなどのリチウム塩であることが好ましく、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CFSOCであることがより好ましい。
アルカリ金属塩は、1種単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用して使用してもよい。
【0126】
有機塩は、有機カチオンとその対イオンとを含む。有機塩には、たとえば融点が30℃以上のイオン性固体と、融点が30℃未満のイオン性液体とが含まれる。
有機塩としては、融点が30℃以上であることが好ましい。有機塩の融点が30℃以上であると、被着体への移行が少なく、汚染性が低く好ましい。
有機カチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、アルキルピロリジニウムカチオン、有機基を置換基として有するアンモニウムカチオン、有機基を置換基として有するスルホニウムカチオン、有機基を置換基として有するホスホニウムカチオンが挙げられる。これらの中でも、帯電防止性の観点から、有機カチオンとしては、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオンであることが好ましい。
【0127】
有機カチオンの対イオンとなるアニオン部は、特に限定されるものではなく、無機アニオン又は有機アニオンのいずれでもよい。中でも、特に、帯電防止性に優れるため、フッ素原子を含むフッ素含有アニオンであることが好ましく、更にはヘキサフルオロホスフェートアニオン(PF )であることが好ましい。
【0128】
有機塩の例としては、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、アルキルアンモニウム塩、アルキルピロリジニウム塩、アルキルホスホニウム塩などが好適に挙げられる。中でも、有機塩としては、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩であることが好ましく、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオンと、フッ素含有アニオンとの塩であることがより好ましい。
【0129】
帯電防止剤(D)の含有量としては、特定(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、0.05質量部~0.50質量部であることが好ましく、0.10質量部~0.30質量部であることがより好ましい。
帯電防止剤(D)の含有量が特定(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、0.05質量部以上であると、帯電防止性により優れる傾向がある。帯電防止剤(D)の含有量が0.50質量部以下であると、帯電防止剤(D)の含有量に対する帯電防止効果の効率がより高くなる傾向がある。
【0130】
(他のシリコーン化合物)
本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、シリコーン系イソシアネート化合物(C)以外のシリコーン化合物(以下、「他のシリコーン化合物」ともいう。)を含んでいてもよい。
【0131】
他のシリコーン化合物としては、例えば、シリコーン系イソシアネート化合物(C)のプレ反応に用いられる、反応性基を有し、かつアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物が挙げられ、既述の反応性基を有し、かつアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物の具体例と同様であり、好ましい範囲も同様である。
他のシリコーン化合物を含む場合、帯電防止性をより向上させることが可能である。
他のシリコーン化合物は、1種単独で使用してもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0132】
粘着剤組成物が他のシリコーン化合物を含有する場合、他のシリコーン化合物の含有量としては、特定(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、0.05質量部~1質量部であることが好ましく、0.05質量部~0.7質量部であることがより好ましく、0.05質量部~0.3質量部であることが更に好ましい。
他のシリコーン化合物の含有量が0.05質量部以上であると、帯電防止性により優れる傾向がある。また他のシリコーン化合物の含有量が1質量部以下であることで、被着体への汚染(クモリ)の発生が抑制され、また、特定(メタ)アクリル系樹脂との相溶性が低下して発生する白濁をより抑制することが可能となる。
【0133】
((メタ)アクリル系オリゴマー)
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系オリゴマーを含んでいてもよい。
より優れた帯電防止性及び被着体に対する耐汚染性を発揮する観点から、(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、アルキレンオキシド構造単位を含む(メタ)アクリル系オリゴマーであることが好ましい。
【0134】
(メタ)アクリル系オリゴマーが、アルキレンオキシド構造単位を含み、かつ、分子量が特定(メタ)アクリル系樹脂よりも小さいことで、粘着剤組成物中で比較的容易に移動することができると推察される。これにより、粘着剤組成物の表面抵抗値がより効果的に低下し、より優れた帯電防止性を付与することが可能となる。
【0135】
アルキレンオキシド構造単位に含まれるアルキレンオキシ基としては、炭素数2~4のアルキレンオキシ基であることが好ましく、炭素数2~3のアルキレンオキシ基であることがより好ましい。
【0136】
アルキレンオキシ基の含有数は、目的等に応じて適宜選択することができる。アルキレンオキシ基の含有数は、帯電防止性の観点から、20以上であることが好ましく、20~100であることがより好ましく、20~50であることが更に好ましい。アルキレンオキシ基の含有数が20以上であることで、既述の帯電防止剤(D)との組み合わせによって、より顕著な帯電防止性を発揮する傾向がある。
なお、アルキレンオキシ基の含有数は、(メタ)アクリル系オリゴマーにアルキレンオキシ基を有する構成単位が2種以上含まれる場合、含有数の平均値である有理数となる。
【0137】
アルキレンオキシ基の末端部は、水酸基であっても、アルコキシ基であってもよく、帯電防止性の観点から、アルコキシ基であることが好ましい。ポリアルキレンオキシド基の末端部がアルコキシ基の場合、アルコキシ基の炭素数は1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。
【0138】
アルキレンオキシ基に由来する構成単位は、アルキレンオキシ基及びビニル基を有する単量体に由来するものであっても、アルキレンオキシ基を有さない構成単位に高分子反応でアルキレンオキシ基を導入したものであってもよい。
生産性の観点から、アルキレンオキシ基に由来する構成単位は、アルキレンオキシ基及びビニル基を有する単量体に由来するものが好ましい。
【0139】
アルキレンオキシ基及びビニル基を有する単量体として具体的には、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレンオキシ(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレンオキシ(メタ)アクリレート等を挙げられる。
中でもメトキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート及びメトキシポリプロピレンオキシ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、エチレンオキシ基の含有数が20以上であるメトキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート及びプロピレンオキシド基の含有数が20以上であるメトキシポリプロピレンオキシ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0140】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、アルキレンオキシ基に由来する構成単位を1種単独で含んでいてもよく、又は2種以上を併用して含んでいてもよい。
【0141】
(メタ)アクリル系オリゴマーにおけるアルキレンオキシ基に由来する構成単位の含有率としては、帯電防止性の観点から、(メタ)アクリル系オリゴマーの全質量に対して、1質量%~50質量%であることが好ましく、1質量%~30質量%であることがより好ましく、5質量%~20質量%であることが更に好ましい。
【0142】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、アルキレンオキシ基に由来する構成単位に加えて、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を少なくとも1種含むことが好ましい。
(メタ)アクリル系オリゴマーがカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含むと、剥離性の向上に寄与する傾向がある。
カルボキシ基を有する単量体の種類としては、特に制限されず、既述の(メタ)アクリル系樹脂におけるカルボキシ基を有する単量体が挙げられる。剥離性の観点から、カルボキシ基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸であることが好ましい。
【0143】
カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率としては、汚染性をより低くする観点から、(メタ)アクリル系オリゴマーの全構成単位に対して、0.1質量%~10質量%であることが好ましく、0.5質量%~7質量%であることがより好ましく、1質量%~5質量%であることが更に好ましい。
【0144】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を更に含んでいてもよい。アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位は、粘着力の調整に寄与する傾向がある。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、既述の特定(メタ)アクリル系樹脂におけるアルキル(メタ)アクリレートと同義であり、具体例も同様である。
粘着剤層を高温高湿環境下に曝した場合に、高い耐久性が発揮される点で、アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数4~12のアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましく、分岐鎖を有する炭素数4~12のアルキル(メタ)アクリレートであることがより好ましく、2-エチルヘキシルメタクリレートであることが更に好ましい。
【0145】
耐久性の観点から、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有率としては、(メタ)アクリル系オリゴマー全構成単位に対して65質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。
また、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有率としては、耐久性の点で、(メタ)アクリル系オリゴマーの全構成単位に対して99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが更に好ましい。
【0146】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、本発明の効果が発揮される範囲内において、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位及びアルキレンオキシ基を有する単量体に由来する構成単位以外の構成単位(その他の構成単位)を含んでもよい。
(メタ)アクリル系オリゴマーがその他の構成単位を含む場合、(メタ)アクリル系オリゴマーの全構成単位に占める、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位及びアルキレンオキシ基を有する単量体に由来する構成単位の合計の含有量としては、(メタ)アクリル系オリゴマーの全構成単位に対して80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。
【0147】
その他の構成単位を構成する単量体としては、既述の水酸基を有する単量体、環状基を有する単量体が挙げられ、具体例及び好ましい範囲も同様である。
【0148】
(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、特定(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)に比べて小さければ、特に制限はない。特定(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、3,000~60,000であることが好ましく、3,000~20,000であることがより好ましい。重量平均分子量(Mw)が3,000以上であると、被着体に対する汚染の発生をより効果的に抑制できる傾向がある。また、重量平均分子量(Mw)が60,000以下であると、帯電防止性がより向上する傾向がある。
【0149】
(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、既述の特定(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)の測定方法と同様にして測定することができる。
【0150】
(メタ)アクリル系オリゴマーのガラス転移温度(Tg)は、50℃以下であることが好ましい。(メタ)アクリル系オリゴマーのTgが50℃以下であると、加熱処理による粘着力の上昇を抑制できるため、剥離性がより優れる傾向がある。
【0151】
(メタ)アクリル系オリゴマーのガラス転移温度は、既述の特定(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度の計算方法と同様にして計算することができる。
【0152】
(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量としては、保護フィルムとして必要な粘着力を粘着剤層に付与しつつ、保護フィルムの用途に適した剥離性を保持させる観点から、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、0.05質量部~2質量部であることが好ましく、0.1質量部~1.5質量部であることがより好ましく、0.1質量部~1.2質量部であることが更に好ましい。
(メタ)アクリル系オリゴマーの含有率が0.05質量部~2質量部であると、保護フィルムに必要な粘着力を粘着剤層に付与しつつ、保護フィルムの用途に適した剥離性を更に保持することが可能となる。
【0153】
<その他の成分>
粘着剤組成物は、特定(メタ)アクリル系樹脂、イソシアネート化合物(B)、シリコーン系イソシアネート化合物(C)、帯電防止剤(D)及び(メタ)アクリル系オリゴマーの他に、必要に応じて、特定(メタ)アクリル系樹脂以外の樹脂、イソシアネート化合物以外の架橋剤、架橋触媒、耐候性安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、剥離助剤、染料、顔料、無機充填剤、界面活性剤などを適宜含有することができる。
【0154】
架橋触媒としては、ブロック化イソシアネート化合物のブロック化剤の解離を促進する触媒、解離により再生したイソシアネート基と他の官能基との反応を促進する触媒等が挙げられる。
【0155】
架橋触媒としては、特に制限なく公知の触媒を用いることができる。例えば、有機金属化合物、第3級アミン化合物、金属塩等が挙げられる。
有機金属化合物の具体的な例としては、ジオクチル錫ジラウレート、1,3-ジアセトキシテトラブチルスタノキサンなどが挙げられる。
第3級アミン化合物の具体例としては、トリエチレンジアミン、N-メチルモルホリンなどの三級アミンが挙げられる。
これらの中でも、架橋触媒としては、第3級アミン化合物であることが好ましい。
【0156】
[用途]
本発明の粘着剤組成物は、光学部材に用いることが好ましい。本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層は、耐汚染性及び帯電防止性に優れるため、光学部材の保護フィルムに好適に用いることができる。
【0157】
[保護フィルム]
本発明の保護フィルムは、保護フィルム用粘着剤組成物の架橋物である粘着剤層と、基材と、を少なくとも有する。
保護フィルムが有する粘着剤層は、光学部材に対して、優れた耐汚染性及び帯電防止性を発揮する。
【0158】
保護フィルムに用いられる基材としては、基材上に粘着剤層が形成可能であれば特に制限されない。
透視による光学部材の検査及び管理の観点から、基材としては、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、及びアクリル系樹脂などから選択される樹脂を用いたフィルムが挙げられる。
中でも、基材としては、表面保護性能の観点から、ポリエステル系樹脂を用いたフィルムが好ましく、実用性を考慮すると、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を用いたフィルムであることがより好ましい。
【0159】
基材の厚さとしては、一般には500μm以下とすることができ、好ましくは5μm~300μmであり、より好ましくは10μm~200μmである。
【0160】
基材の片面又は両面には、帯電防止層を設けてもよい。また基材の粘着剤層が設けられる側の表面には、粘着剤層と基材との密着性を向上させるためにコロナ放電処理などが施されていてもよい。
【0161】
基材上には、粘着剤組成物の架橋物である粘着剤層が設けられている。
粘着剤層の形成方法としては、例えば、粘着剤組成物を、そのままで又は必要に応じて適宜の溶媒で希釈し、これを基材に塗布した後、乾燥して溶媒を除去する方法を採用することができる。
また、先ずシリコーン樹脂などにより離型処理が施された紙、ポリエステルフィルム等の適宜のフィルムからなる剥離シート上に粘着剤組成物を塗布し、加熱乾燥して粘着剤層を形成し、次いで剥離シートの粘着剤層側を基材に圧接して粘着剤層を基材に転写させる方法を採用することもできる。
【0162】
基材上に形成される粘着剤層の厚さは、保護フィルムに求められる粘着力、光学部材の表面粗さなどに応じて適宜設定することができる。粘着剤層の厚さとしては、一般に1μm~100μmであり、好ましくは5μm~50μmであり、更に好ましくは15μm~30μm程度の厚さを例示することができる。
【0163】
すなわち、光学部材に対する粘着剤層は、180°剥離(剥離速度0.3m/分)(低速剥離)における粘着力(剥離力)が0.05N/25mm以上であることが好ましく、0.06N/25mm以上であることがより好ましい。低速剥離時の粘着力が0.05N/25mm以上であること、めくれ又はずれの発生がより抑制される傾向がある。
【0164】
また、粘着力が高くなると高速剥離時の作業性が低下するので、剥離速度30m/分(高速剥離)における粘着力(剥離力)が1.5N/25mm未満であることが好ましく、1.2N/25mm未満であることがより好ましく、0.9N/25mm未満であることが更に好ましい。
【0165】
剥離時の帯電による光学部材への影響を抑制する観点から、粘着剤組成物は、偏光板(商品名:SRDB31E、住友化学(株)製)に対する30m/分剥離時の剥離帯電圧の絶対値が0.9kV以下であることが好ましく、0.7kV以下であることがより好ましく、0.5kV以下であることが更に好ましい。
【0166】
また剥離の際のフィルム側の帯電を防止する観点から、粘着剤層の表面抵抗値は、4.9E+11(Ω/□)(すなわち、4.9×1011Ω/□)以下であることが好ましい。
【0167】
基材上に形成される粘着剤層の厚さは、光学部材表面保護フィルムに求められる粘着力、光学部材表面粗さ等に応じて適宜設定することができ、一般に1μm~100μm、好ましくは5μm~50μm、更に好ましくは15μm~30μm程度の厚さを例示することができる。
【0168】
光学部材としては、画像表示装置、入力装置などの機器(光学機器)を構成する部材又はこれらの機器に用いられる部材が挙げられる。光学部材の具体例としては、例えば、偏光板、AG偏光板、波長板、1/2、1/4等の波長板を含む位相差板、視角補償フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、ITOフィルム等の透明導電フィルム、プリズムシート、レンズシート、拡散板などの表示装置に用いられるものが挙げられる。
【実施例
【0169】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0170】
(シリコーン架橋剤1(シリコーン系イソシアネート化合物(C))
-シリコーン架橋剤1の製造-
撹拌羽根、温度計、窒素導入管及び還流冷却器、滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート(IPDI)(商品名:デスモジュールI、住化コベストロウレタン(株)製)を118質量部、SH-3773M(化学名:ポリエーテル変性シリコーン化合物、東レ・ダウコーニング(株)製)を82質量部仕込み、反応容器の空気を窒素ガスで30分間置換した後、内温を50℃に保持しながら4時間撹拌させて、シリコーン架橋剤1を得た。得られたシリコーン架橋剤1の組成を表1に示す。
【0171】
(シリコーン架橋剤2~シリコーン架橋剤8)
シリコーン架橋剤1において、組成を表1に示すように変更したこと以外は、シリコーン架橋剤1の製造と同様の方法により、シリコーン架橋剤2~シリコーン架橋剤8を調製した。
【0172】
【表1】
【0173】
表1中における略号は以下の通りである。
・SH-3773M:特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物(ポリエーテル変性シリコーン化合物、東レ・ダウコーニング(株)製)(一般式(3)で表されるポリシロキサン化合物)
・SF-8427:特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物(カルビノール変性シリコーン化合物(両末端変性)、東レ・ダウコーニング(株)製)(一般式(4)で表されるポリシロキサン化合物)
・デスモジュールI:イソシアネート化合物(化学名:イソホロンジイソシアネート(IPDI)、住化コベストロウレタン(株)製)
・N-3300:イソシアネート化合物(化学名:イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート、商品名:スミジュールN-3300、住化コベストロウレタン(株)製、固形分100質量%)
・タケネート500:イソシアネート化合物(化学名:キシレンジイソシアネート(XDI)、三井化学(株)製)
【0174】
(製造例1)
-(メタ)アクリル系樹脂(A)の製造-
温度計、撹拌機、窒素導入管及び還流冷却器を備えた反応容器内に、酢酸エチル171.0質量部、tert-ブタノール249質量部を入れた。また別の反応容器に、単量体としてn-ブチルアクリレート(nBA)217.8質量部、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)360.0質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)18.0質量部、及びアクリル酸(AA)4.2質量部を入れ、混合して単量体混合物とした。この単量体混合物のうち、20.0質量%を反応容器中に加え、次いで反応容器の空気を窒素ガスで置換した後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.08質量部を添加して、撹拌下に窒素雰囲気中で、反応容器内の混合物温度を85℃に昇温させて、初期反応を開始させた。初期反応がほぼ終了した後、残りの単量体混合物80.0質量%、並びに酢酸エチル88.0質量部、及びAIBN0.80質量部の混合物をそれぞれ逐次添加しながら約2時間反応させ、引き続いて、さらに2時間反応させた。その後、酢酸エチル132.0質量部にtert-ブチルペルオキシピバレート0.60質量部を溶解させた溶液を、上記混合物に1時間かけて滴下し、さらに1.5時間反応させた。反応終了後、(メタ)アクリル系樹脂(A)溶液を得た。得られた(メタ)アクリル系樹脂(A)溶液の重量平均分子量(Mw)を表2に示す。
なお、重量平均分子量(Mw)は既述の方法で測定したものである。
【0175】
(製造例2~製造例4)
製造例1において、単量体を表2に示すように変更し、開始剤の量や重合条件などを適宜変更して重量平均分子量を調整したこと以外は、製造例1と同様の方法により、(メタ)アクリル系樹脂(A)溶液を調製した。得られた(メタ)アクリル系樹脂(A)溶液の固形分の組成(質量%)及び重量平均分子量(Mw)を表2に示す。
なお、重量平均分子量(Mw)は既述の方法で測定したものである。
【0176】
【表2】
【0177】
なお、表2中の「-」は、該当の成分を含まないことを示す。
【0178】
-(メタ)アクリル系オリゴマーの製造-
温度計、撹拌羽根、窒素ガス導入管、冷却器、滴下ロートを備えた反応容器内に、メチルエチルケトン100.0部を入れ、窒素雰囲気下で撹拌しながら還流温度まで加熱した。滴下ロートに、予め混合しておいた、n-ブチルメタクリレート(nBMA)68.0質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)20.0質量部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(アルキレンオキシド基の含有数:23)10部、アクリル酸(AA)2.0質量部、メチルエチルケトン100.0質量部及びアゾビスイソブチロニトリル5.0質量部の混合溶液を入れ、120分かけて還流温度の反応容器に逐次添加した。その後、240分間還流温度を維持したまま反応させ、反応を終了した。このようにして、(メタ)アクリル系オリゴマー溶液を得た。
得られた(メタ)アクリル系オリゴマーの溶液の固形分は33.0質量%であり、重量平均分子量(Mw)は7,000であった。なお、重量平均分子量(Mw)は既述の方法で測定したものである。
【0179】
(実施例1)
撹拌羽根、温度計、冷却器、滴下ロートを備えた四つ口フラスコに製造例1で調製した(メタ)アクリル系樹脂(A)溶液(固形分45%)を222.2質量部(固形分として100質量部)、上記で調製した(メタ)アクリル系オリゴマー溶液(固形分33%)を0.9質量部(固形分として0.80質量部)、帯電防止剤(D)としてLiTFS(化学名:LiCFSO、森田化学工業(株)製)0.25質量部を仕込み、フラスコ内の液温を25℃付近に保って4.0時間混合撹拌を行った。イソシアネート化合物(B)としてスミジュールN-3300希釈物(化学名:ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、住化コベストロウレタン社製)を12.0質量部(固形分として3.00質量部)、上記で調製したシリコーン架橋剤1を0.38質量部相当量添加し、十分に撹拌して、粘着剤組成物溶液を得た。
【0180】
[評価]
-耐汚染性-
<保護フィルムの作製>
上記で得られた粘着剤組成物溶液を、シリコーン系離型剤で表面処理された離型フィルム(商品名:フィルムバイナ25E0010BD、厚み100μm、藤森工業(株)製)上に、乾燥後の塗工量が15g/mとなるように塗布し、100℃で60秒間、熱風循環式乾燥機にて乾燥した。その後、粘着剤組成物溶液を塗布した離型フィルム塗布面を、別途用意したシリコーン系離型剤で表面処理された離型フィルム(商品名:フィルムバイナ 100E-0010NO23、厚み25μm、藤森工業(株)製)の表面処理面に重ね合せて積層体とした。この積層体を加圧ニップロール対に通して圧着して貼り合わせた後、23℃、50%RHの条件下で96時間養生して、無基材タイプの粘着シートを作製した。
【0181】
<シリコーン反応率>
75mm×75mmの大きさに切断した無基材タイプの粘着シートから、一方の離型フィルムを剥がし、粘着剤層が露出した面を100mm×100mmに切断した250メッシュの金網(真鍋工業(株)製)に貼り合わせた。次いで、残りの離型フィルムを剥がし、溶剤浸漬時に粘着剤が漏れでないように250メッシュの金網で包み込み、粘着剤入りの金網を準備した。この操作を繰り返して、粘着剤入りの金網を6個用意し、粘着剤の全質量を測定した。
粘着剤の全質量=粘着剤入りの金網の質量(g)-金網の質量(g)
【0182】
粘着剤入りの金網6個を酢酸エチル80gが入った容器に浸漬し、23℃環境下で3日間静置した。3日経過後、容器から粘着剤入り金網を6個全て取り出し、浸漬後の酢酸エチルを250メッシュの金網にて濾過し試料サンプルとした。
【0183】
まず試料サンプル10g~11gを量り取り、50mlのテフロン(登録商標)製の皿に採取した後、80℃前後のホットプレート上で十分に蒸発乾固し一旦放冷した。放冷後に残留物をポリプロピレン(PP)製の時計皿に移し、1.5mlの塩酸(特級試薬、和光純薬工業(株)製)を加え、80℃前後のホットプレート上で5分程度、加熱溶解した後、再度放冷した。
再度放冷後、残溶液をポリ容器に流し入れ、パーフルオロアルコキシ(PFA)製の蒸発皿を蒸留水10mlで洗浄した後、洗浄液をポリ容器に流し入れ、残留物を測定用サンプルとした。
測定用サンプル中に含まれるケイ素(Si)原子の量を、以下の測定条件で、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)装置(型番:ICPS-7510型、(株)島津製作所製)を用いて定量した。
【0184】
<測定条件>
分析機器:誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)(型番:ICPS-7510型、(株)島津製作所製)
スプレーチャンバー:サイクロンチャンバー
測定位置:横方向観測
ネブライザー:同軸ネブライザー
高周波パワー:1.2kW
クーラントガス:14.0L/分
キャリアガス:アルゴンガス、0.7L/分
定量方法:検量線法により実施
検量線用サンプル濃度:0.2ppm、1.0ppm、5.0ppm(和光純薬工業(株)製 原子吸光用標準液(Si 1000ppm))
【0185】
検出されたケイ素(Si)原子の量を元に、下記計算式にてシリコーン反応率を計算した。
【0186】
シリコーン反応率(%)=(1-(A/B))×100
A:酢酸エチルへ溶出したシリコーン化合物量(ppm)=検出されたケイ素(Si)原子の量の値(ppm)-0.04(ppm)
なお、検出されたケイ素(Si)原子の量は、離型フィルムに含まれるシリコーン化合物の影響分として0.04ppmを引いた数値である。
B:粘着剤層に含まれるシリコーン化合物量(ppm)=(w×s)/e×t×1000000
w:粘着剤の全質量(g)
s:粘着剤に含まれるシリコーン化合物の割合(質量%)
e:酢酸エチル質量;80(g)
t:シリコーン化合物中のSi原子量(ICP-AES実測値であり、SH-3773M(側鎖ポリエーテル変性シリコーン化合物(東レ・ダウコーニング(株)製))のSi原子量は0.20であり、SF-8427(両末端ポリエーテル変性シリコーン化合物(東レ・ダウコーニング(株)製)))のSi原子量は0.45である。)
【0187】
実施例1におけるシリコーン反応率は、94.5%であり、下記の数値を用いて求めた値である。
A:0.24-0.04=0.20
B:(w×s)/e×t×1000000=3.67
w:0.51(g)
s:0.30/(100+0.80+0.25+0.38+0.13+3.0)
=0.002869
e:80(g)
t:0.20
【0188】
実施例1におけるs(粘着剤に含まれるシリコーン化合物の割合(質量%))は、シリコーン化合物の含有量0.30を有効成分の全質量104.25で除した値である。
なお、有効成分の全質量は、(メタ)アクリル系樹脂の含有量100、(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量0.80、帯電防止剤の含有量0.25、シリコーン系イソシアネート化合物(C)の含有量0.38、プレ反応における未反応のイソシアネート化合物の含有量0.13及びイソシアネート化合物(B)の含有量3.0の和である。
【0189】
算出したシリコーン反応率は、下記の評価基準に従って耐汚染性を評価した。結果は表3に示す。
シリコーン反応率が高ければ、粘着剤組成物の耐汚染性は優れる。評価が「A」以上であれば、耐汚染性に優れると判断した。
【0190】
(評価基準)
AA:90%以上である。
A:60%~90%未満である。
B:40%~60%未満である。
C:40%未満である。
【0191】
-帯電防止性-
<保護フィルムの作製>
粘着剤組成物溶液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名:帝人テトロンフィルムG2、厚み38μm、帝人デュポンフィルム(株)製)上に、乾燥後の塗工量が15g/mとなるように塗布し、100℃で60秒間、熱風循環式乾燥機にて乾燥した。その後、粘着剤組成物溶液を塗布した塗布面にシリコーン系離型剤で表面処理された離型フィルム(商品名:フィルムバイナ25E0010BD、厚み100μm、藤森工業(株)製)の表面処理面に重ね合せて積層体とした。この積層体を加圧ニップロール対に通して圧着して貼り合わせた後、23℃、50%RHの条件下で96時間養生して、粘着シートを作製した。
上記で作製した粘着シートの表面抵抗値を表面抵抗測定装置((株)アドバンテスト製:R12704 RESISTIVITY CHAMBER)を用いて、23℃、50%RH、印加電圧100Vの条件下で測定し、下記評価基準に従って評価した。結果は表3に示す。
表面抵抗値が小さいほど帯電防止性に優れる。なお、評価が「C」以上であれば帯電防止性があると評価した。
【0192】
(評価基準)
A:表面抵抗値が1.0×1011Ω/□未満であり、帯電防止性が非常に優れている。
B:表面抵抗値が1.0×1011Ω/□~4.9×1011Ω/□であり、帯電防止性が優れている。
C:表面抵抗値が4.9×1011Ω/□を超えて9.9×1011Ω/□以下であり、帯電防止性がある。
D:表面抵抗値が9.9×1011Ω/□を超えており、帯電防止性に劣っている。
【0193】
(実施例2~実施例18並びに比較例1~3及び比較例5)
製造例1において、表1に示す単量体組成に変更し、適宜開始剤量などを調整したこと以外は、製造例1と同様にして、粘着剤組成物を調製した。調製した粘着剤組成物を用いて、実施例1と同様にして保護フィルムを作製し、実施例1と同様にして各評価を行った。結果を表3に示す。
【0194】
(比較例4)
撹拌羽根、温度計、窒素導入管及び還流冷却器、滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、デスモジュールI(化学名:イソホロンジイソシアネート、住化コベストロウレタン(株)製)を118質量部、SH-8400(側鎖ポリエーテル変性非反応性シリコーン化合物、東レ・ダウコーニング(株)製)を82質量部仕込み、反応容器の空気を窒素ガスで30分間置換した後、内温を50℃に保持しながら4時間撹拌させて、非反応性シリコーン化合物及びイソシアネート化合物の混合液を調製した。
比較例4では、上記で得られた非反応性シリコーン化合物及びイソシアネート化合物の混合液と、製造例1で調製した(メタ)アクリル系樹脂(A)と、イソシアネート化合物(B)と、帯電防止剤(D)と、を表1に記載の配合比率で混合し、粘着剤組成物溶液を調製した。調製した粘着剤組成物を用いて、実施例1と同様にして保護フィルムを作製し、実施例1と同様にして各評価を行った。結果を表3に示す。
【0195】
【表3】
【0196】
表3における略号は以下の通りである。なお、表3中の「-」は、該当の成分を含まないこと又は測定できないことを示し、「N.D]は検出できないことを示す。
【0197】
・N-3300:イソシアネート化合物(化学名:イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート、商品名:スミジュールN-3300、住化コベストロウレタン(株)製、固形分100質量%)
・IPDI:イソシアネート化合物(化学名:イソホロンジイソシアネート、商品名:デスモジュールI、住化コベストロウレタン(株)製)
・XDI:イソシアネート化合物(化学名:キシレンジイソシアネート(XDI)、商品名:タケネート500、三井化学(株)製)
・LiTS:帯電防止剤(化学名:Li(CFSO)O、森田化学工業(株)製)
・MP-402:帯電防止剤(化学名:トリメチルドデシルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、第一工業製薬(株)製)
・SH-3773M:特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物(側鎖ポリエーテル変性シリコーン化合物、東レ・ダウコーニング(株)製)
・SH-8400:シリコーン化合物(側鎖ポリエーテル変性非反応性シリコーン化合物、東レ・ダウコーニング(株)製)
・DOBDL:架橋触媒(化学名:ジオクチル錫ジラウレート、商品名:OT-1、ADEKA(株)製、アセチルアセトンにより適宜希釈して使用)
【0198】
表3中、未反応イソシアネート化合物とは、反応性基を有し、かつアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物と、イソシアネート化合物と、のプレ反応において、反応性基を有し、かつアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物と反応していないイソシアネート化合物を意味する。
表3中、SH-3773M(※)とは、シリコーン系イソシアネート化合物(C)の調製において、イソシアネート化合物と反応していない、反応性基を有し、かつアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物を意味する。
【0199】
少なくとも架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂(A)と、イソシアネート化合物(B)と、前記イソシアネート化合物(B)以外のポリシロキサン構造及びアルキレンオキシド構造を有するイソシアネート化合物(C)(シリコーン系イソシアネート化合物(C))と、帯電防止剤(D)と、を含み、前記イソシアネート化合物(C)の含有量は、前記(メタ)アクリル系樹脂(A)100質量部に対して0.10質量部以上である実施例1~実施例18の粘着剤組成物の架橋物である粘着剤層は、耐汚染性及び帯電防止性に優れていた。
特に、実施例1の粘着剤組成物の架橋物である粘着剤層は、耐汚染性及び帯電防止性に特に優れていた。実施例1では、イソシアネート化合物(B)と異なる他のイソシアネート化合物を用いて、シリコーン架橋剤1(シリコーン系イソシアネート化合物(C))を調製したものであった。
【0200】
これに対して、シリコーン系イソシアネート化合物(C)の含有量が、(メタ)アクリル系樹脂(A)100質量部に対して0.10質量部未満である比較例1の粘着剤組成物の架橋物である粘着剤層はシリコーン系イソシアネート化合物(C)の調製において、反応性基を有し、かつアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物に対するイソシアネート化合物の量が少ないためシリコーン反応率が低く、未反応のシリコーン化合物が多く生成されたため、耐汚染性に劣っていた。
また、帯電防止剤(D)を含まない比較例2の粘着剤組成物の架橋物である粘着剤層は、帯電防止性に劣っていた。
【0201】
シリコーン系イソシアネート化合物(C)の調製において、反応性基を有し、かつアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物と、イソシアネート化合物と、をプレ反応させていない比較例3及び、反応性基を含まず、かつアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物と、イソシアネート化合物と、をプレ反応させた比較例4の粘着剤組成物の架橋物である粘着剤層は、シリコーン系イソシアネート化合物(C)が生成されていないため、耐汚染性に劣っていた。
シリコーン系イソシアネート化合物(C)を含まない比較例5の粘着剤組成物の架橋物である粘着剤層は、帯電防止剤(D)が粘着剤層の表面付近に局在していないため、帯電防止性に劣っていた。
【0202】
以上より、本発明の粘着剤組成物の架橋物である粘着剤層は、耐汚染性及び帯電防止性に優れるため、光学部材の保護フィルムとして好適に用いることができる。